グリセリマイシンに加えて、ストレプトミセス菌も同様に、メチルグリセリマイシンと称するバリンアト形のグリセリマイシンを産生する。メチルグリセリマイシンは、L−プロリンの代わりにL−トランス−4−メチルプロリンを含有する。メチルグリセリマイシンは、グリセリマイシンを超える抗菌薬としてのその使用において、例えば異なる抗細菌特異性などのある利点を保有する、しかしながら、ストレプトミセス菌により副成分だけとして産生される。従って、グリセリマイシンの生合成に関する遺伝情報の必要性が存在する。
グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンによって含まれるようなメチルプロリン部分、即ちL−トランス−4−メチルプロリンの産生は全く未知である。従って、L−トランス−4−メチルプロリンの生合成に関する遺伝情報の必要性が存在する。
(メチル)グリセリマイシンの生合成経路に関与するポリペプチドをコードする遺伝子座は現在同定されている。本発明者らは、ストレプトミセスDSM26643のゲノムDNAから全グリセリマイシン生合成遺伝子クラスターを単離しそしてクローニングすることに成功した。本発明者らはまた、L−トランス−4−メチルプロリンの形成に関与するようなものを含む(メチル)グリセリマイシン生合成経路に関与するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を解明するのに成功した。これは分子レベルで明確な生合成工程の同定及び影響を可能にする。
このように、1つの態様において、本発明は以下から選択される少なくとも1つの核酸を含む核酸を提供する:
(a)配列番号2〜27のタンパク質又はそのバリアント若しくはフラグメントをコードし、それによってバリアント又はフラグメントが配列番号2〜27のタンパク質の機能的に活性なバリアント又はフラグメントをコードする、配列番号1によって含まれるようなオープンリーディングフレーム(ORF)1〜26の少なくとも1つを含んでなる核酸、
(b)配列番号2〜27のタンパク質の少なくとも1つをコードする核酸又は機能的に活性なそのバリアント若しくはフラグメント、
(c)(a)又は(b)の核酸によってコードされるタンパク質又はそのフラグメントとアミノ酸配列において少なくとも70%、80%、90%、95%又は97%同一であるタンパク質をコードする核酸、
(d)(a)〜(c)の核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする核酸、
(e)(a)〜(d)の核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、そして10〜50のヌクレオチド長から成る核酸、又は
(f)(a)〜(f)の核酸に相補的な核酸。
本発明によって含まれるような核酸は、1つの実施態様において、66.868ヌクレオチド長のグリセリマイシン生合成遺伝子クラスターを含むストレプトミセスDSM26643のゲノムの一部である配列番号1を含み又はそれから成る核酸である。この新しく発見された遺伝子クラスターは、65.272ヌクレオチド長の配列番号1のヌクレオチド837〜66.108から、それぞれ、ORF1〜ORF26(ORF1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26)と呼ばれ、又はorf−1、orf−2、orf−3、orf−4、orf−5、orf−6、orf−7、nrps−1、int−1、tnp−1、int−2、tnp−2、tnp−3、dna、nrps−2、nrps−3、mbtH、mps−1、mps−2、mps−3、mps−4、orf−8、orf−9、orf−10、orf−11、orf−12の遺伝子名で呼ばれる、少なくとも26のORFを含有する。これらのORFは、(メチル)グリセリマイシンの生合成に関与する配列番号2〜27(配列番号2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27)のタンパク質をそれぞれコードする。グリセリマイシンの生合成遺伝子クラスターによってコードされるタンパク質の構造的及び機能的特性解析は下記で与えられる。
本発明の文脈では、用語「(メチル)グリセリマイシン」はグリセリマイシン並びにメチルグリセリマイシンをいう。グリセリマイシンは、アセチル化されたL−N−メチルバリン(1)、L−トランス−4−メチルプロリン(2)、L−N−メチルトレオニン(3)、L−ロイシン(4)、L−トランス−4−メチルプロリン(5)、L−ロイシン(6)、L−N−メチルバリン(7)、L−プロリン(8)、D−N−メチル−D−ロイシン(9)及びグリシン(10)である、10個のアミノ酸で構成される抗生物質である。グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンの構造式は図1に示される。グリセリマイシン及びそのバリアントのメチルグリセリマイシンは、本明細書で同定される(メチル)グリセリマイシン生合成遺伝子クラスターと同じ遺伝子を含む同じ生合成経路によって異なる量で産生される。メチルグリセリマイシンは、位置8においてL−プロリンの代わりにL−トランス−4−メチルプロリンの存在によってグリセリマイシンと異なる。L−トランス−4−メチルプロリンのメチルグリセリマイシンへの、そしてL−プロリンのグリセリマイシンへの組込みに関与するマルチドメイン酵素は、同じ酵素、即ちNRPS−2であり、そして本明細書で同定される遺伝子nrps−2のタンパク質産物である。
本発明の文脈では、用語「遺伝子クラスター」は、ゲノムの近接伸展(contiguous stretch)に位置し、そして(メチル)グリセリマイシンの合成を指示する幾つかの遺伝子のセットをいう。遺伝子クラスターに属する幾つかの遺伝子は、遺伝子ファミリーに関連しそしてグループ分けされる遺伝子である。それらは構造及び機能において類似するタンパク質をコードする。残りの遺伝子は、構造的に無関係でそして異なる構造及び機能を有するタンパク質をコードする。コードされたタンパク質は、反応を触媒する酵素であるか又はとりわけ調節又は輸送に関与するかである。全体として、遺伝子クラスターによって含まれるような遺伝子は、(メチル)グリセリマイシンの生合成の目的に資するタンパク質をコードする。
用語「核酸」は、それぞれ、配列番号2〜27のタンパク質をコードするORF1〜26によって規定される核酸、並びに天然産及び非天然産のそのバリアント及びフラグメントを包含する(本明細書に記載されるような)。核酸は、遺伝情報を運ぶ単量体ヌクレオチド鎖から構成されるいずれの高分子であってよく、又は細胞内に構造を形成し得る。最も一般的な(そしてそれ故好ましい)核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA)である。核酸は、配列番号1などのゲノムDNA分子などのDNA分子、又はORFを表しそしてタンパク質をコードする核酸などの一本鎖又は二本鎖であってよいcDNA分子、並びにプライマー又はプローブなどの合成一本鎖ポリヌクレオチドなどの合成DNAであってよい。本発明の核酸はまた、RNA分子であってよい。好ましくは、本用語はまた、遺伝子の非コード領域に関し、ここでこれらのセクションは、その遺伝子に特異的であるために適切なサイズである。それらの領域の例は、プロモーターなどの調節エレメントである。最も好ましくは、用語「核酸」は、遺伝子、ORF、プロモーター、DNA、cDNA又はmRNAに関する。所望の遺伝情報をコードする核酸、好ましくは、DNAは、関心のある遺伝子、プロモーター領域、開始コドン及び終止コドンを、そしておそらく、遺伝子の発現調節に使用し得る更なる領域を含んでよい。調節領域はそれぞれの遺伝子に対して異種であってよく、又はそれと事実上関連してよい。遺伝情報は、恒久的に又は本発明の核酸がそれに導入される細胞中のレプレッサー及び/又はプロモーター領域の調節下に発現され得る。得られた細胞は、直接使用され得るか又は組織培養に使用され得て、又は細胞は回収され得てそしてそれぞれのタンパク質を含むサンプルは細胞を破壊することによって得られる。あるいは、DNA又はRNAは、DNA又はRNAが固定化され、そして転写及び/又は翻訳に必要とされる因子(酵素、リボソーム、tRNA、アミノ酸、ヌクレオチド、ATPなど)を含む、機能性細胞溶解物の添加により翻訳され及び/又は転写される、例えばマイクロアレイシステムなどの細胞中か又は無細胞発現系中かいずれかにおいて使用され得る。またペプチド核酸(PNA)、モルホリノ及びロックド核酸(LNA)、並びにグリコール核酸(GNA)及びトレオース核酸(TNA)を含む人工核酸も含まれる。これらの各々は、分子の主鎖(backbone)への変化により天然産のDNA又はRNAと区別される。
本明細書に使用されるような用語「含む(comprising)」は、所望の特性及び具体的に記載してはいけない更なる特性を「含む又は包含する」ことを意味する。用語「含む」はまた、所望の特性「から成る」こと、そして所望の特性以外の更なる特性を含まないことを意味する。このように、本明細書で言及される核酸又はタンパク質は、示された定義に加えて、例えばORF又は配列番号による定義に加えて更なる特性によって規定され得て、又はそのような示された特性だけから成り得る。
用語「異種」は、それがコーディング又は調節配列などの核酸配列に関連するので、組換構築物(construct)及び/又は特殊な細胞の領域と通常関連しない配列を意味する。「異種」領域は、事実上他の分子と関連して見出されない別の核酸内の又はそれに結合された核酸の同定可能なセグメントである。例えば、構築物の異種領域は、事実上本明細書で同定されたような遺伝子と関連することが見出されない調節領域であり得よう。同様に、異種配列は、それが例えば天然の遺伝子と異なるコドンとの合成配列を含有するように、事実上それ自体見出されないコーディング配列であり得よう。その上、宿主細胞中に通常存在しない構築物で形質転換された宿主細胞は、本発明の目的に対して異種と考えられ得よう。相同核酸配列は本明細書に規定されるようなバリアント配列である。用語「相同」はバリアントと交換可能に使用され得る。用語「相同」はまた同一配列を言及してよい。
本発明の実施態様では、核酸は、配列番号2〜27の配列によって含まれるような少なくとも1つの別個のタンパク質をコードする核酸分子を含む。特定の実施態様では、配列番号1によって含まれるような(メチル)グリセリマイシン遺伝子クラスターの全配列は、本発明の核酸によって含まれる。別の実施態様では、核酸は、配列番号2〜27の少なくとも1つのタンパク質の機能的に活性なバリアント又はフラグメントをコードするORF1〜26のバリアント又はフラグメントである。最も好ましい核酸は、下記に詳述するようなORF1〜26の天然産のバリアントタンパク質、より好ましくは天然産のストレプトミセスタンパク質、尚更に好ましくは(メチル)グリセリマイシンの合成に関与する配列番号2〜27のタンパク質をコードする。
用語「核酸」は本明細書に開示のように完全長ORF1〜26を含んでよく、又はORF1〜26のフラグメント又は部分配列を含んでよい。ORF1〜26のそのようなフラグメント又は部分配列は、配列番号2〜27に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質のフラグメントを、それぞれ、コードする。これは短い内部及び/又はC−及び/又はN−末端欠失を持ったフラグメントのタンパク質を含んでよく、それによって本明細書に同定されたような生成したタンパク質の活性は、ORF1〜26によってコードされたような野生型タンパク質の活性の、5%より大きい、10%より大きい、20%より大きい、30%より大きい、40%より大きい、50%より大きい、60%より大きい、70%より大きい、80%より大きい、90%より大きい、95%より大きい、97%より大きい又は100%より大きい、例えば150%、200%、300%、400%又は500%より大きい範囲に維持される。その結果として、そのようなフラグメントをコードするそれぞれの核酸は、ORF1〜26の5`及び/又は3`末端内及び/又はそこでの欠失、例えばせいぜい50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%又はそれ以下の欠失を含有する。本発明の文脈では、配列番号2〜27のタンパク質の機能的に活性なフラグメントをコードするフラグメントの核酸配列は、(メチル)グリセリマイシンの合成を指示し、及び/又は(メチル)グリセリマイシンの合成を指示する配列番号2〜27のタンパク質をコードするそれぞれのORFと置換できる、フラグメントをコードする配列を意味する。
用語「核酸」は、本明細書に規定されたような配列番号2〜27のタンパク質の機能的に活性なバリアントをコードする本明細書に開示されたようなORF1〜26のバリアントを言及してよい。そのような機能的に活性なバリアントは、50%より大きい、60%より大きい、好ましくは70%より大きい、より好ましくは80%より大きい、尚より好ましく85%より大きい、尚更に好ましくは90%より大きい、尚更に好ましくは95%より大きい、最も好ましくは97%より大きい、配列番号2〜27と配列同一性を有し、及び/又は配列番号2〜27のタンパク質の活性の、5%より大きい、10%より大きい、20%より大きい、30%より大きい、40%より大きい、50%より大きい、60%より大きい、70%より大きい、80%より大きい、90%より大きい、95%より大きい、97%より大きい又は100%より大きい、例えば150%、200%、300%、400%又は500%より大きい活性を有する。その結果、そのようなバリアントをコードする核酸は、ORF1〜26の5`及び/又は3`末端内及び/又はそこでの欠失、挿入、置換及び/又は付加を含有し、そして50%より大きい、60%より大きい、70%より大きい、好ましくは80%より大きい、より好ましくは85%より大きい、尚より好ましくは90%より大きい、尚より好ましくは95%より大きい、最も好ましくは97%より大きい、ORF1〜26の配列に同一性を示す。本発明の文脈において、配列番号2〜27のタンパク質の機能的に活性なバリアントをコードするバリアント核酸配列は、(メチル)グリセリマイシンの合成を指示し、及び/又は(メチル)グリセリマイシンの合成を指示する配列番号2〜27のタンパク質をコードするそれぞれのORFと置換できる、バリアントをコードする配列を意味する。
なお、上記の修飾は組み合わされ得る。例えば、本発明によって含まれるような核酸は、ORF1〜26の1つ又はそれ以上のバリエーションを含むフラグメントであってよい。なおまた、フラグメント又はバリアントは、明細書に規定されたように、ORF1〜26又はそのフラグメント若しくはバリアントが事実上それと関連するプロモーター又は調節配列のフラグメント又はバリアントを含む。これらのバリアントは、それらがそれと関連する遺伝子の転写又は翻訳を調節することにおいて機能的に活性である。
ORFは、タンパク質を潜在的にコードし得るDNA配列であるオープンリーディングフレームである。本発明の文脈では、用語「ORF」は、ストレプトミセスDSM22643から単離されたような(メチル)グリセリマイシンの生合成遺伝子クラスター中のオープンリーディングフレーム(ORF1〜26)を表す。本発明者らは、ストレプトミセスDSM22643のグリセリマイシン生合成遺伝子クラスターを同定するのに成功し、そして65272ヌクレオチドの伸展を超えて26のORFを同定した。これらのORFは、それぞれ、orf−1、orf−2、orf−3、orf−4、orf−5、orf−6、orf−7、nrps−1、int−1、tnp−1、int−2、tnp−2、tnp−3、dna、nrps−2、nrps−3、mbtH、mps−1、mps−2、mps−3、mps−4、orf−8、orf−9、orf−10、orf−11、orf−12と命名された。ストレプトミセスDSM22643の全グリセリマイシン生合成遺伝子クラスターは、ORF1〜26を含む66868長のヌクレオチド並びにORF1及びORF26それぞれに5`及び3`に位置する更なるヌクレオチドである。
配列番号1によって含まれる26のORFは、ストレプトミセスDSM26643の配列番号1のヌクレオチド837からヌクレオチド66108まで伸長する。表1は、特有の推定ORF、対応する遺伝子の名称、配列番号1内の開始及び終止ヌクレオチド、ヌクレオチド中の遺伝子の長さ(nt)、鎖数(strandedness)、それによってコードされた推定タンパク質のアミノ酸数(aa)、タンパク質名称及びタンパク質の配列番号、のリストを示す。表2は、NCBI(National Centre for Biotechnology Information; National Library of Medicine 38A, Bethesda, MD20894; USA; www.ncbi.nih.gov) から入手可能なそれらのGenBank受入番号によって指定されるタンパク質を示す。これらのタンパク質は、配列番号2〜27のタンパク質に最大の同一性/類似性を示すような、相同性検索に基づいて、同定されている。これらのタンパク質は、それらの機能、それらの受入番号及びそれらの起源によって規定される。表2はその上、配列番号2〜27のタンパク質と相同性検索によって同定されたようなタンパク質の間の同一性及び相同性のe−値及び度合いを示す。e−値は観察アラインメントスコアに少なくとも等しいアラインメントスコアとのチャンスアラインメントの期待数に関する。0.00のe−値は、完全な相同体を示す。e−値はAltschul S.F. et al. 1997に記載のように計算される。e−値は、2つの配列が相同性の推論を正当化するに十分な類似性を示すかどうかの決定に役立つ。同一性は、同一のアミノ酸がそれぞれの部位で比較タンパク質中に存在することを示し、一方で類似性は下記の本明細書に規定されるような保存アミノ酸置換がそれぞれの部位に存在することを示す。その上、ORF1〜26によってコードされるタンパク質の推定機能が示される。
ORF1〜26への(メチル)グリセリマイシンの合成を指示するためのバリアント核酸の置換は、このバリアント核酸が、それがバリアントであるORFの代わりにストレプトミセスDSM22643のゲノムに挿入できて、それによって配列番号2〜27のそれぞれのタンパク質の機能を引き継ぐバリアントタンパク質を発現し、そして(メチル)グリセリマイシンの合成を指示、即ちそれに関与する、ことを意味する。バリアントが機能を引き継ぐ程度は本明細書に規定される。
別の実施態様では、核酸は、配列番号2〜27のタンパク質をコードする。核酸は、表1に示されるような開始及び終止ヌクレオチド(nt)を持つ配列番号1によって含まれるようなORF1〜26の配列を含んでよい。核酸はまた、配列番号2〜27のタンパク質と同じアミノ酸配列のタンパク質をコードし得る、しかしながら、そのヌクレオチド組成は、遺伝コードの縮重が原因で異なる。
更なる実施態様では、核酸は、配列番号1によって同定されるような(メチル)グリセリマイシン遺伝子クラスターによって含まれる、又はORF1〜26を構成し又は配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント若しくはフラグメントをコードする核酸にストリンジェント条件下においてハイブリダイズする。本発明では、用語「ストリンジェント条件下においてハイブリダイズする(こと)」は、いわゆる特異的ハイブリッドの形成を可能にする条件下で2つの核酸分子の間でのハイブリッドの形成を言い、一方で非特異的ハイブリッドは実質的に形成されない。そのような条件の例は、その条件下において高い同一性核酸の相補鎖、即ち、配列番号1のヌクレオチド配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、尚より好ましくは90%以上及び尚更好ましくは95%以上の同一性を有するヌクレオチド配列から構成され、又はORF1〜26で示されるDNAはハイブリダイズし、一方で上記より同一性の少ない核酸の、相補のより少ない鎖はハイブリダイズしない、条件を含む。より具体的には、そのような条件は、ナトリウム塩濃度が15〜750mM、好ましくは50〜750mM、そしてより好ましくは300〜750mMであり、温度が25〜70℃、好ましくは50〜70℃、そしてより好ましくは55〜65℃であり、そしてホルムアミド濃度が0〜50%、好ましくは20〜50%、そしてより好ましくは35〜45%である、条件をいう。更にストリンジェント条件下で、ハイブリダイゼーション後にフィルターを洗浄する条件は通常下記を含む:ナトリウム塩濃度は15〜600mM、好ましくは50〜600mM、及びより好ましくは300〜600mMであり、そして温度は25〜70℃、好ましくは55〜70℃、及びより好ましくは60℃である。ストリンジェンシー、及び従って特異性は、例えば反応温度を増加させること及び/又は反応緩衝液のイオン強度を低下させることにより増加できる。例えば、低ストリンジェント条件は、室温〜65℃において3xSSCでのハイブリダイゼーションを含み、そして高ストリンジェント条件は、68℃において0.01xSSCでのハイブリダイゼーションを含む。例示的な中程度のストリンジェント条件(核酸はそれらのコドン組成に関して最大に変性する場合、中程度のストリンジェント条件下でハイブリダイズする)は、50%ホルムアミド、42℃における5xSSC及び1%SDS及び45℃における1xSSCでの洗浄を含む。高ストリンジェント条件は、42℃におけるインキュベーション、50%ホルムアミド、5xSSC及び1%SDS(例えば50%ホルムアミド、5xSSC及び1%SDS、50mMリン酸ナトリウム、5xDenhardt溶液、10xデキストラン硫酸、20mg/ml剪断処理済みサケ精子DNA)、又は65℃における5xSSC及び1%SDS及び約65℃における0.2xSSC及び0.1%SDSでの洗浄(1xSSCは0.15M塩化ナトリウム及び0.015Mクエン酸三ナトリウム緩衝液を表す)を含む。本発明では中程度又は高ストリンジェント条件が好ましく、高ストリンジェント条件が最も好ましい。本発明の文脈では、「ハイブリダイジング」配列は、(メチル)グリセリマイシンの合成を指示し、及び/又はそれが(メチル)グリセリマイシンの合成を指示するために特異的にハイブリダイズするORFと置換され得る、タンパク質をコードする配列を意味する。
本発明の更に好ましい実施態様では、上記で同定された核酸とストリンジェント条件下においてハイブリダイズし、そして5〜100ヌクレオチド長から成る核酸が提供される。本出願で提供される配列情報は、(メチル)グリセリマイシンを産生する微生物を同定し及び単離し、並びに配列番号2〜27のタンパク質又はそのバリアントのいずれかを固定するのに有用な特異的ヌクレオチドプローブ及びプライマーの設計を可能にする。このように、ヌクレオチドプローブは、配列番号1又はそのバリアントによって含まれるような又は配列番号2〜27のいずれか又は機能的に活性なそのバリアントをコードする、(メチル)グリセリマイシン遺伝子クラスター内の配列からの遺伝コードの縮重によって見出される又はそれ由来の配列を有する。用語「プローブ」は、配列番号1又はそのバリアントによって同定される又は配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのバリアントのいずれか、又はそれらの相補若しくはセンス配列をコードする、(メチル)グリセリマイシン遺伝子クラスター内に含まれる核酸分子に、上記のように、ストリンジェント条件下においてハイブリダイズする、DNA、好ましくは一本鎖、又はRNA分子又はその修飾若しくは組み合わせを言う。一般的に、プローブは完全長配列よりも顕著に短い。それらは、5〜100、好ましくは10〜80ヌクレオチド、より好ましくは10〜50ヌクレオチド、尚より好ましくは10〜40ヌクレオチド及び尚より好ましくは15〜25ヌクレオチドを含有してよい。特に、そのようなプローブは、配列番号1によって含まれるような、コードディンング(ORF1〜26)又は非コーディング配列に対して、少なくとも70%、少なくとも75%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%及び最も好ましくは100%相同である、又は上記の程度それに相補的である配列を有してよい。それらは、イノシン、メチル−5−デオキシシチジン、デオキシウリジン、ジメチルアミノ−5−デオキシウリジン又はジアミノ−2,6−プリンなどの修飾塩基を含有してよい。糖又はリン酸残基もまた当技術分野で公知のように修飾又は置換されてよい。例えば、デオキシリボース残基はポリアミドによって置換されてよく、そしてリン酸残基はジホスフェート、アルキル、アリールホスホネート又はホスホロチオエートエステルなどのエステル基によって置換されてよい。代わりに又は加えて、リボヌクレオチド上の2`−ヒドロキシ基はアルキル、O−アルキル又はハロゲン基などの基を含むことによって修飾されてよい。本発明のプローブは、少なくとも部分的に互いに異なるヌクレオチド配列を持つ特異的捕獲及び/又は検出プローブを用いる方法である、ドットブロット、サザンブロット、ノーザンブロット又はサンドイッチ技術などのいずれの従来のハイブリダイゼーション技術において使用される(Sambrook et al., Molecular cloning: A laboratory manual. Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2001)。プライマーは、増幅(例えばPCR)、延長又は逆転写法において、DNAの酵素的重合を開始するのに使用される。PCRを含む診断法で使用されるプライマーは当技術分野で公知の方法によって標識され得る。それらはまたプローブとして使用できる。原則として、プライマーはプローブと同じ特性を有してよい。それらは、5〜100、好ましくは10〜80ヌクレオチド、より好ましくは10〜50ヌクレオチド、尚より好ましくは10〜40ヌクレオチド及び尚より好ましくは15〜25ヌクレオチドを含有し得る。本発明の文脈において、プライマー又はプローブは、(メチル)グリセリマイシンを産生する、特に配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのバリアントをコードするDNA又はRNAを検出、同定及び/又は単離するために、及び/又は配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのバリアントをコードするDNA又はRNAを増幅するために、配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのバリアントのいずれかを含む、微生物を検出、同定及び/又は単離するために使用できる。このように、本発明の実施態様では、試薬は上記で概略を説明したように検出、同定及び/又は精製の目的でプライマー又はプローブを含んで構成される。
あるいは、(メチル)グリセリマイシン生合成経路において活性を有するタンパク質をコードする核酸の同定は、配列番号2〜27又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントのアミノ酸配列を有するタンパク質に対する抗体との反応性又は交差反応性のスクリーニングによって実現され得る。その手順は次のとおりである:抗体は、配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメント、融合ポリペプチド(例えば、MBP、GST、又はHis−タグ系の発現産物)、又は配列番号2〜27のタンパク質又はその公知のバリアント又はフラグメントから誘導される合成ペプチドに対して特異的に惹生じる(raised)。特異的抗原性は、ウェスタンブロット、ドットブロット、及びELISAを含む多くの方法に従って決定できる。一度特異抗体が生じると、この抗体は、抗体が生じてそれ故本明細書に規定される配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのフラグメント又はバリアントであるタンパク質を同定する、免疫原性ペプチドを固定するタンパク質をコードする核酸を同定するのに使用できる。本明細書に使用される特異的抗原性又は特異抗体とは、抗体は、抗体が生じた免疫原性ペプチドにだけ結合することを意味する。
更なる実施態様では、核酸は、配列番号1によって含まれる、又は配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのフラグメント又はバリアントをコードする核酸配列に相補性である。
1つの実施態様では、核酸は、グリセリマイシン生合成遺伝子クラスターの配列番号2〜27又は機能的に活性なそのフラグメント又はバリアントに示されるポリペプチドをコードするORF1〜26から選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ又はそれ以上のORFを含む。好ましい実施態様では、核酸は、(メチル)グリセリマイシンの生合成中に規定の工程に関与しそして一緒に機能する、特異的ORF又は特異的ORFの組み合わせを含む。より好ましい実施態様では、(メチル)グリセリマイシンの生合成を統御する(manage)ポリペプチドをコードする、ORF1〜27から選択されるORFの組み合わせが提供される。尚より好ましい実施態様では、ORFはORF8、15又は16であり、又はその組み合わせは、非リボソームタンパク質シンテターゼ(NRPS)のサブユニットをコードする、それぞれ、nrps−1、nrps−2及びnrps−3と呼ばれるORF8、15又は16の少なくとも2つを含む。別の実施態様では、核酸は、L−トランス−4−メチルプロリンの生合成に必要な、それぞれ、mps−1、mps−2、mps−3及びmps−4と呼ばれる遺伝子を構成するORF18、19又は21又はORF18〜21の少なくとも2つの組み合わせ、又はそれぞれmps−1、mps−2、及びmps−4と呼ばれる遺伝子を構成するORF18、19及び21の少なくとも2つを含む。別の実施態様では、ORF8、15及び/又は16は、L−トランス−4−メチルプロリン及び(メチル)グリセリマイシン、特にメチルグリセリマイシンの産生を向上させるために、ORF18、19、20及び/又は21、又はORF18、19及び/又は21と組み合わされてよい。それにより、ORF1〜26のいずれも、(メチル)グリセリマイシンの合成を指示するためにORF1〜26のバリアント又はフラグメントのいずれかと組み合わされてよい。本発明の別の実施態様では、ORFは不変であり得て、しかし制御因子(例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、ターミネーター、エンハンサーなど)は修飾され得る。
別の実施態様では、核酸は、配列番号1の配列を有し、又はORF1〜26の少なくとも1つのバリアント又はフラグメントを固定し、それによってバリアント又はフラグメントは配列番号2〜27のタンパク質の機能的に活性なバリアント又はフラグメントをコードする配列番号1のバリアント配列を有する、グリセリマイシン遺伝子クラスターを含んで又はそれから成るように提供される。他の非修飾状態において配列番号1の(メチル)グリセリマイシン遺伝子クラスター内でORF1〜26のいずれかのバリアント又はフラグメント配列は、(メチル)グリセリマイシンの合成経路の特定工程を修飾する配列番号2〜27の1つ又はそれ以上のバリアントタンパク質をもたらし得る。これは、(メチル)グリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンの高産生、又は抗生物質活性の亢進した(メチル)グリセリマイシンの構造修飾をもたらし得る。例として、ORF8、15及び16及び/又はORF18、19、20及び21は、上記に言及したように配列番号1によって含まれるようなグリセリマイシンクラスター内で修飾されてよく、一方で残存ORFは非修飾で残る。代わりに又は加えて、制御因子は、修飾され得てORF1〜26の少なくとも1つの修飾発現をもたらす。
このように、本発明は、1つの実施態様において、ORF18、19、20及び21又は別に指定されるORF18〜21又はORF18、19及び/又は21及び/又はORF8、15及び/又は16又は本明細書に規定されたようなこれらのORFの機能的に活性なバリアント又はフラグメントなどの、(メチル)グリセリマイシンの生合成に関与している少なくとも1つのORFを含む核酸を提供する。ORFの1つ又は組み合わせは、例えば、グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを内因的又は異種的に産生する生物におけるグリセリマイシン及び特にメチルグリセリマイシンの産生を向上させるための発酵補助として使用され得る、それぞれのタンパク質の産生を可能にするために、異種細胞中に発現又は過剰発現され得る。あるいは、発明によって含まれるようなORF又はORFの組み合わせは、(メチル)グリセリマイシンの産生を向上させ及び/又はメチルグリセリマイシンの産生を有利にするために、それぞれの1つ又は複数のタンパク質の産生を向上させるために、(メチル)グリセリマイシンを産生する細胞又は生物中に発現又は過剰発現される。例えば、ORF18〜21又はORF18、19及び21は、L−トランス−4−メチルプロリンの合成を可能にするように同時に発現されてよい。L−トランス−4−メチルプロリンの高産生は、4−メチルプロリンを供給することにより実証され得るようなグリセリマイシンの産生に対するメチルグリセリマイシンの産生を向上させるのに役立ち得て、それによって5倍高い量のメチルグリセリマイシンが得られた。このように、本発明の好ましい実施態様では、メチルグリセリマイシンの収量は、当技術分野において公知の又は明細書に記載の方法に従って、ストレプトミセスDSM22643で、又はL−トランス−4−メチルプロリンの生合成に関与する遺伝子、特にORF18〜21、更に特にORF18、19及び21を含む、そして上記遺伝子及び(メチル)グリセリマイシン遺伝子クラスターの遺伝子を発現することを可能にする核酸を導入することにより、(メチル)グリセリマイシンを産生する他の生物で向上できる。代わりに又は加えて、少なくとも1つのnrps核酸(ORF8、15及び/又は16)は、異種生物において又はその発現を向上させるために(メチル)グリセリマイシンを内因的に発現する生物において、(メチル)グリセリマイシンの合成のために発現され得る。代わりに又は加えて、(メチル)グリセリマイシンの合成を向上させるために、(メチル)グリセリマイシンの合成を有利にするために、又は例えば、より効率的な抗生物質である(メチル)グリセリマイシンと異なるアミノ酸組成の(メチル)グリセリマイシンの誘導体を生成させるために、(メチル)グリセリマイシンの合成を調節するバリアント核酸が発現され得る。例えば、NRPSタンパク質のAドメインのアミノ酸特異性は、突然変異誘発により又はペプチドシンテターゼ間のドメインスワッピングによって変更し得て、それにより種々のアミノ酸の選択を可能にし、そして天然(メチル)グリセリマイシンの誘導体を生成させる。あるいは、NRPSのモジュール8のAドメインをコードする核酸は、新生ポリペプチド鎖へのL−トランス−4−メチルプロリンの挿入向上をもたらす、バリアント核酸を産生するように変異され得て、このように野生型と比べてメチルグリセリマイシンの高産生をもたらす。あるいは、完全モジュール8は交換され得て、又はモジュール8のCドメインは好ましくはメチルプロリンを縮合するように交換され又は変異され得る。
L−トランス−4−メチルプロリンは、グリセリマイシンによって2及び5位置でそしてメチルグリセリマイシンによって2、5及び8位置で含まれる。L−トランス−4−メチルプロリンは化学的に産生できる、しかしながら、化学的産生は高コストで時間がかかる。このように、本発明は、1つの態様では、L−トランス−4−メチルプロリンの生合成に関与している遺伝子、特に本明細書に規定されたようなORF18〜21又はORF18、19及び21又はこれらのORFの機能的に活性なバリアント又はフラグメントを含む核酸を提供する。これらのORFの組み合わせは、グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを内因的又は異種的に産生する生物におけるグリセリマイシン及び特にメチルグリセリマイシンの産生を向上させる、例えば発酵補助として使用のためのL−トランス−4−メチルプロリンの産生を可能にするために、異種細胞中に発現又は過剰発現され得る。あるいは、これらの遺伝子の組み合わせは、メチルグリセリマイシンの産生を有利にするために、L−トランス−4−メチルプロリンの産生を向上させるために、(メチル)グリセリマイシンを天然に産生する細胞又は生物中に発現又は過剰発現される。このように、本発明の好ましい実施態様では、メチルグリセリマイシンの収量は、L−トランス−4−メチルプロリンの生合成に関与する遺伝子、特にORF18〜21、更に特別にはORF18、19及び21を含む核酸を、内因的又は異種的にグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを産生する生物、例えば当技術分野において公知の又は明細書に記載の方法に従って、例えばストレプトミセスDSM22643に導入することによりストレプトミセスDSM22643中で向上することができ、そして上記遺伝子及びグリセリマイシン生合成遺伝子クラスターの遺伝子を発現することを可能にする。
本発明の核酸は当技術分野で公知のいずれの方法によっても提供され得る。本明細書において提供される配列情報を用いて、1つ又はそれ以上のORFの増幅/単離に適切なプライマーは、当業者に周知の標準法に従って決定できる。本明細書に規定されたようなORFのいずれか1つ又はそれ以上の増幅/単離に適切なプライマーは、配列表に与えられているヌクレオチド配列情報に従って設計される。その手順は次のとおりである:10〜40、好ましくは15〜25ヌクレオチドから成り得るプライマーが選択される。効率的なハイブリダイゼーションを確実にするのに十分な割合でC及びGヌクレオチド;即ち、総ヌクレオチド含量の少なくとも40%、好ましくは50%のC及びGヌクレオチド量を含有するプライマーを選択することが有利である。通常そのような増幅は、必要な遺伝子を含有する生物(例えばストレプトミセス属、特にストレプトミセスDSM22643)のDNA又はRNAを鋳型として利用するであろう。0.5〜5単位TaqDNAポリメラーゼ/100μl、好ましくは当量濃度で各20〜200μMデオキシヌクレオチド、総デオキシヌクレオチド濃度にわたって0.5〜2.5mMマグネシウム、105〜106標的分子、及び約20pmolの各プライマーを、通常含有する、標準PCR反応が実施されよう。約25〜50PCRサイクルが行われる。よりストリンジェントなアニーリング温度は、不正確にアニールされたプライマーに対する識別を改善し、そしてプライマーの3’末端における誤ったヌクレオチドの組込みを減少させる。より高い温度がG+C豊富な標的の変性に適当であり得るが、95℃〜97℃の変性温度が標準的である。実施サイクル数は標的分子の開始濃度によって決まるが、通常40より大きいサイクルは、非特異バックグラウンド産物が蓄積する傾向にあることから推奨されない。本明細書に規定されたようなバリアントポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを検索する別の方法は、本明細書に規定されたようなプライマー及びプローブを用いてDNA又はRNAライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニングによる。ハイブリダイゼーション手順は周知であり、当技術分野において及び本明細書に記載されている。
代わりに又は上記に加えて、核酸は、クローニングによってもたらされてよく、そしてそれにより細胞中にそれを導入し増幅させ得る。このように、本発明の更なる態様では、本明細書に規定されたような核酸を含むベクター及び発現ベクターで形質転換された宿主細胞がもたらされる。遺伝子をレシピエント細胞に導入する手順は形質転換と呼ばれる。遺伝子は当技術分野で公知の様々な手段によって細胞中へ導入されそして各細胞型に適合され得る。用語「細胞」又は「宿主細胞」は、原核細胞であるか又は真核細胞であるかそして細胞がそれぞれの遺伝子を自然に発現するか否かに関係なく、遺伝子が発現される細胞を言う。好ましい実施態様では、それにより細胞は、本発明によって含まれるようなタンパク質を発現する遺伝子を自然に固定する細胞、例えばストレプトミセスDSM22643であり得る。核酸分子を導入及び発現するための当技術分野で周知の組換DNAクローニング技術は、細胞がそれぞれの遺伝子を固定する場合は内因性であるか、又は遺伝子が細胞に内因性ではない場合は異種である、遺伝子を導入及び発現するのに使用できる。細胞は、ウイルス又はバクテリオファージに基づくベクター、化学薬剤、エレクトロポレーション、DNAのリン酸カルシウム共沈殿又は直接拡散を含む、いずれかの適当な手段を用いて形質転換できる。ベクターは内因性又は異種遺伝子を細胞へ輸送する作用物質(agent)であり、そしてプロモーターなどの適当な転写及び翻訳制御シグナルを含んでよい。ベクターは、プラスミド、ウイルス(例えばバクテリオファージ)又は当技術分野で公知の他のものであってよい。ベクターは宿主細胞中で自律的に複製することができ、又は染色体DNAへ組み込むことができる。用語「ベクター」は、主として細胞中へヌクレオチドの挿入のために機能するもの、主として細胞中で核酸の複製のために機能するもの(複製ベクター)、又は主として細胞中でDNA又はRNAの転写及び/又は翻訳のために機能するものを含む。ベクターの例は、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(すべてBoehringer Mannheim製)、pKK263−2(Pharmacia製)、pGEX(Pharmacia製)、pSE280(Invitrogen製)、pGEMEX−1(Promega製)、pQE−8(Qiagene製)、pET−3(Novagen製)、pBluescriptII SK+ (Stratagene製)、pBluescript II SK(−) (Stratagene製)、pTrS30 [大腸菌JM109/pTrS30から調製 (FERM BP-5407)]、pTrS32 [大腸菌JM109/pTrS32から調製(FERM BP-5408)]、pSTV28 (Takara Bio Inc. 製)、pUC118 (Takara Bio Inc. 製)、pHW1520(MoBiTec製)、pSET152、pOJ436及びpOJ446(Bierman M, et al., 1992)、pSH19 (Herai S, et al., 2004)、pUWL199、pUWL218及びpUWL219(Wehmeier U. F.,1995)及びpIJ6021(Takano E. et al., 1995)を含む。
プロモーターは、誘導型又は構成的、全般的又は細胞特異性、核酸又は細胞質特異的、異種性又は事実上遺伝子関連性であってよい。いずれのタイプのプロモーターもそれが宿主細胞内で機能する限り使用できる。プロモーターの例は、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター又はPSEプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、及びpenPプロモーターなどの大腸菌又はファージ由来のプロモーターを含む。また、連続した(in series)2つのPtrp(Ptrp*2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター又はletIプロモーターを置くことによって形成されるプロモーターなどの人工的に設計された又は修飾されたプロモーターもまた使用できる。その上、バチルス属のバクテリア中での発現のためのxylAプロモーター、又はコリネバクテリウム属のバクテリア中での発現のためのP54−6プロモーターもまた使用できる。更に有用なプロモーターは、PermE(Bibb et al., 1985), PermE* (Bibb et al., 1994)、PtipA (Murakami et al., 1989)、PnitA−NitR発現系(Herai et al., 2004) 及びactII−ORF4/PactIアクチベータプロモーター系(Ferna´ndez-Moreno et al., 1991)である。プロモーター、ベクター及び他のエレメントの選択は、ルーチンデザインの事項である。多くのそのようなエレメントは文献に記載されおり、そして商業サプライヤを通して入手可能である。単一遺伝子は細胞中へ導入することができる。また1つより多い遺伝子も細胞中に導入でき、そしてその中で発現できる。大クラスターが発現されようとする場合、ファージミド、コスミド、P1、YAC、BAC、PAC、HAC、又は類似のクローニングベクターが使用される。1つより多い遺伝子が細胞中へ導入される場合、その時遺伝子は同じプロモーター及び/又は調節エレメントの制御下になり得る。あるいは、遺伝子は異なるプロモーター及び/又は調節エレメントの制御下になり得る。通常、転移(transfer)の方法は細胞への選択可能マーカーの転移を含む。一般に、細胞株は、上記のいずれの手段によって形質転換され、ここで導入遺伝子は選択可能マーカーに動作可能に連結される。形質転換に続いて、細胞は適合期間の間増殖される。形質転換細胞は選択に対して抵抗を示し、そして増殖できるが、一方で非形質転換細胞は一般に死滅する。選択マーカーの例は、それぞれ、ピューロマイシン、ゼオシン、ネオマイシン及びピューロマイシン、ゼオシン、アミノグリコシドG−418及びヒグロマイシンB、それぞれに対して耐性を与えるヒグロマイシンBを含む。
本発明の文脈において適切な宿主細胞の例は、組換グリセリマイシン生合成遺伝子クラスター又はグリセリマイシン生合成遺伝子クラスターの1つ又はそれ以上の遺伝子を固定しそして発現する能力を備えるいずれかの生物から由来する。例は、限定されるものではないが、大腸菌株の、ストレプトミセスDSM22643又はストレプトミセスセリカラーなどのストレプトミセス種などの放線菌目の、サッカロミセスセレビシエなどの酵母株の、スポドプテラフルギペルダからのような昆虫細胞株鱗翅目の、植物細胞の又はL6細胞、3T3脂肪細胞、HEK293、745−A、A−431、心房筋細胞、BxPC3、C5N、Caco−2、Capan−1、CC531、CFPAC、CHO、CHOK1、COS−1、COS−7、CV−1、EAHY、EAHY926などの哺乳動物細胞のような、バクテリア、酵母、糸状菌、動物細胞及び植物細胞を含む。好ましい実施態様は、ストレプトミセスDSM26643又はストレプトミセスセリカラー細胞などの放線菌目の細胞、又は大腸菌株の細胞などの細菌細胞である。特に好ましい実施態様は、放線菌目、特にストレプトミセスDSM22643の細胞である。
上記のように、本発明によって含まれるような遺伝子を固定しそして発現するための好ましい宿主細胞は、細菌細胞である。本発明によって含まれるような遺伝子を固定しそして発現するのに適切な他の宿主細胞は、テロメラーゼ遺伝子の人工発現などの、ランダム突然変異か又は意図的修飾かを通して無限に増殖する能力を獲得している樹立又は固定化細胞株である。特定の細胞型を代表する多数の安定樹立細胞株が存在し、そして適切な細胞株を選択することは当業者にとって周知の範囲内である。細胞株は、単一の共通原細胞から由来し、そしてそれ故に遺伝的に同一である、培養で増殖する細胞集団である。本発明の適切な細胞株は、HEK293細胞(初代ヒト胚性腎臓)、3T3細胞(マウス胚性線維芽細胞)、CHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、COS−7細胞(アフリカミドリザル細胞株)、HeLa細胞(ヒト類上皮子宮頚癌)、JURKAT細胞(ヒトT細胞白血病)、BHK21細胞(ハムスター正常腎臓、線維芽細胞)、及びMCF−7細胞(ヒト乳癌)である。
あるいは、本明細書に規定されたような核酸は、組織培養でクローニングされそして発現され得る。用語「組織培養」は、3次元ネットワークを形成する細胞群がインキュベートされる方法をいう。組織は細胞自体によって培養物中で形成できて、又は細胞で産生される細胞外マトリックスによって形成され得て、培養物は天然又は人工細胞外マトリックス(例えばコラーゲン、エラアスチン、ポリスチレン、ナイロン、ポリリジン)上でインキュベートされ得て、又は組織はヒトを含む動物から取得され得る。組織培養は培地中でそして適切な温度でインキュベートされ得る。培地は栄養分(例えば、糖、塩、アミノ酸、及び脂質)、緩衝系(しばしばリン酸塩、リン酸水素及び/又は低又は非毒性のトリス及び/又は二酸化炭素(CO2)ガス処理(gassing)などの1つ又はそれ以上の化学的緩衝物質を含む)、及び/又は場合により1つ又はそれ以上の抗生物質を含有し得る。十分量の栄養分を与え及び/又は代謝物を除くために、培地は必要に応じて交換され得る。場合により、組織培養は培地で潅流され得る。潅流は恒久的又はパルス潅流であってよい。
バリエーションは、デザインによって、例えば、特定のやり方で核酸内のヌクレオチドの修飾により、例えば単一置換基をその他と置換することによって核酸中に導入し、そしてそれによりグリセリマイシンの部分的又は完全人工生合成遺伝子クラスターをもたらし得る。更なる例として、当業者は、新しい生物学的機能及び事実上見出されていないシステムのデザイン及び構築に取り組む「合成生物学」と呼ばれる技術の分野を知る。例えば、当業者は、インシリコ(in silico)のDNA配列をデザインすること、そしてそれを野生型配列の核酸レベルに類似性がないように合成すること、しかしながら、野生型配列と同じ1つ又は複数のタンパク質をコーディングすることができる。あるいは、バリエーションは、例えば、生合成経路において1つ又はそれ以上のORFを体系的に又は偶然に置換することにより、(メチル)グリセリマイシンの分子バリアントのライブラリーを作ることによってランダムに作ることができる。その上、自然には発生しない核酸の有用なバリアント及びフラグメントが公知方法を用いてデザインされる。そのようなバリエーションは、上記に概説されたようないずれの修飾、例えば、1つの置換基の別物による置換であってよい。例えば、アミノ酸配列の変化及び/又は欠失を許容するように見えるポリペプチドの領域が同定される。例として、(メチル)グリセリマイシンを産生する異なった種類からの(メチル)グリセリマイシンの合成に関与するバリアントポリペプチドが比較され;保存配列が同定される。より発散性の(divergent)配列は、最も配列変化を許容するようである。配列の間の相同性は当技術分野で公知の方法を用いて解析し得る。核酸への突然変異導入方法は、誤りがちなPCR、部位特異的変異誘発、ヒドロキシルアミンを用いた方法、又はUVなどの変異剤が関心のある核酸を有する細胞に作用することを可能にする方法を含む。誤りがちなPCRが使用されるとき、例えば、関心のある核酸が組み込まれているプラスミドは鋳型として使用され、PCR反応はマンガン(Mn)塩濃度が通常のPCR反応におけるよりも高い反応溶液中で行われる。
本明細書で提供される情報を用いて、所望の配列をクローニングする他のアプローチは当業者に明白には明らかであり、例えば、ORF1〜26を含む全グリセリマイシン生合成遺伝子クラスター、及び/又は場合により関心のあるNRPSモジュール又は酵素ドメインをコードする核酸を含む、ORF1〜26の少なくとも1つは、例えば1つ又は複数の遺伝子を発現する細胞由来のcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングすることにより、又は同じものを含むことが知られているベクターから1つ又は複数の遺伝子を誘導することによる、などの組換方法を用いて、そのようなものを発現する、生物から得ることができる。1つ又は複数の遺伝子又はクラスターは次いで単離できて、そして標準的な技術を用いて他の所望の生合成エレメントと組み合わすことができる。問題の、1つ又は複数の遺伝子又はクラスターが、適切な発現ベクター中に既に存在している場合、それ(それら)は例えば要求により他のドメイン又はサブユニットと原位置で組み合わすことできる。関心のある1つ又は複数の遺伝子は、クローニングされるよりもむしろ合成的に産生することができる。ヌクレオチド配列は、所望の特定アミノ酸配列のための適当なコドンでデザインできる。一般に、配列が発現されるであろう所定の宿主のための好ましいコドンを選択し得る。またなお、カスタム遺伝子合成は市販されている。
別の態様では、本発明は、配列番号2〜27又は機能的に活性なそのフラグメント又はバリアントから選択される、又は上記のような核酸によってコードされた少なくとも1つのアミノ酸配列を含むタンパク質を対象としている。タンパク質は単一タンパク質であってよく又はタンパク質の混合物であってよく、又は配列番号2〜27の少なくとも2つのタンパク質の融合タンパク質であってよい。タンパク質は分離されてよく、それは実質的に純粋でそして事実上それが関連している成分と関連していないこと、又はタンパク質はタンパク質を産生する細胞の溶解物中に存在することを意味する。配列番号2〜27のタンパク質は、それぞれ推定ORF1〜26によってコードされる。これらのORFはグリセリマイシン生合成遺伝子クラスターに属しそしてそれを構成する。配列解析及び相同性検索に基づいて、本発明者らは、グリセリマイシン生合成遺伝子クラスターを同定することに、遺伝子クラスター内の特定の推定ORFを同定することに、そして同定されたORFを特異的タンパク質機能及び/又は公知の又は仮説のタンパク質をコードする特異的相同性ヌクレオチド配列に帰属させることに成功した。
半発明によって含まれるタンパク質は、配列番号1の配列のストレプトミセスDSM26643のグリセリマイシン生合成遺伝子クラスターによってコードされるような配列番号2〜27のタンパク質を包含し、そしてオルソログ又はホモログである(メチル)グリセリマイシンを産生し、それによりこれらのオルソログ又はホモログはストレプトミセスDSM26643の配列番号2〜27のタンパク質と同じ機能を有する、他のストレプトミセス種及び株並びに非ストレプトミセス種にそれらが生じるようなタンパク質を包含する。好ましくは、そのオルソログ又はホモログは、例えばアミノ酸の付加、欠失、置換及び/又は挿入により配列番号2〜27の配列と異なり、そして50%より大きい、60%より大きい、70%より大きい、好ましくは80%より大きい、より好ましく85%より大きい、尚更に好ましくは90%より大きい、尚更に好ましくは95%より大きい、最も好ましくは97%より大きい、配列番号2〜27と配列同一性を有し、及び/又は配列番号2〜27のタンパク質の活性の、5%より大きい、10%より大きい、20%より大きい、30%より大きい、40%より大きい、50%より大きい、60%より大きい、70%より大きい、80%より大きい、90%より大きい、95%より大きい、97%より大きい又は100%より大きい、例えば150%、200%、300%、400%又は500%より大きい酵素活性を有する。
本発明の文脈では、本発明によって含まれるような配列番号2〜27のタンパク質の天然又は非天然産バリアントは、それが配列番号2〜27の参照タンパク質の生物学的機能、即ち参照タンパク質が、配列番号2〜27のタンパク質の機能を開示するそれぞれの章に記載のように自然条件下(非天然バリアントの場合には、参照タンパク質の生物学的機能)に関与し、そして本明細書に規定されたようなようにそれと置換されることができる、反応における関与を維持する点において、機能的に活性なタンパク質である。
配列番号2〜27のタンパク質又はその天然産バリアントの非天然産バリアントは、限定数のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換、特に例えば最大限で10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1の1つ又は複数のアミノ酸の欠失、挿入及び/又は置換によって得られ得て、それにより例えば上記の配列番号2〜27に対してそれぞれの野生型タンパク質の配列同一性又は活性を得る。
バリアントは、更なる成分を含む修飾タンパク質又は修飾タンパク質バリアントであってよい。従って、バリアントは、本明細書に規定されたような配列番号2〜27の天然産タンパク質又はそのバリアント及び少なくとも1つの更なる成分から構成されるドメインを有する分子であってよい。1つの好ましい実施態様では、バリアントは、(i)配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なバリアント及び(ii)更なるタンパク質又はペプチド成分を含む融合タンパク質であってよい。例えば、タンパク質は精製目的で使用されるタグ(例えば6His(又はHexaHis)タグ、連鎖球菌タグ、HAタグ、c−mycタグ又はグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)タグ)などのマーカーに結合され得る。例えば配列番号2〜27又はバリアントの高純度タンパク質が要求され得る場合、二重又は多重マーカー(例えば上記マーカー又はタグの組み合わせ)が使用され得る。この場合、タンパク質は2つ又はそれ以上の分離クロマトグラフィー工程で精製され、いずれの場合にも第1及び次いで第2のタグの親和性を利用する。そのような二重又はタンデムタグの例は、GST−His−タグ(ポリヒスチジン−タグに融合されたグルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、6xHis−連鎖球菌−タグ(連鎖球菌−タグに融合された6ヒスチジン残基)、6xHis−タグ100−タグ(哺乳動物MAP−キナーゼ2の12−アミノ酸タンパク質に融合された6ヒスチジン残基)、8xHis−HA−タグ(ヘマグルチニン−エピトープ−タグに融合された8ヒスチジン残基)、His−MBP(マルトース結合タンパク質に融合されたHis−タグ)、FLAG−HA−タグ(ヘマグルチニン−エピトープ−タグに融合されたFLAG−タグ)、及びFLAG−連鎖球菌−タグである。マーカーはタグ付きタンパク質を検出するために使用され得て、ここで特異抗体が使用され得る。適切な抗体は、抗−HA(12CA5又は3F10など)、抗−6His、抗−c−myc及び抗−GSTを含む。更に、タンパク質は、本発明によって含まれるようなタンパク質の検出を可能にする、緑色蛍光タンパク質などの蛍光マーカーなどの異なるカテゴリーのマーカー、ストレプトアビジンのような結合タンパク質、Cy色素のような1つ又はそれ以上の小分子色素、又は放射性マーカーに連結され得る。更なる実施態様では、配列番号2〜27のタンパク質は融合タンパク質の一部であり得て、ここで第2の部分は酵素活性を有するタンパク質成分などの、検出に使用され得よう。
本発明の別の実施態様では、配列番号2〜27のタンパク質のバリアントはフラグメントであってよく、ここでフラグメントは尚機能的に活性である。これは、短い内部及び/又はC−及び/又はN−末端欠失(例えばバリアント内及び/又はC−及び/又はN−末端で最大限でも20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1のアミノ酸の欠失、又は5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%アミノ酸又はこれらの値間のいずれかの値の全欠失)を持つ上記に詳述したような配列番号2〜27のタンパク質又はそのバリアントを含んでよい。加えて、フラグメントは配列番号2〜27のためにタンパク質で上記に詳述したように更に修飾され得る。
代わりに又は加えて、上記のような配列番号2〜27のタンパク質又はそのバリアントは、1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含んでよい。しかしながら、アミノ酸が化学的関連アミノ酸で置換される、半保存及び特に保存アミノ酸置換が好ましい。代表的置換は、脂肪族アミノ酸間で、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸間で、酸性残基を有するアミノ酸間で、アミド誘導体間で、塩基性残基を有するアミノ酸間で、又は芳香族残基を有するアミノ酸間である。代表的半保存及び保存アミノ酸置換は次のようである;
A、F、H、I、L、M、P、V、W又はYからCへの変化は、新しいシステインが遊離のチオールとして残っている場合は、半保存的である。更に、当業者には当然のことながら、立体的要求位置でのグリシンは置換され得ず、そしてPはαラセン又はβシート構造を有するタンパク質の部分に導入され得ない。置換を持つ配列番号2〜26のタンパク質又はそのフラグメント又はバリアントは、配列番号2〜27のタンパク質又はそのフラグメント又はバリアントで上記の詳細のように修飾され得る。
なお、配列番号2〜27のタンパク質の上記修飾は組み合わせられてよい。本発明のバリアントは、例えばそれに融合されたマーカーを有し又は1つ又はそれ以上のアミノ酸置換を含む配列番号2〜27のタンパク質のフラグメントであってよい。更になお、配列番号2〜27のタンパク質のいずれもが、配列番号2〜27のタンパク質のバリアント又はフラグメントのいずれとも組み合わされてよい。
本発明によって含まれるようなタンパク質は、例えば、自然源からタンパク質を得ることにより、当技術分野で周知のバイオテクノロジー法により及び/又は合成法により、いずれの手段によっても提供され得る。本明細書における用語「提供すること」は最も広い意味において理解されてよく、そして限定されるものではないが、タンパク質又は他の産物を得るのに使用され得る当技術分野で公知の生化学又はバイオテクノロジー手段を含んでよい。従って、タンパク質はストレプトミセス種、特にストレプトミセスDSM26643などのタンパク質を含有する微生物などの自然源から抽出によって得られてよい。当業者はタンパク質の単離法を知っている。本発明によって含まれるようなタンパク質を自然に固定する細胞は、限定されるものではないが、超音波処理、低張緩衝液、界面活性剤、UltraTurrax、French press、凍結融解サイクル、機械的均質化及びスクラッチングなど当技術分野で公知のいずれの手段によっても破壊され得る。関心のあるタンパク質は次いで、公知の方法、例えば溶媒抽出法、塩析法、溶媒沈殿方法、透析法、超音波法、ゲル電気泳動法、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、及びアフィニティクロマトグラフィー、必要に応じて単独か又は組み合わせて単離され得る。
あるいは、本発明によって含まれるようなタンパク質は、組換法によって、例えば本発明によって含まれるようなタンパク質又はその機能的フラグメント又はバリアントをコードする核酸をクローニングしそして発現すること、及びタンパク質を分離することにより、産生されるタンパク質であってよい。
タンパク質は単離を容易にするのに便利なマーカーで発現され得る。マーカー(又はタグ又はラベル)は、別の物質又は物質の複合体の存在を示すことができるいずれの種類の物質でもよい。マーカーは検出されようとする物質に結合している又は導入されている物質であってよい。検出可能なマーカーは、例えば、タンパク質、酵素反応の産物、セカンドメッセンジャー、DNA、分子の相互作用などを検出するために分子生物学及びバイオテクノロジーにおいて使用される。適切なマーカー又はラベルの例は、フルオロフォア、発色団、放射性ラベル、金属コロイド、酵素、又は化学発光又はバイオ発光分子を含む。フルオロフォアの例は、フルオレセイン、ローダミン、及びスルホインドシアニン色素Cy5を含む。放射性ラベルの例は、3H、14C、32P、33P、35S、99mTc又は125Iを含む。酵素の例は、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、及びウレアーゼを含む。
機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントを含む本発明のタンパク質は、細胞中に単独で発現できて、又は少なくとも2つ、3つ、4つ、5つ又はそれ以上のタンパク質などの、本発明によって含まれるような機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントを含む幾つかのタンパク質は、細胞中に同時に発現できる。同様に、全グリセリマイシン生合成遺伝子クラスターは異種発現され得る。それにより、バリアント及び非バリアントタンパク質のいずれの組み合わせも含まれる。1つの実施態様では、nrps−1、nrps−2及び/又はnrps−3遺伝子によってコードされる非リボソームタンパク質シンテターゼなどのタンパク質の、又はメチルプロリン合成遺伝子mps−1、mps−2、mps−3及びmps−4又はmps−1、mps−2及びmps−4によってコードされるタンパク質などの、同じファミリーに属するものなどの(メチル)グリセリマイシン合成経路のある態様に寄与する幾つかのタンパク質は、細胞中で一緒に発現され得る。それにより、(メチル)グリセリマイシンの合成の特異的工程は、(メチル)グリセリマイシン及び特にメチルグリセリマイシンの産生が向上させるのに特に好ましい。あるいは、(メチル)グリセリマイシンの合成経路そしてそれ故(メチル)グリセリマイシンの合成の特定の態様に影響を及ぼす、バリアントが産生され得る。例は、配列番号9、16及び17、特に配列番号16、より特別にはL−トランス−4−メチルプロリンのメチルグリセリマイシンへの挿入を促進する配列番号16及び/又は配列番号19、20及び22のモジュール8、及びおそらくメチルグリセリマイシンがそのようなバリアントを使用しない場合よりもより高い収量で産生されるように、L−トランス−4−メチルプロリンの合成を向上させる配列番号21の1つ又はそれ以上のタンパク質のバリアントである。1つ又はそれ以上のバリアントは、配列番号2〜27の1つ又はそれ以上の非バリアントタンパク質と組み合わされてよい。
本発明の更なる態様では、配列番号2〜27のタンパク質又は機能的に活性なそのフラグメント又はバリアントの少なくとも1つに対する抗体が提供される。タンパク質の検出は、しばしば特異抗体の使用を含む。従って、配列番号2〜27のタンパク質又は機能的なそのバリアント又はフラグメントの少なくとも1つの検出は、特異抗体を含んでよい。抗体は、調製型の抗原を用いて動物を免疫感作するために安定樹立技術を用いて生じさせることができる。様々な試薬が抗体産生及び精製を補助するのに利用でき、そして種々の会社は抗体製造サービスを専門にしている。実施されようとする適用に応じて、異なるレベルの純度及び特異性のタイプが供給される一次抗体で必要となる。2〜3のパラメータを挙げると、抗体は、抗血清又はアフィニティ精製溶液として供給され、そして天然タンパク質又は変性タンパク質検出のために検証される、モノクローナル又はポリクロナールであり得る。それらは、キメラ、ヒト化、多機能性、二重特異性及びオリゴ特異性抗体であり得る。本発明によって含まれるような抗体は、Fab、F(ab)2又はsc(単鎖)Fvなどの全抗体又は抗体フラグメントを含んでよい。
標的抗原を認識する抗体、ここでは配列番号2〜27のタンパク質又は機能的なそのバリアント又はフラグメントは、「一次抗体」と呼ばれる。この抗体がタグで標識化される場合、抗原の直接検出が可能である。しかしながら、通常一次抗体は直接検出のために標識化されない。その代わりに検出可能タグで標識化されている「二次抗体」が、標的抗原に結合されている一次抗体を探るために二次工程で適用される。このように、抗原は間接的に検出される。別の形態の間接検出は、ビオチンなどのアフィニティタグで標識化される一次又は二次抗体を用いて関与する。次いで、検出可能酵素又はフルオロフォアタグで標識化されるストレプトアビジンなどの二次(又は三次)プローブは、検出可能シグナルを生み出すためにビオチンタグを探るのに使用できる。これらのプロービング及び検出方法の幾つかのバリアントが存在する。しかしながら、各々は、その存在がある種の測定可能タグ(例えば、その活性がその基質との反応時に着色産物を産生することができる酵素)に直接又は間接に結合する(link)特異的プローブ(例えば一次抗体)によって決まる。
本発明の更なる態様では、核酸を固定する発現ベクターの、又は(メチル)グリセリマイシンの産生のための該発現ベクターを固定する宿主細胞の、フラグメント又はバリアントを含む、本明細書に規定されるような核酸又はタンパク質の使用が提供される。特に、ORF8、15及び16を含む少なくとも1つの核酸の、又は(メチル)グリセリマイシンの産生のためのフラグメント又はバリアントを含む、配列番号9、16及び17の少なくとも1つのタンパク質の使用が提供される。好ましくは、ORF8、15及び16を含む核酸の、又は配列番号9、16及び17のタンパク質の組み合わせが提供される。用語「核酸」、「タンパク質」、「ORF8、15及び16」及び「配列番号9、16及び17のタンパク質」に関して、それは本発明の核酸及びタンパク質の文脈において供される定義を言う。
本発明の更なる態様では、ORF18、19及び21を含む少なくとも1つの核酸の、又はL−トランス−4−メチルプロリンの産生のためのフラグメント又はバリアントを含む、配列番号19、20及び22の少なくとも1つのタンパク質の使用が提供される。好ましくは、ORF18、19及び21を含む核酸の、又は配列番号19、20及び22のタンパク質の組み合わせが提供される。ORF18、19及び21及び配列番号19、20及び22のタンパク質に関して、それは本発明の核酸及びタンパク質の文脈において供される定義を言う。(メチル)グリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンの産生方法に関して、ORF1〜26のバリアントを決定する文脈においてその定義を説明する。
本発明の別の態様では、本明細書に規定されたようなバリアント型及びフラグメントを含む核酸を発現すること、及びタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントを選択的に単離することを含む、本明細書に規定されたようなタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントの少なくとも1つを産生する方法が提供される。核酸をクローニング及び発現する、及びタンパク質を単離する方法は、当技術分野で公知でありそして本明細書に記載される。
本発明は、好ましい実施態様において、単離される上記の核酸又はタンパク質を言及する。DNA又はRNAなどの、核酸に関して本明細書で使用されるような用語「単離される」は、単離核酸が事実上見出されるポリヌクレオチドのすべて又は一部と関連しない核酸を言う。タンパク質に関して本明細書で使用されるような用語「単離される」は、その中に又はそれにより単離タンパク質が事実上見出される化合物のすべて又は一部と関連しないタンパク質を言う。単離核酸又は単離タンパク質は、自然のヒト配列又はタンパク質、例えば、リボソーム、ポリメラーゼ、多くの他のヒトゲノム配列及びその他の種類の細胞物質を自然に伴う他の細胞成分から分離される。用語は、その自然発生的環境から除かれている核酸配列又はタンパク質を包含し、そして組換又はクローニングDNA単離体又はそれから誘導されそして化学的に合成されたアナログ又は異種系によって生物学的に合成されたアナログを含む。「単離核酸」は、その自然環境から除かれている、又はフラグメントとして自然発生的でないそして事実上見出されていない、核酸フラグメントを含むことを意味する。用語「単離される」はまた、他の細胞タンパク質から単離されるタンパク質を言い、そしてまた組換タンパク質を包含することを意味する。用語「単離される」は、核酸又はポリペプチド又はタンパク質が不純物をただ分離することによってその自然の要件から精製されることを意味する「精製される」を意味しない。
本発明の別の態様では、グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの産生を調節する、ORF1〜26の又は配列番号2〜27のタンパク質のバリアントを決定する方法が提供される。この方法は、ORF1〜26のいずれかのバリアントを産生すること、バリアントをタンパク質中に発現すること、該バリアントタンパク質を用いてグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの又はその誘導体の産生を可能にすること、及びグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの量を決定することを含み、ここでバリアントタンパク質が存在しないで、しかしタンパク質の対応するインバリアント型が存在する場合の産生量に比べたグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの量の増加は、バリアントがグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの産生を増加させること、又はグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの誘導体の抗生物質活性を決定することができることを示し、ここでバリアントタンパク質が存在しないで、しかしタンパク質の対応するインバリアント型が存在する場合の抗生物質活性に比べた抗生物質活性の増加は、バリアントが抗生物質活性を増加したグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン誘導体を産生することができることを示し、そしてここで誘導体はグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンとアミノ酸組成が異なり、そしてグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを超えた抗生物質活性向上を示す。更なる態様では、発明は、ORF1〜26のいずれかのバリアントを産生すること、バリアントをタンパク質中で発現させること、前記バリアントタンパク質を用いてL−トランス−4−メチルプロリンの産生を可能にすること、及びL−トランス−4−メチルプロリンの量を決定することを含む、L−トランス−4−メチルプロリンの産生を向上させる、ORF1〜26の又は配列番号2〜27のタンパク質のバリアントを決定する方法を含み、ここでバリアントタンパク質が存在しないで、しかしタンパク質の対応するインバリアント型が存在する場合、量で比べたL−トランス−4−メチルプロリンの量の増加は、バリアントがL−トランス−4−メチルプロリンの産生を増加させることができることを示す。
本明細書で使用されるように、用語「方法」、又は「アッセイ」は、最も広い意味で実験的活動(experimental activity)又は手順として理解され得る。それは、(メチル)グリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンの産生を調節又は向上することができる、ORF1〜26の又は配列番号2〜27のタンパク質のバリアントを決定するのに使用され得るすべての手段として理解され得る。用語「ORF1〜26のバリアント」は、本明細書に規定されたような意味で、即ち配列番号2〜27の1つ又はそれ以上のタンパク質のバリアントをコードする1つ又はそれ以上の核酸の置換、付加、挿入及び/又は欠失を持つORF1〜26のバリアントと理解され得るが、それはバリアントがグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン、特にメチルグリセリマイシンの、又はバリアントを固定する細胞によりL−トランス−4−メチルプロリンの収量を増加させること、又は(メチル)グリセリマイシンの組成を変化させることができるタンパク質をコードさせる限りであり、それで組成の変化した(メチル)グリセリマイシンは抗生物質活性向上を示す。適切なバリアントは、グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン、特にメチルグリセリマイシンの、又はL−トランス−4−メチルプロリンの収量を、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%又は少なくとも500%増加させるバリアントである。あるいは、適切なバリアントは、抗生物質活性が少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%又は少なくとも500%増加するように、(メチル)グリセリマイシンの組成を変化させるバリアントである。用語「グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンの産生を調節する」は、産生されたグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの量を増加させること又はグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン組成を変化させることを意味する。このように、1つ又は2つのアミノ酸又は更に多くのアミノ酸(例えば3つ又は4つのアミノ酸)、又は1つ又は2つ又はそれ以上のドメイン又は1つ又は2つ又はそれ以上のモジュールは、それぞれ別々のアミノ酸又はドメイン又はモジュールによって置換され、それによって得られたグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの誘導体は、向上された抗生物質活性を示す。例えば、NRPSタンパク質のいずれかのモジュールのAドメインをコードする核酸のバリアントは、向上された抗生物質活性を有し得る(メチル)グリセリマイシンの誘導体をもたらし得る、種々のアミノ酸の組込みをもたらし得る。用語「バリアントを産生すること」は、当技術分野におけるいずれの公知方法による又は本明細書に規定されたような産生を意味する。方法は、標的変異を導入することによる意図的変異核酸又はランダム変異核酸を含む。一度バリアント核酸が産生されると、バリアント核酸は細胞中に導入される。あるいは、バリアントは細胞に変異処理を適用することによって細胞内部で産生される。細胞はグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの又はL−トランス−4−メチルプロリンの産生のために遺伝子を自然に固定し得て、又は細胞はグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの又はL−トランス−4−メチルプロリンの産生のために異種系を含み得る。バリアントが細胞中に発現されようとする遺伝子は、好ましくは欠失又はその他の種類の突然変異によって不活性であり、又は細胞により不活性状態で含まれる。例えば、細胞は、試験しようとする1つ又はそれ以上のバリアント核酸、又はバリアントnrps遺伝子又はバリアントnrps遺伝子以外の別のバリアント遺伝子を含むnrps遺伝子、又はバリアントmps遺伝子又はバリアントmps遺伝子以外の別のバリアント遺伝子を含むmps遺伝子などの、ORF1〜26からの核酸のセットを含む、ORF1〜26の核酸の各々を固定してよい。(メチル)グリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンの合成のためのタンパク質をコードする核酸を固定する細胞、及び1つ又はそれ以上のバリアント核酸は、(メチル)グリセリマイシン又はその誘導体又はL−トランス−4−メチルプロリンの合成を可能にするために適当な条件下でインキュベートされる。好ましくは、(メチル)グリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンの産生は、中性pHの水性緩衝液中で、より好ましくはpH7前後のpHの緩衝液中で、尚より好ましくは、L−N−メチルバリン、L−ロイシン、L−N−メチルトレオニン、L−プロリン、L−N−メチルロイシン及びグリシンなどのアミノ酸を含むpH7の緩衝液中で行われ、L−トランス−4−メチルプロリンの産生のために、(メチル)グリセリマイシン又はL−ロイシンに組み込まれる。好ましくは、配列番号2〜27のタンパク質及びバリアントタンパク質は使用緩衝液中でそれらの活性を維持し、そして好ましくはタンパク質及び基質の沈殿は禁じられる。場合により、サンプルはタンパク質活性に好適な温度で、好ましくは0〜50℃間の温度で、より好ましくは10〜40℃間の温度で、尚より好ましくは20〜40℃間の温度で、最も好ましくは37℃でインキュベートされ得る。あるいは、バリアント核酸は、例えば無細胞発現系で発現され、そして得られたタンパク質は次いで、(メチル)グリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンを産生するためにタンパク質を固定する細胞に加えられる。
別の実施態様では、(メチル)グリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンの収量を向上させ、又は、(メチル)グリセリマイシンの組成を変更するORF1〜26のいずれかのバリアントを決定する方法は、インビトロで行われ得る。インビトロ(ラテン語:ガラス容器内で)で行われる手順は生体内では行われず、試験管内又はペトリ皿のような制御環境中で行われる。インビトロアッセイでは、反応に関与する成分は試験管内で組み合わされ、反応が進むことが可能となりそして産物が決定される。これが起こるために、本明細に記載のように産生したバリアント核酸は、細胞によるか又は無細胞翻訳法でそれぞれのバリアントタンパク質に転写及び翻訳され、タンパク質は精製され又は細胞溶解物(粗製、分画又は精製された)が使用され、そしてタンパク質は配列番号2〜27によって含まれるような非バリアントタンパク質と一緒にアッセイに使用される。バリアントタンパク質が(メチル)グリセリマイシン合成経路内の確定工程にかかわる場合、例えばバリアントタンパク質がNRPSタンパク質のように(メチル)グリセリマイシンの合成を直接行うタンパク質に属する場合、インビトロアッセイは有用であり、そしてバリアント型を含むNRPSタンパク質だけが、mps遺伝子によってコードされるタンパク質のような(メチル)グリセリマイシンの又はL−トランス−4−メチルプロリンの合成に関与し、そしてバリアント型を含むこれらのタンパク質だけがL−トランス−4−メチルプロリンの合成に関与する。インビトロアッセイでは、L−N−メチルバリン、L−ロイシン、L−N−メチルトレオニン、L−プロリン、L−N−メチルロイシン及びグリシンなどのアミノ酸のような反応に関与する成分、及び試験しようとするバリアントを含む配列番号2〜27のタンパク質の少なくとも1つは、時間の規定された定義、成分量、反応緩衝液組成、温度などの下で組み合わされ、(メチル)グリセリマイシン又はその誘導体又はL−トランス−4−メチルプロリンの合成を可能にする。測定は関与タンパク質の活性に適切な分子環境で実施され得る。適切な条件は上記にその概略が説明される。
L−トランス−4−メチルプロリンのインビトロ合成では、Mps−1、Mps−2及びMps−3を用いた3つのそれに続くアッセイが行われる。Mps−1にアッセイにおいて、L−ロイシンは5−ヒドロキシルロイシンに変換され、Msp−2アッセイにおいて、5−ヒドロキシルロイシンはγ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒドに変換され、そしてMsp−4アッセイにおいて、3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸は4−メチルプロリンに変換される。γ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒドの3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸への環化は自然に生じると推定される。場合により、Mps−3はこの環化反応に関与する。5−ヒドロキシルロイシンの産生のために、Mps−1アッセイは、基質、ロイシン又は関連化合物、及びMps−1タンパク質を含む、中性pHの水性緩衝液中で、より好ましくはpH7前後のpHの緩衝液中で、尚更に好ましくはpH7の緩衝液中で行われる。好ましくは、Mps−1タンパク質は使用緩衝液中でその活性を維持し、そして好ましくはタンパク質及び基質の沈殿は禁じられる。場合により、サンプルは、タンパク質活性に適切な温度で、好ましくは0〜50℃間の温度で、より好ましくは10〜40℃間の温度で、尚より好ましくは20〜40℃間の温度で、最も好ましくは37℃でインキュベートされ得る。通常、反応時間は、数分と数時間の間、好ましくは30分〜2時間及びより好ましくは1時間である。好ましくは、γ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒドの産生のために、Mps−2アッセイは、塩基性pHの水性緩衝液中で、より好ましくはpH10前後のpHの緩衝液中で、尚より好ましくは基質、5−ヒドロキシルロイシン、及びMps−2タンパク質を含む、pH10の緩衝液中で行われる。好ましくは、Mps−2タンパク質は使用緩衝液中でその活性を維持し、そして好ましくはタンパク質及び基質の沈殿は禁じられる。場合により、サンプルはタンパク質活性に適切な温度で、好ましくは0〜50℃間の温度で、より好ましくは10〜45℃間の温度で、尚より好ましくは30〜42℃間の温度でインキュベートされ得る。通常、反応時間は、数分と数時間の間、好ましくは30分〜4時間及びより好ましくは1〜3時間である。好ましくは、4−メチルプロリンの産生のために、Mps−4アッセイは、中性pHの水性緩衝液中で、より好ましくはpH7〜8の緩衝液中で、尚より好ましくは基質、3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸又は関連化合物、及びMps−4タンパク質を含む、pH7.5〜8のpHの緩衝液中で行われる。好ましくは、Mps−4タンパク質は使用緩衝液中でその活性を維持し、そして好ましくはタンパク質及び基質の沈殿は禁じられる。場合により、サンプルはタンパク質活性に好適な温度で、好ましくは0〜50℃間の温度で、より好ましくは10〜45℃間の温度で、尚より好ましくは30〜42℃間の温度でそして尚より好ましくは30℃でインキュベートされ得る。通常、反応時間は、数分と数時間の間、好ましくは30分〜4時間及びより好ましくは1〜3時間である。
好ましくは、グリセリマイシンの産生のために、アッセイは、中性pHの水性緩衝液中で、より好ましくは7〜8のpHの緩衝液中で、尚更に好ましくは基質、アセチル−CoA、L−バリン、(2S,4R)−4−メチルプロリン(又は関連化合物)、L−ロイシン、L−プロリン、L−トレオニン、L−グリシン及びタンパク質NRPS−1、NRPS−2、NRPS−3(非リボソームペプチドシンテターゼ)及びMtbH及び、必要に応じてSAM及びATPを含む、pH8の緩衝液中で行われる。好ましくは、タンパク質は使用緩衝液中でそれらの活性を維持し、そして好ましくはタンパク質及び基質の沈殿は禁じられる。場合により、サンプルはタンパク質活性に好適な温度で、好ましくは0〜50℃間の温度で、より好ましくは10〜45℃間の温度で、尚より好ましくは20〜40℃間の温度でそして尚より好ましくは30℃でインキュベートされ得る。通常、反応時間は、1時間と100時間の間、好ましくは2〜72時間である。好ましくは、メチルグリセリマイシンの産生のために、アッセイはグリセリマイシンのアッセイとして行われる。しかしながら、L−プロリンは必要ではなく、それ故に反応において含有する必要はない。
それによって当業者が化合物の濃度を決定し、そしてそれ故化合物の濃度が対照反応と比べて変化するかを測定する、様々なアッセイが当技術分野で公知である。物質への放射活性の組み込み又は物質からのその放出を測定するラジオメトリアッセイが明白に記載される。これらのアッセイで最も頻繁に使用される放射性同位体は14C、32P、35S、及び125Iである。その濃度はまたウェスタン分析又は試験化合物に対する抗体又は抗血清を用いたELISAアッセイによって決定され得る。クロマトグラフィーアッセイは、反応混合物をクロマトグラフィーでその成分に分離することによって産物形成を測定する。これは通常高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって行われる、しかし薄層クロマトグラフィーのより簡便法を使用することもできる。このアプローチは多くの材料を必要とするが、その感度を放射性又は蛍光タグで基質/産物を標識化することによって増加できる。好ましい定量化方法はHPLC/MSである。液体クロマトグラフィー−質量分光分析(LC−MS、又は代わりにHPLC−MS)は、質量分光分析の質量分析能力と液体クロマトグラフィー(又はHPLC)の物理的分離能力を組み合わせる分析化学技術である。LC−MSは、非常に高い感度及び特異性を有する多くの用途に使用される強力な技術である。用語「質量分光分析」は、表面上でサンプルからの気相イオンを発生させるイオン源の使用、そして質量分析計による気相イオンを検出することをいう。用語「レーザ脱離質量分析」は、表面上でサンプルからの気相イオンを発生するイオン源としてのレーザの使用、そして質量分析計で気相イオンを検出することをいう。アシル化アシル受容体などの生体分子の好ましい質量分光分析の好ましい方法は、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化質量分析又はMALDIである。別の好ましい方法は表面増強レーザ脱離/イオン化質量分析又はSELDIである。質量分光分析において用語「見掛けの分子量」は検出イオンの分子量(ダルトン)対電荷値、m/zをいう。HPLCと組み合わせて、検体は、ESI(エレクトロスプレイイオン化)又はAPCI(大気圧化学イオン化)のような分散API技術によってイオン化される。分析器中で、イオンはそれらの質量対電荷値m/z比に従って分離される。あるいは、(メチル)グリセリマイシンの量は当技術分野で周知のアッセイを用いてその抗生物質活性を決定することによって測定され得る。別の実施態様では、(メチル)グリセリマイシンの誘導体の抗生物質活性は当技術分野で周知のアッセイを用いて測定され得る。それにより当業者は、抗生物質活性増加が(メチル)グリセリマイシンの誘導体増加量に因るのか、又は抗生物質活性の向上した(メチル)グリセリマイシンの誘導体は、例えば生成抗生物質製剤が(メチル)グリセリマイシンなのか否かを決定することによって生成されるかについてどのように識別するかを知っている。そのような方法は上に記載される。
抗生物質試験は、例えば抗生物質含浸型のウエハーを使用する検査であるディスク拡散抗生物質感受性試験であってよい。既知量のバクテリアが抗生物質を含有する薄いウエハーの存在下に寒天プレート上で増殖される。透明エリアは、バクテリアが増殖することができないウエハーを囲む(阻止ゾーン(zone of inhibition)と呼ばれる)。抗生物質の拡散速度と一緒になってこれは特定の抗生物質の有効性を評価するのに使用される。一般に、より大きいゾーンは抗生物質のより小さい最小阻止濃度(MIC)と相関する。この情報は、(メチル)グリセリマイシンの誘導体vs.(メチル)グリセリマイシンの有効性を評価するのに使用できる。MICは、一夜培養後の微生物の可視増殖を阻害し得る抗菌薬の最も低い濃度である。最小阻止濃度は、抗菌薬に対する微生物の抵抗性を確認するのに、そして新規抗菌薬の活性をモニターするのに診断臨床検査室において重要である。MICは一般的に生物に対する抗菌薬の活性の最も基礎的な臨床検査法と見なされている。MICは通常、臨床及び検査標準協会(CLSI)又は英国抗菌薬化学療法学会(BSAC)などの、参照体のガイドラインに従う寒天又は液体希釈法によって決定できる。確立したEtestストリップを含む幾つかの市販方法がある。Etestシステムは、異なる抗菌薬の事前に定義されたそして連続的濃度勾配を含み、接種寒天プレートに適用されそしてインキュベートされたとき、それは微生物の阻止楕円形を作り出す。MICは、阻止楕円形がストリップを交差する場合に決定され、そしてストリップ上でMICの読みスケールを容易に読み取られる。
対照は、それらは予期せぬ影響(バックグラウンドシグナルなどの)を排除又は最小化することができることから試験方法の一部である。対照実験は特定の系に対する変数の効果を検討するために使用される。対照実験では、サンプルの1つのセットは修飾されており(又はそうであると考えられており)、そして他のセットのサンプルは不変(陰性対照)を示すと予想されるか又は明確な変化(陽性対照)を示すことが予想される。対照は試験物質と並行して進む1つの試験において決定できる。それは試験物質の効果を決定する前又は後に決定され得て、又はそれは既知の値であり得る。可能な対照実験は、同じ条件が試験実験におけるように(メチル)グリセリマイシン、その誘導体又はL−トランス−4−メチルプロリンの産生に使用される、実験であってよい、しかしながら、バリアント核酸は、バリアントを産生するための出発核酸であった核酸によって置換され、例えば対照核酸は野生型核酸である。例は、対照実験において未修飾状態である、しかしながら試験実験において修飾されているORF1〜26である。
バリアントの核酸配列は当技術分野において公知の配列決定方法によって決定され得て、それによりORF1〜26のいずれの突然変異も得られるタンパク質の調節に関与し得て、(メチル)グリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンの増加した産生又は(メチル)グリセリマイシンの誘導体の産生をもたらす。
本発明の別の態様では、グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを産生する方法は、本明細書に規定されたような少なくとも1つのタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメント、又はバリアントを同定し、そして少なくとも1つのタンパク質又はそのバリアント又はフラグメントを、L−N−メチルバリン、L−ロイシン、L−N−メチルトレオニン、L−プロリン、L−N−メチルロイシン、グリシン及び場合によりL−メチルプロリンとインキュベートして、グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを産生する方法によって得られるバリアントタンパク質をもたらすことを含んで提供される。好ましくは、少なくとも1つのタンパク質は、少なくともNRPS−1、NRPS−2、NRPS−3を含む。更なる態様では、本発明は、本明細書に規定されたような少なくとも1つのタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメント、又はバリアントを同定し、そして少なくとも1つのタンパク質又はそのバリアント又はフラグメントを、L−ロイシン、5−ヒドロキシルロイシン、γ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒド又は3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸、好ましくはL−ロイシンとインキュベートして、L−トランス−4−メチルプロリンを産生する方法によって得られるバリアントタンパク質をもたらすことを含む、L−トランス−4−メチルプロリンを産生する方法を提供する。好ましくは少なくとも1つのタンパク質はMps−1、Mps−2及びMps−4を含む。用語「提供すること」及び「タンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメント」に関して、それは本発明の核酸及びタンパク質の文脈において与えられる定義に対していわれる。用語「方法によって得られる」に関して、それは配列番号2〜27のバリアントを決定する文脈において与えられる定義に対して言われる。用語「インキュベートすること」は、グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン又はL−トランス−4−メチルプロリンの産生を可能にするために、特定の条件でタンパク質及び他の成分を維持することを意味する。特定の条件に関して、配列番号2〜27のバリアントを決定する文脈における定義に関するものである。
このように、本発明は1つの実施態様では以下から成る群から選択される少なくとも1つの核酸を含む単離核酸配列を示す:
(a)それぞれ配列番号2〜27のタンパク質、又はそのバリアント又はフラグメントをコードし、それによってバリアント又はフラグメントは配列番号2〜27のタンパク質の機能的に活性なバリアント又はフラグメントをコードする、配列番号1のオープンリーディングフレーム(ORF)1〜26の少なくとも1つを含む核酸;
(b)配列番号2〜27のタンパク質の少なくとも1つ、又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントをコードする核酸;
(c)(a)又は(b)の工程の核酸によってコードされるタンパク質又はそのフラグメントとアミノ酸配列において少なくとも70%、80%、90%、95%又は97%同一であるタンパク質をコードする核酸;
(d)(a)〜(c)のいずれかの工程の核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする核酸;
(e)(a)〜(d)のいずれかの工程の核酸とストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、そして10〜50のヌクレオチド長から成る核酸;及び
(f)(a)〜(f)のいずれかの工程の核酸に相補的な核酸。
更なる実施態様では、前述の核酸は、(a)〜(d)のいずれかの工程において示される配列番号2〜27のタンパク質のいずれか、又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントをコードする少なくとも2つのORFを含む。
尚別の実施態様では、前記核酸は、(a)〜(d)のいずれかの工程においてそれぞれ配列番号19、20、21及び22のタンパク質、又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントをコードするORF18、19、20及び21の少なくとも1つを含む。
尚別の実施態様では、前記核酸は、(a)〜(d)のいずれかの工程においてそれぞれ配列番号9、16及び17のタンパク質、又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントをコードするORF8、15及び16の少なくとも1つを含む。
尚別の実施態様では、前記核酸は、配列番号1の核酸配列を有し、又はORF1〜26の少なくとも1つのバリアント又はフラグメントを固定する配列番号1のバリアント配列を有し、それによってバリアント又はフラグメントは配列番号2〜27のタンパク質の機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントをコードする、グリセリマイシン生合成遺伝子クラスターを含む。
別の実施態様では、本発明はいずれの前述の核酸も含む発現ベクターを包含する。
別の実施態様では、本発明は前述の発現ベクターで形質転換された宿主細胞を包含する。
尚別の実施態様では、本発明は、配列番号2〜27、又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントから成る群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含むタンパク質を包含する。
尚別の実施態様では、本発明は、前述のタンパク質の少なくとも1つ、又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントに対して特異的に作られた抗体を包含する。
この利用はまた、配列番号9、16及び17のタンパク質の少なくとも1つを産生することを含む、グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを産生する方法に関して本発明を包含する。
1つの実施態様では、本発明は、配列番号19、20、21及び22のタンパク質の少なくとも1つを産生することを含むL−トランス−4−メチルプロリンを産生する方法を包含する。
別の実施態様では、本発明は:
a)上記核酸のいずれかを発現すること、及び
b)場合により、少なくとも1つの上記タンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントを単離すること、
を含む少なくとも上述のタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントを産生する方法を包含する。
尚別の実施態様では、本発明はそれぞれに下記の工程を含むグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの産生を調節する、配列番号2〜27のタンパク質をコードする、配列番号1の1つ又はそれ以上のORF1〜26のバリアントを決定する方法を包含する:
a)ORF1〜26のいずれか1つ又はそれ以上のバリアントを産生すること、
b)バリアントをタンパク質中へ発現すること、
c)工程b)のタンパク質を用いてグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン又はその誘導体を産生すること、及び
d1)産生グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン量を決定すること、ここで、工程b)のタンパク質は存在しないで、しかしタンパク質の対応するインバリアント型は存在する場合、産生量で比べた産生グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン量の増加は、バリアントがグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの産生を増加させることができることを示し、又は
d2)グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシン誘導体の抗生物質活性を決定すること、ここで工程b)のタンパク質は存在しないで、しかしタンパク質の対応するインバリアント型は存在する場合、抗生物質活性と比べた工程d2)における抗生物質活性の増加は、バリアントが抗生物質活性を増加してグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンの誘導体を産生させることができることを示し、そしてここで誘導体はアミノ酸組成においてグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンと異なり、そしてグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを超えた抗生物質活性亢進を示す。
別の実施態様では、本発明はそれぞれに下記の工程を含むL−トランス−4−メチルプロリンの産生を向上する配列番号2〜27のタンパク質をコードする、配列番号1の1つ又はそれ以上のORF1〜26のバリアントを決定する方法を包含する:
a)ORF1〜26のいずれか1つ又はそれ以上のバリアントを産生すること、
b)バリアントをタンパク質中へ発現すること、
c)工程b)のタンパク質を用いてL−トランス−4−メチルプロリンを産生すること、及び
d)産生L−トランス−4−メチルプロリン量を決定すること、ここで、工程b)のタンパク質は存在しないで、しかしタンパク質の対応するインバリアント型は存在する場合、産生量で比べた工程c)において産生したL−トランス−4−メチルプロリン量の増加は、バリアントがL−トランス−4−メチルプロリンの産生を増加させることができることを示す。
別の実施態様では、本発明は下記の工程を含むグリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを産生する方法を包含する:
a)請求項8に記載の少なくとも1つのタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントを提供すること、及び
b)グリセリマイシン及び/又はメチルグリセリマイシンを産生するために、工程a)の少なくとも1つのタンパク質をL−N−メチルバリン、L−ロイシン、L−N−メチルトレオニン、L−プロリン、L−N−メチルロイシン及びグリシンと共にインキュベートすること。
別の実施態様では、本発明は下記の工程を含むL−トランス−4−メチルプロリンを産生する方法を包含する:
a)請求項8に記載の少なくとも1つのタンパク質又は機能的に活性なそのバリアント又はフラグメントを提供すること、及び
b)L−トランス−4−メチルプロリンを産生するために、工程a)の少なくとも1つのタンパク質をL−ロイシン、5−ヒドロキシロイシン、γ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒド及び/又は3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸と共にインキュベートすること。
尚別の実施態様では、本発明は、DSM22643の寄託番号でDeutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen Gmbh (DSMZ) に寄託されているストレプトミセス菌株を包含する。
〔実施例1〕ストレプトミセスDSM22643におけるグリセリマイシン生合成遺伝子座の同定
ストレプトミセスDSM22643は抗生物質グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンを自然に産生した。しかしながら、これらの抗生物質の生合成に関与する遺伝子座は以前は同定されていなかった。グリセリマイシン遺伝子座の同定のために、ストレプトミセスDSM22643を標準微生物学的技術に従ってインキュベートした。DNAは標準手順に従って抽出し、そして全配列は標準手順に従って決定した。ストレプトミセスDSM22643のDNAによって含まれる遺伝子、及び遺伝子によってコードされるタンパク質の解析は、インシリコで行った。表1は、相同性検索によって決定されたORF数によって同定された遺伝子をリストした。特定遺伝子名称はORF数に帰属された。グリセリマイシン生合成遺伝子クラスター内の遺伝子の位置及びそれらの配列は図式的に図2に示した。
〔実施例2〕グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンの生合成に関与する遺伝子及びタンパク質
インシリコ解析によって、グリセリマイシン生合成遺伝子クラスターは26のタンパク質をコードする26の遺伝子を含むことを決定した。26の(メチル)グリセリマイシン生合成タンパク質の生物学的機能は、NCBIにおいて見出されたタンパク質と各同定タンパク質とのコンピュータ比較によって評価した。表2では、グリセリマイシン生合成遺伝子クラスター及び対応するGenBankタンパク質によって含まれるタンパク質を同定した。
個々のモジュール及びドメイン間には、リンカー領域、即ちモジュール間リンカー及びドメイン間リンカーが存在した。タンパク質のN−末端及びC−末端には、個々のNRPSタンパク質の相互作用に必要なCOM又はドッキングドメインが存在した。コミュニケーション媒介(COM)ドメインは、短コミュニケーション媒介ドメインによる非リボソームペプチドシンテターゼ間の選択的相互作用を容易にした(Hahn M. and Stachelhaus T.; 2004)。
相同性検索に基づき、nrps−1、nrps−2及びnrps−3と呼ばれる遺伝子は、グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンを合成する非リボソームタンパク質シンテターゼ(NRPS)をコードした(図3参照)。nrps−1遺伝子は、約26.4kbの長さを有し、そして(1)L−N−メチルバリン(M1)、(2)L−トランス−4−メチルプロリン(M2)、(3)L−N−メチルトレオニン(M3)(4)L−ロイシン(M4)、(5)L−trans−4−メチルプロリン(M5)及び(6)L−ロイシン(M6)のそれぞれ(メチル)グリセリマイシンへの組み込みに必要な6モジュールをコードした。モジュール1又はM1及びモジュール3又はM3の各々はC−ドメイン、MT−ドメインによって遮断されるA−ドメイン及びT−ドメインをコードし、一方でモジュール2又はM2、モジュール4又はM4、モジュール5又はM5及びモジュール6又はM6の各々はC−ドメイン、A−ドメイン及びT−ドメインをコードした。更に、それは7又はM7の縮合ドメインを含有した。M1、C1の縮合ドメインはN−アセチル化に関与した。nrps−2遺伝子は約12.5kbの長さを有し、そして(7)L−N−メチルバリン(M7)、8)L−プロリン(グリセリマイシン)又はL−トランス−4−メチルプロリン(メチルグリセリマイシン)(M8)及び(9)D−N−メチルロイシン(M9)の組み込みに必要なモジュール7及びモジュール8及び9の一部をコードした。モジュール7の一部はMT−ドメイン及びT−ドメインによって遮断されるA−ドメインを含み、モジュール8又はM8はC−ドメイン、A−ドメイン及びT−ドメインを含み、そしてモジュール9又はM9はC−ドメイン、MT−ドメインによって遮断されるA−ドメイン、T−ドメイン及びE−ドメインを含んだ。(メチル)グリセリマイシンの9位置におけるD−アミノ酸の存在は、D−N−メチルロイシンの挿入を触媒するモジュール9中のE−ドメインの存在と一致した。nrps−3遺伝子は約4kbの長さを有し、そしてグリシンを分子中に組み込むモジュール10をコードし、そしてエステル結合を介してグリシンとL−N−メチルトレオニン間の線形ペプチドの環化を管理した。モジュール10はC−ドメイン、A−ドメイン、T−ドメイン及びTE−ドメインを含んでいた。
相同性検索はNRPSタンパク質の反復単位、モジュールに対する生合成役割の帰属を可能にした。図3では、NRPSタンパク質へのモジュール1〜10の帰属、ドメインへの解体及びアミノ酸を示すことによる生合成活性及びグリセリマイシン成長鎖へのそれらの組込みを示された。モジュール10はNRPS−3タンパク質から鎖を放出して、それに続いて鎖環化をもたらした。表3では、タンパク質上のモジュール及びドメインの近接境界及び個々のNRPSタンパク質内のそれらの位置に対するDNAレベルが示される。それにより、Cは縮合ドメインを示し、Aはアデニル化ドメインを示し、MTメチルトランスフェラーゼドメインを示し、そしてTはチオール化ドメインを示した。MTドメインはAドメインに組み込まれた。これは配列“A’−MT−A’’によって示された。
相同性検索及び生化学的解析に基づいて、mps−1、mps−2及びmps−4と呼ばれる遺伝子はL−トランス−4−メチルプロリンの生合成に必要なタンパク質をコードした。L−トランス−4−メチルプロリンは、グリセリマイシンの2及び5位置に、そしてメチルグリセリマイシンの2、5及び8位置に含有された。mps−1遺伝子は、4−プロリンヒドロキシラーゼ(41%同一性/57%類似性)及びフィタノイル−CoAジオキシゲナーゼに最大の相同性を有するタンパク質をコードし、しかし生化学的解析によりmps−1遺伝子はL−ロイシンを(2S,4R)−5−ヒドロキシロイシンにヒドロキシル化するロイシンヒドロキシラーゼをコードすることを示し得た。遺伝子mps−2は、L−シス−4−メチルプロリンの合成に関与するノストペプトライド遺伝子クラスターのnosE遺伝子に対して34%同一性/55%類似性有するアルコールでヒドロゲナーゼをコードした(Luesch et al. 2003)。Mps−2は(2S,4R)−5−ヒドロキシロイシンの(2S,4R)−γ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒドへの脱水素を触媒した。自然環形成後mps−4によってコードされたタンパク質は、恐らく(3S,5R)−3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸の(2S,4R)−4−メチルプロリンへの還元を触媒した。mps−4遺伝子はSib(55%同一性/70%類似性)及びLmbYに対して最大の相同性を示し、両方はフラビン依存性モノオキシゲナーゼをコードしそして類似反応を触媒した (Li et al. 2009; Peschke et al. 1995)。mps−3遺伝子は、フリウリマイシン生合成遺伝子クラスターにおけるlipE遺伝子産物に対して最大の相同性(50%同一性/68%類似性)で、α,β−ヒドロラーゼに対して最大の相同性を示した(Muller et al. 2007)。コードタンパク質はミスプライムNRPS再生において機能を有するII型チオエステラーゼとして作用し得た。場合により、mps−3遺伝子産物は、4−メチルプロリンの生合成経路におけるピロリン誘導体の環化に関与した。これらの結果に基づいて、本発明者らは、グリセリマイシン又はメチルグリセリマイシンの生合成でL−トランス−4−メチルプロリンの生合成経路を解明するのに成功した。図4では、シアノバクテリウムNostoc属GSV264 (Hoffmann et al. 2003)のノストペプトライド生合成経路内で、そして本発明によって同定された(メチル)グリセリマイシン生合成経路内で、そこに関与するタンパク質を含む4−メチルプロリンの生合成経路の比較を示した。配列解析に基づいて、mps−1〜mps−4と呼ばれる遺伝子は恐らくオペロンとして転写された。
更に、相同性検索に基づいて、以下の遺伝子を同定した。遺伝子クラスター中にXre−ファミリー転写調節因子のタンパク質に相同性を有する2つの遺伝子orf−1及びorf−12が存在した。コードタンパク質は(メチル)グリセリマイシン生合成の調節の役割を果した。両遺伝子の不活性化は、直接又は間接の調節因子としてそれらの機能を証明する、(メチル)グリセリマイシン産生の著明な損失をもたらすことを示すことができた。Orf−5は推定輸送分子に相同性をもつタンパク質をコードし、(メチル)グリセリマイシンの輸出に関与し得た。Orf−6はグルタミンシンテターゼの推定機能を有するタンパク質をコードした。Int−1及びint−2は、これらのタンパク質がインテグラーゼ機能性を有すると仮定されるように、インテグラーゼ触媒領域に相同性をもつタンパク質をコードした。遺伝子nrps−1とnrps−3間のTnp−1、tnp−2及びtnp−3は、推定トランスポサーゼタンパク質と相同性をもつタンパク質をコードし、そしてトランスポサーゼ活性を有すると仮定した。更なるオープンリーディングフレームはDNAポリメラーゼIIIのサブユニットβとしての推定機能を有した。このorfはdnaと呼ばれた。nrps−3の直接下流の小さな219bpのORFはMbtH様タンパク質をコードし、そしてそれ故mbtHと呼ばれた。MbtHタンパク質はNRPS(Barry & Challis, 2009)の正しい機能に必要とされた。Orf−8は仮説タンパク質Scla2_13611と相同性を有し、そしてPNPOx−l様スーパーファミリーと仮定した。Orf−11はアミドヒドロラーゼスーパーファミリーの推定タンパク質をコードした。提案遺伝子orf−2、orf−3、orf−4、orf−7、orf−9及びorf−10はすべて異なる保存仮説タンパク質をコードした。
〔実施例3〕L−トランス−4−メチルプロリンのインビトロ合成
L−トランス−4−メチルプロリンのインビトロ合成は、3つの続くアッセイ、即ちMps−1アッセイ、Mps−2アッセイ及びMps−3アッセイを連結することによって行うことができた。3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸へのγ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒドの環化は自然に起こり、又はMps−3にかかわり得た。図4では、Mps−1、Mps−2、場合によりMps−3及びMps−4を用いて、(2S,4R)−5−メチルプロリンへのL−ロイシンの変換を示した。
(a)ロイシンヒドロキシラーゼアッセイ
インシリコ解析に基づき、mps−1遺伝子はロイシンヒドロキシラーゼをコードすることを見出した。Mps−1タンパク質がロイシンヒドロキシラーゼをコードすることを確認する、以下の実験手順を行った。
遺伝子mps−1をコードする推定ロイシンヒドロキシラーゼは、ストレプトミセスDSM26643のゲノムDNA由来の、プライマーGri3_for(5’−GCCGCCATATGATGCAGCTCACGGCCGAT−3’)(配列番号28)及びGri3_rev(5’−GGTCAGGATCCTCATGCCAGCCTCGATTC−3’)(配列番号29)を用いて、Phusionポリメラーゼで増幅し、そして平滑末端ライゲーションによってpJET2.1ベクター(Fermentas)にクローニングした。配列検証後にDNAフラグメントは、導入NdeI/BamHI制限部位を経てpET28b(+)へサブクローニングした。得られた構築物pGris3は、タンパク質発現のために大腸菌ロゼッタBL21(DE3)pLysS/RAREへ形質転換した。構築物を固定する新たな形質転換体は、カナマイシン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(34μg/ml)で補足されたLB−培地(37 ℃で5h増殖した10−ml培養物から0.1%接種菌で開始した1lバッチ)中で増殖した。全細胞は、37℃でおおよそ0.8のOD600まで増殖した。細胞は次いで、1Mイソプロピル−b−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)で0.2mMの最終濃度に誘導し、そして次いで16℃で一夜増殖した。細胞は遠心分離(6000rpm、10分、4℃)によって回収し、そして緩衝液A(20mMトリス−HCl、pH7.8、200mMNaCl、及び10%[v/v]グリセロール)中に再懸濁した。細胞を次いで溶解し(700psiで2パス,French press, SLM Aminco)、そして細胞デブリは遠心分離(21,000rpm、10分、4℃)によって除去した。プレパックHisTrap(商標)HPカラムは、Akta prime(商標) プラスシステム (Ge Healthcare)で固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)によって、ヒスチジンタグ付き組換タンパク質の予備的精製に使用した。15mlのタンパク質溶解物は滅菌フィルターを通して濾過し、そして1mlHisTrapカラム上に負荷した。精製はGEヘルスケアマニュアル(HisTrap HP, Instructions 71-5027-68 AF)で推奨されたように行った。所望のタンパク質は、緩衝液B(20mMトリス−HCl、pH7.8、200mMNaCl、及び10%[v/v]グリセロール及び60、100、200、300及び500mMイミダゾール、10ml画分)により、段階的イミダゾール勾配においてカラムから溶出した。SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)で決定した純粋な標的タンパク質を含有する画分は併せて、そしてAmicon Ultra PL-10 centriconsを用いることによって約200μlに濃縮した。次いで800μlの保存緩衝液(50mMトリス−HCl、pH7.5、50mM NaCl、及び10%[v/v]グリセロール)は、液体窒素中で急速冷凍及び−80℃で保存の前に濃縮タンパク質に加えた。タンパク質濃度はBradford assay (Bio-Rad, Hercules, CA, USA)を用いて決定した。1−3mg/mlの精製タンパク質を培養物のL当りで得た。
基質としてロイシンによるアッセイは、MOPS(50mM)、pH7.0で行い、そして200μlの総量中には、基質(1mM)、α−ケトグルタラート(1mM)、FeSO4(25μM)、DTT(0.5mM)、アスコルビン酸(0.1mM)及びMps1(1μM)を含んだ。反応はMps1の添加で開始し、そして30℃で1時間インキュベートした。タンパク質は冷エタノールで沈殿させ、上清をデカンターして誘導体化のために使用した。溶液は回転蒸発によって乾燥し、そして200μlの結合緩衝液(アセトニトリル:ピリジン:トリエチルアミン:H2O 10:5:2:3)中に再懸濁した。50μlのPITC溶液をこの溶液に加え、そして室温で5分後に反応を終了させるために50μlのH2Oを加えた。溶液はspeedvac蒸発によって蒸発させ乾燥した。得られたPTCアミノ酸は1mlの水:アセトニトリル(7:2)に溶解して、遠心分離しそして上清は再びspeed vac蒸発によって乾燥した。次いでアミノ酸は100μlの水/アセトニトリルに溶解し、そしてHPLC/MS分析のために使用した。PITC−ロイシン及びPITC−ヒドロキシロイシンは陽イオン化法で検出した(ロイシン:[M+H]+=272.9及びヒドロキシロイシン:[M+H]+=288.9)。Msp−1はロイシンから5−ヒドロキシロイシンへの反応を触媒することを示した(図5)。
(b)Msp−2アッセイ
5−ヒドロキシロイシンのγ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒドへの変換は、機能的に類似のタンパク質NosEによるアッセイを行ったLuesch et al., 2003に従ってMps−2又はアルコールデヒドロゲナーゼアッセイによって行うことができた。基質として5−ヒドロキシロイシン又は関連化合物との典型的混合物は、100mMグリシン(pH10)、2mMβ−NAD、基質(0.1−10mM)、1mMZnSO4、及びおよそ3μgのMps−2を含有し得た。典型的な反応容積は500μlであり得て、反応はMps−2の添加によって開始し、そして30−42℃で1−3時間インキュベートし得た。
(c)Mps−4アッセイ
3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸の4−メチルプロリンへの変換は、機能的に類似のタンパク質NosEによるアッセイを行ったLuesch et al., 2003に従ってMps−4アッセイで行うことができる。典型的な反応混合物は、200mMトリス(pH8)、基質、0.2mMβ−NADH又はβ−NADPH、及びほぼ5μgのMps−4を含有し得た。反応容積は通常1mlであり、反応はMps−4の添加によって開始し、そして30−42℃で1−3時間インキュベートし得る。Becker et al., 1997による別のMps−4アッセイは、基質として3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸又は関連化合物を含み、そして50mMトリス/HCl、pH7.5中で実施され得て、そして基質(0.1−10mM)、0.2mMFAD、0.5mMNADH及びMps−4の適切な希釈(例えば100−500μlの総量中1μg最終濃度)を含んだ。反応はMps−4の添加によって開始し、そして30−42℃で1−3時間インキュベートし得た。
〔実施例4〕グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンのインビトロ合成
グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンのインビトロ合成は、Gaitatzis N. et al., 2001に開示の反応条件に従って行うことができた。各1mlの培養は、25mMトリスHCl(pH8.0)、50mMNaCl、1mMアセチル−CoA(又は1mMアセチル−SNAC)、2mML−バリン、2〜3mM(2S, 4R)−4−メチルプロリン(又は関連化合物)、3mML−ロイシン、1mML−プロリン(又はメチルグリセリマイシン合成用にL−プロリンなし)、1mML−トレオニン、4mMS−アデノシル−L−メチオニン、1mMグリシン、10mMATP、0.5−5mMNRPS−1、NRPS−2、NRPS−3及びMtbHを含有し得た。反応はATPとの反応開始後30℃で2−72時間インキュベートし得た。
〔実施例5〕遺伝子nrps−1及びnrps−3及びmpsオペロンの不活性化
ストレプトミセスDSM26643の挿入突然変異体は、標準手順に従って作り出した。mps−オペロン、nrps−1及びnrps−3遺伝子の一部にそれぞれ相同性である約3000bp長のフラグメントは、表4に挙げられたプライマーを用いてPCRによりDSM26643の染色体DNAから増幅した。これらのフラグメントは、プラスミドpMPS、pNRPS−1、pNRPS−3を与える、大腸菌クローニングベクターpBluescriptSK+中でクローニングした。その結果、Gust et al., 2003に記載のように作り出されたAprR−oriTカセットは、表5に挙げられたプライマーで増幅し、そしてRedET技術(Genebridges)によってプラスミドpMPS、pNRPS−1、pNRPS−3へ組み込まれ、接合性プラスミドを与えた。作出プラスミドは次いでDSM22643へ移され、接合体について、(メチル)グリセリマイシン産生を試験する前に、それぞれmps−オペロン、nrps−1及びnrps−3遺伝子への正しい遺伝子組込みを解析した。
野生型でのグリセリマイシンの産生を検証するために、そしてグリセリマイシン合成の能力に対して挿入突然変異体を試験するために、異なる株を、NL5645培地(組成(百分率量):ラクトース2.0、ダイズミール2.5、NaCl 0.5、CaCO30.1及び酵母エキス0.5、pH6.8)において振盪フラスコ中でインキュベートした。異なる時点で培養上清を回収し、ろ過しそしてエタノールで1:1に混合した。不溶物質の沈殿及び分離後、上清についてUHPLC(超高速液体クロマトグラフィー)によって(メチル)グリセリマイシン産生を分析した。
図6から見られるように、野生型株DSM22643はグリセリマイシン(UHPLCクロマトグラム(UV210nm)において5.29分に印のついたピーク「グリセリマイシン」を参照)を産生するが、一方でDSM22643のnrps−1、nrps−3及びmps−突然変異体はグリセリマイシンを産生しなかった(5.29分のピークの不存在)。この実験は、グリセリマイシン及びメチルグリセリマイシンの合成のためのNRPSタンパク質及びMpsタンパク質の重要性を確認した。
〔実施例6〕mps−突然変異体の相補性
mps−オペロンの遺伝子が(2S,4R)−4−メチルプロリンの合成に関連することを実証するために、mps−突然変異体は、(1)(2S,4R)−4−メチルプロリンを供給することにより、そして(2)mps−オペロンが構成的ermE−プロモーターから発現する場合、発現構築物の染色体組込みに因る遺伝的相補性により補完した。
食餌実験(feeding experiment)では、20μg/mlの(2S,4R)−4−メチルプロリンをmps−突然変異体の培養物に供給し、そして(メチル)グリセリマイシン産生を実施例5に記載の培養上清で分析した。(2S,4R)−4−メチルプロリン供給のない標準培地では、mps−突然変異体はいずれの(メチル)グリセリマイシンも産生しなかったのに対して、20μg/mlの供給は(メチル)グリセリマイシン産生をもたらした(図7A;同様に実施例9)。
mps−突然変異体の遺伝的相補性では、構成的ermEプロモーターの調節の下に遺伝子mps−1、mps−2、mps−3及びmps−4と共にmpsオペロンを含む、構築物、P(ermE)−mpsを、染色体attB部位へのインテグラーゼ媒介組込みのためにattP結合部位との接合ベクター中に作出した(ermE−プロモーターの配列は図7B参照)。実施例5において作出したmps−突然変異体へのこのP(ermE)−mpsの構築物組込み後、相補mps−突然変異体についてグリセリマイシン産生を試験した。図7Cに示されるように、グリセリマイシン産生は相補mps−突然変異体において回復できた。
両実験は、mpsオペロンが(2S,4R)−4−メチルプロリンの合成に必要なこと、そして次いでメチルグリセリマイシン合成に使用されることを明瞭に示した。
〔実施例7〕大腸菌及びストレプトミセスセリカラー中にセットされたmps1−4遺伝子の発現によるメチルプロリンの異種産生
遺伝子セットmps1−4が4−メチルプロリン生合成のために酵素機械をコードすることを確認することために、大腸菌(pET28−mps)及びS.セリカラー(pUWL201−mps)において発現する構築物を生成させた。
(a)ストレプトミセスセリカラーにおけるpUWL201−mpsの産生及び異種発現
グリセリマイシン生合成遺伝子クラスター(配列番号1からの54283−60163nt)由来の3`末端を固定するコスミドB:L23からのA〜5.8kbのEcoRIフラグメントを、構成的PermE*プロモーターの調節下に複製大腸菌/ストレプトミセスシャトルベクターpUWL201へサブクローニングした。得られた発現構築物pUWL201−mpsは続いて、プロトプラスト法を用いて宿主株ストレプトミセスセリカラーA3(2)に形質転換した(Kieser et al., 2000)。形質転換体(S.セリカラー/pUWL201−mps)は、隔壁振盪フラスコ中30℃で4日間50mlTSB培地において野生型株と並行してインキュベートした(突然変異体培養物は最終濃度20μg/mlのチオストレプトンを補足した)。細胞は遠心分離によって回収し、そして50mlメタノールで抽出した(15分超音波及び30分攪拌)。濾過後抽出液は蒸発乾燥させてそして下記のように誘導体化した。
(b)大腸菌におけるpET28−mpsの産生及び異種発現
コスミドB:L23−CmRからの〜3.7kbのXbaI/EcoRIフラグメントは、誘導型T7プロモーターの調節下にNheI/EcoRIで線形化した発現ベクターpET28b(Novagen)にサブクローニングした。クローン化3.7kbDNAフラグメントは遺伝子mps1−4(5’末端において配列CTAGAで伸長した配列番号1からの56434−60163nt)を固定した。得られた発現構築物pET28−mps並びに空の発現ベクターpET28bは続いて、エレクトロポレーションによって宿主株大腸菌BL21(DE3)/コドンプラス/pL1SL2に形質転換した。形質転換体(大腸菌BL21(DE3)/コドンプラス/pL1SL2/pET28−mps又はpET28b)は、カナマイシン(50μg/ml最終濃度)、アンピシリン(50μg/ml最終濃度)及びクロラムフェニコール(25μg/ml最終濃度)補足の0.2%グルコースを含有する50mlのLB中30℃でインキュベートした。培養物はOD600=0.6まで増殖し、IPTG(0.3mM最終濃度)で発現誘導し、そして培養は30℃で更に4時間継続した。細胞は遠心分離によって回収し、そして50mlメタノールで抽出した(15分超音波及び20分攪拌)。濾過後抽出液は蒸発乾燥させてそして下記のように誘導体化した。
(c)抽出物の誘導体化及びHPLC−MS解析
乾燥細胞抽出物並びに(2S,4R)−4−メチルプロリン(保持時間及びフラグメンテーションスペクトルの標準品として)は、200μlの結合緩衝液(アセトニトリル:ピリジン:トリチルアミン:H2O)中で再懸濁した。50μlのPITC(フェニルイソチオシアナート)溶液を加えて、そして室温で5分反応後反応を停止するために50μlH2Oを加えた。溶液はspeedvac蒸発によって蒸発乾燥した。得られたPITCアミノ酸は1ml水:アセトニトリル(7:2)中に溶解し、遠心分離しそして上清をspeedvac蒸発によって乾燥した。誘導体化抽出物及び誘導体化(2S,4R)−4−メチルプロリン参照基準は次いで、HPLC−MS解析のために100μl水/アセトニトリル中に溶解した。
全測定は、Waters BEH C18、50x2.1mm、1.7μmdpカラムを用いてDionex
Ultimate 3000 RSLCシステムで行った。特に明記しない限り2μlのサンプルを注入した。分離は、(A)H2O+0.1%FA〜(B)ACN+0.1%FAを用いる線形勾配によって600μl/分の流速でそして45℃において達成した。勾配は、5%Bでの0.33分定組成工程によって開始し、続いて9分で95%Bに増加させ、開始条件との再平衡前に95%Bでの1.6分の水洗工程で終わった。UV及びMS検出は同時に行った。HPLCのMSへの連結は、Thermo Fisher Orbitrapに取り付けたAdvion Triversa Nanomate ナノ−ESIシステムでサポートした。質量スペクトルはR=30000の解像度で100−500m/zの範囲で変動するセントロイドモードで得た。衝突誘起解離を用いてモニタリングする単反応は247.11、249.12、265.12、及び267.12m/zで行った。全親イオンは2m/zウインドウ内で単離し、そして35%CIDエネルギーでフラグメンテーションした。
4−メチルプロリンの予想誘導体は、mps発現構築物(pUWL201−mps及びpET28−mps)を固定する培養物からの誘導体化抽出物中に検出することができたが、S.セリカラー(S.セリカラーWTと比べたS.セリカラー/pUWL201−mps)中の異種発現で例証された図8に示される陰性対照の誘導体化抽出物中には検出できなかった。誘導体化PITC−(2S,4R)−4−メチルプロリン参照物質と保持時間及び高解像度マスデータ(フラグメンテーションデータを含む)の比較により、この化合物はmps発現培養物の抽出物中で明瞭に同定することができた。
これは、遺伝子セットmps1−4が、グリセリマイシン前駆体4−メチルプロリンの生合成にすべて必要な酵素活性をコードすることを明瞭に証明した。また、経路の2つの提案中間体の誘導体(5−ヒドロキシロイシン及びγ−メチルグルタミン酸γ−セミアルデヒド)は検出でき、仮定酵素活性の更なる証明をもたらした。推定ロイシンヒドロキシラーゼの機能は、産生酵素(上記の実施例5)を用いたインビトロ研究によって更に検証できた。第3の仮定中間体3−メチル−Δ1−ピロリン−5−カルボン酸は、この化合物が応用方法で誘導体化することができなかったことから、検出できなかった。
2つの異なる宿主株(大腸菌及びS.セリカラー)中のmps遺伝子の成功した異種発現はまた、この戦略が、例えばグリセリマイシンの有機合成法のために4−メチルプロリンを生成するのに、又はメチルグリセリマイシン収量を増加させるためにグリセリマイシン/メチルグリセリマイシン産生培養物へ前駆体を供給するのに適用することができることを示す。
〔実施例8〕Aドメイン特異性のインシリコ解析
NRPSタンパク質Aドメインのアミノ酸特異性のインシリコ解析は、Challis et al., 2000に従って行った。簡潔には、Aドメイン配列は、グラミシジンSシンテターゼGrsAのフェニルアラニン−活性化Aドメイン(PheA)配列に整列させた。この整列に基づき、結合ポケットにライニングする8アミノ酸を同定し、そして公知の基質特異性を有するAドメイン由来の特異性付与アミノ酸と比較した。以下の表6では、インシリコで予測された基質に対するNRPS−1、NRPS−2及びNRPS−3のAドメインの特異性が示される。比較として、それらが(メチル)グリセリマイシンへの導入のために活性化される実際の基質が挙げられる。
「残基位置は」は、基質認識に重要と考えられる個々のAドメインの8アミノ酸である(「特異性付与アミノ酸」又は「特異性付与コード」)。これらの残基は公知の基質特異性を有するAドメインの「特性付与コード」と比較した(http://nrps.igs.umaryland.edu/nrps/blast.html)。
A3ドメイン、A10ドメイン及び部分的にA8ドメインでの結果は、(メチル)グリセリマイシンに実際に組み込まれるアミノ酸と一致した。残りの結果は、応用方法に因ると考えられる実際に組み込まれるアミノ酸と整列していると思われない。グリセリマイシンに組み込まれようとしている基質アミノ酸の特異性に必須と考えられたシンテターゼの8アミノ酸残基に基づいて、プロリンとメチルプロリン特異的Aドメイン間で異なる可能性はない。
〔実施例9〕メチルプロリン及びプロリン特異的ドメインの系統発生解析
メチルプロリン及びプロリンに特異的なAドメインの図9に提示される系統発生解析は、NRPSモジュール(NRPS−1−A2及びNRPS−1−A5及びNcpB8(mPro)及びNosA−A(mPro))を組み込むメチルプロリン由来のAドメインが、プロリンを組み込むドメイン(NRPS−2−A8及びNosD(mPro))のAドメインに対してよりも互いにより密接に関連していることを示した。これは、特異性が表6に提示される8アミノ酸残基によって決まるだけではないことを示唆した。
解析は、Geneious Pro 5.4.3 ソフトウェアからのGeneious Tree Builder機能(Tree Alignment Options: Cost Matrix (Blosum 62), Gap オープンペナルティ (12), Gap エクステンションペナルティ (3) 及び Alignment タイプ (Global alignment); Tree Builder Options: Genetic 距離モデル (Jukes-Cantor), Tree build method (Neighbor-Joining), Outgroup (No outgroup))を用いて行った。 スケールバーはアミノ酸部位当り0.09置換を表す。
〔実施例10〕モジュール2、5及び8のAドメインの特異性
モジュール2、5及び8のAドメインの特異性の洞察を得るために、ドメインを組換産生し、そしてそれらの特異性はインビトロにおけるATP/PPi交換アッセイを経て解析した。結果は図10に示した。予想どおりに、ドメインA2及びA5の特異性は(2S,4R)−4−メチルプロリンで最大であった。興味深いことに、これはまたドメインA8の場合であるが、L−プロリンは好ましくはグリセリマイシンの生合成中モジュール8に組み込まれた。またL−プロリンに対して高い特異性が存在することを示した。モジュール8のCドメインは好ましくはプロリンと縮合し、そしてそれを成長ペプチド鎖に導入すると仮定した。(メチル)グリセリマイシン生合成中のメチルプロリンの利用可能性はまた、食餌実験によって示すことができるような役割を果すように見えた。0.025から1.0g/lまでの濃度の4−メチルプロリンの供給は、対照よりも最大で5倍高いメチルグリセリマイシンの増加を示した。この実験はまた組込み速度は直線性ではなく約0.5g/lで飽和に達することを示した。またトランス−ヒドロキシプロリン及びトランス−フルオロプロリンによる供給は顕著な組込みを示した。
(a)組換A2、A5及びA8ドメインの産生
Aドメイン基質特異性を直接検討するために、pET28b(+)由来のN−末端His6−タグ付きタンパク質としてグリセリマイシン経路からAドメインのA2、A5及びA8ドメインを発現させることを目指した。A2、A5及びA8のアデニル化ドメインをコードするDNAフラグメントは、oligosA2_for 5’−CCGACCATATGGATCCGGATGTGACGGTGGG−3’(配列番号44)及びA2_rev 5’−ACCGGGAATTCGCCGACGGCGGGCAGGCCGA−3’(配列番号45)を用いて、ストレプトミセスDSM22643のゲノムDNAから増幅し(高い相同性によりすべての3つのAドメインは同じプライマーペアを用いて増幅することができ)、そして平滑末端ライゲーションによりpJET2.1にクローニングした。
配列決定により、すべてのAドメインが正しいことを示した。グリセリマイシンの分子構造及びインシリコ解析によれば、AドメインのA2及びA5は2S,4R−メチルプロリンを組み込むことが予想された。ドメインA8は、より広い基質特異性を示し、そしてL−プロリンか又は2S,4R−メチルプロリンを組み込むことが予想された。これをインビトロで決定するために、大腸菌ロゼッタpLys(RARE)中にAドメインを一夜16℃で発現させた。すべての3つのAドメインを可溶性画分中に得ることができた。
タンパク質は次いで、段階的イミダゾール勾配を用いてNi+−アフィニティクロマトグラフィーで精製した。純粋なタンパク質はすべてのAドメインで画分8中で得ることができた。タンパク質の量は非常に低かったが(0.2mg/ml)、基質特異性を決定するのにATP−PPi交換アッセイに使用することができた。
3つの精製アデニル化ドメインの基質特異性は、確立したATP−PPi交換アッセイ(Mootz and Marahiel. 1997, Thomas et al., 2002) を用いて評価した。簡潔には、各タンパク質は各ドメインの予想基質を含む一団の異なるアミノ酸とインキュベートした。対照として、各タンパク質を更なるアミノ酸の不存在下にインキュベートして、放射能バックグラウンド反応を決定した。9個の異なる基質を試験した(図10)参照)。
(b)ATP−[32P]PPi交換アッセイによる基質特異性の決定
基質特異性を決定するために、トリス−HCl(pH7.5、75mM)、MgCl2(10mM)、dATP(5mM)、アミノ酸(5mM)、及びタンパク質(2μg)を含有するATP−[32P]PPi反応(100μl)を30℃で行った。32P−四ナトリウムピロリン酸をPerkin Elmer (NEN #NEX019)から得た。反応は、チャコール懸濁液(500μl、1.6%[w/v]活性炭、0.1MNa4P2O7、及び0.35M過塩素酸H2O溶液)でクエンチング前に、最大30分間[32P]PPi(0.1μCiの最終量)の添加によって開始した。洗浄液(0.1MNa4P2O7及び0.35M過塩素酸H2O溶液)で2回洗浄するのに先立って遠心分離によってチャコールをペレット化し、H2O(500μl)中で再懸濁し、そして液体シンチレーション(Beckman LS6500)で計数した。
〔実施例11〕グリセリマイシン生合成クラスターのorf−1及びorf−12によってコードされたXre−型の転写調節因子
グリセリマイシンの産生においてorf−1及びorf−12によってコードされた2つの推定転写調節因子の関与を解明するために、それぞれのORFの不活性化突然変異体を生成した。その後、グリセリマイシンの産生に対する効果を、それぞれ野生型株ST105671及び突然変異株ST105671−orf−1及びST105671−orf−26の抽出物のHPLC/MS解析によって決定した。不活性化突然変異体で認められた産生に対する効果がorf−1及びorf−12によってコードされた転写調節因子による直接調節に因るかを明らかにするために、調節因子を異種発現してそして精製した。精製タンパク質を電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)に使用して、グリセリマイシン生合成クラスターの推定プロモーター領域への直接相互作用を調べた。
(a)orf−1及びorf−12の不活性化
orf−1及びorf−12の遺伝子は、相同的組換によりorf−1及びorf−12中に組み込むpKC1132プラスミドの誘導体を用いて破壊した。pKC1132の2つの誘導体(それぞれpKC1132−orf−1及びpKC1132−orf−26)は、orf−1か又はorf−12のコーディング領域の中心部を運んで構成した。従って、orf−1の623bpDNAフラグメント及びorf−12の1139bpDNAフラグメントは、プライマー組換dxregrise_for/dxregrise_rev及びdxreIIgrise_for/dxreIIgrise_rev(プライマー配列は表8参照)をそれぞれ用いて、PCR反応によって増幅した。EcoRI制限部位はその結果使用プライマーによりフラグメントの両端に結合した。DNAフラグメント及びプラスミドpKC1132はEcoRIを用いて消化し、続いてライゲーションにかけた。所望のプラスミドpKC1132−orf−1及びpKC1132−orf−26をそれぞれ含有するライゲーションは、エレクトロコンピテント大腸菌DH10B細胞に形質転換した。形質転換体は60μg/mlのアプラマイシンを含有するLB寒天プレート上で選択した。単コロニーは60μg/mlのアプラマイシンの存在下に液体LB培地中で増殖し、そしてプラスミドを調製した。正しいインサート(pKC1132−orf−1及びpKC1132−orf−26)を運ぶプラスミドは、EcoRIを用いる分析的消化によって同定した。非許容プラスミドpUZ8002を固定する大腸菌ET12567細胞は次いで、正しいプラスミドpKC1132−orf−1及びpKC1132−orf−26を用いて形質転換した。形質転換体は60μg/mlのアプラマイシンを含有するLB寒天プレート上で選択し、大腸菌株ET12567pUZ8002pKC1132−orf−1及び大腸菌ET12567pUZ8002pKC1132−orf−26を与えた。これらの菌株は、プラスミドpKC1132の誘導体を接合によって菌株ST105671に送達するのに使用した。その手順は以下のように実施した。グリセリマイシン産生培地5288中そしてTSB培地中30℃で増殖したストレプトミセス株ST105671の2日齢の2mlを、及びプラスミドpKC1132−orf−1又はpKC1132−orf−26(25μg/mlのカナマイシン、25μg/mlのクロラムフェニコール及び60μg/mlのアプラマイシンを含有するLB中で増殖した)を固定するそれぞれの大腸菌株の2mlをペレット化し、滅菌水で洗浄しそして各々500μlのTSB中で再懸濁化した。250μlのストレプトミセス株ST105671及びそれぞれの大腸菌株を混合して、そして30℃で通気下に一夜インキュベートした。60μg/mlのアプラマイシンを含有するTSB、及び20μg/mlのナリジクス酸の1mlを加えて、そして30℃で通気下に一夜更にインキュベートした。培養後細胞をペレット化して、TSBで1回洗浄しそして60μg/mlのアプラマイシン及び20μg/mlのナリジクス酸を含有するMS寒天でプレートアウトし、続いて接合体が見えるようになるまで30℃で更なる培養をした。それぞれorf−1又はorf−12のコーディング領域中におけるプラスミドpKC1132−orf−1又はpKC1132−orf−26の正しい組込みは、接合体のゲノムDNA、及びプライマーlacZ1、lacZ2、及びそれぞれorf−1の破壊の場合はgrixreI_g1、grixreI_g2、又はorf−12の破壊の場合はgrixreII_g1、grixreII_g2の組み合わせを用いて、PCRを行うことによって検証した。この手順によって生成したST105671−orf−1又はST105671−orf−26の不活性化突然変異体を用いて、ST105671プレデセサーと比べてのグリセリマイシン産生に対する効果を決定した。
(b)ST105671−orf−1又はST105671−orf−26の抽出物のHPLC/MS解析
orf−1の4つの独立不活性化突然変異体及びorf−12の2つの独立不活性化突然変異体の液体培養物は、60μg/mlのアプラマイシンを含有するTSB液体培地中で2日間増殖させた。これらの培養物を使用して、抗生物質無しの100mlの新たなTSB培地は1:50を各々二重にインキュベートし、それで3日間増殖させた。野生型ST105671細胞は、前培養においてアプラマイシンを用いること無しに同等に処理した。細胞は遠心分離によってペレット化しそして上清を酢酸エチル抽出に使用した。グリセリマイシン産生に対する効果をモニターするために、続いて抽出物をHPLC/MS解析によって分析した。各培養物の総タンパク質量に対して各突然変異型及び野生型株ST105671のグリセリマイシンの量を決定した。その結果、それぞれのピーク面積を積分し、そしてペレット化細胞の総タンパク質量に対する計数をセットした。平均値及び標準偏差を計算した。orf−1の不活性化はグリセリマイシン産生において200倍より大きい減少をもたらした。orf−12の不活性化突然変異体ではグリセリマイシンは検出することができなかった(表7参照)。観察結果から、グリセリマイシン産生の調節においてorf−1及びorf−12によりコードされたXre型転写調節因子の関与を示した。これらの効果が、Xre型調節因子の結合によるグリセリマイシン産生クラスター内におけるプロモーターの直接調節の結果であるか又は間接効果を表すかについては、DNAタンパク質相互作用研究(電気泳動移動度シフトアッセイ、EMSA)を行うことによって解明される可能性がある。
(c)nrps1及びnrps2のプロモーター領域へのOrf−1及びOrf−12の特異的結合検証
調節因子Orf−1及びOrf−12によるグリセリマイシン生合成遺伝子の直接転写遺伝子を調べるために、遺伝子nrps1及びnrps2上流の推定プロモーター領域へ結合可能性を解明した。それ故、orf−1及びorf−12のコーディング領域を、プライマー組み合わせxreI−NdeI−for/xreI−HindIII−rev及びxreII−NdeI−for/xreII−HindIII−revによるPCR反応で、鋳型として菌株ST105671のゲノムDNAを用いて最初に増幅した。NdeI制限部位は、それにより得られたDNAフラグメントの5’末端に結合し、そしてHindIII制限部位は3’末端に結合した。プラスミドpET22b及び遺伝子orf−1及びorf−12を運ぶ増幅DNAフラグメントは、NdeI及びHindIIIを用いて消化した。その後、NdeI/HindIII消化orf−1及びorf−12は、2つの別々の試みでNdeI/HindIII消化pET22bによってライゲーションした。ライゲーションは大腸菌DH10Bへ形質転換し、そして形質転換体は200μg/mlアンピシリンを含有するLB寒天プレート上で選択した。プラスミドを調製し、そしてプラスミドへのインサート(それぞれorf−1及びorf−12)の正しい組込みをHindIII/NdeI消化物によって検証した。インサートを運ぶプラスミドを最終的に、DNA配列における突然変異を排除するためにDNA配列決定にかけた。クローニング戦略に因り、得られたプラスミドpET22b−orf−1及びpET22b−orf−26は、それぞれC−末端で6倍Hisタグ付き(6xHis)Orf−1及びOrf−12をコードした。両方のプラスミドは、エレクトロポレーションによって大腸菌BL21(DE3)へ形質転換し、そして形質転換体は200μg/mlアンピシリンを含有するLB寒天プレート上で選択された。C−末端6xHisタグ融合タンパク質Orf−1−His及びOrf−12−Hisの発現は、0.1mMIPTGの存在下に200μg/mlのアンピシリンを含有するLB液体培地中において16℃で一夜行った。細胞は超音波によって溶解し、そしてOrf−1−His(〜33kDa)及びOrf−12−His(〜47kDa)の精製はNi2+アフィニティカラムを用いて達成した。
遺伝子nrps1(nrps1上流の581bp領域)及びnrps2(nrps2上流の632bp領域)の推定プロモーター領域は、それぞれプライマー組み合わせprom4hex2_rev/prom4hex3_for及びprom5hex2_rev/prom5hex3_forを用いてPCR反応で増幅し、両端部に18bpリンカー領域を運ぶDNAフラグメントを与えた。第2のPCR反応では、これらのDNAフラグメントを各鎖の5’末端でHexフルオロフォアにより標識化した。ここでは、5’Hexフルオロフォアを運び、そして第1のPCR反応で付着した18bpリンカー領域に逆相補性であるプライマー(Hex2及びHex3)を使用した。遺伝子nrps1及びnrps2の上記上流領域をスパンニングするHex標識化DNAフラグメントがそれによって生成し、そしてPnrps1及びPnrps2と称した。並行試行において、二重プロモーター系を含む、Myxococcus xanthusDK1622のアノテーションゲノムの遺伝子mxan_3950及びmxan_3951によってフランキングされた696bp遺伝子間領域は、プライマーEH33951_rev/EH33950_revでそれぞれの菌株のゲノムDNAを用いて増幅した。プライマーは上記のように同じ18bpリンカー領域を運んだことから、DNAフラグメントは続いて前述のように両5’末端においてHexフルオロフォアで標識化した。Myxococcus xanthusDK1622のゲノム由来のこのプロモーター領域へのOrf−1−His及びOrf−12−Hisの特異的結合は予想することができなかったので、Pmxan_ctrlと称する産生DNAフラグメントはEMSAアッセイにおける陰性対照としての役割を果した。
これらのDNAフラグメント並びに両方の調節因子(Orf−1−His及びOrf−12−His)は、続いてEMSAアッセイに使用した。簡潔にはアッセイは以下の通りに行った。4%の自然PAA−ゲルを1x緩衝液HG(25mMHEPES、192mMグリシン、KOHでpH7.3)中で調製した。ゲルのポケットをリンスし、そして1x緩衝液HG中にサンプルなしに120Vで30分間電気泳動を行った。サンプル(500倍モル過剰のOrf−1−Hisか又はOrf−12−Hisの有り又は無しでの100fMolの各DNAフラグメントPnrps1、Pnrps2及びPmxan_ctrl、及び競合DNAとして2.5μgの高分子量のサケ精子DNA)を調製して、そして30℃で10分間インキュベートした。サンプルをゲル上に負荷して、そして120Vで2時間電気泳動を行った。DNAフラグメントの検出はそれぞれの波長でTyphoon 9410 imager (Amersham)を用いて行った。Orf−1−Hisの存在下、Orf−1−Hisのない試行と比べて各Hex標識化DNAフラグメントの遅延を、プロモーター領域を含むDNAへの調節因子Orf−1−Hisの非特異結合を表す電気泳動で観察することができた。他方で、Orf−12−Hisは、アッセイで使用したHex標識化DNAに対して非特異性を示すいずれかのDNAフラグメントと相互作用する能力を示さなかった。総合すれば、これらの結果は、Orf−1−HisもOrf−12−HisもプロモーターPnrps1及びPnrps2の直接転写調節因子ではないことを示唆した。
Xre−型調節因子Orf−1及びOrf−12は、http://smart.embl-heidelberg.de/(図12)のSMARTツールを用いて決定されたそれらの予想ドメイン体制に関して顕著な態様を示した。予想どおり、両調節因子はN末端Xre−型ヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)モチーフを有し、それによりOrf−1は明瞭にこの種の第2のドメイン(HTH2)を含有した。これに加えて、両調節因子は未知機能をもつ拡張C末端によって特徴付けられた。
これらの異常特性は、親和性及びそれにより調節因子Orf−1及びOrf−12の特徴のあるDNA配列に対する特異性に影響を及ぼす調節機構の一部であることが可能であったことから、EMSAアッセイは調節因子のC−末端短縮バージョンを用いて反復した。Orf−1の場合、これらのバージョンはHTH1、HTH2又は両方の予想HTHドメインだけを含んだ。それぞれのタンパク質は、ORF1−HTH1(〜9.6kDa)、ORF1−HTH2(〜9.8kDa)及びORF1−HTH12(16.4kDa)と命名された。Orf−12の場合、短縮バージョンだけがORF26−HTH(〜9.9kDa)と命名されたN−末端HTHドメインだけを含有した。C−末端又は全タンパク質の立体配座変化をもたらし、そしてそれによって調節因子のDNA結合親和性に影響を及ぼす、調節効果(例えば未知補因子の結合又はタンパク質−タンパク質相互作用)は除外され得る。
Orf−1及びOrf−12の短縮バージョンは、NdeI/HindIIIフラグメントとしてOrf−1及びOrf−12の、それぞれ5’領域のNdeI/HindIII消化pET22bへのクローニングによって得て、コードC−末端6xHisタグ付き融合タンパク質を与えた。クローニングは完全長Orf−1及びOrf−12の場合に記載のように行った。クローニング予定のインサートの増幅に使用されたプライマーペアは、xreI−NdeI−for/xreIhth1rev(Orf−1−HTH1)、xreIhth2for/xreIhth12rev(Orf−1−HTH2)、xreI−NdeI−for/xreIhth12rev(Orf−1−HTH12)及びxreII−NdeI−for/xreIIhthrev(Orf−12−HTH)であった。異種発現、精製及び遺伝子nrps1及びnrps2の上記プロモーター領域への結合のそれに続く検証は、完全長タンパク質に対して記載のように行った。調節因子のこれらの短縮バージョンを用いて行ったEMSAアッセイは、プロモーターPnrps1へのORF1−HTH12の、及び両プロモーター領域Pnrps1及びPnrps2へのOrf−12−HTHへの特異的結合を示した(図13)。
Orf−1−HTH12及びPnrps1の共培養(co-incubation)だけによって、DNAの電気泳動の顕著な遅延を達成することができた。この遅延は陰性対照Pmxan_ctrlを用いて観察できなかった。Pnrps2との共培養はそれほど明瞭な結果を与えず、それによってプロモーター領域Pnrps2へのOrf−1−HTH12の直接結合について明確な見解はなされ得なかった。Pnrps1又はPnrps2と共培養したOrf−12−HTHは、DNAフラグメントの明瞭な異なる遅延をもたらしたが、一方で陰性対照Pmxan_ctrlの場合、シフトは完全に存在しなかった。
これらの実験結果に基づいて、両調節因子のC−末端の役割は尚依存として不明であり、しかし、Orf−1及びOrf−12のDNA結合特異性の修飾に関連しているようであった。それにもかかわらず、グリセリマイシンの産生においてorf−1又はorf−12の不活性化後に観察した効果に基づいて、プロモーターPnrps1へのOrf−1−HTH12の、及びプロモーターPnrps1及びPnrps2へのOrf−12−HTHの直接特異的結合、orf−1及びorf−12によってコードしたXre−型転写調節因子は、グリセリマイシン生合成と明瞭に機能的に関連し、そして二次代謝物クラスターの一部と考えることができた。
〔実施例12〕ストレプトミセスDSM22643
ストレプトミセスDSM22643は、Sanofi-Aventis Deutschland GmbH, Industriepark Hochst, 65926 Frankfurt/Main, Germany によって、2009年6月4日に、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH (DSMZ), Inhoffenstrase 7B, 38124 Braunschweig, Germany で特許手続きの目的で微生物の寄託の国際的認定に関するブダペスト条約に基づき、2009年4月6日に寄託された。
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