JP2015071702A - 有機増感色素、色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュール - Google Patents

有機増感色素、色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュール Download PDF

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Hirofumi Mogi
啓史 茂木
田中 洋充
Hiromitsu Tanaka
洋充 田中
加藤 直彦
Naohiko Kato
直彦 加藤
樋口 和夫
Kazuo Higuchi
和夫 樋口
将一 土井
Masakazu Doi
将一 土井
克芳 水元
Katsuyoshi Mizumoto
克芳 水元
豊田 竜生
Tatsuo Toyoda
竜生 豊田
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Abstract

【課題】色素増感型太陽電池の耐久性をより向上する。【解決手段】色素増感型太陽電池モジュール10は、色素増感型太陽電池40を複数備えている。この色素増感型太陽電池40は、有機増感色素を含む多孔質半導体層24を透明導電性基板14上に備えた光電極20と、光電極20に向かい合うように配置された対極30と、光電極20と対極30との間に介在する電解液を含む電解質層26と、を備えている。有機増感色素は、ドナー部位とアクセプター部位とが結合した構造の有機増感色素であって、アクセプター部位は、ロダニン系骨格を備え、このロダニン系骨格の窒素のうちの1以上にアリール基を介して2個以上のカルボキシ基が結合している。【選択図】図1

Description

本発明は、有機増感色素、色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュールに関する。
近年、金属を持たない、様々な有機色素系化合物が提案されている(例えば、非特許文献1,2、特許文献1〜3参照)。非特許文献1,2では、高い変換効率を有するものとして、ロダニン骨格やダブルロダニン骨格などのロダニン系骨格の窒素にカルボン酸が結合した構造を有するインドリン色素を提案している。また、特許文献1では、光電変換特性に優れたものとして、ロダニン骨格を有し、このロダニン骨格に含まれる窒素にアルキレン基やアリーレン基を介してカルボキシ基が結合したものを提案している。
また、特許文献2では、ロダニン骨格と、ロダニン骨格に含まれる窒素原子に結合したアルキル鎖と、そのアルキル鎖に結合した2つ又は3つのカルボン酸基とを有するものを提案している。こうしたものでは、水分による担持体からの色素の剥離を抑制するなどして、耐久性を向上できるとしている。また、特許文献3では、ダブルロダニン骨格を有し、各ロダニン骨格に含まれるチアゾリジン環骨格の窒素原子の一方又は両方にアンカー基(カルボキシルメチル基、カルボキシルウンデシル基など)が結合し、残りにアルキル基が結合したものを提案している。こうしたものでは、光吸収率及び光電変換特性を高めることができるとしている。
特開2004−200068号公報 特開2011−181286号公報 特開2010−272408号公報
Chemical Communication, 2003, 3036-3037 Journal of the American Chemical Society 2004, 126, 12218-12219
しかしながら、非特許文献1,2及び特許文献1〜3のものでは、耐久性がまだ十分でないことがあった。このため、耐久性をより高めることが望まれていた。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、耐久性をより高めることのできる有機増感色素を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために、本発明者らは、ロダニン系骨格を備えた色素に、フタル酸やイソフタル酸を導入して色素を合成したところ、耐久性をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の有機増感色素は、
ドナー部位とアクセプター部位とが結合した構造の有機増感色素であって、
前記アクセプター部位は、ロダニン系骨格を備え、該ロダニン系骨格の窒素のうちの1以上にアリール基を介して2個以上のカルボキシ基が結合しているものである。
本発明の色素増感型太陽電池は、
上述した有機増感色素を含む半導体層を透明導電性基板上に備えた光電極と、
前記光電極に向かい合うように配置された対極と、
前記光電極と前記対極との間に介在する電解質層と、
を備えたものである。
本発明の色素増感型太陽電池モジュールは、
上述した色素増感型太陽電池を複数備えたものである。
本発明の有機増感色素、色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュールは、色素増感型太陽電池の耐久性をより向上できる。このような効果が得られる理由は、以下のように推察される。すなわち、本発明の有機増感色素では、ロダニン系骨格の窒素に、アリール基を介して2個以上のカルボキシ基が結合しているが、このアリール基とアリール基を介して結合した2個以上のカルボキシ基が、アンカー基として機能すると考えられる。そして、こうした有機増感色素では、酸性度の高いアンカー基を有することにより、チタニアなどの半導体との結合力が強くなり、半導体からの色素の脱離が抑制されるため、耐久性をより高めることができると推察される。
色素増感型太陽電池モジュール10の構成の概略の一例を示す断面図。 色素増感型太陽電池40の構成の概略の一例を示す断面図。 フタル酸アンカー基の合成経路を示す説明図。 フタル酸アンカー基の導入経路を示す説明図。 イソフタル酸アンカー基の合成経路を示す説明図。 イソフタル酸アンカー基の導入経路を示す説明図。 実施例1の有機増感色素のMALDI−MS質量分析結果。 実施例2の有機増感色素のMALDI−MS質量分析結果。 実施例1の有機増感色素の1H−NMR結果。 実施例2の有機増感色素の1H−NMR結果。 実施例1,2及び比較例1の有機増感色素の吸収スペクトル。 実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池の1sun60℃作動耐久試験結果。 実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池の85℃暗所熱耐久試験結果。 各種のカルボン酸の酸解離定数。
本発明の色素増感型太陽電池モジュールの一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、色素増感型太陽電池モジュール10の構成の概略の一例を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る色素増感型太陽電池モジュール10は、透明導電性基板14上に複数の色素増感型太陽電池40(以下セルとも称する)が順次配列した構成となっている。これらのセルは直列に接続されている。この色素増感型太陽電池モジュール10では、各セルの間を埋めるように、シール材32が形成されており、透明導電性基板14とは反対側のシール材32の面に平板状の保護部材34が形成されている。本実施形態に係る色素増感型太陽電池40は、光が透過する透明基板11の表面に透明導電膜12が形成されている透明導電性基板14と、透明導電膜12に形成され色素を含む多孔質半導体層24と、多孔質半導体層24に対して電解質層26を介して設けられた対極30と、を備えている。光電極20は、透明導電性基板14と、透明基板11の受光面13の反対側の面に分離形成された透明導電膜12に配設され受光に伴い電子を放出する多孔質半導体層24とを備えている。この色素増感型太陽電池40は、多孔質体に電解液を含んで形成された電解質層26を備えており、電解液を介して発電可能な構成となっている。
透明導電性基板14は、透明基板11と透明導電膜12とにより構成され、光透過性及び導電性を有するものである。具体的には、フッ素ドープSnO2コートガラス、ITOコートガラス、ZnO:Alコートガラス、アンチモンドープ酸化スズ(SnO2−Sb)コートガラス等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものも使用できる。この透明導電性基板14の透明導電膜12側の両端には、集電電極16,17が設けられており、この集電電極16,17を介して色素増感型太陽電池40で発電した電力を利用することができる。
透明基板11としては、例えば、透明ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などが挙げられ、このうち、透明ガラスが好ましい。この透明基板11は、透明なガラス基板、ガラス基板表面を適当に荒らすなどして光の反射を防止したもの、すりガラス状の半透明のガラス基板など光を透過するものなどとしてもよい。透明導電膜12は、例えば、透明基板11上に酸化スズを付着させることにより形成することができる。特に、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等の金属酸化物を用いれば、好適な透明導電膜12を形成することができる。透明導電膜12は、所定の間隔に溝18が形成されており、この溝18の幅に相当する間隔を隔てて複数の透明導電膜12の領域が分離形成されている。
多孔質半導体層24は、光増感剤である有機増感色素と、有機増感色素を含む多孔質のn型半導体層とにより形成されている。n型半導体としては、金属酸化物半導体や金属硫化物半導体などが適しており、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、硫化カドミウム(CdS)、硫化亜鉛(ZnS)のうち少なくとも1以上であることが好ましく、このうち多孔質の酸化チタンがより好ましい。これらの半導体材料を微結晶又は多結晶状態にして薄膜化することにより、良好な多孔質のn型半導体層を形成することができる。特に、多孔質の酸化チタン層は、光電極20が有するn型半導体層として好適である。また、酸化チタンとしては、伝導帯の下端のエネルギー準位がより高く、開放端電圧がより高いことから、ルチル型TiO2よりもアナターゼ型TiO2が好ましい。
有機増感色素は、電子供与性の部位であるドナー部位と電子吸引性の部位であるアクセプター部位とが結合した構造を有している。
有機増感色素において、アクセプター部位は、ロダニン系骨格を備え、このロダニン系骨格の窒素のうちの1以上に、アリール基を介して2個以上のカルボキシ基が結合している。なお、ロダニンは、チアゾリジン環の4位にオキソ基(=O)、2位にチオキソ基(=S)が結合したものである。ここで、ロダニン系骨格としたのは、チアゾリジン環を1つ有するロダニン骨格のほか、チアゾリジン環を2つ有するダブルロダニン骨格や、チアゾリジン環を3つ有するトリプルロダニン骨格など、複数のチアゾリジン環を有するものが含まれることを意図したものである。ロダニン系骨格は、チアゾリジン環を1つ有するロダニン骨格やチアゾリジン環を2つ有するダブルロダニン骨格が好ましい。比較的容易に合成することができるからである。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基などが挙げられる。カルボキシ基は、アリール基がフェニル基の場合、フェニル基の2位から6位のうちの2つ以上に結合していればよいが、2つ又は3つに結合していることが好ましい。2つに結合している場合、3位(又は5位)と4位に結合している(フタル酸)か、3位と5位に結合している(イソフタル酸)ことが好ましい。3つに結合している場合、3位と4位と5位に結合していることが好ましい。メタ位置やパラ位置にカルボキシ基を導入すると、変換効率の低下を抑制できると考えられるからである。
ここで、アクセプター部位において、ロダニン系骨格の窒素に結合した、アリール基及びアリール基を介して結合した2以上のカルボキシ基によって構成される部分は、上述したn型半導体に結合するアンカー基として機能すると考えられる。そのため、以下では当該部分をアンカー基とも称する。
アクセプター部位は、ロダニン系骨格の窒素のうちの1つにアンカー基が結合している、すなわち、ロダニン系骨格の窒素のうちの1つにアリール基を介して2個以上のカルボキシ基が結合しているものとしてもよい。また、ロダニン系骨格の窒素のうちの複数にアンカー基が結合しているものとしてもよい。ここで、アンカー基は、ロダニン系骨格を構成するチアゾリジン環の窒素のうちのどの窒素に結合していてもよく、例えば、ロダニン系骨格を構成するチアゾリジン環のうち最もドナー部位に近いチアゾリジン環の窒素に結合しているものとしてもよい。また、ロダニン系骨格の窒素のうちの複数にアンカー基が結合している場合、アンカー基は、全て同種でもよいし、全て異種でもよいし、一部が同種で一部が異種でもよい。
このアクセプター部位は、具体的には、例えば、ロダニン骨格を有する式(1)に示すものとしてもよい。また、ダブルロダニン骨格を有する式(2)〜式(4)に示すものとしてもよい。式(1)〜式(3)において、R1〜R5は、2個以上がカルボキシ基であればよく、R1〜R5のうちの2個以上3個以下がカルボキシ基であることが好ましい。また、R1〜R5のうちカルボキシ基以外は水素である。R1〜R5のうち、2個がカルボキシ基である場合、R2(又はR4)とR3の2個がカルボキシ基であるか、R2とR4の2個がカルボキシ基であることが好ましい。R1〜R5のうち、3個がカルボキシ基である場合、R2とR3とR4の3個がカルボキシ基であることが好ましい。式(3)及び式(4)において、R6〜R10は、2個以上がカルボキシ基であればよく、R6〜R10のうちの2個以上3個以下がカルボキシ基であることが好ましい。また、R6〜R10のうちカルボキシ基以外は水素である。R6〜R10のうち、2個がカルボキシ基である場合、R7(又はR9)とR8の2個がカルボキシ基であるか、R7とR9の2個がカルボキシ基であることが好ましい。R6〜R10のうち、3個がカルボキシ基である場合、R7とR8とR9の3個がカルボキシ基であることが好ましい。式(2)及び式(4)において、Rは、アルキル基である。
(式中、R1〜R5は、2個以上がカルボキシ基であり、その他が水素である。)
(式中、R1〜R5は、2個以上がカルボキシ基であり、その他が水素である。また、Rは、アルキル基である。 )
(式中、R1〜R5は、2個以上がカルボキシ基であり、その他が水素である。また、R6〜R10は、2個以上がカルボキシ基であり、その他が水素である。)
(式中、R6〜R10は、2個以上がカルボキシ基であり、その他が水素である。また、Rは、アルキル基である。)
この有機増感色素において、ドナー部位は、例えば、インドリン骨格やカルバゾール骨格、トリフェニルアミン骨格などを有するものとすることができる。このうち、インドリン骨格を有するものが好ましい。
インドリン骨格を有する有機増感色素としては、例えば、D149(式(5)参照)として知られている有機増感色素のアンカー基を上述したアンカー基で置換した構造を有するものが挙げられる。こうしたものとしては、例えば、式(6)に示すものなどが挙げられる。より具体的には、例えば、式(6)においてR2(又はR4)及びR3がカルボキシ基であり、R1,R4(又はR2),R5が水素であるものとしてもよい。こうしたものでは、アンカー基はフタル酸(phthalic acid)であり、以下ではD149PHとも称する。また、例えば、式(6)においてR2及びR4がカルボキシ基であり、R1,R3,R5が水素であるものとしてもよい。こうしたものでは、アンカー基はイソフタル酸(isophthalic acid)であり、以下ではD149IPHとも称する。
(式中、R1〜R5は、2個以上がカルボキシ基であり、その他が水素である。 )
この有機増感色素は、多孔質のn型半導体の表面に吸着させるものとしてもよい。この吸着は、化学吸着や物理吸着等によって行うことができる。具体的には、多孔質のn型半導体層を透明導電性基板14上に形成したのち、このn型半導体層へ有機増感色素を含む溶液を滴下して乾燥する方法や、n型半導体層を形成させた透明導電性基板14を有機増感色素を含む溶液に浸漬させたのち乾燥する方法などにより作製することができる。
電解質層26は、対極30と光電極20との間の電子の受け渡しを媒介する層であり、例えば、液状またはゲル状の電解質を含むものとしてもよい。この電解質層26は、例えば、多孔質体に電解液を含む層とすることが好ましい。この多孔質体は、電解液を保持可能であり、電子伝導性を有さない多孔体であれば特に限定されず、例えば、多孔質体として、ルチル型の酸化チタン粒子により形成した多孔体を使用してもよい。この多孔質体は、セパレータの機能を有している。多孔質体は、多孔質半導体層24の裏面25を覆う部分と、多孔質半導体層24のうち裏面25に隣接する側面に密着する顎状の縁部分とを有している。この鍔状の縁部分は、透明基板11に直接、接触している。透明導電性基板14と電解質層26の多孔質体との接続部において、透明導電膜12の一部は、例えばレーザスクライブ等の技術により完全に削りとられ、透明基板11の表面が露出される深さの溝18が形成されている。そして、この溝18に電解質層26の多孔質体の鍔状に形成された縁部分が挿入されている。
電解質層26に含まれる電解液は、イオン性液体を含んでいてもよい。イオン性液体としては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EMI−TFSI)、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(AMII−TFSI)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラシアノボレート(EMI−TCB)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(BMI−BF4)などのイミダゾリウム塩が挙げられる。また、電解液は、イオン性液体に代えて又は加えて有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、メトキシプロプオニトリル、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、γ−ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒などのうち1以上などが挙げられる。なお、電解液は、イオン性液体を含むことが好ましい。蒸気圧が低く揮発性の少ない、粘性の高いイオン性液体を電解液の溶媒として用いることにより、有機増感色素の溶解性が有機溶媒に対して低く、有機増感色素の脱離をより抑制できると考えられるからである。
電解質層26に含まれる電解液は、酸化還元対を含むものとしてもよい。この酸化還元対によって、光電極20と、対極30との間の電子の受け渡しが媒介される。なお、この電解液の一部は、通常、多孔質体である光電極20に含浸している。酸化還元対としては、I3 -/I-、Br3 -/Br-、ハイドロキノン/キノン、コバルトイオン、鉄イオン等が挙げられ、これらの中でも、特にI3 -/I-を好適に用いることができる。また、電解液には、酸化還元対としてヨウ素を含むイオン性液体(ヨウ素系イオン性液体)を含むことが好ましい。このヨウ素系イオン性液体としては、例えば、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(以下、PMIIと略記する)や、1,2ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド(DMPII)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヨージド、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムヨージド、1,3−ジメチルイミダゾリウムヨージド、1,2ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージドなどが挙げられる。
電解質層26に含まれる電解液は、添加剤を含むものとしてもよい。添加剤としては、例えば、グアニジンチオシアネート(GuSCN)や、4−tert−ブチルピリジン(4TBP)、N−メチル−ベンゾイミダゾール等をそれぞれ適宜加えてもよい。電解液中の添加剤の濃度は0.001mol/L以上1.0mol/L以下の範囲であることが好ましい。
対極30は、電解質層26の裏面27及び鍔状の縁部分とに接触するよう、鍔状の縁部分を有する断面L字状に形成されている。この対極30は、電解質層26の裏面に接続されていると共に、鍔状の縁部分が接続部21を介して隣側の透明導電膜12に接続されている。電解質層26の裏面27と接触するこの対極30の面は、光電極20に対して所定の間隔を隔てて対向している。対極30としては、導電性及び電解質層26との接合性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Pt,Au,カーボンなどが挙げられ、このうちカーボンが好ましい。この対極30は、例えば、カーボンブラック粒子と、グラファイト粒子と、アナターゼ型の酸化チタン粒子等の導電性酸化物粒子とを構成材料として形成された多孔質の炭素電極としてもよい。なお、この対極30には、例えば、電極反応の速度をより速やかに進行させる観点から、Pt微粒子などの触媒微粒子が分散担持されていてもよい。
シール材32は、各色素増感型太陽電池40の外周側を覆うように形成されており、電解質層26中に充填されている電解質が外部へ漏れ出すことを防止することを主な目的として設けられている。シール材32としては、例えば、絶縁性の部材であれば特に限定されずに用いることができ、ポリエチレン、アイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂フィルム、エポキシ系接着剤等を使用することができる。
保護部材34は、色素増感型太陽電池40の保護を図る部材であり、例えば、防湿フィルムや保護ガラスなどとすることができる。
この色素増感型太陽電池40に対して、透明基板11の受光面13側から光を照射すると、透明導電膜12の受光面15及び受光面23を介して光が多孔質半導体層24へ到達し、色素が光を吸収して電子が発生する。電子は光電極20から透明導電膜12、接続部21を経由して隣の対極30へ移動する。色素増感型太陽電池40では、この電子の移動により起電力が発生し、電池の発電作用が得られる。
この色素増感型太陽電池モジュール10では、多孔質半導体層24に上述したアンカー基を備えた有機増感色素を用いているため、例えば、耐久性をより向上することができる。この理由は、以下のように推察される。すなわち、上述した有機増感色素では、酸性度の高いアンカー基を有することにより、チタニアなどの半導体との結合力が強くなり、半導体からの色素の脱離が抑制されるため、耐久性をより向上することができると考えられる。ここで、本願の有機増感色素では、アリール基を導入し、電子吸引基であるカルボキシ基をπ共役の芳香環構造上に2個以上導入することにより、酸性度をより強めることができると考えられる。なお、アルキル鎖の先端にカルボキシ基を導入したアンカー基(酢酸(カルボキシメチル)アンカー基など)を導入した場合には、弱い電子供与基の先端にカルボキシ基を導入することによって酸性度は弱くなると考えられる。
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば上述した実施形態では、色素増感型太陽電池モジュール10としたが、特にこれに限定されず、色素増感型太陽電池40としてもよい。図2は、色素増感型太陽電池40の構成の概略の一例を示す断面図である。図2では、図1で説明した構成と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。図2に示すように、色素増感型太陽電池40の単体では、電解質層26や対極30を断面をL字状ではなく、鍔状の縁部分を省略して平板状に形成するものとしてもよい。また、対極30は、例えば透明導電性基板14と同じ構成を有するものを用いるものとしてもよいし、透明導電膜12に白金を付着させたものや、白金などの金属薄膜などとしてもよい。更に、電解質層26は、多孔質体を省略し、光電極20と対極30との空間に電解液を収容したものとしてもよい。
以下には、色素増感型太陽電池40を具体的に作製した例を実施例として説明する。
[有機増感色素の合成]
(実施例1)
実施例1では、有機増感色素として、D149PH(式(7)参照)を用いた。以下では、D149PHの合成方法について説明する。この方法では、まず、フタル酸アンカー基を合成し、その後D149PHを合成した。
(1)フタル酸アンカー基の合成
図3は、フタル酸アンカー基の合成経路を示す説明図である。以下では、図3における工程(a)〜工程(c)について説明する。
工程(a)では、まず、窒素雰囲気下でシュレンクフラスコ中に1,2−ジメチル 4−アミノフタラート(1,2−dimethyl 4−aminophthalate)、トリエチルアミン(Et3N)、テトラヒドロフラン(THF)を入れ、0℃に冷却した。この状態でチオホスゲン(thiophosgene)を滴下し、そのままの状態でゆっくり室温に上昇させながら、一晩撹拌した。反応溶液に水を加え、反応をクエンチし、THFを減圧下で濃縮し、イソプロピルエーテル(IPE)を加え、分液ロートで、目的物の有機溶媒層を分離した。分離した有機層を水と塩化ナトリウム溶液で洗浄し、再度、有機層を分離後、硝酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥した。乾燥材をろ去し、その溶液を濃縮し、酢酸エチルとヘプタン混合溶液を用いてシリカカラム精製を行い目的物A2を得た。
工程(b)では、窒素雰囲気下で、シュレンクフラスコ中に3−エチルロダニン(3−ethylrhodanine)、化合物A2、アセトニトリルを入れ撹拌した。次にジアザビシクロウンデセン(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene:DBU)を滴下し、室温で1時間撹拌した。次に、ブロモ酢酸エチルを滴下し、8時間撹拌しながら加熱還流した。反応後、溶媒を減圧濃縮し、クロロホルムを加えて目的物を抽出した。その抽出した溶媒に2モルの塩酸を滴下しながら加え、pHが2程度になったところで分液ロートを用いてクロロホルム層を分離し、残りの水層をクロロホルムで3回洗浄・抽出した。分離したクロロホルム層を水で洗浄し、さらに塩化ナトリウム溶液で洗浄し、有機溶媒層を分離し、MgSO4で乾燥した。乾燥材をろ去し、その溶液を濃縮した。ここで得た固体をIPEとクロロホルムの混合溶媒を用いてシリカカラムで精製し、目的物A3を得た。
工程(c)では、フラスコ内に化合物A3、酢酸、濃塩酸を入れ、5時間撹拌しながら加熱還流した。反応後に、室温まで冷却し、反応溶液の3倍程度の水をフラスコ内に加え、目的物A4を得た。固体として析出した目的物をろ去し、80℃で4時間減圧乾燥し、黄色粉末の目的物A4を得た。
(2)アンカー基の導入
図4は、フタル酸アンカー基の導入経路を示す説明図である。アルデヒド基をもつインドリン骨格分子とフタル酸アンカー基(A4)を酢酸と酢酸アンモニウム(触媒量)をフラスコ内で混合し、撹拌しながら3時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、氷水を約10倍等量入れて、目的物である有機増感色素を析出させ、ろ過し、水でよく洗浄した。ここで得た目的物を減圧乾燥し、クロロホルムとメタノールの混合溶媒を用いてシリカカラム精製し、実施例1の有機増感色素を得た。
(実施例2)
実施例2では、有機増感色素としてD149IPH(式(8)参照)を用いた。以下では、D149IPHの合成方法について説明する。この方法では、まず、イソフタル酸アンカー基を合成し、その後D149IPHを合成した。
(1)イソフタル酸アンカー基の合成
図5は、イソフタル酸アンカー基の合成経路を示す説明図である。以下では、図5における工程(a)〜工程(c)について説明する。
工程(a)では、まず、窒素雰囲気下でシュレンクフラスコ中に1,3−ジメチル 4−アミノフタラート(1,3−dimethyl 4−aminophthalate)、トリエチルアミン(Et3N)、テトラヒドロフラン(THF)を入れ、0℃に冷却した。この状態でチオホスゲン(thiophosgene)を滴下し、そのままの状態でゆっくり室温に上昇させながら、一晩撹拌した。反応溶液に水を加え、反応をクエンチし、THFを減圧下で濃縮し、酢酸エチルを加え、分液ロートで、目的物の有機溶媒層を分離した。さらに、酢酸エチルを加え目的物を抽出し、分液ロートで分離した。その分離した有機層を水と塩化ナトリウム溶液で洗浄し、再度、有機層を分離後、硝酸マグネジウム(MgSO4)で乾燥した。乾燥材をろ去し、その溶液を濃縮し、酢酸エチルとヘプタン混合溶液を用いてシリカカラム精製を行い目的物B2を得た。
工程(b)では、窒素雰囲気下で、シュレンクフラスコ中に3−エチルロダニン(3−ethylrhodanine)、化合物B2、アセトニトリルを入れ撹拌した。次にジアザビシクロウンデセン(1,8−diazabicyclo[5.4.0]undec−7−ene:DBU)を滴下し、室温で1時間撹拌した。次に、ブロモ酢酸エチルを滴下し、8時間撹拌しながら加熱還流した。反応後、溶媒を減圧濃縮し、クロロホルムを加えて、約30分加熱しながら撹拌し、目的物を溶かした。次に、不溶物をろ去し、クロロホルムを減圧乾燥し、目的物B3を得た。
工程(c)では、フラスコ内に化合物B3、酢酸、濃塩酸を入れ、8時間撹拌しながら加熱還流した。反応後に、室温まで冷却し、反応溶液の5倍程度の水をフラスコ内に加え、目的物B4を得た。固体として析出した目的物をろ去し、80℃で4時間減圧乾燥し、黄色粉末の目的物B4を得た。
(2)アンカー基の導入
図6は、イソフタル酸アンカー基の導入経路を示す説明図である。アルデヒド基をもつインドリン骨格分子とイソフタル酸アンカー基(B4)を酢酸と酢酸アンモニウム(触媒量)をフラスコ内で混合し、撹拌しながら3時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、氷水を約10倍等量入れて、目的物である有機増感色素を析出させ、ろ過し、水でよく洗浄した。ここで得た目的物を減圧乾燥し、クロロホルムとメタノールの混合溶媒を用いてシリカカラム精製し、実施例2の有機増感色素を得た。
(比較例1)
比較例1では、有機増感色素として、市販のD149(化(5)参照)を用いた。
[有機増感色素の構造解析]
実施例1及び実施例2の有機増感色素について、MALDI−MS質量分析装置と1H−NMR装置(溶媒はテトラヒドロフラン−d8)により構造解析を行った。図7に実施例1の有機増感色素のMALDI−MS質量分析結果を示す。図7より、実施例1の有機増感色素の分子量は約847.2であり、D149PHの精密質量の理論値(847.18)と一致することがわかった。図8に実施例2の有機増感色素のMALDI−MS質量分析結果を示す。図8より、実施例2の有機増感色素の分子量は約847.2であり、D149IPHの精密質量の理論値(847.18)と一致することがわかった。図9に実施例1の有機増感色素の1H−NMR結果を示す。図9では、D149PHの構造式中に示した1〜8のプロトンに対応するシグナルが確認された。図10に実施例2の有機増感色素の1H−NMR結果を示す。図10では、D149IPHの構造式中に示した1〜7のプロトンに対応するシグナルが確認された。以上より、実施例1の有機増感色素はD149PHであり、実施例2の有機増感色素はD149IPHであることが確認された。
[有機増感色素の吸収スペクトルの測定]
実施例1,2及び比較例1の有機増感色素について、吸収スペクトルの測定を行った。具体的には、各有機増感色素を、0.1mMの濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液について、吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルは、分光光度計(日立製作所社製U−3400)により、300nm〜1000nmの波長領域で測定した。図11に実施例1,2及び比較例1の有機増感色素の吸収スペクトルを示す。実施例1の有機増感色素(D149PH)では、吸光係数は66009cm-1-1abs:528nm)であり、比較例1の有機増感色素の吸光係数65920cm-1-1(λabs:525nm)とほぼ同等であった。また、実施例2の有機増感色素(D149IPH)では、吸光係数は55013cm-1-1(λabs:527nm)であり、比較例1の吸光係数よりやや小さいものの、概ね同等であった。
[色素増感型太陽電池の作製]
実施例1,2及び比較例1の有機増感色素をそれぞれ用いて、実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池を作製した。まず、透明導電膜(TCO)付ガラス基板に、n型半導体であるチタニア(TiO2)を含有するチタニアペーストをスクリーン印刷法で塗工した。このチタニア電極を有機増感色素溶液に浸漬し、色素吸着チタニア電極を作製した。この電極のチタニア側と、Ptを担持したTCO基板のPt側を張り合わせ、その間に電解液を封入してシール、色素増感型太陽電池を作製した。
電解液は、ヨウ素系化合物として、I2を0.2mol/L、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウムヨージド(PMII)を65体積%、溶媒として、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン(EMI)とビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン(TFSI)からなるイオン液体を35体積%、電荷を有する添加剤として、グアニジンチオシアネート(GuSCN)を0.5mol/L、4−tert−ブチルピリジン(4TBP)を混合した液体を用いた。
[光電変換効率の測定]
1kWのキセノンランプと400Wのハロゲンランプを搭載したAM1.5Gソーラシミュレータ(WXS−155S−L2、ワコム電創社製)とIVテスター(IV−9701、ワコム電創社製)を使い、実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池の電流(I)−電圧(V)特性(IV特性)を計測し、光電変換効率を測定した。
(1)1sun60℃作動耐久試験
色素増感型太陽電池に、1sun(=1000W/m2)の60℃光を1000時間連続照射し、各測定時間に、上述した光電変換効率を測定し、光照射条件下での作動耐久性を評価した。ここでは、実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池をそれぞれ2つ用意し、評価を行った。図12に実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池の1sun60℃作動耐久試験結果を示す。図12に示すように、比較例1の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約41%となったのに対し、実施例1の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約84%、実施例2の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約71%であり、高い保持率を保った。このことから、実施例1,2の色素増感型太陽電池では、比較例1の色素増感型太陽電池よりも作動耐久性がより向上することがわかった。
(2)85℃暗所熱耐久試験
色素増感型太陽電池を、暗所状態で85℃に連続加熱した状態を1000時間保ち、各測定時間に、上述した光電変換効率を測定し、熱耐久性を評価した。図13に実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池の85℃暗所熱耐久試験結果を示す。図13に示すように、比較例1の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約72%となったのに対し、実施例1,2の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約100%を超え、高い保持率となった。なお、実施例1の色素増感型太陽電池では、初期から200時間経過後の保持率を1.00とした場合でも、1000時間連続加熱後の保持率は約91%であり高い保持率を保った。また、実施例2の色素増感型太陽電池では、初期から200時間経過後の保持率を1.00とした場合でも、1000時間連続加熱後の保持率は約89%であり高い保持率を保った。このことから、実施例1,2の色素増感型太陽電池では、比較例1の色素増感型太陽電池よりも耐熱性が向上することがわかった。
[結果と考察]
以上より、実施例1,2の色素増感型太陽電池では、比較例1の色素増感型太陽電池よりも、作動耐久性や耐熱性が向上することがわかった。こうした効果が得られた理由は、以下のように推察された。すなわち、実施例1に用いた有機増感色素(D149PH)や実施例2に用いた有機増感色素(D149IPH)では、比較例1に用いた有機増感色素(D149)に比して、アンカー基における酸性度が強いため、チタニア半導体との結合力がより強固になり、吸着した色素の脱離が抑制されたためと推察された。この点について、以下では、アンカー基の酸性度と有機化学の電子的な観点から考察する。アルキル基などの電子供与性基にカルボキシ基を導入すると酸解離定数の値が上昇し、酸性度が弱くなる。これに対して、アリール基などのπ共役でつながった環状分子において、電子吸引基であるカルボキシ基をアリール基上に増やしていくと電子吸引性がつながっているため2つ以上カルボキシ基もしくは電子吸引基が導入された同一のアリール基上で電子吸引性が高くなり、カルボキシ基の酸解離定数がより小さくなることにより酸性度が強くなる。したがって、電子吸引基をカルボキシ基のカーボンに導入することによって、酸性度を強くすることが有機電子論から考えられる。このことから、フタル酸ではカルボキシ基が隣り合って存在するため、カルボキシ基に結合しているカーボンが隣り合ったカルボキシ基によって電子吸引性が強くなり、カーボンを一つはさんでカルボキシ基を持つイソフタル酸分子よりも酸性度が強くなり、酢酸やプロピオン酸などアルキル鎖をもつカルボキシ基の場合弱い酸性度を示したと推察された。図14に、各種のカルボン酸の酸解離定数を示す。酸解離定数が最も小さい(酸性度が最も強い)フタル酸をアンカー基として導入した実施例1では耐久性が最も良好であり、酸解離定数が次に小さい(酸性度が次に強い)フタル酸をアンカー基として導入した実施例2では耐久性が次に良好であった。そして、酸解離定数が最も大きい(酸性度が最も弱い)酢酸をアンカー基として有する比較例1では、耐久性が最も低かった。以上より、酸性度が強いアンカー基を導入することで、耐久性をより高めることができることが確認された。ここで、図14に示すように、ベンゼン環を有さないカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸)や、ベンゼン環を有していてもカルボキシ基が1つであるもの(安息香酸)では、酸解離定数が大きかった(酸性度が弱かった)。このことから、有機増感色素は、ロダニン系骨格の窒素に、アルキル基ではなく、π共役でつながった環状分子であるアリール基を介してカルボキシ基が結合している必要があり、かつ、カルボキシ基は1つでは足りず、2つ以上必要であることがわかった。また、図14には、各カルボン酸の融点(MP)を示した。図14に示すように、ベンゼン環を有するカルボン酸は融点が高かった。こうしたことから、アンカー基としてベンゼン環を有するカルボン酸を導入することなどにより、耐熱性を高めることができると推察された。
本発明は、太陽電池の技術分野に利用可能である。
10 色素増感型太陽電池モジュール、11 透明基板、12 透明導電膜、13 受光面、14 透明導電性基板、15 受光面、16,17 集電電極、18 溝、20 光電極、21 接続部、23 受光面、24 多孔質半導体層、25 裏面、26 電解質層、27 裏面、30 対極、32 シール材、34 保護部材、40 色素増感型太陽電池。

Claims (7)

  1. ドナー部位とアクセプター部位とが結合した構造の有機増感色素であって、
    前記アクセプター部位は、ロダニン系骨格を備え、該ロダニン系骨格の窒素のうちの1以上にアリール基を介して2個以上のカルボキシ基が結合している、有機増感色素。
  2. 前記アリール基は、フェニル基である、請求項1に記載の有機増感色素。
  3. 前記ロダニン系骨格の窒素に結合しているのは、フタル酸又はイソフタル酸である、請求項1又は2に記載の有機増感色素。
  4. 前記ロダニン系骨格は、チアゾリジン環を1つ又は2つ有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機増感色素。
  5. 前記ドナー部位は、インドリン骨格を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機増感色素。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機増感色素を含む半導体層を透明導電性基板上に備えた光電極と、
    前記光電極に向かい合うように配置された対極と、
    前記光電極と前記対極との間に介在する電解質層と、
    を備えた色素増感型太陽電池。
  7. 請求項6に記載の色素増感型太陽電池を複数備えている、色素増感型太陽電池モジュール。
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