実施の形態1
以下、本発明の実施形態1を添付図面に基いて説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の一部縦断面図である。図3は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の全体構成を示すブロック図である。図4は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器を示す平面図である。図5は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部説明図である。図6は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部回路説明図1である。図7本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部回路説明図2である。図8は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部における加熱コイル構成説明図である。図9は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部における主加熱コイル説明図である。図10は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の第2の誘導加熱部における右側加熱部の加熱コイル説明図である。図11は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。図12は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の動作例1を示す全体平面図である。図13は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の動作例2を示す全体平面図である。図14は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の動作例3を示す全体平面図である。図15は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の操作部と表示部の動作例1を示す要部平面図である。図16は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の操作部と表示部の動作例2を示す要部平面図である。図17は、本発明の実施形態1に係る誘導加熱調理器の操作部と表示部の動作例3を示す要部平面図である。
図1〜図17において、1はアイランド(島)型キッチンとも呼ばれるタイプの誘導加熱調理器本体で、誘導加熱部は全部で5個所あり、いわゆる5口の誘導加熱調理器である。この種の調理器は、台所の中央などに文字通り「島」のように独立して設置されている。
2は、前記本体1の外殻を構成する横長の箱型本体ケースであり、その天面の前方一部を除く他の全部は、耐熱性強化ガラス製や耐熱樹脂性の長方形の板から形成されたトッププレート12で覆われている。このタイプの調理器は、手前側だけでなく反対の側面からも前記トッププレート12に臨めるような調理器である。前記本体ケース2の内部には調理器具などの収納庫となる棚が複数設置され、そのような収納庫の上方空間と右側空間が加熱調理器の各構成部品を配置した空間になっている。詳しくは図2を用いてあとで説明する。
前記トッププレート12の下方には、左側から右へ順次直径が小さくなるように5つの誘導加熱源6L、6ML、6MR、6RB、6RFを備えている。
6Lは最も左側にある第3の誘導加熱源(以下、「左IH部」という)。6MLは、中央部の左側にある第2の誘導加熱源(以下、「中央左IH部」という)である。6MRは、中央部の右側にある第1の誘導加熱源(以下、「中央右IH部」という)である。中央左IH部と中央右IH部を総称して「中央IH部」6Mという。6RBは最も右側位置でかつ後ろ側にある第4の誘導加熱源(以下、「右後部IH部」という)、6RFは最も右側位置で手前(前側)にある第5の誘導加熱源(以下「右前部IH部」という)である。右後部IH部と右前部IH部を総称して「右IH部」6Rという場合がある。6LCは左IH部の加熱コイル、6MLCは中央左IH部の加熱コイル、6MRCは中央右IH部の加熱コイルである。なお、右IH部6Rの右後部IH部6RBと右前部IH部6RFにも、それぞれ加熱コイルが設けられている。
前記左IH部の加熱コイル6LCは、図8に示すように、コイルを円形に巻いてドーナッツ状に形成した内側コイル6LC1と、このコイルに連続して(直列に)コイルが巻かれたドーナッツ状の外側コイル6LC2との2つの部分を中心部に具備している。外側コイル6LC2と内側コイル6LC1の両者を総称して以下「主加熱コイル」MCという。
内側コイル6LCの内径D1は60mm、外側コイル6LC2の外径D2は120mmである。そして外側コイル6LC2と内側コイル6LC1の間に形成した環状の隙間、あるいは内側コイル6LC1の中心部の空間に後述する温度センサー31Eが設置されている。
左IH部6Lは、主加熱コイルMC単独と、この主加熱コイルMCの周囲に所定間隔に配置された4つの副加熱コイルSC1〜SC4とを備えており、主加熱コイルMC単独加熱と副加熱コイルの両者を同時に通電して「協同加熱」することができる。4つの側部加熱コイルSC1〜SC4を総称して「側部加熱コイル」という場合がある。この構成と動作については後で詳しく述べる。
前記左IH部6Lの加熱コイル6LCの右側には、間隔W1を置いて中央左IH部6MLの(左側)加熱コイル6MLCが設置され、この中央左IH部の加熱コイル6MLCの右側には、間隔W2を置いて中央右IH部の(右側)加熱コイル6MRCが配置されている。
これら2つの加熱コイル6MLC、6MRCの外径(直径)D6、D7は共に180mmに設定されている。なお、前記間隔W1は150mm、W2は30〜50mmである。なお、2つの加熱コイル6MLC、6MRCは加熱可能な被加熱物Nの(底面の)最小外径が160mmになっている。2つの加熱コイル6MLC、6MRCのコイル幅はそれぞれ約10mmである。
また加熱コイル6MC、6RCは、それぞれ直径0.1〜0.3mmの細いコイル素線を20〜30本程度纏め(以下、「集合線」という)、この集合線を1本又は複数本撚りながら一方向に巻いて環状に形成されている。主加熱コイルMCを構成する前記内側コイル6LC1と、外側コイル6LC2も同様な集合線で形成されている。
図10に示すように、中央右IH部6MRでは、内側コイル6MRC1と外側コイル6MRC2を別々にインバーター回路23Aと23Bで加熱駆動できるようにしてある。そのため外側コイル6MRC1の外径よりも小さい径の鍋にも対応できる。この外側コイル6MRC2の外径D7は前記したように中央右IH部6Rの外径寸法であり、直径180mmである。また内側コイル6MRC1の外径D10は100mmであり、内側コイル6MRC1と外側コイル6MRC2とも、コイル幅(コイルを上方向から見た場合の幅)は約10mmである。
内側コイル6MRC1と外側コイル6MRC2は、集合線の構成が同じであり、かつ同じ巻き数で巻かれたものであるとすると、内側の環状コイル6RC1面積は、大きな外径の外側の環状コイル6MRC2の面積よりも小さくなる。因みに前記した寸法で計算すると、以下のようになる。
内側の環状コイル6MRC1の平面積:約28cm2
外側の環状コイル6MRC2の平面積:約53cm2
前記中央右IH部の(右側)加熱コイル6MRCの右側には、間隔W3を置いて第3の誘導加熱部6Rが設置されている。誘導加熱部6Rは、後側加熱コィル6RBCと、その後側コイルの前方に間隔W4を保って設置された前側加熱コイル6RFCから構成されている。
右後部加熱コィル6RBCの外径寸法D8と前側加熱コイル6RFCの外径D9とは、ともに120mmである。なおW3は150mm、W4は40mmである。
左IH部6L、中央左IH部6ML及び中央右IH部6MRの定格最大火力は、共に3000Wであり、定格最小火力は共に100Wである。但し、中央左IH部6MLと中央右IH部6MRを協同加熱駆動する場合、両者合計の定格最大火力は、3000Wであり、定格最小火力は100Wである。
また左IH部6Lと中央左IH部6ML及び中央右IH部6MRの3者は、個別に駆動する場合は、火力の段階数と具体的な各段階の火力値も全く同じに設定してある。右後部IH部6RBと右前部IH部6RFの定格最大火力は共に1000Wであり、定格最小火力は100Wに設定してある。これは右後部IH部6RBと右前部IH部6RFを協同加熱する場合も、2つの加熱コイルの合計火力は1500W、定格最小火力は100Wに設定してある。
図1において、3は本体ケース2の右側面に設けた吸気口、4はトッププレート12の左端部から外れた位置に設けた排気口である。本体ケース2の内部空間には、前記吸気口3から室内の空気を導入する送風機(図示せず)が設置されており、導入された空気によって5つの誘導加熱源(IH部)6L、6ML、6MR、6RB、6RF及びそれらの回路基板41A、41B、41C、41D(後で詳しく述べる)が冷却され、前記排気口4から排出されるようになっている。
図2において、13は本体ケース2の右側内部に形成した電気部品の収納室で、その右側壁面には前記吸気口3が形成されている。14は電気部品の収納ケースで、全体が耐熱性プラスッチック等で中空の箱型に形成されており、その右壁面下部には通気口14Aが開口しており、また天井面には排気口14Bが開口している。
41A、41B、41C、41Dは、前記した5つの誘導加熱源(IH部)6L、6ML、6MR、6RB、6RFのインバーター回路を実装した回路基板であり、前記部品ケース14の内部に互いに間隔を置いて垂直に設置されている。
41Aは左IH部6L用のインバーター回路20、21を実装した回路基板、41Bが中央左IH部6ML用のインバーター回路22を実装した回路基板、41Cが中央右IH部6MR用のインバーター回路23を実装した回路基板、41Dが右IH部6R用のインバーター回路24、25を実装した回路基板である。
左IH部6L用のインバーター回路20、21を実装した回路基板41Aが、最も面積が大きく、次に大きいのは中央右左H部用の回路基板41Bと中央右IH部用の回路基板41Cである。最も小さいのは右IH部6R用の回路基板41Dである。特に左IH部のインバーター回路20、21には、後述するように主加熱コイル用のインバーター回路MIVと、4つの副加熱コイルSC用インバーター回路SIVがあり、これらに使用されているスイッチング素子やダイオード素子は、右IH部6R用のインバーター回路24、25や中央IH部6M用のインバーター回路22、23に比較して遥かに多いため、必然的に回路パターンの面積も大きくなり、回路基板自体が大きくなっている。
15は各回路基板41A〜41Dにそれぞれ2個以上取り付けられたアルミ製の放熱フィンであり、インバーター回路を構成する電力制御用の半導体スイッチング素子などの発熱部品を取り付けてあり、それら発熱部品を空冷するためのものである。
16は前記本体ケース2の内部を上下に仕切る仕切板で、前記部品ケース14の天井部に対応する位置に大きな通気口17を形成している。またこの仕切板は本体ケース2の内部に電気部品の収納室13を区画するものであり、収納室13の天井壁面になっている。
18は耐熱性プラスッチック等の絶縁性素材から一体に形成されたコイルベースであり、全体に通気性を持たせるため、多数の透孔が形成されている。このコイルベースは、図2に示すように加熱コイル6RFCが設置されるものであり、この加熱コイル6RFC以外の全ての加熱コイルにも同様にそれぞれコイルベースが用意されている。
19は前記部品ケース14の通気口14Aに対し、吸気口3から吸引した室内の空気を強制的に供給する送風機であり、例えば軸流送風機や多翼式送風機である。26は前記仕切板16の上方に形成された加熱コイルの収納空間であり、本体ケース2の中を右から左端部まで長く連続して形成されており、末端部は前記排気口4を介して再び室内空間に連通する。前記送風機19からの空気は図2に矢印で示すように、各回路基板41A〜41Dの相互間とその周囲の通路を通って上方に流れ、その過程で各放熱フィン15を冷却し、更に加熱コイルの収納空間20に流れて加熱コイル6RBCや6RFCを冷却し、その後左側方向に向きを変えて最後に前記排気口4から放出するまでに途中の加熱コイル6MC、6LCを冷却する。なお、加熱コイル6RBCと6RFCを冷却した風と、その下流位置にある加熱コイル6MC、6LCを冷却する風を、ダクトや板などで分岐して案内するようにしても良い。
27は本体ケース2の内部に区画形成された食器類収納室、28は前記収納室13と食器類収納室28の間を仕切る仕切板である。
5は操作部で、本体ケース2の上面で前記トッププレート12より手前に横に長く帯状に設けてある。この操作部は、トッププレート12の一部を枠体等で覆って形成する場合と、単にトッププレート12の上面に印刷や塗装等で枠を表示する場合の何れでも良い。
5Aは右前部IH部6RFの操作部、5Bは右後部IH部6RBの操作部、5Cは中央右IH部6MRの操作部、5Dは中央左IH部6MLの操作部、5Eは左IH部6Lの操作部である。11は、主電源の投入・遮断を行うスイッチ(図示せず)の操作キーであり、操作部5の右端部にあり、全ての加熱部の電源を一斉に遮断できる。
図14〜図16は本発明の実施の形態1に係る操作部5の例を示す上面図である。図14〜16において、操作部5の左右中央部には、中央右IH部6MRの操作部5Cと、中央左IH部6MLの操作部5Dがある。51Rは中央右IH部6MRによる加熱調理の開始・停止操作をする切入スイッチ、52Rは、その中央右IH部6MRによる加熱調理の火力を設定する一対の火力設定(増減操作)スイッチ、53Rは中央右IH部6MRの各種調理を選択するメニューキーである。
54Rは中央右IH部6MRのヘルプキーであり、調理の開始前や途中でその調理に関する参考情報を聞き出したり、表示部10に表示させたり、あるいは操作の手順を案内させたりすることができる。つまり音声ガイド装置114のガイド情報を再度聞き直したい場合等に操作することができる。このヘルプキーの操作回数や操作頻度などに応じて習熟者モードや初心者モードが自動的に制御部100によって判定される。またヘルプキーの操作回数や操作頻度の情報は、制御部100が隣接する表示部8Lを、表示部8Rの表示中に同時に駆動するかどうかの判断に利用する。
なお、図示していないが、加熱コイル6MRCの通電時間を設定するための時間設定キーや、加熱開始時から制御部100が経過時間を計測し、設定時間になったら加熱を停止する切タイマーキーも設けてあるが、説明は省略する。
なお、中央左IH部6MRの操作部5Cやその他加熱部の操作部も上記した中央右IH部6MRの操作部5Cと同様な構成である。すなわち、図14に示すように、中央左IH部6MLの操作部5Dには、中央左IH部6MLによる加熱調理の開始・停止操作をする切入スイッチ51L、中央左IH部6MLによる加熱調理の火力を設定する一対の火力設定(増減操作)スイッチ52L、中央左IH部6MLの各種調理を選択するメニューキー52L、中央左IH部6MLのヘルプキー54Lをそれぞれ備えている。前記した時間設定キーや、切タイマーキーも同様に設けている。
そしてヘルプキー54Lの操作回数や操作頻度などに応じて習熟者モードや初心者モードが自動的に制御部100によって判定される。またヘルプキー54Lの操作回数や操作頻度の情報は、制御部100が、隣接する表示部8Rを、表示部8Lの表示中に同時に駆動するかどうかの判断に利用する。56は2つの隣接する操作部5D、54の範囲を、使用者が混同しないように設けた仕切線であり、操作部5表面に前後に印刷して設けてあり、この仕切線は二つの表示部8R、8Lの境界線上にある。
なお、表示部8R、8Lの上方を覆うトッププレート12は、その表示部8R、8Lの真上とその周縁の位置だけは特別に透明にしてある(遮光塗料などの皮膜を設けていない)。このためトッププレート12の上から表示部8R、8Lの液晶画面に表示される前記文字15やその他数字、記号等を使用者は容易に視認できる。57は、前記表示部8R、8Lの外周に沿って形成した発光表示部で、図示していない発光ダイオード(LED)の光を底面に受けて、長方形の導光体が特定の色の光をトッププレート12の方向に発するようになっている。前記発光ダイオードは、表示部10の一部として制御部10によって通電が制御される。真上位置だけは特別に透明にしてある(遮光塗料などの皮膜を設けていない)。このため、発光表示部57が発光した場合、2つの表示部8R、8Lが光の帯で囲まれたような形態になり、2つの表示部8R、8Lの一体感を増大させている。なお、前記特定の色とは、本実施の形態1では黄色である。
7は、右前部IH部6RFの操作部5Aと、右後部IHIH部6RBの操作部5Bとの共用の表示部で、液晶画面で構成されている。
8Rは中央右IH部6MRの操作部5C用の表示部で、液晶画面で構成されている。8Lは中央左IH部6MLの操作部5D用の表示部で、液晶画面で構成されている。
9は左IH部6Lの操作部5E用の表示部で、液晶画面で構成されている。以下の説明では、全ての表示部を包括的に指す場合は符号10を用いる。
次に通電制御部や温度検知部などを含む制御装置について、図2を参照しながら説明する。100は通電制御回路で、1つ又は2つ以上のマイクロコンピュータを備えており、加熱調理器全体の制御プログラムが内部の記憶部に格納されている。
31は、被加熱物Nからトッププレート12を透過して放射されて来る赤外線の量を測定し、被加熱物Nの底部温度を検知する赤外線センサーである。以後このセンサーを「温度センサー」と呼ぶ。この温度センサーは少なくとも合計11個あり、主加熱コイルMCの中心部に設置された温度センサー31A、主加熱コイルと側部加熱コイルSCの間の空間又は側部加熱コイルSCの内側空間内にそれぞれ1個ずつ設置した4つの温度センサー31B、中央左IH部6MLに設置した温度センサー31C、中央右IH部6MRに設置した温度センサー31E、中央左IH部の(左側)加熱コイル6MLCとその右側の加熱コイル6MRCの間の位置に設置された温度センサー31D、右後部IH部に設置した温度センサー31F、右前部IH部に設置した温度センサー31G、右後部IH部3RBと右前部IH部3RFの間に設置した温度センサー31Hから構成されている。
図3には前記温度センサー31Dの位置が分かるように表示しているが、実際はトッププレート12によって覆われているので、温度センサー31Dは使用者には目視できない(他の温度センサー31も同様に目視できない)。また右後部IH部3RBと右前部IH部3RFの間に設置した温度センサー31Hも図示していない。
温度センサー31Dは、中央左IH部の加熱コイル6MLCと中央右IH部の加熱コイル6MRCの上に跨るような、単一の大きな被加熱物Nが使用されて協同加熱する場合、その被加熱物Nの温度変化を検知するために設けてある。
32は温度検出回路で、前記温度センサー31から送られてくる被加熱物Nの底部温度データを処理し、被加熱物Nの温度を推定する処理を行い、この結果をリアルタイムで通電制御回路100に送るので、誘導加熱時の通電制御回路100の温度制御動作に利用される。
左IH部6Lの加熱コイル6LC、中央左IH部6MLの加熱コイル6MLC、中央右IH部6MRの加熱コイル6MRC、右後部IH部6RBの加熱コィル6RBC、及び右前部IH部6RFの加熱コイル6RFCには、それぞれ専用のインバーター回路20〜25が接続されている。
20は左IH部6Lの主加熱コイルMC用のインバーター回路、21は同じく左IH部6Lの側部加熱コイルSC用のインバーター回路、22は中央左IH部6ML用のインバーター回路、23は中央右IH部6MR用のインバーター回路、24は右前部IH部6RF用のインバーター回路、25は右後部IH部6RB用のインバーター回路である。
33は、被加熱物載置判断部であり、左IH部6Lの主加熱コイルMCと側部加熱コイルSCの両方に流れる電流を検出して、加熱コイルMCと側部加熱コイルSCの両者の上に共通の被加熱物Nが置かれていることを検知する。
また被加熱物載置判断部33は、中央左IH部6MLの加熱コイル6MLCと中央右IH部6MRの加熱コイル6MRCに流れる電流を検出して、2つの加熱コイル6MCLと加熱コイル6MRCの上に単一の被加熱物Nが置かれていることを検知する。実際には加熱コイルの入力側と出力側の両方で電流を検出することがより正確な感知のために望ましい。詳細な動作については後で詳しく述べる。なお、同様に被加熱物載置判断部33は、右後部IH部6RBの加熱コィル6RBCと右前部IH部6RFの加熱コイル6RFCに流れる電流を検出して、2つの加熱コイルの上に単一の被加熱物Nが置かれていることを検知する。
図3において、112は本体ケースの前面上部壁面に設置された複数個の人感センサーであり、本体ケース2の横方向に所定間隔で2個以上設けてあり、人がそのセンサーの前方に入る場合といない場合を検知する。114は、音声合成装置であり、制御部100からの指示に従って、所定のガイド情報を音声に変換してスピーカー113から出力するものである。なお、以後の説明において、前記音声合成装置114とスピーカー113を「報知手段」という場合がある。
図4、図12、図13においてCL1は本体ケース2の上面における前後方向中心線であり、CL2は左IH部6Lの主加熱コイルMCの中心点を横切る中心線を示している。
次に、前記左IH部6Lを構成している加熱コイル6LCの構成について説明する。
図3は、前記左IH部6Lを制御する構成要素を示したブロック図である。4個の副加熱コイルSC1〜SC4は、図8に示すように前記主加熱コイルMCの外周面に所定の空間GP1を保って配置されている。
4つの副加熱コイルSC1〜SC4の相互間には、略一定の空間SPが保たれ、一般にコイルベースと呼ばれる通気性のある耐熱性樹脂製の支持枠の上に固定されている。この空間SPの寸法は、各副加熱コイルSC1〜SC4と主加熱コイルMC外周縁との空間GP1よりも2倍以上大きく設定されている。
この副加熱コイルSC1〜SC4は、主加熱コイルMCと同様に、直径0.1〜0.3mmの細いコイル素線を20〜30本程度纏めた集合線を、1本又は複数本撚りながら一方向に巻き、外形形状が長円形や小判形になるようにし、その後、その形状を保つために部分的に結束具で拘束され、又は全体が耐熱性樹脂などで固められることで形成されている。4つの副加熱コイルSC1〜SC4は平面的形状が同じで、縦・横・高さ(厚さ)寸法も全て同一寸法である。従って1つの副加熱コイルを4個製造し、それを4箇所に配置している。
これら4つの副加熱コイルSC1〜SC4は図8に示すように、中心点X1から半径R1の主コイルMCの周囲において、その接線方向が丁度各副加熱コイルSC1〜SC4の長手方向の中心線と一致している。言い換えると接線方向と長径方向は一致している。
副加熱コイルSC1〜SC4は、それぞれの集合線が長円形に湾曲しながら伸びて電気的に一本の閉回路を構成している。また主加熱コイルMCの垂直方向寸法(高さ寸法、厚さともいう)と各副加熱コイルSC1〜SC4の垂直方向寸法は同じであり、しかもそれら上面と前記トッププレート12の下面との対向間隔は同一寸法になるように水平に設置、固定されている。
図8において、D2は主加熱コイルMCの外径寸法、D3は全部の副加熱コイルSC1〜SC4の幅方向の中間点を結ぶ円の直径、D4は全部の副加熱コイルSC1〜SC4の最も外側の周縁点を結ぶ円の直径、D5は左側誘導加熱源によって誘導加熱できる金属製の鍋等の被加熱物Nの最大外径寸法を示す。
WAは副加熱コイルSC1〜SC4の横幅(「厚み」又は「短径」ともいう)寸法である。またL1は副加熱コイルSC1〜SC4の長径である。
以上説明した各部分の寸法の例は以下の通り。
GP1:10mm
D1:60mm
D2:120mm
D3:188mm
D4:236mm
L1:120〜125mm
WA:48mm
D4の寸法から、底部の外形寸法DWが240mm〜300mm程度の大きさの金属鍋や調理用鉄板等を誘導加熱できる。
図5は、加熱調理器に内蔵された電源装置の回路ブロック図である。本願発明に係る電源装置は、概略、三相交流電源を直流電流に変換するコンバーター(例えばダイオードブリッジ回路、または整流ブリッジ回路ともいう)と、コンバーターの出力端に接続された平滑用コンデンサー、この平滑用コンデンサーに並列に接続された主加熱コイルMCのための主インバーター回路(電源回路部)MIVと、同様に平滑用コンデンサーに並列に接続された各副加熱コイルSC1〜SC4のための副インバーター回路(電源回路部)SIV1〜SIV4とを備える。
なお、この図には後述する中央誘導加熱源6Mと右側誘導加熱部6Rは記載していない。また以下の説明では、4つの副加熱コイルSC1〜SC4を総称する場合の符号として「SC」を用いる。同様に4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4を総称する場合の符号として「SIV」を用いる。
図3で示した主インバーター回路20は、図5で示す主インバーター回路MIVであり、また図2で示した副インバーター回路21は、図5で示す副インバーター回路SIVである。これら各インバーター回路は、前記コンバーターからの直流電流を高周波電流に変換し、それぞれ主加熱コイルMCおよび副加熱コイルSCに高周波電流を(互いに)独立して供給するものである。
一般に、誘導加熱コイルのインピーダンスは、誘導加熱コイルの上方に載置された被加熱物Nの有無および大きさ(面積)に依存して変化するから、これに伴って前記主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVに流れる電流量も変化する。本発明の電源装置では、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCに流れる、それぞれの電流量を検出するための電流センサーを備えた電流検出部を有する。この電流検出部は、後述する被加熱物載置判断部(被加熱物載置状態検出手段)33を構成する一部である。また他の加熱コイルにも同様な電流センサーがそれぞれ設置されている。
本発明によれば、被加熱物載置判断部33の電流検出部を用いて、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCに流れる電流量を検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かを推定し、その推定結果を通電制御回路100に伝達するので、被加熱物Nの載置状態について精度よく検出することができる。
なお、被加熱物Nの載置状態を検出するものとして、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVに流れる電流量を検出する電流検出部の代わりに、機械式センサー、光学的センサーなどの他の任意のセンサーを用いて被加熱物Nの載置状態を検知してもよい。
本発明の電源装置の通電制御回路100は、図示のように、被加熱物載置判断部33に接続されており、被加熱物Nの載置状態に応じて、主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVに制御信号を与えるものである。すなわち、通電制御回路100は、被加熱物載置判断部33で検出された主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4に流れる電流量に関する信号(被加熱物Nの載置状態を示すデータ)を受け、被加熱物Nが載置されていないか、あるいは被加熱物Nの直径が「所定値」(例えば100mm)より小さいと判断した場合には、それら主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への高周波電流の供給を禁止又は(既に供給開始されている場合はそれを)停止するように主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVを選択的に制御する。なお、ここで前記「所定値」が100mmになっているのは、主加熱コイルMCの直径D2が120mmの場合であるためであり、その直径D2が変化すれば所定値も変化する。実際の加熱度合い等を実験して実際には最適な所定値を決めることが望ましい。
本発明によれば、通電制御回路100は、被加熱物Nの載置状態に応じた制御信号を主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVに供給することにより、主加熱コイルMCと副加熱コイルSC1〜SC4への給電を互いに独立して制御することができる。
また、中央にある主加熱コイルMCを駆動せず(OFF状態とし)、かつ、すべての副加熱コイルSC1〜SC4を駆動する(ON状態とする)ことにより、フライパンなどの鍋肌(鍋の側面)だけを余熱するといった調理方法も実現可能となる。
なお、操作部5には、左側誘導加熱源6Lの協同加熱動作、すなわち主加熱コイルMCと副加熱コイルSCとの同時加熱を使用者が任意で禁止するスイッチを更に備えても良い。このようにすれば、明らかに直径の小さい鍋を左側誘導加熱源6Lで加熱する場合、使用者が協同加熱ではなく、主加熱コイルMC単独での加熱を選択できる。つまり、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCに流れる電流量を、被加熱物載置判断部33によって検出することにより、それぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値よりも大きいか否かを通電制御回路100が推定・処理する必要はなくなる。
次に左IH部6L、中央IH部6MR、6ML、及び右IH部6Rによって加熱調理する場合の加熱量を決める「火力」について説明する。
前記通電制御回路100によって以下の通り火力の調節範囲が決定されており、使用者は前記操作部5によって任意でこれらの火力値の中から所望の火力を選択できる。
左IH部6L:定格最大火力3000W、定格最小火力100W。
火力値は、100W、300W、500W、750W、1000W、1500W、2000W、2500W、3000Wの9段階。
中央IH部6MR、6ML:定格最大火力3000W、定格最小火力100W。
火力値は、100W、300W、500W、750W、1000W、1500W、2000W、2500W、3000Wの9段階。
右IH部6RB、6RF:定格最大火力1500W、定格最小火力100W。
火力値は100Wから100W毎に1500Wまで合計15段階。
主加熱コイルMCと、副加熱コイルSCの一部又は全部を同時に加熱駆動する場合、主加熱コイルMCに流れる高周波電流と副加熱コイルSCにそれぞれ流れる高周波電流の向きは、隣接する側において同じ向きとなることが加熱効率の観点から好ましい。これは、このように2個の独立したコイルの隣接する領域において、同一方向に電流が流れる場合、その電流で発生する磁束は互いに強め合い、被加熱物Nを鎖交する磁束密度を増大させ、被加熱物底面に渦電流を多く生成して効率良く誘導加熱できるからである。
主加熱コイル用のインバーター回路MIVは、可変周波数出力制御方式を採用しているため、その周波数を変化させることでインバーター電力、すなわち得られる火力を可変とすることができる。インバーター回路MIVの駆動周波数を高く設定していくと、インバーター電力は低下していき、スイッチング手段(例えば、IGBT)や共振コンデンサー等の回路構成電気・電子素子の損失が増加し、発熱量も多くなって好ましくないので、所定の上限周波数を決め、それ以下で変化させるように制御している。上限周波数で連続的に制御できるときの電力が最低電力となるが、これ未満の電力を投入する場合は通電を断続的に行う、通電率制御を併用して最終的な小火力を得ることができる。副加熱コイル用のインバーター回路SIVも同様にして火力制御できる。
またインバーター回路MIVの駆動に用いる駆動周波数は、副加熱コイル用のインバーター回路SIVの駆動周波数と基本的に同じにしている。変える場合は、両者の駆動周波数の差が可聴周波数域とならないよう、駆動周波数の差が15000〜20000Hzの範囲から外れるように通電制御回路100が制御する。これは2つ以上の誘導加熱コイルを同時に駆動した場合、その周波数の差によってビート音又は干渉音と呼ばれるような、不快な音の原因になるからである。
なお、主インバーター回路MIVと、副加熱コイル用のインバーター回路SIVとは、常に同じ時間に駆動する必要はなく、例えば、通電制御回路200が指令する火力によっては、短い時間間隔で交互に加熱動作を行うように切り替えても良い。
前述したように、全ての加熱コイル部には、加熱コイルと共振コンデンサーの並列回路からなる共振回路に流れる電流を検出するための電流センサーを設けている。全てのIH部(誘導加熱部)に設けた電流センサーの検出出力は、被加熱物載置判断部(被加熱物載置状態検出手段)33に入力され、これを介して通電制御回路100に対して被加熱物Nがあるかどうかという判定情報が供給され、被加熱物Nの存在判定が行われる。
また誘導加熱に不適当な鍋(被加熱物N)などが用いられた場合や、何らかの事故などによって正規の電流値に比較して所定値以上の差の過少電流や過大電流が検出された場合は、通電制御回路100によって関係するインバーター回路が制御され、瞬時に誘導加熱コイルの通電を停止するようになっている。
本発明のような誘導加熱方式で被加熱物Nを加熱する加熱調理器においては、左右IH部6L、6R、中央IH部6M、右IH部6Rに高周波電力を流すための電力制御回路は、いわゆる共振型インバーターと呼ばれている。被加熱物N(金属物)を含めた左右の加熱コイル6LC、6RC、6MCのインダクタンスと、共振コンデンサーを接続した回路に、スイッチング回路素子を20000〜40000KHz程度の駆動周波数でオン・オフ制御する構成である。なお、中央IH部6Mのインバーター回路22、23は、右IH部6Rのインバーター回路24、25と同様な構成であり、中央IH部6Mのインバーター回路22、23は、前記右IH部6R用のインバーター回路24、25と並列に前記商用電源75に接続されている。
また共振型インバーターには、200V電源に適すると言われている電流共振型と、100V電源に適すると言われている電圧共振型とがある。このような共振型インバーター回路の構成には、例えば加熱コイル6LC、6RCと共振コンデンサーの接続先をリレー回路でどのように切り替えるかによって、いわゆるハーフ・ブリッジ回路とフル・ブリッジ回路と呼ばれる方式に分かれる。
本発明の実施の形態で使用しているフル・ブリッジ回路を図6と図7に示している。
具体的に説明すると、電源部(電源回路)74を有する。電源部74は、直流電源部80と、主インバーター回路MIV、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4を有する。なお、図6では主インバーター回路MIVと、副インバーター回路SIV1の2つしか記載していないが、接続点CP1、CP2を有したインバーター回路SIVと同様構成の、3つの副インバーター回路SIV2〜SIV4が、図7に示すように通電制御回路100に対してそれぞれ並列に接続されている。つまり副インバーター回路SIV1と同様に、他の3つの副インバーター回路SIV2、SIV3、SIV4の両端部になる接続点CP3,CP4、CP5,CP6、CP7が、それぞれ接続点CP1、CP2の回路に接続されている。
以上の説明から明らかなように、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4は、直流電源部80と通電制御回路100に対してそれぞれ並列に接続された構成になっている。
前記交流電源75は、単相又は三相の商用交流電源である。交流電源75は、この交流電源75から出力される交流電流を全波整流する整流回路76に接続されている。整流回路76は、この整流回路で全波整流された直流電圧を平滑化する平滑コンデンサー86に接続されている。
主インバーター回路MIVと、4つの副インバーター回路SIV1〜SIV4は、交流を直流に変換したのち、更にこの直流を高周波の交流に変換する、フルブリッジインバータである。各インバー回路MIV、SIV1〜SIV4は、電源部74の直流電源部80に接続されている。
図7に示しているように、主インバーター回路MIVと、副インバーター回路SIV1はそれぞれ、2組のスイッチング素子の対(ペア、組ともいう)77A,78A、77B、78Bを有する。主インバーター回路MCのスイッチング素子の対77Aと78Aはそれぞれ、直列接続された2つのスイッチング素子79A,81Aと88A、89Aを有する。副インバーター回路SIV1のスイッチング素子の対77Bと78Bはそれぞれ、直列接続された2つのスイッチング素子102B,103Bと104B,105Bを有する。
図示していないが、図6に示す副インバーター回路SIV2、SIV3、SIV4にも、前記したような2組のスイッチング素子をそれぞれ備えている。
そして、スイッチング素子79A,81Aの出力点間とスイッチング素子88A,89Aの出力点間に、主加熱コイルMCと、共振コンデンサー110Aを含む直列共振回路とが接続されている。また、スイッチング素子102B、103Bの出力点間とスイッチング素子104B,105Bの出力点間に、副加熱コイルSC1と共振コンデンサー110Bを含む直列共振回路とが接続されている。同様に図示していないが、他の3つの副インバーター回路SIV2、SIV3、SIV4にも、それぞれ同様に副加熱コイルSC2〜SC4と共振コンデンサー(図示せず)110Aを含む直列共振回路が接続されている。
主インバーター回路MIVの2組のスイッチング素子の対77A,78Aには、それぞれ駆動回路228A、228Bが接続されている。副インバーター回路1の2組のスイッチング素子の対77B、78Bには、駆動回路228C,228Dが接続されている。残りの3つの副インバーター回路SIV2〜SIV4にも、それぞれ駆動回路228E、228F、228G、228H、228I、228J(いずれも図示せず)が1個ずつ接続されている。そして、これら全ての駆動回路228A〜228Jが通電制御回路100を介して被加熱物載置判断部280に接続されている。なお、主インバーター回路MIVの2組のスイッチング素子の対77A,78Aの駆動タイミングを、駆動回路228,228Bで制御し、位相差を制御することで主加熱コイルMCに流れる電流の量を調節できる。
以上の構成であるので、通電制御回路100は、主加熱コイルMCに時計回り方向の高周波電流を流す場合、互いに隣接する領域(主加熱コイルの外周領域)において、4つの副加熱コイルSC1〜SC4に印加された高周波電流IBと、主コイルMCに流れる高周波電流IAとが同一方向(反時計回り方向)に流れるよう主インバーター回路MIVと副インバーター回路SIVを制御する機能を有する。
逆に、主加熱コイルMCに反時計回り方向の高周波電流IAを流す場合、副加熱コイルSC1〜SC4に印加された高周波電流IBが、互いの隣接領域において同一方向(時計回り方向)に流れるよう、主インバーター回路MIVと全ての副インバーター回路SIV1〜SIV4を制御するものである。これは前記したように周波数の差に起因する異音の発生を抑止できる。
(調理開始前の準備段階)
調理の開始にあたっては、まず操作部5のキー11を操作して主電源を投入し、加熱準備動作を使用者が指令した場合、前記被加熱物載置判断部33によって、主加熱コイルMCと副加熱コイルSCそれぞれのコイルの上方に被加熱物Nが載置されているか否か、または被加熱物Nの底部面積が所定値より大きいか否かが推定され、この推定結果が制御部である通電制御回路100に伝達される。
通電制御回路100では、大径鍋に適する加熱処理にするか通常鍋に適する加熱処理にするか等が決定される(所定の小電流を加熱コイルに流し、その結果を電流センサーで検知する)。
適合鍋であるが、通常サイズの鍋や小鍋、あるいは加熱不適合等の場合は、大径鍋とは別の処理になる。
(調理開始段階)
以上によって大径鍋を対象にした調理工程に移行する準備完了となり、調理メニュー選択後、速やかに誘導加熱動作が開始される。なお、鍋底面の直径が120mm〜180mm程度の鍋を「通常鍋」、直径120mm未満の鍋を「小型鍋」と呼んでいる。これらの鍋の場合も基本的には上記ステップと同様である。なお、ここでいう直径とは、鍋底面の直径であるので、鍋胴体の直径寸法はこれより大きい。
「通常鍋」や「小型鍋」の場合も「湯沸し」や「保温」などの調理メニューが表示部10に表示されるが、「通常鍋」や「小型鍋」の場合は、この実施の形態1では中心部の主加熱コイルMCだけでしか加熱しないので、制御内容(火力や通電パターンなど)は大きく異なる。当然、副加熱コイルSCの全部やその一部だけを個別に加熱駆動できないので、副加熱コイルSCを利用した加熱パターンはない。
主加熱コイルMCの電流センサーと副加熱コイルSCの4つの電流センサーによって、上方に同一の被加熱物Nが載置されているか否かを判断する基礎情報が前記被加熱物載置判断部33に入力される。電流変化を検出することで、前記被加熱物載置判断部33は主加熱コイルMCと副加熱コイルSCのインピーダンスの変化を検出し、長方形や楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されている主加熱コイルMCのインバーター回路MIV及び副加熱コイルSCの各インバーター回路SIVを駆動し、4つの副加熱コイルSC1〜SC4の内、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されているもの(少なくとも1つ)に高周波電流を流し、楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていない他の副加熱コイルに対しては、高周波電流を抑制又は停止するように前記通電制御回路100が指令信号を発する。
例えば、被加熱物載置判断部33が主加熱コイルMCと、1つの副加熱コイルSC1の上方に同一の楕円状の鍋(被加熱物N)が載置されていると判断したときに、通電制御回路100は、主加熱コイルMCと特定の副加熱コイルSC1だけを連動して動作させ、予め定めた火力割合によってそれら二つの加熱コイルにそれぞれのインバーター回路MIV、SIV1によって高周波電力を供給する(この火力配分については、後で詳しく説明する)。
ここで「火力割合」とは、例えば使用者が左IH加熱源6Lで3000Wの火力で調理しようと調理開始している場合、通電制御回路200が、主加熱コイルMCを2400W、副加熱コイルSC1を600Wというように配分した場合、その2400Wと600Wの比のことをいう。この例の場合では4:1である。
この副加熱コイルSC1単体を駆動して誘導加熱調理することはできず、また他の3つの副加熱コイルSC2、SC3、SC4の各単体及びそれらを組み合わせても誘導加熱調理することはできないようになっている。言い換えると主加熱コイルMCが駆動される場合に初めてその周辺にある4つの副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の何れか1つ又は複数が同時に加熱駆動されることが特徴である。仮に、4つの副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全ての上方を覆うような大きな外径の被加熱物Nが置かれた場合、4つの副加熱コイルが駆動される制御パターンが、通電制御回路100の制御プログラムの中に用意されている。
実際の駆動パターンとしては、次のものがある。
その1:主加熱コイルMCが加熱駆動されている場合に、同時に副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全部又は一部が、所定の順序や火力で加熱駆動される。
その2:主加熱コイルMCが加熱駆動している期間中、副加熱コイルSC1、SC2、SC3、SC4の全部又は一部が、所定の順序や火力で加熱駆動される。
なお、前記主電源スイッチの操作キー11をONにすると、最初に全ての操作部5A、5B、5C、5D、5Eがトッププレート12の下方にある光源(図示せず)によって照らされ、操作キー群が表示される。そこで所望の操作キーをタッチ操作すると、その操作によってその特定の操作キーに隣接した位置にある表示部10(7、8R、8L、9)の中の何れか1つがバックライトに照らされて表示動作が開始される。例えば操作部5Eを操作すると、表示部9のバックライトだけが点灯する。そこで更に操作を続けると、その操作結果がそのつど表示部10に表示され、必要な情報を表示する。その表示の一環として、静電容量式のタッチ式入力キーを表示する。そして表示された所定のキーをタッチ操作することで、加熱開始の指令を使用者が与えると、後述する通電制御回路100が特定の誘導加熱源を加熱駆動する。
この実施の形態では各種スイッチング回路素子、例えば図5に示すスイッチング素子77A,81A,88A,89Aを珪素によって形成されたものを示したが、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体によって形成してもよい。ワイドバンドギャップ半導体としては、例えば、炭化珪素、窒化ガリウム系材料、ダイヤモンド、ガリウムナイトライド(GaN)などがある。このようなワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子やダイオード素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いため、スイッチング素子やダイオード素子の小型化が可能であり、これら小型化されたスイッチング素子やダイオード素子を用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。
また耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の空冷化が可能であるので、半導体モジュールの一層の小型化が可能になる。
更に電力損失が低いため、スイッチング素子やダイオード素子の高効率化が可能であり、延いては半導体モジュールの高効率化が可能になる。
図2に示したように、本体ケース2内部には、右IH部6R用のインバーター回路24、25を実装した1枚の回路基板4Dと、中央IH部6M用のインバーター回路22、23を実装した2枚の回路基板41B、41Cを設置している。
また同様に、左IH部のインバーター回路20、21を実装した1枚の大きな回路基板41Aを設置している。特に、回路基板41Aに実装されたインバーター回路20、21は、主加熱コイル用のインバーター回路MIVと、4つの副加熱コイルSC用インバーター回路SIVがあり、これらに使用されているスイッチング素子やダイオード素子は、右IH部6R用のインバーター回路24、25や中央誘導加熱源6M用のインバーター回路22、23に比較して遥かに多い。
そこでこれらスイッチング素子やダイオード素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化は、従来にも増して望まれる。
このような課題は、本実施の形態1においては、ワイドバンドギャップ半導体によって形成されたスイッチング素子やダイオード素子を用いることで従来よりも簡単に解決できる。すなわち、ワイドバンドギャップ半導体は耐熱性も高いため、電力の制御に伴って発熱する半導体スイッチング素子を取り付けた冷却用の放熱フィンの小型化が可能となり、結果として回路基板の設置空間も小さくでき、本体ケース2の内部の収納ケース14内に無理なく設置できることになる。このため回路基板を収納する空間の確保のために加熱コイルの大きさや設置位置の自由度も確保できる。結果として本体ケース2の、限られた天面部面積の中で、左IH部6Lのような大きな外径の加熱コイル6LCを含む、複数個の誘導加熱コイル6MC、6RCを横に並べることができ、使い勝手を向上させることが可能になる。
なお、スイッチング素子及びダイオード素子の両方がワイドバンドギャップ半導体によって形成されていることが望ましいが、いずれか一方の素子がワイドバンドギャップ半導体よって形成されていてもよく、上記したような効果を得ることができる。
なお、図8、図12〜図14においてハッチングを施した部分が加熱駆動、又は表示動作を行っている状態を示している。表示部10は、対応する誘導加熱源(IH部)が加熱駆動されない場合は、最初にバックライトが点灯してから一定の時間を経過すると自動的に消灯し、何も表示しない状態に自動的に戻る。
以上のような構成であるから、左IH部6Lでは、主加熱コイルMCだけで加熱調理できるような大きさの被加熱物N、例えば鍋底の直径が140mmの鍋が置かれた場合、直径D2が120mmの主加熱コイルMCだけが通電制御回路100によって加熱駆動される。仮に鍋底の大きさが、長径240mm、短径150mmであるような楕円形又は長方形の鍋や金属性焼き板が置かれた場合、被加熱物Nの載置状態検知部33がその状態を検知し、被加熱物Nの置かれた位置に応じて主加熱コイルMCと、1つ又は複数の側部加熱コイルSCが同時に駆動され、インバーター回路20、21から高周波電力が供給される。
このように、左IH部6Lでは底部の形状が長方径や楕円形などの場合でも、主加熱コイルMCと1つ又は複数個の副加熱コイルSC1〜SC4を組み合わせ、それらの協同加熱によって加熱調理できる。
さらに、中央左IH部の加熱コイル6MLCは直径180mm、中央右IH部の(右側)加熱コイル6MRCの直径も180mm、これら2つの加熱コイル6MLC、6MRCの相互間隔W2は30〜50mmにしてあるので、長径250mm、短径100mmのような非円形の被加熱物N,例えば焼き物用の長方形鉄板が図10に破線で示すように置かれた場合、2つの加熱コイル6MLC、6MRCを協同加熱駆動できる。この場合も、被加熱物載置判断部33が大きな被加熱物Nの載置状態を検知し、2つのインバーター回路22、23から高周波電力が供給される。この場合、2つのインバーター回路から供給される高周波電力は、相互に干渉しないように連携させる。
ここで「連携」とは、2つの加熱コイルの両方を動作させる場合、前記通電制御回路100が、1つのインバーター回路の動作と他のインバーター回路の動作を連携させることであり、加熱の開始、加熱の停止あるいは火力の変更のうち、少なくともいずれか一つのタイミングが一致するようにすることである。このタイミングとは開始の時期と終わる時期の双方が合致することをいう。また1つのインバーター回路の動作周波数と他のインバーター回路の動作周波数が異なる場合、その差が可聴音となり、使用者に不快な異音として聞こえることがある。そこで2つ以上のインバーター回路を同時に動作させる場合、通電制御回路100は動作させる複数のインバーター回路の動作周波数を同一となるように制御している。また温度センサー31の温度検知データに基づいて誘導加熱時の火力を増減させる場合も、使用者が設定した火力が複数のインバーター回路で適当に配分されるように制御している。
この実施の形態1では以上説明したように、左IH部6Lの全部の副加熱コイルSCを包含する円の直径D3(188mm)を参考に、例えば直径200mmよりも大きな異形の被加熱物Nの場合は、隣接する2つの中央左IH部6MLと中央右IH部6MRを協同加熱駆動することで対応できるように、通電制御回路100の制御プログラムを設定しておけば良い。
逆に主加熱コイルMCの直径よりも大きいが、隣接する2つの中央左IH部6MLと中央右IH部6MRでは協同加熱できないような大きさの長円形や長方形の被加熱物Nの場合には、左IH部の主加熱コイルMCと隣接する側部加熱コイルSCとの両者によって協同加熱駆動することで対応できる。
さらに、2つの中央左IH部6MLと中央IH部6MRは、前記したように加熱可能な被加熱物Nの最小外径が150mmになっているので、これら両者の何れでも対応できないような小径、例えば直径130mmの鍋の場合は、加熱コイル径が何れも120mmである右後部IH部6RBと右前部IH部6RFの何れでも加熱できる。
このように、この実施の形態1においては、多種の大きさ、形状の被加熱物Nにも対応して加熱調理でき、利便性が更に向上するものである。
図14に示すように2つの右後部IH部6RBと右前部IH部6RFを協同加熱駆動すれば、更に多様な大きさ、形状の鍋に対応できる。この場合、中央左IH部6MLと中央右IH部6MRは左右に並べてあったので、横方向に長い被加熱物Nに対応できたが、右後部IH部6RBと右前部IH部6Rは前後方向に配置しているので、協同加熱時に前後方向に長い被加熱物Nに対応できる。しかも右後部IH部6RBと右前部IH部6RFは、中央左IH部6MLと中央右IH部6MRの加熱コイルに比較して小径であるため、この右後部IH部6RBと右前部IH部6Rを利用して協同加熱する鍋は、方形の卵焼き用鍋など比較的小型で、片手でも簡単に持てるものである。従って協同加熱域が前後方向にあることで、使用者がそのような鍋の取手を持って調理する場合に鍋の操作をしやすい。
他方、中央左IH部6MLと中央右IH部6MRは、その加熱コイルの直径や配置間隔から見て、協同加熱の対象となる被加熱物Nは、長径が300mmを超えるような大型のものも想定される。そのような大型の鍋は両手で持って取り扱うことから、通常は左右に取手部が突出していることが想定される。しかし、本実施の形態1では、中央左IH部6MLの左側には比較的広い幅W1(この例では150mm以上)が確保され、また中央右IH部6MRの左側には比較的広い幅W3(この例では150mm以上)が確保されているので、中央IH部6Mによる協同加熱時に大型の非円形鍋が置かれても、その左側及び右側位置に隣接した他の加熱部の調理の邪魔になる可能性は少ない。
なお、図14に矢印DY、DXで示すように、2個所で協同加熱する場合、その協同加熱域の長手方向を互いに異ならせることが使い勝手向上から望ましい。協同加熱域の面積が小さい場合は、右後部IH部6RBと右前部IH部6RFの加熱コイル6RBC、6RFCのように前後方向に設けることが望ましい。
なお、図13に示しているように、中央右IH部6MLと、中央右IH部6MRの上方に単一の被加熱物Nが置かれていて、この被加熱物Nを協同加熱モードで駆動する場合、火力を連動して制御する機能を備えている。
また右後部IH部6RBと右前部IH部6RFでも、それら2者の上方に単一の被加熱物Nが置かれていて、この被加熱物Nを協同加熱モードで駆動する場合、火力を連動して制御する機能を備えている。
ここでいう火力の連動とは、使用者が設定した火力の範囲で、中央右IH部6MLと、中央右IH部6MRの間の火力配分が決まることをいう。また右後部IH部6RBと右前部IH部6RFでも同様に使用者が設定した火力の範囲で火力配分が決まることをいう。例えば、使用者が設定した火力が2000Wであった場合、中央右IH部6MLと、中央右IH部6MRの間の火力配分は原則的に1:1であり、2つの加熱部は1000Wずつの火力を発揮するように制御部が適当な制御を行う。例えばインバーター回路の入力側と出力側の電流や電圧などを検知して、目標の火力に近づくようなフィードバック制御をする。仮に加熱コイルが2個でなく、4個同時に通電して協同加熱する場合は、使用者が設定した火力値(例えば2000W)の範囲で、4等分した火力(つまり500W)が各コイルに供給される電力値になるが、瞬間的又は使用者が火力を途中で変更したような場合には、ある時間内では上記のような火力配分にならない場合があるが、そのようなケースでも、実際の調理の出来上がりには悪影響ない。
また左IH部6Lと中央IH部6M全体の定格最大火力を3000Wに統一してあり、また定格最小火力も100Wに揃えてあるので、沸騰後に鍋を隣の加熱部に移動させ、移動された先の加熱部で引き続き長時間煮込み調理をするとき場合も想定されるが、そのような場合でも火力の調節が容易になり、使い勝手が良い。また左IH部6Lと中央左IH部6Mは、火力の段階数と具体的な各段階の火力値も全く同じに設定してあるので、同様に使い勝手が良い。
なお、図10に示すように、中央右IH部6MRは、内側コイル6MRC1と外側コイル6MRC2を別々にインバーター回路23Aと23Bで加熱駆動できるようにしてある。そのため外側コイル6MRC1の外径よりも小さい径の鍋にも対応できる。例えば前述したように、2つの加熱コイル6MLC、6MRCの外径D6、D7は共に180mmに設定されているので、2つの加熱コイル6MLC、6MRCは加熱可能な被加熱物Nの(底面の)最小外径が160mmである。しかし、内側コイル6MRC1の外径寸法を、例えば100mm〜120mm程度にした場合、160mm〜100mm程度の直径の鍋まで対応できる。中央左IH部6MLの加熱コイル6MLCについても、同様に、内側コイルと外側コイルの二重形式にして、内・外を別々に加熱駆動するようにしても良いが、この実施の形態1ではそのような構成にしていない。
また、左IH部6Lにおいても、前記主加熱コイルMCを構成する内側コイル6LC1と外側コイル6LC2を、別々に加熱駆動できるように変更すれば、外径130mmの内側コイル6LC1の単独加熱によって、左側IH部6Rでも更に小径の鍋に対応できることになる。つまり、外径130mmの内側コイル6LC1の単独加熱によって、左側IH部6Rでも更に小径の鍋に対応できることになる。つまり、前述したように、内側コイル6LCの内径D1は60mm、外側コイル6LC2の外径D2は120mmであるから、内側コイル6LCだけを加熱駆動すれば、外側コイル6LC2の外径D2(120mm)よりも小さく直径、例えば100mmの鍋も問題なく加熱できる。
次に、中央右IH部6MR内側の環状コイル6MRC1、外側の環状コイル6MRC2に電流を流して磁界を発生させ、トッププレート21上に載置された鍋を加熱する場合について説明する。
直径寸法の大きい外側の環状コイル6MRC2と、直径寸法の小さい環状コイル6MRC1に同一の電流を流すと、平面積の大きい外側の環状コイル6MRC2から発生する磁界が鍋の加熱に寄与する総量の方が、内側の環状コイル6MRC1よりも大きくなる。
この実施の形態1によれば、外径100mmの内側環状コイル6MRC1と、この外側を囲む外径180mmの外側環状コイル6MRC2との2つの部分から構成し、かつ、この加熱コイル6MRC1、6MC2には、それぞれ個別にインバーター回路23A、23B2から高周波電流が供給され、2つの環状コイルは互いに独立して加熱駆動される。
このため、例えば内側の環状コイル6MRC1だけを駆動して、小径(例えば80mm〜120mm程度)の被加熱物Nを誘導加熱することができる一方、外側環状コイル6MRC2と内側環状コイル6RC1を同時に駆動して(又は短時間に交互通電して)、より大きな直径、例えば200mm程度のものも加熱できる。
さらに、小径の環状コイル6MRC1と大径の環状コイル6MRC2に、それぞれにインバーター回路23A、23B2を接続し、両方の加熱コイルに流れる電流の周波数を同一にしているため、スイッチング素子の動作周波数やデューティを変化させることにより、内側の環状コイル6MRC1と大径の外側環状コイル6MRC2に流す電流を一定の範囲内で任意の異なる値に設定することができる。デューティ比を変化させて電力を調節する場合、スイッチング素子に印加される電圧値が一定の条件では、デューティ比が0.5、つまり、直列に接続された2つのスイッチング素子の導通状態と非導通状態の比率が1:1のときに最も出力が大きくなる。
本構成によれば、インバーター回路23A、23B2から、2つの加熱コイルに異なる電流を流すことができるため、内外それぞれの加熱コイルから発生させる磁界量を変化させることができる。
従来、外側の加熱コイルに対して内側の加熱コイルは加熱コイル径が小さいため加熱に寄与されにくく、外側の加熱コイルが発生する磁界が大きく加熱分布がドーナツ状になっていたが、この実施の形態1では、内側と外側に別々のコイル電流を流すことによって、内側の環状コイル6MRC1に流れるコイル電流を増大させ、加熱量を増やすことにより、中央右IH部の加熱コイル6MRC全体に均一な加熱分布をえることができるようになる。
複数の加熱コイルで1つの鍋を加熱する場合、鍋に与える電力は、それぞれの加熱コイルが鍋に与える電力の和であるため、所定の定格最大火力(例えば2000W)の範囲内で、内側の加熱コイルに流す電流を多くして得られる火力を大きくした量に比例して、外側の加熱コイルに流す電力量を少なくすれば良く、内側と外側の加熱コイルの温度差を小さくすることができる。
また、内側の加熱コイル6MRC1にたくさんの電流を流すことにより、巻数の少なかった内側の加熱コイル6MRC1でも発熱量を大きくすることができる。外側環状コイル6MRC2が発生する磁界が強くなりすぎて、加熱分布が平均化されず、いわゆる外周部分でドーナツ状に加熱の強度が大きかった従来例に比較し、加熱分布を均一状態に近づけることができるため、調理性能のよい誘導加熱調理器を提供することができる。
さらにまた、内側の環状コイル6MRC1と大径の外側環状コイル6MRC2を電気的に直列に接続していた場合、それら内・外加熱コイルには同一電流が流れることになる。それら2つの加熱コイルの集合線の構成(素線径やその本数等)が同じあった場合、電流が流れることができる面積が同一であるため加熱コイルで発生する単位面積あたりの損失は同一となる。
この理由から、大径の外側環状コイル6MRC2の巻数と、内側環状コイル6MRC1の巻き数がこの実施の形態のように同じ場合は良いが、仮に外側環状コイル6MRC2の方の巻き数を多くした場合には、大径の外側環状コイル6MRC2の方が内側環状コイル6MRC1に比較して、放熱され難く、温度上昇も大きいので、使用継続すると内側環状コイル6MRC1よりも高温度になる。
しかしながら、この実施の形態1では、このような「巻き数が異なる」場合でも外側の加熱コイル6MRC2に流す電力量を少なくすることができるので、加熱コイルの最高温度を下げることができる。このため最高温度を意識して送風機19からの冷却風量を大きくするような風路設計が必要なくなり、加熱コイルを冷却するための風量を少なくすることができ、送風機19の回転数を落とすこと等により、静音化も期待できる。
次に本発明の特徴である表示部の動作について説明する。
具体的動作の説明の前に、「初心者モード」と「習熟者モード」の意味、違いについて説明する。
「習熟者モード」とは、この加熱調理器の使用にある程度慣れた主婦などの使用者を想定し、調理条件の設定や加熱の開始、停止などを通常のレベルで要求するものである。
これに対し「初心者モード」とは、この種の加熱調理器の使用に慣れていない使用者や初めて使用する使用者等を想定し、習熟者モードで要求していたような操作手順の一部を省略できるものであり、操作に不慣れな使用者がより簡単に調理でき、かつ的確に操作しやすいようにすることを目的に設けている。対象とする使用者から「初心者操作モード」と呼ぶ場合や、より安心して使用できるという意味から「安心操作モード」と呼ぶ場合もある。簡単操作モードと通常操作モードの違いについては後の説明によっても明らかになる。
また「初心者モード」では、調理器の使用可能な機能が一部制限されるようにしても良い。例えば、操作部に含まれるスイッチのうち、基本的な調理メニューである「加熱」と「揚げ物の自動調理(図示しない赤外線センサー等の温度センサーにより、油温が一定になるように火力が自動制御されるもの)」に関連するスイッチのみが使用可能となり、これ以外の調理メニュー、例えば、高速湯沸し(任意火力で湯沸しでき、最大火力3000Wでも湯沸し可能)や手動揚げ物調理(手動で任意に火力を調節しながら天ぷら等の調理するもの)、自動炊飯の3つを選択するスイッチを使用不能にする(当該スイッチの入力キー自体が操作部に表示されない)というようなものでも良い。
初心者モードのときは、習熟者モードのときよりも詳細な内容の音声ガイドが出力される。初心者モードでは、音声ガイドの内容を詳細にすることにより、加熱調理器の操作に不慣れな初心者等の操作性及び安全性の向上を図っている。また、習熟者モードのときよりも操作部に表示される入力キーの総数を減らすという工夫をしても良い。なお、以下の説明では前記した「初心者モード」と「習熟者モード」の何れか一つを加熱調理器の制御部100が選択する動作を「モード選択」という。
図11に示すフローチャートは、中央右IH部6MRを使用する前提で記載している。
以下、図11の各ステップに基づき説明する。なお、ステップは「ST」と省略する。
(ST1)
使用者は主電源スイッチのキー11をオンにする。これにより制御部100等に電力が供給される。
(ST2〜ST3)
制御部100は、複数個の人検知部112を同時に起動し、所定の短時間間隔で人の存在を繰り返しチェックする。人がいることが検知された場合、次の処理ST4に進む。
(ST4)
制御部100は、初期設定として初心者モードを選択する。さらに制御部100は、その記憶部から初心者モード用のガイド情報を取得し、当該ガイド情報を音声合成装置114に伝達するから、音声合成装置は、初心者モードに応じた音声ガイドをスピーカー113により出力させる。例えば「最初に使用する加熱源を選択して下さい。選択は各加熱源の手前にある入切スイッチにタッチすれば行えます」というような案内をする。
(ST5)
使用者が切入スイッチ51Rを操作した場合、中央右IH部6MRを選択したことになる。
この選択操作が行われないと、如何なる表示部7、8R、8L、9の液晶画面もバックライトが点灯せず、文字や記号などが一切表示されない。
(ST6)
使用者が切入スイッチ51Rを操作した場合、中央右IH部6MRが選択され、表示部8Rの液晶画面もバックライトが点灯し、文字や記号などが表示される。
(ST7)
使用者は表示部8Rの液晶画面の文字や記号を見ながら、調理メニューの選択をする。調理メニューの選択はキー53Rを押すたびに順次表示部8Rに調理の名称などが表示されるので、所望のメニューが表示部8Rに出るまでキー53Rを押す。
(ST8)
使用者が調理メニューの選択をする際に、調理メニューの意味が不明であった場合、あるいは調理メニューを選択した後の操作や調理実行に際しての参考事項や注意事項などを知りたい場合は、前記したヘルプキー54Rを押せば良い。ヘルプキー54Rは、メニューキー53Rが操作された段階や回数に応じて、その場面にあった参考情報や注意事項を音声合成装置114から出力させるように制御部100に操作信号を送信する。
一定時間(例えば10秒間)メニュー選択キー53Rを押さないと、その直前に押した調理メニューを選択したと制御部100が判断し、調理メニューの選択を確定させる。
(ST9)
使用者が調理メニューの選択をする際に、ヘルプキー54Rを何度も押した場合、例えば10秒間に数回押した場合、及び難しい調理メニューを選択した場合、その使用者には更に詳細な情報を優しく伝えることが必要であるという観点で、本来の表示部8Rの左側に隣接している表示部8Lを制御部100が駆動する。但し、既に中央左IH部6MLが加熱調理動作に入っていて、表示部8Lが有用な情報を表示している場合は、即時表示部8Lを表示駆動せず、音声合成装置114で何らかの案内をした上で表示部8Lを起動する。例えば、「現在の表示画面に左側の画面が点灯し、調理の参考情報をご案内します」というような音声ガイドを先に行ってから表示部8Lを駆動する。
一定時間メニュー選択キー53Rを押さないと、その直前に押した調理メニューを選択したと制御部100が判断し、調理メニューの選択を確定させる。
(ST10)
使用者がヘルプキー54Rを何度も押した場合や難しい調理メニューを選択した場合、既に中央左IH部6MLが加熱調理動作に入っていない場合や、加熱調理動作に入っていても、例えば長時間の煮込み調理のように、短時間で鍋の内部の被調理液等が変化することが想定されない場合、制御部100は音声合成装置114で何らかの案内をした上で隣接した表示部8Lを起動する。なお、通常の場面においては、左側の表示部8Lの画面の色がブルー系統であり、一方右側の表示部8Rの画面の色がイエロー系統であった場合、上記のように隣接して一つの加熱部6MRの表示部になる場合には、例外的に色を同じにすることが良い。前記の例では、左側の表示部8Lの画面の色がブルー系統で点灯せず、イエロー系統で点灯し(あるいは途中で、ブルーからイエローに変化し)、使用者が2つの表示部8R、8Lを見た場合、あたかも一つの表示画面であるかの如く見えることが望ましい。そのため、この実施の形態1においては、2つの表示部8R、8Lの表示画面の間の隙間ができるだけ小さくなるように、2つの表示画面の向かい合う端面が、密着又は近接する状態になるように設置してある。
また左側の表示部8Lと右側の表示部8Rが同時に駆動され、その両方の画面の色がイエロー系統になることに加え、前記発光表示部57が黄色の光を出すように発光動作するから、2つの表示部8L、8Rが一つであるという印象を使用者に与えることができる。
(ST11)
使用者がその後、火力設定キー52Rを操作して火力を増減させると、選択した中央右IH部6MRの設定操作は完了し、加熱駆動動作が開始される。なお、ヘルプキー54Rが所定の時間内に操作された回数がゼロ又は少ない場合、制御部100は使用者が習熟者であると推定し、そのまま火力設定のステップST11に処理を進める。これ以後、主電源スイッチが切られない限り制御部100は習熟者モードの制御を行う。一方、制御部100は左側の表示部8Lを点灯させた段階で、この使用者は初心者であると判別し、以後は初心者モードで音声ガイドを行い、また表示部6Rにも表示を詳しく行う。以上のように使用者による通常の加熱調理の操作により、使用者にとって適切なガイド機能のモードが、制御部100によって選定される。
また使用者は自分自身で習熟度を判断して、初心者モードや習熟者モードに切り替える操作を行う必要がない。よって、使用者が自身の習熟度を判断できない場合であっても、使用者にとって適切なガイド機能のモードを設定することができる。
また、操作モードを設定するためだけに別途スイッチを設ける必要がなく、コストの軽減を図ることができる。さらに使用者は、ガイド機能のモードを設定するための操作を行う必要がないので、操作性を向上させることができる。
図15は、中央右IH部6MRが加熱駆動中に、中央左IH部6MLも加熱調理動作に入っていて、2つの表示部8L、8Rにそれぞれ火力情報が文字55L、55Rで表示されている状況を示したものである。
図16に示した状態は、中央右IH部6MRが使用され、中央左IH部6MLは使用されていない状態を示している。表示部8Lは、中央右IH部6MRの表示部8Rと同時に一つの調理メニューに関連した情報を表示している。中央右IH部6MRは火力8で「切りタイマー調理」をしている状態であり、使用者が加熱開始前に設定した加熱時間の内、あと残りは5分間あることを示している。このように加熱動作を大きな火力で続けていると、鍋の中の調理液が沸騰し、予期せぬ状態で鍋の外に溢れ出し、いわゆる「吹き零れ」が発生する場合がある。そこで制御部100は、火力の大きさや加熱継続時間及び温度センサー31Eの情報等から総合的に判断して吹き零れの可能性がある場合、この図16のように「吹き零れ注意」の表示を行う。なお、音声合成装置114によっても、適当なタイミングで1回又は数回に亘り、色々な注意喚起のための音声ガイドを行う。
図17に示した状態は、中央右IH部6MRが使用され、中央左IH部6MLは使用されていない状態を示している。表示部8Lは、中央右IH部6MRの表示部8Rと同時に一つの調理メニューに関連した情報を表示している。表示部8Rによれば、中央右IH部6MRは火力5で「煮込み調理」をしている状態であることを示している。このような煮込み調理は比較的長い時間に亘り小火力、例えば火力2(300W)で加熱を続けていると、鍋の中の調理液の変化は殆どなく、途中で具材への調理液の浸透や火力の調節などが気になることがある。その場合、ヘルプキー54Rを押すと、例えば「火力300Wで既に30分経過したこと」、「鍋の内部温度は略100度に近づいていること」等の情報を制御部100から引き出すことができる。
そのような「現在状況についての情報」の他に、「参考情報」としては図17に示すように、煮込みの仕方についても知ることができる。この場合も2つの表示部8L、8Rは黄色の背景画面で、それぞれ情報を文字55L、55Rで表示し、更に発光表示部57が駆動され、それら2つの表示部8L、8Rを囲むように黄色の光の帯をトッププレート12の表面に表示する。
以上説明したように、この発明の実施の形態1の加熱調理器は、本体1の上部に所定の間隔を持って設置された第1の(誘導加熱方式の)加熱部6MR及び第2の(誘導加熱方式の)加熱部6MLと、この第1、第2の加熱部6ML、6MRの通電を個別に制御する制御部100と、前記本体1に設けられ、前記制御部100に操作指令を与える複数個の操作キーを備えた操作部5と、前記操作キーによって設定された調理条件を表示するため前記本体1に設置された表示部10と、を備え、前記表示部10は、前記第1の加熱部6MRに対応した第1の表示部8Rと、これに隣接した位置にあり前記第2の加熱部6MLに対応した第2の表示部8L、とを備え、前記操作部は、前記第1の加熱部6MRに対応した第1の操作部5Cと、第2の加熱部6MLに対応した第2の操作部5Dとを有し、前記第1の操作部5Cには、加熱部を選択する第1操作キー(切入スイッチ)51Rと、火力を入力する第2操作キー(火力設定スイッチ)52Rと、調理メニューを選択する第3操作キー(メニューキー)53Rとをそれぞれ具備し、前記制御部100は、前記第1操作キー51Rの操作後に、前記第3操作キー53Rが操作された場合、前記第1の表示部8Rには調理メニューを表示し、かつ前記第2の表示部8Lには調理メニューを選択する際の参考情報を表示させる構成である。
このような構成であるから、この実施の形態1においては、本体1の上部に所定の間隔を持って設置された第1の加熱部6MRと第2の加熱部6MLでそれぞれ個別に加熱調理ができるとともに、加熱部6MRに対応した表示部8Rだけでは使用者に有益な情報を十分に表示できないという状況を改善するため、調理メニューキー53Rを操作した場合に、隣りにある加熱部の表示部8Lを利用でき、表示面積が拡大することによって使用者、特に調理器に不慣れな初心者にも有益な情報を表示して知らせることができる。これによって使い勝手の良い加熱調理器を提供することができる。
また、この発明の実施の形態1の加熱調理器では、前記第1の加熱部6MRと第2の加熱部6MLは誘導加熱式加熱部であり、第1の加熱部6MRの誘導加熱コイル6MRCに隣接する位置に第2の加熱部6MLの誘導加熱コイル6MLCがあり、当該2つの誘導加熱コイル6MRC、6MLCは、前記制御部100によって、異なる被加熱物Nを互いに独立して加熱する単独加熱モードと、両者によって単一の被加熱物Nを加熱する協同加熱モードの何れの形態にも通電が制御される構成である。
このような構成であるから、この実施の形態1においては、一つの加熱部では対応できないような大型の非円形鍋(楕円鍋など)にも対応でき、さらに使い勝手を向上させることができる。
なお、以上説明から明らかな通り、実施の形態1に係る誘導加熱調理器は、被調理物を入れる鍋などの被加熱物Nが載置されるトッププレート12を上面に備えた本体1と、前記トッププレート12の下方に隣接して配置された第1の誘導加熱源6MR、第2の誘導加熱源6ML及び第3の誘導加熱源6L、これらの加熱源の各誘導加熱コイル6MRC、6MLC、6LCに誘導加熱電力を供給するインバーター回路20,21、22、23と、このインバーター回路の出力を制御する制御部100と、この制御部に加熱の開始や火力設定などを指示する操作部5と、を有し、前記第3の誘導加熱源6Lは円形状の中央コイル(主加熱コイル)MCと、この周囲に配置した細長形状の複数個の側部コイルSC1と、を備え、前記第1又は第2の何れかの誘導加熱源6MR、6MLには、前記側部コイルを包含する円の直径D4より小さく、かつその中央コイルMCの外径D2よりも大径D6、D7な円形コイル6MRC、6MLCを具備し、前記第3の誘導加熱源6Lは、中央コイルMC単独での誘導加熱と、中央コイルMCと1個又は複数個の側部コイルSCとの協同加熱とを被加熱物Nの大きさに応じて自動的に又は手動にて切り替え可能な構成にしたものである。
これにより限られた面積のトッププレート21の上で、中央コイルMC単独、中央コイルMCと側部コイルSC1〜SC4の協同加熱及び第1又は第2の誘導加熱源6MR、6ML単独加熱、という3つの加熱手段を選択でき、単に2種類の円形加熱コイルを有する従来の2口タイプの調理器よりも幅広い大きさの被加熱部に対応することができ、使い勝手を向上させることができる。
実施の形態2
図18〜図21は本発明の実施の形態2に係る加熱調理器を示しており、図18は、本発明の実施形態2に係る誘導加熱調理器の動作例1を示す全体平面図である。図19は、本発明の実施形態2に係る誘導加熱調理器の動作例2を示す全体平面図である。図20は、本発明の実施形態2に係る誘導加熱調理器の操作部平面図である。図21は、本発明の実施形態2に係る誘導加熱調理器の動作を示すフローチャートである。なお、前記実施の形態1の構成と同一又は相当部分には同一符号を付している。また特に明示しない限り、実施の形態1において用いられた用語は、本実施の形態2でも同じ意味で使用する。さらに図18、19においても、各加熱コイルの上でハッチングを施したものは加熱駆動されていることを示している。また操作部と表示部についても、ハッチングを施したものは駆動されていることを示している。
この実施の形態の調理器は、ビルトイン式の誘導加熱調理器であり、本体1の後部天面には吸気口35Rと排気口35Lが形成されている。この吸気口から室内の空気を送風機(図示せず)で吸引し、本体1内部の電気部品や誘導加熱コイルを冷却した風が排気口35Lから放出されるようになっている。
図18と図19において、6RC1〜6RC4は、右IH部6Rを構成する加熱コイルであり、それぞれ外径寸法が100mm程度の小型加熱コイルであり、前後左右に一定の間隔で合計4個並べてある。
6RLは実施の形態1で示したような左IH加熱部であり、主加熱コイルMCと複数個の副加熱コイルSCから構成させている。
前記各小型加熱コイル6RC1〜6RC4は全て誘導加熱源となるものであり、それらの前後及び左右方向の相互間隔W2は、それぞれ20〜30mm程度である。このためこれら4つの加熱コイル毎に高周波電力を供給するため、インバーター回路(図示せず)は4つ独立して設けてある。
この実施の形態2では、第1の加熱部は右側の2つの小型加熱コイル6RC2、6RC4である。また第2の加熱部は、それら加熱コイル6RC2、6RC4に対して左側位置にある2つの小型加熱コイル6RC1、6RC3である。
左IH部6Lと右IH部6Rとの対向間隔W1は100mm、右IH部6Rとトッププレート12の実質的な右端部までの間隔W6は100mmである。W5は、右IH部6Rとトッププレート21の実質的な前端部までの間隔をいい、40mm〜50mmである。ここで前記「実質的な右端部」、「実質的な前端部」という意味は、トッププレート21の外周縁は、幅が10〜20mm程度の額縁状の枠で覆われているので、その枠までの端部を指す。
図20は本実施の形態2の操作部5の一部を示す図である。本実施の形態2においては、上記実施の形態1の構成に加え、操作キーの下方または近傍に配置された表示灯を備えている。図20に示すように、主電源スイッチの操作キー11の下方には、発光ダイオード(LED。図示せず。表示灯に該当)が配置され、そのLEDが点灯した場合に、所定の明るい色で光る窓91Aが主電源スイッチの操作キー11真横に設けられている。この窓が主電源スイッチ用の表示部となる。
切入スイッチ51Rの下方には同様にLED(図示せず。表示灯に該当)が設けられている。そしてその切入スイッチ51Rの左横にはそのLEDが点灯した場合に、所定の明るい色で光る窓91Bが設けられている。この窓が切入スイッチ51R用の表示部となる。
なお、本実施の形態5ではLEDを用いるが本発明はこれに限らず、任意の発光素子等を表示灯として用いることができる。発光素子は発光部駆動回路(図示せず)を介して制御部100により制御される。その表示部によって発光部駆動回路と発光素子によって「光ガイド部」が構成される。
同様に、火力設定スイッチ52R、52L、切タイマースイッチ58、調理メニューの選択キー53R、後述する切り替えスイッチ59の真横又は手前位置には、それぞれ個別に設けたLED(図示せず。発光素子)の点灯時にそれの光を受けて明るく光る窓91C、91D、91E、91F、91Gがそれぞれ設けられている。これら窓はそれぞれ表示部となる。
59は、4つの小型加熱コイル6RC1〜6RC4の内、前後の加熱コイルを切り替えて使用する場合に使用する切り替えスイッチである。このスイッチを操作すると、例えば右側の操作部8Rを使用する場合、後方の小型加熱コイル6RC2と手前の加熱コイル6RC2の何れか一方を選定できる。また左側の操作部8Lを使用する場合、後方の小型加熱コイル6RC3と手前の加熱コイル6RC1の何れか一方を選定できる。
切り替えスイッチ59を1回押すと、手前の小型加熱コイル6RC1、6RC2が選択され、もう1回押すと後方の加熱コイル6RC3、6RC4が選択される。さらに押すと全ての小型加熱コイル6RC1〜6RC4が選択される。但し、切入スイッチ51Rを押さない限り、右側の小型加熱コイル6RC2、6RC4は動作しない。同様に切入スイッチ51Lを押さない限り、左側の小型加熱コイル6RC2、6RC4は動作しない。この切り替えスイッチ59は、切入スイッチ51R、51Lの何れかを押した場合、押した側の表示部8R又は8Lが駆動されるので、この状態で切り替えスイッチ59を押せば、その押す操作毎に表示部8R又は8Lに選択結果がリアルタイムで表示される。
また、本実施の形態2における表示部10は、制御部100からの指示に従い、前記した各LEDをそれぞれ駆動する。なお、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
このような構成により、制御部100は、まず初心者モードが制御部100によって選択される。
そして、初心者モードが選択され状態において、各操作スイッチのうち、任意の操作スイッチが操作された後、当該操作スイッチの次に操作が可能となる1または複数の操作スイッチの表示灯を、点灯または点滅させ、前記の各窓91A〜91Gの部分が明るく光る。
例えば右側の小型加熱コイル6RC2、6RC4の2つにより協同加熱が開始がされる場合の動作について説明する。
(1)加熱調理器に商用電源が供給され、主電源スイッチの操作キー11を押すと、この部分のLEDを点灯させ、表示部91Aを光らせたままにするので、主電源が入っていることが使用者には容易に目視で分かる。
(2)制御部100は、初期設定として初心者モードを選択する。初心者モードにおいて制御部100は、次に操作が可能となる切入スイッチ51R、51L及び左IH部6Lの切入スイッチ(図示せず)を、表示部91Bを点灯させることで使用者に知らせる。
次に操作すべきキーを示すため表示部91Gを点滅させる。これにより、使用者は、次の順序となる操作スイッチが切り替えスイッチ59であると認識することができる。
また次に操作すべきキーを示すため表示部91Cを点滅させる。これにより、使用者は、次の順序となる操作スイッチが調理メニュー選択キー53Rであると認識することができる。
次に操作すべきキーを示すため表示部91D、91Eを点滅させる。これにより、使用者は、次の順序となる操作スイッチが火力設定スイッチ52Rであると認識することができる。
なお、使用者は、調理メニュー選択キー53Rをタッチ操作した際に、表示部8Rには、湯沸しや保温、揚げ物、煮込み等の複数の調理メニューが表示され、その表示部の画面に直接触れて所望のメニューをダイレクトに選択することができる。
調理メニュー選択キー53Rの選択結果によっては、切タイマー58の表示部91FがLED(図示せず)によって点滅状態に照らされることもある。
使用者が、調理メニュー選択キー53Rをタッチ操作した際に、表示部8Rに加えてその左側に隣接している表示部8Lが駆動される場合がある。例えば前記したように、湯沸しや保温、揚げ物、煮込み等の複数の調理メニューが表示された場合、そのような調理メニューの内容を使用者が直ぐには理解できない場合がある。そこで使用者がヘルプキー54Rを押した場合、表示部8Lが駆動され、その表示画面には各種調理メニューの概要や注意事項などが文字で表示される。なお、この実施の形態2においては、使用者の操作間違いを制御部100が検知し、そのような間違いが一定の回数を超えると、同様に表示部8Lを駆動するところが特徴である。
図21に示すフローチャートは、4つの小型加熱コイル6RC1〜6RC4の全部又はその一部を使用する前提で記載している。
以下、図21の各ステップに基づき説明する。
(ST20)
使用者は主電源スイッチのキー11をオンにする。これにより制御部100等に電力が供給される。
(ST21〜ST22)
制御部100は、複数個の人検知部112を同時に起動し、所定の短時間間隔で人の存在を繰り返しチェックする。人がいることが検知された場合、次の処理ST23に進む。
(ST23)
制御部100は、初期設定として初心者モードを選択する。さらに制御部100は、その記憶部から初心者モード用のガイド情報を取得し、当該ガイド情報を音声合成装置114に伝達するから、音声合成装置は、初心者モードに応じた音声ガイドをスピーカー113により出力させる。例えば「最初に使用する加熱源を選択して下さい。選択は各加熱源の手前にある入切スイッチにタッチすれば行えます」というような案内をする。
(ST24)
使用者が切入スイッチ51Rを操作した場合、4つの小型加熱コイル6RC1〜6RC4の内、右列の2つの加熱コイル6RC2、6RC4を選択したことになる。
この選択操作が行われないと、如何なる表示部8R、8L、9の液晶画面もバックライトが点灯せず、文字や記号などが一切表示されない。今回の場合は、切入スイッチ51Rを操作したことで最も右側の表示部8Rの液晶画面もバックライトが点灯し、表示動作が開始され、次の操作を促す文字や記号などが表示される。
使用者は表示部8Rの液晶画面の文字や記号を見ながら、まず前後の小型加熱コイル6RC2、6RC4の何れを使用するのか、または両方使用するのかを切り替えスイッチ59で選択し、その上で調理メニューの選択をすることになる。調理メニューの選択はキー53Rを押すたびに順次表示部8Rに調理の名称などが表示されるので、所望のメニューが表示部8Rに出るまでキー53Rを押す。
本実施の形態2では、最初は初心者モードを制御部100が選定しているが、この調理メニュー選択やの小型加熱コイル6RC1〜6RC4の選択の場面で、次に操作が可能となる1または複数の操作スイッチ以外の操作スイッチが操作されたとき、つまり誤った操作手順を使用者が行った場合には、隣接する表示部を駆動して、誤った操作の原因やその解消のために使用者に必要な情報を表示することが特徴である。
例えば、切入スイッチ51Rがオン操作された後、次に操作が可能となる操作スイッチは、切り替えスイッチ59である。その次は調理メニューの選択キー53R、最後に火力設定スイッチ52Rである。
従って、切入スイッチ51Rがオン操作された後、その直後に火力設定スイッチ52Rをオン操作しても当該機能を実行しない状態である(不許可状態)。
(ST25)
このように、ある操作スイッチがオン操作された後に、不許可状態にある操作スイッチが操作された場合には、制御部100は、誤操作されたと判断して、その回数をカウントする。そして誤った操作であることを音声合成装置114で報知する。しかし、その次にも再び誤った操作が行われた場合、その操作もカウントする。そしてこのような誤操作回数が所定値を超えた場合、例えば2回になったかどうかを判定する。
(ST26)
誤操作回数が多いと判定された場合、制御部100は初心者モードを維持したまま、次の処理として隣接加熱部の表示部を駆動する処理を開始する。
(ST27)
制御部100は、隣接する左側の表示部8Lを駆動して、誤った操作の原因やその解消のために使用者に必要な情報を表示する。これの表示と同期して、音声合成装置114は同様に使用者に正しい操作のための情報を音声で報知する。
その後、制御部100は、調理メニューの選択キー53Rで調理メニューが行われたかどうかチェック(ST28)し、更に加熱コイル選定が行われたかどうかをチェック(ST29)し、行われた場合、火力設定が行われたかどうかチェック(ST30)し、これらによって最後に選定された加熱コイルによる加熱が本格的に開始される。
(ST31)
一方、誤操作の回数が多くないと判定された場合、制御部100は初心者モードから習熟者モードに制御モードを切り替える。以降、制御部100は、記憶部101から習熟者モード用のガイド情報を取得し、当該ガイド情報に従い、動作状態に応じた音声ガイドをスピーカー113により出力させる。
図18に示した状態は、右IH部6Rの小型加熱コイル6RC1〜6RC4の内、後ろ側にある2つの加熱コイルを協同加熱形態で使用している場合を示す。この場合は、最初に右側の操作部5Cの切入スイッチを選択しても、左側の操作部5Dの切入スイッチを選択して良いが、調理メニューの選択キー53R、53Lの中に「協同加熱」という選択肢を設けてあり、それを選択すると、最初は全ての小型加熱コイル6RC1〜6RC4に鍋が置かれているかどうかの判定が制御部100で行われる。
実施の形態1で示したような被加熱物載置判断部33の動作によって大きな鍋や鉄板が置かれていることを検知するので、そのような鍋や鉄板が置かれた位置、方向によって自動的に駆動される加熱コイルが定まる。従って、切り替えスイッチ59によって使用する加熱コイルを指定しても、結果的に本格的に加熱駆動される加熱コイルが異なる場合があるが、何れにしても左右2つの小型加熱コイルが関わる協同加熱は、図18に示すように左右の表示部8Rと8Lは、調理メニューの選択キー53R、53Lで「協同加熱」という選択がされた時点で、同時に表示動作を行うように連携する。更にこのように2つの隣接する表示部8R、8Lが連携し、かつ協同加熱の場合は、少なくとも加熱を停止、又は火力を下げる、という安全側の操作は、隣の操作部でも実行できるように操作部も連動するようにしている。
例えば、最初右側の操作部5Cで操作開始し、入切スイッチ51Rを押したとしても、その後図18のように、左側後部の小型加熱コイル8RC3と右側後部の小型加熱コイル8RC4との協同加熱になった場合、両方の切入スイッチ51R、51Lの何れを押しても加熱停止でき、また火力は火力スイッチ52R、52Lの何れでも下げることが可能になる。これは協同加熱の過程で、急に吹き零れが発生するような兆候が見えたとき、左右の操作部8R、8Lのどちらを選ぶべきかという判断を不要にし、すばやく対処できるようにするためである。
なお、上記の説明では、不許可状態にある操作スイッチが所定回数以上操作されたときに、隣接する表示部を駆動する場合を説明したが、これに限らず、例えば、不許可状態にある操作スイッチが1回操作されたことと、ヘルプキー54Rが1回でも押されたことをカウントし、表示部8Lを駆動するようにしても良い。なお、実施の形態1のように、ヘルプキー54Rが押されたことの他に、特殊な調理メニューを使用者が表示させたまま、しばらく何もスイッチの操作が無い場合、使用者がメニュー選択に迷っているか、あるいは現在の表示内容だけでは次の操作を理解できない状態になっていると制御部100が推定し、表示部8Lを駆動しても良い。
なお、前述したように、左右に並んだ2つの加熱コイル6RC3、6RC4の組又は加熱コイル6RC1、6RC2の組を使用して単一の被加熱物Nを協同加熱する場合、切入スイッチ51R、51Lの何れか先に押した方の操作部が制御部100によって有効になっているが、協同加熱を開始した後で操作部5Cと5Dの何れでも操作できるようにしても良いし、あるいは一部の入力操作だけに限定して操作できるようにしても良い。例えば、最初に右側の操作部5Cで操作開始して協同加熱開始した場合、左側の操作部5Dからは火力の増加はできないが、切入スイッチ51Lで加熱停止はできるようにしても良い。しかしながら、使用者が混乱することを避けるために、前記したような場合は、左側の操作部5Dからは火力の増減や加熱停止等一切操作ができないようにしても良い。
あるいは、仮に左側の操作部5Dを最初に操作して協同加熱を開始した場合でも、一旦協同加熱開始した場合、右側の操作部5Cを優先するか左側の操作部5Dを優先するかを使用者に選択してもらうようにしても良い。例えば利き手が右手側にある使用者は、操作を右手で行うことが殆どであるから、右に操作部を設定し、左側に参考情報の表示部が表示される方が使い勝手が良い。この場合、もし左側の操作部5Dを最初に操作して協同加熱に至った場合、右側の操作部5Cの表示部8Rが追加で駆動され、調理参考情報などを表示する訳であるが、右操作部5Cへの変更を指令した段階で、図17に示したように、左側に隣接した表示部8L側にそのような調理参考情報の表示が移り、右側の表示部8Rには、本来の火力値等が表示されるように左右表示部8R、8L間で表示情報を入れ替えた形にしても良い。何れにしても、左右に並んだ2つの加熱部で協同加熱する場合、左右にある操作部のどちらを使用するか選択できることが望ましい。もちろん、左右にある操作部5C、5Dのどちらも使用できるようにしても良い。
以上のように本実施の形態2においては、各操作スイッチのうち、任意の操作スイッチが操作された後、当該操作スイッチの次に操作が可能となる1または複数の操作スイッチの表示部を、発光素子からの光によって点灯または点滅状態として目視できる状態にさせる。
このため、上記実施の形態1の効果に加え、発光素子により操作のガイドを行うことができ、操作に不慣れな初心者による操作順序の迷いや誤操作を低減することができる。よって、使用者にとって適切な操作のガイド機能を提供でき、さらに使い勝手を向上することができる。
以上説明したように、この発明の実施の形態2の加熱調理器は、本体1の上部に所定の間隔を持って設置された第1の加熱部を構成する加熱コイル6RC2、6RC4及び第2の加熱部を構成する加熱コイル6RC1、6RC3と、この第1、第2の加熱部の通電を個別に制御する制御部100と、前記本体1に設けられ、前記制御部100に操作指令を与える複数個の操作キーを備えた操作部5と、前記操作キーによって設定された調理条件を表示するため前記本体1に設置された表示部10と、を備え、前記表示部10は、前記第1の加熱部に対応した第1の表示部8Rと、これに隣接した位置にあり、前記第2の加熱部に対応した第2の表示部8L、とを備え、前記操作部5は、前記第1の加熱部に対応した第1の操作部5Cと、第2の加熱部に対応した第2の操作部5Dとを有し、前記第1の操作部5Cには、加熱部を選択する第1操作キー(切入スイッチ)51Rと、他の加熱条件を入力する第2操作キー(火力設定スイッチ52R、調理メニュー選択キー53R)とをそれぞれ具備し、前記制御部100は、前記第1操作キー51Rの操作後に、前記第2操作キーが誤って操作された場合、前記第1の表示部8Rの表示動作中に、前記第2の表示部8Lを表示動作させ、当該第2の表示部には操作を適正に行う際の参考情報又は注意情報の少なくとも何れか一つを表示させる構成である。
このような構成であるから、この実施の形態1においては、本体1の上部に所定の間隔を持って設置された第1の加熱部と第2の加熱部でそれぞれ個別に加熱調理ができるとともに、各加熱部に対応した各表示部8R、8Lだけでは使用者が操作を間違ったり、迷ったりした場合に有益な情報を十分に表示できないという状況を改善するため、誤操作した場合に、隣りにある加熱部の表示部を利用でき、表示面積が拡大することによって使用者、特に調理器に不慣れな初心者にも有益な情報を表示して知らせることができる。これによって使い勝手の良い加熱調理器を提供することができる。
また、この発明の実施の形態1の加熱調理器では、第1の加熱部を構成する加熱コイル6RC2、6RC4と、第2の加熱部を構成する加熱コイル6RC1、6RC3は、何れも誘導加熱で加熱する加熱源になるものであり、しかもそれら2つの誘導加熱源は、前記制御部100によって、異なる被加熱物Nを互いに独立して加熱する単独加熱モードと、両者によって単一の被加熱物Nを加熱する協同加熱モードの何れの形態にも通電が制御される構成である。
このような構成であるから、この実施の形態2においては、一つの加熱部では対応できないような大型の非円形鍋(楕円鍋など)にも対応でき、さらに使い勝手を向上させることができる。
実施の形態3
図22〜26は、本発明の実施形態3に係る誘導加熱調理器を示すもので、図22は、本発明の実施形態3に係る誘導加熱調理器の動作例1を示す平面図である。図23は、本発明の実施形態3に係る誘導加熱調理器の動作例2を示す平面図である。図24は、本発明の実施形態3に係る誘導加熱調理器の操作部拡大説明図1である。図25は、本発明の実施形態3に係る誘導加熱調理器の操作部拡大説明図2である。図26は、本発明の実施形態3に係る誘導加熱調理器の操作部拡大説明図3である。なお、前記実施の形態1の構成と同一又は相当部分には同一符号を付している。また特に明示しない限り、実施の形態1において用いられた用語は、本実施の形態2でも同じ意味で使用する。さらに図22、23において、各加熱コイルの上でハッチングを施したものは加熱駆動されていることを示している。また操作部と表示部についても、ハッチングを施したものは駆動されていることを示している。
図22〜図26において、1はアイランドキッチンとも呼ばれるタイプの誘導加熱調理器本体で、誘導加熱部は全部で4個所ある。
本体1の天面を構成するトッププレート12の下方には、左側から右へ誘導加熱式加熱コイル6LC2、6LC1、6MC、6RCをそれぞれ配置している。
6LC1は左IH部6Lの右側加熱コイル、6LC2は、同じく左IH部6Lの右側加熱コイルで、これら2つの加熱コイルの外径寸法D11、D12は100mm程度である。この左側加熱コイル6LC1は、実施の形態1の図12で示した中央左コイル6MLCに相当し、同じく図22の左側加熱コイル6LC2は、図12の中央右コイル6MRCに相当する。これら加熱コイル6LC1、6LC2の相互間隔W2は50mm程度であり、実施の形態1の図12で示した相互間隔W2に相当する。
6MCは中央IH部6Mの誘導加熱源の加熱コイルで、その外径は180mm程度である。6RCは右IH部6Rの加熱コイルである。前記右IH部6Rの加熱コイル6RCは、コイルを円形に巻いてドーナッツ状に形成した内側コイルと、このコイルの外側に空間を置いてドーナッツ状に形成された外側コイルとの2つの部分からなる主加熱コイルMCと、この主加熱コイルと同心円上でその外周に衛星のように配置された複数個の副加熱コイルSCとから構成されている。各副加熱コイルSCは、実施の形態1の図8で示したような扁平形状であり、主加熱コイルMCの外周縁に沿って全体がその主加熱コイルMC側に湾曲した形状である。右IH部6Rの外径寸法は(全ての副加熱コイルSCを含めて)220mm、主加熱コイルの外径寸法は130mmである。
なお、各加熱コイル6LC1、6LC2、6MC、6RCの最小定格火力は100Wに統一されている。また設定できる火力は、100W、300W、500W、750W、1000W、1500W、2000Wまでは全ての加熱コイル6LC1、6LC2、6MC、6RCで設定できる。中央IH部6Mと右IH部6Rでは、更に2500Wと3000Wの設定ができる。
5は操作部で、本体ケース2の上面で前記トッププレート12より手前に横に長く帯状に設けてある。5Aは右IH部6Rの操作部、5Cは中央IH部6Mの操作部、5E1は左IH部6Lの右側コイル6LC1用の操作部、5E2は左IH部6Lの左側コイル6LC2用の操作部、11は、主電源スイッチの操作キーである。
7は、操作部5Aの中に設けた表示部、8は操作部5Cの中に設けた表示部である。なお、操作部5E1、5E2の部分にもそれぞれ表示部(図示せず)が設けてある。9Rは操作部5E1の中に設けた表示部、9Lは操作部5E2の中に設けた表示部である。
57は実施の形態2で説明したものと同様な発光表示部であり、操作部5A、5Cの後方端部に沿って横に長く設けてある。
図24、25に示すように操作部5A、5Cは、ガラス製トッププレート12の裏面に形成された透明なタッチ電極(図示せず)が入力部となる。つまりトッププレート12の所定部分に予め個別に静電容量変化を検知する電極が蒸着などで設けてあり、その電極部に対応する位置のトッププレート12表面を使用者が指先で触れた場合、当該電極に入力があったことが制御部100で検知される。
一方、各電極部に対応する位置には、その下方にある表示部7の液晶画面で入力キーの機能名称が文字やマークで表示される。文字又はマークが表示されている場合に限り、その真上の位置のトッププレート12表面を触れれば、有効な指令信号が制御部100に入力される。
前記各種入力キーは、図24に示すように、加熱動作開始前の初期の段階では合計7個が表示される。各キーのタッチ部分はその下方にある液晶画面によって照らされ、各キーの位置や機能名称等がトッププレート12の表面に現れる。
各種入力キーとは、ヘルプキー54R、火力設定用の一対の増減キー52R、切入キー51R、メニュー設定キー53R、切タイマーキー60、入力条件の確定キー63Rが初期の段階で表示される。但し、これら7個のキーは常に表示されるものではなく、入力が必要な場面において表示されるように制御部100で制御される。
また図26に示すように隣接する表示部8が表示された段階では、戻りキー65が現れる。このキーを押せば、図24の画面に強制的に戻る。さらに図25の画面に戻るにはヘルプキー54Rを押せば良い。但し、各加熱部の駆動開始と停止機能の入力だけは可能となるように、トッププレート12の表面の特定部分には、切入スイッチのキー(以下、「切入キー」と省略する)51L、51Rの表示を印刷などで常に表示し、その部分を触れた場合、当該切入キーに対応した加熱部の選択が可能となるようにしている。つまり最も右側の誘導加熱部6Rを使用するために表示部7が駆動されている図24の状態で、仮に切入キー51Lにタッチすれば、中央IH部6Mの選択が行われ、中央IH部6Mの表示部8が駆動される。
前記入力キー群の下方には、横長の液晶表示画面を備えた液晶表示基板(表示部7)が配置されている。図24の場面では、表示部7は後方部分で火力の大きさを図形61で表示している。図24の操作部5Aの中に破線の枠で示した部分に、入力結果が文字で表示される。なお、操作部5Cにも操作部5Aの各種キーと全く同じキーが配置され、またその下方には同様に液晶表示画面を備えた表示部8がある。その他操作部5E1、5E2でも同様に表示部9R、9Lが構成されている。
2つの操作部5Aと5Cの液晶基板は全く同じものが使用されている。残りの2つの操作部5E1と5E2の液晶基板も互いに同じものが使用されているが、操作部5Aと5Cの液晶基板に比較した場合、横幅は60%程度である。これは特に右IH部6Rは、主加熱コイルMCと複数個の副加熱(側部加熱)コイルSCを組み合わせた加熱部であり、加熱パターン(主加熱コイルの火力と副加熱コイルの火力比や、その通電タイミング等を含む)が他の加熱部に比較して沢山あり、使用者が火力やメニュー選択の際に操作で判断に迷うことがないよう、多くの情報を示す必要があるから大きな表示面積がある表示部にしている。
以上の構成において加熱動作を開始する場合について説明する。
最初に主電源スイッチの操作キー11をONにすると、最初に全ての操作部5A、5C、5E1、5E2が各表示部7、8、9R、9Lのトッププレート12の下方にある液晶画面の点灯によって照らされ、各種操作キー群が一斉にその画面表面に表示される。
トッププレート12の上から見た場合、そのトッププレート12表面に各操作キーがあるように使用者には見える。そこで所望の加熱部の切入キー(51R、51Lなど)の真上部分にタッチ操作すると、その切入キーに対応した加熱部だけが選択されたことになり、当該加熱部に対応した操作部の表示部だけは表示動作が継続し、他の操作部の表示部は液晶画面が消え、入力キー群が見えなくなる。但し、前述したように、他の加熱部をその後選択する場面を考え、他の操作部でも、切入キーの入力機能は維持される。
図22は、右IH部6Rが加熱動作している場面を示し、操作部5Aの表示部によってその特定の操作キーに隣接した位置にある表示部10(7)の液晶画面だけがバックライトに照らされて表示動作が開始される。そこで更に操作を続けると、その操作結果がそのつど表示部7に表示され、必要な情報を表示する。
図23は、中央IH部6Mの加熱コイル6MCが加熱動作している場面で、操作部5Cの表示部8が駆動された状態を示している。具体的には図25に示すように、ヘルプキー54Rが消え、その消えた部分も表示部8の表示エリア62Lになっている。その表示エリアは図25に破線で示している。一方、操作部5Aでも左側部分にあったタイマーキー60は消え、左側表示エリア62Lの画面を送る(ページめくり)閲覧キー66に機能変更されて入力キーが表示されている。
つまり、操作部5A、5Cの下方にある液晶画面では、破線で示したような2つの表示エリア62R、62Lが隣接して確保されるから、使用者がトッププレート12の上方から見た場合、2つの液晶画面が1つに統合したようなイメージを抱くことが期待される。また表示される文字55R、55Lも図25に示すように、左右方向に表示でき、必要に応じて対応記号55Cも表示し、横に広い液晶画面が形成されたような感じを受ける。なお、閲覧キー66にタッチすると、表示エリア52Lと52Rに表示された情報は順次更新されるので、最初の表示で完全に分らなかった場合でも閲覧キー66をタッチして次のページを見た段階で理解できることになる。
また発光表示部57も所定の光を操作部5A、5Cの後方で帯状に発するので、左右に長い操作部又は表示部が出来たような効果を発揮する。従って図24に破線で示した表示エリアが、図25に破線で示した広い表示エリアに変わるで、使用者に対して表示する情報量は拡大する。また表示する文字の大きさも大きくでき、更に見やすい画面にできる。なおそのような表示エリアに対応するトッププレート12の表面に使用者が触れても、何ら操作指令信号は制御部100に取り込まれない。
以上説明したように、この実施の形態3では右IH部6Rは、主加熱コイルの外径寸法は130mmであるから、小型の鍋も加熱できる一方、右IH部6Rの加熱コイル6RCの最大外径寸法は220mmもあるから、300mm程度の大きな底面を有する鍋も加熱できる。
また中央IH部6Mの加熱コイル6MCの外径は180mm程度であるので、直径200mm程度の標準的な鍋には好適である。さらに左IH部6Lの右側加熱コイル6LC1と左側加熱コイル6LC2は、その外径寸法D11、D12が100mm程度であるので、中央IH部6Mでも右IH部6Rの主加熱コイルMCでも加熱しにくい100mm程度の小径の鍋も加熱できる。
また右IH部6Rでは底部の形状が長方径や楕円形などの場合でも、主加熱コイルMCと1つ又は複数個の副加熱コイルSCを組み合わせ、それらの協同加熱によって加熱調理できる。
なお、各加熱コイル6LC1、6LC2、6MC、6RCの最小定格火力は100Wに統一されており、しかも設定できる火力は、100W、300W、500W、750W、1000W、1500W、2000Wまでは全ての加熱コイル6LC1、6LC2、6MC、6RCで設定できるので便利である。例えば1つの加熱部で長時間の煮込みをしている場合、その加熱部で別の鍋で調理を開始したいと思ったとき、その煮込み調理の鍋を例えば左IH部6Lに移動する場面がある、この場合、左IH部で引き続き同じ火力調節ができるので、移動先での火力調節が容易になるという利点がある。
また、2つの操作部5Aの表示部7と、表示部5Cの表示部7は、できるだけ近接して並んだ状態にすることが望ましい。物理的に離れる場合でも使用者が2つの表示部を同じ視覚の中で認識できる範囲にすることが望ましい。一方の表示部から他方の表示部を見るためその都度視線を移動させる必要がないように配慮すれば、使用者は2つの表示部の表示情報を一体的に理解でき、操作の段階で迷ったような場合でも次の操作手順や現在の調理条件入力状況などを正しく理解しやすくなる。
このように、この実施の形態3においても、実施の形態1と同様に、多種の大きさ、形状の被加熱物Nに対応して加熱調理開始でき、利便性が更に向上するものである。
なお、図10に示した実施の形態のように、2つの加熱コイル6LC1、6LC2を協同加熱できるようにすれば、更に多様な大きさ、形状の鍋に対応できる利点がある。
実施の形態4
図27は、本発明の実施形態3に係る誘導加熱調理器の操作部拡大説明図1である。図28は同じくその操作部拡大説明図2である。図29は同じく操作部拡大説明図3であり、定格電力最大値を変更している段階を示している。なお、前記実施の形態1の構成と同一又は相当部分には同一符号を付している。また特に明示しない限り、実施の形態1において用いられた用語は、本実施の形態2でも同じ意味で使用する。さらに図27の操作部と表示部において、ハッチングを施した部分は、駆動状態又は火力表示状態であることを示している。
この実施の形態4の操作部5は、実施の形態3と同様に構成されているが、異なる部分は、節電効果を発揮させる運転状態(以下、「節電モード運転」という)を使用者が選択できるように、操作部5に節電モード運転の選択キー115を設けた点にある。節電モード運転とは、例えば湯沸しの場合、最大火力は2500Wであり、沸騰してから1分経過時点で火力が300Wまで強制的に下げられ、その下げられた火力で更に3分間加熱動作継続し、3分経過時点で自動的に加熱停止する制御プログラムが実行された加熱動作をいう。
図27に示したように、右IH部6Rを使用することを選択した場合、火力の設定段階で節電モード運転の選択キー115が表示される。この選択キーをタッチ操作すると、表示部7に現れている所定の大きさの表示エリア62Rには、大きな火力で長時間加熱すると、電力量が増えるので、調理の進行に合わせて火力を調節することを推奨する文字が表示される。
また、メニュー設定キー53Rを押し、例えば湯沸しを選択した場合、その後で選択キー115をタッチすると、前記したように、沸騰してから1分経過時点で火力が300Wまで強制的に下げられ、その下げられた火力で更に3分間加熱動作継続し、3分経過時点で自動的に加熱停止する湯沸し方法も表示エリア62Rに表示され、その状態で入力条件の確定キー63Rにタッチすれば、湯沸し制御方法が確定する。メニュー設定キー53Rを押し湯沸しを選択した後、選択キー115をタッチしないと、沸騰してから1分経過時点で火力が300Wまで強制的に下げられることはなく、当初設定した火力での加熱が継続するから沸騰状態が継続する。
また、所定値よりも大きな火力(例えば1000W以上)で加熱動作を開始した場合、図27に示した選択キー115は、被加熱物Nの温度が沸騰に近づいた段階から継続して表示される。また特に他の情報の表示に支障がない場合、適当なタイミングで表示エリア62Rには、現在の火力を1段階下げた場合には、どのくらいの電力削減になるという点について、文字で表示する(電力量の削減率や量に加えて又はそれらに代えて、1分あたりの電気料金を表示しても良い)。特に大火力(例えば2500Wや3000W)で湯を沸かす場合、沸騰してもそのまま火力を落とさないで加熱継続することはエネルギーを浪費する可能性があるので、特別な目的で沸騰を継続する場合(例えば煮沸による殺菌)以外では、火力を早く下げるか加熱を停止することが望ましい。
前記節電モード運転の選択キー115を操作すると、使用者の節電希望にも応えられる参考情報が表示される。なお、図28のように火力を下げることの効果を表示エリア62Rに文字で表示している場合、火力設定用の一対の増減キー52Rにタッチすれば、その時点から火力を変更できる。また左側に隣接した表示エリア62Lを利用し、そのエリアで更に詳しい節電方法や調理条件の設定方法などの参考情報を表示させても良い。
さらに、選択キー115を操作すると、表示エリア62Rに、この加熱調理器の仕様によって定まる定格電力最大設定値を簡単に変更できる操作方法を表示させても良い。例えば一対の増減キー52Rを同時にタッチすると、表示エリアに、200V−30A(6000W),29A(5800W)、24A(4800)、20A(4000W)の4つの中から、1つを選択する方法を具体的に表示する。このようにして定格電力最大設定値を変更できると、一般家庭でのブレーカー(電力遮断器)の容量が十分にない場合、あるいは設置される家屋の内部配線により十分な電力を供給することができない場合、さらには空調機器や電気乾燥機などが同時に使用された場合に、その家庭で契約している電力量を大きく超える事態になる場合などに対応でき、加熱調理器の使用時に突然ブレーカが働いて停電してしまうという事態を避けることができる。
116は変更キーであり、これを1回タッチするたびに、表示エリア62Rの中に、変更する定格電力最大設定値を囲む四角の選択表示用の枠117が右方向に移動した表示になり、30Aの所にある状態から変更キー116を4回タッチすると、枠117は20Aの所に移動する。そこでこの段階でさらに変更キー116を1回タッチすると再び30Aの所に戻るように巡回する。図29に示した状態は、変更前の現時点の定格電力最大設定値が30Aであり、現在29Aに変更できる場面である。この場面で入力条件の確定キー63Rにタッチすれば、定格電力最大設定値が30Aから29Aへの変更操作が確定する。このように変更前後の設定値を同時に並べて表示することは、使用者の視覚による理解を助け、誤解を防止する観点から有益である。なお、この後、表示エリア62Rには、新しい定格電力最大設定値が29Aになったことが文字で表示される(以上の変更動作を、実施の形態1で説明したように、音声合成装置114による音声ガイドによって報知すれば更に良い)。また定格電力最大設定値を変更場面では、誤操作を防止するため、火力設定用の一対の増減キー52Rは表示されない。さらにメニュー設定キー53Rは、前記した変更キー116に変更される。また火力設定用の一対の増減キー5Lは、前記した実施の形態3とは異なり、中央IH部6Mが使用されていない場合は、操作部8には何ら表示されないように制御部100で制御される。
このように、この実施の形態4においても、実施の形態1と同様に、多種の大きさ、形状の被加熱物Nに対応して加熱調理開始でき、利便性が更に向上するものである。
なお、変更キー116と確定キー63Rの2つを操作して定格電力最大設定値を変更する方法を更に簡単にするため、例えば一対の増減キー52Rを同時にタッチした場合、操作部7に、30A、29A、24A、20Aの4つの選択キーを表示させ、それら1つに触れた場合、その操作で定格電力最大設定値を変更する作業を完了させるようにしても良い。つまり、前記変更キー116自体に特定の定格電力最大設定値に設定する機能を持たせ、このような変更キー116を定格電力最大設定値毎に計4個表示させ、その何れか1つを操作した場合にそのキーに対応した定格電力最大設定値になり、仮にこの直後に別の変更キー116を押した場合は、その後で操作した変更キー116に対応する定格電力最大設定値に設定されるという構成である。
また節電モード運転の選択キー115を操作した場合、上記のような定格電力最大設定値を変更することができることを表示し、その具体的作業、例えば特定の2つの入力キーを同時に押すこと等を、文字や図形等で表示エリア62R(必要ならば、更に隣接する表示エリア62L)に表示させても良い。
なお、図27に示したように、切入スイッチ51Rをタッチ操作して右IH部6Rを使用することを選択した場合、その後、複数個の特定の入力キーを(調理では使用しない)特殊な組み合わせで操作した場合、例えば前記したように一対の増減キー52Rを同時にタッチした場合に、火力の設定や調理メニュー等を選択する前の初期の段階で、定格電力最大設定値を変更できる変更キー116を表示させても良い。このようにすれば加熱部が実際に加熱動作を開始する前に、調理器の定格電力最大設定値を簡単に変更できる。なお、一旦設定した定格電力最大設定値は、調理を終了して主電源を切っても制御部(通電制御回路)100の記憶部に記憶されており、次の調理にも適用される。従って、例えば翌日再び調理を開始する際に、切入スイッチ51Rをタッチ操作して右IH部6Rを選択するか、又は切入スイッチ51Lをタッチ操作して左IH部6Lを使用しようとした場合、その時点で設定されている最新の定格電力最大設定値を、最初に表示エリア52Rや52Lに自動的に表示させ、使用者に注意を喚起することができる。
また定格電力最大設定値を変更できる変更キー116は、右IH部6の使用を開始する場合だけではなく、左IH部6Lの使用開始する場合に表示させても良い。右IH部6と左IH部6L(その他加熱部がある場合にはその加熱部を含む)の使用を開始する場合、実施の形態1で説明したような音声合成装置114によって、使用者に対し「現在の定格電力最大値は30アンペアに設定されています。変更する場合は、最初に一対の火力の増減キー52Rを同時に5秒間押して下さい」のように音声でガイドすると更に便利である。
さらに、前記実施の形態1で説明したように、使用者の各種入力キーの操作状態を制御部100が自動的に判定して習熟者モードや初心者モードに自動的に切り替えるように制御部100を構成した場合、あるいはヘルプキー54Rの操作回数や操作頻度などに応じて習熟者モードや初心者モードが自動的に制御部100によって判定されるように構成した場合、初心者モードにおいては定格電力最大設定値を変更できないようにしても良い。実施の形態1においては、初心者モードでは、調理器の使用可能な機能が一部制限されるようにしても良いことを述べたが、習熟者が、定格電力最大設定値を例えば20Aに設定して毎日調理をしているにも拘わらず、初心者がその設定値を解除して30Aに上げて操作できるようにすると、初心者で大きな火力、例えば2つの加熱部で、3000Wと1000Wの加熱を同時にできることになり、初心者モードの方が使用可能な範囲が拡大してしまうことになる。またその後習熟者が再び使用する場合に、初心者の設定をまた元に戻す作業が必要になり、使用頻度の高い習熟者にとって煩わしいことになるからである。
以上の各実施の形態では、加熱部が誘導加熱方式のものである場合について述べたが、加熱部は電熱式又は輻射式の加熱源、例えばニクロム線やハロゲンヒータ、シーズヒータであっても良い。