JP2015118081A - 放射線検出システムおよび放射線撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】周期的なパターンをもつ放射線像を高分解能かつ高品質に取得することのできる放射線検出システムを提供する。【解決手段】放射線検出システムが、複数の検出素子が配列された検出器を一つ以上有する。各検出素子は、入射した放射線のエネルギーを直接電気信号に変換する変換部、および、前記変換部から前記電気信号を読み取り出力する信号読み取り部を有する。前記変換部は、互いに間隔をあけて配置されている複数の凸部を有しており、前記複数の凸部が一つの前記信号読み取り部に対し電気的に接続されている。【選択図】図1
Description
本発明は、放射線の検出システムに関する。
X線をはじめとする放射線を利用した撮影装置は医療診断や非破壊検査において多目的に利用される。近年、放射線の強度パターンの被検体の有無に因る変化を撮像し、画像処理によって被検体による吸収強度や位相変調、散乱強度などの情報を取得することが試みられている。例えば、X線用回折格子を用いた干渉計により発生する干渉パターンを検出する方法などがある。これらの強度パターンの周期は、一般的な放射線検出器の分解能(画素サイズ)よりも小さい場合がある。その場合、強度パターンと同程度の周期を有する分析用格子(アナライザー格子)を検出器の前に配置し、強度パターンと分析用格子でモアレを発生させることで、強度パターンの周期を拡大するという方法が用いられることが多い。
X線などの透過性の高い放射線を用いる場合、分析用格子には高いアスペクトが必要となる。それゆえ、分析用格子の作製は容易でない。したがって、分析用格子を用いずに強度パターンを直接解像することが可能な検出器が望まれている。特開2007−203063号公報(以下、特許文献1とよぶ)には、一つの検出素子(画素)内に設けた複数の検出条帯をいくつかのグループに分け、グループ別に信号を読み出すことにより、検出器のみかけの分解能を向上する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1の構造の検出器では、いわゆるクロストークによる画像の劣化が生じる可能性がある。特許文献1の構造では一つの画素内に異なるグループの検出条帯が近接して設けられている。そのため、検出素子内のある検出条帯に入射した放射線により発生した高速電子や二次放射線が、近接する別グループの検出条帯へと入射し、ノイズやコントラスト低下などを招く可能性がある。
本発明の第1側面は、放射線検出システムであって、複数の検出素子が配列された検出器を一つ以上有し、各検出素子は、入射した放射線のエネルギーを直接電気信号に変換する変換部、および、前記変換部から前記電気信号を読み取り出力する信号読み取り部を有し、前記変換部は、互いに間隔をあけて配置されている複数の凸部を有しており、前記複数の凸部が一つの前記信号読み取り部に対し電気的に接続されていることを特徴とする放射線検出システムを提供する。
本発明の第2側面は、X線を回折することで干渉パターンを形成する回折格子と、本発明の第1側面に係る放射線検出システムと、を有し、前記強度パターンが、前記干渉パターンであることを特徴とする放射線撮像装置を提供する。
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の放射線検出システムは、放射線を検出する検出器を1つ以上備える。該検出器が有する検出素子は、放射線のエネルギーを直接電気信号に変換する変換部(特許文献1の検出条帯に対応する)を備える。変換部は、複数の凸部を有し、この複数の凸部が互いに間隔をあけて配置されているため、特許文献1よりもクロストークを軽減することができる。そのため、周期的なパターンをもつ放射線像を高分解能かつ高品質に取得することができる。以下、より詳細に説明をする。
図1は本実施形態の放射線検出システムにおける検出器の構造を説明する模式図である。本実施形態の放射線検出システム(以下単に「検出システム」とも呼ぶ)は、少なくとも一つの方向に関してある周期で空間的に変調された放射線の強度パターン18を検出する装置である。検出システムは、複数の検出素子20が配列された検出器を一つ以上有する(複数の検出器からなる構成は図3、一つの検出器からなる構成は図4を参照して後述する。)。
一つの検出器には、複数の検出素子20が一次元または二次元に配列されている。各々の検出素子20が画素(検出した放射線強度を表す信号を出力する単位)に対応する。図1においては、構造を示す目的で3つの検出素子20を一次元に並べた構成を例示しているが、検出素子20の数や配列はこの限りではない。検出素子20の一辺の長さ(検出素子20の有効検出エリアの放射線伝搬方向に垂直な方向のサイズ)、すなわち画素サイズ、は強度パターン18の空間波長の1/2よりも長い。強度パターン18の空間波長とは、強度パターン18の空間的変調の1周期に対応する距離をいう。図1の例では、画素サイズが強度パターン18の空間波長の約5倍に相当している。従来の検出器では、測定できる空間周波数の限界(分解能)は画素サイズにより決まり、分解能を超える空間周波数を有する細かなパターンは再現できない。そこで本実施形態では、個々の検出素子20の構造を工夫することにより、画素サイズよりもみかけの分解能を高めた検出システムを実現する。
図1に示すように、各検出素子20は、入射した放射線のエネルギーを電気信号に変換する変換部と、変換部に電圧を印加する電極部26と、変換部から電気信号を読み取り出力する信号読み取り部28とからなる。変換部は、入射した放射線のエネルギーを直接電気信号に変換する、所謂直接変換型の半導体である。尚、本発明及び本明細書において、入射した放射線のエネルギーを直接電気信号に変換するとは、入射した放射線を紫外線や可視光に変換することなしに、電気信号へ変換することを指す。変換部に放射線が入射すると、放射線の電離作用により内部に電子と正孔が発生する。電極部26に電圧を印加すると、信号読み取り部28と電極との間、すなわち変換部内に電界が発生し、電子を信号読み取り部28へと輸送できる。
変換部は、互いに間隔をあけて配置されている複数の凸部を有している。これらの凸部の形状および配置は、各々が強度パターン18の同じ位相部分の放射線強度を測定するように設計されている。但し、ここで指す強度パターン18は被検体の影響を受けていない状態の強度パターン18であり、トールボット干渉計であれば、光路中に被検体が配置されていない状態の干渉パターンのことを指す。本実施形態において、変換部は、第一の幅32と第一の厚さ38とを有する第一領域22と、第二の幅34と第二の厚さ40を有する第二領域24とから構成される。第二の厚さ40は第一の厚さ38よりも薄い。言い換えると、第一領域22の厚さ(高さ)を第二領域24に比べて相対的に厚く(高く)形成することで、第一領域22の部分を凸部としている。
放射線は、変換部に表面から侵入し、電子と正孔を発生し電気信号へと変換しながらエネルギーを消耗し、内部へ侵入する。変換部の厚みが十分に厚い場合、放射線のエネルギーはほぼ消耗し、多くの電気信号へと変換される。一方、変換部の厚みが放射線の侵入可能な長さに対して薄い場合、放射線は電気信号へとほとんど変換されずに変換部を通過する。そのため、同じ強度の放射線が入射した場合、変換部が薄い方が電気信号の量が少なくなる。
図1に示すように、第一領域22と第二領域24とで厚さに違いがある場合、第一領域22がより多くの放射線を電気信号に変換することができる。第一領域22と第二領域24との電気信号の差を大きくするためには、第一の厚さ38はできるだけ厚いことが望ましく、第二の厚さ40はできるだけ薄いことが望ましい。
第一領域22の間隔を維持したり、第一領域22の倒れを軽減したりする場合には、ラインアンドスペースが検出領域(信号読み取り部28上の変換部を検出領域とする)の外側で第一領域同士が接続されていることが好ましい。第一領域同士を接続する接続部は、第一領域22と同じ材料であっても良い。また、第一領域同士を接続する接続部の幅が狭く、接続部で発生する電気信号が第一領域22で発生する電気信号よりも小さい場合には、検出領域の内側で第一領域同士が接続されていても良い。例えば第一領域はメッシュ状であってもよい。
また、図1では第二の厚さ40は0より大きいが、図9の検出器のように、第二の厚さは0でも良い。図9の検出器は、第二領域24の代わりにスペーサ12を有する。スペーサ12は、放射線のエネルギーを電気信号にほとんど変換することができない材料で構成されていれば良いが、少なくとも、異なる検出素子に配置された第一領域間のスペーサ12は絶縁体であることが好ましい。異なる検出素子に配置された第一領域間のスペーサ12が絶縁体であると、検出素子をまたいだ第一領域間のクロストークが軽減できる。第一領域がメッシュ状であったり、ラインアンドスペースが検出領域の外側で第一領域同士が接続されていたりするなど、スペーサ12がなくても第一領域22の間隙を維持できる場合、スペーサ12は不要である。但し、第一領域22の間隔を維持したり、第一領域22の倒れを軽減したりするためには、スペーサ12を第一領域間に配置することが好ましい。また、製造上、第一領域に配置する電極部26の材料がスペーサ上に付着することが考えられるが、異なる検出素子に配置された第一領域間のスペーサ12であっても、スペーサの一部が絶縁体であれば、上述のクロストーク軽減の効果を得ることができる。図9のように、スペーサ12が第一領域22間に配置されており、スペーサの厚みが第一領域の厚み38以上である場合であっても、スペーサ12は変換部ではないため、変換部は複数の凸部を有している。
また、第二の幅34(隣り合う二つの凸部の間隔)は第一の幅32(凸部の配置方向における凸部の幅)と同じかそれ以上であるとよい。言い換えると、第一領域(凸部)が周期的に配置されているとき、第一の幅32は、第一領域(凸部)のピッチの1/2以下で
あるとよい。第一領域22により放射線を電気信号に変換する際、得られる電気信号は第一領域22の全体での合計値として得られる。すなわち、第一領域22の右端に入射した放射線が、第一領域22の左端に入射する等、第一領域22の第一の幅32内で入射する放射線の強度に変化があっても、第一領域22の幅内での放射線強度は平均された値として電気信号を得ることとなる。よって、得られる電気信号には変化がない。第一の幅32がより狭いことは、強度パターン18の周期のより狭い範囲の放射線を電気信号へと変換できることを意味する。強度パターン18のより狭い範囲の電気信号が得られれば、強度パターン18の信号が平均化される割合が低下し、強度パターン18のパターン再現性が高まる(つまり、空間分解能が向上する)効果がある。
あるとよい。第一領域22により放射線を電気信号に変換する際、得られる電気信号は第一領域22の全体での合計値として得られる。すなわち、第一領域22の右端に入射した放射線が、第一領域22の左端に入射する等、第一領域22の第一の幅32内で入射する放射線の強度に変化があっても、第一領域22の幅内での放射線強度は平均された値として電気信号を得ることとなる。よって、得られる電気信号には変化がない。第一の幅32がより狭いことは、強度パターン18の周期のより狭い範囲の放射線を電気信号へと変換できることを意味する。強度パターン18のより狭い範囲の電気信号が得られれば、強度パターン18の信号が平均化される割合が低下し、強度パターン18のパターン再現性が高まる(つまり、空間分解能が向上する)効果がある。
また、複数の凸部(第一領域22)の配置方向および配置周期は、強度パターン18の空間的変調の方向および周期と同じであるとよい。これにより、検出素子20内のすべての凸部(第一領域22)に対し、強度パターン18の同じ位相における放射線が入射することになる。第一の幅32と第二の幅34とを合わせた長さ(つまり、凸部のピッチ)と強度パターン18の空間波長の一波長とは厳密に一致していなくてもよい。一つの検出器内の複数の凸部(第一領域22)において、検出する強度分布の位相のずれが、強度パターン18の周期の1/10以下であればよい。そのためには、凸部の配置ズレ(強度パターン18の空間波長と一致しているとき、配置ズレを0とする)を凸部のピッチの1/10以下とすればよい。
複数の凸部(第一領域22)の配置方向および配置周期を強度パターン18の方向および周期と同じにした場合、少なくとも、凸部の幅(第一の幅32)を凸部の間隔(第二の幅34)よりも狭くするとよい。すなわち、凸部の幅(第一の幅32)を強度パターン18の空間波長の1/2よりも狭くするのである。これにより、強度パターン18を解像することが可能となる。
本実施形態の検出素子20では、一つの検出素子内において、全ての第一領域22と第二領域24が物理的・電気的につながっている。これにより、一つの検出素子20内の全ての凸部が一つの信号読み取り部28に対し電気的に接続されることとなる。よって、本実施形態の検出器は、一つの検出素子内に配置された複数の第一の領域22に入射した放射線により生じた電気信号の合算値を、該検出素子が検出した放射線強度の電気信号の値として取得する。
一般に、放射線が変換部に入射し電子と正孔とを発生する際、放射線のエネルギーに比例したエネルギーの高速電子を発生する。また、電子と正孔との再結合や、高速電子の偏向により、二次放射線が発生する。高速電子や二次放射線は空間的に有限な広がりをもつ。例えば、15keVの放射線がNaCl内に入射した場合、6マイクロメートルの広がりを持つ。もし高速電子や二次放射線の広がりが凸部の間隔(第二の幅34)よりも大きいと、一方の凸部を飛び出した高速電子や二次放射線が隣接する別の凸部に入射し新たな電気信号を発生する。従来の検出器のように、一つの画素(検出素子)内に異なる位相を測定する領域を近接して設けた場合には、このような高速電子や二次放射線がノイズやコントラスト低下などの画像劣化の原因となっていた。これに対し、本実施形態では、一つの検出素子20内のすべての凸部(第一の領域22)で、強度パターン18の同じ位相部分の放射線強度を測定し、かつ、それらを合算した信号を一つの信号読み取り部28から取り出す構成としている。つまり、一つの検出素子(画素)20から強度パターン18の特定の位相範囲の信号のみを得る構成としている。したがって、凸部間でクロストークが生じたとしても、一つ一つの凸部で生じた電気信号が合算されるため、凸部間のクロストークが問題とならない。よって、従来の検出器で問題となっていた、高速電子や二次放射線に起因する画像劣化が軽減され、高品質な画像を得ることができる。なお、隣接する検出素子20の間で放射線の広がりの影響があるが、画像に与える影響は、小さい。
以上述べたように、図1の構造を有する検出器を用いることで、強度パターン18のある特定の位相における放射線の強度情報を高分解能かつ高品質に測定することが可能となる。
変換部において、凸部(第一領域22)のあいだの空間の圧力が大気圧よりも低いとよい。検出素子20内において、一方の第一領域22から飛び出した高速電子や二次放射線は、減衰することなく他方の第一領域22に吸収されるのが放射線検出効率の観点から望ましい。一般に、1気圧の空気中における電子平均自由行程は0.5マイクロメートル程度である。第二の幅34が電子の平均自由行程よりも長い場合、高速電子が一方の第一領域22から他方の第一領域22に到達する間に空気と衝突し、エネルギーを損失してしまう。第一領域22の間を1気圧よりも低い圧力にすることで、高速電子のエネルギー損失を低減し、放射線の検出効率を高める効果がある。圧力の程度としては、例えば第二の幅34が2.5マイクロメートルの場合、0.1気圧にすることで電子の平均自由行程は5マイクロメートル程度になるため、損失を大幅に低減することが可能となる。
変換部において、凸部の幅(第一の幅32)は強度パターン18の空間波長の1/n倍であり、凸部の間隔(第二の幅34)は強度パターン18の空間波長の(n−1)/n倍であるとよい。ここでnは3以上の整数である。この構成は、強度パターン18の周期をn分割して(つまり3分割以上して)測定することを意味し、強度パターン18のパターンを再現するのに適している。
例えば、図2(a)〜図2(c)に示すように、第一の幅32を強度パターン18の周期の1/3とすると、第一領域22は、強度パターン18のある特定の位相における検出領域56を検出する。図2(a)〜図2(c)に示すように、検出領域56と強度パターン18との位相関係がφ1、φ2、φ3の3つにおいて、それぞれ強度パターン18を測定する。ここで、φ2=φ1+2π/3、φ3=φ1+4π/3である。各位相で測定した信号を合わせることで、強度パターン18の全体の情報を得ることができる。
放射線検出システムはn個の検出器で構成することで、放射線を損失することなく、強度パターン18を検出することができる。このとき、n個の検出器を放射線の伝搬方向に沿って配置し、かつ、各検出器が強度パターン18の異なる位相部分の放射線強度を測定するように、各検出器の凸部の配置周期の位相を互いに異ならせるとよい。図3を用いて説明する。検出器44aに入射する放射線42の内、第二領域24に入射した放射線42は検出されずに検出器44aを通り抜ける。そこで、放射線42の伝搬方向の下流側(検出器44aの後ろ側)に別な検出器44bを設置し、かつ検出器の配列周期と放射線42の強度パターン18との位相差を検出器44aと検出器44bとの間で異なるように配置する。例えば、検出器44aの第二領域24(凸部のあいだの間隙)を透過した放射線42が検出器44bの第一領域22に入射するように配置する。これにより検出器44aで検出されなかった放射線42を検出器44bで検出することができる。さらに、例えば第一の幅を強度パターン18の周期の1/3とした場合(n=3)、3つの検出器44a、44b、44cを用いて、強度パターン18との位相がφ1、φ2=φ1+2π/3、φ3=φ1+4π/3となるように配置する。こうすることで、図3に示すように、強度パターン18の異なる3つの位相の信号を一度の測定で得られる検出システムとなる。この場合、第二の厚さ40はできるだけ薄いことが望ましい。第一領域22と第二領域24との信号比を大きくするとともに、放射線42の透過量を増やす効果がある。
また、図4に示すように、放射線検出システムは、検出器48を凸部の配置方向(図の横方向)に移動する移動機構46を有してもよい。これにより、検出器の個数を低減することができ、コスト低減の効果が期待できる。また、移動機構46において、一回の移動
量を強度パターン18の空間波長の1/n倍とするとよい。例えば、第一の幅32が強度パターン18の周期の1/3である検出器48を用いて、一回の移動量を強度パターン18の周期の1/3とする。これにより、図2(a)〜図2(c)に示すように、強度パターン18の異なる3つの位相の信号を3回の測定で得られる検出システムとなる。
量を強度パターン18の空間波長の1/n倍とするとよい。例えば、第一の幅32が強度パターン18の周期の1/3である検出器48を用いて、一回の移動量を強度パターン18の周期の1/3とする。これにより、図2(a)〜図2(c)に示すように、強度パターン18の異なる3つの位相の信号を3回の測定で得られる検出システムとなる。
凸部(第一領域22)の形状・構造・配置は任意である。例えば、図5に示すように、複数の板状(帯状)の凸部を平行に配置した構造(この構造を1次元変換部50と呼ぶ)であってもよい。この構造は、特に、強度パターン18が空間的に一方向にだけ周期を有する場合、つまり1次元周期的変調による強度パターンを測定する場合に好適である。放射線による高速電子や二次放射線の広がりは3次元的であるため、空隙が生じる周期方向を一つにすることで、放射線検出効率を高めることができる。
また、図6(b)に示すように、放射線42の入射方向が、凸部の配置方向に対し垂直で、かつ、凸部の高さ方向(厚さ方向;検出素子20の法線方向)に対して斜めになるように、検出器を配置するとよい。斜めに入射することで、放射線42が凸部を通過する距離54が、垂直に入射する場合の距離52(図6(a)参照)よりも長くなる。放射線42のエネルギーが大きい場合、放射線と原子の相互作用断面積が減少するため、相互作用する距離が長いほど変換効率を高める効果がある。
また放射線検出器において、各検出素子20のなかで複数の凸部(第一の領域22)が少なくとも二つの方向に関し周期的に配置されているとよい。例えば、強度パターン18が直交する二方向に周期構造、すなわち二次元周期構造を有する場合がある。その場合、図5に示すような板状(帯状)の1次元変換部50では、一方向の周期の情報しか得ることができない。そのため、図3のような複数の検出器で構成される検出システムを用いても、二つの周期方向にそれぞれ測定する必要がある。そこで、図7に示すような柱状の2次元変換部70を有する検出器を用いることで、二次元周期構造を有する強度パターン18をも効率的に検出することが可能となる。なお、二つの方向の周期は互いに異なっていてもよい。
変換部は、格子を製造する方法を利用して製造することができる。例えば、入射した放射線のエネルギーを直接電気信号に変換する材料の基板に対し、フォトリソグラフィによるエッチングマスクのパターニングを行った後にエッチングを行うことによって、図1に示したような変換部を製造することができる。フォトリソグラフィやエッチングの加工がしやすく、且つ、入射した放射線のエネルギーを直接電気信号に変換する材料としては、例えばシリコンが挙げられる。X線トールボット干渉計においては、シリコンからなる位相格子が回折格子として用いられることが多いが、シリコンからなる変換部はシリコンからなる位相格子と同様に製造することができる。また、シリコンウェハーを基板として用いると、半導体の加工プロセス技術を利用して変換部を製造することができる。
また、図9に示したような、第一領域の間隙にスペーサ12が配置されている場合、入射した放射線のエネルギーを直接電気信号に変換する材料を薄い板状に加工し、スペーサの材料とを交互に積層して製造することもできる。この場合、積層方向が第一領域の周期方向となる。電極部26と信号読み取り部28は、一般的な直接変換型の放射線検出器における電極部と信号読み取り部と同様であり、一般的な直接変換型の放射線検出器における電極部と信号読み取り部の製造方法を用いることができる。
(実施例)
本発明の実施形態に係る放射線検出システムを用いた放射線撮像装置の一具体例について説明する。
本発明の実施形態に係る放射線検出システムを用いた放射線撮像装置の一具体例について説明する。
図8に示すように、本実施例では、トールボット干渉計を用いた放射線撮像装置における放射線検出手段として、上述した放射線検出システムを適用するものである。すなわち、本実施例の放射線撮像装置は、概略、トールボット干渉計と、検出システム14と、演算装置(画像処理装置)16とを有して構成される。
トールボット干渉計とは、被検体6を透過した放射線を回折格子8で回折することで形成される干渉パターン10(自己像とも呼ばれる)を観察する方式の干渉計である。被検体6を透過した放射線の波面歪みに応じて干渉パターン10が変形するため、放射線検出システム14で観察される干渉パターン10の歪みを画像解析することにより被検体6の位相情報を得ることができる。本実施例では、さらに放射線源2と被検体6のあいだに線源格子4を配置することで、放射線源2を多数の線状あるいは点状の微小線源に変換する方法が採られる。この方法により、干渉性のない放射線源2を光源として用いることができる。このような放射線源2と線源格子4からなる光源を用いる構成は、トールボット・ラウ干渉計と呼ばれる。
放射線源2はエネルギー17.5keVの特性X線が発生可能なモリブデンターゲットを備える。トールボット干渉計に用いるX線は、特性X線のようにスペクトルが先鋭な単色に近いものでもよいし、制動X線のようなスペクトルの広い白色でもよい。線源格子4は、帯状の構造をしており、ピッチ24μm、開口の幅10μmの格子を用いる。回折格子8は、位相変調差がπ/2である二つの領域を交互に配置した位相格子を用いる。回折格子8の周期は6.14μmとする。放射線源2からX線の放射方向(伝搬方向)に向かって、線源格子4、回折格子8、検出システム14の順に設置する。線源格子4と回折格子8の距離は1000mm、回折格子8と検出システム14との距離は357mmとする。この配置により、線源格子4の各開口から透過するX線によってできる干渉パターン10は強めあう。回折格子8からの距離がトールボット距離と一致する面において、干渉パターン10の強度が最も高くなるので、回折格子8と検出システム14の間の距離をトールボット距離に一致させるとよい。ただし、トールボット距離の近傍であれば干渉パターン10は高いコントラストを有するので、検出システム14の位置はトールボット距離から若干前後しても構わない。
検出システム14は、図3に示すように、複数(3つ)の検出器44a、44b、44cを放射線の伝搬方向に沿って並べた(重ねた)構造を有する。各々の検出器は、図5に示すように、一次元構造の変換部(つまり、複数の板状の凸部が一方向(図5の横方向)に配置された構造)を有する検出器である。3つの検出器44a、44b、44cの構造は同一であり、第一の幅32を2.75マイクロメートル、第二の幅34を16.48マイクロメートルとする。また、検出器44a〜44cの面垂直方向の厚さは500マイクロメートルとする。変換部には、例えば、シリコンなどの半導体検出器を用いるとよい。電極部26は第一領域22の上部に設ける。信号読み取り部28は、相補性金属酸化物半導体や薄膜トランジスタを用いてよい。
図6(b)に示すよう、放射線の伝搬方向に対して検出器44a〜44cを傾ける。傾け角度(放射線の伝搬方向と変換部の基礎面のなす角)を6度とすることで、放射線の伝搬距離を垂直入射に対して10倍にすることができる。各々の検出器44a〜44cの基準位置(例えば中央の画素)は同じ放射線の光軸上に位置し、かつ各々の検出器44a〜44cの周期方向は一致するよう構成する。
演算装置16は、検出システム14の出力(放射線の強度パターン)として得られる画像データに対し、画像処理を施して観察や診断用の画像を生成したり、検査や診断等に有用な特徴量(画像情報)を抽出したりする機能を提供するシステムである。また、演算装置16は画像処理結果を表示装置に出力する機能も提供する。演算装置16は、例えば、
汎用的なコンピュータシステムに上記機能を実現するためのプログラムを実装することで構成することができる。
汎用的なコンピュータシステムに上記機能を実現するためのプログラムを実装することで構成することができる。
放射線撮像装置の動作は次のとおりである。まず、被検体6のない状態で干渉パターン10を撮像する。検出器44a、検出器44b、検出器44cの信号を組み合わせて、被検体6がない状態の強度パターン18を得る。次に、被検体6を配置し、同様に強度パターン18を得る。演算装置16を用いて、被検体6の有無で変化する強度パターン18の振幅、位相、パターンのビジビリティの変化から、被検体6の吸収量、位相シフト、散乱量を検出画素毎に算出し、それぞれをマップ化し、画像として得る。
以上述べた構成の放射線検出システムによれば、周期的なパターンをもつ放射線像を高分解能かつ高品質に取得することができる。したがって、画素サイズよりも小さい周期をもつ強度パターンを、分析用格子などを用いずに、直接解像することができるので、高性能な放射線撮像装置を低コストで実現できる。
なお、本発明は上述した構成には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。例えば、上記実施例ではトールボット・ラウ干渉計を例示したが、本発明の放射線検出システムは他の装置と組み合わせることも可能である。すなわち、本発明の放射線検出システムは、周期的なパターンをもつ放射線像であれば測定可能であり、トールボット干渉法による干渉パターンに限らず、他の方法による干渉パターンも測定できる。また、干渉パターン以外にも、他の光学手段やデジタル信号処理によって生成した周期的なパターンの測定に本発明を適用することもできる。また、本発明及び本明細書において、放射線撮像装置とは、放射線で形成される像(上記実施例では干渉パターン)の強度分布を検出するもののことを指す。つまり、放射線撮像装置は被検体に関する像を取得する装置に限定されない。
18:強度パターン、20:検出素子、22:放射線検出部の第一領域(凸部)、24:放射線検出部の第二領域、26:電極部、28:信号読み取り部
Claims (20)
- 放射線検出システムであって、
複数の検出素子が配列された検出器を一つ以上有し、
各検出素子は、入射した放射線のエネルギーを直接電気信号に変換する変換部、および、前記変換部から前記電気信号を読み取り出力する信号読み取り部を有し、前記変換部は、互いに間隔をあけて配置されている複数の凸部を有しており、
前記複数の凸部が一つの前記信号読み取り部に対し電気的に接続されている
ことを特徴とする放射線検出システム。 - 前記信号読み取り部は、前記複数の凸部が変換した前記電気信号の合計値を読み取ることを特徴とする請求項1に記載の放射線検出システム。
- 放射線の周期的な強度パターンを検出し、
前記複数の凸部は、各々が前記強度パターンの同じ位相部分の放射線強度を測定するように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線検出システム。 - 放射線の周期的な強度パターンを検出し、
前記複数の凸部は、前記強度パターンの空間的変調の方向および周期と同じ方向および周期で配置されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。 - 前記凸部の配置方向における凸部の幅は、前記凸部の配置方向に隣り合う二つの凸部の間隔よりも狭いことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。
- 前記凸部の配置方向における凸部の幅は、前記強度パターンの空間的変調の1周期に対応する距離の1/2よりも狭い
ことを特徴とする請求項3に記載の放射線検出システム。 - 放射線の周期的な強度パターンを検出し、
前記凸部の配置方向における凸部の幅は、前記強度パターンの空間的変調の1周期に対応する距離の1/nであり(nは3以上の整数)、前記凸部の配置方向に隣り合う二つの凸部のあいだの間隔は、前記強度パターンの空間的変調の1周期に対応する距離の(n−1)/nである
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。 - 隣り合う二つの凸部のあいだの空間の圧力は、大気圧よりも低いことを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。
- 回折格子を透過した放射線の干渉により形成された干渉パターンを検出することを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。
- 前記変換部は、第一の厚さを有する複数の第一領域と、前記第一の厚さよりも薄い第二の厚さを有する複数の第二領域とが、交互に配置された構造の部材であり、前記第一領域の部分が前記凸部に対応する
ことを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。 - 前記複数の凸部の間隙に絶縁体が配置されていることを特徴とする請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。
- 放射線の伝搬方向に沿って複数の検出器が配置されており、
前記複数の検出器は、前記凸部の配置周期が互いに異なる位相をもつように、配置されている
ことを特徴とする請求項1〜11のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。 - 前記複数の検出器は、第一の検出器と、前記第一の検出器よりも放射線の伝搬方向の下流側に配置される第二の検出器を含み、
前記第二の検出器は、前記第一の検出器の複数の凸部の間隙を透過した放射線を検出する
ことを特徴とする請求項12に記載の放射線検出システム。 - 放射線の周期的な強度パターンを検出する放射線検出システムであって、
前記凸部の配置方向における凸部の幅は、前記強度パターンの空間的変調の1周期に対応する距離の1/nであり(nは3以上の整数)、
n個の検出器が、前記凸部の配置周期の位相を2π/3ずつ異ならせて配置されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の放射線検出システム。 - 前記検出器を前記凸部の配置方向に沿って移動する移動機構をさらに有する
ことを特徴とする請求項1〜14のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。 - 放射線の周期的な強度パターンを検出し、
前記凸部の配置方向における凸部の幅は、前記強度パターンの空間的変調の1周期に対応する距離の1/nであり(nは3以上の整数)、
前記移動機構の一回の移動量は、前記強度パターンの空間的変調の1周期に対応する距離の1/nである
ことを特徴とする請求項15に記載の放射線検出システム。 - 前記複数の凸部は、複数の板状の凸部が平行に配置された構造であり、
前記板状の凸部の配置方向に対し垂直で、かつ、前記板状の凸部の高さ方向に対し斜めの方向から、前記板状の凸部に放射線が入射する
ことを特徴とする請求項1〜16のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。 - 前記複数の凸部が、少なくとも二つの方向に関し周期的に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜16のうちいずれか1項に記載の放射線検出システム。 - X線を回折することで干渉パターンを形成する回折格子と、
請求項1〜18のうちいずれか1項に記載の放射線検出システムと、を有し、
前記強度パターンが、前記干渉パターンであることを特徴とする放射線撮像装置。 - 前記放射線検出システムにより取得された放射線の強度パターンの画像を処理する演算装置を有することを特徴とする請求項19に記載の放射線撮像装置。
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