JP2015071702A - 有機増感色素、色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュール - Google Patents
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Abstract
Description
ドナー部位とアクセプター部位とが結合した構造の有機増感色素であって、
前記アクセプター部位は、ロダニン系骨格を備え、該ロダニン系骨格の窒素のうちの1以上にアリール基を介して2個以上のカルボキシ基が結合しているものである。
上述した有機増感色素を含む半導体層を透明導電性基板上に備えた光電極と、
前記光電極に向かい合うように配置された対極と、
前記光電極と前記対極との間に介在する電解質層と、
を備えたものである。
上述した色素増感型太陽電池を複数備えたものである。
(実施例1)
実施例1では、有機増感色素として、D149PH(式(7)参照)を用いた。以下では、D149PHの合成方法について説明する。この方法では、まず、フタル酸アンカー基を合成し、その後D149PHを合成した。
図3は、フタル酸アンカー基の合成経路を示す説明図である。以下では、図3における工程(a)〜工程(c)について説明する。
図4は、フタル酸アンカー基の導入経路を示す説明図である。アルデヒド基をもつインドリン骨格分子とフタル酸アンカー基(A4)を酢酸と酢酸アンモニウム(触媒量)をフラスコ内で混合し、撹拌しながら3時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、氷水を約10倍等量入れて、目的物である有機増感色素を析出させ、ろ過し、水でよく洗浄した。ここで得た目的物を減圧乾燥し、クロロホルムとメタノールの混合溶媒を用いてシリカカラム精製し、実施例1の有機増感色素を得た。
実施例2では、有機増感色素としてD149IPH(式(8)参照)を用いた。以下では、D149IPHの合成方法について説明する。この方法では、まず、イソフタル酸アンカー基を合成し、その後D149IPHを合成した。
図5は、イソフタル酸アンカー基の合成経路を示す説明図である。以下では、図5における工程(a)〜工程(c)について説明する。
図6は、イソフタル酸アンカー基の導入経路を示す説明図である。アルデヒド基をもつインドリン骨格分子とイソフタル酸アンカー基(B4)を酢酸と酢酸アンモニウム(触媒量)をフラスコ内で混合し、撹拌しながら3時間加熱還流した。その後、室温まで冷却し、氷水を約10倍等量入れて、目的物である有機増感色素を析出させ、ろ過し、水でよく洗浄した。ここで得た目的物を減圧乾燥し、クロロホルムとメタノールの混合溶媒を用いてシリカカラム精製し、実施例2の有機増感色素を得た。
比較例1では、有機増感色素として、市販のD149(化(5)参照)を用いた。
実施例1及び実施例2の有機増感色素について、MALDI−MS質量分析装置と1H−NMR装置(溶媒はテトラヒドロフラン−d8)により構造解析を行った。図7に実施例1の有機増感色素のMALDI−MS質量分析結果を示す。図7より、実施例1の有機増感色素の分子量は約847.2であり、D149PHの精密質量の理論値(847.18)と一致することがわかった。図8に実施例2の有機増感色素のMALDI−MS質量分析結果を示す。図8より、実施例2の有機増感色素の分子量は約847.2であり、D149IPHの精密質量の理論値(847.18)と一致することがわかった。図9に実施例1の有機増感色素の1H−NMR結果を示す。図9では、D149PHの構造式中に示した1〜8のプロトンに対応するシグナルが確認された。図10に実施例2の有機増感色素の1H−NMR結果を示す。図10では、D149IPHの構造式中に示した1〜7のプロトンに対応するシグナルが確認された。以上より、実施例1の有機増感色素はD149PHであり、実施例2の有機増感色素はD149IPHであることが確認された。
実施例1,2及び比較例1の有機増感色素について、吸収スペクトルの測定を行った。具体的には、各有機増感色素を、0.1mMの濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液について、吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルは、分光光度計(日立製作所社製U−3400)により、300nm〜1000nmの波長領域で測定した。図11に実施例1,2及び比較例1の有機増感色素の吸収スペクトルを示す。実施例1の有機増感色素(D149PH)では、吸光係数は66009cm-1M-1 (λabs:528nm)であり、比較例1の有機増感色素の吸光係数65920cm-1M-1(λabs:525nm)とほぼ同等であった。また、実施例2の有機増感色素(D149IPH)では、吸光係数は55013cm-1M-1(λabs:527nm)であり、比較例1の吸光係数よりやや小さいものの、概ね同等であった。
実施例1,2及び比較例1の有機増感色素をそれぞれ用いて、実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池を作製した。まず、透明導電膜(TCO)付ガラス基板に、n型半導体であるチタニア(TiO2)を含有するチタニアペーストをスクリーン印刷法で塗工した。このチタニア電極を有機増感色素溶液に浸漬し、色素吸着チタニア電極を作製した。この電極のチタニア側と、Ptを担持したTCO基板のPt側を張り合わせ、その間に電解液を封入してシール、色素増感型太陽電池を作製した。
1kWのキセノンランプと400Wのハロゲンランプを搭載したAM1.5Gソーラシミュレータ(WXS−155S−L2、ワコム電創社製)とIVテスター(IV−9701、ワコム電創社製)を使い、実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池の電流(I)−電圧(V)特性(IV特性)を計測し、光電変換効率を測定した。
色素増感型太陽電池に、1sun(=1000W/m2)の60℃光を1000時間連続照射し、各測定時間に、上述した光電変換効率を測定し、光照射条件下での作動耐久性を評価した。ここでは、実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池をそれぞれ2つ用意し、評価を行った。図12に実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池の1sun60℃作動耐久試験結果を示す。図12に示すように、比較例1の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約41%となったのに対し、実施例1の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約84%、実施例2の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約71%であり、高い保持率を保った。このことから、実施例1,2の色素増感型太陽電池では、比較例1の色素増感型太陽電池よりも作動耐久性がより向上することがわかった。
色素増感型太陽電池を、暗所状態で85℃に連続加熱した状態を1000時間保ち、各測定時間に、上述した光電変換効率を測定し、熱耐久性を評価した。図13に実施例1,2及び比較例1の色素増感型太陽電池の85℃暗所熱耐久試験結果を示す。図13に示すように、比較例1の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約72%となったのに対し、実施例1,2の色素増感型太陽電池では保持率が初期の約100%を超え、高い保持率となった。なお、実施例1の色素増感型太陽電池では、初期から200時間経過後の保持率を1.00とした場合でも、1000時間連続加熱後の保持率は約91%であり高い保持率を保った。また、実施例2の色素増感型太陽電池では、初期から200時間経過後の保持率を1.00とした場合でも、1000時間連続加熱後の保持率は約89%であり高い保持率を保った。このことから、実施例1,2の色素増感型太陽電池では、比較例1の色素増感型太陽電池よりも耐熱性が向上することがわかった。
以上より、実施例1,2の色素増感型太陽電池では、比較例1の色素増感型太陽電池よりも、作動耐久性や耐熱性が向上することがわかった。こうした効果が得られた理由は、以下のように推察された。すなわち、実施例1に用いた有機増感色素(D149PH)や実施例2に用いた有機増感色素(D149IPH)では、比較例1に用いた有機増感色素(D149)に比して、アンカー基における酸性度が強いため、チタニア半導体との結合力がより強固になり、吸着した色素の脱離が抑制されたためと推察された。この点について、以下では、アンカー基の酸性度と有機化学の電子的な観点から考察する。アルキル基などの電子供与性基にカルボキシ基を導入すると酸解離定数の値が上昇し、酸性度が弱くなる。これに対して、アリール基などのπ共役でつながった環状分子において、電子吸引基であるカルボキシ基をアリール基上に増やしていくと電子吸引性がつながっているため2つ以上カルボキシ基もしくは電子吸引基が導入された同一のアリール基上で電子吸引性が高くなり、カルボキシ基の酸解離定数がより小さくなることにより酸性度が強くなる。したがって、電子吸引基をカルボキシ基のカーボンに導入することによって、酸性度を強くすることが有機電子論から考えられる。このことから、フタル酸ではカルボキシ基が隣り合って存在するため、カルボキシ基に結合しているカーボンが隣り合ったカルボキシ基によって電子吸引性が強くなり、カーボンを一つはさんでカルボキシ基を持つイソフタル酸分子よりも酸性度が強くなり、酢酸やプロピオン酸などアルキル鎖をもつカルボキシ基の場合弱い酸性度を示したと推察された。図14に、各種のカルボン酸の酸解離定数を示す。酸解離定数が最も小さい(酸性度が最も強い)フタル酸をアンカー基として導入した実施例1では耐久性が最も良好であり、酸解離定数が次に小さい(酸性度が次に強い)フタル酸をアンカー基として導入した実施例2では耐久性が次に良好であった。そして、酸解離定数が最も大きい(酸性度が最も弱い)酢酸をアンカー基として有する比較例1では、耐久性が最も低かった。以上より、酸性度が強いアンカー基を導入することで、耐久性をより高めることができることが確認された。ここで、図14に示すように、ベンゼン環を有さないカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸)や、ベンゼン環を有していてもカルボキシ基が1つであるもの(安息香酸)では、酸解離定数が大きかった(酸性度が弱かった)。このことから、有機増感色素は、ロダニン系骨格の窒素に、アルキル基ではなく、π共役でつながった環状分子であるアリール基を介してカルボキシ基が結合している必要があり、かつ、カルボキシ基は1つでは足りず、2つ以上必要であることがわかった。また、図14には、各カルボン酸の融点(MP)を示した。図14に示すように、ベンゼン環を有するカルボン酸は融点が高かった。こうしたことから、アンカー基としてベンゼン環を有するカルボン酸を導入することなどにより、耐熱性を高めることができると推察された。
Claims (7)
- ドナー部位とアクセプター部位とが結合した構造の有機増感色素であって、
前記アクセプター部位は、ロダニン系骨格を備え、該ロダニン系骨格の窒素のうちの1以上にアリール基を介して2個以上のカルボキシ基が結合している、有機増感色素。 - 前記アリール基は、フェニル基である、請求項1に記載の有機増感色素。
- 前記ロダニン系骨格の窒素に結合しているのは、フタル酸又はイソフタル酸である、請求項1又は2に記載の有機増感色素。
- 前記ロダニン系骨格は、チアゾリジン環を1つ又は2つ有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機増感色素。
- 前記ドナー部位は、インドリン骨格を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機増感色素。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機増感色素を含む半導体層を透明導電性基板上に備えた光電極と、
前記光電極に向かい合うように配置された対極と、
前記光電極と前記対極との間に介在する電解質層と、
を備えた色素増感型太陽電池。 - 請求項6に記載の色素増感型太陽電池を複数備えている、色素増感型太陽電池モジュール。
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