JP2015078420A - クロムおよび銅の臨界的成分を有する耐酸性及び耐アルカリ性のニッケル−クロム−モリブデン−銅合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】、93℃の70%硫酸に対する耐性及び121℃の50%水酸化ナトリウムに対して耐性を示すとともに、展伸材に加工することが可能な合金の提供
【解決手段】この合金は、重量パーセントで、クロム27〜33、モリブデン4.9〜7.8、銅:3.1〜6.0重量%(クロムが30〜33重量%の場合)または銅4.7〜6.0重量%(クロムが27〜29.9重量%の場合)、鉄最大3.0、マンガン0.3〜1.0、アルミニウム0.1〜0.5、ケイ素0.1〜0.8、炭素0.01〜0.11、窒素最大0.13、マグネシウム最大0.05、希土類元素最大0.05を含み、残部がニッケル及び不純物である。チタンその他のMC型炭化物形成元素を、合金の熱的安定性向上のために添加できる。
【選択図】なし
【解決手段】この合金は、重量パーセントで、クロム27〜33、モリブデン4.9〜7.8、銅:3.1〜6.0重量%(クロムが30〜33重量%の場合)または銅4.7〜6.0重量%(クロムが27〜29.9重量%の場合)、鉄最大3.0、マンガン0.3〜1.0、アルミニウム0.1〜0.5、ケイ素0.1〜0.8、炭素0.01〜0.11、窒素最大0.13、マグネシウム最大0.05、希土類元素最大0.05を含み、残部がニッケル及び不純物である。チタンその他のMC型炭化物形成元素を、合金の熱的安定性向上のために添加できる。
【選択図】なし
Description
本発明は、広く言えば非鉄合金組成物に関するものである。より詳細には、93℃の70%硫酸に対する耐性と121℃の50%水酸化ナトリウムに対する耐性の有用な組合せを有するニッケル−クロム−モリブデン−銅合金に係るものである。
廃棄物管理の分野では、高温の強酸及び高温の強苛性アルカリに耐える金属材料が求められている。この理由は、そのような化学物質が互いを中和するために使用され、その結果、より安定でそれほど有害ではない化合物が得られるからである。工業的に使用される酸のなかで、硫酸は製造量の観点から最も重要である。苛性アルカリの中では、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)が最も一般的に使用される。
高温の強硫酸に対して非常に耐性のあるニッケル合金は存在し、高温の強水酸化ナトリウムに対して非常に耐性のあるニッケル合金も存在するが、両方の化学物質に対して十分な耐性を保有しているものはない。
通常は合金成分の高いニッケル合金が、硫酸及びその他の強酸に耐えるのに使用され、最も耐性が高いものはニッケル−モリブデン合金及びニッケル−クロム−モリブデン合金である。
他方、純粋なニッケル(UNS N02200/Alloy 200)、又は合金成分の低いニッケル合金が、水酸化ナトリウムに対して最も耐性がある。より強度が必要とされる場合、ニッケル−銅合金及びニッケル−クロム合金が使用される。特に合金400(Ni−Cu、UNS N04400)及び600(Ni−Cr、UNS N06600)は、水酸化ナトリウムに対して良好な耐食性を有する。
本発明の合金の発見に際して、2つの重要な環境、即ち93℃(200°F)の70重量%硫酸、および121℃(250°F)の50重量%水酸化ナトリウムを使用した。70重量%硫酸は、金属材料に対して非常に腐食性があることが知られており、カソード反応の変化(還元から酸化へ)の結果、多くの材料(ニッケル−銅合金を含む)の耐性が失われる濃度である。50重量%水酸化ナトリウムは、工業的に最も広く使用される濃度である。内部腐食(この化学物質中でのニッケル合金の分解の主な形態)を増大させるため、したがって後で行われる断面加工及び金相学的試験の測定精度を上げるため、水酸化ナトリウムを使用する場合にはより高い温度を使用した。
Crookらの米国特許第6,764,646号は、硫酸及び湿式プロセス用のリン酸に対して耐性のあるニッケル−クロム−モリブデン−銅合金について記述している。これらの合金は、1.6〜2.9重量%の範囲の銅を必要とするが、これは93℃の70%硫酸及び121℃の50%水酸化ナトリウムに耐えるのに必要とされるレベルよりも低いものである。
Crookらの米国特許第6,280,540号は、C−2000(登録商標)合金として商用化され且つUNS06200に対応した、銅を含有するニッケル−クロム−モリブデン合金を開示する。これらは、本発明の合金よりもモリブデン成分が高く及びクロム成分が低く、前述の腐食特性が不十分である。
Nishiyamaらの米国特許第6,623,869号は、高温でのメタルダスティング用ニッケル−クロム−銅合金について記述しており、この最大銅含量は3重量%である。これは、93℃の70%硫酸及び121℃の50%水酸化ナトリウムに対する耐性に必要な範囲よりも低い。最近では、Nishiyamaらによる米国特許出願公開第2008/0279716号及び米国特許出願公開第2010/0034690号が、メタルダスティング及び浸炭に耐えるその他の合金について記述している。米国特許出願公開第2008/0279716号の合金は、3%以下というモリブデンの制限がある点で、本発明の合金とは異なる。米国特許出願公開第2010/0034690号の合金は、モリブデン含量が2.5%以下であって、ニッケルを主成分とするのではなく鉄を主成分にしている、異なる種類に含まれる。Ueyamaらの米国特許出願公開第2011/0236252号は、還元性である塩酸および硫酸に対して耐食性を有するニッケル−クロム−モリブデン−銅合金を開示している。この合金のクロムの範囲は20〜30%、銅の範囲は2〜5%である。しかし、この出願の実施例合金が含有するのは、クロムは最大23%、銅は最大3.06%であり、この値は、93℃の70%硫酸および121℃の50%水酸化ナトリウムへの耐食性を有するために必要な値よりも小さいものである。
本発明の主な目的は、93℃(200°F)の70%硫酸に対する耐性及び121℃(250°F)の50%水酸化ナトリウムに対する耐性という有用で得難い組合せを示すとともに、展伸材(薄板、板、棒など)に加工することの可能な合金を提供することである。これらの非常に望ましい性質は、ニッケルを主成分として、クロム27〜33重量%、モリブデン4.9〜7.8重量%、及び銅3.1〜6.0重量%を使用することにより、思いがけなく実現された。ただし、クロムが30重量%未満の場合、銅は4.7重量%以上でなければならない。クロムが30〜33重量%の場合には、銅は3.1〜6.0重量%の全範囲で非常に望ましい特性を示す。
溶解プロセス中に酸素及び硫黄の除去を可能にするために、このような合金は、通常は少量のアルミニウム及びマンガン(ニッケル−クロム−モリブデン合金中、それぞれ最大約0.5及び1.0重量%)を含有し、微量のマグネシウム及び希土類元素(最大約0.05重量%)を含有することが可能である。本発明者らの実験では、0.1〜0.5重量%のアルミニウム含有及び0.3〜1.0重量%のマンガン含有により、好結果がもたらされることがわかった。
鉄は、同じ炉で溶解した他のニッケル合金からの汚染により、合金中の不純物に最もなり易い。最大で2.0重量%又は3.0重量%が、このニッケル−クロム−モリブデン合金に典型的であり、鉄の添加を必要としない。本発明者らの実験では、最大3.0重量%の鉄含量が許容されることを見出した。
炉の汚染及び投入材料の不純物により、この合金にはその他の金属不純物を含む可能性がある。本発明の合金は、ニッケル−クロム−モリブデン合金が通常有する不純物を許容できるはずである。また、このような高クロム含有量の合金は、窒素吸収することなく大気溶解することができない。したがって、高クロム−ニッケル合金では、窒素元素を最大0.13重量%許容することが普通である。
炭素含有量に関し、本発明者らの実験による好結果の合金は、0.01〜0.11重量%含有していた。驚くべきことに、炭素含有量が0.002重量%の合金Gは、展伸材に加工することができなかった。したがって0.01〜0.11重量%の炭素範囲が好ましい。
ケイ素に関しては、0.1〜0.8重量%の範囲が好ましいが、それはこの範囲の両端で満足な性質が得られるという事実に基づく。
本合金の高温でのミクロ組織の安定性が、非常に安定なMC型の炭化物形成を促すことにより向上する。
本合金の高温でのミクロ組織の安定性が、非常に安定なMC型の炭化物形成を促すことにより向上する。
上記にて定義された組成範囲の発見には、様々なクロム成分、モリブデン成分、及び銅成分を有する広範なニッケル主成分組成物に関する研究が必要であった。これらの組成物を表1に示す。比較のため、70%硫酸又は50%水酸化ナトリウムに耐えるのに使用される商用合金の組成を表1に含める。
実験用合金は、真空誘導溶解(VIM)によって、次いでエレクトロ・スラグ再溶解(ESR)によって作製された。このときのヒート・サイズは13.6kgとした。微量のニッケル−マグネシウム及び/又は希土類をVIM炉内投入物に添加することにより、実験用合金の硫黄及び酸素含量を最小限に抑えた。ESRインゴットは均質化され、熱間鍛造され、熱間圧延されて厚さ3.2mmの試験用の板にされた。驚くべきことに、3種の合金(G、K、及びL)には、鍛造中にかなりひどい亀裂が入ったため、熱間圧延を行って試験用の板材にすることができなかった。必要な試験用の厚さに首尾よく圧延された合金を、熱処理試験に供して、(金属組織学的手段により)最も適切な熱処理を決定した。1121℃〜1149℃で15分間経た後に、水焼入れを行うことが、全ての場合に適切であることが決定された。商用に製造された合金は、製造業者により推奨された条件、いわゆる「ミル・アニール」条件により全て試験された。
腐食試験は、25.4×25.4×3.2mmの測定サンプルに関して行った。腐食試験の前に、全てのサンプルの表面を、120グリット紙を使用して手作業で研磨することにより、耐食性に影響を及ぼし得る表面層及び欠陥を全て取り除いた。硫酸中の試験を、ガラス・フラスコ/凝縮器システムで実施した。水酸化ナトリウム中の試験は、ガラスが水酸化ナトリウムにより侵食されるので、TEFLON(登録商標)システムで実施した。硫酸試験を96時間行い、24時間ごとに中断してサンプルを計量できるようにした。他方、水酸化ナトリウム試験は720時間行なった。それぞれの合金の2つのサンプルを、それぞれの環境で試験し、結果の平均をとった。
硫酸では、分解の主な形態は均一腐食であり、平均腐食速度は、重量損失測定値から計算した。水酸化ナトリウムでは、分解の主な形態は内部腐食であり、これは均一な腐食か、又は内部「脱合金」の攻撃的な形態のいずれかである。脱合金は、一般に、合金からのある元素(例えば、モリブデン)が浸出することを指し、この浸出によってしばしば機械的性質も劣化する。最大内部腐食は、サンプルを切断し且つそれらを金属組織学的に研究することによってのみ測定できる。表2に示される値は、合金断面で測定された最大内部侵入(最大浸透深さ)を表す。
腐食速度が許容できるか否かの判断は、合格/不合格の基準として0.45mm/y(硫酸の場合は均一腐食、水酸化ナトリウムの場合は最大内部侵入)を採用した。0.45mm/y以上の腐食速度を示す合金は許容できないと考えられる。この基準の根拠は、等腐食図(iso−corrosion diagram)である。この図は、合金が、様々な化学薬品中で特定の温度および濃度で使用できるか否かを決定するために産業界で用いられている。対象の合金の幾つかの試料またはテスト板が試験されて、各試験の腐食速度がプロットされる。そして、点データに線をあてはまる。この図では、ランダムなあるいは系統的な変動を考慮するために、0.45〜0.55mm/yの腐食速度がしばしばプロットライン0.5mm/yとされる。多くの用途では、0.5mm/y未満の腐食速度であれば使用できると考えられている。しかし、0.45〜0.55mm/yの腐食速度の合金は0.5mm/yの腐食速度を有すると考えられているので、われわれは、0.45mm/y未満でなければならないと結論付け、本発明合金に要求される特性として設定した。
表2から、本発明の合金は、93℃で70%硫酸中では工業的に使用可能な十分に低い速度で腐食し、121℃の50%水酸化ナトリウム中では0.5mm/yよりも著しく低い値に相当する内部侵入速度を示すことが明らかである。興味深いことに、モリブデン含有量の高いニッケル−クロム−モリブデン合金(C−4、C−22、C−276、及びC−2000)とは異なり、本発明の合金では、脱合金型の腐食形態を示すものはなかった。銅3.1〜6.0重量%という要件、およびクロムが30重量%未満の場合は銅は4.7重量%以上でなければならないという条件は、特に合金A、B、C、E、Nの結果に基づいている。銅とクロムとの相関は、70%硫酸中での保護皮膜へのそれぞれの影響によるもののようである。例えば、クロムは、酸化性の酸中でクロムリッチな不動態皮膜を金属表面に形成させ、銅は金属表面にメッキすることで濃硫酸から保護することが知られている。銅含量がより高い合金K及びLは、鍛造することができなかった。
クロムの範囲は、合金A及びO(含有量はそれぞれ27及び33重量%)の結果に基づいている。モリブデンの範囲は、合金H及びA(含有量はそれぞれ4.9及び7.8重量%)に関する結果、および4.9重量%よりも低いモリブデン含量ではニッケル−クロム−モリブデン−銅合金の一般腐食に対して十分な耐性をもたらさないことを示す米国特許第6,764,646号の示唆に基づく。これは、その他の化学物質を含有する系を中和するのに重要である。
驚くべきことに、鉄、マンガン、アルミニウム、ケイ素、及び炭素が無い場合(合金G)、合金は鍛造できなかった。鉄の影響をさらに決定するために、意図的に鉄の添加のない合金Pを溶解した。合金Pが首尾よく熱間鍛造され且つ熱間圧延されたという事実により、これら合金の首尾よく行われる展伸加工には、マンガン、アルミニウム、ケイ素、及び炭素の存在が重要であることが示される。さらに、この合金が両方の腐食媒体中で優れた性能を示したので、合金Pに鉄が存在しないことは、腐食の観点から有害なことではない。
合金元素の作用に関する観察は、下記の通りである。
クロム(Cr)は、酸化性の酸中でニッケル合金の性能を改善することが知られている、主要な合金元素である。クロムは、モリブデン及び銅と(特別な関係で)組み合わせることにより、27〜33重量%の範囲で、70%硫酸及び50%水酸化ナトリウムの両方に対して所望の耐食性をもたらすことが示された。
モリブデン(Mo)も、酸を還元する際にニッケル合金の耐食性を向上させることが知られている主要な合金元素である。4.9〜7.8重量%の範囲では、モリブデンは、70%硫酸及び50%水酸化ナトリウムにける本発明の合金の並外れた性能に寄与する。
3.1〜6.0重量%の銅と、前述の成分のクロム及びモリブデンとを組み合わせると、93℃の70%硫酸及び121℃の50%水酸化ナトリウムの酸及びアルカリに対し、まれに見る且つ予想外の耐性を有する合金が得られる。
鉄(Fe)は、ニッケル合金の一般的な不純物である。最大3.0重量%の鉄含有量が、本発明の合金に許容されることがわかった。
マンガン(Mn)は、このような合金中の硫黄を最小限に抑えるのに使用され、0.3〜1.0重量%の含有量が、(加工及び性能の観点から)好結果の合金をもたらすことがわかった。
アルミニウム(Al)は、そのような合金中の酸素を最小限に抑えるのに使用され、0.1〜0.5重量%の含有量は、好結果の合金をもたらすことがわかった。
ケイ素(Si)は、耐食性ニッケル合金に通常は必要とされず、アルゴン−酸素の脱炭中に導入される(空気中で溶解した合金の場合)。少量のケイ素(0.1〜0.8重量%の範囲)は、鍛造性を確実にするために、本発明の合金に必須であることがわかった。
同様に炭素(C)は、耐食性ニッケル合金には通常は必要とされないが、炭素アーク溶解中に導入される(空気中で溶解した合金の場合)。少量の炭素(0.01〜0.11重量%の範囲)は、鍛造性を確実にするために、本発明の合金に必須であることがわかった。
微量のマグネシウム(Mg)及び/又は希土類元素は、望ましくない元素、例えば硫黄及び酸素を抑制するために、そのような合金中にしばしば含まれる。したがって、本発明の合金中には、それぞれ最大0.05重量%が通常好ましい。
窒素(N)は、溶融状態にある高クロム−ニッケル合金によって容易に吸収される。この種類の合金中に最大0.13重量%を許容することが普通である。
このような合金に生じ得るその他の不純物として、先に使用した炉のライニングからの汚染又は原材料から汚染により、コバルト、タングステン、硫黄、リン、酸素、及びカルシウムが含まれる。
(溶接又は高温使用により経験し得るような)高温でのミクロ組織の安定性が望まれる場合、MC型炭化物の形成を促進させる元素を意図的に少量添加することができる。そのような元素には、チタン、ニオブ(コロンビウム)、ハフニウム、及びタンタルがある。使用できるが、その他のそれほど望ましくないバナジウムなどのMC炭化物形成物質がある。MC型炭化物は、クロム及びモリブデンを含有するニッケル合金で通常見られるM7C3、M6C、及びM23C6炭化物よりも、はるかに安定している。確かに、粒界での炭化物の析出量の制御に適切であると考えられるほどの炭素が結合されるように、これらのMC型炭化物形成元素量を制御することが可能であるべきである。事実、MC型炭化物形成物質量は、炭素含有量の実時間測定に応じて溶解プロセス中に微調整することができた。
合金が、より低い温度での耐水溶液腐食性が求められる場合、MC型炭化物形成物質量は、検出できる粒界炭化物析出を回避できる炭素量に合わせることができる(いわゆる「安定化」構造)。
しかし、2つの潜在的な問題がある。第1は、窒素が炭素と競合し易いことであり、その結果、同じ活性な形成元素(例えば、チタン)の窒化物又は炭化物が生じることになる。したがって、この元素はより多い量が必要である(窒素含有量の実時間測定に基づいて計算することができる)。第2は、γ−プライム(チタンを用いる)相又はγ−ダブル・プライム(ニオブを用いる)相が意図せずに形成されることである。しかし、これらの元素が炭化物、窒化物、又は炭窒化物の形で結合することを確実にするために、冷却とその後に続く処理の順序を調節することが可能である。
窒素の作用を無視しチタンを例として使用すると、全ての炭素をMC型炭化物の形に結合させるには、原子的調整が必要になる。チタンの原子量は、炭素の約4倍であるので(47.9対12.0)、2つの元素の重量パーセントに反映される。したがって、水溶液腐食に使用される合金の安定化した形態は、炭素0.05重量%及びチタン0.20重量%を含有できる。高温使用に関する場合には、二次的な粒界析出量を制御して耐クリープ性を向上させるために、炭素0.05重量%及びチタン0.15重量%を含有できる。例えば不純物量が0.035重量%の窒素では、この元素との結合にさらに0.12重量%のチタンが必要になると考えられる(窒素の原子量が14.0である)。したがって、炭素含有量が0.05重量%の場合、水腐食使用に関して0.32重量%のチタンが必要になり、高温使用に関しては0.27重量%のチタンが必要になると考えられる。したがって、炭素量が0.11重量%であり、窒素不純物量が0.035重量%の場合、0.56重量%のチタンが水溶液腐食使用に必要と考えられる。
ニオブ、ハフニウム、及びタンタルの原子量は、それぞれ92.9、178.5、及び181.0である。したがって、同じ効果を得るために必要なニオブ含有量は、チタンの約2倍である。同じ効果を得るために必要なハフニウム又はタンタルの含有量は、チタンの約4倍である。
したがって、水溶液腐食使用に対する本合金のニオブ安定化形態は、炭素0.05重量%及びニオブ0.40重量%(合金が窒素を全く含有しない場合)を含有する可能性があり、窒素不純物量が0.035重量%の場合にはニオブは0.64重量%である。炭素量が0.11重量%であり窒素不純物量が0.035重量%である場合、水溶液腐食には1.12重量%のニオブが必要と考えられる。高温使用用の合金は、窒素不純物が存在しない場合、炭素0.05重量%及びニオブ0.30重量%を含有すると考えられる。
同様に、水溶液腐食用の合金のハフニウム安定化形態は、炭素0.05重量%及びハフニウム0.80重量%(合金が窒素を全く含有しない場合)を含有すると考えられ、窒素不純物量が0.035重量%の場合はハフニウムが1.28重量%である。炭素量が0.11重量%であり、窒素不純物量が0.035重量%の場合、2.24重量%のハフニウムが水溶液腐食使用に必要と考えられる。高温使用の合金は、窒素不純物が存在しない場合、炭素0.05重量%及びハフニウム0.60重量%を含有すると考えられる。
同様に、水溶液腐食使用の合金のタンタル安定化形態は、炭素0.05重量%及びタンタル0.80重量%を含有する可能性があり(合金が窒素を全く含有しない場合)、窒素不純物量が0.035重量%の場合、タンタルは1.28重量%である。炭素量が0.11重量%であり、窒素不純物量が0.035重量%では、2.24重量%のタンタルが水溶液腐食使用で必要とされると考えられる。高温使用の合金は、窒素不純物が存在しない場合、炭素0.05重量%及びタンタル0.60重量%を含有すると考えられる。
その他の高クロム−ニッケル合金に関する従来技術(米国特許第6,740,291号、Crook)によれば、この種類の合金中のコバルト及びタングステンの不純物量は、それぞれ5重量%及び0.65重量%まで許容できることが示されている。硫黄(最大0.015重量%)、リン(最大0.03重量%)、酸素(最大0.05重量%)、及びカルシウム(最大0.05重量%)に関して許容される不純物量は、米国特許第6,740,291号で定義されている。これらの不純物の限度は、本発明の合金に適切と考えられる。
試験をしたサンプルが展伸された薄板の形態であるとしても、この合金は、板、棒材、管材、及び線材などのその他の展伸材形態、並びに鋳造形態及び粉末冶金形態に匹敵する性質を示すはずである。また本発明の合金は、酸及びアルカリの中和が行われる用途に限定されない。確かにこの合金には、化学プロセス工業において非常に広範な用途があり、高クロムであり銅が存在する場合には、メタルダスティングに耐えるのに有用であるはずである。
これらの合金の耐食性を最大限にすると共にそれらのミクロ組織安定性(したがって展伸加工が容易)を最適化することが望まれる場合、理想的な合金組成は、クロム31重量%、モリブデン5.6重量%、銅3.8重量%、鉄1.0重量%、マンガン0.5重量%、アルミニウム0.3重量%、ケイ素0.4重量%、及び炭素0.03〜0.07重量%を含み、残部がニッケル、窒素、不純物、及び微量のマグネシウム及び希土類元素(硫黄及び酸素の抑制に使用される場合)を含むと予想される。事実、この好ましい公称組成を有する2種の合金Q及びRは首尾よく溶解でき、熱間鍛造及び圧延されて板材になった。表2からわかるように、合金Q及びRは共に、選択された腐食媒体中で優れた耐食性を示した。さらに、この目標とされる公称組成の場合、合金Sの生産規模(13,608kg)でも溶解でき首尾よく圧延され、それによって合金が優れた成形性を有することが確認された。この合金は、93℃の70%硫酸、および121℃の50%水酸化ナトリウムに対する望ましい腐食特性を有している。対応する(溶解工場での実施に標準的な)範囲は、クロム30〜33重量%、モリブデン5.0〜6.2重量%、銅3.5〜4.0重量%、鉄最大1.5重量%、マンガン0.3〜0.7重量%、アルミニウム0.1〜0.4重量%、ケイ素0.1〜0.6重量%、及び炭素0.02〜0.10重量%であり、残部はニッケル、窒素、不純物、及び微量のマグネシウム及び希土類(硫黄及び酸素の抑制に使用される場合)であると考えられる。
Claims (14)
- 93℃の70%硫酸及び121℃の50%水酸化ナトリウムに対して耐性を有するニッケル−クロム−モリブデン−銅合金であって、93℃の70%硫酸中で0.45mm/y未満の腐食速度を有し、121℃の50%水酸化ナトリウム中で0.45mm/y未満の腐食速度に相当する最大内部侵入深さを有し、前記ニッケル−クロム−モリブデン−銅合金が、
クロム:27〜33重量%、
モリブデン:4.9〜7.8重量%、
クロムが30〜33重量%の場合には銅:3.1〜6.0重量%、クロムが27〜29.9重量%の場合、銅は4.7〜6.0重量%、
鉄:最大3.0重量%、
マンガン:0.3〜1.0重量%、
アルミニウム:0.1〜0.5重量%、
ケイ素:0.1〜0.8重量%、
炭素:0.01〜0.11重量%、
窒素:最大0.13重量%、
マグネシウム:最大0.05重量%、
希土類元素:最大0.05重量%、
チタン:最大0.56重量%、
ニオブ:最大1.12重量%、
タンタル:最大2.24重量%、
ハフニウム:最大2.24重量%、
残部であるニッケル及び不純物
から本質的になる、ニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。 - 前記ニッケル−クロム−モリブデン−銅合金が、薄板、板、棒、線材、管、パイプ、及び鍛造物からなる群から選択された加工形態である、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- 前記ニッケル−クロム−モリブデン−銅合金が鋳造形態である、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- 前記ニッケル−クロム−モリブデン−銅合金が粉末冶金形態である、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- クロム:30〜33重量%、
モリブデン:5.0〜6.2重量%、
銅:3.5〜4.0重量%、
鉄:最大1.5重量%、
マンガン:0.3〜0.7重量%、
アルミニウム:0.1〜0.4重量%、
ケイ素:0.1〜0.6重量%、
炭素:0.02〜0.10重量%、
から本質的になる、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。 - クロム:31重量%、
モリブデン:5.6重量%、
銅:3.8重量%、
鉄:1.0重量%、
マンガン:0.5重量%、
ケイ素:0.4重量%、
アルミニウム:0.3重量%
炭素:0.03〜0.07重量%、
残部であるニッケル、窒素、不純物、及び微量のマグネシウム
から本質的になる、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。 - クロム:31重量%、
モリブデン:5.6重量%、
銅:3.8重量%、
鉄:1.0重量%、
マンガン:0.5重量%、
ケイ素:0.4重量%、
アルミニウム:0.3重量%、
炭素:0.03〜0.07重量%、
残部であるニッケル、窒素、不純物、微量のマグネシウム及び微量の希土類元素
から本質的になる、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。 - 少なくとも1つのMC型炭化物形成元素を含有する、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- 前記MC型炭化物形成元素が、チタン、ニオブ、タンタル及びハフニウムから選択される、請求項8に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- 0.20〜0.56重量%のチタンを含有する、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- 0.30〜1.12重量%のニオブを含有する、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- 0.60〜2.24重量%のタンタルを含有する、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- 0.60〜2.24重量%のハフニウムを含有する、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
- 前記不純物が、コバルト、タングステン、硫黄、リン、酸素、及びカルシウムからなる群から選択される、請求項1に記載されたニッケル−クロム−モリブデン−銅合金。
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