以下、図1乃至図9Bを参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
(カバーガラス付き表示装置)
はじめに図1を参照して、カバーガラス付き表示装置10について説明する。図1に示すように、カバーガラス付き表示装置10は、表示装置15とカバーガラス20とを組み合わせることによって構成されている。図示された表示装置15は、フラットパネルディスプレイとして構成されている。表示装置15は、表示面16aを有した表示パネル16と、表示パネル16に接続された表示制御部(図示せず)と、を有している。表示パネル16は、映像を表示することができるアクティブエリアA1と、アクティブエリアA1を取り囲むようにしてアクティブエリアA1の外側に配置された非アクティブエリア(額縁領域とも呼ばれる)A2と、を含んでいる。表示制御部は、表示されるべき映像に関する情報を処理し、映像情報に基づいて表示パネル16を駆動する。表示パネル16は、表示制御部の制御信号に基づいて、所定の映像を表示面16aに表示する。すなわち、表示装置15は、文字や図等の情報を映像として出力する出力装置としての役割を担っている。
図1に示すように、カバーガラス20は、表示装置15の観察者側において表示パネル16の表示面16a上に配置されている。このカバーガラス20は例えば、表示装置15の表示面16a上に接着層(図示せず)を介して接着されている。図1において、カバーガラス20の表示装置側の面(第1面)が符号20aで表され、観察者側の面(第2面)が符号20bで表されている。
なお本実施の形態において、カバーガラス20は、表示装置15を保護するという役割だけでなく、タッチパネル機能をも果たすように構成されている。具体的には、カバーガラス20の表示装置15側の第1面20aには、外部導体の接近や接触を検知するためのセンサ電極を含むタッチパネルセンサ部40が設けられている。またカバーガラス20の第1面20aの非アクティブエリアAa2には、所望の色を呈するための加飾部60がさらに設けられている。
(タッチパネルセンサ)
次に図2を参照して、カバーガラス20の第1面20aに設けられたタッチパネルセンサ部40について説明する。図2は、カバーガラス20を第1面20a側から見た場合を示す平面図である。なお図2においては、説明の便宜上、加飾部60が省略されている。図2に示されたタッチパネルセンサ部40は、投影型の静電容量結合方式として構成され、タッチパネルセンサ部40への外部導体(例えば、人間の指)の接触位置(タッチ位置とも称する)を検出可能に構成されている。
図2に示すように、カバーガラス20の第1面20aは、表示パネル16のアクティブエリアA1および非アクティブエリアA2に対応して、タッチ位置を検出され得る領域に対応するアクティブエリアAa1と、アクティブエリアAa1の周辺に位置する非アクティブエリアAa2と、に区画される。またタッチパネルセンサ部40は、アクティブエリアAa1に配置された複数のセンサ電極41,42と、対応するセンサ電極41,42に接続されるとともに、カバーガラス20の非アクティブエリアAa2に配置された複数の取出配線43と、対応する取出配線43に接続された複数の端子部44と、を備えている。
センサ電極41,42は、図2に示すように、第1方向D1に沿って延びる複数の第1センサ電極41と、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って延びる複数の第2センサ電極42と、を有している。第1センサ電極41は、第1方向D1に沿って直線状に延びる第1ライン部41aと、第1ライン部41aから膨出した第1膨出部41bと、を有していてもよい。同様に第2センサ電極42は、第2方向D2に沿って延びる第2ライン部42aと、第2ライン部42aから膨出した第2膨出部42bと、を有していてもよい。
取出配線43は、対応するセンサ電極41,42によって検出された信号を端子部44まで伝達するために非アクティブエリアAa2に設けられたものである。取出配線43によって端子部44まで伝達された信号は、端子部44に取り付けられたフレキシブル基板(図示せず)などを介して検出制御部へ伝達される。
(カバーガラス、タッチパネルセンサ部および加飾部の層構成)
次に図3および図4を参照して、カバーガラス20およびカバーガラス20の第1面20aに設けられたタッチパネルセンサ部40および加飾部60の層構成について説明する。図3および図4はそれぞれ、図2に示すカバーガラス20の線IIIおよび線IVに沿った断面図である。
はじめにカバーガラス20のアクティブエリアAa1に配置される構成要素の層構成について説明する。図3および図4に示すように、タッチパネルセンサ部40の第1ライン部41a、第1膨出部41bおよび第2膨出部42bは、同一平面上に形成されたものであってもよい。この場合、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電性材料からなる透明導電層51をパターニングすることによって、第1ライン部41a、第1膨出部41bおよび第2膨出部42bを同時に形成することが可能である。
図3および図4に示すように、第1ライン部41aおよび第2ライン部42aは、カバーガラス20の法線方向から見た場合に互いに部分的に重なるよう形成されている。この場合、第1ライン部41aと第2ライン部42aとの間に絶縁層47を介在させることにより、第1ライン部41aと第2ライン部42aとの間が導通することを防ぐことができる。なお図示はしないが、絶縁層47は、第1ライン部41aと第2ライン部42aとの間だけでなく、第1膨出部41b上や第2膨出部42b上にも設けられていてもよい。
第2ライン部42aが導電性を有する限りにおいて、第2ライン部42aを構成する材料が特に限られることはない。例えば第2ライン部42aは、第1ライン部41a、第1膨出部41bおよび第2膨出部42bと同様に酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電性材料から構成されていてもよく、若しくは、銀合金や銅などの不透過の導電性材料から構成されていてもよい。本実施の形態においては、第2ライン部42aが、取出配線43および端子部44にも含まれる金属層52によって構成されている例について説明する。
次にカバーガラス20の非アクティブエリアAa2に配置される構成要素の層構成について説明する。図3および図4に示すように、非アクティブエリアAa2には、加飾部60が、上述の取出配線43よりも観察者側に位置するよう配置されている。この場合、加飾部60が、観察者側に居るユーザーからカバーガラス20を介して視認されることになる。すなわち、カバーガラス付き表示装置10において、非アクティブエリアAa2の見え方は、加飾部60およびその周辺の構成要素によって決定されることになる。
加飾部60の色は、カバーガラス付き表示装置10に対して求められる意匠性に応じて選択される。例えば加飾部60の色の例として、黒色、白色、水色、桃色、緑色などを挙げることができる。加飾部60を構成する材料は、選択された色に応じて決定されるが、例えば白色が求められる場合、加飾部60は、酸化チタンなどの着色顔料が分散された樹脂材料から構成される。
次にカバーガラス20の構成について説明する。図3および図4に示すように、カバーガラス20は、単位基材22および補強部26を備えている。単位基材22は、ガラスから構成されており、補強部26は、樹脂材料から構成されている。単位基材22は、表示装置側の第1面22a、第1面22aと反対側の第2面22b、および、第1面22aと第2面22bとの間に広がる側面22c、を含んでいる。そして補強部26は、単位基材22の側面22c上に設けられている。
後述するように、単位基材22は、大型の強化ガラスからなる基材30を分割して個片化することによって得られたものである。この単位基材22は、図5に示すように、第1面22aおよび第2面22bに形成された圧縮応力層24aと、第1面22a側の圧縮応力層24aと第2面22b側の圧縮応力層24aとの間に位置する引張応力層24bと、を含んでいる。圧縮応力層24aとは、圧縮応力が生じている層のことであり、引張応力層24bとは、引張応力が生じている層のことである。これら圧縮応力層24aおよび引張応力層24bを生じさせる方法としては、物理強化(風冷強化)や化学強化が知られている。例えば化学強化においては、歪点以下の温度で、ガラス中に含まれるアルカリイオンを、よりイオン半径の大きな他のアルカリイオンに交換するという化学的な処理が実施される。これによって、イオンが交換された表層付近に圧縮応力を発生させることができる。圧縮応力層24aを形成することにより、第1面22aまたは第2面22bに何らかの衝撃が加えられ、これによって第1面22aまたは第2面22bにクラックなどの傷が形成された場合であっても、傷が拡大することを防ぐことができる。このため、単位基材22の第1面22aおよび第2面22bは、衝撃に対する高い耐久性を有している。単位基材22を構成する材料としては、例えばアルミノシリケートガラスが用いられ得る。
一方、図5に示すように、単位基材22の引張応力層24bは、単位基材22の側面22cにまで達している。すなわち単位基材22の側面22cでは引張応力層24bが露出している。このため単位基材22の側面22cは、単位基材22の第1面22aおよび第2面22bと比較して、クラックなどの損傷に対して弱くなっている。上述の補強部26は、このような単位基材22の側面22cを保護する役割を果たすことができる。
単位基材22の厚みは、求められる強度や、カバーガラス20の面積などに応じて適切に設定されるが、例えば0.1mm〜1mmの範囲内になっている。また、単位基材22の圧縮応力層24aの厚みは、求められる強度や、後述する基材30を切断する際に求められる切断性などに応じて適切に設定されるが、例えば10〜50μmの範囲内になっている。
次に図5を参照して、補強部26について説明する。図5は、図3のカバーガラス20の側面20cを拡大して示す断面図である。
図5に示すように、補強部26は、単位基材22の側面22cの法線方向に沿って見た場合に側面22cと重なる側面26cを含んでいる。また補強部26は、単位基材22の第1面22aと同一平面上で第1面22aの端部22aeから側方へ延びる第1面26a、および/または、単位基材22の第2面22bと同一平面上で第2面22bの端部22beから側方へ延びる第2面26bを含んでいてもよい。補強部26がこのような第1面26aおよび第2面26bを含む場合、単位基材22と補強部26との間に段差が全くまたはほとんど存在しないことになる。このため、単位基材22と補強部26との間の境界が観察者から視認されてしまうことを抑制することができる。従って、補強部26によるカバーガラス20の側面20cの強度の確保と、カバーガラス20の意匠性の確保とを両立させることができる。また、タッチパネルの操作感が段差によって阻害されてしまうこともない。
なお図5においては、単位基材22の側面22cが、第1面22aと第2面22bとの間をほぼ平坦に広がる平坦面として構成されている例が示されている。しかしながら、側面22cの形態が平坦面に限られることはない。例えば、側面22cは湾曲面であってもよい。また側面22cは、様々な方向に広がる複数の面の組合せとして構成されていてもよい。この場合、「側面22cの法線方向」は、第1面22aまたは第2面22bの少なくとも一方に直交する仮想的な平面の法線方向として定義されてもよい。
図5において、単位基材22の側面22c上に設けられた補強部26の被覆寸法(初期の被覆寸法)が符号T0で表されている。補強部26の被覆寸法T0は、カバーガラス20の側面20cなどに衝撃が加えられた場合であっても単位基材22の側面22cを保護することができるよう、適切に設定されている。例えば補強部26の被覆寸法T0は、100μm以上に設定されている。一方、補強部26の被覆寸法T0が大きくなりすぎると、カバーガラス20に衝撃が加えられた場合に補強部26が単位基材22から剥離しやすくなることが考えられる。また、カバーガラス20におけるガラスの割合が減少し、樹脂の割合が増加するので、カバーガラス20の強度が低下することも考えられる。この点を考慮し、補強部26の被覆寸法T0は、例えば500μm以下に設定される。
次に、変形に関する補強部26の特性、および補強部26を構成する樹脂材料について説明する。
本実施の形態において、補強部26は、衝撃などに起因する外力によって補強部26が変形した後、外力が取り除かれると、その変形の90%以上を弾性復元させることができるよう、構成されている。これによって、その後に衝撃が加えられた場合に、補強部26が単位基材22の側面22cを適切に保護することができるようになる。補強部26は具体的には、所定の圧子を用いて補強部26を単位基材22に向けて、補強部26の初期の被覆寸法T0に対する補強部26の最大変形量の比が0.3となるよう押し込んだ際の、補強部26の最大変形量に対する補強部26の弾性変形量の割合が0.9以上であるよう、構成される。
以下、図6および図7(a)〜(c)を参照して、「初期の被覆寸法T0に対する補強部26の最大変形量の比」および「補強部26の最大変形量に対する補強部26の弾性変形量の割合」を算出する方法について説明する。図7(a)に示すような圧子90を用いて補強部26を単位基材22に向けて押し込んだ場合、補強部26の被覆寸法は、図6に示すようなヒステリシス曲線を描いて変形する。図6において、縦軸は圧子90が補強部26に加える押し込み荷重(mN)を表しており、横軸は補強部26の被覆寸法の変化量(μm)を表している。なお図6においては、押し込み荷重によって補強部26が圧縮されることによって生じる圧縮量(μm)が、図6の横軸における正の値として表現されている。
図6において、O1は、圧子90の押し込み荷重および補強部26の被覆寸法の変形量がいずれもゼロの点を示している。圧子90の押し込み荷重を増加させていくと、点O1および点O2を結ぶ曲線によって示されているように、補強部26の被覆寸法の変化量も増加していく。その後、圧子90の押し込み荷重が所定の荷重、例えばX1mNに達した後、押し込み荷重がX1mNに維持された状態を所定の時間にわたって継続させる。図6の点O3は、補強部26の変形(被覆寸法の変化)が完了した状態を示している。また図7(a)における符号T1は、補強部26の変形が完了した状態における被覆寸法を表している。上述の最大変形量は、点O3の状態のときの、補強部26における被覆寸法の変化量のことである。最大変形量は、初期(例えば出荷時)の補強部26の被覆寸法T0から、点O3の状態のときの補強部26の被覆寸法T1を引くことによって算出される。また押し込み荷重の最大値(収束値)X1mNは、初期の被覆寸法T0に対する補強部26の最大変形量の比が0.9になるよう設定される。なお点O2の位置は、押し込み荷重の増加速度に応じて変化し得る。
その後、圧子90の押し込み荷重を減少させていくと、図7(b)に示すように弾性復元によって補強部26の被覆寸法が増加していく。圧子90の押し込み荷重をゼロにし、所定の時間が経過すると、補強部26の弾性復元が完了する。図7(c)における符号T2は、補強部26の弾性復元が完了した状態における補強部26の被覆寸法を表している。また図6における点O4は、補強部26の弾性復元が完了した状態における補強部26の変形量を表している。ここで、補強部26が完全弾性体であれば最終点O4における補強部26の変形量はゼロとなるが、補強部26が完全弾性体ではない場合、点O4での変形量は正の量として残る。この量が塑性変形量である。塑性変形量は、初期の補強部26の被覆寸法T0から、点O4の状態のときの補強部26の被覆寸法T2を引くことによって算出される。
図6から明らかなように、補強部26の弾性変形量は、補強部26の最大変形量から補強部26の塑性変形量を引いたものとして算出される。上述のように最大変形量はT0−T1によって算出され、組成変形量はT0−T2によって算出されるので、弾性変形量は(T0−T1)−(T0−T2)=T2−T1によって算出される。
上述の説明から明らかなように、「初期の被覆寸法T0に対する補強部26の最大変形量の比」は、{(T0−T1)/T0}として表現され、「補強部26の最大変形量に対する補強部26の弾性変形量の割合」は、{(T2−T1)/(T0−T1)}として表現される。
本実施の形態によれば、補強部26の最大変形量に対する補強部26の弾性変形量の割合が0.9以上となるよう補強部26が構成されている。このため、補強部26から外力が取り除かれた後、補強部26は弾性復元によってその被覆寸法を初期の90%以上に回復させることができる。このため補強部26は、その後に印加される衝撃などに起因する外力から単位基材22の側面22cを適切に保護することができる。なお以下の説明において、「補強部26の最大変形量に対する補強部26の弾性変形量の割合」のことを「補強部26の弾性復元率」とも称する。
好ましくは、補強部26の弾性復元率が0.98以下になるよう、より好ましくは0.95以下になるよう、補強部26が構成されている。これによって、補強部26は、カバーガラス20の側面20cに加えられた外力を、自身が変形することによって適切に分散および/または吸収することができるようになる。このことにより、単位基材22の側面22cに外力が伝わることを補強部26によって適切に抑制することができる。
また好ましくは、補強部26は、補強部26から外力が取り除かれた後、補強部26の変形量が最大変形量である状態から、上述の弾性変形量の少なくとも90%の部分にわたって補強部26の被覆寸法を回復させることに要する時間が30秒以下であるよう、構成されている。これによって、2回目以降の衝撃により確実に対応することができるようになる。なお図6においては、点O4’が、「弾性変形量の90%の部分にわたって補強部26の被覆寸法が回復した」状態を示している。なお点O3からO4’を経て点O4に至る軌跡は、外力(押し込み荷重)を取り除く速度、すなわち荷重の減少速度によっては、図6に示す軌跡とは異なるものとなる。上述の「30秒以下」という条件は、補強部26が弾性復元する速度よりも速く外力(押し込み荷重)が取り除かれた場合の条件である。
次に、補強部26を構成する樹脂材料について説明する。補強部26を構成する樹脂材料としては、上述の変形に関する特性を満たすことができる、高い弾性復元力を有する材料が用いられる。例えば、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを含むUV硬化性樹脂材料や、ポリジメチルシロキサン系共重合体を含む熱硬化型樹脂材料などを用いることができる。なおこれらの樹脂材料は、特開2011−161888に記載されている、自己治癒性樹脂とも呼ばれるものであってもよい。その他にも、補強部26を構成する樹脂材料として、エポキシ樹脂やアクリル樹脂を用いることもできる。
好ましくは補強部26は、そのユニバーサル硬度が300〜750N/mm2の範囲内となるよう、構成されている。上記ユニバーサル硬度は、補強部26を構成する樹脂材料からなる膜を適切なガラス上に膜厚5μmで形成し、ビッカース角錐圧子を用いてその膜の硬度を測定することによって得られる値である。測定器としては、例えば、硬度測定装置(フィッシャーインストルメント社製フィッシャースコープH−100V)を用いることができる。ユニバーサル硬度が上記範囲内となっている樹脂材料を用いて補強部26を構成することにより、外力によって補強部26自体が損傷してしまうことを防ぐことができる。
(カバーガラスの製造方法)
次に、以上のような構成からなるカバーガラス20を製造する方法について、図8A〜図9Bを参照して説明する。
はじめに図8A〜図8Cを参照して、大型の強化ガラスからなる基材30をベースとして、基材30が分割された単位基材22を含む単位中間体35を形成する工程について説明する。なお図8A、図8B(a)および図8Cは、本工程における基材30を示す断面図である。また図8B(b)は、本工程における基材30を示す平面図である。
まず図8Aに示すように、大型の強化ガラスからなる基材30を準備する。基材30は、第1面30a、第1面30aの反対側にある第2面30b、および、第1面30aと第2面30bとの間に広がる側面30c、を含んでいる。図8Aに示すように、基材30の第1面30a、第2面30bおよび側面30cには圧縮応力層24aが形成されており、そして圧縮応力層24aの内側には引張応力層24bが存在している。このように基材30の表面は全て圧縮応力層24aによって形成されている。
次に図8B(a)(b)に示すように、基材30の第1面30a上において、所定の複数の区画に加飾部60およびタッチパネルセンサ部40を形成する(要素部形成工程)。例えば図8B(b)においては、基材30の第1面30aを紙面の上下方向で2行に区画し紙面の左右方向で3列に区画することによって得られる6区画のそれぞれに、加飾部60およびタッチパネルセンサ部40が形成される。なお基材30の区画数が特に限られることはない。第1面30a側に加飾部60およびタッチパネルセンサ部40を形成する方法としては、公知の方法が適宜用いられ、例えばフォトリソグラフィー法が用いられる。なお以下の説明において、タッチパネルセンサ部40および加飾部60を要素部70と総称することもある。
その後、図8Cに示すように、基材30の各区画に沿って基材30を切断する切断工程を実施する。このようにして、基材30が分割された単位基材22を含む単位中間体35を形成することができる。基材30を切断する方法は特には限られないが、例えば、レーザーを用いた加工によって基材30を切断することができる。なお基材30の切断面(単位基材22の側面22c)の平坦性や鏡面性を確保するため、切断後にエッチングや研磨によって基材30の切断面を整えてもよい。
次に、単位中間体35の単位基材22の側面22cに補強部(樹脂等)を設けることによって、側面が補強されたカバーガラス20を得る工程について、図9Aおよび図9Bを参照して説明する。
はじめに、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂などの硬化性材料を含む塗布液27を単位基材22の側面22c上に塗布する塗布工程を実施する。ここでは、ウレタン系樹脂と、光重合開始剤とを含む塗布液27が用いられる場合について説明する。
塗布工程において、単位基材22は、塗布液27がその上に塗布される側面22cが上方を向くよう保持される。この状態で、ディスペンサー法やロールコート法などを用いることによって、図9Aに示すように、単位基材22の所定の側面22c上に塗布液27を塗布する。その後、塗布液27に紫外線などの光を照射する硬化工程を実施することによって、塗布液27を硬化させる。これによって、単位基材22の所定の側面22c上に補強部26が形成される。これら塗布工程および硬化工程を全ての側面22cに対して実施することによって、図9Bに示すように、単位基材22と、単位基材22の側面22c上に設けられた補強部26と、を備えたカバーガラス20を得ることができる。
なお図9Bに示すように、単位基材22の第1面22a側または補強部26の第1面26a側であって加飾部60の外側の位置に追加加飾部62を設ける工程をさらに実施してもよい。追加加飾部62は、加飾部60と同色を呈するよう構成されたものである。このような追加加飾部62をさらに設けることによって、所望の色を呈することができる非アクティブエリアAa2の範囲をより外側に広げ、外周部からの光漏れの防止などの意匠性の向上を図ることができる。追加加飾部62は、カバーガラス20の第1面20aの法線方向に沿って見た場合に補強部26と重なるよう構成されていることが好ましい。
本実施の形態によれば、単位基材22の側面22c上に、硬化性樹脂からなる補強部26が設けられている。このため、カバーガラス20の側面20cに衝撃が加えられた場合に単位基材22の側面22cに伝わる力が、補強部26によって緩和される。これによって、単位基材22の側面22cにクラックなどの損傷が生じることを抑制することができる。このことにより、仮に単位基材22の側面22cに圧縮応力層が形成されていない場合であっても、カバーガラス20の耐衝撃性などの耐久性を十分に高くすることができる。
また本実施の形態において、補強部26は上述のように、補強部26の弾性復元率が0.9以上であるよう、構成されている。このため、補強部26に作用していた外力が取り除かれた後、補強部26は、弾性復元によってその被覆寸法を初期の90%以上に回復させることができる。従って補強部26は、その後に加えられる衝撃などに起因する外力から単位基材22の側面22cを適切に保護することができる。このため本実施の形態によれば、複数回にわたってカバーガラス20に衝撃が加えられる場合であっても、カバーガラス20の耐衝撃性などの耐久性を維持することができる。
また本実施の形態によれば、カバーガラス20の側面20cが、樹脂からなる補強部26によって構成されていることから、カバーガラス20の側面20cがガラスで構成されている場合に比べて、カバーガラス20の側面20cのエッジ部について、面取りなどによる裂傷防止加工をする必要がない。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、いくつかの変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
(第1の変形例)
上述の本実施の形態においては、補強部26が、単位基材22の第1面22aと同一平面上で第1面22aの端部22aeから側方へ延びる第1面26a、および、単位基材22の第2面22bと同一平面上で第2面22bの端部22beから側方へ延びる第2面26bを含む例を示した。すなわち、単位基材22と補強部26との間に段差が全くまたはほとんど存在しない例を示した。しかしながら、単位基材22の側面22cを適切に保護することができる限りにおいて、単位基材22と補強部26との間の接続部分の形態が特に限られることはない。例えば図10に示すように、補強部26は、単位基材22側面22cだけでなく単位基材22の第1面22aおよび/または第2面22bの一部を覆うよう、設けられていてもよい。このような補強部26は、例えばディップコート法によって上述の塗布液27を単位基材22の側面22cに設けることにより、作製され得る。
(第2の変形例)
上述の本実施の形態においては、基材30の第1面30a上に加飾部60やタッチパネルセンサ部40などの要素部70を形成する要素部形成工程が、基材30を切断して単位中間体35を形成する工程や、単位中間体35の単位基材22の側面22cに補強部26を形成する工程に先行して実施される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、基材30を切断する工程を、要素部70が設けられていない状態の基材30に対して実施してもよい。また図11に示すように、要素部70が設けられていない状態の単位基材22の側面22cに補強部26を形成して、カバーガラス20を得てもよい。その後、カバーガラス20の第1面20a上に加飾部60やタッチパネルセンサ部40等の要素部70を形成してもよい。若しくは、加飾部60やタッチパネルセンサ部40を別個形成し、接着剤などを用いて組み合わせることによりカバーガラス20を形成した後に、表示装置15と組み合わせたりしてもよい。
(第3の変形例)
上述の第2の変形例においては、加飾部60およびタッチパネルセンサ部40のいずれも設けられていない状態の基材30を切断して単位中間体35を形成し、位中間体35の単位基材22の側面22cに補強部26を形成する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、基材30を切断する工程を、タッチパネルセンサ部40は設けられてないが加飾部60は設けられている状態の基材30に対して実施してもよい。また図12に示すように、タッチパネルセンサ部40は設けられてないが加飾部60は設けられている状態の単位基材22の側面22cに補強部26を形成して、カバーガラス20を得てもよい。その後、カバーガラス20の第1面20a上にタッチパネルセンサ部40を形成してもよい。若しくは、タッチパネルセンサ部40を別個形成し、接着剤などを用いて組み合わせることによりカバーガラス20を形成した後に、表示装置15と組み合わせたりしてもよい。
(第4の変形例)
本変形例においては、単位基材22の第1面22aおよび第2面22b上に設けられた第1保護膜81および第2保護膜82を利用して、側面22c上に高い外形寸法精度で補強部26を形成する例について説明する。
まず図13Aに示すように、単位基材22と、単位基材22の第1面22a上に設けられた第1保護膜81および単位基材22の第2面22b上に設けられた第2保護膜82と、を有する単位中間体35を準備する。第1保護膜81は、単位基材22の第1面22aよりも側方に突出するよう構成されており、かつ、第2保護膜82は、単位基材22の第2面22bよりも側方に突出するよう構成されている。第1保護膜81および第2保護膜82は、基材30を切断して単位基材22を得る前に基材30の第1面30a上および第2面30b上に設けられたものであってもよく、若しくは、基材30を切断して単位基材22を得た後に単位基材22の第1面22a上および第2面22b上に設けられたものであってもよい。例えば、はじめに、型抜きなどによって予め切り込みが入れられた2枚のフィルムを準備し、次に、各フィルムを単位基材22の第1面22aおよび第2面22bにそれぞれ貼付し、その後、フィルムの不要部を剥がすことにより、上述の第1保護膜81および第2保護膜82を単位基材22に設けることができる。第1保護膜81および第2保護膜82を構成する材料としては、例えば、50〜100μm程度の厚みを有する二軸延伸ポリプロピレンや無延伸ポリプロピレンなどを用いることができる。
その後、図13Bに示すように、単位基材22の側面22c、第1保護膜81および第2保護膜82によって囲われた空間内に塗布液27を充填する塗布工程を実施する。塗布液27は、図13Bに示すように、第1保護膜81の端面81c上および第2保護膜82の端面82c上にも溢れ出る程度に塗布されてもよい。
次に、第1保護膜81の端面81c上および第2保護膜82の端面82c上に溢れ出ている塗布液27を、スキージなどを用いて掻きとる。これによって図13Cに示すように、塗布液27の表面が、第1保護膜81の端面81cおよび第2保護膜82の端面82cに一致するようになる。
その後、単位基材22の側面22c上に設けられた塗布液27を硬化させる硬化工程を実施する。例えば、塗布液27に紫外線などの光を照射することによって、塗布液27を硬化させる。これによって、単位基材22の側面22c上に補強部26が形成される。
次に、単位基材22の第1面22a上の第1保護膜81および単位基材22の第2面22b上の第2保護膜82を除去する。これによって、図13Dに示すように、単位基材22と、単位基材22の側面22c上に設けられた補強部26と、を備えたカバーガラス20を得ることができる。
本変形例によれば上述のように、補強部26は、単位基材22の第1面22aから側方に突出した第1保護膜81および単位基材22の第2面22bから側方に突出した第2保護膜82によって位置決めされた空間内に形成される。このため図13Dに示すように、単位基材22の第1面22aと同一平面上に位置する第1面26aと、単位基材22の第2面22bと同一平面上に位置する第2面26bと、を含む補強部26をより確実に得ることができる。
また本変形例においては上述のように、第1保護膜81の端面81c上および第2保護膜82の端面82c上に溢れ出ている塗布液27を、スキージなどを用いて掻きとることによって、補強部26の側面26cが整面されている。このため、塗布液27を硬化させることによって得られる補強部26において、その第1面26aの端部26aeの位置は、第1保護膜81の端面81cの位置に一致することになる。同様に、補強部26の第2面26bの端部26beの位置は、第2保護膜82の端面82cの位置に一致することになる。このように本実施の形態によれば、補強部26の第1面26aの端部26aeの位置および第2面26bの端部26beの位置を、保護膜81,82の端面81c,82cの位置に基づいて定めることができる。従って、保護膜81,82の端面81c,82cの位置を精密に定めることにより、カバーガラス20の端部の位置を精度良く定めることができる。このことにより、カバーガラス20と表示装置15、ケースとの組立ての際に、工程の容易さや歩留りを高めることができる。また本実施の形態のようにカバーガラス20に加飾部60やタッチパネルセンサ部40が設けられている場合、表示装置15に対する加飾部60やタッチパネルセンサ部40の加工精度も高めることができる。このことにより、カバーガラス付き表示装置10の高い意匠性や操作性を実現することができる。
(第5の変形例)
本変形例においては、上述の第1保護膜81および第2保護膜82が、フッ酸などを用いたウェットエッチングによって基材30を分割する際に要素部70を保護するレジストとしても機能する例について説明する。
はじめに、図8Aおよび図8B(a)(b)に示す上述の本実施の形態の場合と同様にして、要素部70が設けられた基材30を準備する。次に、基材30の第1面30a上および第2面30b上において所定の複数の区画に第1保護膜81および第2保護膜82を設ける保護膜形成工程を実施する。まず図14Aに示すように、基材30の第1面30a上に、複数の区画にそれぞれ設けられた要素部70を連続的に覆う第1保護膜81を設ける。また基材30の第2面30b上に第2保護膜82を設ける。図14Aに示す例においては、第1保護膜81および第2保護膜82が、基材30の第1基材30を分割するために用いられるエッチング液に対する耐性を有する限りにおいて、保護膜81,82を構成する材料が特に限られることはない。例えば保護膜81,82を構成する材料として、上述の第4の変形例の場合と同様に、50〜100μm程度の厚みを有する二軸延伸ポリプロピレンや無延伸ポリプロピレンなどを用いることができる。この場合、例えば20μm程度の厚みを有する粘着層を介して二軸延伸ポリプロピレンや無延伸ポリプロピレンのシートを基材30の第1面30a上および第2面30b上に貼り付けることにより、保護膜81,82が構成される。
その後、図14B(a)(b)に示すように、第1面30aおよび第2面30bの全域にわたって設けられていた第1保護膜81および第2保護膜82を、第1面30aおよび第2面30bの区画毎に分断する。これによって、各要素部70を覆う第1保護膜81、およびそれに対応する第2保護膜82に、各区画の境界に沿った間隙が形成される。
第1保護膜81および第2保護膜82を分断する具体的な方法が特に限られることはなく、様々な方法が採用され得る。例えば、図14B(b)に示す第1保護膜81の形状に対応した形状を有する金型を用いて、第1保護膜81の不要部分(間隙になる部分)を除去してもよい。第2面30b側においても、第1保護膜81用の金型に対応した形状を有する金型を用いることにより、第2保護膜82の不要部分(間隙になる部分)が除去され得る。その他にも、レーザー加工を利用して、第1保護膜81および第2保護膜82の不要部分を除去してもよい。
その後、図14C(a)に示すように、基材30の各区画に設けられた第1保護膜81および第2保護膜82の間隙に沿って基材30を切断する切断工程を実施する。具体的には、基材30の第1面30a側および第2面30b側から、第1保護膜81および第2保護膜82をレジストとして基材30をウェットエッチングすることによって、基材30を切断する。エッチング液としては、上述のようにフッ酸などが用いられ得る。これによって、図14C(a)に示すように、ガラスからなる単位基材22と、単位基材22の第1面22a側に設けられた要素部70と、単位基材22の第1面22a上に設けられ、要素部70を覆う第1保護膜81と、単位基材22の第2面22b上に設けられた第2保護膜82と、を有する単位中間体35を得ることができる。
図14C(b)は、図14C(a)に示す単位中間体35を拡大して示す断面図である。図14C(b)に示すように、第1保護膜81は、単位基材22の第1面22aよりも側方に突出するよう構成されている。同様に第2保護膜82は、単位基材22の第2面22bよりも側方に突出するよう構成されている。単位基材22と第1保護膜81および第2保護膜82との間のこのような関係は、エッチング液を用いた上述の切断工程の際に、単位基材22の第1面22aおよび第2面22b双方からのエッチングにより単位基材22が貫通される程度の時間にわたってエッチング工程を継続することによって実現される。なおエッチング工程においては通常、単位基材22の側面22cのうち第1面22aおよび第2面22b近傍の位置において深さ方向および水平方向のいずれにおいても等方的にエッチングが進む。このため図14C(b)に示すように、単位基材22の側面22cのうち第1面22aおよび第2面22b近傍においては、第1面22aと第2面22bとの間の中間部分に比べて、エッチングが深く進む。この結果、単位基材22において、端部22aeに交わるとともに第2面22b側へ向かうにつれて外側へ広がる第1側面22dと、端部22beに交わるとともに第1面22a側へ向かうにつれて外側へ広がる第2側面22eと、が得られる。
次に図15A〜図15Cを参照して、単位中間体35の単位基材22の側面22cに補強部(樹脂等)を設けることによって、側面が補強されたカバーガラス20を得るための工程について説明する。
はじめに図15Aに示すように、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂などの硬化性材料を含む塗布液27を単位基材22の側面22c上に塗布する塗布工程を実施する。次に、第1保護膜81の端面81c上および第2保護膜82の端面82c上に溢れ出ている塗布液27を、スキージなどを用いて掻きとる。これによって図15Bに示すように、塗布液27の表面が、第1保護膜81の端面81cおよび第2保護膜82の端面82cに一致するようになる。その後、単位基材22の側面22c上に設けられた塗布液27を硬化させる硬化工程を実施する。これによって、単位基材22の側面22c上に補強部26が形成される。次に、単位基材22の第1面22a上の第1保護膜81および単位基材22の第2面22b上の第2保護膜82を除去する。これによって、図15Cに示すように、単位基材22と、単位基材22の側面22c上に設けられた補強部26と、を備えたカバーガラス20を得ることができる。
本変形例によれば、基材30を切断するためのウェットエッチングの際にレジストとして機能する第1保護膜81および第2保護膜82を利用して、単位基材22の側面22c上に高い外形寸法精度で補強部26を形成することができる。このため、高い耐衝撃性および意匠性を有するカバーガラス20を少ない工数で得ることができる。
なお本変形例においては、塗布液27の表面が第1保護膜81の端面81cおよび第2保護膜82の端面82cに一致するように塗布液27が設けられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図16に示すように、塗布液27の表面が第1保護膜81の端面81cおよび第2保護膜82の端面82cよりも内側に位置するよう、塗布液27が設けられてもよい。この場合であっても、第1保護膜81および第2保護膜82によって画定される補強部26は、単位基材22の第1面22aと同一平面上に位置する第1面26aと、単位基材22の第2面22bと同一平面上に位置する第2面26bと、を含むようになる。
なお、上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
はじめに、補強部26を構成するための樹脂材料を準備し、その鉛筆硬度を測定した。樹脂材料としては、自己治癒性樹脂の一種である、ウレタン系の光硬化性樹脂を用いた。具体的には、株式会社トクシキ製のAU3110を用いた。この樹脂材料からなる樹脂層を適切な基材上に形成し、DIN50359に準拠して当該樹脂層に対する硬度試験を実施することにより、樹脂材料のユニバーサル硬度を評価した。結果、ユニバーサル硬度は345N/mm2であった。
また、上記樹脂材料からなる補強部26を備えたカバーガラス20を作製した。具体的には、まず、第1面22aおよび第2面22bには圧縮応力層24aが形成されているが、側面22cには圧縮応力層24aが形成されていない単位基材22を準備した。単位基材22の厚みは0.7mmであった。次に、この単位基材22の側面22cに、上記樹脂材料からなる補強部26を形成した。側面22cの補強部26の被覆寸法は100μmとした。
次に、図6および図7(a)〜(c)を参照して説明した上述の方法を用いて、作製されたカバーガラス20の補強部26の弾性復元率を測定した。結果、弾性復元率は0.95であった。
また、作製されたカバーガラス20の曲げ強度を測定した。測定方法としては、四点曲げ試験法を採用した。測定器としては、引張/圧縮試験機(例えば島津製作所製のAG−I)と、四点曲げ試験用に作製した四点曲げ試験用治具とを組み合わせたものを用いた。用いた測定器を図17に示す。図17に示すように、測定器は、カバーガラス20の一方の側からカバーガラス20を押圧する一対の圧子91と、カバーガラス20の他方の側でカバーガラス20を支持する一対の支持具92と、を含んでいる。圧子91および支持具92としては、図17には描かれていないが、カバーガラス20に沿って延びる棒状のものを用いた。図17の紙面奥行方向における圧子91および支持具92の長さは、約15cmであった。また、一対の圧子91間の距離L’は10mmであり、一対の支持具92間の距離Lは30mmであった。また、一対の圧子91の先端部の半径R1は2.0mmであり、一対の支持具92の先端部の半径R2は3.0mmであった。また、測定対象としたカバーガラス20の幅lは約14cmであり、図17の紙面奥行方向におけるカバーガラス20の寸法は約7cmであり、カバーガラス20の厚みは0.7mmであった。なお、測定対象のカバーガラス20、圧子91および支持具92の位置合わせは、夫々の中心が一致するように目視で実施した。
曲げ強度の測定工程においては、一対の圧子91に負荷F(1つの内側圧子91に加えられる負荷はF/2)を加えることにより、7mm/mmの圧子変位速度で一対の圧子91を降下させた。そして、カバーガラス20が割れた時点での負荷Fを、カバーガラス20の強度とした。
上述の方法を用いた曲げ強度の測定を、以下の3つの状態のカバーガラス20に対してそれぞれ実施した。
(状態1)衝撃や摩擦が加えられる前のカバーガラス
(状態2)ハンマーを用いて側面に衝撃を加えた後のカバーガラス
(状態3)サンドペーパーを用いて側面を擦った後のカバーガラス
なお上記状態2を実現する際、ハンマーによってカバーガラス20に加えられる衝撃の方向は、単位基材22の側面22cの法線方向とした。また、ハンマーによる衝撃の大きさは4.4mghとし、衝撃の回数は5回とし、衝撃の周期は30秒とした。
また上記状態3を実現する際、サンドペーパーの掃引方向は、単位基材22の側面22cの法線方向に直交する方向とし、掃引回数は3回とし、掃引周期は30秒とした。サンドペーパーとしては、番手が#400のものを用いた。
結果、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は700MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は650MPaであった。
(実施例2)
補強部26の被覆寸法を150μmとしたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、補強部26を備えたカバーガラス20を作製した。また、実施例1の場合と同様にして、作製されたカバーガラス20の弾性復元率および曲げ強度を測定した。結果、弾性復元率は0.95であった。また、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は700MPaであった。
(実施例3)
補強部26の被覆寸法を50μmとしたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、補強部26を備えたカバーガラス20を作製した。また、実施例1の場合と同様にして、作製されたカバーガラス20の弾性復元率および曲げ強度を測定した。結果、弾性復元率は0.95であった。また、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は550MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は500MPaであった。
(実施例4)
補強部26を構成するための樹脂材料として、SiO2からなる微粒子が分散されたエポキシ樹脂を準備した。微粒子の粒径は50〜250nmの範囲内であった。また、実施例1の場合と同様にして、この樹脂材料のユニバーサル硬度を評価した。結果、ユニバーサル硬度は715N/mm2であった。
また実施例1の場合と同様にして、上記樹脂材料からなる補強部26を備えたカバーガラス20を作製した。側面22cの補強部26の被覆寸法は50μmとした。また、実施例1の場合と同様にして、作製されたカバーガラス20の弾性復元率および曲げ強度を測定した。結果、弾性復元率は0.98であった。また、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであった。
(実施例5)
補強部26を構成するための樹脂材料として、カーボンブラックからなる微粒子が分散されたエポキシ樹脂を準備した。微粒子の粒径は10〜500nmの範囲内であった。また、実施例1の場合と同様にして、この樹脂材料のユニバーサル硬度を評価した。結果、ユニバーサル硬度は635N/mm2であった。
また実施例1の場合と同様にして、上記樹脂材料からなる補強部26を備えたカバーガラス20を作製した。側面22cの補強部26の被覆寸法は50μmとした。また、実施例1の場合と同様にして、作製されたカバーガラス20の弾性復元率および曲げ強度を測定した。結果、弾性復元率は0.98であった。また、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は700MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は700MPaであった。
(実施例6)
補強部26を構成するための樹脂材料として、ウレタンアクリレート樹脂を準備した。また、実施例1の場合と同様にして、この樹脂材料のユニバーサル硬度を評価した。結果、ユニバーサル硬度は435N/mm2であった。
また実施例1の場合と同様にして、上記樹脂材料からなる補強部26を備えたカバーガラス20を作製した。側面22cの補強部26の被覆寸法は50μmとした。また、実施例1の場合と同様にして、作製されたカバーガラス20の弾性復元率および曲げ強度を測定した。結果、弾性復元率は0.91であった。また、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は650MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は550MPaであった。
(比較例1)
補強部26が設けられていないこと以外は実施例1の場合と同一であるカバーガラス20を準備した。このカバーガラス20の曲げ強度を、実施例1の場合と同様にして測定した。結果、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は200MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は200MPaであった。
(比較例2)
補強部26が設けられておらず、かつ、第1面22a、第2面22bおよび側面22cのいずれにも圧縮応力層24aが形成されている単位基材22が用いられていること以外は、実施例1の場合と同一であるカバーガラス20を準備した。このカバーガラス20の曲げ強度を、実施例1の場合と同様にして測定した。結果、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は800MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は700MPaであった。
(比較例3)
補強部26を構成するための樹脂材料として、エポキシ樹脂を準備した。また、実施例1の場合と同様にして、この樹脂材料のユニバーサル硬度を評価した。結果、ユニバーサル硬度は250N/mm2であった。
また実施例1の場合と同様にして、上記樹脂材料からなる補強部26を備えたカバーガラス20を作製した。側面22cの補強部26の被覆寸法は100μmとした。また、実施例1の場合と同様にして、作製されたカバーガラス20の弾性復元率および曲げ強度を測定した。結果、弾性復元率は0.75であった。また、状態1のカバーガラス20の曲げ強度は750MPaであり、状態2のカバーガラス20の曲げ強度は200MPaであり、状態3のカバーガラス20の曲げ強度は200MPaであった。
実施例1〜6および比較例1〜3における測定結果などをまとめて表1に示す。
実施例1〜6と比較例1,3との比較から分かるように、弾性復元率が0.9以上である補強部26を設けることにより、ハンマーやサンドペーパーによる衝撃や摩擦が加えられた後であっても500MPa以上の曲げ強度を達成することができた。また実施例1,2,4,5と比較例2との比較からわかるように、実施例1,2,4,5においては、第1面22a、第2面22bおよび側面22cのいずれにも圧縮応力層24aが形成されている単位基材22の場合と同等の曲げ強度を実現することができた。衝撃や摩擦が加えられた後のカバーガラス20を保護する上で、本発明による補強部26が非常に有効であることが分かる。
実施例1,2と実施例3との比較から分かるように、補強部26がウレタン系樹脂で構成される場合、被覆寸法を100μm以上にすることにより、ハンマーやサンドペーパーによる衝撃や摩擦が加えられた後であっても650MPa以上の曲げ強度を達成することができた。補強部26がウレタン系樹脂で構成される場合、被覆寸法を100μm以上にすることが非常に有効であることが分かる。