実施形態では、機能性基を脱塩膜の近傍に配置することにより、脱塩膜を含む脱塩処理膜に対して浸透圧を生ずることが可能になる。これを利用することにより、従来よりも多くの流量で海水から真水を得ることが可能になる。
機能性基を脱塩膜の近傍に配置するために、機能性基が結合された基材(即ち、「修飾基材」)を脱塩膜に密着させてもよく、機能性基を直接に脱塩膜に結合させてもよい。
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る脱塩処理膜、脱塩処理方法および脱塩処理装置を詳細に説明する。
実施形態に係る脱塩処理膜は、脱塩膜と、この脱塩膜に密着して配置され、シランカップリング処理された基材とを備える。脱塩処理膜1は、具体的には図1に示すように脱塩膜2と、この脱塩膜2に密着して配置され、シランカップリング処理された修飾基材3とを備える。修飾基材3は、基材4と、この基材4の脱塩膜2とは反対側の面にシランカップリング剤に由来する基が機能性基5として導入されている。
このような脱塩処理膜を用いて塩水から水(真水)を取り出す脱塩処理方法は、脱塩処理膜の脱塩膜を塩水側に配置し、基材を真水側に配置する。
正浸透圧海水淡水化法は、基本的に海水から真水を吸収し、回収する。このため、海水よりも塩分濃度の高い溶液を浸透膜の海水と反対側に位置させ、海水の水が浸透膜を浸透するのに必要な浸透圧を誘発し、水を塩分濃度の高い溶液に移動させる。塩は、従来、塩化アンモニウムを用いている。
塩化アンモニウムは、水への溶解度が高く、かつ60℃で分解し、気体としてアンモニアと二酸化炭素を放出するため、残った水は真水になる。
実施形態は、前記塩分濃度の高い溶液の代わりにシランカップリング処理された修飾基材を脱塩膜に密着して配置する。すなわち、脱塩膜に前記修飾基材を密着させて配置した脱塩処理膜を用いて脱塩処理する方法において、脱塩膜を海水側に、修飾基材を真水側に配置する。このとき、修飾基材に導入されたシランカップリング剤に基づく機能性基は海水の水が脱塩膜を浸透するのに必要な浸透圧を誘発させる作用を有する。即ち、修飾基材に導入されたシランカップリング剤に基づく機能性基は、脱塩膜の海水側から真水側に向う浸透圧を生じることが可能である。また、導入された機能性基は、脱塩膜を浸透した水で膨潤するが、一定の温度範囲内で溶解することがない。さらに、それらの機能性基は修飾基材に結合されているため、基材から遊離せず、安定的に基材表面に留まる。その結果、脱塩膜から浸透した水は修飾基材を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、従来行われているRO法と比較して、同じ大きさの圧力を加えた場合であっても、多くの流量で迅速に塩水から真水にする可能であり、低い圧力を加えた場合においても塩水から真水を生じることが可能である。従って、従来に比較して、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
脱塩膜2は、浸透膜として利用されている、例えば酢酸セルロース膜、ポリアミド膜などを用いることができる。脱塩膜は、45〜250μmの厚さを有することが好ましい。
基材4は、例えば紙、木綿、キュプラ、レーヨン、銅アンモニアレーヨンのようなセルロース膜、布、樹脂膜を用いることができる。中でも、加圧下での脱塩膜の損傷を防止することが可能なろ紙のような柔軟な紙または不織布が好ましい。また、圧損ができるだけ少なくなるように、より通水性の高い基材であることが好ましい。例えば、基材4は、1〜100μmの厚さを有することが好ましい。
また、基材4は、必ずしも浸透膜全体を覆う必要はない。例えば、単数または複数の繊維状またはビーズ状であってもよい。単数または複数の繊維状の場合、セルロース膜、布、樹脂膜の断片またはそれらを解すことにより得られる繊維であってもよい。
或いは、ビーズ状の樹脂を基材4として使用してもよい。その場合、使用される樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、加工セルロースおよびポリアクリル酸など、シランカップリング剤の導入が可能な樹脂であればよい。シランカップリング処理された基材4を「シランカップリング基材」とも称する。ビーズ状の樹脂の大きさは、0.01mm〜2mmであってよく、水の通過を考えると1mm〜5mmであってよい。
また、ビーズ状の樹脂または繊維が配置される領域は、必ずしも脱塩膜全体を覆うものでなくともよい。例えば、海水に接する脱塩膜の面積の高圧の場合などにおいて、80%〜95%を覆うように配置されればよいと推定される。脱塩膜側に対して、圧が加えられても、加えられなくてもよい。その場合、配置されるビーズ状の樹脂または繊維の基材4の大きさは、0.01mm〜5mm、好ましくは1mm〜5mmであればよい。
シランカップリング処理とは、シランカップリング剤が導入された基材であってよい。シランカップリング剤とは、例えば、シランに直接結合した炭素からなる置換基に水と親和性の高い構造が導入されているものであればよい。水と親和性の高い構造とは、例えば、−OH、−NH2、NH−、−N=、−NH3 +、−NH2 +−および=N+=などである。
シランカップリング剤は、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−ウレイドプロピル)トリメトキシシラン、(3−ウレイドプロピル)トリエトキシシラン、およびトリメチル[3−(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリドなどが挙げられる。これらは、酸、塩基またはその他の対イオンと共に、塩構造および/または錯体構造にあってもよい。
シランカップリング処理された修飾基材3は、例えば、基材4と、前記基材4に担持された塩形態にあるアミノシランとを具備してもよい。基材4とそれに塩形態にあるアミノシランは、H
2NCH
2CH
2NHCH
2CH
2CH
2Siをその構造の一部分として有してもよい。例えば、好ましいアミノシランは、以下の式Iのような塩形態にある機能性基として基材に担持されて具備されてもよい。
式Iの塩形態の機能性基において、アミノシランは、アンモニウムカチオンであり、更に、その対イオンとしてのアニオンが存在する。水中では、これらの対イオンは互いに遊離した状態にある。
好ましいアミノシランの例は、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランである。好ましくは、これらのアミノシランは何れもアンモニウムカチオンとして塩形態で存在する。アンモニウムカチオンに対する好ましい対イオンは、Cl−、Br−、I−、などである。
修飾基材3に対するシランカップリング剤の導入率は、例えば、5%〜80%であってよく、好ましくは60%〜80%である。ここで、シランカップリング剤の導入率とは、修飾基材3のOH基のモル数に対する導入されるシランカップリング剤の結合割合である。修飾基材3へのシランカップリング剤の導入率は、海水の塩濃度より高くするために修飾基材3に対して50%以上にすることが好ましい。
修飾基材3と脱塩膜2との密着は、修飾基材3と脱塩膜2の両方に存在する孔における液体通過を妨げないように、達成されればよく、例えば、単なる貼り付けでも高圧下で密着するが、枠などの支持体による抑え込み、ネットによる押さえ込み、その他の構造による押さえ込み、および当該基材と当該膜との周辺部の熱溶融、当該基材と当該膜との周辺部の接着剤による接着などにより達成されればよい。
また、修飾基材3と脱塩膜2とを密着させる際には、脱塩膜2の活性層側に配置させることが好ましい。脱塩膜2の「活性層」とは、ロブアンドスリラーヤン型、あるいは非対称の浸透膜2において、脱塩の機能を担う活性のある膜部分である。活性層は、通常1ミクロンから0.1ミクロンの厚さで、脱塩膜2上に造られる。また、脱塩膜2の活性層以外の部分を「支持層」と称する。RO膜が通常使用される向きとは逆向きであるので、その状態で高圧に耐えられない場合には通常の向きで配置されてもよい。
実施形態に係る脱塩処理方法において、塩水は例えば海水である。処理される塩水の塩濃度は、例えば、0.05%〜4%であればよい。
上記の実施形態においては、修飾基材3において、基材4の脱塩膜2とは反対側の面にシランカップリング剤に由来する基が機能性基5として導入されている例を示したが、機能性基が導入される基材における領域は、これに限定されるものではない。例えば、基材4全体に、即ち、基材の脱塩膜側外面および/または基材内部に対してシランカップリング剤に由来する基が機能性基として導入されてもよい。
実施形態に係る脱塩処理方法において、修飾基材3側に真水を接触させることが好ましい。修飾基材3側に真水を接触させることにより、修飾基材3にシランカップリング剤により導入された機能性基が予め真水で膨潤し、塩水の水による脱塩膜2の浸透を助長し、脱塩処理時間を短縮することが可能になる。
実施形態に係る脱塩処理方法において、必要に応じて塩水側から脱塩処理膜に向けて圧力を付加してもよい。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る脱塩処理装置10を図2を参照して説明する。
例えば中空矩形状の密閉処理容器11は、脱塩処理膜12により第1の室13と第2の室14とに区画されている。脱塩処理膜12は、脱塩膜15と、この脱塩膜15に密着して配置され、修飾基材(例えば基材にろ紙を使用)16とから構成されている。第1の流入口17は、第1の室13が位置する処理容器11上部に設けられている。第2の流入口18は、第2の室14に位置する処理容器11上部に設けられている。流出口19は、第2の室14に位置する処理容器11側部に設けられている。塩水20は第1の室13内に第1の流入口17を通して収容されている。真水21は、第2の室14内に第2の流入口18を通して収容されている。脱塩処理膜12の脱塩膜15は、塩水20が収納される第1の室13側に配置され、修飾基材16は真水21が収納される第2の室14側に配置されている。
このような実施形態に係る脱塩処理装置10によれば、脱塩膜15を海水20側に、修飾基材16を真水21側に配置する。このとき、修飾基材16の基材(例えばろ紙)にシランカップリング剤により導入された機能性基は海水20の水が脱塩膜15を浸透するのに必要な浸透圧を誘発させる作用を有する。シランカップリング剤により導入された機能性基は脱塩膜15を浸透した水で膨潤するが、溶解することがない。シランカップリング剤により導入された機能性基は修飾基材16に結合されているため、修飾基材16から遊離せず、安定的に修飾基材16表面に留まる。その結果、脱塩膜15から浸透した水は修飾基材16を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、常に、脱塩膜の真水側に密着して特定の濃度のシランカップリング剤により導入された機能性基が存在しており、それにより塩水側から真水側に水が移動するために、逆浸透膜法のように、常に高い圧力を脱塩膜15に向い塩水側から加える必要がない。従って、実施形態によれば、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
上記の実施形態においては、中空矩形状の密閉処理容器11を用いる例を示したが、密閉処理容器11の形状は、矩形状に限るものではなく、円柱形状、円錐形状、角柱形状、角錐形状など中空である種々の形状であってもよい。
上記の実施形態では、横型の密閉処理容器11が示されており、第1の室13と第2の室14は、設置面に対して同じ高さに横並びに配置されている例を示した。しかしながら、密閉処理容器11は縦型であってもよい。例えば、縦型の密閉処理容器11では、第1の室13と第2の室14が設置面に対して上下に配置される。或いは、第1の室13と第2の室14の配置は、その他の配置であってもよい。例えば、第1の室13と第2の室14が、脱塩処理膜22を介して隣合せに、設置面に対して異なる高さに配置されてもよい。
或いは、脱塩処理装置は、密閉処理容器内に、少なくともその一辺を中心に巻き込んだ状態で脱塩処理膜を収容し、且つ脱塩処理膜を介して塩水と真水を区画できるような脱塩処理膜エレメントを備える構成であってもよい。
また、上記の実施形態においては、第2の室14に流入口18を有する例を示したが、流出口19を流入口として利用してもよく、その場合、流入口18は具備されなくてもよい。また、流入口17および18、流出口19の配置される位置は、上記の実施例の位置に限られるものではない。
<第3の実施形態>
以下、第3の実施形態に係る脱塩処理膜について詳細に説明する。
実施形態に係る脱塩処理膜は、脱塩膜と、この脱塩膜に密着して配置され、その一方の面に式(II)または(III)の基を構成単位として含む機能性基が結合された基材とを備える。
ここで、R1は、Hまたは炭素数5以下のアルキル基であり、R2はポリアミンまたはポリエチレンイミンであり、R3は炭素数5以下のアルキル基である。
脱塩処理膜1は、具体的には図3に示すように脱塩膜2と、脱塩膜2に密着して配置され、式(II)または(III)の基を構成単位として含む機能性基を担持する修飾基材33とを備える。修飾基材33は、基材4と、この基材4の脱塩膜2とは反対の面に、式(II)または(III)の基を構成単位として含む機能性基35を担持する。
脱塩膜2は、浸透膜として利用されている、例えば酢酸セルロース膜、ポリアミド膜などを用いることができる。脱塩膜は、45〜250μmの厚さを有することが好ましい。
基材4は、例えば紙、木綿、キュプラ、レーヨン、銅アンモニアレーヨンのようなセルロース膜、布、樹脂膜を用いることができる。中でも、加圧下での脱塩膜の損傷を防止することが可能なろ紙のような柔軟な紙または不織布が好ましい。また、圧損ができるだけ少なくなるように、より通水性の高い基材であることが好ましい。例えば、基材は、1〜100μmの厚さを有することが好ましい。
また、基材4は、必ずしも浸透膜全体を覆う必要はない。例えば、単数または複数の繊維状またはビーズ状であってもよい。単数または複数の繊維状の場合、セルロース膜、布、樹脂膜の断片またはそれらを解すことにより得られる繊維であってもよい。
或いは、ビーズ状の樹脂を基材4として使用してもよい。その場合、使用される樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、加工セルロースおよびポリアクリル酸など、シランカップリング剤の導入が可能な樹脂であればよい。シランカップリング処理された基材4を「シランカップリング基材」と称する。ビーズ状の樹脂の大きさは、0.01mm〜2mmであってよく、水の通過を考えると1mm〜5mmであってよい。
また、ビーズ状の樹脂または繊維が配置される領域は、必ずしも脱塩膜全体を覆うものでなくともよい。例えば、海水に接する脱塩膜の面積の高圧の場合、80%〜95%を覆うように配置されればよい。その場合、配置されるビーズ状の樹脂または繊維の基材4の大きさは、0.01mm〜5mm、好ましくは1mm〜5mmであればよい。
その場合、配置される繊維の基材4の厚みは、10μm〜100μmであればよい。
機能性基35は、式(II)または(III)を構成単位として含むポリマーであり、分子量は、100〜100000、例えば、1000〜50000、1000〜10000、1000〜5000であってよい。しかしながら、実施形態に従う脱塩処理膜の効果は、機能性基の分子量の大きさに依存するものではない。
このような機能性基35は、アルデヒドとアミンとの反応、即ち、アルドール反応により形成されてよい。使用されるアルドール反応は、それ自身公知の何れの反応条件で行われてよい。アルデヒド化合物とアミノ基を2つ以上含む化合物との反応は、例えば、次の反応経路IまたはIIを経て行われてよい。
ここにおいて、R1は、Hまたは炭素数5以下のアルキル基であり、R2はポリアミンまたはポリエチレンイミンであり、R3は炭素数5以下のアルキル基である。
また、例えば、ジアルデヒド化合物とアミノ基を2つ以上含む化合物、即ち、ポリアミンとを反応させて得られた化合物、またはホルムアルデヒドとアミノ基を2つ以上含む化合物、即ち、ポリアミンとを反応させて得られた化合物を機能性基35として基材4に結合して使用してもよい。
ポリアミンの例は、これらに限定するものではないが、例えば、ポリエチレンイミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジプロピレントリアミン、ペンタエチレンヘキサミン、メンセンジアミンおよびジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
アルデヒドの例は、これらに限定するものではないが、例えば、グリオキサール、ブタンジアルデヒド、ブテンジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、アジプアルデヒド、オクタンジアルデヒド、2,6−ジアルデヒドピリジン、2,4−ジアルデヒドピリジン、2,4,6−トリアルデヒドピリジン、エチレンジアミンテトラアセトアルデヒド、ポルフィリンテトラアルデヒドなどが挙げられる。
機能性基35として、例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ペンタエチレンヘキサミン(PEH)および/またはトリス(2−アミノエチル)アミン(TAEA)であってよい。
ポリエチレンイミン(PEI)は、例えば、式(IV)
で表される。前記反応によって、この式(IV)を構成単位として有するポリマーが機能性基35として形成され、基材4に結合されて使用される。
ペンタエチレンヘキサミン(PEH)は、式(V)により表される。前記反応によって、この式(V)を構成単位として有するポリマー、例えば、式(VI)
(式中、nは1以上の整数、好ましくは10〜100の整数である)
が機能性基35として形成され、基材4に結合されて使用される。
トリス(2−アミノエチル)アミン(TAEA)は、式(VII)により表される。前記反応によって、式(VII)を構成単位として有するポリマー、例えば、式(VIII)
(式中、nは1以上の整数、好ましくは10〜100の整数である)
が機能性基35として形成され、基材4に結合されて使用される。
機能性基35の基材4に対する結合は、単官能性アルデヒドの場合には式(IX)、2官能性アルデヒドの場合には式(X)
(ここで、R1は、Hまたは炭素数5以下のアルキル基であり、R2はポリアミンまたはポリエチレンイミンであり、R3は炭素数5以下のアルキル基であり、nは1以上の整数、好ましくは10〜100の整数である)
にそれぞれ示されるように達成される。即ち、機能性基35に含まれるホルミル基が、基材4が備える反応基、例えば、セルロースの場合ではOH基と反応することによってアセタール様結合を形成し、それにより、機能性基35は基材4に結合される。
機能性基35の結合は、基材4の一方の面であってよく、脱塩膜2と接する面とは異なる面に結合される。また、機能性基35が結合された基材4は、脱塩膜2の活性層側に密着することが好ましい。
このような脱塩処理膜1を用いて塩水から水(真水)を取り出す脱塩処理方法は、脱塩処理膜1の機能性基35の結合していない面を塩水側に配置し、機能性基35の結合した面を真水側に配置する。
正浸透圧海水淡水化法は、基本的に海水から真水を吸収し、回収する。このため、海水よりも塩分濃度の高い溶液を浸透膜2の海水と反対側に位置させ、海水の水が浸透膜2を浸透するのに必要な浸透圧を誘発し、水を塩分濃度の高い溶液に移動させる。塩は、従来、塩化アンモニウムを用いている。
塩化アンモニウムは、水への溶解度が高く、かつ60℃で分解し、気体としてアンモニアと二酸化炭素を放出するため、残った水は真水になる。脱塩膜1から浸透した水は修飾基材33を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、従来行われているRO法と比較して、同じ大きさの圧力を加えた場合であっても、多くの流量で迅速に塩水から真水にする可能であり、低い圧力を加えた場合においても塩水から真水を生じることが可能である。従って、従来に比較して、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係る脱塩処理装置10を図4を参照して説明する。
例えば中空矩形状の密閉処理容器11は、脱塩処理膜12により第1の室13と第2の室14とに区画されている。脱塩処理膜12は、脱塩膜15と、この脱塩膜15に密着して配置され、その一方の面に機能性基を担持する修飾基材16とから構成されている。第1の流入口17は、第1の室13が位置する処理容器11上部に設けられている。第2の流入口18は、第2の室14に位置する処理容器11上部に設けられている。流出口19は、第2の室14に位置する処理容器11側部に設けられている。塩水20は第1の室13内に第1の流入口17を通して収容されている。真水21は、第2の室14内に第2の流入口18を通して収容されている。脱塩処理膜12の脱塩膜15は、塩水20が収納される第1の室13側に配置され、修飾基材46は真水21が収納される第2の室14側に配置されている。
このような実施形態に係る脱塩処理装置10によれば、脱塩膜15を海水20側に、修飾基材46を真水21側に配置する。このとき、修飾基材46の基材に結合された機能性基は海水20の水が脱塩膜15を浸透するのに必要な浸透圧を誘発させる作用を有する。即ち、このような機能性基は、脱塩膜の海水側から真水側に向う浸透圧を生じることが可能である。機能性基は脱塩膜15を浸透した水で膨潤するが、一定の温度範囲内で溶解することがない。機能性基は修飾基材46に結合されているため、修飾基材46から遊離せず、安定的に修飾基材46表面に留まる。その結果、脱塩膜15から浸透した水は修飾基材46を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、常に、脱塩膜の真水側に機能性基が存在しており、それにより塩水側から真水側に水が移動するために、逆浸透膜法のように、常に高い圧力を脱塩膜15に向い塩水側から加える必要がない。従って、実施形態によれば、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
上記の実施形態においては、中空矩形状の密閉処理容器11を用いる例を示したが、密閉処理容器11の形状は、矩形状に限るものではなく、円柱形状、円錐形状、角柱形状、角錐形状など中空である種々の形状であってもよい。
上記の実施形態では、横型の密閉処理容器11が示されており、第1の室13と第2の室14は、設置面に対して同じ高さに横並びに配置されている例を示した。しかしながら、密閉処理容器11は縦型であってもよい。例えば、縦型の密閉処理容器11では、第1の室13と第2の室14が設置面に対して上下に配置される。或いは、第1の室13と第2の室14の配置は、その他の配置であってもよい。例えば、第1の室13と第2の室14が、脱塩処理膜22を介して隣合せに、設置面に対して異なる高さに配置されてもよい。
或いは、脱塩処理装置は、密閉処理容器内に、少なくともその一辺を中心に巻き込んだ状態で脱塩処理膜を収容し、且つ脱塩処理膜を介して塩水と真水を区画できるような脱塩処理膜エレメントを備える構成であってもよい。
また、上記の実施形態においては、第2の室14に流入口18を有する例を示したが、流出口19を流入口として利用してもよく、その場合、流入口18は具備されなくてもよい。また、流入口17および18、流出口19の配置される位置は、上記の実施例の位置に限られるものではない。
<第5の実施形態>
以下、第5の実施形態に係る脱塩処理膜について詳細に説明する。
第5の実施形態は、海水側に接していない側、即ち、真水側の脱塩処理膜の近傍にポリエチレンイミンを配置することにより、脱塩膜の海水側から真水側に向う浸透圧を生じることが可能であるという発見に基づく形態である。
実施形態に係る脱塩処理膜は、脱塩膜と、この脱塩膜の一方の面に担持されるポリエチレンイミンからなる機能性基とを備える。
脱塩処理膜1は、具体的には図5に示すように脱塩膜52と、脱塩膜52の一方の面に担持される機能性基53とを備える。
脱塩膜52は、浸透膜として利用されている、例えば酢酸セルロース膜、ポリアミド膜などを用いることができる。脱塩膜は45〜250μmの厚さを有することが好ましい。
機能性基53は、ポリエチレンイミンであればよく、分子量は、600〜70000、例えば、25000であってよい。しかしながら、実施形態に従う脱塩処理膜の効果は、機能性基の分子量の大きさに依存するものではない。ポリエチレンイミンの構造は、例えば、式(IV)
で表される。
ポリエチレンイミンは、機能性基53におけるカチオンとして機能する。対イオンとなるアニオンは、塩素イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、トリフルオロ酢酸イオンであってよく、塩素イオンが好ましい。
このような機能性基53は、それ自身公知の何れかの方法により、ポリエチレンイミンを脱塩膜52に対して結合することにより形成される。例えば、上述のようなアルデヒドを利用して結合されてよい。
機能性基53の結合は、脱塩膜52の一方の面であってよく、好ましくは脱塩膜52の活性層側に結合される。
このような脱塩処理膜を用いて塩水から水(真水)を取り出す脱塩処理方法は、脱塩処理膜の機能性基の結合していない面を塩水側に配置し、機能性基の結合した面を真水側に配置する。
正浸透圧海水淡水化法は、基本的に海水から真水を吸収し、回収する。このため、海水よりも塩分濃度の高い溶液を浸透膜の海水と反対側に位置させ、海水の水が浸透膜を浸透するのに必要な浸透圧を誘発し、水を塩分濃度の高い溶液に移動させる。塩は、従来、塩化アンモニウムを用いている。
塩化アンモニウムは、水への溶解度が高く、かつ60℃で分解し、気体としてアンモニアと二酸化炭素を放出するため、残った水は真水になる。脱塩膜から浸透した水は脱塩膜を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、従来行われているRO法と比較して、同じ大きさの圧力を加えた場合であっても、多くの流量で迅速に塩水から真水にする可能であり、低い圧力を加えた場合においても塩水から真水を生じることが可能である。従って、従来に比較して、低エネルギーで塩水海水省エネが可能になる。
更に、上述のように、ポリエチレンイミンを脱塩膜に対して結合させずに、基材に対して結合させてもよい。その場合、ポリエチレンイミン修飾された基材が、脱塩膜に密着して配置されればよい。
そのような脱塩処理膜は、脱塩膜と、この脱塩膜に密着して配置され、少なくともその一部の表面にポリエチレンイミンからなる機能性基を担持される基材とを備える。
基材は、例えば紙、木綿、キュプラ、レーヨン、銅アンモニアレーヨンのようなセルロース膜、布、樹脂膜を用いることができる。中でも、加圧下での脱塩膜の損傷を防止することが可能なろ紙のような柔軟な紙または不織布が好ましい。また、圧損ができるだけ少なくなるように、より通水性の高い基材であることが好ましい。例えば、基材は、1〜100μmの厚さを有することが好ましい。
また、基材は、必ずしも浸透膜全体を覆う必要はない。例えば、単数または複数の繊維状またはビーズ状であってもよい。単数または複数の繊維状の場合、セルロース膜、布、樹脂膜の断片またはそれらを解すことにより得られる繊維であってもよい。
或いは、ビーズ状の基材を使用してもよい。その場合、使用される樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、加工セルロースおよびポリアクリル酸など、ポリエチレンイミンからなる機能性基35の結合が可能な樹脂であればよい。ビーズ状の樹脂の大きさは、ビーズ状の樹脂の大きさは、0.01mm〜2mmであってよく、水の通過を考えると1mm〜5mmであってよい。
基材へのポリエチレンイミンの結合は、脱塩膜へのポリエチレンイミンの結合と同様に行われればよい。
ポリエチレンイミンを脱塩膜に対して結合させた場合と同様の効果が、この場合においても得られる。その結果、従来に比較して、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
<第6の実施形態>
次に、第6の実施形態に係る脱塩処理装置10を図6を参照して説明する。
例えば中空矩形状の密閉処理容器11は、脱塩処理膜62により第1の室13と第2の室14とに区画されている。脱塩処理膜62は、脱塩膜15と、この脱塩膜15の一方の面に担持されるポリエチレンイミンからなる機能性基66とから構成されている。第1の流入口17は、第1の室13が位置する処理容器11上部に設けられている。第2の流入口18は、第2の室14に位置する処理容器11上部に設けられている。流出口19は、第2の室14に位置する処理容器11側部に設けられている。塩水20は第1の室13内に第1の流入口17を通して収容されている。真水21は、第2の室14内に第2の流入口18を通して収容されている。脱塩処理膜62の機能性基66が存在しない面が、塩水20が収納される第1の室13側に配置され、機能性基66は真水21が収納される第2の室14側に配置されている。
このような実施形態に係る脱塩処理装置10によれば、脱塩膜15の機能性基66が担持されていない面を海水20側に、機能性基66を担持する面を真水21側に配置する。このとき、脱塩膜15に結合された機能性基66は海水20の水が脱塩膜15を浸透するのに必要な浸透圧を誘発させる作用を有する。即ち、このような機能性基は、脱塩膜の海水側から真水側に向う浸透圧を生じることが可能である。機能性基66は脱塩膜15を浸透した水で膨潤するが、一定の温度範囲内で溶解することがない。機能性基66は脱塩膜15に結合されているため、脱塩膜15から遊離せず、安定的に脱塩膜15表面に留まる。その結果、脱塩膜15から浸透した水は脱塩膜15を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、常に、脱塩処理膜62の真水側に機能性基66が存在しており、それにより塩水側から真水側に水が移動するために、逆浸透膜法のように、常に高い圧力を脱塩膜15に向い塩水側から加える必要がない。従って、実施形態によれば、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
上記の実施形態においては、中空矩形状の密閉処理容器11を用いる例を示したが、密閉処理容器11の形状は、矩形状に限るものではなく、円柱形状、円錐形状、角柱形状、角錐形状など中空である種々の形状であってもよい。
上記の実施形態では、横型の密閉処理容器11が示されており、第1の室13と第2の室14は、設置面に対して同じ高さに横並びに配置されている例を示した。しかしながら、密閉処理容器11は縦型であってもよい。例えば、縦型の密閉処理容器11では、第1の室13と第2の室14が設置面に対して上下に配置される。或いは、第1の室13と第2の室14の配置は、その他の配置であってもよい。例えば、第1の室13と第2の室14が、脱塩処理膜62を介して隣合せに、設置面に対して異なる高さに配置されてもよい。
或いは、脱塩処理装置は、密閉処理容器内に、少なくともその一辺を中心に巻き込んだ状態で脱塩処理膜を収容し、且つ脱塩処理膜を介して塩水と真水を区画できるような脱塩処理膜エレメントを備える構成であってもよい。
また、上記の実施形態においては、第2の室14に流入口18を有する例を示したが、流出口19を流入口として利用してもよく、その場合、流入口18は具備されなくてもよい。また、流入口17および18、流出口19の配置される位置は、上記の実施例の位置に限られるものではない。
また、この実施形態において、ポリエチレンイミンが基材に結合され、それにより構成されるポリエチレンイミン修飾基材が使用されてもよい。その場合、脱塩膜62には機能性基は結合されず、脱塩処理膜62の塩水側に脱塩膜15が配置され、これに密着してポリエチレンイミン修飾基材が配置される。この時、ポリエチレンイミン修飾基材は、真水側に配置されればよい。
<第7の実施形態>
以下、第7の実施形態に係る脱塩処理膜、脱塩処理方法および脱塩処理層を詳細に説明する。
実施形態に係る脱塩処理膜は、脱塩膜と、この脱塩膜に密着して配置されたイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂とを備える。脱塩処理膜1は、具体的には図7に示すように脱塩膜2と、この脱塩膜2に密着して配置されたイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂76とを備える。
このような脱塩処理膜1を用いて塩水から水(真水)を取り出す脱塩処理方法は、脱塩処理膜1の脱塩膜2を塩水側に配置し、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂76を真水側に配置する。
正浸透圧海水淡水化法は、基本的に海水から真水を吸収し、回収する。このため、海水よりも塩分濃度の高い溶液を浸透膜の海水と反対側に位置させ、海水の水が浸透膜を浸透するのに必要な浸透圧を誘発し、水を塩分濃度の高い溶液に移動させる。塩は、従来、塩化アンモニウムを用いている。
塩化アンモニウムは、水への溶解度が高く、かつ60℃で分解し、気体としてアンモニアと二酸化炭素を放出するため、残った水は真水になる。
実施形態は、前記塩分濃度の高い溶液の代わりにイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂を脱塩膜に密着して配置する。すなわち、脱塩膜にイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂を密着させて配置した脱塩処理膜を用いて脱塩処理する方法において、脱塩膜を海水側に、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂を真水側に配置する。このとき、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂に具備される機能性基は海水の水が脱塩膜を浸透するのに必要な浸透圧を誘発させる作用を有する。また、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂に具備される機能性基は、脱塩膜を浸透した水で膨潤するが、一定の温度範囲内で溶解することがない。さらに、それらのイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂に具備される機能性基は基材に結合されているため、基材から遊離せず、安定的に基材表面に留まる。その結果、脱塩膜から浸透した水はイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、従来行われているRO法と比較して、同じ大きさの圧力を加えた場合であっても、多くの流量で迅速に塩水から真水にする可能であり、低い圧力を加えた場合においても塩水から真水を生じることが可能である。従って、従来に比較して、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
脱塩膜は、浸透膜として利用されている、例えば酢酸セルロース膜、ポリアミド膜などを用いることができる。脱塩膜は、45〜250μmの厚さを有することが好ましい。
イオン交換樹脂は、それ自身公知のイオン交換樹脂であればよく、例えば、カチオンイオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、これらのイオン交換樹脂に具備される機能性基は、それぞれスルホン酸基、カルボン酸基および4級アンモニウム基である。
イオン交換樹脂の厚さは、10μm〜100μm、好ましくは10μm〜30μmであってよく、イオン交換樹脂のポアサイズは、1μm〜10μm、好ましくは4μm〜7μmであってよい。例えば、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂は、0.1〜100μmの厚さで配置されることが好ましい。
イオン交換樹脂の粉砕は、例えば、乳鉢で粉砕することにより行われてよい。また、粉砕されたイオン交換樹脂の大きさは、0.01μm〜10μmであってよい。
また、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂が配置される領域は、必ずしも脱塩膜全体を覆うように配置される必要はない。例えば、海水に接する脱塩膜の面積の70%〜90%を覆うように配置されればよい。
また、上記の実施形態において、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂の代わりに、イオン交換ろ紙を使用してもよい。使用されるイオン交換ろ紙の種類は、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂などであってよい。イオン交換ろ紙を解して繊維状の形態で使用してもよい。
<第8の実施形態>
次に、第8の実施形態に係る脱塩処理装置10を図8を参照して説明する。
例えば中空矩形状の密閉処理容器11は、脱塩処理膜12により第1の室13と第2の室14とに区画されている。脱塩処理膜12は、脱塩膜15と、この脱塩膜15に密着して配置されたイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂86とから構成されている。第1の流入口17は、第1の室13が位置する処理容器11上部に設けられている。第2の流入口18は、第2の室14に位置する処理容器11上部に設けられている。流出口19は、第2の室14に位置する処理容器11側部に設けられている。塩水20は第1の室13内に第1の流入口17を通して収容されている。真水21は、第2の室14内に第2の流入口18を通して収容されている。脱塩処理膜12の脱塩膜15は、塩水20が収納される第1の室13側に配置され、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂86は真水21が収納される第2の室14側に配置されている。
このような実施形態に係る脱塩処理装置10によれば、脱塩膜15を海水20側に、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂86を真水21側に配置する。このとき、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂に具備される機能性基は海水20の水が脱塩膜15を浸透するのに必要な浸透圧を誘発させる作用を有する。イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂に具備される機能性基は脱塩膜15を浸透した水で膨潤するが、一定の温度範囲内で溶解することがない。イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂に具備される機能性基は基材に結合されているため、基材から遊離せず、安定的に基材表面に留まる。その結果、脱塩膜15から浸透した水はイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、常に、脱塩膜の真水側に密着して特定の濃度のイオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂に具備される機能性基が存在しており、それにより塩水側から真水側に水が移動するために、逆浸透膜法のように、常に高い圧力を脱塩膜15に向い塩水側から加える必要がない。従って、実施形態によれば、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
上記の実施形態においては、中空矩形状の密閉処理容器11を用いる例を示したが、密閉処理容器11の形状は、矩形状に限るものではなく、円柱形状、円錐形状、角柱形状、角錐形状など中空である種々の形状であってもよい。
上記の実施形態では、横型の密閉処理容器11が示されており、第1の室13と第2の室14は、設置面に対して同じ高さに横並びに配置されている例を示した。しかしながら、密閉処理容器11は縦型であってもよい。例えば、縦型の密閉処理容器11では、第1の室13と第2の室14が設置面に対して上下に配置される。或いは、第1の室13と第2の室14の配置は、その他の配置であってもよい。例えば、第1の室13と第2の室14が、脱塩処理膜22を介して隣合せに、設置面に対して異なる高さに配置されてもよい。
或いは、脱塩処理装置は、密閉処理容器内に、少なくともその一辺を中心に巻き込んだ状態で脱塩処理膜を収容し、且つ脱塩処理膜を介して塩水と真水を区画できるような脱塩処理膜エレメントを備える構成であってもよい。
また、上記の実施形態においては、第2の室14に流入口18を有する例を示したが、流出口19を流入口として利用してもよく、その場合、流入口18は具備されなくてもよい。また、流入口17および18、流出口19の配置される位置は、上記の実施例の位置に限られるものではない。
また、上記の実施形態において、イオン交換樹脂または粉砕されたイオン交換樹脂の代わりに、イオン交換ろ紙を使用してもよい。使用されるイオン交換ろ紙の種類は、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂などであってよい。イオン交換ろ紙を解して繊維状の形態で使用してもよい。
<第9の実施形態>
以下、第9の実施形態に係る脱塩処理膜について詳細に説明する。
実施形態に係る脱塩処理膜は、脱塩膜と、この脱塩膜に密着して配置され、その一方の面に式(XI)で表される構造単位を有する機能性基が担持された基材とを備える。
ここで、R1は、Hまたは炭素数5以下のアルキル基であり、R2はポリアミンまたはポリエチレンイミンであり、R3は炭素数5以下のアルキル基である。
脱塩処理膜1は、具体的には図14に示すように脱塩膜2と、脱塩膜2に密着して配置され、式(XI)で表される構造単位を有する機能性基を担持する修飾基材143とを備える。修飾基材143は、基材4と、この基材4の脱塩膜2とは反対の面に、式(XI)または(III)の基を構成単位として含む機能性基145を担持する。
脱塩膜2は、浸透膜として利用されている、例えば酢酸セルロース膜、ポリアミド膜などを用いることができる。脱塩膜は、45μm〜250μmの厚さを有することが好ましい。
基材4は、例えば紙、木綿、キュプラ、レーヨン、銅アンモニアレーヨンのようなセルロース膜、布、樹脂膜を用いることができる。中でも、加圧下での脱塩膜の損傷を防止することが可能なろ紙のような柔軟な紙または不織布が好ましい。また、圧損ができるだけ少なくなるように、より通水性の高い基材であることが好ましい。例えば、基材は、1〜100μmの厚さを有することが好ましい。
また基材4として、例えば次に示す天然高分子(生体高分子)を用いることもできる。具体的には、タンパク質、核酸、脂質、多糖類(セルロース、デンプン)、天然ゴムなどである。また合成高分子として、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エポキシ樹脂、ポリスチレン、フェノール樹脂、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、シリコン樹脂などが挙げられる。これら基材4に機能性基145が結合している。具体的にはカチオン性樹脂が架橋剤として働く有機ハロゲン化物を介して基材4の骨格に結合しており、このときの有機ハロゲン化物としては、1分子当り2以上のハロゲン原子を有するものが適する。このとき、ハロゲン化アルキル基はすべてが反応するのではなく、一定の割合で未反応部分が残っていることが好ましい。未反応部分が少ないとポリアミンの導入量が少なくなるためである。
また、基材は、必ずしも浸透膜全体を覆う必要はない。例えば、単数または複数の繊維状またはビーズ状であってもよい。単数または複数の繊維状の場合、セルロース膜、布、樹脂膜の断片またはそれらを解すことにより得られる繊維であってもよい。
或いは、ビーズ状の樹脂など基材として使用してもよい。その場合、使用される樹脂は、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース、加工セルロース、およびポリアクリル酸、さらに樹脂ではないがシリカ粒子など、式(XI)で表される構成単位を有する機能性基145の結合が可能なものであればよい。ビーズの大きさは、0.01mm〜5mmであってよく、好ましくは2mm〜5mmであってよい。
また、ビーズ状の樹脂または繊維が配置される領域は、必ずしも脱塩膜全体を覆うものでなくともよい。例えば、海水に接する脱塩膜の面積の70%〜95%を覆うように配置されればよい。その場合、配置されるビーズまたは繊維の基材の厚みは、それぞれ1mm〜10mm、1μm〜100μmであればよい。
機能性基145は、式(XI)で表される構成単位を有するカチオン性ポリマーであり、分子量は、100〜100000、例えば、1000〜50000、1000〜10000、1000〜5000であってよい。しかしながら、実施形態に従う脱塩処理膜の効果は、機能性基の分子量の大きさに依存するものではない。
機能性基145のカチオン性ポリマーのカウンターアニオンは塩素イオンであることが、安全であるため好ましい。
このような機能性基は、ポリアミンとハロゲン化アルキル基含有架橋剤を加熱反応させることにより形成されてよい。
ポリアミンの例は、これらに限定するものではないが、例えば、ポリエチレンイミン、ペンタエチレンヘキサミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジプロピレントリアミン、ペンタエチレンヘキサミン、メンセンジアミンおよびジアミノジフェニルスルホンなどが挙げられる。
ハロゲン化アルキル基含有架橋剤の例は、これらに限定するものではないが、例えば、ジブロモメタン、ジブロモエタン、ジブロモプロパン、ジブロモブタン、ジブロモペンタン、ジブロモヘキサン、ジブロモヘプタン、ジブロモオクタン、ジブロモノナン、ジブロモデカン、ジブロモウンデカン、ジブロモドデカン、ジブロモトリデカン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロプロパン、ジクロロブタン、ジクロロペンタン、ジクロロヘキサン、ジクロロヘプタン、ジクロロオクタン、ジクロロノナン、ジクロロデカン、ジクロロウンデカン、ジクロロドデカン、ジクロロトリデカン、ジヨードメタン、ジヨードエタン、ジヨードプロパン、ジヨードブタン、ジヨードペンタン、ジヨードヘキサン、ジヨードヘプタン、ジヨードオクタン、ジヨードノナン、ジヨードデカン、ジヨードウンデカン、ジヨードドデカン、ジヨードトリデカン、1,2,4,5−テトラキスブロモメチルベンゼン、1,4−ビスブロモメチルベンゼン、1,4−ビスヨードメチルベンゼン、10,10−ビスブロモメチルノナデカン、エピクロロヒドリンオリゴマー、エピブロモヒドリンオリゴマー、ヘキサブロモシクロドデカン、トリス(3,3−ジブロモ−2−ブロモプロピル)イソシアヌル酸、1,2,3−トリブロモプロパン、ジヨードパーフルオロエタン、ジヨードパーフルオロプロパン、ジヨードパーフルオロヘキサン、ポリエピクロルヒドリン、ポリエピクロルヒドリンとポリエチレンエーテルとの共重合体、ポリエピブロモヒドリン及びポリ塩化ビニルなどの多官能ハロゲン化物を挙げることができる。使用する有機ハロゲン化物の種類は、1種または2種以上にすることができる。この中でも、1,2,4,5−テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン、テトラキス(ブロモメチル)メタンが副反応が無いため好ましい。
このような脱塩処理膜を用いて塩水から水(真水)を取り出す脱塩処理方法は、脱塩処理膜の機能性基の結合していない面を塩水側に配置し、機能性基の結合した面を真水側に配置する。
正浸透圧海水淡水化法は、基本的に海水から真水を吸収し、回収する。このため、海水よりも塩分濃度の高い溶液を浸透膜の海水と反対側に位置させ、海水の水が浸透膜を浸透するのに必要な浸透圧を誘発し、水を塩分濃度の高い溶液に移動させる。塩は、従来、塩化アンモニウムを用いている。
塩化アンモニウムは、水への溶解度が高く、かつ60℃で分解し、気体としてアンモニアと二酸化炭素を放出するため、残った水は真水になる。脱塩膜から浸透した水は基材を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、従来行われているRO法と比較して、同じ大きさの圧力を加えた場合であっても、多くの流量で迅速に塩水から真水にする可能であり、低い圧力を加えた場合においても塩水から真水を生じることが可能である。従って、従来に比較して、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
<第10の実施形態>
次に、第10の実施形態に係る脱塩処理装置10を図15を参照して説明する。
例えば中空矩形状の密閉処理容器11は、脱塩処理膜12により第1の室13と第2の室14とに区画されている。脱塩処理膜12は、脱塩膜15と、この脱塩膜15に密着して配置され、その一方の面に機能性基を担持する修飾基材156とから構成されている。第1の流入口17は、第1の室13が位置する処理容器11上部に設けられている。第2の流入口18は、第2の室14に位置する処理容器11上部に設けられている。流出口19は、第2の室14に位置する処理容器11側部に設けられている。塩水20は第1の室13内に第1の流入口17を通して収容されている。真水21は、第2の室14内に第2の流入口18を通して収容されている。脱塩処理膜12の脱塩膜15は、塩水20が収納される第1の室13側に配置され、基材46は真水21が収納される第2の室14側に配置されている。
このような実施形態に係る脱塩処理装置10によれば、脱塩膜15を海水20側に、修飾156を真水21側に配置する。このとき、修飾基材156に結合された機能性基は海水20の水が脱塩膜15を浸透するのに必要な浸透圧を誘発させる作用を有する。即ち、このような機能性基は、脱塩膜の海水側から真水側に向う浸透圧を生じることが可能である。機能性基は脱塩膜15を浸透した水で膨潤するが、一定の温度範囲内で溶解することがない。機能性基は脱塩膜15に結合されているため、脱塩膜15から遊離せず、安定的に脱塩膜15表面に留まる。その結果、脱塩膜15から浸透した水は脱塩膜15を通して真水側に安定的に移動し、回収される。つまり、塩分濃度の高い塩化アンモニウム溶液を用いる従来方法では、海水の水を浸透膜を浸透させ、塩化アンモニウム溶液に移動させ、その後、60℃以上で加熱してアンモニアと二酸化炭素を気体として放出する操作が必要であるが、実施形態では加熱処理が不要になる。また、常に、脱塩膜の真水側に機能性基が存在しており、それにより塩水側から真水側に水が移動するために、逆浸透膜法のように、常に高い圧力を脱塩膜15に向い塩水側から加える必要がない。従って、実施形態によれば、低エネルギーで塩水を淡水化することが可能になる。
上記の実施形態においては、中空矩形状の密閉処理容器11を用いる例を示したが、密閉処理容器11の形状は、矩形状に限るものではなく、円柱形状、円錐形状、角柱形状、角錐形状など中空である種々の形状であってもよい。
上記の実施形態では、横型の密閉処理容器11が示されており、第1の室13と第2の室14は、設置面に対して同じ高さに横並びに配置されている例を示した。しかしながら、密閉処理容器11は縦型であってもよい。例えば、縦型の密閉処理容器11では、第1の室13と第2の室14が設置面に対して上下に配置される。或いは、第1の室13と第2の室14の配置は、その他の配置であってもよい。例えば、第1の室13と第2の室14が、脱塩処理膜22を介して隣合せに、設置面に対して異なる高さに配置されてもよい。
或いは、脱塩処理装置は、密閉処理容器内に、少なくともその一辺を中心に巻き込んだ状態で脱塩処理膜を収容し、且つ脱塩処理膜を介して塩水と真水を区画できるような脱塩処理膜エレメントを備える構成であってもよい。
また、上記の実施形態においては、第2の室14に流入口18を有する例を示したが、流出口19を流入口として利用してもよく、その場合、流入口18は具備されなくてもよい。また、流入口17および18、流出口19の配置される位置は、上記の実施例の位置に限られるものではない。
実施例
例1
<ろ紙へのシランカップリング剤の導入>
以下のように、ろ紙に対してシランカップリング剤を導入して、実施例1〜5を作成した。
ろ紙(1)の作製法
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン100μlをトルエン10mlに加え、よく混合した。この混合液に桐山ロート用ろ紙(No5B)を加え、1h室温にて反応させた。反応終了後、トルエン、アセトン、H2Oにてよく洗浄した。その後、1M HCl aq.にてアミノ基を塩酸塩とした後、過剰なHClはH2Oにてよく洗浄した。これを100℃のオーブンで2時間乾燥させることにより目的物であるろ紙(1)を得た。これを実施例1とした。
ろ紙(2)の作製法
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン300μlをトルエン10mlに加え、よく混合した。この混合液に桐山ロート用ろ紙(No5B)を加え、1h室温にて反応させた。反応終了後、トルエン、アセトン、H2Oにてよく洗浄した。その後、1MHCl aq.にてアミノ基を塩酸塩とした。過剰なHClはH2Oにてよく洗浄した。これを100℃のオーブンで2時間乾燥させることにより目的物であるろ紙(2)を得た。これを実施例2とした。
ろ紙(3)の作製法
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン500μlとイソプロピルアルコール10mlとを混合し、よく撹拌した。この混合液に桐山ロート用ろ紙(No5B)を浸漬し、取り出した後、そのまま3時間風乾させた。これを70℃のオーブンで3時間反応させ、H2Oにてよく洗浄した。その後、1MHCl aq.にてアミノ基を塩酸塩とした。過剰なHClはH2Oにてよく洗浄した。これを100℃のオーブンで2時間乾燥させることにより目的物であるろ紙(3)を得た。これを実施例3とした。
ろ紙(4)の作製法
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン500μlとイソプロピルアルコール10mlとを混合し、よく撹拌した。この混合液に桐山ロート用ろ紙(No5B)を浸漬し、取り出した。その後、そのまま3時間風乾させた。これをもう一度、新たに作製した前述の混合液に浸漬させ、取り出した。その後、そのまま3時間風乾させた。これを70℃のオーブンで3時間反応させ、H2Oにてよく洗浄した。その後、1MHCl aq.にてアミノ基を塩酸塩とした。過剰なHClはH2Oにてよく洗浄した。これを100℃のオーブンで2時間乾乾燥させることにより目的物であるろ紙(4)を得た。これを実施例4とした。
ろ紙(5)の作製法
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン500μlをイソプロピルアルコール10mlに加え、よく撹拌した。この混合液に桐山ロート用ろ紙(No5B)を浸漬し、取り出した。その後、そのまま3時間風乾させた。これをもう一度、新たに作製した前述の混合液に浸漬させ、取り出した。その後、そのまま3時間風乾させた。これをさらにもう一度、新たに作製した前述の混合液に浸漬させ、取り出した。その後、そのまま3時間風乾させた。これを70℃のオーブンで3時間反応させ、H2Oにてよく洗浄した。その後、1MHCl aq.にてアミノ基を塩酸塩とした。過剰なHClはH2Oにてよく洗浄した。これを100℃のオーブンで2時間乾乾燥させることにより目的物であるろ紙(5)を得た。これを実施例5とした。
<ろ紙シリンジ試験>
(1)シリンジ試験装置
図9(a)を参照しながら、シリンジ試験装置の作製について説明する。まず、2本の1mlツベルクリン用のディスポーザブル樹脂シリンジ91および92を用意した。これらの樹脂シリンジ91および92のそれぞれの注射心をセットする側の先端をそれぞれ切り落とした(S1)。得られた2つの切断されたシリンジ91および92の取っ手部位を互いに向い合せてその間に2枚のゴムラバーと1組の脱塩処理膜を挟み込んだ。挟み込みは、第1のシリンジ91、第1のゴムラバー93、機能性基を結合された基材(修飾基材)94、脱塩膜95、第2のゴムラバー96、第2のシリンジ92とこの順番になるように行い、クリップ(図示せず)で固定した(S2)。ここで、修飾基材は、脱塩膜の活性層側に密着させて配置した。
これによりシリンジ試験装置97を得た(S3)。脱塩膜55としてRO膜である日東電工製ES20を使用した。修飾基材94は、実施例3、実施例4および実施例5を使用した。第1および第2のゴムラバー93および96は板状のゴムラバーを使用し、図9(b)に示すように、各ゴムラバーには、直径5mmの円形穴をそれぞれ開口した。
(2)シリンジ試験
図10に示すように、上記(1)で作製したシリンジ試験装置97の第1のシリンジ91の開口部98から第1のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。更に、第2のシリンジ92の開口部99から第2のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。何れの開口部からの純水の注入も、脱塩膜95に接するまで行った。これを15時間放置して、15時間の間に生じる、第1のシリンジ91から第2のシリンジ92への水の移動を観測した。結果は、移動した水の体積(ml)を測定し、移動量として示した。比較のために、修飾基材を配置させないブランクを用いて同様の実験を行った。
表1に示すように、シリンジ試験装置97において、実施例3、4および5を配置した場合には、第1のシリンジ内に注入された水は第2のシリンジ内に移動した。この結果から、シランカップリング反応により基材に導入された機能性基により、第1のシリンジ内の水を第2のシリンジ内に移動させることが可能になった。これは、修飾基材の機能性基により浸透圧が誘起されたためであると考えられる。
<高圧試験>
(1)高圧試験装置
例1に記載の方法により得た実施例1および2について高圧試験を行った。
高圧試験に使用した高圧試験装置を図11(a)に示す。試験装置101は、ポンプ(図示せず)と、第1の接続コネクタ102と、セル103と、圧力計104と、第2の接続コネクタ105と、第1の圧力解放弁106と、第2の圧力解放弁107とを具備する。これらの部材を、互いに液体の流通が可能に接続した。
セル103の構成を図11(b)に示す。セル103は、液体が通る流路を有する第1の支持部材111、第1の支持部材111からの液体を受ける目皿112を具備する第2の支持部材113、第1の支持部材111と第2の支持部材113の目皿112側面とにこの順で挟み込まれた脱塩膜114と修飾基材115、およびパッキンの役割を果たすOリング116を具備する。第1の支持部材111の流路の開口部117から流入した水は、脱塩膜114および修飾基材115を通過して目皿112に流れ込み、その後、目皿112の底部から第2の支持部材113の外部に向けて開口された流出口から排出され、流量が測定された。なお、ブランク試験では、セル内に修飾基材を配置しなかった。各修飾基材は、脱塩膜の支持層側の表面に密着させて配置した。
図11(a)および(b)に示すように、実験では、ポンプから試験装置101のセル103に純水を流し、浸透圧が1MPaとなるように、ポンプならびに第1の圧力開放弁106と第2の圧力開放弁107を調節した。浸透膜にはRO膜の日東電工製ES20を使用した。修飾基材として実施例1および2を用いた。試験は何れも室温で行い、5分間純水を流した。5分間の間に、脱塩処理膜を透過して目皿に滴下した水の重量を流量として測定した。これを流量としてg単位で表した。
表2が示すように、実施例1および2の使用により、ブランクに比べて多くの水が脱塩処理膜を通過して移動した。これは、修飾基材の機能性基により浸透圧が誘起されたためであると考えられる。
例2
<グルタルアルデヒドを用いた基材の修飾>
(合成方法)
1.グルタルアルデヒド
架橋剤としてグルタルアルデヒドを使用し、ポリエチレンイミン、ペンタエチレンヘキサミンおよびトリス(2−アミノエチル)アミンを架橋し、そのポリマーを基材であるろ紙に結合させた。
(1)ポリエチレンイミン
桐山漏斗用ろ紙を5%ポリエチレンイミン溶液に1時間含浸した。一時間後にろ紙を取り出して乾燥した。その後、得られたろ紙を10%グルタルアルデヒド溶液に含浸した。含浸は、1時間超音波をかけながら行った。得られたろ紙を取り出し、5%塩酸に5分間含浸した。その後、純水で十分に洗浄し、ポリエチレン修飾ろ紙を得た。これを実施例6とした。
(2)ペンタエチレンヘキサミン
桐山漏斗用ろ紙を5%ペンタエチレンヘキサミン溶液に1時間含浸した。一時間後にろ紙を取り出して乾燥した。その後、得られたろ紙を10%グルタルアルデヒド溶液に含浸した。含浸は、1時間超音波をかけながら行った。得られたろ紙を取り出し、5%塩酸に5分間含浸した。その後、純水で十分に洗浄し、ペンタエチレンヘキサミン修飾ろ紙を得た。これを実施例7とした。
(3)トリス(2−アミノエチル)アミン
桐山漏斗用ろ紙を5%トリス(2−アミノエチル)アミン溶液に1時間含浸した。一時間後にろ紙を取り出して乾燥した。その後、得られたろ紙を10%グルタルアルデヒド溶液に含浸した。含浸は、1時間超音波をかけながら行った。得られたろ紙を取り出し、5%塩酸に5分間含浸した。その後、純水で十分に洗浄し、トリス(2−アミノエチル)アミン修飾ろ紙を得た。これを実施例8とした。
2.ホルムアルデヒド
架橋剤としてホルムアルデヒドを使用し、ポリエチレンイミンを架橋し、そのポリマーを基材であるろ紙に結合させた。
桐山漏斗用ろ紙を5%ポリエチレンイミン溶液に1時間含浸した。一時間後にろ紙を取り出して乾燥した。その後、得られたろ紙を35%ホルムアルデヒド溶液に含浸した。含浸は、50℃で1時間行った。得られたろ紙を取り出し、5%塩酸に5分間含浸した。その後、純水で十分に洗浄し、ポリエチレン修飾ろ紙を得た。これを実施例8とした。
<高圧試験>
上記の<合成方法>に記載の方法により得られた実施例6〜8について、高圧試験を行った。
高圧試験装置を図11(a)に示す。試験装置101は、ポンプ(図示せず)と、第1の接続コネクタ102と、セル103と、圧力計104と、第2の接続コネクタ105と、第1の圧力解放弁106と、第2の圧力解放弁107とを具備する。これらの部材を、互いに液体の流通が可能に接続した。
セル103の構成を図11(b)に示す。セル103は、液体が通る流路を有する第1の支持部材111、第1の支持部材111からの液体を受ける目皿112を具備する第2の支持部材113、第1の支持部材111と第2の支持部材113の目皿112側面とにこの順で挟み込まれた脱塩膜114と修飾基材115、およびパッキンの役割を果たすOリング116を具備する。第1の支持部材111の流路の開口部117から流入した水は、脱塩膜114および修飾基材115を通過して目皿112に流れ込み、その後、目皿112の底部から第2の支持部材113の外部に向けて開口された流出口から排出され、流量が測定された。なお、ブランク試験では、セル内に修飾基材を配置しなかった。各修飾基材は、脱塩膜の支持層側の表面に密着させて配置した。
図11(a)および(b)に示すように、実験では、ポンプから試験装置101のセル103に純水を流し、浸透圧が1MPaとなるように、ポンプならびに第1の圧力開放弁106と第2の圧力開放弁107を調節した。浸透膜にはRO膜の日東電工製ES20を使用した。修飾基材として、実施例6〜8を用いた。試験は何れも室温で行い、5分間純水を流す間に、脱塩処理膜を透過して目皿に滴下した水の重量を測定して流量を得た。比較のために、修飾していないろ紙を脱塩膜に接触して同じ試験を行った。
表3が示すように、実施例6〜8の使用により、ブランクに比べて多くの水が脱塩処理膜を通過して移動した。これは、修飾基材の機能性基により浸透圧が誘起されたためであると考えられる。
<シリンジ試験>
図9(a)を参照しながら、シリンジ試験装置の作製について説明する。まず、2本の1mlツベルクリン用のディスポーザブル樹脂シリンジ91および92を用意した。これらの樹脂シリンジ91および92のそれぞれの注射心をセットする側の先端をそれぞれ切り落とした(S1)。得られた2つの切断されたシリンジ91および92の取っ手部位を互いに向い合せてその間に2枚のゴムラバーと1組の脱塩処理膜を挟み込んだ。挟み込みは、第1のシリンジ91、第1のゴムラバー93、機能性基を結合された基材(修飾基材)94、脱塩膜95、第2のゴムラバー96、第2のシリンジ92とこの順番になるように行い、クリップ(図示せず)で固定した(S2)。ここで、修飾基材は、脱塩膜の活性層側に密着させて配置した。
これによりシリンジ試験装置97を得た(S3)。脱塩膜55としてRO膜である日東電工製ES20を使用した。修飾基材94は、実施例6を使用した。第1および第2のゴムラバー93および96は板状のゴムラバーを使用し、図9(b)に示すように、各ゴムラバーには、直径5mmの円形穴をそれぞれ開口した。
このシリンジ試験装置において、修飾基材として実施例6の修飾基材(ポリエチレンイミンとグルタルアルデヒドの反応物)を用いた。修飾基材と脱塩膜との接着は、脱塩膜の活性層側において行った。
次に、図10に示すように、第1のシリンジ91の開口部98から第1のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。更に、第2のシリンジ92の開口部99から第2のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。何れの開口部からの純水の注入も、脱塩膜95に接するまで行った。これを24時間放置して、24時間の間に生じる、第1のシリンジ91から第2のシリンジ92への水の移動を観察した。比較のために、修飾基材を配置せず、脱塩膜のみを配置したブランクを用いて同様の実験を行った。結果は、移動した水の体積(ml)を測定し、移動量として示した。
結果を表4に示す。
表4から明らかであるように、実施例6は、ブランクに比べて多くの水を第1のシリンジから第2のシリンジに移動することができた。これは、修飾基材の機能性基により浸透圧が誘起されたためであると考えられる。
例3
<ポリエチレンイミンに対する対イオンの種類についての検討>
ポリエチレンイミンの浸透圧に対するアニオンの種類の影響をシリンジ試験により検討した。ポリエチレンイミンは、そこに含まれるプラスイオンのためにカチオンとして働く。ポリエチレンイミンが、カチオンとして働く場合、その対イオンとなるアニオンの種類によって、ポリエチレンイミンの浸透圧が影響される化合物否かについて検討した。
図12(a)を参照しながら、シリンジ試験装置の作製について説明する。まず、2本の1mlツベルクリン用のディスポーザブル樹脂シリンジ91および92を用意した。これらの樹脂シリンジ91および92のそれぞれの注射心をセットする側の先端をそれぞれ切り落とした(S1)。得られた2つの切断されたシリンジ91および92の取っ手部位を互いに向い合せてその間に2枚のゴムラバーと1組の脱塩膜を挟み込んだ。挟み込みは、第1のシリンジ91、第1のゴムラバー93、脱塩膜95、第2のゴムラバー96、第2のシリンジ92とこの順番になるように行い、クリップ(図示せず)で固定した(S2)。
これによりシリンジ試験装置97を得た(S3)。脱塩膜55としてRO膜である日東電工製ES20を使用した。このES20の活性層側が第2のシリンジ内を向き、ES20の支持層側が第1のシリンジ内を向くように配置した。第1および第2のゴムラバー93および96は板状のゴムラバーを使用し、図12(b)に示すように、各ゴムラバーには、直径5mmの円形穴をそれぞれ開口した。
このシリンジ試験装置において、共存するアニオンの種類が、ポリエチレンイミンの浸透圧に与える影響について次のように検討した。
図12(c)に示すように、第1のシリンジ91の開口部98から第1のシリンジ内に水中の1%または3.5%のNaCl水溶液を0.5ml注入した。第2のシリンジ92の開口部99から第2のシリンジ内に、純水中に5重量%のポリエチレンイミンと5重量%の酸とを含む混合液を0.5ml注入した。使用した酸は、塩酸、トリフルオロスルホン酸、硫酸またはリン酸であった。これらの酸でカウンターアニオンを1種類ずつ試験した。比較のために、酸を添加せずに、5重量%のポリエチレンイミンのみを第2のシリンジ内に注入して同様の試験を行った。
その後、4時間放置し、4時間の間に第1のシリンジ内から第2のシリンジに移動した水の量を観察した。結果は、移動した水の体積(ml)を測定し、移動量として示した。
表5から明らかであるように、塩素イオンが、対イオンであるアニオンとして存在すると、ポリエチレンイミンのみが存在する場合に比べて、多くの水が第1のシリンジ内から第2のシリンジ内に移動した。即ち、カチオンとしてのポリエチレンイミンと、アニオンとしての塩素イオンが存在する状態において、より多くの浸透圧が塩水側から真水側に向い脱塩膜において生じることが明らかになった。
例4
<陰イオン交換樹脂による浸透圧への影響についての検討>
イオン交換樹脂を修飾基材として使用して、シリンジ試験を行った。
イオン交換樹脂として、アンバーライトを使用した。アンバーライトをメノウ乳鉢により大きさが平均直径約1μm〜10μmになるまで粉砕した。このような粉砕されたアンバーライトを用いて、シリンジ試験を行った。
図12(a)を参照しながら、シリンジ試験装置の作製について説明する。まず、2本の1mlツベルクリン用のディスポーザブル樹脂シリンジ91および92を用意した。これらの樹脂シリンジ91および92のそれぞれの注射心をセットする側の先端をそれぞれ切り落とした(S1)。得られた2つの切断されたシリンジ91および92の取っ手部位を互いに向い合せてその間に2枚のゴムラバーと1組の脱塩膜を挟み込んだ。挟み込みは、第1のシリンジ91、第1のゴムラバー93、脱塩膜95、第2のゴムラバー96、第2のシリンジ92とこの順番になるように行い、クリップ(図示せず)で固定した(S2)。
これによりシリンジ試験装置97を得た(S3)。脱塩膜55としてRO膜である日東電工製ES20を使用した。このES20の活性層側が第2のシリンジ内を向き、ES20の支持層側が第1のシリンジ内を向くように配置した。第1および第2のゴムラバー93および96は板状のゴムラバーを使用し、図12(b)に示すように、各ゴムラバーには、直径5mmの円形穴をそれぞれ開口した。
このシリンジ試験装置において、アンバーライトが、浸透圧に与える影響について次のように検討した。
図12(c)に示すように、第1のシリンジ91の開口部98から第1のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。第2のシリンジ92の開口部99から第2のシリンジ内に、純水中に5重量%の粉砕したアンバーライトを含む懸濁液を0.5ml注入した。
その後、24時間放置し、24時間の間に第1のシリンジ内から第2のシリンジに移動した水の量を観察した。結果は、移動した水の体積(ml)を測定し、移動量として示した。
別に、図12(a)に示すシリンジ試験装置において、脱塩膜95と第2のゴムラバー96の間にアンバーライトを配置したことを除いて、上記と同様のシリンジ試験装置を作製した。第1のシリンジ91の開口部98から第1のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。第2のシリンジ92の開口部99から第2のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。その後、24時間放置して、24時間の間に第1のシリンジ内から第2のシリンジに移動した水の量を観察した。結果は、移動した水の体積(ml)を測定し、移動量として示した。
表6から明らかであるように、アンバーライトおよび粉砕したアンバーライト(アンバーライト粉末)を配置した何れの場合も、第1のシリンジ内から第2のシリンジ内への水の移動が観察された。この結果から、イオン交換樹脂を修飾基材として使用することも可能である。
例5
<イオン交換ろ紙の浸透圧に対する影響>
1.高圧試験
イオン交換ろ紙を修飾基材として使用して高圧試験を行った。
高圧試験装置を図11(a)に示す。試験装置101は、ポンプ(図示せず)と、第1の接続コネクタ102と、セル103と、圧力計104と、第2の接続コネクタ105と、第1の圧力解放弁106と、第2の圧力解放弁107とを具備する。これらの部材を、互いに液体の流通が可能に接続した。
セル103の構成を図11(b)に示す。セル103は、液体が通る流路を有する第1の支持部材111、第1の支持部材111からの液体を受ける目皿112を具備する第2の支持部材113、第1の支持部材111と第2の支持部材113の目皿112側面とにこの順で挟み込まれた脱塩膜114と修飾基材115、およびパッキンの役割を果たすOリング116を具備する。第1の支持部材111の流路の開口部117から流入した水は、脱塩膜114および修飾基材115を通過して目皿112に流れ込み、その後、目皿112の底部から第2の支持部材113の外部に向けて開口された流出口から排出され、流量が測定された。なお、ブランク試験では、セル内に修飾基材を配置しなかった。各修飾基材は、脱塩膜の支持層側の表面に密着させて配置した。
図11(a)および(b)に示すように、実験では、ポンプから試験装置101のセル103に純水を流し、浸透圧が1MPaとなるように、ポンプならびに第1の圧力開放弁106と第2の圧力開放弁107を調節した。浸透膜にはRO膜の日東電工製ES20を使用した。修飾基材として、F−SC10(株式会社ニチビ製,カチオン交換ろ紙)またはF−SA10(株式会社ニチビ製,アニオン交換ろ紙)を使用した。
試験は30℃、1MPaおよび送液速度2ml/minで行った。5分間純水を流す間に、脱塩処理膜を透過して滴下した水の重量を測定して流量を得た。比較のために、修飾基材を配置せずにES20のみを配置した高圧試験装置で同様の試験を行った。
その結果、修飾基材として、F−SC10を配置した場合、ES20のみを配置したブランクの場合と比べて、流量が16%増加した。使用されたF−SC10は、1mm以上と平均的なろ紙よりも厚いろ紙である。この厚さの45%程度を紙やすりで削り、同様の試験を行った。この場合は、流量が14%増加した。この結果から、F−SC10の厚さは、F−SC10のブランクに対する流量の増加率に影響しないことが分かった。
別に、修飾基材としてF−SA10(株式会社ニチビ製,アニオン交換ろ紙)を用いて、上記と同様の高圧試験装置を作製した。この装置を用いて同様の高圧試験を行った。
その結果、F−SA10の場合、ブランクよりも流量が6%減少した。しかしながら、F−SA10の厚さを紙やすりで40%分だけ削ったものを同様に試験したところ、ブランクよりも流量が6%増加した。この結果から、F−SA10の場合では、F−SA10の厚さが、F−SA10のブランクに対する流量の増加率に影響することが分かった。
更に別に、修飾基材としてDE81(Wattmann、アニオン交換ろ紙)を用いて、上記と同様の高圧試験装置を作製した。この装置を用いて同様の高圧試験を行った。
その結果、DE81の場合では、ブランクよりも流量が1%増加した。DE81は上記のろ紙よりも薄いろ紙である。次に、3枚のDE81を重ね合せて脱塩膜に密着させて配置した高圧試験装置を作製した。この装置により高圧試験を行ったところ、ブランクに比べて流量が10%減少した。
これらの結果から、基材、例えば、ろ紙による圧損が、脱塩処理膜により得られる真水の量に大きく影響する因子であると考えられた。
2.シリンジ試験
図9(a)を参照しながら、シリンジ試験装置の作製について説明する。まず、2本の1mlツベルクリン用のディスポーザブル樹脂シリンジ91および92を用意した。これらの樹脂シリンジ91および92のそれぞれの注射心をセットする側の先端をそれぞれ切り落とした(S1)。得られた2つの切断されたシリンジ91および92の取っ手部位を互いに向い合せてその間に2枚のゴムラバーと1組の脱塩処理膜を挟み込んだ。挟み込みは、第1のシリンジ91、第1のゴムラバー93、修飾基材94、脱塩膜95、第2のゴムラバー96、第2のシリンジ92とこの順番になるように行い、クリップ(図示せず)で固定した(S2)。ここで、修飾基材は、脱塩膜の活性層側に密着させて配置した。
これによりシリンジ試験装置97を得た(S3)。脱塩膜55としてRO膜である日東電工製ES20を使用した。修飾基材94は、イオン交換ろ紙であるF−SC10(株式会社ニチビ製,カチオン交換ろ紙)を用いた。第1および第2のゴムラバー93および96は板状のゴムラバーを使用し、図9(b)に示すように、各ゴムラバーには、直径5mmの円形穴をそれぞれ開口した。
(2)シリンジ試験
図10に示すように、上記(1)で作製したシリンジ試験装置97の第1のシリンジ91の開口部98から第1のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。更に、第2のシリンジ92の開口部99から第2のシリンジ内に純水を0.5ml注入した。何れの開口部からの純水の注入も、脱塩膜95に接するまで行った。30℃で水平において15時間放置して、15時間の間に生じる、第1のシリンジ91から第2のシリンジ92への水の移動を観測した。結果は、移動した水の体積(ml)を測定し、移動量として示した。
シリンジ試験の結果を図13にセットAとして示す。図13から明らかであるように、第1のシリンジ内の液量(図13において大四角印で示す)は減少し、第2のシリンジ内の液量(図13において小四角印で示す)は増加した。この時に修飾基材として使用されたF−SC10は、6mmx6mmの四角のろ紙であった。
別に、更なるシリンジ試験を行った。そこにおいては、第2のシリンジ内に3.5%のNaClを水溶解して作製した塩水を0.5ml注入すること以外は、上記と同様な方法により行った。この時に修飾基材として使用されたF−SC10は、5mmφのろ紙であった。
その結果を図13にセットBとして示す。図13から明らかであるように、第1のシリンジ内の液量(図13において丸印で示す)は増加し、第2のシリンジ内の液量(図13において三角印で示す)は減少した。
これらの結果から、イオン交換ろ紙を修飾基材として使用できることが明らかになった。
機能性基を脱塩膜の近傍に配置することにより、脱塩膜を含む脱塩処理膜に対して浸透圧を生ずることが可能になり、それにより、従来よりも多くの流量で塩水から真水を得ることが可能になる。従って、従来よりも低エネルギーで海水から真水を得ることが可能になる。
例6
<カチオン性ポリマーを用いた基材の修飾>
以下のように、ろ紙に対してカチオン性ポリマーを修飾して、実施例9〜12を作成した。
(合成方法)
1−(1)テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン
架橋剤としてテトラキス(ブロモメチル)ベンゼンを使用し、ポリエチレンイミンを架橋し、そのポリマーを基材であるろ紙に結合させた。
具体的には、テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン0.5gをアセトン20mlに溶解させ、桐山漏斗用ろ紙を浸し、10%水酸化ナトリウム水溶液を10ml加えた。50℃で5時間撹拌したのち、ろ紙を取り出し、得られたろ紙を純水、アセトンで洗浄した。その後、ポリエチレンイミンを1g溶解させたアセトン20mlにろ紙を加え、50℃で6時間反応させた。反応後、ろ紙を取り出し、得られたろ紙を純水で洗浄し、5%塩酸に10分含浸させた。その後、純水で十分洗浄し、テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン固定ポリエチレンイミンが結合したろ紙を得た。これを実施例9とした。
1−(2)テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン
架橋剤としてテトラキス(ブロモメチル)ベンゼンを使用し、トリス(2-アミノエチル)アミンを架橋し、そのポリマーを基材であるろ紙に結合させた。
具体的には、テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン0.5gをアセトン20mlに溶解させ、桐山漏斗用ろ紙を浸し、10%水酸化ナトリウム水溶液を10ml加えた。50℃で5時間撹拌したのち、ろ紙を取り出し、得られたろ紙を純水、アセトンで洗浄した。その後、トリス(2−アミノエチル)アミンを1g溶解させたアセトン20mlにろ紙を加え、50℃で6時間反応させた。反応後、ろ紙を取り出し、得られたろ紙を純水で洗浄し、5%塩酸に10分含浸させた。純水で十分洗浄し、テトラキス(ブロモメチル)ベンゼン固定トリス(2−アミノエチル)アミンが結合したろ紙を得た。これを実施例10とした。
2−(1)テトラキス(ブロモメチル)メタン
架橋剤としてテトラキス(ブロモメチル)メタンを使用し、ポリエチレンイミンを架橋し、そのポリマーを基材であるろ紙に結合させた。
具体的には、テトラキス(ブロモメチル)メタン0.5gをアセトン20mlに溶解させ、桐山漏斗用ろ紙を浸し、10%水酸化ナトリウム水溶液を10ml加えた。50℃で5時間撹拌したのち、ろ紙を取り出し、得られたろ紙を純水、アセトンで洗浄した。その後、ポリエチレンイミンを1g溶解させたアセトン20mlにろ紙を加え、50℃で6時間反応させた。反応後、ろ紙を取り出し、得られたろ紙を純水で洗浄し、5%塩酸に10分含浸させた。純水で十分洗浄し、テトラキス(ブロモメチル)メタン固定ポリエチレンイミンが結合したろ紙を得た。これを実施例11とした。
2−(2)テトラキス(ブロモメチル)メタン
架橋剤としてテトラキス(ブロモメチル)メタンを使用し、トリス(2−アミノエチル)アミンを架橋し、そのポリマーを基材であるろ紙に結合させた。
具体的には、テトラキス(ブロモメチル)メタン0.5gをアセトン20mlに溶解させ、桐山漏斗用ろ紙を浸し、10%水酸化ナトリウム水溶液を10ml加えた。50℃で5時間撹拌したのち、ろ紙を取り出し、得られたろ紙を純水、アセトンで洗浄した。その後、トリス(2−アミノエチル)アミンを1g溶解させたアセトン20mlにろ紙を加え、50℃で6時間反応させた。反応後、ろ紙を取り出し、得られたろ紙を純水で洗浄し、5%塩酸に10分含浸させた。純水で十分洗浄し、テトラキス(ブロモメチル)メタン固定トリス(2−アミノエチル)アミンが結合したろ紙を得た。これを実施例12とした。
<高圧試験>
(1)高圧試験装置
例6に記載の方法により得た実施例9〜12について高圧試験を行った。
高圧試験に使用した高圧試験装置を図11(a)に示す。試験装置101は、ポンプ(図示せず)と、第1の接続コネクタ102と、セル103と、圧力計104と、第2の接続コネクタ105と、第1の圧力解放弁106と、第2の圧力解放弁107とを具備する。これらの部材を、互いに液体の流通が可能に接続した。
セル103の構成を図11(b)に示す。セル103は、液体が通る流路を有する第1の支持部材111、第1の支持部材111からの液体を受ける目皿112を具備する第2の支持部材113、第1の支持部材111と第2の支持部材113の目皿112側面とにこの順で挟み込まれた脱塩膜114と修飾基材115、およびパッキンの役割を果たすOリング116を具備する。第1の支持部材111の流路の開口部117から流入した水は、脱塩膜114および修飾基材115を通過して目皿112に流れ込み、その後、目皿112の底部から第2の支持部材113の外部に向けて開口された流出口から排出され、流量が測定された。なお、ブランク試験では、セル内に修飾基材を配置しなかった。各修飾基材は、脱塩膜の支持層側の表面に密着させて配置した。
図11(a)および(b)に示すように、実験では、ポンプから試験装置101のセル103に純水を流し、浸透圧が1MPaとなるように、ポンプならびに第1の圧力開放弁106と第2の圧力開放弁107を調節した。浸透膜にはRO膜の日東電工製ES20を使用した。修飾基材として実施例1および2を用いた。試験は何れも室温で行い、5分間純水を流した。5分間の間に、脱塩処理膜を透過して目皿に滴下した水の重量を流量として測定した。これを流量としてg単位で表した。
表2が示すように、実施例9〜12の使用により、ブランクに比べて多くの水が脱塩処理膜を通過して移動した。これは、修飾基材の機能性基により浸透圧が惹起されたためであると考えられる。
なお、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
なお、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。本実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。