JP2015044199A - 単環芳香族炭化水素製造用触媒および単環芳香族炭化水素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1〜3では、ゼオライト触媒を用いて、LCO等に多く含まれる多環芳香族炭化水素から単環芳香族炭化水素を製造する方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の収率が充分に高いとは言えなかった。
このような厳しい条件下において、触媒としてゼオライト触媒を用いる場合には、触媒の水熱劣化が進行して経時的に反応活性が低下するため、触媒の水熱安定性の向上が求められる。しかし、特許文献1〜3に記載のゼオライト触媒では、水熱安定性を向上させる対策が採られておらず、実用的な利用価値は著しく低いものであった。
これらのうち、リンの添加は、水熱安定性向上だけでなく、流動接触分解における炭素質析出抑制による選択性向上、バインダーの耐摩耗性向上などの効果も知られ、接触分解反応用の触媒に対してはしばしば適用されている。
ゼオライトにリンを添加した接触分解用の触媒については、例えば、特許文献4〜6に開示されている。
すなわち、特許文献4には、リン、ガリウム、ゲルマニウム、スズが添加されたZSM−5を含む触媒を用いて、ナフサからオレフィンを製造する方法が開示されている。特許文献4では、リンを添加することにより、メタンや芳香族の生成を抑制してオレフィン生成の選択率を高め、しかも短い接触時間でも高い活性を確保して、オレフィンの収率を高めることを目的としている。
特許文献5には、ジルコニウムと希土類を含有するZSM−5にリンを担持した触媒とUSYゼオライト、REYゼオライト、カオリン、シリカおよびアルミナを含む触媒を用い、重質炭化水素からオレフィンを高い収率で製造する方法が開示されている。
特許文献6には、リンおよび遷移金属を担持したZSM−5を含有する触媒を用いて炭化水素を変換して、エチレン、プロピレンを高い収率で製造する方法が開示されている。
したがって、多環芳香族炭化水素を含む原料油からの炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を高い収率で製造し、しかも経時的な単環芳香族炭化水素の収率の低下を防止できる単環芳香族炭化水素製造用触媒は知られていないのが実情であった。
結晶性アルミノシリケートとリンとを含有し、前記結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、前記結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.5以上、1.0以下であることを特徴とする単環芳香族炭化水素製造用触媒。
[2]リン含有量が触媒重量に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする[1]に記載の単環芳香族炭化水素製造用触媒。
[3]前記結晶性アルミノシリケートが、ペンタシル型ゼオライトであることを特徴とする[1]または[2]に記載の単環芳香族炭化水素製造用触媒。
[4]前記結晶性アルミノシリケートが、MFI型ゼオライトであることを特徴とする[1]から[3]のいずれか一項に記載の単環芳香族炭化水素製造用触媒。
[5]10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下である原料油を、[1]から[4]のいずれか一項に記載の単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させることを特徴とする炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
[6]前記原料油が、流動接触分解装置で生成する分解軽油を含むことを特徴とする[5]に記載の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
[7]流動床反応装置にて前記原料油を前記単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させることを特徴とする[5]または[6]に記載の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
本発明の単環芳香族炭化水素製造用触媒(以下、「触媒」と略す。)は、多環芳香族炭化水素および飽和炭化水素を含む原料油から炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素(以下、「単環芳香族炭化水素」と略す。)を製造するためのものであり、結晶性アルミノシリケートとリンとを含有する。
結晶性アルミノシリケートとしては、特に限定されないが、例えば、ペンタシル型ゼオライト、中細孔ゼオライトが好ましい。中細孔ゼオライトとしては、MFI、MEL、TON、MTT、MRE、FER、AEL、EUOタイプの結晶構造のゼオライトがより好ましく、単環芳香族炭化水素の収率がより高くなることから、MFI型および/またはMEL型の結晶構造のゼオライトが特に好ましい。
MFI型、MEL型等のゼオライトは、The Structure Commission of the International Zeolite Associationにより公表された種類の公知ゼオライト構造型に属する(Atlas of Zeolite Structure Types,W.M.Meiyer and D.H.Olson (1978).Distributed by Polycrystal Book Service,Pittsburgh,PA,USA)。
触媒における結晶性アルミノシリケートの含有量は、触媒全体を100質量%とした際の10〜95質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜70質量%が特に好ましい。結晶性アルミノシリケートの含有量が10質量%以上かつ95質量%以下であれば、充分に高い触媒活性が得られる。
結晶性アルミノシリケートに含有されるリンと結晶性アルミノリケートに含有されるアルミニウムとのモル比率(P/Al比)は0.1以上、1.0以下である。P/Al比が1.0を超えると、単環芳香族炭化水素の収率が低くなるので、P/Al比は1.0以下、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.9以下である。
また、P/Al比が0.1未満の場合、定常状態での単環芳香族炭化水素の収率が低くなるため、P/Al比は0.1以上、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上である。
なお、本発明の触媒におけるリンの含有量の上限値は、特許文献4〜6に記載の触媒におけるリン含有量の上限値よりもかなり小さい。これは、本発明の触媒が適用される反応の原料油は多環芳香族炭化水素を多く含み、反応性が低いことが一つの要因と考えられる。リン添加量を高くしすぎると、原料油がさらに反応しにくくなり、芳香族化活性が低下するため、単環芳香族炭化水素の収率の低下を招くことになる。一方、特許文献4〜6での原料油(例えば、流動接触分解装置の原料油として用いられる減圧軽油等)は重質で、分子量が大きく、触媒に吸着されやすいため、LCO等の留分よりも分解されやすい。しかも、軽質オレフィンに分解することは容易であるため、リンを多量に担持して芳香族化活性が低下しても、大きな問題にはならない。
本発明の触媒は、反応形式に応じて、例えば、粉末状、粒状、ペレット状等にされる。
例えば、流動床の場合には粉末状にされ、固定床の場合には粒状またはペレット状にされる。流動床で用いる触媒の平均粒子径は30〜180μmが好ましく、50〜100μmがより好ましい。また、流動床で用いる触媒のかさ密度は0.4〜1.8g/ccが好ましく、0.5〜1.0g/ccがより好ましい。
なお、平均粒子径はふるいによる分級によって得た粒径分布において50質量%となる粒径を表し、かさ密度はJIS規格R9301−2−3の方法により測定した値である。
粒状またはペレット状の触媒を得る場合には、必要に応じて、結晶性アルミノシリケートまたは触媒にバインダー等として不活性な酸化物を配合した後、各種成型機を用いて成型すればよい。
また、触媒がバインダー等の無機酸化物を含有する場合、バインダー等と結晶性アルミノシリケートを混合した後に、リンを添加して触媒を製造してもよい。
触媒がバインダー等の無機酸化物を含有する場合、リン含有量は触媒全重量に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、さらには、下限は0.5質量%以上がより好ましく、上限は9質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下が特に好ましい。触媒全重量に対するリンの含有量が0.1質量%以上であることで、経時的な単環芳香族炭化水素の収率低下を防止でき、10質量%以下であることで、単環芳香族炭化水素の収率を高くできる。
本発明の単環芳香族炭化水素の製造方法は、原料油を上記触媒に接触させて、反応させる方法である。
本反応は、原料油と触媒の酸点とを接触させることにより、分解、脱水素、環化、水素移行等の様々な反応により、多環芳香族炭化水素を開環させて単環芳香族炭化水素に転換する方法である。
本発明で使用される原料油は、10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下の油である。10容量%留出温度が140℃未満の油では、軽質のものからBTXを製造することになり、本発明の主旨にそぐわなくなるため、140℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。また、原料油の90容量%留出温度が380℃を超える原料油を用いた場合も、触媒上へのコーク堆積量が増大して、触媒活性の急激な低下を引き起こす傾向にあるため、原料油の90容量%留出温度は380℃以下が好ましく、360℃以下がより好ましい。
なお、ここでいう10容量%留出温度、90容量%留出温度、終点は、JIS K2254「石油製品−蒸留試験方法」に準拠して測定される値である。
10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下の原料油としては、例えば、流動接触分解装置で生成する分解軽油(LCO)、石炭液化油、重質油水素化分解精製油、直留灯油、直留軽油、コーカー灯油、コーカー軽油およびオイルサンド水素化分解精製油などが挙げられ、流動接触分解装置で生成する分解軽油(LCO)を含むことがより好ましい。
また、原料油中に多環芳香族炭化水素が多く含まれると炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素収率が低下するため、原料油中の多環芳香族炭化水素の含有量(多環芳香族分)は50容量%以下が好ましく、30容量%以下であることがより好ましい。
なお、ここでいう多環芳香族分とは、JPI−5S−49「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠して測定される2環芳香族炭化水素含有量(2環芳香族分)および、3環以上の芳香族炭化水素含有量(3環以上の芳香族分)の合計値を意味する。
原料油を触媒と接触、反応させる際の反応形式としては、固定床、移動床、流動床等が挙げられる。本発明においては、重質分を原料とするため、触媒に付着したコーク分を連続的に除去可能で、かつ、安定的に反応を行うことができる流動床が好ましく、反応器と再生器との間を触媒が循環し、連続的に反応−再生を繰り返すことができる、連続再生式流動床が特に好ましい。触媒と接触する際の原料油は、気相状態であることが好ましい。
また、原料は、必要に応じてガスによって希釈してもよい。また、未反応原料が生じた場合は必要に応じてリサイクルしてもよい。
原料油を触媒と接触、反応させる際の反応温度は、特に制限されないが、350〜700℃が好ましい。下限は、充分な反応活性が得られることから、450℃以上がより好ましい。一方、上限は、エネルギー的に有利である上に、容易に触媒を再生できるため、650℃以下がより好ましい。
原料油を触媒と接触、反応させる際の反応圧力は、1.0MPaG以下とすることが好ましい。反応圧力が1.0MPaG以下であれば、軽質ガスの副生を防止できる上に、反応装置の耐圧性を低くできる。
原料油と触媒との接触時間は、実質的に所望する反応が進行すれば特に制限はされないが、例えば、触媒上のガス通過時間で1〜300秒が好ましく、さらに下限は5秒以上、上限は150秒以下がより好ましい。接触時間が1秒以上であれば、確実に反応させることができ、接触時間が300秒以下であれば、コーキング等による触媒への炭素質の蓄積を抑制できる。または分解による軽質ガスの発生量を抑制できる。
本発明では、単環芳香族炭化水素の収率が15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。単環芳香族炭化水素の収率が15質量%未満であると生成物中の目的物濃度が低く、回収効率が低下するので好ましくない。
硅酸ナトリウム(Jケイ酸ソーダ3号、SiO2:28〜30質量%、Na:9〜10質量%、残部水、日本化学工業(株)製)の1706.1gおよび水の2227.5gからなる溶液(A)と、Al2(SO4)3・14〜18H2O(試薬特級、和光純薬工業(株)製)の64.2g、テトラプロピルアンモニウムブロマイドの369.2g、H2SO4(97質量%)の152.1g、NaClの326.6gおよび水の2975.7gからなる溶液(B)をそれぞれ調製した。
得られた混合物をミキサーで15分間激しく撹拌し、ゲルを解砕して乳状の均質微細な状態にした。
次いで、この混合物をステンレス製のオートクレーブに入れ、温度:165℃、時間:72時間、撹拌速度:100rpmの条件で、自己圧力下に結晶化操作を行った。結晶化操作の終了後、生成物を濾過して固体生成物を回収し、約5リットルの脱イオン水を用いて洗浄と濾過を5回繰り返した。濾別して得られた固形物を120℃で乾燥し、さらに空気流通下、550℃で3時間焼成した。
得られた焼成物の1g当り5mLの割合で30質量%硝酸アンモニウム水溶液を加え、100℃で2時間加熱、撹拌した後、濾過、水洗した。この操作を4回繰り返した後、120℃で3時間乾燥して、アンモニウム型結晶性アルミノシリケートを得た。その後、780℃で3時間焼成を行い、プロトン型結晶性アルミノシリケートを得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.14であり、触媒全重量に対するリン含有量は0.2質量%であった。
プロトン型結晶性アルミノシリケート30gに、0.7質量%のリン(触媒全重量を100質量%とした値)が含まれるようにリン酸水素二アンモニウム水溶液の濃度を調製し、該水溶液30gを含浸させたこと以外は実施例1と同様にして、粒状体の触媒2(以下、「粒状化触媒2」という。)を得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.50であり、触媒全重量に対するリン含有量は0.7質量%であった。
プロトン型結晶性アルミノシリケート30gに、1.2質量%のリン(触媒全重量を100質量%とした値)が含まれるようにリン酸水溶液の濃度を調製し、該水溶液30gを含浸させたこと以外は実施例1と同様にして、粒状体の触媒3(以下、「粒状化触媒3」という。)を得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.86であり、触媒全重量に対するリン含有量は1.2質量%であった。
フュームドシリカ18gに、16.2質量%のリンが含有されるようにリン酸水素二アンモニウム水溶液30gを含浸させ、120℃で乾燥させた。その後、空気流通下、780℃で3時間焼成して、リンを含有するフュームドシリカを得た。リンを含有するフュームドシリカ18gと実施例2で調製した触媒2:12gとを混合し、得られた触媒に39.2MPa(400kgf)の圧力をかけて打錠成型し、粗粉砕して20〜28メッシュのサイズに揃えて、粒状体の触媒4(以下、「粒状化触媒4」という。)を得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.50であり、触媒全重量に対するリン含有量は10質量%であった。
希硫酸に硅酸ナトリウム(Jケイ酸ソーダ3号、SiO2:28〜30質量%、Na:9〜10質量%、残部水、日本化学工業(株)製)106gと純水の混合溶液を滴下し、シリカゾル水溶液(SiO2濃度10.2%)を調製した。一方、実施例2で調製した結晶性アルミノシリケートとリンとを含有する触媒2:20.4gに蒸留水を加え、ゼオライトスラリーを調製した。上記のゼオライトスラリーとシリカゾル水溶液300gを混合し、調製したスラリーを250℃で噴霧乾燥し、球形触媒を得た。その後、600℃で3時間焼成し、平均粒子径が84μm、かさ密度が0.74g/ccある粉末状の触媒5(以下、「粉末状触媒5」という。)を得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.50であり、触媒全重量に対するリン含有量は0.28質量%であった。
プロトン型結晶性アルミノシリケート30gに、2.0質量%のリン(触媒全重量を100質量%とした値)が含まれるようにリン酸水素二アンモニウム水溶液の濃度を調製し、該水溶液30gを含浸させたこと以外は実施例1と同様にして、粒状体の触媒6(以下、「粒状化触媒6」という。)を得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が1.43であり、触媒全重量に対するリン含有量は2.0質量%であった。
プロトン型結晶性アルミノシリケートをそのまま用いたこと以外は実施例1と同様にして、粒状体の触媒7(以下、「粒状化触媒7」という。)を得た。
粒状化触媒(10ml)を反応器に充填した流通式反応装置を用い、反応温度:550℃、反応圧力:0MPaGの条件で、表1の性状を有する原料油を粒状化触媒と接触、反応させた。その際、原料油と粒状化触媒との接触時間が7秒となるように希釈剤として窒素を導入した。
この条件にて30分反応させて、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を製造し、反応装置に直結されたFIDガスクロマトグラフにより生成物の組成分析を行って、反応初期の触媒活性を評価した。評価結果を表2に示す。
なお、表2中の生成物中の重質分とは炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素以外で炭素数6以上の炭化水素を、軽質ナフサとは炭素数5〜6の炭化水素を、液化石油ガスとは炭素数3〜4の炭化水素を、分解ガスとは炭素数2以下の炭化水素を意味する。
粒状化触媒1〜4、7を、各々、処理温度650℃、処理時間6時間、水蒸気100質量%の環境下で水熱処理することにより、擬似的に水熱劣化させた擬似劣化触媒1〜4、7を作製した。
粒状化触媒1〜4、7の代わりに擬似劣化触媒1〜4、7を各々用いた以外は評価1と同様に、原料油を反応させ、得られた生成物の組成分析を行って水熱劣化後の触媒活性を評価した。評価結果を表2に示す。
粉末状触媒(400g)を反応器に充填した流通式反応装置を用い、反応温度:550℃、反応圧力:0.1MPaGの条件で、表1の性状を有する原料油を粉末状触媒と接触、反応させた。その際、直径60mmである反応管に粉末状触媒を充填した。原料油と粉末状触媒との接触時間が10秒となるように希釈剤として窒素を導入した。
この条件にて10分反応させて、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を製造し、反応装置に直結されたFIDガスクロマトグラフにより生成物の組成分析を行って、反応初期の触媒活性を評価した。評価結果を表2に示す。
なお、表2中の生成物中の重質分とは炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素以外で炭素数6以上の炭化水素を、軽質ナフサとは炭素数5〜6の炭化水素を、液化石油ガスとは炭素数3〜4の炭化水素を、分解ガスとは炭素数2以下の炭化水素を意味する。
粉末状触媒5を、処理温度650℃、処理時間6時間、水蒸気100質量%の環境下で水熱処理することにより、擬似的に水熱劣化させた擬似劣化触媒5を作製した。
粉末状触媒5の代わりに擬似劣化触媒5を用いた以外は評価3と同様に、原料油を反応させ、得られた生成物の組成分析を行って水熱劣化後の触媒活性を評価した。評価結果を表2に示す。
反応初期の触媒活性評価(評価1または評価3)における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素量(質量%)に対する、水熱劣化後の触媒活性評価(評価2または評価4)における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素量(質量%)([評価2(または4)における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素量(質量%)]/[評価1(または3)における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素量(質量%)])の値を算出し、触媒劣化の度合いを求めた。結果を表2に併記する。なお、この値が大きいほど、触媒劣化が起こりにくいことを意味する。また、炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素量は単環芳香族炭化水素量と略す場合もある。
粒状化触媒1〜4および粉末状触媒5を用いた実施例1〜5は、反応初期における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が、各々、39質量%、34質量%、22質量%、23質量%、31質量%であり、水熱劣化後の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が、各々、27質量%、30質量%、23質量%、22質量%、28質量%であり、触媒劣化の度合い([評価2(または4)における単環芳香族炭化水素量(質量%)]/[評価1(または3)における単環芳香族炭化水素量(質量%)])は、各々、0.69、0.90、1.06、0.96、0.9となった。
粒状化触媒1〜4および粉末状触媒5を用いた実施例1〜5は、反応初期の触媒活性および水熱劣化後の触媒活性のいずれも良好で、本願の目的とする炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を反応初期においても、水熱劣化後においても収率よく得られることが分かった。
一方、P/Al比が大きい粒状化触媒6を用いた比較例1は、反応初期における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が、5質量%となり、多量のリンを添加すると、反応初期においても生成物中の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の収率が著しく低下することが分かった。
P/Al比が0である粒状化触媒7を用いた比較例2は、反応初期における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が38質量%、水熱劣化後の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が10質量%、触媒劣化の度合い([評価2における単環芳香族炭化水素量(質量%)]/[評価1における単環芳香族炭化水素量(質量%)])は0.26となり、リンを含有しない触媒を用いると、反応初期における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の収率は良好であるが、水熱劣化後の収率が低下し、触媒劣化が著しく、実用的でないことが分かった。
硅酸ナトリウム(Jケイ酸ソーダ3号、SiO2:28〜30質量%、Na:9〜10質量%、残部水、日本化学工業(株)製)の1706.1gおよび水の2227.5gからなる溶液(A)と、Al2(SO4)3・14〜18H2O(試薬特級、和光純薬工業(株)製)の64.2g、テトラプロピルアンモニウムブロマイドの369.2g、H2SO4(97質量%)の152.1g、NaClの326.6gおよび水の2975.7gからなる溶液(B)をそれぞれ調製した。
プロトン型結晶性アルミノシリケート30gに、0.7質量%のリン(触媒全重量を100質量%とした値)が含まれるようにリン酸水素二アンモニウム水溶液の濃度を調製し、該水溶液30gを含浸させたこと以外は参考例1と同様にして、粒状体の触媒2(以下、「粒状化触媒2」という。)を得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.50であり、触媒全重量に対するリン含有量は0.7質量%であった。
プロトン型結晶性アルミノシリケート30gに、1.2質量%のリン(触媒全重量を100質量%とした値)が含まれるようにリン酸水溶液の濃度を調製し、該水溶液30gを含浸させたこと以外は参考例1と同様にして、粒状体の触媒3(以下、「粒状化触媒3」という。)を得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.86であり、触媒全重量に対するリン含有量は1.2質量%であった。
プロトン型結晶性アルミノシリケート30gに、2.0質量%のリン(触媒全重量を100質量%とした値)が含まれるようにリン酸水素二アンモニウム水溶液の濃度を調製し、該水溶液30gを含浸させたこと以外は参考例1と同様にして、粒状体の触媒6(以下、「粒状化触媒6」という。)を得た。
また、得られた触媒は、結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が1.43であり、触媒全重量に対するリン含有量は2.0質量%であった。
プロトン型結晶性アルミノシリケートをそのまま用いたこと以外は参考例1と同様にして、粒状体の触媒7(以下、「粒状化触媒7」という。)を得た。
粒状化触媒1〜4および粉末状触媒5を用いた参考例1及び実施例2〜5は、反応初期における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が、各々、39質量%、34質量%、22質量%、23質量%、31質量%であり、水熱劣化後の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が、各々、27質量%、30質量%、23質量%、22質量%、28質量%であり、触媒劣化の度合い([評価2(または4)における単環芳香族炭化水素量(質量%)]/[評価1(または3)における単環芳香族炭化水素量(質量%)])は、各々、0.69、0.90、1.06、0.96、0.9となった。
粒状化触媒1〜4および粉末状触媒5を用いた参考例1及び実施例2〜5は、反応初期の触媒活性および水熱劣化後の触媒活性のいずれも良好で、本願の目的とする炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を反応初期においても、水熱劣化後においても収率よく得られることが分かった。
一方、P/Al比が大きい粒状化触媒6を用いた比較例1は、反応初期における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が、5質量%となり、多量のリンを添加すると、反応初期においても生成物中の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の収率が著しく低下することが分かった。
P/Al比が0である粒状化触媒7を用いた比較例2は、反応初期における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が38質量%、水熱劣化後の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素生成量が10質量%、触媒劣化の度合い([評価2における単環芳香族炭化水素量(質量%)]/[評価1における単環芳香族炭化水素量(質量%)])は0.26となり、リンを含有しない触媒を用いると、反応初期における炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の収率は良好であるが、水熱劣化後の収率が低下し、触媒劣化が著しく、実用的でないことが分かった。
Claims (7)
- 10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下である原料油から炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素を製造するための芳香族炭化水素製造用触媒であって、
結晶性アルミノシリケートとリンとを含有し、前記結晶性アルミノシリケートに含まれるリンと、前記結晶性アルミノシリケートのアルミニウムとのモル比率(P/Al比)が0.5以上、1.0以下であることを特徴とする単環芳香族炭化水素製造用触媒。 - リン含有量が触媒重量に対して0.1〜10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の単環芳香族炭化水素製造用触媒。
- 前記結晶性アルミノシリケートが、ペンタシル型ゼオライトであることを特徴とする請求項1または2に記載の単環芳香族炭化水素製造用触媒。
- 前記結晶性アルミノシリケートが、MFI型ゼオライトであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の単環芳香族炭化水素製造用触媒。
- 10容量%留出温度が140℃以上かつ90容量%留出温度が380℃以下である原料油を、請求項1から4のいずれか一項に記載の単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させることを特徴とする炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
- 前記原料油が、流動接触分解装置で生成する分解軽油を含むことを特徴とする請求項5に記載の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
- 流動床反応装置にて前記原料油を前記単環芳香族炭化水素製造用触媒に接触させることを特徴とする請求項5または6に記載の炭素数6〜8の単環芳香族炭化水素の製造方法。
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