以下、実施の形態について説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
(実施の形態1)
本実施の形態では、物体表面にグラフェンを形成する方法について説明する。まず酸化グラフェンを含む分散液を準備する。酸化グラフェンを含む分散液は、酸化グラフェンを溶媒に分散させる方法、溶媒中でグラファイトを酸化した後、酸化グラファイトを酸化グラフェンに分離して、酸化グラフェンを含む分散液を形成する方法等により得ることができる。ここでは、グラファイトを酸化した後、酸化グラファイトを酸化グラフェンに分離して形成した酸化グラフェンを含む分散液を用いる方法について、説明する。
本製造方法では、Hummers法と呼ばれる酸化法を用いて酸化グラフェンを形成する。Hummers法は、グラファイト粉末に過マンガン酸カリウムの硫酸溶液等を加えて酸化反応させて酸化グラファイトを含む混合液を形成する。酸化グラファイトは、グラファイトの炭素の酸化により、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基を有する。このため、複数のグラフェンの層間距離がグラファイトと比較して長い。次に、酸化グラファイトを含む混合液に超音波振動を加えることで、層間距離の長い酸化グラファイトを劈開し、酸化グラフェンを分離することができると共に、酸化グラフェンを含む分散液を形成することができる。なお、Hummers法以外の酸化グラフェンの形成方法を適宜用いることができる。
なお、酸化グラフェンは、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基等を有する。これらの置換基は極性が高いため、極性を有する液体中において、異なる酸化グラフェン同士は分散しやすく、特に、カルボキシル基を有する酸化グラフェンは極性を有する液体中において水素が電離するため、酸化グラフェンはイオン化し、異なる酸化グラフェン同士がより分散しやすい。このため、極性を有する液体においては、均一に酸化グラフェンが分散する。
本明細書においてグラフェンとは、単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グラフェンを含むものをいう。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいう。
また本明細書において後述する酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物のことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て還元されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、全体の2atomic%以上20atomic%以下、好ましくは3atomic%以上15atomic%以下である。
単層グラフェンは、sp2結合を有する1原子層の炭素分子のシートのことをいい、極めて厚さが薄い。また、炭素で構成される六員環が平面方向に広がっており、一部に、七員環、八員環、九員環、十員環等の、六員環の一部の炭素−炭素結合が切断された多員環が形成される。
なお、多員環は、炭素及び酸素で構成される場合がある。または、炭素で構成される多員環の炭素に酸素が結合する場合がある。このような多員環は、六員環の一部の炭素−炭素結合が切断され、結合が切断された炭素に酸素が結合して形成される。このため、当該炭素及び酸素の結合の内部には、イオンの移動が可能な通路として機能する間隙を有する。すなわち、グラフェンに含まれる酸素の割合が多いほど、イオンの移動が可能な通路である間隙の割合が増加する。よって、グラフェンを例えばリチウムイオン二次電池のようにキャリアイオンを用いる電池の電極に用いる場合、グラフェンがキャリアイオンであるリチウムイオンを通過できるという利点がある。このことにより、例えば活物質の表面にグラフェンを被覆した場合に、キャリアイオンはグラフェンを通過できるため、活物質とキャリアイオンとの反応を阻害しない。
グラフェンは柔軟性を有するため、例えば柔軟性を有する電池、いわゆるフレキシブルな電池の電極にグラフェンを被覆することにより、電池の変形に伴う電極の変形に対して、電極の亀裂や割れなどを抑えることができる。ここで、グラフェンを被覆する電極の形態は、粒子状の活物質を用いた電極でもよいし、後述する凸部を有する電極でもよい。表面にグラフェンを被覆することにより、変形に対する電極の強度を高め、寿命が長く信頼性の高い電池を得ることができる。
グラフェン1127が多層グラフェンの場合、複数の単層グラフェンで構成され、代表的には、単層グラフェンが2層以上100層以下で構成されるため、極めて厚さが薄い。単層グラフェンが酸素を有することで、グラフェンの層間距離は0.34nmより大きく0.5nm以下、好ましくは0.38nm以上0.42nm以下、さらに好ましくは0.39nm以上0.41nm以下となる。通常のグラファイトは、単層グラフェンの層間距離が0.34nmであり、グラフェン1127の方が層間距離が長いため、単層グラフェンの表面と平行な方向におけるイオンの移動が容易となる。また、酸素を含み、多員環が構成される単層グラフェンまたは多層グラフェンで構成され、所々に間隙を有する。このため、グラフェン1127が多層グラフェンの場合、単層グラフェンの表面と平行な方向、すなわち単層グラフェン同士の隙間と共に、グラフェンの表面に対する垂直方向、すなわち単層グラフェンそれぞれに設けられる間隙をイオンが移動することが可能である。
次に、電気泳動法を用いて、酸化グラフェンを物体の表面に形成する。図2に本実施の形態で用いる装置の図を示す。容器200に酸化グラフェンを分散させた溶液201を入れ、そこにグラフェンを付着させる物体202を入れ、これを陽極とする。また、溶液に陰極となる導電体203を入れ、陽極と陰極の間に適切な電圧(例えば、0.5V乃至20V)を印加し電気泳動電着を行う(このような電着方法を、以下においては電気泳動法という。)。なお、電圧は一定でなくてもよい。陽極と陰極の間を流れる電荷量を測定することで、物体に付着した酸化グラフェンの厚さを見積もることができる。酸化グラフェンの陽極への付着は、陽極が全体的に被覆された段階で進まなくなる。このため、陽極を酸化グラフェンで完全に被覆するために必要な時間を予め把握しておくことで、最短の時間で完全な被覆を完了することができる。電気泳動を行う時間(電圧を加える時間)は、例えば、10秒30分以下、好ましくは30秒以上20分以下とすればよい。
酸化グラフェンの付着が完了したら、物体を溶液から引き上げ、乾燥させる。さらに、真空中あるいは不活性ガス(窒素あるいは希ガス等)中等の還元性の雰囲気で150℃以上、好ましくは200℃以上の温度で加熱する。加熱する温度が高いほど、また、加熱する時間が長いほど、酸化グラフェンがよく還元され、純度の高い(すなわち、炭素以外の元素の濃度の低い)グラフェンが得られる。酸化グラフェンは100℃以上の加熱温度で還元されることがわかっている。より高温で加熱する程好ましいが、加熱温度は物体との反応性も考慮して決定されるべきである。
なお、得られるグラフェンの電子伝導性を高めるために、上記加熱処理は高温での処理が好ましい。例えば、ガラス基板上の酸化グラフェンを加熱してグラフェンに還元したところ、加熱温度100℃(1時間)では多層グラフェンの抵抗率は240MΩcm程度であるが、加熱温度200℃(1時間)では4kΩcmとなり、300℃(1時間)では2.8Ωcm(いずれも8試料の平均値)となる。
また、酸化グラフェンは還元剤を用いて溶媒中で反応させて行ってもよい。還元剤としては、アスコルビン酸、ヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ヒドロキノン、水素化硼素ナトリウム(NaBH4)、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)、LiAlH4、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンあるいはそれらの誘導体を用いることができる。また、溶媒には、極性溶媒を用いることができる。還元剤を溶解することができるものであれば、材料は限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)及びジメチルスルホキシド(DMSO)のいずれか一種又は二種以上の混合液を用いることができる。
その後、溶液を吸引ろ過などを用いてろ過し、洗浄し、乾燥する。乾燥は、減圧(真空)下又は還元雰囲気下にて行うとよい。この乾燥工程は、例えば、真空中で50℃以上200℃以下の温度で、1時間以上48時間以下で行うとよい。この乾燥によって、極性溶媒や水分をよく蒸発、揮発あるいは除去させる。なお、上記の還元反応は、加熱によって反応を促進することができる。また、化学還元後に乾燥させて、さらに加熱してもよい。以上の工程により、酸化グラフェンを還元することができる。
なお、還元後の酸化グラフェンに含まれる酸素は必ずしも全て脱離される必要はなく、一部の酸素は、炭素を有する層に残存してもよい。炭素を有する層に酸素が含まれる場合、酸素の割合は、全体の2%以上20%以下、好ましくは3%以上15%以下である。
このようにして物体の表面に付着した酸化グラフェンは還元され、グラフェンとなる。その際、隣接するグラフェン同士が結合し、全体として、より巨大なシート状あるいは網目状のネットワークを形成する(以下、このようなグラフェンにより形成されたネットワークをグラフェンネットとよぶ。)。このようにして形成されたグラフェンは、物体に凹凸があっても、その凹部にも凸部にもほぼ均一な厚さで形成される。物体に曲面がある場合も同様である。
(実施の形態2)
本実施の形態では、グラフェンが官能基を有する場合の電子状態の計算結果を示す。
電子状態の計算は、密度汎関数法に基づく平面波基底擬ポテンシャル法電子状態計算プログラム、VASP(Vienna Ab−initio Simulation Pachage)を用いて行った。計算に用いた条件を表1に示す。
図32(A)は、グラフェン一層について、炭素2sおよび2p軌道の電子の空間分布を示す図である。また、図32(B)は、図32(A)をc軸方向からみた図を示す。図33(A)は、図32に示すグラフェン層に酸素を付加した場合の、炭素2sおよび2p軌道ならびに酸素2sおよび2p軌道の電子の空間分布を示す図である。また、図33(B)は、図33(A)をc軸方向からみた図を示す。図33(C)は、図33(A)及び図33(B)に示す構造について、各々の原子の電荷の総和をあらわす図である。
また、図34(A)は、グラフェン層に酸素と水素を付加した場合の、炭素2sおよび2p軌道ならびに酸素2sおよび2p軌道、水素1s軌道の電子の空間分布を示す図である。また、図34(B)は、図34(A)をc軸方向からみた図を示す。図34(C)は、図34(A)および図34(B)に示す構造について、各々の原子の電荷の総和をあらわす図である。
図33(C)に示す通り、酸素原子の電荷の総和は−0.9であり大きく負に帯電することがわかる。また酸素原子周辺の炭素原子の電荷は、正に帯電する様子がみられる。なお、各々の原子の電荷は、Baderの方法に基づき、原子と原子の間の領域で電荷密度が極小になるところを境界として計算している。
また、図34(C)に示す通り、酸素原子の電荷の総和は−1.2、酸素原子に結合している水素原子の電荷の総和は+0.6であり、酸素原子と水素原子を合わせた電荷の総和は負に帯電する結果となった。
以上の結果から、カルボキシル基のように水溶液中でイオン化する官能基のみでなく、エポキシ基や水酸基のように表面において電荷の偏りが生じる官能基を用いることにより、グラフェン同士が反発し、電気泳動の際に、一度付着した部分にグラフェンがさらに厚く付着することを防ぐことができるため、物質の表面にグラフェンを均一に形成することができると考えられる。
ここではエポキシ基や水酸基の例を示したが、他にも例えばカルボニル基等も同様に電荷の偏りが生じると考えられるため、グラフェンの有する官能基として好ましい。
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態1に示した方法を用いて、グラフェンが被覆された電極を作製する例を示す。
[凸部を有する電極1]
図14は凸部を有する負極1300の断面図である。負極1300は集電体1301上に活物質層1302が設けられる。活物質層1302は、活物質1304とグラフェン1305を有する。活物質1304は、複数の凸部1303を有する。なお、集電体1301と活物質層1302の間に界面層を有してもよい。界面層は、例えば集電体1301に用いられる材料と活物質層1302に用いられる材料との合金などで形成される。また、界面層は2層以上あってもよい。
なお、活物質とは、キャリアイオンの吸蔵及び放出に関わる物質を指す。活物質層は、活物質の他に、導電助剤、バインダ、グラフェン等のいずれか一以上を有してもよい。よって、活物質と活物質層は区別される。
活物質1304としては、シリコンを用いるとよい。シリコンを活物質として用いた場合、現状用いられている黒鉛と比較して理論吸蔵容量が大きいため、リチウム二次電池の高容量化や小型化を実現することができ、好ましい。複数の凸部1303は、シリコンウィスカを用いて形成されてもよい。
集電体1301としては、チタン、銅、金、白金、亜鉛、鉄、アルミニウム等に代表される金属、及びこれらの合金(ステンレスなど)など、導電性の高い材料を用いることができる。また、集電体1301として、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。ここでは、集電体1301としてチタンを用いる。
グラフェン1305は、実施の形態1に示した方法を用いて形成することができる。グラフェン1305は、活物質1304を覆うように形成される。グラフェン1305は活物質1304の表面を完全に覆っても良く、部分的に覆っても良い。例えば突起部側壁の活物質1304のみをグラフェン1305で被覆しても良い。また、グラフェンは炭素分子のシートであるが、活物質1304は隙間無く被覆しても良いし、所々に隙間を残した斑状に被覆しても良い。
グラフェン1305は、導電助剤として機能する。また、グラフェン1305は、活物質として機能する場合もある。また、グラフェン1305を被覆することにより、充放電に伴う活物質の膨張および収縮に伴う活物質の割れや崩落などを抑えることができる。また、グラフェンは柔軟性を有するため、例えば柔軟性を有する電池、いわゆるフレキシブルな電池に負極1300を用いた場合、グラフェン1305を被覆することにより電池の変形に伴う電極の変形に対して、電極の亀裂や割れなどを抑えることができる。
また、リチウム二次電池において、活物質層1102表面が電解液と接触することにより、電解液及び活物質が反応し、活物質の表面に皮膜が形成される。当該皮膜はSEIと呼ばれ、活物質と電解液との反応を緩和し、安定化させるために必要であると考えられている。しかしながら、当該皮膜が厚くなると、キャリアイオンが活物質に吸蔵されにくくなり、活物質と電解液間のキャリアイオン伝導性の低下、電解液の消耗などの問題が生じる。また、皮膜の形成により不可逆容量を発生するため、二次電池の容量低下を招いてしまう。
本実施の形態においては、活物質層1102をグラフェン1127で被覆する。このため、当該皮膜の膜厚の増加を抑制することが可能であり、キャリアイオン伝導性の低下、電解液の消耗を抑制することができる。また、不可逆容量を低減し、二次電池の容量を高めることができる。
また、グラフェンは導電性が高いため、グラフェンよりも導電性の低いシリコンをグラフェンで被覆することで、グラフェンにおいて電子の移動を十分速くすることができる。また、グラフェンは厚さの薄いシート状であるため、複数の突起上にグラフェンを設けることで、活物質層に含まれる活物質量をより多くすることが可能であると共に、キャリアイオンの移動がグラファイトと比較して容易となる。これらの結果、キャリアイオンの伝導性を高めることができ、活物質であるシリコン及びキャリアイオンの反応性を高めることが可能であり、キャリアイオンが活物質に吸蔵されやすくなる。このため、当該電極を用いたリチウム二次電池において、急速充放電が可能である。
[凸部を有する電極2]
次に、図14とは異なる、電極の形態の一例を示す。図8(A)は電極1216の断面図である。電極1216は、集電体1211上に活物質層1215が設けられる。
ここで、電極1216の詳細な構造について、図8(B)乃至図8(D)を用いて説明する。ここでは、電極1216に含まれる活物質層1215の代表形態を、図8(B)乃至図8(D)において、それぞれ活物質層1215a、1215b、1215cとして説明する。
図8(B)は、集電体1211及び活物質層1215aの拡大断面図である。集電体1211上に活物質層1215aが設けられる。また、活物質層1215aは、活物質1212及び活物質1212を覆うグラフェン1214を有する。また、活物質1212は、共通部1212a、及び共通部1212aから突出する複数の突起1212bを有する。また、複数の突起1212bの長手方向は、揃っている。すなわち、複数の突起1212bの軸1241が揃っている。なお、突起の軸1241とは、突起の頂点(または上面の中心)と、突起が共通部と接する面の中心とを通る直線をいう。すなわち、突起の長手方向における中心を通る直線をいう。
活物質が1212が負極活物質の場合には、例えばキャリアイオンとの合金化、脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な合金系材料を用いることができる。キャリアイオンがリチウムイオンである場合、合金系材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、スズ、アルミニウム、ビスマス、ガリウム、インジウム等のうちの少なくとも一つを含む材料を用いることができる。特にシリコンを負極活物質として用いた場合、現状用いられている黒鉛と比較して理論吸蔵容量が大きいため、リチウム二次電池の高容量化や小型化を実現することができ、好ましい。
活物質層1212にシリコンを用いる場合には、当該シリコンは、非晶質(アモルファス)シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン又はこれらの組み合わせを用いることができる。一般に結晶性が高い程シリコンの電気伝導度が高いため、電極として導電率の高い電池として利用することができる。一方、シリコンが非晶質の場合には、結晶質に比べてリチウム等のキャリアイオンを多く吸蔵することができるため、放電容量を高めることができる。
また、活物質層1212にリン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンを用いてもよい。リン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンは、導電性が高くなるため、電極の導電率を高めることができる。
また、活物質1212が正極活物質の場合、キャリアイオンの挿入及び脱離が可能な材料であればよく、例えば、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn2O4、V2O5、Cr2O5、MnO2等の化合物を用いることができる。
または、リチウム含有複合リン酸塩(一般式LiMPO4(Mは、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上))を用いることができる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
または、一般式Li2MSiO4(Mは、Fe(II),Mn(II),Co(II),Ni(II)の一以上)等のリチウム含有複合ケイ酸塩を用いることができる。一般式Li2MSiO4の代表例としては、Li2FeSiO4、Li2NiSiO4、Li2CoSiO4、Li2MnSiO4、Li2FekNilSiO4、Li2FekColSiO4、Li2FekMnlSiO4、Li2NikColSiO4、Li2NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)、Li2FemNinCoqSiO4、Li2FemNinMnqSiO4、Li2NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、0<n<1、0<q<1)、Li2FerNisCotMnuSiO4(r+s+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等が挙げられる。
図8に示す複数の突起部を後述するマスクを用いてエッチングにより形成する場合には、活物質は膜状に形成した後にマスクを用いてエッチングすることが好ましい。膜状に形成する場合は、例えばスパッタリング法、パルスレーザー堆積(PLD)法などを用いればよい。
集電体1211は、チタン、銅、金、白金、亜鉛、鉄、アルミニウム等に代表される金属、及びこれらの合金(ステンレスなど)など、導電性の高い材料を用いることができる。なお、集電体1211として、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることが好ましい。また、集電体1211として、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。
集電体1211は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。
共通部1212aは、実施の形態1に示す共通部1202aと同様に、複数の突起1212bの下地層として機能し、集電体1211上に連続している層である。また、共通部1212a及び複数の突起1212bは接している。
突起1212bは、円柱状1221(図29(A)参照。)または角柱状等の柱状、円錐状1222(図29(B)参照。)または角錐状の錐体状、板状1223(図29(C)参照。)、パイプ状1224(図29(D)参照)。)等の形状を適宜有することができる。なお、突起1212bの頂部または稜は湾曲していてもよい。図8においては、突起1212bとして円柱状の突起を用いて示す。
共通部1212a及び複数の突起1212bは適宜、単結晶構造、多結晶構造、または非晶質構造とすることができる。また、微結晶構造等、これらの中間に位置する結晶構造とすることができる。さらに、共通部1212aを単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起1212bを非晶質構造とすることができる。または、共通部1212a及び複数の突起1212bの一部を単結晶構造または多結晶構造とし、複数の突起1212bの他部を非晶質構造とすることができる。なお、当該複数の突起1212bの一部とは少なくとも共通部1212aと接する領域を含む。
また、複数の突起1212bの長手方向は、揃っている。すなわち、複数の突起1212bの軸1241が揃っている。さらに好ましくは、複数の突起1212bのそれぞれの形状が略同一である。このような構造とすることで、活物質の体積を制御することが可能である。なお、突起の軸1241とは、突起の頂点(または上面の中心)と、突起が共通部と接する面の中心とを通る直線をいう。すなわち、突起の長手方向における中心を通る直線をいう。なお、複数の突起の軸が揃っているとは、複数の突起それぞれの軸が略一致することをいい、代表的には、複数の突起それぞれの軸でなす角度が10度以下、好ましくは5度以下である。
なお、複数の突起1212bが共通部1212aから伸張している方向を長手方向と呼び、長手方向に切断した断面形状を長手方向の断面形状と呼ぶ。また、複数の突起1212bの長手方向と略垂直な面において切断した断面形状を輪切り断面形状と呼ぶ。
複数の突起1212bについて、断面形状における幅は、0.1μm以上1μm以下、好ましくは0.2μm以上0.5μm以下である。また、複数の突起1212bの高さは、突起の幅の5倍以上100倍以下、好ましくは10倍以上50倍以下であり、代表的には0.5μm以上100μm以下、好ましくは1μm以上50μm以下である。
複数の突起1212bの幅を、0.1μm以上とすることで、また、充放電容量を高めることが可能であり、1μm以下とすることで、例えばシリコンなどのリチウムと合金化して膨張する材料においても充放電における突起の膨張や崩壊を防ぐことができる。また、複数の突起1212bの高さを、0.5μm以上とすることで、充放電容量を高めることが可能であり、100μm以下とすることで、例えばシリコンなどのリチウムと合金化して膨張する材料においても充放電における突起の膨張や崩壊を防ぐことができる。
なお、突起1212bにおける「高さ」とは、長手方向の断面形状において、突起1212bの頂点(または上面の中心)を通る軸に沿う方向の該頂点と共通部1212aの間隔をいう。
また、複数の突起1212bはそれぞれ、一定の間隔を開けて共通部1212a上に設けられる。突起1212bの間隔は、突起1212bの幅の1.29倍以上2倍以下とすることが好ましい。この結果、例えばシリコンなどのリチウムと合金化して膨張する材料を用いた蓄電装置の充電により突起1212bの体積が膨張しても、突起1212b同士が接触せず、突起1212bの崩壊を妨げることができると共に、蓄電装置の充放電容量の低下を妨げることができる。また、一定の間隔を開けることにより、電極表面まで電解液が浸潤しやすくなり、充放電速度を妨げることがなく良好な特性を得ることができる。
なお、図8(C)の活物質層1215bに示すように、共通部を有さず、集電体1211上に分離された複数の突起1212bが設けられ、集電体1211及び複数の突起1212b上にグラフェン1214が形成されてもよい。また、複数の突起1212bの軸は、揃っている。すなわち、複数の突起1212bの軸1251が揃っている。ここでの突起1212bの軸1251とは、突起の頂点(または上面の中心)と、突起1212bが集電体1211と接する面の中心とを通る直線をいう。すなわち、突起の長手方向における中心を通る直線をいう。
グラフェン1214は集電体1211の一部と接するため、グラフェン1214において電子が流れやすくなり、キャリアイオン及びシリコンの反応性を高めることができる。
また、集電体1211としてシリサイドを形成する金属材料を用いる場合、集電体1211において、活物質1212と接する側にシリサイド層が形成される場合がある。集電体1211にシリサイドを形成する金属材料を用いると、チタンシリサイド、ジルコニウムシリサイド、ハフニウムシリサイド、バナジウムシリサイド、ニオブシリサイド、タンタルシリサイド、クロムシリサイド、モリブデンシリサイド、コバルシリサイド、ニッケルシリサイド等がシリサイド層として形成される。
また、図8(D)に示す活物質層1215cのように、突起1212bの先端及びグラフェン1214の間に保護層1217を設けてよい。保護層1217は、導電層、半導体層、または絶縁層を適宜用いることができる。ここでは、図8(B)に示す活物質1212を用いて説明したが、図8(C)に示す活物質に保護層1217を設けてもよい。
本実施の形態に示す電極は、集電体1211を支持体として活物質層を設けることができる。このため、集電体1211が箔状、網状等の可撓性を有する場合、可撓性を有する電極を作製することができる。
次に、電極1216の作製方法について図9を用いて説明する。ここでは、活物質層1215の一形態として、図8(B)に示す活物質層1215aを用いて説明する。
図9(A)に示すように、集電体1211上にシリコン層1210を形成する。次に、シリコン層1210に、マスク1208a〜1208eを形成する。
シリコン層1210は、CVD法、スパッタリング法、蒸着法等を適宜用いることができる。シリコン層1210としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、または非晶質シリコンを用いて形成する。なお、シリコン層1210は、リンが添加されたn型シリコン層、ボロンが添加されたp型シリコン層としてもよい。
次に、マスク1208a〜1208eを用いて、シリコン層1210を選択的にエッチングして、図9(B)に示すように、共通部1212a及び複数の突起1212bを有する活物質1212を形成する。シリコン層1210のエッチング方法としては、ドライエッチング法、ウエットエッチング法を適宜用いることができる。なお、ドライエッチング法でも、ボッシュ法を用いることで、高さの高い突起を形成することができる。
次に、活物質1212上に、グラフェン1214を形成することで、集電体1211上に活物質層1215aを有する電極1216を作製することができる。グラフェン1214は、実施の形態1に示した方法を用いて活物質1212上に形成することができる。
なお、図9(B)において、共通部1212aをエッチングし、集電体1211を露出させることで、図8(C)に示す活物質層1215bを有する電極を作製することができる。
また、シリコン層1210上に保護層を形成し、当該保護層上にマスク1208a〜1208eを形成し、当該マスク1208a〜1208eを用いて、分離された保護層1217(図8(C)参照。)を形成した後、当該マスク1208a〜1208e及び分離された保護層を用いてシリコン層1210を選択的にエッチングすることで、図8(D)に示すような活物質層1215cを有する電極を作製することができる。このとき、複数の突起1212bの高さが高い場合、即ちエッチング時間が長い場合、エッチング工程においてマスクの厚さが徐々に薄くなり、一部のマスクが除去され、シリコン層1210が露出されてしまう。この結果、突起の高さにばらつきが生じるが、分離された保護層207をハードマスクとして用いることで、シリコン層1210の露出を妨げることが可能であり、突起の高さのばらつきを低減することができる。
[凸部を有する電極3]
次に、集電体に凸部を有する電極について、図11に示す。図11(A)は、集電体の表面部分を拡大して模式的に示した断面図である。集電体1101は、複数の突起部1101bと、複数の突起部のそれぞれが共通して接続する基礎部1101aを有する。このため、集電体1101は、あたかも生け花で用いる剣山(Kenzan:Spiky Frog)のような構造をしている。図においては基礎部1101aを薄く記載しているが、一般に突起部1101bに対して基礎部1101aは極めて厚い。
複数の突起部1101bは、基礎部1101aの表面に対して実質的に垂直方向に延びている。ここで「実質的に」とは、基礎部1101aの表面と突起部の長手方向における中心軸とのなす角が90°であることが好ましいが、集電体の製造工程における水平だしの誤差や、突起部1101bの製造工程における工程ばらつき、充放電の繰り返しによる変形等による垂直方向からの若干の逸脱を許容することを趣旨とした語句である。具体的には、基礎部1101aの表面と突起部の長手方向における中心軸とのなす角が90°±10°以下であれば良く、好ましくは90°±5°以下である。なお、複数の突起部1101bが基礎部1101aから延びている方向を長手方向と呼ぶ。
なお、複数の突起部1101bには、図29および図31で示す形状を適宜、用いてもよい。
集電体1101には、集電体1211に示す材料を用いればよい。特に、集電体1101の材料として、チタンを用いることが好ましい。チタンは鋼鉄以上の強度を有する一方で、質量は鋼鉄の半分以下であり非常に軽い。また、チタンはアルミニウムよりも約2倍の強度を有し、他の金属よりも金属疲労が生じにくい。このため、軽量な電池の形成が実現できるとともに、繰り返しの応力に強い活物質層の芯として機能させることができ、シリコンの膨張収縮による劣化や崩壊を抑制することができる。さらに、チタンはドライエッチングの加工に非常に適した材料であり、高いアスペクト比の突起部を集電体表面に形成することが可能である。
集電体1101は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。網状等の開口を有する形状の集電体材料を用いた場合には、次に形成する突起部は開口部を除いた集電体材料の表面部分に形成する。
図11(B)は、集電体1101上に活物質層1102およびグラフェン1127が形成された電極1100の断面図である。活物質層1102は、突起部1101bが設けられていない基礎部1101aの上面、突起部1101bの側面及び上面、すなわち露出した集電体1101の表面を覆って設けられている。図11(C)は、図11(B)に示した破線で囲んだ部分を拡大した図である。
グラフェン1127は、実施の形態1に示したグラフェンを適宜用いることができる。
活物質層1102としては、活物質1212に示した材料を用いればよい。活物質1102にシリコンを用いる場合には、当該シリコンは、非晶質(アモルファス)シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン又はこれらの組み合わせを用いることができる。一般に結晶性が高い程シリコンの電気伝導度が高いため、電極として導電率の高い電池として利用することができる。一方、シリコンが非晶質の場合には、結晶質に比べてリチウム等のキャリアイオンを吸蔵することができるため、放電容量を高めることができる。
複数の結晶性のシリコンを組み合わせて用いる例として、突起部1101b上に多結晶シリコン膜を形成し、さらに多結晶シリコン膜上に非晶質シリコン膜を形成し、多結晶シリコン膜と非晶質シリコン膜との二層によって活物質層1102を構成することができる。この場合、内側の多結晶シリコン膜により高い導電性を確保し、その周囲の非晶質シリコン膜によりキャリアイオンの吸蔵を行うことができる。また、活物質層1102を二層構造とせず、集電体に接する内側を多結晶シリコンとし突起の外側に向かって非晶質シリコンとなるように連続的に結晶性が変化する構造を採ることもできる。この場合においても、二層構造と同様の効果を得ることができる。
また、複数の結晶性のシリコンを組み合わせて用いる他の例として、突起部1101b上の負極活物質層に非晶質シリコンを用い、基礎部1101a上の負極活物質層に多結晶シリコンを用いることができる。非晶質シリコンに比べ多結晶シリコンのキャリアイオンの吸蔵は少ないため、高容量の形成を突起部1101b上の負極活物質層に委ね、基礎部1101a上の多結晶シリコンからなる負極活物質層は膨張の抑制された信頼性の高い膜として用いることができる。
また、活物質層1102にリン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンを用いてもよい。リン、ボロン等の一導電型を付与する不純物元素が添加されたシリコンは、導電性が高くなるため、負極の導電率を高めることができる。
基礎部1101aは、リチウム二次電池の端子として機能するとともに、複数の突起部1101bの下地として機能する。基礎部1101aと複数の突起部1101bとは同一の金属部材からなり、基礎部1101aと突起部1101bとは物理的に連続している。このため、突起部1101bと基礎部1101aとの接続部は一体であるから強固に結合しており、基礎部1101a及び突起部1101b上に設けられる活物質層1102の膨張、収縮により特に応力が集中する接続部においても該応力に耐える強度を有する。従って、突起部1101bは活物質層1102の芯として機能することができる。
特に、図30(A)に示すように、突起部1101bは基礎部1101aとの接続部近傍において、内側に凸の曲率を有する形状であることが好ましい。突起部の根元を湾曲させて基礎部1101aの表面と突起部1101bの側面とを、角部を持たない滑らかな曲線とすることで、一点に応力が集中することを防止し、構造上強固な突起とすることができる。
また、図30(A)に示すように、突起部1101bの側面と上面との境界部分に丸み1103や丸み1104を帯びさせることで端部への応力集中を緩和し、電極上方からの圧力に対して機械的強度を持たせることができる。
また、複数の突起の間には隙間が設けられており、リチウムイオンの挿入により活物質が膨張しても、突起を被覆する活物質同士の接触を低減することが可能である。また、隙間を設けることにより、電極表面まで電解液が浸潤しやすくなり、充放電速度を妨げることがなく良好な特性を得ることができる。
なお、図30(B)及び(C)に示すように、活物質層1102を突起部1101bの側面にのみ形成し、突起部1101bの上面及び基礎部1101aの上面には設けない構成とすることもできる。また、図示しないが、活物質層1102を突起部1101bの側面及び上面にのみ形成する構成とすることもできる。これらの場合は、活物質層の表面積が減るため放電容量が下がるというデメリットを有するが、突起部1101bの側面に形成した活物質の膨張が突起部の根元で抑制されないため、クラックの発生や変壊を低減することができる。その結果、リチウム二次電池の信頼性を向上させることができる。また、突起部1101bの上面を露出させた場合には、活物質層で覆うことにより損なうおそれのある突起上面の平坦面を維持することができる。
活物質層1102を突起部1101bの側面にのみ設ける場合、図30(B)に示すように、突起部1101bの側面全面に設けることもでき、図30(C)に示すように、突起部1101bの側面を露出させることもできる。前者の場合には、後者に比べより活物質層の表面積を増大させることができるため、放電容量を増加させることができる。一方後者の場合には、例えば突起部1101bの側面の上部を露出させることにより、活物質層1102のキャリアイオンの吸蔵時における上方向への膨張を許容する間隔を設けることができる。
次に、電極1100の作製方法を図12乃至図13を用いて説明する。図12(A)に示す通り、集電体材料1121にマスク1120を設ける。次に、図12(B)に示す通り、集電体材料1121をエッチングし、集電体1101を形成する。エッチングにはドライエッチング法などを用いればよい。次に、図12(C)に示すように、活物質層1102を形成する。
次に、図13(A)に示すように、活物質層1102上にグラフェン1127を設ける。グラフェン1127は、実施の形態1に示した方法を用いて形成すればよい。グラフェン1127は、集電体1101の基礎部及び突起部上に形成された活物質層1102を覆うように形成される。グラフェン1127は活物質層1102の表面を完全に覆っても良く、部分的に覆っても良い。例えば突起部側壁の活物質層1102のみをグラフェン1127で被覆しても良い。また、グラフェンは炭素分子のシートであるが、活物質層1102は隙間無く被覆しても良いし、所々に隙間を残した斑状に被覆しても良い。
また、活物質層1102が基礎部1101aから突出した複数の突起部1101bを覆っているため、板状(薄膜状)の活物質に比べて表面積が広い。また、複数の突起部1101bの長手方向が揃っており、基礎部1101aに対して垂直方向に突出しているため、電極において突起の密度を高めることが可能であり、表面積をより増加させることができる。また、複数の突起部の間には隙間が設けられており、さらに、活物質層上にグラフェンが設けられているため、充電により活物質が膨張しても、突起同士の接触を低減することが可能である。さらに、活物質が剥離してもグラフェンにより、活物質の崩落を防ぐことができる。また、複数の突起部は並進対称性を有し、電極において均一性高く形成されているため、局所的な反応が低減し、キャリアイオン及び活物質の反応が均一に生じる。これらのため、電極1100をリチウム二次電池に用いた場合、高速な充放電が可能となると共に、充放電による活物質の崩壊及び剥離を抑制でき、サイクル特性がさらに向上したリチウム二次電池を製造することができる。さらには、突起の形状を概略同形のものとすることができるため、局所的な充放電を低減すると共に、活物質の重量を制御することが可能である。また、突起の高さが揃っていると、電池の製造工程時において局所的な荷重を防ぐことが可能であり、歩留まりを高めることができる。これらのため、電池の仕様を制御しやすい。
なお、活物質層1102とグラフェン1127との間に、酸化シリコン層を有してもよい。活物質層1102上に酸化シリコン層を設けることで、リチウム二次電池の充電時に酸化シリコン中にキャリアであるイオンが挿入される。この結果、Li4SiO4、Na4SiO4、K4SiO4等のアルカリ金属シリケート、Ca2SiO4、Sr2SiO4、Ba2SiO4等のアルカリ土類金属シリケート、Be2SiO4、Mg2SiO4等のシリケート化合物が形成される。これらのシリケート化合物は、キャリアイオンの移動パスとして機能する。また、酸化シリコン層を有することで、活物質層1102の膨張を抑制することができる。これらのため、充放電容量を維持しつつ、活物質層1102の崩壊を抑えることができる。なお、充電の後、放電しても、酸化シリコン層において形成されたシリケート化合物から、キャリアイオンとなる金属イオンは全て放出されず、一部残存するため、酸化シリコン層は、酸化シリコン及びシリケート化合物の混合層となる。
当該酸化シリコン層の厚さは、2nm以上10nm以下とすることが好ましい。酸化シリコン層の厚さを2nm以上とすることで、充放電による活物質層1102の膨張を緩和することができる。また、酸化シリコン層の厚さ10nm以下であると、キャリアとなるイオンの移動が容易であり、放電容量の低下を妨げることができる。酸化シリコン層を活物質層1102上に設けることで、充放電における活物質層1102の膨張及び収縮を緩和し、活物質層1102の崩壊を抑制することができる。また、酸化シリコン層は電解液と活物質1102表面との反応を抑制し、活物質1102表面への皮膜形成を抑制することができるため、キャリアイオンの伝導性の低下や、電解液の消耗を抑制することができる。また、不可逆容量を低減し、二次電池の容量を高めることができる。
なお、突起部1101bは、図29に示すような円柱状や、円錐状、板状、パイプ状等の形状を適宜有することができる。または、角柱状等の柱状や角錐状の錐体状の形状を有してもよい。
また、集電体の上面形状について図31を用いて説明する。図31(A)は、基礎部1101aと、基礎部1101aから突出する複数の突起部1101bの上面図である。ここでは、上面形状が円形である複数の突起部1101bが配置されている。図31(B)は、図31(A)を方向aに移動したときの上面図である。図31(A)及び図31(B)おいて、複数の突起部1101bの位置が同一である。また、ここでは、図31(A)において、方向aに移動したが、方向b、方向cにそれぞれ移動しても、図31(B)と同様の配置となる。すなわち、図31(A)に示す複数の突起部1101bは突起の断面が並ぶ平面座標において、並進操作において対称である並進対称性を有する。
また、図31(C)は、基礎部1101aと、基礎部1101aから突出する複数の突起部の上面図である。ここでは、上面形状が円形である突起部1101bと、上面形状が正方形である突起部1101cが交互に配置されている。図31(D)は、突起部1101b、突起部1101cを方向cに移動したときの上面図である。図31(C)及び図31(D)の上面図において、突起部1101b、突起部1101cの配置が同一である。すなわち、図31(C)に示す複数の突起部1101b、突起部1101cは並進対称性を有する。
複数の突起を並進対称に配置することで、複数の突起それぞれの電子伝導性のばらつきを低減することができる。このため、正極及び負極においての局所的な反応が低減され、キャリアイオン及び活物質の反応が均質に生じ、拡散過電圧(濃度過電圧)を防ぐと共に、電池特性の信頼性を高めることができる。
複数の突起部1101bについて、断面形状における幅(直径)は、50nm以上5μm以下である。また、複数の突起部1101bの高さは、1μm以上100μm以下である。従って突起部1101bのアスペクト比(縦横比)は、0.2以上2000以下である。
ここで、突起部1101bにおける「高さ」とは、突起部の長手方向の断面形状において、突起部1101bの頂点(または上面)から基礎部1101aの表面まで垂直に下ろした線分の長さをいう。なお、基礎部1101aと突起部1101bとの界面は必ずしも明確ではない。後述するように、同一の集電体材料から基礎部1101aと突起部1101bを形成するためである。このため、集電体の基礎部1101aと突起部1101bとの接続部において、基礎部1101aの上面と同一平面上にある集電体中の面を、基礎部と突起部との界面として定義する。ここで、基礎部の上面には、基礎部と突起物との界面は除かれる。また、基礎部の上面が粗い場合には、その平均粗さの位置をもって基礎部の上面とする。
また、一の突起部1101bと、隣り合う他の突起部1101bとの間隔は、突起部1101b上に形成する活物質層1102の膜厚の3〜5倍とすることが好ましい。突起部1101b同士の間隔を活物質層1102の膜厚の2倍とすると、活物質層1102の形成後の突起の間隔に隙間がなくなる一方で、間隔を5倍以上とすると、露出する基礎部1101aの面積が増大し、突起を形成して表面積を増大させる効果が薄れるためである。
活物質層1102の膜厚は、50nm以上5μm以下とすることが好ましい。この膜厚の範囲は突起部1101bの直径の設計幅と同程度である。膜厚を50nm以上とすることで充放電容量を高めることが可能であり、5μm以下とすることで、充放電において活物質層1102が膨張しても、崩壊することを防ぐことができる。
これらの結果、電極1100を用いたリチウム二次電池の充電により突起部1101bの体積が膨張しても、突起部1101b同士が接触せず、突起部1101bの崩壊を妨げることができると共に、リチウム二次電池の充放電容量の低下を妨げることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3で示した電極を用いた蓄電装置の構造について、図15乃至図17を参照して説明する。
[コイン型蓄電池]
図15(A)は、コイン型(単層偏平型)の蓄電池の外観図であり、図15(B)は、その断面図である。
コイン型の蓄電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。ここで、正極304又は負極307の少なくとも一方には、実施の形態3に示した、本発明の一態様に係る電極を用いる。
正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極電極層306により形成される。正極電極層306は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、正極電極層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。導電助剤としては、導電助剤としては比表面積が大きい材料が望ましく、アセチレンブラック(AB)等を用いることができる。また、カーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレンといった炭素材料を用いることもできる。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極電極層309により形成される。負極電極層309は、負極活物質の他、負極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダ)、負極電極層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
正極電極層306と負極電極層309との間には、セパレータ310と、電解質(図示せず)とを有する。
セパレータ310は、セルロース(紙)、または空孔が設けられたポリプロピレン、ポリエチレン等の絶縁体を用いることができる。
電解液は、電解質として、キャリアイオンを移送することが可能であり、且つキャリアイオンが安定に存在する材料を用いる。電解質の代表例としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N等のリチウム塩がある。これらの電解質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオンや、アルカリ土類金属イオンの場合、電解質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
また、電解液の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な材料を用いる。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性を含めた安全性が高まる。また、蓄電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電池の破裂や発火などを防ぐことができる。イオン液体は、カチオンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオン及びピリジニウムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレート、パーフルオロアルキルボレート、ヘキサフルオロホスフェート、またはパーフルオロアルキルホスフェート等が挙げられる。
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
正極缶301、負極缶302には、耐食性のあるステンレス鋼や鉄、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属を用いることができる。特に、蓄電池の充放電によって生じる電解液による腐食を防ぐため、ニッケル等の耐腐食性金属をめっきすることが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解質に含浸させ、図15(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の蓄電池300を製造する。
ここで図15(C)を用いて蓄電装置の充電時の電流の流れを説明する。リチウムイオンを用いた二次電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる。なお、リチウムイオンを用いた二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「−極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
図15(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、蓄電池400が充電される。蓄電池400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。図15(C)では、蓄電池400の外部の端子から、正極402の方へ流れ、蓄電池400の中において、正極402から負極404の方へ流れ、負極から蓄電池400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
[円筒型蓄電池]
次に、円筒型の蓄電池の一例について、図16を参照して説明する。円筒型の蓄電池600は図16(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図16(B)は、円筒型の蓄電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の蓄電池と同様のものを用いることができる。
正極604又は負極606の少なくとも一方には、実施の形態3に示した、本発明の一態様に係る電極を用いる。正極604及び負極606は、上述したコイン型の蓄電池の正極及び負極と同様に製造すればよいが、円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成する点において異なる。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temaperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
[ラミネート型蓄電池]
次に、ラミネート型の蓄電池の一例について、図17(A)を参照して説明する。ラミネート型の蓄電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なくとも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて蓄電池も曲げることもできる。
図17(A)に示すラミネート型の蓄電池500は、正極集電体501および正極電極層502を有する正極503と、負極集電体504および負極電極層505を有する負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。
正極503又は負極506の少なくとも一方には、実施の形態3に示した、本発明の一態様に係る電極を用いる。図17(A)に示すラミネート型の蓄電池500において、正極集電体501および負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体501および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置してもよい。また、正極集電体501および負極集電体504を、外装体509から外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体501、或いは負極集電体504と超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
ラミネート型の蓄電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる内面の上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
また、ラミネート型の蓄電池500の断面構造の一例を図17(B)に示す。図17(A)では簡略のため、2つの集電体で構成する例を示しているが、実際は、複数の電極層で構成する。
図17(B)では、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16としても蓄電池500は、可撓性を有する。図17(B)では負極集電体504が8層と、正極集電体501が8層の合計16層の構造を示している。なお、図17(B)は負極の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体504を超音波接合させている。勿論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する蓄電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた蓄電池とすることができる。
なお、本実施の形態では、蓄電池として、コイン型、ラミネート型及び円筒型の蓄電池を示したが、その他の封止型蓄電池、角型蓄電池等様々な形状の蓄電池を用いることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層された構造、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
また、可撓性を有するラミネート型の蓄電池を電子機器に実装する例を図18に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図18(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図18(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図18(C)に示す。蓄電装置7407はラミネート型の蓄電池である。
図18(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図18(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。
[蓄電装置の構造例]
蓄電装置(蓄電池)の構造例について、図19、図20、図21、図22、図23を用いて説明する。
図19(A)及び図19(B)は、蓄電装置の外観図を示す図である。蓄電装置は、回路基板900と、蓄電体913と、を有する。蓄電体913には、ラベル910が貼られている。さらに、図19(B)に示すように、蓄電装置は、端子951と、端子952と、を有し、ラベル910の裏にアンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電装置は、アンテナ914及びアンテナ915と、蓄電体913との間に層916を有する。層916は、例えば蓄電体913による電磁界の遮蔽を防止することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。層916を遮蔽層としてもよい。
なお、蓄電装置の構造は、図19に限定されない。
例えば、図20(A−1)及び図20(A−2)に示すように、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電体913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図20(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図20(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
図20(A−1)に示すように、蓄電体913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図20(A−2)に示すように、蓄電体913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば蓄電体913による電磁界の遮蔽を防止することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。層917を遮蔽層としてもよい。
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
又は、図20(B−1)及び図20(B−2)に示すように、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電体913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図20(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図20(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
図20(B−1)に示すように、蓄電体913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914及びアンテナ915が設けられ、図20(A−2)に示すように、蓄電体913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電装置と他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電装置と他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図21(A)に示すように、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電体913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図21(B)に示すように、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電体913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、センサ921は、ラベル910の裏側に設けられてもよい。なお、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図19(A)及び図19(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよい。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電装置が置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
さらに、蓄電体913の構造例について図22及び図23を用いて説明する。
図22(A)に示す蓄電体913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図22(A)では、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
なお、図22(B)に示すように、図22(A)に示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図22(B)に示す蓄電体913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、蓄電体913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930の内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
さらに、捲回体950の構造について図23に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して図19に示す端子911に接続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して図19に示す端子911に接続される。
[電気機器の一例:車両に搭載する例]
次に、蓄電池を車両に搭載する例について示す。蓄電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図24において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図24(A)に示す自動車8100は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の長い車両を実現することができる。また、自動車8100は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーター8106を駆動するだけでなく、ヘッドライト8101やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8100が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8100が有するナビゲーションゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図24(B)に示す自動車8100は、自動車8100が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図24(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8100に搭載された蓄電装置に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際しては、充電方法やコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8100に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、シリコンウェハ上に実施の形態1で示した電気泳動法によりグラフェンを形成した試料について、説明する。
酸化グラフェンを分散させた水溶液は、Graphene Supermarket社製の酸化グラフェン水溶液(濃度:0.275mg/ml、フレークサイズ:0.5μm〜5μm)を用いた。酸化グラフェンを分散させた水溶液に、シリコンウェハを浸漬し、また、他方の電極としてステンレス板を浸漬した。シリコンウェハは、n型(8〜12Ω・cm)のものを用いた。ここでは、シリコンウェハとステンレス板との距離を1cmとした。そして、シリコンウェハを陽極、ステンレス板を陰極として、10Vの電圧を30秒かけた。
その後、シリコンウェハを取り出した。図25(A)は、電気泳動法を行った後にシリコンウェハを取り出した写真である。乾燥は行っていない。表面が均一に塗れる様子がみられ、グラフェンが均一に表面を覆っていると考えられる。なお、図25(B)は、比較例として酸化グラフェンを分散させた水溶液にシリコンウェハを浸漬し、電気泳動法を行わずに取り出した写真である。表面のぬれ性は悪く、水溶液が表面を弾く様子がみられている。このことから、グラフェンを分散させた水溶液に浸漬させるのみでは、シリコンウェハ表面にグラフェンを均一に形成できないと考えられる。
取り出したシリコンウェハは、その後乾燥させ、さらに、減圧下で300℃、10時間の加熱を行った。得られたシリコンウェハの表面をSEM(Scanning Electron Microscopeの略。走査型電子顕微鏡)で観察した結果を図26に示す。図26より、電気泳動法を用いることにより、シリコンウェハ表面に均一にウェハを形成できることがわかった。
本実施例では、ウィスカ状のシリコン表面に実施の形態1で示した電気泳動法によりグラフェンを形成した試料(以下、試料Aという)について説明する。本実施例に示すウィスカ状のシリコン330はチタンシート上に複数形成され、図3(A)に示すように様々な方向に延在する円柱状を有している。このためグラフェンを形成する試料表面は、複数のウィスカ状のシリコン330の存在により複雑な3次元構造を呈している。
酸化グラフェンを分散させた水溶液は以下のように作製した。グラファイト(鱗片カーボン)と濃硫酸を混合したものに、過マンガン酸カリウムを加えた後、2時間撹拌した。その後、純水を加え、加熱して15分撹拌し、さらに過酸化水素水を加えることで、酸化グラファイトを含む黄褐色の溶液を得た。さらに、これを濾過し、沈殿物に塩酸を加え洗浄した後、純水で洗浄した。そして、超音波処理を2時間行い、酸化グラファイトを酸化グラフェンにし、酸化グラフェンを分散させた水溶液を得た。
この水溶液に、上記のウィスカ状のシリコンをチタンシートごと浸漬し、また、他方の電極としてステンレス板を浸漬した。ここでは、チタンシートとステンレス板との距離を1cmとした。そして、チタンシートを陽極、ステンレス板を陰極として、10Vの電圧を30秒かけた。この間に流れた電荷量は0.089Cであった。図2に装置の模式図を示す。
その後、チタンシートを取り出し、乾燥させ、さらに、真空中(0.1Pa以下)、300℃で10時間加熱した。このようにして試料Aを作製した。得られたウィスカ状のシリコンの表面を観察した結果を図3(B)に示す。一見するとグラフェンを形成する前の図3(A)と目立った違いが認められないが、ウィスカ表面の所々に黒い部分が斑模様のように確認される。これは多層グラフェンを構成するグラフェンシートの積層数が多いため厚くなった部分であると考えられる。一方このグラフェンシートの積層数の違いは、実用的な均一性に影響を与える程度のものではない。また、写真の中央部には糸状あるいは膜状の物体が、ウィスカ間にかかっている様子が認められる。
ラマン分光法より、グラフェンの特徴であるDバンドとGバンドのピークがウィスカのどの箇所を測定しても認められたことから、ウィスカ表面のほぼ全面がグラフェンで覆われていると考えられる。図10(A)はグラフェンによる被覆を行っていないウィスカ状のシリコンについてのラマン分光測定の結果である。これに対して、図10(B)はグラフェンで被覆したウィスカ状のシリコンについてラマン分光測定を行った結果である。図10(B)において1340cm−1付近及び1580cm−1付近で、図10(A)では見られないピークが確認される。1340cm−1付近に観測されるピークはDバンドに由来するピークで、グラフェンに欠陥や不純物があると観測される。また、1580cm−1付近に観測されるピークは、Gバンドに由来する。
図7にグラフェンで被覆したウィスカの断面観察写真を示す。図7(A)は円柱状のウィスカを輪切りにし透過型電子顕微鏡により観察したものである。円状に見える部分がシリコンからなるウィスカ700であり、その周囲に極めて薄いグラフェンが形成されている。また観察のため、最表面に厚くカーボン蒸着膜701を設けている。図7(A)の一部の拡大を図7(B)に示す。左側がウィスカ700の一部であり、その端部に極めて薄いグラフェン702が形成されている。その厚さは約1〜2nmであり、単層グラフェンの2〜3層分である。なお、観察した試料においてはウィスカ状のシリコンとグラフェンとの間に自然酸化膜703を形成している。シリコン上に非導電性の自然酸化膜703があった場合でも、電気泳動法において十分にグラフェンを形成することができることがわかる。
図7(A)に示すウィスカは、円状の断面において芯となる中心部分704は結晶質のシリコン(結晶シリコン)で構成される。一方、中心部分704の周辺を厚く覆う外殻部分705は非晶質のシリコン(アモルファスシリコン)で構成される。結晶質のシリコンと非晶質のシリコンは図7(A)で示すように、透過型電子顕微鏡写真においてコントラストの違いとして判別することができる。本実施例の構成を二次電池の電極に適用した場合に、結晶質のシリコンのみからなるウィスカを活物質として用いる場合よりも、キャリアとなるリチウム等のイオンの吸蔵と放出に伴う電極の体積変化に強く、電極の破壊が生じにくい。特に、キャリアは結晶質よりも非晶質の方が吸蔵されやすいため、外殻部分705を厚く形成することで二次電池の容量を向上させることができる。
比較例として、ウィスカ状のシリコン表面に塗布法によりグラフェンを作製した(試料B)。試料Bでは、試料Aと同じ酸化グラフェンを分散させた溶液にチタンシートごと浸漬した後、これを引き上げた。その後、試料Aと同じ条件で試料Bを乾燥および加熱した。この加熱工程で、酸化グラフェンは還元されてグラフェンとなる。
図4(A)は試料Bの表面の状態を示す。図4(A)に示されるように、ウィスカ状のシリコンの凸部と凸部の間をつなぐようにグラフェンが膜状に形成されていることが確認できる。しかしこの膜状のグラフェンの存在により、膜下のウィスカ状のシリコンがどのような状態となっているか認められない。また、膜状のグラフェンも部分的には形成されていない箇所もあり、同一試料内においてもグラフェンの厚さが大きくばらついていることが考えられる。
図4(A)の凹部の状態を確認するため、断面を観察すると、図4(B)に示されるように、グラフェンを含む膜状の層430とウィスカ状のシリコン431の凹部の間には空間432が形成されていることがわかった。この空間に接するウィスカ状のシリコン431の表面には、グラフェンが形成されていないことがわかった。なお、試料観察のため、このグラフェンの上にカーボンの蒸着膜を形成したため、図4(B)ではグラフェンの上にカーボンの蒸着膜があることに注意する必要がある。
このように、塗布法では、複雑な形状や構造の物体表面を十分に被覆するグラフェンを形成することは困難であった。また、グラフェンの厚さの試料間のばらつきや、試料内のばらつきが大きく、グラフェンの厚さを制御することが困難であった。
これに対し、電気泳動法では、一旦酸化グラフェンが付着した部分には他の酸化グラフェンが付着しにくくなるため、極めて再現性よく均一な被膜を形成することができた。このように、実施の形態1で示される電気泳動法によるグラフェンの形成は、塗布法に比較して、極めて均一性、確実性が高いことが示された。
本実施例では、ウィスカ状のシリコン表面にグラフェンを形成し、これをリチウムイオン二次電池の負極として用いた場合と、表面に何の処理も施さなかった場合とを比較する。リチウムイオン二次電池に用いられる電解液は、電極(特に負極)と反応して、電極表面に電解液を分解した化合物膜が形成されることが知られている。
このような化合物膜はSEI(Solid Electrolyte Interphase)と呼ばれ、電極と電解質の反応を和らげ、安定化させるために必要であると考えられている。しかしながら、その厚さは電極と電解質の組み合わせによって決定されるため、必要以上に厚くなることもある。
SEI形成に伴う悪影響としては、クーロン効率の低下(すなわち充放電効率の低下)、電極と電解液間のリチウムイオン伝導性の低下、電解液の消耗などが挙げられる。従来、このようなSEIの生成を抑制するためには、蒸着法やCVD法により電極表面を被覆することが試みられてきた。
しかし、リチウムイオン二次電池の電極は表面積が大きい方が好ましいため、例えば、ウィスカ状のシリコンのような複雑な形状を用いることが好ましい。ところが、従来の蒸着法やCVD法では十分に複雑な形状の物体表面を被覆することはできない。一方で、実施の形態1あるいは実施例1で示した方法であれば、複雑な形状を有する複数のウィスカ状のシリコンを有する物体表面であっても適切に被覆できる。これによりSEIの過度の生成を抑制しつつ、電極の表面積を増大させることが可能となる。
本実施例では、試料Cと試料Dの2種類の試料を用意した。試料Cは表面に何の処理も施さなかったウィスカ状のシリコンを複数有するものであり、初期の表面の状態は図3(A)に示されるものと同等である。試料Dは実施例1に示した方法で表面にグラフェンを形成したウィスカ状のシリコンを複数有するもので、初期の表面の状態は図3(B)に示されるものと同等である。
次に、グラフェンによる被覆処理を施した試料と、何の処理も施さなかった試料のそれぞれについて、CV(サイクリックボルタンメトリー)測定を行った。測定には三極式のセルを使用し、作用極にウィスカ状のシリコンを、参照極と対極には金属リチウムを、電解液にはエチレンカーボネート(EC)溶液とジエチルカーボネート(DEC)の混合液(体積比1:1)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用い、走査速度0.1mV/秒、走査範囲0V〜1V(vs.Li/Li+)で10サイクル行った。ただし第1サイクルは開回路電位から走査を開始している。
CV測定結果から、第1サイクルの高電位での還元電流に着目したグラフを図5に示す。0.20V(vs.Li/Li+)付近から急激に還元電流が増加しているが、これはシリコンとリチウムとの合金化反応が起きていることを示している。0.20V(vs.Li/Li+)より高い電位での還元電流は、電池としては不要な分解反応に由来し、この分解反応により電極表面に表面被膜が形成されることが知られている。この表面被膜は薄いほうが望ましい。図5に示されるように、グラフェン被膜処理を施した試料の方が高い電位において還元電流が小さかった。これはグラフェンがあることにより電極(ここではウィスカ状のシリコン)表面での被膜形成が抑制されていることを示している。
上記の試料Cあるいは試料Dを正極、金属リチウムを負極、電解液にはエチレンカーボネート(EC)溶液とジエチルカーボネート(DEC)の混合液(体積比1:1)に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用い、セパレータとして、微細な穴のあいたポリプロピレンを用いたコインセルを作製した。そしてコインセルの充放電をおこない、リチウムの放出と吸収に伴う容量の変化を測定した。充放電に際しては、1サイクル目の電流値は50μA、2サイクル目以降は4mAとした。電位範囲は0.03〜1.0V(vs.Li/Li+)で行った。
図6(A)に示すように、リチウムの放出と吸収を繰り返すと、試料C、試料Dとも容量が低下するが、10サイクル以降は試料Dの方では容量が増加し、試料Cよりも大きくなった。図6(B)には、30サイクル目のリチウムの放出(あるいは吸収)に伴う電位の変動と容量の関係を示す。試料Dの方が試料Cよりも容量が大きいことから、試料Dの方がより多くのリチウムを放出でき、また、より多くのリチウムを吸収できることがわかる。これは、試料Dの方が、SEIが厚く形成されなかったことによるものと考えられる。
次に、実施の形態3の図8(D)に示した電極の形態について、活物質にシリコン、保護層に酸化窒化シリコンを用いて電極を作製した。
まずp型のシリコンウェハ(8〜12Ω・cm)を準備した。次に、希フッ酸を用いてシリコンウェハの洗浄を行った後、保護層として酸化窒化シリコンを1μm形成した。酸化窒化シリコンの成膜は、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法を用いた。成膜条件は、成膜ガスをシラン27sccmおよび亜酸化窒素1000sccmとし、圧力を133.3Paとし、成膜電力を35W(13.56MHz)とし、電極間距離を20mmとし、基板温度を325℃とした。
次にレジストマスクを形成し、酸化窒化シリコンのドライエッチングを行った。エッチング工程はICP装置を用いて行った。エッチングガスは三フッ化炭素(CHF3)を22.5sccm、ヘリウムを127.5sccm、メタン(CH4)を5sccmとした。また、処理室内の圧力は3.5Pa、ICP電力は475W、バイアス電力は300Wとした。基板温度は70℃とした。
次にシリコンのドライエッチングを行った。エッチング工程はICP装置を用いて行った。エッチングガスは塩素を50sccm、臭化水素(HBr)を75sccm、酸素を15sccmとした。また、処理室内の圧力は1.7Pa、ICP電力は500W、バイアス電力は200Wとした。基板温度は70℃とした。次に、レジストマスクを除去した。このようにして柱状の凸部を有するシリコンを形成した。
次に、実施の形態1に示した方法を用いて、柱状の凸部を有するシリコンにグラフェンを形成した。酸化グラフェンを分散した水溶液として、市販の溶液を2種類用いた。一つはGraphene Supermarket社製でフレークサイズが0.5〜5μmのもの(以下、溶液Aとする)を用い、もう一つはAngstron Materials社製の「AVERAGE DIMENSION X&Y」が554nm以下のもの(以下、溶液Bとする)を用いた。溶液Aおよび溶液Bに、柱状の凸部を有するシリコンを浸漬し、電気泳動法により表面にグラフェンを形成した。図27は、溶液Aを用いて電気泳動を行ったものを、SEMで観察した結果である。図27(A)の破線で囲んだ部分を拡大した図が図27(B)である。また図28は、溶液Bを用いて電気泳動を行ったものを、SEMで観察した結果である。
図27(B)より、グラフェンが柱の間に入りこまずに柱の上部で堆積している様子がみられた。柱同士の間隔は約0.5μmであった。一方、図28の実線で囲んだ部分に示す通り、図28ではグラフェンが凸部の間に入り込み、柱状の凸部の側面を被覆している様子がみられた。なお、実線で囲んだ部分は厚めにグラフェンが形成された部分と考えられ、これは多層グラフェンを構成するグラフェンシートの積層数が多いため厚くなった部分であると考えられる。一方このグラフェンシートの積層数の違いは、実用的な均一性に影響を与える程度のものではない。このことから、図28に示すように狭い隙間を有する試料においても、グラフェンのサイズを柱同士の間隔以下とすることで、電気泳動法を用いて良好にグラフェンを被覆することができることがわかった。