以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1のイオン発生装置1の構成を示す断面図である。図2は、図1に示すII−II線に沿うイオン発生装置1の断面図である。図3は、図1に示すIII−III線に沿うイオン発生装置1の断面図である。なお図1には、図2,3中に示すI−I線に沿うイオン発生装置1の断面が図示されている。図1〜3を参照して、イオン発生装置1は、コロナ放電によりイオンを発生させるための装置であり、放電電極10、誘導電極20、基板30およびケース40を主に備えている。
放電電極10は、針状の形状に形成されており、尖鋭な形状の先端部11と、先端部11と反対側の端部側の基部12とを有している。放電電極10は、金属などの導体材料により形成されている。放電電極10は、その全体に高電圧が印加されて、誘導電極20との間に電位差が生じることにより、先端部11から放電してイオンを発生する。放電電極10は、先端部11で放電可能であればその形状は不問である。たとえば放電電極10は、先端部11が尖鋭ではない棒状の形状を有していてもよい。
基準電位をなす誘導電極20は、金属などの導体材料により一体に形成されている。誘導電極20は、基板30に平行に配置された板状の穴空き板金23と、この穴空き板金23を支持する一対の脚部24とを有している。脚部24は、穴空き板金23に対して略直角に屈曲している。誘導電極20の穴空き板金23には、厚み方向に貫通する貫通孔26が形成されている。貫通孔26は、図3に示すように、円形に形成されている。
放電電極10は、この貫通孔26の中心部分を貫通して設けられている。貫通孔26の縁部は、誘導電極20の近接部21を構成している。近接部21は、放電電極10に対向している。近接部21は、誘導電極20のうち、放電電極10に最も近接する部分を構成している。誘導電極20の脚部24は、その下方部分に基部22を有している。基部22は、誘導電極20のうち、放電電極10から最も離れる部分を構成している。
基板30は、平板状の形状を有しており、放電側の表面をなす主表面31と、主表面31に対し反対側の裏面32とを有している。基板30には、基板30を厚み方向に貫通して主表面31から裏面32に至る貫通孔が形成されている。基板30に形成されている貫通孔は、その内壁面に導体が形成されたスルーホールビアであってもよい。
基板30に形成された貫通孔に、放電電極10が挿通されている。放電電極10の基部12が、たとえば半田付けにより基板30に固定されることで、放電電極10は基板30により支持されている。基板30に形成された他の貫通孔に、誘導電極20の脚部24が挿通されている。誘導電極20の基部22が、たとえば半田付けにより基板30に固定されることで、誘導電極20は基板30により支持されている。
基板30の主表面31は、樹脂材料であるモールド材51によって覆われている。基板30の裏面32は、樹脂材料であるモールド材52によって覆われている。基板30は、その両面が絶縁モールドされている。放電電極10の上方部分は、モールド材51の外部に配置されており、放電電極10はモールド材51の表面51sから突出している。誘導電極20の脚部24の上方部分および穴空き板金23は、モールド材51の外部に配置されており、誘導電極20の近接部21はモールド材51の表面51sから突出している。
放電電極10の下方部分は、モールド材51,52により封止されている。放電電極10は、基板30を貫通した状態で基板30に支持されている。放電電極10の、先端部11と反対側の他方端は、基板30の裏面32から突出している。基板30の裏面32には、配線パターンが形成されている。放電電極10の他方端は、半田により、基板30の裏面32に形成された配線パターンまたはリード線に、電気的に接続されている。
誘導電極20の脚部24の下方部分は、モールド材51,52により封止されている。誘導電極20の脚部24は、基板30を貫通した状態で基板30に支持されている。誘導電極20の脚部24の、穴空き板金23に接合される一方端と反対側の他方端は、基板30の裏面32から突出している。誘導電極20の他方端は、半田により、基板30の裏面32に形成された配線パターンまたはリード線に、電気的に接続されている。
ケース40は、イオン発生装置1の外観をなす筺体として設けられている。ケース40は、内部に中空の空間を有する、略矩形箱状の形状を有している。ケース40は、樹脂材料により一体に成形されており、板状の天井板部41、板状の四方の側壁部42、および板状の床板部43を有している。天井板部41と床板部43とは、平行に配置されている。側壁部42は、相対的に長い長辺部と、相対的に短い短辺部とを有している。天井板部41には、天井板部41を厚み方向に貫通する貫通孔46が形成されている。貫通孔46は、図2に示すように、円形に形成されている。
放電電極10は、この貫通孔46の中心部分を貫通して設けられている。これにより放電電極10の先端部11は、ケース40の外部に突出しており、先端部11で発生したイオンを速やかに搬送できる構成とされている。貫通孔46の縁部47は、放電電極10に対向している。貫通孔46は、放電電極10に対向する位置に開口されている。なお、放電電極10は、貫通孔46を貫通せずに、先端部11がケース40の内部空間内に配置されていてもよく、この場合は先端部11をケース40で保護することが可能になる。
側壁部42の一対の短辺部の内壁には、短辺部の延びる方向に沿って配置された細長板状の支持部44が取り付けられている。支持部44は、側壁部42に対し、ケース40の中空の内部空間に突出している。支持部44は、天井板部41および床板部43の延びる方向と平行に延在している。支持部44には、基板30が固定されている。基板30は、支持部44によって支持されて、ケース40の内部空間に収容されている。基板30に支持された放電電極10の一部および誘導電極20は、ケース40の内部空間に収容されている。
図1に示す寸法aは、放電電極10の外周面とケース40の縁部47との間隔を示している。寸法bは、放電電極10の外周面と誘導電極20の近接部21との間隔を示している。寸法cは、誘導電極20の穴空き板金23とケース40の天井板部41との間隔を示している。寸法dは、誘導電極20の穴空き板金23とモールド材51の表面51sとの間隔を示している。寸法eは、モールド材51の厚みを示している。寸法fは、放電電極10の外周面と誘導電極20の基部22との間隔を示している。
寸法a〜fの大小関係について説明する。基板30の主表面31の延びる方向において、図1に示すように、寸法fは、寸法bよりも大きくなっている。寸法aは、寸法bよりも小さくなっている。寸法aが3mm以上であるように、ケース40は形成されている。一方、基板30の厚み方向において、寸法eは、寸法dよりも小さくなっている。寸法cと寸法dとは、略同一である。
以上説明した、実施の形態1のイオン発生装置1によると、図1に示すように、放電電極10および誘導電極20は、基板30により支持されている。基板30に対して放電電極10の先端部11が突出している側の主表面31は、モールド材51によって覆われている。放電電極10および誘導電極20を支持するために基板30に形成された貫通孔は、モールド材51により、主表面31側から封止されている。基板30と放電電極10との間の隙間を塞ぐことで、当該隙間への水分の浸入を防止できるので、高湿度環境下においても異常放電およびリークの発生を抑制できる。したがって、イオン発生装置1は、高湿度下における出力低下を抑制でき、高濃度のイオンを供給することができる。
図1に示すケース40の内部空間の全体を樹脂モールドすれば、ケース40内部への不純物および水分の侵入を完全に防止できるが、その場合、ケース40に形成された貫通孔46の縁部47と放電電極10の外周面との距離を示す寸法aが、ケース40と放電電極10との間の空間距離、かつ沿面距離となる。ここで、空間距離とは、2つの部材の空間における最小の距離を示す。また沿面距離とは、2つの部材の間の、絶縁物の表面に沿う最小の距離を示す。つまり、図1に示すケース40の貫通孔46の位置にまでモールド材を充填したならば、寸法aは、当該モールド材の表面に沿うケース40と放電電極10との間の距離を示すことになる。
しかしながら、放電電極10とケース40との間の沿面放電、すなわち、絶縁物の表面に沿って放電路が形成される放電を抑制するためには、放電電極10とケース40との間の沿面距離を大きくする必要がある。そのため、図1に示す実施の形態1の構成では、放電電極10は、モールド材51の表面51sから突出している。誘導電極20は、モールド材51の表面51sから突出し放電電極10に対向する近接部21を有している。誘導電極20は、モールド材51によってその全体が覆われているのではなく、近接部21を有している穴空き板金23がモールド材51によって樹脂封止されていない構成を備えている。モールド材51は、誘導電極20の一部のみを封止する程度の厚みを有している。
これにより、放電電極10とケース40との間の沿面距離は、縁部47から支持部44に至るケース40の表面に沿う距離と、支持部44の位置から放電電極10に至るモールド材51の表面51sに沿う距離との和となる。放電電極10とケース40との間の沿面距離が、放電電極10とケース40との間の空間距離よりも大きくなることにより、放電電極10とケース40との間の不要な沿面放電の発生を抑制することができる。
また、誘導電極20の基部22と放電電極10との間隔を示す寸法fが、誘導電極20の近接部21と放電電極10との間隔を示す寸法bよりも、大きくなっている。寸法bは、放電電極10と誘導電極20との間の空間距離を示している。寸法fは、放電電極10と誘導電極20との間の沿面距離を示している。つまり実施の形態1のイオン発生装置1では、放電電極10と誘導電極20との間の沿面距離が、放電電極10と誘導電極20との間の空間距離よりも、大きくなっている。
放電電極10と誘導電極20との間の空間距離を小さくすることで、放電電極10の先端部11と誘導電極20との間におけるコロナ放電の発生が容易になる。そのため、コロナ放電を発生するために放電電極10に印加すべき電圧を低くすることができる。より小さい電圧でコロナ放電を発生してイオンを発生することができるので、イオン発生装置1のイオン発生効率を向上することができる。
寸法bが小さすぎると、印加電圧の設定が困難になり、コロナ放電によって安定してイオンを放出することが困難になる。逆に寸法bを大きくし過ぎると、放電電極10と誘導電極20との距離が大きくなるため、放電電極10に印加する電圧を高くする必要があり、高電圧発生回路のサイズが大きくなる。これらを考慮して、イオン発生装置1の外形をコンパクトにするとともにイオン発生効率を確保できるように、寸法bを最適に設計するのが望ましい。
放電電極10と誘導電極20との間の沿面距離を大きくし、一定以上の沿面距離を放電電極10と誘導電極20との間に確保することで、放電電極10と誘導電極20との間に存在するモールド材51の表面51sに沿う不要な沿面放電の発生が抑制される。そのため、不浄空気中に含まれる埃などの不純物による放電電極10周辺の汚れ、または高湿度環境下における結露による水垢などに対する、イオン発生装置1の耐性を向上することができる。空気中の不純物や水分を原因とする微小電流リークの発生を低減できることにより、イオン発生装置1のイオン発生効率を、より向上することができる。
基板30を封止するためのモールド材51の厚みが大きくなると、イオン発生装置1の外形が大きくなるので、モールド材51の厚みは小さい方が望ましい。そのため、本実施の形態では、図1に示すように、基板30の主表面31を覆うモールド材51の厚みを示す寸法eは、モールド材51の表面51sと誘導電極20の近接部21との間隔を示す寸法dよりも、小さくなっている。モールド材51の厚みの最大値を規定することにより、イオン発生装置1の外形を小型化することができる。
一方、モールド材51の表面51sと誘導電極20の近接部21との間隔が大き過ぎても、イオン発生装置1の外形が大きくなる。そのため、モールド材51の表面51sと誘導電極20の近接部21との間隔を、モールド材51の厚みの4倍以下に規定するのが望ましい。
誘導電極20とケース40の天井板部41との間において異常放電が発生するのを抑制するためには、誘導電極20の穴空き板金23とケース40の天井板部41との間隔を示す寸法cを、一定以上に確保する必要がある。他方、寸法cが大き過ぎると、イオン発生装置1の外形が大きくなる。そのため、誘導電極20の穴空き板金23とケース40の天井板部41との間隔は、モールド材51の表面51sと誘導電極20の近接部21との間隔と、略同じ値にするのが望ましい。
また、図1に示す放電電極10の外周面とケース40の縁部47との最短距離を示す寸法aは、3mm以上である。誘導電極20の近接部21と放電電極10との最短距離を示す寸法bを、放電電極10の外周面とケース40の縁部47との最短距離を示す寸法aよりも大きくすることで、寸法bもまた3mm以上に規定される。ケース40の貫通孔46および誘導電極20の貫通孔26が、図2,3に示すようにいずれも円形状である場合、当該円形状の半径が3mm以上に規定される。
このように規定することで、放電電極10とケース40との間隔、および放電電極10と誘導電極20との間隔が、最低3mm確保される。そのため、ブラシや綿棒などの清掃部材を、放電電極10とケース40および誘導電極20との隙間に、ケース40の外部から挿し入れることが可能になる。これにより、放電電極10の外周面に汚れが付着したりモールド材51の表面51sに埃や水垢が堆積したりする場合に、放電電極10の外周面またはモールド材51の表面52sを清掃部材を用いてケース40の外部から清掃することができる。したがって、不浄空気中や高湿度などの過酷環境でイオン発生装置1を使用した場合に、汚れが原因でイオン発生効率が低下しても、清掃することで容易にイオン発生効率を回復することができる。
誘導電極20の近接部21と放電電極10との間隔を示す寸法bを、放電電極10の外周面とケース40の縁部47との間隔を示す寸法aよりも大きくすることで、誘導電極20がケース40の外部から直接見えない構造となり、誘導電極20の外部への露出を防止することができる。
なお、上述した実施の形態では、図1に示すイオン発生装置1が放電電極10に対して対称に設けられており、寸法a〜fがそれぞれ一定であったが、この例に限られるものではない。実際の製品においては、製造上の公差が許容されるので、寸法a〜fは必ずしも一定とはならない。または、設計上の理由により、誘導電極20またはケース40の形状を変更するなど、寸法a〜fを意図的に変化させることも考えられる。
このような場合、誘導電極20と放電電極10との間隔を示す寸法fの最小値を、誘導電極20の近接部21と放電電極10との間隔を示す寸法bの最大値よりも大きくすれば、放電電極10と誘導電極20との間の沿面距離を空間距離よりも確実に大きくでき、沿面放電を抑制できる上述した効果を同様に得ることができる。また、モールド材51の厚みを示す寸法eの最大値を、モールド材51の表面51sと誘導電極20との間隔を示す寸法dの最小値よりも小さくすれば、モールド材51の厚みの増大を回避でき、イオン発生装置1を小型化できる上述した効果を同様に得ることができる。また、放電電極10とケース40の貫通孔46の縁部47との間隔を示す寸法aの最小値、および誘導電極20の近接部21と放電電極10との間隔を示す寸法bの最小値を、それぞれ3mm以上にすれば、イオン発生装置1を容易に清掃できる上述した効果を同様に得ることができる。
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2のイオン発生装置101の構成を示す平面図である。図5は、図4に示すV−V線に沿うイオン発生装置101の断面図である。図6は、実施の形態2のイオン発生装置101に含まれる基板130の平面図である。図4〜6を参照して、イオン発生装置101は、コロナ放電によりイオンを発生させるための装置であり、第1の電極111、第2の電極112、基板130およびケース140を主に備えている。
第1の電極111および第2の電極112は、金属などの導体材料により形成されている。第1の電極111および第2の電極112は、それぞれ、針形状に形成されており、直線状に延在するとともに、先端が尖鋭化された針先を有している。第1の電極111および第2の電極112は、それぞれの電極の延びる方向が互いに平行となるように、同一平面内に配置されている。第1の電極111および第2の電極112は、それぞれの延びる方向に対して直交する方向に間隔をあけて、並んで配置されている。
第1の電極111および第2の電極112は、高電圧が印加されて誘導電極との間に電位差が生じることにより、それぞれが針先から放電してイオンを発生する、放電電極である。第1の電極111および第2の電極112は、互いに異なる極性のイオンを発生させる。たとえば、第1の電極111は正イオンを発生し、第2の電極112は負イオンを発生する。異なる極性のイオンを発生する第1の電極111および第2の電極112を離して配置することにより、発生した正イオンと負イオンとの中和、または異極性電極へのイオンの回収などによるイオン濃度の減少を抑制できるので、より高濃度のイオンを発生できるようになっている。
第1の電極111および第2の電極112は、先端で放電可能であればその形状は不問である。たとえば第1の電極111および第2の電極112は、先端が尖鋭化されていない棒状の形状を有していてもよい。また、第2の電極112は、第1の電極111と異極性になる放電電極に限られず、基準電位をなす誘導電極として機能する電極であってもよい。
基板130は、平板状の形状を有しており、放電側の表面をなす主表面134と、主表面134に対し反対側の裏面135とを有している。基板130には、基板130を厚み方向に貫通して主表面134から裏面135に至る貫通孔が形成されている。
基板130に形成された貫通孔に、第1の電極111が挿通され、これにより第1の電極111が基板130により支持されている。基板130に形成された他の貫通孔に、第2の電極112が挿通され、これにより第2の電極112が基板130により支持されている。第1の電極111および第2の電極112は、基板130に装着されている。基板130は、第1の電極111および第2の電極112を搭載している。第1の電極111および第2の電極112は、それぞれの先端が基板130の主表面134から突出するように、基板130に固定されている。
基板130の主表面134は、樹脂材料であるモールド材151によって覆われている。基板130の裏面135は、樹脂材料であるモールド材152によって覆われている。基板130は、その両面が絶縁モールドされている。第1の電極111および第2の電極112の先端は、モールド材151の表面151sから突出している。第1の電極111および第2の電極112の上方部分は、モールド材151の外部に配置されている。第1の電極111および第2の電極112の下方部分は、モールド材151,152により封止されている。
第1の電極111および第2の電極112は、基板130を貫通した状態で基板130に支持されている。第1の電極111および第2の電極112の、先端と反対側の他方端は、基板130の裏面135から突出している。基板130の裏面135には、配線パターンが形成されている。第1の電極111および第2の電極112の他方端は、半田により、基板130の裏面135に形成された配線パターンまたはリード線に、電気的に接続されている。
ケース140は、イオン発生装置101の外観をなす筺体として設けられている。ケース140は、樹脂材料により一体に成形されている。ケース140は、図4に示す平面視において、略矩形状の外形を有している。
ケース140には、その一部を側面から切り欠いた形状の切り欠き141,142,143が形成されている。切り欠き141,142,143は、ケース140をその側面から窪む形状に成形することにより、形成されている。切り欠き141,142,143の内部には、中空の空間が形成されている。
ケース140には、平面視形状の矩形の長辺のうち第一辺から第二辺へ向かって延びる方向に、切り欠き141,143が形成されている。ケース140には、平面視形状の矩形の長辺のうち第二辺から第一辺へ向かって延びる方向に、切り欠き142が形成されている。切り欠き141〜143は、平面視において、ケース140の平面視形状をなす矩形の長辺に対し直交する方向、すなわち矩形の短辺に対し平行な方向に延びている。
図6に示すように、基板130には、ケース140の切り欠き141,142,143に対応する切り欠き131,132,133が形成されている。これにより、基板130は、ケース140の内部に収容可能とされている。基板130は、ケース140の内部空間に固定されている。
図4に示す平面視において、第1の電極111および第2の電極112は、ケース140の短辺方向における中央部に配置されている。切り欠き141〜143は、ケース140の短辺の長さの半分よりも大きく短辺の長さよりも小さい寸法分、ケース140の側面から窪んで形成されている。
ケース140を平面視した場合、切り欠き141〜143は、第1の電極111と第2の電極112との間に形成されている。図4に示す第1の電極111と第2の電極112とを通る直線を仮想的に考えた場合、当該直線は、切り欠き141,142,143を順に跨いで延びることになる。そのため、図5に示す断面において、第1の電極111と第2の電極112との間には、切り欠き141,142,143によってそれぞれ形成される3つの中空空間が存在する。
第1の電極111および第2の電極112は、図4中、紙面垂直方向に延びており、互いに平行に配置されている。第1の電極111および第2の電極112の延びる方向を含む平面を考えると、当該平面は、図4中において第1の電極111および第2の電極112を通り図中の左右方向に延びる直線として示される。当該平面に沿うイオン発生装置1の断面が、図5に示す断面である。
ケース140に形成された切り欠き141,142,143は、第1の電極111および第2の電極112の延びる方向を含む平面に対する、一方側と他方側とに交互に形成されている。図4中において左右方向に延びる当該平面よりも上側を一方側、下側を他方側と考える場合、切り欠き141,143は、一方側に存在するケース140の側面が窪んで形成されている。切り欠き141,143は、主として一方側に形成されており、窪みの最深部付近の一部が他方側に突出している。切り欠き142は、他方側に存在するケース140の側面が窪んで形成されている。切り欠き142は、主として他方側に形成されており、窪みの最深部付近の一部が一方側に突出している。
2つの導体である第1の電極111および第2の電極112の先端は、絶縁物であるモールド材151の表面151sから突出している。第1の電極111と第2の電極112とを結ぶ、モールド材151の表面151sに沿う最小の距離は、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離をなしている。ここで沿面距離とは、2つの部材の間の、絶縁物の表面に沿う最小の距離を示す。また空間距離とは、2つの部材の空間における最小の距離を示す。図4〜6に示す第1の電極111と第2の電極112とを結ぶ線分の長さが、第1の電極111と第2の電極112との間の空間距離に相当する。第2の電極112は、第1の電極111に対して、絶縁可能な空間距離を隔てて配置されている。
切り欠き141,142,143は、第1の電極111と第2の電極112との間の空間距離に相当する線分と交差するように、形成されている。第1の電極111と第2の電極112との間の空間距離をなす線分は、ケース140に形成された切り欠き141,142,143を跨いで延びている。切り欠き141,142,143の内側は中空の空間であるので、切り欠き141,142,143によって第1の電極111と第2の電極112との間に3層の空気層が形成されている。
本実施の形態における第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離は、モールド材51の表面51sに沿う、切り欠き141〜143を迂回する距離として求められる。切り欠き141〜143は、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離を増加している。そのため、実施の形態2のイオン発生装置101では、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離が、第1の電極111と第2の電極112との間の空間距離よりも、大きくなっている。
以上説明した、実施の形態2のイオン発生装置101によると、図4,5に示すように、第1の電極111と第2の電極112との間に、ケース140の一部を切り欠いた形状の切り欠き141,142,143が形成されている。これにより、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離は、モールド材151の表面151sに沿って切り欠きを141,142,143を迂回する長さとなる。つまり、切り欠き141,142,143によって、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離が増加していることになる。
第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離を大きくし、一定以上の沿面距離を第1の電極111と第2の電極112との間に確保することで、第1の電極111と第2の電極112との間に存在するモールド材151の表面151sに沿う不要な沿面放電の発生が抑制される。そのため、不浄空気中に含まれる埃などの不純物による第1の電極111および第2の電極112の周辺の汚れ、または高湿度環境下における結露による水垢などに対する、イオン発生装置101の耐性を向上することができる。空気中の不純物や水分を原因とする微小電流リークの発生を低減できることにより、イオン発生装置101のイオン発生効率を向上することができる。
また、図4に示すように、ケース140に形成された複数の切り欠き141,142,143が、第1の電極111および第2の電極112の延びる方向を含む平面に対する一方側と他方側とに、交互に形成されている。これにより、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離は、モールド材151の表面151sに沿って蛇行して切り欠きを141,142,143を迂回する長さとなる。したがって、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離を、より増加することができるので、モールド材151の表面151sに沿う沿面放電をより効果的に抑制することができる。
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3のイオン発生装置101の構成を示す断面図である。図8は、図7に示すVIII−VIII線に沿うイオン発生装置101の断面図である。図7,8を参照して、イオン発生装置101は、コロナ放電によりイオンを発生させるための装置であり、第1の電極111、第2の電極112、誘導電極120、基板130およびケース140を主に備えている。
第1の電極111および第2の電極112は、金属などの導体材料により形成されている。第1の電極111および第2の電極112は、それぞれ、針形状に形成されており、直線状に延在するとともに、先端が尖鋭化された針先を有している。第1の電極111と第2の電極112とは、それぞれの延びる方向に間隔を空けて、互いに対向して配置されている。第1の電極111の針先と、第2の電極112の針先とは、互いに向かい合っている。第1の電極111の中心軸と第2の電極112の中心軸とは、同一直線上に位置している。第1の電極111と第2の電極112とは、同一平面内に配置されている。
第1の電極111および第2の電極112は、高電圧が印加されて誘導電極との間に電位差が生じることにより、それぞれが針先から放電してイオンを発生する、放電電極である。第1の電極111および第2の電極112は、互いに異なる極性のイオンを発生させる。たとえば、第1の電極111は正イオンを発生し、第2の電極112は負イオンを発生する。異なる極性のイオンを発生する第1の電極111および第2の電極112を離して配置することにより、発生した正イオンと負イオンとの中和、または異極性電極へのイオンの回収などによるイオン濃度の減少を抑制できるので、より高濃度のイオンを発生できるようになっている。
第1の電極111および第2の電極112は、先端で放電可能であればその形状は不問である。たとえば第1の電極111および第2の電極112は、先端が尖鋭化されていない棒状の形状を有していてもよい。
誘導電極120は、第1の電極111および第2の電極112の両方から離れて配置されている。誘導電極120は、第1の電極111と誘導電極120との間の距離と、第2の電極112と誘導電極120との間の距離とが、互いに等しくなる位置に設けられている。誘導電極120を第1の電極111と第2の電極112との中間に設けることで、第1の電極111および第2の電極112の両方から最も離れた位置に誘導電極120を配置できる。これにより、第1の電極111および第2の電極112で発生したイオンのうち、誘導電極120で回収されて消滅するイオンの量を低減できる構成とされている。
基板130は、一対の基板131,132を、別々の異なる基板として含んでいる。基板131と基板132とは、平板状の形状を有しており、互いに平行に配置されている。第1の電極111は、基板131に搭載されている。第2の電極112は、基板132に搭載されている。基板131,132は、放電側の表面をなす主表面と、主表面に対し反対側の裏面とを有している。各々の主表面が対面するように、基板131,132は、互いに対向して配置されている。
基板131,132には、基板131,132を厚み方向に貫通して主表面から裏面に至る貫通孔が形成されている。基板131に形成された貫通孔に、第1の電極111が挿通され、これにより第1の電極111が基板131により支持されている。基板132に形成された貫通孔に、第2の電極112が挿通され、これにより第2の電極112が基板132により支持されている。第1の電極111および第2の電極112は、基板131,132に装着されている。第1の電極111および第2の電極112は、それぞれの先端が基板131,132の主表面から突出するように、基板131,132に固定されている。
基板130はまた、高電圧発生回路160を搭載する基板133を含んでいる。高電圧発生回路160は、第1の電極111および第2の電極112に印加するための高電圧を発生する。第1の電極111に正の高電圧が印加され、第2の電極112に負の高電圧が印加されると、これら電極と誘導電極120との間にコロナ放電が発生し、正イオンおよび負イオンが発生する。
基板133には、基板133の厚み方向に延びるビア電極、および、厚み方向に直交する面方向に延びる電極パターンが形成されている。これらビア電極および電極パターンは、高電圧発生回路160と第1の電極111および第2の電極112との間を電気的に接続する、接続部材に含まれている。電極パターンは、半田パッド161,162を含んでいる。半田パッド161には、配線163が半田付けされて固定されている。配線163の一方端は、半田パッド161に電気的に接続している。半田パッド162には、配線164が半田付けされて固定されている。配線164の一方端は、半田パッド162に電気的に接続している。配線163,164は、高電圧発生回路160で発生する高電圧に対応した絶縁耐性を有している高圧線である。
基板131,132には、配線パターンが形成されている。配線163の他方端は、半田により、基板131に形成された配線パターンに、電気的に接続されている。配線164の他方端は、基板132に形成された配線パターンに、電気的に接続されている。第1の電極111の、先端と反対側の他方端は、半田により、基板131に形成された配線パターンに電気的に接続されている。第2の電極112の、先端と反対側の他方端は、半田により、基板132に形成された配線パターンに電気的に接続されている。配線163は、高電圧発生回路160と第1の電極111との間を電気的に接続する接続部材に含まれている。配線164は、高電圧発生回路160と第2の電極112との間を電気的に接続する接続部材に含まれている。
ケース140は、イオン発生装置101の外観をなす筺体として設けられている。ケース140は、樹脂材料により一体に成形されている。基板131,132,133は、ケース140の内部空間に固定されている。高電圧発生回路160は、基板133に搭載されて、ケース140の内部空間に収納されている。第1の電極111および第2の電極112は、ケース140の外部に延出している。図7に示す構成に追加して、安全性を向上させるために、第1の電極111および第2の電極112の針先に直接触れられなくする保護カバーを設けてもよい。
ケース140の内部には、樹脂材料であるモールド材が充填されている。基板131,132の主表面および裏面は、モールド材によって覆われている。基板131,132は、その両面が絶縁モールドされている。第1の電極111および第2の電極112の上方部分は、モールド材の外部に配置されており、第1の電極111および第2の電極112の先端はモールド材から突出している。第1の電極111および第2の電極112の下方部分は、モールド材により封止されている。
基板133は、モールド材151によって覆われている表面と、モールド材152によって覆われた裏面とを有している。基板133は、その両面が絶縁モールドされている。高電圧発生回路160は、基板133の裏面に搭載されている。高電圧発生回路160は、モールド材152により封止されている。半田パッド161,162は、基板133の表面に形成されている。半田パッド161,162と、半田パッド161,162に固定された配線163,164の一方端とは、モールド材151により封止されている。基板133には、電子部品およびトランスなどが装着されており、これら電子部品およびトランスもまた、モールド材151,152により封止されている。
イオン発生装置101は、給電コネクタ170をさらに備えている。給電コネクタ170は、ケース140の内部空間のうち、高電圧発生回路160を収容する領域に設けられている。給電コネクタ170は、高電圧発生回路160に電力を供給するための給電部として設けられている。
ケース140には、その一部を切り欠いた形状の切り欠き141,142,143および144が形成されている。切り欠き141〜144は、ケース140をその表面の一部から窪む形状に成形することにより、形成されている。切り欠き141〜144の内部には、中空の空間が形成されている。基板133には、ケース140の切り欠き141〜144に対応する切り欠きが形成されている。これにより、基板133は、ケース140の内部に収容可能とされている。
第1の電極111と第2の電極112とを結ぶ、モールド材151の表面およびケース140の表面に沿う最小の距離は、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離をなしている。ここで沿面距離とは、2つの部材の間の、絶縁物の表面に沿う最小の距離を示す。また空間距離とは、2つの部材の空間における最小の距離を示す。図7に示す第1の電極111と第2の電極112とを結ぶ線分の長さが、第1の電極111と第2の電極112との間の空間距離に相当する。
ケース140に切り欠き141〜144が形成されているために、ケース140の表面に沿う寸法が増大している。本実施の形態における第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離は、切り欠き141〜144を形成しているケース140の外表面を含む距離として求められる。切り欠き141〜144は、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離を増加している。そのため、実施の形態3のイオン発生装置101では、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離が、第1の電極111と第2の電極112との間の空間距離よりも、大きくなっている。
以上説明した、実施の形態3のイオン発生装置101によると、図7,8に示すように、第1の電極111と第2の電極112との間に、ケース140の一部を切り欠いた形状の切り欠き141〜144が形成されている。これにより、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離は、切り欠き141〜144を形成しているケース140の外表面を含む長さとなる。つまり、切り欠き141〜144によって、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離が増加していることになる。
第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離を大きくし、一定以上の沿面距離を第1の電極111と第2の電極112との間に確保することで、第1の電極111と第2の電極112との間に存在するモールド材およびケースの表面に沿う不要な沿面放電の発生が抑制される。そのため、不浄空気中に含まれる埃などの不純物による第1の電極111および第2の電極112の周辺の汚れ、または高湿度環境下における結露による水垢などに対する、イオン発生装置101の耐性を向上することができる。空気中の不純物や水分を原因とする微小電流リークの発生を低減できることにより、イオン発生装置101のイオン発生効率を向上することができる。
(実施の形態4)
図9は、実施の形態4のイオン発生装置101の構成を示す断面図である。図7,8に示す実施の形態3のイオン発生装置101と比較して、図9に示す実施の形態4のイオン発生装置101では、ケース140を切り欠いた形状の切り欠き142,144に替えて、ケース140の一部が突出する壁部145,146が形成されている。切り欠き141,143および壁部145,146は、ケース140の表面のうち、ケース140の表面に沿って第1の電極111と第2の電極112との間を最短距離でつなぐ線と交差するように、設けられている。
ケース140に切り欠き141,143および壁部145,146が形成されているために、ケース140の表面に沿う寸法が増大している。本実施の形態における第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離は、切り欠き141,143および壁部145,146を形成しているケース140の外表面を含む距離として求められる。切り欠き141,143および壁部145,146は、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離を増加している。そのため、実施の形態4のイオン発生装置101では、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離が、第1の電極111と第2の電極112との間の空間距離よりも、大きくなっている。
以上説明した、実施の形態4のイオン発生装置101によると、図7,8に示すように、第1の電極111と第2の電極112との間に、ケース140の一部を切り欠いた形状の切り欠き141,143に加えて、壁部145,146が形成されている。これにより、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離は、切り欠き141,143および壁部145,146を形成しているケース140の外表面を含む長さとなる。つまり、切り欠き141,143および壁部145,146によって、第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離が増加していることになる。
第1の電極111と第2の電極112との間の沿面距離を大きくし、一定以上の沿面距離を第1の電極111と第2の電極112との間に確保することで、第1の電極111と第2の電極112との間に存在するモールド材およびケースの表面に沿う不要な沿面放電の発生が抑制される。そのため、不浄空気中に含まれる埃などの不純物による第1の電極111および第2の電極112の周辺の汚れ、または高湿度環境下における結露による水垢などに対する、イオン発生装置101の耐性を向上することができる。空気中の不純物や水分を原因とする微小電流リークの発生を低減できることにより、イオン発生装置101のイオン発生効率を向上することができる。
(実施の形態5)
図10は、実施の形態5におけるイオン発生装置101の構成を示す回路図である。図10には、イオン発生装置101の放電電極111,112に印加する高電圧を発生するための回路図が図示されている。図7,9に示す高電圧発生回路160には、図10に示すように、電源183、可変抵抗184、高圧トランス185およびダイオード186,187などが、電気的に接続されている。
電源183は、交流電源またはパルス電源などの、高電圧発生回路160に一定間隔で電力を供給するタイプの電源である。可変抵抗184は、その抵抗値を変更可能に設けられている。イオン発生装置101は、調整部201を備えており、イオン発生装置101を操作するユーザは、調整部201を操作することによって可変抵抗184の抵抗値を変化させることが可能とされている。高圧トランス185は、第1の電極111および第2の電極112に印加される正または負の高電圧を発生する。高圧トランス185は、一次巻線と二次巻線とを含んでいる。
高圧トランス185の二次巻線の一端は、ダイオード186,187を介して第1の電極111および第2の電極112に電気的に接続されており、二次巻線の他端は、誘導電極120に電気的に接続されている。ダイオード186,187は、整流のために設けられている。第1の電極111に接続されているダイオード186と、第2の電極112に接続されているダイオード187とは、互いに逆向きに接続されている。
高電圧発生回路160は、電源183からの電力の供給を受けて高電圧発生のための発振信号を出力する、発振回路を有している。この発振回路は、放電の間隔を表す一定の周波数で発振している。発振回路は、その一部にコンデンサ182を含んでいる。発振回路は、簡略化するとCRの時定数回路であり、CRの値により、発振の周波数は決まる。単位時間当たりの放電回数は、CR回路の時定数を変化させることにより、変更が可能とされている。
高圧トランス185は、高電圧発生回路160からの発振信号を受けて駆動し、高電圧を発生して、第1の電極111および第2の電極112に高電圧を出力する。正の高電圧パルスがダイオード186を介して第1の電極111に印加され、負の高電圧パルスがダイオード187を介して第2の電極112に印加されると、第1の電極111および第2の電極112と誘導電極120との間でコロナ放電が発生する。これにより、第1の電極111が正イオンを発生し、第2の電極112が負イオンを発生する。
1つの高圧トランス185で第1の電極111と第2の電極112との両方に高電圧が印加されており、部品点数の削減によるイオン発生装置101の製造コストの低減、および消費電力の低減が可能とされている。誘導電極120の数を高圧トランス185の数に合わせて1つにすることで、イオン発生の効率を向上できるとともに、第1の電極111および第2の電極112で発生したイオンが誘導電極120で回収されてイオン濃度が減少することを抑制でき、より高濃度のイオンを発生可能となっている。
なお、正イオンは、水素イオン(H+)の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンであり、H+(H2O)m(mは0以上の任意の整数)と表わされる。負イオンは、酸素イオン(O2−)の周囲に複数の水分子が付随したクラスターイオンであり、O2−(H2O)n(nは0以上の任意の整数)と表わされる。正イオンおよび負イオンを放出すると、両イオンが空気中を浮遊するカビ菌やウィルスの周りを取り囲み、その表面上で互いに化学反応を起こす。その際に生成される活性種の水酸化ラジカル(・OH)の作用により、浮遊カビ菌などが除去される。
図11は、イオン発生装置101による放電の周波数とイオン濃度との関係を示すグラフである。イオン発生装置101では、放電電極を構成している第1の電極111および第2の電極112の形状および構造、印加する電圧などを工夫することにより、イオン発生効率を高め、十分なイオン発生量を確保することが可能になる。図11に示すように、イオン発生量を充分に確保した条件下において、周波数を増減してもイオン発生量は大きく変化しない飽和領域が得られる。この飽和領域においては、放電の周波数を変化させても、イオン発生量の変化は微小に抑えられる。換言すると、飽和領域においては、イオン発生量に影響を及ぼすことなく、放電の間隔を調整することが可能である。
調整部201の操作により可変抵抗184の抵抗値を変化させることによって、放電の周波数を変えることができる。放電の周波数が可聴領域であれば、放電の音が聞こえることになるが、放電の周波数を変えることにより、放電音の高低が変化する。イオン発生装置101を操作するユーザは、調整部201を操作して可変抵抗184の抵抗値を変化させることにより、放電電極が放電するときに発生する音の周波数を調整可能である。放電音がユーザにとって不快に感じる音色である場合に、ユーザは、放電の周波数を変化させて、放電音の音色を変えることができる。このようにして、イオン発生装置101のイオン発生量を維持しながら、放電音の耳障り感を低減することができる。
図12は、実施の形態5のイオン発生装置101を備える電気機器200の斜視図である。図12に示す電気機器200は、空気清浄機である。電気機器200は空気清浄機に限られず、たとえばイオン発生機、空気調和機、換気装置、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、乾燥機、除湿機、加湿器、ファンヒータ、ヘアドライヤー、扇風機またはその他の機器であってもよい。電気機器200は、家屋の室内、ビルの一室、病院の病室、自動車の車室内、飛行機の機内または船の船舶内などの空気を調節するために、好適に用いることができる。
図12に示すように、電気機器200の正面の中央上部には、吹出口202が形成されている。電気機器200の背面には、図示しない吸込口が形成されている。電気機器200は、電気機器200の外観をなす筺体240を備えている。筺体240の内部には、イオン発生装置101と、電力の供給を受けて作動するファンなどの送風装置とが収容されている。電気機器200の作動時に、送風装置により吸込口から取り込まれた空気は、イオン発生装置101の発生したイオンとともに、吹出口202から吹出される。これにより、空気の流れとともに、電気機器200の周辺の空気中にイオンが送出される。
可変抵抗184の抵抗値を変化させることにより放電音の周波数を調整可能にする調整部201は、電気機器200の筺体240の外表面に設けられている。筺体240の外表面に露出している調整部201は、たとえば、ロータリースイッチなどのスイッチのつまみ部分である。調整部201は、電気機器200の正面の上部に配置されている。電気機器200を操作するユーザは、調整部201を容易に操作可能である。ユーザによる調整部201の操作によって、イオン発生装置101の放電時に発生する音の高低が変化する。これにより、電気機器200の送出するイオンの量を維持しながら、ユーザにとっての放電音の耳障り感を低減することができる。
上述した本実施の形態の説明においては、高電圧発生回路160の抵抗値を変化させることにより、放電音の周波数を調整し、これにより放電音の音色を変化させる例について説明した。放電音の周波数を調整可能とする構成は、抵抗値の変化に限られるものではない。
たとえば、抵抗値を一定として、コンデンサに送るパルス信号の周期を変化させることによりコンデンサに蓄える電荷を変化させ、これによりCR回路の時定数を変化させてもよい。またたとえば、交流電圧を変換して所定の電圧を放電部に印加する電圧印加回路が、スイッチング素子と、スイッチング素子を制御する制御部と、時定数が固定であるCR回路とを有し、制御部は交流電圧の位相が所定の範囲のときにスイッチング素子をオンにする構成とし、当該所定の範囲を変更することによって単位時間当たりの放電回数を切り替え、ソフトウェア的に放電の周波数を変更可能としてもよい。
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。