以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る劣化状態検出装置、当該劣化状態検出装置を備える蓄電システム、及び当該蓄電システムを備える電動車両について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
まず、蓄電システム10の構成について、説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る劣化状態検出装置100を備える蓄電システム10の外観図である。
同図に示すように、蓄電システム10は、劣化状態検出装置100と、複数(同図では6個)の蓄電素子200と、劣化状態検出装置100及び複数の蓄電素子200を収容する収容ケース300とを備えている。
劣化状態検出装置100は、複数の蓄電素子200の上方に配置され、複数の蓄電素子200の劣化状態を検出する回路を搭載した回路基板である。具体的には、劣化状態検出装置100は、複数の蓄電素子200に接続されており、複数の蓄電素子200から情報を取得して、複数の蓄電素子200の劣化状態を検出する。
なお、ここでは、劣化状態検出装置100は複数の蓄電素子200の上方に配置されているが、劣化状態検出装置100はどこに配置されていてもよい。この劣化状態検出装置100の詳細な機能構成の説明については、後述する。
蓄電素子200は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。本実施の形態では、6個の矩形状の蓄電素子200が直列に配置されて組電池を構成している。なお、蓄電素子200は直列ではなく並列に接続されていてもよいし、直列接続と並列接続が組み合わされていてもよい。また、蓄電素子200の個数は6個に限定されず、他の複数個数または1個であってもよい。また、蓄電素子200の形状も特に限定されない。また、蓄電素子200は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。
具体的には、蓄電素子200は、アルミニウムやアルミニウム合金などからなる長尺帯状の正極基材箔上に正極活物質層が形成された正極と、銅や銅合金などからなる長尺帯状の負極基材箔上に負極活物質層が形成された負極とを有している。ここで、正極活物質層に用いられる正極活物質、または負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質または負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
ここで、蓄電素子200は、正極活物質として層状構造のリチウム遷移金属酸化物を含むリチウムイオン二次電池であるのが好ましい。具体的には、正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2など、Li1+xM1−yO2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素、0≦x<1/3、0≦y<1/3)等の層状構造のリチウム遷移金属酸化物等を用いるのが好ましい。なお、当該正極活物質として、LiMn2O4やLiMn1.5Ni0.5O4等のスピネル型リチウムマンガン酸化物や、LiFePO4等のオリビン型正極活物質等と、上記層状構造のリチウム遷移金属酸化物とを混合して用いてもよい。
また、負極活物質としては、例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−ケイ素、リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、ケイ素酸化物、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li4Ti5O12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
次に、劣化状態検出装置100の詳細な機能構成について、説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る劣化状態検出装置100の機能的な構成を示すブロック図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係る記憶部170の検出用データ171の一例を示す図である。
劣化状態検出装置100は、蓄電素子200の劣化状態を検出する装置である。具体的には、劣化状態検出装置100は、蓄電素子200が充放電を繰り返すことにより一時的な性能の劣化である一過性劣化が生じていることを検出する。図2に示すように、劣化状態検出装置100は、取得部110、算出部120、判断部130、検出部140、第一制御部150、第二制御部160及び記憶部170を備えている。
記憶部170は、蓄電素子200の劣化状態を検出するための検出用データ171を記憶しているメモリである。ここで、検出用データ171は、蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを検出するために必要な情報の集まりであり、具体的には、図3に示すように、第一時点及び第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗と、第一閾値と、第二閾値とが記憶されている。なお、第一時点、第二時点、第一抵抗、第二抵抗、第三抵抗、第一閾値及び第二閾値の詳細な説明については、後述する。
取得部110は、第一時点及び第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得する。
ここで、第一抵抗、第二抵抗、及び第三抵抗は、第一周波数、第一周波数よりも高い第二周波数、及び第二周波数よりも高い第三周波数に対応する信号を蓄電素子200に印加することによって得られる応答信号から求められる蓄電素子200の抵抗値である。
そして、第一周波数は、0.01〜10Hzの範囲内の周波数であり、例えば、1Hzである。また、第二周波数は、500〜5kHzの範囲内の周波数であり、例えば、1kHzである。また、第三周波数は、5k〜50kHzの範囲内の周波数であり、例えば、10kHzである。なお、「〜」は、両端を含む概念である。つまり、例えば、0.01〜10Hzは、0.01Hz以上、10Hz以下であることを示している。
なお、第二周波数が5kHz未満の値である場合には、第三周波数は5k〜50kHzの範囲内の周波数であるが、第二周波数が5kHzの場合には、第三周波数は、第二周波数よりも高い周波数であるので、5kHzよりも高い周波数となる。
また、第一時点とは、蓄電素子200の一過性劣化を検出する基準となる時点であり、本実施の形態では、第一時点は、蓄電素子200が初期状態のときの時点である。つまり、取得部110は、蓄電素子200の初期状態での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得する。
具体的には、蓄電素子200の製造時点、工場出荷時点または電気自動車等の応用機器への搭載時点などの初期状態での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗が、事前に測定され、図3に示すように、事前に記憶部170の検出用データ171に書き込まれている。そして、取得部110は、当該初期状態での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を検出用データ171から読み出すことで取得する。このように、取得部110は、必要に応じて、蓄電素子200の第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を検出用データ171から読み出して、算出部120に出力する。
なお、記憶部170には第一時点での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を算出するためのデータが記憶されており、取得部110は、当該データを参照して、第一時点での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を算出することにより取得することにしてもよい。また、劣化状態検出装置100は記憶部170を備えておらず、取得部110は、他の機器から、第一時点での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得することにしてもよいし、第一時点での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗がプログラムや回路構成などによって劣化状態検出装置100に組み込まれていたりしていてもかまわない。
なお、第一時点は、上記の初期状態のときの時点には限定されず、どのような時点であってもよく、例えば、蓄電素子200が充放電を伴う使用を開始してから所定の期間が経過した時点でもかまわない。この場合、取得部110は、後述する第二時点での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得するのと同様の方法で、第一時点での第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得することができる。また、第一時点は、分、時、日、月など、どのような単位で表現されてもかまわない。
また、第二時点とは、第一時点以降の所定の期間が経過した時点であるが、当該所定の期間はどのような期間であってもよく、特に限定されない。また、当該所定の期間の単位も特に限定されず、例えば、分オーダー、時間オーダー、日オーダー、月オーダーなどの期間である。つまり、第二時点は、第一時点と同様に、分、時、日、月など、どのような単位で表現されてもかまわない。
具体的には、取得部110は、第二時点において、第一周波数、第二周波数及び第三周波数に対応する信号を蓄電素子200に印加することによって得られる応答信号から、蓄電素子200の第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を測定し、取得する。つまり、取得部110は、第二時点において蓄電素子200から第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得し、図3に示すように、記憶部170の検出用データ171に書き込む。
さらに具体的には、取得部110は、0.01〜10Hzの範囲内の第一周波数での抵抗値を、第一抵抗として取得する。また、取得部110は、500〜5kHzの範囲内の第二周波数での抵抗値を、第二抵抗として取得する。また、取得部110は、5k〜50kHzの範囲内の第三周波数での抵抗値を、第三抵抗として取得する。
そして、取得部110は、取得した蓄電素子200の第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を、記憶部170の検出用データ171に書き込むとともに、必要に応じて、当該検出用データ171から読み出して、算出部120に出力する。
算出部120は、第一時点及び第二時点において、第一抵抗から第三抵抗を差し引いて第一抵抗差を算出することで、第一抵抗差増加量を算出する。ここで、第一抵抗差とは、第一抵抗と第三抵抗との差である。
つまり、算出部120は、取得部110が取得した第一時点における第一抵抗から第三抵抗を差し引くことで、第一時点における第一抵抗差を算出する。また、算出部120は、取得部110が取得した第二時点における第一抵抗から第三抵抗を差し引くことで、第二時点における第一抵抗差を算出する。そして、算出部120は、第二時点における第一抵抗差から第一時点における第一抵抗差を差し引くことで、第一抵抗差増加量を算出する。
また、算出部120は、第一時点及び第二時点において、第二抵抗から第三抵抗を差し引いて第二抵抗差を算出することで、第二抵抗差増加量を算出する。ここで、第二抵抗差とは、第二抵抗と第三抵抗との差である。
つまり、算出部120は、取得部110が取得した第一時点における第二抵抗から第三抵抗を差し引くことで、第一時点における第二抵抗差を算出する。また、算出部120は、取得部110が取得した第二時点における第二抵抗から第三抵抗を差し引くことで、第二時点における第二抵抗差を算出する。そして、算出部120は、第二時点における第二抵抗差から第一時点における第二抵抗差を差し引くことで、第二抵抗差増加量を算出する。
そして、算出部120は、算出した第二抵抗差増加量を第一抵抗差増加量で除して、第一抵抗差増加量に対する第二抵抗差増加量の比率である抵抗差増加量比率を算出する。
また、算出部120は、第一時点から第二時点までの蓄電素子200の内部抵抗の増加率である内部抵抗増加率を算出する。本実施の形態では、算出部120は、第一時点から第二時点までの第一抵抗の増加率を内部抵抗増加率として算出する。つまり、算出部120は、第二時点における第一抵抗を第一時点における第一抵抗で除した値を、当該内部抵抗増加率として算出する。
なお、内部抵抗増加率は、第一時点から第二時点までの第一抵抗の増加率でなくともよく、ある特定の周波数における蓄電素子200の交流抵抗値の増加率や、蓄電素子200に対して一定時間の充電または放電を行った場合の分極から計算される直流抵抗値の増加率であることにしてもよい。
判断部130は、第一抵抗差増加量に対する第二抵抗差増加量の比率が、所定の第一閾値以下であるか否かを判断する。具体的には、判断部130は、記憶部170の検出用データ171から第一閾値を読み出し、算出部120が算出した抵抗差増加量比率と比較する。
ここで、当該第一閾値は、図3に示すように、記憶部170の検出用データ171に予め書き込まれて記憶されている。そして、判断部130は、検出用データ171から第一閾値Pを読み出して、抵抗差増加量比率と第一閾値Pとを比較する。この第一閾値Pの値は、判断対象の蓄電素子200の種類や蓄電素子200の使用形態などによって適宜定められるが、例えば、0.13〜0.14の間の数値である。
なお、判断部130は、所定の計算式に基づいて当該第一閾値を算出することにしてもよい。また、判断部130は、他の機器から当該第一閾値を取得することにしてもよいし、当該第一閾値の値がプログラムや回路構成などによって劣化状態検出装置100に組み込まれていたりしていてもかまわない。
また、判断部130は、第一時点から第二時点までの蓄電素子200の内部抵抗の増加率が所定の第二閾値以上であるか否かを判断する。具体的には、判断部130は、記憶部170の検出用データ171から第二閾値を読み出し、算出部120が算出した内部抵抗増加率と比較する。
ここで、当該第二閾値は、図3に示すように、記憶部170の検出用データ171に予め書き込まれて記憶されている。そして、判断部130は、検出用データ171から第二閾値Qを読み出して、内部抵抗増加率と第二閾値Qとを比較する。この第二閾値Qの値は、判断対象の蓄電素子200の種類や蓄電素子200の使用形態などによって適宜定められるが、例えば、130%である。
なお、判断部130は、所定の計算式に基づいて当該第二閾値を算出することにしてもよい。また、判断部130は、他の機器から当該第二閾値を取得することにしてもよいし、当該第二閾値の値がプログラムや回路構成などによって劣化状態検出装置100に組み込まれていたりしていてもかまわない。
検出部140は、第一抵抗差増加量と第二抵抗差増加量との関係を用いて、第二時点における蓄電素子200の劣化状態を検出する。つまり、検出部140は、第一時点から第二時点までの第一抵抗差の増加量である第一抵抗差増加量と、第一時点から第二時点までの第二抵抗差の増加量である第二抵抗差増加量との関係を用いて、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であるか否かを検出する。
具体的には、検出部140は、第一抵抗差増加量に対する第二抵抗差増加量の比率が所定の第一閾値以下であるか否かの判断結果から、第二時点における蓄電素子200の劣化状態を検出する。つまり、検出部140は、判断部130が第一抵抗差増加量に対する第二抵抗差増加量の比率が第一閾値以下であると判断した場合に、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出する。
また、検出部140は、さらに、第一時点から第二時点までの蓄電素子200の内部抵抗の増加率が所定の第二閾値以上であるか否かの判断結果から、第二時点における蓄電素子200の劣化状態を検出する。つまり、検出部140は、さらに、判断部130が第一時点から第二時点までの蓄電素子200の内部抵抗の増加率が第二閾値以上であると判断した場合に、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出する。
つまり、検出部140は、抵抗差増加量比率が第一閾値以下であると判断され、かつ、内部抵抗増加率が第二閾値以上であると判断された場合に、蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出する。
第一制御部150及び第二制御部160は、検出部140による蓄電素子200の劣化状態の検出結果に応じて、蓄電素子200に対する充電または放電を制御する。
具体的には、第一制御部150は、検出部140が、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出した場合に、蓄電素子200に対する充電または放電を一定期間停止させる。
なお、第一制御部150は、蓄電素子200に対する充電または放電を一定期間停止させる前に、または停止させるのに代えて、警告を行ったりしてもよいし、蓄電素子200に対する充電または放電の量を制限したりしてもよい。
また、第二制御部160は、検出部140が、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出した場合に、蓄電素子200に対して完全充電若しくは完全放電又はその両方を行う。
なお、第二制御部160は、第一制御部150と同様、蓄電素子200に対して完全充電または完全放電を行う前に、または完全充電または完全放電を行うのに代えて、警告を行ったりしてもよい。
次に、劣化状態検出装置100が蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを検出する処理について、説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る劣化状態検出装置100が蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを検出する処理の一例を示すフローチャートである。
同図に示すように、まず、取得部110は、蓄電素子200の抵抗値を取得する(S102)。具体的には、取得部110は、第一時点及び第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得する。この取得部110が抵抗値を取得する処理の詳細な説明については、後述する。
次に、算出部120は、抵抗差増加量比率を算出する(S104)。具体的には、算出部120は、取得部110が取得した第一時点及び第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を用いて、第一抵抗差増加量と第二抵抗差増加量とを算出することで、抵抗差増加量比率を算出する。この算出部120が抵抗差増加量比率を算出する処理の詳細な説明については、後述する。
次に、検出部140は、蓄電素子200が一過性劣化の状態であるか否かを検出する(S106)。つまり、検出部140は、第一時点から第二時点までの第一抵抗差の増加量である第一抵抗差増加量と、第一時点から第二時点までの第二抵抗差の増加量である第二抵抗差増加量との関係を用いて、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であるか否かを検出する。
具体的には、検出部140は、算出部120が算出した抵抗差増加量比率が第一閾値以下であるか否かを判断部130が判断することにより、蓄電素子200が一過性劣化の状態であるか否かを検出する。この検出部140が一過性劣化状態を検出する処理の詳細な説明については、後述する。
そして、第一制御部150または第二制御部160は、蓄電素子200に対する充電または放電を制御する(S108)。具体的には、検出部140が、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出した場合に、第一制御部150が、蓄電素子200に対する充電または放電を一定期間停止させる、または、第二制御部160が、蓄電素子200に対して完全充電または完全放電を行うように、蓄電素子200に対する充電または放電を制御する。
例えば、蓄電素子200がハイブリッド車(HEV)に搭載されている場合には、第一制御部150は、回生電力による充電を停止させたり、アシスト機能による放電を停止させたりする。
なお、第一制御部150または第二制御部160は、検出部140が蓄電素子200の一過性劣化状態を検出した場合に、音や映像によって警告を行ったり、他の方法で蓄電素子200に対する充放電を制御したりすることにしてもよい。
また、検出部140が、蓄電システム10に含まれる1つの蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを検出した場合に、第一制御部150または第二制御部160は、当該1つの蓄電素子200に対してのみ充放電を制御することにしてもよいし、蓄電システム10に含まれる全ての蓄電素子200に対して充放電を制御することにしてもよい。
以上により、劣化状態検出装置100が蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを検出する処理は、終了する。
次に、取得部110が抵抗値を取得する処理(図4のS102)について、詳細に説明する。
図5は、本発明の実施の形態に係る取得部110が抵抗値を取得する処理の一例を示すフローチャートである。また、図6は、本発明の実施の形態に係る取得部110が抵抗値を取得する処理を説明するための図である。
まず、図5に示すように、取得部110は、第一時点における第一抵抗、第二抵抗、及び第三抵抗を取得する(S202)。具体的には、取得部110は、第一時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を、記憶部170に記憶されている検出用データ171から読み出すことで取得する。
ここで、取得部110が取得する第一時点における第一抵抗、第二抵抗、及び第三抵抗について、説明する。図6に示すように、第一時点における第一抵抗は、1Hzの第一周波数F1に対応する信号を蓄電素子200に印加した場合の蓄電素子200の抵抗値R1a(以下、第一抵抗R1aという)である。なお、同図のグラフg1は、第一時点における周波数と抵抗値との関係を示すボード線図であり、複素インピーダンス測定によって得られるデータを参考にプロットしているものである。
また、同様に、第一時点における第二抵抗は、1kHzの第二周波数F2に対応する信号を蓄電素子200に印加した場合の蓄電素子200の抵抗値R1b(以下、第二抵抗R1bという)である。また、同様に、第一時点における第三抵抗は、10kHzの第三周波数F3に対応する信号を蓄電素子200に印加した場合の蓄電素子200の抵抗値R1c(以下、第三抵抗R1cという)である。
このように、取得部110は、図3に示された検出用データ171から、第一時点における第一抵抗R1a、第二抵抗R1b及び第三抵抗R1cを読み出すことで取得する。なお、取得部110は、第一時点における抵抗値を、検出用データ171以外から取得してもよいし、後述する第二時点における抵抗値を取得する方法と同様の方法で取得することにしてもよい。
図5に戻り、次に、取得部110は、第二時点における第一抵抗、第二抵抗、及び第三抵抗を取得する(S204)。具体的には、取得部110は、第一周波数、第二周波数及び第三周波数に対応する信号を蓄電素子200に印加することによって得られる応答信号から求められる蓄電素子200の抵抗値を、それぞれ第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗として取得する。つまり、取得部110は、当該周波数に対応する交流信号を1/2サイクル以上の一定時間蓄電素子200に印加することで当該抵抗値を取得することにしてもよいし、当該周波数に対応する直流パルス信号を蓄電素子200に印加することで当該抵抗値を取得することにしてもよい。
具体的には、取得部110は、第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を、汎用のインピーダンスメータの回路原理を用いることにより取得することができる。つまり、取得部110は、3つの周波数における抵抗値を測定すればよいため、複素インピーダンス測定などの複雑な測定を行う必要がなく、市販のインピーダンスメータの回路原理を適用することで簡易に抵抗値を取得することができる。
また、取得部110は、第二時点において、充電電流または放電電流が流れていない状態で、第一周波数(例えば、1Hz)、第二周波数(例えば、1kHz)及び第三周波数(例えば、10kHz)のそれぞれで電圧振幅を加えて電流応答を観察し、交流抵抗を測定することで、第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得することができる。
また、取得部110は、第二時点において、充電電流または放電電流が流れている状態で、第一周波数、第二周波数及び第三周波数のそれぞれで電流振幅を加えて電圧応答を観察し、交流抵抗を測定することで、第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得することにしてもよい。
また、取得部110は、第二時点において、第一周波数、第二周波数及び第三周波数に対応するパルス幅(例えば、1sec、1msec及び0.1msec)で直流電圧パルスまたは直流電流パルスを加えて直流抵抗を測定することで、第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得することにしてもよい。
また、取得部110は、当該抵抗値を、複素インピーダンス測定などの交流インピーダンス法によって測定することにより取得することにしてもよい。つまり、取得部110は、第二時点において、第一周波数、第二周波数及び第三周波数のそれぞれでの交流インピーダンス法によって得られるナイキストプロットの実軸成分(即ち、ボード線図の縦軸成分)を測定し、第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗として取得することにしてもかまわない。
ここで、取得部110が取得する第二時点における第一抵抗、第二抵抗、及び第三抵抗について、説明する。図6に示すように、第二時点における第一抵抗は、1Hzの第一周波数F1に対応する信号を蓄電素子200に印加した場合の蓄電素子200の抵抗値R2a(以下、第一抵抗R2aという)である。なお、同図のグラフg2は、第二時点における周波数と抵抗値の関係を示すボード線図であり、複素インピーダンス測定によって得られるデータを参考にプロットしているものである。
また、同様に、第二時点における第二抵抗は、1kHzの第二周波数F2に対応する信号を蓄電素子200に印加した場合の蓄電素子200の抵抗値R2b(以下、第二抵抗R2bという)である。また、同様に、第二時点における第三抵抗は、10kHzの第三周波数F3に対応する信号を蓄電素子200に印加した場合の蓄電素子200の抵抗値R2c(以下、第三抵抗R2cという)である。
このように、取得部110は、汎用のインピーダンスメータの回路原理を用いることなどにより、第二時点における第一抵抗R2a、第二抵抗R2b及び第三抵抗R2cを測定することで取得する。なお、取得部110は、第二時点における抵抗値を、どのような手法を用いて取得することにしてもよい。
図5に戻り、次に、取得部110は、第二時点における第一抵抗、第二抵抗、及び第三抵抗を記憶部170に記憶させる(S206)。具体的には、取得部110は、取得した第二時点における第一抵抗、第二抵抗、及び第三抵抗を、記憶部170の検出用データ171に書き込むことで、記憶部170に記憶させる。
以上により、取得部110が抵抗値を取得する処理(図4のS102)は、終了する。
次に、算出部120が抵抗差増加量比率を算出する処理(図4のS104)について、詳細に説明する。
図7は、本発明の実施の形態に係る算出部120が抵抗差増加量比率を算出する処理の一例を示すフローチャートである。また、図8は、本発明の実施の形態に係る算出部120が抵抗差増加量比率を算出する処理を説明するための図である。
まず、図7に示すように、算出部120は、第一時点及び第二時点において、第一抵抗から第三抵抗を差し引いて第一抵抗差を算出する(S302)。
具体的には、図8に示すように、算出部120は、取得部110が取得した第一時点における第一抵抗R1aから第三抵抗R1cを差し引くことで、第一時点における第一抵抗差A1を算出する。また、算出部120は、取得部110が取得した第二時点における第一抵抗R2aから第三抵抗R2cを差し引くことで、第二時点における第一抵抗差B1を算出する。
そして、図7に戻り、算出部120は、第一時点及び第二時点において、第二抵抗から第三抵抗を差し引いて第二抵抗差を算出する(S304)。
具体的には、図8に示すように、算出部120は、取得部110が取得した第一時点における第二抵抗R1bから第三抵抗R1cを差し引くことで、第一時点における第二抵抗差A2を算出する。また、算出部120は、取得部110が取得した第二時点における第二抵抗R2bから第三抵抗R2cを差し引くことで、第二時点における第二抵抗差B2を算出する。
そして、図7に戻り、算出部120は、第一抵抗差増加量を算出する(S306)。具体的には、算出部120は、第二時点における第一抵抗差B1から第一時点における第一抵抗差A1を差し引くことで、第一抵抗差増加量C1(=B1−A1)を算出する。
そして、算出部120は、第二抵抗差増加量を算出する(S308)。具体的には、算出部120は、第二時点における第二抵抗差B2から第一時点における第二抵抗差A2を差し引くことで、第二抵抗差増加量C2(=B2−A2)を算出する。
そして、算出部120は、抵抗差増加量比率を算出する(S310)。具体的には、算出部120は、算出した第二抵抗差増加量C2を第一抵抗差増加量C1で除して、第一抵抗差増加量に対する第二抵抗差増加量の比率である抵抗差増加量比率D1(=C2/C1)を算出する。
また、算出部120は、内部抵抗増加率を算出する(S312)。具体的には、算出部120は、第二時点における第一抵抗R2aを第一時点における第一抵抗R1aで除した値を、第一時点から第二時点までの蓄電素子200の内部抵抗の増加率として、内部抵抗増加率E(=R2a/R1a)を算出する。なお、算出部120が内部抵抗増加率を算出する処理(S312)において、第一周波数F1における抵抗値を用いるのではなく、第一周波数F1以外の周波数における抵抗値を用いることにしてもよいし、さらには、抵抗の次元をもつものであればどのような手段で取得されたものを用いてもよい。
以上により、算出部120が抵抗差増加量比率を算出する処理(図4のS104)は、終了する。
次に、検出部140が一過性劣化状態を検出する処理(図4のS106)について、詳細に説明する。
図9は、本発明の実施の形態に係る検出部140が一過性劣化状態を検出する処理の一例を示すフローチャートである。また、図10は、本発明の実施の形態に係る検出部140が一過性劣化状態を検出する処理を説明するための図である。
まず、図9に示すように、判断部130は、抵抗差増加量比率が第一閾値以下であるか否かを判断する(S402)。つまり、判断部130は、算出部120が算出した第一抵抗差増加量C1に対する第二抵抗差増加量C2の比率である抵抗差増加量比率D1が、検出用データ171に記憶されている第一閾値P以下であるか否かを判断する。本実施の形態では、第一閾値Pは、0.13であることとする。
ここで、以下に示す試験(一過性劣化試験、放置試験、サイクル試験)を行い、それぞれの試験における周波数と抵抗値との関係を求めた。つまり、以下の試験では、アルミニウム箔上に正極合剤が形成された正極と、銅箔上に負極合剤が形成された負極とを有するリチウムイオン二次電池を用いた。ここで、正極合剤には、正極活物質として、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物を用い、負極合剤には、負極活物質として、炭素材料を用いた。
そして、一過性劣化試験では、容量が10mAhの電池を用い、12CA(120mA)の電流で30秒の充電と30秒の放電との組み合わせを、休止時間を設けることなく、1000回繰り返し行った(1分間/サイクル×1000サイクル=16時間40分)。
また、放置試験では、容量が650mAhの電池を用い、放置前に、電流1CA(650mA)、電圧4.1V、充電時間3時間の定電流定電圧充電を行い、放置温度45℃、放置期間を300日間として放置を行った。
また、サイクル試験では、容量が650mAhの電池を用い、充電は、45℃、電流1CA(650mA)、電圧4.1V、充電時間3時間の定電流定電圧充電とし、放電は、45℃、電流1CA(650mA)、終止電圧2.85Vの定電流放電とした。そして、充電と放電との組み合わせを1サイクルとし、試験期間を2000サイクルとした。
また、それぞれの試験の各時点において、電流1CA、電圧3.8V、充電時間3時間の定電流定電圧充電にて充電を行い、測定時のSOCを50%に調整した状態で、交流振幅5mV、周波数範囲0.1Hz〜10kHzにて複素インピーダンス測定を行った。
以上の試験の結果を、図10に示す。同図のグラフh1は、第一時点における周波数と抵抗値との関係を示すボード線図であり、グラフh2は、蓄電素子200に放置試験を行った場合の第二時点における周波数と抵抗値との関係を示すボード線図であり、グラフh3は、蓄電素子200にサイクル試験を行った場合の第二時点における周波数と抵抗値との関係を示すボード線図である。また、グラフg2は、第二時点において蓄電素子200に一過性劣化試験を行った場合の周波数と抵抗値との関係を示すボード線図である。
図10に示すように、放置劣化を示す放置試験のグラフh2と、サイクル劣化を示すサイクル試験のグラフh3とは、一過性劣化を示す一過性劣化試験のグラフg2に比べ、高周波領域での抵抗値の上昇が大きい。これは、負極上への被膜の形成によって高周波領域での抵抗値が増加する傾向にあるが、一過性劣化は、負極上への被膜の形成が少ないため、高周波領域での抵抗値の増加が放置劣化及びサイクル劣化に比べて少ないからと考えられる。このため、低周波数領域における抵抗差増加量に対する高周波数領域における抵抗差増加量の比率である抵抗差増加量比率は、一過性劣化の方が放置劣化及びサイクル劣化に比べて小さくなる。
なお、図10に示すグラフは、複素インピーダンス測定によって得られるデータを参考にプロットしたボード線図であるが、劣化状態検出装置100は、3つの周波数における抵抗値を取得すればよく、これにより蓄電素子200の劣化状態を検出することができる。
具体的には、グラフg2の一過性劣化状態においては、第一時点において、第一抵抗R1a=651(mOhm、以下同様)、第二抵抗R1b=443及び第三抵抗R1c=397であったため、第一抵抗差A1=254、第二抵抗差A2=46となる。また、第二時点において、第一抵抗R2a=906、第二抵抗R2b=582及び第三抵抗R2c=521であったため、第一抵抗差B1=385、第二抵抗差B2=61となる。このため、第一抵抗差増加量C1=131、第二抵抗差増加量C2=15となり、抵抗差増加量比率D1=0.12となる。
また、グラフh2の放置劣化状態においては、第一時点において、第一抵抗R1a=73.0、第二抵抗R1b=54.8及び第三抵抗R1c=48.0であったため、第一抵抗差A1=25、第二抵抗差A2=6.8となる。また、第二時点において、第一抵抗R2a=91.4、第二抵抗R2b=71.1及び第三抵抗R2c=63.7であったため、第一抵抗差B1=27.7、第二抵抗差B2=7.4となる。このため、第一抵抗差増加量C1=2.7、第二抵抗差増加量C2=0.6となり、抵抗差増加量比率D2=0.22となる。
また、グラフh3のサイクル劣化状態においては、第一時点において、第一抵抗R1a=73.0、第二抵抗R1b=54.8及び第三抵抗R1c=48.0であったため、第一抵抗差A1=25、第二抵抗差A2=6.8となる。また、第二時点において、第一抵抗R2a=127.1、第二抵抗R2b=90.2及び第三抵抗R2c=79.5であったため、第一抵抗差B1=47.6、第二抵抗差B2=10.7となる。このため、第一抵抗差増加量C1=22.6、第二抵抗差増加量C2=3.9となり、抵抗差増加量比率D3=0.17となる。
このため、グラフh2の放置劣化及びグラフh3のサイクル劣化においては、判断部130は、抵抗差増加量比率D2(=0.22)及びD3(=0.17)が第一閾値P(=0.13)よりも大きいと判断し(S402でNo)、処理を終了する。
また、判断部130は、グラフg2の一過性劣化においては、抵抗差増加量比率D1(=0.12)が第一閾値P(=0.13)以下であると判断する(S402でYes)。
そして、判断部130は、抵抗差増加量比率が第一閾値以下であると判断した場合(S402でYes)、内部抵抗増加率が第二閾値以上であるか否かを判断する(S404)。つまり、判断部130は、算出部120が算出した蓄電素子200の内部抵抗の増加率である内部抵抗増加率Eが、検出用データ171に記憶されている第二閾値Q以上であるか否かを判断する。本実施の形態では、第二閾値Qは、130%であることとする。
ここで、グラフg2の一過性劣化における内部抵抗増加率E(=R2a/R1a)は、140%である。このため、判断部130は、内部抵抗増加率E(=140%)が第二閾値Q(=130%)以上であると判断し(S404でYes)、検出部140は、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出する(S406)。
なお、判断部130が、内部抵抗増加率が第二閾値よりも小さいと判断した場合(S404でNo)には、検出部140が蓄電素子200の一過性劣化状態を検出することなく、処理を終了する。
以上により、検出部140が一過性劣化状態を検出する処理(図4のS106)は、終了する。
以上のように、本発明の実施の形態に係る劣化状態検出装置100によれば、第一時点から第二時点までの第一抵抗差の増加量と、第一時点から第二時点までの第二抵抗差の増加量との関係を用いて、第二時点における蓄電素子200の劣化状態を検出する。ここで、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、当該関係を用いて、蓄電素子200が一過性劣化の状態であるか否かを検出することができることを見出した。そして、第一抵抗差とは、第一抵抗と第三抵抗との差であり、第二抵抗差とは、第二抵抗と第三抵抗との差である。そして、第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗は、第一周波数、第二周波数及び第三周波数に対応する信号を蓄電素子200に印加することによって得られる応答信号から求められるそれぞれの抵抗値であり、これらの抵抗値は短時間で取得することができる。つまり、劣化状態検出装置100は、蓄電素子200を第一周波数、第二周波数及び第三周波数に対応する信号を蓄電素子200に印加した場合の抵抗値をそれぞれ短時間で取得することで、蓄電素子200が一過性劣化の状態であるか否かを検出することができる。このため、劣化状態検出装置100は、時間を要することなく、蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを簡便に検出することができる。
また、劣化状態検出装置100は、第一抵抗差増加量に対する第二抵抗差増加量の比率が第一閾値以下であるか否かの判断結果から、第二時点における蓄電素子200の劣化状態を検出する。ここで、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、当該比率が所定の値以下の場合に、蓄電素子200が一過性劣化の状態になっていることを見出した。このため、劣化状態検出装置100は、当該比率が所定の値以下であるか否かを判断することで、蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを簡便に検出することができる。
また、本願発明者らは、鋭意検討と実験の結果、さらに、第一時点から第二時点までの蓄電素子200の内部抵抗の増加率が第二閾値以上である場合に、第二時点において蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出することができることを見出した。つまり、蓄電素子200の内部抵抗の増加率が所定の値以上である場合に、蓄電素子200が劣化していると判断することができるため、劣化状態検出装置100は、当該判断を行うことで、蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを簡便に検出することができる。
また、劣化状態検出装置100は、第一時点及び第二時点における第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得し、第一時点及び第二時点において第一抵抗差を算出することで第一抵抗差増加量を算出するとともに、第一時点及び第二時点において第二抵抗差を算出することで第二抵抗差増加量を算出する。このように、劣化状態検出装置100は、容易に、第一抵抗差増加量及び第二抵抗差増加量を算出することができるため、蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを簡便に検出することができる。
また、劣化状態検出装置100は、0.01〜10Hz、500〜5kHz及び5k〜50kHzの範囲内の周波数での抵抗値を、それぞれ第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗として取得する。これにより、劣化状態検出装置100は、容易に、第一抵抗、第二抵抗及び第三抵抗を取得することができるため、蓄電素子200に一過性劣化が生じていることを簡便に検出することができる。
また、劣化状態検出装置100は、蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出した場合に、蓄電素子200に対する充電または放電を一定期間停止させることで、一過性劣化を回復させることができるため、蓄電素子200の長寿命化を図ることができる。
図11は、本発明の実施の形態に係る第一制御部150が蓄電素子200の一過性劣化後に充放電を一定期間停止させた場合の抵抗値の推移を示す図である。同図に示すように、蓄電素子200に一過性劣化が生じた後に、蓄電素子200に対する充放電を一定期間停止(開回路状態で放置)させることで、一過性劣化で上昇した抵抗値を一過性劣化前の抵抗値に近づくように回復させることができている。
また、劣化状態検出装置100は、蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出した場合に、蓄電素子200に対して完全充電または完全放電を行うことで、一過性劣化を回復させることができるため、蓄電素子200の長寿命化を図ることができる。
以上、本発明の実施の形態に係る蓄電システム10及び劣化状態検出装置100について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、上記実施の形態では、検出部140は、第一抵抗差増加量に対する第二抵抗差増加量の比率が第一閾値以下であると判断された場合に、蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出することにした。しかし、検出部140は、第一抵抗差増加量と第二抵抗差増加量との差が所定の閾値以上(または以下)と判断された場合に、蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出することにしてもよい。
また、上記実施の形態では、検出部140は、蓄電素子200の内部抵抗の増加率が第二閾値以上であると判断された場合に、蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出することにした。しかし、検出部140は、当該判断を行うことなく、蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出することにしてもよいし、蓄電素子200の内部抵抗の増加量が所定の閾値以上であると判断された場合に、蓄電素子200が一過性劣化の状態であると検出することにしてもよい。
また、上記実施の形態では、第一周波数は、0.01〜10Hzの範囲内の周波数であり、第二周波数は、500〜5kHzの範囲内の周波数であり、第三周波数は、5k〜50kHzの範囲内の周波数であることにした。しかし、第一周波数、第二周波数及び第三周波数の値は、上記範囲からの多少の逸脱は許容される。
また、本発明は、このような蓄電システム10または劣化状態検出装置100として実現することができるだけでなく、劣化状態検出装置100に含まれる特徴的な処理部をステップとする劣化状態検出方法としても実現することができる。
また、本発明に係る劣化状態検出装置100が備える各処理部は、集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。例えば、図12に示すように、本発明は、取得部110、算出部120、判断部130、検出部140、第一制御部150及び第二制御部160を備える集積回路180として実現することができる。図12は、本発明の実施の形態に係る劣化状態検出装置100を集積回路で実現する構成を示すブロック図である。
なお、集積回路180が備える各処理部は、個別に1チップ化されても良いし、一部または全てを含むように1チップ化されても良い。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。
さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてあり得る。
また、本発明は、劣化状態検出方法に含まれる特徴的な処理をコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、当該プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−ROM、MO、DVD、DVD−ROM、DVD−RAM、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)、半導体メモリとして実現したりすることもできる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができるのは言うまでもない。
また、本発明は、上記の蓄電システム10を備える電動車両としても実現することができる。図13は、本発明の実施の形態に係る電動車両1の一例を示す図である。
電動車両1は、劣化状態検出装置100を備える蓄電システム10と、蓄電システム10を収容した車体本体20とを備えた移動体である。つまり、電動車両1は、蓄電システム10を電源として走行する電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)などの移動体であり、車体本体20の底部中央部分に蓄電システム10を備えている。
なお、蓄電システム10の配置位置は、車体本体20の底部中央部分には限定されず、車体本体20のフロント部分(前部)やリア部分(後部)などに配置されていてもかまわない。また、電動車両1は、蓄電システム10を複数備えていてもかまわない。また、電動車両1は、同図のような乗用車の他に、トラック、バス、二輪自動車もしくは電車などであってもよく、また、蓄電システム10を備えて移動するものであればその他どのような形態の移動体であってもかまわない。