JP2015062400A - 癌組織由来細胞凝集塊を調製するための方法及び癌組織由来細胞凝集塊を用いる抗癌剤スクリーニング方法、抗癌剤の定量分析又は癌組織の放射線感受性試験 - Google Patents

癌組織由来細胞凝集塊を調製するための方法及び癌組織由来細胞凝集塊を用いる抗癌剤スクリーニング方法、抗癌剤の定量分析又は癌組織の放射線感受性試験 Download PDF

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幸恵 吉井
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高子 古川
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恒夫 佐賀
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厚生 脇
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正宏 井上
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Abstract

【課題】均質で細胞数の揃った癌組織由来細胞凝集塊の集合を大量に調製可能な癌組織由来細胞凝集塊の調製方法を提供する。
【解決手段】 癌組織から得た細胞塊又はそれを培養して得られた細胞凝集塊を細胞支持用基質に包埋した状態で培養して細胞を増殖させる工程と、培養後の細胞塊を単一細胞化する工程と、得られた細胞を、凸部間の間隔が細胞の大きさより小さな凹凸構造を有する培養器中で培養して、細胞凝集塊を形成する工程とを含む方法とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、癌組織由来細胞凝集塊を調製するための方法に関する。より具体的には、均質で細胞数の揃った癌組織由来細胞凝集塊の集合を多量に形成することができる癌組織由来細胞凝集塊の製造方法に関する。本発明はまた、本発明の製造方法で得られた癌組織細胞凝集塊を用いる、抗癌剤のスクリーニング方法、抗癌剤の定量分析及び癌組織の放射線感受性を評価する方法に関する。
癌研究や抗癌剤の開発では、初期段階で、癌細胞を用いたインビトロ試験を実施するが、このようなインビトロ試験では、これまで、平面な培養器底面で細胞を培養する二次元培養で得られる癌細胞が用いられてきた。二次元培養による癌細胞の調製は、細胞数を容易に制御できるため、定量性が求められるアッセイや各ウェル間の条件を揃えることが求められる薬剤スクリーニングに適する細胞を提供できる。一方、二次元培養による癌細胞は、細胞の生存を維持するために、培養器の底面に強固に固着され、2次元形態で培養されるが、これがインテグリンシグナルを増強し、生体内の腫瘍が奏する幾つかの生物学的活性をマスクしてしまうことが報告されている(例えば、非特許文献1乃至3)。また、二次元培養によって患者組織由来の癌細胞を初代培養した場合、細胞を増殖・維持することは困難である。このため、この培養法では、最適化した条件で長期間継代培養された癌細胞株を用いるのが一般的である。しかし、このような株化された癌細胞は、実際の患者から得られた癌組織とは異なる環境で培養され、個々の患者の癌個性を反映していないといった問題が指摘されている。
このような従来の2次元培養に伴う問題に対して、近年、患者癌組織由来の細胞凝集塊をインビトロで形成させる三次元培養法が開発され、生体内の腫瘍と類似した性質を有する細胞塊によるインビトロ試験系を提供できる手法として期待されている。
例えば、近藤等は、患者から得た癌組織を、複数の細胞が集合した状態の小塊に分割し、細胞間の接触が維持された状態、すなわち得られた小塊をそのまま培養することで、細胞凝集塊を形成する方法を報告している(非特許文献4、特許文献1)。この方法は、細胞間接触の維持が細胞の生存・増殖を可能にすることを突き止めたことに基づくものであり、培養器の底面に2次元的に細胞を接着させる2次元培養法とは異なり、細胞塊をコラーゲンゲルやゼラチンなどの細胞支持物質で包埋し、培養器の表面と非接触の状態で培養される。この方法によれば、非常に純度の高い癌組織由来細胞凝集塊(CTOS)が得られ、元の患者癌組織に類似した特性を有し、インビトロでの培養で細胞を維持・増殖できることが確認されている。
この近藤等の方法の改良として、近藤等の方法と同様の方法で得られた細胞凝集塊をトリプシンで分解して単一細胞化し、得られた細胞をROCK阻害剤を用いて近藤等の方法で再凝集させて、細胞凝集塊を形成する方法が開示されている(特許文献2)。この方法では、一旦、単一細胞化され、細胞間接触が一時的に絶たれるが、ROCK阻害剤を用いて直ぐに細胞間接触を回復することで培養器の表面と非接触の状態での培養により細胞凝集塊の再形成を可能にしている。この文献での単一細胞化の目的は必ずしも明らかではないが、「腫瘍始原細胞」又は「腫瘍幹細胞」と呼ばれる亜集団を獲得することにあることが示唆されている(特許文献2段落0005)。他の改良としては、近藤等の方法で得られる癌組織由来細胞塊(CTOS)を用いた抗癌剤のスクリーニング方法が提案されている(特許文献3)。
このような細胞塊を細胞支持物質で包埋し、培養器の表面と非接触の状態で培養する方法に対しては、細胞支持物質の存在が顕微鏡等による画像化分析や光学的な分析に対する障害に成るとの問題が指摘されている(非特許文献1)。
これに対して、細胞と培養器底面との接触を維持しながらも接着強度を低減する構造の培養器を用いたり、近藤らの方法で用いていた細胞支持物質に代え、透明な有機物質で培養部表面を覆った培養器を用いて、細胞塊を培養する方法が提案されている。
例えば、鴨島らは、U字状の底を有する培養器で培養する方法を提案しており(非特許文献5)、伊藤らは、ヒドロゲルで培養部の表面を被覆した培養器で培養する方法を提案しており(非特許文献6)、steadmanらは、HEMAで培養部の表面を被覆した培養器で培養する方法を提案している(非特許文献7)。
しかしながら、これらの方法では、培養中の細胞の死滅率が近藤らの方法より高くなるという問題がある(非特許文献1)。
これに対して、本発明者らは、培養器底面にナノスケールの微細な凹凸構造を設けて、細胞と培養器底面との適度な接触刺激を維持しながらも、細胞遊走、細胞間凝集を可能として、細胞凝集塊を形成する方法を報告している(非特許文献1)。この報告では、癌細胞株を用いた試験で、各細胞が集合して凝集し、各小凝集塊同士も統合されてより大きな細胞凝集塊が形成されること、2次元培養に比べて有意差があるほど培養により死滅する細胞は増大しないこと、各細胞凝集塊集団間で細胞数に殆ど差がなく、外観形状も均一であること、得られた細胞凝集塊の内部は、癌組織と同様に低酸素状態にあることを実証している。
この方法に対する改良としては、培養容器内の溶液の動きを抑制する着脱可能な仕切板を付設する方法(特許文献4)、凹凸構造部分に放射線を照射して細胞接着を向上させた方法(特許文献5)、増殖速度の異なる2種以上の細胞が共存しても両者が他方を駆逐することなく並存し得ることを利用して、患者からの細胞(癌細胞と繊維芽細胞等の増殖速度の異なる細胞が混在する)を初代培養する方法(特許文献6)が提案されている。また、他の改良としては、レクチン等の細胞凝集剤と共に培養する方法、及びその方法で得られた細胞凝集塊の薬剤スクリーニングのための使用が提案されている(特許文献7)。
特開2010−227088 特開2011−115106 特開2011−147434 特開2011−019413 特開2011−050295 特開2010−022366 特開2008−022743
Yukie yushii et al., The use of nanoimprinted scaffolds as 3D culture models to facilitate spontaneous tumor cell migration and well-regulated spheroid formation; Biomaterials 32 (2011) 6052-6058. Cukierman E et al., Taking cell-matrix adhesions to the third dimension. Science 2001;294(5547):1708-12. Mizushima H et al.,Integrin signal masks growthpromotion activity of HB-EGF in monolayer cell cultures. J Cell Sci 2009;122(Pt23):4277-86. Junpei knodo et al., Retaining cell-cell contact enables preparation and culture of spheroids composed of pure primary cancer cells from colorectal cancer; PNAS 2011. Kamoshima Y et al., Growth kinetics and histological evaluation of C6 glioma spheroid with non-adhesive culture plate. Hokkaido J Med Sci 2008;83(1):23-7. Ito A et al.,The effect of RGD peptide-conjugated magnetite cationic liposomes on cell growth and cell sheet harvesting; Biomaterials 2005;26(31):6185-93. Steadman K et al.,PolyHEMA spheroids are an inadequate model for the drug resistance of the intractable solid tumors; Cell Cycle 2008;7(6):818-29.
しかしながら、従来の3次元培養法によって得られる細胞凝集塊は、均質で細胞数の揃った癌組織由来細胞凝集塊集団を大量に得ることは難しく、そうした細胞凝集塊が必要とされる、抗癌剤のハイコンテント/ハイスループットスクリーニング、抗癌剤の定量分析及び癌組織放射線感受性試験への利用には不十分なものであり、依然改善の余地がある。
すなわち、近藤等の方法では、形成される細胞凝集塊の細胞数及び構造を制御することが難しく、得られる細胞凝集塊集団は、構造が不均一であり細胞数のばらつきが大きい。この結果、この方法によって得られた細胞塊を、上記抗癌剤のハイコンテント/ハイスループットスクリーニング等に使用すると、各ウェルの試験条件が異なり、試験結果の評価を困難にする。
また、培養器底面にナノスケールの微細な凹凸構造を設けて、細胞と培養器底面との適度な接触刺激を維持しながらも、細胞遊走、細胞間凝集を促す方法では、患者から採取した癌組織の細胞を初代培養する場合、細胞を増殖・維持することが困難でありこのような細胞への利用は不向きである。このため、実際の利用では、もっぱら癌細胞株を使用しているのが現状である(非特許文献1、特許文献4、5及び7)。また、この方法で患者癌組織由来細胞を初代培養したとしても、患者組織由来細胞には、複数種の細胞が混在しており(特許文献6参照)、実質的に癌細胞以外の細胞が混在しない細胞凝集塊の集団を得ることは困難である。
従って、本発明は、このような従来の3次元培養法の欠点を克服し、均質で細胞数の揃った癌組織由来細胞凝集塊の集合を大量に調製可能な方法を提供することを第一の目的とする。また、本発明は、このような方法で得られる癌組織由来細胞凝集塊を用いる、ハイスループットな薬剤スクリーニング、抗癌剤定量アッセイ又は癌組織放射線感受性試験を提供することを第二の目的とする。
本発明は、上述の従来の3次元培養方法の問題に鑑み鋭意検討したところ、まず、癌組織を分解して得られる細胞塊を細胞支持物質に包埋して培養器表面と非接触な状態で培養して実質的に癌細胞からなる細胞凝集塊を多量に形成させ、次いで、得られた細胞凝集塊を単一細胞化し、この細胞を微細な凹凸構造を有する培養器中で培養することで、均質の細胞凝集塊の細胞数の揃った集合を構築できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、その一の実施形態において、
癌組織から細胞塊を得る工程と、
該細胞塊を細胞支持物質に包埋した状態で培養して細胞凝集塊を得る工程と
該細胞凝集塊を単一細胞化する工程と、
得られた細胞を、凸部の間隔が該細胞の大きさより小さな凹凸構造を有する培養器で培養し、細胞凝集塊を再形成する工程とを含む、癌組織由来細胞凝集塊を調製するための方法を提供する。
本発明はまた、他の実施の形態において、
癌組織から得た細胞塊又は該細胞塊を培養して得た細胞凝集塊を細胞支持用基質に包埋した状態で培養して細胞を増殖させる工程と、培養後の細胞塊を単一細胞化する工程とを含む方法により得られた細胞を、凸部間の間隔が細胞の大きさより小さな凹凸構造を有する培養器中で培養して、細胞凝集塊を形成する工程を含む、癌組織由来細胞凝集塊の調製方法を提供する。
本発明はまた、他の実施形態において、本発明の調製方法で得られた癌組織由来細胞凝集塊を用いて抗癌剤をスクリーニングする方法、抗癌剤の活性を定量的に測定する方法又は癌組織の放射線感受性を評価する方法を提供する。
本発明はまた、他の実施形態において、無血清の動物細胞培養用組成物及び細胞支持用物質と、凸部間の間隔が細胞の大きさより小さな凹凸構造を有する培養器、無血清又は血清添加動物細胞培養用組成物及び細胞凝集促進剤とを含む、癌組織由来細胞凝集塊を調製するためのキットを提供する。
本発明の調製方法によれば、患者癌組織の特性を反映した細胞凝集塊の均一な集団を大量に調製可能である。従って、ハイコンテント/ハイスループットな薬剤スクリーニングなどの大量且つ均一な患者組織由来癌細胞を求められる方法の実施が商業レベルで可能となる。
ここで、本願明細書において「細胞塊」とは、癌組織又はその細片を分割して得られる3個以上、好ましくは8個以上の癌細胞を含む小塊を意味する。従って「細胞塊」には、細胞塊が凝集して形成される細胞凝集塊を含まないものとする。
また、本願明細書において「細胞凝集塊」とは、細胞塊又は単一の癌細胞が凝集して形成された塊を意味する。但し、細胞塊を細胞支持物質に包埋した状態で培養器に非接触状態で培養して得られる細胞凝集塊は、極性を有するものが多い。また、略球形又は楕円球形を呈する細胞凝集塊以外に不定形の細胞凝集塊を多く含み、直径又は長径が1mmを超える細胞凝集塊を含む。一方、微細な凹凸構造を有する培養器に接触状態で培養して再形成される細胞凝集塊は、ほとんどが略球形又は楕円球形を呈し、より均一な大きさ、構造及び形状を有する。
また、本願明細書において「単一細胞化する」とは、癌組織由来細胞凝集塊をインビトロにおいて単一細胞にまで分割することを意味する。ただし、処理後に、単一細胞の他に、単一細胞のレベルまで分割されない細胞凝集塊が混在する場合もあり、このような場合であっても「単一細胞化する」に該当する。
図1は、実施例1乃至3の方法で得られた細胞凝集塊の形態を示す光学顕微鏡写真(50倍、無染色)である。図1Aは、実施例1で得られた細胞凝集塊の形態を示し、図1Bは、実施例2で得られた細胞凝集塊の形態を示し、図1Cは、実施例3で得られた細胞凝集塊の形態を示す光学顕微鏡写真である。 図2は、実施例1の方法で形成された細胞凝集塊及び実施例1の方法の単一細胞化処理前の細胞凝集塊をヘマトキシリン・エオシン染色した組織学的形態を示す光学顕微鏡写真(400倍)である。図2Aは前者を、図2Bは後者を示す。 図3は、実施例1の方法で形成された細胞凝集塊及び実施例1の方法の単一細胞化処理前の細胞凝集塊をEカドヘリン抗体(BDバイオサイエンス)及びAlexa-488標識二次抗体(Molecular Probes)を用いて蛍光免疫組織染色した結果を示す、蛍光顕微鏡写真(400倍)である。図3Aは前者を、図3Bは後者を示す。緑は、E-Cadherinを示し、青は細胞核を示す。 図4は、実施例1の方法で形成された細胞凝集塊及び実施例1の方法の単一細胞化処理前の細胞凝集塊をマウス(n=4)に移植した後の、マウス体内に形成された腫瘍の経時的な体積の変化を示すグラフである。 図5は、実施例1の方法で形成された細胞凝集塊及び実施例1の方法の単一細胞化処理前の細胞凝集塊をマウスに移植した後にマウス体内に形成された腫瘍組織をヘマトキシリン・エオシン染色した組織学的形態を示す光学顕微鏡写真である。図5Aは前者の50倍での顕微鏡写真であり、図5Bは前者の200倍での顕微鏡写真であり、図5Cは後者の50倍での顕微鏡写真であり、図5Dは後者の200倍での顕微鏡写真である。 図6は、実施例1の方法で細胞凝集塊が形成された各ウェルの細胞活性(発光強度)を示すグラフである。 実施例1の方法で形成された細胞凝集塊を用いた薬剤スクリーニングの結果、高感受性(cell viability10%未満)とされた化合物、中感受性(Cell viability 10%-20%)及び低感受性(Cell viability20%<)と評価された化合物の一部を、腫瘍を形成したマウスに投与して抗腫瘍効果を試験した結果を示すグラフである。
本発明による癌組織由来細胞凝集塊の調製方法は、上述の如く、生体から得た癌組織を分割して細胞塊を得る工程と、得られた細胞塊を培養して細胞凝集塊を形成する工程と、形成された細胞凝集塊を単一細胞化する工程と、得られた細胞を微小の凹凸構造を有する培養器中で培養し、細胞凝集塊を再形成する工程とを含む。以下、工程毎に具体的に説明する。
本発明により癌組織由来細胞凝集塊を調製する方法で用いる癌組織は、特に制限はないが、生体から得ることが好ましい。また、癌組織は、如何なる種に由来するものでもよく、例えば、サルやヒトを含む霊長目に属する動物、マウス、リス、ラットなどのげっ歯目に属する動物、ウサギ目に属する動物、イヌ、ネコなどのネコ目に属する動物の癌組織を用いることができる。また、本発明の方法では、用いる癌組織の種類についても特に制限はなく、例えば、リンパ腫、芽腫、肉腫、脂肪肉腫、神経内分泌腫瘍、中皮腫、神経鞘腫、髄膜腫、腺腫、黒色腫、白血病、リンパ性悪性腫、非小細胞肺癌、肝細胞癌、胆道癌、食道癌、胃癌、結腸直腸癌、膵臓癌、子宮頚癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、咽頭癌、乳癌、唾液腺癌、腎癌、前立腺癌、陰唇癌、肛門癌、陰茎癌、精巣癌、甲状腺癌、頭頸部癌などの癌組織を用いることができる。
生体から摘出した癌組織は、細胞塊に分割する前に、動物細胞培養用培地で維持しておいてもよい。例えば、ダルベッコMEM(DMEM F12など)、イーグルMEM 、RPMI、Ham‘s F12、アルファMEM、イスコフ改変ダルベッコなどの培地を用いて維持することができる。この際の培養は、浮遊培養でよい。
癌組織はまた、多くの場合、細片化してから細胞塊に分割することが好ましい。この際、細片化に先立って癌組織を洗浄しておくことが好ましい。このような洗浄には、例えば、酢酸緩衝液(酢酸+酢酸ナトリウム)、リン酸緩衝液(リン酸+リン酸ナトリウム)、クエン酸緩衝液(クエン酸+クエン酸ナトリウム) 、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液等を用いることができる。
組織の細片化は、一般的な切断器具を使用すればよく、例えば手術用メス、ナイフ、ハサミなどを用いて行えばよい。細片のサイズや形について特に制限はないが、均一形状及び大きさとすることが好ましく、例えば1mm〜5mm角とすることが好ましく、1mm〜2mm角とすることがより好ましい。
本発明においては、組織又はその細片を分割して細胞塊とする。具体的には、3個以上、好ましくは8個以上、より好ましくは10個以上、さらに好ましくは20個以上、特に好ましくは50個以上の癌細胞を含む細胞塊とする。一方、好ましくは1000個以下、より好ましくは、500個以下程度の細胞塊とする。このような「細胞塊」は、複数の癌細胞が相互に接触した状態で3次元構造を有している。
組織又はその細片を分割して細胞塊を得る方法としては、例えば酵素処理を挙げることができる。
このような酵素処理としては、コラゲナーゼ、トリプシン、パパイン、ヒアルロニダーゼ、C. histolyticum neutral protease、サーモリシン、及びディスパーゼの1種単独、又はこれらの2種以上の組合せによる処理を挙げることができる。
中でも、コラゲナーゼと他のプロテアーゼとを組合せて処理することが好ましく、C. histolyticum neutral protease、サーモリシン、及びディスパーゼから選択される少なくとも1種のプロテアーゼと、コラゲナーゼI、コラゲナーゼII及びコラゲナーゼIVから選択される少なくとも1種のコラゲナーゼとを含む混合酵素で処理することがより好ましい。
酵素処理条件は、組織又はその細片を細胞塊を維持するレベルで分解し得るものであればよく、用いる酵素に応じて適切なpH及び温度を選択し、分解する組織片の大きさや量などに応じて濃度及び時間を選択することが好ましい。一般的には、pH6〜8、好ましくは7.2〜7.6の緩衝液、例えばPBSやハンクス平衡塩溶液中で、例えば20〜40℃、好ましくは25〜39℃で、1〜180分間、好ましくは30〜150分間で、0.0001〜5%w/v、好ましくは0.001%〜0.5% w/vの濃度で酵素処理を行うことができる。
このようにして得られた酵素処理物は、通常、種々の分解産物が混在する。従って、3個以上の癌細胞を含む細胞塊を分離することが好ましい。例えば、サイズで振分けることにより分離することができ、例えば、目視又は位相差顕微鏡により分別したり、又は篩にかけて分離することができる。
選別の対象となる細胞塊は、体積平均粒子径8μm〜10μm程度の小さなものを含んでもよいが、球形に近い場合は、直径20μm〜500μmの細胞塊を対象とすることが好ましく、直径30μm〜400μmの細胞塊を対象とすることがより好ましく、直径40μm〜250μmの細胞塊を対象とすることが更に好ましい。同様に、楕円形状の場合には、長径20μm〜500μmの細胞塊を対象とすることが好ましく、長径30μm〜400μmの細胞塊を対象とすることがより好ましく、長径40μm〜250μmの細胞塊を対象とすることが更に好ましい。同様に、不定形の場合には、体積平均粒子径20μm〜500μmの細胞塊を対象とすることが好ましく、体積平均粒子径30μm〜400μmの細胞塊を対象とすることがより好ましく、体積平均粒子径40μm〜250μmの細胞塊を対象とすることが更に好ましい。
例えば、位相差顕微鏡を用いて(体積)平均粒子径、直径、長径等の細胞塊のサイズで分別する場合には、CCDカメラを取り付けたものを用いてサイズ分布及び細胞塊形状を評価することが好ましい。
篩による場合、上記細胞サイズの分布を考慮し、メッシュサイズ8μmを通過しないが500μmを超えるメッシュサイズは通過する成分を回収してもよいが、メッシュサイズ20μmを通過しないが500μmを通過する成分を回収することが好ましく、メッシュサイズ40μmを通過しないが250μmを通過する成分を回収することがより好ましい。また、篩による分別は粗いメッシュから細かなメッシュへと複数段階に分けて行うことが好ましい。
癌組織由来細胞塊は、薄い膜状の基底膜様物が塊の大きさに応じて40から120nm程形成されているものを選択してもよい。
癌組織由来細胞塊は、棚状配列、シート状配列、重層配列及び合胞状配列からなる群より選択される1以上の構造を有する物が多いが、本発明においてはいずれの構造細胞塊を使用してもよい。
このようにして得られた癌組織由来細胞塊は、直ちに次の工程に用いることができるが、一度培地上(上述した培地を用いることができる)で維持してから次の工程で用いてもよい。
本発明においては、次に、得られた癌組織由来細胞塊を培養に供して、細胞凝集塊を形成させ、細胞を増殖させる。
本発明においては、得られた癌組織由来細胞塊をそのまま細胞支持物質に包埋した状態で培養するか、最初細胞支持物質を用いずに培養して得られた細胞凝集塊を細胞支持物質に包埋した状態で培養して細胞凝集塊を形成させる。
このような培養法では、細胞同士の接触が維持されている一方で培養器と非接触な状態で培養され、これにより、実質的に癌組織由来の癌細胞のみからなる細胞凝集塊を形成し得ると共に細胞を実質的に無期限で増殖・維持できる。従って、この段階で、純粋な癌細胞の集合を大量に生成することができると共に、次の単一細胞化を行う時間的制約を無くすることができる。一方、この段階で形成される細胞凝集塊は、極性を有するものが多く、略球形又は楕円球形の細胞凝集塊の他、不定形の細胞凝集塊を多く含み、直径又は長径が1mm程の大きな細胞凝集塊も含む。このため、全体の細胞数は多いものの、凝集塊毎及びウェル毎の細胞数のばらつきが大きく、凝集塊の構造も種々のものが混在する。
癌組織由来細胞塊の培養に用いる培地としては、動物細胞培養用の無血清培地が好ましく、特に幹細胞培養用の無血清培地が好ましい。なお、無血清培地とは、無調製または未精製の血清を含まない培地を指す。
本発明で用いられる無血清培地は、動物細胞の培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、BME培地、BGJb培地、CMRL 1066培地、Glasgow MEM培地、Improved MEM Zinc Option培地、IMDM培地、Medium 199培地、Eagle MEM培地、αMEM培地、DMEM培地、RPMI 1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの組合せが挙げられる。
本発明で用いられる培地では、このような無血清培地に、血清代替物を添加することができる。血清代替物としては、例えば、アルブミン、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸)、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2−メルカプトエタノールまたは3’チオールグリセロールなどを挙げることができる。また、例えば、ノックアウト血清リプレースメント(KSR)、Chemically-defined Lipid concentrated脂肪酸濃縮液(Gibco社製)、グルタマックス(Gibco社製)などの市販の血清代替物を添加することもできる。また、ビタミン、EGF及びbFGFなどの増殖因子、Interleukin (IL), Interferon(IFN)などのサイトカイン、抗酸化剤、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類などを添加することもできる。
培養に用いられる培養器については、特に制限はなく、例えば、フラスコ、組織培養用フラスコ、ディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、チャンバースライド、シャーレ、チューブ、トレイ、培養バック、ローラーボトルなどを使用することができる。
本発明においては、細胞塊を細胞支持用物質に包埋して培養器表面に非接触の状態で培養される。このため、培養器の培養部の表面を細胞支持用物質で被覆したり、細胞支持用物質を培地に共存させておくことが好ましい。
細胞支持用物質としては、例えば、コラーゲンゲルや、ゼラチン、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、ラミニン、フィブロネクチンが挙げられる。
培養温度は、通常30〜40℃であり、典型的には37℃である。CO濃度は、通常1〜10%であり、2〜5%とすることが好ましい。
また、培養する細胞塊の癌腫に応じて、フィーダー細胞と共培養してもよい。また、乳癌、子宮癌、前立腺癌などの特定の癌の組織に由来する細胞塊を培養する場合には、ホルモンを存在させて培養することもできる。具体的には、乳癌組織に由来する細胞塊を培養する場合にはエストロゲンを添加し、子宮癌組織に由来する細胞塊を培養する場合には、プロフェステロンを添加し、前立腺癌組織に由来する細胞塊を培養する場合には、テストステロンを添加してもよい。
癌組織由来細胞塊の培養工程においては、細胞増殖を促す点から細胞塊又は細胞凝集塊を機械分割することも好ましい。このような機械分割は、手術用メス、ナイフ、ハサミ等を用いたり、或いは注射針を装着した注射器を用いて培養液と共に癌組織由来細胞塊を繰り返し吸引排出することで行うことができる。
この段階で得られる癌細胞凝集塊には、直径(長径)又は体積平均粒径8μm〜10μmの細胞凝集塊が含まれる一方で、直径1mm以上の細胞凝集塊も含まれる。また、極性を有する細胞配列の細胞凝集塊も多く、棚状配列、シート状配列、重層配列又は合胞状配列を有する細胞凝集塊を含む場合が多い。
他方、この段階で得られる細胞凝集塊は、実質的に純粋な癌細胞の集団である。従って、得られた細胞凝集塊をそのまま次の単一細胞化の工程に用いることができる。もっともその外周面に基底膜様物を含む細胞凝集塊を選択してもよく、例えば基底膜様物の1つであるラミニンをそれに対する抗体などで検出することにより細胞塊を選択することができる。
また、CD133、CD44、CD166、CD117、CD24及びESAからなる群より選択される1種以上の表面抗原を細胞表面に有する細胞を含む細胞凝集塊を選択してもよい。CD133、CD44、CD166、CD117、CD24及びESAは、一般的には、リンパ球等の白血球、線維芽細胞、上皮細胞、腫瘍細胞などの細胞に発現している表面抗原であり、各種幹細胞の表面マーカーでもある。
培養が終了した時点で、細胞支持用物質を分解して細胞凝集塊を分離することが好ましい。用いる細胞支持物質に応じて適切な分解物質で処理すればよく、例えば、コラゲナーゼ、マトリックスメタロプロテアーゼ等を用いることができる。
本発明においては、上記のようにして調製した癌組織由来細胞凝集塊を一度単一細胞化する。単一化された細胞を微細な凹凸構造を有する培養器中で培養して再度癌組織由来細胞凝集塊を形成する。
単一化された癌細胞で再形成された細胞凝集塊は、大きさや凝集塊当たりの細胞数にバラつきが少なく、多数のウェル中にそれぞれ細胞凝集塊を播種して試験を行うハイスループット/ハイコンテントなアッセイに均一な条件を提供することができる。
単一細胞化の方法としては、特に制限はないが、例えば細胞凝集塊を酵素処理して単一細胞化する方法を挙げることができる。
酵素処理に用いる酵素としては、トリプシン及びディスパーゼの何れか1種又は組合せを用いることが好ましい。これらの酵素は、例えば、コラゲナーゼ、パパイン、ヒアルロニダーゼ、C. histolyticum neutral protease、及びサーモリシンから選択される1種又は2種以上と組合せてもよい。酵素処理条件は、用いる酵素に応じて単一細胞まで分解するのに十分な条件を選択することが好ましいが、通常、pH6〜8、好ましくはpH7.2〜7.6の緩衝液、例えばPBS又はハンクスの平衡塩溶液中で、例えば20〜40℃、好ましくは25〜39℃で、例えば0.0001〜5%w/v、好ましくは0.001%〜0.5% w/vで行う。また、処理時間は細胞ダメージを防ぐ点からはできる限り短い方が好ましため、通常0.5〜20分間であり、1〜10分間がより好ましい。
処理後には、単一の細胞にまで分割されているか、顕微鏡、フローサイトメーター等で確認することが好ましい。細胞塊が残存する場合には、細胞塊を含む分散液をピペティングしたり超音波に晒すなど物理的な力を加えて分割を促したり、更に分解酵素含有液中で分解を行うことが好ましい。また、残存する細胞塊を除去してもよい。これらの処理は、最終的な細胞凝集塊を均一にする上で好ましいが、厳密に総ての細胞塊を単一細胞まで分割することは現実的でない場合がある。
また、単一細胞化処理の前に、後述する細胞凝集促進剤を含む培地で処理(30〜40℃、典型的には37℃で、10〜2時間、好ましくは20分から1時間培地中に維持)し、その後単一細胞化することが好ましい。このような前処理は、単一細胞化処理により細胞のダメージを軽減すると共に、処理後の細胞を培養した際に凝集を促進する効果を有する。
本発明においては、単一化された癌組織由来の細胞を、培養部表面に微細な凹凸構造を有する培養器中で培養する。この方法によれば、培養中に細胞をほとんど死滅させずに単一細胞から細胞凝集塊を形成することができる。また、得られる細胞凝集塊は、ほとんどが略球形又は楕円球形で大きさも比較的ばらつきは少ない。また、各培養領域(例えばウェル単位)に存在する細胞数のバラつきが極めて少ない。
本発明で用いられる培養器は、培養部分に微細な凹凸構造を有すること以外で特に制限はなく、例えばフィルム状やプレート状など種々の形状、大きさの培養器を用いることができる。具体的には、例えばディッシュ、ペトリデッシュ、組織培養用ディッシュ、マルチディッシュ、マイクロプレート、マイクロウェルプレート、マルチプレート、マルチウェルプレート、チャンバースライド等の培養器を用いることができるが、培養器を用いてハイスループット/ハイコンテントなスクリーニング試験を行う場合にはマルチウェルプレートを用いることが好ましい。
培養器を構成する材料に関しても、培養部の表面が細胞に対し無毒性の材料で構成されていること以外に特に制限はなく、培養器で一般的に用いられている材料、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ乳酸やポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン等の生分解性ポリマー、環状オレフィン共重合体や環状オレフィン重合体等の環状オレフィン系熱可塑性樹脂、(ポリ)アクリル樹脂、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂等のその他の樹脂、酸化アルミニウム等の金属、ガラス、石英ガラス、シリコン等を用いることができる。また、シリコンやガラス等からなる基板の表面に、上記の樹脂、酸化アルミニウム等の金属等の被覆層が形成されたもので構成することもできる。培養器を用いて、光学的分析を行う場合には、少なくとも培養部の底部分が透明の材料で構成されていることが好ましい。
培養器の培養部表面に形成される凹凸構造は、細胞に適度な接触刺激を与え、接着のための足場を与えると共に、細胞遊走と細胞凝集を可能として、細胞凝集塊を形成するために設けられるものであり、凹凸構造は、凸構造物間の間隔が培養される細胞の大きさ(直径又は短径)より小さければよく、種々の形状・大きさとすることができる。
凹凸構造の形状としては、例えば、線状(ラインアンドスペース)、ピラー状、ホール状、正多角形や円形のセル形状等を挙げることができ、これらの形状の1種のみ、又は2種以上を組合せた凹凸構造とすることができる。もっとも、培養器内の凹凸構造が均一な方が、均一な細胞凝集塊を得られ易いとの点から、正多角形や円形のセルが規則的に複数配列した構造が好ましい。
正多角形や円形のセルが規則的に複数配列した凹凸構造の場合には、セルの最小内径、即ちセルを画定する隔壁であって対抗する位置にある最も近い隔壁間の距離(例えば、セルが正六角形の場合には、対向する平行な隔壁間の距離となり、セルが長方形の場合には、対抗する長辺の隔壁間の距離となる)は、5μm〜100nmであることが好ましく、4μm〜500nmであることがより好ましく、3μm〜300nmであることが更に好ましく、2μm〜500nmであることがより更に好ましい。セル壁の厚さ、即ち凸部の幅は、通常、3μm〜100nmとするが、2μm以下、1μm以下、700nm以下、500nm以下、250nm以下というように、小さくなるほど好ましい。また、セルの深さ、即ち凸部の高さは、通常、1nm〜100μmであるが、500 nm-10 μm、1 μm -5 μmが好ましい。このような寸法のセル形状の凹凸構造では、再現性よく、均一な大きさ、構造の細胞凝集塊の形成を促進する点で有効である。
凹凸構造は、培養部表面の一部に形成してもよく、表面全体に形成してもよいが、培養部全体で細胞培養条件を均一にするために、表面全体に形成することが好ましい。また、内面の一部に形成する場合、形成場所に特に制限はないが底面に形成することが好ましい。
凹凸構造を形成する方法としては、例えば、ナノインプリント技術、3Dプリンタ技術、溶液キャスト法、エッチング、ブラスト、コロナ放電等を挙げることができ、より精密に形状等を制御できる点で、ナノインプリント技術、3Dプリンタ技術による方法が好ましい。
細胞は、親水性表面に接着し易く、疎水性表面には接着し難いことが知られているため、培養部の凹凸構造の表面を、表面改質技術により親水性を増減して培養条件を最適化することも好ましい。
例えば、紫外線、電子線、ガンマ線、プラズマ等の照射により、培養部表面に−Oや−OH基といった官能基を持たせ、親水性を向上させることができる。このような親水性が向上した表面では、細胞と凹凸構造表面との接着性が向上することとなる。
また、例えば、二酸化ケイ素(SiO)、ポリリジン等で凹凸構造表面を被覆することにより、親水性を向上させることができ、フッ素、シリコン、ポリヘマ(poly2−hydroxyethylmethacrylate)等で凹凸構造表面を被覆することにより、親水性を低減させることができる。
このような培養器中での培養は、通常の細胞培養と同様の条件で行うことができる。
培地としては、例えば細胞培養一般的に用いられている、細胞培養基本培地、分化培地、初代培養専用培地等を用いることができ、具体的には、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、グラスゴーMEM(GMEM)、RPMI1640、ハムF12、MCDB培地等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
培地には、血清、血清代替物、増殖因子、サイトカイン、及び分化誘導因子等を添加することが好ましく、細胞凝集塊の形成を促す点でFBS等の血清を添加することが特に好ましい。血清の添加量としては、2から20%程度でよく、通常5から15%である。
血清代替物としては、例えば、アルブミン、アミノ酸(例えば、非必須アミノ酸)、トランスフェリン、脂肪酸、インスリン、コラーゲン前駆体、微量元素、2−メルカプトエタノールまたは3’チオールグリセロールなどを挙げることができる。
増殖因子としては、例えばEGF、bFGF、IGF等を挙げることができ、サイトカインとしては、各種Interleukin(IL)、各種Interferon(IFN)等を挙げることができる。また、分化誘導因子としては、例えばレチノイン酸を挙げることができる。
本発明においては、培地に細胞凝集促進剤を添加して、単一細胞から迅速に細胞凝集塊が形成されることを促すことが好ましい。
本発明で用いられる細胞凝集促進剤としては細胞表面に存在する物質又は細胞膜を特異的に認識して結合し、架橋構造を形成する物質であり、例えば細胞接着分子、ROCK阻害剤等を挙げることができる。中でも単一化細胞の細胞死を抑制し、細胞凝集を促進する点でROCK阻害剤が好ましい。
細胞接着分子としては、例えば細胞同士の接着を促進する分子(カドヘリンスーパーファミリー(Eカドヘリン、pカドヘリン、Nカドヘリン等)、カテニン(αカテニン、βカテニン、p120カテニン等)、インテグリンスーパーファミリー、免疫グロブリンスーパーファミリー(NCAM、L1、ICAMファミリー、ネクチン)、クローディンファミリー、デスモグレイン、ニューロリギン、ニューレキシン)、基質と細胞との接着を促進する分子(フィブロネクチン、ラミニン)、並びにレクチン(ガレクチン、C-型レクチン、セレクチン、アネキシン、マメ科レクチン等)等を挙げることができる。
ROCKとは、Rho-associated coiled-coilキナーゼ(GenBankアクセッション番号:NM_005406)のことであり、Rho GTPaseの主たるエフェクター分子の1つで、多様な生理現象を制御していることが知られている(Rho結合キナーゼともいう)。ROCK阻害剤としては、例えば、Y27632などが例示される。その他に、Fasudil(HA1077)、H−1152、Wf−536(これらはすべて和光純薬工業株式会社から入手できる)、及びそれらの誘導体、並びにROCKに対するアンチセンス核酸、RNA干渉誘導性核酸やこれらを含むベクターが挙げられる。
培地にはまた、ビタミン、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類等を添加することができる。
また、乳癌、子宮癌、前立腺癌などの特定の癌の細胞を培養する場合には、それぞれ特定のホルモンの存在下で培養することが好ましい。具体的には、乳癌に対するエストロゲン、子宮癌に対するプロフェステロン、前立腺癌に対するテストステロンなどである。
培養温度は、特に限定されるものではないが、通常は、30〜40℃であり、典型的には37℃である。CO濃度は、1〜10%とすることが好ましく、2〜5%とすることがより好ましい。
本発明の方法により得られる癌組織由来細胞凝集塊は、3個以上の癌細胞を含み、略球形又は楕円球形を呈する細胞凝集塊を多く含む、形状・大きさがほぼ均一な細胞凝集塊の集団である。また、元の癌組織と近似した特性を有しており、その典型例として細胞間接着の特異的分子マーカーであるE−カドヘリンの発現を挙げることができる。また、本発明の方法により得られる癌組織由来細胞凝集塊を生体に移植した際には、腫瘍を形成し生体内で増殖し得ることも確認されている。この癌組織由来細胞凝集塊の移植で形成された腫瘍が、元の患者癌組織と同様に癌細胞間に間質が入り込む構造を有することも確認されている。
また、本発明の方法を複数のウェルを有する培養器で行った場合にはウェル間での細胞数のばらつきは小さい。
従って、本発明の方法により得られる癌組織由来細胞凝集塊は、例えば、この細胞凝集塊が由来する患者癌組織が感受性を有する薬剤をハイスループット/ハイコンテントなスクリーニング方法で同定する際に最適である。
このような薬剤は、既知の薬剤の場合もあるし未知の薬剤の場合もある。例えば、既知の薬剤に対する個々の患者の癌組織の感受性をスクリーニングすることができる。また、本発明により種々の患者から癌組織由来細胞凝集塊を調製し、それらを用いて未知の化合物に対する感受性を試験することで、抗癌剤をスクリーニングすることもできる。
抗癌剤のスクリーニング方法自体は、既知の方法を使用することができる。例えば、薬剤感受性は、薬剤添加後のウェル中の癌細胞の活性又は細胞数を測定し薬剤無添加のウェルと比較することによって評価し得る。このような測定は、例えば目視観察、CCDカメラによる画像解析、フローサイトメトリ、細胞染色、蛋白質結合性色素(例えば、スルホローダミンB)による染色、及びSD(Succinyl dehidrogenase)活性の1種又は2種以上を測定することによって行うこともできるが、細胞塊を融解しATPなどの生体内物質を定量する方法が好ましく、このような方法は、例えばCellTiter-GloTMLuminescent Cell Viability Assay, Promegaを用いて行うことができる。
より具体的には、例えば、細胞増殖を50%阻害する濃度(GI50)、見かけ上細胞増殖を抑える濃度(TGI)及び細胞数を播き込み時の50%に減少させる濃度(LC50)等を計算し個々の患者の薬剤感受性を評価することができる。GI50、TGI、LC50値はそれぞれ試験される細胞凝集塊固有の数値が得られ、その試験集団全体の平均GI50、TGI、LC50値を求めることもできる。従って、この試験集団の平均値と個々の細胞でのLog GI50値等との差を求め、それらを平均Log GI50値等を基準にし、個々の患者ごとに薬剤感受性を評価することができる。
本発明で得られた癌細胞凝集塊はまた、放射線感受性試験に用いることも好ましい。例えば、X線、コバルトの放射性同位体を線源とするγ線、電子線を直線型加速装置で加速した粒子線、サイクロトロンなどにより取り出されるα線などの重粒子線等を単独で、又は放射線増感剤を併用して、本発明で得られた癌細胞凝集塊に照射し、放射線照射前後の細胞活性を測定することにより実施することができる。
さらに、本発明で得られる癌細胞凝集塊は、例えば、直径100μmの癌細胞凝集塊(10個以下(細胞1000個以下に相当)でも、異種動物への移植における定着度が高い。従って、本発明の癌細胞凝集塊を、マウスを始めとする癌モデル動物の簡便な作成に有用であり、得られるモデル動物は、より厳密な癌組織の検証、薬剤感受性の評価、又は放射線治療の評価を可能とする。また、本発明で得られる癌細胞凝集塊をマウスに移植し得られる癌組織は、元の患者癌組織の同様の組織学的特性を有していることが確認されている。
更に本発明によれば、本発明による癌組織由来細胞凝集塊の調製方法を実施できるキットが提供される。このようなキットの一例としては、上述した無血清の動物細胞培養用組成物及び細胞支持用物質と、上述した凸部間の間隔が細胞の大きさより小さな凹凸構造を有する培養器、無血清又は血清添加動物細胞培養用組成物及び細胞凝集促進剤とを含むものを挙げることができる。また、本発明によれば、本発明の調製方法により得られる癌組織由来細胞凝集塊を含む、抗癌剤をスクリーニング用キット、抗癌剤の活性を定量的に測定するためのキット又は癌組織の放射線感受性を評価するためのキットが提供される。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各例中の%はいずれも重量%である。
(実施例1)
大腸がん患者から摘出された組織片を2mm角に細断し、Hank's Balanced Salt Solution (HBSS)中で数回洗浄した。これを0.26 U/mL Liberase DH solution (Roche Diagnostics)中で、37℃で2h処理した後、順に500μmメッシュのフィルター及び100μmメッシュのフィルターで濾した。続いて、フィルター透過物を40μmのセルストレーナーにかけ細胞塊を回収した。HBSSで2回洗浄後、StemPro hESC SFM-kit(Gibco A1000701)で調製した幹細胞培養用基礎培地に、8ng/mL bFGF(Wako 064-04541)、0.1mM 2-メルカプトンメタノール(Wako 137-06862)を添加した幹細胞培養用培地で浮遊培養し、細胞凝集塊を得た。
得られた細胞凝集塊を、Cell-matrix (新田ゼラチンType1-A)、10% 10xDMEM(Sigma D2429)、10% 再構成用緩衝液(NaOH 50mM, NaHCO3 260mM HEPES 200mM、Cell-matrix指定緩衝液)を含有するコラーゲンゲルに包埋し、その上部にStemPro hESC SFM-kit(Gibco A1000701)で調製した幹細胞培養用基礎培地に、8ng/mL bFGF(Wako 064-04541)、0.1mM 2-メルカプトンメタノール(Wako 137-06862)、1% penicillin-streptmycin solution(Wako 168-23191)を添加した幹細胞培養用無血清培地を注入し、1週間培養(37℃、5%CO2インキュベーター)した。その後、培地を除去し、PBSで洗浄した後、0.2mg/mL collagenase type 4(Worthington 4186)含有DMEM/F-12, GlutaMAX(Gibco 10565)培地を加え、1h反応することで、コラゲナーゼ処理し、コラーゲンゲルから成長した細胞凝集塊を回収した。
こうして得られた細胞凝集塊を上述した幹細胞培養用培地に10μM Y27632(Wako 253-00513)を添加した培地で、浮遊状態で、37℃で30分以上前処理し、その後細胞凝集塊を回収し、PBSで洗浄した。
回収した細胞凝集塊に、0.25%トリプシン/EDTA(Wako 209-16941)を加え、37℃で3分間反応させた。その後、細胞液をピッペッティングにより懸濁し、さらに2分間反応させた。これをピッペッティングにより懸濁し、検鏡して単細胞化されているのを確認した。
得られた細胞を、上述した幹細胞培養用培地を用いて、1x105細胞/mlに調整した(細胞数は、Cytorecon(GE healthcare社製)により測定した)。また、それぞれの細胞懸濁液に10μM Y27632を添加した。これを、NanoCulture Plate MSパターン、低接着、96ウェル(品番: NCP-LS96, Scivax社製、格子パターンの凹凸構造、ライン間幅2μm、ライン幅500nm、ライン深度1μm、低接着性)の各ウェルに100μlずつ注入し、1週間培養した(37℃、5%CO2のインキュベーターを使用)。
(実施例2及び3)
単細胞化された細胞懸濁液を、ぞれぞれ、DMEM/F-12-GlutaMAX培地(血清無添加、1% penicillin-streptmycin solution添加)及びDMEM培地(Wako 044-29765)(10% FBS、1% penicillin-streptmycin solution添加)で培養した以外は、実施例1と同様にして細胞凝集塊を再形成した。
[評価試験]
実施例1〜3の方法で得られた細胞凝集塊を以下の方法で評価した。
(光学顕微鏡による鏡検)
実施例1〜3の何れの方法で得られた培養産物を光学顕微鏡(50倍、無染色)で確認した。何れの方法でも細胞塊が形成されていたが(図1A−C)、10% FBS添加DMEM培地を用いて単一化した細胞を培養した実施例3で得られた細胞凝集塊は、100〜200μmの大きな略球状の細胞塊が殆どの細胞凝集塊の集合であった(図1C)。
(HE染色による組織学的形態)
実施例3で形成された細胞凝集塊及び実施例3の単一細胞化処理前の細胞凝集塊をパラフィンに包埋し、切片を作成し、ヘマトキシリン・エオジン染色して、光学顕微鏡(400倍)で組織学的形態を確認した。後者の細胞凝集塊は、極性を示し、形・大きさがまちまちであったのに対して(図2B)、実施例3の方法で得られた細胞塊は、きれいな球形であり、形・大きさがほぼ均一であった(図2A)。
(抗Eカドヘリン抗体による蛍光免疫組織染色)
抗Eカドヘリン抗体(BDバイオサイエンス社製)及びAlexa-488標識二次抗体(Molecular Probes)とDAPI(核染色用)を用いて、実施例3で形成された細胞凝集塊及び実施例3の単一細胞化処理前の細胞凝集塊を蛍光免疫組織染色した。両細胞凝集塊とも、細胞間接着の特異的分子であるEカドヘリンを細胞間に発現して、立体構造を形成していることが示された(図3A及びB)。
(マウス生体内における腫瘍形成能)
実施例3の方法で形成された細胞凝集塊及び実施例3の単一細胞化処理前の細胞凝集塊をそれぞれ1000個ずつ50μl PBSに懸濁し、これに等量のマトリゲル GFR(バイオサイエンス社製、BD 356230)を加え調整した。これらをそれぞれNOD.CB17−Prkdc〈scid〉/Jマウス(Charles River)(n=4)の皮下に移植し、腫瘍形成の有無を確認し、腫瘍径を計測して、腫瘍形成能及び増殖速度を評価した。
両細胞凝集塊とも、すべてのマウスで腫瘍を形成し、その増殖速度に違いがないことが示された(図4)。
(移植により形成された腫瘍の組織学的形態)
上記のマウスへの移植により形成された腫瘍組織をパラフィンで包埋し、切片を作成した。得られた組織切片を、ヘマトキシリン・エオジン染色して、光学顕微鏡(50倍、200倍)にて組織学的形態を観察した(図5)。
実施例3の単一細胞化処理前の細胞凝集塊の移植で形成された腫瘍は、元の患者癌組織と同様に、癌細胞の周囲に間質が入り込む構造を有していることが確認された。この結果は、近藤らの報告(非特許文献4)と同様である。なお、こうした間質構造は、株化されたがん細胞で作成した移植腫瘍では見られない。実施例1の方法で形成された細胞凝集塊の移植で形成された腫瘍でも、元の患者癌組織と同様に、癌細胞の周囲に間質が入り込む構造を有していた。これにより、本発明の方法で得られた細胞凝集塊及びそれを移植した生体で形成される腫瘍は、元の患者癌組織の特性をよく反映していることが示唆された。
(各ウェルの細胞数の均一性)
実施例3の方法で細胞凝集塊が形成された時点で、培養器の各ウェルの細胞数をCellTiter−Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製)を用いてATP量を定量化することで評価し、細胞塊の増殖が培養器各ウェル間で均一であるかを検討した。
図6に示す通り、実施例3の方法で形成される細胞凝集塊の各ウェルにおける細胞活性はほぼ均等であった。これにより、本発明による方法で形成される細胞凝集塊は、各ウェルの細胞数にばらつきがなく、薬剤スクリーニングや抗癌剤定量性試験での利用に特に適することが示された。
(薬剤スクリーニング試験)
実施例3の方法で得られた細胞凝集塊を有する培養器の各ウェルに、標準阻害剤キット(文部科学省科学研究費補助金・がんの特性等を踏まえた総合支援活動・化学療法基盤支援活動提供)の各増殖阻害剤(下記表に示す)を最終濃度1μMでそれぞれ添加した。3日間の培養後、各ウェルの細胞のATP含量をCellTiter-GloTM Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社製)を用いて測定し、阻害剤の効果を評価した。阻害剤の効果は、阻害剤無添加のウェルのATP含量に対する各ウェルのATP含量の比率により評価した。また、比較のため、ヒト大腸がん細胞株HT-29を用い、実施例3の方法のうち単一細胞化処理後の工程のみを実施して得られた細胞凝集塊について同様の薬剤スクリーニングを行った。結果を表1に示す。


表1に示すCell viabilityが低い物質ほど、癌細胞殺傷効果が高いと評価される候補薬剤である。実施例3の方法で形成された細胞凝集塊を用いた薬剤スクリーニングの結果、Actinomycin D、Trichostatin A、Cucurbitacin I、Staurosporine及びMG132は高感受性(Cell viability 10%未満)とされた。これに対して、ヒト大腸がん細胞株HT-29に実施例3の方法のうち単一細胞化処理後の工程のみを実施して得られた細胞凝集塊を用いた薬剤スクリーニングでは、MG132でのみ高感受性とされたが、他の薬剤では感受性が低い結果となった。また、実施例3の方法で形成された細胞凝集塊を用いた薬剤スクリーニングの結果、17-AAG Camptothecin、及びScriptaid等の薬剤が中程度(Cell viability 10%-20%)の感受性を示した他、Doxorubicin、Cantharidin他多くの薬剤で感受性が低かった。
この結果、本発明の方法により実施して得られる患者癌組織由来の細胞凝集塊を用いた薬剤スクリーニングを行うことで、癌細胞株を用いた薬剤スクリーニングより多くの候補化合物が選択されることが明らかになった。また、これにより、患者個別の癌組織に適合したより多くの薬剤が選択できると期待される。
(スクリーニング結果とインビボでの治療効果との相関性)
上記の実施例3の方法で形成された細胞凝集塊を用いた薬剤スクリーニングの結果、高感受性とされたActinomycin D、Trichostatin A、Cucurbitacin I、Staurosporine及びMG132、感受性が中程度とされた17-AAG、感受性が低いとされたCantharidin及びDoxorubicinを、上述のように実施例3の方法の単一細胞化処理前の細胞凝集塊を移植して腫瘍を形成したマウスに投与した。投与は、Trichostatin A、Cucurbitacin I、Staurosporine、MG132、17-AAG、Cantharidin、及びDoxorubicinは、1mg/kg/dayをマウス腹腔内に投与し、Actinomycin Dは、0.04 mg/kg/dayをマウス腹腔内に投与し、週5回11日間投与した。各薬剤の一回投与量は、Trichostatin A; Vigushin et al Clinical Cancer Res 2001, MG132; Harris et al 2011 Arch Otolaryngol Head Neck Surg, 17-AAG; Chaklader et al. Exp Oncol 2012, Cantharidin; Chang et al Food Chem Toxicol 2008, Doxorubicin; Ottewell et al J Natl Cancer Inst 2008; Actinomycin D; Marks and Venditti Cancer Res 1976, Cucurbitacin I; Blaskovich et al. Cancer Res 2003, Staurosporine; Akinaga et al. Cancer Res 1991に従って決定した。
図7に示す通り、スクリーニング試験で高感受性とされたActinomycin D、Trichostatin A、Cucurbitacin I、Staurosporine及びMG132は、インビボの移植腫瘍に対しても治療効果が高いことが示された。一方、感受性が中程度であった17-AAG、感受性が低かったCantharidin及びDoxorubicinでは、インビボの移植腫瘍に対する治療効果は低かった。こうしたことから、本発明による方法で得られた患者癌組織由来細胞凝集塊を用いて薬剤スクリーニングを行うことにより、生体内腫瘍で実際に奏功する治療薬剤を高確率で選択できる可能性が示唆された。
以上の試験結果から明らかな通り、本発明の方法によれば、元の患者癌組織の生物学的特性をよく反映し、かつ形状及び構造が均一の三次元癌細胞塊を各ウェルでの細胞数が均等の状態で安定且つ大量に供給できる。従って、本発明の方法により得られる細胞凝集塊を用いる薬剤スクリーニングでは、癌医薬品開発における多検体薬剤スクリーニング、抗癌剤の定量分析又は癌組織の放射線感受性試験などに実用上有効なツールを提供すると考えられる。また、従来の培養癌細胞株を用いた薬剤スクリーニングよりも、患者の癌特性に応じた治療薬選択が高確率で選択できる点も注目すべき点である。また、本発明の方法では、底面接着型の細胞塊を得ることができるため、顕微鏡等の光学器機を用いた観察・測定も可能であり、ハイコンテントスクリーニングにも適用ができる。また、癌医療においては、本法を用いることで、個々の患者のがんの生検検体から、容易に多検体薬剤スクリーニングに持ち込めるようになるため、個別の癌に対する最適治療薬選択に応用が可能であると期待される。

Claims (5)

  1. 癌組織から得た細胞塊又は該細胞塊を培養して得た細胞凝集塊を細胞支持用基質に包埋した状態で培養して細胞を増殖させる工程と、
    培養後の細胞塊を単一細胞化する工程と、
    得られた細胞を、凸部間の間隔が細胞の大きさより小さな凹凸構造を有する培養器中で培養して、細胞凝集塊を形成する工程と
    を含む、癌組織由来細胞凝集塊の調製方法。
  2. 請求項1に記載の方法で得られた癌組織由来細胞凝集塊を用いて抗癌活性を有する化合物をスクリーニングする方法又は該化合物の抗癌活性を定量する方法。
  3. 請求項1に記載の方法で得られた癌組織由来細胞凝集塊を用いて該癌組織の放射線感受性を評価する方法。
  4. 請求項1に記載の方法で得られた癌組織由来細胞凝集塊を、ヒト以外の動物に移植する癌モデル動物の作製方法。
  5. 無血清の動物細胞培養用組成物及び細胞支持用物質と、
    凸部間の間隔が細胞の大きさより小さな凹凸構造を有する培養器、無血清又は血清添加動物細胞培養用組成物及び細胞凝集促進剤と
    を含む、癌組織由来細胞凝集塊を調製するためのキット。
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