JP2015041545A - 赤外光源、および、それを用いたガス検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】所望する波長の赤外や遠赤外光を効率よく発することができる光源を提供する。
【解決手段】1種以上のガスを封入した容器10と、容器10内のガスを励起する励起部12と、容器10に設けられた、ガスが放射する赤外光を透過する窓13とを有する赤外光源を提供する。励起されたガス11が、そのガス固有の赤外吸収波長の近傍の赤外光を放射する。これにより、所望する波長の赤外光を高効率で発生することができる。
【選択図】図1
【解決手段】1種以上のガスを封入した容器10と、容器10内のガスを励起する励起部12と、容器10に設けられた、ガスが放射する赤外光を透過する窓13とを有する赤外光源を提供する。励起されたガス11が、そのガス固有の赤外吸収波長の近傍の赤外光を放射する。これにより、所望する波長の赤外光を高効率で発生することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、エネルギー変換効率の高い赤外光源に関する。
ガスや化学物質等が有する固有の赤外吸収スペクトルを利用して、ガスや化学物質等の成分を検出するガスセンサーが知られている。このような分析装置では、Wフィラメント等に電流を流すことによりフィラメントを加熱し、赤外光(遠赤外光を含む)を出射させる光源が用いられている。フィラメントの黒体放射領域(1〜10μm)には、多様な分子種の赤外吸収が存在するため、光源としてフィラメントを用いることにより、多様な分子種の検出に対応することができる。しかしながら、上記赤外光源は、図6に示すように、例えば3000Kの温度においては、0.5〜10μmに亘る非常にスペクトル幅の広い光源であるのに対し、ガスの赤外吸収スペクトルは、スペクトル幅が非常に狭帯域であるため、エネルギーの利用効率は高くない。
一方、フィラメントを高効率化・高輝度化・長寿命化する試みとして、以下のように様々な手法が現在までに提案されている。
例えば、特許文献1および2には、フィラメントが配置された空間に不活性ガスやハロゲンガスを封入することにより、蒸発したフィラメント材料をハロゲン化してフィラメントに帰還させ(ハロゲンサイクル)、フィラメント温度をより高くする構成が提案されている。一般的にこれらはハロゲンランプと呼ばれている。これにより、赤外光への電力変換効率の上昇およびフィラメント寿命の延長の効果が得られる。この構成では、高効率化並びに長寿命化のために、封入ガスの成分並びに圧力の制御が重要となる。
特許文献3〜5には、フィラメントが封入された電球ガラスの表面に不要な波長の赤外線を反射する赤外線反射コートを施し、フィラメントから放射された不要な波長の赤外光を反射して、フィラメントに戻し、再吸収させる構成が開示されている。これにより、不要な波長の赤外光をフィラメントの再加熱に利用し、高効率化を図ることが提案されている。
特許文献6〜9には、フィラメント自体に微細構造体を作製し、その微細構造体の物理的効果により、不要な波長の赤外放射を抑制し、必要な波長の赤外光放射の割合を高めるという構成が提案されている。
F.Kusunoki et al.、Jpn.J.Appl.Phys.43、8A、5253(2004).
しかしながら,特許文献1,2の技術は、ハロゲンサイクルを利用して寿命延伸効果を図ることは出来るが,赤外放射スペクトルを操作することはできないため、大幅な効率改善を行うことは困難である。
また,特許文献3〜5の技術は、フィラメント自体の赤外光反射率が70%と高いため、赤外線反射コートで反射された不要な波長の赤外光をフィラメントが効率良く再吸収できない。また,赤外線反射コートで反射された不要な波長の赤外光が、フィラメント以外の他の部分,例えばフィラメント保持部分並びに口金等に吸収され,フィラメントの加熱に利用されない。このため、本技術を用いても大幅な効率改善を行うことは困難である。
また,特許文献6〜9の技術は,赤外放射スペクトルの極一部分に対して若干の放射増強並びに抑制効果を示す報告は存在するものの(非特許文献1)、所望の波長の赤外放射光の大幅な増強を図ることは困難であり,本技術を利用して大幅な効率改善を図ることは難しいと考えられる。
ガスや化学物質等が有する固有の赤外や遠赤外吸収スペクトルを利用するガスセンサーシステムの検出感度を向上させるためには、光源として、従来よりも強度の大きな光源が必要である。しかしながら、赤外や遠赤外の波長域では、フィラメントよりも強度の大きな光源が存在しないため,その検出感度を向上させることは難しい。また、フィラメントは、ガスセンサーに必要とされる波長帯域よりも、広い波長領域で発光するため、エネルギーの利用効率を向上させることは難しい。
本発明の目的は、所望する波長の赤外光や遠赤外光を効率よく発することができる光源を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明では、1種以上のガスを封入した容器と、容器内のガスを励起する励起部と、容器に設けられた、ガスが放射する赤外光を透過する窓とを有する赤外光源を提供する。
本発明によれば、励起されたガスが、そのガス固有の赤外吸収波長の近傍の赤外光を放射する。これにより、所望する波長の赤外光を高効率で発生することができる。
本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
本発明の赤外光源1は、図1のように、1種以上のガス11を封入した容器10と、容器10内のガス11を励起する励起部12と、容器10に設けられた、ガスが放射する赤外光を透過する窓13とを備えて構成される。これにより、励起されたガスが、そのガス固有の赤外吸収波長の近傍の赤外光を放射するため、所望する波長の赤外光を高効率で発生することができる。
本発明の赤外光源1は、図1のように、1種以上のガス11を封入した容器10と、容器10内のガス11を励起する励起部12と、容器10に設けられた、ガスが放射する赤外光を透過する窓13とを備えて構成される。これにより、励起されたガスが、そのガス固有の赤外吸収波長の近傍の赤外光を放射するため、所望する波長の赤外光を高効率で発生することができる。
励起部12は、容器10内のガス11を振動準位間で励起するものを用いる。これにより、ガス11の分子に固有な振動準位で決まる赤外吸収エネルギーは、赤外発光エネルギーと略同一のエネルギーであるという物理的作用を利用して、所望する波長の赤外光を発生することができる。例えば,図2のように、ガス11の振動準位を示す量子数をv,回転準位を示す量子数をJとし、遷移後の振動準位の量子数をv’、遷移後の回転準位の量子数をJ’とすると,赤外吸収並びに赤外発光の遷移は,v’−v=Δv=±1,J’−J=ΔJ=±1,の準位間でおこる。本原理を利用することによって,測定したい分子種(ガス種)を容器10等に封入して,適当な方法で振動準位(例えば図2(a)のv=0、v’=1)間で励起することによって,図2(b)のように、振動準位間のエネルギーに相当する所望の波長(準位間エネルギーに相当する波長)の発光を得ることができる。これにより、フィラメントによるスペクトル幅の広い黒体放射と比較して,エネルギーの利用効率が向上する。また、所望の波長を狭い波長幅で出射することができるため、例えばこの光源をガス検出装置に用いることにより、高効率で精度の良いガス検出を行うことができる。
励起部としては、ガス11を赤外光で励起する赤外光励起部の他に、マイクロ波励起部,RF波励起部,放電励起部,伝導伝熱ガス励起部,等,様々な物理的励起手法を採用することが出来る。即ち,振動準位間で励起させることができるものであればどのようなものでもよい。
例えば、励起部12は、赤外光でガスを励起するフィラメントを用いることができる。フィラメントは、ガス11の赤外吸収波長の光を放射するものであればどのようなものであってもよい。例えば、W,Ta,Re,Os,HfC,TaC,炭素,等の高融点材料を用いることができる。フィラメントは、容器10内に配置され、電力供給のための端部を容器10の外側に引き出し、気密を保って容器10を封止した構造にすることができる。具体的には、図1のように容器10の封止部に端子として口金15を配置し、口金15の両端子にフィラメントの両端をそれぞれ接続する構成にすることができる。
容器10内に封入された1種以上のガスは、放射する赤外光近傍に、固有の赤外吸収波長をもつガスを用いることが望ましい。
容器内に封入された1種以上のガス11は、ガス11の固有の赤外吸収波長の近傍波長の赤外光を放射する。励起部12としてフィラメントを用いた場合、放射された赤外光は、フィラメントが放射する同じ波長の赤外光に重畳されて窓13から出射される。このように、赤外吸収波長そのものではなく、その近傍波長の赤外光が放射されることにより、フィラメントのように励起部12がガス11の固有の赤外吸収波長の近傍の赤外光を放射している場合には、この赤外光と重畳されることにより、より強度の大きな赤外光を出射することができる。
ガス11の固有の赤外吸収波長ではなく、その近傍波長の赤外光が放射されるのは、励起された振動準位(例えば、図2(a)のv=1)内で回転準位の緩和が生じ(例えば、J=1がJ=0に緩和)、図2(b)のように低い回転準位(例えばJ=0)の振動準位(v=1)から振動準位(v=0)に遷移することにより発光するためである。これについては、後で詳しく説明する。
容器10には、窓13を除いた壁面の少なくとも一部に、少なくとも赤外光を反射する反射膜14が配置されていることが好ましい。これにより、ガス11が放射した赤外光を窓13に集めて、出射することができるため、出射効率が高まる。反射膜14としては、例えば、金層を用いることができる。
容器10は、ガス11を所定のガス圧で封止でき、窓13を設けることができる形状および材料で形成する。例えば、ガラス管球を用いることができる。
反射膜14は、容器10の内壁に配置することが望ましい。容器10の内壁に配置された反射膜14は、ガス11が発生した赤外光を反射し、赤外光が容器10の内壁で吸収されることを防ぐことができる。特に、反射膜14として金層を用いた場合、赤外光を99%以上反射することができるため、窓13を通して高効率で所望の波長の赤外光を出射することができる。また、容器10であるガラス管球全体を赤外光透過材料で形成し、窓13とすべき部分のみに、反射膜14を形成しない構成にすることも可能である。
窓13は、ガス11が放射した赤外光を透過する部材によって形成する。ガス11が放射する赤外光の波長が、4.5μm以下の場合には、窓13を無水石英(SiO2)で形成することができる。ガス11の放射する赤外光の波長が、10μm以上の長波長である場合には、Si(波長15μm透過),Ge(波長25μm透過),BaF2(波長15μm透過),KBr(波長40μm透過),CsI(波長70μm透過)およびポリエチレン(波長1000μm透過)等の内いずれかの材料を窓13の材料として用いる。
封入するガス11の種類は、固有の赤外吸収波長が、所望する赤外光の波長域にあり、容器10内で安定に存在するものであればどのようなものでもよい。例えば、NH3,CO2,H2S,N2O,C2H2,H2O,HCNおよびCH4のいずれか1種類以上をガス11として用いることができる。ガス同士が、フィラメント加熱等による励起により反応しなければ、2種以上のガスを混合して封入し,複数の波長にピークを有する赤外光を出射する赤外光源を構成することも可能である。
容器10に封入するガス11のガス圧は,使用するガス種,フィラメント等の励起部12のサイズ、並びに、容器10の管球サイズによって最適値が異なるので,適宜調整する。窓13を構成する部材は、容器(管球10)に設けた開口を塞ぎ、容器10内の気密性を維持するように固定(接着または接合)されている。窓13の構成する部材の、容器(管球)10に対する相対的位置は、内部のガス圧と大気圧との差を考慮して,ガス励起時に容器10の内圧が1気圧より大きくなるようであれば容器10の内壁面側に,ガス励起時時に容器10の内圧が1気圧より小さくなるようであれば容器10の外壁面側に配置し、容器10に固定すると良い。なお,容器10を構成する材料がSiO2系ガラス材であり窓材13が他の材料である場合、窓材13と容器10との固定は、使用する窓材13の材料並びにガス励起時の温度上昇を考えて,陽極接合,段シール,メタルシール,真空用接着剤シール,等の手法を適宜選択して用いる。
ここで、ガス11が放射する赤外光の波長が、ガス11の赤外吸収波長そのものではなく、その近傍波長であることについて詳しく説明する。
図3(a),(b)に一例として、ガス11としてCO2ガスを105Pa(1気圧)で、容器10内に封入して,励起部12としてフィラメント(温度およそ1000K)から赤外光を照射してガスを加熱し、得られた赤外放射スペクトルを測定した結果を示す。この赤外放射スペクトルから、フィラメントの放射スペクトルに、CO2の非対称伸縮モード(振動モード)による吸収を反映した鋭い吸収ピーク(波長4.26μm)と、その低エネルギー側(長波長側、4.30μm付近)にCO2ガスからの非対称伸縮モード(振動準位)を反映した鋭い放射スペクトルが観測されていることがわかる。
ガス11の赤外光の吸収波長のピークと、放射波長のピークとがずれているのは、図2(a)のように、CO2ガス11が、フィラメントの放射光をR branch(R枝、v’−v=Δv=+1、J’−J=ΔJ=+1)の準位間(例:v=0、j=0の準位からv’=1、J’=1の準位への遷移)で吸収して励起された後、回転準位が緩和され,図2(b)のようにP branch(P枝、v’−v=Δv=+1、J’−J=ΔJ=−1)の準位間(例:v’=1、J’=0の準位からv=0、J=1の準位への遷移)で発光したためと考えられる。このように、ガスが赤外吸収で励起された後、発光するプロセスは,R枝(ΔJ=+1)で吸収してP枝(ΔJ=−1)で放射することが多いため、吸収ピークと励起ピークとにずれが生じる。ガス11から放射された波長4.30μmの赤外光は、フィラメントが放射する波長4.30μmの赤外光に重畳され、強度が高められる。
ガス11がP枝放射で発光する赤外光強度は、R枝吸収で吸収した赤外光強度よりも大きくならないので、重畳された赤外光強度は、最大で、フィラメントによる同波長の放射スペクトルの赤外光強度の2倍程度である。本実施形態の赤外光源では、この重畳された赤外光を、同じ強度の赤外光をフィラメントの放射で得る場合に必要なエネルギーよりも、小さなエネルギーで得ることができる。例えば、図4に示すように、フィラメントが1000Kの場合に、ガス11から放射された波長4.30μm赤外光に、フィラメントが放射した波長4.30μmの赤外光が重畳された強度の赤外光を、フィラメントの黒体放射のみで得ようとすると、フィラメントを温度1300Kまで加熱する必要がある。すなわち、本実施形態の赤外光源は、フィラメント温度が1000Kでありながら、1300Kのフィラメントと同じ強度の赤外光が得られる。1000Kと1300Kのエネルギーの比ηを求めると、ステファンボルツマン則よりη=10004/13004=0.35であり、本実施形態の赤外光源(1000K)は、黒体放射のフィラメント(1300K)の凡そ1/3のエネルギーで同等の赤外光強度が得られることがわかる。
本実施形態では、上述してきたように、ガスを封入した簡単な構成の赤外光源でありながら、エネルギーの利用効率が高く、所望の波長の赤外光を高輝度に得ることができる。また、フィラメントを用いた場合には、さらに赤外光強度を強めることができる。また、簡単な構成の赤外光源であるため、低コストで製造でき、長寿命を達成できる。
また、本実施形態の赤外光源は、従来のハロゲンランプと同様の製造工程で製造することができるため、容易に、歩留まりよく製造することができる。
また、本実施形態の赤外光源は、長波長の遠赤外光(テラヘルツ(THz)光)を出射することも可能である。例えば,ハロゲン電球で利用されるCH3I等のガス11を封入することによって,1THzの放射を簡便に得ることが出来る。長波長の遠赤外光を放射させる場合は,同一振動準位内における回転準位間での遷移を利用する。
本実施形態の赤外光源は、所望のガス濃度を精度よく評価することが出来るので、ガス検出装置の光源や、呼気を利用したガン検査装置(癌患者の呼気から癌患者特有の揮発性有機物質が発せられることが知られているため。G.Peng,et al. British Journal of Cancer 103,542-551(2010).を参照のこと。)の光源として用いることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、第1の実施形態の赤外光源を用いたガス検出装置について図5を用いて説明する。
第2の実施形態として、第1の実施形態の赤外光源を用いたガス検出装置について図5を用いて説明する。
本実施形態のガス検出装置は、図5(a)のように、検出すべきガス21を導入する導入口20aを備えた検出用容器20と、検出用容器20内に赤外光を照射する赤外光源1と、検出用容器20内の検出すべきガスを透過した赤外光を検出する検出器30とを備えている。赤外光源1は、第1の実施形態の赤外光源であり、窓13を検出器30に向けて配置される。検出用容器20は、赤外光源1と検出器30の間の空間に、検出すべきガスを導入する。
赤外光源1の容器10内に封入される1種以上のガス11は、検出すべきガス21と同じガス種を含む。
検出器30は、帯域フィルタ31を備えることが好ましい。帯域フィルタ31は、検出すべきガス21の固有の赤外吸収波長に対応する波長を含む所定の波長範囲の光を透過する。これにより、検出すべきガスを透過した赤外光のうち、帯域フィルタ31を透過した赤外光が検出器30によって検出される。このように帯域フィルタ31を配置することにより、検出器30のダイナミックレンジが小さい場合であっても、検出器30を飽和させることなく、精度よく検出することができる。
図5(a)のガス検出装置の動作について説明する。ここでは、一例として、赤外光源1が励起部12としてフィラメントを用い、赤外光源1のガス11および検出すべきガス21がいずれもCO2である場合について説明する。
まず、検出すべきガス21を検出用容器20に導入する。検出すべきガス21のCO2の赤外吸収波長は4.26μmに吸収ピーク53を有する。赤外光源1のフィラメントに電力を供給し、赤外光を放射させる。赤外光源1から放射される赤外光のスペクトルは、図5(b)のように、フィラメントの放射スペクトル50に、赤外光源1のガス11の放射スペクトル51を重畳した形状である。ここまでの説明においては,この放射スペクトル51は波長4.30μmにピークを有するように記載されていたが,このピーク位置はガスの温度上昇により高エネルギー側(短波長側)にシフトさせることが出来る。この理由は,CO2ガスの基底状態がMaxwell-Boltzmann則に従う温度分布を示すためである。従って,赤外光源1のフィラメント加熱温度を調整することによって,検出すべきガス21のCO2赤外吸収波長と同一波長の4.26μmに発光ピーク51を設定することができる。
赤外光源1から放射された赤外光は、検出すべきガス21によってCO2の赤外吸収波長が吸収され、図5(c)のように、検出すべきガス21の吸収のピーク53が生じる。よって、帯域フィルタ31によって、吸収のピーク52,53を含む波長帯域の赤外光を通過させて、その強度を検出器30で検出することにより、Beer−Lambert則の式(1)により、CO2濃度を定量的に測定することができる。
I(λ)=I0exp[−αCL] ・・・(1)
ただし、I0:入射光量,I(λ):出射光量,α:吸光係数,C:濃度,L:検出用容器20の赤外光源1と帯域フィルタ31との距離である。
I(λ)=I0exp[−αCL] ・・・(1)
ただし、I0:入射光量,I(λ):出射光量,α:吸光係数,C:濃度,L:検出用容器20の赤外光源1と帯域フィルタ31との距離である。
また、分子の吸収は一般的に狭いスペクトル幅を有するため,より精密に赤外光源1のガス11の放射した赤外光のピーク波長を、検出すべきガス21の赤外吸収波長に一致させるために、赤外光源1のガス11をヒータ(加熱部)40で加熱してCO2分子の基底状態のエネルギー分布を変化させ,赤外光源1のガス11の赤外吸収波長および放射スペクトル51のピークを短波長側にずらすことができる。これにより、赤外光源1のガス11の放射スペクトル51のピークを、検出すべきガス21の赤外吸収波長に一致させることができ、大きな強度の赤外光で検出すべきガス21を検出することができる。よって、ガス21の検出精度を高めることができる。
また,大気圏並びに極地に存在する極低温のCO2ガスは,殆どのエネルギーが基底状態のv=0,J=0,に存在するため、その吸収のピーク53が室温の場合より長波長に位置するようになる。このような場合,濃度を精密に評価するためには,検出すべきガス21を加熱するヒータ(不図示)を配置することにより、検出すべきガス21の吸収ピーク53を赤外光源1のガス11の放射スペクトル51のピークに一致させることが可能でなる。例えば,検出すべきCO2ガス21を100〜200℃程度に加熱することによって、エネルギー分布を高エネルギー側にシフトさせ、ガス21の吸収ピーク53を短波長化できる。
なお、ここでは,簡単に単一波長のCO2ガス吸収について記述したが,フィラメント加熱によりガス温度が高くなると,基底状態のエネルギー分布が高いJ側に移りMaxwell−Boltzmann分布自体が高エネルギー側にシフトするだけでなく広がりを有するようになる。これにより,全体として吸収並びに放射スペクトルが広がる傾向を示すため,ヒータ等を用いて精密な温度制御をおこなわなくても,低温度領域でのCO2ガス吸収ピーク53が発光ピーク51の範囲に入るため,CO2濃度を測定することが可能となる。
また、別の手法としてドップラー効果を利用することも可能である。これは,検出すべきCO2ガス21が、全体的に赤外光源1に向かって速度Vxで運動するように、ガス21を赤外光源1に吹き付けることによって,光の周波数がドップラーシフトして,v=v0/(1−Vx/c),c:光速度,となる効果を利用するものである。すなわち、赤外光源1が放射した長波長の光(低エネルギー光)は、検出すべきガス21に向かって移動し、かつ、検出すべきガス21が赤外光源1に向かって吹きつけられていることにより、実際の波長よりも短い波長の光(高エネルギー光)として検出すべきガス21が感じるため,ガス11の放射スペクトル51のピークを、検出すべきガス21の赤外吸収波長に一致させることができる。よって、大きな強度の赤外光(放射スペクトル51のピーク)で、検出すべきガス21を検出することができ、検出精度を高めることができる。
なお、検出すべきガス21を赤外光源1に向かって吹きつけるための構成としては、図5のように、検出用容器20の導入口20aを検出器30寄りに、排出口20bを導入口20aよりも赤外光源1寄りに備えることにより実現できる。これにより、導入口20aから導入されたガス21が排出口20bに向かって進むため、赤外光源1に吹き付けられ、ドップラー効果を生じさせることができる。また、強制的にガス21を加速するファンを導入口20aや、検出用容器20内に配置することも可能である。
また、図5の導入口20aと排出口20bの位置を入れ替え、赤外光源1から遠ざかる方向に検出すべきガス21を流すことも可能である。この場合、検出すべきガス21は、負の速度で赤外光源に吹き付けられているのと同等であるため、検出すべきガス21は、赤外光源1が放射した光を実際の波長よりも長い波長の光(低エネルギー光)として感じる。これにより、ガス11の放射スペクトル51のピークが検出すべきガス21の赤外吸収波長よりも短い場合に、ガス11の放射スペクトル51のピークを検出すべきガス21の赤外吸収波長に一致させることができる。
検出器30としては,熱焦電素子やゴーレイセル等を用いることができる。検出器30として熱焦電素子並びにゴーレイセル等を利用する場合には,チョッパー等(不図示)を必要に応じて赤外光源1と帯域フィルタ31との間に配置し、赤外光を変調する。また、熱焦電素子やゴーレイセル等の検出器は、可視光の検出に用いられる検出器(例えば、Si光検出器)と比較してダイナミックレンジ並びにリニアリティ(信号直線性)に劣るので,参照光を用いて、検出結果を補正することが望ましい。例えば、ガス21のスペクトル帯域より若干ずれた帯域フィルタ(不図示)を別途準備して,その透過光を検出器30で検出し,これを参照光の信号として、帯域フィルタ31を透過した光の信号強度を更生する。これにより、環境変動等の揺らぎによる信号強度変化をキャンセルすることができる。
本発明のガス検出装置は、赤外光源1を種々の赤外光の検出器30と組み合わせることによって,温室効果ガスであるNH3、CO2、HCNならびにCH4,火山性ガスや排気ガスに含まれるH2S,温室効果ガスや光化学スモッグに含まれるガスであるN2O,湿度の検知に利用できるC2H2やH2O等,様々なガスを検出することができる。また,癌患者の呼気には癌患者特有の揮発性有機物質が含まれていることが知られており,これが3μmの赤外領域で特徴的な吸収スペクトルを示すため,本揮発性物質をガス11として赤外光源1内に封入して赤外光源とするとともに、呼気を集めて検出すべきガス21として図5のガス検出装置内に導入することによって,癌の有無並びにその種類を高感度で検出することが出来る。
また、本実施形態では、複数のガス11を赤外光源1の容器10内に封入することができるため、複数の赤外波長に放射ピークを持つ赤外光を放射することができる。よって、一つの赤外光源1で複数の種類のガス21を検出することができる。なお、この場合、必要に応じて、複数の波長を透過する帯域フィルタ31を用いるか、透過帯域の異なる複数の帯域フィルタを備える構成とすることが望ましい。
1…赤外光源、10…(光源用)容器、11…(光源用)ガス、12…励起部、13…窓、14…反射膜、15…口金、20…検出用容器、21…検出すべきガス、30…検出器、31…帯域フィルタ
Claims (14)
- 1種以上のガスを封入した容器と、前記容器内のガスを励起する励起部と、前記容器に設けられた、前記ガスが放射する赤外光を透過する窓とを有することを特徴とする赤外光源。
- 請求項1に記載の赤外光源において、前記励起部は、前記光源用容器内のガスを振動準位間で励起することを特徴とする赤外光源。
- 請求項1または2に記載の赤外光源において、前記容器内に封入された1種以上のガスは、放射する前記赤外光近傍に、固有の赤外吸収波長をもつガスであることを特徴とする赤外光源。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の赤外光源において、前記励起部は、赤外光で前記ガスを励起するフィラメントであることを特徴とする赤外光源。
- 請求項4に記載の赤外光源において、前記容器内に封入された1種以上のガスは、当該ガスの赤外吸収波長の近傍波長の前記赤外光を放射し、放射された赤外光は、前記フィラメントが放射する同じ波長の赤外光に重畳されて前記窓から出射されることを特徴とする赤外光源。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の赤外光源において、前記容器は、前記窓を除いた壁面の少なくとも一部に、少なくとも赤外光を反射する反射膜が配置されていることを特徴とする赤外光源。
- 検出すべきガスを導入する導入口を備えた検出用容器と、前記検出用容器内に赤外光を照射する赤外光源と、前記検出用容器内の前記検出すべきガスを透過した前記赤外光を検出する検出器とを有し、
前記赤外光源は、1種以上のガスを封入した光源用容器と、前記光源用容器内のガスを励起する励起部と、前記光源用容器内のガスが放射する赤外光を透過するために前記容器に設けられた窓とを備え、前記窓を透過した前記赤外光を前記検出用容器内の前記検出すべきガスに照射することを特徴とするガス検出装置。 - 請求項7に記載のガス検出装置において、前記励起部は、前記光源用容器内のガスを振動準位間で励起することを特徴とするガス検出装置。
- 請求項7または8に記載のガス検出装置において、前記光源用容器内に封入された1種以上のガスは、前記検出すべきガスと同じガス種を含むことを特徴とするガス検出装置。
- 請求項7ないし9のいずれか1項に記載のガス検出装置において、前記励起部は、赤外光で前記光源用容器内のガスを励起するフィラメントであることを特徴とするガス検出装置。
- 請求項10に記載のガス検出装置において、前記容器内に封入された1種以上のガスは、励起されたことにより、当該ガスの固有の赤外吸収波長の近傍の波長の前記赤外光を放射し、放射された赤外光は、前記フィラメントが放射する同じ波長の赤外光に重畳されて前記窓から出射されることを特徴とするガス検出装置。
- 請求項7ないし11のいずれか1項に記載のガス検出装置において、前記検出用容器内のガスを加熱する加熱部をさらに備えることを特徴とするガス検出装置。
- 請求項7ないし12のいずれか1項に記載のガス検出装置において、前記検出用容器は、前記検出すべきガスを前記赤外光源に向かって正の速度または負の速度で吹き付ける構造であることを特徴とするガス検出装置。
- 請求項7ないし13のいずれか1項に記載のガス検出装置において、前記検出器は、前記検出すべきガスの固有の赤外吸収波長に対応する波長を含む所定の波長範囲の光を透過する帯域フィルタを備え、前記検出すべきガスを透過した前記赤外光のうち、前記帯域フィルタを透過した赤外光を検出することを特徴とするガス検出装置。
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JP2013172615A JP2015041545A (ja) | 2013-08-22 | 2013-08-22 | 赤外光源、および、それを用いたガス検出装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112485195A (zh) * | 2015-10-09 | 2021-03-12 | 霍尼韦尔国际公司 | 使用高莱探测器的气体检测器 |
CN115541013A (zh) * | 2022-09-02 | 2022-12-30 | 上海航天空间技术有限公司 | 一种星载高分辨率碳监测光谱仪 |
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2013
- 2013-08-22 JP JP2013172615A patent/JP2015041545A/ja active Pending
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