JP2015038249A - 成膜速度が速いアーク式蒸発源及びこのアーク式蒸発源を用いた皮膜の製造方法 - Google Patents

成膜速度が速いアーク式蒸発源及びこのアーク式蒸発源を用いた皮膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アーク式蒸発源において、磁力線を基板方向に誘導して成膜速度を速くする。
【解決手段】ターゲット2の外周を取り囲んでいて磁化方向がターゲット表面と直交する方向に沿うように配置された1又は複数の外周磁石3と、ターゲット2の背面側に配置された背面磁石4Aとを備え、背面磁石4Aは、極性が外周磁石3と同方向で且つ磁化方向がターゲット表面と直交する方向に沿うように配置されている非リング状の第1の永久磁石を有していて、背面磁石4Aは、第1の永久磁石とターゲット2の間、もしくは、第1の永久磁石の背面側に、第1の永久磁石と間隔を空けて配置された非リング状の第2の永久磁石をさらに有し、第2の永久磁石は、極性が外周磁石3と同方向で且つ磁化方向がターゲット表面と直交する方向に沿うように配置されているアーク式蒸発源。
【選択図】図12

Description

本発明は、機械部品等の耐摩耗性などの向上のために用いられる、窒化物及び酸化物などのセラミック膜、非晶質炭素膜等の薄膜を形成する成膜装置のアーク式蒸発源、及びこのアーク式蒸発源を用いた皮膜の製造方法に関するものである。
従来、耐摩耗性、摺動特性及び保護機能向上などの目的で、機械部品、切削工具、摺動部品などの基板の表面に薄膜をコーティングする技術として、アークイオンプレーティング法、スパッタ法などの物理蒸着法が広く知られており、アークイオンプレーティング法においては、カソード放電型アーク式蒸発源が用いられている。
カソード放電型アーク式蒸発源は、カソードであるターゲットの表面にアーク放電を発生させ、ターゲットを構成する物質を瞬時に溶解し、イオン化したその物質を処理物である基板の表面に引き込むことで薄膜を形成している。このアーク式蒸発源は、蒸発速度が速く、蒸発したターゲットを構成する物質のイオン化率が高いことから、成膜時に基板にバイアスを印加することで緻密な皮膜を形成できるため切削工具などの耐摩耗性皮膜を形成するために産業的に用いられている。
しかしながら、カソード(ターゲット)とアノード間で生じるアーク放電のカソード側の電子放出点(アークスポット)を中心としたターゲットの蒸発が生じる時にスポット近傍から溶融したターゲットが放出され、被処理体に付着し、面粗度悪化の原因となる。
アークスポットから放出される溶融ターゲット物質(マクロパーティクル)の量は、アークスポットが高速で移動する場合に抑制される傾向があり、その移動速度はターゲットに印加された磁界に影響されることが知られている。
また、アーク放電により蒸発するターゲット原子はアークプラズマ中において高度に電離、イオン化することが知られており、ターゲットから基板に向かうイオンの軌跡はターゲットと基板との間の磁界に影響されるなどの問題がある。
これらの問題を解消するために、ターゲットに磁界を印加し、アークスポットの移動を制御する下記のような試みが提案されており、ターゲット周囲にリング状の磁力発生機構(永久磁石、電磁コイル)を配置し、ターゲット表面に垂直磁場を印可する技術(特許文献1)、イオン化されたターゲットを構成する物質を効率よく基板方向に収束させるように、ターゲットの前方に収束のための磁力発生機構(電磁コイル)を配置する技術(特許文献2)、アーク式蒸発源のターゲット背面中心に永久磁石を設置し、それを取り巻くようにターゲット背面に極性の異なるリング磁石を配置し、アーク放電を閉じこめるような磁場成分を形成すると共に、リング磁石とほぼ同じ直径の電磁コイルを設ける技術(特許文献3)、ターゲット周囲に配置されたリング状磁石と背面の電磁コイルによりターゲット表面に平行な磁場を形成する技術(特許文献4)が開示されている。
特開2000−328236号公報 特開平07−180043号公報 特開2007−056347号公報 特表2004−523658号公報
しかしながら、特許文献1の磁力発生機構によれば、ターゲット表面から磁力線がリング側面のマグネットに向かって伸びることから、イオンの多くがマグネット方向に誘導される。さらに、ターゲット前方において基板方向に向かって伸びる磁力線が基板方向から大きくそれるために、蒸発してイオン化されたターゲットの物質が効率的に到達できない。
また、特許文献2に記載の技術では、磁力線は基板方向に向かって伸びるものの、ターゲットと基板との間に大型の電磁コイルを配置する必要があることから、必然的にターゲットと基板との間の距離が長くなり、結果として成膜速度が低下することになる。
さらに、特許文献3に開示された配置では、アーク放電は磁場の垂直成分(ターゲット表面に対する磁場の垂直方向の成分)が0になる点で優先的に放電する傾向があることから、永久磁石とリング磁石のほぼ中間部分にトラップされ、電磁コイルを使用しても、それより内周の部分にアーク放電を制御するのは困難であり、ターゲットの利用効率は高くならない。また、このような配置ではターゲットから前方に向かって伸びる磁力線の成分が無いことから、ターゲットから放出されたイオンは基板に向かって効率的に収束されない。
そして、特許文献4において示された技術では、電磁コイルの内径がターゲットの直径より小さい実施形態しか記載されておらず、その場合には磁力線はターゲットから外側に向けて発散する傾向があり、効率的なイオンの収束はできないと思われる。また、ターゲット表面に平行な磁場に必要な強度を得るためにアークプラズマの放電を高速に移動させており、電磁コイル(あるいは磁性体ヨーク)との組合せにおいて大型の電磁コイルで大電流が必要とされて蒸発源が大型化するため、産業上好ましくない。
なお、図5は、特許文献4に記載された技術(ターゲットの背面にその直径よりも内径が小さい電磁コイルを配置し、この電磁コイルの内径側にコアを配置する技術、以下単に「比較技術」という)の磁力線分布図を示している。
前述した問題に鑑み、本発明は、成膜速度が速いアーク式蒸発源を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、以下の技術的手段を採用した。
本発明に係るアーク式蒸発源は、ターゲットの外周を取り囲んでいて磁化方向が前記ターゲット表面と直交する方向に沿うように配置された1又は複数の外周磁石と、前記ターゲットの背面側に配置された背面磁石とを備え、前記背面磁石は、極性が前記外周磁石と同方向で且つ磁化方向が前記ターゲット表面と直交する方向に沿うように配置されている非リング状の第1の永久磁石を有していて、前記背面磁石は、前記第1の永久磁石と前記ターゲットの間、もしくは、前記第1の永久磁石の背面側に、前記第1の永久磁石と間隔を空けて配置された非リング状の第2の永久磁石をさらに有し、前記第2の永久磁石は、極性が前記外周磁石と同方向で且つ磁化方向が前記ターゲット表面と直交する方向に沿うように配置されていることを特徴とする。
好ましくは、前記外周磁石及び前記背面磁石が、ターゲット表面に対して垂直な方向の磁力線の成分が0となる点を持つ磁界をターゲット表面上に形成しているとよい。
好ましくは、前記ターゲットは円盤状であり、前記外周磁石はリング状の永久磁石であるとよい。
好ましくは、前記第1の永久磁石は、ターゲットに対向する表面の面積が前記ターゲット表面の面積の4分の1以上であるとよい。
好ましくは、前記第1の永久磁石をその表面と直交する方向に沿って投影した面の形状は、前記ターゲットをその表面と直交する方向に沿って投影した面の形状と相似であるとよい。
本発明に係る皮膜の製造方法は、上記したアーク式蒸発源を用い、2種類以上の元素を含むターゲットから上記2種以上の元素を含む皮膜を形成することを特徴とする。
本発明に係る皮膜の製造方法は、上記したアーク式蒸発源を用いて、Al、Ti、Crのうちの少なくとも1種を含む窒化物、炭化物または炭窒化物の皮膜を5μm以上の厚さとなるように形成することを特徴とする。
本発明によると、アーク式蒸発源を用いた成膜装置の成膜速度を速くすることができる。
参考実施形態に係るアーク式蒸発源を備えた成膜装置の概要図である。 参考実施例1に係るアーク式蒸発源の概要図である。 参考実施例2に係るアーク式蒸発源の概要図である。 参考実施例3、4に係るアーク式蒸発源の概要図である。 比較技術(比較用の測定例1)のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 比較用の測定例2のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 参考実施例1に係る測定例3のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例4のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例5のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例6のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例7のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例8(本実施形態)のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 比較用の測定例9のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 参考実施例2に係る測定例10のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 参考実施例3に係る測定例11のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例12のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例13のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例14のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。 測定例15のアーク式蒸発源の磁力線分布図である。
以下、本発明の実施形態を、図面に基づき説明する。
図1には、本発明の参考実施形態に係るアーク式蒸発源1(以下、蒸発源1)が備えられた成膜装置5が示されている。
成膜装置5は、真空チャンバ11を備え、真空チャンバ11内には処理物である基板6を支持する回転台12と、基板6に向けて取り付けられた蒸発源1が配備されている。真空チャンバ11には、当該真空チャンバ11内へ反応ガスを導入するガス導入口13と、真空チャンバ11内から反応ガスを排出するガス排気口14とが設けられている。
加えて、成膜装置5は、ターゲット2に負のバイアスをかけるアーク電源15と、基板6に負のバイアスをかけるバイアス電源16とが設けられ、両電源15、16の正側はグランド18に接続されている。
図1に示すように、蒸発源1は、円盤状(以下、「円盤状」とは所定の高さを有した円柱状のものも含む)のターゲット2と、ターゲット2の近傍に配備された磁界形成手段7と、ターゲット2の外周部に配置されたアノード17とを有している。なお、アノード17はグランド18に接続されており、同電位にある真空チャンバ11もアノード17として作用することができる。すなわち、蒸発源1は、カソード放電型のアーク式蒸発源である。
ターゲット2は、基板6上に形成しようとする薄膜に応じて選択された材料(例えば、クロム(Cr)、チタン(Ti)、チタンアルミ(TiAl)、又は炭素(C)など)で構成されている。
磁界形成手段7は、ターゲット2の外周に配置された外周磁石3と、ターゲット2の背面側に配置された背面磁石4とを有している。また、磁界形成手段7は、外周磁石3の極性の向きと背面磁石4の極性の向きとが同方向となるように外周磁石3及び背面磁石4が配置されている。
なお、ターゲット2の蒸発面(基板6側の面)を「前面」、その反対側の面を「背面」とする(図2〜図4参照)。
これら外周磁石3及び背面磁石4は、保持力の高いネオジム磁石により形成された永久磁石によって構成されている。
外周磁石3は、リング状であって、ターゲット2と同心軸状となるように配置されている。外周磁石3の磁化方向は、ターゲット2の軸心に沿うように(ターゲット2を構成する物質の蒸発面に対して垂直になるように)、且つ外周磁石3の径方向における投影面が
ターゲット2の径方向における投影面と重なるように配置されている。すなわち、外周磁石3は、ターゲット2の蒸発面と平行な方向に外周磁石3とターゲット2とを投影することにより形成される影が互いに重なるように配置されている。
なお、外周磁石3は、複数の円柱状等の永久磁石をターゲット2の外周を取り囲むように環状に配置することで形成してもよい(以下、「リング状」又は「環状」とは、複数の磁石をターゲット2の外周に沿って並べた状態も含む)。
背面磁石4は、その磁化方向がターゲット2の軸心に沿うように(ターゲット2を構成する物質の蒸発面に対して垂直になるように)、且つターゲット2の背面側に配置されている。
図2〜図4においては、外周磁石3及び背面磁石4の極性をともに基板6に近い側をN極、基板6から遠い側をS極としているが、逆に、基板6に近い側をS極、基板6から遠い側をN極として外周磁石3及び背面磁石4を配置してもよい。
磁界形成手段7が前述した構成であるため、ターゲット2の外周部の外周磁石3によって形成される磁界と、ターゲット2の背面側の背面磁石4によって形成される磁界の組合せにより、磁力線を基板6方向に誘導することが可能となる。
本実施形態及び参考実施形態における背面磁石4は、後述の円盤背面磁石4Aのように非リング状のものや、後述のリング背面磁石4Bのようにリング状のものである。ここで、「非リング状」とは、ドーナツ様に径方向内部に孔が空いているものではなく、中身の詰まった中実であるものを指し、円盤状や円柱状等を含む。
すなわち、「非リング状」とは、表面から外方へ向くいずれの法線も互いに交わらない形状をいう。
なお、図2は背面磁石4を後述する円盤背面磁石4A(第1の永久磁石)とした参考実施例1における磁界形成手段7を示し、図3は背面磁石4を後述するリング背面磁石4B(リング永久磁石)とした参考実施例2における磁界形成手段7を示している。また、図4は背面磁石4として、円盤背面磁石4Aとリング背面磁石4Bとを同時に用いた参考実施例3における磁界形成手段7を示している。
次に、蒸発源1が備えられた成膜装置5を用いた成膜の方法を説明する。
まず真空チャンバ11を真空引きにより真空にした後、アルゴンガス(Ar)等をガス導入口13より導入する。そして、ターゲット2及び基板6上の酸化物等の不純物をスパッタすることにより除去し、真空チャンバ11内を再び真空にした後、反応ガスをガス導入口13より真空チャンバ11内に導入する。この状態で真空チャンバ11に設置されたターゲット2上でアーク放電を発生させることによりターゲット2を構成する物質をプラズマ化し反応ガスと反応させることで、回転台12に置かれた基板6上に窒化膜、酸化膜、炭化膜、炭窒化膜、或いは非晶質炭素膜等を成膜する。
なお、反応ガスとしては窒素ガス(N2)、酸素ガス(O2)、メタン(CH4)などの炭化水素ガスを用途に合わせて選択すればよく、真空チャンバ11内の反応ガスの圧力は1〜7Pa程度とする。また、成膜時、ターゲット2は、100〜200Aのアーク電流を流すことで放電させると共に、10〜30Vの負電圧をアーク電源15により印加している。基板6には10〜200Vの負電圧をバイアス電源16により印加している。
[参考実施例1]
本発明に係る蒸発源1を用いた参考実施例1について説明する。
参考実施例では、背面磁石4が円盤状(円柱形状)の永久磁石(以下、「円盤背面磁石4A(第1の永久磁石)」という)で形成されている。つまり、円盤背面磁石4Aをその表面と直交する方向に沿って投影した面の形状(以下、「投影面形状」という)は、ターゲット2の投影面形状と相似となっている。また、円盤背面磁石4Aは、ターゲット2と同心軸状となるように配置され、保持力の高いネオジム磁石により形成されているため、磁界形成手段7全体をコンパクトにすることができる。
ターゲット2は、その直径を100mmで、その厚さを16mmとしており、チタン(Ti)とアルミ(Al)の原子比が1:1のチタンアルミ(TiAl)により形成されている。
外周磁石3は、外径が170mm、内径が150mm、厚さが10mmである。
参考実施例1において、反応ガスとして窒素(N2)を選択し、その圧力は4Pa、成膜時間は30分とした。ターゲット2にはアーク電源15を使用して150Aで放電させ、基板6にはバイアス電源16を用いて30Vの負電圧を印加している。基板6は、15mm×15mm×5mmの鏡面研磨した超硬合金のチップを用い、ターゲット2表面から約180mm離れた位置に配置され、基板6の温度を500℃としている。
また、図5に示した比較技術(比較用の測定例1とする)においても、ターゲット2の背面側に電磁コイル19を配置している以外は、ターゲット2、外周磁石3、アーク電流値、反応ガス、成膜時間、印加した負電圧及び基板6に関する条件は同様であり、電磁コイル19に流す電流値と電磁コイル19の巻き数とを乗じた値は2000A・Tとしている。
測定例2は、背面磁石4を有さない従来技術で比較用の測定例である。
測定例3〜測定例8では、円盤背面磁石4Aを、異なる形状(直径、厚み)、位置(ターゲット2表面から円盤背面磁石4A表面までの距離)や個数にて形成し、前述した条件下にて成膜を行っている。なお、測定例8は、本発明にかかる実施形態(本実施形態)での測定結果を示したものである。
表1は、比較技術である測定例1及び測定例2と、参考実施例1における測定例3〜本発明にかかる実施形態における測定例8の円盤背面磁石4Aの直径、厚さ、ターゲット2表面からの距離及び個数と、基板6に流れる電流値と、成膜速度の評価とを示している。
次に、基板6上の成膜速度、残留応力の評価について説明する。
成膜速度は、アーク放電により基板6に流れるイオン電流に比例することから、基板6に流れる電流値が大きいほど成膜速度が速いことがわかる。生産性、作業効率などを鑑みたとき、成膜速度に比例する電流値は1.5A以上であることが望ましいため、1.5A以上で合格とした。
また、薄膜の残留応力については、厚さ1mmのSiウェハ上に成膜を行い、成膜後の基板6のたわみの曲率半径を光てこを利用して測定し、式(1)に示すStoneyの式により薄膜の残留応力を計算した。薄膜の残留応力については、切削工具用の硬質皮膜の剥離を想定して、その絶対値が2.0GPa以下で合格とした。
まず、各測定例における磁力線分布図について考察する。
測定例1及び測定例2の磁力線分布図は図5、図6であるが、これらの図に示されたように、測定例1及び測定例2は、ターゲット2から前方に向かって伸びる磁力線がターゲット2の正面方向(すなわち、基板6方向)から大きくそれている。
詳しくは、測定例1においては、ターゲット2の軸心から最も離れた側の磁力線が、ターゲット2表面から基板6方向に約75mmしか進んでいない地点で、すでにターゲット2の軸心から200mmも離れている、つまり大きくそれていることがわかる(図5中の矢印A参照)。
測定例2においては、ターゲット2の軸心から最も離れた側の磁力線が、ターゲット2表面から基板6方向に約45mmしか進んでいない地点で、すでにターゲット2の軸心から200mmも大きくそれている(図6中の矢印B参照)。
このように、ターゲット2から前方に向かって伸びる磁力線が基板6方向から大きくそれるために、イオンの軌跡も基板6方向からそれる傾向にある。
その結果、表1に示したように、測定例1、測定例2での基板6に流れる電流値は、それぞれ1.1A、1.0Aで成膜速度の評価も不合格となっており、効率的な成膜が困難である。また、イオンの軌跡が基板6から大きくそれ、成膜速度が遅いため、表1に示したように、測定例1、測定例2での皮膜残留応力値は、それぞれ−2.11GPa、−2.23GPaを示し、皮膜残留応力の評価も不合格となっており、皮膜残留応力の低い皮膜が形成できない。
測定例3〜測定例8の磁力線分布は図7〜図12に示す通りである。これらの図から明らかなように、測定例3〜測定例8は磁力線を基板6方向に誘導することが可能となっている。
つまり、測定例3〜測定例8においては、ターゲット2の軸心から最も離れた側の磁力線が、ターゲット2表面から基板6方向に約90〜約120mmまで進んだ地点でなくては、ターゲット2の軸心から200mm離れることはなく(例えば、図7中の矢印C、図8中の矢印D参照)、より多くの磁力線がターゲット2の基板6方向へ向かって伸びている。
測定例3〜測定例8では、ターゲット2の中心付近から直接基板6に向かう磁力線の成分(例えば、図7中の矢印E、図8中の矢印F参照)が存在している。また、測定例3〜測定例8において、ターゲット2の軸心に最も近い側の磁力線が、ターゲット2表面から基板6方向に200mm進んだ地点であっても、ターゲット2の軸心から20mmほどしか離れておらず(例えば、図7中の矢印C’、図8中の矢印D’参照)、測定例1及び測定例2は同地点でターゲット2の軸心から約24mm以上離れている(図5中の矢印A’、図6中の矢印B’参照)ことから、基板6にはより多くの磁力線が直接伸びていることがわかる。
その結果、表1に示したように、測定例3〜測定例8における基板6に流れる電流値はいずれも1.5A以上で成膜速度の評価が合格となっており、測定例1及び測定例2よりも成膜速度が速く、効率的な成膜が可能となる。また、皮膜残留応力の絶対値は、いずれも2.0GPa以下を示し、皮膜残留応力の評価が合格となっており、残留応力の低い皮膜の形成が可能となる。
測定例3と測定例4とを比較すると、測定例3における円盤背面磁石4Aの直径は40mmであって、円盤背面磁石4Aのターゲット2と対向する表面(以下、単に「表面」という)の面積は400πmm2、つまりターゲット2表面の面積2500πmm2の0.16倍(100分の16)となる。
測定例4における円盤背面磁石4Aの直径は80mmであって、円盤背面磁石4Aの表面の面積は1600πmm2、つまりターゲット2表面の面積2500πmm2の0.64倍(100分の64)となる。
そして、図7、図8及び表1に示されたように、測定例4の磁力線分布図は測定例3の磁力線分布図と比べより多くの磁力線が基板6方向に向かっており、基板6に流れる電流値も測定例4の方が測定例3よりも大きく、測定例4は測定例3よりも成膜速度が速いことがわかる。
したがって、円盤背面磁石4Aの表面の面積は、ターゲット2表面の面積が0.25倍(4分の1)以上である場合には、ターゲット2の軸心からそれることなく、より多くの磁力線が基板6へ直接伸びることから、より効率的にターゲット2から蒸発したイオンを基板6に誘導することができる。
なお、円盤背面磁石4Aの表面の面積は、好ましくはターゲット2表面の面積の0.64倍(100分の64)以上であり、さらに好ましくはターゲット2表面の面積(つまり、ターゲット2表面の面積の1.0倍)以上である。また、好ましい上限としては、円盤背面磁石4Aの直径は、ターゲット2の直径の1.5倍、つまりターゲット2表面の面積が2.25倍(4分の9)以下となる。
測定例5〜測定例7を比較すると、円盤背面磁石4Aの直径と厚さとは同一であるものの、ターゲット2表面から円盤背面磁石4A表面までの距離が異なっている。詳しくは、測定例5におけるターゲット2表面からの距離は40mmで、測定例6におけるターゲット2表面からの距離は50mmで、測定例7におけるターゲット2表面からの距離は60mmである。
この距離の違いは、表1に示されたように、測定例6における基板6に流れる電流値が測定例5及び測定例7よりも大きく、成膜速度が速く、皮膜の残留応力が小さいという結果に結びついている。
これは、アーク放電はターゲット2表面と平行な方向の磁力線の成分(以下、「平行成分」という)に対して直角方向(つまり基板6方向)に移動する力を受けており、アークスポットの移動速度は磁力線の平行成分の強さに比例するためである。なお、磁力線の平行成分は、ターゲット2表面に垂直な磁力線の成分(以下、「垂直成分」という)が0(0近傍の値を含む。以下同じ)となる点で強くなる。また、アーク放電は磁力線の垂直成分が0となる点で優先的におこる傾向がある。この垂直成分が0となる点はターゲット2表面から円盤背面磁石4A表面までの距離で決まるが、距離が近い場合にはアーク放電が外周部で生じる傾向があり、イオンが外側で発生するが、距離を離すと磁力線の垂直成分が0となる点が中央部により、イオンを効率的に基板6へと到達させることができる。しかしながら、距離が遠すぎる場合にはターゲット2表面上の磁力線及び基板6方向に伸びる磁力線が弱くなり、イオンを効率的に運ぶことができないことから、測定例6で最も成膜レートが早く、皮膜残留応力が小さくなったと考えられる。
なお、垂直成分が0で、且つ、平行成分のみを有する磁力線の位置を変化させるために、円盤背面磁石4Aをターゲット2に対して近接離反するように前後に移動させる機構を組み込むことも可能である。このように、円盤背面磁石4Aのターゲット2表面からの距離を変化させることで、磁力線の平行成分の強さを調節できると共に、磁力線の垂直成分が0となる点をコントロールすることができる。
測定例8(本実施形態)は、測定例6と同様に、直径100mmで厚さ3mmの円盤背面磁石4A(第1の永久磁石)をターゲット2表面から50mmの距離に配置しているが、この円盤背面磁石4Aの背後で且つ同軸心上に同形状且つ同径の円盤背面磁石4A(第2の永久磁石)をもう1枚配置していることが相違している。
これによって、背面側に配置された円盤背面磁石4A(第1の永久磁石)から生じる磁力線の直進性がいっそう向上し、より多くの磁力線が基板6へ直接伸び、測定例8(本実施形態)の基板6に流れる電流値が測定例6よりも大きくなっており、成膜速度を速くし、皮膜の残留応力を小さくすることが可能となっている。
[参考実施例2]
本発明に係る蒸発源1を用いたその他の参考実施例について説明する。
参考実施例2は、背面磁石4としてリング状の永久磁石(以下、「リング背面磁石4B(リング永久磁石)」という)を配置し、リング背面磁石4Bの内側(リング背面磁石4Bの内周面と軸との間)に磁石を有していない例である。リング背面磁石4Bの外周及び内周の投影面形状は、ターゲット2の投影面形状と相似である。なお、リング背面磁石4Bは、ターゲット2と同心軸状となるように配置され、保持力の高いネオジム磁石により
形成されているため、磁界形成手段7全体のコンパクト化が図れる。
リング状の背面磁石4の外径及び内径は、各測定例ごとに異なっている。なお、リング背面磁石4Bの厚みは20mm、ターゲット2表面からリング背面磁石4B表面までの距離は30mmとして各測定例で同一としている。その他の条件は参考実施例1と同様である。リング背面磁石4Bは、測定例9では外径40mm、内径20mmで、測定例10では外径170mm、内径150mmとなっている。なお、測定例10では、外周磁石3とリング背面磁石4Bとが同軸心上に配置され、且つ、同じ内径及び外径を有している。
表2は、比較技術である測定例2、測定例9と、参考実施例2における測定例10のリング背面磁石4Bの外径、内径、厚さ、ターゲット2表面からの距離及び個数と、基板6に流れる電流値と、成膜速度の評価、皮膜の残留応力値及び皮膜の残留応力の評価とを示している。
測定例2は、前述したように、基板6に流れる電流値が1.0Aで成膜速度の評価が不合格となっており、成膜速度が遅くなっている。また、測定例9は、本発明に対する比較技術を示しており、ターゲット2の蒸発面に垂直な方向に沿ってリング背面磁石4Bとターゲット2とを投影した際に、得られる影が互いに重なるようになっている。換言すれば、測定例9では、ターゲット2の背面側に配置されるリング背面磁石4Bの内径が小さく、本発明に係る技術的思想の範囲外の構成となっている。そのため、基板6に誘導される磁力線の数が増えないため、イオンを効率的に収束することが出来ないため基板6に流れる電流値は1.5Aよりも小さく、成膜速度の評価も不合格となっている。
一方、測定例10では、ターゲット2の蒸発面に垂直な方向に沿ってリング背面磁石4Bとターゲット2とを投影した際に、得られる影が互いに重ならないようになっている。換言すれば、測定例10では、リング背面磁石4Bの内径がターゲット2の径よりも大きい。この測定例10では、磁力線がターゲット2から基板6方向に伸びてイオンを基板6に効率的に到達させることができるため、成膜速度の評価は合格であり、測定例2に比べて成膜速度が速くなっている(表2参照)。また、皮膜残留応力の評価も合格であり、皮膜残留応力の小さい皮膜の成膜が可能となる。
図13、14は測定例9、測定例10の磁力線分布図であるが、これらの図に示されたように、リング背面磁石4Bの外径を大きくするにつれて、磁力線は基板6方向に向かう傾向にあることがわかる。
[参考実施例3]
参考実施例3は、背面磁石4として、第1の永久磁石である円盤背面磁石4Aと、リング状の永久磁石であるリング背面磁石4B(リング永久磁石)とを同時に用いた場合である。また、円盤背面磁石4Aとリング背面磁石4Bとは、ターゲット2と同心軸状に配置されている。さらに、円盤背面磁石4Aは、リング背面磁石4Bの内側(リング背面磁石4Bの内周面から軸方向)に配置されている。そして、外周磁石3、円盤背面磁石4A、リング背面磁石4Bの極性は同方向である。
円盤背面磁石4A及びリング背面磁石4Bの形状(直径、外径、内径、厚み)や、ターゲット2表面からの距離は、各測定例ごとに異なっている。その他の条件は参考実施例1と同様である。
なお、参考実施例3におけるリング背面磁石4Bは、複数の円柱状の永久磁石をターゲット2の背面側で円盤背面磁石4Aの周囲を取り囲むようにリング状に配置することで形成している。
測定例11と測定例12とは、同一形状の円盤背面磁石4Aを使用しており、リング背
面磁石4Bの厚みとターゲット2表面からの距離とに違いがある。
測定例12と測定例15とは、同一形状の円盤背面磁石4A及びリング背面磁石4Bを使用しており、円盤背面磁石4A及びリング背面磁石4Bのターゲット2表面からの距離とに違いがある。
測定例13と測定例14とは、同様な配置をしたリング背面磁石4Bを使用しており、円盤背面磁石4Aの直径と厚みとに違いがある。
なお、測定例11〜15のいずれにおいても、外周磁石3とリング背面磁石4Bとは、同じ内径及び外径を有している。
表3は、参考実施例3における測定例12〜測定例16の2つの背面磁石4の形状、ターゲット2表面からの距離及び個数と、基板6に流れる電流値と、成膜速度の評価と、皮膜の残留応力値及び皮膜の残留応力の評価とを示している。
測定例11〜測定例15の磁力線分布は図15〜図19に示す通りである。これらの図に示したように、ターゲット2中心付近からさらに多くの磁力線が直接基板6方向に伸び、ターゲット2の軸心から最も離れた側の磁力線が基板6方向に収束され、イオンを基板6に効率的に到達させることができており、成膜速度の評価はすべて合格であり、成膜速度をより速くすることができている。また、これらの配置によればターゲット2上に磁力線の垂直成分が0となる点が生じることから、アーク放電をその点で安定させる事が出来るが、アーク放電が外側によりすぎる場合、前述のようにイオンの発生が外側によりすぎ、発生したイオンが中央部にある基板6に向かって伸びる磁力線に沿って進むことが出来ないことから成膜レートは低下する傾向にある。垂直成分が0となる点は背面側に設置する円盤背面磁石4A、リング背面磁石4Bの大きさや位置により決まることから、それは設計事項に属し、成膜速度が大きくなるように決めてやればよい。
測定例11と測定例12とを比較すると、リング背面磁石4Bの厚みを厚くし、ターゲット2表面からの距離を近くするほど、基板6に流れる電流値が増し成膜速度が速くなっている。
測定例12と測定例15とを比較すると、円盤背面磁石4A及びリング背面磁石4Bの形状は同一であるものの、ターゲット2表面から円盤背面磁石4A表面及びリング背面磁石4B表面までの距離が異なっている。
測定例13と測定例14とを比べて、円盤背面磁石4Aとリング背面磁石4Bとを同時に配置した場合であっても、ターゲット2の直径に対する円盤背面磁石4Aの直径を大きくした方が成膜速度が速くなることがわかる。
前述のように、アーク放電は磁力線の垂直成分が0となる点で優先的に放電する傾向があるが、そのときのアークスポットの移動速度は基本的にはその点における磁力線の平行成分の強さに比例し、アークスポットが高速で移動する場合にマクロパーティクルの発生が抑制される。
したがって、磁力線の垂直成分が0となる点における磁力線の平行成分は強い方が好適であり、具体的には磁力線の平行成分の強さが5Gauss以上であることが好ましく、より好ましくは20Gauss以上、さらに好ましくは50Gauss以上である。
磁力線の平行成分が強すぎる場合には、磁界の拘束が強く放電エリアがきわめて狭くなり、背面磁石4が移動手段を持たない場合にターゲット2が偏消耗することから、磁力線の平行成分の強さは200Gauss以下である必要があり、より好ましくは100Ga
uss以下である。
また、表3に示したように、測定例11〜測定例15における皮膜残留応力の絶対値は、いずれも2.0GPa以下を示し、皮膜残留応力の評価が合格となっており、残留応力の低い皮膜の形成が可能となる。
なお、背面磁石4の磁束をより効率的に基板6方向に導くために、鉄などの透磁率の高い材料(ヨーク)をターゲット2の背面側に背面磁石4とともに配置することも望ましい。
円盤背面磁石4Aとリング背面磁石4Bとを併用する場合には、円盤背面磁石4Aのターゲット2の直径に対する大きさには特に制限は無く、磁力線の垂直成分を発生させたい位置により任意に選択可能である。
また、ターゲット2表面における磁力線の平行成分の発生する位置を制御するために、円盤背面磁石4Aとリング背面磁石4Bとともに、これらの同軸心上に電磁コイルを設置してもよい。
[参考実施例4]
次に、本発明に係る蒸発源1を用いた参考実施例4について説明する。
本参考実施例は、より多くの磁力線が基板6方向に向かうことで、基板6上に形成された皮膜の組成とターゲット2の組成との相違が抑えられることを示す。また、本参考実施例における成膜方法(皮膜の製造方法)は、上述した比較用の測定例2と、本発明に係る参考実施例3の測定例10とに従い、使用するターゲット2の組成のみをそれぞれ変更している。
形成した皮膜の組成分析はEDX(元素分析装置)で行い、窒素を除いた組成比を表4、表5中に示した。なお、分析条件は、加速電圧20kV、作動距離15mm、観察倍率1000倍としている。
また、表4中の使用ターゲット組成比はAl:Ti=50:50であって、表5中の使用ターゲット組成比はAl:Ti=70:30である。
表4、表5より、比較用の測定例2では、ターゲット2の組成に比べて、皮膜中のAl組成が小さくなっており、Alの量が多いAl:Ti=70:30の試験ではその変化が顕著である。
一方、本発明に係る測定例10では、測定例2に比べて、ターゲット2の組成と皮膜中のAlとTiの組成比のずれ(相違)が小さくなっていることが分かる。このように、本発明によるアーク式蒸発源1によれば、ターゲット2から基板6方向に磁力線を誘導しているため、ターゲット2から蒸発したイオン粒子を基板6に効率的に到達させることができるため、ターゲット2と形成した皮膜の組成比のずれを小さくすることが出来る。
つまり、参考実施例に係る皮膜の製造方法は、上述したアーク式蒸発源1を用いて基板6上に皮膜を形成することで、2種類以上の元素を含むターゲット2を使用しても、基板6上の皮膜中における各元素の組成比とターゲット2中の各元素の組成比との違いが小さ
くなるので、ターゲット2の組成に基づいて皮膜の組成を精確に制御することができる。
さらに、従来は基板6上で膜厚を厚くすると残留応力により剥離しやすい皮膜しか得られなかったが、上述したアーク式蒸発源1によれば、残留応力の小さい皮膜を形成することができるので、5μm以上の厚さでも剥離しにくい実用的な厚膜が得られる。
なお、ターゲット2の組成を、Al、Ti、Crのうちの少なくとも1種を含むものとしてもよい。
ところで、本発明は、前述した各実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した本発明の範囲内で適宜変更可能である。
ターゲット2は、円盤状以外の任意の形状であってもよい。
具体的には、ターゲット2の投影面形状が、点対称な図形(正方形、六角形等)であってもよく、その際、ターゲット2に対して外周磁石3及び背面磁石4は同心軸状に配置されていなくてもよい。ただし、外周磁石3及び背面磁石4は、それらの中心軸(外周磁石3及び背面磁石4が回転対称体の場合はその回転軸)がターゲット2を通るように配置されていることが好ましい。
また、ターゲット2は、投影面形状が長手方向を有した図形(楕円、長方形等)であってもよい。このとき、ターゲット2の投影面形状が、楕円の場合には直径を長径、短径と、長方形の場合には直径を長辺、短辺と読み替えればよい。
外周磁石3は、ターゲット2の外周を取り囲むものであればよく、ターゲット2の投影面形状に沿う形で且つリング状の永久磁石(例えば、ターゲット2が楕円であれば、これを取り囲むように形成された楕円形状の永久磁石)でもよい。
例えば、外周磁石3は、ターゲット2の投影面形状に応じて、点対称な図形(正方形、六角形等)、又は長手方向を有した図形(楕円、長方形等)で且つターゲット2を囲うものであってもよい。
背面磁石4は、円盤状や円形のリング状以外の任意の形状でもよく、投影面形状が点対称な図形(正方形、六角形等)や長手方向を有した図形(楕円、長方形等)、又はこれらを外周及び内周の投影面形状とするリング状の永久磁石であってもよい。
なお、背面磁石4の投影面形状は、ターゲット2の投影面形状と相似であることが好ましい。
また、外周磁石3、背面磁石4をそれぞれ複数備えていてもよい。
本発明は、薄膜を形成する成膜装置のアーク式蒸発源として利用することができる。
1 蒸発源(アーク式蒸発源)
2 ターゲット
3 外周磁石
4 背面磁石
4A 円盤背面磁石
4B リング背面磁石
5 成膜装置
6 基板
7 磁界形成手段
11 真空チャンバ
12 回転台
13 ガス導入口
14 ガス排気口
15 アーク電源
16 バイアス電源
17 アノード
18 グランド
A 測定例1にてターゲットの軸心から最も離れた側の磁力線を示す矢印
B 測定例2にてターゲットの軸心から最も離れた側の磁力線を示す矢印
C 測定例3にてターゲットの軸心から最も離れた側の磁力線を示す矢印
D 測定例4にてターゲットの軸心から最も離れた側の磁力線を示す矢印
A’ 測定例1にてターゲットの軸心から最も近い側の磁力線を示す矢印
B’ 測定例2にてターゲットの軸心から最も近い側の磁力線を示す矢印
C’ 測定例3にてターゲットの軸心から最も近い側の磁力線を示す矢印
D’ 測定例4にてターゲットの軸心から最も近い側の磁力線を示す矢印
E 測定例3にてターゲット中心付近から直接基板に向かう磁力線の成分を示す矢印
F 測定例4にてターゲット中心付近から直接基板に向かう磁力線の成分を示す矢印

Claims (7)

  1. ターゲットの外周を取り囲んでいて磁化方向が前記ターゲット表面と直交する方向に沿うように配置された1又は複数の外周磁石と、前記ターゲットの背面側に配置された背面磁石とを備え、
    前記背面磁石は、極性が前記外周磁石と同方向で且つ磁化方向が前記ターゲット表面と直交する方向に沿うように配置されている非リング状の第1の永久磁石を有していて、
    前記背面磁石は、前記第1の永久磁石と前記ターゲットの間、もしくは、前記第1の永久磁石の背面側に、前記第1の永久磁石と間隔を空けて配置された非リング状の第2の永久磁石をさらに有し、前記第2の永久磁石は、極性が前記外周磁石と同方向で且つ磁化方向が前記ターゲット表面と直交する方向に沿うように配置されていることを特徴とするアーク式蒸発源。
  2. 前記外周磁石及び前記背面磁石が、ターゲット表面に対して垂直な方向の磁力線の成分が0となる点を持つ磁界をターゲット表面上に形成していることを特徴とする請求項1に記載のアーク式蒸発源。
  3. 前記ターゲットは円盤状であり、前記外周磁石はリング状の永久磁石であることを特徴とする請求項1に記載のアーク式蒸発源。
  4. 前記第1の永久磁石は、ターゲットに対向する表面の面積が前記ターゲット表面の面積の4分の1以上であることを特徴とする請求項1に記載のアーク式蒸発源。
  5. 前記第1の永久磁石をその表面と直交する方向に沿って投影した面の形状は、前記ターゲットをその表面と直交する方向に沿って投影した面の形状と相似であることを特徴とする請求項1に記載のアーク式蒸発源。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアーク式蒸発源を用い、2種類以上の元素を含むターゲットから上記2種以上の元素を含む皮膜を形成することを特徴とする皮膜の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアーク式蒸発源を用いて、Al、Ti、Crのうちの少なくとも1種を含む窒化物、炭化物または炭窒化物の皮膜を5μm以上の厚さとなるように形成することを特徴とする皮膜の製造方法。
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