JP2015017065A - ノロウイルスのウイルス様粒子を含む医薬組成物 - Google Patents

ノロウイルスのウイルス様粒子を含む医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 有効性の高いノロウイルス感染症の予防及び治療手段を提供する。【解決手段】 GI-3に分類されるノロウイルスのウイルス様粒子と、GII-4に分類されるノロウイルスのウイルス様粒子とを含む医薬組成物。【選択図】 なし

Description

本発明は、ノロウイルスのウイルス様粒子を含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、ノロウイルに対するワクチンとして有用である。
ノロウイルスは、ヒトに対して嘔吐、下痢などの急性胃腸炎を引き起こすウイルスであり、カキなどの摂食による食中毒の原因になるほか、ヒトの糞便や吐瀉物などを介して経口的に感染する。
ウイルスに対するワクチンの開発には、そのウイルスを実験室内で培養、増殖させることが必要であるが、ノロウイルスについてはそのような培養系が未だ確立されていない。このため、ノロウイルスワクチンの開発については、他のウイルスワクチンに比べ著しく遅れているのが現状である。
ノロウイルスゲノムの構造タンパク質領域をバキュロウイルスベクターに組み込み、昆虫細胞で発現させると、ウイルス様粒子(VLP)と呼ばれるウイルス粒子と類似した粒子が形成されることが知られている。VLPはウイルス粒子と外観上類似しているが内部にはウイルスゲノムを持たず、感染性を示さない。
最近、このVLPを抗原としたノロウイルスワクチンが開発され、特許出願も行われている(特許文献1、特許文献2)。
特許文献1には、VLPなどのノロウイルス抗原とアジュバントを含むワクチン製剤が記載されており、好ましいVLPの調製法としてバキュロウイルス−昆虫細胞発現系を用いる方法が記載されている。
特許文献2には、複数のノロウイルス流行株のアミノ酸配列を基に設計されたウイルス様粒子とそれを含むワクチン製剤が記載されている。
特表2010-505766号公報 特表2011-530295号公報
ノロウイルスは、VLPを構成する構造タンパク質VP1のアミノ酸配列に基づいて、Group I(GI)、Group II(GII)などの幾つかのグループに分類される。また、各Groupは更にgenotypeによって細かく分類される。
特許文献1の実施例には、GI-1に分類されるノーウォーク株のVLPが記載されているが、GI-3に分類されるウイルス株のVLPは記載されていない。特許文献2の実施には、Houston株、Minerva株、Laurens株の3種類のGII-4に分類されるウイルス株のVP1のアミノ酸配列を基に新たにVP1のアミノ酸配列を設計し、そのような複合VP1からVLPを製造したことが記載されている。但し、GII-4に分類されるウイルス株自体のVLPは記載されていない。
ノロウイル感染症の流行の多くは、GII-4に分類されるノロウイルス株が原因となっている。また、本発明者は、ノロウイルス感染症の発生件数とその原因となったGroup Iに分類されるノロウイルス株との関係を、NoroNet(ノロウイルス感染症の疫学データを集めたウェブサイト)などで調べたところ、2000年より前は、GI-1に分類されるウイルス株による感染例が多かったが、2000年以降はGI-3に分類されるウイルス株による感染例の方が多くなっていた(図1)。
上記のように特許文献1の実施例には、GI-3に分類されるウイルス株のVLPは記載されておらず、また、特許文献2には、実際に存在したGII-4に分類されるノロウイルス株のVLPは開示されていない。従って、これらの特許文献に記載されているVLPから作製されるワクチンでは、今後発生するノロウイルス感染症の流行に十分に対応できない可能性がある。
本発明は、上記事情に鑑み、ノロウイルス感染症に対するより有効性の高い予防及び治療手段を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、GI-3に分類されるノロウイルスのVLPとGII-4に分類されるノロウイルスのVLPとを組み合わせることにより、有効性の高いノロウイルスワクチンを作製できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(5)を提供する。
(1)GI-3に分類されるノロウイルスのウイルス様粒子と、GII-4に分類されるノロウイルスのウイルス様粒子とを含む医薬組成物。
(2)ウイルス様粒子が、ノロウイルスの核酸配列を発現させて作製した組換ウイルス様粒子である(1)に記載の医薬組成物。
(3)ウイルス様粒子が、バキュロウイルスベクターに組み込まれたノロウイルスの核酸配列を昆虫細胞内で発現させて作製した組換ウイルス様粒子である(1)に記載の医薬組成物。
(4)ノロウイルスの核酸配列が、構造タンパク質VP1をコードする核酸配列である(2)又は(3)に記載の医薬組成物。
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の医薬組成物を含むワクチン製剤。
本発明の医薬組成物は、現在のノロウイルス感染症の流行の主体となっているGII-4と最近感染が増加する傾向にあるGI-3という二種類のウイルスタイプのVLPを含むのでノロウイルス感染症に対し、極めて有効な予防及び治療薬となる。
GI-1ノロウイルス又はGI-3ノロウイルスによるノロウイルス感染症の発生件数を表すグラフ。横軸は年度(2000年〜2012年)を表し、縦軸は発生件数を表す。 左図はGI-3原薬の電気泳動の結果を示す写真である。各レーンは、左から順に、分子量マーカー、4回の独立した精製で得られた4ロットの原薬を各10μLアプライした場合を示す。右図は、GI-3 VLPの電子顕微鏡写真を示す(倍率5万倍)。 左図はGII-4原薬の電気泳動の結果を示す写真である。各レーンは、左から順に、10μLのサンプル、5μLのサンプル、2.5μLのサンプル、1μLのサンプル、分子量マーカーをアプライした場合を示す。右図は、GII-4 VLPの電子顕微鏡写真を示す(倍率5万倍)。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の医薬組成物は、GI-3に分類されるノロウイルスのウイルス様粒子と、GII-4に分類されるノロウイルスのウイルス様粒子とを含むものである。
本発明においてノロウイルスとは、カリシウイルス科ノロウイルス属に属するウイルスを意味する。現在、ノロウイルス属に属するウイルスは、ノーウォークウイルス(Norwalk virus)だけであるが、今後、この属に属するウイルスが新たに見つかれば、そのウイルスも本発明における「ノロウイルス」に含まれる。
GI-3(Group I, genotype 3)及びGII-4(Group II, genotype 4)は、ノロウイルスにおいて通常用いられる分類法に従って分類されたものである。このような分類法は、例えば、Genetic and antigenic diversity among noroviruses. Hansman, GS. et al. Journal of General Virology 87, 909-919 (2006)に記載されている。
本発明においてウイルス様粒子とは、ウイルスの外殻のみ持ち、内部にはウイルスゲノムを持たない中空の粒子をいう。
GI-3に分類されるノロウイルス株としては、実施例1に記載したタンペレ大学の入院患者から採取したウイルス株、デザートシールドウイルス株(U04469)などを例示できる。
GII-4に分類されるノロウイルス株としては、実施例2に記載したタンペレ大学の入院患者から採取したウイルス株、ブリストルウイルス株、ローズスデールウイルス(X86557)などを例示できる。
ウイルス様粒子は、公知の方法(例えば、Norovirus VLPs and rotavirus VP6 protein as combined vaccine for childhood gastroenteritis. Blazevic V, Lappalainen S, Nurminen K, Huhti L, Vesikari T. Vaccine. 29, 8126-8133 (2011))に従って調製することができる。具体的には、以下のように調製することができる。まず、市販のベクターにノロウイルスのVP1をコードする核酸配列を組み込み、この組換えベクターを宿主細胞に導入し、前記核酸配列を発現させる。次いで、宿主細胞を一定期間培養し、その培養物からVP1を精製する。精製されたVP1は、自己会合し、ウイルス様粒子を形成する。
ウイルス様粒子の調製には、ノロウイルスのVP1をコードする核酸配列のほかにVP2をコードする核酸配列を発現させてもよい。ノロウイルスの各ウイルス株のVP1やVP2のアミノ酸配列やそれをコードする核酸配列は、データベース上で公表されている。例えば、前述したウイルス株のVP1のアミノ酸配列等は、括弧内に記載されたAccession番号で登録されている。また、実施例1及び2に記載したウイルス株のVP1のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1及び2に記載されている。
ベクター及びそれを導入する宿主細胞としては、バキュロウイルスベクター及び昆虫細胞を用いるのが好ましい。バキュロウイルスベクターとしては、例えば、pFastBacベクター(Invitrogen)、BD BaculoGold (BD Biosciences)などを用いることができ、昆虫細胞としては、例えば、Sf9細胞、HighFive細胞などを用いることができる。
バキュロウイルスベクターを導入した昆虫細胞の培養期間は、通常、3日程度であるが(例えば、国際公開WO96/37624)、本発明においては、昆虫細胞の生存率が10%以下になるまで培養すること(例えば、5日間以上培養すること)が好ましい。このように昆虫細胞の生存率が低下するまで培養することにより、細胞の死滅により細胞の内容物が培養液中に放出されるので、細胞を破砕する処理が不要になるという利点がある。また、細胞の死滅により流出するタンパク質分解酵素が昆虫細胞由来のタンパク質を分解し、ノロウイルス由来のタンパク質の純度が向上するという利点もある。
培養物からVP1等の精製は、クロマトグラフィーなどを用いて行うことができ、例えば、特表2010-530734号公報記載の方法に従って行うことができる。好ましい精製方法としては、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーと疎水性相互作用クロマトグラフィーと陰イオン交換クロマトグラフィーと限外濾過を組み合わせた方法を例示できる。
ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーを用いた精製方法においては、洗浄、溶出などに10〜1000mM程度のリン酸バッファを用いるが(特表2010-530734号公報)、本発明においては、リン酸濃度が10mM未満、好ましくは5mM前後(3〜7mM程度)のリン酸バッファを用いるのが望ましい。
本発明の医薬組成物は、ノロウイルス感染症の予防又は治療用ワクチン製剤として使用することができる。ノロウイルスのVLPを用いたワクチン製剤は既に知られており、その製造及び使用方法も公知の文献(例えば、特表2010-505766号公報)に記載されている。従って、本発明の医薬組成物を利用したワクチン製剤は、それら公知の文献に従って製造及び使用することができる。具体的には、以下の通りである。
本発明のワクチン製剤は、安全性の面などからアジュバントを含まない方が好ましいが、含んでいてもよい。アジュバントを含む場合、それは、製薬分野において通常使用されるものでよい。例えば、フロイントの不完全アジュバントや完全アジュバント(Difco Laboratories)、メルクアジュバント65(Merck and Company, Inc.)、水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)若しくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩、カルシウム、鉄、若しくは亜鉛の塩、アシル化したチロシンの不溶性懸濁液、アシル化した糖、陽イオン性若しくは陰イオン性に誘導体化した多糖、ポリホスファゼン、生分解性ミクロスフェア、トール様受容体(TLR)作用薬、一リン酸化脂質A(MPL)、合成脂質A、脂質Aミメティックまたは類似体、サイトカイン、サポニン、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpGオリゴ、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)、ポリホスファゼン、乳剤、ビロゾーム、コクリエート、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLG)微粒子、ポロキサマー粒子、微粒子、リポソームなどを使用することができる。
アジュバントの量は、製薬分野において通常使用される量でよい。具体的には、アジュバントを使用しない場合に比べ免疫反応を通常5%以上、好ましくは25%以上、更に好ましくは50%以上増大させる量を使用することができる。
本発明のワクチン製剤は、送達部位におけるVLPの取込みを増強させるように機能する送達剤や送達部位のVLPの保持時間を増大させるように機能する送達剤(例えば、VLPの排出を遅らせる送達剤)を含んでいてもよい。このような送達剤は、生物付着剤であってよい。生物付着剤としては、例えば、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸コンドロイチン、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、ヒアルロナン)、炭水化物ポリマー(例えば、ペクチン、アルギン酸塩、グリコーゲン、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、スタキオース、イヌリン、デキストリン、デキストラン)、ポリ(アクリル酸)の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖(ムチン、および他のムコ多糖を含む)、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、タンパク質(例えば、レクチン、線毛タンパク質)、又はデオキシリボ核酸などを挙げることができる。
本発明のワクチン製剤の投与方法は特に限定されず、注射(例えば、静脈内、皮下、および筋肉内)によって投与してもよいし、粘膜投与(例えば、経口、経鼻、また肺)、眼を通じた投与、経皮的投与、坐剤による投与であってもよい。投与は、パッチ、針、カテーテル、または特定の装置を用いた投与であってもよい。投与回数は、一回の投与であってもよく、複数回の投与であってもよい。
本発明のワクチン製剤を呼吸器(例えば、鼻)の粘膜に送達しようとする場合、本発明のワクチンをエアロゾルまたは点鼻薬として投与するための水溶液として製剤化することができる。また、例えば、鼻道内に沈着させるための乾燥粉末として製剤化することも可能である。点鼻薬とする場合、例えば、保存剤、粘度調整剤、等張化剤、緩衝剤などを含んでいてもよい。粘度調整剤としては、微結晶性セルロース、キトサン、デンプン、多糖などを例示できる。乾燥粉末として製剤化する場合、例えば、粘膜付着剤、増量剤などを含んでいてもよい。増量剤としては、マンニトール、ショ糖、トレハロース、キシリトールなどを例示できる。
本発明のワクチン製剤の投与量は、投与対象の症状、年齢、体重、投与形態等によって異なるが、ワクチン製剤中のVLP量が、好ましくは1μg〜10mg、更に好ましくは2〜400μgとなるように投与する。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕GI-3 VLPの作製
(1)ハイドロキシアパタイト工程
1 機器及び試薬
ハイドロキシアパタイト工程で使用した機器、試薬等を下表に示した。
2 バッファ
2.1 CHT平衡化バッファ(CHT EQW) ; 25 mM MES バッファ, pH7.0
MES 159.9 gと5 M NaOH溶液125.7 gとMilliQ (登録商標)29.7 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し(pH6.6)、23.5 g の5 M NaOH溶液を加え、バッファのpHがpH 7.0になるように調整した。得られたバッファは、2-8℃で保管した。
2.2 CHT 溶出バッファ1 (CHT ELU1) ; 5 mM リン酸バッファ, pH7.5
NaH2PO4・2H2O 1.93 gとNa2HPO4・12H2O 13.47 gと MilliQ (登録商標)10.0 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し、pHが7.5であることを確認した。得られたバッファは、2-8℃で保管した。
2.3 CHT 再生バッファ1 (CHT REG1) ; 500 mM リン酸ナトリウムバッファ(中性)
NaH2PO4・2H2O 156 gとNa2HPO4・12H2O 537.5 gとMilliQ(登録商標)4.3 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し、pHが6.7であることを確認した。得られたバッファは、室温で保管した。
2.4 CHT 再生バッファ2 (CHT REG2) ; 1M NaCl, 6 M尿素 含有5 mM リン酸バッファ(中性)
尿素1802 gとNaH2PO4・2H2O 3.9 gと Na2HPO4・12H2O 8.95 gと NaCl 292.5 gとMilliQ (登録商標)2.9 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し、pHがpH7.0であることを確認した。得られたバッファは、室温で保管した。
2.5 1N NaOH溶液
NaOH 400 gとMilliQ(登録商標) 9.8 kgを室温で5分間混合した。得られた溶液は、室温で保管した。
2.6 0.1N NaOH溶液
NaOH 40 gとMilliQ(登録商標) 10.0 kgを室温で5分間混合した。得られた溶液は、室温で保管した。
3 方法
3.1 組換えバキュロウイルスの作製
GI-3に分類されるノロウイルスのウイルス株(タンペレ大学の入院患者から採取)のVP1(アミノ酸配列を配列番号1に示す。)をコードするcDNAをトランスファープラスミドpFastBac(Invitrogen)に組み込んだ。次にcDNAを組み込んだトランスファープラスミドを、バキュロウイルスゲノムDNAを保持する大腸菌であるDH10Bac(Invitrogen)に導入し、相同組換えによってノロウイルスVP1をコードするcDNAをバキュロウイルスゲノムDNAに組み込んだ。大腸菌からバキュロウイルスゲノムDNAを抽出精製し、昆虫細胞(expresSF+細胞、Protein Sciences)に導入して培養した。この培養上清から組換えバキュロウイルスを得た。
3.2 GI-3 VP1発現のための培養
組換えバキュロウイルを昆虫細胞(expresSF+細胞)(1x106/mL)にMOI=1となるように加えた。その後、生存率が10%以下になるまで、5-6日間細胞の培養を行った。
3.3 回収と精製
およそ14LのGI-3 VP1発現培養液を連続式遠心分離機(MN1, KOKUSAN)にかけ(遠心力:5,000 x g、流速:約4 mL/sec)、上清を回収した。回収した上清を流速約200 mL/min以上で濾過し、CHTカラムにかけた。
3.4 カラムの調製
CHT Type I 樹脂 3L (1.8 kg powder)をカラム(φ20 cm x height 9.55 cm)に充填し、0.1 N NaOH溶液で保管した。
3.5 カラムクロマトグラフィー
3.5.1 予洗
3CV(カラム体積)のMilliQ(登録商標)を流速63 cm/h (330 mL/min)でカラム上にロードした。
3.5.2 平衡化
5CVの平衡化バッファ(CHT EQW ; 25 mM MESバッファ, pH7.0) を流速63 cm/h (330 mL/min)でカラム上にロードした。
3.5.3 サンプルのロード
約14Lの濾過した培養液の上清を、流速63 cm/h (330 mL/min)で、平衡化したCHTカラム上にロードした。1mLの素通りしたサンプルを幾つかの時点で(例えば、サンプル量が1、3、及び5CVとなった時点)で採取した。
3.5.4 洗浄
4CVの平衡化バッファ(CHT EQW ; 25 mM MESバッファ, pH7.0)を流速63 cm/h (330 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLの素通りしたバッファを幾つかの時点で(例えば、バッファ量が1、3、及び5CVとなった時点)で採取した。
3.5.5 溶出1
溶出バッファ1 (CHT ELU1) ; 5 mM リン酸バッファ, pH7.5)を流速63 cm/h (330 mL/min)で流し、GI-3 VP1をカラムから溶出させ、二つのピークを独立に保存した。
GI-3 VP1は、ELU1-1とELU1-2の二つの異なるピークとして溶出された。最初のピークであるELU1-1は、あとのピークであるELU1-2よりも多くのGI-3 VP1を含み、わずかに少ない宿主細胞由来のタンパク質を含んでいた。ELU1-1のみをHICクロマトグラフィーにアプライした。
3.5.6 再生1
2.6CVの再生バッファ1(CHT REG1 ; 500 mM リン酸ナトリウムバッファ)を流速63 cm/h (330 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLの溶出ピークを採取した。
3.5.7 再生2
2.6CVの再生バッファ2(CHT REG2 ; 1M NaCl, 6 M尿素 含有5 mM リン酸バッファ)を流速63 cm/h (330 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLの溶出ピークを採取した。
3.5.8 衛生化
3CVの1 N NaOH溶液を、流速63 cm/h (330 mL/min)でカラムにアプライし、1 N NaOH溶液を1時間流し続けることにより、カラムを衛生化した。
3.5.9 保存
3CVの0.1 N NaOH溶液を流速63 cm/h (330 mL/min)で流し、カラムを洗浄し、その後保存した。
(2)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(Methyl)工程
4 機器及び試薬
HIC工程で使用した機器、試薬等を下表に示した。
5 バッファ
5.1 100mM Na2HPO4溶液
Na2HPO4・12H2O 358.1 gをMilliQ (登録商標)で溶かし、10 Lになるようにした。5分間室温で混合し、得られた溶液は2-8℃で保管した。
5.2 100mM NaH2PO4溶液
NaH2PO4・2H2O 156.0 gをMilliQ (登録商標)で溶かし、10 Lになるようにした。5分間室温で混合し、得られた溶液は2-8℃で保管した。
5.3 100mM リン酸バッファ, pH7.0
100mM Na2HPO4溶液7 Lと100mM NaH2PO4溶液4.3 Lを室温で5分間混合した。バッファのpHを、硫酸アンモニウムを用いずにpH 7.0にした。得られたバッファは2-8℃で保管した。
5.4 飽和硫酸アンモニウム溶液(AS)
硫酸アンモニウム500gを500mLのMilliQ(登録商標)に加え、室温で一晩攪拌し、その後、室温で保存した。上清を4.1M(飽和)硫酸アンモニウム溶液として使用した。
5.5 HIC 平衡化バッファ(HIC EQW) ; 50mM リン酸バッファ, pH7, 0.7M 硫酸アンモニウム
100mM リン酸バッファ(pH7.0) 3.5 L と飽和硫酸アンモニウム溶液(上澄み) 1204 mL をMilliQ(登録商標)で希釈し、7 Lになるようにした。5分間室温で混合し、得られたバッファは2-8℃で保管した。バッファの電導度は、100 μS/cm以上となるようにした。
5.6 HIC 溶出バッファ (HIC ELU) ; 50mM リン酸バッファ, pH7, 0.35 M 硫酸アンモニウム
100mM リン酸バッファ(pH7.0) 1.5 L と飽和硫酸アンモニウム溶液(上澄み) 258.6 mL をMilliQ(登録商標)で希釈し、3 Lになるようにした。5分間室温で混合し、バッファのpHを測定し、pH6.6であることを確認した後、2-8℃で保管した。
5.7 20 mM HEPES溶液
HEPES 16.2 g とMilliQ(登録商標)5.0 kgを5分間室温で混合し、得られた溶液は2-8℃で保管した。
5.8 600 mM クエン酸ナトリウム溶液, pH5.0
クエン酸一水和物151.1 g、 クエン酸ナトリウム無水物670 g、及びMilliQ(登録商標) 4.60 kgを5分間室温で混合し、得られた溶液は2-8℃で保管した。
5.9 20% EtOH溶液
1 L のエタノール (EtOH)を4 LのMilliQ(登録商標)と混合し、得られた溶液は室温で保管した。
5.10 0.1 N NaOH溶液
40 g のNaOHとMilliQ(登録商標)10.0 kgを5分間室温で混合し、得られた溶液は室温で保管した。
6 方法
6.1 サンプルの調製
623 mLの飽和硫酸アンモニウム溶液(上澄み)を、撹拌子により攪拌させている3 LのGI-3 VP1のCHT Type Iクロマトグラフィーの溶出画分(ELU1-1)に室温で滴下した。この工程は、1時間15分かかった。HICクロマトグラフィーにアプライするサンプルの電導度は、100 μS/cm以上となるようにした。(硫酸アンモニウムの最終濃度は0.7Mであった。)
6.2 カラムの調製
メチルHIC樹脂560mLを、MilliQ(登録商標)を用いてカラム(φ7 cm x height 14.6 cm)に充填し、20 % EtOH溶液で保管した。
6.3 カラムクロマトグラフィー
6.3.1 カラムの洗浄
3CVのMilliQ(登録商標)をHICカラム上に流速63 cm/h (40.4 mL/min)でロードした。
6.3.2 平衡化
3CVのHIC平衡化バッファ(HIC EQW ; 50mM リン酸バッファ, pH7, 0.7M 硫酸アンモニウム)を、素通りしたバッファのpHが安定するまで、HICカラム上に流速63 cm/h (40.4 mL/min)でロードした。
6.3.3 サンプルのロード
3 Lのサンプルを、流速63 cm/h (40.4 mL/min)で、平衡化したHICカラム(φ7 cm x height 14.6 cm)上にロードした。1mLの素通りしたサンプルを幾つかの時点で(例えば、サンプル量が1、3、及び6CVとなった時点)で採取した。
6.3.4 洗浄
5CVのHIC平衡化バッファ(HIC EQW ; 50mM リン酸バッファ, pH7, 0.7M 硫酸アンモニウム)を流速63 cm/h (40.4 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLの素通りしたバッファを幾つかの時点で(例えば、バッファ量が1、3、及び5CVとなった時点)で採取した。
6.3.5 溶出
HIC溶出バッファ (HIC ELU ; 50mM リン酸バッファ, pH7, 0.35 M 硫酸アンモニウム)を流速63 cm/h (40.4mL/min)で流し、GI-3 VP1をカラムから溶出させた。GI-3 VP1溶出ピークは保存された(NVGI3130129HIC ; 860 mL)。
6.3.6 再生
3CVの20 mM HEPES、次いで、3CV以上のMilliQ(登録商標)を流速124.8 cm/h (80 mL/min)で流し、HICカラムを洗浄した。
6.3.7 衛生化
2CVの0.1 N NaOH溶液、2CVの600 mM クエン酸ナトリウム溶液、次いで、2CVのMilliQ(登録商標)を流速78 cm/h (103 mL/min)で流し、HICカラムを洗浄した。
6.3.8 保存
3CV以上の20% エタノール溶液を流速156 cm/h (100 mL/min)で流し、カラムを洗浄し、その後保存した。
(3)Q membrane工程
7 機器及び試薬
Q membrane工程で使用した機器、試薬等を下表に示した。
8 バッファ
8.1 HIC 溶出バッファ (HIC ELU) ; 50mM リン酸バッファ, pH7, 0.35 M 硫酸アンモニウム
NaH2PO4・2H2O 17.3 gとNa2HPO4・12H2O 67.5 gと飽和硫酸アンモニウム溶液258.6 mLとMilliQ(登録商標)2656.6 gを5分間室温で混合し、バッファのpHを測定し、pH6.0〜7.5の範囲内であることを確認した後、2-30℃で保管した。
8.2 1N NaOH溶液
400 gのNaOH溶液とMilliQ(登録商標)9.8 kgを5分間室温で混合し、得られた溶液は室温で保管した。
8.3 1 M NaCl溶液
NaCl 58.11 g をMilliQ(登録商標)に溶かし、1 Lの1 M NaCl溶液とした。
9 方法
9.1 クロマトグラフィー
9.1.1 活性化
200 mLの1 N NaOH溶液を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
9.1.2 洗浄
200 mLのMilliQ(登録商標)を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
9.1.3 NaCl溶液のアプライ
200 mLの1 N NaCl溶液を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
9.1.4 平衡化
200 mLのHIC溶出バッファ (HIC ELU ; 50mMリン酸バッファ, pH7, 0.35 M 硫酸アンモニウム)を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
9.1.5 サンプルのロード
250 mLのサンプル(HICクロマトグラフィーの溶出サンプル、NVGI30110HIC, 457.1 μg/mL) を流速20 mL/minでQ membraneにアプライし、その後、HIC溶出バッファ (HIC ELU ; 50mMリン酸バッファ, pH7, 0.35 M 硫酸アンモニウム)を同様にアプライした。321 gのGI-3 VP1を含む素通り画分を保存した(NVGI3130214Q)。
9.1.6 システムの衛生化と保存
60 mLの1 N NaOH溶液と60 mLの0.1 N NaOH溶液を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
(4)タンジェンシャルフローろ過(TFF)工程
10 機器、試薬
TFF工程で使用した機器、試薬等を下表に示した。
11 バッファ
11.1 TFFバッファ ; 150 mM NaCl, 10 mMリン酸バッファ, pH7.2
NaH2PO4・2H2O 1.95 gとNa2HPO4・12H2O 13.5 gとNaCl 43.8 gとMilliQ(登録商標)4.9 kgを5分間室温で混合し、バッファのpHを測定し、pH7.2であることを確認した後、2-8℃で保管した。
11.2 0.5N NaOH溶液
500 mLの1 N NaOH溶液を500 mLのMilliQ(登録商標)と混合し、得られた溶液は室温で保管した。
12 方法
12.1 中空糸カートリッジを用いたTFF
12.1.1 洗浄
400 mLのMilliQ(登録商標)を流速72 mL/minで浸透させた。膜間圧力差は0.8psiであり、浸透流速は61.6 mL/minであった。
12.1.2 平衡化
400 mLのTFFバッファを流速72 mL/minで浸透させた。膜間圧力差は1.2psiであり、浸透流速は62.4 mL/minであった。
12.1.3 サンプルのロード
321 gのサンプル (NVGI3130214Q from Lot. F1273D)を100 mLに濃縮し、次いで、そのバッファを、1 Lの浸透したバッファが得られるまで、TFFバッファに置き換えた。バッファを置き換えたサンプルを再度濃縮し、47.5 mLのサンプルを採取した(NVGI3130215TFF)。この工程に2時間を要した。流速は108 mL/minであった。バッファの置き換えと濃縮の完了後にTFFサンプルを採取した。
12.1.4 MilliQ (登録商標)洗浄
400 mLのMilliQ (登録商標)をアプライし、200 mLのMilliQ (登録商標)を流速108 mL/min で浸透させた。膜間圧力差は7.0psiであり、浸透流速は65.2 mL/minであった。
12.1.5 NaOH溶液のアプライ
400 mLの0.5 N NaOH 溶液をアプライし、200 mLの0.5 N NaOH 溶液を流速108 mL/min で浸透させた。膜間圧力差は4.2psiであり、浸透流速は82.4mL/minであった。
12.1.6 MilliQ (登録商標)洗浄
300 mLのMilliQ (登録商標)をアプライし、200 mLのMilliQ (登録商標)を流速108 mL/min で浸透させた。膜間圧力差は4.4psiであり、浸透流速は79.2 mL/minであった。
12.1.7 70% EtOH 洗浄及び保存
400 mLの70% EtOH をアプライし、300 mLの70% EtOHを流速108 mL/min で浸透させた。膜間圧力差は17.7psiであり、浸透流速は48.8 mL/minであった。70% EtOHで満たされた中空糸カートリッジは保存された。
12.1.8 濾過
サンプル(NVGI3130215TFF )を0.45 μm フィルター(9 cm2 each of membrane area)で濾過し、次いで、0.22 μmフィルターで濾過した。濾過されたサンプルを、GI-3原薬 (NVGII4130218 )と名付けた。
(5)GI-3原薬の分析
精製されたGI-3原薬80μLに5×DB(300mmol/L Tris-HCl pH6.8, 50% glycerol, 10% SDS, 0.5% BromoPhenolBlue, 500mmol/L DTT)20μLを混合して95℃で5分間加熱した後、SDS-PAGEゲルの各レーンにアプライし、200V, 35分間電気泳動した。サンプルは4回の独立した精製で得られた4ロットの原薬が各10μLアプライされている。
泳動後のゲルを固定液(25% Methanol, 10% 酢酸, 10% Trichrolo acetic acid(TCA))に浸して5分間振盪し、その後CBB染色液(0.1% CBB, 7.7mmol/L Ethanol, 1.75mmol/L Acetic acid)に浸して1時間振盪して染色した後、脱色液(10% 酢酸)で一晩脱色した。ゲル画像はスキャナを用いて取得した。分子量マーカーはSeeBlue prestained standard (Invitrogen)を使用した。
GI-3原薬のSDS-PAGE分析の結果を図2に示す。図に示すように、GI-3原薬の純度はほぼ100%であった。この結果は、GI-3原薬がノロウイルスのワクチン製剤として使用可能であることを示す。
〔実施例2〕GII-4 VLPの作製
(1)ハイドロキシアパタイト工程
1 機器及び試薬
ハイドロキシアパタイト工程で使用した機器、試薬等を下表に示した。
2 バッファ
2.1 CHT平衡化バッファ(CHT EQW) ; 5 mM リン酸バッファ, pH6.5
NaH2PO4・2H2O 3.12 gとNa2HPO4・12H2O 1.90 gとMilliQ (登録商標)5.0 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し、pHが6.5であることを確認した。得られたバッファは、2-8℃で保管した。
2.2 CHT洗浄バッファ(CHT WS) ; 50 mM NaCl, 5 mM リン酸バッファ, pH6.5
NaH2PO4・2H2O 2.73 gとNa2HPO4・12H2O 2.69 gとNaCl 14.61 gとMilliQ (登録商標)4.9 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し、pHが6.5であることを確認した。得られたバッファは、2-8℃で保管した。
2.3 CHT 溶出バッファ (CHT ELU) ; 150 mM NaCl, 5 mM リン酸バッファ, pH7.5
NaH2PO4・2H2O 0.59 gとNa2HPO4・12H2O 7.62 gと NaCl 43.8 gとMilliQ(登録商標) 4.9 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し、pHが7.5であることを確認した。得られたバッファは、2-8℃で保管した。
2.4 CHT 再生バッファ 1 (CHT REG1) ; 500 mM リン酸ナトリウムバッファ(中性)
NaH2PO4・2H2O 156 gとNa2HPO4・12H2O 537.5 gとMilliQ(登録商標) 4.3 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し、pHが中性(例えば、pH6.7)であることを確認した。得られたバッファは、室温で保管した。
2.5 CHT 再生バッファ 2 (CHT REG2) ; 1M NaCl, 6 M 尿素含有5 mM リン酸バッファ(中性)
尿素1802 gとNaH2PO4・2H2O 3.9 gとNa2HPO4・12H2O 8.95 gとNaCl 292.5 gとMilliQ(登録商標) 2.9 kgを室温で5分間混合した。バッファのpHを測定し、pHが中性(例えば、pH7.0)であることを確認した。得られたバッファは、室温で保管した。
2.6 1N NaOH溶液
400 gのNaOH溶液とMilliQ(登録商標) 9.8 kgを室温で5分間混合した。得られた溶液は、室温で保管した。
2.7 0.1 N NaOH溶液
40 gのNaOH溶液とMilliQ(登録商標) 10.0 kg を室温で5分間混合した。得られた溶液は、室温で保管した。
3 方法
3.1 組換えバキュロウイルスの作製
GII-4に分類されるノロウイルスのウイルス株(タンペレ大学の入院患者から採取)のVP1(アミノ酸配列を配列番号2に示す。)をコードするcDNAをトランスファープラスミドpFastBac(Invitrogen)に組み込んだ。次にcDNAを組み込んだトランスファープラスミドを、バキュロウイルスゲノムDNAを保持する大腸菌であるDH10Bac(Invitrogen)に導入し、相同組換えによってノロウイルスVP1をコードするcDNAをバキュロウイルスゲノムDNAに組み込んだ。大腸菌からバキュロウイルスゲノムDNAを抽出精製し、昆虫細胞(expresSF+細胞、Protein Sciences)に導入して培養した。この培養上清から組換えバキュロウイルスを得た。
3.2 GII-4 VP1発現のための培養
組換えバキュロウイルを昆虫細胞(expresSF+細胞)(1x106/mL)にMOI=1となるように加えた。その後、生存率が10%以下になるまで、5-6日間細胞の培養を行った。
3.3 回収と精製
GII-4 VP1発現培養液(Lot. F1274)を連続式遠心分離機(MN1, KOKUSAN)にかけ(遠心力:5,000 x g、流速:約4 mL/sec)、上清を回収した。上清の濁度はおよそ80 NTUであった。回収した上清を流速約200 mL/min以上で濾過し、CHTカラムにかけた。
3.4 カラムの調製
CHT Type I 樹脂 700 mL (1 mL (カラム体積) = 0.6 g (乾燥重量))をカラムBPG100/500 (GE) (Φ10 cm x bed height 8.9 cm)に0.1 N NaOH溶液を用いて充填し、0.1 N NaOH溶液で保管した。CHT Type I 樹脂は、GII-4 VP1を20 CV以上の培養液中で捕獲することができる。
3.5 カラムクロマトグラフィー
3.5.1 予洗
3 CVのMilliQ(登録商標)を流速150 cm/h (196 mL/min)でカラム上にロードした。
3.5.2 平衡化
5 CVの平衡化バッファ(CHT EQW ; 5mM リン酸バッファ (pH 6.5))を流速150 cm/h (196 mL/min)でカラム上にロードした。
3.5.3 サンプルのロード
約14Lの濾過した培養液の上清を、流速115 cm/h (150 mL/min)で、平衡化したCHTカラム上にロードした。1mLの素通りしたサンプルを幾つかの時点で(例えば、サンプル量が5、10、15、18、19、及び20 CVとなった時点)で採取した。素通りしたサンプルの採取は、サンプルのロードを終える直前まで行った。
3.5.4 洗浄 1
6CVの平衡化バッファ(CHT EQW ; CHT EQW ; 5mM リン酸バッファ (pH 6.5))を流速160cm/h (122 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLの素通りしたバッファをこの工程を終える直前に採取した。
3.5.5 洗浄 2
6CVの平衡化バッファ(CHT WS ; 50 mM NaCl, 5 mM リン酸バッファ (pH6.5))を流速130cm/h (170 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLの素通りしたバッファをこの工程を終える直前に採取した。
3.5.6 溶出
溶出バッファ(CHT ELU ; 150 mM NaCl, 5 mM リン酸バッファ (pH7.5))を流速115 cm/h (150 mL/min)で流し、GII-4 VP1をカラムから溶出させた。溶出ピークを含む溶出画分を保存した(NVGII4130109CHT)。GII-4 VP1を含む溶出画分は、多少の沈殿物を示した。全溶出は、一つの容器に保存することができた。
3.5.7 再生 1
6 CVの再生バッファ 1 (CHT REG1 ; 500 mM リン酸ナトリウムバッファ)を流速115 cm/h (150 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLのUV280nmピークを採取した。
3.5.8 再生 2
3CVの再生バッファ 2 (CHT REG2 ; 1M NaCl, 6 M 尿素含有5 mM リン酸バッファ)を流速115 cm/h (150 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLの溶出ピークを採取した。
3.5.9 衛生化
カラムを1 N NaOH溶液で1時間衛生化した。2CVの1 N NaOH溶液を流速115 cm/h (150 mL/min)でカラムにアプライし、次いで、1CVの1 N NaOH溶液を流速31 cm/h (40 mL/min)でカラムにアプライした。
3.5.10 保存
3CVの0.1 N NaOH溶液を流速115 cm/h (150 mL/min)で流し、カラムを洗浄し、その後保存した。
(2)疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)(Methyl)工程
4 機器及び試薬
HIC工程で使用した機器、試薬等を下表に示した。
5 バッファ
5.1 HIC 平衡化バッファ (HIC EQW); 100 mM リン酸バッファ, pH7.5 + 1.4 M 硫酸アンモニウム
NaH2PO4・2H2O 13.0 gとNa2HPO4・12H2O 120.8 gと硫酸アンモニウム 740 gとMilliQ(登録商標) 3.896 kgを5分間室温で混合した。硫酸アンモニウムを含まないバッファのpHはpH7.4であり、硫酸アンモニウムを含むバッファのpHは6.7であった。得られたバッファは室温で保管した。
5.2 HIC 洗浄バッファ (HIC WS); 50 mM 酢酸バッファ, pH5.0 + 1.4 M 硫酸アンモニウム
酢酸4.8 gと酢酸ナトリウム14.0 gと硫酸アンモニウム 925.0 gとMilliQ(登録商標) 4.91 kgを5分間室温で混合した。硫酸アンモニウムを含まないバッファのpHはpH5.0であり、硫酸アンモニウムを含むバッファのpHは4.9であった。得られたバッファは室温で保管した。
5.3 HIC 溶出バッファ (HIC ELU) ; 50 mM 酢酸バッファ, pH5.0 + 0.8 M 硫酸アンモニウム
酢酸3.8 gと酢酸ナトリウム11.2 gと硫酸アンモニウム 422.8 gとMilliQ(登録商標) 3.93 kg を5分間室温で混合した。硫酸アンモニウムを含まないバッファのpHはpH5.0であり、硫酸アンモニウムを含むバッファのpHは4.9であった。得られたバッファは室温で保管した。
5.4 20 mM HEPES溶液
HEPES 16.2 gとMilliQ(登録商標) 5.0 kgを5分間室温で混合した。得られたバッファは、2-8℃で保管した。
5.5 600 mM クエン酸ナトリウム溶液, pH5.0
クエン酸一水和物151.1 gとクエン酸ナトリウム無水物670 gとMilliQ(登録商標) 4.60 kgを5分間室温で混合した。得られたバッファは、室温で保管した。
5.6 20% EtOH溶液
1 L のエタノール (EtOH)を4 LのMilliQ(登録商標)と混合し、得られた溶液は室温で保管した。
5.7 0.1 N NaOH溶液
40 g のNaOHとMilliQ(登録商標)10.0 kgを5分間室温で混合し、得られた溶液は室温で保管した。
6 方法
6.1 HICにアプライするサンプルの調製
全CHT溶出サンプル (NVGII4130109CHT)を0.45 + 0.2 μm フィルターを用いて濾過した。1.4 M 硫酸アンモニウム溶液(18.5% w/v, 185.0 g/L)を加えた。553.1 gの硫酸アンモニウムを2.99 kgの濾過したCHT溶出サンプルに加えた。硫酸アンモニウムは、薬匙で非常にゆっくりとマグネチックスターラーで攪拌しているCHT溶出サンプルに加えた。
6.2 カラムの調製
HIC (メチル) 樹脂926 mLを、MilliQ(登録商標)を用いてカラム (φ10 cm x 11.7 cm)に充填し、20 % EtOH溶液で保管した。
6.3 カラムクロマトグラフィー
6.3.1 予洗
3CVのMilliQ(登録商標)をHICカラム上に流速78 cm/h (103 mL/min)でロードした。
6.3.2 平衡化
3CVのHIC平衡化バッファ(HIC EQW ; 100 mM リン酸バッファ, pH7.5 + 1.4 M 硫酸アンモニウム)を、素通りしたバッファのpHが安定するまで、HICカラム上に流速102.6 cm/h (6.5 mL/min)でロードした。
6.3.3 サンプルのロード
サンプルを、流速45 cm/h (60 mL/min)で、平衡化したHICカラム(φ10 cm x 11.7 cm)上にロードした。1mLの素通りしたサンプルを幾つかの時点で(例えば、サンプル量が1、2、3、3.5、3.7、及び 4.2CVとなった時点)で採取した。
6.3.4 洗浄
6CVの洗浄バッファ(HIC WS ; 50 mM 酢酸バッファ, pH5.0 + 1.4 M 硫酸アンモニウム)を流速78 cm/h (103 mL/min)で流し、カラムを洗浄した。1mLのUV280 nmピークを採取した。
6.3.5 溶出
HIC溶出バッファ(HIC ELU ; 50 mM 酢酸バッファ, pH5.0 + 0.8 M 硫酸アンモニウム)を流速78 cm/h (103mL/min)で流し、GII-4 VP1をカラムから溶出させた。GII-4 VP1溶出ピークは保存された(NVGII4130130HIC ; 2467.5 μg/mL, 879.8 mL, 2170.9 mg)。GII-4 VP1を含む溶出画分は濁っていた。
6.3.6 再生 1
2CVの20 mM HEPES、次いで、2CVのMilliQ(登録商標)を流速78 cm/h (103 mL/min)で流し、HICカラムを洗浄した。
6.3.7 衛生化
2CVの0.1 N NaOH溶液、次いで、2CVの600 mM クエン酸ナトリウム溶液を流速78 cm/h (103 mL/min)で流し、HICカラムを洗浄した。
6.3.8 保存
3CVの20% エタノール溶液を流速78 cm/h (103 mL/min)で流し、カラムを洗浄し、その後保存した。
(3)Q membrane工程
7 機器及び試薬
Q membrane工程で使用した機器、試薬等を下表に示した。
8 バッファ
8.1 HIC 溶出バッファ (HIC ELU) ; 50 mM 酢酸バッファ, pH5.0 + 0.8 M 硫酸アンモニウム
酢酸3.8 gと酢酸ナトリウム11.2 gと硫酸アンモニウム 422.8 gとMilliQ(登録商標) 3.93 kg を5分間室温で混合した。硫酸アンモニウムを含まないバッファのpHはpH5.0であり、硫酸アンモニウムを含むバッファのpHは4.9であった。得られたバッファは室温で保管した。
8.2 1N NaOH溶液
400 gのNaOH溶液とMilliQ(登録商標) 9.8 kgを室温で5分間混合した。得られた溶液は、室温で保管した。
8.3 1 M NaCl溶液
NaCl 58.11 g をMilliQ(登録商標)に溶かし、1 Lの1 M NaCl溶液とした。
9 方法
9.1 クロマトグラフィー
9.1.1 活性化
200 mLの1 N NaOH溶液を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
9.1.2 洗浄
200 mLの1 MilliQ(登録商標)を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
9.1.3 NaCl溶液のアプライ
200 mLの1 N NaCl溶液を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
9.1.4 平衡化
200 mLのHIC溶出バッファ (HIC ELU ; 50 mM 酢酸バッファ, pH5.0 + 0.8 M 硫酸アンモニウム)を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
9.1.5 サンプルのロード
880 mLのHIC溶出サンプル(NVGII4130130HIC)を流速20 mL/minでQ membraneにアプライし、次いで、HIC 溶出バッファ (HIC ELU ; 50 mM 酢酸バッファ, pH5.0 + 0.8 M 硫酸アンモニウム)をアプライし、UV280ピークがベースラインに下がるまで残りのGII-4 VP1を採取した。1000 gのGII-4 VP1含有素通りサンプルを保存した(NVGII4130201Q)。
9.1.6 システムの衛生化と保存
60 mLの1 N NaOH溶液と60 mLの0.1 N NaOH溶液を流速20 mL/minでQ membraneにアプライした。
(4)タンジェンシャルフローろ過(TFF)工程
10 機器、試薬
TFF工程で使用した機器、試薬等を下表に示した。
11 バッファ
11.1 TFFバッファ ; 150 mM NaCl, 10 mMリン酸バッファ, pH7.2
NaH2PO4・2H2O 1.95 gとNa2HPO4・12H2O 13.5 gとNaCl 43.8 gとMilliQ(登録商標)4.9 kgを5分間室温で混合し、バッファのpHを測定し、pH7.2であることを確認した後、2-8℃で保管した。
11.2 0.5N NaOH溶液
500 mLの1 N NaOH溶液を500 mLのMilliQ(登録商標)と混合し、得られた溶液は室温で保管した。
12 方法
12.1 中空糸カートリッジを用いたTFF
12.1.1 洗浄
400 mLのMilliQ(登録商標)を流速108 mL/minで浸透させた。膜間圧力差は5.9psiであり、浸透流速は62 mL/minであった。
12.1.2 平衡化
400 mLのTFFバッファを流速108 mL/minで浸透させた。膜間圧力差は8.4psiであり、浸透流速は76 mL/minであった。
12.1.3 サンプルのロード
100 mLのサンプル (NVGII4130201Q)をアプライし、1 Lの浸透したバッファが得られるまで、TFFバッファに置き換えた。100 mLのバッファ置換サンプルを採取した(NVGII4130218TFF)。この工程に2.5時間を要した。流速は108 mL/minであった。
12.1.4 MilliQ(登録商標) 洗浄
400 mLのMilliQ (登録商標)をアプライし、200 mLのMilliQ (登録商標)を流速108 mL/min で浸透させた。膜間圧力差は8.2psiであり、浸透流速は64 mL/minであった。
12.1.5 NaOH溶液のアプライ
400 mLの0.5 N NaOH 溶液をアプライし、300 mLの0.5 N NaOH 溶液を流速108 mL/min で浸透させた。膜間圧力差は6.1psiであり、浸透流速は64 mL/minであった。
12.1.6 MilliQ(登録商標) 洗浄
300 mLのMilliQ (登録商標)をアプライし、200 mLのMilliQ (登録商標)を流速108 mL/min で浸透させた。膜間圧力差は6.0psiであり、浸透流速は54 mL/minであった。
12.1.7 70% EtOH 洗浄及び保存
400 mLの70% EtOHをアプライし、300 mLの70% EtOHを流速108 mL/min で浸透させた。膜間圧力差は14.0psiであり、浸透流速は32 mL/minであった。70% EtOHで満たされた中空糸カートリッジは保存された。
12.1.8濾過
サンプル(NVGII4130218TFF)を0.45 μm フィルター、次いで0.22 μmフィルターで濾過した。一つの150 mLボトルトップ真空濾過機(Corning, pore size 0.22 μm, membrane area 13.6 cm2)は、30 mL のQ-poolのみ濾過できた。残りの70 mLのQ-poolを0.45 μmシリンジドリブンフィルターユニット(total membrane area 45 cm2)で濾過し、次いで、0.22 μmシリンジドリブンフィルターユニット(total membrane area 13.5 cm2)で濾過した。濾過されたサンプルをGII-4原薬と名付けた。
(5)GII-4原薬の分析
精製されたGII-4原薬80μLに5×DB(300mmol/L Tris-HCl pH6.8, 50% glycerol, 10% SDS, 0.5% BromoPhenolBlue, 500mmol/L DTT)20μLを混合して95℃で5分間加熱した後、SDS-PAGEゲル各レーンに左から10, 5, 2.5, 1μLアプライし、200V, 35分間電気泳動した。
泳動後のゲルを固定液(25% Methanol, 10% 酢酸, 10% Trichrolo acetic acid(TCA))に浸して5分間振盪し、その後CBB染色液(0.1% CBB, 7.7mmol/L Ethanol, 1.75mmol/L Acetic acid)に浸して1時間振盪して染色した後、脱色液(10% 酢酸)で一晩脱色した。ゲル画像はスキャナを用いて取得した。分子量マーカーはSeeBlue prestained standard (Invitrogen)を使用した。
GII-4原薬のSDS-PAGE分析の結果を図3に示す。図に示すように、GII-4原薬の純度はほぼ100%であった。この結果は、GII-4原薬がノロウイルスのワクチン製剤として使用可能であることを示す。
本発明は、ノロウイルスの予防及び治療薬として有用なので、製薬などの産業分野において利用可能である。

Claims (5)

  1. GI-3に分類されるノロウイルスのウイルス様粒子と、GII-4に分類されるノロウイルスのウイルス様粒子とを含む医薬組成物。
  2. ウイルス様粒子が、ノロウイルスの核酸配列を発現させて作製した組換ウイルス様粒子である請求項1に記載の医薬組成物。
  3. ウイルス様粒子が、バキュロウイルスベクターに組み込まれたノロウイルスの核酸配列を昆虫細胞内で発現させて作製した組換ウイルス様粒子である請求項1に記載の医薬組成物。
  4. ノロウイルスの核酸配列が、構造タンパク質VP1をコードする核酸配列である請求項2又は3に記載の医薬組成物。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の医薬組成物を含むワクチン製剤。
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