JP2015034213A - 水性インク組成物、インクジェット記録方法及び着色体 - Google Patents

水性インク組成物、インクジェット記録方法及び着色体 Download PDF

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麻衣子 井内
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Toru Ishii
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Abstract

【課題】保存安定性が良好であり、ニュートラルなグレー〜黒色の色相を呈し、記録画像の耐光性、及び耐水性がいずれも優れる水性インク組成物の提供。
【解決手段】少なくとも、着色剤(I)、及び着色剤(II)の2種類の着色剤を含有する水性インク組成物であって、該水性インク組成物の総質量中における着色剤(I)の含有量が、着色剤(II)の含有量に対して2質量%以上65質量%以下であり、且つ着色剤(I)が、下記式(1)で表される染料又はその塩である水性インク組成物。
Figure 2015034213

(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、スルホ基等、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、スルホ基等、nは0又は1を表す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、水性黒色インク組成物、これを用いるインクジェット記録方法、及び着色体に関する。
各種のカラー記録方法の中で、代表的な方法の一つであるインクジェット記録方法は、インクの小液滴を発生させ、これを種々の被記録材(紙、フィルム、布帛等)に付着させて記録を行う方法である。この方法は、記録ヘッドと被記録材とが直接接触しないため音の発生が少なく静かであり、また小型化、高速化が容易という特長のため近年急速に普及しつつあり、今後とも大きな伸長が期待されている。
近年のインクジェット技術の発達により、インクジェット印刷における印刷スピードの向上がめざましく、商業印刷やオフィスでの使用を目的とするインクジェット記録が提案されている。この場合、印刷媒体は一般にインク受容層を有さない普通紙であり、インク受容層を有するインクジェット専用紙と比較すると、色相、耐光性、及び耐水性が最重要の課題となり、その改良が強く望まれている。
黒色インクはモノカラー及びフルカラー画像の両方に使用される重要なインクである。しかし、濃色域と淡色域の色相が共にニュートラルで且つ色濃度が高く、堅牢性にも優れた色素の開発は技術的に困難な点が多く、多大な研究開発が行われているがまだ十分な性能を有するものが少ない。そのため、一般には複数の多様な色素を混合して黒色インクを調製することが行われている。しかし複数の色素を混合してインクを調製すると、単一色素でインクを調製した場合に比べて、被記録材料によって色相が異なる、水による滲みによって特に変色が大きくなる等の問題が起こりやすい。
黒色染料に色調整用の染料を更に配合した黒色インクとしては、例えば特許文献1が提案されているが、市場の要求を充分に満足する製品を提供するには至っていない。
また、本明細書に記載の下記式(1)で表される染料は特許文献2〜5に記載されている。しかし、これらは色相、耐光性及び耐水性において上記課題を十分満足させるには至っていない。
特許第3178200号公報 国際公開2006/051850号公報 国際公開2013/035560号公報 特開2008−69331号公報 特開2013−32469号公報
本発明は、保存安定性が良好であり、ニュートラルなグレー〜黒色の色相を呈し、記録画像の耐光性、及び耐水性がいずれも優れる水性インク組成物の提供を課題とする。
本発明者らは前記したような課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記する特定の構成を有する水性インク組成物により、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の1)〜11)に関する。
1)
少なくとも、着色剤(I)、及び着色剤(II)の2種類の着色剤を含有する水性インク組成物であって、該水性インク組成物の総質量中における着色剤(I)の含有量が、着色剤(II)の含有量に対して2質量%以上65質量%以下であり、且つ着色剤(I)が、下記式(1)で表される染料又はその塩である水性インク組成物。
Figure 2015034213
(上記式(1)中、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、アルキル基、置換基を有してもよいアリールスルファモイルアミノ基、及びアルキルカルボニルアミノ基よりなる群から選択される基を表す。
及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、及びアルキル基よりなる群から選択される基を表す。
nは0又は1を表す。)
2)
着色剤(II)が、C.I. Acid Black 2である上記1)に記載の水性インク組成物。
3)
pH調整剤として、下記式(2)で表される化合物をさらに含有する上記1)又は2)に記載の水性インク組成物。
Figure 2015034213
(式(2)中、R、R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表す。)
4)
水性インク組成物の総質量中における、着色剤(I)の含有量が、着色剤(II)の含有量に対して2質量%以上50%質量%以下である上記1)乃至3)のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
5)
前記式(1)中、Rがカルボキシ基又はスルホ基であり、Rが水素原子であり、Rがニトロ基、カルボキシ基、又はスルホ基であり、nが1である上記1)に記載の水性インク組成物。
6)
前記式(1)中、R及びRがスルホ基であり、Rが水素原子、Rが水素原子、カルボキシ基、又はスルホ基であり、Rがニトロ基、カルボキシ基、又はスルホ基であり、Rが水素原子であり、nが1である上記1)に記載の水性インク組成物。
7)
C.I. Direct Orangeから選択される、少なくとも1種類の着色剤をさらに含有する上記1)〜6)のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
8)
上記1)〜7)のいずれか一項に記載の水性インク組成物の液滴を、記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
9)
被記録材が情報伝達用シートである上記8)に記載のインクジェット記録方法。
10)
上記1)〜7)のいずれか一項に記載の水性インク組成物により着色された着色体。
11)
上記1)〜7)のいずれか一項に記載の水性インク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンタ。
本発明により、保存安定性が良好であり、ニュートラルなグレー〜黒色の色相を呈し、記録画像の耐光性、及び耐水性がいずれも優れる水性インク組成物が提供できた。
以下に本発明を詳細に説明する。なお、本明細書においては実施例等も含めて、「%」及び「部数」については特に断りのない限り、いずれも質量基準で記載する。また、本明細書において「C.I.」とは、「カラーインデックス」を意味する。
上記着色剤(I)は、上記式(1)で表される染料であり、黒色染料である。
上記式(1)中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、アルキル基、置換基を有してもよいアリールスルファモイルアミノ基、及びアルキルカルボニルアミノ基よりなる群から選択される基を表す。
また、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、及びアルキル基よりなる群から選択される基を表す。
上記の置換基を有してもよいアルコキシ基としては、スルホ基を有してもよいアルコキシ基が挙げられ、スルホ基を有してもよいC1−C6アルコキシ基が好ましく、スルホ基を有してもよいC1−C4アルコキシ基がより好ましい。
上記の置換基を有してもよいアルキルスルホニル基としては、ヒドロキシ基を有してもよいアルキルスルホニル基が挙げられ、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C6アルキルスルホニル基が好ましく、ヒドロキシ基を有してもよいC1−C4アルキルスルホニル基がより好ましい。
上記のアルキル基としては、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖のものが好ましく、直鎖のものがより好ましい。
その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の直鎖C1−C6アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソペンチル、イソヘキシル等の分岐鎖C1−C6アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の環状C1−C6アルキル基;等が挙げられる。
上記の置換基を有してもよいアリールスルファモイルアミノ基としては、置換基を有してもよいフェニルスルファモイルアミノ基が挙げられ、アルキル基を有してもよいフェニルスルファモイルアミノ基が好ましい。該アルキル基としては、上記アルキル基と好ましいもの等を含めて同じものが挙げられる。
上記のアルキルカルボニルアミノ基としては、該アルキル部分に上記アルキル基と好ましいもの等を含めて同じアルキル基を有するアルキルカルボニルアミノ基が挙げられる。
上記のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子等が挙げられ、塩素原子又は臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
上記のうち、R及びRとしては、
少なくとも一方が水素原子以外の基が好ましく、
少なくとも一方がカルボキシ基、スルホ基又は非置換アルコキシ基、他方が水素原子又はスルホ基がより好ましく、
一方がスルホ基、他方が水素原子がさらに好ましい。
これらのうち、「一方」がR、「他方」がRが好ましい。
上記のうち、R、R及びRとしては、
少なくともいずれか1つが水素原子以外の基が好ましく、
少なくともいずれか1つがカルボキシ基、スルホ基、及びニトロ基から選択される基がより好ましく、
少なくとも1つが水素原子、残りの2つのうち、一方がカルボキシ基、スルホ基、又はニトロ基、他方が水素原子又はニトロ基がさらに好ましく、
少なくとも1つが水素原子、残りの2つのうち、一方がスルホ基、他方が水素原子又はニトロ基が特に好ましい。
これらのうち、「残りの2つのうち」の「一方」がR、「他方」がRが好ましい。
上記のうち、R及びRとしては、
少なくとも一方が水素原子以外の基が好ましく、
少なくとも一方がスルホ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、又はアルキル基、他方が水素原子、スルホ基、又はアルキル基がより好ましく、
少なくとも一方がスルホ基、他方が水素原子、又は、一方が置換基を有してもよいアルコキシ基、他方がアルキル基がさらに好ましく、
一方がスルホ基、他方が水素原子が特に好ましい。
上記式(1)中、置換位置が特定されていないニトロ基、R〜R、及び−(SOH)n基の置換位置としては、以下の位置が挙げられる。
[R、ニトロ基、及びRの置換位置]
これらが置換するベンゼン環上の各基の置換位置は、該ベンゼン環に結合するアゾ基の置換位置を1位として、以下(a)〜(c)の置換位置が挙げられる。
(a)R1が2位、ニトロ基が4位、Rが5位。
(b)R1が4位、ニトロ基が2位、Rが5位。
(c)R1が2位、ニトロ基が5位、Rが4位。
これらのうち、好ましくは(a)又は(b)、より好ましくは(a)である。
[R、及びRの置換位置]
これらが置換するベンゼン環上の各基の置換位置は、該ベンゼン環に結合し、且つR〜Rを有するベンゼン環と結合するアゾ基の置換位置を1位として、Rが3位、Rが6位に置換するのが好ましい。
[R、R、及びRの置換位置]
これらが置換するベンゼン環上の各基の置換位置は、該ベンゼン環に結合するアゾ基の置換位置を1位として、以下(a)〜(c)の置換位置が挙げられる。
(a)Rが2位、Rが4位、Rが5位。
(b)Rが3位、Rが5位、Rが4位。
(c)Rが2位、Rが5位、Rが4位。
(d)Rが3位、Rが4位、Rが6位。
これらのうち、好ましくは(a)である。
[−(SOH)n基の置換位置]
−(SOH)n基が置換するナフタレン環に置換するヒドロキシ基の置換位置を1位、置換位置が特定されたスルホ基の置換位置を3位として、−(SOH)n基が5位に置換するのが好ましい。
上記式(1)で表される染料について、R1からR7として表される各基、及び、ニトロ基と「−(SOH)n基」を含む置換位置が特定されていない各基の置換位置について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。さらに好ましいもの同士の組み合わせや、好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
上記式(1)で表される化合物の具体例を、下記表1〜3に挙げる。しかし上記式(1)で表される化合物は、これらに限定されるものではない。
Figure 2015034213
Figure 2015034213
Figure 2015034213
上記式(1)で表される染料の中でも下記式(22)、式(23)又は式(26)で表される染料が特に好ましく、中でも式(22)が最も好ましい。これらの染料は、特に発色性、耐光性、耐オゾン性、耐水性に効果を有する。
Figure 2015034213
Figure 2015034213
Figure 2015034213
上記式(1)で表される染料は、例えば上記特許文献3に記載の方法により合成することができる。
上記式(1)で表される染料は、塩として使用してもよい。
上記式(1)で表される染料の塩としては、無機又は有機の陽イオンと形成する塩が挙げられる。そのうち無機塩の具体例としては、元素の周期表第1族又は第2族の元素の陽イオンと形成する塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。これらの中で好ましい無機塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムの塩及びアンモニウム塩である。
有機の陽イオンの塩としては、例えば下記式(16)で表される化合物と形成する塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2015034213
上記式(16)中、Z1、Z2、Z3及びZ4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はヒドロキシアルコキシアルキル基を表すが、Z1、Z2、Z3及びZ4の全てが水素原子となることはない。
式(16)におけるZ1、Z2、Z3及びZ4のアルキル基としてはC1−C4アルキル基が好ましく、具体例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。
ヒドロキシアルキル基の例としてはヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ−C1−C4アルキル基が挙げられる。
ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルコキシ−C1−C4アルキル基が挙げられ、これらのうちではヒドロキシエトキシ−C1−C4アルキル基が好ましい。特に好ましいものとしては水素原子;メチル;ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ−C1−C4アルキル基;ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等のヒドロキシエトキシ−C1−C4アルキル基が挙げられる。
式(16)におけるZ1、Z2、Z3及びZ4の具体例を下記表4に示すが、式(16)で表される化合物はこれらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2015034213
有機陽イオンの塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、モノイソプロパノールアミン塩、ジイソプロパノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩が好ましく挙げられる。
上記水性インク組成物は、少なくとも、着色剤(I)の他に、着色剤(II)を含有する。着色剤(II)を含有することで、黒色インクとして、より一層ニュートラルな色相となり、且つ耐光性、及び耐水性にも優れた記録画像を与える。着色剤(II)としては黒色染料が好ましく、特にC.I.Acid Black2が好ましい。
C.I.Acid Black2は、容易に入手することが可能である。これをインクジェット記録に用いるときは、一般に市販品として入手したときに混入している無機不純物を、精製操作により除去することが好ましい。そのような精製操作としては、例えば逆浸透膜による精製方法;又は、染料原体をメタノール等のアルコール及び水の混合溶媒中で撹拌し、濾過分取、乾燥するなどの精製方法が挙げられる。無機不純物としては、例えば元素の周期表第1族及び/又は第2族元素の塩化物(例えば塩化ナトリウム等)、硫化物(例えば硫酸ナトリウム等)が挙げられる。精製を行うときは、インク組成物の総質量中における無機不純物の合計の含有量が100ppm以下になることが好ましく、50ppm以下がより好ましい。下限は検出機器の検出限界以下、すなわち0%でよい。
上記水性インク組成物により本発明の効果を得るためには、該インク組成物の総質量中における、着色剤(II)の含有量と、着色剤(II)の含有量とが極めて重要である。すなわち、着色剤(I)の含有量が、着色剤(II)の含有量に対して通常2%以上65%以下、好ましくは4%以上60%以下、より好ましくは4%以上50%以下である。これらの含有量は、小数点以下1桁目を四捨五入して算出する。
この範囲を超えると本発明の効果が得られないか、又は効果が著しく減弱する。
本発明のインクは、所望の色相とするために調色用の染料をさらに含んでも良い。調色用の染料は被記録材への染着性の観点から、反応染料、酸性染料又は直接染料が好ましく、直接染料がより好ましい。
調色用の反応染料の具体例としては、例えばC.I.Reactive Yellow 2、3、18、81、84、85、95、99、102等のイエロー色の染料;C.I.Reactive Orange 5、9、12、13、35、45、99等のオレンジ色の染料;C.I.Reactive Brown 2、8、9、17、33等のブラウン色の染料;C.I.Reactive Red 3、3:1、4、13、24、29、31、33、125、151、206、218、226、245等のレッド色の染料;が挙げられる。
調色用の酸性染料の具体例としては、例えばC.I.Acid Yellow 1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、40:1、42、44、49、59、59:1、61、65、72、73、79、99、104、110、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219、219:1、220、230、232、235、241、242、246等のイエロー色の染料;C.I. Acid Orange 3、7、8、10、19、24、51、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168等のオレンジ色の染料;C.I.Acid Brown 2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413等のブラウン色の染料;C.I.Acid Red 1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、97:1、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、264、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415等のレッド色の染料;等が挙げられる。
調色用の直接染料の具体例としては、例えばC.I. Direct Yellow 8、11、12、21、28、33、39、44、49、50、85、86、87、88、89、98、100、110、132、142、144、146等のイエロー色の染料;C.I. Direct Orange17、26、39、102等のオレンジ色の染料;C.I.Direct Red2、4、6、9、17、23、26、28、31、39、54、55、57、62、63、64、65、68、72、75、76、79、80、81、83、83:1、84、89、92、95、99、111、141、173、180、184、207、211、212、214、218、221、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247等のレッド色の染料;等が挙げられる。
これらの染料のうち、C.I. Direct Yellow 86、132、142、C.I. Direct Orange 17、39、C.I. Direct Red 80、84、227、C.I. Direct Brown 106、125、195、C.I. Acid Red 249、254から選択される1種類以上の染料を含有するとき、上記水性インク組成物により得られる印字濃度は、さらに高発色となるため、より一層好適である。これらの中では、C.I. Direct Orangeから選択されるオレンジ色の染料が好ましい。
上記水性インク組成物は、上記式(2)で表されるpH調整剤を含有することで、長期にpHの変動を抑え、諸物性の変化を生じない安定なインクを提供することができる。この効果は、例えば元素の周期表第1族元素の水酸化物(例えば水酸化ナトリウム等)等の無機化合物を使用したときには得られない効果である。このため、安定な上記水性インク組成物を提供するときは、該水性インク組成物が式(2)で表されるpH調整剤をさらに含有するのが好ましい。
調整後のpHの範囲としては通常pH7以上、好ましくは7〜12、より好ましくは7〜10である。
式(2)中、R、R及びR10におけるアルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びヒドロキシアルコキシアルキル基としては、上記式(16)中、Z、Z、Z及びZにおける各基と、好ましいもの等を含めて同じ基が挙げられる。
前記のうち、R、R及びR10としては、水素原子、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基が好ましく、その具体例としては、例えば水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられる。
式(2)として好ましい化合物のR、R及びR10の組み合わせの具体例を下記表5に示す。
Figure 2015034213
上記水性インク組成物は、本発明の効果を害しない範囲内において必要に応じ、水溶性有機溶剤やインク調製剤を適宜含有しても良い。
また、上記水性インク組成物の表面張力としては通常25〜70mN/m、好ましくは25〜60mN/mである。
また、上記水性インク組成物の粘度としては通常30mPa・s以下、好ましくは20mPa・s以下である。
上記水溶性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等のC1−C4アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミド又はN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オン又は1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等のC2−C6アルキレン単位を有するモノマー、オリゴマー又はポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルブチルカルビトール又はトリエチレングリコールモノメチルエーテル又はトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γ−ブチロラクトン、又はジメチルスルホキシド;等があげられる。
これらの水溶性有機溶剤の中では2−ピロリドン、イソプロピルアルコール、グリセリン、ジグリセリン、ブチルカルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールが好ましく、2−ピロリドン、イソプロピルアルコール、グリセリン、ブチルカルビトールがより好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
上記水性インク組成物の総質量に対して、上記水溶性有機溶剤の含有量は通常0〜50%、好ましくは10〜50%、より好ましくは25〜50%である。
上記インク調製剤としては、例えば防腐防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、水溶性高分子化合物、染料溶解剤、酸化防止剤、界面活性剤などがあげられる。
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。防黴剤を含有するときは、水性インク組成物の総質量に対して0.02〜1%含有使用するのが好ましい。
防腐剤としては、例えば有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリルスルホン系、ヨードプロパギル系、N−ハロアルキルチオ系、(ダブり)ニトリル系、ピリジン系、8−オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオシキド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。有機ハロゲン系化合物としては、例えばペンタクロロフェノールナトリウムが挙げられる。ピリジンオシキド系化合物としては、例えば2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウムが挙げられる。無機塩系化合物としては、例えば無水酢酸ソーダが挙げられる。イソチアゾリン系化合物としては、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンマグネシウムクロライド、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンカルシウムクロライド等が挙げられる。その他の防腐防黴剤として、ソルビン酸ソーダ、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
pH調整剤としては、調合されるインクに悪影響を及ぼさずに、インクのpHを例えば5〜11の範囲に制御できるものであれば任意の物質を使用することができる。その例として、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミンなどのアルカノールアミン、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム(アンモニア)、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩、酢酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム等の無機塩基等が挙げられる。
これらの中では、上記式(2)で表されるpH調整剤が好ましい。
キレート試薬としては、例えばエチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグルコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
水溶性紫外線吸収剤としては、例えばスルホン化したベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ−ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリアミン、ポリイミン等が挙げられる。
染料溶解剤としては、例えばε−カプロラクタム、エチレンカーボネート、尿素などが挙げられ、これらの中では尿素が好ましい。
酸化防止剤としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。前記有機系の褪色防止剤としては、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えばアニオン、カチオン、ノニオンなどの公知の界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としてはアルキルスルホン酸塩、アルキルカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸及びその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキルシルスルホ琥珀酸、ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。
カチオン界面活性剤としては2−ビニルピリジン誘導体、ポリ4−ビニルピリジン誘導体などがある。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などが挙げられる。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテルなどのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オールなどのアセチレングリコール(アルコール)系(例えば、日信化学社製サーフィノール104、105、82、420、440、465、オルフィンSTGなど)、等が挙げられる。
これらの中では、サーフィノール420、440、465が好ましい。
上記水性インク組成物の製造において、着色剤、水溶性有機溶剤、インク調整剤等の各添加剤を溶解させる順序には特に制限はない。
該インク組成物の調製に用いる水としては、イオン交換水、蒸留水等の上記無機不純物が少ないものが好ましい。
また、必要に応じインク組成物の調製後に、メンブランフィルター等を用いて精密濾過を行って、インク組成物中の夾雑物を除いてもよい。特に、該インク組成物をインクジェット記録に用いるときは、精密濾過を行うことが好ましい。精密濾過に使用するフィルターの孔径は通常1μm〜0.1μm、好ましくは0.8μm〜0.1μmである。
上記水性インク組成物は、各種分野において使用することができる。一例として筆記、水性印刷、情報記録等に用いることが可能であり、インクジェット記録に用いることが特に好ましい。
上記インクジェット記録を行うときは、一般にインクジェットプリンタを使用する。そのインクジェットプリンタが備えるインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式;ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式);電気信号を音響ビームに変えインクに照射し、その放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式;インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット、例えばバブルジェット(登録商標)方式;等の公知のインクジェット記録方式を用いることができる。なお、上記インクジェット記録方式には、フォトインクと称する着色剤の含有量の少ないインクを小さい体積で多数射出する方式;実質的に同じ色相で、着色剤の含有量が異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式;又は、カラーインクと無色透明のインクとを併用する方式;等も含まれる。
上記インクジェット記録方法は、上記水性インク組成物の液滴を、記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行う方法である。
上記水性インク組成物をブラックインクとして使用し、これにマゼンタ、シアン、イエロー、必要に応じてグリーン、ブルー(又はバイオレット)及びレッド(又はオレンジ)等の各インク組成物を併用することにより、フルカラーの記録画像を得ることもできる。このときは、各色のインク組成物をそれぞれの容器に注入し、その容器を上記水性インク組成物を含有する容器と同様に、インクジェットプリンタの所定の位置に装填してインクジェット記録に使用することができる。
上記着色体は、上記水性インク組成物で着色された物質を意味し、好ましくは上記インクジェット記録方法によって着色された物質である。
上記物質としては、上記水性インク組成物により着色され得る物質であればとくに制限されない。そのような物質の中では、例えば紙、フィルム等の情報伝達用シート;繊維や布(セルロース、ナイロン、羊毛等);皮革;カラーフィルター用基材;等の被記録材が好ましく挙げられる。
情報伝達用シートとしては、表面処理されたもの、具体的には紙、合成紙、フィルム等の基材にインク受容層を設けたもの、及び、インク受容層を特に設けていないものの両者が挙げられる。インク受容層は、例えば上記基材にカチオン系ポリマーを含浸あるいは塗工すること;多孔質シリカ、アルミナゾルや特殊セラミックス等の水性インク組成物中の着色剤を吸収し得る多孔性白色無機物を、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーと共に上記基材表面に塗工すること;等により設けられる。このようなインク受容層を設けたものは通常インクジェット専用紙(フィルム)、光沢紙(フィルム)等と呼ばれる。その具体例としては、例えば、旭硝子(株)製のピクトリコ;キヤノン(株)製のプロフェッショナルフォトペーパー、スーパーフォトペーパー、マットフォトペーパー、光沢ゴールド、プラチナグレード;セイコーエプソン(株)製の写真用紙(光沢)、フォトマット紙、写真用紙クリスピア(高光沢);日本ヒューレット・パッカード(株)製のプレミアムプラスフォト用紙、プレミアム光沢フィルム、フォト用紙、アドバンストフォトペーパー;コニカ(株)製のフォトライクQP;富士フイルム(株)製の画彩写真仕上げPro;等が挙げられる。
一方、インク受容層を特に設けていない情報伝達用シートとしては普通紙、上質紙、及びコート紙等が挙げられる。普通紙は、用途によってさまざまなものが数多く市販されている。市販されている普通紙の一例を挙げると、セイコーエプソン(株)製の両面上質普通紙;キヤノン(株)製のカラー普通紙;Hewlett Packard(株)製のMultipurpose Paper、All−in−one Printing Paper;三菱製紙(株)製のインクジェット用マット紙、商品名DL−9084;ゼロックス(株)製のプレミアム マルチパーパスペーパー4024;等が挙げられる。この他に、PPC(プレインペーパーコピー)用紙等も普通紙である。
上記水性インク組成物は、被記録材上で非常に鮮明で、彩度及び印字濃度が高く、理想的な色相の黒色の記録画像を与える。また本発明の水性黒色インク組成物は長期間保存後の固体析出、物性変化、色相変化等もなく、貯蔵安定性が極めて良好である。
本発明の水性黒色インク組成物はインクジェット記録用、筆記具用として用いられ、特にインクジェットインクとして使用しても、ノズル付近におけるインク組成物の乾燥による固体析出は非常に起こりにくく、噴射器(記録ヘッド)を閉塞することもない。また、本発明の水性黒色インク組成物は連続式インクジェットプリンタを用い、比較的長い時間間隔においてインクを再循環させて使用する場合においても、又はオンデマンド式インクジェットプリンタによる断続的な使用においても、物理的性質の変化を起こさない。
さらに、本発明の水性黒色インク組成物により記録された画像は、耐水性、耐湿性、耐オゾンガス性、耐擦性、耐光性等の各種堅牢性、特に耐光性と耐水性が良好である。
また、被記録物の長期保存安定性にも優れ、特に普通紙上での色相と共に、耐光性と耐水性に極めて優れる。また、彩度、明度、及び印字濃度等の発色性、演色性、近赤外光領域のセンサー対応特性にも優れる。
以下に本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。また、実施例中で得た化合物の各構造式において、スルホ基等の酸性官能基は遊離酸の形で記載した。
[(A)着色剤(I)の合成][合成例1〜3] 上記特許文献3に記載の方法に従い、下記式(22)、式(23)及び式(26)で表される着色剤(I)をそれぞれ合成した。
Figure 2015034213
Figure 2015034213
Figure 2015034213
[(B)水性インク組成物の調製]
[実施例1〜5及び比較例1〜6]
下記表6に記載した各成分を混合し、おおよそ1時間攪拌して溶液とした後、0.45μmのメンブランフィルター(アドバンテック社製の商品名セルロースアセテート系濾紙)で濾過することにより、評価試験用の水性インク組成物を調製した。なお、下記表6中の各成分の数値は「部」を意味する。
また、下記表6中の略号等は、以下の意味を有する。
(I):着色剤(I)。
(II):着色剤(II)。
AB2:C.I. Acid Black2。
DO39:C.I. Direct Orange39。
GLY:グリセリン。
2−PY:2−ピロリドン。
IPA:イソプロピルアルコール。
BCA:ブチルカルビトール。
SF440:サーフィノール440。
TEA:トリエタノールアミン。
Figure 2015034213
[(C)インクジェット記録]
各実施例及び比較例で調製した水性インク組成物を、EPSON(株)製のインクジェットプリンタ、商品名PX105により下記普通紙1及び2にインクジェット記録を行った。
普通紙1:ゼロックス(株)製、プレミアム マルチパーパスペーパー4024。
普通紙2:三菱製紙(株)製、インクジェット用マット紙、商品名DL−9084。
インクジェット記録の際は、100%、80%、60%、40%、20%、10%濃度の6段階の階調が得られるように画像パターンを作り、濃黒色〜淡黒色のグラデーションの記録物を得た。これを試験片として以下の評価試験を実施した。
[(D)測色機と測色条件]
以下の評価試験において測色が必要なときは、下記する測色機と測色条件にて測色した。
測色機:
GRETAG−MACBETH社製、商品名 SpectroEye。
測色条件:
濃度基準にANSI A、視野角2°、光源D50。
[(E)色相評価試験]
上記「(C)インクジェット記録」で得た各実施例、及び比較例の試験片のうち、普通紙1を用いた試験片における100%濃度の階調部分について、L*、a*、b*を測色し、下記計算式を用いて彩度C*値を算出した。
C*=(a*+b*1/2
なお、得られたC*は、0に近いほど好ましい黒色の色相であり、以下4段階の基準で評価した。この基準では、「B」以上が通常の実用的な黒色の色相である。
A:C*が3.0未満。
B:C*が3.0以上4.0未満。
C:C*が4.0以上7.0未満。
D:C*が7.0以上。
結果を下記表7に示す。
[(F)耐光性試験]
上記「(C)インクジェット記録」で得た各実施例、及び比較例の試験片のうち、普通紙1を用いた試験片を調製した後、24時間自然乾燥した。乾燥後の試験片をキセノンウェザオメータXL75(スガ試験機(株)製)に設置し、温度24℃、湿度60%RH、100kLuxで72時間照射した。照射の終了後、各試験片を測色し、試験前後での色差(ΔE)を測定した。なお、得られた色差ΔEは小さい方が、光による変色が少ないことを意味し、耐光性に優れることを示す。
A:ΔEが3.0未満。
B:ΔEが3.0以上5.0未満。
C:ΔEが5.0以上8.0未満。
D:ΔEが8.0以上。
結果を下記表7に示す。
[(G)耐水性試験]
上記「(C)インクジェット記録」で得た各実施例、及び比較例の試験片のうち、普通紙2を用いた試験片を調製した後、24時間自然乾燥した。乾燥後の試験片をイオン交換水に10分間浸漬させた後、試験片をゆっくりと水中から取り出し、自然乾燥で24時間乾燥させた。この試験片を測色し、試験前後でのDk値の残存率(%)を計算した。なお、得られた残存率(%)は大きい方が、水による退色が少ないことを意味し、耐水性に優れることを示す。
A:試験後の残存率が95%以上。
B:試験後の残存率が93%以上95%未満。
C:試験後の残存率が90以上93%未満。
D:試験後の残存率が90%未満。
結果を下記表7に示す。
Figure 2015034213
表7の結果より明らかなように、各実施例は無彩色で高品位な黒色画像を与えることが明らかとなった。さらに、各比較例に対して耐光性、及び耐水性に優れることが確認され、着色剤(II)に対する着色剤(I)の含有量が、耐光性及び耐水性の改善に極めて重要であることが明らかとなった。
本発明の水性インク組成物は、色相、耐光性、及び耐水性に優れるため、各種の記録用途、特にインクジェット記録に極めて好適に用いられる。

Claims (11)

  1. 少なくとも、着色剤(I)、及び着色剤(II)の2種類の着色剤を含有する水性インク組成物であって、該水性インク組成物の総質量中における着色剤(I)の含有量が、着色剤(II)の含有量に対して2質量%以上65質量%以下であり、且つ着色剤(I)が、下記式(1)で表される染料又はその塩である水性インク組成物。
    Figure 2015034213
    (上記式(1)中、
    、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基、スルファモイル基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、アルキル基、置換基を有してもよいアリールスルファモイルアミノ基、及びアルキルカルボニルアミノ基よりなる群から選択される基を表す。
    及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、置換基を有してもよいアルコキシ基、及びアルキル基よりなる群から選択される基を表す。
    nは0又は1を表す。)
  2. 着色剤(II)が、C.I. Acid Black 2である請求項1に記載の水性インク組成物。
  3. pH調整剤として、下記式(2)で表される化合物をさらに含有する請求項1又は2に記載の水性インク組成物。
    Figure 2015034213
    (式(2)中、R、R及びR10は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表す。)
  4. 水性インク組成物の総質量中における、着色剤(I)の含有量が、着色剤(II)の含有量に対して2質量%以上50%質量%以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  5. 前記式(1)中、Rがカルボキシ基又はスルホ基であり、Rが水素原子であり、Rがニトロ基、カルボキシ基、又はスルホ基であり、nが1である請求項1に記載の水性インク組成物。
  6. 前記式(1)中、R及びRがスルホ基であり、Rが水素原子、Rが水素原子、カルボキシ基、又はスルホ基であり、Rがニトロ基、カルボキシ基、又はスルホ基であり、Rが水素原子であり、nが1である請求項1に記載の水性インク組成物。
  7. C.I. Direct Orangeから選択される、少なくとも1種類の着色剤をさらに含有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性インク組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性インク組成物の液滴を、記録信号に応じて吐出させて、被記録材に付着させることにより記録を行うインクジェット記録方法。
  9. 被記録材が情報伝達用シートである請求項8に記載のインクジェット記録方法。
  10. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性インク組成物により着色された着色体。
  11. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性インク組成物を含有する容器が装填されたインクジェットプリンタ。
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JP2016199747A (ja) * 2015-04-10 2016-12-01 キヤノン株式会社 インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法

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