JP2015070099A - 半導体層形成用塗工液、その製造方法、半導体層の製造方法及び太陽電池の製造方法 - Google Patents

半導体層形成用塗工液、その製造方法、半導体層の製造方法及び太陽電池の製造方法 Download PDF

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滋弘 上野
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教弘 小倉
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Abstract

【課題】良質な光吸収性の半導体層を容易に形成するための新しい半導体層形成用塗工液及びその製造方法等を提供する。【解決手段】銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む原料粉末と、分散剤と、溶媒とを含む調整液を準備し、その調整液を湿式分散処理して半導体層形成用塗工液を製造する。製造された半導体層形成用塗工液を被塗工材上に塗工して塗工層を形成し、その塗工層を酸素含有雰囲気で焼成してプレカーサー層を形成し、そのプレカーサー層をセレン含有雰囲気で焼成して、CuxIn1-yGay(S1-zSez)2+q(但し、0.5≰x≰1.5、0≰y≰1、0≰z≰1、−1≰q≰1)で表される化合物を含む半導体層を形成する。【選択図】なし

Description

本発明は、半導体層形成用塗工液、その製造方法、半導体層の製造方法及び太陽電池の製造方法に関する。さらに詳しくは、良質な光吸収性の半導体層を形成するための半導体層形成用塗工液、その製造方法、その半導体層形成用塗工液を用いた半導体層の製造方法、及び太陽電池の製造方法に関する。
太陽電池の光吸収層として、高い変換効率を持つCIGS(Cu(In,Ga)Se)系のカルコパイライト(chalcopyrite)化合物半導体層が知られている。このCIGS系化合物半導体層は、種々の方法で成膜されている。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、電着法、ナノ粒子印刷法、スピンコート法等を利用した成膜方法が検討され、実際に適用されている。これらの成膜方法のうち、ナノ粒子印刷法やスピンコート法等の湿式インクを用いたコーティング法は、製造コストを低減させることができるので有利であるとされている。
コーティング法を利用した成膜方法として、例えば特許文献1には、CuInS2ナノ粒子を含む前駆体層をコーティングした後にセレン化してCIGS系化合物半導体層を形成する技術が提案されている。この技術は、太陽電池用途又は電子回路用途のための薄膜を製造する方法であり、コーティング法を用いてナノ結晶前駆体層を形成する工程、並びにセレン含有雰囲気中でそのナノ結晶前駆体層をセレン化する工程を含み、そのナノ結晶前駆体層が、CuInS2、CuIn(Sy,Se1-y2、CuGaS2、CuGa(Sy,Se-1-y2、Cu(InxGa-1-x)S2、及びCu(InxGa1-x)(Sy,Se1-y2のナノ粒子を含むものが提案されている。
また、他のコーティング法を利用した成膜方法として、例えば特許文献2には、太陽電池及び電子装置の製造にも応用可能な化合物フィルム及びその生成方法が提案されている。この技術は、溶融霧化技術で得られた原料粉末を用いてインクにした後、そのインクでコーティング層を形成し、その後セレン化する技術である。
特表2012−515708号公報 特開平11−340482号公報
塗工液を用いたコーティング法は、塗工液中の原料粉末の分散安定性が良好であること、塗工性が良好であること、が要求されている。また、セレン化処理前のプレカーサー層が、セレン化し易く、良質な光吸収層を形成し易いことも要求されている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、良質な光吸収性の半導体層を容易に形成するための新しい半導体層形成用塗工液及びその製造方法を提供することにある。また、その半導体層形成用塗工液を用いた半導体層の製造方法、及び太陽電池の製造方法を提供することにある。
(1)上記課題を解決するための本発明に係る半導体層形成用塗工液の製造方法は、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む半導体層を形成するための塗工液の製造方法であって、銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む原料粉末と、分散剤と、溶媒とを含む調整液を準備し、該調整液を湿式分散処理して製造することを特徴とする。
(2)上記課題を解決するための本発明に係る半導体層の形成方法は、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む半導体層の形成方法であって、銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む粒子と分散剤と溶媒とを含む半導体層形成用塗工液を準備する工程と、前記半導体層形成用塗工液を被塗工材上に塗工して塗工層を形成する工程と、前記塗工層を酸素含有雰囲気で焼成してプレカーサー層を形成する工程と、前記プレカーサー層をセレン含有雰囲気で焼成する工程と、を含むことを特徴とする。
(3)上記課題を解決するための本発明に係る太陽電池の製造方法は、少なくとも、第1電極層、半導体層、バッファー層及び第2電極層がその順で配置されている太陽電池の製造方法であって、前記半導体層を、銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む粒子と分散剤と溶媒とを含む半導体層形成用塗工液を準備する工程と、前記半導体層形成用塗工液を被塗工材上に塗工して塗工層を形成する工程と、前記塗工層を酸素含有雰囲気で焼成してプレカーサー層を形成する工程と、前記プレカーサー層をセレン含有雰囲気で焼成する工程と、を含む方法で形成し、該半導体層が、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含むことを特徴とする。
(4)上記課題を解決するための本発明に係る半導体層形成用塗工液は、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む半導体層を形成するための塗工液であって、銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む粒子と、分散剤と、溶媒とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、良質な光吸収性の半導体層を形成するための新しい半導体層形成用塗工液及びその製造方法を提供することができる。また、その半導体層形成用塗工液を用いた半導体層の製造方法、及び太陽電池の製造方法を提供することができる。
太陽電池の一例を示す模式断面図である。 太陽電池の他の一例を示す模式断面図である。 実施例1で形成された半導体層の断面写真(A)と、セレン化する前の断面写真(B)である。 比較例1で形成された半導体層の断面写真である。
以下、本発明に係る半導体層形成用塗工液、その製造方法、半導体層の製造方法及び太陽電池の製造方法について説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を包含する限り、図面の形態及び以下の記載内容に限定されるものではない。
[半導体層形成用塗工液の製造方法]
本発明に係る半導体層形成用塗工液の製造方法は、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む半導体層を形成する塗工液を製造する方法である。詳しくは、銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む原料粉末を用い、その原料粉末と分散剤と溶媒とを含む調整液を準備する。準備した調整液を湿式分散処理して半導体層形成用塗工液を製造する。
製造された半導体層形成用塗工液は、湿式分散処理によって細かく粉砕された粒子が分散剤の作用によって溶媒中に安定且つ均一に分散した塗工液であり、塗工性に優れている。その結果、製造された半導体層形成用塗工液を用いることにより、平滑でセレン化し易いプレカーサー層を形成でき、良質の光吸収性を有した半導体層を低コストで形成することができる。詳しくは、以下の利点がある。(1)調整液を湿式分散処理することにより、原料粉末は粉砕されて微細な粒子になる。この粒子は、分散剤の作用によって塗工液中での分散性がよく、その分散性が安定である。さらに塗工性もよく、平滑な塗工層を形成することができる。(2)その塗工層を酸素含有雰囲気で焼成してプレカーサー層を形成するとき、分散剤由来の有機物を層中から除去することができるとともに、粒子の分解や酸化が起こり難いプレカーサー層を形成することができる。(3)形成されたプレカーサー層は、セレン含有雰囲気で焼成する際、セレン化の反応性が高く、低コストで良質な光吸収性のCIGS半導体層を形成することができる。(4)その半導体層を備えた太陽電池を低コストで製造することができる。
以下、各構成要素について説明する。
(原料粉末)
原料粉末としては、銅インジウムガリウム硫化物を主成分とする粉末が用いられる。銅インジウムガリウム硫化物は、化学量論組成がCuInGaS2であり、詳しくは、CuIn1-yGa2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、−1≦q≦1。)として表すことができる。以下では、この硫化物を「CIG硫化物」と略す。なお、「主成分」とは、原料粉末の50モル%以上がCIG硫化物であることを意味している。
原料粉末はCIG硫化物を50モル%以上含むので、調整液を湿式分散処理した後に得られた半導体層形成用塗工液で形成した塗工層を焼成する際に、塗工液に含まれる粉砕後の粒子は顕著な酸化が起きない。その結果、良質な半導体層を形成することができる。なお、原料粉末の全て(100モル%)がCIG硫化物であってもよいが、通常は、50モル%以上、90モル%以下である。なお、原料粉末の組成がCIG硫化物であるか否か、50モル%以上含むか否かは、X線回折装置(XRD)やラマン分光光度計等よって分析して特定することができる。
原料粉末を構成する副成分は、原料粉末中に50モル%未満含まれる。副成分は、得られた半導体層形成用塗工液で形成した塗工層を焼成する際に、顕著な酸化が起きないものであることが好ましいが、酸化が起こる場合には、副成分の配合量を少なくして酸化の影響を小さくすることが望ましい。副成分としては、例えば、銅、インジウム、ガリウム、硫黄、セレンの各元素;銅インジウム合金、インジウムガリウム合金、銅インジウムガリウム合金の各合金;酸化銅、酸化インジウム、酸化ガリウムの各酸化物;硫化銅、硫化インジウム、硫化ガリウムの各硫化物;セレン化銅、セレン化インジウム、セレン化ガリウムの各セレン化物;等を挙げることができる。
原料粉末を構成する主成分(CIG硫化物)と副成分とは、粉末として準備される。CIG硫化物の粉末は、銅、インジウム、ガリウム、硫黄を構成材料としたアトマイズ法によって得ることができる。また、メルト・スピニング法、回転電極法、メカニカル・アロイング法、又は各種の化学プロセスによっても得ることができる。また、副成分の粉末も、その種類に応じた各種の方法で得ることができる。こうして得られたCIG硫化物の粉末と副成分の粉末は、球状、楕円形状、幾何学的形状、不規則形状等の形状で形成される。CIG硫化物の粉末の粒子径は特に限定されず、CIG硫化物の粉末の製造方法によっても異なるが、通常、0.1μm以上、50μm以下程度のものが用いられる。また、副成分の粉末の粒子径も特に限定されないが、CIG硫化物の粉末の粒子径と同様、0.1μm以上、50μm以下程度のものが用いられる。粒子径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等の方法で測定することができる。
CIG硫化物の粉末と副成分の粉末との配合量は、得られた半導体層形成用塗工液を用いて半導体層を形成した際に、その半導体層の組成がCuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)になるように調整される。
CIG硫化物の粉末と副成分の粉末とを含む原料粉末は、後述する分散剤及び溶媒とともに調整液を構成する。調整液中の原料粉末の配合量は、調整液全体に対して10質量%以上、50質量%以下の程度である。
(分散剤)
分散剤は、調整液中の原料粉末を湿式分散処理によって粉砕した粒子(主成分粒子であるCIG硫化物粒子と副成分粒子)とを、溶媒中に均一に分散させるように作用する。本願でいう「粒子」は、原料粉末を湿式分散処理で粉砕したものであり、粉砕前の「原料粉末」とは区別して用いている。
分散剤としては、共重合タイプの各種の高分子分散剤を挙げることができる。例えば、例えば、未変性共重合体タイプの分散剤であってもよいし、変性共重合体タイプの分散剤であってもよい。未変性共重合体タイプの分散剤は、塩構造を含まない共重合体であり、グラフト共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等の分散剤を挙げることができる。変性共重合タイプの分散剤は、塩構造を含んだ共重合体であり、グラフト共重合体、ブロック共重合体、ランダム共重合体等の分散剤を挙げることができる。以下では、変性共重合体、変性グラフト共重合体、変性ブロック共重合体の例について説明する。
(A)変性共重合体;
変性共重合体は、少なくとも下記一般式(I)で表される構成単位を有し、当該構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、四級化剤、有機酸及び無機酸よりなる群から選択される1又は2以上の変性剤とが塩を形成した重合体である。「少なくとも一部」とは、一部又は全部含む意味であり、窒素部位の一部が化合物種と塩を形成する場合と、窒素部位の全部が化合物種と塩を形成する場合とを含む。
一般式(I)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Aは直接結合又は2価の連結基であり、Qは下記一般式(I−a)で表される基、又は置換基を有していてもよい、酸と塩形成可能な含窒素複素環基を表す。2価の連結基としては、炭素数1〜10のアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、炭素数1〜10のエーテル基(−R’−OR”−。ここで、R’及びR”は、各々独立にアルキレン基を表す。)及びこれらの組み合わせ等を挙げることができる。また、酸と塩形成可能な含窒素複素環基としては、例えば、5〜7員環の含窒素複素環単環、又はこれらの縮合環を挙げることができ、さら別のヘテロ原子を有していてもよく、置換基を有していていもよい。また、含窒素複素環基は、芳香族性を有していてもよい。その含窒素複素環基を形成する含窒素複素環式化合物としては、具体的には、ピリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾイミダゾール等を挙げることができる。その含窒素複素環基に置換可能な置換基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基、F、Cl、Br等のハロゲン原子等を挙げることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。また、これらの置換基の置換位置、及び置換基数は特に限定されない。
一般式(I−a)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基を表し、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよい。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子等を挙げることができ、炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アラルキル基、アリール基等を挙げることができる。
上記一般式(I)で表される構成単位としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート等の含窒素(メタ)アクリレート;ビニルカルバゾール、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等の含窒素ビニル単量体;ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体等から誘導される構成単位を挙げることができるが、これらに限定されない。一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位と塩を形成させるための、変性剤としては、四級化剤、有機酸及び無機酸よりなる群から選択される1又は2以上が使用される。四級化剤としては、塩化メチル、塩化ベンジル、塩化アリル、臭化メチル、臭化ベンジル、臭化アリル、ヨウ化メチル、ヨウ化ベンジル、ヨウ化アリル等のハロゲン化炭化水素や、p−トルエンスルホン酸メチル等を挙げることができる。無機酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸を挙げることができる。有機酸としては、後述の一般式(II)で表わされる酸性有機リン化合物や、一般式(III)で表わされるスルホン酸化合物を挙げることができる。
一般式(II)及び一般式(III)中、R及びRa’は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭化水素基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Ra”で示される1価の基である。Ra”は、炭化水素基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−C(R)(R)−C(R)(R)−OH、又は、−CH−C(R)(R)−CH−OHで示される1価の基である。Rは、炭化水素基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−O−Rb’で示される1価の基である。Rb’は、炭化水素基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、又は−[(CH−O]−Rで示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOORで示される1価の基であり、Rは、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基であって、R及びRは、互いに結合して環構造を形成してもよい。上記環構造を形成した場合、置換基Rを有していてもよく、Rは、水素原子、炭化水素基、又は、炭化水素基をエーテル結合及びエステル結合の少なくとも1つで結合した基である。R、Ra’、及びRにおいて、炭化水素基としては、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基等を挙げることができ、その炭化水素基は、それぞれ炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、F、Cl、Br等のハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。sは1〜18の整数、tは1〜5の整数、uは1〜18の整数を示す。
一般式(II)で表される酸性有機リン化合物としては、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ビニルホスホン酸、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸ブチル、リン酸2−メタクリロイルオキシエチル等を挙げることができる。一般式(III)で表されるスルホン酸化合物としては、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等を挙げることができる。なかでも、粒子の分散性を高める点から、変性剤として、塩化ベンジル、塩化アリル、臭化ベンジル、臭化アリルホスホン酸、ホスフィン酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、p−トルエンスルホン酸、及びベンゼンスルホン酸から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
変性剤の含有量としては、良好な分散安定性が発揮されるのであればよく、特に制限はない。一般には、変性剤の含有量は、前記一般式(I)で表される構成単位に含まれる窒素部位に対して、0.01モル当量以上2.0モル当量以下程度の範囲内、好ましくは0.1モル当量以上1.0モル当量以下の範囲内とすることが好ましく、粒子の分散安定性を向上させることができる。
変性共重合体は、重量平均分子量が1000以上100000以下の程度であることが好ましい。なかでも好ましい変性共重合体としては、後述する変性グラフト共重合体又は後述する変性ブロック共重合体であり、粒子の分散性及び分散安定性に優れ、且つ、塗工液を塗工した際に均一な塗工層を形成することができる。
以下、好ましい変性グラフト共重合体、及び好ましい変性ブロック共重合体について、順に説明する。
(B)変性グラフト共重合体;
変性グラフト共重合体としては、上記した一般式(I)で表される構成単位と、下記一般式(IV)で表される構成単位とを有し、その一般式(I)で表される構成単位に含まれる窒素部位の少なくとも一部と、四級化剤、有機酸及び無機酸よりなる群から選択される1又は2以上の変性剤とが塩を形成したグラフト共重合体を好ましく挙げることができる。「少なくとも一部」とは、一部又は全部含む意味であり、窒素部位の一部が化合物種と塩を形成する場合と、窒素部位の全部が化合物種と塩を形成する場合とを含む。なお、一般式(I)で表される構成単位は上述のとおりなので、ここでの説明は省略する。
一般式(IV)中、R1’は、水素原子又はメチル基を表し、Lは、直接結合又は2価の連結基を表し、Polymerは、下記一般式(V)又は一般式(VI)で表される構成単位を1又は2以上有するポリマー鎖を表す。2価の連結基としては、エチレン性不飽和二重結合とポリマー鎖とを連結可能であれば、特に制限はない。Lにおける2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、水酸基を有するアルキレン基、アリーレン基、−CONH−基、−COO−基、−NHCOO−基、エーテル基(−O−基)、チオエーテル基(−S−基)、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。なお、本発明において、2価の連結基の結合の向きは任意である。すなわち、2価の連結基に−CONH−が含まれる場合、−COが主鎖の炭素原子側で−NHが側鎖のポリマー鎖側であってもよいし、反対に、−NHが主鎖の炭素原子側で−COが側鎖のポリマー鎖側であってもよい。
一般式(V)及び一般式(VI)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Rは、炭化水素基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、−[CO−(CH−O]−R、−CO−O−R又は−O−CO−R10で示される1価の基である。R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Rは、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO又は−CHCOOR11で示される1価の基であり、Rは、炭化水素基、シアノ基、−[CH(R)−CH(R)−O]−R、−[(CH−O]−R、又は−[CO−(CH−O]−Rで示される1価の基である。R10は、炭素数1〜18のアルキル基であり、R11は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記炭化水素基としては、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基等を挙げることができ、その炭化水素基は、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、F、Cl、Br等のハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。mは1〜5の整数、n及びn’は5〜200の整数を示す。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数をそれぞれ示す。
一般式(V)で表される構成単位に含まれるポリマー鎖は、上記した構成単位のなかでも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン等に由来する構成単位を有するものが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
一般式(VI)において、mは1〜5の整数であり、好ましくは2〜5の整数であり、より好ましくは4又は5の整数である。また、ポリマー鎖の構成単位のユニット数n及びn’は、5〜200の整数であればよく、特に限定されないが、5〜100の範囲内であることが好ましい。
一般式(V)中の上記R及びRとしては、なかでも、後述する溶媒との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、使用する溶媒に合わせて適宜選択されればよい。具体的には、エーテルアルコールアセテート系、エステル系、ケトン系等の溶媒を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。
ここで、上記R及びRをこのように設定する理由は、上記R及びRを含む構成単位が、上記溶媒に対して溶解性を有し、上記一般式(I)中の構成単位に含まれる窒素部位が粒子に対して高い吸着性を有することに基づいており、こうしたことにより、粒子の分散性及び安定性を特に優れたものとすることができる。さらに、上記R及びRとしては、熱分解し易い、分岐アルキル基(イソプロピル、イソブチル、2−エチルヘキシル)やメチル基、n−ブチル基等が好ましい。当該分岐アルキル基としては、炭素数3〜18の分岐アルキル基であることが好ましく、さらに、炭素数3〜8の分岐アルキル基であることがさらに好ましい。
Polymerにおけるポリマー鎖の質量平均分子量Mwは、500以上15000以下の範囲内であることが好ましく、1000以上8000以下の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、分散剤としての十分な立体反発効果を保持できる。
上記ポリマー鎖は、単独重合体でもよく、共重合体であってもよい。また、一般式(V)で表される構成単位に含まれるポリマー鎖は、変性グラフト共重合体において、1種単独でもよいし、2種以上混合されていてもよい。
上記変性グラフト共重合体において、前記一般式(I)で表される窒素部位を含む構成単位は、3質量%以上50質量%以下の割合で含まれていることが好ましく、5質量%以上35質量%以下の割合で含まれていることがより好ましい。変性グラフト共重合体中の窒素部位を含む構成単位の含有量が上記範囲内にあることにより、変性グラフト共重合体中の塩形成部位による粒子に対する吸着性と、変性グラフト共重合体中のポリマー鎖による溶媒に対する溶解性とのバランスが適切となり、優れた分散性、及び分散安定性を得ることができる。
なお、上記構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位を有するグラフト共重合体を合成する際の仕込み量から算出される。変性グラフト共重合体の変性剤は上述のとおりなので、ここでの説明は省略する。
変性グラフト共重合体は、重量平均分子量が1000以上100000以下の程度であることが好ましく、3000以上30000以下の範囲内であることがさらに好ましい。なかでも好ましい変性グラフト共重合体の具体例としては、構成単位(I)がジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルイミダゾールから誘導される構成単位であり、構成単位(IV)のPolymer鎖が一般式(V)で表される構成単位であり、かつその構成単位(V)がイソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート又はメチルメタクリレートから誘導される構成単位であり、変性剤が塩化アリル、臭化アリル、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ホスホン酸又はホスフィン酸である変性グラフト共重合体を挙げることができる。これらの変性グラフト共重合体は、粒子の分散安定性がよいこと、焼成時に有機成分が残存しにくいこと等の観点から、好ましく用いることができる。
(C)変性ブロック共重合体:
変性ブロック共重合体としては、上記した一般式(I)で表される構成単位を有するブロック部と、下記一般式(VII)で表される構成単位を有するブロック部とを有し、前記一般式(I)で表される構成単位が有する窒素部位の少なくとも一部と、四級化剤、有機酸及び無機酸よりなる群から選択される1又は2以上の変性剤とが塩を形成したブロック共重合体を好ましく挙げることができる。「少なくとも一部」とは、一部又は全部含む意味であり、窒素部位の一部が化合物種と塩を形成する場合と、窒素部位の全部が化合物種と塩を形成する場合とを含む。なお、一般式(I)で表される構成単位は上述のとおりなので、ここでの説明は省略する。
一般式(VII)中、Aは、直接結合又は2価の連結基であり、R10は、水素原子又はメチル基であり、R11は、炭化水素基、−[CH(R12)−CH(R13)−O]−R14又は−[(CH−O]−R14で示される1価の基である。R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R14は、水素原子、炭化水素基、−CHO、−CHCHO、又は−CHCOOR15で示される1価の基であり、R15は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。上記炭化水素基としては、炭素数1〜18の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、アラルキル基、又はアリール基等を挙げることができ、その炭化水素基は、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状、環状のアルキル基の他、アルケニル基、ニトロ基、F、Cl、Br等のハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。xは1〜18の整数、yは1〜5の整数、zは1〜18の整数を示す。
一般式(VII)で表される構成単位としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン等から誘導される構成単位を挙げることができるが、これらに限定されない。
一般式(I)で表される構成単位は、1種類からなるものであってもよく、2種以上の構成単位を含むものであってもよい。
一般式(VII)中の上記R11としては、なかでも、後述する溶媒との溶解性に優れたものを用いることが好ましく、使用する溶媒に合わせて適宜選択されればよい。具体的には、エーテルアルコールアセテート系、エステル系、ケトン系等の溶媒を用いる場合には、メチル基、エチル基、イソブチル基、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ベンジル基等が好ましい。ここで、上記R11をこのように設定する理由は、上記R11を含む構成単位が、上記溶媒に対して溶解性を有し、上記一般式(I)中の構成単位に含まれる窒素部位が粒子に対して高い吸着性を有することに基づいており、このことにより、粒子の分散性及び安定性を特に優れたものとすることができる。さらに、上記R11としては、熱分解し易い、分岐アルキル基(イソプロピル、イソブチル、2−エチルヘキシル)や、メチル基、n−ブチル基等が好ましい。当該分岐アルキル基としては、炭素数3〜18の分岐アルキル基であることが好ましく、さら炭素数3〜8の分岐アルキル基であることがさらに好ましい。
上記変性ブロック共重合体において、前記一般式(I)で表される窒素部位を含む構成単位を有するブロック部は、3質量%以上50質量%以下の範囲内の割合で含まれていることが好ましく、5質量%以上35質量%以下の範囲内の割合で含まれていることがさらに好ましい。変性ブロック共重合体中の窒素部位を含む構成単位を有するブロック部の含有量が上記範囲内にあることにより、変性ブロック共重合体中の塩形成部位を有するブロック部による粒子に対する吸着性と、一般式(VII)で表される構成単位を有するブロック部による溶媒に対する溶解性とのバランスとが適切となり、優れた分散性及び分散安定性が得られる。なお、上記構成単位の含有割合は、一般式(I)で表される構成単位を有するブロック共重合体を合成する際の仕込み量から算出される。
変性ブロック共重合体は、重量平均分子量が1000以上20000以下であることが好ましく、3000以上10000以下であることがさらに好ましい。なかでも好ましい変性ブロック共重合体の具体例としては、構成単位(I)がジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルイミダゾールから誘導される構成単位であり、構成単位(VII)がイソブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルメタクリレートから誘導される構成単位であり、変性剤が塩化アリル、臭化アリル、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、p−トルエンスルホン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸である変性ブロック共重合体を挙げることができる。これらの変性ブロック共重合体は、粒子の分散安定性がよいこと、焼成時に有機成分が残存しにくいこと等の観点から好ましく用いることができる。
こうした分散剤は、原料粉末及び溶媒とともに調整液を構成し、その配合量は、原料粉末に対して1質量%以上、50質量%以下程度である。
(溶媒)
溶媒は、調整液を構成する液体であるとともに、湿式分散処理して得た半導体層形成用塗工液を構成し、分散剤によって分散安定性良く分散した粒子(主成分粒子であるCIG硫化物粒子と副成分粒子)の分散溶媒として作用する。溶媒は、原料粉末、主成分粒子、副成分粒子及び分散剤等とは反応せず、これらを溶解又は分散可能な有機溶媒であればよく、特に限定されない。
具体的な溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系;メトキシアルコール、エトキシアルコール、メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール系;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル等のエステル系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;メトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテート、メトキシエトキシエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルアルコールアセテート系;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の非プロトン性アミド系;γ−ブチロラクトン等のラクトン系;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン等の不飽和炭化水素系;n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタン等の飽和炭化水素系等の有機溶媒を挙げることができる。
なかでも、分散安定性及び塗工性の観点から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンが好ましい。
溶媒は、原料粉末及び分散剤とともに調整液を構成し、その配合量は、原料粉末に対して100質量%以上、1000質量%以下程度である。
(調整液と湿式分散処理)
調整液は、原料粉末、分散剤及び溶媒を配合して調整される。それぞれの配合量は上記したとおりである。これら以外にも、I族、III族、IV族の塩、錯体、ハロゲン化物、金属、合金、酸化物、硫化物等を、本発明の効果を阻害しない範囲内で配合してもよく、その配合量は、配合材料によっても異なるが、少量であることが好ましく、原料粉末に対して0.1質量%以上、10質量%以下程度である。
湿式分散処理は、調整液中の原料粉末を粉砕して、CIG硫化物粒子からなる主成分粒子と副成分粒子とを溶媒中に分散する処理である。この湿式分散処理によって、調整液中の原料粉末を所定の大きさの粒子(主成分粒子であるCIG硫化物粒子と副成分粒子)に粉砕することができる。湿式分散処理手段としては、一般的な湿式ボールミル(ビーズミル)等を適用することができる。この湿式ボールミルは、例えばジルコニア製の容器等に調整液と粉砕メディアを入れ、原料粉末の粉砕を行う手段である。粉砕メディアとしては、例えば粒径が0.05mm〜5mm程度のジルコニアボール、アルミナボール、天然ケイ石等を挙げることができる。
この湿式分散処理によって、調整液中の原料粉末を、乾式粉砕では困難な10nm以上、200nm以下程度の大きさの粒子にまで粉砕することができる。粉砕された後の粒子(主成分粒子と副成分粒子)は、分散剤の作用により、溶媒中に安定で均一に分散する。
(半導体層形成用塗工液)
半導体層形成用塗工液は、調整液を湿式分散処理することにより得ることができる。得られた半導体層形成用塗工液は、50モル%以上の主成分粒子(CIG硫化物粒子)と副成分粒子とを含み、塗工液中には、それらの粒子が分散剤の作用によって溶媒中に安定且つ均一に分散している。この半導体層形成用塗工液は、塗工性がよいので、塗工層を形成した後に酸素含有雰囲気で焼成することにより、良質の光吸収性を有する半導体層を形成することができる。
形成された半導体層は、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む。この組成は、SEM−EDX装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、エネルギー分散型X線分析装置:Quantax70)等の装置によって特定することができる。
半導体層形成用塗工液の粘度は、塗工し易い粘度であれば特に限定されないが、例えば25℃での粘度が、1cp以上、1,000cp以下であることが好ましい。その粘度は、レオメーター等によって測定することができる。
以上のように、CIG硫化物の粉末を50モル%以上含む原料粉末と、分散剤と、溶媒とを含む調整液を準備し、その調整液を湿式分散処理して微細な粒子が分散した半導体層形成用塗工液を製造することができる。製造された半導体層形成用塗工液は、銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む粒子と分散剤と溶媒とを含むので、その粒子の分散安定性が良好で、塗工性にも優れている。その結果、製造された半導体層形成用塗工液を用いることにより、被塗工材上に平滑な塗工層を形成することができ、その塗工層を焼成したプレカーサー層はセレン含有雰囲気での焼成によってセレン化しやすく、上記組成の化合物を含む半導体層を容易に形成することができる。
[半導体層及びその形成方法]
本発明に係る半導体層の形成方法は、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む半導体層の形成方法である。詳しくは、CIG硫化物を50モル%以上含む粒子と、分散剤と、溶媒とを含む半導体層形成用塗工液を準備する準備工程と、その半導体層形成用塗工液を被塗工材上に塗工して塗工層を形成する塗工層形性工程と、その塗工層を酸素含有雰囲気で焼成してプレカーサー層を形成するプレカーサー層形成工程と、そのプレカーサー層をセレン含有雰囲気で焼成する焼成工程とを含む方法である。
(準備工程)
準備工程は、CIG硫化物を50モル%以上含む粒子と、分散剤と、溶媒とを含む半導体層形成用塗工液を準備する工程である。半導体層形成用塗工液の製造方法については既に詳しく説明したので、ここではその説明を省略する。また、粒子は、既述のように、主成分粒子であるCIG硫化物粒子と副成分粒子とを意味している。
(塗工層形成工程)
塗工層形成工程は、半導体層形成用塗工液を被塗工材上に塗工して塗工層を形成する工程である。被塗工材は、塗工層を形成する対象となるものであり、その種類は特に限定されないが、半導体層の用途に応じて、例えば金属、無機材料、有機材料、ガラス等を挙げることができる。半導体層を、太陽電池を構成する光吸収層として用いる場合には、半導体層形成用塗工液は、いわゆるサブストレート構造の太陽電池では電極層(例えばモリブデン電極層や、FTO、ITO等の透明電極層)上、又は電極層上に設けられた機能層上等に塗工されることが好ましく、いわゆるスーパーストレート構造の太陽電池ではバッファー層上等に塗工されることが好ましい。
塗工層の形成方法としては、湿式成膜法が用いられる。例えば、浸漬法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の液体滴下法等を挙げることができる。
塗工層を形成するための塗工回数は特に限定されないが、製造コストを考慮すると、通常は、1回〜3回程度である。複数回塗工して積層タイプの塗工層を形成する場合、同じ塗工液を繰り返し用いて同一組成の塗工層を積層してもよいし、異なる塗工液を用いて異なる組成の塗工層を積層してもよい。異なる組成の塗工層を積層する場合には、最終的に得られた半導体層にバンドギャップエネルギーの勾配を持たせることができる。
塗工層の形成は、塗工液を塗工した後に加熱し、溶媒を揮発させることにより行う。加熱温度は、用いた溶媒の種類によって異なるが、通常、200℃以下の温度で行う。溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンを用いた場合には、80℃〜150℃程度になるように加熱することが好ましい。
(プレカーサー層形成工程)
プレカーサー層形成工程は、塗工層を酸素含有雰囲気で焼成してプレカーサー層を形成する工程である。この工程では、塗工層を酸素含有雰囲気で焼成し、その塗工層に含まれる分散剤を酸化分解して除去する。そのための焼成温度としては、分散剤の種類によっても異なるが、通常、350℃以上、600℃以下の温度であることが好ましい。焼成雰囲気は、酸素を含む雰囲気であればよく、通常、大気雰囲気で行うことが好ましい。この工程によって、塗工層中の分散剤由来の有機物を除去することができ、その結果、プレカーサー層の反応性が低下するのを防ぐことができる。
積層タイプの塗工層を形成する場合、塗工層を1層形成する毎に焼成してもよいし、積層した後にまとめて焼成してもよい。
この工程では、酸素含有雰囲気で焼成が行われるので、塗工層に含まれる粒子の酸化が起こり易い条件になっている。しかし、粒子の50モル%以上を占めるCIG硫化物は、金属合金粒子や合成したCIGSナノ粒子のみを用いた場合に比べて酸化が起きにくいという利点がある。その結果、過度の酸化を抑制することができる。
なお、粒子の副成分として酸化物を含む場合は、酸素含有雰囲気での焼成を行った後に、水素等の還元性雰囲気下での還元処理を行うことが好ましい。こうすることで、酸化の程度を低減することができ、セレン化しやすいものとすることができる。
また、酸素含有雰囲気で焼成した後、必要に応じて、窒素等の不活性ガス雰囲気中で焼成してもよい。不活性ガス雰囲気中での焼成により、塗工層に含まれる分散剤由来の有機物の残りを焼き飛ばすことができる。この焼成温度は、酸素含有雰囲気での焼成よりも高い温度(例えば、375℃以上625℃以下の程度の範囲内)にすることが好ましい。
焼成処理した後のプレカーサー層の組成は、例えば、上記同様のSEM−EDX装置等によって測定することができる。プレカーサー層の組成の実測例として、CuとInとGaの原子%で表した場合、Cu:51.38原子%、In:36.56原子%、Ga:12.07原子%(合計100原子%)のものを例示でき、これをCuとSとOの原子%で表した場合、Cu:33.33原子%、S:50.13原子%、O:16.54原子%(合計100原子%)のものを例示できる。
(焼成工程)
焼成工程は、プレカーサー層をセレン含有雰囲気で焼成してセレン化する工程である。半導体層は、このセレン化工程によって形成される。焼成温度としては、通常、450℃以上、650℃以下の温度であることが好ましい。焼成雰囲気は、セレンを含有する雰囲気であればよく、通常、セレンを高温で気体にした雰囲気で焼成を行うことが好ましい。
(半導体層)
半導体層は、上記工程によって得ることができ、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物からなる層である。半導体層の組成は、例えば、上記同様のSEM−EDX装置等によって測定することができる。
半導体層の組成の実測例として、CuとInとGaの原子%で表した場合、Cu:50.50原子%、In:37.27原子%、Ga:12.23原子%(合計100原子%)のものを例示できる。この半導体層は、上記したプレカーサー層の組成を実測したものから形成しており、その組成は、プレカーサー層の組成とほぼ同じであったことから、層の組成が安定であることがわかった。また、CuとSとOの原子%で表した場合、Cu:33.21原子%、S:6.78原子%、O:0原子%、Se:60.0原子%(合計100原子%)のものを例示できる。
半導体層に含まれるS、O、Seについても上記同様のSEM−EDX装置等によって測定することができる。測定は、プレカーサー層と半導体層について行い、Cu原子%に対するS原子%、O原子%、及びSe原子%について算出した。プレカーサー層について、S原子%/Cu原子%は1.51、O原子%/Cu原子%は0.49であり、半導体層について、S原子%/Cu原子%は0.19、O原子%/Cu原子%は0、Se原子%/Cu原子%は1.81であった。
半導体層に含まれるC量についても、上記同様のSEM−EDX装置等によって測定することができる。Cの原子%を測定し、上記したCu原子%との比(C原子%/Cu原子%)によって、半導体層中の残留カーボン量を算出した。半導体層に含まれるC量は、C原子%/Cu原子%の比で0.56であった。なお、この半導体層の形成前のプレカーサー層に含まれるC量も、C原子%/Cu原子%の比で0.53であり、半導体層の組成と差がなかった。残留カーボン量の割合が小さいほど、層中の有機成分の残存が少ないといえるが、プレカーサー層及び半導体層に含まれる残留カーボン量は変わらず、プレカーサー層の時点でほぼ分散剤由来の有機物が焼き飛んでいるといえる。
これらの結果は、得られた半導体層が、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含むことを示している。すなわち、プレカーサー層は、酸素含有雰囲気での焼成によりS原子量が減少し、O原子量が増加し、このプレカーサー層をセレン含有雰囲気中で焼成して得た半導体層は、O原子が消失し、S原子量もさらに減少し、Se原子が増加してセレン化した。これらの結果より、プレカーサー層は酸化されにくく、粒子の一部酸化でとどまっているため、半導体層の酸素原子が消失し易いと考えらえる。
以上説明した半導体層の形成方法は、半導体層形成用塗工液を用いて塗工層を形成する工程を有するので、粒子の分散安定性が良好で塗工性にも優れた半導体層形成用塗工液によって、平滑な塗工層を形成することができる。そして、この塗工層を焼成したプレカーサー層は、セレン含有雰囲気での焼成によってセレン化し易く、上記組成の化合物を含む半導体層を容易に形成することができる。その結果、良質の光吸収性を有した半導体層を低コストで形成することができる。特に、半導体層形成用塗工液は主成分としてCIG硫化物粒子を含むので、酸素含有雰囲気での焼成による粒子の酸化、分解を抑制できる。また、酸素含有雰囲気での焼成によって、分散剤由来の有機物を塗工層中から除去することができ、粒子の分解や酸化が起こりにくいプレカーサー層を形成することができる。これらのことにより、セレン化の焼成時のプレカーサー層の反応性が高まり、低コストで良質な半導体層(CIGS吸収層)を形成することができる。
[太陽電池の製造方法]
本発明に係る太陽電池の製造方法は、少なくとも、第1電極層、半導体層、バッファー層及び第2電極層がその順で配置されている太陽電池を製造する方法である。この順で配置されていれば、いわゆるサブストレート構造(図1及び図2参照)であっても、スーパーストレート構造(図示しない)であってもよい。
なお、サブストレート構造の太陽電池は、図1及び図2に示すように、基板1上に、少なくとも第1電極層2、半導体層3、バッファー層4及び第2電極層5がその順で配置されている構造形態である。また、スーパーストレート構造の太陽電池は、図示しないが、ガラス基板上に、透明電極(第2電極層5に相当)、バッファー層(バッファー層4に相当し、高抵抗バッファー層をさらに含んでいてもよい)、半導体層(半導体層3に相当)、及び電極(第1電極層2に相当するカーボン電極、又は金、銀等の金属電極)がその順に配置されている構造形態である。
以下では、図1及び図2に示したサブストレート構造の太陽電池を例にして、各構成要素を説明するが、サブストレート構造の太陽電池に限定するものではない。
太陽電池10,20は、図1及び図2に示すように、基板1と、基板1上に設けられた第1電極層2と、第1電極層2上に設けられた光吸収性の半導体層3と、半導体層3上に設けられたバッファー層4と、バッファー層4上に設けられた第2電極層5とを有している。本発明に係る太陽電池10は、少なくともこれらの構成を有していればよく、必要に応じて公知の他の機能層が設けられていてもよい。
なお、第2電極層5上には、通常、集電電極6が設けられている。基板1としてガラス基板を用いる場合は、基板の片面又は両面には、必要に応じて破損防止層等(図示しない)が設けられていてもよい。また、バッファー層4と第2電極層5との間に高抵抗バッファー層(図示しない)が設けられていてもよい。また、各層の間には、これら以外の公知の機能層が設けられていてもよい。
基板1は、太陽電池用の基板として用いられているものを任意に適用できる。例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等のガラス基板、ステンレスやチタン等の金属基板、ポリイミド等のプラスチック基板等を挙げることができる。
第1電極層2は、基板1上に設けられる。第1電極層2としては、モリブデン等からなる金属層又は、ITO(インジウム錫オキサイド)等からなる透明導電層を好ましく適用できる。この第1電極層2は、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等で形成することができ、その厚さは、通常、0.1μm以上1μm以下の程度である。
半導体層3は、第1電極層2上に、上記した本発明に係る半導体層の形成方法によって形成される。半導体層3は、いわゆる光吸収層であり、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とを含む半導体からなる層である。具体的には、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む層である。半導体層3の厚さは特に限定されないが、通常、0.5μm以上3μm以下である。この半導体層3の形成方法は、既に詳しく説明したのでここではその説明を省略する。
バッファー層4は、pn接合を形成するために半導体層3上に設けられる半導性の層である。バッファー層4としては、例えばCdS、又はZnを含む化合物からなる層を挙げることができる。Znを含む化合物としては、ZnS(O,OH)及びZnMgO等を例示できる。バッファー層4は、溶液成長(CBD)法、スパッタリング法又はCVD法で形成でき、その厚さは特に限定されないが、通常、0.01μm以上0.1μm以下の程度である。
また、バッファー層4の一部として、さらに第2の半導体層(高抵抗バッファー層)を積層させてもよい。そうした第2の半導体層としては、ZnO、又はZnOを含む材料からなる層を挙げることができる。この層もスパッタリング法又はCVD法で形成でき、その厚さは特に限定されないが、通常、0.01μm以上0.1μm以下の程度である。
第2電極層5は、バッファー層4上に形成される透明な電極層である。第2電極層5としては、Al等のIII族元素をドープしたZnO、ITO(インジウム錫オキサイド)を挙げることができ、スパッタリング法又はCVD法で形成できる。その厚さは特に限定されないが、通常、0.1μm以上1μm以下である。
集電電極6は、第2電極層5上に形成された導電性の良い金属層である。集電電極6としては、Au、Ag、Cu、Al及びNi等を挙げることができ、蒸着又はスパッタリング法で形成できる。その厚さは特に限定されないが、通常、0.5μm以上1μm以下である。あるいは、これらの金属粉体と樹脂と溶媒とを含むペースト状の材料をスクリーン印刷法により塗工した後、乾燥して形成でき、さらに、例えば500℃以上600℃以下の程度で焼成することにより抵抗値を下げることも可能であり、この場合の厚さは、通常、10μm以上100μm以下である。
この太陽電池の製造方法によれば、太陽電池を構成する半導体層を上記工程を含む方法で形成するので、良質の光吸収性を有した半導体層を低コストで形成することができる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明をさら詳しく説明する。なお、以下は一例であって、本発明は下記の実験例に限定されない。
[分散剤の合成例]
(マクロモノマーの合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的撹拌機及びデジタル温度計を備えた反応器に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(略称、PGMEA)80.0質量部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながら、温度90℃に加温した。メタクリル酸イソブチル100.0質量部、メルカプトエタノール4.0質量部、PGMEA30質量部、及びα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(略称、AIBN)1.0質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに3時間反応させた。次に、窒素気流を止めて、この反応溶液を80℃に冷却し、カレンズMOI(昭和電工株式会社製)8.74質量部、ジラウリン酸ジブチルすず0.125質量部、p−メトキシフェノール0.125質量部、及びPGMEA10質量部を加えて3時間撹拌することで、マクロモノマーの50.0質量%溶液を得た。得られたマクロモノマーを、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)にて、N−メチルピロリドン、0.01mol/L臭化リチウム添加/ポリスチレン標準の条件で確認したところ、質量平均分子量(Mw)3720、数平均分子量(Mn)1737、分子量分布(Mw/Mn)は2.14であった。
(グラフト共重合体の合成)
冷却管、添加用ロート、窒素用インレット、機械的撹拌機及びデジタル温度計を備えた反応器に、PGMEA85.0質量部を仕込み、窒素気流下撹拌しながら、温度85℃に加温した。上記のように合成したマクロモノマー溶液66.66質量部(有効固形分33.33質量部)、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(略称、DMA)16.67質量部、n−ドデシルメルカプタン1.24質量部、PGMEA20.0質量部、及びAIBN0.5質量部の混合溶液を1.5時間かけて滴下し、3時間加熱撹拌したのち、AIBN0.10質量部及びPGMEA10.0質量部の混合液を10分かけて滴下し、さらに同温で1時間熟成することで、グラフト共重合体の25.2質量%溶液を得た。得られたグラフト共重合体は、GPC測定の結果、質量平均分子量(Mw)13063、数平均分子量(Mn)5259、分子量分布(Mw/Mn)は2.42であった。
(分散剤溶液の調製)
100mLナスフラスコ中で、PGMEA11.19質量部に、グラフト共重合体溶液33.16質量部(有効固形分8.36質量部)を溶解させ、さら、臭化アリル0.64質量部(グラフト共重合体の3級アミノ基に対して0.3モル当量)を加え、40℃で30分撹拌することで分散剤溶液(固形分20質量%)を調製した。このとき、グラフト共重合体は、臭化アリルとの四級化反応によって塩形成された変性グラフト共重合体となっている。
[実施例1:CIG硫化物100%使用]
(半導体層の形成)
原料粉末として、銅インジウムガリウム硫化物(CIG硫化物)の粉末(平均粒子径:5μm)を準備した。CIG硫化物は、株式会社高純度化学研究所製のCu1.0In0.7Ga0.3粉末を用いた。分散剤は、合成例で示した分散剤を用い、溶媒としては、メチルイソブチルケトンを用いた。調整液中の原料粉末の配合量は、調整液全体に対して10質量%になるように調整した。分散剤の配合量は、原料粉末に対して0.3質量%になるように調整した。溶媒の配合量は、原料粉末に対して100質量%になるように調整した。こうして調整液を準備した。
この調整液を湿式分散処理した。湿式分散処理は、容器内に調整液を投入し、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製)にて予備分散として粒径2mmのジルコニアビーズで1時間、さらに本分散として粒径0.1mmのジルコニアビーズで8時間分散し、半導体層形成用塗工液を得た。この処理によって、原料粉末は、平均粒子径が100nm程度の粒子(CIG硫化物粒子、副成分粒子)に粉砕された。
塗工層は、半導体層形成用塗工液を被塗工材であるモリブデン電極を形成したソーダライムガラス上に3回塗工して形成した。塗工後に100℃で加熱乾燥して溶媒を除去し、その後、大気雰囲気中、350℃で5分間の条件で焼成し、プレカーサー層を形成した。この焼成によって分散剤の除去を行った。この実施例では、最初の調整液を構成する原料粉末としてCIG硫化物を主成分として用いるので、この焼成工程後のプレカーサー層の酸化は顕著に起こっていない。
その後、セレン化を、セレン蒸気を含有した不活性雰囲気で、550℃、15分間の条件で行った。こうして、半導体層を形成した。
(組成分析)
組成分析は、SEM−EDX装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、エネルギー分散型X線分析装置:Quantax70)で測定した。プレカーサー層の組成は、Cu:51.38原子%、In:36.56原子%、Ga:12.07原子%(合計100原子%)であり、これをCuとSとOの原子%で表した場合、Cu:33.33原子%、S:50.13原子%、O:16.54原子%(合計100原子%)であった。
半導体層の組成をCuとInとGaの原子%で表した場合、Cu:50.50原子%、In:37.27原子%、Ga:12.23原子%(合計100原子%)であった。また、CuとSとOの原子%で表した場合、Cu:33.21原子%、S:6.78原子%、O:0原子%、Se:60.0原子%(合計100原子%)であった。
半導体層に含まれるS、O、Seについても測定した。S原子%/Cu原子%は0.19、O原子%/Cu原子%は0、Se原子%/Cu原子%は1.81であった。なお、プレカーサー層は、S原子%/Cu原子%が1.51で、O原子%/Cu原子%が0.49であった。
半導体層に含まれるC量についても測定した。半導体層に含まれるC量は、C原子%/Cu原子%の比で0.56であった。なお、この半導体層の形成前のプレカーサー層に含まれるC量も、C原子%/Cu原子%の比で0.53であった。
(断面写真)
図3は、形成された半導体層の断面写真(A)と、セレン化する前の断面写真(B)である。セレン化する前のプレカーサー層に比べ、セレン化した後の半導体層は、結晶が全面に成長したことが確認された。
(太陽電池の製造)
半導体層を太陽電池10の光吸収層として評価した。図1に示す形態と同様、ソーダライムガラスを基板1として用い、その上に厚さ0.8μmのモリブデン電極層2をスパッタリング法で形成し、そのモリブデン電極層2上に、上記方法によって光吸収層としての厚さ1.6μmの半導体層3を形成した。半導体層3上に厚さ0.08μmのCdSバッファー層5をCBD(chemical bath deposition。溶液成長法)法で形成し、そのCdSバッファー層4上に厚さ0.1μmの絶縁層(ZnO)をスパッタリング法で形成し、さらにその上に厚さ0.3μmの透明電極層5(AZO)をスパッタリング法で形成した。最後にその透明電極層5上にAl蒸着して集電電極6を形成した。最後にスクライブ加工した。
こうして作製した太陽電池10の特性を評価した。特性評価は、JIS規格に定められた標準状態であるAM(エアマス)1.5、100mW/cmの疑似太陽光を照射して測定した。セル性能として、ηは12.1%、Jsc(mA/cm2)は32.1、Voc(V)は0.53、FF(フィルファクタ)は0.71であった。この結果は、後述の比較例に比べて良質な光吸収層が形成されていることを示している。
[実施例2:CIG硫化物50%使用]
原料粉末として、主成分として銅インジウムガリウム硫化物(CIG硫化物)の粉末(平均粒子径:5μm)を準備し、副成分として硫化ガリウムの粉末(平均粒子径:40μm)、銅の粉末(平均粒子径:1μm)を準備した。CIG硫化物は、Cu1.0In0.9Ga0.1粉末(株式会社高純度化学研究所製)を用い、副成分である硫化ガリウム粉末は、Ga粉末(株式会社高純度化学研究所製)を用い、銅の粉末も株式会社高純度化学研究所製のCu粉末を用いた。原料粉末は、CIG硫化物の粉末と副成分の粉末とを、原料粉末中で、CIG硫化物が50.5モル%になり、副成分である硫化ガリウムが16.4モル%になり、銅が33.1モル%になるように配合量を調整した以外は、実施例1と同様にして実施例2の半導体層を形成し、太陽電池を製造した。
(組成分析)
組成分析は、実施例1と同じSEM−EDX装置で測定した。半導体層の組成をCuとInとGaの原子%で表した場合、Cu:51.15原子%、In:27.19原子%、Ga:21.66原子%(合計100原子%)であった。また、CuとSとOの原子%で表した場合、Cu:34.28原子%、S:3.31原子%、O:0原子%、Se:62.41原子%(合計100原子%)であった。
半導体層に含まれるS、O、Seについても測定した。S原子%/Cu原子%は0.10、O原子%/Cu原子%は0、Se原子%/Cu原子%は1.82であった。半導体層に含まれるC量についても測定した。半導体層に含まれるC量は、C原子%/Cu原子%の比で0.52であった。
作製した太陽電池10の特性も実施例1と同じ疑似太陽光を照射して測定した。セル性能として、ηは10.6%、Jsc(mA/cm2)は29.2、Voc(V)は0.55、FFは0.66であった。
[比較例1]
実施例1では、原料粉末を湿式分散処理で粉砕して粒子を得ているが、この比較例1では、湿式分散処理は行わず、合成CIG硫化物ナノ粒子(平均粒子径:40nm)を用いた。ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅(II)5.11g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)インジウム(III) 6.47g、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ガリウム(III)3.04gに、オレイルアミン50mLを仕込み、窒素気流下で撹拌しながら、温度150℃で10分間加温した。285℃まで加温した後、オレイルアミン60mLに溶解させた硫黄2.45gを注入して30分間反応させた。室温に戻しIPAを加えることで生成物を沈殿させ、遠心分離操作により生成物を分離し、乾燥することで、CIG硫化物ナノ粒子を得た。得られたCIG硫化物ナノ粒子を、溶媒であるトルエンに対して10質量%になるように加え、攪拌して半導体層形成用塗工液を得た。その後は、実施例1と同じにして、塗工層の形成、プレカーサー層の形成、半導体層の形成を行った。
図4は、形成された半導体層の断面写真である。セレン化した後の半導体層は、結晶が全面に成長していないことが確認された。この理由は、プレカーサー層の形成工程で、合成CIG硫化物粒子が酸化し、分解しているのが確認されたことに直接関与しているものと考えられ、その結果、実施例1に比べてプレカーサー層の反応性(結晶成長性)が低下していると考えられる。また、実施例1と同様に、太陽電池を構成して変換効率を測定したところ、セル性能として、ηは5.0%、Jsc(mA/cm)は25.0、Voc(V)は0.36、FFは0.56であり、変換効率は実施例1,2の半分程度であった。
(組成分析)
プレカーサー層及び半導体層に含まれるS原子%/Cu原子%、O原子%/Cu原子%、C原子%/Cu原子%について、上記と同じSEM−EDX装置で測定した。プレカーサー層に含まれるS原子%/Cu原子%が0.79で、O原子%/Cu原子%が1.21であった。半導体層に含まれるS原子%/Cu原子%が0.15で、O原子%/Cu原子%が0.27で、Se原子%/Cu原子%が1.60であった。比較例1では、実施例1に比べて半導体層の形成後も膜中に酸素が残留していた。半導体層に含まれるC量は、C原子%/Cu原子%の比で2.16であった。なお、この半導体層の形成前のプレカーサー層に含まれるC量も、C原子%/Cu原子%の比で4.41であり、比較例1では、実施例1に比べて多くのCが膜中に残留していた。
1 基材
2 第1電極層
3 半導体層(光吸収性の化合物半導体層)
4 バッファー層
5 第2電極層
6 集電電極
10,20 太陽電池

Claims (4)

  1. CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む半導体層を形成するための塗工液の製造方法であって、
    銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む原料粉末と、分散剤と、溶媒とを含む調整液を準備し、該調整液を湿式分散処理して製造することを特徴とする半導体層形成用塗工液の製造方法。
  2. CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む半導体層の形成方法であって、
    銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む粒子と分散剤と溶媒とを含む半導体層形成用塗工液を準備する工程と、
    前記半導体層形成用塗工液を被塗工材上に塗工して塗工層を形成する工程と、
    前記塗工層を酸素含有雰囲気で焼成してプレカーサー層を形成する工程と、
    前記プレカーサー層をセレン含有雰囲気で焼成する工程と、を含むことを特徴とする半導体層の形成方法。
  3. 少なくとも、第1電極層、半導体層、バッファー層及び第2電極層がその順で配置されている太陽電池の製造方法であって、
    前記半導体層を、
    銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む粒子と分散剤と溶媒とを含む半導体層形成用塗工液を準備する工程と、
    前記半導体層形成用塗工液を被塗工材上に塗工して塗工層を形成する工程と、
    前記塗工層を酸素含有雰囲気で焼成してプレカーサー層を形成する工程と、
    前記プレカーサー層をセレン含有雰囲気で焼成する工程と、を含む方法で形成し、該半導体層が、CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含むことを特徴とする太陽電池の製造方法。
  4. CuIn1-yGa(S1-zSez2+q(但し、0.5≦x≦1.5、0≦y≦1、0≦z≦1、−1≦q≦1)で表される化合物を含む半導体層を形成するための塗工液であって、
    銅インジウムガリウム硫化物を50モル%以上含む粒子と、分散剤と、溶媒とを含むことを特徴とする半導体層形成用塗工液。

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