JP2015081999A - 弦楽器用板材、弦楽器用板材の製造方法および弦楽器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】弦楽器用板材1は、均一な板厚の複数の単板が接着剤を介して隙間なく積層され、複数の単板のうち少なくとも1以上の単板の平面形状が、他の単板の平面形状と異なる積層板11からなる。積層板11は、一方の面側に凸状に湾曲しており、かつ肉厚の薄い部分と肉厚の厚い部分とが形成されている。
【選択図】図1
Description
また、バイオリン属の表板および裏板として、複数枚の単板を接着剤を介して積層してなる積層材を、曲げ加工により緩やかに湾曲させてなるものもある。
これらの表板および裏板では、曲げ加工によってむくり形状を形成しているので、むくり形状を形成するための削り工数を削減できる。したがって、ブロック状の木材を削り出して製造したものと比較して、効率よく製造できるし、素材の歩留まりも向上する。
しかし、この表板および裏板は、肉厚が均一であるため、これを用いた弦楽器では、演奏時の表板および裏板の振動がバイオリン属特有のものとならず、良好な音響特性が得られない場合があった。
また、積層材を曲げ加工する前または後に積層材を削り出して、肉厚が部分的に異なるむくり形状を形成することも考えられる。しかし、積層材を削り出すと、表面に積層断面が露出してしまうため、良好な外観が得られない。
また、本発明は、効率よく製造でき、素材の歩留まりが高い弦楽器用板材からなる表板および/または裏板を備え、表板および/または裏板の変形による破損が生じにくく、音質の良好な弦楽器を提供することを課題とする。
上記の本発明の弦楽器用板材は、前記積層板の一方の面に露出している単板が、前記積層板の全面を覆っていることを特徴とするものであってもよい。
「第1実施形態」
本実施形態においては、本発明の弦楽器用板材の一例として、バイオリンの表板を例に挙げて説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るバイオリンの表板の幅方向の断面模式図である。また、図1(b)は、図1(a)に示す表板の平面図である。図1(a)は、図1(b)に示すA−A’に対応する断面図である。
積層板11は、図1(a)に示すように、肉厚が部分的に異なるものである。積層板11の肉厚は、周縁部13が最も厚く、次に中央部分12が厚くなっており、中央部分12と周縁部13との間に肉厚の薄い肉薄部14が形成されている。積層板11の肉厚は、図1(a)に示すように、緩やかに変化しており、表面11aおよび裏面11bは緩やかな曲面となっている。
表板10の表面板1は、2枚の単板の端面を表板10の長さ方向中央部で対向させて接ぐことによって、一体化された連続した平面を有するものであってもよい。このことにより、表板10の表面の長さ方向中央部に、接ぎを有する良好な外観が得られる。
図1(a)に示すように、第1芯板3aの肉薄部14と平面視で重なる領域には、穴31が設けられている。また、図1(a)に示すように、第2芯板3bの平面視で肉薄部14および中央部分12と重なる領域には、穴32が設けられている。このことにより、第2芯板3bは、周縁部13と重なる領域にのみ平面視枠状に配置されている。また、第3芯板3cの平面視で肉薄部14および中央部分12と重なる領域にも、穴33が設けられている。このことにより、第3芯板3cは、周縁部13と重なる領域にのみ平面視枠状に配置されている。第3芯板3cに設けられている穴33は、図1(a)に示すように、第2芯板3bに設けられている穴32よりも大きい平面形状を有しており、第3芯板3cの穴33の輪郭は、第2芯板3bの穴32の輪郭よりも平面視で外側に配置されている。
図1(a)に示す積層板11における周縁部13の最も肉厚の厚い部分では、単板の積層数は、表面板1と裏面板2と第1〜第3芯板3a、3b、3cの5枚となっている。また、周縁部13では、肉薄部14に近づくに連れて、単板の積層数が5〜3枚に徐々に少なくなっている。そして、肉薄部14では、芯板3が配置されておらず、単板の積層数は、表面板1と裏面板2の2枚のみとなっている。また、中央部分12では、単板の積層数が、表面板1、裏面板2、第1芯板3aの3枚となっている。
接着剤として溶媒を含まないものを用いることで、積層板11を製造する際に、接着剤が単板に染みこんで単板が変形することを防止できる。したがって、積層板11の厚み分布をより高精度で制御できる。なお、接着剤が染みこむことによる単板の変形は、単板の厚みが薄いほど生じやすい。接着剤として溶媒を含まないものを用いた場合、積層板11を製造する際の単板の変形を防止できるので、単板として厚みの薄いものを使用しやすくなる。したがって、板厚の薄い複数の単板を用いて、より高精度で積層板11の厚み分布を制御することが可能となる。
本実施形態においては、本発明の弦楽器用板材の製造方法の一例として、図1(a)および図1(b)に示すバイオリンの表板の製造方法を例に挙げて説明する。
図2は、図1に示す表板の製造方法を説明するための断面図である。図1(a)および図1(b)に示す表板10を製造するには、まず、表面板1、第1〜第3芯板3a、3b、3c、裏面板2となる均一な板厚の単板を、接着剤4を介して積層し、図2に示す積層体10aとする(積層工程)。
図3(a)は、表面板1となる単板15を示した平面図である。単板15は矩形の平面形状を有するものであり、図1(b)に示す表板10の外形形状よりも大きいものである。単板15は、2枚の単板の端面を表板10の長さ方向中央部で対向させて接ぐことによって、一体化された連続した平面を形成するものであってもよい。
第1〜第3芯板3a、3b、3cは、表面板1となる単板15の所定の位置に、打ち抜き法などを用いて、穴31、32、33を形成することによって得られる。
接着剤4としては、上述したように、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤などの溶媒を含まないものを用いることが好ましい。接着剤4としては、熱融着するシート状のものを用いてもよい。
また、曲げ加工の温度条件は、特に限定されるものではなく、使用する接着剤の種類等に応じて適宜決定できる。接着剤として熱硬化するものを用いた場合には、所定の温度に加熱しながら曲げ加工を行って、曲げ加工と同時に接着剤を硬化させることが好ましい。
その後、必要に応じて、スクレーバーなどを用いて、積層板11の表面11aを削ることにより、表板10の厚み分布を微調整したり、表板10の表面11aに凹凸が存在する場合にこれを取り除いたりする仕上げ工程を行ってもよい。
以上の工程により、図1(a)および図1(b)に示す表板10が得られる。
また、図1(a)に示す表板10は、密度のばらつきが小さいものであり、積層板の一部を圧縮することなく形成されたものである。このため、積層板の一部を圧縮して厚み分布を形成した場合のように、木材の復元力によって、厚み分布が変化することはない。しかも、図1(a)に示す表板10は、均一な板厚の複数の単板が接着剤4を介して隙間なく積層された積層板11からなるものであるので、接着剤4によって単板同士が固定されて積層板11の変形が抑制される。
本実施形態においては、本発明の弦楽器用板材の一例として、バイオリンの裏板を例に挙げて説明する。
本実施形態に係るバイオリンの裏板が、上述した図1(a)に示す第1実施形態の表板10と異なるところは、芯板を形成している単板の平面形状が、裏板としての機能を考慮した所定の厚み分布に応じて決定されているところと、表面板、裏面板、芯板を形成している単板の材料として、メープルを用いることが好ましいことである。
また、本実施形態の裏板によれば、上述した第1実施形態の表板10と同様の効果が得られる。すなわち、本実施形態の裏板は、効率よく製造でき、素材の歩留まりが高いものである。しかも、本実施形態の裏板は、密度のばらつきが小さく、肉厚が部分的に異なり、一方の面側に凸状に湾曲された形状を有し、優れた音響特性が得られる。また、本実施形態の裏板は、形状安定性に優れ、良好な外観を有する。
本実施形態においては、本発明の弦楽器の一例として、バイオリンを例に挙げて説明する。図4は、本発明の弦楽器の一例であるバイオリンを示した側面図である。
図4において、符号50はバイオリンを示し、符号10は表板を示し、符号20は裏板を示し、符号30は側板を示し、符号40はネックを示している。
図4に示すバイオリン50では、裏板20として、第2実施形態のバイオリンの裏板を用いている。
具体的には、裏板20と側板30とをニカワなどの接着剤を用いて接合する。次いで、側板30と表板10とをニカワなどの接着剤を用いて接合してボディを形成する。その後、ボディにネック40を取り付け、表面にニスを塗る。次いで、指板を接着し、魂柱を立てる。その後、駒を設置し、弦を張る。
以上の工程により、図4に示すバイオリン50が得られる。
本発明の弦楽器および弦楽器用板材は、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、本発明の弦楽器は、バイオリンに限定されるものではなく、バイオリン属であるビオラ、チェロ、コントラバスであってもよい。また、本発明は、肉厚が部分的に異なり、一方の面側に凸状に湾曲されたむくり形状を有する表板および/または裏板を備えたギターなどの弦楽器にも用いることができる。
また、図1(a)に示す表板10では、表面板1および裏面板2を有する場合を例に挙げて説明したが、表面板1および裏面板2はなくてもよい。
また、本発明の弦楽器用板材を形成している各単板の平面形状や積層順序は、上述した実施形態に限定されるものではない。
Claims (5)
- 弦楽器の表板または裏板を構成する弦楽器用板材であって、
均一な板厚の複数の単板が接着剤を介して隙間なく積層され、前記複数の単板のうち少なくとも1以上の単板の平面形状が、他の前記単板の平面形状と異なる積層板からなり、
前記積層板は、一方の面側に凸状に湾曲しており、かつ肉厚の薄い部分と肉厚の厚い部分とが形成されていることを特徴とする弦楽器用板材。 - 前記肉厚の薄い部分における前記単板の積層数は、前記肉厚の厚い部分における前記単板の積層数よりも少なくなっていることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器用板材。
- 前記積層板の一方の面に露出している単板は、前記積層板の全面を覆っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弦楽器用板材。
- 弦楽器の表板または裏板を構成する弦楽器用板材の製造方法であって、
均一な板厚の複数の単板を接着剤を介して積層してなり、前記複数の単板のうち少なくとも1以上の単板の平面形状が、他の前記単板の平面形状と異なる積層体を形成する積層工程と、
前記積層体を一方の面側に凸状に湾曲させるとともに、各単板の板厚を一定としたまま、肉厚の薄い部分と肉厚の厚い部分とを形成して積層板を得る曲げ加工工程とを有することを特徴とする弦楽器用板材の製造方法。 - 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の弦楽器用板材を備えることを特徴とする弦楽器。
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