JP2015043480A - 音環境調整システム - Google Patents

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晃夫 富田
雅人 飯島
Masahito Iijima
雅人 飯島
瑶子 森元
Haruko Morimoto
瑶子 森元
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Abstract

【課題】建物内における音環境を調整し、その結果、建物内に快適な居住環境を形成することが可能な音環境調整システムを提供することを目的とする。【解決手段】建物1内の音環境を調整するための音環境調整システムが、建物1内に設置され、建物1内の音環境を調整するための音を出力する音出力手段である各スピーカー11,12,13,14,15,16,17,31a,32a,33aを備える。これにより、当該音出力手段によって建物1内の音環境を適切に調整でき、その結果、建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。【選択図】図1

Description

本発明は、住宅等の建物に導入される音環境調整システムに関する。
近年、住宅等の建物における居住環境の快適性が求められており、例えば、建物内に設置された空調装置および照明装置を制御対象として動作制御を行う空調照明システムが知られている(例えば特許文献1)。このようなシステムでは、建物内の温度情報を取得しその取得した温度情報に基づいて空調装置を制御したり、建物内の照度情報を取得しその取得した照度情報に基づいて照明装置を制御したりする。そして、このように各装置の制御を行うことで、建物内を適切な温度や照度に管理、調整することができ、その結果、快適な居住環境の形成が可能となっている。
特開2009−265972号公報
ところで、建物内に快適な居住環境を形成する上で、温度や照度に係る環境の快適性もさることながら、音に係る環境(以下、音環境)が快適であることも重要視されている。すなわち、音は自然に耳に入るものであるため、例えば生活音の遮断や、音による空間演出等によって居住環境の快適性の向上が図れるようになっている。このため、建物内の音環境を適切に調整できる技術の開発が望まれていた。
本発明の課題は、建物内における音環境を調整し、その結果、建物内に快適な居住環境を形成することが可能な音環境調整システムを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図3に示すように、建物1内の音環境を調整するための音環境調整システムであって、
前記建物1内に設置され、前記建物1内の音環境を調整するための音を出力する音出力手段(例えば第一スピーカー11等)を備えることを特徴とする。
ここで、音環境とは、建物1内に発生し得る音に係る環境を指しており、いわゆる生活音と呼称される音が大部分を占める。また、生活音とは、建物1内の日常生活において発生する音であり、例えば足音、話し声、調理中の音、ドアの開閉音、洗濯機や掃除機などの使用音、テレビやステレオなどの音等を指す。
また、音環境を構成する音は、このような生活音だけでなく、例えばイベント(接客やパーティ等)時に発生する音や、在宅勤務時に発生する音等、建物1内における全ての音を包括的に含むものとする。
請求項1に記載の発明によれば、前記建物1内に設置され、前記建物1内の音環境を調整するための音を出力する音出力手段(例えば第一スピーカー11等)を備えるので、当該音出力手段によって前記建物1内の音環境を適切に調整でき、その結果、前記建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
請求項2に記載の発明は、例えば図1,図2に示すように、請求項1に記載の音環境調整システムにおいて、
前記音出力手段は指向性を有するスピーカー11,12,13であり、
当該スピーカー11,12,13は、前記建物1内の一室(例えば居室2)の所定の場所(例えば領域A1,A2,A3)に指向するようにして配置されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、指向性を有する前記スピーカー11,12,13が、前記建物1内の一室(例えば居室2)の所定の場所(例えば領域A1,A2,A3)に指向するようにして配置されているので、前記一室を、前記スピーカー11,12,13から出力される音が聞こえる場所と、聞こえない場所とに分けることができる。換言すれば、前記スピーカー11,12,13から出力される音が聞こえる範囲を制御することができる。
これによって、前記スピーカー11,12,13から出力される音を、聞きたい人にだけ聞こえるようにして前記建物1内の音環境を調整できるので、前記建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
請求項3に記載の発明は、例えば図1,図2に示すように、請求項1または2に記載の音環境調整システムにおいて、
周囲の音を入力する音入力手段(例えば第一マイクロフォン21等)をさらに備えており、
前記音出力手段はスピーカー14であり、当該音出力手段は、前記音入力手段によって入力された音を、前記建物1内に残響音として出力するように設定されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、前記スピーカー14は、前記音入力手段(例えば第一マイクロフォン21等)によって入力された音を、前記建物1内に残響音として出力するように設定されているので、例えばパーティや音楽・映画鑑賞等、前記建物1内で繰り広げられる場面(シーン)ごとに残響音をコントロールでき、前記建物1内を、普段とは異なる印象の空間として演出することができる。
これによって、前記スピーカー14から出力される残響音による演出効果で前記建物1内の音環境を調整できるので、前記建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
請求項4に記載の発明は、例えば図1,図2に示すように、請求項1〜3のいずれか一項に記載の音環境調整システムにおいて、
前記音出力手段はスピーカー15,16であり、当該音出力手段は、前記建物1内に、周囲の音を撹乱して聞き取りにくくする撹乱音を出力するように設定されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、前記スピーカー15,16は、前記建物1内に、周囲の音を撹乱して聞き取りにくくする撹乱音を出力するように設定されているので、周囲の音を聞き取りにくくした空間を形成することができる。
これによって、前記スピーカー15,16から出力される撹乱音による所謂マスキング効果で前記建物1内の音環境を調整できるので、前記建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
請求項5に記載の発明は、例えば図1,図2に示すように、請求項1〜4のいずれか一項に記載の音環境調整システムにおいて、
前記音出力手段はスピーカー17であり、当該音出力手段は、前記建物1内に、周囲の音の逆位相音を出力するように設定されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、前記スピーカー17は、前記建物1内に、周囲の音の逆位相音を出力するように設定されているので、逆位相音によって周囲の音を打ち消した空間を形成することができる。
これによって、前記スピーカー17から出力される逆位相音による所謂ノイズキャンセル効果で前記建物1内の音環境を調整できるので、前記建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
請求項6に記載の発明は、例えば図1〜図3に示すように、請求項1〜5のいずれか一項に記載の音環境調整システムにおいて、
前記音出力手段(スピーカー11〜17)は、前記建物1内に設けられる複数の部屋のうち、少なくとも居室2内に設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、前記音出力手段(スピーカー11〜17)は、前記建物1内に設けられる複数の部屋のうち、少なくとも居室2内に設けられているので、様々な音が生じやすい居室2の音環境を調整することができ、その結果、前記居室2内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
請求項7に記載の発明は、例えば図1〜図3に示すように、請求項1〜6のいずれか一項に記載の音環境調整システムにおいて、
前記音出力手段(例えばスピーカー31a,32a,33a)と、周囲の音を入力する音入力手段(例えばマイクロフォン31b,32b,33b)とを含んで構成され、互いに通信可能に接続された複数の通信設備31,32,33をさらに備えており、
当該複数の通信設備31,32,33は、前記建物1内の一室(例えば居室2)と、当該一室の外部にある他の室(例えば多目的スペース4、主寝室5)とにそれぞれ配置されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、前記通信設備31,32,33は、前記建物1内の一室(例えば居室2)と、当該一室の外部にある他の室(例えば多目的スペース4、主寝室5)とにそれぞれ配置されているので、当該通信設備31,32,33を利用して前記建物1内の一室と、前記他の室との間で通信を行うことができる。
これによって、前記建物1内の一室で発生した音を、前記他の室でも聞くことができるので、前記建物1内の一室の外部に、当該室と同様の音環境に調整された空間を形成できることになる。その結果、例えば高齢者や体の不自由な人が前記他の室で生活をしていても、前記建物1内の一室にいる人との間に連帯感を生じさせることができるので、前記他の室にいる人にとって快適な居住環境を形成することが可能となる。さらに、前記通信設備31,32,33を双方向通信させて、前記建物1内の一室と前記他の室との間におけるコミュニケーションツールとしても利用できるので好ましい。
本発明によれば、建物内に設置され、建物内の音環境を調整するための音を出力する音出力手段を備えるので、当該音出力手段によって建物内の音環境を適切に調整でき、その結果、建物内における快適な音環境を形成することが可能となる。
音環境調整システムの構成を示す図である。 音環境調整システムが導入された建物の一例であり、1階部分を示す平面図である。 図2に示す建物の2階部分を示す平面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、図2,図3の紙面上において上が北、下が南、左が西、右が東とされている。
まず、本実施の形態の音環境調整システムが導入される建物1の概要について説明する。
建物1は2階建ての住宅であり、図2,図3に示すように、各階には複数の部屋が配設されている。
1階の中央には南北にわたって居室2が配設されている。当該居室2は、リビングとダイニングとキッチンの機能を一室に併存させた部屋であり、建物1の居住者(家族)が普段いる場所である。
居室2に南東側に隣接して小部屋3が配設されている。当該小部屋3は、例えば在宅ワーク用の勤務室として使用されている。
居室2の西側には玄関と和室が配設され、東側には水廻り(浴室、洗面所、トイレ)と階段が配設され、南側の屋外にはウッドデッキのあるテラスが配設されている。
階段を上がって2階には、多目的スペース4が配設されている。この多目的スペース4は、居住者の所望する目的に応じて仕様を変更することが可能となっており、本実施形態では、子供用の勉強スペースとして機能するようになっている。
多目的スペース4の北側には将来的に間仕切り可能な子供部屋が配設され、南側にはルーフバルコニーが配設され、西側にはトイレが配設されている。
そして、トイレの北側には主寝室5が配設されている。
なお、2階のさらに上には小屋裏空間(図示せず)があり、2階と小屋裏空間とをつなぐ階段が、1階と2階とをつなぐ前記階段に続いて設けられている。
次に、建物1に導入される音環境調整システムの概要について説明する。
本実施の形態における音環境調整システムは、建物1内の音環境を調整するためのものであり、図1に示すように、制御部10と、音出力手段11〜17と、音入力手段21,22と、通信設備31,32,33と、操作部40,41と、を備える。
なお、通信設備31,32,33は、音出力手段31a,32a,33aと、音入力手段31b,32b,33bと、を含んで構成される。
ここで、“音環境を調整する”とは、建物1内の音に係る環境を、音出力手段11〜17から出力される音で例えば生活音をマスキングしたり、ノイズキャンセルしたりすることによって変化させることを指している。
音出力手段11〜17,31a,32a,33aは、図2,図3に示すように、建物1内に設置され、建物1内の音環境を調整するための音を出力するものである。そして、当該音出力手段11〜17,31a,32a,33aは、建物1内に設けられる複数の部屋のうち、少なくとも居室2内に設けられている。
制御部10は、このような音出力手段11〜17,31a,32a,33aからの音の出力を制御するものであり、図示はしないが、本実施の形態においては例えば小型のコンピューターによって構成されている。当該コンピューターは、CPU、記憶部(RAM、ROM、不揮発性メモリ、ハードディスクドライブ等)、通信ユニット、入出力インターフェース、表示部(例えば、液晶ディスプレイまたはELディスプレイ)および操作部40,41等を有する。なお、コンピューターは筺体に収納されており、居室2等の壁に取り付けられている。そして、制御部10は、建物1内の各所に配置される音出力手段11〜17,31a,32a,33aや音入力手段21,22,31b,32b,33bと通信可能に接続されている。
また、記憶部には、建物1内の音環境を調整するための音を出力するために必要な各種プログラムが格納されており、そのプログラムに従って各種の処理を実行できるように設定されている。
また、表示部はコンピューターの筺体の外側に露出して設けられており、当該表示部には、音出力手段11〜17,31a,32a,33aの現在の作動状態を表示できる。すなわち、いずれの音出力手段11〜17,31a,32a,33aが作動しているか等がすぐに視認できる。
操作部は、操作ボタン40と、センサー41とを備える。
操作ボタン40は、例えば、スピーカーを作動させたり、スピーカーを切り替えたりする際の操作に用いられるものであり、ボタン操作によって制御部10に対して指示を送ることができる。このような操作ボタン40は、コンピューターの筺体の外側に露出して設けられているものとする。
センサー41は、例えば、スピーカーを作動させたり、スピーカーを切り替えたりする際の操作に用いられる距離センサーであり、ジェスチャー等によって制御部10に対して指示を送ることができる。このようなセンサー41によれば、例えば寝たきり状態の移動が難しい人でも制御部10に対して指示を送ることができる。
なお、図示はしないが、別途リモコンや、無線通信端末等を用いて制御部10に対して指示を送れるようにしてもよいものとする。すなわち、音環境調整システム自体を遠隔操作可能としてもよい。
音出力手段11〜17,31a,32a,33aは、すなわち電気音響変換器であり、本実施の形態においては各種スピーカーが採用されている。ただし、これに限られるものではなく、小型のレシーバ等のようなスピーカー以外の電気音響変換器を採用してもよいものとする。
本実施の形態の音出力手段は、第一スピーカー11と、第二スピーカー12と、第三スピーカー13と、第四スピーカー14と、第五スピーカー15と、第六スピーカー16と、第七スピーカー17と、第一通信設備31に備えられるスピーカー31aと、第二通信設備32に備えられるスピーカー32aと、第三通信設備33に備えられるスピーカー33aと、である。
また、本実施の形態の音環境調整システムは、周囲の音を入力する音入力手段をさらに備える。当該音入力手段は、前記音出力手段の各種スピーカーのうち、対応するスピーカーと組み合わせて用いられる。この音入力手段としては、音を電気信号に変換する各種マイクロフォンが採用されている。
本実施の形態の音入力手段は、第一マイクロフォン21と、第二マイクロフォン22と、第一通信設備31に備えられるマイクロフォン31bと、第二通信設備32に備えられるマイクロフォン32bと、第三通信設備33に備えられるマイクロフォン33bと、である。
次に、以上のような音出力手段について詳細に説明する。
第一スピーカー11と、第二スピーカー12と、第三スピーカー13は、指向性を有するスピーカーである。そして、これらスピーカー11,12,13は、建物1内の所定の場所に指向するようにして配置されている。
なお、これらスピーカー11,12,13の出力範囲(後述する領域A1,A2,A3の広さ)は、適宜調整可能とされている。
第一スピーカー11は、居室2内のリビング部分における一つの領域A1を指向するようにして配置されている。
すなわち、リビング部分にはテレビ2aが設置されている。そして、当該テレビ2aと第一スピーカー11とを接続し、テレビ2aから発生する音を第一スピーカー11から出力することによって、前記領域A1以外の場所に、テレビ2aから発生する音を聞こえないように(聞こえにくく)することができる。
また、第一スピーカー11とテレビ2aとを接続するだけでなく、その他のオーディオ機器(音響機器)等を接続してもよい。
第二スピーカー12は、居室2内のダイニング部分における一つの領域A2を指向するようにして配置されている。
すなわち、ダイニング部分にはダイニングテーブル2bが設置されている。そして、当該ダイニングテーブル2bの上方に、図示しないオーディオ機器と接続された第二スピーカー12が設置されている。例えば天井に設置されているものとする。
オーディオ機器から発生する音を第二スピーカー12から出力することによって、前記領域A2以外の場所に、オーディオ機器から発生する音を聞こえないように(聞こえにくく)することができる。なお、例えばオーディオ機器から音楽を流せば、音楽を聴きながらダイニング部分で寛いだり、食事をしたりすることができる。
また、第二スピーカー12とオーディオ機器とを接続するだけでなく、テレビ2aと接続されていてもよいものとする。第二スピーカー12がテレビ2aと接続されていれば、テレビ2aを見ながら、ダイニング部分で寛いだり、食事をしたりすることができる。
第三スピーカー13は、居室2内のダイニング部分における一つの領域A3を指向するようにして配置されている。
すなわち、ダイニング部分には勉強机2cが設置されている。そして、当該ダイニングテーブル2bの上方に、図示しないオーディオ機器と接続された第二スピーカー12が設置されている。例えば天井や壁に設置されているものとする。
オーディオ機器から発生する音を第三スピーカー13から出力することによって、前記領域A3以外の場所に、オーディオ機器から発生する音を聞こえないように(聞こえにくく)することができる。なお、例えばオーディオ機器から音楽を流せば、音楽を聴きながら勉強することができ、英語のリスニング教材の音声を流せば、英語のリスニングの勉強を行うことができる。
第一〜第三スピーカー11,12,13によっては様々なメリットが挙げられる。例えば同じ空間に人を集める効果がある。また、壁で遮断せずに人の気配を感じながら音の聞こえる範囲を設定することができる。さらに、勉強や仕事等に利用すれば、集中できる環境を形成しやすい。
以上のようなメリットを鑑みると、第一〜第三スピーカー11,12,13によっては「音のゾーニング」が可能となり、居室2のように複数の領域(例えばリビング、ダイニング、キッチン)を併せ持つ一体空間において優れた効果を発揮することができる。
第四スピーカー14は、居室2内のリビング部分であり、かつ居室2の略中央に設置されている。例えば天井に設置されているものとする。
そして、当該第四スピーカー14は、第一マイクロフォン21と組み合わせて用いられる。すなわち、第四スピーカー14は、第一マイクロフォン21によって入力された音を、居室2内に残響音として調整可能に出力するように設定されている。なお、第一マイクロフォン21も、第四スピーカー14と同様に天井に設置されているものとする。
なお、残響音とは、残響またはリバーブ(reverberation)とも呼ばれ、音源が発音を停止した後も音が響いて聞こえる現象である。音波が壁等に衝突し跳ね返ってくる現象である反響が、連続的また繰り返し生じた結果が残響とされている。
また、第一マイクロフォン21によって入力された音から残響成分を抽出するために、前記記憶部には専用のプログラムが格納されている。
このように第四スピーカー14から残響音を出力すれば、音が広がる感覚を居住者に付与できる。また、それだけでなく、音の広がる感覚によって広々とした空間を想起させる場合があるので、狭い空間を広い空間に感じさせる効果を発揮することが可能となる。特に、音楽鑑賞時や映画鑑賞時、音楽演奏時、パーティ時等のような所謂「ハレ」の日に、その場面を盛り上げる効果をもたらすことができる。例えば、音楽演奏時には、第一マイクロフォン21によってその音楽の音を拾い、第四スピーカー14から残響音として出力できる。
なお、居室2を無響室に近い状態としておくとともに、普段から残響音をコントロールするようにしてもよい。すなわち、普段は残響のレベルを他の部屋と同等となるようにコントロールしておく。そして、例えば前記「ハレ」の日等に残響音の出力を高めて、その場面を盛り上げるように演出したり、例えば接客時や家族会議等を行う際に残響音の出力を下げて(または無くして)会話の親密性を向上させたりすることができる。
以上の点を鑑みれば、第四スピーカー14によっては「残響音コントロール」が可能となり、人の集まる場所や、音響効果を高めたい場所において優れた効果を発揮することができる。
第五スピーカー15と、第六スピーカー16は、建物1内に、周囲の音を撹乱して聞き取りにくくする撹乱音を出力するように設定されている。すなわち、図示しないオーディオ機器と接続されており、オーディオ機器から発生する音(撹乱音)を、第五スピーカー15と第六スピーカー16から出力することができる。
なお、撹乱音とは、所謂マスキング効果に係る技術において使われる音であり、当該マスキング効果とは、同時に異なる二つの音波が耳に届くときに弱い音波が強い音波に打ち消されてしまう現象を指している。
より具体的には、人間の耳の機能には一定音量の音が聞こえている状況下では感度が低下し、小さな音が聞こえなくなるという特性がある。マスキング効果は、このような特性を応用したものであり、低レベルの音声を流すことにより、他の音や音漏れを相殺することができる。すなわち、撹乱音とは、当該マスキング効果に利用される低レベルの音声を指している。第五スピーカー15と第六スピーカー16からは、例えば空調音と識別できない45dB程度の特殊な音声が撹乱音として出力される。
第五スピーカー15は、居室2内のリビング部分であり、かつ小部屋3の出入口近傍に設置されている。例えば天井に設置されているものとする。勤務室である小部屋3では、単に机に向かう作業だけでなく、Web会議や勤務に係る電話等が行われる。
そして、当該第五スピーカー15から撹乱音を出力すれば、小部屋3で勤務している人の声が居室2にいても聞き取りにくくなる。すなわち、Web会議や電話の声が居室2にいても聞き取りにくくなる。これによって、在宅勤務時の情報漏洩を防止したり、同居する家族に会話が聞こえないように配慮したりすることができる。
一方、第六スピーカー16は、小部屋3内の例えば天井に設置されている。
そして、当該第六スピーカー16から撹乱音を出力すれば、居室2にいる人の声や生活音が小部屋3にいても聞き取りにくくなる。すなわち、Web会議や電話の最中であっても居室2からの声や生活音が届きにくくなる。これによって、勤務空間の快適性を向上させたり、同居する家族に気を使わせないようにしたりすることができる。
以上の点を鑑みれば、第五スピーカー15および第六スピーカー16によっては、「音のセキュリティマスク」、「勤務室用ノイズキャンセル」とも言うべき機能を発揮することができる。すなわち、音のマスキング効果によってセキュリティを高めたり、勤務に適した空間を形成したりすることができる。
第七スピーカー17は、建物1内に、周囲の音の逆位相音を出力するように設定されている。この第七スピーカー17は、第二マイクロフォン22と組み合わせて用いられる。すなわち、第七スピーカー17は、第二マイクロフォン22によって入力された音を、建物1内に逆位相音として調整可能に出力するように設定されている。
なお、第七スピーカー17から出力される逆位相音とは、第二マイクロフォン22によって入力された音に対して位相のみが逆となった音である。そして、第二マイクロフォン22によって入力される音の音源と、第七スピーカー17から出力される音とを合わせることによって音波干渉が生じ、互いに打ち消し合う現象が起きる。
第七スピーカー17および第二マイクロフォン22は、居室2内のキッチン部分に設置されている。例えば天井に設置されているものとする。
そして、例えば調理中に発生する音を、第二マイクロフォン22で拾い、第七スピーカー17から逆位相音として出力することができる。これによって、調理中の音をノイズキャンセリングすることができるので、キッチン部分からダイニングまたはリビングへの声が届きやすくなり、コミュニケーションが取りやすくなる。
なお、第二マイクロフォン22によって入力された音を、逆位相音とするために、前記記憶部には専用のプログラムが格納されている。
なお、第七スピーカー17は、本実施の形態においては第二マイクロフォン22と組み合わせて用いられるものとしたが、これに限られるものではない。
例えば、所謂消音スピーカーのように、マイクロフォンを利用せずともノイズキャンセル機能を発揮するスピーカーを用いるようにしてもよい。消音スピーカーを用いる場合は、音源を音としてマイクロフォンで拾うのではなく、アンプ自体から電気的に得ることができる。すなわち、第七スピーカー17が用いられる場所に応じて、第二マイクロフォン22と組み合わせてもよいし、消音スピーカーのようにマイクロフォンを用いないスピーカーを採用してもよい。
以上の点を鑑みれば、第七スピーカー17によるノイズキャンセル技術によって、上述のようにコミュニケーションが取りやすくなるため、例えば共働き家庭等で、在宅時間が短く忙しい親と子供または配偶者同士(すなわち家族間)の会話時間を確保することができる。
第一〜第三通信設備31,32,33は、上述のように、音出力手段31a,32a,33aと、音入力手段31b,32b,33bと、を含んで構成されるものであり、互いに通信可能とされている。なお、このような通信設備31,32,33は、例えばトランシーバー(無線機)等のように筺体に各種部品が内蔵された一つの機器として取り扱えるものであってもよいし、音出力手段と音入力手段とが別体として取り扱われるものであってもよい。通信方法も無線であってもよいし、有線であってもよく、特に限定されるものではない。
当該通信設備31,32,33における音出力手段31a,32a,33aは、第一〜第七スピーカー11〜17と同様にスピーカーであり、音入力手段31b,32b,33bはマイクロフォンである。
また、複数の通信設備31,32,33は、前記建物1内の一室と、当該一室の外部にある他の室とにそれぞれ配置されている。本実施の形態においては、図2,図3に示すように、第一通信設備31は居室2に配置され、第二通信設備32は多目的スペース4に配置され、第三通信設備33は主寝室5に配置されている。
第一通信設備31は、居室2のダイニング部分とキッチン部分と境界部分に設置されている。例えば天井に設置されているものとする。
そして、このような第一通信設備31によれば、マイクロフォン31bによって周囲の音を入力することができ、他の通信設備32,33から伝送される音声を、スピーカー31aによって出力することができる。
第二通信設備32は、多目的スペース4の天井に設置されている。
そして、このような第二通信設備32によれば、マイクロフォン32bによって周囲の音を入力することができ、他の通信設備31,33から伝送される音声を、スピーカー32aによって出力することができる。
第三通信設備33は、主寝室5の天井に設置されている。
そして、このような第三通信設備33によれば、マイクロフォン33bによって周囲の音を入力することができ、他の通信設備31,32から伝送される音声を、スピーカー33aによって出力することができる。
また、各通信設備31,32,33は、前記操作部(操作ボタン40、センサー41)によって操作が可能となっている。
これによって、例えば、主寝室5を、寝たきり状態の移動が難しい人が使う場合には、寝た状態のままセンサー41を利用して第三通信設備33を使用することができる。
すなわち、以上のような各通信設備31,32,33によれば、通常よりも宅内でのコミュニケーションが取りにくい人にとっても快適な居住環境を形成することができるので好ましい。
なお、制御部10は、各スピーカー11〜17、マイクロフォン21,22、各通信設備31,32,33と接続されているだけでなく、テレビ2aやオーディオ機器と通信可能に接続されているものとする。
すなわち、本実施の形態の音環境調整システムを構成する各要素は、全て制御部10と通信可能に接続されている。そして、各音出力手段による音環境調整を、操作部によって手動で作動させたり、予め設定されたプログラムに従って自動で作動させたりすることができる。
また、各スピーカー11〜17は、居室2内の様々な場所に配置されるものとしたが、例えば居室2の四隅等にバランス良く、かつ居室2を囲むようにして配置してもよい。その際は、使用するスピーカーの数や種類を調整してもよいし、スピーカーの向き(角度)を調整できるようにしてもよいものとする。
また、建物1の間取りも、上述のようなものに限られるものではなく、適宜変更可能である。換言すれば、どのような間取りの建物1であっても、本実施の形態の音環境調整システムを採用することができる。
以上のような構成の音環境調整システムによって建物1内の音環境を調整する際は、制御部10によって音出力手段の制御が行われているので、操作部40,41によって適宜指示を送り、各スピーカー11〜17から音を出力したり、各マイクロフォン21,22によって音を入力したりする。
また、各通信設備31,32,33は、常に起動しておくようにして居室2と他の部屋4,5との間でコミュニケーション可能な状態を維持するようにしてもよい。
本実施の形態によれば、建物1内に設置され、当該建物1内の音環境を調整するための音を出力する音出力手段である第一スピーカー11等を備えるので、当該音出力手段によって建物1内の音環境を適切に調整でき、その結果、建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、指向性を有する第一〜第三スピーカー11〜13が、居室2の各領域A1,A2,A3に指向するようにして配置されているので、居室2を、各スピーカー11,12,13から出力される音が聞こえる場所と、聞こえない場所とに分けることができる。換言すれば、各スピーカー11,12,13から出力される音が聞こえる範囲を制御することができる。
これによって、各スピーカー11,12,13から出力される音を、聞きたい人にだけ聞こえるようにして建物1内の音環境を調整できるので、建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、第四スピーカー14は、第一マイクロフォン21によって入力された音を、建物1内に残響音として出力するように設定されているので、例えばパーティや音楽・映画鑑賞等、建物1内で繰り広げられる場面(シーン)ごとに残響音をコントロールでき、建物1内を、普段とは異なる印象の空間として演出することができる。
これによって、第四スピーカー14から出力される残響音による演出効果で建物1内の音環境を調整できるので、建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、第五スピーカー15,第六スピーカー16は、建物1内に、周囲の音を撹乱して聞き取りにくくする撹乱音を出力するように設定されているので、周囲の音を聞き取りにくくした空間を形成することができる。
これによって、第五スピーカー15,第六スピーカー16から出力される撹乱音による所謂マスキング効果で建物1内の音環境を調整できるので、建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、第七スピーカー17は、建物1内に、周囲の音の逆位相音を出力するように設定されているので、逆位相音によって周囲の音を打ち消した空間を形成することができる。
これによって、第七スピーカー17から出力される逆位相音による所謂ノイズキャンセル効果で建物1内の音環境を調整できるので、建物1内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、各スピーカー11〜17は、建物1内に設けられる複数の部屋のうち、少なくとも居室2内に設けられているので、様々な音が生じやすい居室2の音環境を調整することができ、その結果、居室2内における快適な居住環境を形成することが可能となる。
また、第一〜第三通信設備31,32,33は、居室2と、当該居室2の外部にある多目的スペース4、主寝室5とにそれぞれ配置されているので、当該各通信設備31,32,33を利用して居室2と、多目的スペース4および主寝室5との間で通信を行うことができる。
これによって、居室2で発生した音を、多目的スペース4および主寝室5でも聞くことができるので、居室2の外部に、当該居室2と同様の音環境に調整された空間を形成できることになる。その結果、例えば高齢者や体の不自由な人が例えば主寝室5で生活をしていても、居室2にいる人との間に連帯感を生じさせることができるので、主寝室5にいる人にとって快適な居住環境を形成することが可能となる。さらに、各通信設備31,32,33を双方向通信させて、居室2と多目的スペース4および主寝室5との間におけるコミュニケーションツールとしても利用できるので好ましい。
1 建物
2 居室
11 第一スピーカー
12 第二スピーカー
13 第三スピーカー
14 第四スピーカー
15 第五スピーカー
16 第六スピーカー
17 第七スピーカー
21 第一マイクロフォン
22 第二マイクロフォン
31a スピーカー
32a スピーカー
33a スピーカー

Claims (7)

  1. 建物内の音環境を調整するための音環境調整システムであって、
    前記建物内に設置され、前記建物内の音環境を調整するための音を出力する音出力手段を備えることを特徴とする音環境調整システム。
  2. 請求項1に記載の音環境調整システムにおいて、
    前記音出力手段は指向性を有するスピーカーであり、
    当該スピーカーは、前記建物内の一室の所定の場所に指向するようにして配置されていることを特徴とする音環境調整システム。
  3. 請求項1または2に記載の音環境調整システムにおいて、
    周囲の音を入力する音入力手段をさらに備えており、
    前記音出力手段はスピーカーであり、当該音出力手段は、前記音入力手段によって入力された音を、前記建物内に残響音として出力するように設定されていることを特徴とする音環境調整システム。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の音環境調整システムにおいて、
    前記音出力手段はスピーカーであり、当該音出力手段は、前記建物内に、周囲の音を撹乱して聞き取りにくくする撹乱音を出力するように設定されていることを特徴とする音環境調整システム。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の音環境調整システムにおいて、
    前記音出力手段はスピーカーであり、当該音出力手段は、前記建物内に、周囲の音の逆位相音を出力するように設定されていることを特徴とする音環境調整システム。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の音環境調整システムにおいて、
    前記音出力手段は、前記建物内に設けられる複数の部屋のうち、少なくとも居室内に設けられていることを特徴とする音環境調整システム。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の音環境調整システムにおいて、
    前記音出力手段と、周囲の音を入力する音入力手段とを含んで構成され、互いに通信可能に接続された複数の通信設備をさらに備えており、
    当該複数の通信設備は、前記建物内の一室と、当該一室の外部にある他の室とにそれぞれ配置されていることを特徴とする音環境調整システム。
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