本発明の透明電極は、導電性層と当該導電性層に隣接して設けられる中間層とが備えられた透明電極であって、前記導電性層は、銀を主成分として含有し、前記中間層は、縮合複素環化合物を含有し、当該縮合複素環化合物が窒素原子(N)と炭素原子(C)の数の比(N/C)の値が0.5以上の含窒素縮合環を分子内に有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項14までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記縮合複素環化合物が、窒素原子(N)と炭素原子(C)の数の比(N/C)の値が0.5以上の二環式の含窒素縮合環を分子内に有することが好ましい。
前記縮合複素環化合物が、それぞれ、前記一般式(1)又は一般式(2)、前記一般式(3)又は一般式(4)、前記一般式(5)又は一般式(6)、前記一般式(7)、前記一般式(8)、前記一般式(9)又は一般式(10)並びに前記一般式(11)又は一般式(12)で表される構造を有する化合物であることが、銀との親和力及び安定性の観点から、好ましい。
また、前記縮合複素環化合物が、窒素原子(N)と炭素原子(C)の数の比(N/C)の値が0.5以上の三環式の含窒素縮合環を分子内に有することが好ましい。
前記縮合複素環化合物が、それぞれ、前記一般式(13)又は一般式(14)並びに前記一般式(15)又は一般式(16)で表される構造を有する化合物であることが、銀との親和力及び安定性の観点から、好ましい。
本発明の透明電極は、電子デバイスに好適に具備され得る。これにより、十分な導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ耐久性に優れた電子デバイスを得ることができる。
本発明の透明電極は、有機エレクトロルミネッセンス素子に好適に具備され得る。これにより、十分な導電性と光透過性とを兼ね備え、かつ耐久性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
≪1.透明電極≫
<透明電極の構成>
図1は、本発明の透明電極の構成の一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、透明電極1は、中間層1aと、この中間層1aの上部に導電性層1bとが積層された2層構造であり、例えば、基板11の上部に、中間層1a、導電性層1bの順に設けられている。このうち中間層1aは、本発明に係る縮合複素環化合物が含有されている層であり、導電性層1bは銀を主成分として含有している層である。
なお、本発明において導電性層1bの主成分とは、導電性層を構成する成分のうち、構成比率が最も高い成分をいう。本発明の導電性層1bは、銀を主成分とし、その構成比率としては、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが特に好ましい。
また、本発明の透明電極1の透明とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
次に、このような積層構造の透明電極1が設けられる基板11、透明電極1を構成する中間層1a及び導電性層1bの順に、詳細な構成を説明する。
[基板]
本発明の透明電極1が形成される基板11としては、例えば、ガラス、プラスチック等を挙げることができるが、これらに限定されない。また、基板11は透明であっても不透明であってもよい。本発明の透明電極1が、基板11側から光を取り出す電子デバイスに用いられる場合には、基板11は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基板11としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。
ガラスとしては、例えば、シリカガラス、ソーダ石灰シリカガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。これらのガラス材料の表面には、中間層1aとの密着性、耐久性、平滑性の観点から、必要に応じて、研磨等の物理的処理が施されていてもよいし、無機物又は有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されていてもよい。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
上記したように、樹脂フィルムの表面には、無機物又は有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されていてもよい。このような被膜及びハイブリッド被膜は、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が1×10−2g/m2・24h以下のバリア性フィルム(バリア膜等ともいう)であることが好ましい。さらには、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m2・24h・atm以下、水蒸気透過度が1×10−5g/m2・24h以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
以上のようなバリア性フィルムを形成する材料としては、水分や酸素等の電子デバイスや有機EL素子の劣化をもたらす要因の浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。さらに、当該バリア性フィルムの脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層(有機層)の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層との積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア性フィルムの作製方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載の大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
一方、基板11を不透明な材料で構成する場合には、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属基板、フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等を用いることができる。
[中間層]
本発明に係る中間層1aは、窒素原子(N)と炭素原子(C)の数の比(N/C)の値が0.5以上の含窒素縮合環を分子内に有する縮合複素環化合物を用いて形成された層である。
このような中間層1aが基板11上に成膜されたものである場合、その成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも蒸着法が好ましく適用される。
窒素原子(N)と炭素原子(C)の数の比(N/C)の値が0.5以上の含窒素縮合環を分子内に有する縮合複素環化合物であれば、特に制限はなく、芳香族複素環化合物であっても脂肪族複素環化合物であってもよい。また、前記含窒素縮合環が二環式縮合環であっても多環式縮合環であってもよい。好ましくは、含窒素縮合環縮合環は二環式縮合環又は三環式縮合環である。
本発明に係るこれらの縮合複素環化合物の中でも、般式(1)から一般式(16)で表される構造を有する縮合複素環化合物が好ましい。
次に、一般式(1)から一般式(16)で表される構造を有する縮合複素環化合物について詳細に説明する。
一般式(1)から一般式(16)において、R1、R2、R3、R4及びR11で表される置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基又はヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、ピペリジル基(ピペリジニル基ともいう)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、リン酸エステル基(例えば、ジヘキシルホスホリル基等)、亜リン酸エステル基(例えばジフェニルホスフィニル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
R1、R2、R3、R4及びR11で表される置換基は、更に置換基を有してもよく、置換基としては上記と同様の基を表す。
[中間層に含有される化合物の具体例]
窒素原子(N)と炭素原子(C)の数の比(N/C)の値が0.5以上の含窒素縮合環に含有されているヘテロ原子は、窒素原子の他には、酸素原子又は硫黄原子であることが好ましい。
以下に、中間層1aに含有される本発明に係る縮合複素環化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。なお縮合複素環化合物に含まれる含窒素縮合環の炭素原子(C)の数の比(N/C)の値を、N/Cとしてそれぞれの構造式に示した。
本発明に係る縮合複素環化合物は、従来公知の合成方法に準じて、容易に合成することができる。
化合物(A)2.25g、化合物(B)2.11g、キシレン50mlを投入し窒素気流下で20分間撹拌を行った。この懸濁液にPd(dba)2 0.48g、上記ligand 0.57g及びtBuONa 2.60gを加え5時間還流した。反応液を水洗しさらに有機層を減圧蒸留した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、展開液MeOH/トルエン)で精製し、目的物2.03g(収率56.0%)を得た。
化合物(C)2.11gをアセトニトリル50mlに加え、更にトリエチルアミン1.5gを加えた。これにドデカン酸クロライドを10分で滴下し、3時間還流した。減圧蒸留で溶媒を除去し、酢酸エチルを加え水洗した。減圧蒸留で酢酸エチルを除去し、得られた粗結晶をカラムクロマトグラフィー(SiO2、展開液MeOH/トルエン)で精製し、目的物2.55g(収率65.0%)を得た。
化合物(D)2.67g、フェニルボロン酸1.40g、微粉炭酸カリウム2.10g、DMSO(ジメチルスルホキシド)40mlを混合した後、系内を窒素気流で20分置換した。続いてPdCl2dppf 0.80gを投入し加熱撹拌2時間行った。(内温75−80℃)室温まで冷却し井水40mlを加えた。室温で撹拌し析出した結晶を減圧濾過した。さらにカラムクロマトグラフィー(SiO2、展開液MeOH/トルエン)で精製し、目的物1.81g(収率68.5%)を得た。
実施例中の各化合物の同定はMASS及びNMRスペクトルで行い、それぞれ目的化合物であることを確認した。
[導電性層]
導電性層1bは、銀を主成分として構成されている層であって、中間層1a上に成膜された層である。
このような導電性層1bの成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法等)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも蒸着法が好ましく適用される。
また、導電性層1bは、中間層1a上に成膜されることにより、導電性層1bの成膜後に高温アニール処理(例えば、150℃以上の加熱プロセス)等がなくても十分に導電性を有することを特徴とするが、必要に応じて、成膜後に高温アニール処理等を行ったものであってもよい。
導電性層1bは銀(Ag)を含有する合金から構成されていてもよく、そのような合金としては、例えば、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)等が挙げられる。
以上のような導電性層1bは、銀を主成分として構成されている層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であってもよい。
さらに、この導電性層1bは、層厚が5.0〜20.0nmの範囲にあることが好ましく、5.0〜12.0nmの範囲にあることがより好ましい。
層厚が20nm以下であると層の吸収成分又は反射成分が少なくなり、透明電極の透過率が向上するためより好ましい。また、層厚が5.0nm以上であると層の導電性が十分になるため好ましい。
なお、以上のような中間層1aとこの上部に成膜された導電性層1bとからなる積層構造の透明電極1は、導電性層1bの上部が保護膜で覆われていてもよいし、別の導電性層が積層されていてもよい。この場合、透明電極1の光透過性を損なうことのないように、保護膜及び別の導電性層が光透過性を有することが好ましい。また中間層1aの下部、すなわち、中間層1aと基板11との間にも、必要に応じた層を設けた構成としてもよい。
<透明電極の効果>
以上のような構成の透明電極1は、本発明に係る縮合複素環化合物を含有する中間層1a上に、銀を主成分として含有する導電性層1bを備える。これにより、中間層1aの上部に導電性層1bを成膜する際には、導電性層1bを構成する銀原子が中間層1aに含有される本発明に係る縮合複素環化合物と相互作用し、銀原子の中間層1a表面においての拡散距離が減少し、銀の凝集が抑えられる。
ここで、一般的に銀を主成分として含有する導電性層の成膜においては、島状成長型(Volumer−Weber:VW型)で成長するため、銀粒子が島状に孤立しやすく、層厚(膜厚)が薄いときは導電性を得ることが困難であり、シート抵抗値が高くなる。
したがって、導電性を確保するには膜厚を厚くする必要があるが、膜厚を厚くすると光透過率が下がるため、透明電極としては不適であった。
しかしながら、本発明の透明電極1によれば、上述したように中間層1a上において銀の凝集が抑えられるため、銀を主成分として構成されている導電性層1bの成膜においては、層状成長型(Frank−van der Merwe:FM型)で薄膜成長するようになる。
また、ここで、本発明の透明電極1の透明とは波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいうが、中間層1aとして用いられる上述した各材料は、銀を主成分とした導電性層1bと比較して、十分に光透過性の良好な膜を形成する。一方、透明電極1の導電性は主に導電性層1bによって確保される。したがって、上述のように、銀を主成分として構成されている導電性層1bが、より薄い層厚で導電性が確保されたものとなることにより、透明電極1の導電性の向上と光透過性の向上との両立を図ることが可能になるのである。
≪2.透明電極の用途≫
上述した構成の透明電極1は、各種電子デバイスに用いることができる。電子デバイスの例としては、有機EL素子、LED(Light Emitting Diode)、液晶素子、太陽電池、タッチパネル等が挙げられ、これらの電子デバイスにおいて光透過性を必要とされる電極部材として、上述の透明電極1を用いることができる。
以下では、用途の一例として、本発明の透明電極1を用いた有機EL素子の実施の形態を説明する。
≪3.有機EL素子の第1例≫
<有機EL素子の構成>
図2は、本発明の電子デバイスの一例として、上述した透明電極1を用いた有機EL素子の第1例を示す概略断面図である。
以下に、この図に基づいて有機EL素子の構成を説明する。
図2に示すとおり、有機EL素子100は、透明基板(基板)13上に設けられており、透明基板13側から順に、透明電極1、有機材料等を用いて構成された発光機能層3、及び対向電極5aをこの順に積層して構成されている。この有機EL素子100においては、透明電極1として、先に説明した本発明の透明電極1を用いている。このため有機EL素子100は、発生させた光(以下、発光光hと記す)を、少なくとも透明基板13側から取り出すように構成されている。
また、有機EL素子100の層構造は以下に説明する例に限定されることはなく、一般的な層構造であってもよい。ここでは、透明電極1がアノード(すなわち陽極)として機能し、対向電極5aがカソード(すなわち陰極)として機能することとする。この場合、例えば、発光機能層3は、アノードである透明電極1側から順に正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3d/電子注入層3eを積層した構成が例示されるが、このうち少なくとも有機材料を用いて構成された発光層3cを有することが必須である。正孔注入層3a及び正孔輸送層3bは、正孔輸送注入層として設けられていてもよい。電子輸送層3d及び電子注入層3eは、電子輸送注入層として設けられていてもよい。また、これらの発光機能層3のうち、例えば、電子注入層3eは無機材料で構成されているものとしてもよい。
また、発光機能層3は、これらの層の他に正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていてもよい。さらに、発光層3cは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の補助層を介して積層させた構造としてもよい。補助層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能してもよい。さらにカソードである対向電極5aも、必要に応じた積層構造であってもよい。このような構成においては、透明電極1と対向電極5aとで発光機能層3が挟持された部分のみが、有機EL素子100における発光領域となる。
また、以上のような層構成においては、透明電極1の低抵抗化を図ることを目的とし、透明電極1の導電性層1bに接して補助電極15が設けられていてもよい。
以上のような構成の有機EL素子100は、有機材料等を用いて構成された発光機能層3の劣化を防止することを目的として、透明基板13上において後述する封止材17で封止されている。この封止材17は、接着剤19を介して透明基板13側に固定されている。ただし、透明電極1及び対向電極5aの端子部分は、透明基板13上において発光機能層3によって互いに絶縁性を保った状態で封止材17から露出させた状態で設けられていることとする。
以下、上述した有機EL素子100を構成するための主要各層の詳細を、透明基板13、透明電極1、対向電極5a、発光機能層3の発光層3c、発光機能層3の他の層、補助電極15、及び封止材17の順に説明する。
[透明基板]
透明基板13は、先に説明した本発明の透明電極1が設けられる基板11であり、先に説明した基板11のうち光透過性を有する透明な基板11が用いられる。
[透明電極(アノード)]
透明電極1は、先に説明した本発明の透明電極1であり、透明基板13側から順に中間層1a及び導電性層1bを順に成膜した構成である。ここでは特に、透明電極1はアノードとして機能するものであり、導電性層1bが実質的なアノードとなる。
[対向電極(カソード)]
対向電極5aは、発光機能層3に電子を供給するカソードとして機能する電極膜であり、金属、合金、有機若しくは無機の導電性化合物、又はこれらの混合物等から構成されている。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO2、SnO2等の酸化物半導体等が挙げられる。
対向電極5aは、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、対向電極5aとしてのシート抵抗値は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、この有機EL素子100が、対向電極5a側からも発光光hを取り出すものである場合には、上述した導電性材料のうちから選択される光透過性の良好な導電性材料により対向電極5aが構成されていればよい。
[発光層]
本発明に用いられる発光層3cは、発光材料が含有されているが、中でも発光材料としてリン光発光性化合物(リン光発光材料、リン光発光化合物、リン光性化合物)が含有されていることが好ましい。
この発光層3cは、電極又は電子輸送層3dから注入された電子と、正孔輸送層3bから注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層3cの層内であっても発光層3cと隣接する層との界面であってもよい。
このような発光層3cとしては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各発光層3c間には非発光性の補助層(図示せず)を有していることが好ましい。
発光層3cの層厚の総和は、好ましくは、1〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲である。なお、発光層3cの層厚の総和とは、発光層3c間に非発光性の補助層が存在する場合には、当該補助層も含む層厚である。
複数層を積層した構成の発光層3cの場合、個々の発光層の層厚としては、1〜50nmの範囲に調整することが好ましく、1〜20nmの範囲に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑、赤のそれぞれの発光色に対応する場合、青、緑、赤の各発光層の層厚の関係については、特に制限はない。
以上のように構成されている発光層3cは、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により成膜して形成することができる。
また発光層3cは、複数の発光材料が混合されて構成されていてもよく、またリン光発光性化合物と蛍光性化合物(蛍光発光材料、蛍光ドーパント)とが混合されて構成されていてもよい。
発光層3cの構成として、ホスト化合物(発光ホスト)、発光材料(発光ドーパント)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
(ホスト化合物)
発光層3cに含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、発光層3cに含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、かつ高Tg(ガラス転移温度)の化合物が好ましい。
ここでいうガラス転移温度とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121−1987に準拠した方法により求められる値である。
以下に、本発明で用いることのできるホスト化合物の具体例(H1〜H79)を示すが、これらに限定されない。なお、ホスト化合物H68におけるx及びy、ホスト化合物H69におけるp、q及びrはランダム共重合体の比率(mol%)を表す。その比率は、例えば、x:y=1:10等とすることができる。
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物を用いることもできる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
(発光材料)
(1)リン光発光性化合物
本発明で用いることのできる発光材料としては、リン光発光性化合物が挙げられる。
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてリン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光発光性化合物の発光の原理としては2種挙げられる。
一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光発光性化合物に移動させることでリン光発光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型である。
もう一つは、リン光発光性化合物がキャリアトラップとなり、リン光発光性化合物上でキャリアの再結合が起こり、リン光発光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、リン光発光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件となる。
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム錯体、オスミウム錯体、又は白金錯体、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム錯体である。
本発明においては、少なくとも一つの発光層3cに2種以上のリン光発光性化合物が含有されていてもよく、発光層3cにおけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層3cの厚さ方向で変化していてもよい。
リン光発光性化合物は好ましくは発光層3cの総量に対し0.1体積%以上30体積%未満である。
(1.1)一般式(A)で表される化合物
発光層3cに含まれる化合物(リン光発光性化合物)は、下記一般式(A)で表される化合物であることが好ましい。
なお、一般式(A)で表されるリン光発光性化合物(リン光発光性の金属錯体ともいう)は、有機EL素子100の発光層3cに発光ドーパントとして含有されることが好ましい態様であるが、発光層3c以外の発光機能層に含有されていてもよい。
一般式(A)中、P及びQは、各々炭素原子又は窒素原子を表し、A1は、P−Cとともに芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を形成する原子群を表す。A2は、Q−Nとともに芳香族複素環を形成する原子群を表す。P1−L1−P2は、2座の配位子を表し、P1、P2は各々独立に炭素原子、窒素原子又は酸素原子を表す。L1は、P1、P2とともに2座の配位子を形成する原子群を表す。j1は1〜3の整数を表し、j2は0〜2の整数を表すが、j1+j2は2又は3である。M1は、元素周期表における8族〜10族の遷移金属元素を表す。
一般式(A)において、A1がP−Cとともに形成する芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
これらの環は、さらに、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
一般式(A)において、A1が、P−Cとともに形成する芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環等が挙げられる。
ここで、アザカルバゾール環とは、カルバゾール環を構成するベンゼン環の炭素原子が一つ以上窒素原子で置き換わったものを示す。
これらの環は、さらに、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
一般式(A)において、A2が、Q−Nとともに形成する芳香族複素環としては、オキサゾール環、オキサジアゾール環、オキサトリアゾール環、イソオキサゾール環、テトラゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、イソチアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環等が挙げられる。
これらの環は、さらに、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
P1−L1−P2で表される2座の配位子としては、フェニルピリジン、フェニルピラゾール、フェニルイミダゾール、フェニルトリアゾール、フェニルテトラゾール、ピラザボール、アセチルアセトン、ピコリン酸等が挙げられる。
一般式(A)において、j2は0〜2の整数を表すが、中でも、j2は0である場合が好ましい。
一般式(A)において、M1は元素周期表における8族〜10族の遷移金属元素(単に遷移金属ともいう)が用いられるが、中でも、イリジウムが好ましい。
(1.2)一般式(B)で表される化合物
上記一般式(A)で表される化合物は、下記一般式(B)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(B)中、Zは、炭化水素環基又は複素環基を表す。P、Qは、各々炭素原子又は窒素原子を表し、A1は、P−Cとともに芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を形成する原子群を表す。A3は、−C(R01)=C(R02)−、−N=C(R02)−、−C(R01)=N−又は−N=N−を表し、R01、R02は、各々水素原子又は置換基を表す。P1−L1−P2は2座の配位子を表し、P1、P2は各々独立に炭素原子、窒素原子、又は酸素原子を表す。L1は、P1、P2とともに2座の配位子を形成する原子群を表す。j1は1〜3の整数を表し、j2は0〜2の整数を表すが、j1+j2は2又は3である。M1は元素周期表における8族〜10族の遷移金属元素を表す。
一般式(B)において、Zで表される炭化水素環基としては、非芳香族炭化水素環基、芳香族炭化水素環基が挙げられ、非芳香族炭化水素環基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
これらの基は、無置換でもよく、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
また、芳香族炭化水素環基(芳香族炭化水素基、アリール基等ともいう)としては、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
これらの基は、無置換でもよく、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
一般式(B)において、Zで表される複素環基としては、非芳香族複素環基、芳香族複素環基等が挙げられ、非芳香族複素環基としては、例えば、エポキシ環、アジリジン環、チイラン環、オキセタン環、アゼチジン環、チエタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジン環、テトラヒドロチオフェン環、スルホラン環、チアゾリジン環、ε−カプロラクトン環、ε−カプロラクタム環、ピペリジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、トリオキサン環、テトラヒドロチオピラン環、チオモルホリン環、チオモルホリン−1,1−ジオキシド環、ピラノース環、ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン環等から導出される基を挙げられる。
これらの基は、無置換でもよく、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。
これらの基は、無置換でもよく、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
Zで表される基は、好ましくは芳香族炭化水素環基又は芳香族複素環基である。
一般式(B)において、A1が、P−Cとともに形成する芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
これらの基は、無置換でもよく、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
一般式(B)において、A1がP−Cとともに形成する芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、アザカルバゾール環等が挙げられる。
ここで、アザカルバゾール環とは、カルバゾール環を構成するベンゼン環の炭素原子が一つ以上窒素原子で置き換わったものを示す。
これらの基は、無置換でもよく、一般式(1)においてR1で表される置換基を有していてもよい。
一般式(B)のA3で表される、−C(R01)=C(R02)−、−N=C(R02)−、−C(R01)=N−において、R01、R02で各々表される置換基は、一般式(1)においてR1で表される置換基と同義である。
一般式(B)において、P1−L1−P2で表される2座の配位子としては、フェニルピリジン、フェニルピラゾール、フェニルイミダゾール、フェニルトリアゾール、フェニルテトラゾール、ピラザボール、アセチルアセトン、ピコリン酸等が挙げられる。
一般式(B)において、j2は0〜2の整数を表すが、中でも、j2は0である場合が好ましい。
一般式(B)において、M1で表される元素周期表における8族〜10族の遷移金属元素(単に遷移金属ともいう)は、一般式(A)において、M1で表される元素周期表における8族〜10族の遷移金属元素と同義である。
(1.3)一般式(C)で表される化合物
上記一般式(B)で表される化合物は、下記一般式(C)で表される化合物が好ましい。
一般式(C)中、R03は置換基を表し、R04は水素原子又は置換基を表し、複数のR04は互いに結合して環を形成してもよい。n01は1〜4の整数を表す。R05は水素原子又は置換基を表し、複数のR05は互いに結合して環を形成してもよい。n02は1又は2を表す。R06は水素原子又は置換基を表し、互いに結合して環を形成してもよい。n03は1〜4の整数を表す。Z1はC−Cとともに六員の芳香族炭化水素環若しくは、五員又は六員の芳香族複素環を形成するのに必要な原子群を表す。Z2は炭化水素環基又は複素環基を形成するのに必要な原子群を表す。P1−L1−P2は2座の配位子を表し、P1、P2は各々独立に炭素原子、窒素原子又は酸素原子を表す。L1はP1、P2とともに2座の配位子を形成する原子群を表す。j1は1〜3の整数を表し、j2は0〜2の整数を表すが、j1+j2は2又は3である。M1は元素周期表における8族〜10族の遷移金属元素を表す。R03とR06、R04とR06及びR05とR06は互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(C)において、R03、R04、R05、R06で各々表される置換基は、一般式(1)においてR1で表される置換基と同義である。
一般式(C)において、Z1がC−Cとともに形成する六員の芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環等が挙げられる。
これらの環は、さらに、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、一般式(1)においてR1で表される置換基と同様のものが挙げられる。
一般式(C)において、Z1がC−Cとともに形成する五員又は六員の芳香族複素環としては、例えば、オキサゾール環、オキサジアゾール環、オキサトリアゾール環、イソオキサゾール環、テトラゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、イソチアゾール環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環等が挙げられる。
これらの環は、さらに、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、一般式(1)においてR1で表される置換基と同様のものが挙げられる。
一般式(C)において、Z2で表される炭化水素環基としては、非芳香族炭化水素環基、芳香族炭化水素環基が挙げられ、非芳香族炭化水素環基としては、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
これらの基は、無置換でもよいし、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、一般式(1)においてR1で表される置換基と同様のものが挙げられる。
また、芳香族炭化水素環基(芳香族炭化水素基、アリール基等ともいう)としては、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等が挙げられる。
これらの基は、無置換でもよいし、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、一般式(1)においてR1で表される置換基と同様のものが挙げられる。
一般式(C)において、Z2で表される複素環基としては、非芳香族複素環基、芳香族複素環基等が挙げられ、非芳香族複素環基としては、例えば、エポキシ環、アジリジン環、チイラン環、オキセタン環、アゼチジン環、チエタン環、テトラヒドロフラン環、ジオキソラン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、イミダゾリジン環、オキサゾリジン環、テトラヒドロチオフェン環、スルホラン環、チアゾリジン環、ε−カプロラクトン環、ε−カプロラクタム環、ピペリジン環、ヘキサヒドロピリダジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、ピペラジン環、モルホリン環、テトラヒドロピラン環、1,3−ジオキサン環、1,4−ジオキサン環、トリオキサン環、テトラヒドロチオピラン環、チオモルホリン環、チオモルホリン−1,1−ジオキシド環、ピラノース環、ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン環等から導出される基を挙げることができる。
これらの基は無置換でもよいし、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、一般式(1)においてR1で表される置換基と同様のものが挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基(例えば、1,2,4−トリアゾール−1−イル基、1,2,3−トリアゾール−1−イル基等)、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、チエニル基、キノリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(カルボリニル基のカルボリン環を構成する炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、キノキサリニル基、ピリダジニル基、トリアジニル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等が挙げられる。
これらの環は無置換でもよいし、置換基を有していてもよく、そのような置換基としては、一般式(1)においてR1で表される置換基と同様のものが挙げられる。
一般式(C)において、Z1及びZ2で形成される基としては、ベンゼン環が好ましい。
一般式(C)において、P1−L1−P2で表される2座の配位子は、一般式(A)において、P1−L1−P2で表される2座の配位子と同義である。
一般式(C)において、M1で表される元素周期表における8族〜10族の遷移金属元素は、一般式(A)において、M1で表される元素周期表における8族〜10族の遷移金属元素と同義である。
また、リン光発光性化合物は、有機EL素子100の発光層3cに使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
本発明に係るリン光発光性化合物の具体例(Pt−1〜Pt−3、A−1、Ir−1〜Ir−45)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、これらの化合物において、m及びnは繰り返し数を表す。
上記のリン光発光性化合物(リン光発光性金属錯体等ともいう)は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)、さらにこれらの文献中に記載の参考文献等の方法を適用することにより合成できる。
(2)蛍光性化合物
蛍光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
[注入層:正孔注入層、電子注入層]
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層3cの間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層3aと電子注入層3eとがある。
注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層3aであれば、アノードと発光層3c又は正孔輸送層3bとの間、電子注入層3eであればカソードと発光層3c又は電子輸送層3dとの間に存在させてもよい。
正孔注入層3aは、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン層、酸化バナジウムに代表される酸化物層、アモルファスカーボン層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子層等が挙げられる。
電子注入層3eは、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属層、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデンに代表される酸化物層等が挙げられる。電子注入層3eはごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその層厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
[正孔輸送層]
正孔輸送層3bは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層3a、電子阻止層も正孔輸送層3bに含まれる。正孔輸送層3bは単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているような、いわゆるp型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層3bは、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層3bの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層3bは、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
また、正孔輸送層3bの材料に不純物をドープしてp性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層3bのp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
[電子輸送層]
電子輸送層3dは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層3e、正孔阻止層も電子輸送層3dに含まれる。電子輸送層3dは単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
単層構造の電子輸送層3d、及び積層構造の電子輸送層3dにおいて発光層3cに隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層3cに伝達する機能を有していればよい。このような材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層3dの材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層3dの材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送層3dの材料として好ましく用いることができる。また、発光層3cの材料としても用いられるジスチリルピラジン誘導体も電子輸送層3dの材料として用いることができるし、正孔注入層3a、正孔輸送層3bと同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送層3dの材料として用いることができる。
電子輸送層3dは、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層3dの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲である。電子輸送層3dは上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
また、電子輸送層3dに不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。さらに電子輸送層3dには、カリウムやカリウム化合物等を含有させることが好ましい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層3dのn性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができる。
また電子輸送層3dの材料(電子輸送性化合物)として、上述した中間層1aを構成する材料と同様のものを用いてもよい。これは、電子注入層3eを兼ねた電子輸送層3dであっても同様であり、上述した中間層1aを構成する材料と同様のものを用いてもよい。
[阻止層:正孔阻止層、電子阻止層]
阻止層は、上記した発光機能層3の基本構成層の他に、必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層3dの機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、上記の電子輸送層3dの構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層3cに隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層3bの機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、上記の正孔輸送層3bの構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。
[補助電極]
補助電極15は、透明電極1の抵抗を下げる目的で設けられるものであって、透明電極1の導電性層1bに接して設けられる。補助電極15を形成する材料としては、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の抵抗が低い金属が好ましい。これらの金属は光透過性が低いため、光取り出し面13aからの発光光hの取り出しの影響のない範囲でパターン形成される。このような補助電極15の作製方法としては、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、インクジェット法、エアロゾルジェット法等が挙げられる。補助電極15の線幅は、光を取り出す開口率の観点から50μm以下であることが好ましく、補助電極15の厚さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましい。
[封止材]
封止材17は、有機EL素子100を覆うものであって、板状(フィルム状)の封止部材であって接着剤19によって透明基板13側に固定されるものであってもよく、封止膜であってもよい。このような封止材17は、有機EL素子100における透明電極1及び対向電極5aの端子部分を露出させる状態で、少なくとも発光機能層3を覆う状態で設けられている。また封止材17に電極を設け、有機EL素子100の透明電極1及び対向電極5aの端子部分と、この電極とを導通させるように構成されていてもよい。
板状(フィルム状)の封止材17としては、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板、金属基板等が挙げられ、これらの基板材料をさらに薄型のフィルム状にして用いてもよい。ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属基板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金からなるものが挙げられる。
中でも、素子を薄膜化できるということから、封止材としてポリマー基板や金属基板を薄型のフィルム状にしたものを好ましく使用することができる。
さらには、フィルム状としたポリマー基板は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/m2・24h・atm以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10−3g/m2・24h以下のものであることが好ましい。
また以上のような基板材料は、凹板状に加工して封止材17として用いてもよい。この場合、上述した基板材料に対してサンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
またこのような板状の封止材17を透明基板13側に固定するための接着剤19は、封止材17と透明基板13との間に挟持された有機EL素子100を封止するためのシール剤として用いられる。このような接着剤19は、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。
また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることもできる。
なお、有機EL素子100を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、接着剤19は、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤19中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
封止材17と透明基板13との接着部分への接着剤19の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また、板状の封止材17と透明基板13と接着剤19との間に隙間が形成される場合、この間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
一方、封止材17として封止膜を用いる場合、有機EL素子100における発光機能層3を完全に覆い、かつ有機EL素子100における透明電極1及び対向電極5aの端子部分を露出させる状態で、透明基板13上に封止膜が設けられる。
このような封止膜は、無機材料や有機材料を用いて構成される。特に、水分や酸素等、有機EL素子100における発光機能層3の劣化をもたらす物質の浸入を抑制する機能を有する材料で構成されることとする。このような材料として、例えば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等の無機材料が用いられる。さらに封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる膜とともに、有機材料からなる膜を用いて積層構造としてもよい。
これらの膜の作製方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
[保護膜、保護板]
透明基板13とともに、有機EL素子100及び封止材17を挟むようにして保護膜若しくは保護板を設けてもよい。この保護膜若しくは保護板は、有機EL素子100を機械的に保護するためのものであり、特に封止材17が封止膜である場合には、有機EL素子100に対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護膜若しくは保護板を設けることが好ましい。
以上のような保護膜若しくは保護板としては、ガラス板、ポリマー板、これよりも薄型のポリマーフィルム、金属板、これよりも薄型の金属フィルム、又はポリマー材料膜や金属材料膜が適用される。このうち特に、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
<有機EL素子の製造方法>
ここでは一例として、図2に示す有機EL素子100の製造方法について説明する。
まず、透明基板13上に、ヘテロ原子を3個以上有する芳香族複素環基を分子内に2個以上有する芳香族複素環化合物からなる中間層1aを、1μm以下、好ましくは10〜100nmの層厚になるように蒸着法等の適宜の方法により形成する。次に銀(又は銀を含有する合金)からなる導電性層1bを5〜20nmの範囲、好ましくは5〜12nmの範囲の層厚になるように蒸着法等の適宜の方法により中間層1a上に形成し、アノードとなる透明電極1を作製する。
次に、この上に正孔注入層3a、正孔輸送層3b、発光層3c、電子輸送層3d、電子注入層3eの順に成膜し、発光機能層3を形成する。これらの各層の成膜は、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。さらに、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。これらの各層の成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1〜5μmの範囲で、各条件を適宜選択することが望ましい。
以上のようにして発光機能層3を形成した後、この上部にカソードとなる対向電極5aを、蒸着法やスパッタ法等の適宜の成膜法によって形成する。この際、対向電極5aは、発光機能層3によって透明電極1に対して絶縁状態を保ちつつ、発光機能層3の上方から透明基板13の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。これにより、有機EL素子100が得られる。またその後には、有機EL素子100における透明電極1及び対向電極5aの端子部分を露出させた状態で、少なくとも発光機能層3を覆う封止材17を設ける。
以上により、透明基板13上に所望の有機EL素子が得られる。このような有機EL素子100の作製においては、一回の真空引きで一貫して発光機能層3から対向電極5aまで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から透明基板13を取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
このようにして得られた有機EL素子100に直流電圧を印加する場合には、アノードである透明電極1を+の極性とし、カソードである対向電極5aを−の極性として、電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
<有機EL素子の効果>
以上説明した有機EL素子100は、本発明の導電性と光透過性とを兼ね備えた透明電極1をアノードとして用い、この上部に発光機能層3とカソードとなる対向電極5aとを設けた構成である。このため、透明電極1と対向電極5aとの間に十分な電圧を印加して有機EL素子100での高輝度発光を実現しつつ、透明電極1側からの発光光hの取り出し効率が向上することによる高輝度化を図ることが可能である。さらに、所定輝度を得るための駆動電圧の低減による発光寿命の向上を図ることも可能になる。
なお、後述するように、本発明の中間層1aは、アノード又はカソードが備えてもよいし、電子注入性を有する電子輸送層3dが、透明電極1における中間層1aとして設けられてもよい。特に、発光に関与しないアノードが中間層1aを備えることが、層厚を適宜変更することができる点で好ましい。
≪4.有機EL素子の第2例≫
<有機EL素子の構成>
図3は、本発明の電子デバイスの一例として、上述した透明電極1を用いた有機EL素子の第2例を示す概略断面図である。図3に示す第2例の有機EL素子200が、図2に示した第1例の有機EL素子100と異なるところは、透明電極1をカソードとして用いるところにある。以下、第1例と同様の構成要素についての重複する詳細な説明は省略し、第2例の有機EL素子200の特徴的な構成を説明する。
図3に示すとおり、有機EL素子200は、透明基板13上に設けられており、第1例と同様に、透明基板13上の透明電極1として先に説明した本発明の透明電極1を用いている。このため有機EL素子200は、少なくとも透明基板13側から発光光hを取り出せるように構成されている。ただし、この透明電極1は、カソード(陰極)として用いられる。このため、対向電極5bは、アノードとして用いられることになる。
このように構成される有機EL素子200の層構造は以下に説明する例に限定されることはなく、一般的な層構造であってもよいことは、第1例と同様である。
第2例の場合の一例としては、カソードとして機能する透明電極1の上部に、電子注入層3e/電子輸送層3d/発光層3c/正孔輸送層3b/正孔注入層3aをこの順に積層した構成が例示される。ただし、このうち少なくとも有機材料で構成された発光層3cを有することが必須である。
なお、発光機能層3は、これらの層の他にも、第1例で説明したのと同様に、必要に応じたさまざまな構成が採用される。このような構成において、透明電極1と対向電極5bとで発光機能層3が挟持された部分のみが、有機EL素子200における発光領域となることも第1例と同様である。
また、以上のような層構成においては、透明電極1の低抵抗化を図ることを目的として透明電極1の導電性層1bに接して補助電極15が設けられていてもよいことも、第1例と同様である。
ここで、アノードとして用いられる対向電極5bは、金属、合金、有機若しくは無機の導電性化合物、又はこれらの混合物等から構成されている。具体的には、金(Au)等の金属、ヨウ化銅(CuI)、ITO、ZnO、TiO2、SnO2等の酸化物半導体等が挙げられる。
以上のように構成されている対向電極5bは、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、対向電極5bとしてのシート抵抗値は、数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、この有機EL素子200が、対向電極5b側からも発光光hを取り出せるように構成されている場合、対向電極5bを構成する材料としては、上述した導電性材料のうち光透過性の良好な導電性材料が選択されて用いられる。
以上のような構成の有機EL素子200は、発光機能層3の劣化を防止することを目的として、第1例と同様に封止材17で封止されている。
以上説明した有機EL素子200を構成する主要各層のうち、アノードとして用いられる対向電極5b以外の構成要素の詳細な構成、及び有機EL素子200の製造方法は、第1例と同様である。このため詳細な説明は省略する。
<有機EL素子の効果>
以上説明した有機EL素子200は、本発明の導電性と光透過性とを兼ね備えた透明電極1をカソードとして用い、この上部に発光機能層3とアノードとなる対向電極5bとを設けた構成である。このため、第1例と同様に、透明電極1と対向電極5bとの間に十分な電圧を印加して有機EL素子200での高輝度発光を実現しつつ、透明電極1側からの発光光hの取り出し効率が向上することによる高輝度化を図ることが可能である。さらに、所定輝度を得るための駆動電圧の低減による発光寿命の向上を図ることも可能になる。
≪5.有機EL素子の第3例≫
<有機EL素子の構成>
図4は、本発明の電子デバイスの一例として、上述した透明電極1を用いた有機EL素子の第3例を示す概略断面図である。図4に示す第3例の有機EL素子300が、図2に示した第1例の有機EL素子100と異なるところは、基板131側に対向電極5cを設け、この上部に発光機能層3と透明電極1とをこの順に積層したところにある。以下、第1例と同様の構成要素についての重複する詳細な説明は省略し、第3例の有機EL素子300の特徴的な構成を説明する。
図4に示す有機EL素子300は、基板131上に設けられており、基板131側から、アノードとなる対向電極5c、発光機能層3、及びカソードとなる透明電極1がこの順に積層されている。このうち、透明電極1として、先に説明した本発明の透明電極1を用いている。このため有機EL素子300は、少なくとも基板131とは逆の透明電極1側から発光光hを取り出せるように構成されている。
このように構成される有機EL素子300の層構造は以下に説明する例に限定されることはなく、一般的な層構造であってもよいことは、第1例と同様である。
第3例の場合の一例としては、アノードとして機能する対向電極5cの上部に、正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3dをこの順に積層した構成が例示される。ただし、このうち少なくとも有機材料を用いて構成された発光層3cを有することが必須である。また、電子輸送層3dは、電子注入層3eを兼ねたもので、電子注入性を有する電子輸送層3dとして設けられていることとする。
特に、第3例の有機EL素子300に特徴的な構成としては、電子注入性を有する電子輸送層3dが、透明電極1における中間層1aとして設けられているところにある。すなわち、第3例においては、カソードとして用いられる透明電極1が、電子注入性を有する電子輸送層3dを兼ねる中間層1aと、その上部に設けられた導電性層1bとで構成されているものである。
このような電子輸送層3dは、上述した透明電極1の中間層1aを構成する材料を用いて構成されている。
なお、発光機能層3は、これらの層の他にも、第1例で説明したと同様に、必要に応じたさまざまな構成が採用されるが、透明電極1の中間層1aを兼ねる電子輸送層3dと、透明電極1の導電性層1bとの間には、電子注入層や正孔阻止層が設けられることはない。以上のような構成において、透明電極1と対向電極5cとで発光機能層3が挟持された部分のみが、有機EL素子300における発光領域となることは、第1例と同様である。
また、以上のような層構成においては、透明電極1の低抵抗化を図ることを目的とし、透明電極1の導電性層1bに接して補助電極15が設けられていてもよいことも、第1例と同様である。
さらに、アノードとして用いられる対向電極5cは、金属、合金、有機若しくは無機の導電性化合物、又はこれらの混合物等から構成されている。具体的には、金(Au)等の金属、ヨウ化銅(CuI)、ITO、ZnO、TiO2、SnO2等の酸化物半導体等が挙げられる。
以上のように構成されている対向電極5cは、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、対向電極5cとしてのシート抵抗値は、数百Ω/□以下が好ましく、厚さは通常5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
なお、この有機EL素子300が、対向電極5c側からも発光光hを取り出せるように構成されている場合、対向電極5cを構成する材料としては、上述した導電性材料のうち光透過性の良好な導電性材料が選択されて用いられる。またこの場合、基板131としては、第1例で説明した透明基板13と同様のものが用いられる。
以上のような構成の有機EL素子300は、発光機能層3の劣化を防止することを目的として、第1例と同様に封止材17で封止されている。また、有機EL素子300では、封止材17の基板131とほぼ平行な部分の有機EL素子300とは逆側の面を光取り出し面17aとしている。
<有機EL素子の効果>
以上説明した有機EL素子300は、発光機能層3の最上部を構成する電子注入性を有する電子輸送層3dを中間層1aとし、この上部に導電性層1bを設けることにより、中間層1aとこの上部の導電性層1bとからなる透明電極1をカソードとして設けた構成である。このため、第1例及び第2例と同様に、透明電極1と対向電極5cとの間に十分な電圧を印加して有機EL素子300での高輝度発光を実現しつつ、透明電極1側からの発光光hの取り出し効率が向上することによる高輝度化を図ることが可能である。さらに、所定輝度を得るための駆動電圧の低減による発光寿命の向上を図ることも可能になる。また、対向電極5cが光透過性を有する場合には、対向電極5cからも発光光hを取り出すことができる。
なお、上述の第3例においては、透明電極1の中間層1aが電子注入性を有する電子輸送層3dを兼ねているものとして説明したが、本例はこれに限られるものではなく、中間層1aが電子注入性を有していない電子輸送層3dを兼ねているものであってもよいし、中間層1aが電子輸送層ではなく電子注入層を兼ねているものであってもよい。また、中間層1aが有機EL素子の発光機能に影響を及ぼさない程度の極薄膜として形成されているものとしてもよく、この場合には、中間層1aは電子輸送性及び電子注入性を有していない。
さらに、透明電極1の中間層1aが有機EL素子の発光機能に影響を及ぼさない程度の極薄膜として形成されている場合には、基板131側の対向電極5cをカソードとし、発光機能層3上の透明電極1をアノードとしてもよい。この場合、発光機能層3は、基板131上の対向電極(カソード)5c側から順に、例えば、電子注入層3e/電子輸送層3d/発光層3c/正孔輸送層3b/正孔注入層3aが積層される。そしてこの上部に極薄い中間層1aと導電性層1bとの積層構造からなる透明電極1が、アノードとして設けられる。
≪6.有機EL素子の用途≫
上述した各構成の有機EL素子は、上述したように面発光体であるため各種の発光光源として用いることができる。例えば、家庭用照明や車内照明等の照明装置、時計や液晶用のバックライト、看板広告用照明、信号機の光源、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられる。特に、カラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
また、本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。この場合、近年の照明装置及びディスプレイの大型化にともない、有機EL素子を設けた発光パネル同士を平面的に接合する、いわゆるタイリングによって発光面を大面積化してもよい。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、カラー又はフルカラー表示装置を作製することが可能である。
以下では、用途の一例として照明装置について説明し、次にタイリングによって発光面を大面積化した照明装置について説明する。
≪6−1.照明装置−1≫
照明装置は、本発明の有機EL素子を具備することができる。
照明装置に用いる有機EL素子は、上述した構成の各有機EL素子に共振器構造を持たせた設計としてもよい。共振器構造を有するように構成された有機EL素子の使用目的としては、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられるが、これらに限定されない。また、レーザー発振をさせることにより上記用途に使用してもよい。
なお、本発明の有機EL素子に用いられる材料は、白色の発光を生じる有機EL素子(白色有機EL素子)に適用できる。例えば、複数の発光材料により複数の発光色を同時に発光させて、混色により白色発光を得ることもできる。複数の発光色の組み合わせとしては、赤色、緑色、青色の三原色の三つの発光極大波長を含有させたものでもよいし、青色と黄色、青緑と橙色等の補色の関係を利用した二つの発光極大波長を含有したものでもよい。
また、複数の発光色を得るための発光材料の組み合わせは、複数のリン光又は蛍光で発光する材料を複数組み合わせたもの、蛍光又はリン光で発光する発光材料と、発光材料からの光を励起光として発光する色素材料との組み合わせたもののいずれでもよいが、白色有機EL素子においては、発光ドーパントを複数組み合わせて混合したものでもよい。
このような白色有機EL素子は、各色発光の有機EL素子をアレー状に個別に並列配置して白色発光を得る構成と異なり、有機EL素子自体が白色を発光する。このため、素子を構成するほとんどの層の成膜にマスクを必要とせず、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法等で成膜することができ、生産性も向上する。
また、このような白色有機EL素子の発光層に用いる発光材料としては、特に制限はなく、例えば液晶表示素子におけるバックライトであれば、CF(カラーフィルター)特性に対応した波長範囲に適合するように、上記した金属錯体や公知の発光材料の中から任意のものを選択して組み合わせて白色化すればよい。
以上に説明した白色有機EL素子を用いれば、実質的に白色の発光を生じる照明装置を作製することが可能である。
≪6−2.照明装置−2≫
図5は、上記各構成の有機EL素子を複数用いて発光面を大面積化した照明装置の概略断面図である。
図5に示すとおり、照明装置21は、透明基板13上に有機EL素子100を備えた複数の発光パネル22を、支持基板23上に複数配列する(タイリングする)ことによって発光面を大面積化した構成である。支持基板23は、封止材17を兼ねるものであってもよく、この支持基板23と、発光パネル22の透明基板13との間に有機EL素子100を挟持する状態で各発光パネル22をタイリングする。支持基板23と透明基板13との間には接着剤19を充填し、これによって有機EL素子100を封止してもよい。なお、発光パネル22の周囲には、アノードである透明電極1及びカソードである対向電極5aの端部を露出させておく。ただし、図5においては対向電極5aの露出部分のみを図示した。
なお、図5では、有機EL素子100を構成する発光機能層3として、透明電極1上に、正孔注入層3a/正孔輸送層3b/発光層3c/電子輸送層3d/電子注入層3eを順次積層した構成を一例として示している。
このような構成の照明装置21では、各発光パネル22の中央が発光領域Aとなり、発光パネル22間には非発光領域Bが発生する。このため、非発光領域Bからの光取り出し量を増加させるための光取り出し部材を、光取り出し面13aの非発光領域Bに設けてもよい。光取り出し部材としては、集光シートや光拡散シートを用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
[実施例1]
《透明電極の作製》
以下に説明するように、透明電極1−1〜1−21を、導電性領域の面積が5cm×5cmとなるように作製した。透明電極1−1〜1−4は、導電性層のみからなる単層構造の透明電極として作製し、透明電極1−5〜1−21は、中間層と導電性層との積層構造の透明電極として作製した。
(1)透明電極1−1の作製
まず、透明な無アルカリガラス製の基板を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空蒸着装置の真空槽に取り付けた。またタングステン製の抵抗加熱ボードに銀(Ag)を充填し、当該真空槽内に取り付けた。次に、真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、抵抗加熱ボードを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、基板上に層厚5.0nmの銀からなる導電性層を成膜し、単層構造の透明電極1−1を作製した。
(2)透明電極1−2〜1−4の作製
透明電極1−1の作製において、導電性層の層厚をそれぞれ8.0nm、10.0nm、15.0nmに変更した以外は同様にして、透明電極1−2〜1−4を作製した。
(3)透明電極1−5の作製
透明な無アルカリガラス製の基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、比較化合物の下記ET−1をタンタル製抵抗加熱ボードに充填し、これらの基板ホルダーと加熱ボードとを真空蒸着装置の第1真空槽に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボードに銀を充填し、第2真空槽内に取り付けた。
この状態で、まず、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、化合物ET−1の入った加熱ボードに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、基板上に層厚20nmの化合物ET−1からなる中間層を設けた。
次に、中間層まで成膜した基板を真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボードを通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、層厚8.0nmの銀からなる導電性層を形成し、中間層と導電性層との積層構造からなる透明電極1−5を作製した。
(4)透明電極1−6〜1−18の作製
透明電極1−5の作製において、導電性層の層厚及び中間層の構成材料をそれぞれ表1に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極1−6〜1−18を作製した。なお、比較のET−2及びET−3は上記した構造を有する化合物を用いた。
(5)透明電極1−19〜1−21の作製
透明電極1−5の作製において、基板を無アルカリガラスからPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更して、中間層の構成材料をそれぞれ表1に記載の化合物に変更した以外は同様にして、透明電極1−19〜1−21を作製した。
《透明電極の評価》
作製した透明電極1−1〜1−21について、下記の方法に従い、光透過率、シート抵抗値及び耐久性(電極寿命)の測定を行った。
(1)光透過率の測定
作製した各透明電極について、分光光度計(日立製作所製U−3300)を用い、各透明電極の基板をリファレンスとして、波長550nmにおける光透過率(%)を測定した。測定結果を表1に示す。
(2)シート抵抗値の測定
作製した各透明電極について、抵抗率計(三菱化学社製MCP−T610)を用い、4探針法定電流印加方式でシート抵抗値(Ω/□)を測定した。測定結果を表1に示す。
(3)定電流下における電極寿命の測定
作製した各透明電極に、大気下において10Aの定電流を流し続け、シート抵抗値が初期値の2倍のシート抵抗値になるのに要する時間を測定した。測定結果を表1に示す。
なお、電極寿命は、透明電極1−7の電極寿命を100とする相対値で示している。
(4)まとめ
表1から明らかなように、本発明の化合物を用いた中間層上に銀(Ag)を主成分とした導電性層を設けた本発明の透明電極1−8〜1−21、いずれも光透過率が良好であり、シート抵抗値が低く抑えられている。これに対して、比較例の透明電極1−1〜1−7は、光透過率がいずれも低く、しかもシート抵抗値が高いことが分かる。
また、耐久性(電極寿命)においても、本発明の透明電極1−8〜1−21が、比較例の透明電極1−1〜1−7と比較して、優れていることがわかる。
以上から、本発明の透明電極は、高い光透過率と導電性とを兼ね備え、耐久性に優れていることが確認された。
[実施例2]
《発光パネルの作製》
実施例1と同様の方法で作製した透明電極をアノードとして用いた両面発光型の発光パネル2−1〜2−21を作製した。以下、図6を参照して、作製手順を説明する。
(1)発光パネル2−1の作製
まず、実施例1で作製した、導電性層1bのみを有する透明電極1が形成された透明基板13を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、透明電極1の形成面側に蒸着マスクを対向配置した。また、真空蒸着装置内の加熱ボードの各々に、発光機能層3を構成する各材料を、それぞれの層の成膜に最適な量で充填した。なお、加熱ボードはタングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10−4Paまで減圧し、各材料が入った加熱ボードを順次通電して加熱することにより、以下のように各層を成膜した。
まず、正孔輸送注入材料として下記構造式に示すα−NPDが入った加熱ボードに通電して加熱し、α−NPDよりなる正孔注入層と正孔輸送層とを兼ねた正孔輸送注入層31を、透明電極1を構成する導電性層1b上に成膜した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚20nmとした。
次いで、ホスト材料H4の入った加熱ボードと、リン光発光性化合物Ir−4の入った加熱ボードとを、それぞれ独立に通電し、ホスト材料H4とリン光発光性化合物Ir−4とよりなる発光層3cを、正孔輸送注入層31上に成膜した。この際、蒸着速度がホスト材料H4:リン光発光性化合物Ir−4=100:6となるように、加熱ボードの通電を調節した。また、層厚は30nmとした。
次いで、正孔阻止材料として下記構造式に示すBAlqが入った加熱ボードに通電して加熱し、BAlqよりなる正孔阻止層33を、発光層3c上に成膜した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚10nmとした。
その後、電子輸送材料として下記構造式に示すET−4の入った加熱ボードと、フッ化カリウムの入った加熱ボードとを、それぞれ独立に通電し、ET−4とフッ化カリウムとよりなる電子輸送層3dを、正孔阻止層33上に成膜した。この際、蒸着速度がET−4:フッ化カリウム=75:25になるように、加熱ボードの通電を調節した。また層厚30nmとした。
次に、電子注入材料としてフッ化カリウムの入った加熱ボードに通電して加熱し、フッ化カリウムよりなる電子注入層3eを、電子輸送層3d上に成膜した。この際、蒸着速度0.01〜0.02nm/秒、層厚1nmとした。
その後、電子注入層3eまで成膜した透明基板13を、真空蒸着装置の蒸着室から、対向電極材料としてITOのターゲットが取り付けられたスパッタ装置の処理室内に、真空状態を保持したまま移動させた。次いで、処理室内において、成膜速度0.3〜0.5nm/秒で、層厚150nmのITOからなる光透過性の対向電極5aをカソードとして成膜した。以上により透明基板13上に有機EL素子400を形成した。
その後、有機EL素子400を、厚さ300μmのガラス基板からなる封止材17で覆い、有機EL素子400を囲む状態で、封止材17と透明基板13との間に接着剤19(シール材)を充填した。接着剤19としては、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を用いた。封止材17と透明基板13との間に充填した接着剤19に対して、ガラス基板(封止材17)側からUV光を照射し、接着剤19を硬化させて有機EL素子400を封止した。
なお、有機EL素子400の形成においては、各層の形成に蒸着マスクを使用し、5cm×5cmの透明基板13における中央の4.5cm×4.5cmを発光領域Aとし、発光領域Aの全周に幅0.25cmの非発光領域Bを設けた。また、アノードである透明電極1とカソードである対向電極5aとは、正孔輸送注入層31から電子注入層3eまでの発光機能層3によって絶縁された状態で、透明基板13の周縁に端子部分を引き出された形状で形成した。
以上のようにして、透明基板13上に有機EL素子400を設け、これを封止材17と接着剤19とで封止した発光パネル2−1を作製した。
発光パネル2−1においては、発光層3cで発生した各色の発光光hが、透明電極1側、すなわち透明基板13側と、対向電極5a側、すなわち封止材17側との両方から取り出される。
(2)発光パネル2−2〜2−2−21の作製
発光パネル2−1の作製において、表2に示す透明電極に変更した以外は同様にして、発光パネル2−2〜2−18を作製した。
また、発光パネル2−19〜2−21の作製において、基板13を無アルカリガラスからPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更して、中間層の構成材料をそれぞれ表2に記載の化合物に変更した以外は同様にして、発光パネル2−19〜2−21を作製した。
なお、中間層は、実施例1と同様、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、各材料の入った加熱ボードに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、基板上に層厚20nmで形成した。
《発光パネルの評価》
作製した発光パネル2−1〜2−21について、下記の方法に従い、光透過率、駆動電圧、及び耐久性(輝度半減寿命)の測定を行った。
(1)光透過率の測定
作製した各発光パネルについて、分光光度計(日立製作所製U−3300)を用い、各発光パネルの透明電極の基板をリファレンスとして、波長550nmにおける光透過率(%)を測定した。測定結果を表2に示す。
(2)駆動電圧の測定
作製した各発光パネルについて、各発光パネルの透明電極1側(すなわち透明基板13側)と、対向電極5a側(すなわち封止材17側)との両側での正面輝度を測定し、その和が1000cd/m2となるときの電圧を駆動電圧(V)として測定した。なお、輝度の測定には、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いた。得られた駆動電圧の数値が小さいほど、好ましい結果であることを表す。測定結果を表2に示す。
(3)輝度半減寿命の測定
作製した各発光パネルを、室温下において2.5mA/cm2の定電流条件下で連続発光させ、初期輝度の半分の輝度になるのに要する時間(τ1/2)を測定した。測定結果を表2に示す。
なお、輝度半減寿命は、発光パネル2−7の輝度半減寿命を100とする相対値で示している。
(4)まとめ
表2から明らかなように、本発明の透明電極を有機EL素子のアノードに用いた本発明の発光パネル2−8〜2−21は、いずれも光透過率が良好であり、かつ駆動電圧が低く抑えられていることがわかる。
また、耐久性(輝度半減寿命)においても、本発明の発光パネル2−8〜2−21が、比較例の発光パネル2−1〜2−7と比較して、優れていることがわかる。
これにより本発明の透明電極を用いた発光パネルは、低い駆動電圧で高輝度発光が可能であることが確認された。またこれにより、所定輝度を得るための駆動電圧の低減と、発光寿命の向上が見込まれることが確認された。
[実施例3]
《発光パネル3−1の作製》
実施例1と同様の方法で作製した透明電極をカソード(対向電極5a)として用いた両面発光型の発光パネル3−1〜3−21を作製した。以下、作製手順を説明する。
(1)発光パネル3−1の作製
100mm×100mm×1.1mmのガラス基板上に、陽極としてITO(インジウムチンオキシド)を100nm成膜した基板(AvanStrate株式会社製、NA−45)にパターニングを行った。その後、このITO透明電極を設けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥して、UVオゾン洗浄を5分間行った。
この透明基板13を、市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、透明電極1の形成面側に蒸着マスクを対向配置した。また、真空蒸着装置内の加熱ボードの各々に、発光機能層3を構成する各材料を、それぞれの層の成膜に最適な量で充填した。なお、加熱ボードはタングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10−4Paまで減圧し、各材料が入った加熱ボードを順次通電して加熱することにより、以下のように各層を成膜した。
まず、正孔輸送注入材料としてα−NPDが入った加熱ボードに通電して加熱し、α−NPDよりなる正孔注入層と正孔輸送層とを兼ねた正孔輸送注入層31を、透明電極1を構成する導電性層1b上に成膜した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚20nmとした。
次いで、ホスト材料H4の入った加熱ボードと、リン光発光性化合物Ir−4の入った加熱ボードとを、それぞれ独立に通電し、ホスト材料H4とリン光発光性化合物Ir−4とよりなる発光層3cを、正孔輸送注入層31上に成膜した。この際、蒸着速度がホスト材料H4:リン光発光性化合物Ir−4=100:6となるように、加熱ボードの通電を調節した。また、層厚は30nmとした。
次いで、正孔阻止材料としてBAlqが入った加熱ボードに通電して加熱し、BAlqよりなる正孔阻止層33を、発光層3c上に成膜した。この際、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒、層厚10nmとした。
その後、電子輸送材料として下記構造式に示すET−5の入った加熱ボードと、フッ化カリウムの入った加熱ボードとを、それぞれ独立に通電し、ET−5とフッ化カリウムとよりなる電子輸送層3dを、正孔阻止層33上に成膜した。この際、蒸着速度がET−5:フッ化カリウム=75:25になるように、加熱ボードの通電を調節した。また層厚30nmとした。
次に、電子注入材料としてフッ化カリウムの入った加熱ボードに通電して加熱し、フッ化カリウムよりなる電子注入層3eを、電子輸送層3d上に成膜した。この際、蒸着速度0.01〜0.02nm/秒、層厚1nmとした。
その後、電子注入層3eまで成膜した透明基板13を、真空蒸着装置の蒸着室から、対向電極材料としてAgが取り付けられたスパッタ装置の処理室内に、真空状態を保持したまま移動させた。次いで、実施例1と同様に、処理室内において、成膜速度0.1〜0.2nm/秒で、層厚5.0nmのAgからなる光透過性の対向電極5aとして導電性層1bを、カソードとして成膜した。以上により透明基板13上に有機EL素子を形成した。
その後、有機EL素子を、厚さ300μmのガラス基板からなる封止材17で覆い、有機EL素子を囲む状態で、封止材17と透明基板13との間に接着剤19(シール材)を充填した。接着剤19としては、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を用いた。封止材17と透明基板13との間に充填した接着剤19に対して、ガラス基板(封止材17)側からUV光を照射し、接着剤19を硬化させて有機EL素子を封止した。
なお、有機EL素子の形成においては、各層の形成に蒸着マスクを使用し、5cm×5cmの透明基板13における中央の4.5cm×4.5cmを発光領域Aとし、発光領域Aの全周に幅0.25cmの非発光領域Bを設けた。また、アノードであるITO透明電極1とカソードであるAgからなる対向電極5aとは、正孔輸送注入層31〜電子注入層3eまでの発光機能層3によって絶縁された状態で、透明基板13の周縁に端子部分を引き出された形状で形成した。
以上のようにして、透明基板13上に有機EL素子を設け、これを封止材17と接着剤19とで封止した発光パネル3−1を作製した。
発光パネル3−1の構成においては、発光層3cで発生した各色の発光光hが、透明電極1側、すなわち透明基板13側と、対向電極5a側すなわち封止材17側との両方から取り出される。
(2)発光パネル3−2〜3−21の作製
発光パネル3−1の作製において、対向電極5aを表3に示す透明電極に変更した以外は同様にして、発光パネル3−2〜3−19を作製した。
また、発光パネル3−20〜3−21の作製において、基板を無アルカリガラスからPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに変更して、中間層の構成材料をそれぞれ表3に記載の化合物に変更した以外は同様にして、発光パネル3−20〜3−21を作製した。
なお、中間層は、実施例1と同様、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、各材料の入った加熱ボードに通電して加熱し、蒸着速度0.1〜0.2nm/秒の範囲内で、電子注入層3eの上に層厚20nmで形成した。
《発光パネルの評価》
作製した発光パネル3−1〜3−21について、下記の方法に従い、光透過率、駆動電圧、及び輝度半減寿命の測定を行った。
(1)光透過率の測定
作製した各発光パネルについて、分光光度計(日立製作所製U−3300)を用い、各発光パネルの透明電極の基板をリファレンスとして、波長550nmにおける光透過率(%)を測定した。測定結果を表3に示す。
(2)駆動電圧の測定
作製した各発光パネルについて、各発光パネルの透明電極1側(すなわち透明基板13側)と、対向電極5a側(すなわち封止材17側)との両側での正面輝度を測定し、その和が1000cd/m2となるときの電圧を駆動電圧(V)として測定した。なお、輝度の測定には、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用いた。得られた駆動電圧の数値が小さいほど、好ましい結果であることを表す。測定結果を表3に示す。
(3)輝度半減寿命の測定
作製した各発光パネルを、室温下において2.5mA/cm2の定電流条件下で連続発光させ、初期輝度の半分の輝度になるのに要する時間(τ1/2)を測定した。測定結果を表3に示す。
なお、輝度半減寿命は、発光パネル3−7の輝度半減寿命を100とする相対値で示している。
(4)まとめ
表3から明らかなように、本発明の透明電極を有機EL素子のカソードに用いた発光パネル3−8〜3−21は、いずれも光透過率が良好であり、かつ駆動電圧が低く抑えられている。
また、耐久性(輝度半減寿命)においても、発光パネル3−8〜3−21が、比較例の発光パネル3−1〜3−7と比較して、優れていることがわかる。
これにより本発明の透明電極を用いた発光パネルは、低い駆動電圧で高輝度発光が可能であることが確認された。またこれにより、所定輝度を得るための駆動電圧の低減と、発光寿命の向上が見込まれることが確認された。