以下、本発明の血糖値予測システムにおける、好適な実施形態の一例について、添付図面を参照して説明する。実施形態の血糖値予測システムは、選択部であるイベントボタンの機能に特徴を有している。
(実施形態)
図1は、本発明に係る血糖値予測システムを示す模式図である。血糖値予測システム1は、ユーザーが腕や腰等に装着することが可能な携帯型の端末(第1装置)2と、端末2から血糖値情報を取得して管理する管理サーバー(第2装置)3と、端末2と管理サーバー3とを無線で接続する通信回線4と、を備えている。このような構成の血糖値予測システム1は、端末2を有するユーザーのそれぞれから血糖値に関する情報である血糖値情報が通信回線4を介して管理サーバー3へ発信され、管理サーバー3が、端末2から取得した血糖値情報を解析して、血糖値予測曲線を生成する等の管理を行うようになっている。
また、図2は、端末の構成を示すブロック図であり、図3は、管理サーバーの構成を示すブロック図である。端末2は、図1または図2に示すように、表示部21と、操作部22と、脈拍測定部23と、活動量測定部24と、端末通信部25と、ROM(Read Only Memory)26と、RAM(Random Access Memory)27と、CPU(Central Processing Unit)28と、これら各構成を接続するバス29と、を有している。
CPU28は、RAM27をワーキングエリアとし、ROM26に予め記憶されている制御プログラム(不図示)を実行することにより、端末2の有する各部を制御する。さらに、CPU28は、クロックのカウントにより、現在日時も計測する。
活動量測定部24は、端末2を有するユーザーの活動状態を検出するための加速度センサーや速度センサー等を有し、端末2がユーザーの腰や腕などに取り付けられることにより、ユーザーの歩行や運動などの活動に応じて作動する。これらセンサーは、ユーザーによる一定期間毎の活動強度に即した出力信号を出力する。そして、CPU28は、この出力信号を、予め定義された演算式を用いて、消費カロリーに変換する。変換された消費カロリーは、活動量情報として、端末通信部25を介して送出される。なお、消費カロリーをより精度よく求めるため、脈波RR間隔(R波のピーク間隔)・体温・血圧・睡眠等の生体データを、光学検出、電気信号検出、圧力検出等により、さらに検出することも有効である。
脈拍測定部23は、特定波長の光を照射する特定波長光照射部(不図示)を有し、特定波長光照射部によってユーザーの血管に特定波長の光を照射し、血管で反射された特定波長の光の強度、または血管を透過した特定波長の光の強度を、フォトダイオード等の受光素子(不図示)によって検出する。特定波長光照射部は、例えば、ユーザーの腕、指などに取り付けられる。そして、CPU28は、受光素子からの出力信号を、予め定義された演算式を用いて、1分間あたりの脈拍に変換する。変換された脈拍は、脈拍情報として、端末通信部25を介して送出される。この脈拍と、活動量測定部24が測定した活動量と、により、活動状態をより精査することができ、消費カロリーを正確に把握できる。脈拍測定部23は、活動量測定部24とともに測定部として機能する。
操作部22は、操作ボタン22aとイベントボタン(選択部)22bとを有し、操作ボタン22aは、数字や文字等の入力キーにより血糖値情報を入力するためのものであり、ユーザーの操作により、食事の内容、運動の内容、およびこれらの実施時刻、測定した血糖値等の各種情報の入力を受け付ける。この場合、実施時刻については、食事の内容、運動の内容が入力されたときの日時が自動的に入力される。また、イベントボタン22bは、ユーザーの活動のうち、選択した活動である所定活動にそれぞれ対応している。そのため、血糖値予測システム1は、イベントボタン22bの押下を認識すると、該当する所定活動が選択されたことが、操作ボタン22aを操作することなく、入力されるようになっている。
表示部21は、この場合、液晶ディスプレイであって、CPU28の制御下において、消費カロリー、脈拍、および操作部22からの入力内容等を表示する。
端末通信部25は、通信回線4と接続され、CPU28の制御下において、管理サーバー3との間で血糖値情報等の各種データを送受信する。
ROM26は、不揮発性メモリー等であり、この場合、摂取情報としての食事メニュー情報26aと、活動種別情報26bと、イベントボタン22bに該当する所定活動を示すイベントボタン情報26cと、を記憶している。これら食事メニュー情報26a、活動種別情報26bおよびイベントボタン情報26cについては、図5を参照して、後述する。
次に、管理サーバー3は、図3に示すように、制御部としてのCPU35と、CPU35のワーキングエリアとして機能するRAM34と、不揮発性メモリー等を用いた記憶部であり、CPU35の実行する制御プログラムや、端末2からの血糖値情報や、血糖値を予測するための予測アルゴリズム等を記憶しているROM33と、を有している。また、管理サーバー3は、通信回線4と接続され、CPU35の制御下において、端末2との間で血糖値情報等の各種データを送受信する管理通信部32と、これら各構成を接続するバス36と、を有している。
記憶部としてのROM33は、ハードディスク等の記憶媒体で構成され、端末2からの血糖値情報等を記憶している。ROM33は、ユーザーが食べた食事の種類および摂取カロリーの情報である食事情報33aと、消費カロリーの情報である脈拍情報33bおよび活動量情報33cと、を記憶している。さらに、ROM33は、ユーザーの過去の血糖値や今後の予測血糖値の情報を含む履歴情報33dと、端末2のイベントボタン情報26cに示す所定活動のそれぞれに対応した血糖値情報である活動データ情報33eと、記述した制御プログラム等のソフトウエア33fと、を記憶している。なお、食事情報33a、脈拍情報33b、活動量情報33c、活動データ情報33eは、血糖値情報であり、血糖値情報のうち、脈拍情報33bおよび活動量情報33cは、測定部である脈拍測定部23および活動量測定部24による測定データ情報である。
CPU35は、算出部35aと、解析部35bと、生成部35cと、消費エネルギー取得部35dと、摂取エネルギー取得部35eを有している。解析部35bは、消費エネルギー取得部35dが消費エネルギーとして端末2から取得した活動情報である脈拍情報33bおよび活動量情報33cを基に、これら活動情報に対応する情報を履歴情報33dから抽出し、抽出した履歴情報33dを用いて当該活動情報に対するユーザーの血糖値の変化傾向を解析する。同時に、解析部35bは、摂取エネルギー取得部35eが摂取エネルギーとして端末2から取得した食事情報33aを基に、この食事情報33aに対応する情報を履歴情報33dから抽出し、抽出した履歴情報33dを用いて当該食事情報33aに対するユーザーの血糖値の変化傾向を解析する。
続いて、算出部35aは、解析部35bが解析した、摂取エネルギーによる血糖値の変化傾向および消費エネルギーによる血糖値の変化傾向に基づき、それぞれにおける血糖値の予想曲線を算出する。
そして、生成部35cは、摂取エネルギーおよび消費エネルギーのそれぞれにおける血糖値の予想曲線を結合し、血糖値予測曲線を生成する。血糖値予測曲線は、履歴情報33dにおける、今後の予測血糖値の情報、に該当する。なお、CPU35の制御部としての機能については、図6を参照して、詳細に後述する。
ここで、履歴情報33dの血糖値予測曲線について説明する。図4は、血糖値予測曲線を示すグラフである。また、図5(a)は、食事メニュー情報の種類を示す一覧図であり、この食事メニュー情報26aには、例えば、食事メニューとして和食Aおよびその摂取カロリーが500Kcal(キロカロリー)であるとの情報が含まれていて、これらの情報は、端末2のROM26に記憶されている。また、図5(b)は、活動種別情報を示す一覧図であり、この活動種別情報26bには、例えば、散歩やウォーキングの情報が含まれていて、これら情報は、端末2のROM26に記憶されている。また、散歩やウォーキング等の消費カロリーは、活動量測定部24で測定される。
また、図5(c)は、イベントボタン情報を示す一覧図である。このイベントボタン情報26cには、イベントボタン22bのそれぞれに対応するイベント内容の情報が含まれていて、これらの情報は、端末2のROM26に記憶されている。イベントボタン情報26cにおけるイベント内容は、ユーザーの活動の中から選択された、自転車、スクワット、運動組合せA等の所定活動であって、活動種別情報26bの種別内容と比較して、決められたパターンに沿う活動であって個々の活動量を特定することが可能なものである。血糖値予測システム1におけるイベントボタン情報26cでは、特定のパターンに沿う活動であることに加え、脈拍測定部23または活動量測定部24で測定し難く、測定エラーや明らかに異常な値等が生じる可能性の高い活動、即ち脈拍測定部23および活動量測定部24による測定データ情報に反映されない場合がある活動内容を含む活動、が対象である。この対象となる活動が所定活動である。
血糖値予測曲線10は、図4に示すように、ユーザーが、例えば、過去に糖尿病に関する教育入院を行った時の教育入院期間で測定された、毎日の血糖値と行動履歴(食事情報と活動情報)との記録等のような実測値と、端末2から取得した食事情報33a、脈拍情報33b、活動量情報33cおよび活動データ情報33eと、に基づいて血糖値を予測したものである。
図4には、一例として、日付D1および日付D2におけるユーザーの血糖値予測曲線10が表されている。この曲線は、ユーザーの血糖値の時系列変化を表していて、縦軸は血糖値を示し、横軸は時間の経過を示し、横軸に沿って記載されている「朝食」「水中歩行」「昼食」・・・等は、ユーザーが摂取した食事や活動のタイミング等の行動履歴を示している。
行動履歴は、端末2から取得する情報であり、取得した食事メニュー情報26aは、ユーザーが端末2の操作ボタン22aを操作して、図5(a)に示す食事メニューの中から選択した情報である。同様に、取得した活動種別情報26bは、ユーザーが端末2の操作ボタン22aを操作して、図5(b)に示す活動種別の中から選択した情報である。さらに、取得したイベントボタン情報26cは、ユーザーが端末2のイベントボタン22bを操作して、図5(c)に示すイベントボタン情報26cの中から選択した情報である。
例えば、図4の日付D1における朝食の食事内容は、「和食A」であり、和食Aに相当する「500Kcal」が摂取カロリーであるとして、端末2から取得され、血糖値の算出に用いられる。また、同日の午前に行った「水中歩行」は、ユーザーにより図5(b)の一覧図から選択された情報であり、その消費カロリーは、活動量測定部24で測定され、この場合「200Kcal」(不図示)であったことが、端末2から取得され、血糖値の算出に用いられる。
そして、日付D2の午前中に行った「スクワット」は、予め決められたパターンの活動であると共に、脈拍測定部23または活動量測定部24で測定エラーや異常値が生じやすい活動(所定活動)である。そのため、この場合、ユーザーは、スクワット開始前に、スクワットに対応するイベントボタン22bを押下している。管理サーバー3は、活動データ情報33eの「スクワット」に該当する血糖値情報に基づいて血糖値予測曲線10を生成する。
このように、血糖値予測システム1では、管理サーバー3の履歴情報33dにおいて、ユーザーの過去の行動における実測の血糖値変化の情報が記憶されており、実測の血糖値変化の情報を参照することにより、ユーザー自身の行動に対する摂取カロリーと消費カロリーとの血糖値情報から血糖値変化を予測することが可能である。つまり、血糖値予測曲線10を生成することを可能にしている。
次に、血糖値予測曲線10の生成について、制御部であるCPU35の機能に沿って詳細に説明する。図6は、管理サーバーのCPUの機能を示すブロック図である。また、図7(a)は、摂取カロリーによる血糖値の予測を示すグラフ、図7(b)は、消費カロリーによる血糖値の予測を示すグラフである。図7では、縦軸に血糖値の値を示し、横軸に経過する時間を示している。まず、図6に示すように、CPU35の摂取エネルギー取得部35eは、摂取エネルギーに係る摂取情報として、操作ボタン22aからの入力により端末2から発信された、食事メニュー情報26aに基づいて、摂取カロリーを取得する。食事メニュー情報26aに基づく摂取カロリー等は、管理サーバー3のROM33に、食事情報33aとして記憶される。また、消費エネルギー取得部35dは、消費エネルギーに係る情報として、活動量測定部24および脈拍測定部23で測定し端末2から一定時間毎に発信される、活動量に基づいて、消費カロリーを取得する。発信される活動量には、操作ボタン22aによる活動種別情報26bも含まれる。さらに、イベントボタン22bからの入力により端末2から発信された、イベントボタン情報26cに基づく消費カロリーも取得する。これら消費エネルギーに係る情報は、ROM33に、脈拍情報33bまたは活動量情報33cとして記憶される。
算出部35aは、摂取エネルギー取得部35eで求めた摂取カロリーと、予め定められた第1の予測アルゴリズムに基づいて、摂取カロリーに対する血糖値の変化を予測した第1予測曲線12(図7(a))を求める。また、算出部35aは、消費エネルギー取得部35dで求めた消費カロリーと、予め定められた第2の予測アルゴリズムに基づいて、消費カロリーに対する血糖値の変化を予測した第2予測曲線13(図7(b))を求める。なお、ユーザーが操作ボタン22aから入力した実測の血糖値データがあれば、該当する活動に対して、その血糖値データを用いる。
ここで、第1予測曲線12と第2予測曲線13の算出について説明する。図7(a)に示すように、第1予測曲線12は、摂取カロリーと第1の予測アルゴリズムとに基づいて求められ、遅延期間d1、上昇期間d2、平衡期間d3、および下降期間d4を有する。
遅延期間d1は、食事を開始してから、食事開始時における血糖値(基準値)C0を超えるまでの期間を示している。遅延期間d1には、食事の開始時点から予め定められた時間(例えば、15分)が設定されおり、食事開始時の血糖値C0を維持する。なお、食事開始時の血糖値C0は、当該時刻においてユーザーが測定した血糖値を用いるが、測定できなかった場合には、例えば、予め設定されたユーザーの血糖値の標準値等を用いるようにしてもよい。
上昇期間d2は、遅延期間d1の終期から始まり、血糖値が上昇を開始して血糖値がピークとなる値(ピーク値)に到達するまでの期間を示している。ピーク値は、傾きs1で血糖値が上昇し、食事開始時の血糖値C0に血糖値の上昇値h1を合算した値である。血糖値の上昇値h1は、例えば、h1=(摂取カロリー)×(インスリン分泌量)×(係数α)で求められる。血糖値予測システム1では、インスリン分泌量と係数α(>0)は、ユーザーに応じて予め設定された固定値である。なお、インスリン分泌量及び係数は、予め設定された固定値だけなく、ユーザーの属性(年齢、性別、身長、体重)に応じて定められた値や可変値であってもよい。
平衡期間d3は、上昇期間d2の終期から血糖値のピーク値を維持する期間であり、血糖値予測システム1では、予め定義された固定値が設定されている。なお、例えば、摂取カロリーとユーザーに固有の係数とを乗算した値を、前回の摂取カロリーとの差に応じた係数で除算する等、摂取カロリーと予め定められた演算式とを用いて平衡期間d3を求めるようにしてもよい。
下降期間d4は、平衡期間d3の終期から血糖値が傾きs2で下降を開始して基準値に到達するまでの期間を示している。つまり、下降期間d4は、血糖値がピーク値から基準値(食事開始時の血糖値C0)に戻るまでの期間である。傾きs2は、例えば、s2=(摂取カロリー)×(係数β)で求められる。血糖値予測システム1では、係数βは、ユーザーに応じて予め定められた固定値(<0)であるが、ユーザーの属性(年齢、性別、身長、体重)に応じて予め定められた値や可変値であってもよい。
また、第2予測曲線13は、図7(b)に示すように、消費カロリーと第2の予測アルゴリズムとに基づいて求められ、遅延期間e1と下降期間e2を含んで構成されている。
遅延期間e1は、運動を開始してから血糖値が下降し始めるまでの期間を示し、運動開始時の血糖値が維持される期間である。血糖値予測システム1では、遅延期間e1には、予め定められた期間(例えば、2分)が設定されている。下降期間e2は、遅延期間e1の終期から傾きs3(単位時間当たりの血糖値の低下量h2)で血糖値が下降する期間である。低下量h2は、例えば、h2=(消費カロリー)×(インスリン分泌量)×(係数γ)で求められる。消費カロリーは、活動量測定部24および脈拍測定部23において計測された活動量に基づく消費カロリーであり、血糖値予測システム1では、ユーザーが運動を意識していない通常の動作時においても、活動量測定部24および脈拍測定部23により、ユーザーの消費カロリーが算出されて逐次入力される。インスリン分泌量はユーザーに応じて予め設定された固定値であり、係数γ(<0)は、血糖値に応じた可変値であってもよいし、ユーザーの属性に応じて定められた固定値であってもよい。
図6に戻り、CPU35の解析部35bは、摂取エネルギー取得部35eからの取得カロリーの情報を基に、食事情報に対するユーザーの血糖値の変化を解析する。具体的には、例えば、入力された食事情報が和食Aの場合、和食Aを摂取したときの血糖値の変化を表す波形として、和食Aを摂取した時点から次の行動(食事又は活動)が行われるまでの期間の波形データが抽出される。図4に示す血糖値予測曲線10の例では、日付D1の朝食を摂取した時点から次の行動、つまり水中歩行が行われるまでの期間の波形データが抽出される。なお、水中歩行が行われなければ、朝食を摂取した時点から昼食を摂取するまでの期間の波形データが抽出される。このようにして、同じ食事内容を摂取したときの血糖値の変化を表す波形を第1モデル波形として抽出する。なお、複数の波形が抽出された場合には、解析部35bは、抽出した複数の波形を平均化する等の処理を行い、当該食事情報に対する血糖値の変化傾向を示す第1モデル波形を生成する。
また、解析部35bは、消費エネルギー取得部35dからの消費カロリーの情報を基に、活動に対するユーザーの血糖値の変化を解析する。血糖値予測システム1では、活動量測定部24および脈拍測定部23により活動量が測定され、ユーザーの消費カロリーが逐次算出されるように構成されているが、算出された消費カロリーがどのような動作を行ったときのものであるかを区別するために、平時以外の運動等を行っている活動については、ユーザーが活動を行う前に活動種別情報26bまたはイベントボタン情報26cを選択することが好ましい。
具体的には、例えば、入力された活動がウォーキングである場合には、ウォーキングを行ったときの血糖値の変化を表す波形として、図4に示す血糖値予測曲線10における日付D1の午後のウォーキング開始時から次の行動、つまり軽食を摂取するまでの波形データが抽出される。このようにして、同じ運動を行ったときの血糖値の変化を表す波形を第2モデル波形として抽出する。なお、複数の波形が抽出された場合には、解析部35bは、抽出された複数の波形を平均化する等の処理を行い、当該活動に対する血糖値の変化傾向を示す第2モデル波形を生成する。
また、入力された活動がイベントボタン情報26cに関わる所定活動のスクワットである場合には、解析部35bは、消費エネルギー取得部35dがROM33の活動データ情報33e(図3)の該当するスクワットの活動量から求めた消費カロリーを基に、スクワットに対するユーザーの血糖値の変化を解析する。例えば、スクワットを行ったときの血糖値の変化を表す波形として、図4に示す血糖値予測曲線10における日付D2の午後のスクワット開始時から次の行動、つまり昼食を摂取するまでの波形データが第2モデル波形として抽出される。
そして、生成部35cは、算出部35aにおいて算出された第1予測曲線12及び第2予測曲線13を、解析部35bの解析結果に基づく第1モデル波形および第2モデル波形と組合せて変形し、変形したそれぞれの第1予測曲線と第2予測曲線を統合して血糖値予測曲線10を生成する。このようにして生成部35cが生成した血糖値予測曲線10は、ROM33の履歴情報33d(図3)に記憶され、また、通信回線4を介して、端末2の表示部21に表示することができる。
以上説明したように、血糖値予測曲線10によれば、ユーザーは、食事情報33a、脈拍情報33b、活動量情報33cおよび活動データ情報33eの血糖値情報に基づき、今後の血糖値の変化傾向を、血糖値を実測することなく、確認することが可能である。
次に、血糖値予測システム1の特徴である、端末2のイベントボタン22bに係る機能について説明する。ここでは、イベントボタン22bにより、イベントボタン情報26c(図5(c))から「自転車」を所定活動として選択した場合、を例にする。図8(a)は、自転車における実測脈拍曲線を示すグラフ、図8(b)は、イベントボタンに対応した、自転車における脈拍に係る置き換え曲線を示すグラフである。置き換え曲線16は、事前に、自転車の活動を正確に測定した結果に基づき算出されたものである。図8は、縦軸に脈拍を示し、横軸に経過する時間を示していて、脈拍測定部23が測定した脈拍の推移を表している。ここでは、自転車での活動を、冬季等において測定データ情報にエラーや異常値が生じやすくなること等の理由により、所定活動としている。また、活動量は、脈拍測定部23による脈拍の測定と同時に、活動量測定部24も活動量の測定を行っており、縦軸を活動量測定部24による活動量としても、脈拍と同様に、イベントボタン22bに係る機能についての説明が可能である。
図8(a)に示す実測脈拍曲線15は、ユーザーが自転車による活動をした時の脈拍を、脈拍測定部23で測定した実測値に基づいて表している。この実測脈拍曲線15は、脈拍測定部23がユーザーの脈拍を正確にとらえられなかった場合を示していて、脈拍を測定できなかったエラー部15aと、脈拍測定部23では測定できてはいるが明らかに異常な値を示している異常値部15bと、を有している。実測脈拍曲線15がエラー部15aまたは異常値部15bを有していると、消費エネルギー取得部35dは、ユーザーの活動に対して、正しい消費カロリーを取得することができなくなる。そこで、ユーザーは、所定活動である自転車の活動を行なう時に、イベントボタン22bを押下する。この時点が図8(a)の横軸に示すイベントボタンスタートである。そして、ユーザーは、自転車の活動が終了した時に、再度イベントボタン22bを押下する。この時点が図8(a)の横軸に示すイベントボタンストップである。
消費エネルギー取得部35dは、イベントボタン22bの押下が認識されると、イベントボタンスタートとイベントボタンストップとの間の実測脈拍曲線15を、図8(b)に示す置き換え曲線16の置き換えデータ域の部分に、置き換える。即ち、制御部の一部である消費エネルギー取得部35dは、イベントボタン22b(選択部)で所定活動のいずれかを選択すると、選択した所定活動に該当する活動データ情報33eを、脈拍測定部23(測定部)の測定した脈拍情報(測定データ情報)33bの代わりに、入力し、活動データ情報33eを含む情報を用いて消費カロリーを取得する。この消費カロリーの情報は、消費エネルギー取得部35dから算出部35aへ送られ、第2予測曲線13の算出に用いられる。
このように、血糖値予測システム1では、イベントボタン22bにより所定活動の実行を認識すれば、脈拍測定部23の測定に基づく実測脈拍曲線15を、置き換え曲線16に置き換えるため、実測脈拍曲線15にエラーや異常値等があっても、それらの影響を排除して、より正確な消費カロリーを取得することができる。これは、脈拍測定部23による測定の場合に限らず、活動量測定部24の測定に基づいた実測曲線を、置き換え曲線に置き換える場合においても、当該実測曲線のエラーや異常値等の影響を排除して、より正確な消費カロリーを取得することができる。即ち、血糖値予測システム1は、より正確な血糖値予測曲線10を生成することができる。
また、血糖値予測システム1は、イベントボタン22bの押下を認識して、実測脈拍曲線15のすべてを置き換え曲線16に置き換えているが、これ以外の置き換え方法をイベントボタン22bで選択することも可能である。例えば、図8(a)に示す実測脈拍曲線15において、エラー部15aや異常値部15bが、規定の許容数である2箇所以上ある場合にのみ、実測脈拍曲線15を置き換え曲線16に置き換える方法がある。この場合、血糖値予測システム1は、実測脈拍曲線15のエラー部15aや異常値部15bの数が許容数以下であれば、その影響が軽微であると判断して、実測脈拍曲線15を用いて消費カロリーを取得する。従って、血糖値予測システム1は、より実測に即した血糖値情報に基づいて、血糖値の予測を行うことができる。なお、この許容数は、2箇所に限定されるものではない。
さらに、例えば、図8(a)に示す実測脈拍曲線15において、エラー部15aや異常値部15bの箇所のみ、置き換え曲線16のそれらが該当する置き換えデータ域の部分に、置き換える方法がある。エラー部15aに比べて検出が難しい異常値部15bは、消費エネルギー取得部35dが実測脈拍曲線15と置き換え曲線16とを比較して判断する。これによれば、血糖値予測システム1は、より実測に即した緻密な血糖値情報に基づいて、血糖値の予測を行うことができる。
次に、血糖値予測システム1において、イベントボタン22bにより、イベントボタン情報26c(図5(c))から「運動組合せA」を所定活動として選択した場合について説明する。図9(a)は、運動組合せAにおける実測脈拍曲線を示すグラフ、図9(b)は、イベントボタンに対応した、運動組合せAにおける脈拍に係る置き換え曲線を示すグラフである。置き換え曲線18は、図8(b)に示す置き換え曲線16の場合と同様、事前に、この場合「運動組合せA」の活動を正確に測定した結果に基づき算出されたものである。また、図10は、運動組合せAにおける活動量測定部の検出内容を示すグラフである。この場合、「運動組合せA」は、スクワット、腹筋、背筋および腕立て伏せ、を組み合わせた活動であり、図9(a)には、「運動組合せA」の脈拍測定部23による測定結果が表され、図10には、「運動組合せA」の活動量測定部24による測定結果が表されている。
図10は、CPU35により、活動量測定部24による測定結果が、走行や歩行等のどのような活動であると判断されたか、を上部に表し、それに対応する消費カロリーを下段に表している。つまり、スクワットの活動を走行状態と判断し、対応する消費カロリーが多くなっており、腹筋や背筋の活動を静止、または睡眠、臥位状態と判断し、消費カロリーが少なくなっている。また、腕立て伏せの活動を歩行ないし静止状態と判断して、消費カロリーが若干多くなっている。このように、活動量測定部24の測定では、腹筋、背筋の活動のように、活動を正確に測定でき難い場合もある。
一方、脈拍測定部23は、「運動組合せA」のそれぞれの活動に対応して、脈拍の変動を測定できていて、活動量測定部24の測定結果を補うことが可能であるが、スクワットおよび背筋の活動において、一部にエラー部17aが生じている。そして、図9(a)に示すように、スクワットおよび背筋の実測脈拍曲線17における脈拍のピークが、図9(b)に示す置き換え曲線18に比べて低くなっている。
そこで、血糖値予測システム1では、イベントボタン22bの押下を認識すれば、エラー部17aを含む実測脈拍曲線17を、置き換え曲線18の置き換えデータ域の部分に、置き換えることができる。これにより、血糖値予測システム1は、実測脈拍曲線17にエラー部17a等があっても、それらの影響を排除して、より正確な消費カロリーを取得することができる。なお、この場合においても、血糖値予測システム1は、エラー部17a等が、規定の許容数である場合にのみ、実測脈拍曲線17を置き換え曲線18に置き換える方法や、エラー部17a等の箇所のみ、置き換え曲線18のそれらが該当する置き換えデータ域の部分に、置き換える方法を用いることが可能である。
以上説明した血糖値予測システム1における主要な効果は、ユーザーがイベントボタン22bで所定活動を選択するだけで、エラー部15a,17aや異常値部15bを有する測定データ情報(実測脈拍曲線15,17等)を排除でき、ユーザーの活動を血糖値情報へより正確に反映できることである。これは、血糖値予測システム1において、端末2のイベントボタン22bにより、エラー部15a,17aや異常値部15bが生じやすい所定活動を選択すると、管理サーバー3が、所定活動の活動データ情報(置き換え曲線16,18)をROM33から抽出し、抽出した活動データ情報を、エラー部15a,17aや異常値部15bを有する測定データ情報(実測脈拍曲線15,17等)の代わりに、入力することができるためである。
また、血糖値予測システム1は、エラー部15a,17aや異常値部15bが、規定した許容数以上の場合に、活動データ情報を測定データ情報の代わりに入力することが可能であって、できるだけ実測に即した血糖値情報に基づいて、血糖値予測を行うことができる。さらに、測定データ情報のエラー部15a,17aや異常値部15bの箇所のみを活動データ情報に置き換えて入力し、より実測に即した血糖値予測を行うことも可能である。
また、血糖値予測システム1は、上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態とほぼ同様な効果が得られる。
(変形例1)血糖値予測システム1において、所定活動の開始(スタート)および終了(ストップ)の時点で、端末2のイベントボタン22bをユーザーが押下しているが、このような操作に限定されることなく、測定データ情報(実測脈拍曲線15,17)の変化傾向を判断して、活動の終了を自動的に行なうようにしても良い。さらに、所定活動の活動内容の認識が向上することにより、所定活動の開始時も判断して、所定活動の開始を自動的に行なうようにしても良い。これらにより、ユーザーの操作負担を軽減することができる。
(変形例2)端末2の操作部22は、機械的な操作ボタン22aとイベントボタン22bとであるが、表示部21に設けたタッチセンサーや、音声入力等による構成であっても良い。
(変形例3)端末2は、脈拍測定部23および活動量測定部24の測定部を有せず、操作部22(操作ボタン22a、イベントボタン22b)により血糖値情報を入力する構成であっても良い。この場合、食事情報33aおよび活動データ情報33eが種別データ情報である。この構成であれば、端末2の小型化が図れ、ユーザーにとってより装着しやすくなる。
(変形例4)血糖値予測システム1では、図4に示す血糖値予測曲線10のように、血糖値そのものによって変化傾向を把握しているが、HbA1cやグリコアルブミンや1.5ーAGの値から導いた予測曲線を用いても良い。例えば、HbA1cは、赤血球中のヘモグロビン(HbA)がどのくらい血糖であるグルコースと結合しているかを示していて、総ヘモグロビン量に対する割合をパーセントで表している。このパーセント値は、一定期間における平均的な血糖値を反映していて、過食や急激な運動等による短期的な血糖値の変化に左右されることなく、長期的な血糖値の変化を把握することに適している。これにより、ユーザーは、目的に応じた血糖値の予測曲線を選定することができる。
(変形例5)携帯型の端末2は、図1に示す形態に限定されるものではなく、携帯電話型、ストップウオッチ型、ペンシル型等でも良く、より腕時計に近い形態であっても良い。図11は、端末の形態の変形例を示す正面図である。図11に示す端末(第1装置)50は、腕時計タイプであって、端末ケース51と、端末ケース51の中央部に位置する液晶ディスプレイの表示部52と、表示部52の一部に設けられたイベント表示部52aと、表示部52の周囲に設けられ刻印された数字や文字や記号を有する回転ベゼル53と、端末ケース51の側面側に設けられ入力モードを選択するための選択ボタン55と、所定活動を選択するためのイベントボタン57と、選択ボタン55およびイベントボタン57による選択を確定するための確定ボタン56と、回転ベゼル53の数字等の位置合せ用のマーク54と、ユーザーの腕に取り付け用のベルト58と、を有している。端末50は、選択ボタン55、確定ボタン56および回転ベゼル53により端末2の操作ボタン22a(図1)の機能を果たし、イベントボタン57および確定ボタン56により端末2のイベントボタン22b(図1)の機能を果たしている。この端末50によれば、よりファッショナブルであり、いかなる場所でも違和感なく装着することができる。なお、端末50が時計表示機能を有すれば、より好ましく、これは端末2にも当てはまる。
(変形例6)血糖値予測システム1において、端末2が管理サーバー3のすべての機能または一部の機能を有する一体型になっていて、単独で血糖値予測システム1として機能する構成であっても良い。