JP2015079701A - ライトカバー - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、太陽光をはじめとする紫外線を多く含んだ光線の環境下で用いられ、かつ、紫外線を多く含んだ高輝度の光を発するライトを使用した場合でも、黄変しにくく、透光性の低下による減光が起こりにくい、ライトカバーを提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、ポリカーボネート樹脂(a1)及び光安定剤(a2)を含むライトカバー本体(A)と、前記ライトカバー本体(A)の外表面及び内表面のうち少なくとも一方に形成され、含フッ素樹脂(b1)及び紫外線吸収剤(b2)を含む塗膜層(B)とを有する、ライトカバーである。【選択図】なし

Description

本発明は、ライトカバーに関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性に優れ、無機ガラスに比べ軽量で割れにくいため、様々な成形品に採用されている。例えば、車両用部材(ライトカバー、メーターパネル、ドアハンドル、ルーフレール、ボディ、窓ガラス等)においても、ポリカーボネート樹脂の使用が増えている。
しかし、ポリカーボネート樹脂は、単独で用いる場合には紫外線吸収剤によって黄変することが知られている。特に、ポリカーボネート樹脂を車両の外装、特に車両用ライトカバーに用いた場合、車両用ライトカバーは、太陽光に含まれる紫外線をその外表面に受けるのみならず、ライトからの光に含まれる紫外線もその内表面に受けるため、劣化により黄変しやすい。
そこで、ポリカーボネート樹脂製の成形品の表面上に塗膜層を形成したり、さらに、該塗膜層に添加剤を含ませたりすることにより、ポリカーボネート樹脂を紫外線から保護する方法が開発されている。
例えば、特許文献1には、所定のフルオロオレフィン−ビニルエーテル系共重合体と、シクロヘキサノンを含有する溶剤とを含む、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂用コーティング組成物が開示されている。同文献には、ポリカーボネート樹脂等を光から保護するために、該合成樹脂用コーティング組成物に、紫外線吸収剤や光安定剤等を配合することが望ましいことも開示されている。
特許第2613202号公報
近年、オゾン層の破壊が進み、太陽から照射される紫外線の強度が年々強まりつつある。また、安全性向上のため、多量の紫外線を含む高輝度の光を発する車両用ライトの使用が増えている。
そのため、特許文献1に記載の発明によっても、太陽から照射される紫外線とライトから照射される紫外線とによる車両用ライトカバーの黄変は、充分に抑えられなくなっており、外観を損なうことになる。また、黄変が進むと車両用ライトカバーの透光性が低下するため、ライトが発する光が車両用ライトカバーを透過すると減光する。
本発明は、上記事情に鑑み、太陽光をはじめとする紫外線を多く含んだ光線の環境下で用いられ、かつ、紫外線を多く含んだ高輝度の光を発するライトを使用した場合でも、黄変しにくく、透光性の低下による減光が起こりにくい、ライトカバーを提供することを目的とする。
本発明は、下記[1][2]に記載のライトカバーである。
[1]ポリカーボネート樹脂(a1)及び光安定剤(a2)を含むライトカバー本体(A)と、前記ライトカバー本体(A)の外表面及び内表面のうち少なくとも一方に形成され、含フッ素樹脂(b1)及び紫外線吸収剤(b2)を含む塗膜層(B)とを有する、ライトカバー。
[2]前記塗膜層(B)は前記ライトカバー本体(A)の外表面及び内表面の両方に形成される、[1]に記載のライトカバー。
本発明によれば、太陽光をはじめとする紫外線を多く含んだ光線の環境下で用いられ、かつ、紫外線を多く含んだ高輝度の光を発するライトを使用した場合でも、黄変しにくく、透光性の低下による減光が起こりにくい、ライトカバーを提供することができる。
本明細書においては、単量体が重合することで直接形成される繰り返し単位と、単量体の重合によって形成される繰り返し単位の官能基の一部乃至全部を他の官能基に化学変換することで形成される単位とを、総称して「構成単位」という。
また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
<ライトカバー>
本発明のライトカバーは、ポリカーボネート樹脂(a1)及び光安定剤(a2)を含むライトカバー本体(A)と、該ライトカバー本体(A)の外表面及び内表面のうち少なくとも一方に形成され、含フッ素樹脂(b1)及び紫外線吸収剤(b2)を含む塗膜層(B)とを有する。
また、本発明のライトカバーにおける塗膜層(B)の態様としては、ライトカバー本体(A)の外表面に形成される態様、内表面に形成される態様、並びに外表面及び内表面の両方に形成される態様が挙げられる。
ライトカバーとは、ライトを保護したり、ライトが発する光に色を呈したりするためのカバーである。ライトカバーとしては、例えば、車両用ライトカバー、船舶用ライトカバー、建物内で用いられる照明用ライトカバー、街路や広場等に設置される外灯用ライトカバー等が挙げられる。中でも、屋外で用いられる車両用ライトカバー、船舶用ライトカバー、外灯用ライトカバーが好ましく、交通安全上、高輝度の光を発するライトに対して用いられる車両用ライトカバー、船舶用ライトカバーがより好ましい。
なお、本明細書において車両とは、車輪がついた乗り物のほか、これに準ずる乗り物も包含される。車輪がついた乗り物としては、例えば、自動車、車輪を有する飛行機、電車、機関車、及び自転車等が挙げられる。車輪がついた乗り物に準ずる乗り物としては、例えば、水上飛行機等の車輪を有しない飛行機、及び車輪を有しないリニアモーターカー等が挙げられる。車両の動力源としては、例えば、エンジン、電気モーター、人力等が挙げられる。
車両用ライトカバーとしては、具体的には、ヘッドライトカバー(「前照灯カバー」、「ヘッドライトレンズ」、「ヘッドランプレンズ」ということもある。)、テールライトカバー(「テールランプカバー」、「テールランプレンズ」ということもある。)、ウィンカーカバー(「ウィンカーレンズ」ということもある。)、バックライトレンズ(「後退灯カバー」ということもある。)等が挙げられる。
[ライトカバー本体(A)]
ライトカバー本体(A)は、ポリカーボネート樹脂(a1)及び光安定剤(a2)を含む。該ライトカバー本体(A)は、ポリカーボネート樹脂(a1)及び光安定剤(a2)に加えて、任意成分(a3)を含んでいてもよい。
また、ライトカバー本体(A)は、塗膜層(B)の形成前に焼成処理されたものであることが好ましい。なお、焼成処理の詳細については、後述の「ライトカバーの製造方法」で説明する。
以下、ライトカバー本体(A)の構成について詳述する。
{ポリカーボネート樹脂(a1)}
ポリカーボネート樹脂(a1)としては、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂肪族ポリカーボネート樹脂、脂肪族−芳香族ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、特に制限されないが、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させてなる芳香族ポリカーボネート重合体が挙げられる。該芳香族ポリカーボネート重合体は、1種の繰り返し単位からなる単重合体であってもよく、2種以上の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、テトラブロモビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1−トリクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。
中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に耐衝撃性の点から、ビスフェノールAが好ましい。
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステル、ハロホルメート等が挙げられる。具体的には、ホスゲン;ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類;二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
なお、カーボネート前駆体は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び
比率で併用してもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の高分子鎖は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。これらのうち分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂は、滴下防止剤として機能し、燃焼時に着火・溶融した樹脂が垂れ落ち(ドリップ)するのを抑制することができるため、好ましい。また、ポリカーボネート樹脂(a1)は、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂と分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を混合したものであってもよい。
直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは、通常、1.2未満である。また、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂の構造粘性指数Nは、通常、1.2以上である。ここで構造粘性指数Nとは、例えば「小野木重治著『化学者のためのレオロジー』第15〜16頁」等に記載の値である。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、目的に応じて適宜設定される。
例えば、溶液粘度から換算した粘度平均分子量[Mv]は、10000以上が好ましく、より好ましくは12000以上、さらに好ましくは14000以上、特に好ましくは14500以上であり、また、40000以下が好ましく、より好ましくは30000以下、さらに好ましくは24000以下、特に好ましくは23000以下である。
粘度平均分子量[Mv]が前記下限値以上であれば、ライトカバーの機械的強度をより向上させることができる。一方、前記上限値以下であれば、芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性低下を抑制して改善でき、ライトカバーの成形加工を容易に行える。
粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
なお、本明細書において、粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83、から算出される値である。
{光安定剤(a2)}
光安定剤としては、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール等のラジカル捕捉剤等が挙げられる。
中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これら2つの光安定剤は、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社より、「イルガノックス1010」及び「イルガノックス1076」の名称で市販されている。
なお、光安定剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び
比率で含有されていてもよい。
光安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂(a1)100重量部に対し、0.001質量部以上が好ましく、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以下である。光安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、光安定剤としての効果が充分に得られ、一方、前記上限値以下であれば、経済的である。
{任意成分(a3)}
ライトカバー本体(A)は、所望の物性(例えば、光拡散性、難燃性、流動性等)を著しく損なわない限り、上述のポリカーボネート樹脂(a1)及び光安定剤(a2)以外に、他の樹脂(a3−1)、樹脂添加剤(a3−2)等の任意成分(a3)を含んでいてもよい。
他の樹脂(a3−1)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の熱可塑性ポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレン系ゴム−スチレン共重合体(AES樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリメタクリレート樹脂、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂等が挙げられる。
樹脂添加剤(a3−2)としては、例えば、熱安定剤、離型剤、染顔料、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
なお、他の樹脂(a3−1)、樹脂添加剤(a3−2)等の任意成分(a3)は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
[塗膜層(B)]
塗膜層(B)は、含フッ素樹脂(b1)及び紫外線吸収剤(b2)を含む。該塗膜層(B)は、含フッ素樹脂(b1)及び紫外線吸収剤(b2)に加えて、任意成分(b3)を含んでいてもよい。
また、塗膜層(B)は、ライトカバー本体(A)の外表面及び内表面のうち少なくとも一方に形成される。該塗膜層(B)は、ライトカバー本体(A)の外表面及び内表面の両方に形成されるのが好ましい。
なお、本発明において、ライトカバー本体(A)の外表面とは、ライトカバーの使用時に、太陽光を直接受ける表面を意味する。内表面とは、ライトカバーの使用時に、ライトの光を直接受ける表面を意味する。
以下、塗膜層(B)の構成について詳述する。
{含フッ素樹脂(b1)}
含フッ素樹脂(b1)としては、フッ素を含む樹脂であれば特に制限されず、例えば、下記共重合体(b11)、ポリフッ化ビニリデン(b12)等が挙げられる。中でも、耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性の点から、共重合体(b11)及びポリフッ化ビニリデン(b12)のうちいずれか一方又は両方を含む含フッ素樹脂が好ましく、共重合体(b11)を含む含フッ素樹脂がより好ましい。
また、含フッ素樹脂(b1)は、硬化剤(b13)により硬化されたものが好ましい。
(共重合体(b11))
共重合体(b11)は、後述する構成単位(b11−1)及び構成単位(b11−2)を有する共重合体である。該共重合体(b11)は、これら構成単位(b11−1)及び構成単位(b11−2)に加えて、後述する構成単位(b11−3)も有する共重合体であることが好ましい。
「構成単位(b11−1)」
構成単位(b11−1)は、フルオロオレフィンに基づく構成単位である。
フルオロオレフィンは、オレフィン炭化水素(一般式C2n)の水素原子の1以上がフッ素原子で置換された化合物である。
フルオロオレフィンの炭素原子数は、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましい。
フルオロオレフィンにおけるフッ素原子の数(以下、「フッ素付加数」という。)は、2以上が好ましく、3〜4がより好ましい。フッ素付加数が2以上であれば、塗膜層(B)の耐候性が向上する。フルオロオレフィンにおいては、フッ素原子で置換されていない水素原子の1以上が塩素原子で置換されていてもよい。
具体的なフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(以下、「CTFE」ともいう。)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン及びフッ化ビニルが挙げられる。中でも、生産性や他の単量体との共重合性の点から、テトラフルオロエチレン、CTFEが好ましく、CTFEがより好ましい。
構成単位(b11−1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
「構成単位(b11−2)」
構成単位(b11−2)は、架橋性基を有する単量体(β11−2)に基づく構成単位である。
構成単位(b11−2)としては、架橋性基を有する単量体に基づくものであれば特に制限されないが、例えば、下記単量体(β11−2−1)〜単量体(β11−2−6)に基づく構成単位が挙げられる。
単量体(β11−2−1):水酸基含有単量体。
単量体(β11−2−2):カルボキシル基含有単量体。
単量体(β11−2−3):アルコキシシリル基含有単量体。
単量体(β11−2−4):アミノ基含有単量体。
単量体(β11−2−5):エポキシ基含有単量体。
単量体(β11−2−6):イソシアネート基含有単量体。
共重合体(b11)において、構成単位(b11−2)は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
以下、単量体(β11−2−1)〜単量体(β11−2−6)について詳述する。
単量体(β11−2−1):
単量体(β11−2−1)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル等のエチレングリコールモノビニルエーテル類;ヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシブチルアリルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル類;ヒドロキシエチルビニルエステル、ヒドロキシブチルビニルエステル等のヒドロキシアルキルビニルエステル類;ヒドロキシエチルアリルエステル、ヒドロキシブチルアリルエステル等のヒドロキシアルキルアリルエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類等が挙げられる。
単量体(β11−2−1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(β11−2−2):
単量体(β11−2−2)としては、例えば、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸、2−ヘプテン酸、3−ヘプテン酸、6−ヘプテン酸、3−オクテン酸、7−オクテン酸、2−ノネン酸、3−ノネン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸又は10−ウンデセン酸、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、等の不飽和カルボン酸類;ビニルオキシ吉草酸、3−ビニルオキシプロピオン酸3−(2−ビニルオキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニルオキシエトキシカルボニル)プロピオン酸等の飽和カルボン酸ビニルエーテル類;アリルオキシ吉草酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸等の飽和カルボン酸アリルエーテル類;3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸等のカルボン酸ビニルエーテル類;アジピン酸モノビニル、コハク酸モノビニル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル等の飽和多価カルボン酸モノビニルエステル類;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物等の不飽和ジカルボン酸類又はその分子内酸無水物;イタコン酸モノエステル、マレイン酸モノエステル、フマル酸モノエステル等の不飽和カルボン酸モノエステル類等が挙げられる。
また、単量体(β11−2−2)は、酸無水物基を有する化合物等を、単量体(β11−2−1)と反応させて得ることもできる。
単量体(β11−2−2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(β11−2−3):
単量体(β11−2−3)としては、CH=CHCO(CHSi(OCH、CH=CHCO(CHSi(OC、CH=C(CH)CO(CHSi(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(OC、CH=CHCO(CHSiCH(OC、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCH、CH=C(CH)CO(CHSi(CH(OC)、CH=C(CH)CO(CHSi(CHOH、CH=CH(CHSi(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiC(OCOCH、CH=C(CH)CO(CHSiCH(N(CH)COCH、CH=CHCO(CHSiCH[ON(CH)C、CH=C(CH)CO(CHSiC[ON(CH)C等のアクリル酸エステル類又はメタクリル酸エステル類;CH=CHSi[ON=C(CH)(C)]、CH=CHSi(OCH、CH=CHSi(OC、CH=CHSiCH(OCH、CH=CHSi(OCOCH、CH=CHSi(CH(OC)、CH=CHSi(CHSiCH(OCH、CH=CHSiC(OCOCH、CH=CHSiCH[ON(CH)C、ビニルトリクロロシラン又はこれらの部分加水分解物等のビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類等が挙げられる。
また、単量体(β11−2−3)は、水酸基と反応し結合する官能基とアルコキシシリル基とを有する化合物を、単量体(β11−2−1)と反応させて得ることもできる。該「水酸基と反応し結合する官能基とアルコキシシリル基とを有する化合物」としては、例えば、下式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」という。)が挙げられる。
OCN(CHSiX 3−p ・・・(1)
(前記式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、Xは炭素数1〜5のアルコキシ基、pは1〜3の整数、qは1〜5の整数を示す。)
は、炭素数1〜10の1価の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜5の1価の炭化水素基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。Rにおける1価の炭化水素基の炭素数が10以下であれば、化合物(1)が嵩高くなりすぎることが抑制されるため、後述する硬化剤(b13)により硬化した場合、アルコキシ基(X)の縮合反応が立体障害によって進行しにくくなることを抑制しやすい。そのため、塗膜層(B)の硬化性が良好になり、優れた耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性が得られやすくなる。
Xは、炭素数1〜5のアルコキシ基であり、エトキシ基又はメトキシ基が好ましい。Xの炭素数が5以下であれば、後述する硬化剤(b13)により硬化した場合、該硬化剤(b13)との架橋反応により生じるアルコール成分が揮発しやすくなる。そのため、硬化後の塗膜層(B)中にアルコール成分が残存して、耐熱性、耐水性、防湿性等の耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性が低下することを抑制しやすい。
qは、2〜4がより好ましい。
化合物(1)と単量体(β11−2−1)が有する水酸基とが反応することによりウレタン結合(−C(=O)NH−)が形成され、化合物(1)と水酸基含有単量体(β11−2−1)とから、式−C(=O)NH(CHSiX3−pで表される基を有する単量体(β11−2−3A)(以下、単に「単量体(β11−2−3A)」という。)が得られる。
化合物(1)としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(X=メトキシ基、p=3、q=3)、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(X=エトキシ基、p=3、q=3)、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン(X=メトキシ基、R=メチル基、p=2、q=3)、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン(X=エトキシ基、R=メチル基、p=2、q=3)、3−イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン(X=メトキシ基、R=メチル基、p=1、q=3)、3−イソシアネートプロピルジメチルエトキシシラン(X=エトキシ基、R=メチル基、p=1、q=3)、4−イソシアネートブチルトリメトキシシラン(X=メトキシ基、p=3、q=4)、4−イソシアネートブチルトリエトキシシラン(X=エトキシ基、p=3、q=4)、2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン(X=メトキシ基、p=3、q=2)、2−イソシアネートエチルトリエトキシシラン(X=エトキシ基、p=3、q=2)等が挙げられる。中でも、入手性の点から、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが好ましい。
化合物(1)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(β11−2−1)の水酸基を、化合物(1)のイソシアネート基と反応させてアルコキシシリル基に変換する方法(以下、「化合物(1)変換法」という。)は、化合物(1)のイソシアネート基と反応する活性水素を有していない溶剤(例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、キシレン等。)中で、単量体(β11−2−1)と化合物(1)を反応させることにより行われる。
単量体(β11−2−1)に対する化合物(1)の割合は、水酸基1モルに対して、化合物(1)が0.1〜10モルであることが好ましく、0.5〜5モルであることがより好ましい。水酸基1モルに対して化合物(1)が0.1モル以上であれば、アルコキシシリル基の量が増えることで、後述する硬化剤(b13)により硬化した場合に、塗膜層(B)形成時の硬化が進行しやすくなる。水酸基1モルに対して化合物(1)が10モル以下であれば、未反応の化合物(1)が、塗膜層(B)中に多量に残存することを抑制しやすいため、塗膜層(B)の耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性が向上する。
単量体(β11−2−1)の水酸基と化合物(1)のイソシアネート基との反応は、ほぼ100%の収率で実施できるが、より反応率を高めるために、化合物(1)が過剰な状況で反応させることができる。その場合には、反応生成物から化合物(1)を除去した後に、重合反応を行って共重合体(b11)を得てもよく、反応生成物が未反応の化合物(1)を含んだままの状態で重合反応を行って共重合体(b11)を得てもよい。
単量体(β11−2−1)と化合物(1)との反応の反応温度は、室温〜100℃が好ましく、50〜70℃がより好ましい。また、反応は、窒素雰囲気等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。反応時間は、反応進行状況に応じて適宜変更でき、1〜24時間が好ましく、3〜8時間がより好ましい。反応液中には、反応を促進させる目的で、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタネート化合物等の有機金属触媒を存在させることが好ましい。
また、単量体(β11−2−3)は、カルボキシル基と反応し結合する官能基とアルコキシシリル基とを有する化合物を、単量体(β11−2−2)と反応させて得ることもできる。該「カルボキシル基と反応し結合する官能基とアルコキシシリル基とを有する化合物」としては、例えば、化合物(1)のイソシアネート基をエポキシ基、水酸基、アミノ基に代えた化合物等が挙げられる。
単量体(β11−2−3)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(β11−2−4):
単量体(β11−2−4)としては、CH=CO(CHNH(x=0〜10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH=CHOCO(CHNH(y=1〜10)で示されるアリルアミン類;アミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミド等が挙げられる。
単量体(β11−2−4)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(β11−2−5):
単量体(β11−2−5)としては、グリシジルビニルエーテル、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロへキシルメチルビニルエーテル、4−ビニロキシメチルシクロへキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
単量体(β11−2−5)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体(β11−2−6):
単量体(β11−2−6)としては、2−イソシアネートエチルメタクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、2−イソシアネートエチルエトキシメタクリレート、2−イソシアネートエチルビニルエーテル等が挙げられる。
単量体(β11−2−6)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、架橋性基を有する単量体(β11−2)は、フッ素原子を有していてもよい。すなわち、構成単位(b11−2)を構成する炭素原子に結合する水素原子の1以上がフッ素原子に置換されていてもよい。
架橋性基を有する単量体(β11−2)は、フルオロオレフィンとの交互共重合性に優れ、塗膜層(B)の耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性が向上する点から、単量体(β11−2−1)、単量体(β11−2−2)、単量体(β11−2−3)が好ましく、ヒドロキシアルキルビニルエーテル類、エチレングリコールモノビニルエーテル類、単量体(β11−2−3A)がより好ましく、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、単量体(β11−2−3A)がさらに好ましい。
「構成単位(b11−3)」
構成単位(b11−3)は、フルオロオレフィンに基づく構成単位及び架橋性基を有する単量体(β11−2)に基づく構成単位以外の、単量体(β11−3)に基づく構成単位である。
単量体(β11−3)は、フルオロオレフィン及び架橋性基を有する単量体(β11−2)と共重合可能であり、該架橋性基と結合し得る官能基を有しない単量体(β11−3−1)であることが好ましい。
単量体(β11−3)としては、例えば、オレフィン類、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、アリルエーテル類が挙げられる。
オレフィン類としては、エチレン、イソブチレン等が挙げられ、ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられ、ビニルエーテル類としては、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル等が挙げられ、アリルエーテル類としては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル等が挙げられる。
単量体(β11−3)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
「構成単位の組み合わせ」
共重合体(b11)は、塗膜層(B)の耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性を向上させる点から、構成単位(b11−1)としてCTFEに基づく構成単位と、構成単位(b11−2)として2−ヒドロキシエチルビニルエーテル又は4−ヒドロキシブチルビニルエーテルの少なくとも一方に基づく構成単位と、構成単位(b11−3)としてエチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル及びシクロへキシルビニルエーテルからなる群から選ばれる少なくとも1種に基づく構成単位とを組み合わせて有することが特に好ましい。
「各構成単位の含有量」
共重合体(b11)中の全構成単位の総量に対する構成単位(b11−1)の含有量は、耐候性の観点から、20.0〜80.0モル%が好ましく、25.0〜75.0モル%がより好ましく、30.0〜70.0モル%が特に好ましい。
また、構成単位(b11−1)と構成単位(b11−2)の合計含有量に対する構成単位(b11−1)の含有量は、50.0〜99.5モル%が好ましく、55.0〜99.0モル%がより好ましい。構成単位(b11−1)の前記含有量が前記下限値以上であれば、塗膜層(B)の耐候性が向上する。構成単位(b11−1)の前記含有量が前記上限値以下であれば、後述する硬化剤(b13)により硬化した場合、該硬化剤(b13)との相溶性が良好となり、硬化の際に緻密な塗膜層(B)を形成することができ、塗膜層(B)の耐熱性、防湿性、耐擦傷性及び耐衝撃性が向上する。
共重合体(b11)中の全構成単位の総量に対する構成単位(b11−2)の含有量は、架橋密度を高くすることにより、塗膜層(B)の耐熱性、耐湿性、耐擦傷性及び耐衝撃性を向上させる観点から、20.0〜80.0モル%が好ましく、25.0〜75.0モル%がより好ましく、30.0〜70.0モル%が特に好ましい。
また、構成単位(b11−1)と構成単位(b11−2)の合計含有量に対する構成単位(b11−2)の含有量は、0.5〜50.0モル%が好ましく、1.0〜45.0モル%がより好ましい。構成単位(b11−1)と構成単位(b11−2)の合計含有量に対する構成単位(b11−2)の含有量が前記下限値以上であれば、後述する硬化剤(b13)により硬化した場合、該硬化剤(b13)との架橋密度が高くなり、硬化の際に緻密な塗膜層(B)を形成することができ、塗膜層(B)の耐熱性、防湿性、耐擦傷性及び耐衝撃性が向上する。一方、前記上限値以下であれば、共重合体(b11)の安定性が向上し、後述する硬化剤(b13)を用いる場合、塗膜層(B)の形成の際、ポットライフが向上する。
共重合体(b11)中の全構成単位の合計に対する構成単位(b11−3)の含有量は、0〜50.0モル%が好ましく、0〜45.0モル%がより好ましい。共重合体(b11)中の全構成単位の合計に対する構成単位(b11−3)の含有量が前記上限値以下であれば、塗膜層(B)の耐候性等の効果が低下することがなく、構成単位(b11−3)が有する特性を発揮することができる。
共重合体(b11)中の各構成単位の含有量は、共重合体(b11)を得るための重合反応における、各単量体の仕込み量及び反応条件により制御できる。
共重合体(b11)の重合方法としては、公知のラジカル重合法が採用でき、その重合形態としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。
共重合体(b11)としては、具体的に、商品名「ルミフロン」(旭硝子社製)、商品名「フルオネート」(DIC社製)、商品名「セフラルコート」(セントラル硝子社製)、商品名「ザフロン」(東亜合成社製)、商品名「ゼッフル」(ダイキン工業社製)等の市販のフッ素樹脂が挙げられる。また、必要に応じて市販のフッ素樹脂を化学処理によって架橋性基を導入したものであってもよい。
(ポリフッ化ビニリデン(b12))
ポリフッ化ビニリデン(b12)の質量平均分子量は、5万〜30万が好ましい。
ポリフッ化ビニリデン(b12)は、適宜市販品を用いることができ、例えば、東岳社製「DS203」、Aldrich社製「427144」、Arkema社製「Kynar Aquatec FMA−12」、「Kynar Aquatec ARC」、「Kynar Aquatec 2K」等を用いることができる。
(含フッ素樹脂(b1)の含有量)
塗膜層(B)中の含フッ素樹脂(b1)の含有量は、40.0〜95.0質量%が好ましく、45.0〜90.0質量%がより好ましく、50.0〜80.0質量%がさらに好ましい。含フッ素樹脂(b1)の含有量が前記下限値以上あれば、塗膜層(B)の耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性が向上する。一方、前記上限値以下であれば、塗膜層(B)のライトカバー本体(A)からの剥離やクラックを抑えられる。
(硬化剤(b13))
硬化剤(b13)は、含フッ素樹脂(b1)及び下記任意成分(b3)で述べる他の樹脂(b33)が有する架橋性基に対して反応性を有する官能基を2以上有する化合物である。硬化剤(b13)は、含フッ素樹脂(b1)の架橋性基と反応して架橋構造を形成することで、塗膜層(B)を硬化させる役割を果たす。
硬化剤(b13)としては、例えば、イソシアネート系硬化剤(b13−1)、ブロック化イソシアネート系硬化剤(b13−2)、アミノ樹脂(b13−3)、金属アルコキシド(b13−4)等が挙げられ、含フッ素樹脂(b1)が有する架橋性基の種類に応じて選択される。
具体的には、例えば、含フッ素樹脂(b1)又は他の樹脂(b33)が架橋性基として水酸基を有する場合、イソシアネート系硬化剤(b13−1)、ブロック化イソシアネート系硬化剤(b13−2)、アミノ樹脂(b13−3)等が挙げられる。
また、含フッ素樹脂(b1)又は他の樹脂(b33)が架橋性基としてカルボキシル基を有する場合、アミン系硬化剤、エポキシ系硬化剤等が挙げられる。
また、含フッ素樹脂(b1)又は他の樹脂(b33)が架橋性基としてアルコキシシリル基を有する場合、金属アルコキシド(b13−4)等が挙げられる。
また、含フッ素樹脂(b1)又は他の樹脂(b33)が架橋性基としてアミノ基を有する場合、カルボキシル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。
また、含フッ素樹脂(b1)又は他の樹脂(b33)が架橋性基としてエポキシ基を有する場合、カルボキシル基含有硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤等が挙げられる。
また、含フッ素樹脂(b1)又は他の樹脂(b33)が架橋性基としてイソシアネート基を有する場合、水酸基含有硬化剤、カルボキシル基含有硬化剤等が挙げられる。
以下、イソシアネート系硬化剤(b13−1)、ブロック化イソシアネート系硬化剤(b13−2)、アミノ樹脂(b13−3)、金属アルコキシド(b13−4)について詳述する。
「イソシアネート系硬化剤(b13−1)」
イソシアネート系硬化剤としては、例えば、無黄変ポリイソシアネート、無黄変ポリイソシアネート変性体が挙げられる。
無黄変ポリイソシアネートとしては、具体的には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)等の脂環族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
無黄変ポリイソシアネート変性体としては、具体的には、下記変性体(b13−1−1)〜変性体(b13−1−4)が挙げられる。
変性体(b13−1−1):脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート体。
変性体(b13−1−2):脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートをポリオール又はポリアミンで変性した、−YC(=O)NH−で表される構造を有する変性体。
変性体(b13−1−3):脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート体の一部のイソシアネート基をポリオールで変性した、−YC(=O)NH−で表される構造を有する変性体。
変性体(b13−1−4):変性体(b13−1−1)と変性体(b13−1−2)の混合物からなる変性体。
ただし、−YC(=O)NH−におけるYは、ポリオール又はポリアミンに由来する有機基である。前記ポリオール又はポリアミンが有する官能基数は2〜3が好ましい。
「ブロック化イソシアネート系硬化剤(b13−2)」
ブロック化イソシアネート系硬化剤としては、前記イソシアネート系硬化剤(b13−1)のイソシアネート基がブロック化されたブロック化イソシアネート系硬化剤である。
イソシアネート基のブロック化は、イプシロンカプロラクタム(E−CAP)、メチルエチルケトンオキシム(MEK−OX)、メチルイソブチルケトンオキシム(MIBK−OX)、ピラリジン、トリアジン(TA)等によって行える。
「アミノ樹脂(b13−3)」
アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、スルホアミド樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂等が挙げられる。硬化速度を速くしたい場合には、これらのうちメラミン樹脂が好ましい。
メラミン樹脂としては、具体的には、アルキルエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂等が挙げられる。中でも、メトキシ基及び/又はブトキシ基で置換されたメラミン樹脂が好ましい。
「金属アルコキシド(b13−4)」
金属アルコキシドの金属、半金属としては、Al、Ti、Si等が挙げられる。中でも、塗膜層(B)の耐候性及び耐水性をより高めるには、Siが好ましい。
金属アルコキシドのアルコキシ基としては、炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
金属アルコキシドとしては、下式(2)で表される化合物(以下、「化合物(2)」という。)が好ましい。
(R4−kSi(OR ・・・(2)
(前記式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1〜10の1価の炭化水素基、kは2〜4の整数を示す。)
の1価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。すなわち、Rの1価の炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよい。該置換基はハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
は、メチル基、エチル基、ヘキシル基、デシル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましい。化合物(2)中にRが複数存在する場合、原料の供給性の点から、複数のRが互いに同じであることが好ましい。ただし、複数のRは互いに異なっていてもよい。
の1価の炭化水素基は、炭素数1〜10のアルキル基であり、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。化合物(2)中にRが複数存在する場合、アルコキシ基の反応性が同じになって、塗膜層(B)を均一に形成しやすい点から、複数のRが互いに同じであることが好ましい。ただし、複数のRは互いに異なっていてもよい。
化合物(2)におけるkは2〜4の整数であり、3〜4が好ましい。
化合物(2)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等の4官能性アルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等の3官能性アルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等の2官能性アルコキシシラン等が挙げられる。中でも、硬化速度、及び、塗膜層(B)の耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性の点から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランが好ましい。
化合物(2)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(2)は、部分的に加水分解されて縮合した部分加水分解縮合物として使用してもよい。該部分加水分解縮合物は、前記化合物(2)を、分子中に2以上の加水分解性基(−OR基)が残るように、部分的に加水分解して縮合することで得られる化合物である。該部分加水分解縮合物の全体構造は明らかではないが、−Si−O−結合からなる骨格とアルコキシ基からなるポリ珪酸エステルであって、その骨格は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環状構造であってもよい。
化合物(2)の部分加水分解縮合物は、縮合度が低いほど好ましい。部分加水分解縮合物の縮合度が低いほど、含フッ素樹脂(b1)との相溶性が向上する。また、ライトカバー本体(A)と塗膜層(B)の熱膨張係数がより近くなり、熱による膨張、収縮に起因する塗膜層(B)のライトカバー本体(A)からの剥離やクラックが生じにくくなる。
化合物(2)の部分加水分解縮合物を製造する方法は、特に限定されず、公知の部分加水分解縮合物の製造方法を採用できる。例えば、化合物(2)に、水、酸、及び溶剤の少なくとも1種を加え、部分的に加水分解縮合させる方法が挙げられる。
化合物(2)の部分加水分解縮合物としては、縮合度、構造、アルコキシ基の種類が異なるものが市販されており、例えば、商品名「KR−500」、「KR−510」、「KR−213」(以上、信越化学工業社製)、商品名「MKCシリケートMS51」、「MKCシリケートMS56」(以上、三菱化学社製)、商品名「Mシリケート51」、「エチルシリケート40」、「エチルシリケート45」(以上、多摩化学工業社製)等の有効シリカ分が28〜70質量%程度である縮合物、又は、該縮合物をエタノールもしくはイソプロパノールに溶解した商品名「HAS−1」、「HAS−6」、「HAS−10」(以上、コルコート社製)等が挙げられる。前記「有効シリカ分」とは、製品中に含まれるポリアルキルシリケートを100質量%としたときの、SiO換算としてのシリカの含有量を示す値である。
化合物(2)の部分加水分解縮合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アルミニウムアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド(Al[OCH(CH)等が挙げられる。
チタニウムアルコキシドとしては、例えば、チタニウムブトキサイド(Ti(OC)等が挙げられる。
また、前記アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシドを、分子中に2以上の加水分解性基が残るように部分的に加水分解して縮合させた部分加水分解縮合物を使用してもよい。これらの部分加水分解縮合物は、含フッ素樹脂(b1)との相溶性が向上し、塗膜層(B)のライトカバー本体(A)からの剥離やクラックが生じにくい点から、縮合度が低いほど好ましい。
上述した硬化剤(b13)の中でも、耐候性及び耐水性がより高く、かつ、塗膜層(B)のライトカバー本体(A)からの剥離やクラックが生じにくい、イソシアネート系硬化剤(b13−1)、ブロック化イソシアネート系硬化剤(b13−2)が好ましい。
なお、イソシアネート系硬化剤(b13−1)、ブロック化イソシアネート系硬化剤(b13−2)と組み合わせて含ませる含フッ素樹脂(b1)としては、イソシアネート基とウレタン結合を形成できる架橋性基を有する含フッ素樹脂が好ましく、水酸基、カルボキシル基のいずれか一方又は両方を有する含フッ素樹脂がより好ましい。
{硬化剤(b13)の含有量}
含フッ素樹脂(b1)と硬化剤(b13)の合計含有量に対する硬化剤(b13)の含有量は、5.0〜95.0質量%が好ましく、10.0〜90.0質量%がより好ましく、20.0〜80.0質量%がさらに好ましい。硬化剤(b13)の含有量が前記下限値以上あれば、塗膜層(B)のライトカバー本体(A)からの剥離やクラックが発生するのを防げる。一方、前記上限値以下であれば、塗膜層(B)の耐候性及び耐水性が向上する。
{紫外線吸収剤(b2)}
紫外線吸収剤(b2)としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系化合物等の有機系紫外線吸収剤、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。
塗膜層(B)中の紫外線吸収剤の含有量は、0.01〜10.0質量%が好ましく、0.05〜5.0質量%がより好ましい。塗膜層(B)中の紫外線吸収剤の含有量が前記下限値以上であれば、紫外線によるライトカバー本体(A)の黄変が抑えられることにより、透光性の低下によるライトの輝度の低下が生じにくくなる。一方、前記上限値以下であれば、含フッ素樹脂(b1)を含有することにより付与される塗膜層(B)の耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性が低下しにくくなる。
{任意成分(b3)}
塗膜層(B)は、上述の含フッ素樹脂(b1)及び紫外線吸収剤(b2)に加えて、下記硬化触媒(b31)、顔料(b32)、他の樹脂(b33)及びカップリング剤等の任意成分(b3)を含んでいてもよい。
(硬化触媒(b31))
塗膜層(B)を形成する際に用いる塗料には、硬化反応を促進し、硬化物である塗膜層(B)に良好な化学性能及び物理性能を付与させる目的で、硬化触媒(b31)を含ませるのが好ましい。特に、低温において短時間で硬化させる場合には、硬化触媒(b31)を含有させるのがより好ましい。硬化触媒(b31)が用いられる場合、該硬化触媒(b31)は塗膜層(B)に残存して存在することがある。
硬化触媒(b31)としては、例えば、下記硬化触媒(b31−1)、(b31−2)、(b31−3)が挙げられる。
硬化触媒(b31−1):水酸基を含有する含フッ素重合体とイソシアネート系硬化剤、又はブロック化イソシアネート系硬化剤との架橋反応に使用する硬化触媒。
硬化触媒(b31−2):アルコキシシリル基及び水酸基の少なくとも一方を含有する含フッ素重合体と金属アルコキシドとの架橋反応に使用する硬化触媒。
硬化触媒(b31−3):水酸基を含有する含フッ素重合体とアミノ樹脂との架橋反応に使用する硬化触媒。
硬化触媒(b31−1)としては、オクチル酸錫、トリブチル錫ジラウレート、ジブチルチンジラウレート等の錫触媒が好ましい。
硬化触媒(b31−2)としては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル等の酸性リン酸エステル類;ホウ酸モノエステル、ホウ酸ジエステル等の酸性ホウ酸エステル類;酸性リン酸エステルとアミンとの付加反応物、カルボン酸化合物とアミンとの付加反応物等のアミン付加物類;オクチル酸錫、ジブチルチンジラウレート等の金属エステル類;トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、テトラキス(アセチルアセトネート)ジルコニウム等の金属キレート類;アルミニウムイソプロポキサイド、チタニウムブトキサイド等の金属アルコキシド類等が挙げられる。中でも、塗膜層(B)の硬化性、平滑性の点から、酸性リン酸エステル類が好ましく、塗膜層(B)の硬化性、平滑性及び耐水性等の点から、炭素数1〜8のモノアルキルホスフェート、炭素数1〜8のジアルキルホスフェート、又はその混合物がより好ましい。
硬化触媒(b31−3)としては、ブロック化した酸触媒が好ましい。ブロック化した酸触媒としては、カルボン酸、スルホン酸、リン酸等の各種アミン塩が挙げられる。特に、好ましいものとしては、p−トルエンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸のジエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の高級アルキル置換スルホン酸アミン塩が挙げられる。
硬化触媒(b31)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化触媒(b31)の含有量は、塗膜層(B)を形成する際に用いる塗料の固形分の総量に対して、0.00001〜10質量%が好ましい。硬化触媒(b31)の含有量が0.00001質量%以上であれば、触媒効果が充分に得られやすい。硬化触媒(b31)の含有量が10質量%以下であれば、残存する硬化触媒(b31)が塗膜層(B)に影響することがなく、耐熱性及び耐水性が向上する。
なお、本明細書において塗料の固形分とは、溶剤を除いた塗膜層(B)として残存するものであり、具体的には、含フッ素樹脂(b1)及び紫外線吸収剤(b2)、並びに、必要に応じて硬化触媒(b31)、顔料(b32)、他の樹脂(b33)及びカップリング剤等の任意成分(b3)を意味する。
(顔料(b32))
塗膜層(B)には、塗膜層(B)の着色、補強等を目的として、顔料(b32)を含ませるのが好ましい。
顔料(b32)としては、例えば、着色顔料、体質顔料が挙げられる。
着色顔料は、塗膜層(B)を着色したり、ライトの光によって色を呈するために用いる。着色顔料としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等が挙げられる。
体質顔料は、塗膜層(B)の硬度を向上させ、かつ、塗膜層(B)の厚みを増すために用いる。体質顔料としては、タルク、硫酸バリウム、マイカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
顔料(b32)の含有量は、塗膜層(B)を形成する際の塗料の固形分の総量に対して、50〜500質量%が好ましく、100〜400質量%がより好ましい。顔料(b32)の含有量が前記下限値以上であれば、顔料(b32)の機能が得られやすい。顔料(b32)の含有量が前記上限値以下であれば、塗膜層(B)が砂等の衝撃で割れたり傷付いたりしにくくなり、かつ、塗膜層(B)の耐候性が向上する。
(他の樹脂(b33))
塗膜層(B)は、含フッ素樹脂(b1)に加えて、他の樹脂(b33)を含んでいてもよい。
他の樹脂(b33)としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、シリコーン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂等の非含フッ素樹脂が挙げられる。他の樹脂(b33)は、架橋性基を有し、硬化剤(b13)によって架橋されて硬化する樹脂であってもよい。
他の樹脂(b33)の含有量は、含フッ素樹脂(b1)100質量部に対して0〜200質量部が好ましい。
(他の任意成分)
塗膜層(B)は、上述の含フッ素樹脂(b1)、紫外線吸収剤(b2)、硬化剤(b13)、硬化触媒(b31)、顔料(b32)、他の樹脂(b33)に加えて、他の任意成分を含んでいてもよい。
他の任意成分としては、例えば、付着性向上のためのシランカップリング剤、ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤、超微粉合成シリカ等のつや消し剤、ノニオン系、カチオン系、又はアニオン系の界面活性剤、レベリング剤等が挙げられる。
他の任意成分の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定できる。
{塗膜層(B)の厚み}
塗膜層(B)の厚みは、5〜50μmが好ましい。前記下限値以上であれば、太陽光中の紫外線がライトカバーまで到達するのを防ぐことができ、一方、前記上限値以下であれば、塗膜の表層と内部の硬化度合いに差がなく、均一な塗膜が得られる。
<ライトカバーの製造方法>
本発明のライトカバーは、ライトカバー本体(A)を作製した後、該ライトカバー本体(A)の表面上に塗膜層(B)を形成することにより製造される。
[ライトカバー本体(A)の作製]
ライトカバー本体(A)は、ポリカーボネート樹脂(a1)、光安定剤(a2)、及び必要により任意成分(a3)を溶融混練し、成形することにより得られる。
成形方法としては、特に限定されず、例えば、射出成形法、押出成形法、中空成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法、熱成形等が挙げられる。
{焼成処理}
本発明のライトカバーの製造方法においては、塗膜層(B)の形成前に、成形後のライトカバー本体(A)から、水を充分に除去するために焼成処理を行うのが好ましい。
ポリカーボネート樹脂を合成する際、縮合重合反応により水が生成されるため、ポリカーボネート樹脂製の成形品は水を含むことが多い。この水は、成形後に成形品の表面上に滲み出てくる。滲み出てきた水は、成形品の表面に水シミを発生させ、また、成形品の表面上に形成した塗膜層に剥離を生じさせることもある。その結果、ライトカバーの透光性が低下したり、ポリカーボネート樹脂を含むライトカバー本体(A)に対する塗膜層の保護機能が低下したりする。
焼成処理に用いる焼成炉は、特に制限されず、例えば、密封式焼成炉や連続焼成が可能なトンネル炉等が挙げられる。
加熱源は、特に制限されず、例えば、熱風循環、赤外線加熱、高周波加熱等が挙げられる。中でも、連続生産性の点でトンネル炉、熱の伝わり方が均一であるという点から、熱風循環、赤外線加熱が好ましい。
焼成処理の温度は、100〜250℃が好ましく、120〜220℃がより好ましい。前記下限値以上であれば、水分の除去が充分であり、一方、前記上限値以下であれば、熱による基板の変形や基材の黄変が生じにくい。
焼成処理の時間は、1〜100時間が好ましく、5〜50時間がより好ましい。前記下限値以上であれば、水分の除去が充分であり、一方、前記上限値以下であれば、基材の変形や基材の黄変が生じにくい。
[塗膜層(B)の形成]
塗膜層(B)は、含フッ素樹脂(b1)、紫外線吸収剤(b2)、及び必要により任意成分(b3)を含む塗料を、ライトカバー本体(A)の表面上に塗布し、必要により乾燥及び加熱処理することにより形成される。
該塗料の形態は、溶媒系又はエマルジョン系等の溶液系でもよく、粉体系でもよい。
塗料の形態が溶媒系又はエマルジョン系等の溶液系である場合には、ディスパー等の撹拌機中で必要成分を混合分散して製造する方法が好ましい。粉体系である場合にはあらかじめ各成分を混合した粉末状態の原料を、加熱した押し出し機で混練し、押し出された混練物を冷却後に、粉砕及び分級して、目的の粒子径を有する粉体からなる粉体塗料を得て、さらに該粉体塗料と添加剤を含む粉体系の塗料とするのが好ましい。
塗料が硬化剤(b13)を含む場合には、塗料形態により添加の時期は変更され得る。例えば、焼付け用塗料等の1液タイプの塗料である場合には、共重合体の製造直後に硬化剤(b13)を添加するのが好ましい。硬化剤(b13)とその他の成分が分かれている2液タイプ塗料である場合には、塗布の直前に硬化剤(b13)とその他の成分を混合するのが好ましい。
塗料の形態が溶媒系又はエマルジョン系等の溶液系の場合、塗料は、溶媒として溶剤を用いることができる。使用の際には、溶剤を含む塗料を塗布し、その後、該溶剤を除去することにより塗膜層(B)が形成される。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、ミネラルスピリット、ミネラルターペン等が挙げられ、環境負荷低減の点から、ミネラルスピリット、ミネラルターペンが好ましい。
塗料中の溶剤の含有量は、含フッ素樹脂(b1)の溶解性、塗布する際の粘度、塗布方法等を考慮して適宜決定される。
{塗布方法}
塗布方法としては、例えば、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法、スピンコート法、水上キャスト法、ダイコート法、ラングミュア・プロジェット法、真空蒸着法等が挙げられる。中でも、生産性の点から、ディップコート法が好ましい。
塗布温度は、5〜50℃が好ましい。前記下限値以上であれば、粘度コントロールが容易であり、膜厚のコントロールしやすく、一方、前記上限値以下であれば、粘度コントロールが容易であり、塗料が垂れにくい。
{乾燥}
乾燥方法は、特に制限されず、例えば、自然乾燥、真空乾燥、遠心乾燥、加熱乾燥等が挙げられる。中でも、後述する硬化処理を兼ねて行えることから、加熱乾燥が好ましい。
加熱乾燥に用いる炉は、前述の焼成処理に用いる焼成炉を同様に用いることができる。
加熱乾燥する場合の加熱温度は、55〜200℃が好ましく、60〜180℃がより好ましい。前記下限値以上であれば、塗膜が硬化しやすく、所望の塗膜物性が得られ、一方、前記上限値以下であれば、塗膜の黄変などの変色が生じにくい。
加熱乾燥する場合の乾燥時間は、1分〜10時間が好ましく、3分〜5時間がより好ましい。前記下限値以上であれば、塗膜が硬化しやすく、所望の塗膜物性が得られ、一方、前記上限値以下であれば、塗膜の黄変などの変色や基材のそりなど発生しにくい。
{硬化処理}
塗膜層(B)を形成する際には、硬化処理を行うのが好ましい。
硬化処理の方法としては、熱硬化処理、光硬化処理等が挙げられる。中でも、熱硬化処理が好ましい。
例えば、熱硬化処理は、ライトカバー本体(A)の表面上に塗料を塗布して塗膜層(B)を形成した後、溶剤の除去を目的とした前加熱をし、次いで、塗膜層(B)の硬化を目的とした加熱をすることにより行われる。
溶剤の除去を目的とした前加熱の際の温度は、30〜100℃が好ましく、40〜80℃が特に好ましい。前記下限値以上であれば、溶剤を完全に揮発させることができ、一方、前記上限値以下であれば、溶剤が急激に揮発することなく、塗膜上にわき等の外観異常が発生しにくい。
塗膜層(B)の硬化を目的とした加熱の際の温度は、55〜200℃が好ましく、60〜180℃が特に好ましい。前記下限値以上であれば、塗膜が硬化しやすく、所望の塗膜物性が得られ、一方、前記上限値以下であれば、塗膜の黄変などの変色が生じにくい。
溶剤の除去を目的とした前加熱の時間は、1〜10分が好ましく、1〜5分が特に好ましい。塗膜層(B)の硬化を目的とした加熱の時間は、1〜10分が好ましく、1〜5分が特に好ましい。
なお、溶剤の除去を目的とした加熱は、塗膜層(B)の硬化を目的とした加熱を兼ねてもよい。また、熱硬化処理は、加熱乾燥を兼ねてもよい。
<作用効果>
本発明における塗膜層(B)は、含フッ素樹脂(b1)を含むため、耐久性、耐候性、耐擦傷性及び耐衝撃性に優れ、ライトカバー本体(A)に対する塗膜層(B)の保護機能が長期にわたり維持される。加えて、ライトカバー本体(A)が光安定剤(a2)を含み、塗膜層(B)が紫外線吸収剤(b2)を含むため、紫外線によるライトカバー本体(A)中のポリカーボネート樹脂(a1)の劣化が抑えられる。
また、本発明によれば、塗膜層(B)における含フッ素樹脂(b1)が硬化剤(b13)によって硬化される場合には、ライトカバー本体(A)に対する塗膜層(B)の保護機能がさらに強化される。
したがって、本発明のライトカバーは、太陽光をはじめとする紫外線を多く含んだ光線の環境下で用いられ、かつ、紫外線を多く含んだ高輝度の光を発するライトを使用した場合でも、黄変しにくく、透光性の低下によるライトの輝度の低下が起こりにくい。
以下に実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
<実施例1>
[ライトカバー本体(A)の作製]
ポリカーボネート樹脂(a1)としてビスフェノールA型の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名「ユーピロン(登録商標)S−3000N」、粘度平均分子量;21000)の99.92g、光安定剤(チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、商品名「イルガノックス1010」)の0.05g、熱安定剤(旭電化工業社製、商品名「アデカスタブ2112」)の0.03gを、タンブラーにて20分混合した後、日本製鋼所社製(TEX30HSST)に供給し、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/時間、バレル温度280℃の条件で、混練し、ストランド状に押し出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレトライザーを用いて、ペレット化した。
上述の製造方法で得られたペレットを120℃で5時間乾燥させた後、日本製鋼所製のJ50−EP型射出成形機を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒の条件で射出成形し、ライトカバーの形状に成形した。
焼成炉にて、該成形品を、150℃で、24時間焼成処理した。
以上により、ライトカバー本体(A)が得られた。
[塗膜層(B)の形成]
{含フッ素樹脂(b1)の製造}
内容積2500mLのステンレス鋼製撹拌機付き耐圧反応器に、キシレンの590gと、エタノールの170gと、単量体(β11−2−1)として4−ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)の129gと、単量体(β11−3)としてエチルビニルエーテル(EVE)の206g及びシクロヘキシルビニルエーテル(CHVE)の208gと、炭酸カルシウムの11gと、パーブチルパーピバレート(PBPV)の3.5gとを仕込み、窒素による脱気により液中の溶存酸素を除去した。
次に、構成単位(b11−1)を構成するためのクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の660gを導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。10時間反応させた後、反応器を水冷して反応を停止した。該反応液を室温まで冷却した後、未反応モノマーをパージし、得られた反応液を珪藻土で濾過して固形物を除去した。次に、キシレンの一部とエタノールを減圧留去により除去し、水酸基含有含フッ素重合体(以下、「含フッ素重合体(b11A)」という。)のキシレン溶液(不揮発分60%)を得た。
なお、不揮発分は、140℃で、30分間乾燥した後の残存重量により求められる値である。
含フッ素重合体(b11A)のキシレン溶液(不揮発分60%)の100gに、硬化剤(b13)としてHDIヌレートタイプのポリイソシアネート樹脂(日本ポリウレタン社製、商品名「コロネートHX」)の10.7gと、紫外線吸収剤(b2)としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名「チヌビン384」)の2.5g及びヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名「チヌビン400」)の1.5gと、キシレンの100gと、硬化触媒(b31)としてジブチルチンジラウレート(キシレンで4〜10倍に希釈して3gとしたもの)の3gとをさらに加えて混合し、塗料を得た。
[ライトカバーの製造]
ライトカバー本体(A)の表面に、前記塗料を、硬化後の膜厚が約20μmとなるように塗装し、25℃の恒温室中で1週間養生させることにより硬化塗膜を形成して、ライトカバーを製造した。
<実施例2>
焼成処理を行わない以外は、実施例1と同様にライトカバー本体(A)を作製し、塗膜層(B)を形成して、ライトカバーを製造した。
<比較例1>
紫外線吸収剤(b2)であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を加えない以外は、実施例1と同様にライトカバー本体を作製し、塗膜層(B)を形成して、ライトカバーを製造した。
<比較例2>
紫外線吸収剤(b2)であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、並びに硬化剤(b13)であるポリイソシアネート樹脂を加えない以外は、実施例1と同様にライトカバー本体を作製し、塗膜層(B)を形成して、ライトカバーを製造した。
<評価方法>
実施例1,2及び比較例1,2で製造したライトカバーについて、以下の耐候性試験1,2を行った。
[耐候性試験1:促進耐候性試験]
促進耐候性試験として、Accelerated Weathering Tester(Q−PANEL LAB PRODUCTS社製、モデル:QUV/SE)を用い、5000時間の暴露を行った。
促進耐候性試験後と初期(製造直後)とを比較して、表面材の塗膜剥離の有無、変色(黄変)の有無を、目視により以下の基準で評価した。
{塗膜剥離の有無}
◎:塗膜剥離は観察されなかった。
○:塗膜剥離はほとんど観察されなかった。
×:塗膜剥離が観察された。
{変色の有無}
◎:変色は観察されなかった。
○:若干変色しているようにみえた。
×:変色が観察された。
[耐候性試験2:実暴露試験]
沖縄県那覇市の屋外に、硬化塗膜側に光があたるように設置し、設置直前と、設置開始から1年後とを比較して、塗膜剥離の有無、変色(黄変)の有無を、目視により以下の基準で評価した。
{塗膜剥離の有無}
◎:塗膜剥離は観察されなかった。
○:塗膜剥離はほとんど観察されなかった。
×:塗膜剥離が観察された。
{変色の有無}
◎:変色は観察されなかった。
○:若干変色しているようにみえた。
×:変色が観察された。
[評価結果]
表1に耐候性試験の評価結果を示す。
Figure 2015079701
以上の結果、紫外線吸収剤(b2)を塗料に加えた実施例1,2のライトカバーは、比較例1,2に比べ、塗膜剥離が生じにくく、かつ、変色が生じにくいことがわかった。
焼成処理を行った実施例1のライトカバーは、特に塗膜剥離及び変色が生じにくかった。

Claims (2)

  1. ポリカーボネート樹脂(a1)及び光安定剤(a2)を含むライトカバー本体(A)と、前記ライトカバー本体(A)の外表面及び内表面のうち少なくとも一方に形成され、含フッ素樹脂(b1)及び紫外線吸収剤(b2)を含む塗膜層(B)とを有する、ライトカバー。
  2. 前記塗膜層(B)は前記ライトカバー本体(A)の外表面及び内表面の両方に形成される、請求項1に記載のライトカバー。
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