JP2015051639A - 水性インクジェット受理溶液、この受理溶液を含むインクセット及びこのインクセットを用いたインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インクジェット受理溶液、この受理溶液を含むインクセット及びこのインクセットを用いたインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】水性インクジェット記録方式に求められる特性、とりわけ、ノズルの目詰まりを防ぎ、保存安定性が高まる水性インクジェット受理溶液、及びこの受理溶液を含むインクセットを提供する。
【解決手段】本発明の受理溶液は、(A)炭素数が3以上の有機酸塩と、(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩と、(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤と、(D)水とを含有し、(A)成分及び(B)成分の少なくとも一方は多価金属塩である。(A)成分は特に限定されないが、カルボン酸塩が好ましく、パントテン酸、プロピオン酸又は乳酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、アルミニウム塩、ホウ素塩又は亜鉛塩等が挙げられる。(B)成分も限定されないが、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩又はこれらの混合塩が好ましい。(C)成分は多価アルコール、特に、両末端が同時に水酸基ではないアルカンジオールが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性インクジェット受理溶液、この受理溶液を含むインクセット及びこのインクセットを用いたインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を紙等の記録媒体に直接吐出し、付着させて文字や画像を得る記録方式である。この記録方式は、小型化、高速化、低騒音化、省電力化、カラー化が容易であり、しかも記録媒体に対して非接触印刷が可能であることから、家庭用途のみならず、オフィス用途、商業印刷用途にまで適用範囲が拡大している。
インクジェット記録に使用されるインクとして、各種の水溶性染料を水、又は水と有機溶剤との混合液に溶解させた水性染料インクが広く用いられている。しかしながら、普通紙や再生紙等、広く一般に用いられる紙に対して水性染料インクを噴出すると、インクが紙繊維に吸収されるとともに、着弾位置の周囲に広がり、フェザリングと呼ばれるにじみが生じ得る。この課題を解決するために、記録媒体の表面に水性染料インクを吸収、受理する受理層を形成したインクジェット専用紙が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、オフィス用途や商業印刷用途では印字物自身のコストを抑えなければならず、記録媒体としては、印字適性を高めるような特別な処理が行われていない安価なコピー紙等の非塗工紙が使用されることが多い。
そこで、染料がアニオン性であることに着目し、記録媒体に水性染料インクを吐出するのに先立ち、多価金属塩を含む受理溶液を記録媒体に吐出し、その後、受理溶液上に水性染料インクを吐出することが提案されている(例えば、特許文献4〜6参照)。また、近年では、水性染料インクに比べてフェザリングを抑えられる点で、水性染料インクのみならず、水性顔料インクも広く用いられているが、水性顔料インクにおいても、上記受理溶液を用いて定着できることが知られている(例えば、特許文献7参照)。
中でも、2価以上のカルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩及び亜鉛塩から選択される1種又は2種以上の、水への溶解度が0.1モル/リットル以上である金属塩を水性溶媒に溶解した受理溶液を、記録媒体の少なくともインクジェットインクを用いて印刷する面又は全面に付着させ、該金属塩付着部上に、少なくとも顔料、樹脂エマルション及び界面活性剤を含有する水系溶媒からなるインクジェットインクで、該顔料表面に少なくとも1つのP−O又はP=O結合を有するリン含有基が結合しているインクジェットインクを用いて印刷することが提案されている(例えば、特許文献8参照)。特許文献8に記載の発明によると、フェザリング、ブリーディングを顕著に抑制して鮮明な画像が得られる。また、特許文献8には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールトリエタノールアミン等の高沸点有機溶媒を受理溶液の溶剤にすることで、受理溶液をインクジェット方式で付着できることが開示されている。
また、記録媒体上に無色インクと顔料を含有する有色インクを射出し、該無色インクと該有色インクが混合することにより該顔料の凝集又は混合したインクの粘度上昇が生じるインクジェット記録方法において、無色インクとして、水のほかに1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール又は1,2−ヘキサンジオールを併用することで、水分が蒸発したときの粘度上昇が低く、水分の蒸発にともなう粘度上昇を抑えることができ、デキャップ特性がより良好になることが提案されている(例えば、特許文献9参照)
特開昭57−069054号公報 特開平6−143797号公報 特開2009−178912号公報 特開昭63−299970号公報 特開平5−202328号公報 特開2001−162920号公報 特開平11−034478号公報 特開2012−051357号公報 特開2010−046810号公報
しかしながら、インクジェットヘッドの微細なノズル近傍では、ノズル開口部に付着したインク組成物やノズル内部のインク組成物が乾燥し易いため、特許文献4〜9に記載の発明では、反応液(受理溶液)に含まれていた多価金属塩が析出し、インクジェットヘッドにおけるノズル詰まり又はインクジェット記録装置における反応液の流路の閉塞が起こり得る。そのため、特許文献4〜9に記載の発明では、ノズルの目詰まりについて、さらなる改良の余地がある。また、一般的に、時間の経過とともに受理溶液が劣化するといわれており、保存安定性を高め、受理溶液の劣化を抑えることが求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、水性インクジェット記録方式に求められる特性、とりわけ、ノズルの目詰まりを防ぎ、かつ、保存安定性を高めることの可能な水性インクジェット受理溶液、及びこの受理溶液を含むインクセットを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねたところ、受理溶液に含まれる金属塩の組成を特定の組成にすることで、フェザリングの防止のみならず、ノズルの目詰まり防止及び保存安定性の向上に寄与できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、特許文献8等に開示されるように、フェザリングの防止効果を高めるために受理溶液に含まれる金属塩の組成を検討し、特許文献8及び9等に開示されるように、ノズルの目詰まりを防止するために溶剤の種類を検討することは従来から行われていたが、本発明者は、受理溶液に含まれる金属塩を特定の組成にすることでフェザリングの防止だけでなく、ノズルの目詰まり防止及び保存安定性の向上にも寄与できることを初めて見出した。具体的には、本発明では、以下のようなものを提供する。
(1)本発明は、(A)炭素数が3以上の有機酸塩と、(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩と、(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤と、(D)水とを含有し、前記(A)成分及び前記(B)成分の少なくとも一方は多価金属塩である水性インクジェット受理溶液である。なお、以下では、「(A)炭素数が3以上の有機酸塩」を「(A)成分」ともいい、「(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩」を「(B)成分」ともいい、「(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤」を「(C)成分」ともいい、「(D)水」を「(D)成分」ともいう。
(2)また、本発明は、前記多価金属塩がカルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、アルミニウム塩、ホウ素塩、亜鉛塩又はこれらの混合塩から選択される、(1)に記載の水性インクジェット受理溶液である。
(3)また、本発明は、前記(A)成分がカルボン酸塩である、(1)又は(2)に記載の水性インクジェット受理溶液である。
(4)また、本発明は、前記(A)成分がパントテン酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩又はこれらの混合塩から選択される、(3)に記載の水性インクジェット受理溶液である。
(5)また、本発明は、前記(B)成分が塩化物、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩又はこれらの混合塩から選択される、(1)から(4)のいずれかに記載の水性インクジェット受理溶液である。
(6)また、本発明は、前記(C)成分が多価アルコールである、(1)から(5)のいずれかに記載の水性インクジェット受理溶液である。
(7)また、本発明は、前記多価アルコールは両末端が同時に水酸基ではないアルカンジオールである、(6)に記載の水性インクジェット受理溶液である。
(8)また、本発明は、(1)から(7)のいずれかに記載の水性インクジェット受理溶液と、色材を含有する水性インクと、を含有する水性インクジェット用インクセットである。
(9)また、本発明は、(8)に記載の水性インクジェット用インクセットを用いて記録媒体にインクジェット方式で記録する方法であって、前記インクジェット受理溶液を前記記録媒体の表面にインクジェット方式で吐出した後に、前記水性インクをインクジェット方式で吐出する、インクジェット記録方法である。
本発明によれば、水性インクジェット記録方式に求められる特性、とりわけ、ノズルの目詰まりを防ぎ、かつ、保存安定性を高めることの可能な水性インクジェット受理溶液、及びこの受理溶液を含むインクセットを提供できる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
<水性インクジェット受理溶液>
本発明の水性インクジェット受理溶液(以下単に「受理溶液」ともいう)は、少なくとも(A)炭素数が3以上の有機酸塩と、(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩と、(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤と、(D)水とを含有し、上記(A)成分及び上記(B)成分の少なくとも一方は多価金属塩である。
[(A)炭素数が3以上の有機酸塩]
本発明の受理溶液は、(B)成分だけでなく、(A)炭素数が3以上の有機酸塩を含有する。(A)成分を含有せず、(B)成分だけを含有する場合、(B)成分は、(D)成分である水への溶解性は高いが、(C)成分である高沸点水溶性有機溶剤への溶解性がほとんどない。しかしながら、受理溶液をインクジェット方式で吐出する場合、受理溶液の粘度を吐出に適した粘度にしなければならず、そのためには、溶媒として、水だけでなく、高沸点水溶性有機溶剤も用いなければならない。このため、ブリーディングやフェザリングを有効に防止するために(B)成分を多く加えると、(D)成分の揮発に伴い、(B)成分が析出する可能性がある。本発明では、(B)成分だけでなく(A)成分も用いているため、溶媒中に十分な量の塩を加えることができ、結果として、受理溶液と水性インクとからなるインクセットにおいて、これら受理溶液と水性インクとの両方をインクジェット方式に適用しても、ブリーディングやフェザリングを有効に防止できる。
なお、本明細書において、ブリーディングとは、異なる色間の隣接する境界部で色が混ざって不鮮明になる状態をいい、フェザリングとは、主に非塗工紙において印字部が髭状に滲む状態をいう。
また、インクジェットヘッドの微細なノズル近傍では、受理溶液に含まれる水の一部が蒸発することによって、金属塩の析出物が生じがちであるが、本発明の受理溶液は、受理溶液に含まれる水の一部が蒸発する場合であっても、(C)成分である高沸点水溶性有機溶剤は蒸発しない。そして、本発明では、上記(A)成分と(B)成分とを併用することにより、(A)成分を含有せず、(B)成分だけをブリーディングやフェザリングを有効に防止できる量含有する受理溶液に比べ、受理溶液を開放放置し、受理溶液に含まれる水の一部が蒸発した場合であっても、受理溶液に含まれる(B)成分が析出することを防止し、吐出性を良好な状態に維持することができる。また、(A)成分のみを、ブリーディングやフェザリングを有効に防止するために多量に含有する受理溶液では、受理溶液の粘度が高くなりすぎたり、ノズル近傍で微細液滴の粘度が上昇したりすることによる吐出性の悪化や、過剰な(A)成分が長期保存する間に析出して保存安定性が悪化することによるインクジェットヘッドにおけるノズル詰まり又はインクジェット記録装置における受理溶液の流路の閉塞が起こるおそれがある。本発明では、(A)成分と(B)成分とを含有することにより、このような不具合を防止することができる。
(A)成分を構成する酸は炭素数が3以上の有機酸であり、カルボン酸であることが好ましい。炭素数が3以上のカルボン酸であると、(C)成分である高沸点水溶性有機溶剤に(A)成分を溶かすことがより容易になり、(D)成分が蒸発したときに塩が析出しにくくなるため、好ましい。
(A)成分を構成する有機酸は、炭素数が3以上の有機酸であれば、特に限定するものではないが、有機酸塩の20℃における水への溶解度が0.1モル/リットル以上であり、かつ、20℃における1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)への溶解度が0.01モル/リットル以上であることが好ましく、例えば、パントテン酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、o-安息香酸スルフィミド(サッカリン)、アスコルビン酸等が挙げられる。さらに好ましい有機酸の例としては、溶解性と安定性が良好で、ブリーディングやフェザリングを有効に防止できる点から、パントテン酸、プロピオン酸、乳酸が挙げられる。表1は、これらの酸のカルシウム塩の一例として、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、乳酸カルシウムについての20℃における水及び1,2−プロパンジオールへの溶解度を示す。これらの有機酸の塩は、いずれも、20℃における水への溶解度が0.1モル/リットル以上であり、20℃における1,2−プロパンジオールへの溶解度が0.01モル/リットル以上である。
Figure 2015051639
とりわけ、パントテン酸又はプロピオン酸のカルシウム塩を(A)成分にすることが、フェザリング及びブリーディングを効果的に抑制できる点で好ましい。なお、(A)成分は1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
(A)成分の濃度は、水性インクに含まれる色材との反応性、印刷品質、塗布方式等により適当な濃度範囲となるように適宜決定することができるが、好ましくは0.01〜0.5モル/リットル、より好ましくは0.05〜0.2モル/リットル程度である。なお、単位:モル/リットルは、受理溶液1リットルに対する(A)成分のモル数をいう。(A)成分の濃度が0.01モル/リットル未満であると、フェザリングやブリーディングを効果的に抑制できないため、好ましくない。(A)成分の濃度が0.5モル/リットルを超えると、(A)成分を(C)成分や(D)成分に十分に溶かすことができず、受理溶液に含まれていた塩が析出したり、受理溶液の粘度が高くなりすぎたり、ノズル近傍で微細液滴の粘度が上昇したりすることによる吐出性の悪化や、過剰な(A)成分が長期保存する間に析出して保存安定性が悪化することによるインクジェットヘッドにおけるノズル詰まり又はインクジェット記録装置における受理溶液の流路の閉塞が起こり得るため、好ましくない。
[(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩]
本発明の受理溶液は、(A)成分だけでなく、(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩を含有する。表2に示すとおり、(B)成分の水への溶解度は(A)成分の水への溶解度(表1参照)に比べて高いため、(A)成分だけをフェザリングを有効に防止できる量含有する受理溶液に比べ、受理溶液を長期間にわたって保存した場合であっても、受理溶液に含まれる塩が析出することを防止できる。すなわち、本発明の受理溶液は、(A)成分だけでなく、(B)成分を含有するため、受理溶液の保存安定性を高めることができる。
Figure 2015051639
(B)成分を構成する無機酸として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。中でも、水への溶解度が高い点で、塩化物、硝酸塩、又は硫酸塩が好ましく、塩化物、又は硝酸塩がより好ましい。
(B)成分を構成する有機酸としては、炭素数が2以下のカルボン酸、具体的には、ギ酸、酢酸が挙げられる。(B)成分は、水への溶解性は高いが、多価アルコールへの溶解性が非常に低く、1,2−プロパンジオールへの溶解度は0.01モル/リットル未満である。
(B)成分の濃度は、水性インクに含まれる色材との反応性、印刷品質、塗布方式等により適当な濃度範囲となるように適宜決定することができるが、好ましくは0.005〜2.0モル/リットル、より好ましくは0.01〜1.0モル/リットル程度である。なお、単位:モル/リットルは、受理溶液1リットルに対する(B)成分のモル数をいう。(B)成分の濃度が0.005モル/リットル未満であると、フェザリングやブリーディングを効果的に抑制できないため、好ましくない。(B)成分の濃度が2.0モル/リットルを超えると、受理溶液を開放放置した場合に、受理溶液に含まれる塩が析出する可能性があるため、好ましくない。
(A)成分及び(B)成分は、1価又は多価の金属イオンと陰イオンとから構成される。1価の金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウウイオン、カリウムイオン等が挙げられる。多価金属イオンとしては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、チタンイオン、鉄(II)イオン、鉄(III)イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、銅イオン、亜鉛イオン、バリウムイオン、ストロンチウムイオン等が挙げられる。(A)成分及び(B)成分のうち少なくとも一方は、1価の金属イオンでなく、多価の金属イオンであることによって、高い画像改善効果が得られる。さらに(A)成分及び(B)成分の両方に多価の金属イオンが含まれることによって、さらに高い画像改善効果が得られる。
前記の多価金属イオンは、とりわけ、水への溶解度が高い点で、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、又はホウ素塩、より好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、又は亜鉛塩から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。水への溶解度が低いと、金属イオンの、水性インクに含まれる色材との反応性が不十分となり、フェザリングやブリーディングを有効に防止できない可能性がある。
(A)成分と(B)成分とのモル比A/Bは、0.05以上10以下であることが好ましく、0.05以上5.0以下であることがより好ましく、0.05以上3.0以下であることがさらに好ましい。A/Bが0.05未満であると、(B)成分の量が多すぎるため、受理溶液を開放放置した場合に、受理溶液に含まれる塩が(D)成分である水から析出してノズル詰まりが起こる可能性があるため、好ましくない。A/Bが10を超えると、(A)成分の量が多すぎるため、受理溶液に含まれていた塩が析出したり、受理溶液の粘度が高くなりすぎたり、ノズル近傍で微細液滴の粘度が上昇したりすることによる吐出性の悪化や、過剰な(A)成分が長期保存する間に析出して保存安定性が悪化することによる、インクジェットヘッドにおけるノズル詰まり又はインクジェット記録装置における受理溶液の流路の閉塞が起こり得るため、好ましくない。(A)成分と(B)成分とのモル比A/Bが上記範囲であることにより、フェザリングやブリーディングを効果的に抑制でき、ノズルの目詰まりや塩の析出を抑制できる。
[(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤]
本発明の受理溶液は、(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤を含有する。(C)成分を含有することで、水分の蒸発にともなう粘度上昇を抑えることができ、受理溶液がノズルで乾燥して、増粘あるいは固化することによって目詰まりが起きることを防止することができる。
高沸点水溶性有機溶剤は多価アルコールであることが好ましく、炭素原子数が2〜8である多価アルコールがより好ましく、炭素原子数が3〜6である多価アルコールがさらに好ましい。多価アルコールの例として、1,2−エタンジオール(エチレングリコール、沸点:197.3℃)、2,2’−オキシジエタノール(ジエチレングリコール、沸点:244.3℃)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール、沸点:188.2℃)、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール、沸点:210〜212℃)、1,2,3−プロパントリオール(グリセリン又はグリセロール、沸点:290℃)、1,2−ブタンジオール(沸点:191℃)、1,2−ペンタンジオール(沸点:206℃)、1,3−ブタンジオール(沸点:207.5℃)、1,2−ヘキサンジオール(沸点:223〜224℃)、ジプロピレングリコール(沸点:232℃)、トリエチレングリコール(沸点:285℃)、トリプロピレングリコール(沸点:268℃)、テトラエチレングリコール(沸点:314℃)、1,4−ブタンジオール(沸点:230℃)、1,5−ペンタンジオール(沸点:242℃)、1,6−ヘキサンジオール(沸点:250℃)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(沸点:197.5℃)、3−メチル−1,3−ブタンジオール(沸点:202.5℃)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(沸点:250℃)、の他、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン共重合体、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール等のトリオール類、エリスリトール、ペンタエリスリトール、メソエリスリトール等の4価アルコール類、キシリトール等のペンチトール類、ソルビトール、マンニトール等のヘキシトール類等を挙げることができる。炭素原子数が2〜8である多価アルコールの例として、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、2,2’−オキシジエタノール(ジエチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,2,3−プロパントリオール(グリセリン又はグリセロール)、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、メソエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等を挙げることができる。炭素原子数が3〜6である多価アルコールの例として、2,2’−オキシジエタノール(ジエチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,2,3−プロパントリオール(グリセリン又はグリセロール)、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、メソエリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等を挙げることができる。
上記多価アルコール以外の高沸点水溶性有機溶剤としては、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル)エーテル、ジプロピレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n−ブチル,イソブチル)エーテル等のモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン類、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素複素環化合物、γ−ブチロラクトン、スルホラン等の環状化合物等が挙げられる。
中でも、(C)成分の一部に、両末端が同時に水酸基ではないアルカンジオールを含有することが特に好ましい。両末端が同時に水酸基ではないアルカンジオールは、水や他の有機溶剤との混和性が良好であり、さらに(A)成分を溶解することが可能であることから、(C)成分の一部に両末端が同時に水酸基ではないアルカンジオールを含有することが好ましい。
両末端が同時に水酸基ではないアルカンジオールとしては、下記一般式(1)及び一般式(2)で表されるアルカンジオールが挙げられる。
一般式(1):R−CH(OH)−CH(OH)−CH−R
一般式(2):R−CH(OH)−CH−CH(OH)−R
(式中、R及びRは水素原子又はアルキル基を表す。R及びRは同一であってもよいし、異なってもよい。)
具体的には、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオールが挙げられる。
(C)成分の量は、受理溶液がノズルで乾燥して、増粘あるいは固化することによって目詰まりが起きることを防止することができるように適宜決定すればよいが、受理溶液100質量部に対して5質量部以上80質量部以下であることが好ましく、20質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。(C)成分の量が5質量部未満であると、受理溶液の湿潤性が不十分で、インクジェットヘッドのノズル部分やインクジェット記録装置内で受理溶液が乾燥固化する可能性があるため、好ましくない。(C)成分の量が80 質量部を超えると、(D)成分である水の量が少なすぎるため、インクジェットヘッドやインクジェット記録装置に限らず、受理溶液の保管時において、(A)成分及び(B)成分(とりわけ(B)成分)が析出する可能性があり、好ましくない。
[(D)水]
本発明の受理溶液は、(D)水を含有する。水は、受理溶液の流動性を高めるとともに、(A)成分及び(B)成分を受理溶液中に溶解させるために用いられる。水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を使用することが好ましい。
[(E)その他の成分]
受理溶液は、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、界面活性剤、pH調整剤、表面張力調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤等が挙げられる。粘度調整剤として、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性樹脂等が挙げられる。
界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン(シリコン)系界面活性剤等が好ましく用いられる。
アニオン性界面活性剤としては、エマール、ラテムル、ペレックス、ネオペレックス、デモール(いずれも、花王社製)、サンノール、リポラン、ライポン、リパール(いずれも、ライオン社製)等が挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、ノイゲン、エパン、ソルゲン(いずれも、第一工業製薬社製)エマルゲン、アミート、エマゾール(いずれも、花王社製)、ナロアクティー、エマルミン、サンノニック(いずれも、三洋化成工業社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、メガファックF−114、F−410、F−440、F−447、F−553、F−556(DIC社製)、サーフロンS−211、S−221、S−231、S−233、S−241、S−242、S−243、S−420、S−661、S−651、S−386(AGCセイミケミカル社製)、等が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール104、82、420、440、465、485、TG、2502、ダイノール604、ダイノール607(いずれも、アセチレングリコール系界面活性剤;エアープロダクツ社製)、オルフィンE1004、E1010、PD004、EXP4300(いずれも、アセチレングリコール系界面活性剤;日信化学工業社製)、アセチレノールEH、E40、E60、E81、E100、E200(いずれも、アセチレングリコール系界面活性剤;川研ファインケミカル社製)等が挙げられる。
シリコーン(シリコン)系界面活性剤としては、例えば、FZ−2122、FZ−2110、FZ−7006、FZ−2166、FZ−2164、FZ−7001、FZ−2120、SH 8400、FZ−7002、FZ−2104、8029 ADDITIVE、8032 ADDITIVE、57 ADDITIVE、67 ADDITIVE、8616 ADDITIVE(いずれも、東レ・ダウコーニング社製)、KF−6012、KF−6015、KF−6004、KF−6013、KF−6011、KF−6043、KP−104、110、112、323、341、6004(いずれも、信越化学社製)、BYK―300/302、BYK−306、BYK−307、BYK−320、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−345/346、BYK−347、BYK−348、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−310、BYK−315、BYK−370、BYK−UV3570、BYK−322、BYK−323、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N/361N、BYK−380N、BYK−381、BYK−392、BYK−340、BYK−Silclean3700、BYK―Dynwet800(いずれも、ビックケミー社製)等が挙げられる。
これらの界面活性剤は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。界面活性剤の含有量は、インク混和性や洗浄性、流路内壁への濡れ性、インクジェット吐出性に合わせて適宜調整される。
また、受理溶液は、上記(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤とは異なる各種の有機溶剤を併用してもよい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンタノール等の炭素数1〜5のアルキルアルコール類、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−n−ブタノール等の1価のアルコール類、1−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、3−メトキシプロパンアミド、3−ブトキシプロパンアミド、N,N−ジメチル−3−メトキシプロパンアミド、N,N−ジブチル−3−メトキシプロパンアミド、N,N−ジブチル−3−ブトキシプロパンアミド、N,N−ジメチル−3−ブトキシプロパンアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、イソブチレングリコール等のジオール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ヘキシル、2−エチルヘキシル)エーテル、プロピレングリコールモノメチル(又はエチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル)エーテル、等のモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコールのジアルキルエーテル類、モノエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアミン類、含窒素複素環化合物、環状エステル化合物、乳酸エチル、乳酸メチル等のエステル類等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は、単独でも又は混合物としても使用することができる。
<表面張力>
受理溶液の表面張力は、部材表面への濡れ性や、インクとの混和性の観点から、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましく、30mN/m以下が更に好ましい。受理溶液をインクジェット法により吐出させる場合には、吐出ヘッドからの受理溶液の吐出安定性を良好にする点から、前記受理溶液の表面張力を20mN/m以上とすることが好ましい。受理溶液の表面張力は、上記の有機溶剤及び上記界面活性剤を適宜選択することにより調整することができる。なお、本発明における表面張力は、測定温度25℃にてWilhelmy法(協和界面科学製 型式:CBVP−Z)で測定された値である。
<水性インクジェット用インクセット>
本発明の水性インクジェット用インクセット(以下単に「インクセット」ともいう)は、上記受理溶液と、色材を含有する水性インクとを含有する。
水性インクは、インクジェット用として用いられる水性インクであれば、どのようなものであってもよく、染料系であってもよいし、顔料系であってもよいが、印字物の耐水性や耐光性等の耐性が良好である顔料系インクを使用することが好ましい。
〔水性顔料インク〕
[顔料]
本発明において水性顔料インクの顔料は特に限定されず、従来インクジェットインクに使用されている有機顔料又は無機顔料等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的な有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染料からの誘導体、フタロシアニン系有機顔料、キナクリドン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、ジオキサジン系有機顔料、ニッケルアゾ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系有機顔料、イソインドリン系有機顔料、キナクリドン系固溶体顔料、ペリレン系固溶体顔料等の有機固溶体顔料、その他の顔料として、カーボンブラック等が挙げられる。
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーで例示すると、
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、20、24、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、213、214、
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48、49、52、53、57、97、112、122、123、149、168、177、180、184、192、202、206、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、64、71、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、
C.I.ピグメントグリーン7、36、58、
C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が挙げられる。
また、前記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、合成マイカ、アルミナ、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、無機固溶体顔料等を挙げることができる。
また、本発明において顔料は、記録媒体表面への定着性の点から、自己分散型の顔料を用いることができる。自己分散型の顔料とは、顔料表面に直接、親水性基を修飾させた顔料をいう。自己分散型の顔料に用いられる親水性基としては、受理溶液の2価の金属塩との相互作用が強く、顔料定着性に優れる点から、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホニル基、スルホン酸基、リン含有基等が好ましい。中でも、カルボキシル基、スルホン酸基、リン含有基が好ましく、少なくとも1つのP−O又はP=O結合を有するリン含有基を有する自己分散型の顔料を用いることがさらに好ましい。
自己分散型の顔料は、上記有機顔料、又は上記無機顔料に、従来公知の方法で、上記親水性基を導入することにより得られる。
顔料に、P−O又はP=O結合を有するリン含有基を導入する方法は、例えば、米国特許第5,554,739号明細書、第5,707,432号明細書、第5,837,045号明細書等の記載された方法とすることができる。
顔料の平均分散粒径は、所望の発色が可能なものであればよく、特に限定されない。用いる顔料の種類によっても異なるが、顔料の分散性及び分散安定性が良好で、充分な着色力を得る点から、数平均粒子径が5〜200nmの範囲内であることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。数平均粒子径が上記の上限値以下であれば、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを起こしにくく、再現性の高い均質な画像を得ることができ、得られる印刷物を高品質のものとすることができる。数平均粒子径が上記の下限値以下の場合には耐光性が低下する場合がある。なお、本発明において、顔料の数平均粒子径は、測定温度25℃にて濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製、型式:FPAR−1000)を用いて測定したものである。
市販の自己分散顔料としては、キャボット製の「Cab−O−Jet400、Cab−O−Jet450C、Cab−O−Jet465M、Cab−O−Jet470Y、Cab−O−Jet480V、Cab−O−Jet740Y、Cab−O−Jet300、Cab−O−Jet200、Cab−O−Jet250、Cab−O−Jet260、Cab−O−Jet270」、オリエント化学工業(株)製の「Microjet black CW1、Microjet black CW2」、東海カーボン(株)製の「Aqua−Black 162、Aqua−Black 001」等が挙げられる。
本発明において、顔料の含有量は適宜調整されればよい。顔料の種類によっても異なるが、インクジェットインク全体における、顔料の含有量は、分散性と着色力を両立する点から、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
また、本発明においては、顔料を界面活性剤や分散剤等によって水性溶媒中に分散させた顔料分散体も、使用することができる。後述する具体例に限定されることなく、公知の方法によって適宜調整することができる。
[顔料分散剤]
本発明において、顔料分散剤は特に限定されない。例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン(シリコン)系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
高分子分散剤としては、例えば、ポリエステル系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリアミン系、ポリカプトラクトン系の主鎖を有し、側鎖に、アミノ基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の極性基を有する分散剤等が挙げられる。このような高分子分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類;スチレン、αメチルスチレン等の芳香族ビニル化合物とアクリル酸エステル等の不飽和カルボン酸エステルの共重合体類;ポリアクリル酸等の不飽和カルボン酸の(共)重合体の(部分)アミン塩、(部分)アンモニウム塩や(部分)アルキルアミン塩類;水酸基含有ポリアクリル酸エステル等の水酸基含有不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体やそれらの編成物;ポリウレタン類;不飽和ポリアミド類;ポリシロキサン類;長鎖ポリアミノアミドリン酸塩類;ポリエチレンイミン誘導体(ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離カルボキシル基含有ポリエステルとの反応により得られるアミドやそれらの塩基);ポリアリルアミン誘導体(ポリアリルアミンと、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミド又はエステルとアミドの共縮合物(ポリエステルアミド)の3種の化合物の中から選ばれる1種以上の化合物とを反応させて得られる反応生成物)等が挙げられる。高分子分散剤としては、中でも、不飽和カルボン酸エステルの(共)重合体類であることが、フェザリング及びブリーディングを抑制する点から好ましい。具体例として、SARTOMER社製「SMA1440」(スチレン−マレイン酸−マレイン酸エステル系高分子分散剤 重量平均分子量7,000、酸価185mgKOH/g)、BASFジャパン社製「ジョンクリル682」(スチレン−アクリル酸系高分子分散剤,重量平均分子量:1,700,酸価238mgKOH/g)、岐阜セラック社製「RY72」(スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル系高分子分散剤,重量平均分子量:14,800,酸価:170mgKOH/g)等が挙げられる。
本発明においては、上記の顔料分散剤を1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。本発明において、顔料分散剤を用いる場合、顔料の種類によっても異なるが、顔料100質量%に対して顔料分散剤は、分散性及び分散安定性の点から、5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。さらに、分散された顔料の数平均粒子径が5〜200nmの範囲内であることが好ましく、30〜150nmであることがより好ましい。
[樹脂]
インクジェットインクに用いられる樹脂は、顔料の前記記録媒体への浸透を抑制して、当該記録媒体の表面への顔料の定着を促進するものである。当該樹脂としては、定着性に優れ、印刷物の耐水性に優れる点から樹脂エマルションが好ましい。
本発明において樹脂エマルションとは、連続相が水であり、分散粒子が樹脂微粒子である水性分散液を意味する。上記樹脂エマルションは、一般に連続相である水が蒸発や浸透等により減少すると、増粘・凝集する性質を持ち、顔料の印刷用紙への浸透を抑制して該用紙への定着を促進する効果を有する。
樹脂エマルションは、例えば、水と、モノマーと、乳化剤と、重合開始剤とを混合して乳化重合反応させ、反応後に中和させて製造することができる。乳化剤としては、通常の高分子型界面活性剤を用いても良く、不飽和結合を有する反応性乳化剤を用いても良い。また、樹脂エマルションは、乳化重合反応させることなく、樹脂微粒子を、界面活性剤と共に、水と混合することによっても得ることができる。例えば、(メタ)アクリル酸エステルまたはスチレンと(メタ)アクリル酸エステルからなる樹脂微粒子及び界面活性剤を水中に添加して混合することにより得ることができる。この場合、樹脂成分と界面活性剤との混合割合(重量比)は、通常10:1〜5:1程度が好ましく、界面活性剤の使用量が該範囲より少ないとエマルションが形成しづらくなり、一方、前記範囲より多いと、インクの耐水性が低下するおそれがあり、好ましくない。
樹脂エマルションを構成する樹脂成分の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン(シリコン)樹脂、アクリルアミド樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル酸のような酸基を含有する樹脂、あるいはこれらの混合形であることが好ましい。特に、樹脂微粒子に(メタ)アクリル樹脂を含むことが好ましい。これら樹脂は、共重合の形態が特に限定されるものではなく、例えばブロックコポリマー、ランダムコポリマー等とすることができる。樹脂エマルションの重量平均分子量は、1,000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜1,000,000であることがより好ましい。インクジェットインク中の樹脂エマルションの含有量としては、特に限定されるものではないが、樹脂エマルションの固形分の含有量が、インクジェットインク全量に対して、例えば0.05〜20質量%程度とすることができる。
これらの樹脂成分としては、親水性部分と疎水性部分とを併せ持つ重合体が好ましく、また、その数平均粒子径はエマルションを形成できれば特に限定されないが、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、更に100nm以下がより好ましい。樹脂エマルションを構成する樹脂成分の数平均粒子径が500nmより大きく、顔料粒子径との差が大きくなると、インクジェットインクから吐出されて基材上に画像を形成する際に、樹脂エマルション粒子から形成される樹脂粒子同士が接触してその隙間に顔料粒子が存在するようになり、海島構造を形成し、顔料の定着性が阻害されるおそれがある。
[水性溶媒]
水性顔料インクに用いられる水性溶媒としては、水及び水溶性有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒は、前記受理溶液において例示された水溶性有機溶媒と同様のものとすることができる。水及び水溶性有機溶媒は、単独でもまたは混合物としても使用することができる。
[界面活性剤]
水性顔料インクに用いられる界面活性剤としては、前記受理溶液において例示された界面活性剤と同様のものとすることができる。界面活性剤は、単独でもまたは混合物としても使用することができる。
[その他の成分]
水性顔料インクには、前記受理溶液と同様に、必要に応じて、さらに、従来公知の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、粘度調整剤、pH調整剤、表面張力調整剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤等が挙げられる。
〔インクジェットインクの調製方法〕
インクジェットインクの調製方法は、特に限定されない。例えば、水性溶媒に自己分散型の顔料を加え、分散した後、樹脂、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して調製する方法、水性溶媒に、顔料と分散剤を加えて分散した後、樹脂、界面活性剤及び必要に応じてその他の成分を添加して調製する方法、水性溶媒に顔料と樹脂と界面活性剤と必要に応じてその他の成分を添加した後、顔料を分散して調製する方法等が挙げられる。
<インクジェット記録方法>
本発明では、上記インクセットのインクジェット受理溶液を記録媒体の表面にインクジェット方式で吐出した後、上記インクセットの水性インクをインクジェット方式で吐出することが好ましい。
[記録媒体]
本発明のインクジェット記録方法において、インクジェットインクを用いて印刷される記録媒体は特に制限されるものではなく、塗工紙、非塗工紙、布帛等の吸収体、非吸収性基材のいずれも使用することができる。具体的には、非塗工紙としては、更紙、中質紙、上質紙、塗工紙としては、コート紙、アート紙、キャスト紙、軽量コート紙、微塗工紙、布帛等の吸収体としては、綿、化繊織物、絹、麻、布帛、不織布、皮革等を例示でき、非吸収性基材としては、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系合成紙、塩化ビニル樹脂、ポリイミド樹脂、金属、金属箔コート紙、ガラス、合成ゴム、天然ゴム等を例示できるがこれらに限定されるものはない。
[印刷装置]
本発明の受理溶液及びインクセットは、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等のいずれのインクジェット記録装置にも適用することができるが、中でも、ピエゾ方式のインクジェット記録装置に用いられることが好ましい。ピエゾ方式の記録ヘッドは、圧力発生素子として圧電振動子を用い、圧電振動子の変形により圧力室内を加圧・減圧してインク滴を吐出させる。このような記録ヘッドでは、さらなる高画質化や記録速度の向上を図る試みとして、ノズル列の数を増やすことで記録可能な色の種類を増やしてさらなる高画質化を図る試みがなされ、また、1つのノズル列を構成するノズル開口部の数を増やすことで記録速度の向上を図る試みがなされている。さらに、1つのヘッドに設けられるノズルの数を増やすために、ノズルを微細化する試みもなされている。
しかしながら、ヘッドのノズルが微細化されると、付着・残留したインクにより、飛行曲がりやノズル詰まりが引き起こされやすくなる。また、長期間の使用においてインク成分中に凝集物が発生すると、インク滴の飛翔の障害となり、飛行曲がりやノズル詰まりといったトラブルが発生する。そのため、インクジェットヘッドでの目詰まりが発生せず、安定した吐出が可能なインクジェットインクの開発が急務となっている。したがって、サーマルジェット等のように加熱による凝集物を発生しやすい方式に比べ、その駆動方式から凝集物を発生し難く、さらにその凝集物の発生を抑制できる本発明のインクジェットインクはピエゾ方式のインクジェット記録装置に好適である。
[受理溶液の付着時期及び付着量]
受理溶液の記録媒体への付着時期は、水性インクと受理溶液がそれぞれインクジェット方式によって吐出されて記録媒体上で接触するならば、特に限定されるものではないが、フェザリングやブリーディングをより効果的に抑制する点で、水性インクを吐出する直前に付着することが好ましい。受理溶液の記録媒体への付着量は特に限定されるものではないが、フェザリングやブリーディングを有効に抑制するため、受理溶液に含まれる塩((A)成分及び(B)成分)が記録媒体1cmあたり0.01〜2000μモル付着される程度であることが好ましい。記録媒体1cmあたりの塩((A)成分及び(B)成分)付着量が2000μモルを超えても、更なる画像改善効果を得難い。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、単位は特に断りのない限り、質量部である。
<受理溶液の調製>
下記のA)からE1)を表3の配合として実施例1〜17及び比較例1〜4における受理溶液を得た。
(A)炭素数が3以上の有機酸塩
(A1)パントテン酸カルシウム
(A2)プロピオン酸カルシウム
(A3)乳酸カルシウム
(A4)パントテン酸ナトリウム
(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩
(B1)酢酸カルシウム
(B2)硝酸カルシウム
(B3)酢酸マグネシウム
(B4)硫酸マグネシウム
(B5)塩化カルシウム
(B6)塩化マグネシウム
(B7)塩化ナトリウム
(B8)酢酸ナトリウム
(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤
(C1)1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール、沸点:188.2℃)
(C2)1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコール、沸点:210〜212℃)
(C3)1,2−ペンタンジオール(沸点:206℃)
(C4)トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル(沸点:271.2℃)
(C5)2−ピロリドン(沸点:250℃)
(D)水:イオン交換水
(E1)界面活性剤
(E1−1)アセチレンジオール系界面活性剤(商品名:ダイノール(登録商標)607,エアープロダクツジャパン社製)
(E1−2)ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤(商品名:シルフェイス(登録商標)503A,日信化学工業社製)
Figure 2015051639
<インクの調製>
〔顔料分散体A−1(黒)の調製〕
Kieczykowski等,J.Org.Chem.,1995,Vol.60,P.8310-8312、及び米国特許第4,922,007号明細書に示された手順と同様の手順を用いて、[2−(4−アミノフェニル)−1−ヒドロキシエタン−1,1−ジイル]ビスホスホン酸−ナトリウム塩を製造した。まず、500mL三つ口フラスコに、凝縮器の頂部にガス出口を備えた凝縮器、温度計及び乾燥窒素入口、及び100mL均圧添加漏斗を取り付けた。このフラスコに、最初に、32gの亜リン酸(380mmol)及び160mLのメタンスルホン酸(溶媒)を添加した。この撹拌混合物に、57.4gのアミノフェニル酢酸(380mmol)を少しずつ添加した。この撹拌混合物を65℃に1〜2時間加熱して、固体分を完全に溶解させた。この系全体を乾燥窒素でフラッシュし、固体分のすべてが溶解した後に、温度を40℃に減じた。この加熱溶液に、添加漏斗を通じて70mLのPCl(800mmol)をゆっくり添加した。反応により生じたHClガスは、ガス出口を通じて排出した。添加が完了した後、反応混合物を2時間撹拌かつ40℃にて加熱した。次いで、温度を65〜70℃に上げ、この混合物を一晩撹拌した。生じた清澄な茶色溶液を室温に冷却し、600gの氷/水混合物中への添加により急冷した。
この水性混合物を1Lビーカー中に入れ、90〜95℃に4時間加熱した(ビーカーの頂部をガラス板で覆った)。次いで、この混合物を室温に冷却し、この混合物のpHを50%NaOH溶液で4〜5に調整した。この混合物を氷浴で5℃に2時間冷却し、次いで生じた固体分を吸引濾過により集め、1Lの冷脱イオン水で洗浄し、60℃にて一晩乾燥して、白色又はオフホワイト色の固体生成物(収量は48g、収率は39%であった。)を得た。得られた固体生成物のH−NMRデータ(DO/NaOH)は、次のとおりであった。すなわち、7.3(2H,d)、6.76(2H,d)、3.2(2H,t)。得られた固体生成物の13C−NMRデータ(DO/NaOH)は、それぞれ、141、130、128、112、73であった。
カーボンブラック(Black Pearls(登録商標)700カーボンブラック(Cabot社製))20g、上記固体生成物20mmol、硝酸20mmol、及び脱イオン水200mLを、室温にてシルヴァーソン(Silverson)混合機(6000rpm)で混合した。30分後、この混合物中に少量の水中に溶解させた亜硝酸ナトリウム(20mmol)をゆっくり添加した。温度は混合によって60℃に達し、これを1時間進行させた。これにより、カーボンブラックに上記固体生成物が修飾した自己分散型の顔料(少なくとも2つのホスホン酸基又はその塩が結合されている顔料を含む。)が生成された。pHをNaOH溶液で8〜9に調整し、30分後、自己分散型の顔料の生じた分散液を、20容量部の脱イオン水を用いてスペクトラム(Spectrum)メンブランでダイアフィルトレーションし、固体分15質量%に濃縮し、顔料分散体A−1(黒)を得た。
〔顔料分散体A−2(青)、顔料分散体A−3(黄)及び顔料分散体A−4(赤)の調製〕
顔料分散体A−1(黒)の調整において、カーボンブラックの代わりに、C.I.ピグメントブルー15:4(PB15:4)、C.I.ピグメントイエロー74(PY74)、C.I.ピグメントレッド122(PR122)をそれぞれ用いた以外は、顔料分散体A−1(黒)の調整と同様にして、顔料分散体A−2(青)、顔料分散体A−3(黄)、及び顔料分散体A−4(赤)を得た。
顔料分散体A−1を30質量部、グリセリンを5質量部、プロピレングリコールを25質量部、Tg40℃、酸価25mgKOH/gである、アクリル樹脂エマルジョンを、樹脂固形分として5質量部、アセチレンジオール系界面活性剤(商品名:ダイノール(登録商標)607,エアープロダクツジャパン社製)を0.5質量部、イオン交換水を34.5質量部、混合して合計100質量部とし、インクA−1(黒)を調整した。同様にして、インクA−2(青)、インクA−3(黄)、インクA−4(赤)を調整した。
<受理溶液の評価 その1 −開放放置−>
実施例及び比較例に係る受理溶液を、50℃、50%RHの条件下において蒸発皿で24時間開放放置した後、金属塩が析出しているか否かを目視で観察し、○:析出物を生じない、×:析出物を生じる、の基準で評価した。○が実用範囲である。結果を表4に示す。
<受理溶液の評価 その2 −保存安定性−>
保存安定性の促進試験として、実施例及び比較例に係る受理溶液をガラス容器に密封し、60℃で1ヶ月間保管した後、金属塩が析出しているか否かを目視で観察し、○:析出物を生じない、×:析出物を生じる、の基準で評価した。○が実用範囲である。結果を表4に示す。
<受理溶液の評価 その3 −ノズルの目詰まり−>
インクジェット記録装置PX−101(セイコーエプソン社製)のインクヘッドに実施例及び比較例に係る受理溶液を充填し、該受理溶液を全てのノズルから10m/secの吐出速度で吐出し、1時間放置した。その後、全てのノズルから受理溶液を同じ吐出速度で再び吐出した。その後、不吐出ノズルの有無を目視で観察し、○:不吐出ノズルがない、△:不吐出ノズルが有るが、クリーニングによって直ちに全ノズルから吐出する、×:不吐出ノズルがあり、クリーニングしても復旧しにくい、の基準で評価した。○、△が実用範囲である。結果を表4に示す。
<受理溶液の評価 その4 −画質向上−>
インクジェット記録装置PX−101(セイコーエプソン社製)のインクヘッドに実施例及び比較例に係る受理溶液を充填し、OKトップコート(王子製紙社製,コート紙)にインクで印字を行う画像と同じ画像を印字した後、もう1台のインクジェット記録装置PX−101(セイコーエプソン社製)のインクヘッドにインクA−1(黒)、インクA−2(青)、インクA−3(黄)、インクA−4(赤)の4色のインクを充填して、カラー印字を行った。印字した画像を目視で観察し、○:ブリーディングやフェザリングがほとんどみられない、△:ブリーディングやフェザリングがわずかにみられる、×:ブリーディングやフェザリングが著しい、の基準で評価した。○、△が実用範囲である。結果を表4に示す。
Figure 2015051639
本発明の受理溶液は、(A)炭素数が3以上の有機酸塩と、(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩と、(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤と、(D)水とを含有するため、水性インクジェット記録方式に求められる特性、とりわけ、ノズルの目詰まり防止及び保存安定性に優れる点で好適であることが確認された(実施例1〜17)。
一方、(A)成分だけを含有し、(B)成分を含有しない場合、受理溶液を密封加温保管した場合に、受理溶液に含まれる塩が析出し得る点で好ましくないことが確認された(比較例1)。また、インクジェットヘッドにおけるノズル詰まりが起こることも確認された(同)。
また、(B)成分だけを含有し、(A)成分を含有しない場合、受理溶液を開放放置し、受理溶液に含まれる水の一部が蒸発した場合に、受理溶液に含まれる塩が析出することが確認された(比較例2、3)。また、受理溶液に含まれる水の一部が蒸発した場合に、受理溶液に含まれていた金属塩が析出し、インクジェットヘッドにおけるノズル詰まり又はインクジェット記録装置における受理溶液の流路の閉塞が起こることも確認された(同)。
また、塩が1価の金属イオンのみからなる場合、画像改善効果がみられないことも確認された(比較例4)。

Claims (9)

  1. (A)炭素数が3以上の有機酸塩と、(B)無機塩及び/又は炭素数が2以下の有機酸塩と、(C)沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤と、(D)水とを含有し、
    前記(A)成分及び前記(B)成分の少なくとも一方は多価金属塩である水性インクジェット受理溶液。
  2. 前記多価金属塩は、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、アルミニウム塩、ホウ素塩、亜鉛塩又はこれらの混合塩から選択される、請求項1に記載の水性インクジェット受理溶液。
  3. 前記(A)成分はカルボン酸塩である、請求項1又は2に記載の水性インクジェット受理溶液。
  4. 前記(A)成分は、パントテン酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩又はこれらの混合塩から選択される、請求項3に記載の水性インクジェット受理溶液。
  5. 前記(B)成分は、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、ギ酸塩、酢酸塩又はこれらの混合塩から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の水性インクジェット受理溶液。
  6. 前記(C)成分は多価アルコールである、請求項1から5のいずれかに記載の水性インクジェット受理溶液。
  7. 前記多価アルコールは、両末端が同時に水酸基ではないアルカンジオールである、請求項6に記載の水性インクジェット受理溶液。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の水性インクジェット受理溶液と、
    色材を含有する水性インクと、を含有する水性インクジェット用インクセット。
  9. 請求項8に記載の水性インクジェット用インクセットを用いて記録媒体にインクジェット方式で記録する方法であって、
    前記インクジェット受理溶液を前記記録媒体の表面にインクジェット方式で吐出した後に、前記水性インクをインクジェット方式で吐出する、インクジェット記録方法。
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