JP2015065845A - 水産物の養殖装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】海藻や貝類等を効率よく養殖することできるとともに、収穫に要する労力やエネルギーを大幅に削減することができる水産物の養殖方法を提供すること。
【解決手段】本発明の水産物の養殖装置1は、水産物保持部3を有する環状索2と、該環状索2と接触しつつ回転する回転部41を有し、該環状索22の移動方向を変更する複数の方向転換装置4A,4Bとを備え、少なくとも一つの方向転換装置4A,4Bが、回転部41を回転させて水産物保持部3を進行させる回転部駆動手段を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、水産物の養殖装置に関する。
成育に必要な栄養塩や餌を天然の環境水中に求める無給餌養殖の様式として、垂下養殖や浮き流し式の網ひび養殖が知られている。垂下養殖は、錨で固定したフロートに結びつけた筏(いかだ)や延縄(はえなわ)から、貝類を収容したカゴや、貝類や海藻が付着した貝殻、ロープなどを垂下させて、海中で養殖を行う方法である。また、浮き流し式の網ひび養殖は、網ひびと呼ばれる海藻等を着生させる網に、浮子を付けて浮力を与え、網が常に水面に浮くように維持して養殖を行う方法である。
また、垂下養殖の範疇に含まれる従来の養殖方法として、特許文献1には、筏枠ロープ等からなる浮基体と、これに吊り下げられる養殖基材と、浮基体の沈降を防止する浮上手段と、浮基体を係留する係留手段とを備え、海藻が着床した着床部材のみを養殖基材から取り外して回収できるようにした海藻の養殖装置が記載されており、また、特許文献2には、錨で係留した養殖筏やブイから、二枚貝を入れたコンテナーを垂下させ、海水中でタイラギと呼ばれる二枚貝を養殖する方法が記載されている。
ところで、我が国は、周囲を海に囲まれた海洋国家であり、その排他的経済水域は世界6番目の広を有する一方、エネルギーの自給率は極めて少ない。そのため、海洋植物である海藻を大量に養殖して、バイオ燃料の原料とするバイオマスとして有効活用できれば、エネルギー自給率の向上にも繋がる。また、海藻は、バイオエタノール等の原料となるトウモロコシとは異なり、食品や飼料としての利用と競合することが少なく、また、木質系バイオマスのようにリグニンを含有していないためバイオ燃料の製造に適している。このように、海藻は、バイオマスとして有望な資源と言える。
海藻をバイオマスとして利用することに関しては、すでに様々な研究が行われており、例えば、特許文献3には、外洋に浮体式藻場を設置して海藻を栽培し、栽培した海藻を、専用の刈取り船や、作業船、運搬用タンカーで回収し、その海藻からバイオエタノールを製造することが記載されている。
特開平4−346728号公報 特開2004−254514号公報 特開2008−271910号公報
しかし、従来の養殖方法においては、海藻や貝類等を大量に養殖しても、その収穫にかかる人件費やエネルギーが膨大になるという課題があった。
従って本発明は、従来技術が有する解決課題を解決し得る水産物の養殖方法に関する。
本発明は、水産物保持部を有する環状索と、該環状索と接触しつつ回転する回転部を有し、該環状索の移動方向を変更する複数の方向転換装置とを備え、少なくとも一つの方向転換装置が、前記回転部を回転させて前記水産物保持部を進行させる回転部駆動手段を備える、水産物の養殖装置を提供するものである。
本発明の水産物の養殖方法によれば、海藻や貝類等を効率よく養殖することできるとともに、収穫に要する労力やエネルギーを大幅に削減することができる。
図1は、本発明の一実施形態である水産物の養殖装置を、海及び陸に亘るように配置した状態を示す模式平面図である。 図2は、図1に示す養殖装置に用いた回転ブイ等の水面(海面)下の状態を示す模式図である。 図3は、図1に示す養殖装置に用いた養殖筏を示す斜視図である。 図4は、図1に示す養殖装置に用いた陸側の回転ブイ及びその回転部を回転させる機構を示す斜視図である。 図5は、図1に示す養殖装置に用いた陸側の回転ブイ及びその回転部を回転させる機構を示す斜視図である。 図6は、図4に示す回転ブイの鉛直方向に沿う断面図である。 図7は、本発明における方向変換装置に設けた発電機で発電した電力の利用方法の一例を示す図である。 図8は、本発明の水産物の養殖装置の他の実施形態を示す臨海部俯瞰図である。
以下、本発明の水産物の養殖装置を、その好ましい一実施形態に基づき図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態である水産物の養殖装置1は、図1に示すように、養殖筏3(水産物保持部)を有する環状索2と、環状索2の移動方向を変更する複数の方向転換装置4とを備えている。
環状索2は、図1に示すように、主索21と、主索21に間欠的に設けられた複数の養殖筏3とを備えており、主索21の端部どうしを結合させて環状に形成されている。
個々の養殖筏3は、図2に示すように、連結索22によって主索21に取り付けられている。主索21及び連結索22としては、それぞれ、各種のロープ、ワイヤー、チェーン、中空のホース等を用いることができる。ロープとしては、例えば、天然繊維、合成繊維又はこれらの複合材からなるもの等を用いることができる。ワイヤー、チェーン、中空のホース等としては、例えば、合成樹脂製、金属製又はこれらの複合在からなるもの等を用いることができる。
本実施形態の養殖装置1においては、個々の養殖筏3が水産物保持部であるが、本発明における水産物保持部は、環状の主索21自体であっても良い。また、環状の主索に、浮子33を端部に結合した連結索22のみ、あるいは浮子33を端部に結合していない分岐索のみを結合し、それらを水産物の保持部としても良い。主索21、連結索22及び分岐索を、水産物保持部とする場合、それらは、海藻等が付着しやすい材料から形成することが好ましい。
本実施形態の養殖装置1における養殖筏3は、図3に示すように、中空パイプ等の棒状材からなる平面視正方形状の枠体31と、該枠体31内に張られた、海藻6が付着可能な着床ネット32(着床部)からなり、枠体31には、複数個の浮子33(浮上手段)がロープで結び付けられている。養殖筏3は、浮子33を水面Sに浮かんだ状態とすることにより、着床ネット32(着床部)を、海中の、所望の深さに維持することができる。着床ネット32としては、海藻が付着可能なものを特に制限なく用いることができ、例えば、網ひび養殖に従来使用されてい網などを用いることができる。図3には、外周部に位置する枠体31のみを示したが、枠体31には、枠体31を構成する相対向する棒状材間に架け渡すように単数又は複数本の中央棒状材(図示略)が配されており、それらの棒状材によって枠体31内が複数の分割領域に分割されている。着床ネット32は、個々の分割領域ごとに別々に設けられていても良いし、1枚の着床ネット32が、枠体31内の全域に亘るように設けられていても良い。前述した連結索22は、中央棒状材(図示略)に一端が結合している。
本実施形態の養殖装置1は、図1に示すように、陸地Rに設けられた回収部1Rと、海Kに設けられた海洋養殖部1Kとを備えている。
海洋養殖部1Kに配置された方向転換装置4は、図2に示すように、錨索5等の係留手段によって係留された状態で、岸から離れた沖の水面S下に配された回転ブイ4A,4Bである。
本発明における方向転換装置4は、海底に立てた支柱に支持されたものであっても良いが、海底までの深さが深い外洋等に配置する場合には、費用面や技術面から支柱の設置が困難となる。これに対して、回転ブイ4A,4Bは、錨索5等の係留手段によって係留しつつ、水面又は水面近くの水中に浮かんだ状態に配置されるものであり、深さの深い外洋等にも設置可能である等の利点を有する。
未利用あるいは利用頻度の低い海域の積極的活用による水産物の大量生産の観点等から、方向転換装置4が配される最も深い場所の水深(海底から海面までの距離)は、好ましくは50m以上、より好ましくは100m以上、更に好ましくは200m以上であり、また、好ましくは2000m以下、より好ましくは1000m以下、更に好ましくは500m以下である。
また、平面視して長方形又は正方形の養殖筏3を用いる場合、養殖筏3の一辺の長さhは、好ましくは50m以上、より好ましくは100m以上であり、また、好ましくは500m以下、より好ましくは300m以下である。
また、海に配置されて一本の環状索2が架け渡される方向転換装置4の個数(本実施形態においては、回転ブイ4A,4Bの合計数)は、好ましくは2個以上、より好ましくは5個以上である。
本実施形態の養殖装置1は、図1に示すように、海洋養殖部1Kに配置された回転ブイとして、陸地Rから近い側に設けられた陸側の一群の回転ブイ4Aと、陸地Rに遠い側に設けられた沖側の一群の回転ブイ4Bとを有している。海洋養殖部1Kにおいては、環状索2が、陸側の回転ブイ4Aの近傍と沖側の回転ブイ4Bの近傍とを交互に通過する。
本実施形態における回転ブイ4A,4Bは、それぞれ、環状索2の主索21と接触しつつ回転するプーリー41(回転部)を有するとともに、該プーリー41を回転させて、該主索21及び該主索21に連結された養殖筏3(水産物保持部)を進行させる回転部駆動手段を備えている。また、その回転部駆動手段は、潮流の力を利用してプーリー41(回転部)を回転させるものである。なお、プーリー41は、主索21が収容される環状の収容部41aが形成されており、プーリー41の上面には、主索21に取り付けられた連結索22を通すための切り込み41bが形成されている。本実施形態において、主索21はプーリー41の円形状部に対して180度巻きついて接触することで、環状索2の移動方向を反対方向へと変更可能となっている。
以下、プーリー41(回転部)を回転させる回転部駆動手段について、回転ブイ4Aを例にして説明するが、回転ブイ4Bの回転部駆動手段も、潮流の向きAに対してプーリー41(回転部)の回転方向が逆向きになるように設計されている以外は、同様の構成を有している。
回転ブイ4Aは、図4及び図6に示すように、プーリー41(回転部)を回転させて養殖筏3(水産物保持部)を移動させる回転部駆動手段として、共通する回転軸42周りを回転する複数の回転翼43と、個々の回転翼43の水平面に対する傾斜角度を該回転翼43の回転に伴い周期的に変化させるカム機構とを備えている。カム機構は、ブイ本体44に設けられたカム45と、プーリー41の回転に伴い、カム45の上端に接触しつつ移動する楕円状のカムフォロワ46とを有する。カムフォロワ46は、回転翼43の軸部に設けられており、回転翼43のプーリー41内に配置された軸部には、楕円状のカムフォロワ46の楕円の長軸が鉛直方向に向くようにバネ機構47が作用している。
本実施形態におけるカム45は、図4に示すように、端面にカムフォロワ46が接触する円筒状の端面カムであり、楕円状のカムフォロワ46が、カム45の上端に接触しながら移動することで、楕円状のカムフォロワ46の長軸の向きが変化し、それにより、回転翼43は、カムフォロワ46の楕円の長軸が鉛直方向に向いているときには、図4の右端に示された回転翼43のように、扁平な板状部の面積の広い板面が水平面と略平行となり、カムフォロワ46の楕円の長軸が水平方向に向いているときには、図4の左端に示された回転翼43のように、扁平な板状部の面積の広い板面が水平面に対して略垂直となる。なお、図4に示すような端面カムに代えて、円筒の外周面に設けた溝部内をカムフォロワ46が移動する円筒カム等の他のタイプのカムを採用することもできる。
回転ブイ4Aに、図1及び図4に示すように、岸に近い側から沖に向かう向きAの潮流の力が加わると、水平面に対する傾斜角度が大きい回転翼43と水平面に対する傾斜角度が小さい回転翼43とが受ける圧力差により、プーリー41(回転部)が時計回りに回転駆動される。そして、それに伴い、環状索2の主索21及びそれに連結索22を介して間欠的に設けられた養殖筏3が、図1中の矢印a方向に移動する。
また、回転ブイ4Bは、カム45の上端の形状のみを回転ブイ4Aと異ならせて、回転翼43が図1中の各回転ブイ4Bの右側に位置するときに、板状部の面積の広い板面が水平面と略垂直となり、回転翼43が図1中の各回転ブイ4Bの左側に位置するときに、板状部の面積の広い板面が水平面に対して略平行となるようにしてある。そのため、回転ブイ4Bに、岸に近い側から沖に向かう向きAの潮流の力が加わると、プーリー41(回転部)が反時計回りに回転駆動されて、環状索2の主索21及び養殖筏3の図1中の矢印a方向への移動が一層推進される。
なお、回転ブイ4A及び回転ブイ4Bのいずれについても、プーリ41(回転部)が回転する際に、カム45やブイ本体44が同方向に一体に回転してしまうと、回転翼43の傾斜角度の制御が難しくなる。そのため、回転ブイ4A及び回転ブイ4Bは、それぞれ、プーリ41(回転部)が回転しても、カム45やブイ本体44が回転しないようにすることが好ましく、例えば、ブイ本体44を複数本の錨索を用いて複数方向から固定したり、陸側の回転ブイ4Aのブイ本体同士及び沖側の回転ブイ4Bのブイ本体同士を両端に錨を付けた連結ロープで連結したりして、プーリ41(回転部)に追従して回転しないようにし、カム45も、意図しない回動が生じないようにブイ本体44に取り付けることが好ましい。
潮流は、地球と月と太陽の天体運動に基づく遠心力と万有引力とのバランスにより生ずる潮汐現象であり、1日2回の往復流を繰り返す。
本実施形態における回転ブイ4A,4Bは、このような潮流の力を効率的に活用できるようにするために、潮流の向きが逆向きになっても、プーリー41(回転部)の回転方向を維持する機構を備えている。より具体的に説明すると、図4には、回転ブイ4Aに、岸に近い側から沖に向かう向きAの潮流によって、回転ブイ4Aのプーリー41が時計回りに回転している様子が示されているが、潮流が向きが逆の向きBになったときには、図5に示すように、カム45が、ブイ本体44に対して180度回転して、そのカム45に接触するカムフォロワ46によって回転翼43の水平面に対する傾斜角度が制御される。それにより、プーリー41(回転部)の回転方向が、潮流の向きが変わる前と同方向の時計回りに維持される。回転ブイ4A及びまたは回転ブイ4Bに、カム45を、ブイ本体44に対して180度回転させる機構を設ける場合の該機構としては、任意の機構を採用可能であるが、例えば、回転ブイ4A,4Bに、そのような機構として、カム45を回転可能に支持する支持機構、そのカム45を回動させる機構、及びその回動のタイミングを制御する制御部等を設けることができる。
潮流の向きが変わる時刻は、気象学から正確に予測することができ、あらかじめデータを制御部にインプットしておくことで自動制御が可能である。また、潮流の向きが変わる時刻、あるいはカム45を180度回転させる時刻や更に180度回転させて元に戻す時刻を、回転ブイ4A,4B以外に設けた制御センター等から、無線(衛星回線でも良い)又は有線にて、回転ブイ4A,4Bの制御部等に送信してカム45の回動の時刻を制御しても良い。
カム45の駆動動力や制御用電源はブイの回転による自己発電でまかなうことが好ましい。本実施形態の回転ブイ4A,4Bは、内部に、回転翼43の回転に伴い発電する発電機48、該発電機48により得られた電力を蓄電する2次電池49、及び発電機48により得られた電力(2次電池49に充電された電力)により作動するモータ(図示略)を備えており、前述したカム45をブイ本体44に対して回動させる機構が、そのモータにより作動する。また、カム45の回動のタイミングを制御する制御部も、その発電機48により得られた電力(2次電池49に充電された電力)により作動する。
本実施形態における回転ブイ4A,4Bは、潮力を電力に変換する発電機としても有用である。
回転ブイ4A,4Bで発電した電力は、カム45を回転させるモータやその制御のための電源のほか、カム45を回転翼43の回転軸42方向に移動させて、すべての回転翼43を水平面に対して略平行とすることによって、プーリー41(回転部)の回転を停止させる回転停止機構50の駆動モータやその制御のための電源等として利用することもできる。
また、回転ブイ4A,4Bで発電した電気を、回転ブイ(方向転換装置)より下方から海水を吸い上げ、その海水を、養殖筏3(水産物の保持部)の近傍に供給する送水ポンプ51の電源として利用することもできる。例えば、図7に示すように、水深が200m以上の外洋においては、水深が200m未満の表層域の栄養塩は乏しい。そのため、水深が200から1000mの中層域の栄養塩(硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等)の豊富な海水を、汲み上げて表層域に供給することで、養殖筏3(水産物の保持部)で成育させる海藻の成育を補助することができる。中層域等からの海水のくみ上げは、錨索5の全体又は一部を中空として、その中空部を通して組み上げても良いし、錨索5とは別にホースやパイプ等の中空管を設け、その中空管を介して組み上げても良い。また、図7に示す例においては、養殖筏3(水産物保持部)近傍への海水の供給は、主索21の全体又は一部を中空とするとともに、主索21に、その中空部に連通する開口部を間欠的に設け、その開口を通じて回転ブイから注入した海水が、別の開口から吹き出すようにしてある。水産物保持部近傍への供給は、取水口より海水の導出口が水面に近ければよく、例えば、回転ブイ4A,4Bに設けた導出口から養殖筏3が移動する水深付近に直接海水を噴出させても良い。
また、養殖筏3の枠体31や中央棒状材を中空パイプで形成し、該中空パイプに対して、回転ブイ4A,4Bで発電した電力により駆動されるポンプで、注水及び/又は排水を行い、養殖筏3の浮沈を制御することもできる。また、養殖筏3に設けた浮子を、同様のポンプによる注排水により浮力を増減調整可能なものとすることもできる。
本実施形態の養殖装置1は、陸地Rに設けられた回収部1Rを有する。回収部1Rは、陸地Rに設けられたプール71内に設けられている。プール71は、海Kにつながる複数の水路72,73を有しており、主索21に取り付けられた養殖筏3が一の水路72から取り込まれ、他の水路から導出されるようになされている。
プール71内には、方向転換装置4として、回転ブイ4A,4Bのプーリー41と同様に主索21に接触して回転するプーリー(回転部)を有する一方、その回転部駆動手段としての回転翼やカム機構を有しない装置4Cが設けられている。装置4Cは、回転ブイ4A,4Bとは異なり、プール71に立設された支柱に支持されている。
プール71は、加工工場74に設けられており、プール71内で、成育した海藻の刈り取りが行われる。刈り取りの方法は、特に制限されず、養殖筏3を移動させつつ行っても良いし、回転ブイ4A,4Bに設けた回転停止機構50を作動させ、養殖筏3の移動を一定の間隔で停止して行っても良い。また、刈り取りは、手動で刈り取っても良いが、通常は、自動刈り取り機を用いる。また、ホンダワラなどの多年草の場合は、茎などの一部を残して刈り取ることが好ましい。
本実施形態の養殖装置1によれば、海洋養殖部1Kで大規模な海藻の養殖を行うことができる一方、養殖した海藻の回収を一か所に設け回収部1Rで行うことができる。そのため、海藻を効率よく養殖することできるとともに、特許文献3のように、海上に設けた藻場を移動して、専用の刈取り船で刈り取りを行い、作業船や運搬用タンカーで成育した海藻を回収する場合に比べて、その収穫にかかる人件費やエネルギーを大幅に削減可能である。
しかも、養殖筏3を主索21等で繋ぎ、自然エネルギーである潮流を動力源として、養殖筏3を移動させるため、海藻の養殖及びその収穫の要するコストを大幅に軽減することができる。養殖筏3の移動は、例えば、海藻の成長速度に合わせて養殖筏を回遊させ、収穫時期に沿岸に隣接する加工工場74に順次、養殖筏が供給されるよう制御することが好ましい。
更に、本実施形態で用いた回転ブイ4A,4Bは前述したように、潮流の向きが逆向きになってもプーリー(回転部)の回転方向が維持されるようにしたため、潮流の力を、養殖筏3を移動させる推進力へ変換する効率が高く、そのため、潮流の強さが比較的弱い場合や場所おいても、確実に、養殖筏3等を移動させることができる。
本発明の水産物の養殖装置で養殖する水産物としては、例えば、海藻や、貝類等が挙げられ、海藻としては、例えば、ノリ、わかめ、昆布、ヒジキが挙げられ、貝類としては、牡蠣、真珠養殖用のあこや貝、たいらぎ等が挙げられる。貝類は、例えば、浮子を付けたカゴに収容し、そのカゴを連結索22を介して主索21に結びつけることによって養殖することができる。
バイオマスとして利用する海藻を養殖する場合の海藻は、ヒバマタ目ホンダワラ科の海藻が好ましく、特にホンダワラ属ホンダワラ(以下、ホンダワラという)が好ましい。ヒバマタ目ホンダワラ科の海藻の例は、特許文献3の段落〔0040〕に記載されている。
また、ヒバマタ目ホンダワラ科の海藻は、気胞と呼ばれる浮き袋を持っており、気胞の浮力によって幹を支え、成長すると主茎から切れ流れ藻となる。この特徴を利用することで、バイオマスとしての海藻の生産性の向上と設備の省力化が図れる。まず海藻に浮力があることで養殖筏の浮力を大幅に軽減できる。養殖筏は、最も設備投資を必要とするので、浮力低減は大きな投資抑制効果がある。
また、成長した流れ藻は、養殖筏の周囲をネットで覆うことで容易にトラップできる。トラップしたホンダワラ等は、加工工場74で、刈取工程を経ることなく回収して、細断工程等の次工程へと送ることができる。刈取工程の省略化は人員削減、投資抑制の点で大きなメリットがある。
また、ヒバマタ目ホンダワラ科の海藻(ホンダワラ等)は多年生の海藻であり、残った茎から主茎が再生する。寿命は5年以上の品種もあり、一度種苗を行えば連続的に生産ができることから、海藻の成長サイクルに合わせた養殖システムを構築することで、効率的に大量のバイオマスが獲得できる。
本発明の水産物の養殖装置で養殖し収穫した海藻は、バイオエタノールの生産に用いることも好ましい。例えば、前述した加工工場74に、バイオエタノールの生産設備を設けることにより、バイオエタノールの一層効率的な生産が可能である。海藻からバイオエタノールを生産する方法は、公知であり、任意の方法を採用することができる。例えば、海藻からバイオエタノールを生産する方法として、特許文献3に記載の方法を用いることもできる。
海藻からバイオエタノールを生産する方法の一例においては、流れ藻となった海藻を回収し、細断工程、糖化工程、エタノール発酵工程、抽出工程を経て、バイオエタノールとする。生産されたエタノールは、屋外タンク等に一旦貯槽して、タンクローリーやタンカーで輸送することが好ましい。
エタノール発酵後の残渣は、再処理することでウロン酸が抽出でき、このウロン酸から酢酸や乳酸などの有機酸を製造できる。また、再処理後の残渣は炭化水素を含んだ可燃性であり、この残渣を燃焼させることでコージェネシステムを構築する事もできる。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。
例えば、図8に示すように、海藻の収穫を行う回収部1Rを、海上Kに設けても良い。この場合の回収部1Rは、例えば、錨索等の係留手段により係留した浮体式構造物や台船に設けることができる。また、本発明の養殖装置は、海藻の収穫を行う回収部を有しないものであっても良い。この場合、刈り取りの時期に船舶を近づけて回収することになるが、その場合においても、船舶を広範囲に移動させることなく刈り取りが可能であり、収穫に要する費用やエネルギーを軽減可能である。また、収穫の際のみ、環状索2が回収部を通過させるようにして収穫することもできる。
また、上述した養殖装置においては、海洋養殖部に配されたすべての方向変換装置が、養殖筏3を進行させる回転部駆動手段を備えたものであったが、その一部の方向変換装置を、プーリー41を有する一方、その回転を駆動する手段を有しないものに置換することもできる。
また、環状索2の軌道は、特に制限されず、例えば、海洋養殖部における軌道は、図1に示すように、岸に近い側と遠い側との間を複数回往復するものに代えて、岸と平行な方向に往復回往復するものであっても良いし、それらの複合であっても良い。
また、上述した実施形態における養殖筏3には、鉛直方向に延びるロープを介して浮子33が取り付けてあったが、養殖筏3に直接浮子33を結合させても良いし、養殖筏3の枠体31に用いる棒状材に浮力の大きい材料を用いても良い。また、水産物保持部としてのカゴ、養殖筏、ロープ等を、主索21から垂れ下がるように設けても良い。
また、本発明の水産物の養殖装置は、海に代えて、巨大な湖等に設置しても良い。また、回転ブイ等当の方向転換装置に設ける回転部は、回転して環状索を移動させ得る他の任意の構成のものを用いることができる。
1 養殖装置
1R 回収部
1K 海洋養殖部
2 環状索
21 主索
22 連結索
3 養殖筏(水産物保持部)
31 枠体
32 着床ネット(着床部)
33 浮子
4 方向転換装置
4A,4B 回転ブイ
プーリー41(回転部)
42 回転軸
43 回転翼
44 ブイ本体
45 カム
46 カムフォロワ
48 発電機
51 送水ポンプ
5 錨索
6 海藻(水産物)
71 プール
72,73 水路
74 加工工場

Claims (8)

  1. 水産物保持部を有する環状索と、該環状索と接触しつつ回転する回転部を有し、該環状索の移動方向を変更する複数の方向転換装置とを備え、少なくとも一つの方向転換装置が、前記回転部を回転させて前記水産物保持部を進行させる回転部駆動手段を備える、水産物の養殖装置。
  2. 前記回転部駆動手段が、潮流の力を利用して前記回転部を回転させるものである、請求項1に記載の水産物の養殖装置。
  3. 前記回転部駆動手段が、共通する回転軸周りを回転する複数の回転翼と、個々の回転翼の水平面に対する傾斜角度を該回転翼の回転に伴い周期的に変化させるカム機構とを備える、請求項2に記載の水産物の養殖装置。
  4. 前記回転部駆動手段を備えた方向転換装置が、潮流の向きが逆向きになっても前記回転部の回転方向を維持する機構を備える、請求項2又は3に記載の水産物の養殖装置。
  5. 前記回転翼の回転に伴い発電する発電機、及び該発電機により得られた電力により作動するモータを備えており、前記回転部の回転方向を維持する機構が、該モータにより作動する、請求項4に記載の水産物の養殖装置。
  6. 前記環状索は、環状の主索と、主索に間欠的に設けられた複数の水産物保持部とを備え、該水産物保持部が、海藻が付着可能な着床部を備えた養殖筏である、請求項1〜5の何れか1項に記載の水産物の養殖装置。
  7. 前記回転部駆動手段を備えた方向転換装置として、係留手段により係留されて、岸から離れた沖の水面又は水面下に配される回転ブイを有しており、前記養殖筏が、該回転ブイより上方に浮ぶように構成されている、請求項6に記載の水産物の養殖装置。
  8. 前記回転部駆動手段を備えた方向転換装置が、前記回転翼の回転に伴い発電する発電機、及び該発電機により得られた電力により作動する送水ポンプを備え、該送水ポンプにより、該方向転換装置より下方から海水を吸い上げ、前記水産物保持部の近傍に供給可能になされている、請求項4記載の水産物の養殖装置。
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