JP2015062387A - 新規dna断片及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】小さなサイズでON型双極細胞特異的な転写活性を発揮し得る新規プロモーターの提供。
【解決手段】特定の塩基配列、もしくは少なくとも近位Otx2結合配列を含むその部分塩基配列と、同一もしくは実質的に同一の塩基配列からなるDNAであって、ON型双極細胞特異的な転写活性を有するDNA。該DNAからなるプロモーターを含んでなるベクター。該ベクターの下流に予防及び/又は治療用遺伝子を連結して哺乳動物網膜に投与することにより、遺伝性網膜疾患又は視細胞変性を伴う網膜疾患の予防及び/又は治療が可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ON型双極細胞特異的なプロモーター活性を有するDNA断片及びその用途に関する。より具体的には、本発明は、Transient receptor potential cation channel subfamily M member 1(TRPM1)遺伝子プロモーターの特定領域を含むDNA断片、該DNA断片を含むON型双極細胞特異的発現ベクター、並びに該ベクターを用いた網膜疾患の予防及び/又は治療、ON型双極細胞の検出などに関する。
哺乳動物の網膜は、5種類の神経細胞と1種類のグリア細胞から構成され、整然とした層構造を形成している(図1)。光シグナルは最外層に位置する網膜視細胞で神経シグナルに変換され、中間ニューロンである双極細胞(BCs)、神経節細胞(GCs)を介して脳へと送られる。
網膜の視細胞が障害されると、その他の神経細胞が正常に機能したとしても、光情報を受け取ることができず、中心視力が低下し、やがては失明に至る。網膜色素変性症や加齢黄斑変性症は失明原因の上位に位置し、厚生労働省特定疾患に指定されている。これらの疾患では、視細胞は変性するものの、内層側の細胞は比較的正常に維持されていることから、双極細胞や神経節細胞に光受容能を付与することができれば、視覚再生が可能と考えられる。実際、光駆動型のカチオンチャネルであるチャネルロドプシン-2の遺伝子を、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いて網膜神経節細胞に導入することにより、遺伝盲ラットの視機能が回復したとの報告がある(非特許文献1、2)。
しかし、錐体(cone)細胞で受容された視覚情報は、双極細胞において、明暗の情報に応じて「ON経路」(光刺激を受けたという情報を伝達する経路)と「OFF経路」(光刺激が消えたという情報を伝達する経路)とに分かれ、ON経路のシグナルはON型双極細胞(光に応答して脱分極する)からON型神経節細胞へ、OFF経路のシグナルはOFF型双極細胞(光に応答して過分極する)からOFF型神経節細胞へと、それぞれリレーされる(図2)。一方、ほのかな明りを見る能力(暗所視)を担う桿体(Rod)双極細胞は、光に応答して脱分極するON型双極細胞であり、AIIアマクリン細胞を通じ、ON情報はギャップ結合を介してON経路に、OFF情報はグリシン作動性シナプスを介してOFF経路に振り分けられる(図2)。
視覚情報処理においては、この明暗の情報処理(ON、OFF)が決定的に重要であり、視覚情報がONとOFFとに分解されることにより、コントラスト感度が増強されると考えられている。そのため、すべての双極細胞又は神経節細胞で同じ光受容チャネルを発現させると、視覚情報がONとOFFとに分解されなくなり、例えば、OFF経路にもON応答を引き起こしてしまうため、コントラスト感度の低下を招くおそれがある。したがって、ON型もしくはOFF型の神経細胞に特異的な遺伝子発現系を開発することは、視細胞の変性を伴う網膜疾患において、残存する神経ネットワークを利用して十分な視覚機能を再構築する上で重要である。
視覚情報処理の大部分を占めるON型応答を担うON型双極細胞において特異的に発現する遺伝子としては、代謝型グルタミン酸受容体6(mGluR6)が知られており、この遺伝子の9.5 kbのプロモーターを用いて、ON型双極細胞特異的に目的遺伝子を発現させ得ることが示されている(非特許文献3、4)。しかしながら、mGluR6プロモーターのON型双極細胞特異性のためには、転写開始点の上流約8 kbに位置する約200 bpの領域が必須である(非特許文献5)。神経細胞へのin vivo遺伝子導入にはアデノ随伴ウイルスベクターが適しているといわれるが、このベクターは約4.5 kbの収容力しかないので、mGLuR6の全長プロモーターを用いることはできない。ON型双極細胞特異性に必須の200 bp領域を他の遺伝子プロモーターに繋いだ人工プロモーターも開発されているが(非特許文献5)、この場合、他の遺伝子プロモーターの性質が反映されてしまう可能性がある。
Tomita et al., IOVS, 48(8): 3821-3826 (2007) Tomita et al., Exp. Eye Res., 90(3): 429-436 (2010) Ueda et al., J. Neurosci., 17(9): 3014-3023 (1997) Nakamura et al., Mol. Vis., 16: 425-437 (2010) Kim et al., J. Neurosci., 28(31): 7748-7764 (2008)
したがって、本発明の目的は、臨床応用に有効なON型双極細胞特異的な遺伝子発現誘導システムを構築し、該システムを用いてON型双極細胞に治療遺伝子を導入することにより、網膜色素変性症や加齢黄斑変性症をはじめとする網膜疾患を治療する手段を提供することである。
本発明者は以前、ON型双極細胞の視覚情報伝達イオンチャネルの実体がTRP(Transient receptor potential)ファミリーに属するTRPM1であることを明らかにした(Koike et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 107(1): 332-337 (2010))。暗状態では視細胞からのグルタミン酸放出が増加し、mGluR6が活性化されてTRPM1チャネルが閉じることによってON型双極細胞が過分極側にシフトするのに対し、明状態では視細胞からのグルタミン酸放出が減少し、mGluR6が不活性化されてTRPM1チャネルが開くことによってON型双極細胞が脱分極側にシフトする(図3)。TRPM1も、mGluR6と同様ON型双極細胞特異的に発現しているが、その特異的発現メカニズムについては全く解明されていなかった。そこで、本発明者は、TRPM1のON型双極細胞特異的な発現のメカニズムを明らかにすべく、TRPM1遺伝子の転写を調節する転写因子を探索した。
本発明者は、光受容細胞の運命決定に重要な転写因子Otx2を桿体ON型双極細胞特異的に欠損したコンディショナルノックアウト(CKO)マウスを作製し、Otx2が双極細胞の成熟にも役割を果たしていることを見出している(Koike et al., Mol. Cell. Biol., 27(23): 8318-8329 (2007))。そこで、本発明者は、TRPM1遺伝子の発現を制御している転写因子の候補としてOtx2に着目し、マウスTRPM1遺伝子プロモーターの転写開始点から上流約2.3 kbまでの塩基配列について、Otx2の結合コンセンサス配列を探索した。その結果、転写開始点のすぐ上流(近位)に2か所、さらに転写開始点の約2.1 kb上流(遠位)に1か所のOtx2結合配列が存在することを見出した(図4)。レポーターアッセイの結果、近位の2つのOtx2結合配列を変異させるとプロモーター活性が失われるのに対し、遠位のOtx2結合配列を変異させてもプロモーター活性に影響はなかった(図5)。さらに、TRPM1のプロモーター活性には、転写開始点の上流300 bpまでで十分であることも明らかとなった。また、ヒトを含む他の哺乳動物及びニワトリとの相同性解析の結果、近位Otx2結合配列を含む転写開始点の上流約150 bpのTRPM1プロモーター配列は、温血動物間で極めてよく保存されていることが確認された(図6)。
本発明者は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]以下の(a)〜(d)のいずれかである単離されたDNA。
(a)配列番号1に示される塩基配列を含むDNA
(b)上記(a)のDNAの非マウス温血動物オルソログであるDNA
(c)上記(a)又は(b)のDNAの部分塩基配列であって、2つの近位Otx2結合配列を含む150塩基以上の連続する塩基配列を含み、かつON型双極細胞特異的な転写活性を有するDNA
(d)上記(a)〜(c)のいずれかのDNAと95%以上の同一性を有する塩基配列を含み、かつON型双極細胞特異的な転写活性を有するDNA
[2]前記(c)の部分塩基配列が遠位Otx2結合配列を含まない、上記[1]記載のDNA。
[3]前記(c)の部分塩基配列が転写開始点の上流150塩基以上の連続する塩基配列を含む、上記[1]又は[2]記載のDNA。
[4]前記(c)の部分塩基配列が転写開始点の上流300塩基以上の連続する塩基配列を含む、上記[3]記載のDNA。
[5]500塩基以下の塩基配列からなる、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のDNA。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかに記載のDNAからなるプロモーターを含む発現ベクターであって、該プロモーターに作動可能に連結される遺伝子を、ON型双極細胞特異的に発現させ得るベクター。
[7]アデノ随伴ウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである、上記[6]記載のベクター。
[8]前記プロモーターに作動可能に連結された予防及び/又は治療用遺伝子をさらに含むことを特徴とする、上記[6]又は[7]記載のベクター。
[9]予防及び/又は治療用遺伝子が遺伝性網膜疾患の原因遺伝子である、上記[8]記載のベクター。
[10]予防及び/又は治療用遺伝子が脱分極光センサー遺伝子である、上記[8]記載のベクター。
[11]上記[9]記載のベクターを含んでなる、遺伝性網膜疾患の予防及び/又は治療剤。
[12]上記[10]記載のベクターを含んでなる、視細胞変性を伴う網膜疾患の予防及び/又は治療剤。
[13]疾患が網膜色素変性症又は加齢黄斑変性症である、上記[12]記載の剤。
[14]前記プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子をさらに含むことを特徴とする、上記[6]又は[7]記載のベクター。
[15]上記[14]記載のベクターを含んでなる、ON型双極細胞の検出試薬。
[16]前記プロモーターに作動可能に連結されたCreリコンビナーゼ遺伝子をさらに含む上記[6]又は[7]記載のベクターが導入された、トランスジェニック非ヒト動物。
本発明のDNAは、長くともTRPM1遺伝子の転写開始点から上流300 bpまでの領域を含んでいれば、ON型双極細胞特異的に下流遺伝子の発現を誘導することができるので、収容力に制限のあるアデノ随伴ウイルスやレンチウイルス等のウイルスベクターにもネイティブな形態で搭載することができ、網膜疾患の遺伝子治療用発現ベクターのためのプロモーターとして有用である。また、本発明のDNAの下流にレポーター遺伝子を連結したベクターは、ON型双極細胞を検出するのに用いることができる。さらに、本発明のDNAの下流にCreリコンビナーゼ遺伝子を連結したベクターが導入されたトランスジェニック非ヒト動物は、標的遺伝子の両側にloxP配列を挿入したノックイン動物と交配させることにより、該標的遺伝子をON型双極細胞特異的に欠損させることができるので、コンディショナルKO動物作製用のリサーチツールとして有用である。
中枢神経網膜の層構造を示す模式図である。 網膜神経回路のモデル図である。光シグナルは視細胞において神経シグナルに変換され、中間ニューロンである双極細胞、神経節細胞を介して脳へと伝達される。cone:錐体。Rod:桿体。A:AIIアマクリン細胞。 錐体双極細胞のON経路・OFF経路を示す模式図である。ON型双極細胞の視覚伝達チャネルの本体がTRPM1であり、暗状態では視細胞からのグルタミン酸放出が増加し、mGluR6が活性化されてTRPM1チャネルが閉じることによってON型双極細胞が過分極側にシフトしているが、明状態では視細胞からのグルタミン酸放出が減少し、mGluR6が不活性化されてTRPM1チャネルが開くことによってON型双極細胞が脱分極側にシフトする。 マウスTRPM1遺伝子の上流約2 kbの塩基配列を示す図である。ボックスはOtx2結合部位を示す。星印は転写開始点、下線は開始ATGコドンを示す。 ルシフェラーゼアッセイに用いたコンストラクトの模式図を示す。Luc:ルシフェラーゼ遺伝子。 ルシフェラーゼアッセイの結果を示す。各カラムの下の図は、図5Aのコンストラクト模式図に対応する。 種間におけるTRPM1プロモーター(上流20 kbp)の相同性解析の結果を示す。ボックスは転写開始点近傍の各動物種間でよく保存された領域を示す。 TRPM1プロモーター中の各動物種間でよく保存された領域の配列比較と転写因子の結合部位を示す。図中、配列の上の数字は、マウスプロモーターにおけるヌクレオチドの位置(転写開始点を+1とする)を示す。
本発明は、ON型双極細胞特異的に下流の遺伝子の転写を活性化する新規DNA断片(「本発明のDNA」ともいう)を提供する。ここで「ON型双極細胞」は、ON型錐体双極細胞と桿体双極細胞とを含む。
本発明のDNAは、配列番号1に示される塩基配列からなるマウスTRPM1遺伝子の5’側領域(転写開始点の上流2257塩基までと第1エクソン)、あるいは少なくとも転写開始点のすぐ上流に位置する2つのOtx2結合コンセンサス配列を含む、連続する150塩基以上の塩基配列からなるその部分DNAと、同一又は実質的に同一の塩基配列を有し、かつON型双極細胞特異的な転写活性を有するDNAである。ここで「Otx2結合コンセンサス配列」とは、転写因子Otx2が結合し得る高度に保存された配列であって、「TAATC(C/T)」(相補鎖であれば「(G/A)GATTA」)からなる塩基配列、あるいは該塩基配列から1又は2個、好ましくは1個の塩基が置換、欠失、付加又は挿入された塩基配列であって、Otx2が結合し得る配列を意味する。変異Otx2結合配列へのOtx2の結合能は、公知のゲルシフトアッセイなどにより容易に評価することができる。
配列番号1に示される塩基配列中に含まれるOtx2結合コンセンサス配列は、塩基番号161〜166で示される「GGATTA」、2224〜2229で示される「GGATTA」及び2234〜2239で示される「TGATTA」の3か所である。本明細書においては、これらのうち転写開始点(塩基番号2258で示される「T」)のすぐ上流に位置する塩基番号2224〜2229及び2234〜2239で示される2つのOtx2結合コンセンサス配列を「近位Otx2結合配列」、転写開始点の約2.1 kb上流に位置する塩基番号161〜166で示されるOtx2結合コンセンサス配列を「遠位Otx2結合配列」と称する。2つの近位Otx2結合配列を含む、配列番号1に示される塩基配列の連続する150塩基上の部分塩基配列を有し、かつON型双極細胞特異的な転写活性を有する限り、いかなるDNAも本発明のDNAに包含され得る。
好ましくは、本発明のDNAは、配列番号1に示される塩基配列の部分塩基配列であって、塩基番号2224〜2258で示される塩基配列(即ち、2つの近位Otx2結合配列から転写開始点までの塩基配列)を含む連続する150塩基以上の塩基配列、より好ましくは転写開始点から150塩基上流までもしくはそれよりさらに上流までの塩基配列、いっそう好ましくは転写開始点から300塩基上流まで、もしくはそれよりさらに上流までの塩基配列と、同一又は実質的に同一の塩基配列を含み、かつON型双極細胞特異的な転写活性を有するDNAである。
「実質的に同一の塩基配列」としては、配列番号1に示される塩基配列もしくはその部分塩基配列において、1) 1もしくは2以上の塩基(好ましくは1〜50塩基、より好ましくは1〜10塩基、いっそう好ましくは1〜5、4、3もしくは2塩基)が他の塩基で置換された塩基配列、2) 1もしくは2以上の塩基(好ましくは1〜50塩基、より好ましくは1〜10塩基、いっそう好ましくは1〜5、4、3もしくは2塩基)が欠失した塩基配列、3) 1もしくは2以上の塩基(好ましくは1〜50塩基、より好ましくは1〜10塩基、いっそう好ましくは1〜5、4、3もしくは2塩基)が挿入された塩基配列、4) 1もしくは2以上の塩基(好ましくは1〜50塩基、より好ましくは1〜10塩基、いっそう好ましくは1〜5、4、3もしくは2塩基)が付加された塩基配列、及び 5) それらを組み合わせた塩基配列であって、ON型双極細胞特異的な転写活性を有するものが挙げられる。転写活性は、Otx2との結合アッセイ、あるいは調べるべき塩基配列を含むプロモーターの制御下にあるレポーター遺伝子(例:ルシフェラーゼ、Green Fluorescent Protein (GFP)等)の、ON型双極細胞、あるいはOtx2を強制発現させた動物細胞における発現を調べることにより検定することができる。上記の置換、欠失、挿入もしくは付加は、近位Otx2結合配列以外の部分においてなされることが望ましい。
あるいは、「実質的に同一の塩基配列」として、配列番号1に示される塩基配列に相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズしうるDNAであって、ON型双極細胞特異的な転写活性を有するものが挙げられる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと95%以上の同一性を有するDNAがハイブリダイズする条件を意味する。好ましくは、配列番号1に示される塩基配列からなるDNAと96%以上、より好ましくは97%以上、いっそう好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAがハイブリダイズする条件が挙げられる。尚、本明細書における塩基配列の同一性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=-3)にて計算することができる。具体的な「ストリンジェントな条件」としては、例えば、「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル 第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed.)」(T. Maniatisら編集、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー発行、1989年)に記載の条件等、例えば、6×SSC(sodium chloride/sodium citrate)中45℃でのハイブリダイゼーション反応の後、0.2×SSC/0.1% SDS中65℃での一回以上の洗浄などが挙げられる。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。
他の「実質的に同一の塩基配列」として、例えば、マウス以外の温血動物(例:ヒト、ラット、ウシ、ウマ、サル、イヌ、ニワトリ等)由来のTRPM1遺伝子プロモーター中の配列番号1に示される塩基配列に対応する塩基配列、又は少なくとも2つの近位Otx2結合配列を含む連続する150塩基以上の塩基配列からなるその部分配列が挙げられる。他の温血動物におけるTRPM1遺伝子オルソログは、配列番号1に示される塩基配列をクエリーにして、マウス以外の温血動物のゲノム及び/又はcDNAのデータベースに対してBLASTやFASTAを用いて検索をかけるか、あるいは、例えばJackson研究所から提供されるMouse Genome Informatics(http://www.informatics.jax.org/)でaccession番号や遺伝子記号/遺伝子名をキーワードにして検索をかけ、ヒットしたデータのMammalian Orthologyの情報にアクセスする等によって、その配列情報を取得することができる。また、上記「対応する塩基配列」は、例えば、VISTA browser (http://genome.lbl.gov/vista/index.shtml)を用いて、配列番号1に示される塩基配列と、他の温血動物におけるTRPM1遺伝子オルソログの塩基配列とを比較し、アラインメントさせることにより得ることができる。図6Bに、マウスTRPM1遺伝子の転写開始点から173bp上流まで(塩基番号2085〜2258)の調節領域と、他の温血動物のTRPM1遺伝子オルソログとのアラインメントの結果を示す。尚、本明細書において、非マウス温血動物におけるTRPM1オルソログの転写開始点は、図6Bに示される温血動物間でよく保存されたTRPM1遺伝子5’上流域についてマウスTRPM1遺伝子とアラインメントさせたときに、マウスTRPM1遺伝子の転写開始点とされる位置(配列番号1に示される塩基配列中、塩基番号2258で示される「T」)に対応する位置を指すこととし、報告されているか、あるいは5’RACE法などにより実験的に導かれる転写開始点とは、必ずしも一致しない場合がある。また、図6Bに示される通り、近位Otx2結合配列はあらゆる温血動物のTRPM1プロモーター内に存在するが、非マウス温血動物のTRPM1プロモーターの中には、遠位Otx2結合配列を有しないか、あるいはマウスTRPM1プロモーターの遠位Otx2結合配列とは離れた位置に、遠位Otx2結合配列が存在する場合もある。一例として、ヒトTRPM1プロモーター中の配列番号1に示される塩基配列に対応する塩基配列を、配列番号3に示す。この配列は、ヒトTRPM1遺伝子の転写開始点(上述の通り、図6BにおいてマウスTRPM1遺伝子の転写開始点に対応する、配列番号3の塩基番号2241のヌクレオチド「G」を意味する)の上流2240bpと第1エクソンからなる(NCBIに登録されるヒト15番染色体のゲノム配列NT_010194のposition 2,243,666〜2,246,210(complement)に相当)。塩基番号2214〜2219の「GGATTA」及び2224〜2229の「TGATTA」が近位Otx2結合配列であり、塩基番号1898〜1903にもOtx2結合コンセンサス配列が存在する。
本発明のDNAは、ON型双極細胞特異的に下流に繋いだ遺伝子の転写を活性化し得る限り、その長さに特に制限はないが、少なくとも転写開始点の直前に位置すると考えられる基本プロモーターの領域と、ON型双極細胞特異性を付与する2つの近位Otx2結合配列を含む、TRPM1プロモーターの連続した150塩基以上の部分塩基配列を含むことが望ましい。さらに、図6Bより明らかなように、転写開始点から150塩基上流までには、近位Otx2結合配列以外にも温血動物間でよく保存された複数の転写因子結合コンセンサス配列が含まれるので、本発明のDNAは、転写開始点から少なくとも150塩基上流までを含むことが好ましい。さらに、転写開始点から300塩基上流までを含めば、全長プロモーターと同等の十分な転写活性が得られる。遠位Otx2結合配列は、転写活性のON型双極細胞特異性にも転写レベルにも重要ではない。したがって、本発明のDNAの長さは、その用途に応じて適宜変更することができるが、例えば、収容力に制限のあるアデノ随伴ウイルス(AAV)やレンチウイルス等のウイルスベクターに搭載するプロモーターとして用いる場合には、収容できる目的遺伝子の大きさを最大限にするべく、できる限り短くすることが望ましい。例えば、AAVの場合は、収容できる遺伝子サイズが約4.5 kbであるため、本発明のDNAの長さを500塩基以下とすれば、約4 kbの目的遺伝子を挿入することができる。したがって、かかる目的においては、本発明のDNAの長さは500塩基以下であることが特に好ましい。
一般に、遺伝子の転写効率がmRNAの5’非翻訳領域(5’UTR)やコード領域の一部の効果により増強される場合がある。そのため、一実施態様においては、本発明のDNAは、転写開始点より上流の調節領域のみならず、5’UTR(配列番号1に示されるマウスTRPM1遺伝子の場合、塩基番号2258〜2254で示される領域)やコード領域の一部(例えば、第1エクソン(配列番号1に示されるマウスTRPM1遺伝子の場合、塩基番号2455〜2529で示される領域)の一部又は全部)を含んでいてもよい。
本発明のDNAは酸又は塩基との生理学的に許容される塩であってもよく、例えば、生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、中でも、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のDNAは、ヒト又は他の温血動物(例:マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ハムスター、ウシ、ウマ、ヒツジ、サル、イヌ、ネコ、ニワトリ等)由来の細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例:マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、もしくは間質細胞、又はこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例:嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例:大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、唾液腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、軟骨、関節など]から抽出したゲノムDNAより、公知のTRPM1遺伝子プロモーター配列をプローブとして、該プロモーター領域を含むゲノムDNAをクローニングし、DNA分解酵素、例えば、適当な制限酵素を用いて所望の部分プロモーター配列を含むDNA断片に切断、ゲル電気泳動で分離後、所望のバンドを回収してDNAを精製することにより調製することができる。あるいは、上記細胞の粗抽出液もしくはそこから単離したゲノムDNAを鋳型として、配列番号1に示される塩基配列を基に合成したプライマーを用いたPCRにより、TRPM1プロモーターの部分配列を増幅、単離することもできる。
また、本発明のDNAは、配列番号1に示される塩基配列を基に、市販のDNA/RNA自動合成装置を用いて化学合成することによっても得ることができる。
本発明はまた、上記本発明のDNAからなるプロモーターを含む発現ベクターであって、該プロモーターに作動可能に連結される遺伝子を、ON型双極細胞特異的に発現させ得るベクターを提供する。
本発明のDNAがTATAボックスなどの基本プロモーター配列を含む場合には、該DNA自体をプロモーターとして使用することができるが、基本プロモーター配列を含まない場合は、他の公知の哺乳動物発現用プロモーター、例えばEF1αプロモーター、SRαプロモーター、 SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV (サイトメガロウイルス) プロモーター、CAGプロモーター、HSV-tkプロモーターなどに由来する基本プロモーター活性を付与する塩基配列が付加される。さらに、他の転写制御シス配列(例: CAATボックス、GCボックス等)を適当な位置に配置することもできる。但し、他のプロモーターの一部とのキメラプロモーターとした場合には、当該他のプロモーター領域の特性が反映され、本来のTRPM1プロモーターの特性が減殺されるおそれがある。幸い、上述のとおり、TRPM1プロモーターは、そのON型双極細胞特異的転写活性に必要なOtx2結合配列は近位Otx2結合配列のみであり、遠位Otx2結合配列は不要なため、長くとも転写開始点から300塩基上流までを含めば十分な転写活性が得られる。したがって、プロモーターの重要な部分を断続的に繋ぎ合わせたり、基本プロモーター活性を他の遺伝子プロモーターから得る必要がなく、ネイティブな連続した配列を使用することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド (例: pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド (例: pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド (例: pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、パラミクソウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルス、pA1-11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明のベクターとしては、上記の他に、所望によりスプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、複製起点などを含有しているものを用いることができる。ポリA付加シグナルは、本発明のDNAからなるプロモーターの下流に、マルチクローニングサイトを介して連結することが好ましい。尚、選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素 (dhfr) 遺伝子 [メソトレキセート (MTX) 耐性]、アンピシリン耐性遺伝子 (Ampr)、ネオマイシン耐性遺伝子 (Neor、G418耐性) 等が挙げられる。また、必要に応じて、シグナル配列をコードする塩基配列 (シグナルコドン) をプロモーターとポリA付加シグナルの間に付加して分泌発現ベクターとしてもよい。
上記の各ベクター構成要素を、制限酵素やリガーゼを用いた周知慣用の遺伝子操作によって適切に連結することにより、本発明のベクターを構築することができる。
上述の通り、本発明のDNAは、ON型双極細胞特異的に遺伝子の転写を促進することができるので、該DNAからなるプロモーターを含む本発明のベクターは、ON型双極細胞特異的な発現ベクターである。
本発明のベクターは、ON型双極細胞特異的に遺伝子の転写を活性化し得るので、該ベクターのプロモーターの下流に、ON型双極細胞で発現させることにより疾患を予防及び/又は治療し得るタンパク質もしくはRNA(例えば、アンチセンスRNA、siRNA等)をコードする遺伝子(単に「予防及び/又は治療遺伝子」ともいう)を作動可能に連結して得られるベクターを、該疾患の予防及び/又は治療を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに投与することにより、該疾患を予防及び/又は治療することができる。
従って、本発明は、上記本発明のベクターを含んでなる、遺伝性網膜疾患や視細胞変性を伴う疾患の予防及び/又は治療剤を提供する。遺伝性網膜疾患としては、ON型双極細胞特異的に発現する遺伝子の遺伝的異常に起因する疾患であれば特に制限はなく、例えば、mGluR6やTRPM1遺伝子の異常により発症する先天性停止性夜盲症などが挙げられるが、これに限定されない。遺伝性網膜疾患のための予防及び/又は治療遺伝子としては、該疾患の原因遺伝子(正常遺伝子)が挙げられる。例えば、ウイルスベクターを用いる場合は網膜下投与により、非ウイルスベクターを用いる場合はin vivoエレクトロポレーション等により、正常な遺伝子を網膜に直接導入する。あるいは、細胞の内因性DNA修復機構や相同組換えを利用して、原因遺伝子の変異部位を修復することもできる。即ち、変異部位を正常にした配列を有するキメラRNA/DNAオリゴヌクレオチド(chimeraplast)を導入し、標的配列に結合させてミスマッチを形成させ、内因性DNA修復機構を活性化して遺伝子修復を誘導する。あるいは、変異部位に相同な400〜800塩基の一本鎖DNAを導入して相同組換えを起こさせることにより遺伝子修復を行なうこともできる。
一方、「視細胞変性を伴う網膜疾患」としては、例えば、網膜色素変性症や加齢黄斑変性症が挙げられるが、これらに限定されない。これらの疾患では、光受容能を有する視細胞は失われるものの、内層側の双極細胞や神経節細胞は比較的正常に維持されている。そのため、光センサーとしての機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を双極細胞に発現させて光受容能を付与すれば、視機能を回復させることができる。したがって、この場合の予防及び/又は治療遺伝子は、光センサータンパク質の遺伝子である。光センサータンパク質としては、ON型双極細胞は光に応答して脱分極するので、脱分極光センサーとして機能するタンパク質、即ち、光に応答して細胞内にカチオンを取り込む、緑藻由来の光駆動型チャネルロドプシン(ChR)-1又は-2、細菌由来の光駆動型プロトンポンプであるバクテリオロドプシンなどが例示される。ON型錐体双極細胞に脱分極光センサーが発現すると、光に応答して脱分極が起こり、ON情報をON型神経節細胞に伝達する。また、桿体双極細胞に脱分極光センサーが発現すると、ほのかな明りに応答して脱分極が起こり、AIIアマクリン細胞を介して、ON経路又はOFF経路に視覚情報が振り分けられる。OFF型錐体双極細胞では脱分極光センサーは発現しないので、OFF経路でON応答が引き起こされることはなく、コントラスト感度の低下を防ぐことができる。
上記の予防及び/又は治療用遺伝子の塩基配列はいずれも公知であるので、該塩基配列をもとにプライマーを作製し、ヒトもしくは他の哺乳動物由来の細胞、組織又は臓器より調製したゲノムDNA画分又は全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型として用い、Polymerase Chain Reaction (PCR) 法又はReverse Transcriptase-PCR (RT-PCR) 法によって、予防及び/又は治療遺伝子を直接増幅することができる。あるいは、予防及び/又は治療遺伝子は、上記した細胞、組織又は臓器より調製したゲノムDNA又は全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるゲノムDNAライブラリー及びcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法又はPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
得られた予防及び/又は治療遺伝子を適当な制限酵素で消化し、同様に処理してプロモーターとポリA付加シグナルの間で開裂させた本発明のベクターと、リガーゼを用いてライゲーションさせることにより、予防及び/又は治療用遺伝子が作動可能に連結されたベクターを作製することができる。
本発明のベクターは、ON型双極細胞特異的に遺伝子の転写を活性化し得るので、ON型双極細胞以外の細胞に導入されたベクターは、予防及び/又は治療遺伝子を発現することができず、結果として、予防及び/又は治療遺伝子の産物は、ON型双極細胞に選択的に送達されたと同様の効果を奏する。従って、本発明はまた、一側面において、本発明のベクターを含んでなる、予防及び/又は治療遺伝子の産物をON型双極細胞に選択的に送達させ得るドラッグデリバリーシステムを提供する。尚、視細胞変性を伴う網膜疾患の治療にあたっては、OFF型錐体双極細胞特異的に、過分極光センサーとして機能するタンパク質、即ち、光に応答して細胞内にアニオンを取り込む、細菌由来のハロロドプシン等を発現させれば、OFF応答も回復するため、コントラスト感度のさらなる増強が期待される。OFF型錐体双極細胞特異的な転写活性を付与し得るプロモーターとしては、例えば、ニューロキニン-3受容体(NK3R)遺伝子のプロモーターを用いることができる。
本発明のベクターを、遺伝性網膜疾患や視細胞変性を伴う疾患の予防及び/又は治療剤として使用する場合は、該ベクターを単独あるいはアデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って製剤化することができる。予防及び/又は治療遺伝子の発現の長期安定性、非分裂細胞への導入効率等の面から、好ましくはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、又はレンチウイルスベクターが使用される。AAVベクターを用いる場合には、例えば、IOVS, 48(8): 3821-3826 (2007)、Exp. Eye Res., 90(3): 429-436 (2010)、PLoS ONE, 8(1): e54146 (2013)等に記載の方法に準じて実施することができる。あるいは、レンチウイルスベクターとして、例えばサル免疫不全ウイルス(SIV)ベクターを用いる場合には、例えば、Gene Ther., 10: 1161-1169 (2003)、Gene Ther., 10: 1503-1511 (2003)等に記載の方法に準じて実施することができる。
該ベクターは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与することができる。
注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油, 椰子油などのような天然産出植物油などを溶解又は懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液 (例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール、塩化ナトリウムなど) などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール (例: エタノール)、ポリアルコール (例: プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤 (例: ポリソルベート80TM, HCO-50) などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、 ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤 (例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定化剤 (例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤 (例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや他の哺乳物 (例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど) に対して投与することができる。
本発明のベクターの投与量は、投与対象、症状、投与方法などにより差異はあるが、例えばAAVベクターを注射剤の形で成人患者の網膜下もしくは硝子体内腔に投与する場合は、ベクター濃度1010〜1012ゲノム粒子/mlのウイルス懸濁液を、一回につき0.1〜30 μl程度、好ましくは0.5〜20 μl程度投与するのが好都合である。
一方、本発明のベクターのプロモーターの下流に、レポーター遺伝子を作動可能に連結して、哺乳動物の細胞、組織もしくは個体に導入すると、該レポーター遺伝子は、ON型双極細胞において特異的に発現するので、該レポーター遺伝子にコードされるレポータータンパク質を検出することにより、ON型双極細胞を検出することができる。
従って、本発明はまた、レポーター遺伝子が作動可能に連結された本発明のベクターを含んでなる、ON型双極細胞を検出するための試薬を提供する。
本発明の検出用試薬に用いられるレポーター遺伝子としては、例えば、ルシフェラーゼ、GFP、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ等をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。画像診断が可能なレポーター遺伝子が特に好ましい。例えばレポーター遺伝子としてルシフェラーゼ遺伝子を用いた場合、本発明の検出試薬を哺乳動物に投与して本発明のベクターを導入した後、ルシフェリンを該動物に投与し、超高感度冷却CCDカメラを搭載したリアルタイムin vivoイメージング装置(例えば、住商ファーマインターナショナル(株)のIVIS200など)を用いて、化学発光をデジタル画像として可視化することにより、容易にON型双極細胞を検出することができる。
Creリコンビナーゼ遺伝子が作動可能に連結された本発明のベクターを導入したトランスジェニック動物は、標的遺伝子の両側に同方向にloxP配列を配置した同種のノックイン動物と交配させることにより、ON型双極細胞特異的に該標的遺伝子を欠損したコンディショナルノックアウト動物を作製することができ、ON型双極細胞における該標的遺伝子の機能解析を行うためのツールとして利用することができる。
以下に実施例を示して、さらに具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
実施例1 TRPM1遺伝子プロモーター内のOtx2結合コンセンサス配列の有無の探索
NCBIに登録されたC57BL/6Jマウス7番染色体のゲノム配列(NT_187035)から、TRPM1遺伝子の転写開始点の上流2257bpと第1エクソン(NT_187035のposition 25,050,807〜25,053,335に相当)の配列情報を取り出し、論文として報告されている情報を用いて、Otx2結合コンセンサス配列の有無を調べた。結果を図4に示す。マウスTRPM1遺伝子の転写開始点より上流約2kb内には、Otx2結合部位が3か所(上流側に1か所、下流側に2か所)存在することが明らかとなった。
実施例2 ルシフェラーゼアッセイ
次にTRPM1遺伝子の上流約2 kbのプロモーター領域の転写活性に及ぼすOtx2結合配列の効果を調べるために、ルシフェラーゼアッセイを行った。配列番号1に示されるマウスTRPM1遺伝子の上流約2 kbの塩基配列情報をもとに、以下のプライマーを設計し、マウスゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。
Forward primer: 5’-GGTACCTTCCGGCTAGTCCAGTCCACGGACT-3’(配列番号5)
Reverse primer: 5’-CTCGAGATGGGAGGCCCTGGTCAGCTGAGGT-3’(配列番号6)
得られた約2.5 kbの増幅断片をベクターpGEM-Teasyにクローニングした。
制限酵素Asp718とXhoIを用いてTRPM1プロモーター断片を切り出し、同じくAsp718とXhoIで消化した、ホタルルシフェラーゼを発現するpGL4ベクター(プロメガ株式会社)とライゲーションして、pGL4-2kbp TRPM1promoterを得た。部位特異的変異誘発により、すべてのOtx2結合部位、上流側の1か所のOtx2結合部位のみ、又は下流側の2か所のOtx2結合部位のみをそれぞれ変異させた3種類の変異TRPM1プロモーターを、同様にpGL4ベクターに挿入した(それぞれ、pGL4-OTX変異2kbp TRPM1promoter、pGL4-OTX変異(up stream)2kbp TRPM1promoter、pGL4-OTX変異(down stream)2kbp TRPM1promoter)。さらに、Otx2結合部位が2か所集中している下流側に着目し、下流側のOtx2結合部位のみを含む上流300bpをpGL4ベクターに挿入したpGL4-300bp TRPM1promoterも作製した。各コンストラクトの模式図を図5Aに示す。
本実験ではHEK293細胞を用い、上記の各ベクターとpCAGGS IIベクター(大阪大学宮崎純一博士より供与された)にマウスOtx2のコード領域を挿入したpCAGGSII-mOTX2とを、同時トランスフェクトした。トランスフェクション効率の補正用にウミシイタケルシフェラーゼを発現するpRL-TKベクター(プロメガ株式会社)を用いた。
ルシフェラーゼ活性の測定は以下のように行った。1×Passive Lysis Buffer (Promega)を用いて細胞溶解液を回収し凍結融解後、上清をluciferase assay reagent II (Promega)と反応させた。マイクロプレートリーダー (コロナ電気株式会社; グレーディングマイクロプレートリーダ SH-8100Lab形) を用いてホタルルシフェラーゼの発光量を測定した。さらに、 Stop & Glo Reagantを加えウミシイタケルシフェラーゼの発光量を測定した。結果を図5Bに示す。
上流側の1か所のOtx2結合部位のみを変異させても、プロモーターの転写活性に影響を与えなかったが、下流側の2か所のOtx2結合部位を変異させると転写活性は大きく損なわれた。また、下流側の2か所のOtx2結合部位を含む上流300bpの断片のみでも、十分なプロモーター活性が認められた。
実施例3 TRPM1遺伝子プロモーター領域の種間相同性解析
VISTA browser (http://genome.lbl.gov/vista/index.shtml) を用いて、TRPM1遺伝子の上流及び下流約20 kbpの塩基配列を、マウスと、ヒト、アカゲザル、イヌ、ウマ、ラット及びニワトリとの間で比較した。その結果、転写開始点の近くに、比較解析に用いた動物種においてよく保存されている領域が見出された(図6A)。そこで、それぞれの種の塩基配列を比較し、さらに、この領域で保存されている転写因子結合部位について解析した。Otx2のみならず、数多くの転写因子の結合部位がこれらの動物種において高度に保存されていることが明らかとなった(図6B)。
本発明により、従来公知のmGluR6プロモーターと比べて、極めてサイズの小さなON型双極細胞特異的プロモーター活性を有するDNAが提供された。これにより、収容力に制限のあるアデノ随伴ウイルスやレンチウイルス等のウイルスベクターにも、ネイティブな形態のプロモーターを搭載することができ、網膜疾患の遺伝子治療用発現ベクターのためのプロモーターとして大いに有用である。

Claims (16)

  1. 以下の(a)〜(d)のいずれかである単離されたDNA。
    (a)配列番号1に示される塩基配列を含むDNA
    (b)上記(a)のDNAの非マウス温血動物オルソログであるDNA
    (c)上記(a)又は(b)のDNAの部分塩基配列であって、2つの近位Otx2結合配列を含む150塩基以上の連続する塩基配列を含み、かつON型双極細胞特異的な転写活性を有するDNA
    (d)上記(a)〜(c)のいずれかのDNAと95%以上の同一性を有する塩基配列を含み、かつON型双極細胞特異的な転写活性を有するDNA
  2. 前記(c)の部分塩基配列が遠位Otx2結合配列を含まない、請求項1記載のDNA。
  3. 前記(c)の部分塩基配列が転写開始点の上流150塩基以上の連続する塩基配列を含む、請求項1又は2記載のDNA。
  4. 前記(c)の部分塩基配列が転写開始点の上流300塩基以上の連続する塩基配列を含む、請求項3記載のDNA。
  5. 500塩基以下の塩基配列からなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のDNA。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のDNAからなるプロモーターを含む発現ベクターであって、該プロモーターに作動可能に連結される遺伝子を、ON型双極細胞特異的に発現させ得るベクター。
  7. アデノ随伴ウイルスベクター又はレンチウイルスベクターである、請求項6記載のベクター。
  8. 前記プロモーターに作動可能に連結された予防及び/又は治療用遺伝子をさらに含むことを特徴とする、請求項6又は7記載のベクター。
  9. 予防及び/又は治療用遺伝子が遺伝性網膜疾患の原因遺伝子である、請求項8記載のベクター。
  10. 予防及び/又は治療用遺伝子が脱分極光センサー遺伝子である、請求項8記載のベクター。
  11. 請求項9記載のベクターを含んでなる、遺伝性網膜疾患の予防及び/又は治療剤。
  12. 請求項10記載のベクターを含んでなる、視細胞変性を伴う網膜疾患の予防及び/又は治療剤。
  13. 疾患が網膜色素変性症又は加齢黄斑変性症である、請求項12記載の剤。
  14. 前記プロモーターに作動可能に連結されたレポーター遺伝子をさらに含むことを特徴とする、請求項6又は7記載のベクター。
  15. 請求項14記載のベクターを含んでなる、ON型双極細胞の検出試薬。
  16. 前記プロモーターに作動可能に連結されたCreリコンビナーゼ遺伝子をさらに含む請求項6又は7記載のベクターが導入された、トランスジェニック非ヒト動物。
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