JP2014528921A - Trpc6関連疾患の治療に使用するための二環式ラブダンジテルペン - Google Patents

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Abstract

本発明は、一過性受容器電位陽イオンチャネル6(TRPC6)の活性化に関連する疾患、好ましくは肺疾患または腎疾患の処置に使用するための二環式ラブダンジテルペンに関する。一態様において、本発明は、TRPC6によるカルシウム輸送を遮断するための二環式ラブダンジテルペンの使用に関する。本発明の別の一態様は、薬物として使用するための、式(1)[式中、R1は、水素およびC1からC4アシルから選択され、二環式ラブダンジテルペンは、1位と2位、2位と3位、5位と6位、6位と7位、および/または14位と15位の炭素原子の間に少なくとも1つの二重結合を場合により含み、1、2、3、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20位の炭素原子は水素原子に接続しており、または少なくとも1つの置換を含む]による二環式ラブダンジテルペンである。

Description

本発明は、TRPC6関連疾患、特に肺高血圧症、慢性肺閉塞、アレルギー起源の閉塞性気道疾患、急性呼吸窮迫症候群、または腎疾患の治療に使用するための二環式ラブダンジテルペンに関する。
一過性受容器電位陽イオンチャネル(transient receptor potential cation channel:TRPC)タンパク質は、細胞表面受容体およびホスホリパーゼCに依存性の機序において活性化される、原形質膜に常在するCa2+透過性陽イオンチャネルである。TRPCチャネルは、これら生理学的活性化機序のほかに、膜透過性ジアシルグリセロール、天然化合物(ヒペリシン)、ランタニド、酸性条件、または物理的伸展を含めた、いくつかの他のキュー(queue)によって活性化され、または正に調節され得る。TRPC3、TRPC6、およびTRPC7からなる遺伝的に密接に関係するサブグループは、ジアシルグリセロール(DAG)によって直接活性化されるという独特の性質を共有する。TRPC6、ならびに最もこれに近い類縁体であるTRPC3およびTRPC7は、セカンドメッセンジャー依存性の、選択性の不十分な陽イオンチャネルである。TRPCチャネルの発現は広範にわたるが、イソ型間で異なる。
正準のTRPCチャネルのTRPC6イソ型は、最近、低酸素誘発性肺血管収縮(HPV)などの肺疾患、および巣状分節性糸球体硬化症などの腎疾患(FSGS;US 2008/0038365 A1(特許文献1))における中心的存在として同定されている。さらに、TRPC6の調節不全は特発性肺動脈高血圧症の説明となることが示唆されており、TRPC6の決定的な役割は、慢性閉塞性およびアレルギー性の気道疾患において提唱されている。低酸素または急性肺傷害の間の肺浮腫の発症は、TRPC6依存性の過程によって部分的にひきおこされると記載されている。それゆえ、TRPC6チャネルの遮断は、様々な疾患の治療に適用可能である。
今日まで、肺高血圧症に対して様々な治療が提唱されている。肺血管収縮に対抗するには、エンドセリン受容体アンタゴニスト、一酸化窒素(NO)ガス、またはNO放出性化合物、およびホスホジエステラーゼ阻害物質が利用できる。エンドセリン受容体アンタゴニストは、1クラスのGタンパク質共役受容体の効果を遮断することができるにすぎず、他の血管収縮薬に対する反応は依然として影響を受けない。代替の戦略は、NO感受性可溶性グアニリルシクラーゼによるcGMP形成の増大、またはPDE5ファミリーのcGMP特異的ホスホジエステラーゼの遮断によるcGMPの分解の阻止のいずれかによって、環状グアノシン3’,5’−一リン酸(cGMP)レベルに集中している。
さらに、中国の薬用植物であるラブドシア・ルベセンス(Rabdosia rubesecens)に由来する三環ジテルペンであるオリドニンのプラス効果が、肺高血圧症の治療に対して記載されている(Wang、2009年)。当技術分野において、オリドニンは、肺動脈圧を効果的に低下させ、ミトコンドリア依存性の経路により平滑細胞(smooth cell)のアポトーシスを誘発することによって肺動脈構造のリモデリングを阻害することができると記載されている。
肺のTRPCチャネルを阻害することで、セカンドメッセンジャー依存性陽イオンチャネルによってもたらされる別の一クラスの薬理学的標的分子がもたらされ、これにより様々な血管収縮薬の反応のインプットが一体化される。
しかし、個々のTRPCタンパク質は密接に関係した構造を共有している。哺乳動物の7種のTRPCチャネル内では、より密接に関係するイソ型のサブファミリーが識別可能である。TRPC1/TRPC4/TRPC5サブファミリーおよびTRPC3/TRPC6/TRPC7サブファミリーは、それぞれのメンバー内で約40〜65%のアミノ酸同一性を共有するが、サブファミリーをまたがるとアミノ酸同一性は21〜28%にすぎない。同様に、ヘテロマーのチャネル複合体を形成する可能性は、系統的および構造的により密接に関係するメンバーのサブファミリー内では、明らかにより顕著である。TRPCタンパク質間に密接な関係があるため、TRPCファミリーのメンバーの標的化を目標とする治療的適用には、TRPCの個々のメンバーの選択的阻害薬を提供しなければならない。
US 2008/0038365 A1(特許文献1)は、肺血管収縮および巣状分節性糸球体硬化症の治療のための、2−アミノジフェニルホウ酸(2−APB)、SKF−96365、またはガドリニウム陽イオンなどの合成のTRPCチャネル阻害薬を開示している。
WO2009/05972 A2(特許文献2)は、TRPC3/TRPC6/TRPC7サブファミリーの阻害薬としてノルゲスチメート、ならびに腎疾患および肺疾患の治療におけるその治療的適用を開示している。TRPC3またはTRPC7に比べたTRPC6に対する選択性は実現されていない。
WO2006/7074802 A1(特許文献3)は、不活性な、またはドミナントネガティブなTRPC6のサブユニットでのTRPC6の選択的阻害を開示している。しかし、当技術分野において、TRPC3/TRPC6/TRPC7サブファミリーのタンパク質のサブユニットは、ヘテロマー複合体を形成することによって集合することが知られている。不活性なまたはドミナントネガティブなTRPC6のサブユニットで治療をすると、それによって、TRPC3またはTRPC7も阻害し得る。
したがって、治療的適用のための、個々のイソ型またはサブグループのTRPCイソ型の活性を調節する選択的遮断薬を提供する必要性がある。
US 2008/0038365 A1 WO2009/05972 A2 WO2006/7074802 A1
Wang 2009年:Wang LX、Sun Y、Chen C、Huang XY、Lin Q、Qian GQ、Dong W、Chen YF.Chin、Med J (Engl).、2009年1月20日;122巻(12):1380〜7頁
本発明の目的は、肺高血圧症などのTRPC6関連疾患の処置に治療的に適用可能なTRPC6の選択的遮断薬を提供することである。
この目的は、一過性受容器電位陽イオンチャネル6(TRPC6)によるカルシウム輸送を遮断するための二環式ラブダンジテルペンの使用によって解決される。
本発明者らは、二環式ラブダンジテルペン、特に、構造的にラリキソールに関係するラブダンジテルペンが、TRPC6に対する選択的阻害薬として作用することを見出した(図1)。二環式ラブダンジテルペンはTRPC6に選択的に結合し、構造的に関係するそのサブファミリーメンバーであるTRPC3およびTRPC7に対して結合の著しい低減を示す。誘発マウスモデルにおいて、二環式ラブダンジテルペンは低酸素誘発性肺血管収縮(hypoxia induced pulmonary vasoconstriction)(HPV)の強力な阻害薬であることが実証され得る(図4)。二環式ラブダンジテルペンは、TRPC6の選択的阻害薬であり、TRPC6の活性化に関連する疾患の治療的処置に適用可能である。
したがって、本発明の別の一態様は、TRPC6の活性化に関連する疾患、好ましくは肺疾患または腎疾患の治療に使用するための二環式ラブダンジテルペンである。治療(または治療する)の語は、臨床症状が検出され得る前にTRPC6遮断薬を適用することによってこれらの疾患を予防することを含む。具体的には、TRPC6を発現する細胞型および組織に関与する肺疾患および腎疾患は、TRPC6遮断薬で優先的に標的化される。治療される特定の肺疾患には、特発性または二次性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性気道疾患、肺浮腫、特に、虚血再灌流関連肺浮腫、肺移植後の肺血管収縮、または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が含まれる。ここで、TRPC6の活性化または過剰発現により病態生理学的プロセスに寄与する主要な細胞型には、肺の大血管および小血管における血管平滑筋細胞、気道の平滑筋細胞、ならびにTRPC6を発現し、病理学的な設定において炎症反応を増強する免疫細胞がある。
治療される特定の腎疾患は、巣状分節性糸球体硬化症、糖尿病性腎症、糸球体腎炎の微小変化、または子癇前症腎症であり、巣状分節性糸球体硬化症が特に好ましい。腎臓において、有足細胞におけるTRPC6の活性または発現の調節不全は、有足細胞の機能不全を引き起こし、巣状分節性糸球体硬化症の発症をもたらす。
ラブダンジテルペンは、以下の式(5)による二環コア構造を共有する天然のジテルペン類である。このコア構造に基づいて、二環、三環、四環、または多環ジテルペン構造が形成される。
Figure 2014528921
本発明によれば、二環構造を有するラブダンジテルペンを使用する。これら二環式ラブダンジテルペンが針葉樹から単離されるのが好ましい。
ラブダンジテルペンの個々の群の治療的使用は、DE 198 53 476 A1において、プロラクチンを低減する薬剤において記載されている。これら薬剤は、月経前症候群の治療に適用可能である。しかし、ラリキソールに関係する二環式ジテルペンの治療的使用は記載されていない。
それゆえ、本発明の別の一態様は、好ましくは、肺疾患または腎疾患(特に好ましくは上記に記載した通り)の治療に使用するための、医薬として使用するための式(1)による二環式ラブダンジテルペンである。
Figure 2014528921
本発明によると、式(1)において、Rは、水素およびC〜Cアシル、好ましくは水素またはC〜Cアシル、より好ましくは水素またはCOCHから選択される。本発明によると、式(1)による二環式ラブダンジテルペンは、1位と2位、2位と3位、5位と6位、6位と7位、および/または14位と15位の炭素原子の間に、好ましくは少なくとも14位と15位の炭素原子の間に、少なくとも1つの二重結合を場合により含む。本発明によると、1、2、3、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20位の、好ましくは1、2、3、7、13、17、18、19、もしくは20位の、特に好ましくは1、2、3、7、もしくは13位の炭素原子は水素原子に接続しており、または少なくとも1つの置換を含む。最大5個の、より好ましくは最大3個の前述の炭素原子が置換を含むのが好ましい。1、2、3、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20位の好ましい置換は、ハロゲンまたは−ORから選択され、Rは水素またはC〜Cアシルであり、好ましくは水素またはC〜Cアシルであり、より好ましくは水素またはCOCHである。1、2、3、または7位の好ましい置換はケト基である。
式(1)における二環式環構造が、好ましくは1位と2位、2位と3位、5位と6位、6位と7位の間に位置する環構造内に少なくとも1つの二重炭素結合を含むのが好ましい。
ラリキソールに関係する二環式ラブダンジテルペンは、式(1)における8位と17位の炭素原子の間の二重結合、および6位の炭素原子の酸素含有置換ORを特徴とする。医薬として使用するための二環式ラブダンジテルペンが、14位と15位の炭素原子の間に二重結合を含むのが好ましい。医薬として使用するための二環式ラブダンジテルペンは、13位の炭素原子に−ORの構造を有する官能基を含むのが好ましく、Rは水素またはC〜Cアシル、好ましくは水素またはC〜Cアシル、より好ましくは水素またはCOCHである。
特に好ましい二環式ラブダンジテルペンは、以下の式(2)を特徴とする:
Figure 2014528921
式(2)において、RおよびRは、互いに独立に、水素およびC〜Cアシル、好ましくは水素またはC〜Cアシル、より好ましくは水素またはCOCHから選択される。残りのRおよびRが同一であるのが好ましい。式(2)による特に好ましい二環式ラブダンジテルペンにおいて、式(1)に記載した、任意選択による二重結合、置換、および置き換えが含まれる。好ましくは、式(2)による二環式ラブダンジテルペンは、1位と2位、2位と3位、5位と6位、および/または6位と7位の炭素原子の間に少なくとも1つの二重結合を場合により含み、場合により1、2、3、7、11、12、14、15、16、17、18、19、もしくは20位の、好ましくは1、2、3、7、17、18、19、もしくは20位の、特に好ましくは1、2、3、もしくは7位の炭素原子は水素原子に接続しており、または少なくとも1つの置換を含む。1、2、3、7、11、12、14、15、16、17、18、19、または20位の好ましい置換は、ハロゲンまたは−ORから選択され、Rは水素またはC〜Cアシルであり、好ましくは水素またはC〜Cアシルであり、より好ましくは水素またはCOCHである。1、2、3、または7位の好ましい置換はケト基である。式(2)の前述の炭素原子最大3個が、H以外の置換を含むのが好ましい。
特に好ましい二環式ラブダンジテルペンは、式(3)ならびに(4a、b、およびc)をそれぞれ特徴とするラリキソールおよび酢酸ラリキソールである:
Figure 2014528921
本発明の別の一態様は、治療有効量の二環式ラブダンジテルペン、好ましくは、上記に規定した通りの、好ましいラリキソールに関係する二環式ラブダンジテルペンを患者に投与するステップを含む、疾患を治療する方法である。本発明による方法で治療するのが好ましい疾患は、TRPC6の活性化に関連する疾患であり、特に好ましくは肺疾患または腎疾患である。本発明による好ましい一方法において、二環式ラブダンジテルペンを、経口的に、吸入器によってまたは非経口的に、好ましくは治療する疾患に応じて投与する。
本発明のさらなる一態様は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせて、二環式ラブダンジテルペン、好ましくは上記に規定したラリキソールに関係する二環式ラブダンジテルペンを含む医薬組成物である。
本発明による医薬組成物は様々な剤形を含み、経口、吸入または非経口に好ましく、特に好ましくは静脈内投与に適する。非経口医薬組成物が注射に適する形態であるのが好ましい。特に好ましい医薬組成物は、二環式ラブダンジテルペンの、薬学的に許容可能な担体における、液剤、乳剤、または懸濁剤である。薬学的に許容可能な担体は、好ましくは、無菌の液体、特に水、緩衝水、0.4%食塩水、0.3%グリシンなどである。医薬組成物は、慣例的な、よく知られている技術によって滅菌することができる。組成物は、生理学的条件を保証することが要求されるもの、および/または含まれる二環式ジテルペンの安定性を増大するものなど、薬学的に許容可能な補助物質を含むのが好ましい。好ましい補助物質は、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、および乳酸ナトリウムから選択されるのが好ましい、pHを調整するための薬剤および緩衝剤である。
TRPC6によるカルシウム輸送を遮断するための二環式ラブダンジテルペンの使用は、TRPC6活性化に関連する疾患に罹患している患者の治療などによる、in vivo、またはex vivoで生じ得る。好ましいex vivo使用では、二環式ラブダンジテルペンは、単離された組織の貯蔵または灌流に使用する保存溶液に有効成分として含まれる。本明細書で使用する用語「組織」には、単離された組織、および単離された完全な器官が含まれる。それゆえ、本発明の別の一態様は、組織の貯蔵および/または灌流用の、上記に規定した通りの、好ましい二環式ラブダンジテルペン、好ましくはラリキソールに関係する二環式ラブダンジテルペンを含む水溶液(保存溶液)、好ましくは生理学的溶液の使用である。好ましい一実施形態において、外植した組織を、保存溶液と一緒に貯蔵し、かつ/または灌流して、再灌流時の肺血管収縮を防ぐ。再移植の前に、二環式ラブダンジテルペンを含む保存溶液を、好ましくは除去し、二環式ラブダンジテルペンを含まない生理学的溶液によって置き換える。
本発明は、TRPC6によるカルシウム流入を選択的に遮断し、したがって、TRPC6関連疾患を有する患者の治療的処置に適用可能である新しいクラスのTRPCチャネル阻害薬を提供する。二環式ラブダンジテルペンはTRPC6を選択的に遮断し、構造的に密接に関係するサブファミリーメンバーであるTRPC3およびTRPC7によるカルシウム流入は阻害しない。二環式ラブダンジテルペンは天然化合物である。細胞毒性効果は、in vitroおよびin vivoの実験において評価されなかった。
本発明を、以下の図面および例によってさらに説明するが、これらに限定されない。
様々なイソ型の一過性受容器電位陽イオンチャネル(TRPC)を遮断する、ラリキソールおよび酢酸ラリキソールの選択性。ヒトTRPC6、TRPC3、TRPA1、およびマウスTRPC6に対する結合の比較により、TRPC6に対する選択的結合が示される。TRPV1、TRPM8、TRPM2、およびTRPM3などの他の一過性受容器電位陽イオンチャネルは、ラリキソールおよび酢酸ラリキソールによる影響を受けない。 酢酸ラリキソールは細胞の外側から作用する。A:電気生理学的に全細の記録を行って、50μM OAGでの直接刺激時に、またはAlF (50μM)を細胞内に適用してヘテロ三量体Gタンパク質を活性化することによって、ホスホリパーゼC活性化のトリガーにより内在性ジアシルグリセロールの形成をもたらすTRPC6媒介性電流を決定した。チャネルタンパク質のサイトゾル側を酢酸ラリキソールに暴露するために、酢酸ラリキソールを細胞内溶液に加えた(斜線バーおよび黒抜きバー)。酢酸ラリキソールを含まない対照溶液(白抜きバー)を並行して測定した。酢酸ラリキソールに対する細胞内暴露(斜線バー)は、OAGまたはALF 誘導性TRPC6活性化を抑制するのに十分ではなかったが、浴溶液に適用した酢酸ラリキソールは(「外側」;黒抜きバー)チャネル活性を効果的に遮断した。B:浴溶液によって与えた場合の酢酸ラリキソールによるTRPC6活性の遮断を実証するオリジナルの記録の例。 ラリキソールおよび酢酸ラリキソールは、HEK239細胞に対して細胞毒性効果を示さない。細胞の完全性を、DNA結合性蛍光色素であるヨウ化プロピジウム(PI)の排除によって決定した。 酢酸ラリキソールによる、低酸素誘発性肺血管収縮(HPV)の阻害。単離した、灌流したマウスの肺において、低酸素ガスで換気すると、肺動脈圧(PAP)の上昇がもたらされるが、これは灌流溶液に酢酸ラリキソール5μMを加えた場合に完全に抑制される。 酢酸ラリキソールによる、虚血−再灌流に関連する肺浮腫の形成の阻害。ウサギの肺を外植し、Perfadex溶液で体外灌流し、酸素供給(oxygenized)条件下(白丸)または低酸素条件下(黒丸)で換気した。次いで、肺を氷上に2時間配置し、タイロード溶液で90分間再灌流した。上パネル:酢酸ラリキソールなしでの対照実験、下パネル:Perfadex(登録商標)および5μM酢酸ラリキソールを補ったタイロード溶液での同様の実験。肺の湿重量における増加は、浮腫の形成を示す。示したデータは、各処置群に対し6つの個々の実験の平均値およびS.E.M(平均値の標準誤差)を示す。
例1:TRPC発現性HEK293細胞の作成
HEK293(ATCC CRL−1573)細胞を、10Vol.%ウシ胎仔血清、2mM(mmol/l)L−グルタミン、100単位/mlペニシリン、および0.1mg/mlストレプトマイシンを補ったイーグル最小必須培地(MEM)中で増殖させた。細胞を35mm培養皿に播種し、24時間増殖させ、80%コンフルエンスで、無血清培地100μl中C末端がYFPでタグ付されたヒトTRPC6をコードするプラスミドDNA2μgおよびFugeneHD試薬(Roche)4μlをトランスフェクトした。安定にトランスフェクトされたHEKhTRPC6−YFPクローンを選択するために、1mg/mlジェネテシン(G418)を培地に加えた。限外希釈法によって単一のクローンを得、倒立型落射蛍光顕微鏡(inverted epifluorescence microscope)を使用して光学制御し、均一な蛍光を示したクローンを手動で選定した。機能発現を確証するために、異なるクローンを単離し、単一細胞[Ca2+画像化実験(single−cell[Ca2+ imaging experiments)によって試験した。同手順をやはり適用して、他のTRPチャネル構築物を発現する細胞株を作成した。以下の細胞株を作成した:
Figure 2014528921
例2:TRPチャネル構築物に対するラリキソールおよび酢酸ラリキソールの阻害作用の評価
TRPチャネルによるカルシウム輸送に対する二環式ラブダンジテルペンの効果を評価するために、ラリキソールおよび酢酸ラリキソールを、例1からの細胞株に加えた。懸濁液中[Ca2+における増加を決定することによって、それぞれのTRPチャネルの遮断を決定した。TRPチャネルを活性化するために、それぞれのチャネルの活性化物質を加え、細胞内にロードしたfluo−4の蛍光強度における変化を、マルチウェルプレートリーダー装置(Polarstar Omega、BMG Labtech)で決定した。HEKrTRPV1細胞に対して、同時発現されるYFPの蛍光の減少をもたらす細胞内酸性化をモニタリングすることによって、活性化の評価を行った。
132mM NaCl、6mM KCl、1mM MgCl、1mM CaCl、5.5mMグルコース、および10mM HEPESを含み、NaOHでpH7.4に調整したHEPES緩衝食塩水(HBS)中で以下の実験を行った:
着色した、底面の透明な384ウェルスクリーニングプレート(Corning、米国)にHBSをあらかじめ満たし(26μl/ウェル)、ラリキソールおよび酢酸ラリキソールの段階希釈溶液(0.01μM〜20μMの最終濃度を実現するように4μl/ウェル)を加えた。例1からのTRPチャネルを発現するHEK293細胞をコンフルエンスに増殖させ、0.25%トリプシンで剥離し、4μM fluo−4/AM(Invitrogen)を補った培地中37℃で30分間ロードした。細胞を洗浄し(100×g、3分)、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むHBS中に再懸濁し、細胞数を1000細胞/μlに調整した。細胞懸濁液(10μl/ウェル)を、調製したスクリーニングプレート中に分散させて、最終濃度の試験化合物を得た。
マルチウェルプレートリーダー(Polarstar Omega、BMG Labtech、ドイツ)中、繰返しのオンザフライ(on−the−fly)プレートスキャニングモードを適用し、励起波長485nmおよび発光波長520nmで蛍光を検出した。プレートを、各192ウェルの2群においてスキャンした。10回のベースラインサイクルの後、最終濃度50μMでOAGを注射した。全ての実験において、細胞内にロードした[Ca2+指示色素から生じた蛍光シグナルに比べて、タグ付したhTRPC6−YFPの蛍光は無視できるものであった(<1%)。主に適合した、または記録された化合物の濃度−反応曲線を作成するために、段階希釈の化合物を各々2回ずつ試験した。TRPC6を、OAGで、またはカルバコール(1mM)、アデノシン−5’−三リン酸(300μM)およびトロンビン(0.5U/ml)を含むGPCRアゴニスト過剰の混合物のいずれかで活性化した。可能な受容体拮抗作用の効果を避けるために、3つのアゴニストと組み合わせた刺激を適用した。ストア枯渇(store depletion)から生じた[Ca2+シグナル、およびTRPC依存性流入経路の[Ca2+シグナルを分離するために、細胞をタプシガルジンでプレインキュベートした後(2μMで5分間)、アゴニストを注射した。GPCRアゴニストを適用する時に、BSAをHBSバッファーから除いた。特異性の試験において、化合物の濃度−反応曲線を、他のTRPチャネルを過剰発現する細胞株において決定した。それぞれの活性化物質は、TRPC3およびTRPC7に対して50μM OAG、TRPM2に対して1mM H、TRPA1に対して100μM AITC、ならびにTRPV1に対して2μMカプサイシンであった。
試験の結果を図1に示す。ラリキソールおよび酢酸ラリキソールは、TRPC6によるカルシウム流入を選択的に阻害し、他のTRPチャネルは阻害せず、またはほんの不十分に阻害する。
例3:酢酸ラリキソールによるTRPC6阻害の機序の電気生理学的キャラクタリゼーション
TRPC6発現細胞をカバーガラス上に播種し、倒立顕微鏡のステージ上に搭載し、細胞内溶液を充填したホウケイ酸ガラスピペットと接触させた。ギガオームシールに到達した後、ピペットの陰圧を穏やかに適用することによって、ホールセル記録(whole−cell configuration)を得た。ホールセルの電流を、−60mVの保持電位の電圧固定モードにおいて測定し、電流振幅を細胞の静電容量によって除することによって細胞のサイズを標準化した(pA/pF)。浴溶液にOAGを添加することによって、またはピペット溶液中に50μM AlF を含めることによってのいずれかでTRPC6を活性化した。TRPC6活性化の典型的な例を、図2Bに示す。
いくつかの実験において、ピペット溶液に1μM酢酸ラリキソールをさらに補って細胞内にモジュレーターを適用した(図2A、「内側」)。1μM酢酸ラリキソールによる効果的な遮断は、しかしながら、浴溶液によって遮断薬を適用した場合に観察されたにすぎなかった(図2A、「外側」、図2B)。
これらの実験は、酢酸ラリキソールは細胞外に暴露されたTRPC6のドメインに対して結合し、細胞内シグナル伝達経路は酢酸ラリキソールでTRPC6遮断を実行するのに必要とされないことを実証するものである。
例4:HEK293細胞に対するラリキソールおよび酢酸ラリキソールの細胞毒性
ラリキソールおよび酢酸ラリキソールの可能な細胞毒性効果を評価するために、ヨウ化プロピジウム排除試験を行った。細胞を、24ウェルプレート中18時間増殖させ、次いで、指摘した化合物と一緒にさらに24時間インキュベートした(図3)。ヨウ化プロピジウム(2μg/ml、Invitrogen)を加え、蛍光(励起544nmおよび検出620nm)を追跡した。最大の基準値を得るために、0.2%Triton X−100をいくつかの試料に加えた後、ヨウ化プロピジウムを注射した。以下の対照を試験した。
− 陰性対照:HBSバッファー(「対照」)、または10μMラリキソールと同じ体積のHBSバッファー中0,1%DMSOを増殖培地に加えたもの(「0,1%DMSO」)。
− 陽性対照:2μmスタウロスポリン、50μmジギトニン。
10μMまでの濃度では、細胞に対するラリキソールおよび酢酸ラリキソールの細胞毒性効果は認められなかった。
例5:酢酸ラリキソールによる低酸素誘導性肺血管収縮(HPV)の阻害
酢酸ラリキソールのTRPC6遮断作用はHPVを予防するのに強力であるか否かを評価するために、酢酸ラリキソールをHPVの誘発マウスモデルにおいて供給した。
麻酔したC57BL/6成年オスマウスに気管開口術を施し、次いで従量式(volume−controlled)正常酸素圧人工呼吸を行った。胸骨中線開胸術を行い、カニューレ(内径1mm)2本を肺動脈および左心房中にそれぞれ挿入した。次いで、肺を、pH7.4の、5%ウシ血清アルブミン(Sigma−Aldrich)および5%デキストラン(Sigma−Aldrich)を含む、一定流量の37℃ハンクス平衡塩類溶液(Sigma−Aldrich)で灌流した。インドメタシン(30μM)およびN−ニトロ−L−アルギニンメチルエステル(1mM)を灌流液に加えて、プロスタグランジンおよび一酸化窒素の内因性の合成を阻害した。N中21%O、5%COの正常酸素圧の混合ガスから、1%O、5%CO、バランスのNを含む低酸素混合ガスに切り換えることで、約40%の肺動脈圧(PAP)の上昇がもたらされた。このよく知られている反応は、「フォン・オイラー・リルエストランドのメカニズム(von Euler−Lilljestrand mechanism)」とも呼ばれ、5μMの酢酸ラリキソールを灌流溶液に加えた場合、完全に抑制された(図4)。
例6:酢酸ラリキソールによる再灌流傷害関連肺浮腫の形成の阻害
酢酸ラリキソール媒介性TRPC6遮断が、内皮の機能不全を予防することができるか否かを評価するために、酢酸ラリキソールの効果を、ウサギ肺移植モデルにおける肺浮腫形成に対して試験した。
ニュージーランドシロウサギを麻酔し、気管開口術を施した。動物を、室内気で人工呼吸した(40呼吸・分−1)。正中線開胸術によって胸部を開き、肺動脈および左心房にカニューレ挿入し、心臓−肺区画を切開し、サーモスタットで調節した人工の胸部チャンバー(thorax chamber)に移した。肺を、アルブミン含有タイロード溶液で簡単に灌流し、次いで酸素供給(室内気による通気)または低酸素(窒素ガス供給)いずれかの、5μM酢酸ラリキソールまたは対応する溶媒対照を補った、Perfadex(登録商標)溶液(5%デキストラン40(w/v、分子量40.000)、Na138mM、K6mM、Mg2+0.8mM、Cl142mM、SO 2−0.8mM、HPO +HPO 2−0.8mM、およびグルコース5mM)で灌流した。次いで、灌流および換気を停止し、肺を氷上に4時間維持した。引き続き、5μM酢酸ラリキソールなし(対照の肺)またはありで、正常酸素圧の換気(室内気)およびタイロード溶液での灌流を再開して、移植の状況を擬した。全手順の間、肺の湿重量を記録した。低酸素処置を受けた肺における肺の湿重量の時間依存性の増加に注目されたい。Perfadexおよびタイロード溶液中に酢酸ラリキソールが含まれると、低酸素の処置条件下で肺の湿重量の増加が妨げられた(図5)。
引用した非特許文献
Wang 2009年:Wang LX、Sun Y、Chen C、Huang XY、Lin Q、Qian GQ、Dong W、Chen YF.Chin、Med J(Engl).、2009年1月20日;122巻(12):1380〜7頁

Claims (14)

  1. 医薬として使用するための、式(1)
    Figure 2014528921
    [式中、Rは水素およびC〜Cアシルから選択され、場合により少なくとも1つの二重結合が、1位と2位、2位と3位、5位と6位、6位と7位、および/または14位と15位の炭素原子の間に存在し、1、2、3、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20位の炭素原子は、単結合によって水素原子に接続しているかまたは少なくとも1つの置換を含み、場合により18、19または20位の炭素原子1個がCOOHによって置き換えられている]
    で表される二環式ラブダンジテルペン。
  2. 1、2、3、7、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20位の炭素原子の置換がハロゲンまたは−ORから選択され、Rが水素もしくはC〜Cアシルであり、かつ/または1、2、3または7位の少なくとも1つがケト基である、請求項1に記載の二環式ラブダンジテルペン。
  3. 二重結合が14位と15位の炭素原子の間に存在する、請求項1または2に記載の二環式ラブダンジテルペン。
  4. 13位の炭素原子が−ORで置換されている、請求項1〜3のいずれか一つに記載の二環式ラブダンジテルペン。
  5. 式(2)
    Figure 2014528921
    [式中、RおよびRは、互いに独立に、水素およびC〜Cアシルから選択され、任意選択による置換が、請求項3または4のいずれか一つにおいて定義する通りに存在する]
    を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の二環式ラブダンジテルペン。
  6. 二環式ラブダンジテルペンがラリキソールまたは酢酸ラリキソールである、請求項1〜5のいずれか一つに記載の二環式ラブダンジテルペン。
  7. 肺疾患または腎疾患の治療に使用するための、請求項1〜6のいずれか一つに記載の二環式ラブダンジテルペン。
  8. 肺疾患が、特発性もしくは二次性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性気道疾患、肺浮腫、肺血管収縮または急性呼吸窮迫症候群であり、あるいは腎疾患が巣状分節性糸球体硬化症である、請求項7に記載の二環式ラブダンジテルペン。
  9. 肺疾患または腎疾患の治療に使用するための、二環式ラブダンジテルペン。
  10. 肺疾患が、特発性もしくは二次性肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、アレルギー性気道疾患、肺浮腫、肺血管収縮または急性呼吸窮迫症候群であり、あるいは腎疾患が巣状分節性糸球体硬化症である、請求項9に記載の二環式ラブダンジテルペン。
  11. 一過性受容器電位陽イオンチャネル6(transient receptor potential cation channel 6)によるカルシウム輸送を遮断するための、好ましくは請求項1〜6のいずれか一つに記載の二環式ラブダンジテルペンの使用。
  12. 薬学的に許容可能な担体と組み合わせて、請求項1〜6のいずれか一つに記載の二環式ラブダンジテルペンを含む医薬組成物。
  13. 水性溶液の形態にある、請求項12に記載の医薬組成物。
  14. 貯蔵および/または組織の灌流用の保存溶液としての、好ましくは請求項1〜6のいずれか一つにおいて記載の二環式ラブダンジテルペンを含む水溶液の使用。
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