JP2015047157A - 疼痛発症モデル動物および疼痛治療薬 - Google Patents

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裕樹 吉田
Hiroki Yoshida
裕樹 吉田
博満 原
Hiromitsu Hara
博満 原
敏一 八坂
Toshiharu Yasaka
敏一 八坂
祐造 村田
Yuzo Murata
祐造 村田
智子 笹栗
Tomoko Sasaguri
智子 笹栗
奈緒美 平川
Naomi Hirakawa
奈緒美 平川
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Abstract

【課題】疼痛治療薬のスクリーニングに使用できる疼痛モデル非ヒト動物、疼痛治療薬などを提供する。
【解決手段】IL27及び/又はIL27R遺伝子の全部又は一部の機能が失われたノックアウト非ヒト動物、又は、該遺伝子の発現量が低下しているノックダウン非ヒト動物からなる、疼痛発症モデル動物。前記動物に被検物質を接触させ、被検物質の鎮痛効果を評価し、鎮痛効果を有すると評価された被検物質を選択することを含む疼痛治療薬のスクリーニング方法、及び、IL27又はその変異体を含有する、疼痛治療薬。
【選択図】なし

Description

本発明は、疼痛発症モデル動物、疼痛治療薬などに関する。
生体が損傷を受けると、痛みとして感じることで損傷を認識する。損傷に引き続いておこる炎症などにより痛みが過度になると、痛み(疼痛)は、生物学的な意義が少なく、患者に苦痛となるばかりであり、よって疼痛を早急に緩和することが望まれる。
疼痛は、その原因により、次の3つに分類できる。一つ目は侵害受容性疼痛であり、これは、健常な組織を損傷するか、その恐れがある侵害刺激が加わったときに生じる、侵害受容器を介した疼痛である。二つ目は神経障害性疼痛であり、これは、末梢神経系又は中枢神経系そのものの機能異常により生じる、末梢のニューロン又は疼痛伝導路のニューロンの興奮が引き金となって生じる疼痛である。三つめは心因性疼痛であり、これは、心理的な原因に由来する疼痛である。疼痛は、これらの3種類の疼痛の2種以上が合わさった混合性疼痛である場合もある。
疼痛は上記のように分類することができるが、疼痛には様々な病的変化や種々の化学物質の関与などが報告されており、未解明な部分も多い。実際、疼痛抑制のため各種鎮痛剤や麻薬などが用いられているが、症状によっては、これらの薬剤が疼痛抑制効果を示さない場合もある。このため、様々な症状のそれぞれに対応した新たな疼痛治療薬が求められている。
野生型げっ歯類を用いた、神経切断による神経障害性疼痛モデル動物が知られている。また、野生型げっ歯類を用いた、機械刺激、温熱刺激、冷却刺激、化学刺激による疼痛耐性閾値測定実験系が確立されている。しかしながら、これらの野生型げっ歯類を用いた実験では、様々な病的変化や種々の化学物質の関与などを反映した痛みを再現しておらず、そのような痛みに対する疼痛治療薬のスクリーニングには適さない。このため、様々な病的変化や種々の化学物質の関与などを反映した痛みを再現した疼痛治療薬のスクリーニング系も求められていた。
ここで、インターロイキン27(IL27)は、IL27−p28とEpstein−Barr virus(EBV)−induced gene 3(EBI3)の2つの異なるサブユニットを含むサイトカインである。一方、IL27受容体(IL27R)は、WSX−1とglycoprotein 130とのヘテロダイマーで構成される。IL27は、例えば、単球、マクロファージ及び樹状細胞のような抗原提示細胞で発現する。抗原提示細胞で発現したIL27は、CD4ナイーブT細胞の増殖を促す。また、IL27は、IL12と共にCD4ナイーブT細胞に作用し、TH1型サイトカインであるインターフェロン−γ(IFNγ)の産生を促す。さらに、IL27は、TH1型免疫応答に特異的な転写因子であるT−betをアップレギュレートさせ、これにより、TH2型免疫応答に特異的な転写因子であるGATA−3をダウンレギュレートさせる。IL27は、免疫細胞の増殖に必要なIL2の産生を抑制し、また炎症が関わる疾患の病態形成に重要な役割を果たすTH17型細胞の分化を抑制する。また、IL27は、様々な炎症性サイトカインの産生を抑制する作用を有している。したがって、IL27は、様々な免疫・炎症反応を抑制する作用を有する。
特許文献1:特開2011-92026号公報及び特許文献2:特開2011-92025号公報には、IL27及び/又はIL27R遺伝子ノックダウン非ヒト動物が記載されている。
特許文献3:特開2012-21010号公報には、IL27R/WSX-1の活性を上昇させる物質を投与することを含む、免疫応答調節方法が記載されている。
非特許文献1:吉田裕樹(2009) 日本臨床免疫学会会誌, 32(4), 202-213には、IL27は活性化T細胞による様々な炎症性サイトカイン産生を抑制し、IL27投与、あるいはIL-27Rシグナル増強により、マウスにおける自己免疫性脳炎、コラーゲン誘発性関節炎、遅延型過敏症、全身性ループスエリテマトーデスなどに対する治療効果が得られることが記載されている。
非特許文献2:Miyazaki et al. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun., 373(3), 397-402には、遅延型過敏症応答(DTH)に対するIL27投与の影響を検討した結果、WSX-1遺伝子ノックアウトマウスはフットパッドのはれに見られる高いDTH応答を示すところ、IL27投与によりフットパドのはれが有意に改善されたことが記載されている。
特開2011-92026号公報 特開2011-92025号公報 特開2012-21010号公報
吉田裕樹(2009) 日本臨床免疫学会会誌, 32(4), 202-213 Miyazaki et al. (2008) Biochem. Biophys. Res. Commun., 373(3), 397-402
上記状況において、疼痛治療薬のスクリーニングに使用できる疼痛モデル非ヒト動物、疼痛治療薬などが求められていた。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、IL27及び/又はIL27Rの遺伝子の全部又は一部の機能が失われたノックアウト非ヒト動物が、疼痛治療薬のスクリーニングに有用であること、IL27が疼痛治療薬の活性成分として有用であることなどを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す、疼痛モデルモデル非ヒト動物、その非ヒト動物を用いた疼痛治療薬のスクリーニング方法、疼痛治療薬などを提供する。
[1] IL27及び/又はIL27R遺伝子の全部又は一部の機能が失われたノックアウト非ヒト動物からなる、疼痛発症モデル動物。
[2] IL27及び/又はIL27R遺伝子の発現量が、野生型と比較して低下しているノックダウン非ヒト動物からなる、疼痛発症モデル動物。
[3] 前記非ヒト動物が、神経損傷の処置を施された動物である、上記[1]又は[2]に記載の動物。
[4] 前記非ヒト動物がマウスである、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の動物。
[5] 疼痛治療薬のスクリーニング方法であって、
(a)上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の動物に被検物質を接触させ、
(b)被検物質を接触させた動物における疼痛と相関関係を有する指標と、対照における疼痛と相関関係を有する指標とを比較し、
(c)(b)の比較結果に基づき、被検物質の鎮痛効果を評価し、
(d)鎮痛効果を有すると評価された被検物質を選択する
ことを含む、前記方法。
[6] IL27またはその変異体を含有する、疼痛治療薬。
本発明のいくつかの態様は、IL27及び/又はIL27Rの遺伝子の全部又は一部の機能が失われたノックアウト非ヒト動物からなる、疼痛モデル動物を提供する。本発明の別のいくつかの態様は、IL27及び/又はIL27R遺伝子の発現量が、野生型と比較して低下しているノックダウン非ヒト動物からなる、疼痛発症モデル動物を提供する。これらのモデル動物は、例えば、疼痛治療薬をスクリーニングするために使用することができる。
本発明の別のいくつかの態様は、IL27又はその変異体を含有する疼痛治療薬を提供する。
機械刺激による疼痛誘発実験の結果を示した図である。 神経障害性疼痛モデルマウスを用いたときの機械刺激による疼痛誘発実験の結果を示した図である。 温熱刺激による疼痛誘発実験の結果を示した図である。 化学刺激による疼痛誘発実験の結果を示した図である。 リコンビナントマウスIL27(rIL27)投与実験の結果を示した図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書に記載した全ての文献及び刊行物は、その目的にかかわらず参照によりその全体を本明細書に組み込むものとする。
1.本発明の疼痛発症モデル動物
本発明の疼痛発症モデル動物は、本発明のノックアウト非ヒト動物又は本発明のノックダウン非ヒト動物からなる。本発明のノックアウト非ヒト動物又は本発明のノックダウン非ヒト動物は、痛覚過敏を自然発症しており、野生型非ヒト動物と比較して痛覚過敏を示すため、疼痛発症モデル動物として使用することができる。
1.1.本発明のノックアウト非ヒト動物及び本発明のノックダウン非ヒト動物
本発明のノックアウト非ヒト動物とは、該動物のIL27及び/又はIL27R遺伝子の全部又は一部がその本来の機能を発揮しないように破壊されているか、又は組み換えがなされている動物を意味する。IL27及び/又はIL27R遺伝子は、ゲノム上の一方のアリルが機能しないように破壊又は変異されたヘテロノックアウト(ヘテロ接合体)でもよく、両方のアリルが破壊又は変異されたホモノックアウト(ホモ接合体)でもよい。本発明のノックアウト非ヒト動物には、このような動物の子孫も含まれる。
「遺伝子の全部の機能が失われた」とは、遺伝子が完全に失われることを意味し、「遺伝子の一部の機能が失われた」とは、遺伝子の一部が欠如することにより遺伝子の機能が野生型と比較して低下している状態にあることを意味する。従って、「その本来の機能を発揮しない」とは、IL27及び/又はIL27Rの発現自体が行なわれないようにするか、或いは発現してもタンパク質の活性が低下又は喪失していることを意味する。
「ノックダウン」とは、特定の遺伝子の発現量を抑制することを意味する。遺伝子の発現量の抑制は、例えば、遺伝子の転写量を減少させること、翻訳を阻害することなどにより、達成することができる。本発明のノックダウン非ヒト動物とは、該動物IL27及び/又はIL27R遺伝子の発現量が、野生型と比較して低下している動物をいう。
IL27遺伝子は、IL27をコードする遺伝子であり、IL27R遺伝子は、IL27Rをコードする遺伝子である。IL27は、IL27−p28とEpstein−Barr virus(EBV)−induced gene 3(EBI3)の2つの異なるサブユニットを含むサイトカインである。一方、IL27受容体(IL27R)は、WSX−1とglycoprotein 130とのヘテロダイマーで構成される。IL27は、例えば、単球、マクロファージ及び樹状細胞のような抗原提示細胞で発現する。
本発明においてノックアウト又はノックダウンの対象となるIL27遺伝子は、例えば、EBI3遺伝子、及び/又はIL27−p28遺伝子である。また、本発明においてノックアウト又はノックダウンの対象となるIL27R遺伝子は、WSX−1遺伝子、及び/又はglycoprotein 130である。したがって、本発明においてノックアウト又はノックダウンの対象となる「IL27及び/又はIL27R遺伝子」とは、EBI3遺伝子、IL27−p28遺伝子、WSX−1遺伝子及びglycoprotein 130遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子を意味する。本発明においてノックアウト又はノックダウンの対象となる「IL27及び/又はIL27R遺伝子」は、好ましくは、EBI3遺伝子、IL27−p28遺伝子、及びWSX−1遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子であり、より好ましくは、EBI3遺伝子、IL27−p28遺伝子、又はWSX−1遺伝子である。
本発明においてノックアウト又はノックダウンの対象となるEBI3遺伝子、IL27−p28遺伝子、WSX−1遺伝子及びglycoprotein 130遺伝子は公知であり、その塩基配列情報及びアミノ酸配列情報は、GenBank等のアクセッション番号から知ることができる。以下に、EBI3遺伝子、IL27−p28遺伝子、WSX−1遺伝子及びglycoprotein 130遺伝子の塩基配列情報及びアミノ酸配列情報を示すアクセッション番号を例示する。
・マウスEBI3遺伝子のDNA配列:NM_015766(配列番号1)、
・マウスEBI3のアミノ酸配列:NP_056581(配列番号2)、
・ラットEBI3遺伝子のDNA配列:NM_001109421(配列番号3)、
・ラットEBI3のアミノ酸配列:NP_001102891(配列番号4)、
・マウスIL27−p28遺伝子のDNA配列:NM_145636(配列番号5)、
・マウスIL27−p28のアミノ酸配列:NP_663611(配列番号6)、
・ラットIL27−p28遺伝子のDNA配列(推定):XM_002725687(配列番号7)、
・ラットIL27−p28のアミノ酸配列(推定):XP_002725733(配列番号8)、
・マウスWSX−1遺伝子のDNA配列:NM_016671(配列番号9)、
・マウスWSX−1のアミノ酸配列:NP_057880(配列番号10)、
・ラットWSX−1遺伝子のDNA配列:NM_001105943(配列番号11)、
・ラットWSX−1のアミノ酸配列:NP_001099413(配列番号12)、
・マウスglycoprotein 130遺伝子のDNA配列:M83336(配列番号13)、
・マウスglycoprotein 130のアミノ酸配列:AAA37723.1"(配列番号14)、
・ラットglycoprotein 130遺伝子のDNA配列:NM_001008725(配列番号15)、
・ラットglycoprotein 130のアミノ酸配列NP_001008725.2"(配列番号16)。
本発明においてノックアウト又はノックダウンの対象となる非ヒト動物は、IL27遺伝子及びIL27R遺伝子を有するヒト以外の動物ならば、いかなる動物でもよいが、非ヒト哺乳動物が好ましい。非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ミニブタ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラット又はサルが用いられる。非ヒト哺乳動物のなかでも、病態動物モデル系の作製の面から個体発生及び生物サイクルが比較的短く、また繁殖が容易なげっ歯動物、とりわけマウス又はラットが特に好ましい。
いくつかの態様において、本発明のノックアウト非ヒト動物又は本発明のノックダウン非ヒト動物は、神経損傷の処置を施された動物である。このような動物は、神経障害性疼痛がさらに高いレベルで生じ、種々の疼痛治療薬のスクリーニングがより容易になる。「神経損傷の処置を施された動物」とは、具体的には、公知の神経損傷モデルを作製するための処置を施された動物のことを意味する。神経損傷モデルには、完全神経損傷モデル(「自傷モデル」ともいう)と部分的神経損傷モデルの2つに分類できる。
完全神経損傷モデルは、所定の神経を切断した動物である(佐々木淳、倉石泰(2006)日本薬理学会誌 127, 151-155)。
部分的神経損傷モデルは、さらに、絞扼性神経損傷モデル(CCIモデル)、坐骨神経部分損傷モデル(PSLモデル)、脊髄神経結紮損傷モデル(SNLモデル)、神経枝結紮損傷モデル(SNIモデル)などを含む。CCIモデルは、坐骨神経を縫合糸などで軽く絞扼することにより作製した動物である。PSLモデルは、坐骨神経を絹糸などできつく結紮することにより作製した動物である。SNLモデルは、脊髄神経の所定部位を絹糸などできつく結紮することにより作製した動物である。SNIモデルは、坐骨神経の枝である総腓骨神経と脛骨神経を絹糸などできつく結紮することにより作製した動物である。(佐々木淳、倉石泰(2006)日本薬理学会誌 127, 151-155)
本発明のいくつかの態様において、神経損傷モデルは、好ましくは、完全神経損傷モデルである。
これらの神経損傷モデルは、公知の方法又はそれに準ずる方法により作製することができる。
1.2.本発明のノックアウト非ヒト動物の作製
本発明のノックアウト非ヒト動物は、例えば、標準的な方法で作製して入手することができる。
標準的な方法としては、例えば、IL27及び/又はIL27R遺伝子とを不活性化させたES細胞を作製することによる方法を挙げることができる。
当該方法は、
(a)遺伝子のターゲティングによりIL27遺伝子及び/又はIL27R遺伝子の全部又は一部の機能を欠損させたES細胞を作製すること、
(b)ES細胞を用いて、キメラ非ヒト動物を作製すること、
(c)キメラ非ヒト動物を野生型マウスと交配してヘテロノックアウト非ヒト動物を作製すること、
(d)ヘテロノックアウト非ヒト動物同士を交配して、ホモノックアウト非ヒト動物を作製すること、を含む。
以下、上記各工程について詳細に説明する。
工程(a):遺伝子ターゲティング
遺伝子ターゲティングでは、先ず、目的遺伝子(IL27遺伝子及び/又はIL27R遺伝子)がその機能を喪失させ、或いはその機能が低下するように破壊又は組換えたDNA断片を作製する。目的遺伝子のターゲティングベクターは、目的遺伝子を破壊することにより当該遺伝子の全部又は一部を喪失させ、機能を全く失わせるか、或いは機能を低下させるものである。ターゲティングベクターは、相同組換えを起こさせた後の組換え体のスクリーニングが容易となるように構築することが好ましい。
このようなターゲティングベクターを用いて、相同組換えを行う。現在確立されている遺伝子ターゲティング法では、ノックアウト非ヒト動物を作製する場合には、ES細胞を使用することが望ましい。ES細胞として、TT2細胞、AB−1細胞、J1細胞、R1細胞等を適宜選択して使用することができる。
相同組換えを起こさせるために、目的遺伝子の機能を喪失させたターゲティングベクターを細胞中に導入する。ターゲティングベクターを細胞に導入する方法としては、公知の方法により行うことができる。
相同組換え効率を高めるために、例えば、バクテリオファージP1由来の組換えシステムであるCre−loxPシステムを使用することができる。
その後、PCR法、サザンブロット法等の公知の方法により、目的遺伝子がターゲティングされているか否かを確認する。
工程(b):キメラ非ヒト動物の作製
相同組換えの結果得られた組換えES細胞を、8細胞期又は胚盤胞の胚内に移植する。このES細胞移植胚を偽妊娠仮親の子宮内に移植して出産させることによりキメラ非ヒト動物を作製する。
ES細胞を胚内に移植する方法として、マイクロインジェクション法、凝集法などの公知手法を用いることができる。
工程(c):ヘテロノックアウト非ヒト動物の作製
上記のようにして得たキメラ非ヒト動物の中から、ES細胞移植胚由来の雄キメラ非ヒト動物を選択する。マウスの場合、選択したES細胞移植胚由来の雄マウスが成熟した後、このマウスを純系マウス系統の雌マウスと交配させる。そして、誕生した子マウスに、ES細胞に由来するマウス(ES細胞に組み込まれたゲノムを有していたマウス)の被毛色が現れることにより、ES細胞がキメラマウスの生殖系列へ導入されたことを確認することができる。そして、胚内に移植された組換えES細胞が生殖系列に導入された目的遺伝子欠損ヘテロノックアウト非ヒト動物を繁殖する。
工程(d):ホモノックアウト非ヒト動物の作製
上記のようにして得た目的遺伝子ヘテロノックアウト非ヒト動物同士を交配させて、遺伝子欠損ホモノックアウト非ヒト動物を得ることができる。
工程(c)又は(d)においてノックアウト非ヒト動物が得られたことの確認については、組織から染色体DNAを抽出しサザンブロット法やPCR法で行うことができる。さらに、組織からRNAを抽出し、ノーザンブロット解析により遺伝子の発現パターンを解析することもできる。目的遺伝子がコードするタンパク質に対する抗体を用いてウエスタンブロッティングを行なってもよい。
また、樹立した動物系統について、ヘテロノックアウト非ヒト動物及びホモノックアウト非ヒト動物の表現型を解析することもできる。表現型の解析は、公知の方法により行うことができる。
ここで、EBI3遺伝子ノックアウトマウスの作製方法は、例えば、Igawa, T., Nakashima, H., Sadanaga, A., Masutani, K., Miyake, K., Shimizu, S., Takeda, A., Hamano, S., Yoshida, H. (2009) Deficiency in EBV-induced gene 3 (EBI3) in MRL/lpr mice results in pathological alteration of autoimmune glomerulonephritis and sialadenitis. Mod Rheumatol 19, 33-41.などにも記載されている。WSX−1遺伝子ノックアウトマウスの作製方法は、例えば、Yoshida, H., Hamano, S., Senaldi, G., Covey, T., Faggioni, R., Mu, S., Xia, M., Wakeham, A.C., Nishina, H., Potter, J., Saris, C.J., Mak, T.W. (2001) WSX-1 Is Required for the Initiation of Th1 Responses and Resistance to L. major Infection. Immunity15, 569-78.などにも記載されている。IL27-p28遺伝子ノックアウトマウスの作製方法は、例えば、特開2011-92026号公報の実施例1に記載されている。glycoprotein 130遺伝子ノックアウトマウスの作製方法は、例えば、Yoshida K, Taga T, Saito M, Suematsu S, Kumanogoh A, Tanaka T, Fujiwara H, Hirata M, Yamagami T, Nakahata T, Hirabayashi T, Yoneda Y, Tanaka K, Wang WZ, Mori C, Shiota K, Yoshida N, Kishimoto T. (1996) Targeted disruption of gp130, a common signal transducer for the interleukin 6 family of cytokines, leads to myocardial and hematological disorders. (1996) Proc Natl Acad Sci U S A. 93, 407-11.に記載されている。
1.3.本発明のノックダウン非ヒト動物の作製
本発明のノックダウン非ヒト動物は、公知の方法に従って、非ヒト動物のIL27遺伝子及び/又はIL27R遺伝子の発現を抑制することにより、作製することができる。
IL27遺伝子及び/又はIL27R遺伝子の発現抑制には、例えばRNA干渉(RNAi)を利用することができるが、特にこれに限定されるものではない。例えば、IL27遺伝子及び/又はIL27R遺伝子に対するsiRNA(small interfering RNA)を設計及び合成し、これを、レトロウイルスベクターやアデノウイルスベクターに組み込んで非ヒト動物に導入することによりRNAiを引き起こすことができる。また、本発明は、RNAi効果をもたらすためにshRNAを使用することもできる。shRNAとは、ショートヘアピンRNA(short hairpin RNA)と呼ばれ、一本鎖の一部の領域が他の領域と相補鎖を形成するためにステムループ構造を有するRNA分子である。このステムループ構造を有するRNA分子は生体内のDicer等によりプロセッシングを受け、siRNAが産生される。
RNAiとは、dsRNA(double−strand RNA)が標的遺伝子に特異的かつ選択的に結合し、当該標的遺伝子を切断することによりその発現を効率よく阻害する現象である。例えば、dsRNAを非ヒト動物に導入すると、そのRNAと相同配列の遺伝子の発現が抑制(ノックダウン)される。
siRNA、dsRNA及びshRHAの設計は、公知の方法により行うことができる。
2.本発明の疼痛治療薬のスクリーニング方法
本発明は、本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物に、疼痛治療薬の候補物質(被験物質)を接触することにより、疼痛治療薬をスクリーニングすることができる。例えば、本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物に薬物候補物質を接触させ、前記候補物質を接触させた本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物における疼痛と相関関係を有する指標を測定し、対照における疼痛と相関関係を有する指標と比較し、この比較結果に基づいて、鎮痛効果を確認することで、候補物質をスクリーニングすることができる。
本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物を候補物質で接触させる方法としては、例えば、経口投与、静脈注射、塗布、皮下投与、皮内投与、腹腔投与などが用いられ、試験動物の症状、候補物質の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、候補物質の投与量は、投与方法、候補物質の性質などにあわせて適宜選択することができる。
比較のための対照は、例えば、被験物質を接触させない野生型非ヒト動物、被験物質を接触させた野生型非ヒト動物、鎮痛効果を有することが分かっている物質(既知の疼痛治療薬)を接触させた野生型非ヒト動物、被験物質を接触させない本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物、既知の疼痛治療薬を接触させた本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物のいずれをも意味し、目的に応じて少なくとも1つの対照を適宜選択することができる。
「野生型非ヒト動物」とは、IL27遺伝子及びIL27R遺伝子のいずれもが正常に発現し、機能している非ヒト動物を意味する。
例えば、対照が被験物質を接触させない本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物の場合には、候補物質を接触させた本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物の疼痛と相関関係を有する指標を測定し、当該測定された指標が、対照における指標よりも改善したときは、前記候補物質を、疼痛治療薬の候補物質として選択することができる。この場合の「改善」とは、対照と比較して、本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物の疼痛テストにおける疼痛関連行動が改善(例えば、10%以上、20%以上、30%以上改善)することを意味する。
あるいは、対照が被験物質を接触させない野生型非ヒト動物の場合には、候補物質を接触させた本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物の疼痛と相関関係を有する指標を測定し、当該測定された指標が、対照における指標と同程度まで又はそれよりも改善したときは、前記候補物質を、疼痛治療薬の候補物質としてとして選択することができる。この場合の「改善」とは、対照と比較して、本発明の疼痛発症モデル非ヒト動物の疼痛関連行動が同程度となるか又はさらに改善(例えば、5%以上、10%以上、15%以上又は20%以上改善)することを意味する。
「疼痛と相関関係を有する指標」としては、例えば、疼痛テストにおける疼痛関連行動の指標が挙げられる。「疼痛テスト」としては、公知の疼痛耐性閾値測定実験が挙げられ、具体的には、機械刺激による疼痛誘発試験、温熱刺激による疼痛誘発試験、化学刺激による疼痛誘発試験などが挙げられる。
「機械刺激による疼痛誘発試験」としては、例えば、von Frey testが挙げられる(Makoto Tsuda, Kazuya Kuboyama, Tomoyuki Inoue, Kenichiro Nagata, Hidetoshi Tozaki-Saitoh, Kazuhide Inoue (2009) Molecular Pain, 5:28、S.R. Chaplan, F.W. Bach, J.W. Pogrel, J.M.Chung, T.L. Yaksh (1994) Journal of Neuroscience Methods, 53:55-63、およびKenji Honda, Yukio Takano (2007) 日本薬理学会誌, 130:39-44)。von Frey testの場合、「疼痛関連行動の改善」は、疼痛閾値の上昇である。
「温熱刺激による疼痛誘発試験」としては、例えば、hot plate testが挙げられる(Kenji Honda, Yukio Takano (2007) 日本薬理学会誌, 130:39-44)。hot plate testの場合、「疼痛関連行動の改善」は、疼痛潜時の増加である。
「化学刺激による疼痛誘発」としては、例えば、formalin testが挙げられる(Kenji Honda, Yukio Takano (2007) 日本薬理学会誌, 130:39-44)。formalin testの場合、「疼痛関連行動の改善」は、疼痛を感じる時間の短縮である。
候補物質としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、細胞培養上清、植物抽出液、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒトなど)の組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。これら候補物質は塩を形成していてもよく、候補物質の塩としては、生理学的に許容される酸(例えば、有機酸又は無機酸など)や塩基(例えば、金属酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、或いは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
さらに、選択された候補物質を実験動物(例、マウス、ラットなど)に投与して、選択された候補物質の鎮痛効果を再度確認する。鎮痛効果を確認するための試験法としては、前述の疼痛テストが挙げられる。そして、ある候補物質を投与した場合に鎮痛効果が確認できる結果が得られれば、用いた候補物質を疼痛治療薬として選択することも可能である。
3.本発明のIL27又はその変異体
本発明のIL27又はその変異体は、その構成成分として、EBI3又はその変異体とIL27-p28又はその変異体とを含む。「EBI3」は、例えば、ヒトEBI3、マウスEBI3およびラットEBI3からなる群から選択されるいずれかである。「IL27-p28」は、例えば、ヒトIL27-p28、マウスIL27-p28およびラットIL27-p28からなる群から選択されるいずれかである。
マウス及びラットEBI3の遺伝子のDNA配列、並びにそのアミノ酸配列は前記の通りである。マウス及びラットIL27−p28の遺伝子のDNA配列、並びにそのアミノ酸配列は前記の通りである。ヒトEBI3及びヒトIL27−p28の遺伝子及びそのアミノ酸配列を以下に示す。
・ヒトEBI3遺伝子のDNA配列:NM_005755(配列番号17)、
・ヒトEBI3のアミノ酸配列:NP_005746(配列番号18)、
・ヒトIL27−p28遺伝子のDNA配列:NM_145659 (配列番号19)、
・ヒトIL27−p28のアミノ酸配列:NP_663634(配列番号20)、
EBI3又はその変異体
「EBI3又はその変異体」とは、具体的には、配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含むタンパク質、又は配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドと実質的に同質の活性を有するペプチドを含むタンパク質を意味する。
「実質的に同質の活性」とは、例えば、IL27−p28とヘテロ2量体を形成する能力を意味する。
「EBI3又はその変異体」は、具体的には、以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるペプチドを含む。
(a)配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、
(b) 配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列において1〜40個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含み、かつIL27−p28とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド、
(c) 配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつIL27−p28とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド、および
(d) 配列番号17、配列番号1及び配列番号3からなる群から選択される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含み、かつIL27−p28とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド。
EBI3又はその変異体において「1〜40個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1〜40個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。「1〜40個」の範囲は、例えば、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。このような領域は、“Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)”、“Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987−1997)”、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
EBI3又はその変異体において「80%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「80%以上」の範囲は、例えば、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、BLAST(例えば、Altzshul S. F. et al., J. Mol. Biol. 215, 403 (1990)など参照)等の解析プログラムを用いて決定できる。BLASTを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
EBI3又はその変異体において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号17、配列番号1及び配列番号3からなる群から選択される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0mol/LのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(Saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mmol/L塩化ナトリウム、15mmol/Lクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドをあげることができる。
ハイブリダイゼーションは、Sambrook J. et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Fourth Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2012)、Ausbel F. M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley and Sons (1987-1997)、Glover D. M. and Hames B. D., DNA Cloning 1: Core Techniques, A practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%(w/v)SDS、50%(v/v)ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5(w/v)%SDS、50%(v/v)ホルムアミド、50℃の条件である。条件を厳しくするほど、二本鎖形成に必要とする相補性が高くなる。具体的には、例えば、これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えば、DNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコールにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたDNAを検出することができる。
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号17、配列番号1及び配列番号3からなる群から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
本発明の好ましい態様においては、EBI3又はその変異体が以下の(a)〜(d):
(a) 配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、
(b) 配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列において1〜20個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含み、かつIL27−p28とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド、
(c)配列番号2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつIL27−p28とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド、および
(d) 配列番号17、配列番号1及び配列番号3からなる群から選択される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつIL27−p28とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド;
からなる群から選択されるペプチドを含む。
さらに好ましくは、EBI3又はその変異体は、配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、特に好ましくは、配列番号18のアミノ酸配列を含むペプチドを含む。
IL27-p28又はその変異体
「IL27-p28又はその変異体」は、配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含むタンパク質、又は配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドと実質的に同質の活性を有するタンパク質を意味する。
「実質的に同質の活性」とは、例えば、EBI3とヘテロ2量体を形成する能力を意味する。
「IL27-p28又はその変異体」は、具体的には、以下の(e)〜(h)からなる群から選択されるペプチドを含む。
(e)配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、
(f) 配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列において1〜40個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含み、かつEBI3とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド、
(g) 配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して80%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつEBI3とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド、および
(h) 配列番号19、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含み、かつEBI3とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド。
「IL27-p28又はその変異体」において、「1〜40個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加」とは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加があることを意味する。「1〜40個」の範囲は、例えば、1〜40個、1〜30個、1〜20個、1〜15個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個である。欠失、置換、挿入もしくは付加したアミノ酸の数は、一般的に少ないほど好ましい。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
「IL27-p28又はその変異体」において、「80%以上の同一性を有するアミノ酸配列」における「80%以上」の範囲は、例えば、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。上記同一性の数値は、一般的に大きいほど好ましい。
「IL27-p28又はその変異体」において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号19、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えば、DNA)をいう。ハイブリダイゼーションの方法、ストリンジェントな条件等の説明は、前記と同様である。
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、BLAST等の解析プログラムにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号19、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される塩基配列からなるポリヌクレオチドと約60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、88%以上、90%以上、92%以上、95%以上、97%以上、98%以上、99%以上の同一性を有するDNAをあげることができる。なお、塩基配列またはアミノ酸配列の同一性は、前述した方法を用いて決定できる。
本発明の好ましい態様においては、IL27-p28又はその変異体は、以下の(e)〜(h)からなる群:
(e) 配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、
(f) 配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列において1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を含み、かつEBI3とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド、
(g) 配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつEBI3とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド、および
(h) 配列番号19、配列番号5および配列番号7からなる群から選択される塩基配列に相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドと高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含有し、かつEBI3とヘテロ2量体を形成する能力を有するペプチド;
から選択されるペプチドを含む。
さらに好ましくは、IL27-p28又はその変異体は、配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、特に好ましくは、配列番号20のアミノ酸配列を含むペプチドを含む。
本発明の好ましい態様のIL27又はその変異体は、
配列番号18、配列番号2及び配列番号4からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドを含むEBI3と、
配列番号20、配列番号6および配列番号8からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチドとを含むIL27−p28又はその変異体を含む。
本発明のより好ましい態様のIL27又はその変異体は、配列番号18のアミノ酸配列を含むペプチドを含むEBI3と配列番号20のアミノ酸配列を含むペプチドを含むIL27−p28又はその変異体を含む。
本発明のIL27又はその変異体における「EBI3又はその変異体」及び/又は「IL27-p28又はその変異体」は、さらに他のペプチド配列を、N末端および/またはC末端、好ましくはN末端に含んでいてもよい。他のペプチド配列としては、例えば、翻訳促進のためのペプチド配列、精製のためのペプチド配列、分泌シグナルペプチド配列、抗体認識可能なエピトープ配列などからなる群から選択される少なくとも1つのペプチド配列を挙げることができる。
翻訳促進のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列、例えば、TEE配列などが挙げられる。
精製のためのペプチド配列としては、当技術分野において用いられているペプチド配列、例えば、ヒスチジンタグ配列、グルタチオン S−トランスフェラーゼのグルタチオンへの結合ドメインのアミノ酸配列、プロテインAのアミノ酸配列、アビジンタグ配列などが挙げられる。
分泌シグナルペプチドとは、当技術分野において用いられているペプチド配列、例えば、大腸菌の外膜蛋白質A由来の分泌シグナルペプチド(OmpA)コレラ菌由来コレラトキシン由来の分泌シグナルペプチドなどが挙げられる。
本発明のIL27又はその変異体の取得方法については特に制限はない。本発明のIL27又はその変異体としては、化学合成により合成したタンパク質でもよいし、遺伝子組換え技術により作製した組換えタンパク質であってもよい。本発明のIL27又はその変異体を化学合成する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t−ブチルオキシカルボニル法)等により合成することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。本発明のIL27又はその変異体を遺伝子組換え技術により作製する場合には、通常の遺伝子組換え手法により作製することができる。より具体的には、本発明のIL27又はその変異体の構成成分をコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)を適当な発現系に導入することにより、本発明のIL27又はその変異体を調製することができる。
4.本発明の疼痛治療薬
本発明のIL27又はその変異体は、疼痛治療薬の活性成分として有用である。本発明の疼痛治療薬は、本発明のIL27又はその変異体を活性成分として含む。すなわち、本発明の疼痛治療薬は、疼痛の治療を必要とする対象に投与されるように用いられることを特徴とする、本発明のIL27又はその変異体を含有する、疼痛治療薬である。本発明の好ましい態様の疼痛治療薬は、さらに薬学的に許容される担体を含む。
また、本発明は、疼痛の治療を必要とする対象に投与されるように用いられることを特徴とする疼痛治療薬の製造に用いるための本発明のIL27又はその変異体の使用を提供する。
さらに、本発明は、疼痛の治療を必要とする対象に、治療的有効量の本発明のIL27又はその変異体を投与することを含む、疼痛の治療方法を提供する。
本発明の疼痛治療薬は、種々の疼痛の治療に有効である。本発明において、疼痛としては、例えば、頭痛(例えば、偏頭痛、筋緊張性頭痛、群発頭痛、発熱その他の症候性頭痛等)、口腔顔面痛(例えば、歯痛、舌痛症、顎関節症、舌咽神経痛、三叉神経痛、眼痛、緑内障、耳痛等)、頚肩腕痛(例えば、頚部椎間板ヘルニア、変形性頚椎症、頚肩腕症候群、肩関節周囲炎(五十肩)、頚部脊柱管狭窄症、胸部出口症候群、腕神経叢引き抜き損傷、肩手症候群、外傷性頚部症候群(むち打ち症)等)、胸痛(狭心症、急性心膜炎、食道炎、肺栓塞等)、腹痛(例えば、急性腹症、胆石症、急性膵炎、尿路結石症等臓器の病変による痛み等)、腰背部痛(例えば、骨粗鬆症、腰部椎間板ヘルニア、変形性腰椎症、腰部脊柱管狭窄症、腰椎分離症、腰椎すべり症、椎間関節症等)、膝の痛み、筋骨格系の痛み[例えば、筋肉痛(例えば、筋・筋膜痛症候群(MPS)、線維性筋痛症候群(FMS)等)、関節痛(例えば、関節炎、関節リウマチ(RA)、痛風等)、脊椎関連の痛み、骨の痛み等]、血流障害による痛み(例えば、閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病(TAO)等)、外傷による痛み、細菌などの異種生物の感染、侵入もしくは寄生による疼痛、神経因性疼痛[例えば、神経痛(例えば、神経損傷、三叉神経痛、肋間神経痛、感覚異常性大腿神経痛、鼠径神経痛、伏在神経痛、正中神経痛、尺骨神経痛、坐骨神経痛、神経根痛等)、帯状疱疹疼痛(例えば、急性期帯状疱疹疼痛、帯状疱疹後疼痛(慢性期)等)、糖尿病性疼痛(例えば、糖尿病性ニューロパシー、大径線維ニューロパシー、小径線維ニューロパシー、近位筋優位運動ニューロパシー、急性単神経障害、圧迫による麻痺等)、絞扼性神経障害(例えば、胸郭出口症候群、肩甲上神経絞扼障害、肩甲背神経絞扼障害、四辺形間隙症候群、円回内筋症候群、前骨間神経症候群、肘部管症候群、遅発性尺骨神経麻痺、後骨間神経症候群、手根管症候群、尺骨神経管症候群、Wartenberg病、Blowler's thumb、知覚異常性大腿痛、梨状筋症候群、Hunter管症候群、総腓骨神経絞扼障害、足根管症候群、前足根管症候群、Morton病、頚部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症、広範脊柱管狭窄症等)、腰痛関連ニューロパシー、腕神経叢引き抜き損傷、反射性交感神経性ジストロフィー(複雑性局所疼痛症候群タイプ1)、反射性交感神経性萎縮症、カウザルギー(灼熱痛、複雑性局所疼痛症候群タイプ2)、有痛性神経障害、脊髄損傷後疼痛、幻影痛(例えば、幻肢痛、幻歯痛等)、求心路遮断痛、医原性ニューロパシー、交感神経依存性疼痛、逆行性C線維興奮症候群(ABC症候群[Angry Backffiring C-nociceptor syndrome])、癌による疼痛、HIV関連神経因性疼痛、結石誘発疼痛(例えば、尿路結石(例えば、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石等)による疼痛、胆嚢結石による疼痛、精管結石による疼痛等)、術後痛、慢性頭痛、口腔顔面痛(例えば、歯痛、舌痛症、顎関節症、三叉神経痛等)、非定型性顔面痛(例えば、抜歯後等の非定型性顔面痛等)、肩関節周囲炎、変形性関節症、関節炎、リウマチに伴う疼痛、バックペイン、多発性硬化症、薬物治療によって誘発される疼痛、放射線治療によって誘発される疼痛、麻薬性鎮痛薬の効果が十分に得られない疼痛等]等が挙げられる。
本発明いくつかの態様の疼痛治療薬は、痛覚過敏の治療を必要とする対象の治療に有効である。
対象は、例えば、ヒト又はその他の哺乳動物(ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)であるが、好ましくは、ヒトである。
「薬学的に許容され得る担体」としては、賦形剤、希釈剤、増量剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、乳化剤、芳香剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等が挙げられる。そのような担体の一つ以上を用いることにより、注射剤、液剤、カプセル剤、懸濁剤、乳剤あるいはシロップ剤等の形態の医薬組成物を調製することができる。これらの医薬組成物は、経口あるいは非経口的に投与することができる。非経口投与のための形態としては、1つ以上の活性物質を含み、常法により処方される注射剤などが含まれる。注射剤の場合には、生理食塩水又は市販の注射用蒸留水等の薬学的に許容される担体中に溶解または懸濁することにより製造することができる。
本発明の医薬組成物の投与量又は治療的有効量は、患者の年齢、性別、体重及び症状、治療効果、投与方法、処理時間などにより異なるが、通常成人一人当たり、一回につき0.0001mg〜1000mgの範囲、10mgか〜50mgの範囲、0.5mg〜1mgの範囲などで投与することができるが、この範囲に限定されるものではない。
例えば注射剤により投与する場合は、疼痛の治療を必要とする対象(例えば、ヒト)に対し、1回の投与において1kg体重あたり、0,5mg〜1mgの範囲などの量を、1日あたり1回〜数回投与することができる。投与の形態としては、静脈内注射、皮下注射、皮内注射、筋肉内注射あるいは腹腔内注射などが挙げられる。また、注射剤は、場合により、非水性の希釈剤(例えばポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、エタノール等のアルコール類など)、懸濁剤あるいは乳濁剤として調製することもできる。そのような注射剤の無菌化は、フィルターによる濾過滅菌、殺菌剤の配合等により行うことができる。注射剤は、用時調製の形態として製造することができる。即ち、凍結乾燥法などによって無菌の固体組成物とし、使用前に無菌の注射用蒸留水または他の溶媒に溶解して使用することができる。
本発明の疼痛治療薬は、本発明のIL27又はその変異体の遺伝子を挿入したベクターの形態でもよい。この場合、当該ベクターを対象に投与することにより、対象の体内でIL27又はその変異体の遺伝子を発現させ、鎮痛効果が得られる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、EBI−3遺伝子ホモノックアウトマウスは、本発明者らの研究室で以前作製したものを用いた(Igawa, T., Nakashima, H., Sadanaga, A., Masutani, K., Miyake, K., Shimizu, S., Takeda, A., Hamano, S., Yoshida, H. (2009) Deficiency in EBV-induced gene 3 (EBI3) in MRL/lpr mice results in pathological alteration of autoimmune glomerulonephritis and sialadenitis. Mod Rheumatol 19, 33-41.)。
WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウスは、アムジェン社より分与を受けたものを用いた(Yoshida, H., Hamano, S., Senaldi, G., Covey, T., Faggioni, R., Mu, S., Xia, M., Wakeham, A.C., Nishina, H., Potter, J., Saris, C.J., Mak, T.W. (2001) WSX-1 Is Required for the Initiation of Th1 Responses and Resistance to L. major Infection. Immunity15, 569-78.)。
野生型マウスは、C57BL6(Jackson Laboratory社)を用いた。
実施例1:疼痛耐性閾値測定実験
野生型マウス、EBI−3遺伝子ホモノックアウトマウス及びWSX−1遺伝子ホモノックアウトマウスのそれぞれについて、以下の通り、疼痛耐性閾値測定実験を行った。
(1) 機械刺激による疼痛耐性閾値測定実験
以下の通りvon Frey test(Makoto Tsuda, Kazuya Kuboyama, Tomoyuki Inoue, Kenichiro Nagata, Hidetoshi Tozaki-Saitoh, Kazuhide Inoue (2009) Molecular Pain, 5:28、 S.R. Chaplan, F.W. Bach, J.W. Pogrel, J.M.Chung, T.L. Yaksh (1994) Journal of Neuroscience Methods, 53:55-63、および Kenji Honda, Yukio Takano (2007) 日本薬理学会誌, 130:39-44)により痛覚過敏を評価した。
実験開始1時間前にマウスをワイヤー製メッシュの上に乗せ、個別にガラス製容器をかぶせて環境に馴化させる。その後、メッシュの下からvon Frey フィラメント(North Coast Medical, Inc.)を用いて機械性侵害刺激法を行った。この方法は決まった圧力を加えることができる太さの異なるvon Frey フィラメントを、マウスの後肢足裏に垂直に曲がるまで押し付け、逃避反応を引き起こすか否かを観察するものである。疼痛閾値の評価法としては、up-down刺激法を用いた。この方法では中程度のフィラメントから開始し、フィラメント刺激で逃避反応が認められたら、その一つ下の太さのフィラメントで刺激し、反応が認められないときは一つ上の太さのフィラメントの刺激を行う。この方法での値は、刺激に対する反応が陽性から陰性、あるいは陰性から陽性へと変化した前後の2反応を最初の反応とし、その後4回(計6回)同様のup-down刺激で得られた成績から計算式(S.R. Chaplan, F.W. Bach, J.W. Pogrel, J.M.Chung, T.L. Yaksh (1994) Journal of Neuroscience Methods, 53:55-63)で50%閾値を求める。
その結果を、図1及び図2に示す。図1中のグラフは平均値±標準偏差(n=10)で示した。図2中のグラフは平均値±標準偏差(n=7〜10)で示した。図1及び図2中、「B6」は野生型マウス(C57BL6)を示し、「WSX-1」は WSX-1遺伝子ホモノックアウトマウスを示し、「EBI3」は EBI-3遺伝子ホモノックアウトマウスを示す。有意差の検定は、Kruskal-Wallisの検定及びSteel-Dwassの検定により行った。「*」は、B6と比較したとき、p<0.01であることを示し、「♯」は、EBI3と比較したとき、p<0.05であることを示す。
まず始めに、野生型マウス、EBI−3遺伝子ホモノックアウトマウス及び、WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウスに対し、両側足裏に機械刺激を与え、疼痛閾値を測定した(モデル作成前)。機械刺激による疼痛誘発では、WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウス及びEBI−3遺伝子ホモノックアウトマウスで、野生型マウスと比較して、疼痛閾値の低下を認めた(図1)。
その後、これらのマウスの脊髄神経切断により神経障害性疼痛モデルを作成し、両側足裏の機械刺激に対する疼痛閾値を継時的に測定した。その結果、野生型マウス、EBI3遺伝子ホモノックアウトマウス及び、WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウスの全系統において、神経切断側は非神経切断側と比較して、疼痛閾値の低下を認めた。この際、EBI3遺伝子ホモノックアウトマウス及び、WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウスの切断側の疼痛閾値は、野生型のものよりも低い値であった(EBI3のデータは省略)。従って、これらのノックアウトマウスは、モデル作成前、及びモデル作成後において強い疼痛関連行動を示した(図2)。
(2) 温熱刺激による疼痛誘発
以下の通りhot plate test(Kenji Honda, Yukio Takano (2007) 日本薬理学会誌, 130:39-44)により痛覚過敏を評価した。
ホットプレート式鎮痛効果測定装置(室町機械(株))を使用した。実験開始前に、各マウスを室温のプレートの測定用ケージに入れて、約3分間馴化させた。設定温度は41℃、48℃および55℃とし、cut off timeはいずれも60秒とした。設定温度に加熱されたプレート上の測定用ケージにマウスを入れ、足を舐める、ジャンプするなどの反応を示すまでの潜時を測定した。測定は設定温度が低い方から実施した。それぞれの設定温度について2回測定し、2回の平均値を測定値とした。各測定の間隔は30分以上とした。
その結果を、図3に示す。図3中のグラフは平均値±標準偏差(n=6)で示した。図3中、「B6」、「WSX-1」及び「EBI3」は前記と同様である。有意差の検定は、Kruskal-Wallisの検定及びSteel-Dwassの検定により行った。「*」は前記と同様である。「♯」はWSX-1と比較したとき、p<0.05であることを示す。
温熱刺激による疼痛誘発では、非侵害刺激とされる41°Cでは、WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウス及びEBI−3遺伝子ホモノックアウトマウスで、野生型マウスと比較して潜時の低下が認められなかった(図3)。一方、侵害刺激とされる48°C以上では、WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウス及びEBI−3遺伝子ホモノックアウトマウスで、野生型マウスと比較して潜時の低下が認められた(図3)。
(3) 化学刺激による疼痛誘発
以下の通りformalin test(Kenji Honda, Yukio Takano (2007) 日本薬理学会誌, 130:39-44)により痛覚過敏を評価した。
マウスをホルマリン投与前に1匹ずつ測定用プラスチックビーカーに入れて、30分以上馴化させた。その後、マウスの左後肢足裏に5%ホルマリン液10μLを皮下投与した。投与後は直ちに測定用プラスチックビーカーに入れて90分間ビデオカメラで撮影し、記録した映像を再生して測定を行った。処理足を舐めるまたは噛む行動を疼痛の指標とし、これらの疼痛行動を示した累積時間を測定した。測定時間はホルマリン投与後60分までとし、5分毎に区切って測定を行った。
その結果を、図4に示す。図4中のグラフは平均値±標準偏差(n=5)で示した。図4中、「B6」、「WSX-1」及び「EBI3」は前記と同様である。有意差の検定は、2-way Anova後にTukeyの検定により行った。「*」は前記と同様である。
化学刺激による疼痛誘発では、化学刺激後0〜5分では化学刺激による疼痛が生じ、25〜30分では引き続き炎症による痛みが生じる。実際、野生型マウスでは、化学刺激後0〜5分と25〜30分に疼痛を感じる時間の2つのピークが生じた(図4)。WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウス及びEBI−3遺伝子ホモノックアウトマウスでは、さらに、両ピークで疼痛を感じる時間が野生型マウスと比較して延長していた(図4)。
化学刺激後0〜5分に生じる疼痛は、炎症を介した痛みではない。このため、化学刺激後0〜5分に生じる疼痛は、WSX−1遺伝子ホモノックアウトマウス及びEBI−3遺伝子ホモノックアウトマウスにおいて、IL27の炎症を抑制する作用が失われたために生じる疼痛ではない。
以上のことから、IL-27の構成サブユニットの遺伝子(EBI−3遺伝子及びIL27−p28遺伝子)及びその受容体の遺伝子(WSX−1遺伝子及びglycoprotein 130)からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の全部又は一部の機能を欠損させたノックアウト非ヒト動物、あるいは、IL-27及び/又はIL27R遺伝子の発現量が野生型と比較して低下しているノックダウン非ヒト動物は、痛覚過敏を自然発症することが分かった。このため、これらのノックアウト非ヒト動物及びノックダウン非ヒト動物は、疼痛発症モデル動物として使用することができる。
また、これらのノックアウト非ヒト動物及びノックダウン非ヒト動物より作製した神経障害性疼痛モデルマウスは、神経障害性疼痛が高いレベルで生じることが分かった。
実施例2:IL27の調製及びIL27投与実験
EBI−3遺伝子ホモノックアウトマウスについて、IL27の調製及びIL27投与実験を以下の通り行った。
IL-27の調整方法
IL-27はBioLegend社のRecombinant Mouse IL-27(Catalog No.577404 , Size 25μg, 0.1mg/ml) を使用した。Recombinant Mouse IL-27に滅菌10%PBSを加えて、10μg/mlに調整し、冷凍保存した。使用直前に解凍し、必要に応じて滅菌10%PBSを加えて各濃度に調整した。さらに、滅菌マウスPBSを加え、マウス1匹あたりの総投与量が160μlとなるよう調整した。
IL-27投与実験法
EBI3KO遺伝子ホモノックアウトマウス(10〜14週齢・オス)について、熱刺激に対する反応を測定した。続いて上述の方法で調整したrecombinant IL-27(400ng)を単回腹腔内投与し、熱刺激に対する反応を経時的に測定した。熱刺激として,上述のHot plate testを設定温度48℃として行った。
その結果を図5に示す。図5中のグラフは平均値±標準偏差(n=5)で示した。図5中、「EBI-cont」は、rIL27を投与しなかった対照群を示し、「EBI-40ng」、「EBI-120ng」、「EBI-400ng」及び「EBI-1200ng」は、それぞれ、rIL27を、40ng、120ng、400ng及び1200ng腹腔内投与した群を示す。
rIL27を投与しなかった対照群(EBI_cont)と比較して、120ng以上のrIL27投与群(EBI_120ng、EBI_400ng及びEBI_1200ng)では、潜時の上昇が認められた(図5)。また、この鎮痛効果は、rIL27の投与後1時間より効果を示し、約4時間持続した(図5)。
rIL27の投与後きわめて短時間で鎮痛効果が得られること、温熱刺激は感染などに引き続いておこる炎症を伴わない刺激であることなどから、rIL27の鎮痛作用は、感染などに引き続いておこる免疫抑制および炎症抑制による鎮痛作用とは別個の作用であることが分かる。
rIL27では、全身投与の1つである腹腔内投与により極めて迅速に、かつ有効に鎮痛効果が得られており、投与経路および投与法を問わず、鎮痛効果が得られることが分かる。
[配列番号1]マウスEBI3遺伝子のDNA配列(Accession No.NM_015766)。
[配列番号2]マウスEBI3のアミノ酸配列(Accession No.NP_056581)。
[配列番号3]ラットEBI3遺伝子のDNA配列(Accession No.NM_001109421)。
[配列番号4]ラットEBI3のアミノ酸配列(Accession No.NP_001102891)。
[配列番号5]マウスIL27−p28遺伝子のDNA配列(Accession No.NM_145636)。
[配列番号6]マウスIL27−p28のアミノ酸配列(Accession No.NP_663611)。
[配列番号7]ラットIL27−p28遺伝子のDNA配列(推定)(Accession No.XM_002725687)。
[配列番号8]ラットIL27−p28のアミノ酸配列(推定)(Accession No.XP_002725733)。
[配列番号9]マウスWSX−1遺伝子のDNA配列(Accession No.NM_016671)。
[配列番号10]マウスWSX−1のアミノ酸配列(Accession No.NP_057880)。
[配列番号11]ラットWSX−1遺伝子のDNA配列(Accession No.NM_001105943)。
[配列番号12]ラットWSX−1のアミノ酸配列(Accession No.NP_001099413)。
[配列番号13]マウスglycoprotein 130遺伝子のDNA配列(Accession No.M83336)
[配列番号14]マウスglycoprotein 130のアミノ酸配列(Accession No.AAA37723.1")
[配列番号15]ラットglycoprotein 130遺伝子のDNA配列(Accession No.NM_001008725)
[配列番号16]ラットglycoprotein 130のアミノ酸配列(Accession No.NP_001008725.2")
[配列番号17]ヒトEBI3遺伝子のDNA配列(Accession No.NM_005755)
[配列番号18]ヒトEBI3のアミノ酸配列(Accession No.NP_005746)
[配列番号19]ヒトIL27−p28遺伝子のDNA配列(Accession No.NM_145659)
[配列番号20]ヒトIL27−p28のアミノ酸配列(Accession No.NP_663634)

Claims (6)

  1. IL27及び/又はIL27R遺伝子の全部又は一部の機能が失われたノックアウト非ヒト動物からなる、疼痛発症モデル動物。
  2. IL27及び/又はIL27R遺伝子の発現量が、野生型と比較して低下しているノックダウン非ヒト動物からなる、疼痛発症モデル動物。
  3. 前記非ヒト動物が、神経損傷の処置を施された動物である、請求項1又は2に記載の動物。
  4. 前記非ヒト動物がマウスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の動物。
  5. 疼痛治療薬のスクリーニング方法であって、
    (a)請求項1〜3のいずれか1項に記載の動物に被検物質を接触させ、
    (b)被検物質を接触させた動物における疼痛と相関関係を有する指標と、対照における疼痛と相関関係を有する指標とを比較し、
    (c)(b)の比較結果に基づき、被検物質の鎮痛効果を評価し、
    (d)鎮痛効果を有すると評価された被検物質を選択する
    ことを含む、前記方法。
  6. IL27またはその変異体を含有する、疼痛治療薬。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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