JP2015059785A - 電気化学ナノインデンテーション試験装置及びその試験方法 - Google Patents

電気化学ナノインデンテーション試験装置及びその試験方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水素脆化が顕在化する低歪み速度で水素の影響を精確に測定する電気化学ナノインデンテーション試験装置を提供する。
【解決手段】電気化学ナノインデンテーション試験装置は、試料8を保持し、この試料8の表面に電気化学的に水素を導入する電気化学セル1と、水素が導入されている過程で試料8の表面に押し込まれる圧子14と、圧子14の押し込み荷重及び押し込み時間を制御するコントローラ20と、荷重発生器、及び押し込み荷重と圧子14の変位の検出器であるトランスデューサ24と、押し込み荷重に振幅変調を付加する任意波形発生器22と、接触剛性を検出するロックインアンプ23と、試料8のナノ硬さを算出する演算装置21と、を備え、圧子14を試料8に押し込む際に、押し込み荷重に変調を付加する。
【選択図】図7

Description

本発明は、ナノメートルスケールの微小押し込み試験に用いられるナノインデンテーション試験装置に関し、特に、試料に対し電気化学的に水素を導入(チャージ)しながらナノインデンテーション測定を行うことを可能にする電気化学ナノインデンテーション試験装置及びその試験方法に関する。
近年、高強度鋼の更なる開発を進めていく上で、水素脆化の問題に抜本的な対策を打つことが重要視されつつある。鋼中において、水素は転位、粒界、介在物、歪み場等の様々な格子欠陥にトラップされ、破壊を引き起こす。このため、微小領域の機械特性(硬さ、弾性率等)や転位運動に及ぼす水素の影響を究明することが重要と言える。
一般に、粒界、析出物等のミクロ組織の機械特性を評価するために、ナノインデンテーション(以下、「NI」ともいう)法が利用されている。NI法は、ナノスケールの圧子を試料の表面に押し込み、その際の圧子の押し込み荷重と侵入深さ(押し込み深さ)を逐次取得し、この荷重と深さの関係から試料の極表層(表面から深さ1μm以内)における微視的な硬さや弾性率等を測定する手法である。
ところで、圧子が押し込まれる試料の極表層では、水素を飽和量まで導入しても、その試料を大気雰囲気中に置くと、導入された水素が拡散して放出され、水素濃度は短時間で低下してしまう。このため、試料の表面が大気雰囲気に露出した状態でNI測定を行っても、その測定結果が水素の影響を直接反映しているとは言い難い。そこで、このような不都合に対処するため、試料の保持具として陰極水素チャージ用の電気化学セルを組み込んだNI試験装置を用い、試料に対し電解液中で電気化学的に水素を導入しながらNI測定を行う電気化学NI(以下、「EC−NI」ともいう)法が提案されている(例えば、非特許文献1、2参照)。
Afrooz Barnoush,Horst Vehoff,「Scripta Materialia」,Volume 55,Issue 2,July 2006,p.195−198 Makoto Chiba,Masahiro Seo,「Corrosion Science」,Volume 44,Issue 10,October 2002,p.2379−2391
水素脆化は、水素を含有した鋼材を低歪み速度で変形させたときに発生し、高歪み速度では発生しない。一方、従来のEC−NI法では、測定中の圧子や試料の熱変形、いわゆる熱ドリフトを無視することができず、再現性のあるデータが得られる押し込み時間は数十秒以下に制限されている。このため、現状では、押し込み時間が長くなる低歪み速度での測定は困難であり、水素の影響を精確に測定できているとは言い難い。
本発明の目的は、次の特性を有する電気化学ナノインデンテーション試験装置及びその試験方法を提供することである:
水素脆化が顕在化する低歪み速度で水素の影響を精確に測定すること。
本発明の要旨は、次の通りである。
(I)電気化学ナノインデンテーション法による試験装置であって、
試料を保持し、この試料の表面に電気化学的に水素を導入する電気化学セルと、
水素が導入されている過程で前記試料の前記表面に押し込まれる圧子と、
前記圧子の押し込み荷重、及び押し込み時間を制御するコントローラと、
荷重発生器、及び前記押し込み荷重と前記圧子の変位の検出器であるトランスデューサと、
前記押し込み荷重に振幅変調を付加する任意波形発生器と、
接触剛性を検出するロックインアンプと、
前記試料のナノ硬さを算出する演算装置と、を備え、
前記圧子を前記試料に押し込む際に、前記押し込み荷重に振幅変調を付加する、電気化学ナノインデンテーション装置。
(II)電気化学ナノインデンテーション法による試験方法であって、
試料の表面に電気化学的に水素を導入しながら、前記試料の前記表面に圧子を押し込む際に、任意波形発生器により前記圧子の押し込み荷重に振幅変調を付加し、発生した圧子の変位から、ロックインアンプにより接触剛性を検出して、逐次取得された押し込み荷重と接触剛性からナノ硬さを算出する、電気化学ナノインデンテーション試験方法。
上記の試験方法において、前記圧子の押し込み時間を60分以上とし、前記振幅変調の周波数を10〜300Hzの範囲内とすることが好ましい。
本発明の電気化学ナノインデンテーション試験装置及びその試験方法は、下記の顕著な効果を有する:
水素脆化が顕在化する低歪み速度で水素の影響を精確に測定できること。
図1は、P−h曲線の模式図である。 図2は、押し込み時間Δtを60minとしたR−F法による測定で得られた大気中と電解液中のP−h曲線を示す図である。 図3は、温度が20℃、湿度が20%〜30%の環境下で測定した電解液の時間変化を示す図であり、同図(a)は水位の時間変化を、同図(b)は浮力の時間変化をそれぞれ示す。 図4は、56Ni−43Cr合金の表面に圧子を押し込んで得られたP−h曲線を示す図である。 図5は、SUS316Lの表面に圧子を押し込んで得られたP−h曲線を示す図である。 図6は、水素導入によるナノ硬さの変化率(増加率)と押し込み時間(歪み速度)との関係を示す図であり、図6(a)は純Niの場合を、図6(b)は79Ni−20Crの場合を、図6(c)は69Ni−30Crの場合を、図6(d)は56Ni−43Crの場合を、図6(e)はSUS316Lの場合をそれぞれ示す 図7は、実施形態のナノインデンテーション試験装置の構成を模式的に示す断面図である。 図8は、実施形態のナノインデンテーション試験装置に組み込まれる電気化学セルを分解して示す斜視図である。 図9は、実施形態の電気化学セルを組み立ててNI試験装置に組み込んだ状態を示す斜視図である。
本発明の電気化学ナノインデンテーション試験装置及びその試験方法は、下記の確認試験を経て完成したものである。
1.確認試験
現在実用化されているEC−NI試験装置は、圧子の押し込み時間を数十s(秒)程度と短くしなければ、圧子の押し込み深さを精度よく測定することができない。押し込み時間が長いと、圧子や試料の熱ドリフトが影響するからである。また、水素脆化の発生の有無は、歪み速度に大きく依存することが知られている。例えば、水素を導入した純鉄の試料に対して、室温で引張試験を実施すると、歪み速度が10-4/s以下で小さい場合、破面は水素脆化特有の擬へき開破面となる。これに対し、歪み速度が10-3/s以上で大きい場合、破面はディンプル破面となり水素の影響が認められない。
ここで、半径がRの球形圧子をΔtの押し込み時間でhmaxの深さまで押し込んだ際、その歪み速度εdot(歪みεの時間微分を意味する。以下の式中では、記号「ε」の上部にドット記号「・」を付して示す。)は、下記の(1)式で与えられる。
この(1)式に、EC−NI測定の実際の試験条件として、R=1μm、hmax=200nm、及びΔt=5sを代入すると、εdot=2.4×10-2/sが得られる。この歪み速度εdotの値は、上記の引張試験で水素脆化が発生する典型的な歪み速度(10-4/s以下)と比べて大きい。
したがって、EC−NI法で水素脆化機構をより詳細に検討するには、最大押し込み深さhmaxを小さくするか、又は、押し込み時間Δtを大きくし、歪み速度εdotを小さくすることが不可欠である。最大押し込み深さhmaxを小さくすると、押し込み深さについてノイズ/信号比が大きくなり、その結果として、精確なナノ硬さは得られない。よって、押し込み時間Δtを大きくすることが有効である。(1)式より10-4/sの歪み速度を得るには、押し込み時間はΔt≧60min(分)でなければならず、熱ドリフトの影響を補正した測定が必要と言える。
そこで、後述するように、本発明の実施形態であるEC−NI試験装置を利用し、押し込み時間がΔt≧60minと長い条件、すなわち低歪み速度の条件で圧子の押し込みが可能なEC−NI法により、fcc合金のナノ硬さへの水素の影響を調査した。
<低歪み速度EC−NI法の測定原理>
通常のNI測定では、試料の表面に圧子を押し込み、その際の圧子の変位量から求まる押し込み深さhと、押し込み荷重Pを逐次取得し、この押し込み荷重Pと押し込み深さhとの関係、すなわちP−h曲線を得る。図1は、P−h曲線の模式図である。そして、得られたP−h曲線に基づき、OliverとPharrが提案した解析法(O−P法)によって解析を行い、ナノ硬さHnと弾性率Erを導出する。すなわち、ナノ硬さHnと弾性率Erは、図1に示すように、最大荷重Pmaxと、P−h曲線における除荷部の傾き(以下、「接触剛性」ともいう)Sを用い、下記の(2)式及び(3)式から求められる。
試料は、圧子が押し込まれると部分的に弾性変形する。このため、最大押し込み深さhmaxは、圧子が取り除かれた後の圧痕の深さ(以下、「接触深さ」ともいう)hcと単純に等しくはならない。接触深さhcと最大押し込み深さhmaxとは、下記の(4)式の関係がある。
上記(2)式及び(3)式中、Acは圧痕の投影面積であり、圧子の形状によって定義される接触深さhcの関数である。圧痕投影面積Acの関数の形は、予め標準試料に圧子を押し込むことにより実験的に求めることができる。このようなO−P法を用いた解析は、P−h曲線から、弾性率Erとナノ硬さHnの2つの特性を同時にかつ簡便に得られる利点がある。しかし、圧子の変位量は熱ドリフトにより徐々に変化するため、押し込み時間Δtが長いと、精確なP−h曲線を得ることができず、その結果として精確なナノ硬さHnを得ることができない。
そこで、このような従来のEC−NI法の問題を克服するため、圧子を一定の周波数で微小振動させる基準周波数法(R−F法:Reference Frequency法)を利用したEC−NI測定の可能性を検討した。試料に圧子を押し込む際、任意波形発生器により、押し込み荷重Pに数百Hzの微小な振幅変調を付加する。その結果として生じる圧子の変位の振動から、ロックインアンプにより、接触剛性Sを逐次検出し取得する。更に、逐次取得した接触剛性S及び押し込み荷重P、並びに既知の弾性率Erを用い、上記(3)式により、圧子押し込み中の任意の荷重における圧痕投影面積Acと接触深さhcを求める。この弾性率Erは、熱ドリフトが無視できる短い押し込み時間Δtで測定された通常のP−h曲線を、O−P法により解析することで取得する。
上記(2)式により、圧痕投影面積Acから任意の荷重におけるナノ硬さHnが得られる。また、上記(4)式により、接触深さhcから押し込み深さh、及びP−h曲線を得ることができる。このように、R−F法を用いた場合、押し込み深さは、接触剛性から間接的に求められる。荷重の振幅変調の周期は、数十ms(ミリ秒)であり、この間では熱ドリフトは極めて小さい。したがって、ロックインアンプで検出された接触剛性Sへの熱ドリフトの影響は無視してよく、R−F法を用いれば、熱ドリフトの影響がない精確な測定を行える可能性がある。
<測定手順>
試料には、下記の表1に示す組成の3種類のNi−Cr合金(79Ni−20Cr、69Ni−30Cr、56Ni−43Cr)と純Ni、及びSUS316Lを用いた。いずれもfcc合金である。これらのうち、純NiとSUS316Lの試料は、赤外線真空炉でアニール処理を施した後、エメリー紙とアルミナ砥粒で機械研磨を行い、更に電解研磨で機械研磨による表面加工層を除去した。アニール温度と時間は、純Niの試料については、1270K×900s(炉冷)、SUS316Lの試料については、1270K×1800s(炉冷)とした。Ni−Cr合金の試料は、熱間鍛造まま材(鍛造温度1470K、空冷)に、同様の機械研磨及び電解研磨を施した。純Ni試料の結晶粒径は約200μm、SUS316L試料の結晶粒径は約20μm、Ni−Cr合金試料の結晶粒径は、いずれも約50μmであった。試料のサイズは、いずれも、10mm角で厚み2mmとした。
3×10-4/sの歪み速度で引張試験を行い水素導入による破断伸びの低下量から評価した耐水素脆化性は、SUS316Lが最も良好であり、続いて、純Ni、79Ni−20Cr、69Ni−30Cr、56Ni−43Crの順で良好であった。
本発明の実施形態であるEC−NI試験装置(Hysitron社製TriboIndenter-950に電気化学セルを設置)に、試料を組み込み、低歪み速度でEC−NI測定を実施した。EC−NI試験装置及びその電気化学セルの基本的な構成は、後述する。
陰極水素チャージ用の電解液には、ホウ酸緩衝液(0.15MのH3BO4+0.0375MのNa247、pH8.62)を用い、陰極電流密度を2.5A/m2に設定し、電流制御で水素を導入した。試料の結晶粒内のみへの圧子押し込みを実現するため、圧子としては、先端の曲率半径が約1μmのダイアモンド製球形圧子を用いた。
歪み速度εdotの調整は、最大押し込み深さが約200nmになるように最大荷重を設定し、押し込み時間を変化させることで行った。このため、Ni−Cr合金の各試料と、SUS316Lの試料については、最大(駆動)荷重を4000μNとし、純Niの試料については最大荷重を3000μNとした。その際、R−F法を利用して熱ドリフトを補正するため、任意波形発生器により押し込み荷重Pには周波数が200Hzの正弦波の振幅変調を付加した。この変調の荷重振幅は、押し込み荷重Pの値の3%となるように、圧子押し込み中に動的に変化させた。
R−F法による熱ドリフトの補正に必要な弾性率Erは、押し込み時間Δtを5sとし、通常の方法で求めたP−h曲線を、O−P法で解析して取得した。いずれの試料も水素導入の有無に関わらず、弾性率Erの値は、約200GPaで一定であった。
下記の表2に、測定を実施した押し込み時間Δt、これに対応する歪み速度εdotの値(R=1μm、hmax=200nmとして上記(1)式より算出)、及び試験実施数(N数)を示す。歪み速度εdotは、1.2/sから1.1×10-5/sの広い範囲内で変更し、各々の押し込み時間ΔtにおいてN数を2又は3とした。
<試験結果>
≪低歪み速度EC−NI測定に電解液が及ぼす影響≫
押し込み時間Δtを長く設定して圧子を押し込むと、その過程で電解液が蒸発して、浮力が変化したり、圧子に作用する表面張力が変化したりし、精確な測定が行えない可能性がある。そこで、先ず、56Ni−43Cr合金について、大気中で測定した結果のP−h曲線と、電解液中で水素を導入せずに測定した結果のP−h曲線を比較し、電解液が測定結果に及ぼす影響について検討した。
図2は、押し込み時間Δtを60minとしたR−F法による測定で得られたP−h曲線を示す図である。ここで、同図中のP−h曲線は、同じ結晶粒に対して得られた3つのP−h曲線の平均曲線であり、除荷部の曲線は省略している。大気中でのP−h曲線及び電解液中でのP−h曲線は、同じ結晶粒に圧子を押し込んで取得した。図2に示す結果から、大気中と電解液で、P−h曲線の軌跡はほぼ一致することが分かった。したがって、測定結果への浮力や表面張力の影響は小さく、R−F法を用いた熱ドリフトの補正は、大気中、及び電解液中において適用できると判断できる。
更に、水素を導入している最中においても、電解液の影響を無視できるのかを検討した。このため、56Ni−43Cr合金に対して水素導入の有無で電解液の蒸発量がどのように変化するのかを調べた。図3は、温度が20℃、湿度が20%〜30%の環境下で測定した電解液の時間変化を示す図であり、同図(a)は水位の時間変化を、同図(b)は浮力の時間変化をそれぞれ示す。水位は、電解液の質量の変化を電子天秤で測定し、これらの測定値と電解液の密度及び電気化学セルの開口部面積(貯えられている電解液の表出面積)から計算した。一方、浮力は、水位と実際の圧子の形状から計算した。
図3に示すように、水素導入の有無に関わらず、水位と浮力は、時間の経過に伴ってほぼ同じように変化した。特に、浮力は、6時間(360min)経過後も、わずか2μNしか変化しないことが分かった。したがって、水素導入を行った際にも、浮力や表面張力の影響は無視してよいと言える。
≪水素影響の歪み速度依存性≫
水素が影響を及ぼす歪み速度εdotの依存性を明らかにするため、電解液中で水素を導入した状態と導入しない状態で、押し込み時間Δtを変化させて圧子を押し込み、P−h曲線を測定した。図4は、56Ni−43Cr合金の表面に圧子を押し込んで得られたP−h曲線を示す図である。図5は、SUS316Lの表面に圧子を押し込んで得られたP−h曲線を示す図である。
結晶粒による違いを排除するため、同じ押し込み時間Δtでのデータは、各試料で同じ結晶粒内に圧子を押し込んで測定した。図4及び図5中のP−h曲線は、図2の場合と同様に、得られた3つ、若しくは2つのP−h曲線の平均曲線である。押し込み時間がΔt=1sのデータは、R−F法を適用しない従来のEC−NI法により測定し、押し込み時間がΔt≧5sのデータは、R−F法を適用して測定した。
56Ni−43Cr合金では、図4に示すように、押し込み時間がΔt=1s及びΔt=5sの条件では、水素を導入すると、最大押し込み深さhmaxが減少し、その結果としてナノ硬さHnが増加した。一方、押し込み時間がΔt≧60minの条件では、水素による最大押し込み深さhmaxの変化は認められなかった。
これに対し、SUS316Lでは、図5に示すように、測定を実施したいずれの押し込み時間Δtにおいても、水素を導入すると最大押し込み深さhmaxがわずかに減少し、その結果として水素によりナノ硬さHnがわずかに増加することが分かった。
図6は、各試料に対して水素導入によるナノ硬さの変化率(増加率)と押し込み時間(歪み速度)との関係を示す図である。図6(a)は純Niの場合を、図6(b)は79Ni−20Crの場合を、図6(c)は69Ni−30Crの場合を、図6(d)は56Ni−43Crの場合を、図6(e)はSUS316Lの場合をそれぞれ示している。
図6中、ナノ硬さの変化は、水素導入前の値に対する水素導入後の値の変化率を表しており、正の値は硬化を意味し、負の値は軟化を意味する。押し込み時間がΔt≦1sでのナノ硬さHnの値は、従来法で測定したP−h曲線をO−P法で解析して求め、押し込み時間がΔt≧5sでのナノ硬さHnの値は、R−F法で測定した最大荷重(SUS316LおよびNi−Cr合金は4000μN、純Niは3000μN)での接触剛性Sの値から求めた。
Ni−Cr合金の場合、いずれの合金も歪み速度εdotの低下とともに、水素導入によるナノ硬さ増加の程度が減少した。特に、εdot≦3.3×10-5/sの低歪み速度において、56Ni−43Crが、水素導入によるナノ硬さの変化率がゼロであるのに対し、Ni含有量が高い69Ni−30Cr合金と79Ni−20Cr合金は、水素導入により約10%軟化した。SUS316Lの場合、歪み速度εdotに依らず約10%硬化した。一方、純Niの場合、いずれの歪み速度εdotにおいても、水素導入によるナノ硬さの変化は生じなかった。このように、耐水素脆化性が低い試料ほど、εdot≦3.3×10-5/sの低歪み速度において、水素導入により大きな軟化が生じる傾向があった。
<確認試験のまとめ>
上記の確認試験の結果から、次の知見が得られた。
・79Ni−20Cr、69Ni−30Cr、56Ni−43Crの場合、歪み速度の低下とともに、水素導入によるナノ硬さの増加の程度が低下する。特に、79Ni−20Cr、69Ni−30Crについては、歪み速度がεdot≦3.3×10-5/sでは軟化を示す。
・SUS316Lの場合、いずれの歪み速度においても、水素導入により約10%硬化する。
・純Niの場合、いずれの歪み速度においても、水素導入によりナノ硬さの変化は生じない。
・耐水素脆化性が低い試料ほど、εdot≦3.3×10-5/sの低歪み速度において、水素導入により大きな軟化が生じる傾向がある。
このように、EC−NI測定においてR−F法を用いて熱ドリフトを補正することにより、水素環境下で低歪み速度の圧子押し込みが可能な低歪み速度EC−NI(以下、「SSR−EC−NI」ともいう)法が実現されることが分かった。SSR−EC−NI法を用いた測定によれば、Ni−Cr合金、SUS316L、及び純Niへの水素影響の歪み速度εdot依存性を、押し込み時間Δtを180min(εdot=1.1×10-5/sに相当)まで長くして測定することができ、水素脆化が顕在化する低歪み速度で、ミクロ組織への水素の影響を精確に測定することが可能になる。
2.SSR−EC−NI試験装置
以下に、本発明の実施形態であるSSR−EC−NI試験装置、及びこのNI試験装置に組み込まれる保持具としての電気化学セルについて、詳述する。
図7は、実施形態のNI試験装置の構成を模式的に示す断面図である。図8は、そのNI試験装置に組み込まれる電気化学セルを分解して示す斜視図であり、図9は、その電気化学セルを組み立ててNI試験装置に組み込んだ状態を示す斜視図である。電気化学セル1は、容器部2と、台座部3と、を備える。
容器部2は、耐薬品性及び絶縁性を有するとともに、剛性が高く、被削性にも優れ、さらに熱伝導率が高い、チッ化アルミニウム(AlN)とチッ化ホウ素(BN)の複合体(以下、「AlN−BN複合体」ともいう)からなり、その中央部に電解液11を保持するために、鉛直方向に沿って貫通する円形穴2aを有する。容器部2の上面の中央部には、電解液11を貯えるための電解液貯溜用凹部2bが形成され、この電解液貯溜用凹部2bは、円形穴2aに連なって大きく拡大している。
また、容器部2の縁には、台座部3との締結で用いられる複数のネジ4を挿入するために、鉛直方向に沿って貫通するネジ挿入穴2cが形成されている。これらのネジ挿入穴2cは、容器部2の上面からネジ4の頭部が突出しないように、そのネジ4の頭部を容器部2内に収納するためのネジ収納用凹部2dが形成されている。さらに、容器部2の上面の縁には、カウンター電極6及び参照電極7それぞれからの配線6a、7aが容器部2の上面から突出しないように、それらの配線6a、7aをそれぞれ収納するための配線収納用溝部2e、2fが形成されている。
容器部2の電解液貯溜用凹部2bの底には、円形穴2aと同心状にリング状のカウンター電極6が配置される。このカウンター電極6の配線6aは、配線収納用溝部2eを通じて引き出され、その先端の端子6bが、図示しないネジなどによって容器部2の側面に固定される。また、容器部2の円形穴2aには参照電極7が配置される。この参照電極7の配線7aは、配線収納用溝部2fを通じて引き出され、その先端の端子7bが、図示しないネジなどによって容器部2の側面に固定される。カウンター電極6としては、白金や金などを用いることができる。参照電極7としては、白金、金、銀−塩化銀電極などを用いることができる。
台座部3は、容器部2と同じくAlN−BN複合体からなり、その中央部に電極板5を収納するための電極板収納用凹部3aが形成されている。また、台座部3の上面の縁には、容器部2の各ネジ挿入穴2cと対をなすネジ穴3bが形成されている。
台座部3の電極板収納用凹部3aには電極板5が載置される。この電極板5は、電極として機能するために導電性を有することは勿論であるが、熱伝導性も有するものである。電極板5としては、銅が好適である。電極板5が銅からなる場合、その硬さは1/2H以上であることが好ましい。電極板5には、NI測定時に圧子14の押し込みに伴って荷重が負荷されるところ、電極板5が硬さ1/2H以上の銅からなるものであれば、電極板5自身の剛性が十分に確保されるので、圧子14の押し込み負荷に伴って電極板5の変形が生じることはなく、NI測定をより正確に行うことができるからである。
台座部3の電極板5の上には試料8が積み重ねられる。また、その電極板5の上には、試料8を囲繞するようにスペーサー9が載置される。このスペーサー9は熱伝導性を有するものである。スペーサー9としては、熱伝導性を有する限りその材質に特に限定はなく、金属、その中でも銅が好適である。
さらに、試料8の上には容器部2が積み重ねられ、この状態でネジ4により台座部3と容器部2とが締結される。これにより、試料8は、台座部3の電極板5と容器部2との間に挟み込まれて電極板5と電気的に一体化され、その表面の一部が容器部2の円形穴2aに開放した状態にされる。ネジ4は熱伝導性を有するものである。ネジ4としては、熱伝導性を有する限りその材質に特に限定はなく、金属、その中でもアルミニウムが好適である。なお、実際には、試料8と容器部2の間には、円形穴2aと同心状にOリング10が配置される。Oリング10によって電解液11の漏出を防止するためである。
このように組み立てられた電気化学セル1はNI試験装置(例:Hysitron社製TriboIndenter-950)に組み込まれる。具体的には、図示しないNI試験装置の測定テーブル上には温度可変の伝熱台12(図7及び図9参照)が配設されており、この伝熱台12の上に台座部3が固定される。伝熱台12は、熱(冷熱を含む)を発生する装置である。この伝熱台12は、例えば、ペルチェ素子で構成することができ、この場合、−20℃〜+80℃といった室温を下回る低温域から室温を超える高温域の範囲内で温度の調整が可能である。高温域のみの温度調整で足りる場合は、伝熱台12として、コイルヒータを内蔵したものを適用することもできる。もっとも、室温下で測定する際には、伝熱台12は不要であり、電気化学セル1は測定テーブル上に直接固定される。
伝熱台12への台座部3の固定は、以下のようにして行える。図9に示すように、伝熱台12には板ばねのクリップ13が設置されている。そして、台座部3はそのクリップ13によって伝熱台12に着脱自在に固定される。
ここで、電極板5は、その端子5aが外部に突き出しており、その端子5aが電源装置の陰極(−極)に接続される。一方、カウンター電極6及び参照電極7は、それぞれの端子6b、7bが電源装置の陽極(+極)に接続される。
NI装置の圧子14は、例えば、先端の曲率半径が約1μmのダイアモンド製球形圧子であり、荷重発生器、及び荷重と変位の検出器であるトランスデューサ24に把持される。ここで、本実施形態のNI装置は、R−F法による測定が行えるように、トランスデューサ24に接続された任意波形発生器22により、圧子14には押し込み荷重Pに、数百Hzの微小な振幅変調を付加することが可能に構成される。すなわち、圧子14は、R−F法を適用したNI測定時には、押し込み方向に沿って微小な振動が与えられながら試料8に押し込まれ、R−F法を適用しないNI測定時には、振動することなく試料8に押し込まれる構成である。圧子14の押し込み荷重Pと押し込み時間Δtは、トランスデューサ24に接続されたコントローラ20によって制御される。押し込み荷重Pおよび圧子14の変位は、トランスデューサ24により検出される。また、試料8の接触剛性は、トランスデューサ24に接続されたロックインアンプ23により検出される。各種の測定の演算は、ロックインアンプ23とトランスデューサ24に接続された演算装置21によって行われる。
このようにして電気化学セル1がNI試験装置に組み込まれた状態で、容器部2の円形穴2a及び電解液貯溜用凹部2bに電解液11が満たされる。これにより、カウンター電極6及び参照電極7は電解液11に浸漬される。電解液11は、多少濃度が変化してもpHが大きく変化しないようにした溶液、すなわち水素イオン濃度に関して緩衝作用のある電解液である。電解液11としては、例えば、ホウ酸緩衝液が好適である。
電気化学セル1において、伝熱台12の温度を低温や高温に調整すれば、伝熱台12の熱(冷熱を含む)が、熱伝導性を有する台座部3及び電極板5を通じて試料8に効率良く伝わると同時に、同じく熱伝導性を有する台座部3、ネジ4及び容器部2を通じて電解液11に効率良く伝わる。その結果として、試料8及び電解液11の温度を短時間で変更し、所望の温度に維持することができる。
とりわけ、試料8の周囲の空間が、熱伝導性を有するスペーサー9によって埋められているため、試料8及び電解液11への熱伝達がより一層有効にされる。
そして、試料8及び電解液11を所望の温度に維持した状態で、電極板5に陰極電流を印加すれば、試料8が電解液11に対し作用電極として機能し、電気化学反応により、電解液11中の水素イオンが試料8の表面に集積し、試料8に水素がチャージされる。NI測定では、試料8及び電解液11を所望の温度に維持しつつ、電極板5に陰極電流を印加しながら圧子14を試料8の表面に押し込むことにより、所望の温度の試料8に水素を導入しながら「その場」でナノ硬さHn及び弾性率Erを測定することができる。
具体的には、先ず、試料8の弾性率Erを把握するために、R−F法を適用しないでEC−NI測定を行う。このときの押し込み時間Δtは、熱ドリフトが無視できる短い時間であり、例えば、0.1s〜30sの範囲内である。0.1sよりも短い押し込み時間は装置の能力上で難しく、逆に30sよりも長い押し込み時間では、熱ドリフトが影響し再現性の高いデータが得られないからである。より好ましくは、1s〜10sの範囲内であり、実用的には、5sが好ましい。R−F法を適用しないEC−NI測定では、上述の通り、試料8の表面に圧子14を振動させずに押し込み、その際の圧子14の変位量から求まる押し込み深さhと、押し込み荷重Pを逐次取得する。この押し込み荷重Pと押し込み深さhとの関係からO−P法を用いた解析より、弾性率Erを導出する。
続いて、試料8のナノ硬さHnに関し、水素脆化が顕在化する低歪み速度で水素の影響を測定するため、R−F法を適用してEC−NI測定を行う。このときの押し込み時間Δtは、低歪み速度を実現するために長時間とし、60min以上も可能である。R−F法を適用したEC−NI測定では、上述の通り、試料8に圧子14を押し込む際、任意波形発生器22により押し込み荷重Pに数百Hzの微小な振幅変調を付加し、接触剛性Sをロックインアンプ23により検出することにより、押し込み荷重Pと接触剛性Sを逐次取得する。更に、逐次取得した押し込み荷重P及び接触剛性S、並びに既知の弾性率Erを用い、上記(3)式により、圧子押し込み中の任意の荷重における圧痕投影面積Acと接触深さhcを求める。そして、上記(2)式により、圧痕投影面積Acからナノ硬さHnが得られる。要するに、R−F法を適用したEC−NI測定では、熱ドリフトを補正することができ、これにより、水素脆化が顕在化する低歪み速度で水素の影響を含むナノ硬さHnを精確に測定することが可能になる。
R−F法を適用したEC−NI測定の際、押し込み荷重Pに付加する振幅変調は、実用的には正弦波の振幅変調である。但し、矩形波の振幅変調であっても、三角波の振幅変調であってもよい。その変調の周波数は、10〜300Hzの範囲内である。周波数があまりに低いと、熱ドリフトが影響し再現性の高いデータが得られないからである。一方、あまりに高い周波数は、装置の能力上で難しいからである。より好ましくは、100〜200Hzの範囲内であり、実用的には、200Hzが好ましい。
また、R−F法を適用したEC−NI測定の際、押し込み荷重Pに付加する振幅変調の荷重振幅は、押し込み荷重Pの値の1〜10%の範囲内とする。あまりに小さい荷重振幅ではロックインアンプにより接触剛性を検出できないからである。一方、荷重振幅があまりに大きいと、押し込み荷重の精度が悪化するからである。実用的には、1〜3%の範囲内が好ましい。
なお、本実施形態の電気化学セル1は、NI測定時に圧子14の押し込みに伴って台座部3に荷重が負荷されるが、台座部3が剛性の高いAlN−BN複合体からなるため、圧子14の押し込み負荷に伴って台座部3の変形が生じることはなく、NI測定を正確に行うことができる。しかも、容器部2及び台座部3は、被削性に優れるAlN−BN複合体からなるので、複雑な形状でも成形することができる。
また、本実施形態の電気化学セル1は、容器部2の円形穴2aと電解液貯溜用凹部2bによって大量の電解液11を保持することができる。これにより、次の効果が得られる。低歪み速度で水素チャージをしながらのNI測定は、長時間になる。そうすると、NI測定中に電解液11が次第に蒸発して減少する。この点、本実施形態の電気化学セル1では、電解液11の初期量が大量であるので、NI測定中の電解液11の減少を許容することが可能となり、長時間にわたるNI測定であっても十分対応することができる。
しかも、台座部3に電極板収納用凹部3aが形成されているので、電解液11が仮にOリング10から漏れても、その電解液が電極板収納用凹部3aに溜まり、外部に漏出することはない。これにより、次の効果が得られる。電気化学セル1の下には、伝熱台12のように高電圧の装置が配備されているので、ここに電解液11がかかる事態が生じると電気短絡の危険がある。この点、本実施形態の電気化学セル1は、電解液11の外部への漏出がないため、安全性に優れる。
また、本実施形態の電気化学セル1では、容器部2と台座部3とを締結するためのネジ4の頭部がネジ収納用凹部2dに収納されるので、そのネジ4の頭部が容器部2の上面から突出しない。同様に、カウンター電極6及び参照電極7それぞれからの配線6a、7aが配線収納用溝部2e、2fに収納されるので、それらの配線6a、7aが容器部2の上面から突出しない。これにより、次の効果が得られる。NI測定用の圧子14の長さは、測定精度を確保するために短い。そうすると、NI測定中に圧子14の押し込みに伴って、圧子14を把持するヘッドが容器部2の上面に接近する。この点、本実施形態の電気化学セル1では、ネジ4の頭部や各電極6、7からの配線6a、7aが、容器部2の上面から突出しないので、それらと圧子14を把持するヘッドとの干渉を防止することができる。
その他、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。例えば、容器部2の側面に、電解液貯溜用凹部2bまで貫通するように、電解液注入用ポート及び電解液排出用ポートを設けても構わない。これにより、電解液注入用ポートを通じて電解液貯溜用凹部2bに電解液11を注入したり、電解液排出用ポートを通じて電解液貯溜用凹部2bから電解液11を排出することが可能になるため、電解液11の注入、排出を適時行え、長時間にわたるNI測定への対応に有用である。
もっとも、本実施形態のNI試験装置に組み込まれる電気化学セルは、R−F法の適用が可能である限り、前記非特許文献1、2に提案されるものであっても構わない。
本発明のEC−NI試験装置は、試料を保持し、この試料の表面に電気化学的に水素を導入する電気化学セルと、水素が導入されている過程で試料の表面に押し込まれる圧子と、圧子の押し込み荷重及び押し込み時間を制御するコントローラと、荷重発生器、及び押し込み荷重と圧子の変位の検出器であるトランスデューサと、押し込み荷重に振幅変調を付加する任意波形発生器と、接触剛性を検出するロックインアンプと、試料のナノ硬さを算出する演算装置と、を備えるので、上述の通り、水素脆化が顕在化する低歪み速度で水素の影響を含むナノ硬さを精確に測定することが可能になる。
また、本発明のEC−NI試験方法は、試料の表面に電気化学的に水素を導入しながら、試料の表面に圧子を押し込む際に、任意波形発生器により圧子の押し込み荷重に振幅変調を付加し、発生した圧子の変位の振幅変調から、ロックインアンプにより接触剛性を検出し、押し込み荷重と接触剛性を逐次取得して、ナノ硬さを算出する構成であるので、上述の通り、水素脆化が顕在化する低歪み速度で水素の影響を含むナノ硬さを精確に測定することが可能になる。
本発明のEC−NI試験装置及びその試験方法は、水素脆化のメカニズムを解明するために有効に利用できる。
1:電気化学セル、 2:容器部、 2a:円形穴、
2b:電解液貯溜用凹部、 2c:ネジ挿入穴、 2d:ネジ収納用凹部、
2e、2f:配線収納用溝部、
3:台座部、 3a:電極板収納用凹部、 3b:ネジ穴、
4:ネジ、 5:電極板、 5a:電極板の端子、
6:カウンター電極、 6a:配線、 6b:端子、
7:参照電極、 7a:配線、 7b:端子、
8:試料、 9:スペーサー、 10:Oリング、 11:電解液、
12:伝熱台、 13:クリップ、 14:圧子、
20:コントローラ、 21:演算装置、 22:任意波形発生器、
23:ロックインアンプ、 24:トランスデューサ

Claims (3)

  1. (I)電気化学ナノインデンテーション法による試験装置であって、
    試料を保持し、この試料の表面に電気化学的に水素を導入する電気化学セルと、
    水素が導入されている過程で前記試料の前記表面に押し込まれる圧子と、
    前記圧子の押し込み荷重及び押し込み時間を制御するコントローラと、
    荷重発生器、及び前記押し込み荷重と前記圧子の変位の検出器であるトランスデューサと、
    前記押し込み荷重に振幅変調を付加する任意波形発生器と、
    接触剛性を検出するロックインアンプと、
    前記試料のナノ硬さを算出する演算装置と、を備え、
    前記圧子を前記試料に押し込む際に、前記押し込み荷重に振幅変調を付加する、電気化学ナノインデンテーション装置。
  2. 電気化学ナノインデンテーション法による試験方法であって、
    試料の表面に電気化学的に水素を導入しながら、前記試料の前記表面に圧子を押し込む際に、任意波形発生器により前記圧子の押し込み荷重に振幅変調を付加し、発生した圧子の変位から、ロックインアンプにより接触剛性を検出して、逐次取得された押し込み荷重と接触剛性からナノ硬さを算出する、電気化学ナノインデンテーション試験方法。
  3. 請求項2に記載の試験方法であって、
    前記圧子の押し込み時間を60分以上とし、前記振幅変調の周波数を10〜300Hzの範囲内とする、電気化学ナノインデンテーション試験方法。
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