JP2015081832A - 原子炉の核熱水力安定性監視装置、方法及びプログラム - Google Patents

原子炉の核熱水力安定性監視装置、方法及びプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】監視精度及び信頼性を向上させる原子炉の核熱水力安定性監視技術を提供する。【解決手段】核熱水力安定性監視装置50は、炉心16内に配置される複数の検出器31からLPRM信号Sを受信する受信部51と、炉心16内に設定されたOPRMセルMn(n=1,2…N)に近接するとともに水平位置及び高さ位置が一致しないように組み合わせた検出器31のLPRM信号SをこのOPRMセルMnに割り付けるセル割付部52と、OPRMセルMnに割り付けられた複数のLPRM信号Sのうちいずれか一つを基準信号に選定する選定部54と、OPRMセルMnに割り付けられている基準信号とその他のLPRM信号Sとの位相差を補正する位相差補正部55と、基準信号に対し位相差の補正されたLPRM信号Sを加算したOPRM信号Tn(n=1,2…N)を出力する信号加算部56と、を備えている。【選択図】 図2

Description

本発明の実施形態は、沸騰水型原子炉における核熱水力安定性の監視技術に関する。
沸騰水型原子炉(BWR)は、炉心流量を変更することにより沸騰している炉心内の蒸気割合(ボイド率)を変化させ、出力を制御することができる。
しかし、炉心流量及びその他の運転条件によっては、炉心内におけるボイドの輸送遅れと負のボイド反応度係数による負のフィードバック効果とにより、炉心内での中性子束分布と流動状態が不安定化することが知られている。
このような核熱水力不安定現象が発生した結果、出力と流量が大きく振動し、燃料棒表面温度での除熱特性が悪化して、燃料棒被覆管の健全性が損なわれることが懸念される。
このため、沸騰水型原子炉の燃料・炉心設計に際し、核熱水力安定性解析を実施して、予想される全ての運転領域においてこのような振動現象が生じないように、安定性に余裕を持たせた設計をしている。
そして、このような核熱水力安定性が悪化する領域では、運転が制限されるように予め安全設定されている。また原子炉のタイプによっては、万が一この運転制限領域に入った場合、制御棒挿入などにより出力を低下させ、運転制限領域から離脱するように安全設定されている。
一方、沸騰水型原子炉は、大型化・高出力密度化・高燃焼度化するのに従い、一般的に核熱水力安定性が低下するものであるが、前記した安全設定ではそのような沸騰水型原子炉への対応がとれない。
そこで、検知と抑制(Detect and Suppress)の観点から、出力振動現象を許容するとともに核熱水力不安定性に起因する出力振動現象を的確に検知して、燃料健全性が損なわれる前に振動を抑制する原子力プラントも多く存在する。
このため、OPRM (Oscillation Power Range Monitor)と呼ばれる、出力振動現象を検知する専用の検出信号を用いた出力振動検出アルゴリズムが提案されている(例えば、特許文献1−5)。
米国特許第5555279号明細書 米国特許第5174946号明細書 米国特許第6173026号明細書 特許第3847988号公報 特許第2918266号公報
ところで、前記した大型化・高出力密度化・高燃焼度化・高出力化といった沸騰水型原子炉の性能が増強されると、運転領域が実質的に拡大することとなり、核熱水力安定性の余裕度の低下が避けられない。こうした沸騰水型原子炉の性能を増強させたメリットを十二分に発揮させるためには、核熱水力安定性の監視精度及び信頼性を、従来よりもさらに向上させることが求められている。
本発明の実施形態はこのような事情を考慮してなされたもので、監視精度及び信頼性を向上させる原子炉の核熱水力安定性監視技術を提供することを目的とする。
実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置は、炉心内に配置される複数の検出器からLPRM信号を受信する受信部と、炉心内に設定されたOPRMセルに近接するとともに水平位置及び高さ位置が一致しないように組み合わせた前記検出器の前記LPRM信号をこのOPRMセルに割り付けるセル割付部と、前記OPRMセルに割り付けられた複数の前記LPRM信号のうちいずれか一つを基準信号に選定する選定部と、前記OPRMセルに割り付けられている前記基準信号とその他のLPRM信号との位相差を補正する位相差補正部と、前記基準信号に対し前記位相差の補正されたLPRM信号を加算したOPRM信号を出力する信号加算部と、を備えることを特徴とする。
本発明の実施形態により、監視精度及び信頼性を向上させる原子炉の核熱水力安定性監視技術が提供される。
本発明に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置が適用される原子力プラントの実施形態を示す縦断面図。 本発明に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の実施形態を示すブロック図。 高さレベルの相違する4つの検出器が出力するLPRM信号を示すグラフ。 LPRM信号を規格化して抽出された振動成分を示すグラフ。 (A),(B)領域振動と空間高次モード分布の説明図。 OPRMセルの割り付けの説明図。 高さレベルの相違する4つの検出器が出力するLPRM信号の位相差を説明するグラフ。 基準となるLPRM信号に対する位相差を補正したその他のLPRM信号を示すグラフ。 OPRM信号における位相差補正の実施前と実施後の波形を対比するグラフ。 システムに外乱を印加した際の振動的なインパルス応答の波形グラフ。 OPRM信号における位相差補正及び感度補正の実施前と実施後の波形を対比するグラフ。 4つの検出器のうちいずれか一つがバイパスされその他の3つのLPRM信号の波形を加算してなるOPRM信号のグラフ。 バイパスされた検出器のLPRM信号を他のOPRMセルの同じ高さのLPRM信号を代用させた場合のOPRM信号のグラフ。 本発明に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の動作を説明するフローチャート。
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示される原子力発電システムは、核燃料の核分裂による発熱により炉水を加熱して蒸気を発生させる原子炉10と、この発生した蒸気をタービン22に導く主配管21と、この蒸気により回転駆動するタービン22に同軸接続され回転運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機23と、タービン22で仕事をして膨張した蒸気を冷却し凝縮して復水する復水器24と、この復水をポンプ25により送液して原子炉10に導く給水配管26とから構成されている。
この原子炉10に戻された給水は、再び炉水として加熱され、前記したプロセスを繰り返し、連続的な発電が行われる。そして、この発電が安定して持続するように原子炉10の核熱水力安定性監視装置50(以下、「監視装置50」という)が設けられている。
そして、気水分離器13で気水分離された一方の蒸気は前記したように主配管21に導かれて発電に寄与し、他方の分離水は給水配管26から戻された給水と合流する。このように合流した炉水は、周方向に複数設けられた再循環ポンプ18により(図面では省略して一つのみ記載)、シュラウド15及び圧力容器11に挟まれる領域(ダウンカマD)を下降して下部プレナムLに案内される。
下部プレナムLに案内された炉水は、再び炉心16を通過して加熱され気液二相流となって、上部プレナムUに到達する。この到達した気液二相流は、再び気水分離器13に導かれ、前記したプロセスを繰り返す。
図2に水平断面図が示されるように、炉心16は、多数の燃料棒(図示略)が収納されている角筒状の燃料集合体33と、核分裂反応に伴う中性子を吸収して出力を制御する制御棒32と、図1に示されるようにこの中性子を検出する検出器31(31A,31B,31C,31D)を支持するとともに上部格子板14及び炉心支持板17にそれぞれ上下端が固定されている局所出力領域検出器(LPRM:local power range monitor)の計装管34とが、多数配列して構成されている。
この計装管34は、16体の燃料集合体33に1本程度の割合で設置されており、たとえば燃料集合体が872体の改良型沸騰水炉では52本の計装管34が設けられている。
これら計装管34の鉛直方向4箇所に設けられている検出器31A,31B,31C,31Dは、下からの高さ位置に応じてそれぞれAレベル、Bレベル、Cレベル、Dレベルと呼ばれている。そして、炉心16を内部循環する炉水は、Aレベルから流入して、燃料により加熱され沸騰が始まり、Bレベル、Cレベル、Dレベルに水・蒸気の二相状態を変化させながら順次到達する。
図2に示すように核熱水力安定性監視装置50は、炉心16内に配置される複数の検出器31からLPRM信号Sを受信する受信部51と、炉心16内に設定されたOPRMセルMn(n=1,2…N)に近接するとともに水平位置及び高さ位置が一致しないように組み合わせた検出器31のLPRM信号SをこのOPRMセルMnに割り付けるセル割付部52と、OPRMセルMnに割り付けられた複数のLPRM信号Sのうちいずれか一つを基準信号に選定する選定部54と、OPRMセルMnに割り付けられている基準信号とその他のLPRM信号Sとの位相差を補正する位相差補正部55と、基準信号に対し位相差の補正されたLPRM信号Sを加算したOPRM信号Tn(n=1,2…N)を出力する信号加算部56と、を備えている。
さらに核熱水力安定性監視装置50は、OPRMセルMnに割り付けられたLPRM信号Sの振動成長率を取得する取得部57と、加算されるLPRM信号Sの感度を振動成長率に基づいて補正する感度補正部58と、を備えている。
また、選定部54、位相差補正部55、信号加算部56、取得部57及び感度補正部58から構成されるOPRM信号生成部53n(n=1,2…N)が、OPRMセルMn(n=1,2…N)のそれぞれに対応して設けられている。
そして、監視部59において、それぞれのOPRM信号Tn(n=1,2…N)を監視して、核熱水力安定性が損なわれると判断されれば、出力振動抑制手段60(例えば、警報装置や、制御棒挿入装置)の起動が指令される。
核熱水力安定性は、炉心16を内部循環する炉水の水・蒸気二相状態における圧力伝播の影響を大きく受ける。
つまり、図1に示されるように、炉心16を下から上に向かう炉水の圧力伝播遅れにより、二相状態(水・蒸気割合)が変動し、検出器31A,31B,31C,31Dの応答が遅れ、Aレベル、Bレベル、Cレベル、Dレベルから検出されるLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)にそれぞれ位相差を生じさせる。
なお、個々のLPRM信号Sは、検出器31から発信された後、それぞれに種々の処理が加えられるが、各種処理後の信号についても記載をLPRM信号Sに統一し、説明の複雑化を避けることとする。
図3は、検出器31A,31B,31C,31D(図1)において検出されるLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)を示している。
このようにLPRM信号Sの値は、高さ位置に依存し、下に位置する検出器31から出力されるものほど、有意に大きくなる。
最も高い位置からのLPRM信号SDは、最も低い位置からのLPRM信号SAに対し、その平均値及び振動振幅値が5分の1以下である。
図4は、LPRM信号S(SA,SB,SC,SD)を、それぞれの初期値で規格化(除算)した信号である。炉心における領域振動は、鉛直方向下部の出力が大きく歪む場合に発生じ易いことが知られている。
図4に示す規格化されたLPRM信号Sの波形より、最下端の信号SAに対し、それより約90cm上部にある信号SBは、位相が若干遅れており、更に同じ間隔だけ上部にある信号SC、信号SDも、同様に位相が遅れることがわかる。
一般的に、最下端の信号SAから最上段の信号SDにおける位相遅れは、1/4〜1/3周期である。
このため、炉心振動を監視するには、感度の高いLPRM信号SAのみに着目すれば良いかもしれないが、必ずしもこのLPRM信号SAの感度が高くない条件や、検出器故障等によりこのLPRM信号SAの取得が不能になる場合もある。
このため、出力振動現象を検知する専用のOPRM信号Tn(n=1,2…N)は、水平断面視において近接する別々の計装管34から高さ位置の異なる検出器31を一つずつ割り付け、それぞれのLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)を平均化している。
しかし、このように割り付けられたLPRM信号の出力振動は、炉水流れ方向の高さ位置に依存した位相差を有するために、単純に加算して評価しようとすると、互いの応答をキャンセルする作用があるために適切でない。
図5(A)は、領域振動における空間高次モード分布を示しており、図5(B)に水平断面視されるように節に相当する振動の中心線cを挟んで、二つの領域a,bが互いに逆位相すなわち180度の位相差で振動している。
励起された空間モードが高次モードである場合は、領域振動と呼ばれ、その空間高次モード分布に従って、同じ高さの炉心断面におけるそれぞれのLPRM信号Sに位相差が生じる。そして、この空間高次モード分布の節が振動の中心線cとなり、この中心線cを挟んで位相差が180度となり振動が逆転する。
したがって、領域aと領域bにあるLPRM信号を満遍なく平均化するOPRM信号では、位相差による振動のキャンセリングが生じ、平均化信号の振幅が鈍り、振動検出の感度が低下する。
セル割付部52(図2)におけるOPRMセルMnの割り付けは、図6のように行われる。すなわち、一つのOPRMセルMnは、隣接する4つの計装管34(34p,34q,34r,34s)に設けられ、それぞれ高さ位置の異なる検出器31からLPRM信号Sを取得する。
例えば計装管34pからはAレベルのLPRM信号SA、計装管34qからはBレベルのLPRM信号SB、計装管34rからはCレベルのLPRM信号SC、計装管34sからはDレベルのLPRM信号SDをOPRMセルMnに割り当てている。
このように割り当てられたLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)をそのまま加算したOPRM信号Tは、これらLPRM信号Sの高さ位置に依存した位相差によって、信号感度が低下することが懸念される。
特に、図5に示す領域振動が生じている場合、振動の中心線c付近にあるOPRMセルMnは、加算されるLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)の間に大きな位相差が現れ、OPRM信号Tの感度低下が顕著になる可能性がある。
図7に基づいてLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)の位相補正について説明する。
基準信号選定部54(図2)は、1つのOPRMセルMnに割り付けられた複数(一般的には4であるが、炉心16の端に位置する場合は3又は2に成ることもある)の検出器31のうち、基準となる検出器31を選定する。
この基準に選定された検出器31のLPRM信号S(基準信号;図7ではLPRM信号SA)に対する、その他のLPRM信号SB,SC,SDの位相遅れを算出する。
基準信号は、予め設定され固定する場合と、感度の最も高い(振幅の大きい)LPRM信号Sを可変的に設定する場合と、が考えられる。
基準信号を固定する場合は、多くの状態で最も感度の高い最下端に位置する検出器31Aから受信されるLPRM信号SAを選定する。
基準信号を可変的に設定する場合は、直流成分値の最も大きいLPRM信号S又は変動値(RMS値)の最も大きいLPRM信号Sを選定する。
図7に示すように位相差補正部55(図2)において、個々のLPRM信号Sのピーク検知を行っている場合、基準信号(LPRM信号SA)に対するその他のLPRM信号SB,SC,SDの位相差は、その振動波形ピークの時間差τ(τAB,τAC,τAD)で表される。
基準信号であるLPRM信号SAのピーク値が時間tAにおいて検出される場合、過去において他のLPRM信号SB,SC,SDのピーク値が検知されるそれぞれの時間tB,tC,tDまでの差分をとり、時間差τ(τAB,τAC,τAD)を求めることができる。
そして、位相差補正部55(図2)は、この基準信号の振動波形のピーク検知時点tAから時間差τ(τAB,τAC,τAD)だけ遡って、その他のLPRM信号SB,SC,SDからデータ信号を取得する。そして、信号加算部56において、これらデータ信号は基準信号に加算される。
なお、位相差の導出は、前記したピーク検知方法に限定されるものではなく、基準信号と他のLPRM信号との相互相関係数、コヒーレンス又はその他の公知方法から導出することができる。
図8は、位相補正を実施したLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)を示している。
位相補正を実施したOPRM信号は、次式(1)のように表される。
OPRM(t)=(SA(t)+SB(t−τAB)+SC(t−τAC)+SD(t−τAD))/4 (1)
図9は、位相差補正を実施前のOPRM信号と実施後のOPRM信号とを対比したグラフである。
位相差補正を実施したOPRM信号の感度は、未実施のものよりも大きくなることが観測される。
しかし、LPRM信号Sの振動が増幅している場合(1<減幅比)は、OPRM信号において加算された基準信号SA以外のLPRM信号SB,SC,SDは、一周期分前の振幅が加算されていることになる。
つまり、OPRM信号の導出を、tAの時点で実施するとすれば、基準信号SAを除く他のLPRM信号SB,SC,SDのピークは出現していないので、一周期分の過去にさかのぼって検知された成長前のピークを用いることになる。
このため、位相差補正を実施するだけでは、OPRM信号の感度改善効果は、不十分であるといえる。
なお、LPRM信号S(SA,SB,SC,SD)の位相補正は、これまで説明したピーク検知法に限定されるものではなく、基準信号と他の信号間での統計処理、例えば相互相関係数あるいはコヒーレンスを求めることによっても実施できる。
OPRM信号の感度改善効果を十分なものとするためにOPRM信号の導出は、現時点tAから一周期分の未来に向かって検知される予定の成長後のピークを用いることが考えられる。
そこで、取得部57(図2)において、OPRMセルMnに割り付けられたLPRM信号Sの振動成長率を取得し、基準信号SA以外のLPRM信号SB,SC,SDに、振動成長率(一例として減幅比)を用いた感度補正を行うことを検討する。
ここで、図10を参照し、システムに外乱を印加した際の振動的なインパルス応答を用いた減幅比の定義を行う。ピーク値を順番に、X1,X2,X3,X4,・・・として、それらのピークの出現する時間を各々、t1,t2,t3,t4、・・・とすれば、振動成長率を表す指標として一般に用いられる減幅比は次式(2)のように定義される。
この減幅比γは、値が1よりも小さければインパルス応答は減衰するのでこのシステムは安定、逆に1を超えれば振動は成長するのでシステムは不安定となる。また、減幅比γが1の場合は一定の振幅で振動が持続することになる。
減幅比γ=(X3−X4)/(X1−X2) (2)
この減幅比γを用いた、次式(3)のような感度補正係数Fを導入し、式(1)に感度補正を実施したOPRM信号を、次式(4)に示す。
ここで、感度補正係数FB,FC,FDは、それぞれLPRM信号SB,SC,SDのものを示すが、これらのうち最大値を全てに適用してもよい。
感度補正係数F=γ(γ>1.0)
=1(γ≦1.0) (3)
OPRM(t)=(SA(t)+FB*SB(t−τAB)+FC*SC(t−τAC)+FD*SD(t−τAD))/4 (4)
式(3)に示す減幅比γは、個々のLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)のピーク検知を行っていれば、1周期ごとのピーク値から推定することができる。
ピーク検知を行っていない場合であっても、その他の公知方法に則って、減幅比γを推定すればよい。
もしくは、トリップ判定条件で設定される最大減幅比から求められる減幅比γを固定値として用いても良い。
なお、固定値として減幅比γを大きくしすぎると、異常検出の感度が過剰となり、出力振動抑制手段60(図1)の誤操作を招くことになる。
そこで、固定値を採用する場合、減幅比γは、予め設定される最大減幅比の、不安定振動の判定に必要と設定される振動周期回数のべき乗根として与える。
例えば、5周期(ピークと谷が10個)における最大減幅比が1.3に設定されているとして、1.3の1/5乗である1.05を減幅比γに設定するのが適切である。
図11は、位相差補正及び感度補正を実施後のOPRM信号と補正前のOPRM信号とを対比したグラフである。なお、減幅比γはおよそ1.1である。
このように位相差補正及び感度補正を実施することにより、OPRM信号のピーク値の包絡線の上下方向への広がり、ほぼ1周期分(約1.5秒)の感度改善が確認される。
この1.5秒は、監視部59の指令から出力振動抑制手段60の動作にかかる遅れ時間に比べ、十分に大きな値であり、優れた改善効果が得られるといえる。
これにより、周期ベースによる安全系としての検知を、遅れることなく実行することが可能となる。
図12のグラフは、OPRMセルMnに割り付けられた4つの検出器31のうちいずれか一つがバイパスされその他の3つから出力されたLPRM信号Sを加算したOPRM信号を示している。
OPRMセルMnに割り付けられたLPRM信号Sのうち異常値(エラー信号)が発見された場合は、最大2つまでの異常値信号をバイパスして、OPRM信号を生成する。
この場合、いずれの高さ位置のLPRM信号Sがバイパスされるかによって、OPRM信号の感度が変化する。
図12に示すように、4信号とも正常な場合に比べ、最も低い位置にあり感度が一番高いLPRM信号SAがバイパスされると、OPRM信号の感度が有意に低下することが判る。一方において、LPRM信号SA以外のLPRM信号SB,SC,SDがバイパスされた場合は、OPRM信号の感度変化は僅かであり、むしろ増加している。
したがって、バイパスされたOPRM信号が一番高感度のLPRM信号SA以外であれば、残りのLPRM信号SB,SC,SDからそのままOPRM信号を算出しても問題ないといえる。
一方において、バイパスされたOPRM信号が一番高感度のLPRM信号SAであれば、他のOPRMセルMに割り付けられた同じ高さ位置からのLPRM信号SAを代用信号として用いる。
図13のグラフは、バイパスされた検出器31AのLPRM信号SAを他のOPRMセルMの同じ高さのLPRM信号Sで代用した場合のOPRM信号を示している。
このように、一番高感度のLPRM信号SAがバイパスされても、同じ高さの他のLPRM信号SAを代用信号とすることにより、OPRM信号の感度低下を回避することができる。
2信号がバイパスの場合も同様であり、バイパスされた2信号に一番高感度のLPRM信号SAが含まれている場合には、同様に代用信号を用いる。なお、バイパスされた信号に一番高感度のLPRM信号SAが含まれていない場合は、特に代用信号を用いることなく、正常なLPRM信号SからOPRM信号を算出すれば良い。
図14のフローチャートに基づいて、実施形態に係る原子炉の核熱水力安定性監視装置の動作を説明する(適宜、図2参照)。
炉心16内に配置される複数の検出器31からLPRM信号Sを受信部51において受信する(S11)。
次に、炉心16内に設定されたOPRMセルMn(n=1,2…N)に近接するとともに水平位置及び高さ位置が一致しないように組み合わせた検出器31のLPRM信号SをこのOPRMセルMnに割り付ける(S12)。
そして、OPRMセルMnに割り付けられた複数のLPRM信号Sのうちいずれか一つを基準信号に選定する(S13)。
ここでは、最も低い位置に設けられている検出器31Aから送信された一番高感度のLPRM信号SAを基準信号とする。
この基準信号に選定されたLPRM信号SAについてエラー信号であるか否かについて判定を行う(S14)。
ここで、LPRM信号SAがエラー判定されなければ(S14 No)、OPRMセルMnに割り付けられたLPRM信号S(SA,SB,SC,SD)について、波形のピーク検知を実施する(S16)。
一方、基準信号に選定されたLPRM信号SAがエラー判定されれば(S14 Yes)、他のOPRMセルMに割り付けられた同じ高さ位置からのLPRM信号SAを代用信号として取得した後に(S15)、ピーク検知を実施する(S16)。
ピーク検知の結果から、それぞれのOPRMセルMnごとに、基準信号(LPRM信号SA)とその他のLPRM信号SB,SC,SDとの位相差を補正する(S17)。
さらに、ピーク検知の結果から減幅比(振動成長率)を取得し(S18)、その他のLPRM信号SB,SC,SDの感度を補正する(S19)。
そして、信号加算部56において、基準信号(LPRM信号SA)に対し、位相差の補正されたLPRM信号SB,SC,SDを加算し(S20)、OPRM信号Tn(n=1,2…N)として出力する(S21)。
そして、監視部59において、それぞれのOPRMセルMn(n=1,2…N)から送信されるOPRM信号Tnを監視し、炉心16内の出力振動現象が許容範囲内か外れるかについて判定を行う(S22)。
その結果、許容範囲内と判定されれば(S22 Yes)、監視をそのまま継続し、許容範囲外と判定されれば(S22 No)、出力振動現象を抑制するための操作指令を出力する(S23 END)。
以上述べた少なくともひとつの実施形態の原子炉の核熱水力安定性監視装置によれば、高さ位置の異なるLPRM信号を位相差補正したうえで加算したOPRM信号に基づいて原子炉の核熱水力安定性の監視精度及び信頼性を向上させることが可能となる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
また、核熱水力安定性監視装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、核熱水力安定性監視プログラムにより動作させることが可能である。
10…原子炉、11…圧力容器、13…気水分離器、14…上部格子板、15…シュラウド、16…炉心、17…炉心支持板、18…再循環ポンプ、21…主配管、22…タービン、23…発電機、24…復水器、25…ポンプ、26…給水配管、31(31A,31B,31C,31D)…検出器、32…制御棒、33…燃料集合体、34…計装管、50…核熱水力安定性監視装置、51…LPRM信号受信部、52…セル割付部、53…OPRM信号の生成部、54…基準信号選定部、55…位相差補正部、56…信号加算部、57…振動成長率取得部、58…感度補正部、59…OPRM信号の監視部、60…出力振動抑制手段、S(SA,SB,SC,SD)…LPRM信号、Tn(n=1,2…N)…OPRM信号、Mn(n=1,2…N)…OPRMセル。

Claims (10)

  1. 炉心内に配置される複数の検出器からLPRM信号を受信する受信部と、
    炉心内に設定されたOPRMセルに近接するとともに水平位置及び高さ位置が一致しないように組み合わせた前記検出器の前記LPRM信号をこのOPRMセルに割り付けるセル割付部と、
    前記OPRMセルに割り付けられた複数の前記LPRM信号のうちいずれか一つを基準信号に選定する選定部と、
    前記OPRMセルに割り付けられている前記基準信号とその他のLPRM信号との位相差を補正する位相差補正部と、
    前記基準信号に対し前記位相差の補正されたLPRM信号を加算したOPRM信号を出力する信号加算部と、を備えることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視装置。
  2. 前記基準信号は、前記OPRMセルに割り付けられた複数の前記LPRM信号のうち直流成分値の最も大きいものが選定されることを特徴とする請求項1に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置。
  3. 前記基準信号は、前記OPRMセルに割り付けられた複数の前記LPRM信号のうち最下端に位置する検出器から受信されたものが選定されることを特徴とする請求項1に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置。
  4. 前記位相差は、前記基準信号及び前記その他のLPRM信号で検出される振動波形ピークの時間差に基づいて導かれることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置。
  5. 前記その他のLPRM信号の位相差補正は、前記基準信号の振動波形ピークの検出時点から前記位相差に対応する時間を遡って取得したデータ信号を加算させることによることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置。
  6. 前記OPRMセルに割り付けられた前記LPRM信号の振動成長率を取得する取得部と、
    前記加算されるLPRM信号の感度を前記振動成長率に基づいて補正する感度補正部と、を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置。
  7. 前記振動成長率は、予め設定される最大減幅比の、不安定振動の判定に必要と設定される振動周期回数のべき乗根として与えることを特徴とする請求項6に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置。
  8. 前記OPRMセルに割り付けられた複数の前記LPRM信号のうちいずれかにエラー信号が含まれている場合は、他のOPRMセルに割り付けられた同じ高さ位置からのLPRM信号を代用信号として用いることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の原子炉の核熱水力安定性監視装置。
  9. 炉心内に配置される複数の検出器からLPRM信号を受信するステップと、
    炉心内に設定されたOPRMセルに近接するとともに水平位置及び高さ位置が一致しないように組み合わせた前記検出器の前記LPRM信号をこのOPRMセルに割り付けるステップと、
    前記OPRMセルに割り付けられた複数の前記LPRM信号のうちいずれか一つを基準信号に選定するステップと、
    前記OPRMセルに割り付けられている前記基準信号とその他のLPRM信号との位相差を補正するステップと、
    前記基準信号に対し前記位相差の補正されたLPRM信号を加算したOPRM信号を出力するステップと、を含むことを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視方法。
  10. コンピュータに、
    炉心内に配置される複数の検出器からLPRM信号を受信するステップ、
    炉心内に設定されたOPRMセルに近接するとともに水平位置及び高さ位置が一致しないように組み合わせた前記検出器の前記LPRM信号をこのOPRMセルに割り付けるステップ、
    前記OPRMセルに割り付けられた複数の前記LPRM信号のうちいずれか一つを基準信号に選定するステップ、
    前記OPRMセルに割り付けられている前記基準信号とその他のLPRM信号との位相差を補正するステップ、
    前記基準信号に対し前記位相差の補正されたLPRM信号を加算したOPRM信号を出力するステップ、を実行させることを特徴とする原子炉の核熱水力安定性監視プログラム。
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