JP2015020187A - レーザ加工装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】加工対象物のレーザ光入射面から改質領域までの距離を所定距離に維持することができるレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置10Aは、加工対象物1を支持する支持台と、レーザ光Lをパルス発振するレーザ発振器と、レーザ光Lを集光する集光レンズ13と、レーザ発振器から集光レンズ13に至るレーザ光Lの光路上に配置され、入力された高周波信号Sの位相に応じて焦点距離が変化する焦点可変レンズ14と、制御部と、を備えている。制御部は、レーザ光Lの発振周期T2を高周波信号Sの所定位相に同期させ、切断予定ライン5に沿った加工対象物1のレーザ光入射面2の変位情報に基づいて、集光点Pとレーザ光入射面2との距離が所定距離に維持されるように、高周波信号Sの振幅Aを調整する。
【選択図】図9

Description

本発明は、切断予定ライン等の所定ラインに沿って半導体ウェハ等の加工対象物にレーザ光を照射することにより、所定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置に関する。
切断予定ラインに沿って半導体ウェハの内部に形成した改質領域から亀裂を伸展させて、切断予定ラインに沿って半導体ウェハを切断する場合、亀裂を精度良く且つ効率良く繋げて切断品質を向上させる観点から、半導体ウェハのレーザ光入射面から改質領域までの距離を一定距離に維持することが極めて重要である。そのためには、レーザ光の集光点を切断予定ラインに沿って移動させる際に、半導体ウェハのレーザ光入射面からレーザ光の集光点までの距離を一定距離に維持する必要がある。
そこで、次のようなレーザ加工装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち、集光レンズを介して、改質領域を形成するための加工用レーザ光と共に測定用レーザ光を半導体ウェハに照射し、半導体ウェハのレーザ光入射面での測定用レーザ光の反射光を検出することで、半導体ウェハのレーザ光入射面の変位に追従するようにアクチュエータを制御し、集光レンズをその光軸方向に駆動させる装置である。
特開2004−188422号公報
しかしながら、上記レーザ加工装置には、次のような問題がある。すなわち、レーザ光の集光点の位置がレーザ光の光軸方向に変化する際の応答速度が集光レンズの重量によって制限されるため、レーザ光の集光点を切断予定ラインに沿って高速で移動させると、反り、段差、研磨による凹凸、デバイスパターンに起因する凹凸等によって半導体ウェハのレーザ光入射面の変位が大きく変化したときに、半導体ウェハのレーザ光入射面からレーザ光の集光点までの距離を一定距離に維持することができず、結果として、半導体ウェハのレーザ光入射面から改質領域までの距離を一定距離に維持することができないおそれがある。
特に、厚さが50μm以下のような薄い半導体ウェハでは、上記問題はシビアとなる。その理由は、複数のデバイスパターンが形成された半導体ウェハの表面をエキスパンドテープに貼り付けて、半導体ウェハの裏面をレーザ光入射面とすると、複数のデバイスパターンの凹凸の影響が半導体ウェハの裏面に現れて、半導体ウェハのレーザ光入射面に大きなうねりが生じることになるからである。
そこで、本発明は、レーザ光の集光点を所定ラインに沿って高速で移動させたり、薄い加工対象物に改質領域を形成したりする場合であっても、加工対象物のレーザ光入射面から改質領域までの距離を所定距離に維持することができるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
本発明のレーザ加工装置は、板状の加工対象物に設定された所定ラインに沿って加工対象物にレーザ光を照射することにより、所定ラインに沿って加工対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、加工対象物を支持する支持台と、レーザ光をパルス発振するレーザ発振器と、レーザ光を集光する集光レンズと、レーザ発振器から集光レンズに至るレーザ光の光路上に配置され、入力された正弦波信号の位相に応じて焦点距離が変化する焦点可変レンズと、レーザ光の集光点が加工対象物の内部に位置した状態で集光点が所定ラインに沿って移動するように、支持台及び集光レンズの少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、制御部は、レーザ光の発振周期を正弦波信号の所定位相に同期させ、所定ラインに沿った加工対象物のレーザ光入射面の変位情報に基づいて、集光点とレーザ光入射面との距離が所定距離に維持されるように、正弦波信号の振幅を調整する。
このレーザ加工装置では、正弦波信号の位相に応じて焦点距離が変化する焦点可変レンズが用いられて、レーザ光の発振周期が正弦波信号の所定位相に同期させられる一方で、レーザ光の集光点と加工対象物のレーザ光入射面との距離が所定距離に維持されるように正弦波信号の振幅が調整される。これにより、アクチュエータを用いて集光レンズを駆動させるだけの場合に比べ、レーザ光の集光点の位置がレーザ光の光軸方向に変化する際の応答速度を高速化することができる。よって、このレーザ加工装置によれば、レーザ光の集光点を所定ラインに沿って高速で移動させたり、薄い加工対象物に改質領域を形成したりする場合であっても、加工対象物のレーザ光入射面から改質領域までの距離を所定距離に維持することが可能となる。
本発明のレーザ加工装置では、制御部は、集光レンズとレーザ光入射面との距離が大きくなるほど正弦波信号の振幅が大きくなるように、正弦波信号の振幅を調整してもよい。これによれば、レーザ光の集光点と加工対象物のレーザ光入射面との距離を容易に且つ確実に所定距離とすることができる。
本発明のレーザ加工装置では、制御部は、レーザ光の発振周期を正弦波信号の複数の所定位相に同期させてもよい。これによれば、複数の所定位相のそれぞれについて、レーザ光の集光点と加工対象物のレーザ光入射面との距離が異なることになるので、加工対象物のレーザ光入射面からの距離が異なる複数列の改質領域を効率良く形成することができる。
本発明のレーザ加工装置は、集光レンズをその光軸方向に駆動させるアクチュエータを更に備え、制御部は、変位情報に基づいて、集光点とレーザ光入射面との距離が所定距離に維持されるように、アクチュエータを制御してもよい。このように、レーザ光の集光点の位置をレーザ光の光軸方向に変化させるために、集光レンズを駆動させるアクチュエータを焦点可変レンズと併用することで、レーザ光の集光点と加工対象物のレーザ光入射面との距離を容易に且つ確実に所定距離とすることができる。
本発明のレーザ加工装置では、制御部は、変位情報に基づいて、所定ラインに沿ったレーザ光入射面の変位波形を、第1周波数域の第1変位波形と、第1周波数域よりも高い第2周波数域の第2変位波形とに分解し、第1変位波形を変位情報として、集光点とレーザ光入射面との距離が所定距離に維持されるように、アクチュエータを制御し、第2変位波形を変位情報として、集光点とレーザ光入射面との距離が所定距離に維持されるように、正弦波信号の振幅を調整してもよい。これによれば、上述したように、レーザ光の集光点と加工対象物のレーザ光入射面との距離を容易に且つ確実に所定距離とすることができる。
本発明によれば、レーザ光の集光点を所定ラインに沿って高速で移動させたり、薄い加工対象物に改質領域を形成したりする場合であっても、加工対象物のレーザ光入射面から改質領域までの距離を所定距離に維持することができるレーザ加工装置を提供することが可能となる。
改質領域の形成に用いられるレーザ加工装置の概略構成図である。 改質領域の形成の対象となる加工対象物の平面図である。 図2の加工対象物のIII−III線に沿っての断面図である。 レーザ加工後の加工対象物の平面図である。 図4の加工対象物のV−V線に沿っての断面図である。 図4の加工対象物のVI−VI線に沿っての断面図である。 本発明の第1実施形態のレーザ加工装置の概略構成図である。 図7のレーザ加工装置において実施されるレーザ加工方法を説明するための図である。 図7のレーザ加工装置において実施されるレーザ加工方法を説明するための図である。 図7のレーザ加工装置において実施されるレーザ加工方法を説明するための図である。 本発明の第2実施形態のレーザ加工装置の概略構成図である。 図11のレーザ加工装置において実施されるレーザ加工方法を説明するための図である。 図11のレーザ加工装置において実施されるレーザ加工方法を説明するための図である。 図11のレーザ加工装置において実施されるレーザ加工方法を説明するための図である。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
本発明の第1実施形態及び第2実施形態のレーザ加工装置は、切断予定ラインに沿って加工対象物にレーザ光を照射することにより、切断予定ラインに沿って加工対象物の内部に切断の起点となる改質領域を形成する。そこで、本発明の第1実施形態及び第2実施形態のレーザ加工装置の説明に先立って、改質領域の形成について、図1〜図6を参照して説明する。
図1に示されるように、レーザ加工装置100は、レーザ光Lをパルス発振するレーザ光源101と、レーザ光Lの光軸(光路)の向きを90°変えるように配置されたダイクロイックミラー103と、レーザ光Lを集光するための集光用レンズ105と、を備えている。また、レーザ加工装置100は、集光用レンズ105で集光されたレーザ光Lが照射される加工対象物1を支持するための支持台107と、支持台107を移動させるためのステージ111と、レーザ光Lの出力やパルス幅等を調節するためにレーザ光源101を制御するレーザ光源制御部102と、ステージ111の駆動を制御するステージ制御部115と、を備えている。
このレーザ加工装置100においては、レーザ光源101から出射されたレーザ光Lは、ダイクロイックミラー103によってその光軸の向きを90°変えられ、支持台107上に載置された加工対象物1の内部に集光用レンズ105によって集光される。これと共に、ステージ111が移動させられ、加工対象物1がレーザ光Lに対して切断予定ライン5に沿って相対移動させられる。これにより、切断予定ライン5に沿った改質領域が加工対象物1に形成されることとなる。
加工対象物1としては、種々の材料(例えば、ガラス、半導体材料、圧電材料等)からなる板状の部材(例えば、基板、ウェハ等)が用いられる。図2に示されるように、加工対象物1には、加工対象物1を切断するための切断予定ライン5が設定されている。切断予定ライン5は、直線状に延びた仮想線である。加工対象物1の内部に改質領域を形成する場合、図3に示されるように、加工対象物1の内部に集光点Pを合わせた状態で、レーザ光Lを切断予定ライン5に沿って(すなわち、図2の矢印A方向に)相対的に移動させる。これにより、図4〜図6に示されるように、改質領域7が切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に形成され、切断予定ライン5に沿って形成された改質領域7が切断起点領域8となる。
なお、集光点Pとは、レーザ光Lが集光する箇所のことである。また、切断予定ライン5は、直線状に限らず曲線状であってもよいし、仮想線に限らず加工対象物1の表面3に実際に引かれた線であってもよい。また、改質領域7は、連続的に形成される場合もあるし、断続的に形成される場合もある。また、改質領域7は列状でも点状でもよく、要は、改質領域7は少なくとも加工対象物1の内部に形成されていればよい。また、改質領域7を起点に亀裂が形成される場合があり、亀裂及び改質領域7は、加工対象物1の外表面(表面、裏面、若しくは外周面)に露出していてもよい。
ここでのレーザ光Lは、加工対象物1を透過すると共に加工対象物1の内部の集光点P近傍にて特に吸収され、これにより、加工対象物1に改質領域7が形成される(すなわち、内部吸収型レーザ加工)。よって、加工対象物1の表面3ではレーザ光Lが殆ど吸収されないので、加工対象物1の表面3が溶融することはない。一般的に、表面3から溶融され除去されて穴や溝等の除去部が形成される(表面吸収型レーザ加工)場合、加工領域は表面3側から徐々に裏面側に進行する。
本実施形態で形成される改質領域は、密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲とは異なる状態になった領域をいう。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等があり、これらが混在した領域もある。更に、改質領域としては、加工対象物の材料において改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域や、格子欠陥が形成された領域がある(これらをまとめて高密転移領域ともいう)。
また、溶融処理領域や屈折率変化領域、改質領域の密度が非改質領域の密度と比較して変化した領域、格子欠陥が形成された領域は、更に、それら領域の内部や改質領域と非改質領域との界面に亀裂(割れ、マイクロクラック等)を内包している場合がある。内包される亀裂は改質領域の全面に渡る場合や一部分のみや複数部分に形成される場合がある。加工対象物1としては、例えばシリコン、ガラス、LiTaO又はサファイア(Al)からなる基板やウェハ、又はそのような基板やウェハを含むものが挙げられる。
また、本実施形態においては、切断予定ライン5に沿って改質スポット(加工痕)を複数形成することによって、改質領域7を形成している。改質スポットとは、パルスレーザ光の1パルスのショット(つまり1パルスのレーザ照射:レーザショット)で形成される改質部分であり、改質スポットが集まることにより改質領域7となる。改質スポットとしては、クラックスポット、溶融処理スポット若しくは屈折率変化スポット、又はこれらの少なくとも1つが混在するもの等が挙げられる。
この改質スポットについては、要求される切断精度、要求される切断面の平坦性、加工対象物の厚さ、種類、結晶方位等を考慮して、その大きさや発生する亀裂の長さを適宜制御することが好ましい。
[第1実施形態]
図7に示されるように、レーザ加工装置10Aは、板状の加工対象物1を支持する支持台11と、レーザ光Lをパルス発振するレーザ発振器12と、レーザ光Lを集光する集光レンズ13と、焦点可変レンズ14と、制御部20と、を備えている。加工対象物1は、表面1aに複数のデバイスパターンがマトリックス状に形成された半導体ウェハであり、表面1aがエキスパンドテープに貼り付けられた状態で支持台11上に載置されている。加工対象物1には、隣り合うデバイスパターンの間を通るように複数の切断予定ライン(所定ライン)5が格子状に設定されている。
レーザ加工装置10Aでは、加工対象物1の裏面1bをレーザ光入射面2として各切断予定ラインに沿って加工対象物1にレーザ光Lが照射され、それにより、各切断予定ライン5に沿って加工対象物1の内部に改質領域7(溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域、これらが混在した領域等)が形成される。そして、改質領域7が形成された後にエキスパンドテープが拡張されると、改質領域7から伸展した亀裂が加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達し、それにより、加工対象物1は、各切断予定ライン5に沿って複数のチップに切断される。なお、加工対象物1の表面1aがレーザ光入射面2とされてもよい。また、改質領域7から伸展した亀裂は、改質領域7が形成された時点で自然に(エキスパンドテープの拡張等による外力を印加しなくても)加工対象物1の表面1a及び裏面1bに到達する場合もある。
焦点可変レンズ14には、レーザ発振器12から出射されてミラー15によって反射されたレーザ光Lが入射する。そして、焦点可変レンズ14から出射されたレーザ光Lは、集光レンズ13に入射する。つまり、焦点可変レンズ14は、レーザ発振器12から集光レンズ13に至るレーザ光Lの光路上に配置されている。
焦点可変レンズ14は、制御部20から入力された高周波信号(電圧値、電流値等の強度が時間に対して正弦的に変化する正弦波信号)の位相に応じて焦点距離が変化するレンズである。一例として、焦点可変レンズ14は、レーザ光Lを通過させ得るレンズケースと、当該レンズケース内に封入されたレンズ液に高周波を付与するピエゾ素子と、を有している。このように構成された焦点可変レンズ14では、ピエゾ素子に高周波信号が入力されると、レンズケース内に封入されたレンズ液の屈折率が変化して、出射されるレーザ光Lの発散角(集光角)が高周波信号の位相に応じて変化する。このような焦点可変レンズ14としては、TAG OPTICS社製のTAG(Tunable Acoustic Gradient)レンズを用いることができる。なお、焦点可変レンズ14として、非線形光学結晶の屈折率変化を用いてもよい。
制御部20は、集光点移動制御部21と、集光点深さ制御部22と、電圧印加電源23と、レーザ駆動電源24と、を有している。なお、制御部20において、集光点移動制御部21、集光点深さ制御部22、電圧印加電源23及びレーザ駆動電源24は、それぞれ別々にソフトウェア又はハードウェアとして構成されていてもよいし、複数まとまってソフトウェア又はハードウェアとして構成されていてもよい。
集光点移動制御部21は、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部に位置した状態で集光点Pが切断予定ライン5に沿って移動するように、支持台11及び集光レンズ13の少なくとも一方を制御する。つまり、集光点移動制御部21は、切断予定ライン5に沿って集光点Pを相対的に移動させることができれば、支持台11のみを駆動させてもよいし、集光レンズ13のみを駆動させてもよいし、或いは、支持台11及び集光レンズ13の両方を駆動させてもよい。
集光点深さ制御部22は、各切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報(各切断予定ライン5に沿った「集光レンズ13の光軸に垂直な基準面からレーザ光入射面2までの距離」を示す情報)に基づいて、集光点Pとレーザ光入射面2との距離が一定距離に維持されるように、焦点可変レンズ14に入力する高周波信号の振幅を調整する(詳細は後述する)。
ここで、各切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報は、一例として、次のように取得される。すなわち、測定用レーザ光源から出射された測定用レーザ光を、集光レンズ13を介して加工対象物1に照射する。そして、レーザ光入射面2で反射された測定用レーザ光の反射光を、集光レンズ13及び整形光学系(シリンドリカルレンズと平凸レンズとからなる光学系)を介して4分割位置検出素子(フォトダイオードを4等分してなる受光素子)で検出する。4分割位置検出素子上に集光された測定用レーザ光の反射光の集光像パターンは、集光レンズ13による測定用レーザ光の集光点がレーザ光入射面2に対してどの位置にあるかによって変化する。換言すれば、集光像パターンに基づいて、集光レンズ13による測定用レーザ光の集光点に対してレーザ光入射面2がどの位置にあるかが分かる。したがって、各切断予定ライン5に沿って測定用レーザ光を加工対象物に照射し、そのときの測定用レーザ光の反射光の集光パターンを4分割位置検出素子で検出することにより、集光レンズ13による測定用レーザ光の集光点と上記基準面との位置関係に基づいて、各切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報を取得することができる。
電圧印加電源23は、焦点可変レンズ14に入力する高周波信号に対しての位相又は生成パルスに対して外部トリガ信号をレーザ駆動電源24に出力する。レーザ駆動電源24は、レーザ発振器12におけるレーザ光Lの出力、繰り返し周波数等を制御するが、ここでは、電圧印加電源23から入力された外部トリガ信号に従って、レーザ発振器12にレーザ光Lをパルス発振させる。このようにして、電圧印加電源23及びレーザ駆動電源24は、焦点可変レンズ14に入力する高周波信号の所定位相に、レーザ発振器12におけるレーザ光Lの発振周期を同期させる(詳細は後述する)。
次に、レーザ加工装置10Aにおいて実施されるレーザ加工方法について説明する。まず、図8に示されるように、制御部20は、各切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報(各切断予定ライン5に沿った「集光レンズ13の光軸に垂直な基準面RPからレーザ光入射面2までの距離」を示す情報)を取得する。なお、図8には、1本の切断予定ライン5を通り且つ基準面RPに垂直な平面における加工対象物1の断面が示されている。
続いて、図9に示されるように、制御部20は、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部に位置した状態で集光点Pが切断予定ライン5に沿って移動するように、支持台11及び集光レンズ13の少なくとも一方を制御する。同時に、制御部20は、焦点可変レンズ14に入力する高周波信号Sの所定位相に、レーザ発振器12におけるレーザ光Lの発振周期T2を同期させて、レーザ発振器12にレーザ光Lをパルス発振させる。ここでは、レーザ発振器12におけるレーザ光Lの発振周期T2は、高周波信号Sの周期T1の3倍となっており、高周波信号Sの3π/2radの位相(下側のピーク値)に同期させられている。具体例として、高周波信号Sの周期T1は1Hz〜10MHzであり、レーザ光Lの発振周期T2は1kHz〜10MHzである。
このとき、制御部20は、切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報に基づいて、集光点Pとレーザ光入射面2との距離D2が一定距離に維持されるように、高周波信号Sの振幅Aを調整する。より具体的には、制御部20は、集光レンズ13とレーザ光入射面2との距離D1が大きくなるほど高周波信号Sの振幅Aが大きくなるように、高周波信号Sの振幅Aを調整する。なお、制御部20は、振幅A、距離D1及び距離D2の相互間の関係を予め記憶している。
これにより、焦点可変レンズ14に入射したレーザ光Lは、高周波信号Sの振幅Aに対応する発散角で集光レンズ13に入射することになる。そして、レーザ光Lの1パルスのレーザ照射によって形成された改質スポット70とレーザ光入射面2との距離は、一定距離に維持されることになる。すなわち、複数の改質スポット70からなる改質領域7は、レーザ光入射面2からの距離が一定距離に維持された状態で、切断予定ライン5に沿って形成されることになる。なお、図9には、(a)焦点可変レンズ14に入力する高周波信号Sの波形、(b)レーザ発振器12における出力波形、並びに(c)図8と同様の平面における加工対象物1の断面、焦点可変レンズ14、集光レンズ13及びレーザ光Lが示されている。
以上説明したように、レーザ加工装置10Aでは、高周波信号Sの位相に応じて焦点距離が変化する焦点可変レンズ14が用いられて、レーザ光Lの発振周期が高周波信号Sの所定位相に同期させられる一方で、レーザ光Lの集光点Pと加工対象物1のレーザ光入射面2との距離が一定距離に維持されるように高周波信号Sの振幅が調整される。これにより、アクチュエータを用いて集光レンズ13を駆動させるだけの場合に比べ、数十倍〜数百倍のオーダーで、レーザ光Lの集光点Pの位置がレーザ光Lの光軸方向に変化する際の応答速度を高速化することができる。よって、レーザ加工装置10Aによれば、レーザ光Lの集光点Pを切断予定ライン5に沿って高速で移動させたり、薄い加工対象物1に改質領域7を形成したりする場合であっても、加工対象物1のレーザ光入射面2から改質領域7までの距離を一定距離に維持することが可能となる。
また、レーザ加工装置10Aでは、制御部20が、集光レンズ13とレーザ光入射面2との距離が大きくなるほど高周波信号Sの振幅が大きくなるように、高周波信号Sの振幅を調整するので、レーザ光Lの集光点Pと加工対象物1のレーザ光入射面2との距離を容易に且つ確実に一定距離とすることができる。
また、1本の切断予定ライン5に対して、加工対象物1の厚さ方向に並ぶように複数列の改質領域7を形成する場合には、制御部20は、レーザ光Lの発振周期を高周波信号Sの複数の所定位相に同期させる。より具体的には、図10に示されるように、制御部20は、焦点可変レンズ14に入力する高周波信号Sの複数の所定位相に、レーザ発振器12におけるレーザ光Lの発振周期T2を同期させて、レーザ発振器12にレーザ光Lをパルス発振させる。ここでは、レーザ発振器12におけるレーザ光Lの発振周期T2は、高周波信号Sの周期T1の1.5倍となっており、高周波信号Sの3π/2radの位相(下側のピーク値)とπ/2radの位相(上側のピーク値)とに同期させられている。
このとき、制御部20は、切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報に基づいて、集光点Pとレーザ光入射面2との距離D2a(レーザ光Lの発振タイミングが高周波信号Sの3π/2radの位相のとき)及び距離D2b(レーザ光Lの発振タイミングが高周波信号Sのπ/2radの位相のとき)がそれぞれ一定距離に維持されるように、高周波信号Sの振幅Aを調整する。より具体的には、制御部20は、集光レンズ13とレーザ光入射面2との距離D1が大きくなるほど高周波信号Sの振幅Aが大きくなるように、高周波信号Sの振幅Aを調整する。ここで、焦点可変レンズ14から出射されるレーザ光Lの発散角は、高周波信号Sの振幅Aが同じであっても、高周波信号Sの位相に応じて変化するため、レーザ光Lは、その発振タイミングによって、レーザ光入射面2から距離D2a及び距離D2bの位置に集光されることになる。なお、制御部20は、振幅A、距離D1、距離D2a及び距離D2bの相互間の関係を予め記憶している。
これにより、焦点可変レンズ14に入射したレーザ光Lは、高周波信号Sの振幅A及び位相に対応する発散角で集光レンズ13に入射することになる。そして、高周波信号Sの3π/2radの位相のときに発振されたレーザ光Lの1パルスのレーザ照射によって形成された改質スポット70aとレーザ光入射面2との距離は、一定距離に維持されることになる。すなわち、複数の改質スポット70aからなる改質領域7aは、レーザ光入射面2からの距離が一定距離に維持された状態で、切断予定ライン5に沿って形成されることになる。同様に、高周波信号Sのπ/2radの位相のときに発振されたレーザ光Lの1パルスのレーザ照射によって形成された改質スポット70bとレーザ光入射面2との距離は、一定距離に維持されることになる。すなわち、複数の改質スポット70bからなる改質領域7bは、レーザ光入射面2からの距離が一定距離に維持された状態で、切断予定ライン5に沿って形成されることになる。なお、レーザ光Lの発振周期を高周波信号Sの3つ以上の所定位相に同期させれば、加工対象物1のレーザ光入射面2からの距離が異なる3列以上の改質領域7が形成される。1本の切断予定ライン5に対する改質領域7の列数は、加工対象物1の厚さ等に応じて適宜決定することができる。
以上のように、レーザ光Lの発振周期を高周波信号Sの複数の所定位相に同期させることで、複数の所定位相のそれぞれについて、レーザ光Lの集光点Pと加工対象物1のレーザ光入射面2との距離が異なることになるので、加工対象物1のレーザ光入射面2からの距離が異なる複数列の改質領域7を1度のレーザ光Lのスキャンで効率良く形成することができる。
[第2実施形態]
図11に示されるように、レーザ加工装置10Bは、アクチュエータ16を更に備える点、及び制御部20がアクチュエータ駆動電源25を更に有する点で、上述したレーザ加工装置10Aと主に相違している。アクチュエータ16は、ピエゾ素子等を利用したものであり、アクチュエータ駆動電源25から出力された駆動信号によって動作し、集光レンズ13をその光軸方向に駆動させる。
このレーザ加工装置10Bでは、以下のように、レーザ加工方法が実施される。まず、図12に示されるように、制御部20は、各切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報(各切断予定ライン5に沿った「集光レンズ13の光軸に垂直な基準面RPからレーザ光入射面2までの距離」を示す情報)を取得する。続いて、制御部20は、当該変位情報に基づいて、切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位波形Wを、第1周波数域の第1変位波形W1と、第1周波数域よりも高い第2周波数域の第2変位波形W2とに分解する。制御部20は、高速フーリエ変換(FFT)による周波数解析を実行することで、変位波形Wを第1変位波形W1と第2変位波形W2とに分解する。なお、図12には、(a)1本の切断予定ライン5を通り且つ基準面RPに垂直な平面における加工対象物1の断面、並びに(b)変位波形W、第1変位波形W1及び第2変位波形W2が示されている。
続いて、図13に示されるように、制御部20は、レーザ光Lの集光点Pが加工対象物1の内部に位置した状態で集光点Pが切断予定ライン5に沿って移動するように、支持台11及び集光レンズ13の少なくとも一方を制御する。同時に、制御部20は、第1変位波形W1を切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報として、集光点Pとレーザ光入射面2との距離D2が一定距離に維持されるように、アクチュエータ16を制御する(すなわち、集光レンズ13が第1変位波形W1に追従するように、アクチュエータ16を制御する)。更に同時に、制御部20は、第2変位波形W2を切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報として、上述したレーザ加工装置10Aと同様に、集光点Pとレーザ光入射面2との距離D2が一定距離に維持されるように、高周波信号Sの振幅Aを調整する。
これにより、焦点可変レンズ14に入射したレーザ光Lは、高周波信号Sの振幅Aに対応する発散角で集光レンズ13に入射することになる。そして、アクチュエータ16による集光レンズ13の駆動と相俟って、レーザ光Lの1パルスのレーザ照射によって形成された改質スポット70とレーザ光入射面2との距離は、一定距離に維持されることになる。すなわち、複数の改質スポット70からなる改質領域7は、レーザ光入射面2からの距離が一定距離に維持された状態で、切断予定ライン5に沿って形成されることになる。なお、図13には、図12と同様の平面における加工対象物1の断面、焦点可変レンズ14、集光レンズ13及びレーザ光Lが示されている。
以上説明したように、レーザ加工装置10Bでは、レーザ光Lの集光点Pの位置をレーザ光Lの光軸方向に変化させるために、集光レンズ13を駆動させるアクチュエータ16を焦点可変レンズ14と併用することで、レーザ光Lの集光点Pと加工対象物1のレーザ光入射面2との距離を容易に且つ確実に一定距離とすることが可能となっている。なお、レーザ加工装置10Bにおいても、第2変位波形W2を切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報として、レーザ光Lの発振周期を高周波信号Sの複数の所定位相に同期させれば、加工対象物1のレーザ光入射面2からの距離が異なる複数列の改質領域7を1度のレーザ光Lのスキャンで効率良く形成することができる。
参考として、図14に示されるように、高周波信号Sの振幅Aを一定とする一方で、集光点Pとレーザ光入射面2との距離D2a及び距離D2bがそれぞれ一定距離に維持されるように、アクチュエータ16のみによって、集光レンズ13を変位波形Wに追従させることができれば、レーザ光Lの発振周期を高周波信号Sの複数の所定位相に同期させることで、加工対象物1のレーザ光入射面2からの距離が異なる複数列の改質領域7を1度のレーザ光Lのスキャンで効率良く形成することができる。
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は、上記第1及び第2実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1及び第2実施形態では、集光点Pとレーザ光入射面2との距離が一定距離に維持されるように、レーザ光Lの照射を実施したが、切断予定ライン5に応じて当該距離を変化させたり、1本の切断予定ラインの途中で当該距離を変化させたりするなど、集光点Pとレーザ光入射面2との距離が所定距離に維持されるように、レーザ光Lの照射を実施することもできる。また、各切断予定ライン5に沿ったレーザ光入射面2の変位情報の取得は、測定用レーザ光を加工対象物1に照射して測定用レーザ光の反射光を検出しつつ、レーザ光Lを加工対象物1に照射することで、加工対象物1に対するレーザ光Lの照射と同時に実施することもできる。
10A,10B…レーザ加工装置、11…支持台、12…レーザ発振器、13…集光レンズ、14…焦点可変レンズ、16…アクチュエータ、20…制御部。

Claims (5)

  1. 板状の加工対象物に設定された所定ラインに沿って前記加工対象物にレーザ光を照射することにより、前記所定ラインに沿って前記加工対象物に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、
    前記加工対象物を支持する支持台と、
    前記レーザ光をパルス発振するレーザ発振器と、
    前記レーザ光を集光する集光レンズと、
    前記レーザ発振器から前記集光レンズに至る前記レーザ光の光路上に配置され、入力された正弦波信号の位相に応じて焦点距離が変化する焦点可変レンズと、
    前記レーザ光の集光点が前記加工対象物の内部に位置した状態で前記集光点が前記所定ラインに沿って移動するように、前記支持台及び前記集光レンズの少なくとも一方を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    前記レーザ光の発振周期を前記正弦波信号の所定位相に同期させ、
    前記所定ラインに沿った前記加工対象物のレーザ光入射面の変位情報に基づいて、前記集光点と前記レーザ光入射面との距離が所定距離に維持されるように、前記正弦波信号の振幅を調整する、レーザ加工装置。
  2. 前記制御部は、前記集光レンズと前記レーザ光入射面との距離が大きくなるほど前記正弦波信号の前記振幅が大きくなるように、前記正弦波信号の前記振幅を調整する、請求項1記載のレーザ加工装置。
  3. 前記制御部は、前記レーザ光の前記発振周期を前記正弦波信号の複数の前記所定位相に同期させる、請求項1又は2記載のレーザ加工装置。
  4. 前記集光レンズをその光軸方向に駆動させるアクチュエータを更に備え、
    前記制御部は、前記変位情報に基づいて、前記集光点と前記レーザ光入射面との前記距離が前記所定距離に維持されるように、前記アクチュエータを制御する、請求項1〜3のいずれか一項記載のレーザ加工装置。
  5. 前記制御部は、
    前記変位情報に基づいて、前記所定ラインに沿った前記レーザ光入射面の変位波形を、第1周波数域の第1変位波形と、前記第1周波数域よりも高い第2周波数域の第2変位波形とに分解し、
    前記第1変位波形を前記変位情報として、前記集光点と前記レーザ光入射面との前記距離が前記所定距離に維持されるように、前記アクチュエータを制御し、
    前記第2変位波形を前記変位情報として、前記集光点と前記レーザ光入射面との前記距離が前記所定距離に維持されるように、前記正弦波信号の前記振幅を調整する、請求項4記載のレーザ加工装置。
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