JP2015025185A - ホーロー物品およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 基材と釉薬層との間の良好な密着性、良好な外観品位を実現可能なホーロー物品の提供。【解決手段】 基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品であって、前記基材が鋳鉄であり、前記釉薬層を、前記基材表面から前記釉薬層の厚みの半分の位置にある中間線によって、釉薬層の基材側の領域と釉薬層の表面側の領域とに分けたとき、前者に含まれる気泡の面積と、後者に含まれる気泡の面積との比が0:100以上40:60以下である、ホーロー物品。【選択図】図1

Description

本発明は、基材として鋳鉄を用い、この鋳鉄上に釉薬層を形成してなるホーロー物品に関する。
金属材料表面に釉薬層が形成されたホーロー物品は、浴槽、洗面器、手洗い器、シンク等の水回り製品として広く市場に流通している。また、高級志向の顧客層において、金属の頑丈さとガラスの高級感とを併せもった水回り製品、好ましくは大型の水回り製品(例えば、浴槽)の需要がある。ホーロー物品の基材としては鋼板および鋳物が広く知られており、また基材へ釉薬を施釉する方法としては乾式法および湿式法が知られている。さらに、加熱により基材が含む成分に起因した気泡の発生があり、ホーロー物品の外観等に悪影響を与えないようこの気泡を制御することが必要とされていた。この気泡への配慮は、鋳鉄において特に必要となるとされていた。
特開平1−219040号公報(特許文献1)には、ホーロー層中に発生する泡の原因となる炭酸ガスと水素ガスの作用を抑制することが記載されている。この文献には、炭酸ガスの発生を抑制するために、基材中に含まれているカーボンを少なくすること、水素ガスの発生を抑制するために、基材表面に金属メッキを施すことが記載されている。
また、特開平3−150371号公報(特許文献2)には、基材として鉄を用いた場合、鉄に含まれる炭素と釉薬中の水が反応して水素ガスや炭酸ガスを発生し、これが釉薬層中や表面に気泡として生じることが記載されている。そして、この気泡が割れたり、ピンホールとして残るため、表面の平滑が損なわれるとされている。この特許文献では、鉄を釉薬の軟化開始温度以上に予熱し、その上に釉薬を溶射することで、気泡の影響を抑制できるとしている。
特開平1−219040号公報 特開平3−150371号公報
基材として鋳物を用いると、鋳物に炭素が多く含まれるため、鋳物から発生する気泡の量が多い。よって、気泡による釉薬層への悪影響を抑えるため、1.0〜2.0mm程度の釉薬層の厚みが必要となる。一方、基材として鋼板を用いると、炭素の含有量が少ないため気泡の影響を受けにくいが、鋼板は厚みが薄く、ホーロー物品として重厚感に欠けるため、水回り製品として好ましくない。
基材として鋳物を用いた場合、乾式法により釉薬を施釉すると、釉薬層の厚みが1.2〜2.0mmとなるため、意匠面での制約を受ける。一方、湿式法により釉薬を施釉すると、薄い釉薬層を形成することは可能であるが、気泡が釉薬層と基材の密着性や釉薬層表面の外観に影響を及ぼすという問題があった。
本発明者らは、今般、基材として鋳物を用いた場合であっても、釉薬層において気泡の分布状態を制御することにより、ホーロー物品の釉薬層の表面における気泡の影響を抑えることが出来るとの知見を得た。また、ホーロー物品の基材と釉薬層との界面における気泡の影響を抑えることが出来るとの知見を得た。本発明は斯かる知見に基づくものである。
従って、本発明は、基材と釉薬層との間の良好な密着性、良好な外観を有するホーロー物品の提供をその目的としている。
そして、本発明によるホーロー物品は、基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品であって、前記基材が鋳鉄であり、前記釉薬層を、前記基材表面から前記釉薬層の厚みの半分の位置にある中間線によって、釉薬層の基材側の領域と釉薬層の表面側の領域とに分けたとき、前者に含まれる気泡の面積と、後者に含まれる気泡の面積との比が0:100以上40:60以下であるものである。
本発明の一つの態様によれば、本発明によるホーロー物品は、前記釉薬層の厚みが、0.1mm以上1.0mm以下である。
本発明の一つの態様によれば、本発明によるホーロー物品は、前記釉薬層の厚みが0.2mm以上であり、かつ、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.1mmまでの領域に含まれる気泡の面積の割合が、釉薬層全体に含まれる気泡の面積に対して35%以下である。
本発明の一つの態様によれば、本発明によるホーロー物品は、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域における焼成後の組成が、SiO>55重量%である。
本発明の一つの態様によれば、本発明によるホーロー物品は、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域に含まれる未溶解状態のSiOの面積の割合が、当該領域の全面積に対して15%〜70%である。
本発明によれば、基材と釉薬層との間の良好な密着性、良好な外観を有するホーロー物品を実現できる。
本発明によるホーロー物品の試片切断面のレーザー顕微鏡写真を示す。また、この画像中に、釉薬層と基材との界面を、直線近似した線で示した基準線を示す。 釉薬層表面における黒色欠点の有無およびその様子を評価するための顕微鏡写真を示す。 本発明によるホーロー物品の試片切断面のレーザー顕微鏡写真を示す。また、この画像中に下釉層を示す。 走査型電子顕微鏡(SEM)にて取得した反射電子像を示す(左端図)。また、下釉層中に含まれる未溶解状態のSiO量を測定するための、前記反射電子像をEDX(エネルギー分散型X線分光法)にて分析したSi元素およびO元素マッピングの様子を示す(中央図、右端図)。
ホーロー物品
本発明によるホーロー物品は、基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品であって、前記基材が鋳鉄である。また、前記釉薬層を、前記基材表面から前記釉薬層の厚みの半分の位置にある中間線によって、釉薬層の基材側の領域と釉薬層の表面側の領域とに分けたとき、前者に含まれる気泡の面積と、後者に含まれる気泡の面積との比が0:100以上40:60以下であるものである。釉薬層に含まれる気泡の分布状態をこのように制御することにより、基材として鋳物を用いた場合であっても、ホーロー物品表面における気泡の影響を抑えることが可能となり、優れた外観品位を実現することができる。また、基材と釉薬層との界面における気泡の影響を抑えることが可能となり、優れた密着性を実現することができる。気泡の面積比の好ましい範囲は、10:90以上40:60以下である。
気泡
本発明において、制御の対象となる「気泡」とは、実際に釉薬層に含まれている気泡をすべて包含するものとする。例えば、基材である鋳鉄に含まれている成分(例えば、炭素)が焼成時に釉薬層および/または外界に存在している水や酸素などと反応することによって発生する二酸化炭素や水素などのガスが、釉薬層内に至り気泡となるものを含む。この気泡は、例えば基材上に釉薬層を形成する際に発生し、釉薬層内に存在していると考えられるが、これ以外の機構で発生し、釉薬層内に至ることとなった気泡も含む。
釉薬層に含まれる気泡の面積は、以下の方法で算出する。すなわち、レーザー顕微鏡(例えば、光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて釉薬層の鏡面研磨した断面を観察し、画像を得る。得られた画像を画像解析ソフト(例えば、WINROOF ver6.5.1、MITANI CORPORATION社製)を用いて釉薬層に含まれる気泡量の測定を行う。画像において、基材表面と比較して凹部を気泡とし、凹部とそれ以外の部分を二値化処理する。その後、凹部の面積を算出することで、釉薬層に含まれる気泡の面積を算出する。
基材
本発明によるホーロー物品の基材は、鋳鉄であることを特徴とする。「鋳鉄」とは、鉄(Fe)、炭素(C)及びケイ素(Si)を主成分とする鋳物を意味する。また、鋳鉄は、鉄を主成分とし、炭素を2.14〜6.67パーセント含むFe−C系合金であれば、鋳鉄に含まれる各成分の量、その他の組成は特に限定されない。
釉薬層
本発明によるホーロー物品は、基材上に釉薬層が形成されてなる。本発明において、釉薬層は単層でも良く、また複層でも良い。釉薬層が複層からなる場合、釉薬層は、基材である鋳鉄上に形成される下釉層と、当該下釉層上に形成される上釉層を含むのが好ましい。本発明によるホーロー物品の釉薬層の厚みは、0.1mm以上1.0mm以下とすることができる。より好ましい釉薬層の厚みは、0.2mm以上0.6mm以下である。
釉薬層の厚みは、以下の方法で算出する。すなわち、レーザー顕微鏡(例えば、光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて、釉薬層の鏡面研磨した断面を観察し、基材と釉薬層が収まるように画像を取得する。取得した画像における釉薬層と基材との界面を直線近似した基準線を設け、基準線から釉薬層表面までの垂直方向の距離の最小値を釉薬層の厚みとする。
本発明の一つの態様によれば、本発明によるホーロー物品は、前記釉薬層の厚みが0.2mm以上であり、かつ、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.1mmまでの領域に含まれる気泡の面積の割合が、釉薬層全体に含まれる気泡の面積に対して35%以下とされる。基材と釉薬層の界面付近に存在する気泡量を少なくすることにより、基材と釉薬層の接触面積を大きくすることが可能となり、基材と釉薬層との間の密着性を高めることができる。また、より好ましくは、釉薬層の厚みが0.2mm以上であり、かつ、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域に含まれる気泡の面積の割合が、釉薬層全体に含まれる気泡の面積に対して20%以下とされる。ここで、「基材表面から釉薬層の表面方向に0.1mm(0.05mm)までの領域」とは、上述した基準線から釉薬層の表面方向に0.1mm(0.05mm)までの領域を意味する。
本発明によるホーロー物品にあっては、基材と釉薬層との間の密着力が150g/cm以上であることが好ましく、200g/cm以上であることがより好ましい。本発明のホーロー物品は、基材と釉薬層の界面付近に存在する気泡量が少ないため、基材と釉薬層の密着力が高いホーロー物品を得ることができる。この密着力は以下のように測定することが可能である。すなわち、ホーロー物品の釉薬層表面とこれと反対側の基材面に接着剤(例えば、ボンドE250 コニシ株式会社製)を塗布する。ホーロー物品の接着剤塗布面それぞれにフック付き治具を接着させる。この際、ホーロー物品の各接着剤塗布面と、ホーロー物品の接着剤塗布面と同様の大きさを有するフック付き治具の接着面とを接着させる。これらを接着させた後、オートグラフ(例えば、AG−5000B、島津製作所社製)でひっぱり試験を行う。ひっぱりの速度を適宜調整し、釉薬層と基材が剥離したときの力をそのホーロー物品がもつ密着力とする。
また、本発明によるホーロー物品は、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域における焼成後の組成が、SiO>55重量%、より好ましくはSiO>60重量%であることが好ましい。ここで、「基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域」とは、上述した基準線から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域を意味する。この領域にSi0が上記範囲で相対的に多く含まれることによって、焼成後の界面付近に未溶解状態のSiOが存在している領域を多く残すことができる。ここで、「未溶解状態のSiO」とは、焼成後において溶解せずに固体を維持している粒状のSiOを意味する。
また、本発明の好ましい態様によれば、焼成後の界面付近に相対的に多く存在する未溶解状態のSiOの量としては、本発明によるホーロー物品における、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域に含まれる未溶解状態のSiOの面積の割合が、当該領域の全面積に対して15%〜70%とされ、より好ましくは30%〜60%とされる。
上記のとおり、前記領域にSi0が多く含まれることによって、焼成後の界面付近に未溶解状態のSiOが存在している領域を多く残すことができる。これにより、釉薬層の気泡分布制御が以下のようになされるものと考えられるが、本発明はこの作用機序に限定されるものではない。
焼成後の界面付近に未溶解状態のSiOが存在している領域を多く残すことにより、未溶解状態のSiOにより形成される空間ができると考えられる。この空間が発生した気泡をその浮力により動き易くし、釉薬層の基材側の領域よりも釉薬層の表面側の領域に導き、界面付近に気泡が溜まらないようにすることができると思われる。
一方、発生した気泡は上昇こそするが、前記領域に未溶解状態のSiOが多く存在しているため、この領域に形成された空間を通過し上昇してきた気泡は、通過の度に気泡の粒径が小さくなり、浮力が小さくなるものと思われる。これにより、気泡の上昇スピードは徐々に弱くなり、最終的に気泡が釉薬層表面にまでは至らないようにすることができるものと思われる。その結果、気泡による釉薬層表面の凹凸を防ぐことができる。未溶解状態のSiOは、気泡を良好にトラップ可能とする観点から、粒径が1〜50μmであることが好ましい。
本発明の好ましい態様によれば、本発明によるホーロー物品の釉薬層の表面粗さは、0<Wd≦60である。このような表面粗さにすることで、触ったとき釉薬層表面の凹凸を感じなくすることができる。より好ましい釉薬層の表面粗さは、0<Wd≦50である。ここで、「Wd値」とは、BYKガードナー社(ドイツ国)製のマイクロウェーブスキャン(DOI、オレンジピール)測定装置により測定されるWd値を意味する。この装置は、試料表面を人間の目のように光学的に波長の明/暗パターンを測定する方法として知られている。このマイクロウェーブスキャンは、レーザーの点光源が試料表面に対する垂線から60°傾いた角度でレーザー光を照射し、検出器が前記垂線に対して反対の同角度の反射光を測定する。この装置は、レーザーの点光源を塗装試料面の上を移動させてスキャンすることで、反射光の明/暗を決められた間隔で一点ずつ測定し、試料表面の光学的プロファイルを検出できる。検出された光学的プロファイルは、周波数フィルターを通してスペクトル解析して、試料表面のストラクチャーを解析することができる。この装置の特性スペクトルは次のとおりである。
du:波長0.1mm以下;Wa:波長0.1〜0.3mm;Wb:波長0.3〜1mm;Wc:波長1〜3mm;Wd:波長3〜10mm;Sw:波長0.3〜1.2mm;Lw:波長1.2〜12mm;DOI:波長0.3mm以下
本発明によるホーロー物品の好ましい釉薬層は、SiOを主成分とし、その他の成分として、Al、B、NaO、KO、LiO、CaO、ZnO、MgO、BaO、CaF、NaSiF、KSiF、F、P、TiO、Co、NiO、MnOおよびZrOからなる群のいずれかまたはこれらの組合せを含むものである。
また、本発明によるホーロー物品の釉薬層は、RO(R=Si)を30重量%以上80重量%以下含むことが好ましいが、この他に、RO(R=Na、K)を0重量%以上30重量%以下、RO(R=Ca、Zn、Mg、Ba)を0重量%以上15重量%以下、そしてR(R=Al)を0重量%以上30重量%以下含むことがより好ましい。ここで本明細書において、RO(R=Na、K)とは、NaOおよびKOからなる群から選択される一種または二種以上の酸化物を意味し、RO(R=Ca、Zn、Mg、Ba)とは、CaO、ZnO、MgOおよびBaOからなる群から選択される一種または二種以上の酸化物を意味する。また、その他の成分を適宜選択して釉薬層に含ませることもできる。
以下、釉薬層が、基材である鋳鉄上に形成される下釉層と、該下釉層上に形成される上釉層を含む、複層である場合の態様について説明する。
本発明の一つの態様によれば、本発明によるホーロー物品は、釉薬層が、基材である鋳鉄上に形成される下釉層と、該下釉層上に形成される上釉層を含み、かつ、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域における焼成後の組成が、SiO>55重量%、より好ましくはSiO>60重量%であることが好ましい。この領域にSi0が上記範囲で相対的に多く含まれることによって、焼成後の界面付近に未溶解状態のSiOが存在している領域を多く残すことができる。また、本発明の好ましい態様によれば、焼成後の界面付近に相対的に多く存在する未溶解状態のSiOの量としては、本発明によるホーロー物品における、前記基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域に含まれる未溶解状態のSiOの面積の割合が、当該領域の全面積に対して15%〜70%とされ、より好ましくは30%〜60%とされる。前記領域にSi0が多く含まれることによって、焼成後の界面付近に未溶解状態のSiOが存在している領域を多く残すことができ、これにより釉薬層の気泡分布制御がなされる作用機序は既に説明したとおりである。
ここで、釉薬層が、基材である鋳鉄上に形成される下釉層と、当該下釉層上に形成される上釉層を含む場合、「基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域」には、下釉層のみが存在する場合や、下釉層と上釉層の一部とが存在する場合が包含される。未溶解の状態のSiOが下釉層に多く含まれる場合、下釉層の表面、つまり上釉層と下釉層との界面が粗くなることが有る。このような場合においては、基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域には、下釉層と上釉層とが混在する。
下釉層
本発明にあっては、下釉層は、以下の方法により特定する。すなわち、レーザー顕微鏡(例えば、光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて、釉薬層の鏡面研磨した断面を観察し、基材と釉薬層が収まるように画像を取得する。取得した画像において、基材上に形成されている黒い層を下釉層と特定する。
本発明の一つの態様によれば、下釉層は、RO(R=Si)を55重量%以上80重量%以下含むことが好ましく、さらにRO(R=K、Na)を0重量%以上20重量%以下、RO(R=Ca、Zn、Mg、Ba)を0重量%以上15重量%以下、R(R=Al)量を0重量%以上30重量%以下含むことがより好ましい。さらにより好ましくは、RO(R=Si)を60重量%以上80重量%以下含む。このような範囲であることにより、焼成後の基材と釉薬層の界面付近に未溶解状態のSiOが存在している領域を多く残すことができる。このことによる釉薬層での気泡分布制御の作用機序は既に説明したとおりである。下釉層は未溶解状態のSiOを多く含むものであることが好ましいが、その割合は15〜70重量%の範囲であることがより好ましい。さらにより好ましい範囲は30~60重量%である。また、基材表面から下釉層と上釉層の境界面方向に0.05mmまでの領域に含まれる未溶解状態のSiOの面積の割合が、当該領域の全面積に対して15%〜70%であることが好ましく、30%〜60%であることがより好ましい。また、未溶解状態のSiOは、気泡を良好にトラップ可能とする観点から、粒径が1〜50μmであることが好ましい。
下釉層の厚みは、0.02mm以上0.4mm以下であることが好ましい。このような厚みとすることで、シャープな形状であってもクラックを生じることなく、釉薬層を形成することができる。より好ましい下釉層の厚みは、0.05mm以上0.1mm以下である。
下釉層の厚みは、以下の方法で算出する。すなわち、レーザー顕微鏡(例えば、光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて、釉薬層の鏡面研磨した断面を観察し、基材と釉薬層が収まるように画像を取得する。取得した画像において、色により、基材と下釉層と上釉層とに分ける。釉薬層と基材との界面を直線近似した基準線を設け、基準線から下釉層と上釉層の界面までの垂直方向の距離の最小値を下釉層の厚みとする。
上釉層
本発明にあっては、上釉層は、以下の方法により特定する。すなわち、レーザー顕微鏡(例えば、光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて、釉薬層の鏡面研磨した断面を観察し、基材と釉薬層が収まるように画像を取得する。取得した画像において、上述のように特定した下釉層の上に形成されている層を上釉層と特定する。
本発明の一つの態様によれば、上釉層は、RO(R=Si)量が30重量%以上70重量%以下であることが好ましく、さらにRO(R=K、Na)量が5重量%以上30重量%以下であり、RO(R=Ca、Zn、Mg、Ba)量が0重量%以上15重量%以下であり、R(R=Al)量が0重量%以上30重量%以下であることがより好ましい。また、その他の成分を適宜選択して上釉層に含ませることもできる。このような範囲とすることにより、上釉層が下釉層に溶解しやすくなり、平滑な表面を得ることができる。
本発明の好ましい態様によれば、上釉層の融点が、500℃〜750℃であることが好ましく、より好ましくは550〜650℃である。融点をこのような範囲とすることで、上釉成分が下釉層内に入り込み、下釉層内にトラップされた気泡を上釉層内に浮き上がらせることができる。これにより、下釉層に含まれる気泡の面積よりも上釉層に含まれる気泡の面積が広くなるように釉薬層の気泡分布状態を制御することができる。また、基材である鋳鉄と釉薬層との界面におけるこれらの接触面積が大きくなり、基材と釉薬層との密着力を向上させることができる。
本発明の好ましい態様によれば、上釉層の厚みは、0.08mm以上0.6mm以下であることが好ましい。このような厚みとすることで、シャープな形状であってもクラックを生じることなく、釉薬層を形成することができる。より好ましい上釉層の厚みは、0.15mm以上0.5mm以下である。
ここで、上釉層の厚みは、上述した釉薬層の厚みから上述した下釉層の厚みを引くことにより算出する。
ホーロー物品の用途
本発明のホーロー物品は好ましくは浴槽、シンク、洗面器、手洗い器等の水回り物品とされる。より好ましくは、大型の水回り物品、とりわけ浴槽とされる。
ホーロー物品の製造方法
本発明のさらなる態様において、本発明にあっては、上述した本発明によるホーロー物品の製造方法が提供される。すなわち、本発明は、基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品の製造方法であって、基材を準備する工程と、釉薬層を形成するためのスラリーを準備する工程と、前記スラリーを基材に適用する工程と、前記スラリーを適用した基材を700〜900℃で焼成する工程とを少なくとも含んでなる方法を提供する。
本発明のホーロー物品の製造方法をその工程ごとに以下に説明する。なお、本明細書において既にホーロー物品を説明するのに記載した事項はすべて以下の製造方法の説明においてもそのまま適用されるものである。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、まず基材である鋳鉄を準備する。この準備の工程においては、基材の前処理として、基材表面の気泡の原因となる付着物(砂や黒鉛)を除くためショットブラスト、サンドブラスト、熱処理を行うことが好ましい。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、次に、釉薬層を形成するためのスラリーを準備する。釉薬層を形成するためのスラリーの原料としては、ガラスフリットに加えて、粘土、石英、ホウ酸、炭酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等からなる群から選択される一種または二種以上を、水等の溶媒に混合したものを用いることができる。ガラスフリットとしては、SiO、B、Al、KO、CaO、TiO、Fe、ZnO、P等からなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。ガラスフリットは、少なくともSiOを30重量%以上含むものであることが好ましい。スラリーは、上記した原料を混合し、ボールミル等公知の装置を用いて準備することができる。その際、基材である鋳鉄に適用し易くするために、水分量を調節することも好ましい。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、次に、先の工程で準備したスラリーを基材に適用する。その方法として、好ましくは湿式法を用いることができる。これにより、厚み1mm以下の薄い釉薬層を均一に適用することができる。スラリーの適用方法の例としては、ディッピング、かけ流し法(フローリング)、スクリーン印刷やスプレーがけ法を挙げることができる。また、予め鋳鉄を空焼きしてガス抜きをすることが好ましい。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、次に、スラリーを適用した基材を焼成する。焼成温度としては、700〜900℃が好ましく、より好ましくは、750〜850℃である。焼成温度をこのような温度にすることにより、釉薬層中に発生した気泡の上昇スピードを弱め、最終的に気泡が釉薬層表面にまでは至らないようにすることができる。これにより、釉薬層の基材側の領域に含まれる気泡の面積と、釉薬層の表面側の領域に含まれる気泡の面積との比が0:100以上40:60以下である釉薬層を含むホーロー物品を得ることが可能となる。その結果、基材と釉薬層とのこれら界面を介した優れた密着性を得ることができるホーロー物品を得ることが可能となる。
なお、前記焼成の工程の前に基材に適用したスラリーを乾燥させるための乾燥する工程を設けても良い。乾燥の方法には、加熱乾燥、風乾のいずれかまたは複数を選択できる。
また、本発明のさらなる一つの態様において、本発明にあっては、前記釉薬層が下釉層および上釉層を含むものである、ホーロー物品の製造方法であって、基材を準備する工程と、前記下釉層を形成するためのスラリーを準備する工程と、前記下釉層を形成するためのスラリーを基材に適用する工程と、前記下釉層を形成するためのスラリーを適用した基材を700〜900℃、好ましくは750〜850℃で焼成する工程と、前記上釉層を形成するためのスラリーを準備する工程と、前記上釉層を形成するためのスラリーを下釉層に適用する工程と、前記上釉層を形成するためのスラリーを下釉層に適用した基材を760〜890℃、好ましくは800〜850℃で焼成する工程とを少なくとも含んでなる方法が提供される。
前記釉薬層が下釉層と上釉層を含むものであるホーロー物品の前記製造方法をその工程ごとに以下に説明する。なお、本明細書において既にホーロー物品、釉薬層を有するホーロー物品の製造方法を説明するのに記載した事項はすべて以下の製造方法の説明においてもそのまま適用されるものである。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、まず、基材である鋳鉄を準備する。基材は、既に説明した基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品の製造方法と同様の方法にて、準備することができる。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、次に下釉層を形成するためのスラリー(以下、「下釉層用スラリー」ともいう)を準備する。下釉層を形成するためのスラリーの原料としては、上記した釉薬層を形成するためのスラリーの原料と同じものを用いることができるが、好ましくは例えば、ガラスフリット、粘土、石英、ホウ酸、炭酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウムおよび水からなる混合物を用いることができる。下釉層用ガラスフリットとしては、上述したガラスフリットと同じものを用いることができるが、好ましくは例えば、SiO、B、Al、KO、CaO、TiO、FeおよびZnOからなる混合物を用いることができる。下釉層用ガラスフリットは、少なくとも70重量%以上のSiOを含むものであることが好ましい。スラリーは、上記した原料を混合し、ボールミル等公知の装置を用いて準備することができる。その際、基材である鋳鉄に適用し易くするために、水分量を調節することも好ましい。下釉層を形成するためのスラリーは、好ましくは、フリットや珪砂や粘土及び溶媒などを混合しボールミルで湿式粉砕を行い準備することができる。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、次に、先の工程で準備した下釉層を形成するためのスラリーを基材に適用する。その方法として、好ましくは湿式法を用いることができる。スラリーの適用方法の例としては、ディッピング、かけ流し法(フローリング)、スクリーン印刷やスプレーがけ法を挙げることができる。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、次に、下釉層を形成するためのスラリーを適用した基材を焼成する。焼成温度は700〜900℃、より好ましくは750〜850℃である。このような焼成温度とすることにより、下釉層を一部溶融させずに気泡のトラップ層として機能させることができる。
なお、前記焼成の工程の前に基材に適用したスラリーを乾燥させるための乾燥する工程を設けても良い。乾燥の方法には、加熱乾燥、風乾のいずれかまたは複数を選択できる。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、前記下釉層上に上釉層を形成するためのスラリーを準備する。上釉層を形成するためのスラリー(以下、「上釉層用スラリー」ともいう)の原料としては、上記した釉薬層を形成するためのスラリーの原料と同じものを用いることができるが、好ましくは例えば、ガラスフリット、粘土、亜硝酸ナトリウムおよび水からなる混合物を用いることができる。上釉層用ガラスフリットとしては、上述したガラスフリットと同じものを用いることができるが、好ましくは例えば、SiO、Al、KO、TiO、ZnOおよびPからなる混合物を用いることができる。上釉層用ガラスフリットは、70重量%未満のSiOを含むものであることが好ましい。上釉層を形成するためのスラリーは、好ましくは、フリットをそのまま乾式ボールミルや振動ミルに入れて粉砕するか、下釉層と同様に湿式粉砕を行い準備することができる。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、次に、先の工程で準備した上釉層を形成するためのスラリーを下釉層に適用する。その方法として、好ましくは湿式法を用いることができる。スラリーの適用方法の例としては、ディッピング、かけ流し法(フローリング)、スクリーン印刷やスプレーがけ法を挙げることができる。
本発明のホーロー物品の製造方法においては、次に、上釉層を形成するためのスラリーを下釉層に適用した基材を焼成する。焼成温度は760〜890℃、より好ましくは800〜850℃である。このような焼成温度とすることにより、上釉層が下釉層に溶融し、釉薬層表面の凹凸を減らすことができる。また、下釉層の焼成温度と上釉層の焼成温度との差は100℃未満であることが好ましい。
なお、前記焼成の工程の前に基材に適用したスラリーを乾燥させるための乾燥する工程を設けても良い。乾燥の方法には、加熱乾燥、風乾のいずれかまたは複数を選択できる。
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
実施例1〜4、および比較例1および2
(基材の準備)
100mm×100mmの鋳鉄製の板状試験片を準備した。前処理として、表面に金属光沢が生じるまでサンドブラスト処理を行った。
(下釉層用スラリーの調製)
表1に示すガラスフリット1000g、粘土90g、石英100g、ホウ酸10g、炭酸ナトリウム15g、亜硝酸ナトリウム3g、NaAlO3g、および水600gをボールミルに投入し3時間粉砕を行った。得られたスラリーを密度が1.5〜1.6g/cmとなるように水分調整して、下釉層用スラリーとした。
(上釉層用スラリーの調製)
表2に示すガラスフリット1000g、粘土60g、亜硝酸ナトリウム2g、および水500gをボールミルに投入し4時間粉砕を行った。得られたスラリーを密度が1.6〜1.7g/cmとなるように水分調整して、上釉層用スラリーとした。
(ホーロー試片の作製)
100mm×100mmの鋳鉄製の板状試験片に下釉層用スラリーをスプレーガンにて湿式施釉し、1時間乾燥した。その後、トンネル窯を用いてトンネル窯の中央部の最高到達点が表3に記載の下釉層焼成温度となるよう90分間焼成し、焼成後は室温に戻るまで放置した。次に、この下釉層の上に、上釉層用スラリーをスプレーガンにて湿式施釉し、トンネル窯の中央部の最高到達点が表3に記載の上釉層焼成温度となるよう60分間焼成し、焼成後は室温に戻るまで放置し、目的のホーロー試片を得た。
(レーザー顕微鏡による画像の取得)
得られたホーロー試片を切断し、断面を鏡面研磨し、試験用サンプルを準備した。この試験用サンプルをレーザー顕微鏡(光学測定装置LEXTOLS4000、OLYMPUS社製)を用いて観察した。(対物レンズ20倍、レーザー観察;図1参照)。観察領域として基材と釉薬層が収まるように0.5mm×2mmの画像を取得した。取得した画像における釉薬層と基材との界面を直線近似した基準線を設けた。
(釉薬層の厚みの測定)
上記のレーザー顕微鏡で得られた画像における釉薬層の厚みを測定した。釉薬層の厚みは表4に示されるとおりであった。釉薬層の厚みは基準線から釉薬層表面までの垂直方向の距離の最小値とした。
(気泡量測定1)
画像解析ソフト(WINROOF ver6.5.1、MITANI CORPORATION社)を用いて釉薬層に含まれる気泡量の測定を行った。測定には上記のレーザー顕微鏡で得られた画像を用いた。基材表面と比較し凹部を気泡として、二値化処理により選択し、形状特徴コマンドにより面積を取得した。釉薬層を、基材表面から釉薬層の厚みの半分の位置にある中間線によって、釉薬層の基材側の領域と釉薬層の表面側の領域とに分けたときの、釉薬層の基材側の領域に含まれる気泡の面積と、釉薬層の表面側の領域に含まれる気泡の面積との比を求めた。ここで、「中間線」とは、基準線から釉薬層の表面を直線近似した線までの長さを100としたとき、基準線から50に相当する位置にある線を意味する。結果は表3に示されるとおりであった。
(気泡量測定2)
画像解析ソフト(WINROOF ver6.5.1、MITANI CORPORATION社)を用いて釉薬層に含まれる気泡量の測定を行った。測定には上記のレーザー顕微鏡で得られた画像を用いた。基材表面と比較し凹部を気泡として、二値化処理により選択し、形状特徴コマンドにより面積を取得した。釉薬層全体に含まれる気泡の面積に対し、基準線から釉薬層の表面方向に0.05mmおよび0.1mmまでの各領域に含まれる気泡の面積の割合をそれぞれ下記式にて求めた。結果は表4に示されるとおりであった。
・基準線から0.05mmまでの領域に含まれる気泡の割合(%)=
(基準線から0.05mmまでの領域に含まれる気泡の面積)÷(釉薬層全体に含まれる気泡の面積)×100
・基準線から0.1mmまでの領域に含まれる気泡の割合(%)=
(基準線から0.1mmまでの領域に含まれる気泡の面積)÷(釉薬層全体に含まれる気泡の面積)×100
(密着試験)
得られたホーロー試片を3cm×3cmに切断してサンプルを準備した。このサンプルの釉薬層表面の全面と、これと反対側の基材面の全面に接着剤(ボンドE250 コニシ株式会社製)を塗布した。接着剤塗布面それぞれに接着面が3cm×3cmのフック付き治具を接着し、一晩放置して十分に接着させた後、オートグラフ(AG−5000B、島津製作所社製)でひっぱり試験を行った。ひっぱりの速度は毎分1mmとし、釉薬層と基材が剥離したときの力をそのホーロー試片がもつ密着力(g/cm)として評価した。なお、釉薬層と基材との界面以外で剥がれたものに関しては、本試験の目的とは異なるためデータから除外した。例えば、サンプル準備のためホーロー試片を切断した時に入ったクラックがもとで釉薬層内割れが起きたものや、治具とホーロー試片を接着している接着剤部分が剥がれたものを対象から除外した。結果は表4に示されるとおりであった。
(外観評価1)
実施例3と比較例2のサンプルについて、外観評価を行った。すなわち、サンプルの表面を目視により評価を行った。表面の写真を図2に示す。その結果、実施例3のサンプルでは、黒色欠点が見られなかったのに対し、比較例2のサンプルでは多数の黒色欠点が見られた。なお、「黒色欠点」とは、焼成中に発生した気泡が釉薬層表面で弾けた際に釉薬層表面に形成される穴であって、この穴に釉薬が流れ込まないうちに冷え固まったものを意味する。
(外観評価2)
釉薬層表面の外観を示す指標として、得られたホーロー試片の釉薬層表面において、任意の2cm×2cmの面積にある黒色欠点の数を測定した。結果は表4に示されるとおりであった。
実施例5、および比較例3
下釉層用ガラスフリットを表5に示す組成とし、下釉層の焼成時間を60分とした以外は実施例3と同様にホーロー試片を作製した。なお、表5には参照として実施例3の下釉層用ガラスフリットの組成も示した。
(釉薬層の厚みの測定)
得られたホーロー試片を切断し、断面を鏡面研磨し、試験用サンプルを準備した。この試験用サンプルについて、レーザー顕微鏡を用いて画像を取得し、上述と同様の方法にて、この画像における釉薬層の厚みを測定した。膜厚は表8に示されるとおりであった。
(焼成後の下釉層の組成の測定)
上記実施例3、5および比較例3のサンプルについて、以下の方法にて下釉層の組成を算出した。すなわち、レーザー顕微鏡を用いて得られた画像における下釉層(図3参照)の組成を、環境制御型走査電子顕微鏡(SEM−Quanta、島津製作所社製)にて反射電子像を取得し(条件は加速電圧10kV、倍率1000倍とした;図4参照)、得られた反射電子像をEDS(エネルギー分散型X線分析装置)(Noran System7、島津製作所社製)に取り込み、Point&shootモードを用いて算出した。
(EDSによる下釉層の組成の算出方法)
元素の設定:あらかじめ定性分析を行い、入っていると考えられる全ての元素を「常に同定」に設定し、それ以外を「非選択」とし元素マッピング像を得た(図4)。
分析の設定:スペクトル収集→サムピークの除去、エスケープピークの除去→自動定量の流れで解析を行った。
得られた原子量(重量%)の中から、酸素と鋳鉄の主成分であるFeおよびCを除き、残りの成分を酸化物の重量に換算した。得られた酸化物の質量(重量%)を合計100重量%となるように計算し、基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域(下釉層の領域の範囲内)に含まれる成分を算出した。ここで、「基材表面から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域」は、基準線から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域とした。結果は表6に示されるとおりであった。
(凹凸評価)
焼成後の下釉層の組成が異なる実施例3、5及び比較例3のサンプルについて、組成の差異による各サンプルの釉薬層表面の凹凸状態を目視にて以下のとおり評価した。すなわち、各サンプルの釉薬層表面において、任意の1cm×1cmの面積にある黒色欠点の数を測定した。結果は表6に示されるとおりであった。
(未溶解状態のSiO量の算出)
実施例3、5及び比較例3のサンプルについて、基材表面から0.05mmまでの領域(下釉層の領域の範囲内)に含まれる未溶解状態のSiO量を算出した。EDSによる下釉層の組成の算出方法で得た元素マッピング像を解析し、Siの元素量(重量%)とOの元素量(重量%)の合計が90重量%以上となる部位を未溶解状態のSiOとした。画像解析ソフト(WINROOF ver6.5.1、MITANI CORPORATION社)の二値化処理で未溶解状態のSiO部分を選択し、形状特徴コマンドにより面積比率を取得した。なお、下記の式により未溶解状態のSiO量を算出した。結果は表6に示されるとおりであった。
・未溶解状態のSiO量(%)=(基準線から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域に含まれる未溶解状態のSiOの面積)÷(基準線から釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域の全面積)×100。
(気泡量測定1)
実施例5及び比較例3のサンプルについて、上述した気泡量測定1と同様の方法にて、気泡の面積比を評価した。結果は表7に示される通りであった。なお、表7には参照として実施例3の気泡の面積比も示した。
(気泡量測定2)
実施例5及び比較例3のサンプルについて、上述した気泡量測定2と同様の方法にて、釉薬層全体に含まれる気泡の面積に対する、基準線から釉薬層の表面方向に0.05mmおよび0.1mmまでの各領域に含まれる気泡の面積の割合を求めた。結果は表8に示されるとおりであった。なお、表8には参照として実施例3の気泡の面積の割合も示した。
(密着試験)
実施例5及び比較例3のサンプルについて、上述した密着試験と同様の方法にて、密着試験を行った。結果は表8に示されるとおりであった。なお、表9には参照として実施例3の密着力も示した。

Claims (10)

  1. 基材上に釉薬層が形成されてなるホーロー物品であって、
    前記基材が鋳鉄であり、
    前記釉薬層を、前記基材表面から前記釉薬層の厚みの半分の位置にある中間線によって、釉薬層の基材側の領域と釉薬層の表面側の領域とに分けたとき、前者に含まれる気泡の面積と、後者に含まれる気泡の面積との比が0:100以上40:60以下である、ホーロー物品。
  2. 前記釉薬層の厚みが、0.1mm以上1.0mm以下である、請求項1に記載のホーロー物品。
  3. 前記釉薬層の厚みが0.2mm以上であり、かつ、前記基材表面から前記釉薬層の表面方向に0.1mmまでの領域に含まれる気泡の面積の割合が、前記釉薬層全体に含まれる気泡の面積に対して35%以下である、請求項2に記載のホーロー物品。
  4. 前記基材表面から前記釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域における焼成後の組成が、SiO>55重量%である、請求項2又は3に記載のホーロー物品。
  5. 前記基材表面から前記釉薬層の表面方向に0.05mmまでの領域に含まれる未溶解状態のSiOの面積の割合が、当該領域の全面積に対して15%〜70%である、請求項2〜4のいずれか一項に記載のホーロー物品。
  6. 前記釉薬層が、前記基材上に形成される下釉層および上釉層を含むものであり、当該下釉層の焼成後の組成が、次の関係:
    55重量%≦RO≦80重量%(R=Si)、
    0重量%≦RO≦20重量%(R=Na、K)、
    0重量%≦RO≦15重量%(R=Ca、Zn、Mg、Ba)および
    0重量%≦R≦30重量%(R=Al)
    を満たすものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のホーロー物品。
  7. 前記基材上に前記釉薬層を形成する施釉方法が湿式法である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のホーロー物品。
  8. 前記ホーロー物品が、水回り物品である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のホーロー物品。
  9. 前記水回り物品が浴槽である、請求項8に記載のホーロー物品。
  10. 前記釉薬層が下釉層および上釉層を含むものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載のホーロー物品の製造方法であって、
    前記基材を準備する工程と、
    前記基材上に下釉層を形成するためのスラリーを準備する工程と、
    前記下釉層を形成するためのスラリーを前記基材に適用する工程と、
    前記下釉層を形成するためのスラリーを適用した基材を750〜850℃で焼成する工程と、
    前記下釉層上に上釉層を形成するためのスラリーを準備する工程と、
    前記上釉層を形成するためのスラリーを前記下釉層に適用する工程と、
    前記上釉層を形成するためのスラリーを前記下釉層に適用した基材を800〜850℃で焼成する工程とを少なくとも含んでなり、
    前記下釉層を形成するためのスラリーを適用した基材を焼成する温度と、前記上釉層を形成するためのスラリーを前記下釉層に適用した基材を焼成する温度との差が100℃未満である、方法。
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