JP2015107081A - 米粉ベースのパン類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】膨らみが良く、きめが細かい米粉ベースのパン類及びその製造方法の提供。
【解決手段】米粉、ソルガム粉、水、及び米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上の量のグルタチオンを含み、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製される、パン類生地。
【選択図】なし

Description

本発明は、米粉ベースのパン類の製造方法に関する。
近年、米粉の消費拡大を目的として米粉パンの開発が奨励されている。一方、小麦粉パンに含まれるグルテン(小麦グルテン)は小麦アレルギーやセリアック病症状等の原因となることが知られているため、小麦粉の代替品として米粉を使用した米粉パンはそれらの患者向け食品としても注目を集めている。
小麦グルテンは、ふっくらと膨らんだパンを製造する上で重要な成分である。一般的な小麦粉パンの製造においては、小麦粉に水を加えて練り合わせることにより、小麦粉に含まれるタンパク質グリアジンとグルテニンから粘り気と弾力性に富む「グルテン」が生成され、これがパン生地の伸張性及び弾力性を高めることで、発酵・焼成後の小麦粉パンが良好な膨らみや柔らかさを有するようになることが知られている。
しかしグリアジンやグルテニンを含まない米粉のみを主原料(穀物粉)とするパン生地では生地をミキシング(混捏)してもグルテンが生成しない。このため小麦粉パンと同じパン製造法では、米粉パンは十分に膨らまず、いわゆる「パン」を製造できない。そこで市販の米粉パンや米粉パン製造用の市販米粉のほとんどには、小麦粉や小麦グルテンが配合されている。しかしそのような製品は小麦グルテンを比較的高量で含むため、小麦アレルギー患者やセリアック病患者は摂取できない。
グルテンフリーの米粉パンを製造する技術の開発も進められている。例えば、プラスチック発泡成形技術を利用した製パン方法(特許文献1)、α化米粉やα化澱粉を配合した生地を用いる方法(特許文献2及び3等)、増粘剤を添加する方法(特許文献4等)、粉体化・ミキシング技術を利用した製パン方法(特許文献5)などがある。しかし、これらの方法で製造した米粉パンは、小麦粉パンや、グルテン添加して製造した米粉パンに比べてふんわり感、柔らかさなどの点で品質が著しく劣るという問題がある。
本発明者らは、米粉にグルタチオンを配合することにより、膨らみが良くきめの細かいグルテンフリーの米粉パンを製造する方法を開発している(特許文献6)。しかし、この方法では一定量以上の食塩を配合すると米粉パンの膨らみが減少する。このため、パン製造で使用される一般的な量の食塩を配合しても膨らみが良く高品質なグルテンフリーパンを製造可能な、汎用性の高いパン製造方法の開発がさらに求められている。
特開2003−189786号公報 特開2006−174822号公報 特開2007−215401号公報 特開2005−245409号公報 特開2006−006200号公報 国際公開WO 2011/033994
本発明は、膨らみが良く、きめが細かい米粉ベースのパン及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、米粉とソルガム粉を含む混合穀物粉にグルタチオンを配合することにより、増粘剤を添加することなく、また食塩の配合の有無にかかわらず、より高い製パン性を示すパン生地を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] 米粉、ソルガム粉、水、及び米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上の量のグルタチオンを含み、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製される、パン類生地。
一実施形態では、このパン類生地は増粘剤を含まないことが好ましい。
一実施形態では、このパン類生地は食塩を含んでもよい。食塩の含有量は米粉の含有量の0.5質量%以上であってもよい。
一実施形態では、このパン類生地は酵母をさらに含んでもよい。
一実施形態では、このパン類生地は、前記グルタチオンの供給源として酵母エキスを含んでもよい。
このパン類生地に含まれるソルガム粉は、好ましくはホワイトソルガム粉である。
[2] 上記[1]のパン類生地を発酵させ、焼成することを含む、パン類の製造方法。
[3] 上記[2]に記載の方法により製造される、パン類。
[4] 米粉、ソルガム粉、及び米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上の量のグルタチオンを含み、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製される、パン類製造用のミックス粉。
一実施形態では、このミックス粉は増粘剤を含まないことが好ましい。
一実施形態では、このミックス粉は食塩をさらに含んでもよい。食塩の含有量は米粉の含有量の0.5質量%以上であってもよい。
一実施形態では、このミックス粉は、前記グルタチオンの供給源として酵母エキスを含んでもよい。
このミックス粉に含まれるソルガム粉は、好ましくはホワイトソルガム粉である。
[5] 酵母エキスを含有する、米粉及びソルガム粉を含むパン類用の生地改良剤。
本発明によれば、食塩の配合の有無にかかわらず、膨らみが良く、きめの細かい米粉ベースのパンを製造することができる。
図1は、グルタチオンを添加した米粉+ホワイトソルガム粉の混合生地を始めとする、米粉を用いた異なる組成の生地から製造された、パンの断面を示す写真である。 図2は、酵母エキスの製パン性向上効果を示す。図2Aは米粉+ホワイトソルガム粉の混合生地から製造されたパン、図2Bは酵母エキスを添加した米粉+ホワイトソルガム粉の混合生地から製造されたパンの断面を示す写真である。図2Cは、酵母エキス添加パンの比較食味試験の結果を示す。 図3は、米粉:ホワイトソルガム粉の配合比の製パン性への影響を示す写真である。 図4は、米粉パンの製パン性に及ぼす食塩の影響を示す写真である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、穀物粉として米粉及びソルガム粉、さらに水及びグルタチオンを含む、製パン性に優れた米粉ベースのパン類生地、及びそのパン類生地を用いた米粉ベースのパン類の製造方法を提供する。本発明に係る米粉ベースのパン類生地及びパン類は、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製される。
本発明において、米粉は、イネ(Oryza sativa)の種子(生米)を粉末化したものである。米粉は任意のイネ品種・系統又はその改良種若しくは変異種等に由来するものであってよい。米粉は、例えばもち米又はうるち米に由来するものであってよい。本発明で用いる米粉の原料となる米は、グルテン構成タンパク質を含まない。上新粉、玄米粉、白玉粉等の任意の市販の米粉を使用することができる。本発明では、ロール粉砕、胴搗き粉砕、気流粉砕、衝撃粉砕、せん断粉砕など、様々な粉砕法で製粉された米粉を用いることができ、例えば小麦粉並みの粒子サイズまで微粉砕した米粉を用いてもよい。米粉としては、生米を水に浸漬後に微細粒子にすり潰してペースト状にした米ペーストも用いることができる。なお、ここでいう米粉は、米を加熱によりα化(糊化)した後に乾燥・粉末化して得られる、α化米粉を含まない。
ソルガム粉は、ソルガムの種子を粉末化したものである。ソルガムは、モロコシキビ、カオリャン、マイロなどとも呼ばれるイネ科(Gramineae)の一年生草であり、代表例としてソルガム・バイカラー(L.)モエンチ(Sorghum Bicolor (L.) Moench)が挙げられるが、これに限定されず、ソルガム・バルガレ(Sorghum vulgare)、ソルガム・カウダツム(Sorghum caudatum)などの他のソルガム属(Sorghum)一年生植物も含まれる。本発明で用いるソルガム粉の原料となるソルガム種子は、グルテン構成タンパク質を含まない。ソルガム粉は、有色ソルガムの種子に由来するものであってもよいし、ホワイトソルガムの種子に由来するもの(ホワイトソルガム粉)であってもよい。ホワイトソルガム(白高きび)は、渋みの原因となるタンニンの含有量が少なくなるように品種改良されており、本発明におけるホワイトソルガム粉の使用はより好ましい。
米粉及びソルガム粉は、以下に限定されないが、全粒粉であってもよいし、胚乳のみを粉末化したものであってもよい。
本発明において用いるグルタチオンは、酸化型グルタチオン、還元型グルタチオン、又はそれらの混合物であってよい。還元型グルタチオン(GSH)は化学式C10H17N3O6Sで表されるトリペプチド(γ-L-グルタミル-L-システイニルグリシン)である。酸化型グルタチオン(GSSG)は2分子の還元型グルタチオンがシステイン残基でジスルフィド結合したものである。グルタチオンは、種々の公知の製法により製造することができる。還元型グルタチオンの製造方法としては、例えば酵母からの高濃度抽出法(例えば、特開平5−252894号公報)、酸化型グルタチオンの還元(例えば、特開2007−277109、特開2007−254325、特開2007−254324:興人)、酵母変異体を用いるもの(特開2006−42637、特開2006−42638、特開平6−70752:アサヒビール)、培養した海洋性微細藻類からの抽出法(特開平9−292:川崎製鉄)等が知られている。酸化型グルタチオンの製造方法としては、還元型グルタチオンを酸化型グルタチオンに変換する方法(例えば、特開平7−177896号公報)、酸化型グルタチオン高含有酵母を用いる方法(例えば、特開2003−284547号公報、特開2004−283125号公報)等が知られている。グルタチオンは、グルタチオンを多く含む生物、例えば酵母の抽出物(例えば、酵母エキス)から精製することもできる。グルタチオンは、市販品を購入して用いることもできる。
本発明に係るパン類生地は、グルタチオンの供給源として、酵母エキスを含有してもよい。一般的に、酵母エキスはグルタチオンを含有する。つまり酵母エキスの添加により、本発明に係るパン類生地にグルタチオンを配合することができる。酵母エキスは、本発明に係るパン類生地に含まれるグルタチオンの一部又は全部の供給源として生地に含まれてもよい。酵母エキスとは、自己消化、酵素処理、熱水処理等により酵母から得られる抽出物であり、多くの製品が市販されている。酵母エキスは、グルタチオン産生能を有する任意の酵母、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(パン酵母、ビール酵母など)、サッカロミセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastrianus)、サッカロミセス・バヤヌス(Saccharomyces bayanus)、サッカロミセス・カールスバーゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・デルブルエッキ(Saccharomyces delbrueckii)、サッカロミセス・ダイレンシス(Saccharomyces dairensis)、サッカロミセス・ダイアタチクス(Saccharomyces diataticus)、サッカロミセス・エキグース(Saccharomyces exiguus)、サッカロミセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロミセス・ユニスポラス(Saccharomyces unisporus)またはサッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・ローセイ(Saccharomyces rosei)、サッカロミセス・ローキシ(Saccharomyces rouxii)等のサッカロミセス(Saccharomyces)属に属する酵母、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等のシゾサッカロミセス属に属する酵母、トルラ酵母とも呼ばれるキャンディダ・ウチリス(Candida utilis)、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・ミレリ(Candida milleri)、キャンディダ・クルーセイ(Candida krusei)、キャンディダ・ルシターニュ(Candida lusitaniae)等のキャンディダ(Candida)属に属する酵母、トルラスポラ・デルブルッキー(Torulaspora delbrueckii)等のトルラスポラ(Torulaspora)属に属する酵母、トルロプシス・セルクローサ(Torulopsis celluculosa)、トルロプシス・キャンディダ(Torulopsis candida)等のトルロプシス(Torulopsis)属に属する酵母、クルイベロミセス・サーモトレランス(Kluyveromyces thermotolerans)、クリベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、クリベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)、クリベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)等のクルイベロミセス属(Kluyveromyces)に属する酵母、ピヒア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens)、ピヒア・ステイピティス(Pichia stipitis)、ピヒア・アノマラ(Pichia anomala)、ピヒア・サイトイ(Pichia saitoi)等のピヒア(Pichia)属に属する酵母、ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenula anomala)等のハンゼヌラ(Hansenula)属に属する酵母、デバリオマイセス・ハンセニイ(Debariomyces hansenii)等のデバリオマイセス(Debariomyces)属に属する酵母、チゴサッカロマイセス・ルーキシー(Zygosaccharomyces rouxii)等のチゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属に属する酵母等から調製したものであってよい。本発明で用いる酵母エキスは、グルテン構成タンパク質を含まない。
グルタチオンの供給源として用いる酵母エキスとしては、例えば、グルタチオン高含有酵母エキスがより好ましい。グルタチオン高含有酵母エキスは、限定するものではないが、酵母エキスの総重量に対する重量比(質量比)で1%以上、好ましくは5%以上、さらに好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上のグルタチオン(酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの合計量)を含有する。グルタチオン高含有酵母エキスは、例えば、グルタチオン高生産酵母から調製することができる。グルタチオン高生産酵母は、例えば、グルタチオン生産能について、多種多様な酵母株(ランダム変異酵母株のライブラリーなど)をスクリーニングすることにより選抜してもよい。グルタチオン高生産酵母の製造方法は既に様々な方法が知られている。市販のグルタチオン高含有酵母エキスを、本発明において酵母エキスとして用いることもできる。
本発明において、「パン類」とは、主原料として穀物粉(本発明では、穀類の種子の粉砕物をいう)、水、及び酵母、並びに必要に応じて他の原料を含むパン類生地を発酵させた後、焼成して得られる食品をいう。本発明でいう「パン類」は、食パン、菓子パン、調理パン又はその他のパンであってもよいし、一般にパン生地の焼成によって製造される他の食品であってもよい。本発明における「パン類」には、限定するものではないが、例えば、食パン(イギリスパン)、イタリアパン、フランスパン、ロールパン、デニッシュ、クロワッサン、フォッカッチャ、ピロシキ、サワードゥ・ブレッド、バゲット、ブール、バタール、エピ、クーペ、パン・ド・ミー、パン・ド・カンパーニュ、リュスティック、パン・オー・ルヴァン、クルミパン、ブリオッシュ、パン・オ・レザン、サヴァラン、クイニーアマン、ブレーツェル、ホルン、シュトレン、グリッシーニ、パネットーネ、シナモンロール、コーンブレッド、ポーローパーウ、コッペパン等、ピザ、ナン、ワッフル、ベーグル、コロネ、ピタパン等が挙げられる。
本発明は、米粉、ソルガム粉、水、及びグルタチオンを含み、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製される、パン類生地を提供する。本発明に係るこのパン類生地は、酵母をさらに含んでもよい。米粉とソルガム粉の混合生地に一定量以上のグルタチオンを加えることにより、製パン性を向上させることができる。具体的には、パンの膨らみを増大させ、きめを細かくすることができる。
パン類生地は、一般に「ドウ」とも呼ばれる。本発明に係るパン類生地は、焼成前のものである限り、例えば、発酵前のもの、一次発酵後のもの、又は最終発酵後のものであってもよい。本発明に係るパン類生地は、冷蔵又は冷凍されていてもよい。本発明に係るパン類生地は、レトルトパウチ製品であってもよい。本発明に係るパン類生地はまた、部分焼成されているが焼成が完了していない生地も包含する。本発明に係るパン類生地は、焼成前である限り、ミキシング等により調製された生地を容器に入れたり、成形したり、生地に他の食材を混ぜたり包み込んだり載せたりしたものも包含する。
本発明に係るパン類生地は、米粉とソルガム粉を、限定するものではないが、米粉:ソルガム粉=150:10〜90:70、好ましくは150:10〜100:60、例えば140:20〜110:50の質量比(重量比)で含有してもよい。
また本発明に係るパン類生地は、米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上、好ましくは0.12質量%以上(例えば0.2質量%以上、又は0.3質量%以上)、及び2.0質量%以下(例えば、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は0.4質量%以下)、例えば0.1〜1.5質量%又は0.2〜1.0質量%の量のグルタチオンを含む。酸化型グルタチオンを用いる場合は、米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上、好ましくは0.12質量%以上、及び2.0質量%以下、より好ましくは0.2質量%〜1.5質量%、さらに好ましくは0.25質量%〜1.25質量%の量のグルタチオンを含み得る。還元型グルタチオンを用いる場合は、米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上、好ましくは0.12質量%以上、及び1.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%〜1.0質量%、さらに好ましくは0.1質量%〜0.5質量%、例えば0.2質量%〜0.4質量%の量のグルタチオンを含み得る。酵母エキスをグルタチオンの供給源として用いる場合には、本発明に係るパン類生地中のグルタチオンの合計量が上記の量となるように酵母エキスの添加量を調節することが好ましい。パン類生地に添加される酵母エキス由来のグルタチオンの量は、酵母エキスのグルタチオン含有率から算出すればよい。
本発明に係るパン類生地に配合する水の量は、以下に限定するものではないが、典型的には、米粉及びソルガム粉を含む穀物粉の合計量の70〜120質量%、より好ましくは75%〜115%の量である。
本発明に係るパン類生地は、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製されることから、小麦粉由来のグルテン構成タンパク質(グリアジン及びグルテニン)やグルテンを実質的に含まない。さらに本発明に係るパン類生地は、小麦粉以外の穀物粉由来のグルテンも実質的に含まないことが好ましい。本発明に係るパン類生地はまた、グルテン構成タンパク質やそれを含む小麦粉以外の穀物粉(大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)も実質的に含まないことが好ましい。このため、好適な実施形態では、本発明に係るパン類生地は、グルテン構成タンパク質を含むいずれの穀物粉(大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)も原料として使用せずに調製される。グルテン構成タンパク質及びそれを含む穀物粉、並びにグルテンが、生地の原料としては使用されていないにもかかわらず、パン類製造工程において微量に混入する場合は、本発明に係るパン類生地は、それらを「実質的に含まない」ものとする。例えば、小麦粉パンやライ麦パンと同じ製造ラインを使用することにより、本発明に係る米粉ベースのパン類生地に小麦粉やライ麦粉、グルテン等が微量に混入する場合は、本発明に係るパン類生地は小麦粉やライ麦粉、グルテン等を実質的に含まない。より具体的には、グルテンの含有量が、穀物粉(米粉及びソルガム粉;微量に混入した穀物粉は除く)の合計量の0.5%未満(好ましくは0.1%未満)である場合、本発明に係るパン類生地はグルテンを「実質的に含まない」ものと定義される。また、グルテン構成タンパク質又はグルテン構成タンパク質を含む穀物粉(小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)の混入量が、穀物粉(米粉及びソルガム粉;微量に混入した穀物粉は除く)の合計量の1.0%未満(好ましくは0.1%未満)である場合、本発明に係るパン類生地はグルテン構成タンパク質、又はグルテン構成タンパク質を含む穀物粉を「実質的に含まない」ものと定義される。
なお本発明において、グルテン、グルテン構成タンパク質、又はグルテン構成タンパク質を含む穀物粉を「実質的に含まない」ことの上記基準は、パン類生地だけでなく、パン類、ミックス粉についても同様に適用される。
本発明に係るパン類生地は、グルテンフリーであることも好ましい。本発明に係るパン類生地はまた、グルテン構成タンパク質やそれを含む穀物粉(小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)を含まない(検出限界以下)ことがさらに好ましい。本発明において「グルテンフリー」とは、グルテンの含有量が当該食品の総重量(総質量)の0.002%以下(20mg/kg以下)であることを意味する。これは2008年にコーデックス(Codex)委員会が「グルテンフリー」の基準として設定した値である。典型的には、グルテンフリー製品専用の製造ラインを用いて本発明に係るパン類生地等を製造することにより、小麦粉やグルテン等の混入を防止し、グルテンフリーのパン類生地を製造することができる。
本発明において用語「グルテン」は、小麦粉由来の小麦グルテンの他、他の穀物粉由来のグルテン様タンパク質も包含する。グルテンは、穀物粉に含まれるグルテン構成タンパク質(小麦粉の場合、グリアジンとグルテニン)が水の存在下で反応することで生じる。小麦のグリアジンに対応するグルテン構成タンパク質は、大麦ではホルダイン、ライ麦ではセカリン、オーツ麦ではアベニンと呼ばれている。
本発明に係るパン類生地を発酵させるために、酵母(イースト)が用いられる。本発明に係るパン類生地は酵母を含んでもよい。あるいは本発明に係るパン類生地は酵母を含まなくてもよく、その場合は発酵に供する前に生地に酵母を添加して混合すればよい。本発明に係るパン類生地の発酵に用いる酵母は、典型的には、パン酵母(パン製造に使用されるサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株)である。本発明に係るパン類生地の発酵に用いる酵母は、グルテン構成タンパク質を分泌しない。酵母は、乾燥イーストであっても生イーストであってもよい。また酵母は、いわゆる発酵種(スターター)に含まれるものであってもよい。発酵種は、自然界に存在する酵母を発酵・増殖させて得られる発酵物であり、パン酵母以外に乳酸菌等の多様な微生物を含み得る。そのような発酵種を酵母の供給源として、パン類生地に混合してもよい。但しグルテンフリーの生地を製造する場合には、発酵種の調製もグルテンフリーの原料を用いて行う必要がある。当業者であれば、使用する生地に適した酵母の添加量は適宜調節することができるが、一般的には、乾燥重量で穀物粉(米粉とソルガム粉)の合計量の0.5〜5質量%となる量の酵母を用いればよい。酵母は、用いる株又は製造手順等に応じて、例えば、最初から穀物粉に混合してミキシングしてもよいし、一旦ミキシングした後の生地に添加してさらにミキシングしてもよい。また、予備発酵を行った後の酵母を穀物粉又は生地に添加してもよいし、予備発酵を行うことなく酵母を穀物粉又は生地に直接添加してもよい。
本発明に係るパン類生地は、増粘剤を含まなくてもパンに良好な膨らみをもたらすことができる。したがって一実施形態では、本発明に係るパン類生地は、増粘剤を含まないことも好ましい。本発明において増粘剤とは、粘度を高めるために使用される食品添加剤を意味する。増粘剤としては、以下に限定するものではないが、例えば、ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギーナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ローカストビーンガム、マンナン、α化澱粉(タピオカ粉、コーンスターチ、葛澱粉、馬鈴薯澱粉など)等の多糖類(増粘多糖類)が挙げられる。なお本発明に係るパン類生地は、上記の米粉及びソルガム粉等に加えて、α化米粉をさらに含んでもよいが、含まなくても良好な膨らみをもたらすことができる。α化米粉の含有量は、以下に限定するものではないが、例えば、米粉とソルガム粉の合計量の1.0質量%未満、例えば0.1質量%未満であってよい。
さらに、本発明に係るパン類生地は、食塩を含んでも、含まなくてもよい。本発明に係るパン類生地は、パン類に適した量の食塩を含むことができ、限定するものではないが、例えば、穀物粉の合計量の5%以下、例えば3%以下の量の食塩を含みうる。なお本発明におけるこのような食塩含有量は、食塩に含まれる塩化ナトリウム量に基づいて計算するものとする。限定するものではないが、塩味の点では、穀物粉の合計量に対して例えば0.5〜2.0質量%程度の量の食塩を含むパン類生地がより好ましい。さらに本発明に係るパン類生地は、米粉の含有量の0.5質量%以上(米粉100gに対し0.5g以上)の食塩を加えても、膨らみやきめ細かさがほとんど損なわれない。穀物粉として米粉のみを含むグルタチオン含有パン類生地がこのような量の食塩を含んでいると、パンの膨らみが低減してしまう。しかし本発明では、米粉にソルガム粉とグルタチオンを加えることにより、生地にそのような量の食塩が含まれていても又は食塩が含まれなくても、良好な膨らみのパンを製造することが可能になった。したがって本発明では、パン類における塩分の調節がしやすく、様々な塩分濃度の多様なパン類の製パン性を向上させることができる。一実施形態では、本発明に係るパン類生地は、米粉の含有量の0.5質量%以上、典型的には、米粉の含有量の0.5質量%〜5%、例えば米粉の含有量の0.5質量%〜3質量%又は1.0質量%〜2.5質量%の量の食塩を含んでもよい。
本発明において「食塩」とは、食品グレード又は医薬品グレードの塩(塩化ナトリウムを主成分とする)を意味するものとする。食塩は主成分の塩化ナトリウムに加えて、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の他の無機塩類を含んでいてもよい。任意の食塩製品を、本発明に係るパン類生地に配合する食塩として用いることができる。例えば、市販の精製塩などの高純度塩(ほぼ塩化ナトリウムのみを含有する)や、未精製塩(塩化ナトリウムを主成分とするが、他の無機塩類をより多い量で含有する)などを用いることができる。精製塩(乾燥重量で99%以上の塩化ナトリウムを含有する)をパン類生地に添加する場合、精製塩の量はその塩化ナトリウム含量とほぼ等しいことから、パン類生地における食塩の含有量は、精製塩の添加量に基づいて計算することができる。一方、未精製塩(乾燥重量で99%未満の塩化ナトリウムを含む)をパン類生地に添加する場合、パン類生地における食塩含有量は、添加した未精製塩のナトリウム含量から算出される塩化ナトリウム相当量に基づいて計算する。なお塩化ナトリウム相当量は、ナトリウム含量に2.54を乗算することによって算出される。
本発明に係るパン類生地は、上述した原料以外の副原料をさらに含んでもよい。そのような副原料としては、パン類製造に一般的に用いられる副原料、例えば、糖類(砂糖、ぶどう糖、果糖、蜂蜜、麦芽糖、黒糖、トレハロース、グラニュー糖等)、油脂類(オリーブ油などの植物油脂、ラードなどの動物油脂、ショートニング、マーガリン、バター等)、乳製品(牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、練乳、生クリーム、チーズ等)、卵、デンプン、パン類に含める他の食材(ナッツ類、レーズン類、果実、野菜、コーン等の豆類、魚・肉類、クリーム、あんこ、マヨネーズ、ココアパウダー、チョコレート、ハーブ等)、香辛料、酵素(アミラーゼ、プロテアーゼ等)、イーストフード、ビタミンC、乳化剤、保存料、香料、着色料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に係るパン類生地への糖類(例えば砂糖)の添加量は、以下に限定するものではないが、例えば穀物粉の合計量の30質量%以下であってよく、1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがさらに好ましい。糖類は、本発明に係るパン類生地のミキシング前に穀物粉に加えてもよいし、ミキシング中に加えてもよいし、ミキシング後の生地に酵母と共に加えてもよい。
本発明に係る米粉ベースのパン類生地は、小麦粉などのグルテン構成タンパク質を含む穀物粉やグルテンを配合することなく良好な品質のパン類を製造することができる。したがって、本発明に係るパン類生地は、小麦アレルギー患者やセリアック病患者の摂取に適したパン類(特に好ましくは、グルテンフリーパン類)の製造に好適に用いることができる。
本発明に係るパン類生地は、穀物粉(米粉及びソルガム粉)、グルタチオン、水、及び必要に応じて酵母、食塩及び副原料などを混合し、一以上の工程によりミキシングすることにより製造することができる。食品加工分野において「ミキシング」とは、粉体及び液体を含む原料混合物をその成分を均一に分散させるように練ることをいう。食品加工分野、特にパン製造分野では、「ミキシング(mixing)」は、「混捏」又は「捏ね上げ(kneading)」とも呼ばれる。本発明においてミキシングは、例えばミキシング装置やホームベーカリー等の攪拌機能により行うこともできるし、手で行うこともできる。ミキシングは、製パンにおいてミキシングに用いられる通常の温度で行えばよく、特に制限するものではないが、一般的には、例えば15℃〜32℃程度、好ましくは18〜30℃で行えばよい。ミキシングは当業者に公知の通常のミキシング時間、例えばミキシング工程1回につき3分〜40分程度で行うことができるが、好ましくはミキシング工程1回につき10〜30分程度行えばよい。
本発明に係るパン類生地は、穀物粉(米粉及びソルガム粉)、グルタチオン、水、及び必要に応じて酵母、食塩及び副原料を1つに混ぜ合わせ、それを一工程でミキシングすることを含む方法により調製してもよい。あるいは本発明に係るパン類生地は、2以上のミキシング工程を含む方法で製造することもできる。一実施形態では、例えば、穀物粉、グルタチオン及び水並びに必要に応じて食塩及び副原料を1つに混ぜ合わせ、ミキシングした後、酵母、糖類、及び必要に応じて他の副原料をさらに添加し、ミキシングすることを含む方法により、本発明に係るパン類生地を調製することもできる。最終的なミキシング後に、副原料(ここでは、例えば、ナッツ類、チーズなど)をさらに添加(例えばトッピング又は埋め込み)してもよい。別の実施形態では、穀物粉、グルタチオン及び水、並びに必要に応じて食塩及び副原料(例えば、糖類)を1つに混ぜ合わせ、ミキシングして、酵母を添加することなしに本発明に係るパン類生地を調製してもよい。酵母を含まないパン類生地をパン類の製造に用いる際には、酵母を添加して十分に混合した後、発酵工程に供すればよい。
酵母及び糖類を含む本発明に係るパン類生地を製造する場合には、穀物粉、グルタチオン、水及び必要に応じて食塩及び副原料を1つに混ぜ、ミキシングした後、一定時間放置して十分な浸漬時間を置いてから、酵母及び糖類を添加することがより好ましい。この場合、穀物粉、グルタチオン及び水等をミキシングした後、酵母及び糖類を添加するまで、おおむね冷蔵温度〜室温(4〜30℃)で20分以上、通常は二晩以下、より好ましくは4〜24時間、さらに好ましくは一晩(7〜18時間、例えば12時間)置けばよい。これにより、穀物粉を水に十分に浸漬させることができる。浸漬時間をより長くすることで、製パン性(パン類の膨らみ、きめの細かさ等)をより大きく向上させることができる。浸漬時間経過後の生地に酵母を添加してさらにミキシングすることにより、パン類生地により安定した膨張性をもたらすことができる。
上記のようにして製造したパン類生地は、パン類の製造に用いられる任意の方法で発酵させることができる。酵母を含まない本発明に係るパン類生地には、酵母及び必要に応じて副原料(例えば、糖類)を添加して混合してから、発酵工程に供すればよい。例えばパン類生地は、酵母及び好ましくは糖類の存在下で、発酵に適した温度(4〜50℃、通常は25〜45℃)下に通常は20分〜4時間程度(より一般的には40分〜2時間程度)置くことにより、発酵させることができる。発酵は、1回の発酵工程のみで行ってもよいし、2回以上の発酵工程で行ってもよい。例えばパン類生地について、好ましくは比較的低温(例えば15〜32℃)で15分〜2時間程度(より一般的には30分〜90分程度)置くことにより発酵させる一次発酵(フロアタイムとも呼ぶ)を行ってもよい。一次発酵によりある程度発酵が進んだ段階で、さらに4℃〜45℃(より好ましくは25〜42℃)で通常は15分〜2時間程度(より一般的には30分〜90分程度)にわたりさらに発酵させてもよい(ホイロと呼ばれる最終発酵)。このような二段階の発酵においては、一次発酵後に生地を分割及び/又は成形し、また湿度及び温度を保った状態で生地を休ませる(ベンチタイム)ことで伸展性を回復させた後、さらに最終発酵させてもよい。成形工程は、ベンチタイムの後に行ってもよい。成形工程では、生地をパン類の所望の形状(例えば、棒状、ロール状等)に成形したり、クリーム等の食材を中に入れたりトッピングを施したりすることができる。あるいは、本発明に係るパン類生地は、ミキシング後、最初に生地を成形して又はパン類成形用の容器(型)に入れて発酵工程を開始することにより、最終発酵の完了まで中断なしで発酵工程を行ってもよい。本発明に係るパン類生地は、一般的な製パン法である、ストレート法、中種法、液種法、シトギ法等の任意の方法を用いて製造することもできる。本発明における発酵はまた、冷蔵庫で二晩保温する低温発酵等の他の様々な公知のパン類発酵手法を用いて行うこともできる。
ミキシング、分割、成形、又は発酵後、本発明に係るパン類生地を任意の方法で例えば密封容器又は密封袋などにパッケージングしてもよい。本発明に係るパン類生地については、例えば殺菌や冷凍等の処理を行ってもよい。
本発明は、上記のようなパン類生地の製造方法も提供する。本発明に係るパン類生地の製造方法は、米粉、ソルガム粉、米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上の量のグルタチオン、水、及び必要に応じて他の原料を含むパン原料をミキシングする工程を含む。本発明に係るパン類生地の製造方法は、ミキシング工程に加えて、場合により分割工程、成形工程、1回以上の発酵工程、パッケージング工程、殺菌工程、及び冷凍工程等の1つ以上の任意の工程を含んでもよい。
本発明に係るパン類生地を上記のようにして発酵させた後、焼成(ベーキング)することにより、本発明に係るパン類を製造することができる。生地の焼成は、常法により行うことができる。具体的には、生地をオーブン、電子レンジ、釜、蒸し器等の任意の手段で加熱(例えば100℃〜240℃での加熱)することにより焼成工程を実施すればよい。焼成時間は、一般的には5分〜100分程度である。焼成温度や焼成時間は、当業者であれば適宜調節することができる。焼き上がったパン類に、さらにナッツ類、果実、クリーム、シロップ等をトッピングしたり、惣菜やハム等を挟んだりして、菓子パンや調理パン等を製造することもできる。このようにして加工されたパン類も本発明に係るパン類の範囲に含まれる。本発明はまた、上記のような本発明に係るパン類の製造方法も提供する。
本発明によって提供される米粉ベースのパン類は、膨らみが良く、きめが細かく、食感良好である。また本発明に係るパン類は、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに製造されることから、小麦粉由来のグルテン構成タンパク質(グリアジン及びグルテニン)やグルテンを実質的に含まない。本発明に係るパン類は、小麦粉以外の穀物粉由来のグルテンも実質的に含まないことが好ましい。このため、好適な実施形態では、本発明に係るパン類は、グルテン構成タンパク質を含むいずれの穀物粉(大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)も原料として使用せずに製造される。本発明に係るパン類はまた、グルテン構成タンパク質やそれを含む小麦粉以外の穀物粉(大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)も実質的に含まないことが好ましい。本発明に係るパン類はグルテンフリーであることがさらに好ましい。本発明に係るパン類はまた、グルテン構成タンパク質やそれを含む穀物粉(小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)を含まない(検出限界以下)ことがさらに好ましい。本発明に係るパン類(特に、グルテンフリーパン類)は、小麦アレルギー患者やセリアック病患者などグルテン摂取を回避すべき人に対し特に好適である。また一般に、パンの製造には食塩が必須であるが、米粉に一定量以上の食塩とグルタチオンを添加すると製パン性が低下する。しかし本発明では米粉の代わりに米粉とホワイトソルガム粉を用いることによって、一定量以上の食塩を配合しても、膨らみが良く、きめが細かい、製パン性の良いパン類を製造することが可能になった。したがって本発明は、より風味が良く高品質な米粉ベースのパン類を提供することができる。一方で、本発明では、食塩を無添加又は減量しても膨らみの良い、きめの細かいパン類を製造できることから、減塩が求められる高血圧病や腎臓病患者用食、その予防食としても利用可能な、食塩を無添加又は減量した米粉ベースのパン類も提供する。
本発明はまた、本発明に係るパン類製造用のミックス粉(一般に、プレミックスとも称される)も提供する。具体的には、本発明に係るミックス粉は、米粉、ソルガム粉、及び米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上、好ましくは0.12質量%以上(例えば0.2質量%以上、又は0.3質量%以上)、及び2.0質量%以下(例えば、1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は0.4質量%以下)、例えば0.1〜1.5質量%又は0.2〜1.0質量%の量のグルタチオンを含む。このミックス粉に水を添加して一段階又は二段階以上のミキシング工程でミキシングすることにより、本発明に係るパン類生地を簡便に調製することができる。あるいはこのミックス粉は、上記のパン類生地と同様に、酵母、食塩、及び/又は上記副原料をさらに含んでもよい。本発明に係るミックス粉はグルタチオンの供給源として酵母エキスを含んでもよい。本発明に係るミックス粉に含まれるグルタチオン量、米粉とソルガム粉の質量比(配合比)、酵母の量、食塩の含有量等は上記のパン類生地に関する記載と同様である。本発明に係るミックス粉はまた、上記のパン類生地と同様に、増粘剤を含まないことも好ましい。本発明に係るミックス粉は、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製されることから、小麦粉由来のグルテン構成タンパク質(グリアジン及びグルテニン)やグルテンを実質的に含まない。本発明に係るミックス粉は、小麦粉以外の穀物粉由来のグルテンも実質的に含まないことが好ましい。このため、好適な実施形態では、本発明に係るミックス粉は、グルテン構成タンパク質を含むいずれの穀物粉(大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)も原料として使用せずに調製される。本発明に係るミックス粉はまた、グルテン構成タンパク質やそれを含む小麦粉以外の穀物粉(大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)も実質的に含まないことが好ましい。本発明に係るミックス粉はグルテンフリーであることがさらに好ましい。本発明に係るミックス粉はまた、グルテン構成タンパク質やそれを含む穀物粉(小麦粉、大麦粉、ライ麦粉、オーツ麦粉、又はそれらの交配雑種の穀物粉など)を含まない(検出限界以下)ことがさらに好ましい。
本発明はまた、酵母エキスを含有する、米粉及びソルガム粉を含むパン類(好ましくはグルテンフリーパン類)用の生地改良剤も提供する。この生地改良剤は、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製され、グルテン等を実質的に含まない本発明に係るパン類の製造のための生地改良剤であり得る。この生地改良剤は、酵母エキスに含まれるグルタチオンを有効成分とし、米粉及びソルガム粉の製パン性を向上させるために用いられる組成物である。本発明に係る生地改良剤は、賦形剤、保存剤、香料、着色料、ビタミンC、乳化剤等の食品添加剤を含んでもよい。本発明に係る生地改良剤の形態は特に限定されず、粉末状、顆粒状、固体状、液状、ペースト状、乳液状、マイクロカプセル封入形態等の任意の形状であってよい。この生地改良剤に用いる酵母エキスは、5%以上、さらに好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上のグルタチオン(酸化型グルタチオンと還元型グルタチオンの合計量)を含有するものであり得る。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では、米粉として、うるち米を原材料とし、製菓用米粉として市販されている薄力米粉V(株式会社波里製)を使用した。また、ホワイトソルガム粉はホワイトソルガム(Sorghum Bicolor (L.) Moench)の全粒粉(中野産業株式会社製)を用いた。両者とも、小麦粉等のグルテン構成タンパク質を含む穀物粉及びグルテンを含まない。グルタチオンとしては、酸化型グルタチオン(GSSG;ナカライテスク社製)又は還元型グルタチオン(GSH;Sigma-Aldrich社製)を使用した。塩化ナトリウム含有量99%以上の精製塩を食塩として使用した。
[実施例1]グルタチオンを添加した米粉+ホワイトソルガム粉の製パン性
ホームベーカリー(SPM-KP1、三洋電機株式会社)のパンケースに、(i) 米粉160g、(ii) 米粉160g及び酸化型グルタチオン1g、(iii) 米粉130g及びホワイトソルガム粉30g、又は(iv) 米粉130g、ホワイトソルガム粉30g、及び酸化型グルタチオン1gを入れ、良く混合した。これに水140gを入れ、「パン生地コース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシング(混捏)した後、室温で一晩放置し、米粉を水に浸漬させた。これに、翌朝、砂糖を7.5g、パン用乾燥酵母(日清フーズ社製)を2.5g添加した後、「パン生地コース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシング(混捏)した。これより得られた生地(ドウ)200gを角形パンケースに計りとり、オーブンレンジ(EMO-C16C、三洋電機株式会社)で40℃、60分間発酵した後、180℃で24分間焼成して、パンを製造した。
焼成した翌日、各パン試料を、重量計測及びレーザー体積計(SELNAC-WinVM2100A、株式会社アステックス)による形状計測に供試し、パンの膨張性の指標である比容積(mL/g)を得た。比容積は、パン1g当たりの容積(ml/g)である。得られた結果を表1に示す。
Figure 2015107081
さらに断面を観察し、きめの細かさを目視により評価した(図1)。
グルタチオンを添加した米粉とホワイトソルガム粉の混合生地から得られたパン(グルテンフリーパン)は、他の生地のパンと比較して膨らみが大きく、柔らかくきめが細かかった。グルタチオン無添加の米粉とホワイトソルガム粉の混合生地から得られたパンも、米粉生地のパンと比較すると膨らみは良いが、気泡膜が厚く、そのためパンは硬くきめが粗かった。これは、米粉へのホワイトソルガム粉の添加が、強固な気泡骨格形成を可能にする一方で、気泡膜を厚くしきめを粗くしたためと考えられた。一方、グルタチオンを添加した米粉とホワイトソルガム粉の混合生地では、より大きな膨らみときめの細かさを両立できたことから、グルタチオンはホワイトソルガム粉の添加による強固な気泡骨格形成を損なうことなく、むしろ気泡骨格形成を促進しつつ、気泡の薄膜形成をも可能にし、きめの細かい柔らかいパンをもたらしたと考えられた。またグルタチオンを添加することで、米粉とホワイトソルガム粉を含むパン生地に増粘剤を添加しなくても、膨らみが大きくきめの細かいパンを製造できることも示された。
[実施例2]酸化型グルタチオンの製パン性向上効果
ホームベーカリー(SPM-KP1、三洋電機株式会社)のパンケースに薄力米粉V(株式会社波里製)130g、ホワイトソルガム粉30g、酸化型グルタチオン0〜10gを入れ、良く混合した。これに水140gを入れ、「パン生地コース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシング(混捏)した後、室温で一晩放置し、米粉を水に浸漬させた。これに、翌朝、砂糖を15g、パン用乾燥酵母(日清フーズ社製)を2.5g添加した後、「パン生地コース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシング(混捏)した。これより得られた生地200gを角形パンケースに計りとり、オーブンレンジ(EMO-C16C、三洋電機株式会社)で40℃、60分間発酵した後、180℃で24分間焼成して、パンを製造した。
焼成した翌日、各パン試料を、重量計測及びレーザー体積計(SELNAC-WinVM2100A、株式会社アステックス)による形状計測に供試し、パンの膨張性の指標である比容積(mL/g)を得た。また、断面を観察し、きめの細かさを目視により評価した。得られた結果を表2に示す。
Figure 2015107081
表2に示される通り、酸化型グルタチオンを添加したパンは、酸化型グルタチオンの添加量が0.2g〜3.0gの範囲で、酸化型グルタチオン無添加のパンと比較して比容積が大きくなった。また酸化型グルタチオン量が0.2〜3.0gの範囲で、きめの細かいパンになった。なおグルタチオン添加量が3.0gを超えると、パンの匂いにやや影響が生じた。
上記のように、酸化型グルタチオンの添加は米粉の製パン性を向上させる効果を有し、特に米粉+ホワイトソルガム粉の混合粉160gに対して酸化型グルタチオン0.2〜3.0gを添加した生地を用いた場合、膨らみの面でもきめの細かさの面でも良好な製パン性が認められた。また混合粉160gに対して0.4〜2.0gのグルタチオン添加量を用いたパンでは、グルタチオン無添加の場合と比較して膨らみやきめの細かさが大幅に向上しただけでなく、パンの匂いもより良好なものとすることができた。
なお酸化型グルタチオンの添加量が減少するにつれてパンのきめがより粗くなる傾向が示されたことから、酸化型グルタチオンが気泡の薄膜形成を促進し、きめの細かさをもたらしたことが裏付けられた。
[実施例3]酵母エキスの製パン性向上効果
グルタチオンを高濃度で含む酵母エキスが食品として販売されている。そこで精製グルタチオンの代わりにそのような酵母エキスを添加して、製パン性への影響を調べた。
ホームベーカリー(SPM-KP1、三洋電機株式会社)のパンケースに、薄力米粉V(株式会社波里製)130gとホワイトソルガム粉(中野産業株式会社製)30g、酵母エキス「ハイチオンエキス(登録商標)YH-D18」(興人ライフサイエンス社製;酸化型グルタチオンを重量比18%程度含有する)2gを添加し、粉の状態で混合した。これに水140gを入れ、「パン生地コース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシング(混捏)した後、室温で一晩放置し、米粉を水に浸漬させた。これに、翌朝、砂糖を15g、パン用乾燥酵母(日清フーズ社製)を2.5g、無塩バター(雪印メグミルク社製)を2g添加した後、「パン生地コース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシング(混捏)した。これより得られた生地200gを角形パンケースに計りとり、オーブンレンジ(EMO-C16C、三洋電機株式会社)で40℃、90分間発酵した後、180℃で24分間焼成して、パン(酵母エキス添加パン)を製造した。対照として、酵母エキスを添加しないこと以外は上記と全く同様の方法で、酵母エキス無添加の米粉+ホワイトソルガム粉の混合生地のパン(酵母エキス無添加のパン)を作製した。
図2に示されるとおり、酵母エキス無添加のパンはきめが粗く硬かったが(図2A)、酵母エキスを添加した場合には、精製グルタチオンを添加した場合と同様にきめの細かい柔らかいパンになった(図2B)。また酵母エキス添加パンは、酵母エキス無添加のパンと比較して、良く膨らんだ。実施例1及び2と同様にして測定した比容積(mL/g)は、酵母エキス添加パンが3.7mL/g、酵母エキス無添加のパンが3.3mL/gであった。
さらに、酵母エキス添加パンと酵母エキス無添加のパンについて「きめの細かさ(外観,食感)」と「食感の好ましさ」について12名の被験者による-3〜+3の7段階の比較食味試験(官能評価試験)を行った。図2Cに示されるとおり、酵母エキス無添加のパンを基準(0点)とした場合、酵母エキス添加パンの「きめの細かさ(外観,食感)」は平均1.33点、「食感の好ましさ」の平均値は1.42点であった。酵母エキス添加パンのこれらの値の上昇は、酵母エキス無添加のパンと比較してp< 0.01で有意であった。
上記の結果から、グルタチオンを含む酵母エキスを米粉+ホワイトソルガム粉の混合生地に添加した場合も、グルタチオンの作用により、パンの膨らみが増大し、パンのきめが細かくなり、食感の好ましさが向上することが示された。
[実施例4]還元型グルタチオンの製パン向上効果
酸化型グルタチオンを還元型グルタチオンに置き換えたこと以外は、実施例2と同様にしてパン製造試験及びパンの比容積測定(mL/g)を実施した。その結果を表3に示す。
Figure 2015107081
表3に示される通り、還元型グルタチオンを添加したパンは、還元型グルタチオンの添加量が0.1g〜2.0gの範囲で、還元型グルタチオン無添加のパンと比較して比容積が大きくなった。また還元型グルタチオン量が0.2〜1.0gの範囲できめの細かいパンになった。一方、グルタチオン添加量が1.0g以上になると、パンの匂いにやや影響が生じた。
上記のように、還元型グルタチオンの添加も米粉の製パン性を向上させる効果を有し、特に米粉+ホワイトソルガム粉の混合粉160gに対して還元型グルタチオン0.1〜1.0gを添加した生地を用いた場合、膨らみの面でもきめの細かさの面でも良好な製パン性が認められた。また混合粉160gに対して0.2〜0.5gのグルタチオン添加量を用いたパンでは、グルタチオン無添加の場合と比較して膨らみやきめの細かさが大幅に向上しただけでなく、パンの匂いもより良好なものとすることができた。
実施例2の酸化型グルタチオンと同様に、還元型グルタチオンについても添加量が減少するにつれてパンのきめが粗くなったことから、酸化型であれ還元型であれ、グルタチオンはパンの気泡の薄膜形成を促進し、きめの細かさをもたらすことが示された。
[実施例5]米粉:ホワイトソルガム粉の配合比の影響
ホームベーカリー(SPM-KP1、三洋電機株式会社)のパンケースに、薄力米粉V(株式会社波里製)とホワイトソルガム粉(中野産業株式会社製)を様々な配合比(表4;合計量160g)で入れた。これに、酸化型グルタチオン(ナカライテスク社製)0.5gを添加し、粉の状態で混合した。これに水140gを入れ、「パン生地コース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシング(混捏)した後、室温で一晩放置し、米粉を水に浸漬させた。これに、翌朝、砂糖を15g、パン用乾燥酵母(日清フーズ社製)を2.5g添加した後、「パン生地コース」のプログラムを用いて室温で20分間攪拌によりミキシング(混捏)した。これより得られた生地200gを角形パンケースに計りとり、オーブンレンジ(EMO-C16C、三洋電機株式会社)で40℃、60分間発酵した後、180℃で24分間焼成し、パンを製造した。
焼成した翌日、上記実施例と同様にしてパンの比容積(mL/g)を測定した。また、断面を観察し、きめの細かさを評価した。得られた結果を表4に示す。また図3にはホワイトソルガム粉の比率の増加に伴うパンのきめの変化をパンの断面写真で示した。
Figure 2015107081
表4及び図3に示される通り、米粉:ホワイトソルガム粉の配合比を変えるとパンの比容積ときめの細かさが変化した。比容積は米粉:ホワイトソルガム粉の配合比が150:10〜90:70の範囲で、ホワイトソルガム粉無添加の場合と比較して10%以上高かった。また、パン断面から観察されるきめは150:10〜100:60の範囲でホワイトソルガム粉無添加の場合に比べて細かかった。
[実施例6]食塩添加時のグルタチオンの効果
(1)精製グルタチオンの効果
パン生地に食塩2.4gを添加した以外は実施例1と同様にして、(i) 米粉生地、(ii) 米粉+ホワイトソルガム粉の混合生地、(iii) 酸化型グルタチオンを加えた米粉生地、及び(iv) 酸化型グルタチオンを加えた米粉+ホワイトソルガム粉の混合生地から、パンを製造した。焼成した翌日、パンの比容積(mL/g)を測定した。また、断面を観察し、きめの細かさを目視により評価した。その結果を表5及び図4に示す。図4中、Aは米粉+食塩、Bは米粉+ホワイトソルガム粉+食塩、Cは米粉+酸化型グルタチオン+食塩、Dは米粉+ホワイトソルガム粉+酸化型グルタチオン+食塩、の生地から製造したパンの断面写真を示す。
Figure 2015107081
表5及び図4に示されるように、ある程度の量の食塩が含まれると、米粉のみではグルタチオンを添加しても膨らみが小さいが、米粉+ホワイトソルガム粉の混合生地を用いると、食塩が含まれていても膨らみが妨げられず、かつ、きめの細かいパンを製造することができることが示された。
(2)酵母エキスの効果
次に、グルタチオンの代わりに、グルタチオンを高濃度で含む酵母エキスを用いて同様の試験を行った。
パン生地に食塩0.8g、1.6g、2.4g、又は3.2gを添加したこと以外は実施例3と同様にして、酵母エキスを添加した米粉+ホワイトソルガム粉パンを製造した。対照として、食塩無添加(0g)の米粉+ホワイトソルガム粉パンも同様に製造した。焼成した翌日、パンの比容積(mL/g)を測定した。
さらに、製造したパンについて、N=10のパネルによる塩味の評価を実施した(食味試験)。食塩添加量の異なる上記5種のパンを塩味が薄いものから味わい、塩味が最も好ましいと思われるものを選定した。
Figure 2015107081
表6に示される通り、食塩を添加しても米粉+ホワイトソルガム粉パンの比容積やきめの細かさが損なわれることはなかった。また塩味の食味試験からは、食塩の添加量0〜2.4gが好ましいと推定された。
本発明に係る製パン方法では、小麦粉(メリケン粉)やグルテンを添加することなく品質良好な米粉ベースのパンを製造できることから、米粉消費の拡大に貢献できるとともに、小麦アレルギー患者やセリアック病患者にも朗報となる。また本発明の方法は、食塩の配合の有無にかかわらず、良好な膨らみを持ったきめの細かいパンを製造できるため、減塩パンから塩味の効いたパンまで様々な種類のパンの製造に有用である。また本発明に係る製パン方法を用いれば、人工的に半合成された増粘剤を用いずに米粉ベースのパン類を製造することもできる。

Claims (16)

  1. 米粉、ソルガム粉、水、及び米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上の量のグルタチオンを含み、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製される、パン類生地。
  2. 増粘剤を含まない、請求項1に記載のパン類生地。
  3. 食塩をさらに含む、請求項1又は2に記載のパン類生地。
  4. 食塩の含有量が米粉の含有量の0.5質量%以上である、請求項3に記載のパン類生地。
  5. 酵母をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のパン類生地。
  6. 前記グルタチオンの供給源として酵母エキスを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のパン類生地。
  7. ソルガム粉がホワイトソルガム粉である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のパン類生地。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のパン類生地を発酵させ、焼成することを含む、パン類の製造方法。
  9. 請求項8に記載の方法により製造される、パン類。
  10. 米粉、ソルガム粉、及び米粉とソルガム粉の合計量の0.1質量%以上の量のグルタチオンを含み、小麦粉及びグルテンを原料として使用せずに調製される、パン類製造用のミックス粉。
  11. 増粘剤を含まない、請求項10に記載のミックス粉。
  12. 食塩をさらに含む、請求項10又は11に記載のミックス粉。
  13. 食塩の量が米粉の含有量の0.5質量%以上である、請求項12に記載のミックス粉。
  14. 前記グルタチオンの供給源として酵母エキスを含む、請求項10〜13のいずれか1項に記載のミックス粉。
  15. ソルガム粉がホワイトソルガム粉である、請求項10〜14のいずれか1項に記載のミックス粉。
  16. 酵母エキスを含有する、米粉及びソルガム粉を含むパン類用の生地改良剤。
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