JP2015042768A - 浸炭処理方法及びその方法を用いて製造された製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】浸炭処理によって鋼製ワークの表面近傍に微細で球状の炭化物を迅速且つ均一に析出させることが可能な浸炭処理方法及びその方法を用いて製造された製品を提供することを目的とする。
【解決手段】鋼製ワークの表面に浸炭処理を行う浸炭処理方法であって、当該鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬し、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表層に球状炭化物を分散析出させることを特徴とする浸炭処理方法を採用する。
【選択図】図1

Description

本件発明は、浸炭処理方法及びその方法を用いて製造された製品に関し、特に、浸炭処理によって鋼製ワーク表面近傍に微細で球状の炭化物を迅速且つ均一に析出させることが可能な浸炭処理方法及びその方法を用いて製造された製品に関するものである。
従来から、鋼製ワークを浸炭性雰囲気中で加熱し、当該鋼製ワークの表面に炭素を浸透させ、当該炭素を当該鋼製ワーク表面の結晶組織内に内部拡散させ、その後焼入処理を行う事によって、当該鋼製ワークの内部組織には、鋼材が本来持つ靭性、伸び等の物理的特性を維持しつつ、当該鋼製ワークの表面近傍のみに炭化物を析出させることで表層組織を硬くする浸炭処理方法が知られている。浸炭処理を施した製品は、表面の耐摩耗性に優れ、耐疲労特性を向上させたものとなるため、機械部品や工具等の材料として幅広く採用されている。なお、浸炭処理を施す製品は、更に表面近傍の炭素濃度を高めることで、より耐摩耗性等に優れたものとなり、このような特性が特に要求される摺動用部品等にも好適に用いることが可能となる。
但し、これらの特性を得るには、当該鋼製ワークの表面近傍に微細で球状の炭化物を多く析出させる必要があり、仮に析出した炭化物が片状化したり、粗大化した場合には製品の表面が脆化して剥離脱落等し易くなり、これらの特性を十分に得ることが出来なくなる。
このような問題に対して、例えば、特許文献1には、微細かつ球状の炭化物を大量に分散させることが可能で、且つ、浸炭処理後に大きな変形を生じさせることのない高濃度浸炭鋼の製造方法について開示されている。具体的には、特許文献1は、「(イ) C:0.15〜0.30mass%、Si:0.40〜0.80mass%、Mn:0.3〜0.8mass%、Cr:1.25〜2.00mass%、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を、1100℃以下である1次浸炭温度T1(℃)において、その表面炭素濃度CがCeu<C≦C(Acm)となるまで浸炭させる1次浸炭工程。但し、Ceuは、前記鋼材の共析炭素濃度、C(Acm)は、前記1次浸炭温度T1における前記鋼材のAcm線に相当する炭素濃度。(ロ) 前記1次浸炭工程終了後、前記鋼材を冷却速度1℃/分以上で700℃以下まで冷却する冷却工程。(ハ) 前記鋼材を2次浸炭開始温度T2sまで昇温させ、2次浸炭温度T2を前記2次浸炭開始温度T2sに維持したまま前記鋼材を浸炭させる2次浸炭初期工程。但し、Ac1点(℃)≦T2s(℃)≦1次浸炭温度T1−100℃≦2次浸炭開始直後における前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)、T2S≦T2≦前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)。(ニ) 前記2次浸炭初期工程終了後、引き続き前記鋼材を焼入れ温度Tq(℃)まで昇温させ、前記焼入れ温度Tqにおいてさらに浸炭させる2次浸炭後期工程。但し、Tq≦前記鋼材の表面炭素濃度に相当するAcm線温度(℃)。(ホ) 前記2次浸炭後期工程終了後、前記鋼材を焼入れする焼入れ工程。」を採用するものである(請求項1参照のこと。)。
特許第4971751号
上述したように、特許文献1には、鋼製ワークに対して炭化物分散浸炭処理を施すことについて開示されている。ここで、炭化物分散浸炭は、鋼製ワーク表層に炭化物を析出させるため、適切な量の炭素を鋼中に浸透させた後、それらを分散析出させる必要がある。また、炭化物分散浸炭処理を迅速に行うためには、必要な炭素量を効率よく鋼中に浸透拡散させ、且つ炭化物を短時間で球状分散させることが必要となる。しかしながら、特許文献1に開示の高濃度浸炭鋼の製造方法は、炭化物分散浸炭を行うにあたって炉加熱処理を採用するため、炉材寿命等の観点から高温で迅速に炭素濃度を高めることが出来ない。また、特許文献1に開示の高濃度浸炭鋼の製造方法のように、炭化物分散浸炭を行う際に炉加熱処理を採用した場合には、炭化物の球状析出に必要な降温、昇温の温度制御をフレキシブルに行うことが出来ないため、鋼製ワーク表層に析出させる炭化物の量をコントロールするのに長時間を要することとなる。
そこで、本件発明は、浸炭処理によって鋼製ワークの表面近傍に微細で球状の炭化物を迅速且つ均一に析出させることが可能な浸炭処理方法及びその方法を用いて製造された製品を提供することを目的とする。
本発明者等は、以下の浸炭処理方法及びその方法を用いて製造された製品を採用することで上記課題を達成するに到った。
本件発明に係る浸炭処理方法: 本件発明に係る浸炭処理方法は、鋼製ワークの表面に浸炭処理を行う浸炭処理方法であって、当該鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬し、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表層に球状炭化物を分散析出させることを特徴とする。
本件発明に係る浸炭処理方法は、前記浸炭処理方法が、当該鋼製ワークの表面に、800℃〜1200℃の温度で900秒間以下浸炭処理を行う一次浸炭工程と、当該一次浸炭工程後に、当該鋼製ワークの表面をMs点以上A1点以下の温度まで急速冷却する冷却工程と、当該冷却工程後に、当該鋼製ワークの表面を550℃〜600℃の温度で180秒間以下保持する等温変態工程と、当該等温変態工程後に、当該鋼製ワークの表面をA1点を超えて1000℃以下の温度まで高周波誘導加熱により加熱して900秒間以下浸炭処理を行う二次浸炭工程と、当該二次浸炭工程後に、当該鋼製ワークの表面を常温まで冷却させる焼入工程とを備えたことが好ましい。
本件発明に係る浸炭処理方法において、前記一次浸炭工程では、前記鋼製ワークの表面にガス浸炭処理又は真空浸炭処理を行うことも可能であり、一次浸炭方法に関しては特に限定されない。
本件発明に係る浸炭処理方法において、前記二次浸炭工程を複数回繰り返し行う場合には、2回目以降の二次浸炭工程は、一旦鋼製ワークの表面をA1点以下の温度まで冷却し、次いで当該鋼製ワークの表面をA1点以上900℃以下の温度まで加熱することを1サイクルとして、このサイクルを1回以上行うものであることが好ましい。
本件発明に係る浸炭処理方法において、前記浸炭用溶液は、常温で粘性の低い液状を呈するアルコールであることが好ましく、その性質上及び経済上においてメタノールやエタノールを用いることがより好ましい。
本件発明に係る浸炭処理方法において、前記焼入工程では、前記鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して焼入れを行うことが可能である。
本件発明に係る浸炭処理方法において、前記焼入工程では、再焼入れを行うことで、鋼製ワークの結晶粒径の調整を行うことも可能である。
本件発明に係る浸炭処理方法において、前記一次浸炭工程及び前記二次浸炭工程の内、少なくとも1つの工程では、前記鋼製ワークの表面に対して更に窒素を拡散浸透することも可能である。
本件発明に係る製品: 本件発明に係る製品は、上述のいずれかに記載の浸炭処理方法を用いて製造されたことを特徴とする。
本件発明に係る浸炭処理方法を採用することで、鋼製ワークの表面近傍に微細で球状の炭化物を安定して迅速且つ均一に析出させることが可能となる。また、本件発明に係る浸炭処理方法は、鋼製ワークの加熱に高周波誘導加熱法を採用するものであるため、浸炭処理に要する時間の短縮化を図ることが出来る。従って、本件発明に係る浸炭処理方法を用いて製造された製品は、安価でありながらも、表面の耐摩耗性に優れ、耐疲労特性を向上させることが出来るため、従来より実用化が困難と考えられていた自動車用変速機歯車等にも好適に用いることが可能となる。
本件発明に係る浸炭処理方法の浸炭焼入処理工程を説明するための図である。 本件発明に係る浸炭処理方法を用いて製造された製品の断面組織写真である。
以下、本件発明に係る浸炭処理方法及びその製造方法を用いて製造された製品の実施の形態を説明する。
本件発明に係る浸炭処理方法: 本件発明に係る浸炭処理方法は、鋼製ワークの表面に浸炭処理を行う浸炭処理方法であって、当該鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬し、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表層に球状炭化物を分散析出させることを特徴としている。
本件発明に係る浸炭処理方法は、鋼製ワークの表面を加熱する際に、高周波誘導加熱法を採用する。ここで言う高周波誘導加熱とは、鋼製ワークの周りにコイルを配置し、当該コイルに高周波電流を流すことで当該コイルに近い鋼製ワーク表面に誘導電流が生じ、ジュール熱で加熱するものである。この高周波誘導加熱は、公知の急速加熱手段であり、浸炭処理を行う所望温度まで、鋼製ワークの表面を秒単位の短時間で昇温することが可能でありながらも、炉加熱に比べて高温化が容易となる。また、本件発明に係る浸炭処理方法によれば、鋼製ワークを高周波誘導加熱して炭化物分散浸炭することができ、当該鋼製ワークの表層に球状炭化物を多く析出させることが可能となる。
また、本件発明に係る浸炭処理方法は、鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬した状態で、当該鋼製ワークの浸炭対象表面を高周波誘導加熱により急速加熱する。このときに、当該鋼製ワークの周囲にある浸炭用溶液が熱分解して、活性炭素を含む状態でガス化した浸炭用ガスとなり、当該鋼製ワークの外周を覆う状態となる。そして、ガス化してCOガス、Hガスを含む浸炭用ガス中の活性炭素が、当該鋼製ワークの表面から結晶組織内に侵入することで、浸炭処理に要する時間を大幅に短縮することが出来る。
なお、ここで言う「浸炭用溶液」は、鋼製ワークの炭素供給源となりうる溶液状態のものであれば、使用することが可能である。但し、浸炭に寄与する活性炭素を効率よく発生させることの可能な有機溶剤を用いることが好ましく、鋼製ワーク表面近傍への炭素侵入量の安定化を図ることを考慮すれば、炭素供給源である浸炭用溶液の浸炭成分として、アルコール又はアルコール水溶液を用いることがより好ましい。ちなみに、「アルコール水溶液」は、アルコール成分と水との混合溶媒を意味する。このアルコール水溶液を用いることで、浸炭成分として使用可能な純メタノール等の有機溶剤に比べて、浸炭の進行速度が過剰にならないため、鋼製ワーク表面への均一な浸炭層の形成が可能で、その浸炭層の炭素侵入量及び浸炭深さの制御が容易になる。
また、本件発明に係る浸炭処理方法は、鋼製ワークの表面に、800℃〜1200℃の温度で900秒間以下浸炭処理を行う一次浸炭工程と、当該一次浸炭工程後に、当該鋼製ワークの表面をMs点以上A1点以下の温度まで急速冷却する冷却工程と、当該冷却工程後に、当該鋼製ワークの表面を550℃〜600℃の温度で180秒間以下保持する等温変態工程と、当該等温変態工程後に、当該鋼製ワークの表面をA1点を超えて1000℃以下の温度まで高周波誘導加熱により加熱して900秒間以下浸炭処理を行う二次浸炭工程と、当該二次浸炭工程後に、当該鋼製ワークの表面を常温まで冷却させる焼入工程とを備えたことが好ましい。
図1は、本件発明に係る浸炭処理方法の浸炭焼入処理工程を説明するための図である。図1に示すように、本件発明に係る浸炭処理方法は、一次浸炭工程、冷却工程、等温変態工程、二次浸炭工程、及び焼入工程を備えている。以下に、これら各工程について、説明していく。
〈一次浸炭工程〉
本件発明に係る浸炭処理方法における一次浸炭工程は、炭素を鋼製ワーク表面近傍に拡散浸透させる工程であり、製品として必要な浸炭深さを確保するとともに、炭化物を析出させるために必要な共析点以上の炭素を得るための工程である。なお、本件発明の一次浸炭工程では、鋼製ワークの表面近傍をオーステナイト単相とすべく、鋼製ワークの表面が800℃〜1200℃になるまで加熱する。鋼製ワークの表面近傍がオーステナイト単相となることで、当該鋼製ワーク中に炭素を拡散浸透させ易くなり好ましい。そして、当該鋼製ワークの表面の温度が800℃〜1200℃になるまで加熱された時点から900秒間以下保持されて、浸炭処理が行われる。このような温度条件を満たすことで、本件発明の一次浸炭工程は、当該鋼製ワーク中に拡散浸透させる炭素の量及び浸炭深さを適切なものとすることができ、後の二次浸炭工程において微細で球状の炭化物を多量に析出させることが可能になる。
ここで、本件発明の一次浸炭工程において、当該鋼製ワークの表面温度が800℃未満では、浸炭が効率的に行われず、当該鋼製ワーク中に炭素が拡散浸透する速度が低下し、所定の時間内では鋼製ワークの表面近傍に微細な炭化物を生成することが困難となる。また、当該鋼製ワークの表面温度が1200℃を超えると、鋼製ワークの結晶粒が粗大化し易くなり、製品の靱性や疲労特性の低下を招くこととなる。そして、当該鋼製ワークの表面の温度が800℃〜1200℃になるまで加熱された時点から、この温度を保持する時間が900秒を超えると、高周波誘導による加熱が長時間となり、経済的観点から望ましくない。
〈冷却工程〉
本件発明に係る浸炭処理方法における冷却工程は、次工程で等温パーライト変態を行うために、オーステナイト単相である鋼製ワーク表面近傍の温度をA1点以下に過冷して過冷オーステナイトを得る工程である。
〈等温変態工程〉
本件発明に係る浸炭処理方法における等温変態工程は、冷却工程後に、当該鋼製ワークの表面を550℃〜600℃の温度にして180秒間以下保持し、当該鋼製ワークの過冷オーステナイトを等温パーライト変態させる工程である。本件発明の等温変態工程では、処理温度を等温変態曲線のノーズ付近の温度に設定することが望ましい。そして、等温パーライト変態後の加熱保持は、180秒間を超えると得られる効果が飽和して非経済的であり好ましくない。
〈二次浸炭工程〉
本件発明に係る浸炭処理方法における二次浸炭工程では、等温変態工程後に、鋼製ワークの表面をA1点を超え1000℃以下の温度まで高周波誘導加熱により加熱して900秒間以下浸炭処理を行うことにより、先の一次浸炭工程で生成された粗大化したオーステナイト結晶粒を細かくして当該鋼製ワークの靱性を向上させることが出来る。当該鋼製ワークの表面温度が1000℃を超えると、炭化物が再固溶して、当該鋼製ワークの表面近傍で結晶粒界に粗大化した炭化物が析出してしまう。本件発明の二次浸炭工程では、温度及び浸炭雰囲気を制御することで、炭化物形状、サイズのコントロール、及び素地炭素量の適正化が行われる。
ここで、当該鋼製ワークの表面の温度がA1点を超え1000℃以下になるまで加熱された時点から、この温度を保持する時間が900秒を超えると、当該鋼製ワーク表層への炭素侵入量が飽和し、製品の耐摩耗性・耐傷性等を向上させる効果が飽和して経済的ではない。
〈焼入工程〉
本件発明に係る浸炭処理方法における焼入工程では、二次浸炭工程後に、鋼製ワークの表面を常温まで急冷させることにより、当該鋼製ワークの表層をマルテンサイト+球状化炭化物の複合組織にし、当該鋼製ワークの表層組織を硬くして、当該鋼製ワーク表層の耐摩耗性・耐傷性等を向上させることが出来る。ここで、本件発明の焼入工程では、冷却工程と同様に、鋼製ワークの表面を冷却させる方法に関して限定されず、例えばガス冷却等を採用することが出来る。なお、本件発明の焼入工程においても、冷却工程と同様に、急冷することが好ましく、冷却速度が遅いと鋼製ワークの表面近傍で結晶粒界に沿って粗大化した炭化物が析出し、製品の強度が低下するため好ましくない。
また、本件発明に係る浸炭処理方法は、一次浸炭工程では、鋼製ワークの表面にガス浸炭処理又は真空浸炭処理を行うことも可能である。
本件発明に係る浸炭処理方法における一次浸炭工程は、鋼製ワークの表面を加熱する方法に関して特に限定されず、本件発明の一次浸炭工程では、鋼製ワークの表面を加熱するに際し、ガス浸炭処理又は真空浸炭処理を行うことで、任意の浸炭深さを得ることが容易になる。
また、本件発明に係る浸炭処理方法において、二次浸炭工程を複数回繰り返し行う場合には、2回目以降の二次浸炭工程は、一旦鋼製ワークの表面をA1点以下の温度まで冷却し、次いで当該鋼製ワークの表面をA1点以上900℃以下の温度まで加熱することを1サイクルとして、このサイクルを1回以上行うものであることが好ましい。
本件発明に係る浸炭処理方法は、上述した条件で冷却と再加熱とを繰り返すことで、析出した炭化物のサイズ、形状、及び分布状態を迅速に制御することが出来る。本件発明に係る浸炭処理方法によれば、二次浸炭工程を1回以上繰り返し行うことで、一次浸炭工程以降の加熱時に生成した鋼製ワークの表面近傍における微細な炭化物を球状化させ、硬度及び靱性に更に優れた製品を得ることが出来る。
また、本件発明に係る浸炭処理方法において、浸炭用溶液は、常温で粘性の低い液状を呈するアルコールであることが好ましい。
本件発明に係る浸炭処理方法で用いる浸炭用溶液は、常温で粘性の低い液状を呈するアルコールであることが好ましいが、その性質上及び経済上、メタノールやエタノールを用いることがより好ましい。本件発明に係る浸炭処理方法は、浸炭用溶液としてメタノール(CH−OH)やエタノール(CH−CH−OH)のように粘性が低く、流動性に富み、且つ、沸点が比較的低い性質のものを選択的に用いることで、鋼製ワークが加熱を受けている間に、当該鋼製ワークの表面から炭素を安定して浸透させることが出来る。ちなみに、メタノールは、市場において、安価で、且つ、入手が容易であり、人体に与える影響も少ないため、作業者の身体に深刻な影響を与える薬品ではなく、廃棄の時の環境負荷も抑制できるため、浸炭用溶液としてより好適に用いることが出来る。
また、本件発明に係る浸炭処理方法は、焼入工程では、鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して焼入れを行うことが可能である。
本件発明の焼入工程では、鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬させた状態で加熱した後に高周波誘導加熱の出力を停止して当該鋼製ワークを急冷することで、浸炭処理時間を短縮して生産性を向上させることが出来る。
また、本件発明に係る浸炭処理方法は、焼入工程では、再焼入れを行うことも可能である。
本件発明の焼入工程では、再焼入れを行うことで、鋼製ワークの結晶粒径を調整することが出来る。
また、本件発明に係る浸炭処理方法は、一次浸炭工程及び二次浸炭工程の内、少なくとも1つの工程では、鋼製ワークの表面に対して更に窒素を拡散浸透させることも可能である。
本件発明に係る製品: 本件発明に係る製品は、上述した本件発明に係る浸炭処理方法を用いて製造されたことを特徴とするものである。
図2は、本件発明に係る浸炭処理方法を用いて製造された製品の断面組織写真である。図2の断面組織写真には、マルテンサイトのマトリックス中に微細で且つ球状の炭化物(写真中、灰色部分)が析出しているのが示されている。この図2から理解出来るように、本件発明に係る浸炭処理方法を用いて製造した製品は、その表面近傍に微細で球状の炭化物が均一に析出したものとなる。
本件発明に係る浸炭処理方法によれば、鋼製ワークの表面近傍に有害とされる網状炭化物ではなく、微細で球状の炭化物を迅速且つ均一に析出させることが出来るため、この浸炭処理方法を用いて製造された製品は、耐摩耗性や耐疲労特性等に優れたものとなる。従って、本件発明に係る浸炭処理方法は、自動車のカムやベアリング等様々な機械部品、摺動用部品に好適に用いることが出来る。

Claims (9)

  1. 鋼製ワークの表面に浸炭処理を行う浸炭処理方法であって、
    当該鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬し、当該鋼製ワークを高周波誘導加熱し、当該鋼製ワークの表層に球状炭化物を分散析出させることを特徴とする浸炭処理方法。
  2. 前記浸炭処理方法が、
    前記鋼製ワークの表面に、800℃〜1200℃の温度で900秒間以下浸炭処理を行う一次浸炭工程と、
    当該一次浸炭工程後に、当該鋼製ワークの表面をMs点以上A1点以下の温度まで急速冷却する冷却工程と、
    当該冷却工程後に、当該鋼製ワークの表面を550℃〜600℃の温度で180秒間以下保持する等温変態工程と、
    当該等温変態工程後に、当該鋼製ワークの表面をA1点を超えて1000℃以下の温度まで高周波誘導加熱により加熱して900秒間以下浸炭処理を行う二次浸炭工程と、
    当該二次浸炭工程後に、当該鋼製ワークの表面を常温まで冷却させる焼入工程とを備えた請求項1に記載の浸炭処理方法。
  3. 前記一次浸炭工程では、前記鋼製ワークの表面にガス浸炭処理又は真空浸炭処理を行う請求項1又は請求項2に記載の浸炭処理方法。
  4. 前記二次浸炭工程を複数回繰り返し行う場合には、2回目以降の二次浸炭工程は、一旦鋼製ワークの表面をA1点以下の温度まで冷却し、次いで当該鋼製ワークの表面をA1点を超えて900℃以下の温度まで加熱することを1サイクルとして、このサイクルを1回以上行うものである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の浸炭処理方法。
  5. 前記浸炭用溶液は、常温で粘性の低い液状を呈するアルコ−ルである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の浸炭処理方法。
  6. 前記焼入工程では、前記鋼製ワークを浸炭用溶液中に浸漬させた状態で高周波誘導加熱の出力を停止して焼入れを行う請求項1〜請求項5のいずれかに記載の浸炭処理方法。
  7. 前記焼入工程では、再焼入れを行う請求項1〜請求項6のいずれかに記載の浸炭処理方法。
  8. 前記一次浸炭工程及び前記二次浸炭工程の内、少なくとも1つの工程では、前記鋼製ワークの表面に対して更に窒素を拡散浸透する請求項1〜請求項7のいずれかに記載の浸炭処理方法。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の浸炭処理方法を用いて製造されたことを特徴とする製品。
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