JP2015062385A - 半連続培養方法 - Google Patents

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友裕 今井
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【課題】培養液から前記菌体を分離して、効率よく前記生成物を回収することができる半連続培養方法を提供する。【解決手段】培養槽3に収容された培養液2中で菌を培養し、培養槽3から抽出された培養液2を濾過し濾物として菌が産生した生成物を回収し、濾液を培養槽3に循環させる。培養槽3内に配設された中空円筒状のフィルタ4を軸回りに回転させて、培養液3をフィルタ4に対して平行に流動させ、クロスフロー濾過を行うことにより、培養液2に含まれる菌体のうち50〜90質量%の菌体を分離し、残余の菌体を含む培養液2を濾過手段5で濾過して菌が産生した生成物を回収する。【選択図】 図1

Description

本発明は、培養槽中に収容された培養液中で菌を培養して、該菌が産生した酵素等の生成物を回収する半連続培養方法に関する。
従来、培養槽中に収容された培養液中で菌を培養した後、該培養槽から培養液を抽出し、該培養液を濾過して、該菌が産生した酵素等の生成物を濾液として回収すると共に、濾過されなかった該培養液を該培養槽に循環させる半連続培養方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
前記従来の半連続培養方法では、前記培養液の濾過に平均細孔径が0.01〜2.0μmの範囲にある多孔性膜を用いることにより、該培養液から前記菌を分離して前記生成物を回収することができるとされている。また、前記多孔性膜は、目詰まりしにくく、高い透過性能を長時間に亘り保持できるとされている。ところが、前記従来の半連続培養方法では、糸状菌等のように菌塊を形成する真菌等の培養を行うときには、該菌塊等の菌体により前記多孔性膜が目詰まりを起こしやすく、前記生成物を回収する性能を保持することが難しくなるという問題がある。
前記問題を解決するために、前記培養槽から抽出された培養液から前記菌体を分離するフィルタープレス等の固液分離装置を該培養槽の外部に設け、該固液分離装置で該菌体が分離された該培養液を濾過して前記生成物を濾液として回収することが考えられる。
特開2009−296921号公報
しかしながら、前記培養槽の外部に前記固液分離装置を設けると、該固液分離装置を洗浄し、或いは滅菌する機構も必要となり、装置が複雑且つ大型化して操作が煩雑になるという不都合がある。
本発明は、かかる不都合を解消して、前記培養液から前記菌体を分離して、効率よく前記生成物を回収することができる半連続培養方法を提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明は、培養槽に収容された培養液中で菌を培養すると共に、該培養槽から抽出された該培養液を濾過し濾物として該菌が産生した生成物を回収し、濾液を該培養槽に循環させる半連続培養方法において、該培養槽内に配設された中空円筒状のフィルタを軸回りに回転させて、該培養液を該フィルタに対して平行に流動させ、クロスフロー濾過を行うことにより、該培養液に含まれる菌体のうち50〜90質量%の該菌体を分離し、残余の該菌体を含む該培養液を濾過手段で濾過して該菌が産生した生成物を回収することを特徴とする。
本発明の半連続培養方法では、前記培養槽に収容された前記培養液中で前記菌を培養し、該菌に酵素等の生成物を産生させることにより、該生成物を含む培養液を得ることができる。そこで、前記培養槽から抽出された前記培養液を濾過し、濾物として該生成物を回収する一方、濾液としての該培養液を前記培養槽に循環させることにより、半連続培養を行う。
このとき、前記菌の菌体が菌塊を形成する等したときには、前記濾過手段が目詰まりを起こし、前記培養液の濾過が困難になることが懸念される。そこで、本発明の半連続培養方法は、前記培養槽内に前記中空円筒状のフィルタを配設し、該中空円筒状のフィルタを軸回りに回転させることにより、前記培養槽中で前記培養液が該フィルタに対して平行に流動する流れを形成する。
この結果、前記中空円筒状のフィルタによりクロスフロー濾過を行って、前記培養液に含まれる菌体のうち50〜90質量%の該菌体を分離することができ、残余の該菌体を含む前記培養液が該フィルタを透過する。そして、残余の前記菌体を含む前記培養液を前記濾過手段により濾過して該菌が産生した前記生成物を回収する。
本発明の半連続培養方法によれば、前記中空円筒状のフィルタにより前記培養液に含まれる菌体のうち50〜90質量%の該菌体を分離するので、該フィルタ自体の目詰まりを防止することができる。また、前記中空円筒状のフィルタにより前記範囲の菌体が分離され残余の菌体を含む前記培養液を濾過するので、濾過手段の目詰まりも防止することができ、効率よく前記生成物を回収することができる。
前記中空円筒状のフィルタにより分離される菌体が、前記培養液に含まれる菌体のうち90質量%を超えるときには、該フィルタ自体が目詰まりを起こし、前記培養液を前記濾過手段に供給することが困難になる。また、前記中空円筒状のフィルタにより分離される菌体が、前記培養液に含まれる菌体のうち50質量%未満であるときは、前記濾過手段が目詰まりを起こし、前記生成物の回収が困難になる。
本発明の半連続培養方法において、前記フィルタは0.001〜1.0mmの範囲の孔径の細孔を備えることが好ましい。前記フィルタは細孔の孔径が1.0mmを超えると、該フィルタにより分離される前記菌体が、前記培養液に含まれる菌体のうち50質量%未満になることがある。また、前記フィルタの細孔の孔径を0.001mm未満とすることはコストも含め技術的に難しい。
また、本発明の半連続培養方法において、前記フィルタはパンチングメタル、セラミックス、樹脂等からなるものを用いることができるが、前記培養液に含まれる菌体のうち前記範囲の菌体を分離するために、パンチングメタルからなることが好ましい。
また、半連続培養方法では、前記培養槽に収容されている前記培養液の全量を抽出すると、前記濾過手段の濾液としての前記培養液には実質的に前記菌が含まれていないため、該濾液を該培養槽に循環させたとしても、新たに該菌を投入し、ある程度成長させ、増殖させた後でなければ次の培養を行うことができない。
そこで、本発明の半連続培養方法では、前記培養槽から前記培養液を抽出するときに、該培養槽に収容されている該培養液のうち、5〜30質量%の該培養液を該培養槽内に残すことが好ましい。
このようにするときには、前記培養槽内に残された前記培養液中には、前記中空円筒状のフィルタにより分離された結果として、該培養槽に当初収容されていた培養液に含まれていた菌体の50〜90質量%の菌体が残されている。そこで、前記濾過手段の濾液としての前記培養液を前記培養槽に循環させると共に、前回の培養で消費された培地を補給すれば、該培養槽内に残されている前記菌体を種菌として、直ちに次の培養を開始することができる。
本発明の半連続培養方法に用いる装置の構成を示すシステム構成図。 図1に示すスピンフィルタの構成を一部破断して示す斜視図。 スピンフィルタによる分離の前後で培養槽内に残されている菌体の湿潤状態における量を示すグラフ。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
本実施形態の半連続培養方法は、図1に示す半連続培養装置1を用いて実施することができる。半連続培養装置1は、培養液2を収容し培養液2中で菌を培養する培養槽3と、培養槽3内に配設され、培養液2から菌体の一部を分離する中空円筒状のスピンフィルタ4と、スピンフィルタ4を透過した培養液2を濾過して前記菌が産生した生成物を回収する濾過手段5とを備えている。ここで、濾過手段5は、培養液2から菌体を分離する精密濾過膜装置6aと、培養液2から菌が産生した生成物を回収する限外濾過膜装置6bとにより構成されている。
スピンフィルタ4は精密濾過膜装置6aに培養液2を供給する培養液導管7に接続されており、培養液導管7は精密濾過膜装置6aの下流でさらに限外濾過膜装置6bに接続されている。限外濾過膜装置6bは培養槽3にその濾液を循環させる濾液導管8を備えており、濾液導管8は途中に配設された精密濾過膜装置9を介して培養槽3に接続されている。
培養槽3は、槽外の上部に設けられたモータ10から垂下されるシャフト11とシャフト11に取着された攪拌羽根12により、培養液2を攪拌することができるようになっている。
スピンフィルタ4は、図2に示すように、中空シャフト13を備えており、中空シャフト13に間隔を存して外嵌された複数の円形の枠体4aと、枠体4aの外周縁に沿って配設されて中空円筒状に形成されたフィルタ4bとを備えている。また、フィルタ4bの上下は蓋体4c,4dにより密封されている。フィルタ4bはパンチングメタルからなり、0.001〜1.0mmの範囲の孔径の細孔を備えている。
中空シャフト13は培養槽3外の上部でロータリージョイント14を介して培養液導管7に接続されると共に、ロータリージョイント14の下方に設けられたプーリ15がモータ16の回転軸に接続されている。
精密濾過膜装置6aは精密濾過膜17を備えており、精密濾過膜17により培養液2を濾過して、スピンフィルタ4で分離されなかった菌体を分離し、排出導管18から排出する。精密濾過膜17は、例えば、0.2μmの細孔径を備え中空糸膜モジュールを構成している。また、精密濾過膜装置6aには、新たな培地を供給する培地導管19が接続されている。
限外濾過膜装置6bは限外濾過膜20を備えており、限外濾過膜20により培養液2を濾過して、濾物として前記菌が産生した生成物、例えば酵素が濃縮された濃縮液を得る。限外濾過膜20は、例えば、分画分子量が5000〜30000の範囲であり、中空糸膜モジュールを構成している。前記濃縮液は、限外濾過膜装置6bに備えられた濃縮液導管21を介して後工程に供給される。一方、限外濾過膜20の濾液は濾液導管8により限外濾過膜装置6bから排出される。
精密濾過膜装置9は精密濾過膜22を備えており、濾液導管8により培養槽3に循環される濾液中の雑菌等を分離し、排出導管23から排出する。精密濾過膜22は、例えば、0.2μmの細孔径を備え平膜モジュールを構成している。
次に、本実施形態の半連続培養装置1を用いる半連続培養方法について説明する。
まず、培養槽3は所定の培養液2を収容するとともに、モータ10によりシャフト11を介して回転される攪拌羽根12により培養液2を攪拌して、培養液2により菌を培養する。前記菌は、酵素等の有用な生成物を産生する菌であればよく特に限定されることはないが、糸状菌等の真菌であって、その菌体が互いに絡み合って菌塊を形成する菌を好適に用いることができる。
前記糸状菌として、例えば、接合菌類、子嚢菌類等の菌を挙げることができ、該糸状菌は不完全菌を含んでいてもよい。前記糸状菌として、具体的には、Aspergillus属菌、Trichoderma属菌、Penicillium属菌、Acremonium属菌、Fusarium属菌等を挙げることができる。
半連続培養装置1では、培養槽3で例えば3〜11日間前記菌の培養を行った後、培養液2をスピンフィルタ4、培養液導管7を介して取り出す。本実施形態の半連続培養方法では、培養液2の取り出しは、培養槽3に収容されている培養液2のうち、5〜30質量%の培養液2を培養槽3内に残すようにして行う。
このとき、スピンフィルタ4は、モータ16及びプーリ15を介して中空円筒状のフィルタ4bが回転されることにより、培養液2に含まれる菌体を分離する。スピンフィルタ4は、前述のようにしてフィルタ4bが回転されることにより、培養液2がフィルタ4bの表面に対して平行に流動する流れを形成する。
この結果、スピンフィルタ4によればクロスフロー濾過を行うことができ、培養液2に含まれている前記菌体のうち、50〜90質量%の菌体が分離されて培養槽3内に残される。そして、スピンフィルタ4により分離されなかった残余の菌体と、前記菌が産生した酵素等の生成物とを含む培養液2が、中空円筒状のフィルタ4b内部に流入する。
ここで、スピンフィルタ4による前記分離の前後で培養槽3内に残されている菌体の湿潤状態における量の一例を図3に示す。図3では、分離前の培養槽3内の菌体の量は78wet−g/L、分離後は70wet−g/Lであり、90質量%の菌体が分離されて培養槽3内に残されている。
フィルタ4b内部に流入した培養液2は、中空シャフト13に設けられた図示しない孔部からその内部に流入し、中空シャフト13の内部を通って培養液導管7に導入される。スピンフィルタ4によれば、前記範囲の菌体を分離することにより、培養液2が前記糸状菌の菌塊等の菌体を含む場合にも該菌体による目詰まりを防止することができる。
次に、スピンフィルタ4により前記範囲の菌体が分離された培養液2は、培養液導管7を介して精密濾過膜装置6aに供給される。精密濾過膜装置6aでは、精密濾過膜17により培養液2を濾過し、スピンフィルタ4で分離されなかった残余の菌体をも分離し、排出導管18から排出する。また、精密濾過膜装置6aでは、培地導管19から供給される新たな培地を培養液2に溶解すると共に、該培地に含まれる雑菌等を精密濾過膜17により分離する。前記雑菌等は前記菌体と共に排出導管18により廃棄される。
精密濾過膜装置6aで濾過された培養液2は、次に、培養液導管7を介して限外濾過膜装置6bに供給され、限外濾過膜20により濾過される。この段階の培養液2には菌体は含まれていないが、菌により産生された酵素等の生成物が含まれている。そこで、限外濾過膜20により濾過されることにより、濾物として前記酵素等の生成物が濃縮された濃縮液が得られ、該濃縮液は濃縮液導管21により、バイオエタノール製造工程等の次工程に供給される。
一方、限外濾過膜装置6bの濾液は、菌体も菌の産生する生成物も含まない培養液2のみであるので、濾液導管8により精密濾過膜装置9を介して培養槽3に循環される。精密濾過膜装置9では、前記濾液としての培養液2は精密濾過膜22で濾過され、雑菌等が濾物として分離される。前記雑菌等の濾物は、排出導管23により廃棄される。
本実施形態の半連続培養方法によれば、前述のようにすることにより、糸状菌等の菌塊を形成する菌の場合にもフィルタ4b及び精密濾過膜17が目詰まりすることなく、該菌により産生された酵素等の生成物を回収することができる。
また、培養槽3から取り出された培養液2は、新たな培地が添加されて培養槽3に循環されるが、このとき培養槽3には前回の培養に用いられた培養液2のうち、5〜30質量%の範囲の培養液2が残されている。従って、本実施形態の半連続培養方法によれば、培養槽3内に残された培養液2に含まれる前記菌を種菌とし、新たに菌を投入して該菌を成長、増殖させることなく、該菌の半連続培養を行うことができる。
1…半連続培養装置、 2…培養液、 3…培養槽、 4…スピンフィルタ、 5…濾過手段、 6a…精密濾過膜装置、 6b…限外濾過膜装置、 7…培養液導管、 8…濾液導管、 9…精密濾過膜装置。

Claims (4)

  1. 培養槽に収容された培養液中で菌を培養すると共に、該培養槽から抽出された該培養液を濾過し濾物として該菌が産生した生成物を回収し、濾液を該培養槽に循環させる半連続培養方法において、
    該培養槽内に配設された中空円筒状のフィルタを軸回りに回転させて、該培養液を該フィルタに対して平行に流動させ、クロスフロー濾過を行うことにより、該培養液に含まれる菌体のうち50〜90質量%の該菌体を分離し、残余の該菌体を含む該培養液を濾過手段で濾過して該菌が産生した生成物を回収することを特徴とする半連続培養方法。
  2. 請求項1記載の半連続培養方法において、前記フィルタは0.001〜1.0mmの範囲の孔径の細孔を備えることを特徴とする半連続培養方法。
  3. 請求項1又は請求項2記載の半連続培養方法において、前記フィルタはパンチングメタルからなることを特徴とする半連続培養方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の半連続培養方法において、前記培養槽から前記培養液を抽出するときに、該培養槽に収容されている該培養液のうち、5〜30質量%の該培養液を該培養槽内に残すことを特徴とする半連続培養方法。
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