JP2015077580A - カーボン担持触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来よりも優れた触媒性能を有するカーボン担持触媒を提供する。
【解決手段】パラジウム含有粒子、及び当該パラジウム含有粒子を被覆する白金含有最外層を備える触媒微粒子、並びに、当該触媒微粒子を担持したカーボン担体を備えるカーボン担持触媒であり、(1)前記パラジウム含有粒子が担持されたカーボン担体を準備し、(2)銅アンダーポテンシャル法により前記パラジウム含有粒子に銅単原子層を析出させ、(3)前記銅単原子層を前記白金含有最外層に置換することによる前記触媒微粒子の合成を経て製造され、前記カーボン担持触媒とアルカリ溶液との混合物中に酸溶液を滴下し電位を測定する電位差滴定法により得られる滴定曲線において、前記電位が0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上であることを特徴とする、カーボン担持触媒。
【選択図】図5

Description

本発明は、従来よりも優れた触媒性能を有するカーボン担持触媒に関する。
燃料電池のアノード及びカソードの電極触媒として、中心粒子及び当該中心粒子を被覆する最外層を備える構造(いわゆるコアシェル構造)を有する触媒微粒子に関する技術が知られている。当該触媒微粒子においては、中心粒子に比較的安価な材料を用いることにより、触媒反応にほとんど関与しない粒子内部のコストを低く抑えることができる。
特許文献1には、溶液中で白金錯陽イオンに解離する白金錯塩と、担体に担持されたパラジウムとを混合する工程を含む、白金で被覆されたパラジウムからなるコアシェル触媒の製造方法が記載されている。当該文献によれば、白金による被覆率の高い白金/パラジウムコアシェル触媒を提供できるとされている。
特開2012−120949号公報
特許文献1の実施例においては、パラジウム表面における白金の被覆率を赤外分光分析(IR)により測定し、白金被覆率を算出している。しかし、本発明者らの検討によれば、白金被覆率に加えて、触媒表面の不純物も、触媒活性に影響を及ぼすことが明らかとなった。また、従来このような触媒表面の不純物の影響については、測定が容易で明確な指標が存在しなかった。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、従来よりも優れた触媒性能を有するカーボン担持触媒を提供することを目的とする。
本発明のカーボン担持触媒は、パラジウム含有粒子、及び当該パラジウム含有粒子を被覆する白金含有最外層を備える触媒微粒子、並びに、当該触媒微粒子を担持したカーボン担体を備えるカーボン担持触媒であり、(1)前記パラジウム含有粒子が担持されたカーボン担体を準備し、(2)銅アンダーポテンシャル法により前記パラジウム含有粒子に銅単原子層を析出させ、(3)前記銅単原子層を前記白金含有最外層に置換することによる前記触媒微粒子の合成を経て製造され、前記カーボン担持触媒とアルカリ溶液との混合物中に酸溶液を滴下し電位を測定する電位差滴定法により得られる滴定曲線において、前記電位が0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上であることを特徴とする。
本発明における前記滴定曲線において、前記電位が0.080〜0.120V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上であることが好ましい。
本発明における前記滴定曲線において、前記電位が0.050〜0.150V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上であることがより好ましい。
本発明における前記滴定曲線において、前記電位が−0.020〜0.020V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が2(dV/d(mL/m))以上であることが好ましい。
本発明において、前記アルカリ溶液は、0.1M KNO水溶液及び0.5M KOH水溶液を混合して得られるアルカリ水溶液と、99.5%エタノールとの混合溶液であり、前記アルカリ水溶液のpHは12であり、前記アルカリ溶液中における水とエタノールのモル比は、水:エタノール=4:1であることが好ましい。
本発明において、前記電位差滴定法を実施する際の前記アルカリ溶液の液温が、25℃であることが好ましい。
本発明において、アルカリ溶液を不活性ガスによりバブリングすることが好ましい。
本発明において、前記酸溶液は0.05M硫酸であることが好ましい。
本発明によれば、少なくとも0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)の範囲内における前記電位の変化量が十分大きいため、電位差滴定法において滴下する酸溶液と反応するカーボン担持触媒表面の不純物や官能基が従来よりも少なく、その結果、従来のコアシェル触媒を含むカーボン担持触媒と比較して優れた触媒性能を有する。
滴定装置100の断面模式図である。 本発明における触媒懸濁液の調製から滴定曲線の解析までの典型例を示すフローチャートである。 実施例1及び比較例1の電位差滴定曲線のグラフである。 実施例2、比較例2、及び比較例3の電位差滴定曲線のグラフである。 実施例1−実施例2及び比較例1−比較例3のカーボン担持触媒における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量を示したグラフであり、横軸の範囲を0.050〜0.150V(vs.Ag/AgCl)としたものである。 実施例1−実施例2及び比較例1−比較例3のカーボン担持触媒における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量を示したグラフであり、横軸の範囲を0.080〜0.120V(vs.Ag/AgCl)としたものである。 実施例1−実施例2及び比較例1−比較例3のカーボン担持触媒における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量を示したグラフであり、横軸の範囲を0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)としたものである。 図5を縦軸方向に拡大したグラフである。 図6を縦軸方向に拡大したグラフである。 図7を縦軸方向に拡大したグラフである。 実施例1及び比較例1のカーボン担持触媒における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量を示したグラフであり、横軸の範囲を−0.02〜0.02V(vs.Ag/AgCl)としたものである。 実施例1及び比較例1の膜・電極接合体のセル電圧を比較した棒グラフである。 実施例2、比較例2、及び比較例3のカーボン担持触媒の質量活性を比較した棒グラフである。
本発明のカーボン担持触媒は、パラジウム含有粒子、及び当該パラジウム含有粒子を被覆する白金含有最外層を備える触媒微粒子、並びに、当該触媒微粒子を担持したカーボン担体を備えるカーボン担持触媒であり、(1)前記パラジウム含有粒子が担持されたカーボン担体を準備し、(2)銅アンダーポテンシャル法により前記パラジウム含有粒子に銅単原子層を析出させ、(3)前記銅単原子層を前記白金含有最外層に置換することによる前記触媒微粒子の合成を経て製造され、前記カーボン担持触媒とアルカリ溶液との混合物中に酸溶液を滴下し電位を測定する電位差滴定法により得られる滴定曲線において、前記電位が0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上であることを特徴とする。
上述したように、コアシェル触媒について、例えばシェル金属によるコア金属表面への被覆の程度や、触媒微粒子及びカーボン担体表面の表面物性と触媒性能との関係を直接評価できる方法は知られておらず、いかに改善すればコアシェル触媒がより高い活性を発揮するかについて、明確な指標は知られていなかった。
コアシェル触媒の完成度を評価するものとして、例えば、シェル金属によるコア金属への被覆率が知られている。この被覆率を評価する手法として、従来から、コアシェル触媒の電気化学的表面積(Electrochemical Surface Area;以下、ECSAと称する場合がある)の測定が公知である。ECSAの測定方法としては、サイクリックボルタモグラム(以下、CVと称する場台がある)の波形に基づき算出する方法が広く知られている。ECSAは、単位質量当たりに規格化された表面積(cm/g)である。よって、あるECSAを有する電極触媒の全体の表面積は、ECSAの値に、電極触媒の総質量を乗じることによって算出できる。また、電極触媒の平均粒径等、何らかの定義に服する粒子サイズを測定し、当該粒子サイズに基づき当該電極触媒の表面積を算出することも広く行われている。
ところで、従来の白金触媒及び白金合金触媒においては、触媒全体が均一な元素組成を有する。そのため、触媒表面の凹凸の有無にかかわらず、CV等の測定結果を用いて触媒の表面積を算出することができた。しかし、従来のコアシェル触媒の最表面は、シェルにより被覆された部分と、コアが露出している部分(すなわちシェルの欠陥部分)とで構成されている。そのため、コアシェル触媒のCV波形は、シェルに起因する波形とコアが露出している部分に起因する波形とが合成されたものである。コアシェル触媒そのもののCV波形に基づきECSAを算出したとしても、コアシェル触媒のシェル部のみの表面積を当該ECSAに基づき算出することはできない。したがって、コアシェル触媒の被覆率を定量することは、極めて困難であると考えられる。
また、通常、コアシェル触媒はそれのみでは電極触媒として使用されず、カーボン材料等の担体に担持させて使用されるのが一般的である。したがって、コアシェル触媒の触媒活性は、カーボン担体に担持させた状態で評価するのが理に適う。上記コアの露出部分と同様に、カーボン担体表面の状態も、触媒活性に多大な影響をもたらしている。しかし、カーボン担体表面の状態については、CV波形の示す電気二重層領域以外に有用な情報は得られず、従来の電気化学測定においては検出することができなかった。
本発明者らは、鋭意努力の結果、コアシェル構造を有する触媒微粒子を含むカーボン担持触媒の完成度等を示す指標として、白金含有最外層により被覆される部分のみならず、コアとなるパラジウム含有粒子が露出した部分や、触媒微粒子を担持するカーボン担体表面についての情報も欠かせないことを見出し、カーボン担持触媒表面の物性を直接評価可能な手法の探索を行った。その結果、本発明者らは、電位差滴定法に基づき触媒微粒子の完成度を正確に評価できる方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明におけるパラジウム含有粒子とは、パラジウム粒子及びパラジウム合金粒子の総称である。
後述するように、パラジウム含有粒子を被覆する最外層は白金を含む。白金は、触媒活性、特に酸素還元反応(ORR:Oxygen Reduction Reaction)活性に優れている。また、白金の格子定数は3.92Åであるのに対し、パラジウムの格子定数は3.89Åであり、パラジウムの格子定数は白金の格子定数の±5%の範囲内の値であることから、白金−パラジウム間で格子不整合が生じず、白金によるパラジウムの被覆が十分に行われる。
本発明におけるパラジウム含有粒子は、コストを抑える観点から、白金含有最外層に用いられる後述の材料よりも安価な金属材料を含むことが好ましい。さらに、パラジウム含有粒子は、電気的導通がとれる金属材料を含むことが好ましい。
以上の観点から、本発明におけるパラジウム含有粒子は、パラジウム粒子、又は、コバルト、イリジウム、ロジウム若しくは金等の金属とパラジウムとの合金粒子であることが好ましい。パラジウム合金粒子を用いる場合には、当該パラジウム合金粒子にはパラジウムの他に金属が1種類のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
パラジウム含有粒子の平均粒径は、後述する触媒微粒子の平均粒径以下であれば、特に限定されない。なお、パラジウム含有粒子1つ当たりのコストに対する表面積の割合が高いという観点から、パラジウム含有粒子の平均粒径は、好ましくは30nm以下、より好ましくは2〜10nmである。
なお、本発明におけるパラジウム含有粒子、触媒微粒子、及びカーボン担持触媒の平均粒径は、常法により算出される。パラジウム含有粒子、触媒微粒子、及びカーボン担持触媒の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000〜1,000,000倍のTEM画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
本発明における触媒微粒子表面の白金含有最外層は、触媒活性が高いことが好ましい。ここでいう触媒活性とは、燃料電池用触媒としての活性、特に酸素還元反応(ORR)活性のことを指す。
白金含有最外層は、白金のみを含んでいてもよいし、白金以外にイリジウム、ルテニウム、ロジウム、又は金を含んでいてもよい。白金含有最外層に白金合金を用いる場合には、当該白金合金には白金の他に金属が1種類のみ含まれていてもよいし、2種類以上含まれていてもよい。
パラジウム含有粒子の溶出をより抑制できるという観点から、パラジウム含有粒子に対する白金含有最外層の被覆率は、通常0.5〜2、好ましくは0.8〜1である。パラジウム含有粒子に対する白金含有最外層の被覆率が0.5未満である場合、電気化学反応においてパラジウム含有粒子が溶出し、その結果、触媒微粒子が劣化するおそれがある。
なお、ここでいう「パラジウム含有粒子に対する白金含有最外層の被覆率」とは、パラジウム含有粒子の全表面積を1とした時の、白金含有最外層により被覆されているパラジウム含有粒子の面積の割合のことである。当該被覆率を算出する方法の一例を以下説明する。まず、誘導結合プラズマ質量分析法(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry:ICP−MS)等により、触媒微粒子中の最外層金属含有量(A)を測定する。一方で、透過型電子顕微鏡(TEM)等により、触媒微粒子の平均粒径を測定する。測定した平均粒径から、その粒径の粒子が表面に有する原子の数を推定し、粒子表面の1原子層が白金含有最外層に含まれる金属に置き換わった場合の最外層金属含有量(B)を推定する。最外層金属含有量(A)を最外層金属含有量(B)で除した値が、「パラジウム含有粒子に対する白金含有最外層の被覆率」となる。
パラジウム含有粒子を被覆する白金含有最外層は、単原子層であることが好ましい。このような構造を有する触媒微粒子は、2原子層以上の白金含有最外層を有する触媒微粒子と比較して、白金含有最外層における触媒性能が極めて高いという利点、及び、白金含有最外層の被覆量が少ないため材料コストが低いという利点がある。
なお、触媒微粒子の平均粒径は、その下限が好適には2.5nm以上、より好適には3nm以上であり、その上限が好適には40nm以下、より好適には10nm以下である。
カーボン担体の使用により、本発明に係るカーボン担持触媒を燃料電池の電極触媒層に用いた際、当該電極触媒層に導電性を付与できる。
カーボン担体として使用できる炭素材料の具体例としては、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)、OSAB(商品名:電気化学工業製)等の炭素粒子や、炭素繊維等の導電性炭素材料等が挙げられる。
本発明においては、電位差滴定法により求められる、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量が特定の値以上であることが、主な特徴の1つである。
以下、電位差滴定法及びその後の解析について、(1)滴定に供する触媒懸濁液の調製、(2)電位差滴定法を用いた測定、及び(3)滴定曲線の解析の順に説明する。
(1)滴定に供する触媒懸濁液の調製
まず、本発明に係るカーボン担持触媒を、アルカリ溶液と混合して触媒懸濁液を調製する。
このとき、カーボン担持触媒のBET比表面積(m/g)を予め測定し、総表面積(m)が所定の値となるように、カーボン担持触媒を秤量して滴定に供することが好ましい。これは、電位差滴定法において、滴定に供する試料の総表面積によって、得られる滴定曲線が異なるからである。
粉末表面を正しく評価するという観点から、滴定に供するカーボン担持触媒の総表面積を20m以上とすることが好ましい。
滴定に供するアルカリ溶液は、アルカリ水溶液及びアルコールの混合溶液であることが好ましい。これは、カーボン担体として使用される材料が一般的に撥水性を帯びることが多いため、有機溶媒であるエタノールを混合することにより、カーボン担体の濡れ性を高められるからである。
アルカリ溶液中のアルカリ水溶液としては、十分高いアルカリ性を担保できるものであれば特に限定されず、例えば、NaOH、KOH、LiOH、NaHCO等の無機塩の水溶液や、アンモニア水等が挙げられる。これら水溶液は、1種類のみ使用してもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
本発明における電位差滴定法においては、水溶液のインピーダンスを下げる目的で、支持電解質(支持塩)をアルカリ水溶液に加えることが好ましい。支持電解質の例としては、KNO、NaNO、LiNO、KCl、NaCl、及びLiCl等が挙げられる。これら支持電解質は、1種類のみ使用してもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。多孔質粉末を測定する場合は、これら支持電解質の中でも、その細孔以下のイオン半径の陽イオンを含む支持電解質を用いるのが一般的である。特に、本発明における電位差滴定法のように、表面に細孔を有するカーボンを滴定の対象に含む場合には、比較的イオン半径の大きなカリウムイオンが使用できる。さらに、支持電解質中の陽イオンは、アルカリ水溶液中の陽イオンと同じものを使用することが好ましい。例えば、アルカリ水溶液中の陽イオンがカリウムイオンである場合には、支持電解質としてカリウム塩を使用することが好ましい。カリウム塩の中でも、汎用性の観点からKNOが好ましい。
アルカリ溶液中のアルコールとしては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノール等が挙げられる。これらアルコールは、1種類のみ使用してもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。これらアルコールの中でも、取り扱い性の観点から、エタノールを使用することが好ましい。
アルカリ溶液中における、水とアルコールとの混合比は、モル比で、水:アルコール=5:1〜2:1であることが好ましい。水が上記比より少ない場合には、再現性の観点から十分信頼できる滴定曲線が得られないおそれがある。一方、アルコールが上記比より少ない場合には、アルカリ溶液がカーボン担持触媒中に十分浸透しないため、精確な測定結果が得られなくなるおそれがある。
水とアルコールとの混合比は、モル比で、水:アルコール=4.5:1〜2.5:1であることがより好ましく、水:アルコール=4:1〜3:1であることがさらに好ましい。
滴定に供するアルカリ溶液の体積は、特に限定されないが、例えば、総表面積が20m以上であるカーボン担持触媒に対し、80〜120mLのアルカリ溶液を使用することができる。
電位差滴定法を実施する際のアルカリ溶液の液温は、15〜30℃であることが好ましい。液温が上記範囲から外れる場合には、アルカリ溶液のpHが変わるため、滴定曲線の再現性が低下するおそれがある。アルカリ溶液の液温は、滴定中に発生する中和熱等で変化しないよう、恒温槽等を用いて適宜調節することが好ましい。
滴定初期におけるpHの変動が大きくなりすぎないように、アルカリ溶液の初期のpHを11.5〜12.5とすることが好ましい。上記範囲のpHのアルカリ溶液を用いて滴定を始めることにより、滴定初期より信頼度の高い滴定曲線が得られる。アルカリ溶液の初期のpHは、原料であるアルカリ水溶液のpHにより調節できる。アルカリ水溶液のpHは、例えば、11.5〜12.5であることが好ましい。
カーボン担持触媒とアルカリ溶液との混合方法は、特に限定されない。アルカリ水溶液及びアルコールを混合することによりアルカリ溶液を予め調製し、カーボン担持触媒と当該アルカリ溶液とを混合してもよいし、カーボン担持触媒に対し、アルカリ水溶液及びアルコールを順に加えていってもよい。また、カーボン担持触媒に対し、数回に分けてアルカリ溶液を加えることにより、カーボン担持触媒に対しアルカリ溶液を十分に馴染ませてもよい。
カーボン担持触媒をアルカリ溶液中に十分分散させるために、ホモジナイザーやスターラー等を用いて混合攪拌を行ってもよい。このように、カーボン担持触媒の濡れ性を十分確保するため、適度な混合分散処理を行うことが好ましい。
アルカリ溶液を不活性ガスによりバブリングすることが好ましい。このように、アルカリ溶液中の雰囲気を予め不活性雰囲気に置換することにより、アルカリ溶液と反応する酸性成分(二酸化炭素や酸素等)をアルカリ溶液から排除でき、酸溶液の滴下量が測定ごとで異なるという不具合が生じることが無く、滴定結果の信頼性を上げることができる。アルカリ溶液に対するバブリングは、電位差滴定法を実施する前から行うことが好ましい。
不活性ガスの例としては、窒素ガス及びアルゴンガス等が挙げられる。
(2)電位差滴定法を用いた測定
電位差滴定法に供する滴定装置は、従来から使用されている装置を用いることができる。以下、図を用いつつ滴定装置について説明する。
図1は、滴定装置100の断面模式図である。なお、二重波線は図の省略を意味する。
図1に示すように、滴定容器1を格納する恒温槽2は、スターラー3に載置されている。滴定容器1内にはスターラーバー4が加えられ、滴定容器1内の触媒懸濁液5が均一となるように攪拌する。
滴定容器1内には、pHを測定するpH電極6、比較電極7、及び温度センサ8が、触媒懸濁液5に十分に浸かるように配置されており、これら3つの電極は、制御部及び記録用端末等(図示せず)と電気的に接続されている。比較電極7としては、通常は銀塩化銀電極が使用される。また、滴定容器1内にはビュレット9が設置され、その先端が触媒懸濁液5の液面から適切な距離だけ離れるように配置されている。図中の滴10は、滴下された酸溶液を示す。さらに、窒素ガスライン11の少なくとも先端が触媒懸濁液5に浸かるように配置されており、恒温槽2の外部に設置された窒素供給源(図示せず)から一定時間窒素が触媒懸濁液5にバブリングされ、触媒懸濁液5が窒素で飽和されている状態とする。円12は窒素の気泡を示す。
滴定に供する酸溶液としては、通常酸塩基滴定に使用できる酸であれば特に限定されず、例えば、HSO、HCl、HNO、シュウ酸、及び酢酸等が挙げられる。これら酸溶液は、1種類のみ使用してもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。これら酸溶液の中でも、取り扱い性の観点から、HSOを使用することが好ましい。
滴定量としては、滴定時間の制約、及び精確な滴定曲線を得ることの要請の両方の観点から、例えば、60秒毎に0.01〜0.2mLずつ滴下することが好ましく、60秒毎に0.02〜0.1mLずつ滴下することがより好ましい。
(3)滴定曲線の解析
上記電位差滴定法により得られた滴定曲線から、所定の電位(V vs.Ag/AgCl)の範囲内における、酸溶液の滴下量に対する当該電位の変化量(dV/d(mL/m))を算出する。ここで、酸溶液の滴下量(mL/m)は、カーボン担持触媒の単位表面積あたりの滴下量を示す。
電位差滴定法においては、電位はpHに置き換えられる。したがって、酸溶液の滴下量に対する当該電位の変化量(dV/d(mL/m))とは、酸溶液の滴下量に対するpHの変化に相当する。当該変化が中和点近傍において十分に大きいほど、カーボン担持触媒の表面に、酸溶液と酸塩基反応を生ぜしめるような不純物や官能基が存在しないため、触媒懸濁液のアルカリ性から酸性への液性の移行が速やかとなると評価できる。一方、当該変化が中和点近傍において小さい場合には、カーボン担持触媒の表面における不純物や官能基と、滴下される酸溶液との間で酸塩基反応が生じていると推測され、その結果、触媒懸濁液のアルカリ性から酸性への液性の移行が緩やかとなると評価できる。
このように、酸溶液の滴下量に対する当該電位の変化量を、ある特定の電位の範囲内において評価することにより、カーボン担持触媒表面の状態を定量的に判定することができる。
本発明においては、中和点に対応する電位の範囲を、0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)の範囲に設定している。
後述する実施例、並びに図7及び図10において示されるように、上記電位の範囲内において、酸溶液の滴下量に対する当該電位の変化量が常に0.8(dV/d(mL/m))以上であるカーボン担持触媒(実施例1及び実施例2)は、当該変化量が0.8(dV/d(mL/m))未満であるカーボン担持触媒(比較例1−比較例3)と比較して、セル電圧及び質量活性がいずれも高い。したがって、酸溶液の滴下量に対する当該電位の変化量が常に0.8(dV/d(mL/m))以上であるカーボン担持触媒は、当該触媒表面に不純物や余分な官能基が少ないため、他の燃料電池用材料である電解質等との親和性が高いと考えられ、燃料電池用の電極触媒として好適に使用できると判定できる。
酸溶液の滴下量に対する電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上となる電位の範囲は、0.080〜0.120V(vs.Ag/AgCl)の範囲であることが好ましく、0.050〜0.150V(vs.Ag/AgCl)の範囲であることがより好ましい。
0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)の範囲内において、触媒懸濁液中で具体的にどのような酸塩基反応が進行しているかは、実際は不明である。しかし、後述する実施例において述べるように、原料となるパラジウム担持カーボンに対して予め施した電位サイクル数の多いカーボン担持触媒(実施例2)の方が、当該電位サイクル数の少ないカーボン担持触媒(比較例2及び比較例3)よりも、当該電位の範囲内において、電位の変化量が大きい。したがって、おそらく、カーボン担体表面の官能基及び/又は不純物と、酸溶液との間で酸塩基反応が進行していると推測される。
従来、カーボン担体表面の官能基や不純物については、当該官能基等がカーボン担体表面に存在するか否かといった定性的な知見しか得られていなかった。しかし、本発明における電位差滴定法によって、これら官能基等を定量することができ、その結果、優れた活性を有するカーボン担持触媒を選別することができる。
滴定曲線において、電位が−0.020〜0.020V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量が2(dV/d(mL/m))以上であることが好ましい。
後述する実施例において示すように、比較例1は、白金の使用量を実施例1の90%としたこと以外は、実施例1と同様である。パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、実施例1においては、100atm%の白金を使用することにより白金の被覆率を高く保つ結果、上記電位の範囲内において、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量が2(dV/d(mL/m))を超える。一方、比較例1においては、白金使用量を実施例1よりも減らすことにより白金の被覆率が低くなる結果、上記電位の範囲内において、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量が2(dV/d(mL/m))未満となる(以上図11参照)。
上記電位の範囲内において、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量は2.5(dV/d(mL/m))以上であることがより好ましい。
後述する図4のPdO(II)・xHOのグラフ(xのプロット)を参照すると分かる通り、−0.020〜0.020V(vs.Ag/AgCl)の電位の範囲内においては、触媒懸濁液中において、触媒微粒子表面に露出した酸化パラジウムと酸溶液との反応が生じていると考えられる。
したがって、上記0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)の電位の範囲内の検討と併せて、−0.020〜0.020V(vs.Ag/AgCl)の電位の範囲内において酸溶液の滴下量に対する電位の変化量を調べることにより、カーボン担持触媒におけるカーボン担体表面のみならず、触媒微粒子表面における、パラジウム粒子に対する白金含有最外層の被覆率も算出可能であることが分かる。
以下、上記(1)〜(3)の一連のフローの典型例について説明する。図2は、本発明における触媒懸濁液の調製から滴定曲線の解析までの典型例を示すフローチャートである。以下、図2のフローに従って説明する。
まず、アルカリ水溶液及びアルコールを混合することによりアルカリ溶液を調製する(S1)。アルカリ水溶液としては、0.1M KNO水溶液及び0.5M KOH水溶液を混合したものであり、かつpHが12のものを用いる。また、アルコールとしては、99.5%エタノールを用いる。このとき、混合後のモル比が水:アルコール=4:1の範囲内となり、かつ混合後のアルカリ溶液の総体積が100mLとなるように、アルカリ水溶液及びアルコールの各液量を調整する。
次に、カーボン担持触媒にアルカリ溶液の一部を添加する(S2)。カーボン担持触媒については、そのBET比表面積を予め測定し、総表面積が20mとなるようにカーボン担持触媒を秤量した上で、アルカリ溶液の一部と混合する。ここでいうアルカリ溶液の一部とは、カーボン担持触媒全体がアルカリ溶液に濡れる程度の量であれば特に限定されず、例えば、使用予定の半分の量のアルカリ溶液であってもよい。
続いて、ホモジナイザーやスターラー等の混合手段により、アルカリ溶液中にカーボン担持触媒を高分散させる(S3)。カーボン担持触媒がアルカリ溶液と十分に馴染んだところで、混合物中にアルカリ溶液の残りを追加する(S4)。混合後の触媒懸濁液の液温を25℃の範囲内となるように調整し、かつ、不活性ガスとして窒素を30分間バブリングさせ、電位差滴定に供する。
次に、調製した触媒懸濁液に酸溶液を滴下して、電位差滴定法により滴定曲線を得る(S5)。具体的には、まず、図1に示した装置を用いて、触媒懸濁液5中に窒素をバブリングさせながら、滴定を開始する。滴定には0.05M硫酸を使用し、滴下速度は60秒毎に0.05mLずつとする。滴下中は、恒温槽2により触媒懸濁液5の液温を25℃の範囲内に保持することとする。
得られた滴定曲線に基づき、所定の範囲内の電位における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量Aを求める(S6)。このとき、酸溶液の滴下量は、実際の酸溶液の滴下量を、カーボン担持触媒のBET比表面積により除した値(単位:mL/m)を用いる。したがって、上記変化量Aの単位は、dV/d(mL/m)となる。
最後に、所定の範囲内の電位において、上記変化量Aが0.8(dV/d(mL/m))以上であるか否かを判定する(S7)。ここで電位の所定の範囲とは、通常0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)であり、好ましくは0.080〜0.120V(vs.Ag/AgCl)であり、より好ましくは0.050〜0.150V(vs.Ag/AgCl)である。電位の所定の範囲内において、上記変化量Aが常に0.8(dV/d(mL/m))以上であれば、滴定に供した試料が本発明のカーボン担持触媒であると判定し、フローを終了する(S8)。一方、電位の所定の範囲内において、上記変化量Aが0.8(dV/d(mL/m))未満となる部分があれば、滴定に供した試料が本発明のカーボン担持触媒ではないと判定し、フローを終了する(S9)。
なお、電位が−0.020〜0.020V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量Bについて判定する場合は、以下の通りである。まず、図2に示すフローチャートのS1〜S6を実行して上記変化量Bを求めた後、上記変化量Bが2(dV/d(mL/m))以上であるか否かを判定する。上記電位の範囲内において、上記変化量Bが常に2(dV/d(mL/m))以上であれば、滴定に供した試料が本発明の好適なカーボン担持触媒であると判定し、フローを終了する。一方、上記電位の範囲内において、上記変化量Bが2(dV/d(mL/m))未満となる部分があれば、滴定に供した試料が本発明の好適なカーボン担持触媒ではないと判定し、フローを終了する。
本発明のカーボン担持触媒は、燃料電池用であることが好ましい。酸素還元活性に優れるという観点から、本発明のカーボン担持触媒は、燃料電池用電極に使用されることがより好ましく、燃料電池用カソード電極に使用されることがさらに好ましい。
以下、本発明のカーボン担持触媒を製造する方法について、工程ごとに説明する。
まず、パラジウム含有粒子が担持されたカーボン担体を準備する。パラジウム含有粒子は、下記(A)電位印加工程を経て調製されたものであってもよい。
(A)電位印加工程
電位印加工程は、パラジウム含有粒子に電位を印加する工程である。
電位印加工程によって、パラジウム含有粒子の表面から酸化物(例えば、パラジウム酸化物)等の不純物を除去することができる。具体的には、電位印加により酸化物を溶出させることができる。その結果、パラジウム含有粒子の表面に白金含有最外層を均一に被覆することができる。
酸溶液としては、例えば、硫酸、過塩素酸、硝酸、塩酸及び燐酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものが挙げられ、硫酸が特に好ましい。
パラジウム含有粒子としては、パラジウム粒子及びパラジウム合金粒子から選ばれる少なくとも一方を用いることができる。
パラジウム含有粒子は、予め調製したものを用いることもできるし、市販品を用いることもできる。
パラジウム含有粒子の平均粒径は、特に限定されないが、カーボン担持触媒を構成する白金の単位質量当たりのECSAが高いことから、好ましくは30nm以下、より好ましくは2〜10nmである。
ここで、平均粒径は、X線回折法(XRD)により測定することができる。XRDによる平均粒径の具体的方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
複数の金属粒子にX線を照射し、その回折像から、結晶子サイズを次のScherrerの式(1)から求め、得られた結晶子サイズの平均値を平均粒径とする。
[式(1)]
D=(Kλ)/(βcosΘ)
上記式(1)において各符号の意味は次の通りである。
D:結晶子サイズ(nm)
K:Scherrer定数
λ:測定X線波長(nm)
β:半価幅(rad)
Θ:回折線のブラッグ角度(rad)
パラジウム含有粒子はカーボン担体に担持されている。パラジウム含有粒子がカーボン担体に担持されていることによって、電位印加工程においてパラジウム含有粒子へ効率良く電位を印加することができる。また、後述の被覆工程においても、パラジウム含有粒子に効率良く電位を印加できるため、パラジウム含有粒子表面への白金含有最外層の被覆を効率良く、実施できるというメリットがある。カーボン担体の具体例は上述した通りである。
カーボン担体の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは0.01〜数百μm、より好ましくは0.01〜1μmである。カーボン担体の平均粒径が上記範囲未満であると、カーボン担体が腐食劣化する場合があり、当該カーボン担体に担持されるパラジウム含有粒子が経時的に脱落してしまうおそれがある。また、カーボン担体の平均粒径が上記範囲を超える場合、比表面積が小さく、パラジウム含有粒子の分散性が低下するおそれがある。
カーボン担体の比表面積は、特に限定されないが、好ましくは50〜2000m/g、より好ましくは100〜1600m/gである。カーボン担体の比表面積が上記範囲未満であると、カーボン担体へのパラジウム含有粒子の分散性が低下し、十分な電池性能が発現しないおそれがある。また、カーボン担体の比表面積が上記範囲を超える場合、パラジウム含有粒子の有効利用率が低下し、十分な電池性能が発現しないおそれがある。
カーボン担体によるパラジウム含有粒子担持率[{(パラジウム含有粒子質量)/(パラジウム含有粒子質量+導電性担体質量)}×100%]は特に限定されず、一般的には、20〜60%の範囲であることが好ましい。パラジウム含有粒子の担持量が少なすぎると、触媒機能が十分に発現しないおそれがある。一方、パラジウム含有粒子の担持量が多すぎると、触媒機能の観点からは特に問題は生じないかもしれないが、必要以上のパラジウム含有粒子を担持させても、製造コストの上昇に見合った効果が得られにくくなる。
パラジウム含有粒子がカーボン担体に担持されたパラジウム含有粒子担持体は、市販品を用いることもできるし、合成することもできる。パラジウム含有粒子を担体に担持する方法としては、従来から用いられている方法を採用することができる。例えば、カーボン担体を分散させた担体分散液に、パラジウム含有粒子を混合し、濾過、洗浄して、エタノール等に再分散した後、真空ポンプ等で乾燥する方法が挙げられる。乾燥後、必要に応じて、加熱処理してもよい。なお、パラジウム合金粒子を使用する場合には、合金の合成とパラジウム合金粒子の担体への担持が同時に行われてもよい。
本発明において、パラジウム含有粒子に電位を印加するとは、パラジウム含有粒子に電位を付与することを指す。ここでいう電位には、一定の値の電位の他にも、経時的に変化する電位も含まれる。したがって、本発明における電位の印加には、所定の範囲の電位を掃引することも含まれる。
パラジウム含有粒子に電位を印加する方法は、特に限定されず、酸溶液中にパラジウム含有粒子を浸漬させた状態で電位を印加することができれば、一般的な方法を採用することができる。
例えば、パラジウム含有粒子を酸溶液に分散させたパラジウム含有分散液中に、作用極、対極及び参照極を浸漬させ、作用極に電位を印加する方法が挙げられる。パラジウム含有粒子は、粉末状態で酸溶液に添加することによって酸溶液に浸漬、分散させてもよいし、予め、溶媒に分散させたものを、酸溶液に添加することによって、酸溶液に浸漬、分散させてもよい。上記溶媒としては、例えば、水、有機溶媒を用いることができ、さらに、当該溶媒に、酸を含んでいてもよい。酸としては、上記酸溶液として例示したものを用いることができる。酸溶液にパラジウム含有粒子を分散させる方法は、特に限定されず、例えば、マグネチックスターラーによる攪拌等が挙げられる。
また、導電性基材上や作用極上にパラジウム含有粒子を固定し、導電性基材や作用極のパラジウム含有粒子固定面を酸溶液に浸漬させた状態で、当該導電性基材や当該作用極に電位を印加する方法が挙げられる。パラジウム含有粒子を固定する方法としては、例えば、電解質樹脂(例えばナフィオン(商品名)等)と、水やアルコール等の溶媒とを用いて、パラジウム含有粒子ペーストを調製し、導電性基材や作用極の表面に塗布する方法が挙げられる。
作用極としては、例えば、チタン等の金属材料、グラッシーカーボン、カーボン板等の導電性炭素材料等の導電性が担保できる材料を用いることができる。なお、反応容器を上記導電性材料で形成し、作用極としても機能させることもできる。金属材料の反応容器を作用極として用いる場合、反応容器の内壁には、腐食を抑制する観点から、RuO及びカーボンを含むポリマーコートからなる群より選ばれる少なくとも一種をコーティングすることが好ましい。
対極としては、例えば、白金黒、白金メッシュに白金黒をめっきしたもの、カーボン及びカーボン繊維材料等を用いることができる。
参照極としては、可逆水素電極(reversible hydrogen electrode;RHE)、銀−塩化銀電極及び銀−塩化銀−塩化カリウム電極等を用いることができる。
電位印加装置としては、ポテンショスタット及びポテンショガルバノスタット等を用いることができる。
掃引する電位の範囲は、特に限定されないが、0.05〜1.2V(vs.RHE)であることが好ましい。
電位掃引のサイクル数は、特に限定されないが、好ましくは1,000サイクル以上、より好ましくは1,200サイクル以上である。電位掃引の目的は、主にパラジウム含有粒子表面及びカーボン担体表面のクリーニングである。
また、電位印加工程において、酸溶液は、必要に応じて適宜攪拌することが好ましい。例えば、作用極を兼ねる反応容器を用い、該反応容器内の酸溶液にパラジウム含有粒子を浸漬、分散させた場合、酸溶液を攪拌することで、各パラジウム含有粒子を作用極である反応容器の表面に接触させ、各パラジウム含有粒子に均一に電位を印加させることができる。この場合、攪拌は、電位印加工程中、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
(B)被覆工程
被覆工程は、パラジウム含有粒子の表面に白金含有最外層を被覆させる工程である。より具体的には、銅アンダーポテンシャル法によりパラジウム含有粒子に銅単原子層を析出させた後(析出工程)、銅単原子層を白金含有最外層に置換することによって(置換工程)、コアシェル型構造を有する触媒微粒子を合成する工程である。
以下、(B−1)析出工程及び(B−2)置換工程について説明する。
(B−1)析出工程
析出工程は、銅イオンを含有する銅イオン含有酸溶液中において、パラジウム含有粒子に銅の酸化還元電位よりも貴な電位を印加することによって、パラジウム含有粒子の表面に銅単原子層を析出させる工程である。
銅イオン含有酸溶液と接触(例えば該酸溶液に浸漬)した状態のパラジウム含有粒子に、銅の酸化還元電位(平衡電位)よりも貴な電位を印加することによって、パラジウム含有粒子表面へ銅単原子層を析出させることができる。
このとき、パラジウム含有粒子を銅イオン含有酸溶液に接触させる方法は特に限定されない。
例えば、粉末状態のパラジウム含有粒子を銅イオン含有酸溶液に添加することによって銅イオン含有酸溶液に浸漬、分散させてもよいし、予め、パラジウム含有粒子を溶媒に分散させたものを銅イオン含有酸溶液に添加することによって銅イオン含有酸溶液に浸漬、分散させてもよい。上記溶媒としては、例えば水、有機溶媒等を用いることができる。また、パラジウム含有粒子分散液は、後述する銅イオン含有酸溶液に添加可能な酸を含有していてもよい。
また、導電性基材上や作用極上にパラジウム含有粒子を固定し、導電性基材や作用極のパラジウム含有粒子固定面を、銅イオン含有酸溶液に浸漬してもよい。パラジウム含有粒子を固定する方法としては、例えば、電解質樹脂(例えばナフィオン(商品名)等)と、水やアルコール等の溶媒とを用いて、パラジウム含有粒子ペーストを調製し、導電性基材や作用極の表面に塗布する方法が挙げられる。
銅イオン含有酸溶液としては、パラジウム含有粒子の表面に銅を析出させることができる酸溶液であれば特に限定されない。
銅イオン含有酸溶液は、通常、酸溶液に銅塩を所定量溶かしたものから構成されるが、特にこの構成に限定されず、銅イオンの一部又は全部が液中に解離して存在している酸溶液であればよい。
銅イオン含有酸溶液に用いられる酸としては、酸であれば特に限定されないが、硫酸、過塩素酸、硝酸、塩酸及び燐酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましく、硫酸が特に好ましい。
銅塩としては、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅、亜塩素酸銅、過塩素酸銅、シュウ酸銅等が挙げられる。
銅イオン含有酸溶液中において、銅イオン濃度は、特に限定されないが、10〜400mMであることが好ましい。
なお、銅塩の対アニオンと、酸中の対アニオンとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、銅イオン含有酸溶液は、予め、不活性ガスをバブリングしておくことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等を用いることができる。
パラジウム含有粒子に銅の酸化還元電位よりも貴な電位を印加する方法は、特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。例えば、パラジウム含有粒子を浸漬させた銅イオン含有酸溶液中に、作用極、対極及び参照極を浸漬させ、作用極に銅の酸化還元電位よりも貴な電位を印加する方法が挙げられる。作用極、対極及び参照極は、上述の電位印加工程で用いるものと同様のものを用いることができる。
印加する電位は、パラジウム含有粒子の表面に銅を析出させることができる電位、すなわち、銅の酸化還元電位よりも貴な電位であれば、特に限定されない。例えば、印加する電位は、0.8〜0.35V(vs.RHE)が好ましく、0.4V(vs.RHE)であることが特に好ましい。
電位を印加する時間は、特に限定されないが、2時間以上、特に15時間以上確保することが好ましく、反応電流が定常となり、ゼロに近づくまで行うことがさらに好ましい。
なお、電位印加工程と、析出工程とを、同じ反応容器内で行う場合には、電位印加工程に使用した酸溶液に、銅塩や銅イオン含有酸溶液を加えてもよい。例えば、電位印加工程の酸溶液として硫酸を使用する場合には、使用後の硫酸に硫酸銅水溶液を加えて、析出工程を行ってもよい。なお、酸溶液中の対アニオンと、銅イオン含有酸溶液中の対アニオンとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
析出工程は、メッキした金属の安定性の観点から、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
また、析出工程において、銅イオン含有酸溶液は、必要に応じて適宜攪拌することが好ましい。例えば、作用極を兼ねる反応容器を用い、当該反応容器内の酸溶液にパラジウム含有粒子を浸漬、分散させた場合、酸溶液を攪拌することで、各パラジウム含有粒子を作用極である反応容器の表面に接触させ、各パラジウム含有粒子に均一に電位を印加させることができる。この場合、攪拌は、析出工程中、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
(B−2)置換工程
置換工程は、白金イオン含有酸溶液に、銅単原子層が析出したパラジウム含有粒子を接触させることによって、銅を白金に置換する工程である。
置換工程において、パラジウム含有粒子表面に析出した銅を白金に置換する方法は特に限定されない。通常、白金イオン含有酸溶液に、表面に銅単原子層を析出させたパラジウム含有粒子を接触させることによって、イオン化傾向の違いにより、銅と白金とを置換することができる。
白金イオン含有酸溶液としては、銅を白金に置換することができる酸溶液であれば特に限定されない。白金イオン含有酸溶液は、通常、酸溶液に白金塩を所定量溶かしたものから構成されるが、特にこの構成に限定されず、白金イオンの一部又は全部が液中に解離して存在している酸溶液であればよい。
白金イオン含有酸溶液に用いられる白金塩は、例えば、KPtCl、KPtCl等を用いることができ、また、([PtCl][Pt(NH])等のアンモニア錯体を用いることもできる。
白金イオン含有酸溶液中において、白金イオン濃度は特に限定されないが、1〜5mMであることが好ましい。
白金イオン含有酸溶液に用いることができる酸は、上述した銅イオン含有酸溶液に用いられる酸と同様であり、硫酸、過塩素酸、硝酸、塩酸及び燐酸からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましく、硫酸が特に好ましい。
白金イオン含有酸溶液は、酸及び金属触媒の塩の他に、白金イオンを均一に分散させる観点から、クエン酸及びその水和物、クエン酸塩、並びにEDTA等を含むことが好ましい。
白金イオン含有酸溶液は、事前に十分に攪拌し、メッキした金属の安定性の観点から、当該酸溶液中には予め窒素ガス等の不活性ガスをバブリングさせることが好ましい。
置換時間(金属触媒イオン含有酸溶液とパラジウム含有粒子との接触時間)は、特に限定されないが、120分以上確保することが好ましい。
なお、析出工程と置換工程とを、同じ反応容器内で行う場合には、析出工程に使用した銅イオン含有酸溶液に、白金塩や白金イオン含有酸溶液を加えてもよい。例えば、析出工程後、電位制御を停止し、析出工程において使用した銅イオン含有酸溶液に、白金イオン含有酸溶液を添加することで、銅が析出したパラジウム含有粒子を白金イオン含有酸溶液に接触させてもよい。
(C)その他の工程
本発明においては、電位印加工程の前にバブリング工程を設けてもよい。
バブリング工程は、酸溶液にパラジウム含有粒子を浸漬させた状態で、当該酸溶液に還元性ガスをバブリングする工程である。
バブリング工程により、パラジウム含有粒子表面のパラジウム酸化物をパラジウムに還元したり、パラジウム含有粒子表面の酸素を除去したりすることができ、被覆工程においてパラジウム含有粒子にシェルをより均一に析出させることができる。
酸溶液に還元性ガスをバブリングする方法は、特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。例えば、パラジウム含有粒子を浸漬させた酸溶液中に、還元性ガス導入管を浸漬させ、還元性ガス供給源から還元性ガスを導入し、バブリングする方法が挙げられる。
還元性ガスとしては、特に限定されず、水素ガス、一酸化炭素ガス及び一酸化窒素ガス等が挙げられる。
バブリングする時間は、特に限定されないが、30〜240分であることが好ましい。また、ガス流入量は、特に限定されないが、10〜200cm/分であることが好ましい。
バブリング工程は、窒素雰囲気等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
なお、バブリング工程と上述の電位印加工程は、同じ反応容器内で行うことができる。
また、還元性ガスとして水素ガスを用いる場合、予め酸溶液中の酸素を可能な限り除去するために、酸溶液に還元性ガスをバブリングする前に、不活性ガスをバブリングすることが好ましい。なお、還元性ガスの種類に関わらず、不活性ガスを事前にバブリングすることによって、パラジウム含有粒子表面の不純物を除去できる。
さらに、酸溶液に還元性ガス、特に水素ガスをバブリングした後にも、酸溶液に不活性ガスをバブリングすることが好ましい。これは、安全性確保という観点と共に、還元性ガスが溶存した状態の酸溶液と金属触媒塩とを混合すると、金属触媒イオンが、パラジウム含有粒子表面に到達する前に、当該溶液中に溶存する還元性ガスによって還元され、析出し、単独で粒子化してしまうおそれがあるからである。
不活性ガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。また、不活性ガスをバブリングする時間及びガス流入量は、還元性ガスの場合と同様とすることができる。
また、本発明においては、被覆工程の後に、カーボン担持触媒の濾過、洗浄、乾燥及び粉砕等が行われてもよい。
カーボン担持触媒の洗浄は、触媒微粒子のコアシェル構造を損なうことなく、不純物を除去できる方法であれば特に限定されない。当該洗浄の例としては、水、過塩素酸、希硫酸、希硝酸等を用いて吸引濾過をする方法が挙げられる。カーボン担持触媒の洗浄には、温水を使用することが好ましい。
カーボン担持触媒の乾燥は、溶媒等を除去できる方法であれば特に限定されない。
カーボン担持触媒は必要に応じて粉砕してもよい。粉砕方法は、固形物を粉砕できる方法であれば特に限定されない。当該粉砕の例としては、不活性ガス雰囲気下、あるいは大気下における乳鉢等を用いた粉砕や、ボールミル、ターボミル等のメカニカルミリングが挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
1.カーボン担持触媒の製造
[実施例1]
1−1.カーボン担持パラジウムの製造
カーボン担体としてOSAB(:商品名、電気化学工業製)を用いた。カーボン担体を硝酸に分散させ、当該分散混合物に塩化パラジウム酸を加えた。100℃以下の温度条件下にて加熱しながら、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)を加えパラジウムを還元した。反応終了後、反応混合物をろ過し、ろ過物を洗浄した後、不活性雰囲気下で24時間乾燥させ、カーボン担持パラジウムを製造した。得られたカーボン担持パラジウムにおいて、パラジウム粒子の平均粒径は3.4nmであった。
製造後のカーボン担持パラジウム5gを純水1L中に加え、超音波ホモジナイザーを用いて、カーボン担持パラジウムを純水中に分散させた。得られた分散液を電気化学リアクター内に投入し、硫酸を加えて、硫酸濃度が0.05mol/Lとなるように調整した。電気化学リアクターをグローブボックス内に移し、分散液中を不活性ガス(Nガス)により十分にバブリングすることによって酸素を脱気した。電気化学リアクターの作用極に対し電位範囲0.05〜1.2V(vs.RHE)を1,600サイクル実施し、パラジウム粒子表面とカーボン担体表面を十分クリーニングした。
1−2.析出工程(Cu−UPD)
硫酸を窒素でバブリングしながら、硫酸銅5水和物14.6gを0.05M硫酸66mLに溶解させた銅イオン含有酸溶液を硫酸に加え、作用極の電位を0.4V(vs.RHE)に2時間固定し、銅をパラジウム粒子上に析出させた。
1−3.置換工程
0.4V(vs.RHE)の電位制御を止め、KPtCl161.3mgとクエン酸1水和物4.5gを0.05M硫酸140mLに溶解させた白金イオン含有酸溶液を、上記カーボン担持パラジウムを含む混合物中に約80分かけて加え、その後、1時間攪拌し、銅を白金に置換した。ここで添加した白金原子量は、パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、100atm%であった。
1−4.後処理
反応溶液を濾過し、カーボン担持触媒を回収、洗浄、乾燥した後、メノウ乳鉢と乳棒を用いて粉砕することにより、実施例1のカーボン担持触媒を製造した。
[実施例2]
パラジウム粒子の平均粒径が3.8nmであるカーボン担持パラジウムを製造し、かつ使用したこと以外は、実施例1と同様に、実施例2のカーボン担持触媒を製造した。
[比較例1]
実施例1の置換工程において、パラジウム粒子を白金の単原子層により被覆する場合に要する最少白金原子量を100atm%としたとき、添加した白金原子量を90atm%としたこと以外は、実施例1と同様に、比較例1のカーボン担持触媒を製造した。
[比較例2]
実施例1において、パラジウム粒子の平均粒径が3.8nmであるカーボン担持パラジウムを製造し、かつ使用したこと、及び、カーボン担持パラジウム原料におけるパラジウム表面とカーボン表面のクリーニングにおいて、クリーニング条件を電位範囲0.05〜1.2V(vs.RHE)を800サイクル実施としたこと以外は、実施例1と同様に、比較例2のカーボン担持触媒を製造した。
[比較例3]
実施例1において、パラジウム粒子の平均粒径が3.8nmであるカーボン担持パラジウムを製造し、かつ使用したこと、及び、カーボン担持パラジウム原料におけるパラジウム表面とカーボン表面のクリーニングを行わなかったこと以外は、実施例1と同様に、比較例3のカーボン担持触媒を製造した。
2.カーボン担持触媒の評価
2−1.BET比表面積の測定
実施例1−2及び比較例1−3のカーボン担持触媒について、BET比表面積を測定した。
まず、各カーボン担持触媒について、ICP−MSにより金属担持割合x(質量%)を測定した。次に、各カーボン担持触媒について、自動比表面積/細孔分布測定装置(Tristar 3020、Micromeritics社製)により、BET比表面積を測定した。測定したBET比表面積をS(m/g−触媒)とした。BET比表面積S、及び金属担持割合xから、以下の式(A)より、カーボン担持触媒におけるカーボン担体のBET比表面積S(m/g−カーボン)を算出した。
S=S×{(100−x)/100} 式(A)
2−2.電位差滴定による触媒評価
実施例1−2及び比較例1−3のカーボン担持触媒について、電位差滴定を行った。
まず、0.1M KNO水溶液を用意し、0.5M KOH水溶液でpH=12に調整した。これをアルカリ水溶液とした。
アルカリ水溶液及び99.5%エタノールを用い、水とエタノールのモル比が水:エタノール=4:1となるように、アルカリ水溶液とエタノールを混合し、アルカリ溶液100mLを調製した。二酸化炭素等の酸性ガスの混入によりpHが上昇しないように、アルカリ溶液中に窒素ガスを常にバブリングさせた。
アルカリ溶液の調製と並行して、上記BET比表面積の測定結果に基づき、カーボン担持触媒の総表面積が20mとなるように、測定容器にカーボン担持触媒を秤量した。秤量したカーボン担持触媒に、アルカリ溶液50mLを添加し、触媒懸濁液を調製した。
窒素ガスでバブリングしながら、得られた触媒懸濁液をホモジナイザー(連続式超音波分散機GSCVP−600(株式会社ギンセン製)、出力:50%、最大出力:600W)により分散させた。ホモジナイザーによる分散条件は、分散時間(オンタイム)を60秒間、停止時間(オフタイム)を60秒間とし、これら分散時間及び停止時間を交互に2回ずつ行った。したがって、オンタイムの総時間は120秒間である。
ホモジナイザーによる分散処理後、溶媒とカーボン担持触媒とを十分馴染ませるために、窒素ガスでバブリングしながら、スターラーを用いて触媒懸濁液を12時間攪拌した。
攪拌後の触媒懸濁液にアルカリ溶液をさらに50mL加え、総体積を100mLとした。25℃に設定した恒温槽に移し、引き続き攪拌及び窒素ガスバブリングを施しながら、触媒懸濁液の温度が25℃になるのを待った。
図1に示した滴定装置を用い、触媒懸濁液中に窒素をバブリングさせながら、触媒懸濁液に対し酸溶液を滴下して電位差滴定を行い、滴定曲線を得た。具体的な滴定条件を下記に示す。
・触媒懸濁液:カーボン担持触媒試料、及び0.1M KNO水溶液とエタノールの混合溶液100mL(窒素を予め30分間バブリングさせた)
・触媒懸濁液の雰囲気:窒素雰囲気下
・触媒懸濁液の液温:25℃
・比較電極:銀塩化銀電極
・酸溶液:0.05M HSO水溶液
・滴下速度:60秒毎に0.05mL
図3は実施例1及び比較例1の電位差滴定曲線のグラフであり、図4は実施例2、比較例2、及び比較例3の電位差滴定曲線のグラフである。図3及び図4は、縦軸に電位(V vs.Ag/AgCl)を、横軸に硫酸の滴下量(mL/m)を、それぞれとったグラフである。横軸に示す硫酸の滴下量は、カーボン担持触媒の単位表面積あたりの滴下量(mL/m)に換算された値である。
図3及び図4の縦軸の電位は、触媒懸濁液の液性を示す。すなわち、0V(vs.Ag/AgCl)がpH7に相当し、0Vよりも電位が0.06V大きくなるごとにpHは約1ずつ小さくなり(すなわち液性が酸性となり)、その反対に、0Vよりも電位が0.06V小さくなるごとにpHは約1ずつ大きくなる(すなわち液性がアルカリ性となる)。なお、本実施例に使用される触媒懸濁液の溶媒は、エタノール等を含む混合溶媒であるため、正確なpHを算出することが難しい。その理由は、当該混合溶媒の標準pH校正液が市販されていないためである。したがって、本実施例においては、比較電極(参照極)に対する電位という相対値で表示することとした。
図3及び図4の横軸の硫酸の滴下量は、左端が滴下量0を示し、右に行くほど滴下量が増すものとする。
図3から分かる通り、実施例1のグラフ(黒丸のプロット)は、pHがアルカリ性から酸性へと急速に変わる、いわゆるpHジャンプが、比較的少ない硫酸の滴下量により生じている。一方、比較例1のグラフ(白三角のプロット)は、−0.05〜0.05V(vs.Ag/AgCl)付近及び0.05V〜0.15V(vs.Ag/AgCl)付近でそれぞれ電位変化が乏しくなり、グラフが平坦になっている。そのため、比較例1においては、電位差滴定の終了までに費やされる硫酸の滴下量が、実施例1よりも多い。
以上より、実施例1のカーボン担持触媒においては、当該触媒表面において硫酸と酸塩基反応を起こす要因がほとんどないため、触媒懸濁液におけるアルカリ性から酸性への液性の移行が速やかに生じていることが推測される。一方、比較例1のカーボン担持触媒においては、当該触媒表面において硫酸と酸塩基反応を起こす何らかの要因が存在するため、触媒懸濁液が酸性を示すまでに、実施例1より多くの硫酸が滴定に費やされることが分かる。また、比較例1のグラフにおいては、−0.05〜0.05V(vs.Ag/AgCl)付近及び0.05V〜0.15V(vs.Ag/AgCl)付近の2か所においてグラフの平坦部が現れていることから、比較例1のカーボン担持触媒は、硫酸と反応する少なくとも2つの要因を抱えていることが推測される。
図4から分かる通り、実施例2のグラフ(黒丸のプロット)、比較例2のグラフ(白三角のプロット)、及び比較例3のグラフ(白四角のプロット)は、上記比較例1と同様に、−0.05〜0.05V(vs.Ag/AgCl)付近及び0.05V〜0.15V(vs.Ag/AgCl)付近に平坦部が見られる。しかし、0.05V〜0.15V(vs.Ag/AgCl)付近の平坦部に着目すると、実施例2、比較例2、比較例3の順で、当該平坦部の長さが短いことが分かる。これは、電位サイクル数をより多く施した実施例2の方が、当該電位サイクル数の少ない比較例2、及びパラジウム表面等のクリーニングを行わなかった比較例3と比較して、当該平坦部において消費される硫酸の滴下量が少ないことを意味している。当該平坦部については、いかなる酸塩基反応が生じているか、図4のみからは特定できない。しかし、(1)パラジウム粒子表面に対して施す電位サイクル数を増やすことにより当該平坦部が縮まることや、(2)カーボン担持触媒のBET比表面積が比較例3、比較例2、実施例2の順に大きいこと等から、当該平坦部は、触媒表面の不純物に由来して生じるものであると推測される。
カーボン表面には、パラジウム粒子を担持する工程や、大気下で保存しているときなど、さまざまな条件下で不純物が付着する。カーボン表面に不純物が存在すると、コアシェル合成時にカーボン上の不純物同士の相互作用によりカーボンが凝集しやすくなり、Cu−UPDにおける銅被覆時に電位が均一に印加されず、パラジウム粒子に対する銅の被覆が良好に進行しないことが考えられる。パラジウム粒子に対する銅の被覆反応の進行に妨げがあれば、その後の銅と白金の置換反応にも支障が生じる。また、カーボン表面に不純物が存在した場合、当該不純物上に銅及び/又は白金が析出する可能性もあり、白金最外層によってパラジウム粒子が十分に被覆されないことも考えられる。
さらに、図4におけるPdO(II)・xHOのグラフ(xのプロット)には、−0.05〜0.05V(vs.Ag/AgCl)付近にのみ平坦部が見られる。したがって、比較例1等のグラフに見られる−0.05〜0.05V(vs.Ag/AgCl)付近の平坦部は、酸化パラジウムと硫酸との反応に由来するものと推測される。すなわち、合成後のカーボン担持触媒において、コアであるパラジウム粒子が露出していた場合、当該露出部分には酸化パラジウムが含まれると考えられる。その結果、電位差滴定曲線において、−0.05〜0.05V(vs.Ag/AgCl)付近に平坦部となって、酸化パラジウムの存在が示される。したがって、当該平坦部で消費された硫酸の滴下量から、露出した酸化パラジウム量を求めることも可能であり、パラジウム粒子に対する白金最外層の被覆率も評価可能であると考えられる。
なお、図3から分かる通り、実施例1のカーボン担持触媒は、−0.05〜0.05V(vs.Ag/AgCl)付近の平坦部がない。したがって、実施例1のカーボン担持触媒は、パラジウム粒子に対する白金最外層の被覆率が高いため、パラジウム粒子が触媒表面に露出していないこと、並びに、触媒表面に存在する不純物及び官能基が少ないことが予測される。
以上のように、実施例1のデータにおいては、0.05V〜0.15V(vs.Ag/AgCl)付近に平坦部が存在せず、また、−0.05〜0.05V(vs.Ag/AgCl)付近の平坦部もごく短いものである。したがって、実施例1のカーボン担持触媒の表面には、酸塩基反応を起こす不純物や官能基等がほとんど存在しないことが予測される。
また、実施例2のデータにおいては、比較例2及び比較例3のデータよりも0.05V〜0.15V(vs.Ag/AgCl)付近の平坦部が短い。したがって、実施例2のカーボン担持触媒の表面には、酸塩基反応を起こす不純物や官能基等が少ないことが予測される。
以上の考察は、電位差滴定曲線のデータを踏まえた定性的な考察であるが、以下、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量の値を参照しながら、各カーボン担持触媒の性質を定量的に検討する。
図5〜図7は、実施例1−実施例2及び比較例1−比較例3のカーボン担持触媒における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量を示したグラフである。これらのグラフは、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量(dV/d(mL/m))を縦軸に、電位(V vs.Ag/AgCl)を横軸に、それぞれとったグラフである。図5の横軸の範囲は0.050〜0.150V(vs.Ag/AgCl)であり、図6の横軸の範囲は0.080〜0.120V(vs.Ag/AgCl)であり、図7の横軸の範囲は0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)である。すなわち、図6は図5を横軸方向に拡大したグラフであり、図7は図6を横軸方向にさらに拡大したグラフである。また、図8〜図10は、説明の便宜のため、図5〜図7をそれぞれ縦軸方向にさらに拡大したグラフである。図8〜図10のグラフ中の一点鎖線は、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量の値が0.8(dV/d(mL/m))のラインを示す。
図5〜図7から明らかなように、実施例1のグラフは、0.050〜0.150V(vs.Ag/AgCl)の全領域において、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量の値が3(dV/d(mL/m))を超える。したがって、実施例1のカーボン担持触媒は、当該電位の全領域において、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量が大きく、アルカリ性から酸性へのpHジャンプが十分に大きいと評価できる。
また、縦軸方向に拡大した図8〜図10から明らかなように、実施例2のグラフは、0.050〜0.150V(vs.Ag/AgCl)の全領域において、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量の値が0.8(dV/d(mL/m))を超える(グラフ中の一点鎖線参照)。したがって、実施例2のカーボン担持触媒は、当該電位の全領域において、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量が大きく、アルカリ性から酸性へ速やかに液性が移行すると評価できる。
図11は、実施例1及び比較例1のカーボン担持触媒における、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量を示したグラフである。グラフの縦軸及び横軸は、横軸の範囲を−0.02〜0.02V(vs.Ag/AgCl)とした以外は、図5〜図10と同様である。図11中の一点鎖線は、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量の値が2(dV/d(mL/m))のラインを示す。
図11から明らかなように、実施例1のグラフは、−0.02〜0.02V(vs.Ag/AgCl)の全領域において、酸溶液の滴下量に対する電位の変化量の値が2(dV/d(mL/m))を超える。したがって、実施例1のカーボン担持触媒は、当該電位の全領域においても、アルカリ性から酸性へのpHジャンプが十分に大きいと評価できる。
2−3.触媒活性の測定
(1)MEA評価
実施例1及び比較例1のカーボン担持触媒についてそれぞれMEAを作製し、当該MEAのセル電圧を測定することによって、各触媒の触媒活性を評価した。
(a)MEAの作製
まず、各カーボン担持触媒0.9g及び水14.24gを遠心攪拌により混合し、カーボン担持触媒と水を馴染ませた。次に、当該混合物にエタノール8.16gを加え、同様に遠心攪拌により混合物全体を均一にした。さらに、当該混合物に電解質(デュポン社製、DE2020CS)1.9gを加え、同様に遠心攪拌により混合物を均一にし、触媒インク原料を得た。
乾燥雰囲気下、触媒インク原料20mL、及び破砕用PTFEボール(φ=2.4mm)60gを、PTFE製ポットに入れ、密閉した。その後、容器を遊星型ボールミル装置に取り付け、台盤回転数600rpm、20℃の温度条件下、処理時間1時間の条件でメカニカルミリングを行った。メカニカルミリング終了後、メッシュにより容器内の混合物を濾過してボールを除き、触媒インクを得た。
上記触媒インクをスプレーガン(Nordson社製、SpectrumS−920N)に充填し、電解質膜(デュポン社製、NR211)の一方の面(カソード側)に、触媒量300〜500μg/cm塗布した。また、電解質膜の他方の面(アノード側)には、市販の白金担持カーボン(田中貴金属工業製)を、電極面積あたりの白金量を0.1mgとした以外は、カソード側と同様にインクを作成し、塗布した。このようにして、面積13cmの膜・電極接合体を得た。
以下、説明の便宜のため、実施例1又は比較例1のカーボン担持触媒を原料とする膜・電極接合体を、それぞれ実施例1の膜・電極接合体、又は比較例1の膜・電極接合体と称する場合がある。
(b)MEAを用いたIV評価
実施例1及び比較例1の膜・電極接合体について、以下の条件下でIV評価を実施し、セル電圧を測定した。
・電流密度:0.2A/cm
・燃料ガス:水素ガス(水素ストイキ=1.2)
・酸化剤ガス:空気(空気ストイキ=1.4)
・温度:60℃
・湿度:アノード/カソード露点55℃
図12は、実施例1及び比較例1の膜・電極接合体のセル電圧を比較した棒グラフである。
図12より、比較例1の膜・電極接合体のセル電圧は0.816Vであるのに対し、実施例1の膜・電極接合体のセル電圧は0.828Vである。
電流密度0.2A/cmの条件下において、0.012Vも電圧が大きいということは、実用的に非常に重要である。自動車用の燃料電池スタックに、例えば300cmのセルが400枚使われると仮定する。その場合、1つの燃料電池セルにおいて、従来の燃料電池セルよりも0.012Vも電圧が大きいということは、燃料電池スタック全体において、0.2A/cm×300cm×0.012V×400枚=288Wの出力の違いとなる。したがって、燃料電池セルにおける0.012Vの差は、燃料電池スタックにおいて極めて大きな出力差となる。また0.2A/cmという低電流領域で0.012Vの差が生じるならば、0.2A/cmよりも高電流領域においては、燃料電池スタック全体としてさらに大きな電圧差となる。
(2)RDE評価
実施例2、比較例2、及び比較例3のカーボン担持触媒について、回転ディスク電極(
Rotating Disk Electrode;以下RDEと称する場合がある)を用いて、各触媒の質量活性を求めた。
(a)回転ディスク電極の調製
カーボン担持触媒を乾燥させ、得られた粉末を乳鉢によりすりつぶした。この粉末を、超純水6.0mL、イソプロパノール1.5mL、及び5%パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマー系電解質(Nafion(登録商標)、デュポン株式会社製)分散液35μLの混合溶液中に分散させた。得られた分散液をRDEに塗布し、自然乾燥させた。
(b)RDE測定
調製後のRDEを0.1M過塩素酸水溶液中に浸漬し、1,600rpmで回転させながら、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)を行った。このとき、0.1M過塩素酸水溶液としては、予め酸素ガスをガス流速30mL/minで30分間以上バブリングさせたものを用いた。
LSVの手順としては、まず、電位を1.05Vから0.05V(vs.RHE)の範囲で10mV/秒の速度で繰り返し掃引した。0.9V(vs.RHE)及び0.35V(vs.RHE)における電流値が安定するまで掃引を繰り返した後、得られるリニアスイープボルタモグラムの還元波より、0.9V(vs.RHE)の電流値を酸素還元電流値(I0.9)、0.35V(vs.RHE)の電流値を拡散限界電流値(Ilim)とし、これらの電流値から、下記式(2)に基づき活性化支配電流値(Ik)を求めた。
活性化支配電流値(Ik)を、RDE上に塗布した白金量(g)により除することによって、白金の単位質量当たりの触媒活性(A/g−Pt)を算出した。
Ik=(Ilim×I0.9)/(Ilim−I0.9) 式(2)
(上記式(2)中、Ikは活性化支配電流(A)を、Ilimは拡散限界電流(A)を、I0.9は酸素還元電流(A)を、それぞれ指す。)
図13は、実施例2、比較例2、及び比較例3のカーボン担持触媒の質量活性を比較した棒グラフである。
図13より、比較例2の質量活性は630(A/g−Pt)、比較例3の質量活性は500(A/g−Pt)であるのに対し、実施例2の質量活性は685(A/g−Pt)である。したがって、実施例2の質量活性は、比較例2及び比較例3の質量活性よりも55(A/g−Pt)以上高い。
質量活性が55(A/g−Pt)以上高いということは、実用的に非常に重要である。今日の車載用燃料電池の技術においては、自動車1台に対し50〜100gの白金が使われるとされている。したがって、カーボン担持触媒における55(A/g−Pt)の差は、自動車全体では、55(A/g)×(50〜100(g−Pt))=2750〜5500Aの電流値の違いとなる。よって、カーボン担持触媒における55(A/g−Pt)の差は、自動車全体において極めて大きな電流値の差となって表れる。
3.触媒評価のまとめ
上述した電位差滴定による触媒評価においては、実施例1のカーボン担持触媒の表面には不純物や官能基等がほとんど存在しないと評価されたのに対し、比較例1のカーボン担持触媒の表面には不純物や官能基等が存在すると評価された。一方、上述したMEA評価においては、実施例1のMEAは比較例1のMEAよりも0.012Vも電圧が大きいことが明らかとなった。
また、上述した電位差滴定による触媒評価においては、実施例2、比較例2、比較例3の順に、カーボン担持触媒の表面における不純物や官能基等の量が少ないと評価された。一方、上述したRDE評価においては、実施例2、比較例2、比較例3の順に質量活性が大きいことが明らかとなった。
よって、電位差滴定による触媒活性評価は、従来から用いられているMEA評価やRDE評価のような触媒活性評価と同様の結論を導き出すことができる、精度の極めて高い評価方法であることが分かる。また、電位差滴定による触媒活性評価は、これら従来技術による評価方法よりもより簡便かつ速やかに触媒性能を予測できる方法であることが分かる。
1 滴定容器
2 恒温槽
3 スターラー
4 スターラーバー
5 触媒懸濁液
6 pH電極
7 比較電極
8 温度センサ
9 ビュレット
10 滴下された酸溶液
11 窒素ガスライン
12 窒素の気泡
100 滴定装置

Claims (8)

  1. パラジウム含有粒子、及び当該パラジウム含有粒子を被覆する白金含有最外層を備える触媒微粒子、並びに、当該触媒微粒子を担持したカーボン担体を備えるカーボン担持触媒であり、
    (1)前記パラジウム含有粒子が担持されたカーボン担体を準備し、(2)銅アンダーポテンシャル法により前記パラジウム含有粒子に銅単原子層を析出させ、(3)前記銅単原子層を前記白金含有最外層に置換することによる前記触媒微粒子の合成を経て製造され、
    前記カーボン担持触媒とアルカリ溶液との混合物中に酸溶液を滴下し電位を測定する電位差滴定法により得られる滴定曲線において、前記電位が0.095〜0.105V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上であることを特徴とする、カーボン担持触媒。
  2. 前記滴定曲線において、前記電位が0.080〜0.120V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上である、請求項1に記載のカーボン担持触媒。
  3. 前記滴定曲線において、前記電位が0.050〜0.150V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が0.8(dV/d(mL/m))以上である、請求項1又は2に記載のカーボン担持触媒。
  4. 前記滴定曲線において、前記電位が−0.020〜0.020V(vs.Ag/AgCl)である範囲内における、前記酸溶液の滴下量に対する前記電位の変化量が2(dV/d(mL/m))以上である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のカーボン担持触媒。
  5. 前記アルカリ溶液は、0.1M KNO水溶液及び0.5M KOH水溶液を混合して得られるアルカリ水溶液と、99.5%エタノールとの混合溶液であり、
    前記アルカリ水溶液のpHは12であり、
    前記アルカリ溶液中における水とエタノールのモル比は、水:エタノール=4:1である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のカーボン担持触媒。
  6. 前記電位差滴定法を実施する際の前記アルカリ溶液の液温が、25℃である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のカーボン担持触媒。
  7. アルカリ溶液を不活性ガスによりバブリングする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のカーボン担持触媒。
  8. 前記酸溶液は0.05M硫酸である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のカーボン担持触媒。
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