JP2015062367A - Robo1タンパク質に対するダイアボディ型二重特異性抗体 - Google Patents

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Takao Hamakubo
隆雄 浜窪
浩平 津本
Kohei Tsumoto
浩平 津本
誠 中木戸
Makoto Nakakido
誠 中木戸
宏子 岩成
Hiroko Iwanari
宏子 岩成
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Abstract

【課題】血中のs−ROBO1に対する反応性に比べてがん等の組織のROBO1に対する反応性の高い抗ROBO1抗体改変体の提供。
【解決手段】ROBO1タンパク質の細胞外ドメイン中の第1〜第5イムノグロブリン様ドメインから選ばれる一のドメイン(領域1)に対する第一の特異性、及びROBO1タンパク質の細胞外ドメイン中の第1〜第3フィブロネクチン3型ドメインから選ばれる一のドメイン(領域2)に対する第二の特異性を有することを特徴とする、ダイアボディ型二重特異性抗体。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗体医薬及び診断薬として有用なROBO1タンパク質に対するダイアボディ型二重特異性抗体及びこれを含有する医薬組成物に関する。
ROBO1は、Slitタンパク質の受容体として働くことが報告されている膜タンパク質である。また、ROBO1遺伝子は癌抑制遺伝子であることも知られており、ROBO1は、肝癌、肺癌、乳癌、子宮癌、胃癌、脳腫瘍、大腸癌等の癌細胞で高発現しており、抗ROBO1抗体がROBO1発現細胞に対して補体依存性細胞障害活性(CDC)を有することが知られている(特許文献1)。
また、ROBO1は、新生血管の内皮細胞にも発現していることから、抗ROBO1抗体はがんのみならず炎症性疾患の治療薬としても有用である。
国際公開第2005/095981号
しかし、ROBO1の発現は、癌細胞だけでなく、脳などの正常組織にも見られることから、細胞膜から遊離した細胞外ドメイン(soluble ROBO1:sROBO1)が血中にも存在する可能性がある。癌等の診断や治療の目的で投与した抗ROBO1抗体は、血中のsROBO1に吸収され、目的とするがん組織に到達しないことが考えられる。
従って、本発明の課題は、血中のsROBO1に対する反応性に比べてがん等の組織のROBO1に対する反応性の高い抗ROBO1抗体改変体を提供することにある。
そこで本発明者は、種々の抗ROBO1抗体の改変体を作製し、そのsROBO1及び組織に存在するROBO1に対する反応性を検討したところ、ROBO1タンパク質における特定の2つの領域に対する特異性を有するダイアボディ型二重特異性抗体が、sROBO1に対する反応性に比べて組織に存在するROBO1に対する反応性が高く、その特異性はscFvや一つの領域に対する抗ROBO1抗体に比べても顕著に高いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔19〕を提供するものである。
〔1〕ROBO1タンパク質の細胞外ドメイン中の第1〜第5イムノグロブリン様ドメインから選ばれる一のドメイン(領域1)に対する第一の特異性、及び
ROBO1タンパク質の細胞外ドメイン中の第1〜第3フィブロネクチン3型ドメインから選ばれる一のドメイン(領域2)に対する第二の特異性を有することを特徴とする、ダイアボディ型二重特異性抗体。
〔2〕前記領域1が第5イムノグロブリン様ドメインである、〔1〕記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
〔3〕第一の特異性が抗ROBO1抗体B5209BのH鎖及びL鎖の可変領域に由来する〔1〕又は〔2〕に記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
〔4〕前記領域2が第3フィブロネクチン3型ドメインである、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
〔5〕第二の特異性が抗ROBO1抗体B2212AのH鎖及びL鎖の可変領域に由来する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
〔6〕第一の特異性を有する抗ROBO1抗体のH鎖の可変領域と第二の特異性を有する抗ROBO1抗体のL鎖の可変領域とをペプチドリンカーで連結させた第一の一本鎖ポリペプチドと、第一の特異性を有する抗ROBO1抗体のL鎖の可変領域と第二の特異性を有する抗ROBO1抗体のH鎖の可変領域とをペプチドリンカーで結合させた第二の一本鎖ポリペプチドとの複合体である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
〔7〕前記ペプチドリンカーが、3〜30個のアミノ酸からなるペプチドである〔6〕記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
〔8〕2種類の一本鎖ポリペプチドから構成される〔6〕又は〔7〕に記載のダイアボディ型二重特異性抗体のいずれか一方の一本鎖ポリペプチド又はそれに含まれる各領域を構成するポリペプチド。
〔9〕〔6〕又は〔8〕に記載の一本鎖ポリペプチド又はそれに含まれる各領域をコードすることを特徴とする核酸。
〔10〕核酸が発現される宿主細胞における至適コドンを有する〔9〕に記載の核酸。
〔11〕大腸菌に対する至適コドンを有する〔9〕又は〔10〕に記載の核酸。
〔12〕〔9〕〜〔11〕のいずれかに記載の核酸を含有する複製可能なクローニングベクター又は発現ベクター。
〔13〕プラスミドベクターである〔12〕記載のベクター。
〔14〕〔12〕又は〔13〕記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
〔15〕大腸菌である〔14〕に記載の宿主細胞。
〔16〕〔15〕に記載の宿主細胞を培養して宿主細胞中で該核酸を発現せしめ、一本鎖ポリペプチドを回収し、精製することを特徴とする一本鎖ポリペプチドの製造方法。
〔17〕〔16〕に記載の方法で得られた一本鎖ポリペプチドを会合せしめ、形成された〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体を分離して回収することを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体の製造方法。
〔18〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体、〔8〕記載の一本鎖ポリペプチド、〔10〕又は〔11〕に記載の核酸、〔12〕又は〔13〕に記載のベクター、及び、〔14〕又は〔15〕に記載の宿主細胞から成る群から選ばれたものを有効成分として含有することを特徴とする診断又は医薬組成物。
〔19〕ダイアボディ型二重特異性抗体を有効成分とする、〔18〕に記載の診断又は医薬組成物。
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体は、血中に存在するsROBO1に対する反応性に比べて、組織に存在するROBO1に対する反応性が高いという特徴を有する。従って、本発明ダイアボディ型二重特異性抗体をがんや炎症性疾患患者に投与した場合、血中のsROBO1に吸収されることなく、標的組織において高発現しているROBO1と特異的に結合し、当該部位を検出し又は当該部位に対する細胞障害活性を発揮することが可能となる。また、本発明のダイアボディ型二重特異性抗体は、ROBO1に対し、もとの抗体やscFvに匹敵する親和性を有するという特徴も有する。
5209VH−2212VLと2212VH−5209VLのベクターの概略図を示す。 5209VH−2212VL及び2212VH−5209VLの発現を示す図である。 5209VH−2212VL及び2212VH−5209VLの精製を示す図である。 ダイアボディB5209B−B2212Aの精製を示す図である。 ダイアボディB5209B−B2212AのITC測定結果を示す。 ダイアボディB5209B−B2212Aのサイズ排除クロマトグラフィー結果を示す図である。 ダイアボディB5209B−B2212Aの可溶性ROBO1(sROBO1)に対する反応性を示す図である。 ダイアボディB5209B−B2212Aの細胞膜ROBO1に対する反応性を示す図である。
本明細書において、「ダイアボディ型二重特異性抗体」とは、二つの抗原結合部位を有する抗体フラグメントであり且つ小さなフラグメントであるものを指し、該フラグメントは、H鎖の可変領域(VH)に結合するL鎖の可変領域(VL)をその同じポリペプチド鎖 (VH−VL) 中に含有しているものである。代表的なダイアボディは、同一の鎖の上にある該二つのドメインの間ではその対合を形成するには短すぎる長さのリンカーを使用することにより、そのドメインを別の鎖の相補性のドメインと対合せしめ、二つの抗原結合部位を作り出すものである。ダイアボディ及びその製造技術については、米国特許第4,704,692号明細書;米国特許第4,946,778号明細書;米国特許第5,990,275号明細書;米国特許第5,994,511号明細書;米国特許第6,027,725号明細書;EP404,097;WO93/11161;Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)を参照することができ、これらの文献における開示の内容はそれらを参照することにより本明細書の内容に含まれる。
より具体的には、「ダイアボディ型二重特異性抗体」とは、例えば、(1)第一の抗体のH鎖の可変領域の抗原結合部位(a)と第二の抗体のL鎖の可変領域の抗原結合部位(b)とを同一のペプチド鎖上に有する第一のポリペプチド(i)、及び(2)第一の抗体のL鎖の可変領域の抗原結合部位(c)と第二の抗体のH鎖の可変領域の抗原結合部位(d)とを同一のペプチド鎖上に有する第二のポリペプチド(ii)を含有し、異なる二種の抗原認識能を有する融合蛋白質を意味する。その形態としては、(ア)上記(i)と(ii)とが融合した典型的なダイアボディ型、(イ)シングルチェインダイアボディ、(ウ)タンデム型FV、(エ)同一抗原を別のエピトープで認識する2種の抗体を別個に発現し、その後にスパイキャッチャー(cspycatcher)とスパイタグ(spytag)を介して複合体を形成したダイアボディ型、(オ)同一抗原を別のエピトープで認識する2種の抗体を別個に発現し、その後に相互に反応するペプチドを介して複合体を形成したタイアボティ型等が挙げられる。
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体は、ROBO1タンパク質の領域1に対する第一の特異性、及び、領域1以外の領域2に対する第二の特異性を有することを特徴とする。好ましくは第一の特異性がROBO1タンパク質の細胞外ドメイン中の第1〜第5イムノグロブリン様ドメインから選ばれる一のドメイン(領域1)に対する抗体に由来する部位により発現され、第二の特異性がROBO1タンパク質の細胞外ドメイン中の第1〜第3フィブロネクチン3型ドメインから選ばれる一のドメイン(領域2)に対する抗体に由来する部位により発現される。
従って、第一の特異性は、ROBO1タンパク質の領域1に対する抗体のH鎖及びL鎖の可変領域に由来する特異性であり、具体的にはROBO1タンパク質の領域1に対する抗体のH鎖の可変領域の抗体結合部位(a)と、ROBO1タンパク質の領域1に対する抗体のL鎖の可変領域の抗原結合部位(c)とからなる。
一方、第二の特異性は、ROBO1タンパク質の領域2に対する抗体のH鎖及びL鎖の可変領域に由来する特異性であり、具体的には、ROBO1タンパク質の領域2に対する抗体のH鎖の可変領域の抗原結合部位(b)と、ROBO1タンパク質の領域2に対する抗体のL鎖の可変領域の抗原結合部位(d)とからなる。
より具体的には、本発明のダイアボディ型二重特異性抗体は、(1)第一の特異性を有する抗ROBO1抗体のH鎖の可変領域と第二の特異性を有する抗ROBO1抗体のL鎖の可変領域とをペプチドリンカーで連結させた第一の一本鎖ポリペプチドと、(2)第一の特異性を有する抗ROBO1抗体のL鎖の可変領域と第二の特異性を有する抗ROBO1抗体のH鎖の可変領域とをペプチドリンカーで結合させた第二の一本鎖ポリペプチドとの、複合体である。さらに具体的には、(1)ROBO1タンパク質の領域1に対する抗体のH鎖の可変領域の抗原結合部位(a)とROBO1タンパク質の領域2に対する抗体のL鎖の可変領域の抗原結合部位(b)とをペプチドリンカーで連結させた第一の一本鎖ポリペプチドと、(2)ROBO1タンパク質の領域1に対する抗体のL鎖の可変領域の抗原結合部位(c)とROBO1タンパク質の領域2に対する抗体のH鎖の可変領域の抗原結合部位(d)とをペプチドリンカーで連結させた第二の一本鎖ポリペプチドとの複合体である。
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体は、第一の特異性(領域1)と第二の特異性(領域2)の両者が、ROBO1タンパク質のsROBO1、すなわちROBO1タンパク質の細胞外領域中に存在する。ROBO1タンパク質のアミノ酸配列およびこれをコードする遺伝子配列は、バリアント1についてはGenBank番号NM_002941(配列番号1)、バリアント2についてはGenBank番号NM_133631(配列番号2)、バリアント4についてはGenBank番号NM_001145845.1(配列番号3)に開示されている。本発明において、ROBO1タンパク質とは、全長タンパク質およびその断片の両方を含むことを意味する。ROBO1タンパク質の細胞外領域は例えば、バリアント2の場合、配列番号2のアミノ酸配列において1−859番目が相当する(Sundaresan,et al.,Molecular and Cellular Neuroscience 11,29−35,1998)。領域1は、細胞外ドメイン中の第1〜第5イムノグロブリン様ドメインから選ばれる一のドメインであればよいが、より好ましくは第3〜第5イムノグロブリン様ドメインから選ばれる一のドメインであり、さらに好ましくは第4又は第5イムノグロブリン様ドメインであり、特に好ましくは第5イムノグロブリン様ドメインである。
一方、領域2は細胞外ドメイン中の第1〜第3フィブロネクチン3型ドメインから選ばれる一のドメインであればよいが、より好ましくは第2又は第3フィブロネクチン3型ドメインであり、さらに好ましくは第3イムノグロブリン3型ドメインである。ここで各ドメインのアミノ酸配列は、配列番号2に記載されている。すなわち、配列番号2のアミノ酸番号として第1イムノグロブリン様ドメインが43−110、第2イムノグロブリン様ドメインが145−203、第3イムノグロブリン様ドメインが237−293、第4イムノグロブリン様ドメインが329−394、第5イムノグロブリン様ドメインが433−491、第1フィブロネクチン3型ドメインが525−610、第2フィブロネクチン3型ドメインが637−727、第3フィブロネクチン3型ドメインが739−828である。
各ドメインのアミノ酸配列は、バリアントによって若干相違するが本発明においては、その変異体がいずれも含まれる。
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体の可変領域を提供する第一の特異性を有する抗体及び第二の特異性を有する抗体は、例えば国際公開第2005/095981号に記載の方法により製造することができる。
例えば、ポリクローナル抗体であれば、マウス等の動物の体内にこれらの免疫原及び必要に応じてアジュバントを複数回、皮下及び腹腔内等の適当な径路で注射することによって、動物の体内に生成せしめることが出来る。
一方、モノクローナル抗体は、Kohler & Milstein, Nature 256:495(1975)により最初に記述されたハイブリドーマ法を使用して実質的に均質な抗体の母集団から得られるし、あるいは組換えDNA法(米国特許第4,816,567号明細書)によって作ることができる。
更に、別法としては、トランスジェニック動物(例えばマウス)を作成して、この体内でヒト抗体を産生させることが可能である(例えば、Duchosal et al., Nature 355:258(1992);Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immunol.7:33(1993)参照)。また、ヒト抗体はファージ・ディスプレイライブラリーから誘導することもできる(Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991);Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.227:381(1991);Hoogenboom et al.,Immunol.Rev.130:41−68(1992);Vaughan et al.,Nature Biotech.14:309(1996))。
上記の抗体を得るための更なる方法として、抗体または抗体断片は、例えばMcCafferty et al.,Nature,348:552−554(1990)に記載されている技術を使用して抗体ファージライブラリーから、単離することができる(Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)及びMark et al.,J, Mol.Biol.222:581−597(1991)には、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の単離についてのそれぞれの記載がある)。適当な抗体または抗体断片を選択するためには、上記抗原を使用して行うことができる。さらには、チェイン・シャッフリング法(chain shuffling) によって高親和性(nMのオーダーの範囲)のヒト抗体を産生したり(Mark et al.,Bio/Technol.10:779−783(1992))、極めて大きいファージライブラリーを構築するための手法として、組合せ感染(combinatorial infection)及びインビボ組換え(Waterhouse et al.,Nuc.Acids Res.,21:2265−2266(1993))なども知られている。
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体を構成する2つのポリペプチドの少なくとも一方において、H鎖の可変領域とL鎖の可変領域とを連結するリンカーを含有している。本明細書中、「リンカー(linker)」とは、H鎖の可変領域(VH)とL鎖の可変領域(VL)とを結合して一本鎖ポリペプチドを与える働きをするオリゴペプチド又はポリペプチドである。本発明では、好ましくは該リンカーはペプチドリンカーである。該ペプチドリンカーは、二つのポリペプチドを機能的に結合せしめて一つの一本鎖ポリペプチドを与えることのできるものであれば特に限定されず、例えば当該分野で広く知られたものあるいは該公知のリンカーを改変したものの中から選択して使用することが可能である。該ペプチドリンカーは、例えば1〜50個のアミノ酸からなるペプチドであってよく、好ましくは3〜30個のアミノ酸からなるペプチド、さらに好ましくは3〜20個のアミノ酸からなるペプチド、さらに好ましくは3〜10個のアミノ酸からなるペプチド、さらに好ましくは3〜8個のアミノ酸からなるペプチドが挙げられる。ここで「機能的に結合」せしめるとは、ポリペプチドを適切に折り畳み(folding)、オリジナルのタンパク質(当該ポリペプチドは該オリジナルのタンパク質に由来するものあるいは該オリジナルのタンパク質から誘導されたものである)の機能、例えば生物活性などの一部あるいはその全てを模擬することができる三次元構造を持った融合タンパク質を与えるような結合を意味する。
また、当該リンカーの長さは、結合されるプチドの性状にもよるが、生成する一本鎖ポリペプチド(あるいは融合タンパク質)に所望の活性を与えるものであればよい。該リンカーの長さは、生成せしめられる一本鎖ポリペプチドが適切に折り畳まれて所望の生物活性を得るに十分な長さのものであるべきである。また該リンカーの長さは、所望の生物活性について各種の長さのリンカーで結合した一連の一本鎖ポリペプチドをテストすることにより実験して決定することができる。リンカーについては、上記ダイアボディ及びその製造技術に関連して挙げられた文献などを参照することができる。本発明のダイアボディ型二重抗体のリンカーは、3〜30個のアミノ酸という短いリンカーを有するものが好ましく、さらに3〜20個のアミノ酸、さらに3〜10個のアミノ酸、特に3〜8個のアミノ酸が好ましい。リンカーの具体例としてはGGGGS(配列番号10)が挙げられる。
尚、一本鎖ポリペプチドにおけるVLとVHの配置は、N−末端側がVLでそれにリンカー、続いてVHと配置されているもの(VL−Linker−VH構築体)でも、N−末端側がVHでそれにリンカー、続いてVLと配置されているもの(VH−Linker−VL構築体)のいずれであってもよい。
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体はヒト型化抗体とすることが可能である。これらのヒト型化抗体は、例えばマウス抗体由来の高い反応特異性を有する一方で、その他の部分をヒト抗体由来とすることによって、ヒトに投与された際に免疫原となり得る可能性が低減されている為にヒトに対する臨床上極めて有利な抗体である。
「ヒト型化抗体」とは、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)の相補性決定領域(complementarity−determining region;CDR)の残基の少なくとも一部において、マウス、ラット、またはウサギといったような非ヒト動物(ドナー抗体)であり且つ所望の特異性、親和性、および能力を有するCDR に由来する残基によって置換されている抗体を意味する。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換される場合もある。さらに、ヒト型化抗体は、レシピエント抗体および導入されたCDR またはフレームワーク配列のいずれにおいても見出されない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに優れたものあるいは最適なものとするために行われる。更に詳しくは、Jones et al.,Nature 321,522−525(1986);Reichmann et al.,Nature 332,323−329(1988);EP−B−239400;Presta,Curr.Op.Struct.Biol.2,593−596(1992);およびEP−B−451216を参照することができる。
ヒト型化抗体は当業者に公知の方法に従って作成することが出来る。例えば、レシピエント抗体及びドナー抗体の3次元イムノグロブリンモデルを使用し、種々の概念的ヒト型化生成物を分析する工程により、ヒト型化抗体が調製される。3次元イムノグロブリンモデルは、当業者にはよく知られている。更に詳細については、WO92/22653を参照することができる。
従って、ヒト型化抗体である本発明のダイアボディ型二重特異性抗体の例として、可変領域における相補性決定領域(CDR)がマウス抗体由来であり、その他の部分がヒト抗体由来である抗体を挙げることができる。
本発明では更に、ヒト型化によって抗体自身の機能低下等が生起する場合があるので、一本鎖ポリペプチド中の適当な部位、例えば、CDR構造に影響を与える可能性があるフレームワーク(FR)中の部位、例えば、canonical配列又はveriner配列において部位特異的変異を起こさせることによってヒト型化抗体の機能の改善をすることが出来る。このようにして得られた抗体も本発明のヒト型化ダイアボディ型二重特異性抗体に含まれる。
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体は2種類の一本鎖ポリペプチドから構成されるが、本発明はそのいずれか一方の一本鎖ポリペプチド又はそれに含まれる各領域(例えば、各抗体由来の夫々の可変領域)を構成するポリペプチドにも係るものである。すでに記載したように、この一本鎖ポリペプチドは第一(又は第二)の抗体のH鎖の可変領域及び第二(又は第一)の抗体のL鎖、並びにこれらを連結するリンカーから構成されるが、更に、製造した一本鎖ポリペプチドの検出及び精製等を容易にする目的のために、当業者に公知の各種のペプチドタグ(例えば、c−mycタグ及びHis−tag)をその末端等に含むことが出来る。
本発明の一本鎖ポリペプチド又はそれに含まれる各領域をコードする核酸は当業者に公知の方法で取得し、その塩基配列を決定することが出来る。例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することのできるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより行うことができる(R.Orlandi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3833−3837(1993))。上記したモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、こうした方法におけるDNAの供給源として使用することが出来る。
より具体的には、本発明の一本鎖ポリペプチドをコードする核酸は、既に構築され当業者に公知である、一本鎖Fv((single−chain Fv)又は「scFv」)又はダイアボディ型二重特異性抗体をコードする核酸に基づき、その中のVHないしVLを別の特異性を有する抗体由来のものと夫々入れ換えることによって調製することが出来る。ここで「scFv」とは、ある抗体のVHとVLのドメインを含有しているもので、該ドメインが一本のポリペプチド鎖中にあるものを指している。一般的には該FvポリペプチドはさらにVHとVLのドメイン間にポリペプチドリンカーを含有し、抗原結合のために必要な構造を与えることを可能にしている。scFvについては、Rosenburg and Moore (Ed.), "The Pharmacology of Monoclonal Antibodies", Vol. 113, Springer−Verlag, New York, pp.269−315 (1994)を参照することができる。
更に、ヒト型化されたダイアボディ型二重特異性抗体の一本鎖ポリペプチドにおける可変領域をコードする核酸を作成する場合には、予め設計されたアミノ酸配列に基づきオーバーラップPCR法により全合成することができる。尚、「核酸」とは、一本鎖ポリペプチドをコードする分子であれば、その化学構造及び取得経路に特に制限はなく、例えば、gDNA、cDNA、化学合成DNA及びmRNA等を含むものである。
具体的には、cDNAライブラリーから、文献記載の配列に基づいてハイブリダイゼーションにより、あるいはポリメラーゼチェインリアクション(PCR)技術により単離されうる。一旦単離されれば、DNAは発現ベクター中に配置され、次いでこれを、大腸菌(E.coli)細胞、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、またはイムノグロブリンを産生しないミエローマ細胞等の宿主細胞にトランスフェクションさせ、該組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体を合成させることができる。PCR反応は、当該分野で公知の方法あるいはそれと実質的に同様な方法や改変法により行うことができるが、例えばR.Saiki,et al.,Science,230:1350,1985;R.Saiki,et al.,Science,239:487,1988;H.A.Erlich ed.,PCR Technology,Stockton Press,1989;D.M.Glover et al. ed.,"DNA Cloning",2nd ed.,Vol.1,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995); M.A.Innis et al.ed.,"PCR Protocols:a guide to methods and applications",Academic Press,New York(1990));M.J.McPherson,P.Quirke and G. R.Taylor(Ed.),PCR:a practical approach,IRL Press,Oxford(1991);M.A.Frohman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,8998−9002(1988)などに記載された方法あるいはそれを修飾したり、改変した方法に従って行うことができる。また、PCR法は、それに適した市販のキットを用いて行うことができ、キット製造業者あるいはキット販売業者により明らかにされているプロトコルに従って実施することもできる。
ハイブリダイゼーションについてはL.Grossman et al.(ed.),"Methods in Enzymology",Vol.29(Nucleic Acids and Protein Synthesis,Part E),Academic Press,New York(1974)などを参考にすることができる。DNAなど核酸の配列決定は、例えばSanger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463−5467(1977)などを参考にすることができる。また一般的な組換えDNA技術は、J.Sambrook,E.F.Fritsch & T.Maniatis(ed.),"Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd edition)",Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York(1989)及びD.M.Glover et al.(ed.),"DNA Cloning",2nd ed.,Vol.1 to 4,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995)などを参考にできる。
こうして取得された本発明のダイアボディ型二重特異性抗体を構成する一本鎖ポリペプチド又はそれに含まれる各領域をコードする核酸は、目的に応じて、当業者に公知の手段により適宜所望のペプチド又はアミノ酸をコードするように改変することができる。この様にDNA を遺伝子的に改変又は修飾する技術は、Mutagenesis:a Practical Approach,M.J.Mcpherson(Ed.),(IRL Press,Oxford,UK(1991)における総説において示されており、例えば、位置指定変異導入法(部位特異的変異導入法)、カセット変異誘発法及びポリメラーゼチェインリアクション(PCR)変異生成法を挙げることができる。
ここで、核酸の「改変」とは、得られたオリジナルの核酸において、アミノ酸残基をコードする少なくとも一つのコドンにおける、塩基の挿入、欠失または置換を意味する。例えば、オリジナルのアミノ酸残基をコードするコドンを、別のアミノ酸残基をコードするコドンにより置換することにより一本鎖ポリペプチドを構成するアミノ酸配列自体を改変する方法がある。このようにして、本発明のヒト型化されたダイアボディ型二重特異性抗体を構成する一本鎖ポリペプチドを得ることが出来る。
又は、本明細書の実施例に記載されているように、アミノ酸自体は変更せずに、その宿主細胞にあったコドン(至適コドン)を使用するように、一本鎖ポリペプチドをコードする核酸を改変することも出来る。このように至適コドンに改変することによって、宿主細胞内における一本鎖ポリペプチドの発現効率等の向上を図ることが出来る。
尚、リンカー等は、組換え技術等の遺伝子工学的手法及びペプチド化学合成等の当業者に公知の任意の技術手段を用いて、本発明のダイアボディ型二重特異性抗体を構成する一本鎖ポリペプチド内に適宜導入することが出来る。
一本鎖ポリペプチドは、当業者に公知の方法、例えば、遺伝子工学的手法又は化学合成等の各種手段を用いて製造することが出来る。遺伝子工学的手法としては、例えば、上記核酸を含有する複製可能なクローニングベクター又は発現ベクターを作製し、このベクターで宿主細胞を形質転換せしめ、該形質転換された宿主細胞を培養して宿主細胞中で該核酸を発現せしめ、それを回収し、精製することによって製造することが出来る。通常、このようなベクターには本発明のダイアボディ型二重特異性抗体を構成する2種類の一本鎖ポリペプチドのうちのいずれか一方の一本鎖ポリペプチドをコードする核酸が含まれている。このような場合には得られる2種類のベクターは同一の宿主細胞に導入することが好ましい。或いは、2種類の一本鎖ポリペプチドの夫々をコードする2種類の核酸を同一のベクターに含有させることも可能である。
ここで、「複製可能な発現ベクター(replicable expression vector)」および「発現ベクター(expression vector)」は、DNA(通常は二本鎖である)の断片(piece)をいい、該DNAは、その中に外来のDNAの断片を挿入せしめることができる。外来のDNAは、異種DNA(heterologous DNA)として定義され、このものは、対象宿主細胞においては天然では見出されないDNAである。ベクターは、外来DNAまたは異種DNAを適切な宿主細胞に運ぶために使用される。一旦、宿主細胞中に入ると、ベクターは、宿主染色体DNAとは独立に複製することが可能であり、そしてベクターおよびその挿入された(外来)DNAのいくつかのコピーが生成され得る。さらに、ベクターは外来DNAのポリペプチドへの翻訳を可能にするのに不可欠なエレメントを含む。従って、外来DNAによってコードされるポリペプチドの多くの分子が迅速に合成されることができる。
このようなベクターは、適切な宿主中で DNA配列を発現するように、適切な制御配列(control sequence)とそれが機能するように(operably)(即ち、外来DNAが発現できるように)連結せしめられたDNA配列を含有するDNA構築物(DNA construct)を意味している。そうした制御配列としては、転写(transcription)させるためのプロモーター、そうした転写を制御するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードしている配列、エンハンサー、リアデニル化配列、及び転写や翻訳(translation)の終了を制御する配列等が挙げられる。更にベクターは、当業者に公知の各種の配列、例えば、制限酵素切断部位、薬剤耐性遺伝子等のマーカー遺伝子(選択遺伝子)、シグナル配列、リーダー配列等を必要に応じて適宜含むことが出来る。これらの各種配列又は要素は、外来DNAの種類、使用する宿主細胞、培養培地等の条件に応じて、当業者が適宜選択して使用することが出来る。
該ベクターは、プラスミド、ファージ粒子、あるいは単純にゲノムの挿入体(genomic insert)等の任意の形態が可能である。一旦、適切な宿主の中に形質転換で導入せしめられると、該ベクターは宿住のゲノムとは独立して複製したり機能するものであり得る。又は、該ベクターはゲノムの中に組み込まれるものであってもよい。
宿主細胞としては当業者に公知の任意の細胞を使用することができるが、例えば、代表的な宿主細胞としては、大腸菌(E.coli)等の原核細胞、及び、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、ヒト由来細胞などの哺乳動物細胞、酵母、昆虫細胞等の真核細胞が挙げることができる。
このような宿主細胞における発現等により得られた一本鎖ポリペプチドは、好ましくは一本鎖ポリペプチドは、一般に分泌されたポリペプチドとして培養培地から回収されるが、それが分泌シグナルを持たずに直接に産生された場合には宿主細胞溶解物から回収することが出来る。一本鎖ポリペプチドが膜結合性である場合には、適当な洗浄剤(例えば、トライトン−X100) を使用して膜から遊離せしめることができる。
精製操作は当業者に公知の任の方法を適宜組み合わせて行うことが出来る。例えば、遠心分離、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、イオン交換カラム上での分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンセファロースでのクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン樹脂クロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラム等)、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿、及びアフィニティクロマトグラフィーによって好適に精製される。アフィニティクロマトグラフィーは、一本鎖ポリペプチドが有するぺプチドタグとの親和力を利用した効率が高い好ましい精製技術の一つである。
尚、回収された一本鎖ポリペプチドは不溶性画分に含まれていることも多いために、精製操作は、一本鎖ポリペプチドを可溶化し変性状態にした上で行うことが好ましい。この可溶化処理は、エタノールなどのアルコール類、グアニジン塩酸塩、尿素などの解離剤として当業者に公知の任意の薬剤を使用して行うことが出来る。
更に、こうして精製された一本鎖ポリペプチドを会合(巻き戻し)せしめ、形成されたダイアボディ型二重特異性抗体を分離して回収することによって、本発明のダイアボディ型二重特異性抗体を製造することが出来る。
会合処理は、単独の一本鎖ポリペプチドを適切な空間的配置に戻すこによって、所望の生物活性を有する状態に戻すことを意味する。従って、会合処理は、ポリペプチド同志あるいはドメイン同志を会合した状態に戻すという意味も有しているので「再会合」ともいうことができるし、所望の生物活性を有するものにするという意味で、再構成ということもでき、或いは、リフォールディング(refolding)とも呼ぶことが出来る。会合処理は当業者に公知の任意の方法で行うことが出来るが、例えば、透析操作により、一本鎖ポリペプチドを含むバッファ溶液中の変性剤(例えば、塩酸グアニジン)の濃度を段階的に下げる方法が好ましい。この過程で、凝集抑制剤、及び酸化剤を反応系に適宜添加することによって、酸化反応の促進を図ることも可能である。形成されたダイアボディ型二重特異性抗体の分離及び回収も当業者に公知の任意の方法で行うことが出来る。
本発明の診断又は医薬組成物は、本発明のダイアボディ型二重特異性抗体又はその標識体、特にヒト型化されたダイアボディ型二重特異性抗体、一本鎖ポリペプチド、核酸、ベクター、及び形質転換された宿主細胞から成る群から選ばれたものを有効成分として含有することを特徴とする。かかる有効成分は、sROBO1に対する反応性に比べて組織に存在するROBO1に対する反応性が高く、またその標識体によってはROBO1を発現する細胞に対して細胞障害活性を有するので、がん細胞画像化剤、抗癌剤、抗炎症剤として有用である。ROBO1が発現している細胞としては、好ましくは肝癌細胞、肺癌細胞、乳癌細胞、子宮癌細胞、胃癌細胞、脳腫瘍細胞、大腸癌細胞である。従って、本発明の診断又は医薬組成物は細胞増殖に起因する疾患、例えば肝細胞癌、肺癌、乳癌、子宮癌、胃癌、脳腫瘍、大腸癌などの診断、治療、予防を目的として使用できる。
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体の標識体としては、診断薬として使用する場合にはCo、Mn、Cu、Ga、Cr等の金属元素の常磁性イオンを有する核磁気共鳴診断用金属錯体、X線診断用錯体、99mTc、111In、113mIn、67Ga、68Ga、201Td、51Cr、57Co、58Co、85Sr、64Cu、89Zrなどの放射性金属などが挙げられる。また、治療薬として用いる場合には、90Y、153Sm、177Luなどの放射性金属が用いられる。
これらの放射性金属をダイアボディ型二重特異性抗体に結合させるには、該抗体に金属キレート試薬を反応させ、これに放射性金属を反応させて錯体とするのが好ましい。このようにして得られた修飾抗体は、放射性金属が金属キレート試薬を介ダイアボディ型二重特異性抗体に結合している。
このような錯体形成に用いられる金属キレート試薬の例としては、例えば(1)8−ヒドロキシキノリン、8−アセトキシキノリン、8−ヒドロキシキナルジン、硫酸オキシキノリン、O−アセチルオキシン、O−ベンゾイルオキシン、O−p−ニトロベンゾイルオキシン等のキノリン誘導体;(2)クロラニル酸、アルミノン、チオ尿素、ピロガロール、クペロン、ビスムチオール(II)、ガロイル没食子酸、チオリド、2−メルカプトベンゾチアゾール、テトラフェニルアルソニウムクロライド等の化合物;(3)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびこれらに類似した骨格を有するジヒドロキシエチルグリシン、ジアミノプロパノール四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸塩酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、ニトリロトリス(メチレンスルホン酸)三ナトリウム塩、トリエチレンテトラミン六酢酸、メチルDTPA、シクロヘキシルDTPA、アミノベンジルEDTA、イソチオシアノベンジルEDTA、イソチオシアノベンジルDTPA、メチルイソチオシアノベンジルDTPA、シクロヘキシルイソチオシアノベンジルDTPA、マレイミドプロピルアミドベンジルEDTA、マレイミドペンチルアミドベンジルEDTA、マレイミドデシルアミドベンジルEDTA、マレイミドペンチルアミドベンジルDTPA、マレイミドデシルアミドベンジルEDTA、マレイミドデシルアミドベンジルDTPA;(4)1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、1,4,7−トリアザシクロノナン−1,4,7−三酢酸(NOTA)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−1,4,8,11−四酢酸(TETA)、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(Cyclen)、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン(Cyclam)、イソチオシアノベンジルDOTA、イソチオシアノベンジルNOTA等が挙げられる。
これらの金属キレート試薬のうち、イソチオシアノベンジルDOTA、メチルイソチオシアノベンジルDTPA、シクロヘキシルイソチオシアノベンジルDTPAが金属キレートの容易な抗体への導入反応、標識率、錯体の安定性等の点で好ましい。
ダイアボディ型二重特異性抗体への放射性金属の結合は、常法に従って行うことができる。例えばダイアボディ型二重特異性抗体に金属キレート試薬を反応させ、予め標識前駆体を調製しておき、次いで放射性金属元素を反応させることにより行うことができる。
本発明の有効成分の有効量は、例えば診断手段、治療目的、腫瘍の種類、部位及び大きさ等の投与対象における病状、患者の諸条件、及び投与経路等によって当業者が適宜決めることが出来る。典型的な1回の投与量又は日用量は、上記の条件に応じ、可能ならば、例えば当分野で既知の腫瘍細胞の生存又は生長についての検定法を使用して、まずインビトロで、そして次に、人間の患者のための用量範囲を外挿し得る適切な動物モデルで、適当な用量範囲を決定することもできる。
本発明の診断又は医薬組成物には、有効成分の種類、薬剤形態、投与方法・目的、投与対象の病態等の各種条件に応じて、有効成分に加えて当業者に周知の薬学上許容し得る各種成分(例えば、担体、賦形剤、緩衝剤、安定化剤、等)を適宜添加することが出来る。
本発明の診断又は医薬組成物は、上記各種条件に応じて、錠剤、液剤、粉末、ゲル、及び、噴霧剤、或いは、マイクロカプセル、コロイド状分配系(リポソーム、マイクロエマルジョン等)、及びマクロエマルジョン等の種々薬剤形態をとり得る。
持続放出製剤は、一般的には、そこから本発明の活性物質をある程度の時間放出することのできる形態のものであり、持続放出調製物の好適な例は、蛋白質を含む固体疎水性ポリマーの半透過性担体を含み、該担体は、例えばフィルムまたはマイクロカプセル等の成型物の形態のものである。
本発明の診断又は医薬組成物は、当業者に公知の方法、例えば日本薬局方解説書編集委員会編、第十三改正 日本薬局方解説書、平成8年7月10日発行、株式会社廣川書店などの記載を参考にしてそれらのうちから必要に応じて適宜選択して製造することができる。
なお、明細書及び図面において、用語は、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによるか、あるいは当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものである。
以下に実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。 なお、以下の実施例において、特に指摘が無い場合には、具体的な操作並びに処理条件などは、DNAクローニングでは J.Sambrook,E.F.Fritsch & T.Maniatis,“Molecular Cloning”,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)及びD.M.Glover et al.ed.,“DNA Cloning”,2nd ed.,Vol.1 to 4,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995);特にPCR 法では、H.A.Erliched.,PCR Technology,Stockton Press,1989;D.M.Glover et al.ed.,“DNA Cloning”,2nd ed.,Vol.1,(The Practical Approach Series),IRL Press,Oxford University Press(1995)及びM.A.Innis et al.ed.,“PCR Protocols”,Academic Press,New York(1990)に記載の方法に準じて行っているし、また市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols)や添付の薬品等を使用している。
実施例1
抗ROBO1抗体は、特開2008−290996号に記載の方法により製造した。B5209Bを産生するハイブリドーマはPPMX0601(FERM BP−10921)として、またB2212Aを産生するハイブリドーマはB2212A(FERM P−01709)として寄託されている。
(抗ROBO1抗体のクローニング)
抗ROBO1抗体B5209B、抗ROBO1抗体B2212Aの産生マウスB細胞ハイブリドーマからISOGEN(ニッポンジーン社)を用いてmRNAを抽出し、First−Strand cDNA Synthesis Kit(Amersham Biosciences社)によりcDNAを調製した。このcDNAを下記の参考論文1に基づき合成したクローニングプライマーを用いPCRを行い、B5209BscFv(以下5209scFv)、B5209B可変領域VH(以下5209VH)及びVL(以下5209VL)の配列を、B2212AscFv(以下2212scFv)、B2212A可変領域VH(以下2212VH)及びVL(以下2212VL)の配列を明らかにした(配列番号4〜9)。
参考論文1 −Krebber,A.et al.Reliable cloning of functional antibody variable domains from hybridomas and spleen cell repertoires employing a reengineered phage display system.J Immunol Methods 201,35−55.(1997).
実施例2
(Diabody発現ベクターの作製)
本発明のダイアボディ型二重特異性抗体は、5209V H −2212V L と2212V H −5209V L の二つの分子から作製される。発現ベクターはすでに構築されているMUC1及びCD3を標的としたMx3 diabody(以下Mx3)発現ベクターを基に作製した(国際公開第WO02/06486号パンフレット参照)。
即ち、制限酵素部位を導入したA−Bプライマーを用いPCR法により5209VHを増幅後NcoI−EagIで消化し、Mx3発現ベクターの一つpSNE4−MHOL(抗MUC1抗体MUSE11 VH(以下MH)−GGGGS(以下G1)−抗CD3抗体OKT3 VL(以下OL))のMHと入れ換えpRA−5HOLを作製した。同様にC−Dプライマーを用い5Lを増幅後EcoRV−SacIIで消化し、pSNE4−OHML(OKT3 VH(以下OH)−G1−MUSE11 VL(以下ML))のMLと入れ換えpRA−OH5Lを作製した(図1)。
C末端側には精製のためのHis−tag (Hisx6:ヒスチジン6量体tag)が導入されている。
実施例3
(大腸菌を用いた5209V H −2212V L と2212V H −5209V L の発現)
発現ベクターpRA−5209V H −2212V L pRA−2212V H −5209V L でそれぞれ大腸菌BL21(DE3)、及び、Rosseta2(DE3)を形質転換し、培養はLB培地を用い28℃で行った。O.D.600=約0.8となったところで、終濃度0.5mMのIPTGにより発現を誘導し、17時間振盪培養した。菌体を遠心分離後(この操作により分けられた上清を培地上清supとする)、超音波破砕し、さらに遠心分離後の上清を菌体内可溶性画分、沈殿を菌体内不溶性画分pptとした。
各画分のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、及びWestern−blottingを行った結果、5209V H −2212V L (5209H2212L)2212V H −5209V L (2212H5209L)共にほとんどが菌体内不溶性画分に発現していることが確認されたため、この画分からの蛋白質の調製を行った(図2)。
実施例4
(5209VH−2212VLと2212VH−5209VLの精製、巻き戻し)
菌体内不溶性画分を、50mM Tris−HCl、pH8.0、200mM NaCl 1%Triton X−100で一度、超純水で2度洗浄した後、6M塩酸グアニジン/50mM Tris−HCl、pH8.0、200mM NaClに一晩4℃で浸し、タンパク質を可溶化した後、変性状態でHis Tagと特異的に結合する金属キレート樹脂(Ni−NTA:QIAGEN社)を用いた金属キレートアフィニティークロマトグラフィーにより精製を行った。精製後の収量は形質転換培養液1L当たりそれぞれ約5mgであった。
精製されたタンパク質は塩酸グアニジンにより変性状態となっているので活性を保持した三次構造をもつタンパク質を得るためには巻き戻し操作が必要となる。5209VH−2212VLと2212VH−5209VLそれぞれを7.5μMに希釈し等量混合(全蛋白質濃度7.5μM)、終濃度1mMとなるようEDTAを加えた後、サンプルを透析膜に入れ外液の塩酸グアニジン濃度を3M(6hr)、2M(6hr)、1M(12hr)、0.5M(12hr)、0Mと徐々に下げていく段階透析法によって、変性剤の除去を行い、途中の1Mと0.5Mの透析段階において、凝集抑制剤としてL−アルギニン(L−Arg)を終濃度0.4M透析外液に加え4℃に保温することによる酸化反応の促進を図った。
巻き戻し操作後、0.22μmのフィルターにより凝集を除去した後、巻き戻しに用いた蛋白質の総量と巻戻し後に可溶性蛋白質として溶液中に存在している蛋白質量との比較により算出した巻き戻し効率は約30%だった。続いて、HiLoad 26/60 Superdex 200(GE Healthcare社)を用いてサイズ排除クロマトグラフィー精製を行った。SDS−PAGEから非常に精製度が高く、かつ均一なヘテロ二量体を形成していることが確認された(図4)。以下、前記ヘテロ二量体をDiabody B5209B−B2212Aともいう。
参考例1
sROBO1の調整法
ヒトROBO1のcDNAはAlexander細胞より調整したcDNAライブラリーより、PCR法によりクローニングし、pcDNA3.1/V5-His TOPOベクター(Invitrogen社製)に挿入した(Ito H et al, Identiticatio of ROBO1 as a Novel Hepatocellular Carcinoma Antigen and a Potential Therapeutic and Diagnostic Target, Clinical Cancer Research, 12. 3257-3264. 2006)。このpcDNA3.1/V5-His TOPOベクターより、細胞外領域(ヒトROBO1isoform bのアミノ酸残基1−862)のC末にHisタグを付加した可溶型ROBO1(sROBO1−HIs)を作製した。遺伝子をpBlueBac4.5TOPOベクターに挿入し、トランスファーベクターROBO1/pBBを作製した。Invitrogen社の指示書にしたがいBacNBlue DNAとともに宿主細胞Sf9細胞にトランスフェクションし、リコンビナントウイルスを作製した。sROBO1リコンビナントウイルスのハイタイターストックを作製し、Sf9細胞に感染させ、27℃で72時間培養し、培養上清を集め、Hisタグカラムにて精製した。精製品をPD10カラムにてリン酸バッファー(PBS)に置換し、実験に用いた。
実施例5
(sROBO1とDiabody B5209B−B2212AとのITC測定)
iTC200(GE Healthcare社)を用いてセル内のsROBO1にシリンジからDiabody B5209B−B2212Aを滴下した際の反応熱を測定することによりsROBO1−Diabody B5209B−B2212A間相互作用を精査した。検討の結果、Diabody B5209B−B2212AとROBO1との相互作用を確認することができた。また、発熱プロファイルより、結合に伴う二次的な作用があること、滴定条件の差による飽和点の変化より、速度論的な相互作用が示唆された。
実施例6
(sROBO1とDiabody B5209B−B2212Aとの複合体形成確認)
実施例5に記載のITC測定を行ったサンプルを Superdex 200 10/300カラム(GE Healthcare社)によるサイズ排除クロマトグラフィーによって解析した。その結果、分子量の大きく異なるsROBO1およびDiabody B5209B-B2212Aが同じ溶出位置に溶出され、複合体の形成が確認された。
実施例7
可溶性ROBO1(sROBO1)に対する反応性の検討 競合ELISA(図7)
96ウェルのELISAプレートに0068により精製したsROBO1を50ナノグラム/ウェルを固相化した。抗ROBO1whole抗体B5209BおよびB2212Aはそれぞれヌードマウスにハイブリドーマ細胞を注入し、腹水を採取して硫安沈殿により精製したものを生理食塩水に溶解した。競合ELISAに用いる抗ROBO1whole抗体B5209BおよびB2212AはLightning-Link(TM) HRP Conjugation Kit (Innova Biosciences, Cambridge, UK)にてHRP標識後,40%ブロックエース―10mM TBSバッファーにてB5209−HRPは30ng/ml, B2212Aは60ng/mlに希釈して反応に用いた。B5209BのscFvは抗体遺伝子配列より大腸菌発現用ベクターを構築し、大腸菌発現系により調製し、用いた。
HRP標識したそれぞれの抗体とB5209Bwhole抗体(青色)、B2212Awhole抗体(赤色)、ダイアボディ(緑色)、B5209B scFv(紫色)を40%ブロックエース−TBSバッファーにて濃度を変えて希釈し同時に1時間室温で反応させた。3回洗浄後、TMB試薬(ScyTek Laboratories, Logan, UT)を加え、呈色反応をTMB Stop Buffer (ScyTek Laboratories)で停止させたのち、450nmの吸光度をプレートリーダー(Biotrak II, GE Healthcare, Pscataway, NJ)にて測定した。
実施例8
CHO−ROBO1の調整法
全長ROBO1タンパク質のC端にHAタグを付加したROBO1−HAを発現するステーブル細胞株CHO−ROBO1はライフテクノロジー社のFlp−Inシステムを用いて指示書に従い作製した。ROBO1のC端にHAタグを付けた遺伝子を参考例1記載のpcDNA3.1/V5-His TOPOベクターよりPCRで増幅し、pcDNA5/FRT ベクターに制限酵素サイトHindIII とXhoIを用いて挿入した。これをpOG44 vector,(Flp−recombinase expressing vector)とともに Flp−In−CHO細胞にLipofectamine 2000を用いてトランスフェクションし、1mg/mL hygromycin入りの選択培地にて数日培養し、生じたコロニーからRobo1-HA を高発現するクローンを選出した。
競合ELISAにより、Diabody B5209B−B2212AとsROBO1との反応性を測定した結果、B5209BwholeIgGとの競合において(図左パネル)Diabodyは5209scFvと同等の反応性を示し、wholeIgGよりIC50において数十倍弱い結合活性であった。またB2212Aとの競合においては(図右パネル)、wholeIgGとほぼ同じか少し弱い結合活性であることが示された。
細胞膜ROBO1に対する反応性の検討
細胞膜ROBO1に対する反応性は細胞ELISAにて検討した(図8)。
実施例8において調整したROBO1−HA発現Flp−In−CHO細胞あるいはコントロールとしてFlp−In−CHO細胞を、ポリDリジンコートした96ウェルELISAプレートに105個/ウェルの濃度に播種し、2000回転で遠心後、上清を捨て、ブロッキングバッファー(40%ブロックエース(大日本住友製薬)入りの10mMトリスバッファー)にて30分間ブロッキングを行った。ブロッキングバッファーを取り除き、一次抗体をブロッキングバッファーにてそれぞれの濃度に希釈して1時間室温でインキュベートした。0.06%Tween20入り生理食塩水にて2回洗浄後、scFvあるいはダイアボディに対しては抗His抗体(OGHis:MBL株式会社医学生物学研究所)1μg/mlを、whole抗体に対してはバッファーを加えて1時間室温で反応させた。同様に2回洗浄後、三次反応としてペルオキシダーゼ付加抗IgGFc特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)3000倍希釈したものを加え、さらに1時間室温で反応させた。3回洗浄後、TMB試薬(ScyTek Laboratories, Logan, UT)を加え、呈色反応をTMB Stop Buffer (ScyTek Laboratories)で停止させたのち、450nmの吸光度をプレートリーダー(Biotrak II, GE Healthcare, Pscataway, NJ)にて測定した。
ROBO1を安定発現するCHO細胞株(実施例8)を用いて、Diabody B5209B−B2212Aの細胞膜上ROBO1に対する反応性を調べた。ROBO1を発現しないコントロールCHO細胞ではどの抗体も結合がみられなかった(右パネル)。安定発現細胞に対しては、B5209BwholeIgG抗体とB2212AWholeIgG抗体はほぼ同じ結合活性(ややB5209Bが強い)がみられ、Diabodyもほぼこれらの抗体と同等の結合活性を示した。これに対し、5209scFvは図に示した濃度範囲では結合がみられなかった。
図7と図8の結果より、DiabodyはsROBO1に対しては、それぞれのscFvと同様な結合を示し、細胞膜上のROBO1に対してはWhole抗体と同等の結合活性をもつことが示された。B5209Bが認識する第5イムノグロブリン様ドメインとB2212Aが認識する第3フィブロネクチン3型ドメインとは200アミノ酸残基以上離れていることから、可溶型ROBO1では、ドメインが直鎖状になり、Diabodyの両ドメインエピトープへの結合が困難であるが、細胞膜上の膜型ROBO1では、なんらかのコンフォメーションの違いにより、ドメイン間の距離が縮まり、Diabodyの反応が増すと考えられる。
実施例1
抗ROBO1抗体は、特開2008−290996号に記載の方法により製造した。B5209Bを産生するハイブリドーマはPPMX0601(FERM BP−10921)として、またB2212Aを産生するハイブリドーマはB2212A(NITE P−01709)として寄託されている。

Claims (19)

  1. ROBO1タンパク質の細胞外ドメイン中の第1〜第5イムノグロブリン様ドメインから選ばれる一のドメイン(領域1)に対する第一の特異性、及びROBO1タンパク質の細胞外ドメイン中の第1〜第3フィブロネクチン3型ドメインから選ばれる一のドメイン(領域2)に対する第二の特異性を有することを特徴とする、ダイアボディ型二重特異性抗体。
  2. 前記領域1が第5イムノグロブリン様ドメインである、請求項1記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
  3. 第一の特異性が抗ROBO1抗体B5209BのH鎖及びL鎖の可変領域に由来する請求項1又は2に記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
  4. 前記領域2が第3フィブロネクチン3型ドメインである、請求項1〜3のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
  5. 第二の特異性が抗ROBO1抗体B2212AのH鎖及びL鎖の可変領域に由来する請求項1〜4のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
  6. 第一の特異性を有する抗ROBO1抗体のH鎖の可変領域と第二の特異性を有する抗ROBO1抗体のL鎖の可変領域とをペプチドリンカーで連結させた第一の一本鎖ポリペプチドと、第一の特異性を有する抗ROBO1抗体のL鎖の可変領域と第二の特異性を有する抗ROBO1抗体のH鎖の可変領域とをペプチドリンカーで結合させた第二の一本鎖ポリペプチドとの複合体である請求項1〜5のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
  7. 前記ペプチドリンカーが、3〜30個のアミノ酸からなるペプチドである請求項6記載のダイアボディ型二重特異性抗体。
  8. 2種類の一本鎖ポリペプチドから構成される請求項6又は7に記載のダイアボディ型二重特異性抗体のいずれか一方の一本鎖ポリペプチド又はそれに含まれる各領域を構成するポリペプチド。
  9. 請求項6又は8に記載の一本鎖ポリペプチド又はそれに含まれる各領域をコードすることを特徴とする核酸。
  10. 核酸が発現される宿主細胞における至適コドンを有する請求項9に記載の核酸。
  11. 大腸菌に対する至適コドンを有する請求項9又は10に記載の核酸。
  12. 請求項9〜11のいずれかに記載の核酸を含有する複製可能なクローニングベクター又は発現ベクター。
  13. プラスミドベクターである請求項12記載のベクター。
  14. 請求項12又は13記載のベクターで形質転換された宿主細胞。
  15. 大腸菌である請求項14に記載の宿主細胞。
  16. 請求項15に記載の宿主細胞を培養して宿主細胞中で該核酸を発現せしめ、一本鎖ポリペプチドを回収し、精製することを特徴とする一本鎖ポリペプチドの製造方法。
  17. 請求項16に記載の方法で得られた一本鎖ポリペプチドを会合せしめ、形成された請求項1〜7のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体を分離して回収することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体の製造方法。
  18. 請求項1〜7のいずれかに記載のダイアボディ型二重特異性抗体又はその標識体、請求項8記載の一本鎖ポリペプチド、請求項10又は請求項11に記載の核酸、請求項12又は13に記載のベクター、及び、請求項14又は15に記載の宿主細胞から成る群から選ばれたものを有効成分として含有することを特徴とする診断薬又は医薬組成物。
  19. ダイアボディ型二重特異性抗体又はその標識体を有効成分とする請求項18に記載の診断薬又は医薬組成物。
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