以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、以下で説明する実施形態に係るエンコーダは、回転型(ロータリタイプ)や直線型(リニアタイプ)など様々なタイプのエンコーダに適用可能である。以下では、エンコーダの理解が容易になるように、回転型のエンコーダを例に挙げて説明する。他のタイプのエンコーダに適用する場合には、被測定対象を回転型のディスクから直線型のリニアスケールに変更するなど適切な変更を加えることにより可能であるので、詳しい説明は省略する。
<1.サーボシステム>
まず、図1を参照しつつ、本実施形態に係るサーボシステムの構成について説明する。図1に示すように、サーボシステムSは、サーボモータSMと、制御装置CTとを有する。サーボモータSMは、エンコーダ100と、モータMとを有する。
モータMは、エンコーダ100を含まない動力発生源の一例である。モータMは、回転子(図示省略)が固定子(図示省略)に対して回転する回転型モータであり、回転子に固定されたシャフトSHを軸心AX周りに回転させることにより、回転力を出力する。
なお、モータM単体をサーボモータという場合もあるが、本実施形態では、エンコーダ100を含む構成をサーボモータSMという。つまり、サーボモータSMはエンコーダ付きモータの一例に相当する。以下では、説明の便宜上、エンコーダ付きモータが、位置や速度等の目標値に追従するように制御されるサーボモータである場合について説明するが、必ずしもサーボモータに限定されるものではない。エンコーダ付きモータは、例えばエンコーダの出力を表示のみに用いる場合等、エンコーダが付設さえされていれば、サーボシステム以外に用いられるモータをも含むものである。
また、モータMは、例えば位置データ等をエンコーダ100が検出可能なモータであれば、特に限定されるものではない。また、モータMは、動力源として電気を使用する電動式モータである場合に限定されるものではなく、例えば、油圧式モータ、エア式モータ、蒸気式モータ等の他の動力源を使用したモータであってもよい。但し、説明の便宜上、以下ではモータMが電動式モータである場合について説明する。
エンコーダ100は、モータMのシャフトSHの回転力出力側とは反対側に連結される。但し、必ずしも反対側に限定されるものではなく、エンコーダ100はシャフトSHの回転力出力側に連結されてもよい。エンコーダ100は、シャフトSH(回転子)の位置を検出することにより、モータMの位置(回転角度ともいう。)を検出し、その位置を表す位置データを出力する。
エンコーダ100は、モータMの位置に加えて又は代えて、モータMの速度(回転速度、角速度等ともいう。)及びモータMの加速度(回転加速度、角加速度等ともいう。)の少なくとも一方を検出してもよい。この場合、モータMの速度及び加速度は、例えば、位置を時間で1又は2階微分したり検出信号(例えば後述するインクリメンタル信号)を所定の時間カウントするなどの処理により検出することが可能である。説明の便宜上、以下ではエンコーダ100が検出する物理量は位置であるとして説明する。
制御装置CTは、エンコーダ100から出力される位置データを取得して、当該位置データに基づいて、モータMの回転を制御する。従って、モータMとして電動式モータが使用される本実施形態では、制御装置CTは、位置データに基づいてモータMに印加する電流又は電圧等を制御することにより、モータMの回転を制御する。更に、制御装置CTは、上位制御装置(図示せず)から上位制御信号を取得して、当該上位制御信号に表された位置等を実現可能な回転力がモータMのシャフトSHから出力されるように、モータMを制御することも可能である。なお、モータMが、油圧式、エア式、蒸気式などの他の動力源を使用する場合には、制御装置CTは、それらの動力源の供給を制御することにより、モータMの回転を制御することが可能である。
<2.エンコーダ>
次に、本実施形態に係るエンコーダ100について説明する。図2に示すように、エンコーダ100は、ディスク110と、光学モジュール120と、制御部130とを有する。
ここで、エンコーダ100の構造の説明の便宜上、上下等の方向を以下のように定め、適宜使用する。図2において、ディスク110が光学モジュール120と面する方向、つまりZ軸正の方向を「上」とし、Z軸負の方向を「下」とする。但し、該方向はエンコーダ100の設置態様によって変動するものであり、エンコーダ100の各構成の位置関係を限定するものではない。
(2−1.ディスク)
ディスク110は、図3に示すように円板状に形成され、ディスク中心Oが軸心AXとほぼ一致するように配置される。ディスク110は、モータMのシャフトSHに連結され、シャフトSHの回転により回転する。なお、本実施形態では、モータMの回転を測定する被測定対象の例として、円板状のディスク110を例に挙げて説明するが、例えば、シャフトSHの端面などの他の部材を被測定対象として使用することも可能である。また、図2に示す例では、ディスク110がシャフトSHに直接連結されているが、ハブ等の連結部材を介して連結されてもよい。
図3に示すように、ディスク110は、複数のスリットトラックSA1,SA2,SIを有する。ディスク110はモータMの駆動と共に回転するが、光学モジュール120は、ディスク110の一部に対向しつつ固定して配置される。従って、スリットトラックSA1,SA2,SIと、光学モジュール120とは、モータMの駆動に伴い、互いに測定方向(図3に示す矢印Cの方向。以下適宜「測定方向C」と記載する。)に相対移動する。
ここで、「測定方向」とは、光学モジュール120でディスク110に形成された各スリットトラックを光学的に測定する際の測定方向である。本実施形態のように被測定対象がディスク110である回転型のエンコーダにおいては、測定方向はディスク110の中心軸を中心とした円周方向に一致するが、例えば被測定対象がリニアスケールであり、可動子が固定子に対して移動する直線型のエンコーダにおいては、測定方向はリニアスケールに沿った方向となる。なお、「中心軸」とはディスク110の回転軸心であり、ディスク110とシャフトSHが同軸に連結される場合にはシャフトSHの軸心AXと一致する。
(2−2.光学検出機構)
光学検出機構は、スリットトラックSA1,SA2,SIと光学モジュール120とを有する。各スリットトラックは、ディスク110の上面にディスク中心Oを中心としたリング状に配置されたトラックとして形成される。各スリットトラックは、トラックの全周にわたって、測定方向Cに沿って並べられた複数の反射スリット(図4における斜線ハッチング部分)を有する。1つ1つの反射スリットは、光源121から照射された光を反射する。
(2−2−1.ディスク)
ディスク110は、例えば金属等の光を反射する材質により形成される。そして、ディスク110の表面における光を反射させない部分に反射率の低い材質(例えば酸化クロム等)を塗布等により配置することで、配置されない部分に反射スリットが形成される。なお、光を反射させない部分をスパッタリング等により粗面として反射率を低下させることで、反射スリットが形成されてもよい。
なお、ディスク110の材質や製造方法等については特に限定されるものではない。例えば、ディスク110をガラスや透明樹脂等の光を透過する材質で形成することも可能である。この場合、ディスク110の表面に光を反射する材質(例えばアルミニウム等)を蒸着等によって配置することにより、反射スリットが形成可能である。
スリットトラックは、ディスク110の上面において幅方向(図3に示す矢印Rの方向。以下適宜「幅方向R」と記載する。)に3本併設される。なお、「幅方向」とは、ディスク110の半径方向、すなわち測定方向Cと略垂直な方向であり、この幅方向Rに沿った各スリットトラックの長さが各スリットトラックの幅に相当する。3本のスリットトラックは、幅方向Rの内側から外側に向けて、SA1,SI,SA2の順に同心円状に配置される。各スリットトラックについてより詳細に説明するために、ディスク110の光学モジュール120と対向する領域近傍の部分拡大図を図4に示す。
図4に示すように、スリットトラックSA1,SA2が有する複数の反射スリットは、測定方向Cでアブソリュートパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。
なお、「アブソリュートパターン」とは、後述する光学モジュール120が有する受光アレイが対向する角度内における反射スリットの位置や割合等が、ディスク110の1回転内で一義に定まるようなパターンである。つまり、例えば、図4に示すアブソリュートパターンの例の場合、モータMがある角度位置となっている場合に、対向した受光アレイの複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンの組み合わせが、その角度位置の絶対位置を一義に表すことになる。なお、「絶対位置」とは、ディスク110の1回転内での原点に対する角度位置をいう。原点は、ディスク110の1回転内での適宜の角度位置に設定され、この原点を基準としてアブソリュートパターンが形成される。
なお、このパターンの一例によれば、モータMの絶対位置を、受光アレイの受光素子数のビットにより、一次元的に表すようなパターンを生成できる。しかし、アブソリュートパターンは、この例に限定されるものではない。例えば、受光素子数のビットにより多次元的に表すパターンであってもよい。また、所定のビットパターン以外にも、受光素子で受光する光量や位相などの物理量が絶対位置を一義的に表すように変化するパターンや、アブソリュートパターンの符号系列が変調を施されたパターン等であってもよく、その他、様々なパターンであってもよい。
なお、本実施形態では、同様のアブソリュートパターンが、測定方向Cで例えば1ビットの1/2の長さだけオフセットされて、2本のスリットトラックSA1,SA2として形成される。このオフセット量は、例えばスリットトラックSIの反射スリットのピッチPの半分に相当する。仮に、このようにスリットトラックSA1,SA2をオフセットさせた構成としない場合、次のような可能性がある。つまり、本実施形態のような一次元的なアブソリュートパターンにより絶対位置を表す場合、受光アレイPA1,PA2の各受光素子が反射スリットの端部近傍に対向して位置することによるビットパターンの変わり目の領域において、絶対位置の検出精度が低下する可能性がある。本実施形態では、スリットトラックSA1,SA2をオフセットさせるので、例えば、スリットトラックSA1による絶対位置がビットパターンの変わり目に相当する場合には、スリットトラックSA2からの検出信号を使用して絶対位置を算出したり、その逆を行うことにより、絶対位置の検出精度を向上できる。なお、このような構成とする場合、2つの受光アレイPA1,PA2における受光量を均一にする必要があるが、本実施形態では2つの受光アレイPA1,PA2を光源121からほぼ等しい距離に配置するので、上記構成を実現できる。
なお、スリットトラックSA1,SA2の各アブソリュートパターン同士をオフセットさせる代わりに、例えば、アブソリュートパターン同士はオフセットさせずに、スリットトラックSA1,SA2それぞれに対応した受光アレイPA1,PA2同士をオフセットさせてもよい。
一方、スリットトラックSIが有する複数の反射スリットは、測定方向Cでインクリメンタルパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。
「インクリメンタルパターン」とは、図4に示すように、所定のピッチで規則的に繰り返されるパターンである。ここで、「ピッチ」とはインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSIにおける各反射スリットの配置間隔をいう。図4に示すように、スリットトラックSIのピッチはPである。インクリメンタルパターンは、複数の受光素子による検出の有無それぞれをビットとして絶対位置を表すアブソリュートパターンと異なり、少なくとも1以上の受光素子による検出信号の和により、1ピッチ毎又は1ピッチ内のモータMの位置を表す。従って、インクリメンタルパターンは、モータMの絶対位置を表すものではないが、アブソリュートパターンに比べると非常に高精度に位置を表すことが可能である。
なお、本実施形態では、スリットトラックSA1,SA2の反射スリットの測定方向Cにおける最小長さは、スリットトラックSIの反射スリットのピッチPと一致する。その結果、スリットトラックSA1,SA2に基づくアブソリュート信号の分解能は、スリットトラックSIの反射スリットの数と一致する。しかしながら、最小長さは、この例に限定されるものではなく、スリットトラックSIの反射スリットの数はアブソリュート信号の分解能と同じかそれよりも多く設定されることが望ましい。
(2−2−2.光学モジュール)
光学モジュール120は、図2及び図5に示すように、ディスク110と平行な一枚の基板BAとして形成される。これにより、エンコーダ100を薄型化したり、光学モジュール120の製造を容易にすることが可能である。従って、ディスク110の回転に伴い、光学モジュール120は、スリットトラックSA1,SA2,SIに対して測定方向Cで相対移動する。なお、光学モジュール120は必ずしも一枚の基板BAとして構成される必要はなく、各構成が複数の基板として構成されてもよい。この場合、それらの基板が集約して配置されていればよい。また、光学モジュール120は基板状でなくともよい。
光学モジュール120は、図2及び図5に示すように、基板BAのディスク110と対向する面上に、光源121と、複数の受光アレイPA1,PA2,PIL,PIRと、受光素子PD1,PD2とを有する。
図3に示すように、光源121は、スリットトラックSIと対向する位置に配置される。そして、光源121は、光学モジュール120の対向する位置を通過する3つのスリットトラックSA1,SA2,SIの対向した部分に光を出射する。
光源121としては、照射領域に光を照射可能な光源であれば特に限定されるものではないが、例えば、LED(Light Emitting Diode)が使用可能である。光源121は、特に光学レンズ等が配置されない点光源として構成され、発光部から拡散光を出射する。なお、「点光源」という場合、厳密な点である必要はなく、設計上や動作原理上、略点状の位置から拡散光が発せられるものとみなせる光源であれば、有限な出射面から光が発せられてもよい。また、「拡散光」は、点光源から全方位に向かって放たれる光に限定されず、有限の一定の方位に向かって拡散しつつ出射される光を含む。すなわち、ここでいう拡散光には、平行光よりも拡散性を有する光であれば含まれる。このように点光源を使用することにより、光源121は、対向した位置を通過する3つのスリットトラックSA1,SA2,SIにほぼ均等に光を照射することが可能である。また、光学素子による集光・拡散を行わないので、光学素子による誤差等が生じにくく、スリットトラックへの光の直進性を高める事が可能である。
複数の受光アレイは、光源121の周囲に配置され、対応付けられたスリットトラックの反射スリットで反射された光を各々受光する複数の受光素子(図5のドットハッチング部分)を有する。複数の受光素子は、図5に示すように、測定方向Cに沿って並べられる。
なお、光源121から出射される光は拡散光である。従って、光学モジュール120上に投影されるスリットトラックの像は、光路長に応じた所定の拡大率εだけ拡大されたものとなる。つまり、図4及び図5に示すように、スリットトラックSA1,SA2,SIそれぞれの幅方向Rの長さをWSA1,WSA2,WSIとし、それらの反射光が光学モジュール120に投影された形状の幅方向Rの長さをWPA1,WPA2,WPIとすると、WPA1,WPA2,WPIは、WSA1,WSA2,WSIのε倍の長さとなる。なお、本実施形態では、図5に示すように、各受光アレイの受光素子の幅方向Rの長さは、各スリットが光学モジュール120に投影された形状とほぼ等しく設定されている例を示している。しかし、受光素子の幅方向Rの長さは、必ずしもこの例に限定されるものではない。
同様に、光学モジュール120における測定方向Cも、ディスク110における測定方向Cが光学モジュール120に投影された形状、つまり拡大率εの影響を受けた形状となる。理解が容易になるように、図2に示すように光源121の位置における測定方向Cを例に挙げて、具体的に説明する。ディスク110における測定方向Cは、軸心AXを中心とした円状になる。これに対して、光学モジュール120に投影された測定方向Cの中心は、光源121が配置されたディスク110の面内位置である光学中心Opから距離εLだけ離隔した位置となる。距離εLは、軸心AXと光学中心Opとの間の距離Lが拡大率εで拡大された距離である。この位置を図2では、概念的に測定中心Osとして示している。従って、光学モジュール120における測定方向Cは、光学中心Opから当該光学中心Opと軸心AXとが乗るライン上を軸心AX方向に距離εL離れた測定中心Osを中心とし、距離εLを半径とするライン上となる。
図4及び図5では、ディスク110及び光学モジュール120の各々における測定方向Cの対応関係を、円弧状のラインLcd,Lcpで表す。図4に示すラインLcdは、ディスク110上の測定方向Cに沿った線を表す一方、図5に示すラインLcpは、基板BA上の測定方向Cに沿った線(ラインLcdが光学モジュール120上に投影された線)を表す。
図2に示すように、光学モジュール120とディスク110との間のギャップ長をGとし、光源121の基板BAからの突出量をΔdとした場合、拡大率εは、下記(式1)で示される。
ε=(2G−Δd)/(G−Δd) …(式1)
1つ1つの受光素子としては、例えばフォトダイオードを使用することができる。但し、フォトダイオードに限定されるものではなく、光源121から出射された光を受光して電気信号に変換可能なものであれば、特に限定されるものではない。
本実施形態における受光アレイは、3本のスリットトラックSA1,SA2,SIに対応して配置される。受光アレイPA1は、スリットトラックSA1で反射した光を受光するように構成され、受光アレイPA2は、スリットトラックSA2で反射した光を受光するように構成される。また、受光アレイPIL,PIRは、スリットトラックSIで反射した光を受光するように構成される。受光アレイPIL,PIRは途中で分割されているが、同一トラックに対応する。このように、1つのスリットトラックに対応した受光アレイは1つに限らず、複数であってもよい。
光源121と、受光アレイPA1,PA2と、受光アレイPIL,PIRとは、図5に示す位置関係に配置される。アブソリュートパターンに対応する受光アレイPA1,PA2は、幅方向Rにおいて光源121を間に挟んで配置される。この例では、受光アレイPA1は内周側、受光アレイPA2は外周側に配置される。本実施形態では、受光アレイPA1,PA2と光源121との距離は略等しくなっている。そして、受光アレイPA1,PA2が有する複数の受光素子は、それぞれ測定方向C(ラインLcp)に沿って一定のピッチで並べられる。受光アレイPA1,PA2では、それぞれスリットトラックSA1,SA2からの反射光が受光されることにより、受光素子数のビットパターンを有するアブソリュート信号が生成される。
インクリメンタルパターンに対応する受光アレイPIL,PIRは、測定方向Cにおいて光源121を間に挟んで配置される。具体的には、受光アレイPIL,PIRは、光源121を含むY軸に平行な線を対称軸として線対称となるように配置され、受光アレイPA1,PA2の各々は、上記対称軸を中心に線対称な形状となっている。光源121は、測定方向Cに1トラックとして配置された受光アレイPIL,PIRの間に配置される。
本実施形態ではアブソリュートパターンとして一次元的なパターンを例示しているので、それに対応した受光アレイPA1,PA2は、対応付けられたスリットトラックSA1,SA2の反射スリットで反射された光を各々受光するように測定方向C(ラインLcp)に沿って並べられた複数(本実施形態では例えば9)の受光素子を有する。この複数の受光素子では、上述のとおり、1つ1つの受光又は非受光がビットとして扱われ、9ビットの絶対位置を表す。従って、複数の受光素子それぞれが受光する受光信号は、制御部130が備える位置データ生成部131において相互に独立して取り扱われて、シリアルなビットパターンに暗号化(コード化)されていた絶対位置が、これらの受光信号の組み合わせから復号される。この受光アレイPA1,PA2の受光信号を、「アブソリュート信号」という。このアブソリュート信号が、位置データに関わる第1受光信号の一例に相当し、これを出力する受光アレイPA1,PA2が、第1受光部の一例に相当する。なお、本実施形態とは異なるアブソリュートパターンが使用される場合には、受光アレイPA1,PA2は、そのパターンに対応した構成となる。
受光アレイPIL,PIRは、対応付けられたスリットトラックSIの反射スリットで反射された光を各々受光するように測定方向C(ラインLcp)に沿って並べられた複数の受光素子を有する。
本実施形態では、スリットトラックSIのインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P。)中に、合計4個の受光素子のセット(図5に「SET」で示す)が並べられ、かつ、4個の受光素子のセットが測定方向Cに沿って更に複数並べられる。そして、インクリメンタルパターンは、1ピッチ毎に反射スリットが繰り返し形成されるので、各受光素子は、ディスク110が回転する場合、1ピッチで1周期(電気角で360°という。)の周期信号を生成する。そして、1ピッチに相当する1セット中に4つの受光素子が配置されるので、1セット内の相隣接する受光素子同士は、相互に90°の位相差を有する周期信号を検出することになる。この各受光信号を、A相信号、B相信号(A相信号に対する位相差が90°)、Aバー相信号(A相信号に対する位相差が180°)、Bバー相信号(B相信号に対する位相差が180°)と呼ぶ。
インクリメンタルパターンは1ピッチ中の位置を表すので、1セット中の各位相の信号と、それと対応した他のセット中の各位相の信号とは、同様に変化する値となる。従って、同一位相の信号は、複数のセットにわたって加算される。従って、図5に示す受光アレイPIの多数の受光素子からは、位相が90°ずつズレる4つの信号が検出されることとなる。従って、受光アレイPIL,PIRから位相が90°ずつズレる4つの信号がそれぞれ生成される。この4信号を、「インクリメンタル信号」という。このインクリメンタル信号を出力する受光アレイPIL,PIRが、第3受光部の一例に相当する。
なお、本実施形態では、インクリメンタルパターンの1ピッチに相当する1セットには受光素子が4つ含まれ、受光アレイPIL及び受光アレイPIRのそれぞれが同様の構成のセットを有する場合を一例として説明するが、例えば1セットに2つの受光素子が含まれる等、1セット中の受光素子数は特に限定されるものではない。また、受光アレイPIL,PIRが各々異なる位相の受光信号を取得するように構成されてもよい。
上述のように、受光アレイPA1,PA2では、複数の受光素子それぞれの検出又は未検出によるビットパターンが絶対位置を一義に表すことになる性質上、受光アレイPA1,PA2での受光量が変動すると絶対位置の誤検出が生じやすくなるので、受光量は一定であることが望ましい。しかし、この受光量は、光学モジュール120とディスク110との間のギャップGの変動等によって変動する場合がある。また、光源121として例えばLEDを用いる場合には、発光量が温度変化によって変動する性質があることから、エンコーダ100の周囲温度の変動によっても受光量が変動する場合がある。
そこで、本実施形態では、図5に示すように、光学モジュール120は、2つの受光素子PD1,PD2を有する。受光素子PD1,PD2は、受光アレイPIL,PIRに対し測定方向Cに沿った位置に配置される。この例では、受光素子PD1,PD2は、測定方向Cにおいて受光アレイPIL,PIRの両側に配置される。つまり、受光素子PD1,PD2は、受光アレイPIL,PIRに対応したスリットトラックであるスリットトラックSIで反射した光を受光するように構成される。そして、受光素子PD1,PD2は、該スリットトラックSIで反射した光を受光して、受光アレイPA1,PA2で受光する光量を調整するための受光信号を出力する。以下適宜、この受光信号を「光量調整信号」という。この光量調整信号が、光量調整に関わる第2受光信号の一例に相当し、これを出力する受光素子PD1,PD2が、第2受光部の一例に相当する。
なお、本実施形態では、2つの受光素子PD1,PD2を受光アレイPIL,PIRの両側に配置する場合を一例として説明するが、受光素子PDは1つでもよい。この場合、受光アレイPIL,PIRのいずれか一方側に配置すればよい。
受光素子PD1及び受光素子PD2の各々は、測定方向Cの長さがスリットトラックSIのインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P。)の整数倍となるように形成される。これにより、受光素子PD1,PD2における受光量を略一定とし、光量調整信号の振幅をほぼ一定とすることができる。なお、図5では上記整数倍が1倍である場合を一例として示しているが、2倍以上としてもよい。また、この例では2つの受光素子PD1,PD2の各々について測定方向Cの長さを上記ピッチの整数倍としているが、2つの受光素子PD1,PD2の測定方向Cの長さの合計が上記ピッチの整数倍となるようにしてもよい。また、図5では、受光素子PD1,PD2の幅方向Rの長さが受光アレイPIL,PIRとほぼ等しく設定されている例を示しているが、受光素子PD1,PD2の幅方向Rの長さはこの例に限定されるものではない。
受光素子PD1,PD2と、受光アレイPA1,PA2とは、図5に示す位置関係に配置される。つまり、受光素子PD1,PD2の各々は、光源121(詳細には光源121の光軸。以下同様。)から該受光素子PD1,PD2の各々の中心位置cd1,cd2までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2の各々の中心位置ca1,ca2までの距離と、等しくなる位置に配置される。なお、ここでいう「等しくなる」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「等しくなる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に等しくなる」という意味である。言い換えれば、受光素子PD1,PD2と受光アレイPA1,PA2とは、各々の中心位置cd1,cd2及び中心位置ca1,ca2が、光源121を中心とする仮想的な円VCにほぼ沿うように配置される。
なお、中心位置cd1,cd2は、受光素子PD1,PD2の実質的な中心位置であればよい。ここでいう「実質的な中心位置」とは、例えば、受光素子PD1,PD2と同じ形状を有する平面図形の重心位置や、受光素子PD1,PD2の測定方向Cにおける中心線と幅方向Rにおける中心線との交点位置、あるいは、対角線の交点位置等を含むものである。受光アレイPA1,PA2の中心位置ca1,ca2も同様である。但しこの場合、受光アレイPA1,PA2はそれぞれ複数の受光素子を有する構成であるが、それらを1つの塊として見た場合の平面図形(言い換えれば、複数の受光素子の最も外側に位置する周縁を結んだ輪郭を有する平面図形)の重心位置、あるいはその図形の上記中心位置等となる。
(2−3.制御部)
図2に示すように、制御部130は、位置データ生成部131と、発光量調整部132とを有する。位置データ生成部131は、モータMの絶対位置を測定するタイミングにおいて、光学モジュール120から、絶対位置を表すビットパターンをそれぞれ備えた2つのアブソリュート信号と、位相が90°ずつズレる4つの信号を含むインクリメンタル信号とを取得する。そして、位置データ生成部131は、取得した信号に基づいて、これらの信号が表すモータMの絶対位置を算出し、算出した絶対位置を表す位置データを制御装置CTに出力する。
なお、位置データ生成部131による位置データの生成方法は、様々な方法が使用可能であり、特に限定されるものではない。ここでは、インクリメンタル信号とアブソリュート信号とから絶対位置を算出し位置データを生成する場合を例にとって説明する。
位置データ生成部131は、受光アレイPA1,PA2からのアブソリュート信号のそれぞれを2値化し、絶対位置を表すビットデータに変換する。そして、予め定められたビットデータと絶対位置との対応関係に基づいて、絶対位置を特定する。一方、受光アレイPIL,PIRからの4つの位相それぞれのインクリメンタル信号のうち、180°位相差のインクリメンタル信号同士を相互に減算する。このように180°位相差のある信号を減算することで、1ピッチ内の反射スリットの製造誤差や測定誤差などを相殺可能である。上述のように減算された結果の信号を、ここでは「第1インクリメンタル信号」及び「第2インクリメンタル信号」という。この第1インクリメンタル信号及び第2インクリメンタル信号は相互に電気角で90°の位相差を有する(単に「A相信号」、「B相信号」などという。)。そこで、この2つの信号から、位置データ生成部131は、1ピッチ内の位置を特定する。この1ピッチ内の位置の特定方法は、特に限定されない。例えば、周期信号であるインクリメンタル信号が正弦波信号である場合には、上記特定方法の例として、A相及びB相の2つの正弦波信号の除算結果をarctan演算することにより電気角φを算出する方法がある。あるいは、トラッキング回路を用いて2つの正弦波信号を電気角φに変換する方法もある。あるいは、予め作成されたテーブルにおいてA相及びB相の信号の値に対応付けられた電気角φを特定する方法もある。なおこの際、位置データ生成部131は、好ましくは、A相及びB相の2つの正弦波信号を各検出信号毎にアナログ−デジタル変換する。
位置データ生成部131は、アブソリュート信号に基づいて特定された絶対位置に、インクリメンタル信号に基づいて特定された1ピッチ内の位置を重畳する。これにより、アブソリュート信号に基づく絶対位置よりも高分解能な絶対位置を算出することができる。位置データ生成部131は、このようにして算出した絶対位置を逓倍処理して分解能をさらに向上させた後、高精度な絶対位置を表す位置データとして制御装置CTに出力する。
発光量調整部132は、2つの受光素子PD1,PD2から出力される光量調整信号に基づいて光源121の発光量を調整する。具体的には、発光量調整部132は、2つの受光素子PD1,PD2が出力する光量調整信号に基づき、受光量が減少した場合には、図示しない光源121の電流回路を制御し、光源121の電流を増加させて発光量を増大させる。一方、受光量が増大した場合には、光源121の電流を減少させて発光量を減少させる。これにより、発光量調整部132は、受光アレイPA1,PA2の受光量を略一定となるように調整する。
なお、上記のように、本実施形態では、受光素子PD1,PD2から出力される光量調整信号に基づいて光源121の発光量を調整する場合を一例として説明するが、光量調整信号を用いて絶対位置の誤検出の低減を図る手法は、これに限定されるものではない。例えば、位置データ生成部がしきい値変更部(図示省略)を有する構成としてもよい。前述のように、位置データ生成部131は、受光アレイPA1,PA2からのアブソリュート信号のそれぞれを2値化し、絶対位置を表すビットデータに変換するが、しきい値変更部は、このアブソリュート信号を2値化する際のしきい値を光量調整信号に基づいて変更する。このようにしても、絶対位置の誤検出の低減を図ることが可能である。また、例えば、位置データ生成部が出力信号調整部(図示省略)を有する構成としてもよい。この出力信号調整部は、受光アレイPA1,PA2から出力されるアブソリュート信号を2値化する前に、該アブソリュート信号の振幅等を光量調整信号に基づいて調整する。このようにしても、絶対位置の誤検出の低減を図ることが可能である。
<3.本実施形態による効果の例>
以上説明した実施形態による効果の一例を、図6に示す比較例を用いて説明する。図6に示すように、比較例の光学モジュール120’では、2つの受光素子PD1’,PD2’は、幅方向Rにおいて受光アレイPA1の内周側に配置される。光源121から受光素子PD1’,PD2’の各々までの距離は、ほぼ等しい。図示は省略するが、この場合、ディスク110では、3本のスリットトラックSA1,SI,SA2の内周側に、光量調整用の円状のスリットトラックが配置されることになる。この光学モジュール120’では、光源121から受光素子PD1’,PD2’までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2までの距離よりも、大きい配置となっている。その他の構成は、上記実施形態と同様である。
図7に、上記比較例の構成における、受光アレイPA1,PA2が出力するアブソリュート信号及び受光素子PD1’,PD2’が出力する光量調整信号の振幅と、光学モジュール120とディスク110との間のギャップGとの関係の一例を示す。この図7に示すように、比較例の構成では、ギャップGの変動に対するアブソリュート信号の振幅変化の態様と光量調整信号の振幅変化の態様とに、大きな差異がある。具体的には、ギャップGが大きくなるにつれて光源121から出射された光の減衰量も増加するので、アブソリュート信号の振幅は、ギャップGの増加にほぼ反比例するように減少する。一方、光量調整信号の振幅は、ギャップGが所定の値より大きい範囲ではギャップGの増加につれてアブソリュート信号よりも緩やかに減少し、ギャップGが所定の値より小さい範囲ではギャップGの増加につれて振幅が緩やかに増加する。これは、光源121として例えばLED等を用いる場合、光源121は指向性が強い配光特性(後述の図9参照)を有する場合があることに起因するものであり、比較例の構成では光源121から受光素子PD1’,PD2’までの距離が比較的大きいことから、ギャップGが小さくなるにつれて受光素子PD1’,PD2’に入射される光の光軸に対する角度θが大きくなり、照度が減少することによるものである。さらに、ギャップGが小さくなるにつれて受光素子PD1’,PD2’に対する光の入射角度も大きくなるので、これに起因して受光素子PD1’,PD2’で受光する光の照度が減少することも一因である。
以上により、比較例の構成では、ギャップGの変動に対するアブソリュート信号の振幅変化の態様と光量調整信号の振幅変化の態様とに大きな差異が生じる。その結果、上述のように発光量調整部132により光源121への電流制御を行っても、その電流制御は光量調整信号に基づいて行われることから、受光アレイPA1,PA2での受光量を一定にできない可能性がある。
一方、図8に、本実施形態の構成における、アブソリュート信号及び光量調整信号の振幅とギャップGとの関係の一例を示す。実施形態の構成では、光源121から受光素子PD1,PD2(の中心位置)までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2(の中心位置)までの距離と、ほぼ等しい。このような構成とする結果、図8に示すように、ギャップGの変動に対するアブソリュート信号の振幅変化の態様と光量調整信号の振幅変化の態様とを、ほぼ等しくすることができる。これにより、ギャップGの変動が生じた場合でも、光源121への電流制御を行うことで受光アレイPA1,PA2での受光量を一定に保持することが可能である。
他方、図9に、光源121の光軸に対して垂直な対向面における照度と光軸に対する角度θとの関係の温度による変化の一例を示す。この例では、温度T1と該T1よりも高温である温度T2の2種類の温度における上記関係を示している。光源121として例えばLED等を用いる場合、図9に示すように、光源121は指向性のある配光特性を有する。そして、例えばLEDの場合には、温度が高くなると効率が低下して照度が低下することから、温度T2の方が温度T1よりも全体的に照度が低下する。このように温度が変化する場合に、光源121として用いる発光機器によっては、配光特性(図9における曲線の形状)が変動する場合がある。例えば図9に示す例では、温度T2の方が温度T1の場合よりも指向性が強くなっている。このような場合、上記比較例のように、光源121から受光素子PD1’,PD2’までの距離と、光源121から受光アレイPA1,PA2までの距離が異なる構成の場合、受光素子PD1’,PD2’と受光アレイPA1,PA2とで角度θが相違することから、温度変化による照度の変動量が異なることとなる。例えば、受光アレイPA1,PA2(の中心位置)に入射される光の光軸に対する角度θを20°、受光素子PD1’,PD2’(の中心位置)に入射される光の光軸に対する角度θを40°とした場合、図9に示すように、受光アレイPA1,PA2での照度の変動量Δi1は受光素子PD1’,PD2’での照度の変動量Δi2よりも大きくなる。
以上により、比較例の構成では、温度の変動に対するアブソリュート信号の振幅変化の態様と光量調整信号の振幅変化の態様とに差異が生じる。その結果、上述のように発光量調整部132により光源121への電流制御を行っても、そ受光アレイPA1,PA2での受光量を一定にできない可能性がある。一方、本実施形態では、光源121から受光素子PD1,PD2(の中心位置)までの距離と、光源121から受光アレイPA1,PA2(の中心位置)までの距離とが、ほぼ等しい。つまり、受光アレイPA1,PA2(の中心位置)に入射される光の光軸に対する角度θと、受光素子PD1,PD2(の中心位置)に入射される光の光軸に対する角度θがほぼ等しくなる。その結果、照度の変動量がほぼ均等となり、温度の変動に対するアブソリュート信号の振幅変化の態様と光量調整信号の振幅変化の態様とをほぼ等しくすることができる。これにより、温度の変動が生じた場合でも、光源121への電流制御を行うことで受光アレイPA1,PA2での受光量を一定に保持することが可能である。
以上の結果、本実施形態によれば、ギャップGの変動やエンコーダ100の周囲温度の変動が生じた場合でも、上記光源121への電流制御を行うことで受光アレイPA1,PA2の受光量を一定に保持することができる。その結果、位置データの検出精度を高めることができるので、エンコーダ100の信頼性を向上できる。
また、本実施形態では特に、受光アレイPA1,PA2が、アブソリュートパターンを有するスリットトラックSA1,SA2で反射した光を受光するように構成される。本実施形態によれば、該受光アレイPA1,PA2の受光量を一定に保持することができるので、絶対位置を表すアブソリュート信号の信頼性を高めることができる。したがって、エンコーダ100の信頼性を向上できる。
また、本実施形態では特に、受光素子PD1,PD2の各々は、光源121から該受光素子PD1,PD2の各々の中心位置cd1,cd2までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2の各々の中心位置ca1,ca2までの距離と、実質的に等しくなる位置に配置される。これにより、受光素子PD1,PD2の配置を受光アレイPIL,PIRに対し測定方向Cに沿った位置に限定しない場合には、受光素子PD1,PD2を、光源121を中心とし該光源121から中心位置cd1,cd2までの距離を半径とする円VCの円周上のどの位置にも配置することが可能となるので、受光素子PD1,PD2の配置構成の自由度が高まり、光学モジュール120の設計の自由度を向上できる。
また、本実施形態では特に、エンコーダ100がいわゆる反射型エンコーダとして構成される。一般に反射型のエンコーダは、ギャップGの変動による受光信号への影響が比較的大きい。また、一般に点光源として用いられるLEDは指向性を有することから、受光アレイPA1,PA2及び受光素子PD1,PD2の位置関係により、ギャップGの変動に対するアブソリュート信号の振幅変化の態様と光量調整信号の振幅変化の態様とに差異が生じ易い。したがって、上記実施形態に係る受光アレイPA1,PA2及び受光素子PD1,PD2の配置構成は、反射型のエンコーダへの適用がより有効である。また、エンコーダ100を反射型のエンコーダとして構成することで、受光アレイPA1,PA2及び受光素子PD1,PD2等を光源121に近接して配置することが可能となるので、エンコーダ100を小型化できる。
また、本実施形態では特に、受光素子PD1,PD2は、受光アレイPIL,PIRに対し測定方向Cに沿った位置に配置される。つまり、受光素子PD1,PD2は、受光アレイPIL,PIRに対応したインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSIで反射した光を受光する。これにより、受光素子PD1,PD2用(光量調整用)のトラックをディスク110及び光学モジュール120に別途設けなくて済むので、エンコーダ100を小型化できる。
また、本実施形態では特に、受光素子PD1,PD2は、測定方向Cの長さがインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSIの複数のスリットの配置ピッチPの整数倍となるように形成される。これにより、受光素子PD1,PD2における受光量を略一定とすることが可能となり、受光素子PD1,PD2の出力信号を光量調整に用いることが容易となる。
また、本実施形態では特に、2つの受光素子PD1,PD2が設けられる。これにより、1つの場合に比べて受光量を増大できるので、光量調整信号の信頼性を向上できる。また、光量調整用の受光素子を1つとする場合には、該受光素子の測定方向Cの長さをピッチPの整数倍とするのが好ましいが、2つの受光素子PD1,PD2を設けることにより、前述のように、各受光素子の測定方向Cの長さの合計がピッチPの整数倍となるように構成する等が可能となる。このように、2つの受光素子PD1,PD2を設けることにより、該受光素子の形状、大きさや配置構成の自由度が高まるので、光学モジュール120の設計の自由度を向上できる。
<4.変形例>
以上、添付図面を参照しながら一実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されるものではない。本実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。なお、以下に説明する変形例において、上記実施形態と同様の構成には同符号を付し、説明を適宜省略する。
(4−1.インクリメンタル用の受光アレイを1本構成とする場合)
上記実施形態では、インクリメンタルパターンに対応する受光アレイPIL,PIRが測定方向において光源121を間に挟んで分割して配置される場合を説明したが、例えば図10に示すように、受光アレイPIが分割されずに1本の受光アレイとして配置されてもよい。この例では、受光アレイPIは、光源121に対し中心軸側(内周側)に配置されるが、中心軸と反対側(外周側)に配置されてもよい。受光アレイPIは、ピッチPのインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSIで反射した光を受光するように構成される。
本変形例では、受光素子PD1,PD2は、測定方向Cにおいて受光アレイPIの両側に配置される。上記実施形態と同様に、受光素子PD1,PD2の各々は、光源121から該受光素子PD1,PD2の各々の中心位置cd1,cd2までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2の各々の中心位置ca1,ca2までの距離と、実質的に等しくなる位置に配置される。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
(4−2.アブソリュート用の受光アレイを一本構成、且つ、光量調整用の受光素子を1つとする場合)
上記実施形態では、受光アレイPA1,PA2が幅方向Rにオフセットして配置されて2つのトラックとして構成される場合を一例として説明したが、受光アレイPA1,PA2の配置構成はこれに限定されるものではなく、一本として構成してもよい。また、上記実施形態では、2つの受光素子PD1,PD2を配置する場合を一例として説明したが、受光素子PDは1つでもよい。
図11に示すように、本変形例では、スリットトラックは、ディスク110の上面において幅方向に2本併設される。2本のスリットトラックは、幅方向Rの内側から外側に向けて、SA,SIの順に同心円状に配置される。スリットトラックSAが有する複数の反射スリットは、測定方向Cでアブソリュートパターンを有するように、ディスク110の全周に配置される。
図12に示すように、本変形例では、光源121の内周側に、アブソリュートパターンに対応する受光アレイPAが配置される。この受光アレイPAは、2種類の受光アレイPA1,PA2を有する。これら受光アレイPA1,PA2の各々を構成する受光素子p1,p2が、測定方向C(ラインLcp)に沿って交互に配置されることにより、2つの受光アレイPA1,PA2が単一トラック(1本)の受光アレイPAとして構成される。受光アレイPA1,PA2では、それぞれスリットトラックSAからの反射光が受光されることにより、受光素子数のビットパターンを有するアブソリュート信号が生成される。なお、受光アレイPAは第1受光部の一例に相当する。
この例では、受光素子p1の配置ピッチ及び受光素子p2の配置ピッチは共に、スリットトラックSAの反射スリットの測定方向Cにおける最小長さ(ピッチP)に対応しており(投影された像における最小長さ。すなわちε×P。)、各受光素子p1,p2の測定方向Cにおける長さはε×Pの半分と一致する。これにより、受光アレイPA1,PA2同士が測定方向Cに1ビットの1/2の長さ(ピッチPの半分に相当)だけオフセットされることとなり、上述の実施形態と同様に、受光アレイPA1による絶対位置がビットパターンの変わり目に相当する場合には、受光アレイPA2からの検出信号を使用して絶対位置を算出したり、その逆を行うことにより、絶対位置の検出精度を向上できる。なお、各受光素子p1,p2の測定方向Cの長さは上記に限定されず、ε×Pの半分以外の長さとしてもよい。
一方、光源121の外周側には、単一の受光素子PDと、測定方向Cにおいてこの受光素子PDの両側に配置された受光アレイPIL,PIRが配置される。受光素子PD及び受光アレイPIL,PIRは、ピッチPのインクリメンタルパターンを有するスリットトラックSIで反射した光を受光するように構成される。受光素子PDは、測定方向Cの長さがスリットトラックSIのインクリメンタルパターンの1ピッチ(ε×P)の整数倍となるように形成される。また、受光素子PDは、光源121から該受光素子PDの中心位置cdまでの距離が、光源121から受光アレイPAの中心位置caまでの距離と、実質的に等しくなる位置に配置される。なお、受光素子PDは第2受光部の一例に相当する。
当該構成をとる場合には、エンコーダ100の小型化を図ることが可能である。つまり、本変形例によれば、2つの受光アレイPA1,PA2が、1本の受光アレイPAとして構成されるので、スリットトラックSA及び受光アレイPAをいずれも1本のトラックとして構成できる。したがって、ディスク110及び光学モジュール120を小型化でき、ひいてはエンコーダ100を小型化することができる。
(4−3.ピッチの異なるインクリメンタルパターンを有し、且つ、光量調整用の受光素子を低インクリメンタル側に配置する場合)
上記実施形態では、単一ピッチのインクリメンタルパターンを有する場合を一例として説明したが、これに限定されるものではなく、ピッチの異なる複数のインクリメンタルパターンを有する構成としてもよい。
図13に示すように、本変形例では、スリットトラックは、ディスク110の上面において幅方向Rに沿って3本併設される。3本のスリットトラックは、幅方向Rの内側から外側に向けて、SA,SI1,SI2の順に同心円状に配置される。図4に示すように、スリットトラックSI1のピッチはP1であり、スリットトラックSI2のピッチはP2である。スリットトラックSI1のピッチP1は、スリットトラックSI2のピッチP2よりも長く設定される。本変形例では、P1=2×P2となるように各ピッチが設定されている。すなわち、スリットトラックSI2の反射スリットの数はスリットトラックSI1の反射スリットの数の2倍となっている。しかしながら、このスリットピッチの関係は、この例に限定されるものではなく、例えば、3倍、4倍、5倍など様々な値を取り得る。
図14に示すように、本変形例の光学モジュール120は、複数の受光アレイPA,PI1L,PI1R,PI2と、単一の受光素子PDとを有する。受光アレイPAは、スリットトラックSAで反射した光を受光するように構成される。また、受光アレイPI1L,PI1R及び受光素子PDは、スリットトラックSI1で反射した光を受光するように構成され、受光アレイPI2は、スリットトラックSI2で反射した光を受光するように構成される。光源121と、受光アレイPAと、受光アレイPI1L,PI1Rと、受光アレイPI2とは、図14に示す位置関係に配置される。つまり、幅方向Rの外側から内側に向けて(円の外側から中心軸に向けて)、受光アレイPI2、受光アレイPI1L,PI1R、光源121、受光アレイPAの順に配置される。受光アレイPI1L,PI1Rは、測定方向Cにおいて受光素子PDの両側に配置される。なお、受光アレイPI2は、一の受光部の一例に相当し、受光アレイPI1L,PI1Rは、他の受光部の一例に相当する。
受光アレイPI1L,PI1Rは、スリットトラックSI1のインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P1。)中に、合計4個の受光素子のセット(図14に「SET1」で示す)が並べられ、かつ、4個の受光素子のセットが測定方向Cに沿って更に複数並べられる。同様に、受光アレイPI2は、スリットトラックSI2のインクリメンタルパターンの1ピッチ(投影された像における1ピッチ。すなわちε×P2。)中に、合計4個の受光素子のセット(図14に「SET2」で示す)が並べられ、かつ、4個の受光素子のセットが測定方向Cに沿って更に複数並べられる。
従って、受光アレイPI1L,PI1R及び受光アレイPI2から位相が90°ずつズレる4つの信号がそれぞれ生成される。この4信号を、「インクリメンタル信号」という。また、ピッチの短いスリットトラックSI2に対応する受光アレイPI2で生成されるインクリメンタル信号は、他のインクリメンタル信号に比べて高分解能であることから「高インクリメンタル信号」、ピッチの長いスリットトラックSI1に対応する受光アレイPI1L,PI1Rで生成されるインクリメンタル信号は、他のインクリメンタル信号に比べて低分解能であることから「低インクリメンタル信号」という。
一方、受光素子PDは、測定方向Cの長さがスリットトラックSI1のインクリメンタルパターンの1ピッチ(ε×P1)の整数倍となるように形成される。また、受光素子PDは、光源121から該受光素子PDの中心位置cdまでの距離が、光源121から受光アレイPAの中心位置caまでの距離と、実質的に等しくなる位置に配置される。
当該構成をとる場合には、高い分解能を実現することが可能となる。つまり、詳細な説明は省略するが、本変形例では、位置データ生成部131が、受光アレイPI1L,PI1Rから出力される低インクリメンタル信号の逓倍処理と、受光アレイPI2から出力される高インクリメンタル信号の逓倍処理を積み上げる逓倍積上げ方式により、より高い分解能の絶対位置を表す位置データを生成することができる。したがって、高い分解能のエンコーダ100を実現することができる。
また、当該構成をとる場合には、絶対位置の精度を向上することが可能となる。つまり、上記のように逓倍処理を積み上げる場合、エンコーダ100の最終的な絶対位置の精度は、受光アレイPI2から出力される高インクリメンタル信号の精度に比較的大きな影響を受ける。本変形例では、受光素子PDが測定方向Cにおいて受光アレイPI1L,PI1Rの間に配置されるので、受光アレイPI2については測定方向Cに沿って配置面積を大きくとることが可能である。これにより、精度が求められる受光アレイPI2の受光量を増大できるので、絶対位置の精度を向上できる。
(4−4.光量調整用の受光素子を高インクリメンタル側に配置する場合)
上記変形例(4−3)では、光量調整用の受光素子が低インクリメンタル信号を出力する受光アレイ側に配置されるようにしたが、これに限定されるものではなく、受光素子PDが高インクリメンタル信号を出力する受光アレイ側に配置される構成としてもよい。
図15に示すように、本変形例の光学モジュール120は、複数の受光アレイPA,PI1,PI2L,PI1Rと、単一の受光素子PDとを有する。受光アレイPI1は、スリットトラックSI1で反射した光を受光するように構成される。受光アレイPI2L,PI2R及び受光素子PDは、スリットトラックSI2で反射した光を受光するように構成される。受光アレイPI2L,PI2Rは、測定方向Cにおいて受光素子PDの両側に配置される。なお、受光アレイPI2L,PI2Rは、一の受光部の一例に相当し、受光アレイPI1は、他の受光部の一例に相当する。
受光素子PDは、測定方向Cの長さがスリットトラックSI2のインクリメンタルパターンの1ピッチ(ε×P2)の整数倍となるように形成される。また、受光素子PDは、光源121から該受光素子PDの中心位置cdまでの距離が、光源121から受光アレイPAの中心位置caまでの距離と、実質的に等しくなる位置に配置される。
当該構成をとる場合には、上記変形例(4−3)と同様に、高い分解能を実現することが可能となる。
(4−5.光量調整用の受光素子を低インクリメンタル側に2つ配置する場合)
上記変形例(4−3)では、1つの光量調整用の受光素子が低インクリメンタル信号を出力する受光アレイ側に配置されるようにしたが、これに限定されるものではなく、2つの光量調整用の受光素子が低インクリメンタル信号を出力する受光アレイ側に配置される構成としてもよい。
図16に示すように、本変形例の光学モジュール120は、複数の受光アレイPA,PI1,PI2と、2つの受光素子PD1,PD2とを有する。受光アレイPI1及び受光素子PD1,PD2は、スリットトラックSI1で反射した光を受光するように構成される。受光アレイPI2は、スリットトラックSI2で反射した光を受光するように構成される。受光素子PD1,PD2は、測定方向Cにおいて受光アレイPI1の両側に配置される。なお、受光アレイPI2は、一の受光部の一例に相当し、受光アレイPI1は、他の受光部の一例に相当する。
受光素子PD1及び受光素子PD2の各々は、測定方向Cの長さがスリットトラックSI1のインクリメンタルパターンの1ピッチ(ε×P1)の整数倍となるように形成される。また、前述のように、2つの受光素子PD1,PD2の測定方向Cの長さの合計が上記ピッチの整数倍となるようにしてもよい。受光素子PD1,PD2の各々は、光源121から該受光素子PD1,PD2の各々の中心位置cd1,cd2までの距離が、光源121から受光アレイPAの中心位置caまでの距離と、実質的に等しくなる位置に配置される。
当該構成をとる場合には、絶対位置の精度を向上することが可能となる。つまり、前述のように逓倍処理を積み上げる場合、エンコーダ100の最終的な絶対位置の精度は、受光アレイPI2から出力される高インクリメンタル信号の精度に比較的大きな影響を受ける。本変形例では、受光素子PD1,PD2が測定方向Cにおいて受光アレイPI1の両側に配置されるので、受光アレイPI2については測定方向Cに沿って配置面積を大きくとることが可能である。これにより、精度が求められる受光アレイPI2の受光量を増大できるので、絶対位置の精度を向上できる。
(4−6.2つの受光素子を半ピッチずらして配置する場合)
以上においては、光源121から光量調整用の受光素子PD1,PD2等(の中心位置)までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2(の中心位置)までの距離と、ほぼ等しい場合を一例として説明したが、受光素子PD1,PD2等の配置構成はこれに限定されるものではない。つまり、上記2つの距離が異なる場合であっても、受光素子PD1,PD2等が、光学モジュール120とディスク110との間のギャップGの変動及びエンコーダ100の周囲温度の変動の両方(若しくは一方でもよい)に対する光量調整信号の振幅の変化の態様が、受光アレイPA1,PA2のアブソリュート信号の振幅の変化の態様と実質的に等しくなる位置に配置される場合には、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能である。そのような位置は、仮想的な円VC上に限定されるものではなく、円VCの円周に沿って一定の幅を有する有限の領域となる。
この場合の一例を、図17に示す。なお、図17において前述の図5と同様の部分には同符号を付し、説明を適宜省略する。
図17に示すように、本変形例の光学モジュール120では、受光素子PD1については、光源121から該受光素子PD1の中心位置cd1までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2の中心位置ca1,ca2までの距離とほぼ等しくなっている。一方、受光素子PD2については、光源121から該受光素子PD2の中心位置cd2までの距離が、光源121から受光アレイPA1,PA2の中心位置ca1,ca2までの距離と相違している。この例では、受光素子PD1と受光アレイPILとの最短距離が距離dであるのに対し、受光素子PD2と受光アレイPIRとの最短距離は距離dにスリットトラックSIのインクリメンタルパターンの1ピッチ(ε×P)の半分を加えた距離となっている。つまり、2つの受光素子PD1,PD2は、各々の位相がスリットトラックSIのインクリメンタルパターンの1ピッチ(ε×P)の1/2だけずれるように配置される。
上記の受光素子PD2の配置位置は、ギャップGの変動及び温度の変動に対する光量調整信号の振幅の変化の態様がアブソリュート信号の振幅の変化の態様と実質的に等しくなる領域に含まれる。したがって、本変形例においても、ギャップGの変動及びエンコーダ100の周囲温度の変動に対する受光素子PD2の光量調整信号の振幅の変化の態様を、受光アレイPA1,PA2のアブソリュート信号の振幅の変化の態様と実質的に等しくすることが可能である。したがって、上記実施形態と同様の効果を得る。
さらに、当該構成をとる場合には、光量調整の精度を向上することが可能である。つまり、本変形例では、受光素子PD1,PD2の各々の位相がスリットトラックSIのインクリメンタルパターンの1ピッチ(ε×P)の1/2ずれるように配置されるので、仮に光量調整信号にリップル等のノイズがのった場合でも、受光素子PD1,PD2の各々から出力される位相が半ピッチ異なる2つの光量調整信号を足し合わせることで、ノイズを相殺することができる。したがって、受光素子PD1,PD2での受光量の変動をさらに低減することが可能となり、光量調整信号の信頼性を向上し、光量調整の精度を向上できる。
なお、上記変形例では受光素子PD2(の中心位置)が円VCより外れた位置に配置された場合について説明したが、反対に受光素子PD1(の中心位置)が円VCより外れて配置されてもよいし、受光素子PD1,PD2の両方が円VCより外れて配置されてもよい。
(4−7.複数の受光素子の信号に基づいて配置する場合)
上記変形例(4−6)では、受光素子PD1,PD2の各々の光量調整信号について、ギャップGの変動及び温度の変動に対する上記各光量調整信号の振幅の変化の態様が、受光アレイPA1,PA2のアブソリュート信号の振幅の変化の態様と実質的に等しくなる位置に配置される場合について説明したが、受光素子PD1,PD2の配置構成はこれに限定されるものではない。例えば、複数の受光素子の各々の光量調整信号に基づく信号(例えば各受光素子の光量調整信号を加算した信号)のギャップGの変動及び温度の変動に対する振幅の変化の態様が、受光アレイPA1,PA2のアブソリュート信号の振幅の変化の態様と実質的に等しくなる位置に配置されてもよい。
この場合の一例を、図18に示す。なお、図18において前述の図12と同様の部分には同符号を付し、説明を適宜省略する。
図18に示すように、本変形例の光学モジュール120では、複数の受光アレイPA,PIと、複数(この例では2つ)の受光素子PD1,PD2とを有する。受光アレイPIは、スリットトラックSIで反射した光を受光するように構成され、受光アレイPAは、スリットトラックSAで反射した光を受光するように構成される。受光素子PD1,PD2は、一方(この例では受光素子PD1)が円VCの内周側に、他方(この例では受光素子PD2)が円VCの外周側に配置される。図示は省略するが、本変形例のディスク110では、スリットトラックSAの内周側及び外周側に、光量調整用の円状のスリットトラックが配置されることになる。
受光素子PD1,PD2の配置位置は、受光素子PD1,PD2の各々の光量調整信号に基づく信号(例えば各受光素子の光量調整信号を加算した信号)のギャップGの変動及び温度の変動に対する振幅の変化の態様が、受光アレイPA1,PA2のアブソリュート信号の振幅の変化の態様と実質的に等しくなるように設定される。したがって、本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
本変形例によれば、受光素子PD1,PD2の配置構成の自由度が大幅に高まるので、光学モジュール120の設計の自由度を向上することができる。なお、上記は受光素子の数が2である場合を一例として説明したが、3以上としてもよい。
(4−8.透過型エンコーダ)
以上においては、光源と受光アレイとがディスク110のスリットトラックに対し同じ側に配置された、いわゆる反射型エンコーダである場合を例にとって説明したが、これに限定されない。すなわち、光源と受光アレイとがディスク110を挟んで反対側に配置された、いわゆる透過型エンコーダであってもよい。この場合、ディスク110において、スリットトラックSA1,SA2,SIの各スリットを透過スリットとして形成する、あるいは、スリット以外の部分をスパッタリング等により粗面としたり透過率の低い材質を塗布したりすることで形成してもよい。なお、本変形例においては、光源121と、受光アレイPA1,PA2,PIL,PIRとが、ディスク110を挟んで対向配置されるが、本変形例における光学モジュール120は、このように別体として形成された光源と受光アレイとを含む。
本変形例では、受光素子PD1,PD2の各々は、光源121の光軸から該受光素子PD1,PD2の各々の中心位置cd1,cd2までの距離が、光源121の光軸から受光アレイPA1,PA2の各々の中心位置ca1,ca2までの距離と、実質的に等しくなる位置に配置される。したがって、このような透過型エンコーダを用いた場合も、上記実施形態と同様の効果を得る。
(4−9.その他)
また、上記実施形態では、受光アレイPA1,PA2がアブソリュート信号用の受光アレイである場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、受光アレイPA1,PA2は、原点用の単一の受光素子あるいは複数の受光素子からの検出信号により原点位置を表す原点用の受光アレイであってもよい。この場合、ディスク110のスリットトラックSA1,SA2の位置には、原点用のスリットあるいはパターンが形成される。本変形例では、光量調整用の受光素子は、光源121から該光量調整用の受光素子の中心位置までの距離が、光源121から原点用の受光素子(又は原点用の受光アレイ)の中心位置までの距離と、実質的に等しくなる位置に配置される。これにより、上記実施形態と同様の効果を得る。なお、本変形例では、上記原点用の受光素子又は原点用の受光アレイが、第1受光部の一例に相当する。
また、以上では、光源121から受光素子PD1,PD2等(の中心位置)までの距離が、光源121からアブソリュート信号を出力する受光アレイPA1,PA2等(の中心位置)までの距離と、ほぼ等しくなる場合について説明したが、受光素子PD1,PD2等の配置構成はこれに限定されるものではない。例えば、図18等に示す構成において、光源121から受光素子PD1,PD2(の中心位置)までの距離が、光源121からインクリメンタル信号を出力する受光アレイPI(の中心位置)までの距離と、ほぼ等しくなるように、受光素子PD1,PD2等を配置してもよい。これにより、受光アレイPIでの受光量を一定に保持することが可能である。なお、本変形例では、上記受光アレイPIが、第1受光部の一例に相当する。
また、以上では、受光アレイPA1,PA2等がそれぞれ9個の受光素子を有し、アブソリュート信号が9ビットの絶対位置を表す場合を説明したが、受光素子の数は9以外でもよく、アブソリュート信号のビット数も9に限定されない。また、受光アレイPIL,PIR等の受光素子の数も、上記実施形態の数に特に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、エンコーダ100がモータMに直接連結される場合について説明したが、例えば減速機や回転方向変換機等の他の機構を介して連結されてもよい。
なお、以上の説明における「垂直」とは、厳密な意味での垂直ではない。すなわち、「垂直」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」という意味である。また同様に、以上の説明における「平行」とは、厳密な意味での平行ではない。すなわち、「平行」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に平行」という意味である。
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。