JP2015084963A - レーザ手術装置 - Google Patents

レーザ手術装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2015084963A
JP2015084963A JP2013226159A JP2013226159A JP2015084963A JP 2015084963 A JP2015084963 A JP 2015084963A JP 2013226159 A JP2013226159 A JP 2013226159A JP 2013226159 A JP2013226159 A JP 2013226159A JP 2015084963 A JP2015084963 A JP 2015084963A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
laser
unit
pulse
surgical apparatus
tissue
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013226159A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6283992B2 (ja
Inventor
宗之 足立
Muneyuki Adachi
宗之 足立
真樹 田中
Maki Tanaka
真樹 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nidek Co Ltd
Original Assignee
Nidek Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nidek Co Ltd filed Critical Nidek Co Ltd
Priority to JP2013226159A priority Critical patent/JP6283992B2/ja
Publication of JP2015084963A publication Critical patent/JP2015084963A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6283992B2 publication Critical patent/JP6283992B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Laser Beam Processing (AREA)

Abstract

【課題】患者の組織を簡易な構成で効率良く処置することができるレーザ手術装置を提供する。
【解決手段】レーザ手術装置は、パルスレーザ光を患者の組織に集光させることで、集光位置で非線形相互作用を生じさせて組織を処置する。レーザ手術装置は、レーザユニット、照射ユニット、および制御ユニットを備える。レーザユニットは、パルスレーザ光を発振する発振器を有する。照射ユニットは、レーザユニットによって出射されたパルスレーザ光の集光位置を、組織において走査させる。制御ユニットは、照射ユニットを制御することで、複数の集光位置のそれぞれに対し、パルスレーザ光における複数のレーザパルスを集光させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、パルスレーザ光による非線形相互作用を利用して患者の組織(例えば、患者眼の角膜、水晶体等)を処置するレーザ手術装置に関する。
従来、患者の組織の処置(例えば、切断、破砕等)をレーザ光で行うために、種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1が開示する眼科用のレーザ装置はfsレーザを備える。fsレーザは、非線形相互作用によって角膜にフラップを形成するためのパルスレーザ光を出射する。特許文献1では、パルスレーザ光の波長は赤外領域の波長(1020ナノメートル〜1070ナノメートル)であり、パルス幅(パルス継続時間)は100フェムト秒〜800フェムト秒である。
特許文献2が開示する装置は、特許文献1のfsレーザによる処置の原理とは異なり、プラズマ発光を伴わないプラズマを誘起させる原理を用いて処置を行う。特許文献2では、単一縦モードのパルスレーザ光が用いられる。パルスレーザ光の波長は300ナノメートル〜1000ナノメートルであり、パルス幅は300ピコ秒〜20ナノ秒である(便宜的に、以下では、特許文献2で例示される処置方法を「サブナノ秒レーザによる処置方法」という)。
特表2012−520695号公報 米国特許公開2010/0163540号公報
fsレーザを用いる従来のレーザ装置は、ピーク出力が非常に高い超短パルスレーザを出射させる必要がある。よって、レーザユニットの構成を簡素化することが困難である。一方で、サブナノ秒レーザによる処置方法では、レーザパルスのピーク出力は、特許文献1で開示されているfsレーザにおけるレーザパルスのピーク出力よりも低い。しかし、それぞれのレーザパルスのパルス幅が、フェムト秒オーダーよりも長い。よって、パルスレーザ光のエネルギーの総量を削減することが困難であった。
本発明は、患者の組織を簡易な構成で効率良く処置することができるレーザ手術装置を提供することを典型的な目的とする。
本発明のレーザ手術装置は、パルスレーザ光を患者の組織に集光させることで、前記組織におけるパルスレーザ光の集光位置に非線形相互作用を生じさせて前記組織を処置することが可能なレーザ手術装置であって、パルスレーザ光を発振する発振器を有するレーザユニットと、前記レーザユニットによって出射されたパルスレーザ光の前記集光位置を、前記組織において走査させる走査手段と、前記走査手段を制御することで、複数の前記集光位置のそれぞれに対し、前記レーザユニットによって出射されたパルスレーザ光における複数のレーザパルスを集光させる走査制御手段とを備える。
本発明のレーザ手術装置は、患者の組織を簡易な構成で効率良く処置することができる。
レーザ手術装置1の概略構成を示す図である。 レーザユニット10の概略構成を示す図である。 増幅部110の概略構成を示す図である。 レーザ手術装置1が実行する処理を示すフローチャートである。 3つの集光位置SP1〜SP3の各々へのレーザパルスの照射態様の一例を説明するための説明図である。
以下、本発明の典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態のレーザ手術装置1の概略構成について説明する。以下の説明では、患者眼Eの軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向とする。
<全体構成>
本実施形態のレーザ手術装置1は、患者の透明組織を処置するために使用される。本実施形態では、患者眼Eの角膜および水晶体を処置することが可能な眼科用のレーザ手術装置1を例示する。本実施形態のレーザ手術装置1は、レーザユニット10、照射ユニット30、位置検出ユニット55、観察・撮影ユニット60、操作ユニット70、および制御ユニット76を備える。
<レーザユニット>
レーザユニット10は、パルスレーザ光を出射する。本実施形態では、レーザユニット10によって出射されたパルスレーザ光は、非線形相互作用によって組織にプラズマを誘起するために用いられる。非線形相互作用とは、光と物質とによって生じる相互作用の1つであり、光の強度(つまり、光子の密度)に比例しない応答が現れる作用である。本実施形態のレーザ手術装置1は、パルスレーザ光を患者眼Eの透明組織内に集光(合焦)させることで、集光位置(「レーザスポット」という場合もある)で多光子吸収を生じさせる。多光子吸収が生じる確率は、光の強度に比例せず、非線形となる。多光子吸収によって励起状態が生じると、透明組織内にプラズマが発生し、組織の切断・破砕等が行われる。以上の現象は、光破壊(photodisruption)と言われる場合もある。非線形相互作用による光破壊では、レーザ光による熱の影響が集光位置の周辺に加わり難い。よって、微細な処置が可能である。パルスレーザ光のパルス幅を極力小さくする程、少ないエネルギーで効率よく光破壊が生じる。レーザユニット10の詳細な構成については、図2および図3を参照して後述する。
<照射ユニット>
照射ユニット30は、レーザユニット10によって出射されたパルスレーザ光を患者眼Eに導光し、患者眼Eの透明組織における三次元上の目標位置に集光させる。本実施形態の照射ユニット30は、レーザユニット10側から患者眼E側に向かって順に、ミラー31、ミラー32、ホールミラー33、ビームエキスパンダユニット34、走査部40、レンズ50、レンズ51、ビームコンバイナ52、および対物レンズ53を備える。
ミラー31,32は、レーザユニット10によって出射されたパルスレーザ光を誘導する。ホールミラー33は、パルスレーザ光の光軸L1と、位置検出ユニット55(後述する)の光軸L2とを一致させる。ビームエキスパンダユニット34は、レーザスポットをZ方向(光軸L1に沿う方向)に移動させる。走査部40は、レーザスポットをXY方向に移動させる。レンズ50,51は、パルスレーザ光をリレーする。ビームコンバイナ52は、パルスレーザ光の光軸L1と、観察・撮影ユニット60(後述する)の光軸L3とを一致させる。対物レンズ53(集光光学系)は、パルスレーザ光を被検眼Eの組織に集光させる。
本実施形態のビームエキスパンダユニット34は、凹レンズ36、凸レンズ37、および駆動部38を備える。駆動部38は、凹レンズ36を光軸L1に沿って移動させる。凹レンズ36が移動することで、凹レンズ36を通過したビームの発散状態が変化する。その結果、パルスレーザ光の集光位置(レーザスポット)がZ方向に移動する。
本実施形態の走査部40は、Xスキャナ41、Yスキャナ44、およびレンズ47,48を備える。Xスキャナ41は、駆動部43によってガルバノミラー42を揺動させることで、パルスレーザ光をX方向に走査させる。Yスキャナ44は、駆動部46によってガルバノミラー45を揺動させることで、パルスレーザ光をY方向に走査させる。レンズ47,48は、2つのガルバノミラー42,45を瞳共役とする。
また、本実施形態では、対物レンズ53を通過したパルスレーザ光は、眼球固定インターフェース54を経て患者眼Eの透明組織に集光される。詳細は図示しないが、眼球固定インターフェース54は、吸着リングおよびカップを有する。吸着リングには、吸引ポンプ等によって負圧が加えられる。その結果、患者眼Eの前眼部が吸着リングによって吸引固定される。カップは前眼部の周囲を覆う。手術時には、屈折率が患者眼Eの組織の屈折率と同程度の液体が、カップ内に満たされる。よって、患者眼Eによるパルスレーザ光の屈折が弱まり、集光位置の精度が向上する。なお、眼球固定インターフェース54の構成を適宜変更してもよいことは言うまでもない。例えば、液体を用いるインターフェースの代わりに、コンタクトレンズ等を患者眼Eに装着してもよい。眼球固定インターフェース54を使わずに、レーザ手術装置1による手術を行うことも可能である。
なお、照射ユニット30の構成も適宜変更できる。例えば、レーザ手術装置1は、ガルバノミラー42,45の代わりに、パルスレーザ光を偏向させる音響光学素子(AOM,AOD)等を用いて、パルスレーザ光のXY方向の走査を行ってもよい。1つの方向の走査を複数の素子で行ってもよい。レゾナントスキャナ、ポリゴンミラー等を用いてもよい。また、レーザ手術装置1は、レーザユニット10に対して患者眼E(例えば、患者を支持するベッド等)を移動させることで、パルスレーザ光のXY方向の集光位置を変化させてもよい。この場合、患者眼Eを移動させる構成は、照射ユニット30に含まれ得る。また、集光位置をZ方向に移動させるための具体的な構成も変更できる。例えば、レーザ手術装置1は、走査部40よりも光路の下流側で集光位置のZ方向の走査を行ってもよい。集光位置をZ方向に移動させるための構成を複数備えてもよい。
<位置検出ユニット>
位置検出ユニット55は、照射ユニット30に対する患者眼Eの位置を検出するために用いられる。詳細には、本実施形態のレーザ手術装置1は、照射ユニット30に対する患者眼Eの位置を検出することで、パルスレーザ光が集光する位置を、断層画像(詳細は後述する)に対応付ける。集光位置を断層画像に対応付けることで、照射ユニット30等を制御するためのデータを、断層画像を用いて設定することができる。
本実施形態の位置検出ユニット55は、光学系の一部を照射ユニット30と共用する共焦点光学系である。位置検出ユニット55は、ホールミラー33、集光レンズ56、開口板57、および受光素子58を備える。ホールミラー33は、中央に入射した光を透過させると共に、患者眼Eによって反射された光を光軸L2に沿って反射させる。集光レンズ56は、ホールミラー33によって反射された光を、開口板57の開口に集光する。開口板57は、中央に開口を有する共焦点開口板である。開口板57の開口は、患者眼Eにおけるパルスレーザ光の集光位置(レーザスポットの位置)と共役な関係に配置されている。受光素子58は、開口板57の開口を通過した光を受光する。本実施形態のレーザ手術装置1は、患者眼Eの位置を検出する場合、レーザ光が集光位置で光破壊を生じさせないように、レーザユニット10から出射されるレーザ光の出力を調整する。レーザ手術装置1は、照射ユニット30によって集光位置を三次元方向に移動させながら、患者眼Eからの反射光を受光素子58によって受光する。
以上のように、本実施形態の位置検出ユニット55は、共焦点関係を利用することで、パルスレーザ光の集光位置を高い精度で検出することができる。なお、照射ユニット30に対する患者眼Eの位置を検出するための構成は、適宜変更することができる。例えば、ホールミラー33の代わりに偏光ビームスプリッタを用いて照射光と反射光を分離してもよい。また、レーザ手術装置1は、サンプル物質等にパルスレーザ光を照射し、サンプル物質等における実際の集光位置を断層画像(後述する)によって検出してもよい。この場合、レーザ手術装置1は、照射ユニット30に対する患者眼Eの位置を、位置検出ユニット55を用いずに検出することができる。
<観察・撮影ユニット>
観察・撮影ユニット60は、患者眼Eを術者に観察させると共に、処置対象となる組織を撮影する。一例として、本実施形態の観察・撮影ユニット60は、OCTユニット61および正面観察ユニット65を備える。観察・撮影ユニット60の光軸L3は、ビームコンバイナ52によって、パルスレーザ光の光軸L1と同軸とされる。光軸L3は、ビームコンバイナ63によって、OCTユニット61の光軸L4と、正面観察ユニット65の光軸L5とに分岐する。
OCTユニット61は、光干渉の技術を用いて被検眼Eの組織の断層画像を取得する。詳細には、本実施形態のOCTユニット61は、光源、光分割器、参照光学系、走査部、および検出器を備える。光源は、断層画像を取得するための光を出射する。光分割器は、光源によって出射された光を、参照光と測定光に分割する。参照光は参照光学系に入射し、測定光は走査部に入射する。参照光学系は、測定光と参照光の光路長差を変更する構成を有する。走査部は、測定光を組織上で二次元方向に走査させる。検出器は、組織によって反射された測定光と、参照光学系を経た参照光との干渉状態を検出する。レーザ手術装置1は、測定光を走査し、反射測定光と干渉光の干渉状態を検出することで、組織の深さ方向の情報を取得する。取得した深さ方向の情報に基づいて、組織の断層画像を取得する。本実施形態のレーザ手術装置1は、パルスレーザ光が集光する位置を、術前に撮影した患者眼Eの断層画像に対応付ける。その結果、レーザ手術装置1は、パルスレーザ光を照射する動作(例えば、駆動部38,43,46の動作)を制御するためのデータを、断層画像を用いて作成することができる。なお、OCTユニット61には種々の構成を用いることができる。例えば、SS−OCT、SD−OCT、TD−OCT等のいずれをOCTユニット61として採用してもよい。
正面観察ユニット65は、患者眼Eの正面画像を取得する。本実施形態の正面観察ユニット65は、可視光または赤外光によって照明された患者眼Eを撮影し、モニタ72(後述する)に表示する。術者は、モニタ72を見ることで患者眼Eを正面から観察することができる。
<操作ユニット>
操作ユニット70は、術者からの各種操作指示の入力を受け付ける。一例として、本実施形態の操作ユニット70は、各種操作ボタンを備えた操作部71と、モニタ72の表面に設けられたタッチパネルとを備える。しかし、ジョイスティック、キーボード、マウス等の他の構成も操作ユニット70として採用できる。なお、モニタ72には、例えば、患者眼Eの正面画像、組織の断層画像、各種操作メニュー等、種々の画像を表示させることができる。
<制御ユニット>
制御ユニット76は、CPU77、ROM78、RAM79、および不揮発性メモリ(図示せず)等を備える。CPU77は、レーザ手術装置1の各種制御を司る。ROM78には、レーザ手術装置1の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM79は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリは、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。
<レーザユニットの構成>
図2および図3を参照して、本実施形態におけるレーザユニット10の構成について詳細に説明する。図2に示すように、本実施形態のレーザユニット10は、発振器101、増幅部110、波長変換部121、切換部125,126、およびパルス選択部128を備える。
発振器101は、レーザ光(複数のレーザパルスが断続的に繰り返し照射されるパルスレーザ光を含む)を発振することができる。詳細は後述するが、本実施形態では、複数の集光位置のそれぞれに対し、レーザユニットによって出射されたパルスレーザ光における複数のレーザパルスが集光される。これにより、レーザ手術装置1は、患者眼Eの組織を簡易な構成で効率よく処置することができる。
本実施形態では、繰り返し周波数が1ギガヘルツ以上のパルスレーザ光を発振させることが可能な発振器が採用されている。より望ましい繰り返し周波数の範囲は、3ギガヘルツ以上である(詳細は後述)。一例として、本実施形態の発振器101には半導体レーザが採用されている。しかし、半導体レーザ以外の発振器(固体レーザ等)を採用することも可能である。
発振器101に発振させるパルスレーザ光のパルス幅(パルス継続時間)も適宜設定できる。ただし、パルス幅が短くなる程、少ないエネルギーで且つピーク出力が高いレーザパルスを組織に照射させることが容易となる。従って、パルス幅が短くなる程、より効率良く集光位置で非線形相互作用が生じる。例えば、パルス幅は、1フェムト秒〜100ピコ秒の範囲内に設定してもよい。より望ましいパルス幅の範囲は、100フェムト秒〜100ピコ秒である。パルス幅が100フェムト秒以上であれば、レーザの発振および制御が容易である。
発振器101に発振させるパルスレーザ光の波長も適宜設定できる。ただし、患者眼Eの透明組織に照射するパルスレーザ光の波長の範囲は、望ましくは、300ナノメートル以上2000ナノメートル以下である。波長が300ナノメートル未満であると、多光子吸収でなく単光子吸収が生じやすくなり、非線形相互作用による組織の処置が困難になる。また、本実施形態では、従来のサブナノ秒レーザによる処置方法に比べてパルスレーザ光のパルス幅が短いので、従来に比べて波長が長いパルスレーザ光(例えば、波長が2000ナノメートルのパルスレーザ光)を用いても非線形相互作用が生じ得る。なお、発振器101に発振させるパルスレーザ光の波長は、レーザの発振および波長変換の容易性等を考慮すると、1000ナノメートル〜1600ナノメートルの範囲内であることがより望ましい。一例として、本実施形態では、発振器101に発振させるパルスレーザ光の波長は1064ナノメートルとした。
増幅部110は、発振器101によって発振されたパルスレーザ光の出力を増幅させる。図3を参照して、本実施形態で採用されている増幅部110の構成について説明する。本実施形態のレーザユニット10は、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式のレーザユニットである。図3に例示する増幅部110は、MOPA方式で用いられる増幅部の一例である。増幅部110は、増幅器111A,111B,111Cと、励起光源112A,112B,112Cと、拡大レンズ114A,114Bとを含む。
増幅器111A,111B,111Cの各々は、多重パス増幅器である。増幅器111A,111B,111Cの各々には増幅媒質が含まれる。増幅媒質には、発振器101によって発振される種光の波長に合った媒質を用いればよい。励起光源112A,112B,112Cは、増幅器111A,111B,111Cにそれぞれ対応して設けられている。励起光源112A,112B,112Cは、対応する増幅器に含まれる増幅媒質に励起光を照射して、増幅媒質を励起させる。励起状態にある増幅媒質は、入射したパルスレーザ光を増幅して出射する。拡大レンズ114Aは、増幅器111Aと増幅器111Bの間に設けられ、増幅器111Aから出射されたパルスレーザ光の径を広げる。拡大レンズ114Bは、増幅器111Bと増幅器111Cの間に設けられ、増幅器111Bから出射されたパルスレーザ光の径を広げる。
MOPA方式による増幅の構成は、従来のフェムト秒レーザで用いられていた増幅の構成(例えば、チャープパルス増幅法(CPA法)等の構成)に比べて簡易である。本実施形態のレーザ手術装置1が簡易な構成の増幅機構を採用できる理由について説明する。パルス幅がフェムト秒オーダーのレーザパルス(以下、「フェムト秒レーザ」という場合もある)を各集光位置に1回ずつ照射する従来の処置方法では、レーザユニットは、ピーク出力が非常に高いレーザパルスを出射する必要がある。つまり、フェムト秒レーザを用いる従来の装置は、ピコ秒またはマイクロ秒等のオーダーに比べてパルス幅が非常に小さいレーザパルスのピーク出力を、非常に高い値まで増幅させる。この場合に、MOPAに例示される増幅機構を用いると、増幅中の自己収束が原因で光の強度が過度に高くなる場合がある。その結果、増幅部の光学系の損傷等が生じ得る。従って、フェムト秒レーザを用いる従来の装置では、MOPA等の増幅方法よりも複雑な増幅方法(例えばCPA法等)を用いる必要があった。
これに対し、本実施形態のレーザ手術装置1は、従来のフェムト秒レーザに比べてピーク出力が低いレーザパルスを、それぞれの集光位置に複数回照射することで、組織を処置する(詳細は後述する)。つまり、本実施形態のレーザ手術装置1は、発振器101によって発振されたパルスレーザ光のピーク出力を、従来の装置におけるフェムト秒レーザのピーク出力よりも低い出力に増幅させれば足りる。従って、レーザ手術装置1は、MOPAに例示される増幅機構を採用することも可能である。
なお、増幅部110の構成も適宜変更できる。例えば、レーザ手術装置1に使用できる増幅部110はバルク型でもよいが、光ファイバー増幅器が複数使用されてもよい。増幅段も適宜設定すればよい。MOPA方式以外の増幅方式が用いられてもよい。また、処置に必要となるピーク出力によっては、増幅部110自体を省略することも可能である。
図2の説明に戻る。波長変換部121は、発振器101によって発振されたパルスレーザ光の波長を変換することができる。一例として、本実施形態の波長変換部121は、発振器101によって発振されるパルスレーザ光の波長(1064ナノメートル)を、300ナノメートル〜700ナノメートルの範囲の波長(本実施形態では354ナノメートル)に変換する。詳細には、本実施形態の波長変換部121は、第一波長変換結晶122と、第二波長変換結晶123とを備える。第一波長変換結晶122は、波長が1064ナノメートルのパルスレーザ光を入射し、第二次高調波(波長532ナノメートル)を出射する。第二波長変換結晶123は、第二次高調波を入射し、第三次高調波(波長354ナノメートル)を出射する。波長変換結晶122,123には、バルク結晶(例えば、LBO、BBO)等を用いることができる。
なお、波長変換部121の構成も変更できる。発振器101によって発振されるパルスレーザ光の波長と、患者眼Eの組織に照射するパルスレーザ光の波長とに基づいて、波長変換部121の具体的な構成を適宜決定すればよい。例えば、発振器101によって発振されるパルスレーザ光の波長を本実施形態よりも短くし、波長変換部によってパルスレーザ光の波長を長い波長に変換することも可能である。波長変換結晶の数も2つに限られない。また、バルク結晶に換えてQPM素子等を用いてもよい。QPM素子を用いる場合、分散によるパルス幅の広がりを考慮して素子を選択するのが望ましい。
切換部125,126は、波長変換部121によるパルスレーザ光の波長変換を実行するか否かを切り換える。換言すると、切換部125,126は、波長変換されたパルスレーザ光をレーザユニット10から出射するか、波長変換されていないパルスレーザ光をレーザユニット10から出射するかを切り換える。一例として、本実施形態では、パルスレーザ光の光路への挿入および抜き取りが可能なミラーが、切換部125,126として使用される。切換部125,126の各々の光路への挿入および光路からの抜き取りは、挿脱機構(図示せず)によって行われる。切換部125は、波長変換部121よりも光路の上流側に設けられる。切換部126は、波長変換部121よりも光路の下流側に設けられる。切換部125,126が共に光路から抜き取られると、パルスレーザ光は光路L7に沿って進む。この場合、パルスレーザ光は、波長変換部121によって波長変換された後、パルス選択部128に入射する。一方で、切換部125,126が共に光路に挿入されると、パルスレーザ光は光路L8に沿って進む。この場合、パルスレーザ光は、波長変換部121を経ることなくパルス選択部128に入射する。
なお、切換部125,126の具体的な構成も変更できる。例えば、レーザ手術装置1は、他の構成(例えば、音響光学素子、プリズム、MEMS、半導体ゲート等)を用いてパルスレーザ光の光路を切り換えることで、波長変換を実行するか否かを切り換えてもよい。また、切換部は、パルスレーザ光の光路への波長変換部121自体の挿入および抜き取りを切り換えることで、波長変換を実行するか否かを切り換えてもよい。本実施形態とは逆に、切換部125,126が光路に挿入された場合に波長変換が実行されるように、光学系の配置を設計してもよい。また、レーザ手術装置1は、複数の波長変換部を用いてもよい。波長が互いに異なる3種類以上のレーザ光を選択的に出射してもよい。
パルス選択部128は、断続的に入射する複数のレーザパルスを、組織に光破壊を生じさせるレーザパルスと、組織に光破壊を生じさせないレーザパルスとに選択的に振り分ける。一例として、本実施形態のパルス選択部128は、音響光学素子(AOM)とビームダンプとを備える。音響光学素子は、レーザパルスを偏向させることができる。パルス選択部128は、組織に光破壊を生じさせないレーザパルスを、音響光学素子によって偏向し、ビームダンプに入射させる。つまり、パルス選択部128は、組織の処置に使用しないレーザパルスをピッキングする。また、パルス選択部128は、組織に光破壊を生じさせるレーザパルスを、偏向させることなくそのまま出射する。
本実施形態では、従来のフェムト秒レーザに比べて高い繰り返し周波数でパルスレーザ光が発振される。従って、レーザ手術装置1は、照射ユニット30によって集光位置を次の目標位置に切り換えている間に、予定されていない位置で光破壊および熱変性等が生じる可能性を低下させることが望ましい。本実施形態のレーザ手術装置1は、集光位置が切り換えられている間に発振されるレーザパルスを、パルス選択部128によって、少なくとも光破壊を生じさせないレーザパルスとする。詳細には、本実施形態のレーザ手術装置1は、照射ユニット30によって集光位置が次の目標位置に切り換えられている間、レーザパルスが組織に照射されることを、音響光学素子によって防ぐ。よって、予定されていない位置で光破壊または熱変性等が生じる可能性がさらに低下する。
なお、パルス選択部128の構成も適宜変更できる。例えば、パルス選択部128の配置位置を変更してもよい。従って、レーザユニット10の外部にパルス選択部128を配置してもよい。波長変換部121よりも光路の上流側にパルス選択部128を配置してもよい(この場合、パルス選択部128の位置は、増幅部110の上流側でもよいし、下流側でもよい)。また、音響光学素子の代わりに、電気光学変調器(EOM)、光ファイバスイッチング素子、チョッパホイル等を用いても良い。また、本実施形態で例示したパルス選択部128は、レーザパルスを選択的にピッキングする。しかし、光破壊を生じさせないレーザパルスとするための方法は、レーザパルスをピッキングする方法に限定されない。例えば、パルス選択部128は、組織の処置に使用しないレーザパルスのパラメータの少なくともいずれか(例えば、パルスエネルギー)を、光破壊を生じさせない値に変化させてもよい。また、それぞれのレーザパルスのエネルギーが低い場合等には、パルス選択部128自体を省略して装置構成を簡略化することも可能である。
<手術時の処理>
図4および図5を参照して、本実施形態のレーザ手術装置1が実行する手術時の処理について説明する。図4に例示する手術時の処理は、パルスレーザ光による手術を実行する指示が操作部71等を介して入力された場合に、制御ユニット76のCPU77によって実行される。CPU77は、ROM78または不揮発性メモリに記憶された制御プログラムに従って、図4に示す処理を実行する。
まず、処置モードの選択指示が受け付けられる(S1)。処置モードとは、レーザ手術装置1による患者眼Eの処置(手術)の態様を決定するためのモードである。本実施形態では、2つの処置モード(第一モードおよび第二モード)が設けられている。第一モードは、患者眼Eの第一部位に対する処置を行うためのモードである。第二モードは、患者眼Eのうち、第一部位よりも後側(眼の奥側)に位置する第二部位に対する処置を行うためのモードである。一例として、本実施形態では、第一部位は角膜であり、第二部位は水晶体である。
術者は、操作部71等を用いて、所望の処置モードの選択指示を入力する。例えば、CPU77は、「角膜処置モード」「水晶体処置モード」等のボタンをモニタ72に表示し、所望のボタンをタッチパネル等によって術者に選択させることで、処置モードの選択指示を受け付けてもよい。また、CPU77は、各モードにおけるパルスレーザ光の波長を、選択肢としてモニタ72に表示してもよい。
処置モードの種類を変更してもよい。例えば、3つ以上の処置モードが設けられていてもよい。水晶体嚢の前面を切開するCCC(Continuous Circular Capsulorhexis)を実行するための処置モード、角膜ポートを形成するための処置モード等の他のモードが設けられていてもよい。本実施形態では、レーザ手術装置1は、第二モードにおいて、CCCと水晶体核の破砕を共に行うこともできる。また、レーザ手術装置1は、患者眼Eにおける1つの部位のみを処置するように構成されていてもよい。この場合、処置モードは不要である。
次いで、選択された処置モードが第一モードであるか否かが判断される(S2)。第一モードであれば(S2:YES)、患者眼Eの角膜におけるパルスレーザ光の集光位置(この場合は、パルスレーザ光を集光させる目標位置)が設定される(S4)。前述したように、本実施形態では、CPU77は、位置検出ユニット55によって検出された位置に基づいて、集光位置を断層画像に対応付ける。従って、CPU77は、断層画像によって集光位置を設定することができる。ただし、集光位置の設定方法は変更してもよい。
次いで、CPU77は、レーザユニット10から出射するパルスレーザ光の出力を設定する(S5)。本実施形態では、S5で設定される出力pは、第二モードにおいて設定される出力P(後述する)よりも小さい。ただし、出力pは固定値である必要は無く、術者等が変更できてもよい。本実施形態でも、少なくとも出力pの初期値は後述する出力Pの初期値よりも小さいが、術者等は出力pを変更できる。
次いで、CPU77は、レーザユニット10から出射するパルスレーザ光の波長を、角膜を処置するための第一波長に設定する(S6)。本実施形態のレーザ手術装置1は、波長変換部121による波長変換を実行することで、組織に出射するパルスレーザ光の波長を第一波長(本実施形態では354ナノメートル)とする。
選択された処置モードが第二モードであれば(S2:NO)、患者眼Eの水晶体(例えば、水晶体嚢および水晶体核の少なくともいずれか)におけるパルスレーザ光の集光位置が設定される(S8)。パルスレーザ光の出力が設定される(S9)。S9で設定される出力Pの初期値は、第一モードにおいて設定される出力pの初期値よりも大きい。なお、出力Pは、前述した出力pと同様に、術者によって変更できてもよい。次いで、CPU77は、レーザユニット10から出射するパルスレーザ光の波長を、水晶体を処置するための第二波長に設定する(S10)。本実施形態のレーザユニット10は、波長変換部121による波長変換を実行せずにパルスレーザ光を出射することで、パルスレーザ光の波長を第二波長(本実施形態では1064ナノメートル)とする。
次いで、パルスレーザ光の照射開始指示が入力されたか否かが判断される(S12)。操作部71等によって照射開始指示が入力されると(S12:YES)、CPU77は、発振器101によるパルスレーザ光の発振を開始させると共に、設定した集光位置に従って、ビームエキスパンダユニット34および走査部40(図1参照)の駆動を開始する(S13)。つまり、CPU77は、設定した複数の集光位置の各々にパルスレーザ光が集光されるように、照射ユニット30を制御する。また、CPU77は、集光位置が次の目標位置に切り換えられるまでの間、パルス選択部128を駆動する。その結果、発振器101から発振されたレーザパルスはピッキングされるので、レーザパルスは組織に照射されない状態となる。つまり、レーザパルスは、パルス選択部128によって、組織において光破壊を生じさせないレーザパルスとされる(S15)。
集光位置が照射ユニット30によって次の目標位置に切り換えられたか否かが判断される(S16)。切り換えが完了していなければ(S16:NO)、パルスピッキング(S15)が継続して実行される。切り換えが完了すると(S16:YES)、CPU77は、ピッキングを終了させて、走査を停止させたまま複数のレーザパルスを1つの集光位置に照射する。詳細は後述するが、本実施形態では、1つの集光位置(目標位置)に対するレーザパルスの照射を開始してから、その集光位置に対する複数のレーザパルスの照射を終了させるまでの時間(以下、「合計照射時間」という)が定められている。本実施形態では、合計照射時間が経過するまで、1つの集光位置に対する複数のレーザパルスの照射が連続して行われる。なお、合計照射時間は適宜設定できるが、300ピコ秒以上とすることが望ましい。合計照射時間を300ピコ秒以上とすれば、プラズマを発生させるために十分なエネルギーが集光位置に供給される。
なお、連続して照射される2つのレーザパルスの照射間隔と、合計照射時間とが判明すれば、1つの集光位置に照射するレーザパルスの数(以下、「規定数」という)が定まる。よって、CPU77は、1つの集光位置に対する規定数のレーザパルスの照射が完了することを条件として、その集光位置に対するレーザパルスの照射を終了させてもよい。
1つの集光位置に対する複数のレーザパルスの照射が終了すると(S17)、全ての目標位置に対するレーザパルスの照射が終了したか否かが判断される(S19)。終了していなければ(S19:NO)、処理はS15に戻る。この場合、集光位置が照射ユニット30によって次の目標位置に切り換えられる。この間、パルスピッキング(S15)が実行される。集光位置の切り換えが完了すると(S16:YES)、切り換えられた集光位置に対して複数のレーザパルスが照射される(S17)。全ての目標位置に対するレーザパルスの照射が終了すると(S19:YES)、処理は終了する。
図5は、3つの集光位置S1,S2,S3の各々へのレーザパルスの照射態様の一例を説明するための図である。本実施形態のレーザ手術装置1は、集光位置S1〜S3の各々にレーザパルスを複数照射させる。それぞれのレーザパルスのピーク出力は、従来のフェムト秒レーザによる処置方法(パルス幅がフェムト秒オーダーのレーザパルスをそれぞれの集光位置に1回ずつ照射させる処置方法)に比べて低いピーク出力とする。
例えば、繰り返し周波数を50ギガヘルツとすると、複数のレーザパルスの繰り返し周期は20ピコ秒となる。このレーザパルスを、集光位置S1〜S3の各々に15発照射させると、300ピコ秒の合計照射時間に亘ってレーザパルスが断続的に1つの集光位置に照射され続ける。その結果、従来のフェムト秒レーザに比べて低いピーク出力で、サブナノ秒レーザによる処置方法(例えば、パルス幅が300ピコ秒〜20ナノ秒のレーザパルスをそれぞれの集光位置に1回ずつ照射させる処置方法)と同様の非線形相互作用が集光位置で生じ、組織が処置される。
従来のフェムト秒レーザによる処置では、高いピーク出力を得るために、発振器101によって発振されたパルスレーザ光を増幅させる必要がある。MOPAに例示される増幅機構(例えば、本実施形態の増幅部110)でフェムト秒レーザを高いピーク出力まで増幅させると、パルスレーザ光のパルス幅が小さいので、増幅中の自己収束が原因で、増幅機構の光学系の損傷が生じ得る。従って、従来のフェムト秒レーザによる処置では、MOPA等の増幅方法よりも複雑な増幅方法(例えばCPA法)を用いる必要がある。これに対し、本実施形態のレーザ手術装置1は、従来に比べて低いピーク出力のフェムト秒レーザを出射すればよいので、簡易な増幅方法でパルスレーザ光を増幅することも可能である。各種条件によっては、増幅機構自体を省略できる場合も有り得る。採用できるレーザ光源の種類が増加する可能性もある。
また、本実施形態では、従来のサブナノ秒レーザによる処置方法とは異なり、1つの集光位置へのレーザパルスの照射が開始されてから終了するまでの間(つまり、合計照射時間中)に、常にレーザ光が照射されるわけではない。レーザパルスのパルス幅が短くなる程、少ないエネルギーで高いピーク出力のレーザパルスが生成され、生成された複数のレーザパルスによって効率よく非線形相互作用が生じる。以上のように、本実施形態のレーザ手術装置1は、患者の組織を簡易な構成で効率よく処置することができる。
本実施形態のレーザユニット10は、波長変換部121によって波長が変換されたパルスレーザ光を出射することができる。従って、レーザ手術装置1は、処置に適した波長のパルスレーザ光を組織に照射することができる。さらに、本実施形態のレーザ手術装置1は、処置を行う部位に応じて波長変換の実行を制御することで、波長が異なる複数種類のパルスレーザ光を選択的に組織に出射することができる。従って、レーザ手術装置1は、波長の違いによるパルスレーザ光の特性に応じて適切な処置を行うことができる。
詳細には、波長が短いパルスレーザ光(本実施形態では第一波長のパルスレーザ光)は、透明組織によって吸収され易いが、波長が長いパルスレーザ光(本実施形態では第二波長のパルスレーザ光)に比べて微細な処置を行い易い。一方で、波長が長いパルスレーザ光は、透明組織に吸収され難い。本実施形態のレーザ手術装置1は、第二部位(例えば水晶体)よりも前側に位置する第一部位(例えば角膜)を処置する場合には、第二部位を処置する場合に比べてレーザ光の吸収を考慮する必要性が低いので、第一波長のパルスレーザ光を用いて細かい処置を行う。第二部位(例えば水晶体)を処置する場合には、組織によって吸収され難い第二波長のパルスレーザ光を用いる。従って、レーザ手術装置1は、患者眼Eの部位に応じて適切な処置を行うことができる。
本実施形態では、従来に比べて高いパルス繰り返し周波数でパルスレーザ光が発振される。繰り返し周波数が高い場合、照射ユニット30が集光位置を次の目標位置に切り換えている間に、予定されていない位置で光破壊および熱変性等が生じる可能性がある。しかし、本実施形態のレーザ手術装置1は、集光位置の切換中に発振されるレーザパルスを、少なくとも光破壊を組織に生じさせないレーザパルスとする。詳細には、本実施形態のレーザ手術装置1は、集光位置の切換中、レーザパルスが組織に照射されることをパルス選択部128によって防ぐ。よって、予定されていない位置で光破壊または熱変性が生じる可能性が低下する。
本実施形態のレーザユニット10は、波長が300ナノメートル以上2000ナノメートル以下であるパルスレーザ光を出射することが可能である。波長が300ナノメートル未満であると、多光子吸収でなく単光子吸収が生じやすくなり、非線形相互作用による組織の処置が困難になる。また、本実施形態では、従来のサブナノ秒レーザによる処置方法に比べてパルスレーザ光のパルス幅が短いので、従来に比べて波長が長いパルスレーザ光(例えば、波長が2000ナノメートルのパルスレーザ光)を用いても非線形相互作用が生じ得る。従って、レーザ手術装置1は、波長が300ナノメートル以上2000ナノメートル以下のパルスレーザ光を用いることで、組織を適切に処置することができる。
レーザユニット10は、繰り返し周波数が1ギガヘルツ以上のパルスレーザ光を出射する。繰り返し周波数が3ギガヘルツ以上のパルスレーザ光を出射できると、より望ましい。この場合、合計照射時間を極力短い300ピコ秒としても、1つの集光位置に複数のレーザパルスが照射される。
角膜には、極力微細な処置をすることが望まれる。水晶体核は、破砕後に除去されるので、効率よく破砕するのが望ましい。本実施形態のレーザ手術装置1は、角膜を処置するためのパルスレーザ光の出力を、水晶体を処置するためのパルスレーザ光の出力よりも小さくする。その結果、角膜は小さい出力で細かく処置され、水晶体は大きい出力で効率よく処置される。
本発明は上記実施形態に限定されることは無く、様々な変形が可能であることは勿論である。例えば、上記実施形態では、発振器101によって発振されたパルスレーザ光が、MOPA方式の増幅部110によって増幅される。つまり、上記実施形態のレーザ手術装置1は、簡易な構成でパルスレーザ光を増幅させることができる。しかし、他の方式の増幅部を用いることも可能である。また、本開示の技術(パルス幅が短いレーザパルスをそれぞれの集光位置に複数回照射させる技術)によれば、従来のフェムト秒レーザによる処置に比べて低いピーク出力のパルスレーザ光で処置が行われる。従って、各種条件によっては、増幅部自体を省略できる場合も有り得る。
上記実施形態のレーザ手術装置1は、波長変換部121を搭載することで、処置に適したパルスレーザ光を組織に照射することができる。詳細には、レーザ手術装置1は、発振器101によって発振されたパルスレーザ光の波長を、波長変換部121によって短い波長に変換することで、組織で吸収され易い波長のパルスレーザ光とする。しかし、本開示の技術によれば、レーザパルスによる多光子吸収が効率よく生じる。従って、各種条件によっては、波長変換部121を省略できる場合もあり得る。
上記実施形態のレーザ手術装置1は、処置を行う部位に応じて波長変換の実行を制御することで、部位に応じた適切な処置を行うことができる。しかし、レーザ手術装置1は、波長変換を実行するか否かを切り換えずに、1つの波長で異なる部位の処置を行うことも可能である。逆に、3種類以上のパルスレーザ光を選択的に出射してもよい。また、レーザ手術装置1は、異なるパルスレーザ光を出射可能な複数の発振器を使い分けることで、複数のパルスレーザ光を選択的に組織に出射してもよい。
上記実施形態では、角膜および水晶体を処置する場合を例示して説明を行った。しかし、処置する部位を適宜変更できることは言うまでもない。例えば、角膜のみを処置する場合、水晶体核のみを処置する場合、水晶体嚢のみを処置する場合、角膜の周辺部に角膜ポートを形成する場合等にも、上記実施形態で例示した技術の少なくとも一部を適用できる。眼以外の組織を処置する場合に、上記実施形態で例示した技術を適用してもよい。
上記実施形態で例示した技術の少なくとも一部を、網膜の光凝固治療、選択的レーザ線維柱帯術(Selective Laser Trabeculoplasty:SLT)等に利用することも可能である。例えば、上記実施形態における波長変換部121(図2参照)の構成を変更し、発振器101によって発振されるパルスレーザ光の波長(1064ナノメートル)を第二次高調波(波長532ナノメートル)に変換して、第二次高調波を光凝固治療およびSLT等に利用してもよい。この場合、レーザ光の出力等の各種パラメータは、治療部位、治療内容等に応じて適宜設定すればよい(パルスレーザ光でなく連続波としてもよい)。さらに、角膜の処置、水晶体の処置、光凝固治療、SLT等の複数の処置の2以上を、1つの装置で実行できるように、装置を構成してもよい。例えば、発振器101によって発振されるパルスレーザ光を波長変換せずに用いる水晶体処置モード、第二次高調波を用いる光凝固治療モードおよびSLTモード、第三次高調波を用いる角膜処置モードのうちの2以上を、1つのレーザ処置装置において選択的に実行してもよい。
上記実施形態のレーザ手術装置1は、処置する部位に応じてパルスレーザ光の出力を変化させる。しかし、出力を変化させずに処置を行うことも可能である。また、レーザ手術装置1は、発振器101自体の出力を変えずに、フィルタ等によってパルスレーザ光の出力を減衰させてもよい。また、上記実施形態のレーザ手術装置1は、音響光学素子(AOM)によるパルスピッキングを行うことで、集光位置の切換中に意図しない光破壊等が生じる可能性を低下させる。しかし、意図しない光破壊等を、AOM以外の構成を用いて抑制することも可能である。例えば、レーザ手術装置1は、集光位置の切換中に、発振器101から発振されるパルスレーザ光のエネルギーを低下させることで、意図しない光破壊等を抑制してもよい。また、意図しない光破壊および熱変性等の影響が小さい場合等には、パルス選択部128を省略することも可能である。
上記実施形態では、それぞれの集光位置に照射される複数のレーザパルスのピーク出力はほぼ一定である。その結果、それぞれの集光位置に照射されるレーザ光の波形(複数のレーザパルスの全体的な波形)が矩形波となっている。しかし、それぞれの集光位置に照射させるレーザパルスの強度は変更できる。例えば、複数のレーザパルスのピーク出力が徐々に高くなるように、または徐々に低くなるように強度を調整してもよい。複数のレーザパルスの全体的な波形が山型となるように強度を変化させてもよい。レーザ光を照射する組織の特性に合わせて、レーザ光の強度を変化させてもよい。
1 レーザ手術装置
10 レーザユニット
30 照射ユニット
76 制御ユニット
77 CPU
78 ROM
79 RAM
101 発振器
110 増幅部
121 波長変換部
128 パルス選択部

Claims (7)

  1. パルスレーザ光を患者の組織に集光させることで、前記組織におけるパルスレーザ光の集光位置に非線形相互作用を生じさせて前記組織を処置することが可能なレーザ手術装置であって、
    パルスレーザ光を発振する発振器を有するレーザユニットと、
    前記レーザユニットによって出射されたパルスレーザ光の前記集光位置を、前記組織において走査させる走査手段と、
    前記走査手段を制御することで、複数の前記集光位置のそれぞれに対し、前記レーザユニットによって出射されたパルスレーザ光における複数のレーザパルスを集光させる走査制御手段と
    を備えたことを特徴とするレーザ手術装置。
  2. 請求項1に記載のレーザ手術装置であって、
    前記レーザユニットは、
    前記発振器によって発振されたパルスレーザ光を増幅させる増幅部を備えたMOPA(Master Oscillator Power Amplifier)方式のレーザユニットであることを特徴とするレーザ手術装置。
  3. 請求項1または2に記載のレーザ手術装置であって、
    前記レーザユニットは、
    前記発振器によって発振されたパルスレーザ光の波長を変換する波長変換手段を備えたことを特徴とするレーザ手術装置。
  4. 請求項3に記載のレーザ手術装置であって、
    前記レーザユニットは、
    前記波長変換手段によるパルスレーザ光の波長変換を実行するか否かを切り換える切換手段をさらに備え、
    前記レーザ手術装置は、
    パルスレーザ光による処置を行う部位に応じて、前記切換手段による波長変換の実行を制御する制御手段をさらに備えたことを特徴とするレーザ手術装置。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載のレーザ手術装置であって、
    1つの前記集光位置に対する複数のレーザパルスの集光が終了してから、レーザパルスを集光させる位置が前記走査手段によって他の目標位置に切り換えられる間に、前記発振器によって発振されるレーザパルスを、前記組織に光破壊を生じさせないレーザパルスとするパルス選択手段をさらに備えたことを特徴とするレーザ手術装置。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載のレーザ手術装置であって、
    前記レーザユニットは、波長が300ナノメートル以上2000ナノメートル以下であるパルスレーザ光を少なくとも出射することを特徴とするレーザ手術装置。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載のレーザ手術装置であって、
    前記レーザユニットは、繰り返し周波数が3ギガヘルツ以上のパルスレーザ光を出射可能であることを特徴とするレーザ手術装置。
JP2013226159A 2013-10-31 2013-10-31 レーザ手術装置 Active JP6283992B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013226159A JP6283992B2 (ja) 2013-10-31 2013-10-31 レーザ手術装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013226159A JP6283992B2 (ja) 2013-10-31 2013-10-31 レーザ手術装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015084963A true JP2015084963A (ja) 2015-05-07
JP6283992B2 JP6283992B2 (ja) 2018-02-28

Family

ID=53048427

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013226159A Active JP6283992B2 (ja) 2013-10-31 2013-10-31 レーザ手術装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6283992B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018051214A (ja) * 2016-09-30 2018-04-05 株式会社ニデック 眼科用レーザ治療装置
WO2022038682A1 (ja) * 2020-08-18 2022-02-24 株式会社ニコン 光学装置および加工装置

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003199782A (ja) * 2001-12-28 2003-07-15 Nidek Co Ltd 角膜手術装置
JP2008246003A (ja) * 2007-03-30 2008-10-16 Sumitomo Electric Ind Ltd レーザ処置システムおよびレーザ処置方法
US20120016352A1 (en) * 2009-03-12 2012-01-19 Carl Zeiss Meditec Ag Ophthalmologic laser system
JP2013500086A (ja) * 2009-07-24 2013-01-07 レンサー, インク. Ladarを利用した手順を眼の水晶体に実施するシステムおよび方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2003199782A (ja) * 2001-12-28 2003-07-15 Nidek Co Ltd 角膜手術装置
JP2008246003A (ja) * 2007-03-30 2008-10-16 Sumitomo Electric Ind Ltd レーザ処置システムおよびレーザ処置方法
US20120016352A1 (en) * 2009-03-12 2012-01-19 Carl Zeiss Meditec Ag Ophthalmologic laser system
JP2013500086A (ja) * 2009-07-24 2013-01-07 レンサー, インク. Ladarを利用した手順を眼の水晶体に実施するシステムおよび方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018051214A (ja) * 2016-09-30 2018-04-05 株式会社ニデック 眼科用レーザ治療装置
WO2022038682A1 (ja) * 2020-08-18 2022-02-24 株式会社ニコン 光学装置および加工装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP6283992B2 (ja) 2018-02-28

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20090171325A1 (en) Method for Treatment and Diagnosis of Eye Tissues
US8475438B2 (en) Method and apparatus for non- or minimally disruptive photomanipulation of an eye
US9504607B2 (en) Method and device for stabilizing the cornea
JP6001671B2 (ja) 人間の眼球手術のための装置及び方法
JP6122142B2 (ja) 角膜組織を監視するための装置、接合ユニット、吸引リング、および方法
JP2018075404A (ja) 目組織および人工水晶体の変更システム
JP5919709B2 (ja) 眼科用レーザ手術装置
EP2822519B1 (en) Corneal tissue detection and monitoring device
JP2013248304A (ja) 眼科用レーザ手術装置
JP2017534317A (ja) 組織を撮像および操作するためのシステムおよび方法
JP2018523526A (ja) 眼組織及び眼内レンズを改変するためのシステム
JP6283992B2 (ja) レーザ手術装置
JP6213714B2 (ja) 眼科用レーザ手術装置
JP2015084965A (ja) 眼科用レーザ手術装置および眼科手術制御データ作成プログラム
Hild et al. Femtosecond laser-assisted retinal imaging and ablation: experimental pilot study
Wang et al. Finesse of transparent tissue cutting by ultrafast lasers at various wavelengths
JP4436903B2 (ja) 角膜手術装置
Martin et al. Studying ultrafast laser parameters to deter self-focusing for deep tissue ablation
JP2016140461A (ja) 眼科用レーザ手術装置
Le Harzic et al. Ultraviolet femtosecond laser creation of corneal flap
JP6264770B2 (ja) 眼科用レーザ手術装置
Körber et al. Ophthalmic surgeries on post mortem porcine eyes with picosecond ultrashort laser pulses
Zickler et al. Femtosecond all-solid-state laser for refractive surgery
JP2016120059A (ja) 眼科用レーザ手術装置および眼科手術制御プログラム
Heisterkamp et al. Optimization of the parameters for intrastromal refractive surgery with ultrashort laser pulses

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20161028

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170807

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170816

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20171016

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171215

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180105

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180118

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6283992

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250