以下、本発明の実施形態に係る冷蔵庫について詳細に説明する。また、以下では、6ドアタイプを例に挙げて説明するが、5ドア以下のタイプに適用してもよい。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る冷蔵庫を示す正面図である。なお、以下では、冷蔵庫1Aを正面から見たときの方向を基準として説明する。
図1に示すように、冷蔵庫1Aは、冷蔵室2、製氷室3、切替室(上段冷凍室、急速冷凍室)4、下段冷凍室5(引出し室、第1貯蔵室/以下、冷凍室5とする)および野菜室6(引出し室、第2貯蔵室)を備えている。
また、冷蔵庫1Aは、冷蔵室2の開口部2s(図2参照)を開閉する回転式の扉2a,2b、製氷室3の開口部3s(図2参照)を開閉する引出し式の扉3a、切替室4の開口部4s(図2参照)を開閉する引出し式の扉4aを、それぞれ備えている。
図2は図1のA−A線矢視断面図である。なお、図2では、引出し式の扉5a,6aは断面ではなく、外形を示している。また、冷蔵室2、製氷室3、切替室4、冷凍室5および野菜室6内に設置される容器などの図示を省略している。
図2に示すように、冷蔵庫1Aは、冷凍室5の開口部5sを開閉する引出し式の扉5a(引出し扉)と、冷凍室5と扉5aとの隙間を密閉するパッキン25(シール部材、図5ないし図7参照)と、を備えている。また、冷蔵庫1Aは、野菜室6の開口部6sを開閉する引出し式の扉6a(引出し扉)と、野菜室6と扉6aとの隙間を密閉するパッキン25(シール部材、図5ないし図7参照)と、を備えている。
また、冷蔵庫1Aは、冷蔵庫本体(筐体、箱体)10を備えている。この冷蔵庫本体10は、上面壁10a、側面壁10b(左側のみ図示)、背面壁(後面パネル)10cおよび底面壁10dを備え、各壁10a,10b,10c,10dの内部に真空断熱材が配設されるとともに、真空断熱材を除く空間に硬質ウレタンフォームなどの発泡断熱材を充填して構成されている。すなわち、各壁10a,10b,10c,10dは、冷蔵庫1Aの内部と外部を断熱区画する断熱壁として構成されている。
また、冷蔵庫本体10は、冷蔵室2と、製氷室3および切替室4との間に、冷蔵温度帯の冷蔵室2と冷凍温度帯の製氷室3および切替室4とを区画断熱する仕切断熱壁10eを備えている。また、冷蔵庫本体10は、冷凍室5と野菜室6との間に、冷凍温度帯(貯蔵温度帯)の冷凍室5と、冷凍温度帯よりも高い貯蔵温度帯の野菜室6とを区画断熱する仕切断熱壁10fを備えている。また、冷蔵庫本体10は、製氷室3、切替室4および冷凍室5を同一の冷凍温度帯の空間とし、仕切断熱壁ではなく単なる仕切りである仕切り部材10gを備えている。この仕切り部材10gの前面は、後記するパッキン25(図7参照)の前面(受け面)10g1として構成されている。
冷凍室5の扉5aの背面(後面)には、後方に水平に延びる引出し枠5bが設けられている。なお、図2では、一つの引出し枠5bしか図示されていないが、扉5aには、左右一対の引出し枠5bが設けられている。左右一対の引出し枠5bには、略U字状に曲げられた補強板5cが掛け渡されている。また、各引出し枠5bは、冷蔵庫本体10の側面壁10bの内壁に設けられたレール10hの溝内に摺動可能に支持されている。
野菜室6の扉6aの背面(後面)にも同様に、後方に水平に延びる引出し枠6bが設けられている。なお、扉6aについても、左右一対の引出し枠6bが設けられ、引出し枠6bに略U字状を呈する補強板6cが掛け渡されている。また、各引出し枠6bは、冷蔵庫本体10の側面壁10bに設けられたレール10iの溝内に摺動可能に支持されている。
引出し枠5b,6b及び補強板5c,6cには、それぞれ引出容器(図示せず)が載置される。引出容器は、扉5a,6aの引出動作に伴って引き出されて、食品の収納及び取出しが可能である。
なお、冷凍室5および野菜室6内には、扉5a,6aをスイッチ操作によって開放させる駆動装置5d,6dが設けられている。この駆動装置5d,6dは、扉5a,6aに設けられたスイッチSW1,SW2(図1参照)を押圧操作することによって作動し、扉5a,6aを前方に開放させるものである。なお、駆動装置5d,6dは、図示しない、電動機、減速機構、リンク機構などで構成されている。
また、冷蔵庫本体10には、冷凍サイクル部が設置されている。この冷凍サイクル部は、圧縮機(図示せず),凝縮器(図示せず),キャピラリチューブ(図示せず)及び蒸発器(図示せず)、そして再び圧縮機の順に接続して構成されている。圧縮機および凝縮器は冷蔵庫本体10の背面下部に設けられた機械室10jに設置されている。蒸発器は冷凍室5の後方に設けられた冷却器室(図示せず)に設置され、この冷却器室における蒸発器の上方に送風ファン(図示せず)が設置されている。
蒸発器によって生成された冷気は、送風ファンによって冷蔵室2、製氷室3、切替室4、冷凍室5および野菜室6の各貯蔵室へと送られる。具体的には、送風ファンによって送られる冷気は、開閉可能なダンパー装置を介して、その一部が冷蔵室2および野菜室6の冷蔵温度帯の貯蔵室へと送られ、他の一部が製氷室3、切替室4および冷凍室5の冷凍温度帯の貯蔵室へと送られる。
図3は図2のB−B線矢視断面図である。
図3に示すように、冷蔵庫本体10では、冷凍室5に対応する側面壁10b1(10b)の壁厚(壁の肉厚)をT1とし、野菜室6に対応する側面壁10b2(10b)の壁厚(壁の肉厚)をT2とした場合、野菜室6の壁厚T2が冷凍室5の壁厚T1よりも薄くなるように構成されている(T1>T2)。また、冷蔵庫本体10の背面壁10cについても、野菜室6の背面壁10c2(10c、図2参照)の壁厚が冷凍室5の背面壁10c1(10c、図2参照)の壁厚よりも薄くなるように構成されている。これにより、冷凍室5からの熱漏れ(冷気漏れ)を低減することができるとともに、野菜室6内の容積を増やすことが可能になる。
図4は第1実施形態に係る冷蔵庫の引出し扉を示す斜視図である。なお、扉5aと扉6aは、互いに同じ構成であるので、以下では、扉5aを例に挙げて説明する。
図4に示すように、扉5aは、上板21a、底板21b、背板21c(図5参照)、前板22(ガラス板)および側板23,24(側面)を備えている。これら上板21a、底板21b、背板21c、前板22および側板23,24で構成される空間内には硬質ウレタンフォームなどの発泡断熱材が充填されている。
前板22は、例えば強化ガラスによって構成され、扉5aの前面の略全面を構成している。このように、前板22をガラス製とすることにより、前板22を鋼板によって構成するよりもフラット感を高めることができる。鋼板で前板22を構成した場合、扉内部に硬質ウレタンフォームを発泡充填する際に、発泡圧によって鋼板表面に波打ち形状が発生するおそれがある。一方、ガラスで前板22を構成した場合、硬質ウレタンフォームの発泡圧でガラス表面が変形することがない。よって、前板22をガラスで構成することで、扉面積を大型化した場合でも、全面に亘ってフラットな前板22を構成することができる。
側板23は、前板22の左端縁部よりも外側方(左側方)に突出して配置され、手(指)を掛けて扉5aを前方(手前)に引き出すための手掛け部23aを備えている。同様に、側板24は、前板22の右端縁部よりも外側方(右側方)に突出して形成され、手(指)を掛けて扉5aを前方(手前)に引き出すための手掛け部24aを備えている。
手掛け部23a,24aは、側板23,24の鉛直方向(上下方向)の上端部に形成されている。これにより、冷蔵庫1A(図1参照)において、手掛け部23a,24aを側板23,24の下部に設ける場合よりも利用者が手を掛け易くなる。
図5は図4のC−C線矢視断面図である。
図5に示すように、手掛け部23aは、左側方に開放する凹部23a1を有し、扉5a,6aの厚さ方向(前後方向)の前寄りに位置している。また、手掛け部23aは、冷蔵庫本体10の側面壁10bの内壁面10b3の延長線S1よりも外側(左側方)に位置し、換言すると側面壁10bの壁厚T1,T2の範囲内に位置している。
手掛け部24aは、右側方に開放する凹部24a1を有し、扉5a,6aの厚さ方向(前後方向)の前寄りに位置している。また、手掛け部24aは、冷蔵庫本体10の側面壁10bの内壁面10b5の延長線S2よりも外側(右側方)に位置し、換言すると側面壁10bの壁厚T1,T2の範囲内に位置している。
また、扉5aには、冷蔵庫本体10と密着させて冷凍室5の気密性を確保するパッキン25(シール部材)が設けられている。このパッキン25は、扉5aの背面の外周において、左側の側面壁10bの前面10b4と、右側の側面壁10bの前面10b6と、仕切り部材10gの前面10g1(図2参照)と、仕切断熱壁10fの前面10f1(図2参照)にそれぞれ対向するように四角枠状に設けられている。
また、扉6aには、扉6aの背面の外周において、左側の側面壁10bの前面10b4と、右側の側面壁10bの前面10b6と、仕切断熱壁10fの前面10f1(図2参照)と、底面壁10dの前面10d1(図2参照)にそれぞれ対向するように四角枠状に設けられている。
図6は図5のD部拡大断面図である。なお、手掛け部23aと手掛け部24aは、面対称の関係にあるので、以下では、手掛け部23aのみについて説明し、手掛け部24aの説明については省略する。
図6に示すように、手掛け部23aは、側板23の前後方向(扉5a,6aの厚み方向)の中央よりも前側(前寄り)に曲面部23bが形成され、後側に平面部23cが形成されている。また、手掛け部23aの凹部23a1は、曲面部23bに形成されている。
また、手掛け部23aの凹部23a1は、前板22の縁部22bから背面(後面)22aに沿って形成される前壁23a2と、この前壁23a2から後方に向かう中間壁23a3と、中間壁23a3の後部から前壁23a2と略平行又は外側が次第に前壁23a2から離れる方向に向かう後壁23a4と、を有している。
また、後壁23a4は、前壁23a2の開口端よりも外側方(左側方)に長く形成され、曲面部23bと平面部23cとの境界部分まで位置している。また、前壁23a2の開口端には、前板22の縁部22bを保持する折返し部23a5が形成されている。
このように、手掛け部23aを前後方向前寄りの曲面部23bに形成することで、ユーザ(利用者)が冷蔵庫1A(図1参照)の正面に立って扉5a,6aを開ける際、正面から手掛け部23aの位置を容易に視認することができ、しかも手(指)を手掛け部23aに対して正面から挿入することができ(右側方または左側方から手(指)を挿入する必要がなく)、使い勝手を向上できる。
パッキン25は、扉5a,6aの背面(後面)と側面壁10bの前面10b4との間に配置され、背板21cに形成された凹部21c1に挿入されて固定されている。また、パッキン25は、内部に帯状の磁石25aが収容された磁力発生部25bを備えている。これにより、パッキン25の磁力発生部25bが側面壁10bに埋め込まれた鉄板に密着し、冷凍室5に対する扉5aの密閉性(気密性)が確保される。
図7は図4のE−E線矢視断面図である。
図7に示すように、上板21aの内壁面には、前板22の背面(後面)22aに当接して位置決めする位置決めリブ21a1が形成されている。この位置決めリブ21a1は、前板22の上端縁部に沿って左右方向に手掛け部23aと手掛け部24aとの間に位置している(図6参照)。
また、上板21aの内壁面には、手掛け部23aの中間壁23a3に当接して位置決めする位置決めリブ21a2(図6参照)が形成されている。この位置決めリブ21a2は、中間壁23a3に対応する位置において、上下方向(紙面に直交する方向)に形成されている。
底板21bの内壁面には、前板22の背面(後面)22aに当接して位置決めする位置決めリブ21b1が形成されている。この位置決めリブ21b1は、前板22の下端縁部に沿って側板23,24の間に位置している。
また、底板21bには、前方に突出して前板22の下端を支持するつば部21b2が形成されている。このつば部21b2は、前板22の下端縁部に沿って側板23,24の間に位置している。
背板21cは、冷凍室5、野菜室6に対応する上下方向にわたって、前板22との距離が略同じ又は所定距離以上になるように構成されている。また、背板21cは、冷凍室5、野菜室6の開口部5s,6sの上縁部と下縁部との間で上下方向に位置している。また、背板21cは、冷凍室5、野菜室6に対応する左右方向にわたって、前板22との距離が略同じになるように構成されている(図5参照)。
このように構成された扉5aでは、上板21a、底板21b、背板21c、前板22および側板23,24で囲まれる空間全体に発泡断熱材が充填されている。よって、第1実施形態では、冷凍室5の開口部5sに対応する領域全体において、厚みT3の断熱層R1として構成されている。
また、前板22は、下側縁が底板21bのつば部21b2に突き当てるように端部が当接し、上側縁が上板21aのつば部21a3に突き当てるように端部が当接し、左側縁が折返し部23a5で支持し、右側縁が折返し部(図示せず。折返し部23a5と同様の構成)で支持する構成である。すなわち、上側縁及び下側縁は扉枠部材(上板21a、底板21b)に突き当て、左側縁及び右側縁は扉枠部材(上板21a、底板21b)にて前方が覆われる構成である。
これにより、上下方向よりも左右方向に長い形状の前板22は、長辺部(上側縁及び下側縁)が扉枠部材で支持されていないため、前面から視認できる面積を大きくすることができる。特に、上側縁及び下側縁は、冷蔵庫1Aの前面の中央部分を含む位置にあるため、左側縁及び右側縁に比べてユーザーが視認し易い箇所である。そのため、前板22の上側縁及び下側縁のそれぞれの前方を露出させることで、フラット感を強調しつつ、大容量の貯蔵空間であるとの印象をユーザーに対して与えることができる。
また、前板22の左側縁及び右側縁を扉枠部材(側板23,24)にて覆われた構成とすることで、手掛け部23a,24aにユーザーが手を掛ける際に、前板22の左側縁及び右側縁に触れることを防止できる。
なお、前板22の上側縁又は下側縁の少なくとも一方を扉枠部材(上板21a又は底板21b)に突き当てた状態で前方を露出させて、他方を扉枠部材で覆われる構成としてもよい。すなわち、上下の向かい合う縁部の少なくとも一方を扉枠部材に突き当てた状態で前方を露出させて、他方を扉枠部材で覆われる構成とする。このことにより、前板22の扉枠部材での支持を確実にしつつ、フラット面が前方に露出する面積を拡大することができる。
また、ガラス製の前板22は、単体毎に寸法のばらつきが生じる。そして、前板22の上下左右の全周を扉枠部材の折り返し部で覆う構成にした場合、前板22の寸法が所定寸法よりも大きいと、折り返し部で前板22を覆うことができない。一方、前板22の上下左右の全周を扉枠部材のつば部に突き当てる構成にした場合、前板22の寸法が所定寸法よりも小さいと、つば部への前板22の突き当てが不十分となり、前板22が扉枠部材から脱落するおそれがある。
そこで、前板22の上下の向かい合う縁部の少なくとも一方を扉枠部材に突き当てた状態で前方を露出させて、他方を扉枠部材で覆われる構成とする。このことにより、前板22の縁部の一方は扉枠部材の折り返し部等で確実に支持し、他方は扉枠部材のつば部へ突き当てることで、前板22の寸法のばらつきを調整して許容できるとともに、前板22前方の露出面積を拡大することができる。
なお、扉6aについても、扉5aと同様に構成され、野菜室6(図2参照)の開口部6s(図2参照)に対応する領域全体において、所定の厚みの断熱層として構成されている。なお、野菜室6の扉6aの断熱層の厚みは、冷凍室5の扉5aの断熱層R1の厚みT3よりも薄く形成されている。
次に、第1実施形態の冷蔵庫1Aにおける作用効果について比較例と対比しつつ図面を参照して説明する。図8は第1実施形態に係る冷蔵庫の扉における作用効果を説明する図、図9は第1実施形態に係る冷蔵庫の扉における別の作用効果を説明する図である。図13は比較例に係る冷蔵庫の扉における図8に対応する作用の説明図、図14は図13のF−F線矢視断面図、図15は比較例に係る冷蔵庫の扉が上下に配置されている場合の図7に対応する作用を説明する図、図16は比較例に係る冷蔵庫の扉における図9に対応する作用の説明図である。まず、比較例の引出し扉100について図13および図14を参照して説明する。
図13に示すように、比較例としての引出し式の扉100は、前面の上部に、手(指)を掛けて扉100を引き出すための手掛け部101が設けられている。この手掛け部101は、扉100の左右方向の略中央部に位置している。
図14に示すように、比較例としての手掛け部101は、上板100aに、上方から手(指)が挿入される縦断面視略U字状の凹部101bを有している。この凹部101bの底面101b1は、仕切り部材10gの下面10g2よりも上下方向(鉛直方向)の下方に位置している。
ところで、比較例としての扉100が閉じた状態において、手掛け部101の点P10(図13参照)に手(指)を掛けて扉100を開ける場合には、図13の白抜き矢印で示すように、点P10を基準として、例えば、左方向、右方向、斜め左下方向、斜め右下方向および下方向に分散した各力F11,F11,F12,F12,F13がパッキン25(図14参照)を引き剥がす力として作用する。
これに対して、第1実施形態に係る扉5aが閉じた状態において、左側の手掛け部23aの点P1(図8参照)に手(指)を掛けて扉5aを開ける場合には、図8に白抜き矢印で示すように、点P1を基準として、例えば、右方向、斜め右下方向および下方向に分散した各力F1,F2,F3が、扉100上部の左右方向(幅方向)に位置するパッキン25(図5参照)を引き剥がす力として作用する。ここで、一般的な引出し式の扉100は、上下方向寸法(高さ寸法)よりも左右方向寸法(幅寸法)が大きい形態が一般的である。これは、高さ寸法を大きくし過ぎると、貯蔵室に収納した食品が上に収納した食品によって隠れてしまうことが多くなり、使い勝手が低下するためである。そのため、上下方向寸法(高さ寸法)よりも左右方向寸法(幅寸法)を大きくして、収納整理し易くして、引出し式の扉100の引出し時に収納物全体を見易くしている。
このように、比較例としての扉100では、手掛け部101が上部の左右方向の略中央に位置しているので、扉100上部の左右方向(幅方向)に位置するパッキン25に対して左右両側に力F11,F11,F12,F12が分散する(図13参照)。また、パッキン25は、点P10から左右両側に向けてパッキン25が配設され、しかも磁力発生部によって冷蔵庫本体に密着しているので、パッキン25を引き剥がすのに大きな力が必要になる。
これに対して、第1実施形態に係る扉5aでは、手掛け部23aが上部の角部に位置しているので、扉100上部の左右方向(幅方向)、及び扉100左側部の上下方向(高さ方向)に位置するパッキン25の交点付近に対して右側に力F1,F2が加わる。よって、パッキン25に対する力の分散が抑えられ、パッキン25に対して大きな引き剥がし力が作用する。また、手掛け部23aが扉5aの上端部に位置しているので、扉5aを開ける際には、四角枠状のパッキン25の角部に対して引き剥がす力F1,F2,F3が作用するので、パッキン25を引き剥がす力を比較例よりも小さくできる。
また、手掛け部23aを利用して扉5aを開ける場合には、図5に示すように、パッキン25が磁力発生部25b(図6参照)によって密着している右側(手掛け部23aの左右方向の反対側)の点P2(図5参照)を支点として、手掛け部23aに対して回転モーメントM1が作用するので、パッキン25を引き剥がし易くできる。さらに、手掛け部23aを利用して扉5aを開ける場合には、図7に示すように、パッキン25が磁力発生部25b(図6参照)によって密着している下側(手掛け部23aの上下方向の反対側)の点P3(図7参照)を支点として、手掛け部23aに対して回転モーメントM2が作用するので、パッキン25を剥がれ易くできる。ちなみに、扉5aに対してモーメントM1,M2が発生するのは、扉5aの引出し枠5b(図2参照)と、冷蔵庫本体10の側面パネル10b(図2参照)に設けられたレール10h(図2参照)の溝との間に、引出動作をスムーズにするためのクリアランスを設けた状態で構成されているからである。
このように、手掛け部23aを扉5aの左端の上部に配置することで、比較例(従来)としての扉100よりも小さな力(引出し力)によって、パッキン25を引き剥がすことができ、扉5aを従来よりも開け易く、つまり小さな力で開けることができる。
また、比較例としての扉100では、図14に示すように、手掛け部101の凹部101bによって、扉100の上部に厚みT100の断熱層R100が生じる。このため、厚みT100の薄い断熱層R100の領域では、手掛け部101の凹部101bが冷え易くなるので、手掛け部101に露付き(結露)が発生し、また露付き(結露)しないまでも、冷凍室5内の熱(冷気)が逃げ、省エネルギに反するものとなる。つまり、熱(冷気)が逃げると、庫内の温度が上昇するため、庫内を冷さなければならなくなり、このようなサイクルが過度に繰り返されることにより、省エネルギ化が損なわれることになる。
また、図15に示すように、例えば、上下に冷凍室5と野菜室6とが配置され、冷凍室5に扉100A(100)、野菜室6に扉100B(100)が配置されている場合、上下方向(高さ方向)において、仕切断熱壁10fに対して扉100Aのパッキン25A(25)と扉100Bのパッキン25B(25)とが共有することになる。この場合には、扉100Aと扉100Bが上下方向で近接しているため、手掛け部101の凹部(凹部の底面)が下方に移動することになり、厚みT100の断熱層R100の薄い部分が増加することになる。この厚みT100の薄い断熱層R100の部分を、図15の二点鎖線で示すように、薄い断熱層R100の厚みを増加させると、庫内の容積が減少する問題が生じる。
そこで、第1実施形態では、手掛け部23aを扉5aの側面に設けることで、断熱層R100の薄い部分が生じなくなり、図7に示すように、冷凍室5の開口部5sの領域全体、すなわち、上下の仕切り間寸法(仕切り部材10gと仕切断熱壁10fとの間の寸法)を、厚みT3の断熱層R100を有する扉5aによって閉じることができる。
また、図16に示すように、例えば、流し台200の正面に冷蔵庫300を配置した場合、利用者が冷蔵庫300の正面に立って(屈んで)扉100A,100Bを開け閉めすることが一般的である。しかし、近年、冷蔵庫の大型化に伴って、冷蔵庫の奥行、すなわち、引出し距離L100も長くなる傾向にあるため、利用者自身が扉5aの開閉の邪魔になって、扉100A,100Bの引出し距離L100を稼ぐことができなくなる。このため、扉100A,100Bに載置されている容器(図示せず)の奥側にある食品などを取り出すことが困難になる。
そこで、第1実施形態では、図9に示すように、利用者が冷蔵庫1Aの横(左側または右側)に立って(屈んで)、手掛け部23a(または手掛け部24a)に手を掛けて扉5a,6aを前方へ引き出すことにより、扉5a,6aを開けることができる。このような状況で扉5a,6aを開ける場合であっても、前記したように、手掛け部23a,24aの扉5a,6aの上部角部への配置、また回転モーメントM1(図5参照)および回転モーメントM2(図7参照)の発生によって、扉5a,6aを従来よりも小さな力で開けることができる。
以上説明したように、第1実施形態の冷蔵庫1Aによれば、扉5a,6aの左右両端に扉5a,6aを引き出すための手掛け部23a,24aを設けたことで(図2、図5参照)、扉5a,6aの上部に凹みを形成することで断熱層の薄い部分が形成されるのを防止できるので、断熱性を向上させることができる。また、扉5a,6aの背板21cを後方(庫内側)に突出させて内部の断熱層を厚く構成する必要もないので、冷凍室5および野菜室6の庫内の容積が減少することもない。ちなみに、手掛け部23a,24aを扉5a,6aの左右両端に設けたとしても、手掛け部23a,24aを冷蔵庫本体10の側面壁10bの壁厚T1,T2よりも浅くすることができるので(図5参照)、冷凍室5および野菜室6の開口部5s,6s(図2参照)に対応する領域の扉5a,6aの断熱層R1が薄くなることがない(図7参照)。すなわち、開口部5s,6sの前方投影範囲よりも外側で、扉5a,6aの左右両端の少なくともいずれかに、扉5a,6aを引き出すための手掛け部23a(又は手掛け部24a)をそれぞれ設けている。
また、第1実施形態では、扉5a,6aの前面をガラス製(強化ガラス製)の前板22として、手掛け部23a,24a(前壁23a2)が前板22の背面22aと接するように構成されている。これにより、ガラス製の前板22を手掛け部23a,24aの補強部材として利用することができ、手掛け部23a,24aに手を掛けて扉5a,6aを引き出したときに、手掛け部23a,24aの変形を防止することができる。また、ガラス製の前板22で補強することで、手掛け部23a,24aの肉厚を過度に厚く形成する必要がなくなる。また、ガラス製の前板22にすることにより、手掛け部23a,24aを前板22のすぐ後ろ側に配置できるので、手掛け部23a,24aに手を掛けることが容易になる(図6参照)。
ちなみに、前板をガラス製のものに替えて、一般に利用されている鋼板製のものにした場合について図10を参照して説明する。図10は扉の前板をガラス製にした場合の効果を説明する対比図として、扉の前板を鋼板製にした場合の構成を示す断面図である。
図10に示すように、前板400を鋼板製とした場合、前板400の背面400aに接するように手掛け部410を設けると、手掛け部410の強度を確保することができないため、前板400と手掛け部410との間に所定の厚みの発泡断熱材などの断熱層R10を設けなければならず、手掛け部410が前板400よりも後方(奥側)に位置することになる。このように、手掛け部410が奥側に位置すると、例えば、冷蔵庫1Aを壁面Mギリギリに設置したときに、手(指)の挿入が壁面Mによって邪魔になって、手(指)を手掛け部410に掛けることが困難になる。そこで、第1実施形態では、前板22をガラス製とすることにより、前板22のすぐ後ろ側に手掛け部23a,24aを配置できるので、冷蔵庫1Aを側面の壁面Mギリギリに設置したとしても、壁面Mによって邪魔になることなく、手掛け部23a,24aに手(指)を掛けることが可能になる。
また、ガラス製の前板22の上側縁は冷凍室5の上側仕切り(仕切り部材10g)の前方投影範囲又は該上側仕切り下面から所定範囲内(例えば、上側仕切りの下面からおよそ2mm前後の高さ範囲)に位置し、ガラス製の前板22の下側縁は冷凍室5の下側仕切り(仕切断熱壁10f)の前方投影範囲に位置する。これにより、上下の仕切り部に至る高さ範囲で、扉5aの断熱層R100の厚みT3を大きく減少させることなく構成することができる。
さらに、前板22の上側縁に位置する扉枠部材(上板21a)の外部に露出する部分は、冷凍室5の上側仕切り(仕切り部材10g)の前方投影範囲又は該上側仕切り下面から所定範囲内(例えば、上側仕切りの下面からおよそ2mm前後の高さ範囲)に位置する。同様に、前板22の下側縁に位置する扉枠部材(底板21b)の外部に露出する部分は、冷凍室5の下側仕切り(仕切断熱壁10f)の前方投影範囲に位置する。すなわち、上下の扉枠部材の前方に露出する部分は、上下の仕切り部の所定高さ範囲内にそれぞれ位置するとともに、前板22の高さ寸法が上下の仕切り部近傍の所定範囲まで含む構成となる。そのため、前板22の露出面積を拡大してフラット感をより強調することができる。また、上下の隣接する複数の扉の近傍まで前板22が位置するため、扉同士の境界が強調されにくくなり、複数の扉が全体としてフラットで纏まりのある印象を与えることができる。
また、第1実施形態では、側板23(側面)を前板22の縁部22bよりも外側方に位置させ、前方に向けて前板22に近づくように傾斜する曲面部23b(傾斜面)を形成し、この曲面部23bに手掛け部23a,24aが設けられている。これにより、冷蔵庫1Aを家具などの壁面Mギリギリに設置したとしても、冷蔵庫1Aの正面から手掛け部23a,24aを視認することができ、しかも前方から手(指)を挿入して、壁面Mに手が当たることなく、凹部23a1に手(指)を掛けることが可能になる。
また、本実施形態では、前後方向から見たときに手掛け部23a,24aがパッキン25と重なる位置に設けられている。これにより、手掛け部23a,24aに手(指)を掛けて扉5a,6aを開ける際に、パッキン25を引き剥がす力を分散させることなく、効率的にパッキン25を引き剥がすことができる。
また、本実施形態では、手掛け部23a,24aが側板23,24の上部に位置している。これにより、パッキン25の角部に手掛け部23a,24aが位置するので、手掛け部23a,24aに手(指)を掛けて扉5a,6aを開ける際に、扉5a,6aの底側のパッキン25を支点P3として回転モーメントM2が作用し、パッキン25がより引き剥がし易くなり、扉5a,6aをより小さな力で開けることができる(図7参照)。
また、本実施形態では、手掛け部23a,24aが扉5a,6aの左右両側に設けられている。これにより、利用者が冷蔵庫1Aの左側にいる場合には、左側の手掛け部23aを利用して、扉5a,6aを開けることができ、利用者が冷蔵庫1Aの右側にいる場合には、右側の手掛け部24aを利用して扉5a,6aを開けることができ、利用者の立ち位置に応じて手掛け部23a,24aを使い分けることができ、利用者の使い勝手を向上できる。
また、本実施形態では、冷凍室5の手掛け部23a,24aが、鉛直方向(上下方向)において、引出し枠5bより上側に位置している。また、野菜室6の手掛け部23a,24aが、鉛直方向(上下方向)において、引出し枠6bと略同じ高さに位置している(図2参照)。これにより、利用者が手掛け部23a,24aに手(指)を掛けて扉5a,6aを開ける際に、引出し枠5b,6bとレール10h,10iとの間のクリアランスを利用して回転モーメントM2(図7参照)をより発生させ易くなり、扉5a,6aをより小さな力で開けることができる
(第2実施形態) 図11は第2実施形態に係る冷蔵庫の手掛け部を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図11に示すように、第2実施形態に係る冷蔵庫1Bは、第1実施形態の側板23の曲面部23bに替えてテーパ部23dとしたものである。このようにテーパ部23dを備えた扉5aであっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、テーパ部23dの傾斜角度については、適宜変更することできる。
(第3実施形態)
図12は第3実施形態に係る冷蔵庫の手掛け部を示す断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図12に示すように、第3実施形態に係る冷蔵庫1Cは、第1実施形態の側板23の平面部23cに替えて、後方に向けて内側に湾曲する曲面部23eとしたものである。このように曲面部23eを備えた扉5aであっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、曲面部23eを設けることにより、冷蔵庫1Cの側面に広いスペースがある場合には、曲面部23eに手を掛けて扉5a,6aを開けることも可能になる。
なお、側板23の形状については、第1ないし第3実施形態に限定されるものではなく、例えば、側板23の後端から前端に向けて全体的に湾曲する構成であってもよい。また、テーパ形状と曲面形状を組み合わせた構成であってもよい。
(第4実施形態)
図17は第4実施形態に係る冷蔵庫の扉の背面透視図である。また、図18は図17の扉の手掛け部近傍の上断面図である。
図17、図18に示すように、扉5aの上板21a、底板21b、背板21c、前板22および側板23,24で構成される空間内には、硬質ウレタンフォームなどの発泡断熱材が充填されている(図18のTa寸法部及びTd寸法部)。さらに、本実施形態では、真空断熱材26を備えている(図18のTb寸法部。一例としてTb=17mm)。
真空断熱材26の厚みは、手掛け部23aの奥行き寸法(Tc。一例としてTc=19mm)と同等又は該奥行き寸法より小さい構成としている(Tc≧Tb)。これにより、手掛け部23a近傍の発泡断熱材の厚みを十分確保して、手掛け部23aの強度を確保することができる。さらに、手掛け部23a周囲に発泡断熱材を充填することにより、手掛け部23a周囲の断熱性能が十分確保されて、冷蔵庫の内部と外部の温度差による手掛け部23aへの露付きを防止することができる。
また、前板22をガラス板で構成し、ガラス板に真空断熱材26を固定している。固定手段は、一例としてホットメルト接着剤や、両面テープを採用することができる。
前板22が鋼板製の場合、真空断熱材26を前板22に固定すると、前板22の外面に波打ち形状が現れやすくなる。一方、前板22がガラス製の場合、真空断熱材26を直接固定した場合でも、ガラスが変形しないため、外観形状を良好に保つことができる。
手掛け部23aは、扉5aの側面に設けられており、かつ、ガラス製の前板22の背面と接しており、さらに真空断熱材22とは所定寸法(Td)離れて配置されている。本実施形態では、一例としてTd=5mm程度している。これにより、手掛け部23aの背面のみならず、側面にも発泡断熱材が充填されるため、手掛け部23aの強度をより確保することができる。
なお、野菜室6の扉6aも同様の構成を採用することができる。この場合、発泡断熱材の厚みTa寸法は、冷凍室5の扉5aより小さくしても、貯蔵温度帯が異なるため、断熱効果を得ることができる。また、Ta及びTdは、硬質ウレタンフォームが流動可能な寸法を考慮して設定すればよい。
また、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更することができる。例えば、本実施形態では、扉5a,6aの側板23,24(側面)に手掛け部23a,24a(取っ手)を設ける場合を例に挙げて説明したが、扉5a,6aの左右両端であって、冷蔵庫本体10の壁厚T1,T2(図3参照)の範囲内に位置するものであれば、扉5a,6aの前面に手掛け部23a,24aの開口が形成される構成であってもよい。また、扉5a,6aの左右両端であって、冷蔵庫本体10の壁厚T1,T2(図3参照)の範囲内に位置するものであれば、手で把持して引っ張る取っ手であってもよく、扉5a,6a内に取っ手を格納可能な回転格納式の取っ手であってもよい。
また、本実施形態では、手掛け部23a,24aを扉5a,6aの左右両端に設けた場合を例に挙げて説明したが、手掛け部23aのみであってもよく、手掛け部24aのみであってもよく、左右両端の少なくとも一方であればよい。
また、本実施形態では、上側に冷凍室5、その下側に野菜室6を設けた冷蔵庫1Aを例に挙げて説明したが、上側に野菜室6、その下側に冷凍室5を設けた冷蔵庫であってもよい。