JP2014522879A - 腎疾患の治療のためのカルジオトロフィン−1の使用 - Google Patents

腎疾患の治療のためのカルジオトロフィン−1の使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、急性腎障害、具体的には腎毒性薬剤(例えば、造影剤、抗生物質、免疫抑制剤または抗新生物剤)によって誘発される急性腎障害の予防および/または治療のためのカルジオトロフィン−1(CT−1)の使用に関する。本発明はまた、前記腎毒性薬剤およびカルジオトロフィン−1を含む組成物に関する。

Description

本発明は、急性腎障害、特に腎毒性薬剤によって誘発される急性腎障害の予防および/または治療のためのカルジオトロフィン−1(CT−1)の使用に関する。同様に、本発明はまた、前記腎毒性薬剤およびカルジオトロフィン−1を含む組成物に関する。
急性腎障害(AKI)は、種々の腎臓構造における損傷の複合的なプロセスであり、突発性の、完全なまたは部分的な腎機能の喪失につながって、数時間〜数日間に及ぶ短期間の急性腎不全(AKF)をもたらす(Lopez−Novoa JM.Kidney Int.1999;55:1672−1682;Lopez−Novoa JM,et al.Kidney Int.2011;79:33−45)。一般に、AKIという用語は、ほとんどの腎侵襲の治療可能な性状であることを定義するのに使用され;一方、AKFという用語は、腎代替療法(KRT)(すなわち、任意の間欠的透析法または従来の透析法)が必要とされる、腎臓の糸球体ろ過および排泄能の低下を伴う腎障害を有する患者の状態を説明するためのものである。
AKIの原因に関与する多くの機序があるが、その中でも最も重要で、最もよく研究されているもの(Schrier RW,et al.J Clin Invest.2004;114:5−14)は:血管障害によってもたらされる内皮障害;虚血による、または尿細管に対する腎毒素の直接的作用による尿細管細胞の壊死/アポトーシス;腎臓調節の消失;炎症;ならびに尿細管閉塞につながる尿細管細胞の壊死およびアポトーシスである。多くの場合において、これらの機序は関連し合っている(Lopez−Novoa JM,et al.Kidney Int.2011;79:33−45)。
腎毒性薬剤が腎臓に及ぼす作用は、急性腎障害の最も一般的な原因の一つである。最も典型的な薬理学的な腎毒性薬剤には、造影剤、抗新生物剤および抗生物質がある。
造影剤によって誘発される腎機能低下の発生率は、近年では、患者に対して実施される診断的および治療的な介入プロセスの数の増加、およびさらには危険な状況、例えば糖尿病(Calvin et al,Nature Reviews Nephrology 2010;6:679−688)および高齢(Laville and Juillard,J Nephrol.2010;23:387−398)の患者の増加の結果として有意に増加している。造影剤による腎症は通常は可逆性であるが、入院の長期化を強いるものであり、一部の場合(特に、高リスク患者)では不可逆的な腎機能低下につながるので、良性合併症であるとは言い難い(Laville and Juillard,J Nephrol.2010;23:387−398)。
造影剤誘発性AKIの確立された治療は、対症療法および透析に限定されている。これまで、複数の分子がその予防のためにアッセイされているが(例えば、心房性ナトリウム利尿ペプチド、スタチン、プロスタグランジン/プロスタサイクリン類似体、N−アセチルシステインまたは等張重炭酸塩の静脈注射(isotonic intravenous bicarbonate))、これらの予防療法は、決定的な有効性を実証することができていない(Weisbord SD,Palevsky PM.Curr Opin Nephrol Hypertens.2010;19(6):539−549)。
抗新生物剤は、化学療法を受けた癌罹患患者における急性腎障害の別の原因である。具体的には、シスプラチンは、固形腫瘍の治療に最も有効な抗新生物剤の一つであり、幅広い作用スペクトルを有する。しかしながら、用量依存的な蓄積腎毒性がこの薬物の主な治療的限界であり、一部の場合では、用量の減量または治療の中止が必要になる。一般に、シスプラチンの投与によってもたらされる腎障害の予防戦略は、生理食塩水を注入して溶質利尿を誘導すること、および抗新生物薬の用量を最適調整することに基づいている。アミホスチンは腎不全の予防に有効であることが発見されたが、スティーブンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮剥離症の症例が、前記薬物で治療した患者で示されている(Darmon M.et al.Critical care.2006;10:211)。
さらに、ゲンタマイシンおよび一般にはアミノグリコシド抗生物質などの抗生物質は、多種多様な感染症の治療に広範に使用されている有効成分である。患者を的確にモニタリングおよび水分補給するにもかかわらず、治療の10〜20%で急性腎障害が現れることから、それらの主な欠点およびそれらの使用上の限界は、それらの腎毒性である。現在のところ、ゲンタマイシンによって引き起こされる腎障害を予防するかまたは最小限に抑えること、あるいは治療中止後の器官の回復を改善することを可能にする薬物および治療戦略はない。
国際公開第WO2006/134601A2号には、HgClによって誘発される急性腎不全を予防または治療するための方法であって、IL−6ファミリーメンバーを前記メンバーの可溶性受容体に連結することによって形成された融合タンパク質を活性剤として含有する医薬組成物を投与することを含む方法が開示されている。しかしながら、単離されたIL−6ポリペプチドの投与は、その受容体の非存在下では、腎障害を予防または治療することができない。
米国特許第US7,022,666B1号には、腎不全を患っている被験体において、間葉前駆体から腎臓上皮の形成を誘導するための方法であって、後腎間充織成長因子(metanephric mesenchymal growth factor)の存在下でgp130受容体のリガンドを投与することを含む方法が開示されている。前記後腎間充織成長因子は、上皮の誘導に必須である。
したがって、最先端の技術水準下では、急性腎障害、特に腎毒性薬剤によって引き起こされる急性腎障害の治療および/または予防に有用な薬剤を提供することの必要性がある。
第一の態様では、本発明は、急性腎障害の予防および/または治療に用いられるカルジオトロフィン−1活性(CT−1)を誘導する化合物であって、前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、
(i)カルジオトロフィン−1(CT−1)、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体、
(ii)CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチド、
(iii)(ii)のポリヌクレオチドを含むベクター、および
(iv)カルジオトロフィン−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体を培地に分泌することができる細胞
からなる群から選択されるものである化合物に関する。
別の態様では、本発明は、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物および腎毒性薬剤を一緒にまたは個別に含む組成物に関する。
別の態様では、本発明は、診断剤として用いられる組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物および造影剤を含む組成物に関する。
さらに別の態様では、本発明は、抗生物質による腎毒性の予防および/または治療に用いられる組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物および抗生物質を含む組成物に関する。
別の態様では、本発明は、免疫抑制剤による腎毒性の予防および/または治療に用いられる組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物および免疫抑制剤を含む組成物に関する。
最後の態様では、本発明は、抗新生物剤による腎毒性の予防および/または治療に用いられる組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物および抗新生物剤を含む組成物に関する。
コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、ガストログラフイン(Gg)、ガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットにおける実験期間中の体重の変化(グラム(g)で表す)。データは、平均±SEMを表す(動物4〜5匹/群)。d0:0日目の定常状態;d4:造影剤投与後4日目。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、ガストログラフイン(Gg)、ガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの血漿クレアチニン濃度(Creat.Plasma)(mg/dLで表す)。ガストログラフイン投与後2日目(d2)および4日目(d4)のデータ。データは、動物4〜5匹/群の平均±SEMを表す。*治療終了時(ヨウ化造影剤投与後4日目)のC群、G群、CT−1群およびGg群に対してp<0.05。&治療終了時のGg+Gに対してp<0.05。d2:造影剤投与後2日目;d4:造影剤投与後4日目。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、ガストログラフイン(Gg)、ガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの血漿尿素濃度(mg/dLで表す)。ガストログラフイン投与後2日目(d2)および4日目(d4)のデータ。データは、動物4〜5匹の平均±SEMを表す。*治療終了時(ヨウ化造影剤投与後4日目)のC群、G群、CT−1群およびGg群に対してp<0.05。&治療終了時のGg+Gに対してp<0.05。d2:造影剤投与後2日目;d4:造影剤投与後4日目。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、ガストログラフイン(Gg)、ガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの治療終了時のクレアチニンクリアランス(Creat.Cl)(ml/分で表す)。データは、動物4〜5匹/群の平均±SEMを表す。*C群、G群、CT−1群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、ガストログラフイン(Gg)、ガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の尿中タンパク質排泄(Urine Prot.)(mg/日(mg/d)で表す)。データは、動物4〜5匹/群の平均±SEMを表す。*C群、G群、CT−1群およびGg群に対してp<0.05。&Gg+G群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、ガストログラフイン(Gg)、ガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の尿中N−アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)排泄(任意単位/日(AU/d)で表す)。データは、動物4〜5匹/群の平均±SEMを表す。*C群、G群、CT−1群およびGg群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、ガストログラフイン(Gg)、ガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の尿中のKIM−1およびPAI−1のウエスタンブロット分析を表す写真。ウエスタンブロットは、個別に行った3つの実験を表す。 コントロールラット(C)、ならびにガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の糸球体ろ過率(GFR)(mL/分で表す)。データは、動物4匹/群の平均±SEMを表す。*C群に対してp<0.05。&Gg+G群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の腎血漿流量(RPF)(mL/分で表す)。データは、動物4匹/群の平均±SEMを表す。*C群に対してp<0.05。&Gg+G群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにガストログラフイン+ゲンタマイシン(Gg+G)およびガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン−1(Gg+G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の腎血管抵抗(RVR)(mmHg・分/mLで表す)。データは、動物4匹/群の平均±SEMを表す。*C群に対してp<0.05。&Gg+G群に対してp<0.05。 ビヒクル(コントロール)群;カルジオトロフィン−1(CT−1)群;シスプラチン(シスプラチン)群またはカルジオトロフィン−1およびシスプラチン(CT1−P)群の生存の時間変化。データは、平均±SEMを表す(n=ラット6匹/群)。 ビヒクル(コントロール)群;カルジオトロフィン−1(CT−1)群;シスプラチン(シスプラチン)群またはカルジオトロフィン−1およびシスプラチン(CT1−P)群の体重(グラム、g)の時間変化。データは、平均±SEMを表す(n=ラット6匹/群)。*コントロール群に対してp<0.05、&カルジオトロフィン−1−シスプラチン群に対してp<0.05。 ビヒクル(コントロール)群;カルジオトロフィン−1(CT−1)群;シスプラチン(シスプラチン)群またはカルジオトロフィン−1およびシスプラチン(CT1−P)群の尿流(ml)の時間変化。データは、平均±SEMを表す(n=ラット6匹/群)。*コントロール群に対してp<0.05、&カルジオトロフィン−1−シスプラチン群に対してp<0.05。 ビヒクル(コントロール)群;カルジオトロフィン−1(CT−1)群;シスプラチン(シスプラチン)群またはカルジオトロフィン−1およびシスプラチン(CT1−P)群の血漿クレアチニン濃度(mg/dl)の時間変化。データは、平均±SEMを表す(n=ラット6匹/群)。*コントロール群に対してp<0.05、&カルジオトロフィン−1−シスプラチン群に対してp<0.05。 ビヒクル(コントロール)群;カルジオトロフィン−1(CT−1)群;シスプラチン(シスプラチン)群またはカルジオトロフィン−1およびシスプラチン(CT1−P)群における研究の実験期間終了時の臓器の重量(体重に対するもの、体重に対する%)。データは、平均±SEMを表す(n=ラット6匹/群)。*コントロール群に対してp<0.05、&カルジオトロフィン−1−シスプラチン群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの実験期間(d、日数)中の体重の変化(グラム(g)で表す)。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。B:定常。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの治療開始前(定常)および治療終了時(d6)の収縮期血圧(SBP)(上のパネル、mmHgで表す)および心拍数(下のパネル)(bpm(1分間あたりの拍数)で表す)。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の肝臓(A)、脾臓(B)、右腎(C)および心臓(D)の重量(体重に対する%)。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。*コントロール群に対してp<0.05、&G群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの実験開始時(定常)、4日後(d4)および研究終了時(d6)の血漿クレアチニン濃度(Creat.Plasma)(mg/dLで表す)。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。*コントロール群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の血漿尿素濃度(Urea plasma)(mg/dLで表す)。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。*コントロール群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの研究開始時(定常)、4日後(d4)および研究終了時(d6)のクレアチニンクリアランス(Creat.Cl.)(mL/分で表す)。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。*コントロール群に対してp<0.05、&G群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの尿中タンパク質排泄(タンパク尿)(mg/日で表す)。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。*コントロール群に対してp<0.05、&G群に対してp<0.05。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの尿流(mL/日(mL/d)で表す)の研究期間全体(d、日数)の時間変化。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。 コントロールラット、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の腎臓切片の皮質領域をヘマトキシリン・エオシン染色した光学顕微鏡検査(倍率1,000)を表す写真。 コントロールラット(C)、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの治療4日後(d4)および研究終了時(d6)の尿中N−アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)排泄(任意単位/日(AU/d)で表す)の時間変化。データは、動物5〜6匹の平均±標準偏差を表す。 コントロールラット、ならびにゲンタマイシン(G)、カルジオトロフィン−1(CT−1)または両化合物(G+CT−1)で治療したラットの治療終了時の腎組織ホモジネート(t)および尿(u)中のKIM−1およびNGALのウエスタンブロット分析を表す写真。直線矢印は、予想分子量の高さで得られたバンドを示す。点線矢印(および疑問符の記号)は、タンパク質の断片に対応し得る予想よりも小さい分子量の反応性バンドを示す。 60分間の左腎虚血および14日間(d)の再灌流に付したラットの生存におけるCT−1による治療効果(生存ラットのパーセンテージ%で表す)。偽ラット(Sim)、生理食塩水血清を投与したラット(IR C)、およびCT−1で治療したラット(IR CT−1)を示す。 左腎虚血および再灌流24時間および48時間に付した動物において、CT−1の投与が(A)血漿クレアチニンレベル(Creat.Plasma)(mg/dLで表す)および(B)クレアチニンクリアランス値(Creat.Cl.)(mL/分で表す)に及ぼす効果。偽ラット(Sim)、左腎虚血に付し生理食塩水血清を投与したラット(コントロール)、および左腎虚血に付しCT−1で治療したラット(CT−1)を示す。データは、ラット5匹/群の平均±SDとして表す。(*)IR Cに対してP<0.05;(#)Simに対してP<0.05。 偽群(Sim)の動物および左腎虚血に付した2つの動物群(虚血コントロール(コントロール)およびCT−1で治療した虚血動物(CT−1))の再灌流4時間後の腎組織のスーパーオキシドアニオン(SOA)レベル(nmol/mgタンパク質/分で表す)。データは、ラット5匹/群の平均±SDとして表す。 CT−1による治療の、腎臓I/R後のミエロペルオキシダーゼ活性(MA)に及ぼす効果(単位/組織1グラム(U/g)で表す)。偽群(Sim)の動物および左腎虚血に付した2つの動物群(虚血コントロール(コントロール)およびCT−1で治療した動物(CT−1))の腎組織において、偽手術または再灌流の24時間後のミエロペルオキシダーゼ活性(MA)を測定した。値は、ラット5匹/群の平均±SDである。 偽群の動物(Sim)および左腎虚血に付した2つの動物群(虚血コントロール(コントロール)およびCT−1で治療した虚血動物(CT−1))の再灌流4時間後における、CT−1による治療の炎症誘発性サイトカインの血漿レベルに及ぼす効果(pg/mLで表す)。A)TNF−αレベル。B)IL−1βレベル。C)IFN−γレベル。D)IL−6レベル。E)IL−10レベル。データは、ラット5匹/群の平均±SDとして表す。 図31ABと同様。 図31ABと同様。 腎虚血に付した非治療ラットの腎臓(コントロール)、および腎虚血に付しカルジオトロフィン−1を投与したラットの腎臓(CT−1)の再灌流24時間後のヘマトキシリン−エオシン染色を表す写真。矢尻は、空胞化した多くの細胞質を有する尿細管細胞を示す。矢印は、閉塞した尿細管を示す。 腎虚血に付した非治療ラットの腎臓(コントロール)、および腎虚血に付しカルジオトロフィン−1を投与したラットの腎臓(CT−1)の再灌流48時間後のヘマトキシリン−エオシン染色を表す写真。アスタリスクは、完全に剥離した尿細管を示す。矢尻は、炎症浸潤領域を示す。 抗CT−1抗体が、腎虚血/再灌流(I/R)に付したマウスの体重(グラム(g)で表す)に及ぼす効果。左腎茎を30分間微小血管クランプすることによって、虚血障害を誘発した。実験群は、シャム(n=6)、コントロール(n=10)、コントロールIgG(n=10)および抗CT−1(n=10)である。値は、n回の独立した実験の平均±SEMとして表す。統計的な有意差:*、抗CT−1群では時間0に対してp<0.05;#、コントロールIgG群では時間0に対してp<0.05。 抗CT−1抗体が、腎虚血−再灌流(I/R)に付したマウスの生存率(パーセンテージ(%)で表す)に及ぼす効果。実験群は、シャム(n=6)、コントロール(n=10)、コントロールIgG(n=10)および抗CT−1(n=10)である。値は、n回の独立した実験の平均±SEMとして表す。 抗CT−1抗体が、腎虚血/再灌流(I/R)に付したマウスの血漿尿素濃度(mg/dlで表す)に及ぼす効果。実験群は、シャム(n=6)、コントロール(n=10)、コントロールIgG(n=10)および抗CT−1(n=10)である。値は、n回の独立した実験の平均±SEMとして表す。統計的な有意差、*、異なる時間と時間0との対比ではZ>1.96(時間毎);#、各群とシャムとの対比ではZ>1.96。 抗CT−1抗体が、腎虚血−再灌流(I/R)に付したマウスの腎臓のマロンジアルデヒド(MDA)レベル(nmol/mgタンパク質で表す)に及ぼす効果。値は、n回の独立した実験の平均±SEMとして表す。実験群は、外科手術48時間後のシャム(n=6)、コントロール(n=10)、コントロールIgG(n=10)および抗CT−1(n=10)である。統計的な有意差、*、シャムに対してZ>1.96;#、コントロールに対してZ>1.96。 抗CT−1抗体が、腎虚血−再灌流(I/R)に付したマウスの腎臓のミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベル(ng/mgタンパク質で表す)に及ぼす効果。値は、n回の独立した実験の平均±SEMとして表す。実験群は、外科手術48時間後のシャム(n=6)、コントロール(n=10)、コントロールIgG(n=10)および抗CT−1(n=10)である。群毎の統計的な有意差:*、シャムに対してZ>1.96;#、コントロールに対してZ>1.96;&、コントロールIgGに対してZ>1.96。 抗CT−1抗体が、腎虚血−再灌流(I/R)に付したマウスの血漿中腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)レベル(pg/mlで表す)に及ぼす効果。値は、n回の独立した実験の平均±SEMとして表す。実験群は、外科手術後4時間のシャム(n=4)、コントロール(n=4)、コントロールIgG(n=8)および抗CT−1(n=8)である。群毎の統計的な有意差:*、各群、シャムに対してp<0.05。 抗CT−1抗体が、腎虚血−再灌流(I/R)に付したマウスの腎臓のカルジオトロフィン−1(CT−1)発現に及ぼす効果。腎臓のカルジオトロフィン−1/グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(CT−1/GAPDH)発現のデンシトメトリー分析(任意単位(AU)で表す)。値は、n回の独立した実験の平均±SEMとして表す。実験群は、外科手術48時間後のシャム(n=6)、コントロール(n=10)、コントロールIgG(n=10)および抗CT−1(n=10)である。群毎の統計的な有意差:*、シャムに対してp<0.05;#、コントロールに対してp<0.05;&、コントロールIgGに対してp<0.05。
驚くべきことに、本発明者らは、カルジオトロフィン−1(CT−1)が、急性腎障害、とりわけ腎毒性薬剤によって誘発されるか、または虚血/再灌流によって引き起こされる急性腎障害の予防および/または治療に有用であることを見出した。この効果は、CT−1の以下の能力によるものである:
− 腎排泄機能の低下を軽減して、クレアチニンクリアランスの減少を軽減すること(図4、図21および図28B);クレアチニン(図2、図14、図19および図28A)、尿素およびそれらの誘導体(図3および図20)などの代謝産物の血中蓄積を軽減すること;およびタンパク尿の出現を減少させること(図5および図22);
− 尿流の変化によって測定される多尿を軽減すること(図13および図23);
− 腎損傷の尿マーカー:N−アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)(図6および図25)、「腎障害分子1」(KIM−1)(図7)およびプラスミノーゲン活性化抑制因子1(PAI−1)(図7)によって測定される腎毒性を軽減すること;
− 腎毒性に関与する血管作用および糸球体作用から保護して、糸球体ろ過率(GFR)(図8)および腎血漿流量(RPF)(図9)の減少を防ぐこと;および腎血管抵抗(RVR)(図10)の増加を防ぐこと;
− 腎毒性薬剤によってもたらされる体重減少を軽減すること(図16);
− 組織学的研究で観察される腎組織損傷を軽減すること(図24、図32および図33);
− 虚血−再灌流によって引き起こされる酸化ストレスを緩和して、酸素フリーラジカルの生成を減少させること(図29);
− 炎症反応の活性化を軽減して、ミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)を減少させること(図30)、炎症誘発性サイトカイン(TNFα、IL−1β、IFN−γ)の生成を減少させること、ならびに血漿中IL−6およびIL−10レベルの減少を防ぐこと(図31)。
本発明の別の目的は、カルジオトロフィン−1を腎毒性薬剤と一緒に投与することにより、その薬理毒性学的プロファイルを改善し、したがってその使用および用途を改善することが可能になるように、腎毒性薬剤(造影剤、抗生物質、免疫抑制剤または抗新生物剤など)およびカルジオトロフィン−1を含む組成物を提供することである。
本発明の治療的使用
第一の態様では、本発明は、急性腎障害の予防および/または治療に用いられりカルジオトロフィン−1活性(CT−1)を誘導する化合物であって、前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、
(i)カルジオトロフィン−1(CT−1)、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体、
(ii)CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチド、
(iii)(ii)のポリヌクレオチドを含むベクター、および
(iv)カルジオトロフィン−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有するその機能的に同等な変異体を培地に分泌することができる細胞
からなる群から選択されるものである化合物に関する。
加えて、本発明は、急性腎障害の予防および/または治療用の医薬を調製するための、カルジオトロフィン−1活性(CT1)を誘導する化合物の使用であって、前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、
(i)カルジオトロフィン−1(CT−1)、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体、
(ii)CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチド、
(iii)(ii)のポリヌクレオチドを含むベクター、および
(iv)カルジオトロフィン−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体を培地に分泌することができる細胞
からなる群から選択されるものである使用に関する。
本発明はまた、急性腎障害を治療する方法であって、カルジオトロフィン−1活性(CT−1)を誘導する化合物を被験体に投与することを含み、前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、
(i)カルジオトロフィン−1(CT−1)、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体、
(ii)CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチド、
(iii)(ii)のポリヌクレオチドを含むベクター、および
(iv)カルジオトロフィン−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有するその機能的に同等な変異体を培地に分泌できる細胞
からなる群から選択されるものである方法に関する。
本明細書において使用される「カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物」という表現は、その投与がカルジオトロフィン−1活性(CT−1)の増加を引き起こす任意の化合物であると理解するべきであり、前記増加が、既存のCT−1の特異的活性の増加によって引き起こされるのか、またはCT−1、もしくはカルジオトロフィンと同じ機能を実質的に共有するその類似体の合成における増加によって引き起こされるのかという事実は関係ない。したがって、好ましい実施形態では、CT−1活性を誘導する作用物質は、CT−1それ自体である。
本発明において使用される「カルジオトロフィン1」または「CT−1」という用語は、インターロイキン6ファミリーに属するサイトカインであって、少なくともヘテロ二量体gp130/LIFRβからなるLIFR受容体複合体によって媒介されるシグナル伝達とリンクしてそれを活性化できるサイトカインに関する。本発明では、「CT−1」は、2011年4月9日付のアクセッション番号NP_001321.1のNCBIデータベース配列(これは、ヒトカルジオトロフィンのアイソフォーム1に対応する配列番号1の配列に対応する)によって定義されるタンパク質;または、2011年3月12日付のアクセッション番号NP_001136016.1のNCBIデータベース配列(これは、ヒトカルジオトロフィンのアイソフォーム2に対応する)によって定義されるタンパク質であると理解するべきである。好ましい実施形態では、CT−1は、ヒト由来CT−1、好ましくは配列番号1の配列である。
配列番号1
本発明は、機能的に同等なCT−1変異体の使用を意図する。本明細書において使用される「機能的に同等なCT−1変異体」は、本発明において記載されるCT−1関連機能(in vitroおよびin vivoの両方)の1つ又はそれ以上をCT−1と共有するすべての分子であって、最低限のアミノ酸配列同一性を有する分子と理解される。本発明では、「機能的に同等なCT−1変異体」という表現は、白血病抑制因子(LIF)、IL−11、IL−6、オンコスタチンM(OSM)、毛様体神経栄養因子(CNTF)またはカルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)などのその他のgp130リガンドを除外しようとするものである。本発明の「機能的に同等なCT−1変異体」は、CT−1と少なくとも60%の同一性を有しなければならない。
したがって、一つの実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体である。
CT−1変異体は天然のものおよび人工のもののいずれでもよい。
「自然変異体」という表現は、その他の種において自然に出現するすべての上記ヒトCT−1変異体(すなわち、CT−1のオルソログ)に関する。前記自然変異体としては、マウスCT−1(これは、2006年11月28日付のアクセッション番号Q541U3の配列、または2011年5月31日付のQ60753のNCBIデータベース配列、または196アミノ酸のアイソフォーム(これは、2011年5月31日付のアクセッション番号P83714のNCBIデータベース配列に対応する)に対応する);ラットCT−1(これは、2011年3月8日付のアクセッション番号Q63086の配列に対応する);マカクCT−1(これは、2010年6月1日付のアクセッション番号XP_001103315の配列に対応する);イヌCT−1(これは、2005年8月30日付のアクセッション番号XP_849072の配列に対応する);ウマCT−1(これは、2008年7月11日付のアクセッション番号XP_001915457の配列に対応する);およびウシ由来CT−1(これは、2010年11月14日付のアクセッション番号NP_001179313の配列に対応する)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明において使用するのに適切なCT−1自然変異体はまた、1つ以上のアミノ酸が挿入、置換または欠失した前記配列に由来するものでもよく、天然のアレル(ヒトCT−1の変異体A92Tなど)、選択的プロセシングから生じる変異体、ならびに自然に出現する分泌型および短縮型が挙げられる。
したがって、本発明において有用なCT−1は、それが自然に出現するCT−1と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含むならば、天然の配列でもよい。天然の配列の前記ポリペプチドは、天然から単離してもよいし、組換えおよび/または合成手段によって作製することもできる。したがって、本発明のCT−1は、CT−1またはその機能的に同等な変異体をコードするポリヌクレオチドを異種生物、例えば細菌、酵母もしくは昆虫または哺乳類細胞で発現させることによって得られる組換えタンパク質でもよい。前記組換えタンパク質は、後の精製を容易にするヒスチジンアミノ末端尾部との融合タンパク質として得てもよい。前記タンパク質の発現および精製は、最先端の技術水準で説明されている当業者に公知の方法にしたがって実施することができる。
好ましい実施形態では、CT−1はヒト由来のものであり、配列番号1の配列に対応する。別の好ましい実施形態では、CT−1はラット由来のものであり、好ましくはヒスチジンアミノ末端尾部との融合タンパク質、より好ましくは配列番号2である。
配列番号2
あるいは、CT−1は、組換えおよび/または合成手段によって得ることができる機能的に同等な人工のCT−1変異体でもよい。
本発明において意図されるCT−1変異体は、例えば少なくとも以下のCT−1機能のいくつかを示すが、それらに限定されない:
− 血清クレアチニンレベルを減少させて、クレアチニンクリアランスを増加させる能力。これらのパラメータを測定するのに適切な方法は、本発明の材料および方法のセクションに詳述されている。
− 尿素レベルおよびその誘導体を減少させる能力。これらのパラメータを測定するのに適切な方法は、本発明の材料および方法のセクションに詳述されている。
−タンパク尿を減少させる能力。このパラメータを測定するのに適切な方法は、本発明の材料および方法のセクションに詳述されている。
− 多尿を軽減する能力(これは、本発明の材料および方法のセクションに詳述されているように、尿流の変化によって測定できる)。
− 腎損傷の尿マーカー、例えばN−アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)(本発明の材料および方法のセクションに詳述されているように測定される)、または「腎障害分子1」(KIM−1)分子およびプラスミノーゲン活性化抑制因子1(PAI−1)(これは、本発明の材料および方法のセクションに示されているように、ウエスタンブロットによって測定できる)の生成を減少させる能力。
− 糸球体ろ過率(GFR)および腎血漿流量(RPF)を増加させる能力、および腎血管抵抗(RVR)を減少させる能力(これは、最先端の技術水準で説明されている方法、例えば本発明の材料および方法のセクションに示されているものによって測定できる)。
− 腎臓切片の組織学的研究によって測定される腎組織損傷を軽減する能力(これは、最先端の技術水準で説明されている方法、例えば本発明の材料および方法のセクションに示されているものによって測定できる)。
− 酸素フリーラジカルの生成を減少させる能力(これは、最先端の技術水準で説明されている方法、例えば本発明の材料および方法のセクションに示されているものによって測定できる)。
− ミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)によって測定される炎症誘発性シグナル伝達経路の活性化を防止する能力(これは、本発明の材料および方法のセクションに詳述されている方法によって測定できる)。
− 炎症誘発性サイトカイン(TNFα、IL−1β、IFN−γ)の生成を減少させる能力、ならびに血漿IL−6およびIL−10レベルを増加させる能力(これは、本発明の材料および方法のセクションに詳述されている方法によって測定できる)。
加えて、本発明に関して意図されるCT−1の機能的に同等な変異体は、様々な上記天然CT−1変異体と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、99%の類似性または同一性を示すポリペプチドを含む。
2つの配列間の同一性のパーセンテージは、比較される2つの配列が共有する同一アミノ酸の割合を示し、類似性のパーセンテージは、類似アミノ酸残基(アルギニンおよびリシン、またはアスパラギン酸およびグルタミン酸などのアミノ酸残基を同等であると考える)の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、特定領域についてアライメントした2つの配列を比較し、両配列における同一アミノ酸の位置の数を決定して一致位置数を求め、この位置数を比較セグメントの総位置数で割り、その結果に100を乗じることによって計算する。2つのポリペプチド間の同一性および類似性の程度は、コンピュータで実行される当業者に周知のアルゴリズムおよび方法を使用して決定する。2つのアミノ酸配列間の同一性および類似性は、好ましくは、BLASTPアルゴリズム(BLAST Manual,Altschul,S.et al.,NCBI NLM NIH Bethesda,Md.20894,Altschul,S.,et al.,J.,1990,Mol.Biol.215:403−410)を使用して決定する。
本発明の別の実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチドである。一つの実施形態では、機能的に同等なCT−1変異体は、CT−1と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、99%の同一性を有する。
本発明において使用される用語「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチドおよび/またはデオキシリボヌクレオチドによって形成される任意の長さのポリマー型ヌクレオチドに関する。この用語は、一本鎖および二本鎖ポリヌクレオチド、ならびに改変ポリヌクレオチド(メチル化、保護化されたものなど)を含む。
CT−1活性を誘導できる作用物質として使用するのに適切なポリヌクレオチドとしては、その配列がGenEMBLデータベースにおいてアクセッション番号BC064416(2008年10月15日付のバージョン9)で記載されているもの(これは、アクセッション番号BC036787(2009年8月12日付のバージョン9)のヒトカルジオトロフィン転写産物の変異体1に対応する)に対応するポリヌクレオチド、GenEMBLデータベースにおいてアクセッション番号D78591(2009年1月12日付のバージョン4)で記載されている配列(これは、ラッタス・ノルベキカス(Rattus norvegicus)(ラット)のカルジオトロフィン1をコードするポリヌクレオチドに対応する)、GenEMBLデータベースにおいてアクセッション番号AY518205(2009年1月12日付のバージョン3)で記載されている配列(これは、ラッタス・ノルベキカス(Rattus norvegicus)(ラット)のカルジオトロフィン2をコードするポリヌクレオチドに対応する)、GenEMBLデータベースにおいてアクセッション番号U18366(2009年1月12日付のバージョン4)で記載されている配列(これは、ムス・ムスクルス(Mus musculus)(マウス)のカルジオトロフィン1をコードするポリヌクレオチドに対応する)、GenEMBLデータベースにおいてアクセッション番号AB125661(2009年1月12日付のバージョン2)で記載されている配列(これは、ムス・ムスクルス(Mus musculus)(マウス)のカルジオトロフィン2をコードするポリヌクレオチドに対応する)が挙げられるが、これらに限定されない。
あるいは、CT−1活性を誘導できる作用物質としては、「機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチド」が挙げられる。前記ポリヌクレオチドは、CT−1活性を有するポリペプチド(具体的な配列によって上に定義したもの)の変異体であって、CT−1と少なくとも60%の同一性を有する変異体をコードできるすべてのポリヌクレオチドである。前記ポリヌクレオチドは、上記配列に関して1個または数個のヌクレオチドが挿入、欠失または置換した先に定義したポリヌクレオチドから得られる。好ましくは、機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチドは、その配列により上記ポリヌクレオチドと高度に制限された条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドである。高度に制限されたハイブリダイゼーションの典型的な条件としては、6XSSC(1XSSC:0.15MNaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム)および40%ホルムアミド中、42℃での14時間のインキュベーション、続いて0.5XSSC、0.1%SDSを使用して60℃での1回または数回の洗浄サイクルが挙げられる。あるいは、高度に制限された条件としては、6XSSC中、約50〜55℃の温度でのハイブリダイゼーション、および1〜3XSSC中、68℃の温度での最終洗浄を含むものが挙げられる。中度に制限された条件は、0.2または0.3M NaCl中、約50〜約65℃の温度でのハイブリダイゼーション、続いて0.2XSSC、0.1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中、約50〜約55℃での洗浄を含む。
好ましくは、CT−1活性を誘導できる作用物質がポリヌクレオチドである場合、それは、発現調節領域に機能的に結合している。本発明において使用される調節配列は、核プロモーター配列でもよいし、あるいはエンハンサー配列および/または異種核酸配列の発現を増加させるその他の調節配列でもよい。プロモーターは、構成的、組織特異的または誘導性でもよい。異種核酸配列の恒常的な発現が望まれる場合、構成的プロモーターが使用される。周知の構成的プロモーターとしては、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターなどが挙げられる。最先端の技術水準では、構成的プロモーターの多数のその他の例が周知であり、本発明の実施に使用できる。異種核酸配列の制御された発現が望まれる場合、誘導性プロモーターを使用しなければならない。非誘導状態では、誘導性プロモーターは、「サイレント」である。「サイレント」とは、誘導因子の非存在下では、異種核酸配列の発現がほとんど検出されないかまたは全く検出されないことを言うが、誘導因子の存在下では、異種核酸配列の発現が起こる。多くの場合、誘導因子の濃度を変化させて、発現レベルを制御することが可能である。例えば、誘導性プロモーターがより強くまたはより弱く刺激されるように誘導因子の濃度を変化させることによって発現を制御することにより、異種核酸配列の転写産物の濃度に影響を及ぼすことが可能である。異種核酸配列が遺伝子をコードする場合、合成されるタンパク質の量を制御することが可能である。このように、治療薬の濃度を変化させることが可能である。周知の誘導性プロモーターの例は、エストロゲンもしくはアンドロゲンプロモーター、メタロチオネインプロモーターまたはエクジソンに応答するプロモーターである。最先端の技術水準では、多数のその他の例が周知であり、本発明の実施に使用できる。構成的および誘導性プロモーター(これらは、通常、多種多様な細胞型または組織型で機能する)に加えて、特異的組織プロモーターを使用して、細胞または組織特異的に異種核酸配列の発現を達成できる。
本発明の別の実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、先に定義したポリヌクレオチド(すなわち、CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する機能的に同等なCT−1変異体をコードするもの)を含むベクターである。一つの実施形態では、機能的に同等なCT−1変異体は、CT−1と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、99%の同一性を有する。前記ポリヌクレオチドの挿入に適切なベクターは、原核生物発現ベクターに由来するベクター、例えばpUC18、pUC19、pBluescriptおよびそれらの誘導体、mp18、mp19、pBR322、pMB9、ColE1、pCRl、RP4、ファージおよび「シャトル」ベクター、例えばpSA3およびpAT28、酵母発現ベクター、例えば2ミクロンプラスミド型のベクター、インテグレーションプラスミド、YEPベクター、動原体プラスミドなど、昆虫細胞発現ベクター、例えばpAC系ベクターおよびpVL系ベクター、植物発現ベクター、例えばpIBI、pEarleyGate、pAVA、pCAMBIA、pGSA、pGWB、pMDC、pMY、pORE系のベクターなど、ならびにウイルスベクター(アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルスおよびレトロウイルス、特にレンチウイルス)に基づく高等真核生物細胞発現ベクター、ならびに非ウイルスベクター、例えばpSilencer4.1−CMV(Ambion)、pcDNA3、pcDNA3.1/hyg、pHCMV/Zeo、pCR3.1、pEFl/His、pIND/GS、pRc/HCMV2、pSV40/Zeo2、pTRACER−HCMV、pUB6/V5−His、pVAXl、pZeoSV2、pCI、pSVL、pKSV−10、pBPV−1、pML2dおよびpTDT1である。
別の実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、カルジオトロフィン−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有するその機能的に同等な変異体を培地に分泌することができる細胞である。一つの実施形態では、機能的に同等なCT−1変異体は、CT−1と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、99%の同一性を有する。カルジオトロフィン−1またはその機能的に同等な変異体の発現に適切な細胞としては、心筋細胞、脂肪細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(BおよびT細胞)、肥満細胞、好酸球、血管内膜細胞、様々な器官の単離細胞の、好ましくはランゲルハンス島から単離された細胞の一次培養液、肝細胞、白血球(単核白血球を含む)、間葉、臍帯または成人(の皮膚、肺、腎臓および肝臓)、破骨細胞、軟骨細胞およびその他の結合組織細胞が挙げられるが、これらに限定されない。樹立細胞株、例えばジャーカットT細胞、NIH−3T3、CHO、Cos、VERO、BHK、HeLa、COS、MDCK、293、3T3細胞、C2C12骨髄芽球およびW138細胞も適切である。
当業者であれば、カルジオトロフィン−1またはその機能的に同等な変異体を培地に分泌することができる細胞は、患者の中でより長い有効寿命を有するように、微小粒子またはマイクロカプセルを形成するのが見られ得ることを認識するであろう。本発明の微小粒子対象を形成するのに適切な材料としては、細胞支持体として作用する治療薬の連続分泌を可能にする生体適合性ポリマー材料が挙げられる。したがって、前記生体適合性ポリマー材料は、例えば、熱可塑性ポリマーまたはヒドロゲルポリマー(hydrogen polymer)でもよい。熱可塑性ポリマーには、アクリル酸、アクリルアミド、2−アミノエチルメタクリレート、ポリ(テトラフルオロエチレン−コヘキサフルオロプロピレン)、メタクリル−(7−クマロキシ)エチルエステル酸、N−イソプロピルアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアミドアミン、ポリ(アミノ)−p−キシリレン、ポリ(クロロエチルビニルエーテル)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(カーボネート尿素)ウレタン、ポリ(カーボネート)ウレタン、ポリエチレン、ポリエチレンおよびアクリルアミドのコポリマー、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(乳酸−グリコール酸)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(ガンマ−メチル、L−グルタメート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリピロール、ポリスチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、超高分子量のポリエチレン、6−(p−ビニルベンズアミド)−ヘキサン酸N−p−ビニルベンジル−D−マルトンアミドならびに前記ポリマーの1つ以上を含有するコポリマーがある。ヒドロゲル型ポリマーには、アルギネート、アガロース、コラーゲン、デンプン、ヒアルロン酸、ウシ血清アルブミン、セルロースおよびその誘導体、ペクチン、コンドロイチン硫酸、フィブリンおよびフィブロインの天然材料、ならびに合成ヒドロゲル、例えばSepharose(登録商標)およびSephadex(登録商標)がある。
前記ポリマーの一部はやや不安定であり、比較的多孔性であることに加えてゲル状であるという特徴を失う傾向があり、抗体がポリマーの内部に侵入して細胞を損傷し得るという結果を招くことが、最先端の技術水準では公知である。これらの理由により、本発明の微小粒子は、場合により、粒子に対して安定性を付与し、抗体不透過性のバリアを形成する半透膜によって包囲されていてもよい。半透膜は、細胞の生存に必要なすべての溶質の流入を許容する膜であって、微小粒子内に含まれる細胞によって産生される治療タンパク質の流出を可能にするが、微小粒子をハウジングしている生物が引き起こす免疫反応から細胞が保護されるように実質的に抗体不透過性の膜であると理解するべきである。半透膜を形成するのに適切な材料は、生体液に不溶性の材料、好ましくはポリアミノ酸、例えばポリ−L−リシン、ポリ−L−オルニチン、ポリ−L−アルギニン、ポリ−L−アスパラギン、ポリ−L−アスパラギン酸、ポリ−ベンジル−L−アスパルテート、ポリ−S−ベンジル−L−システイン、ポリ−ガンマ−ベンジル−L−グルタメート、ポリ−S−CBZ−L−システイン、ポリ−ε−CBZ−D−リシン、ポリ−δ−CBZ−DL−オルニチン、ポリ−O−CBZ−L−セリン、ポリ−O−CBZ−D−チロシン、ポリ(γ−エチル−L−グルタメート)、ポリ−D−グルタミン酸、ポリグリシン、ポリ−γ−N−ヘキシル−L−グルタメート、ポリ−L−ヒスチジン、ポリ(α,β−[N−(2−ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド])、ポリ−L−ヒドロキシプロリン、ポリ(α,β−[N−(3−ヒドロキシプロピル)−DL−アスパルトアミド])、ポリ−L−イソロイシン、ポリ−L−ロイシン、ポリ−D−リシン、ポリ−L−フェニルアラニン、ポリ−L−プロリン、ポリ−L−セリン、ポリ−L−トレオニン、ポリ−DL−トリプトファン、ポリ−D−チロシンまたはそれらの組み合わせなどである。
カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、急性腎障害の予防および/または治療用の医薬を調製するのに適切である。
「医薬」は、カルジオトロフィン−1活性(CT−1)を誘導する本発明の化合物を含む医薬組成物と理解される。
「予防」は、カルジオトロフィン−1活性(CT−1)を誘導する本発明の化合物またはそれを含有する医薬を、疾患の初期もしくは早期に、または好ましくはその発症を防ぐために投与することと理解される。本発明の好ましい実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、急性腎障害の予防に使用される。
「治療」という用語は、カルジオトロフィン−1活性(CT−1)を誘導する本発明の化合物またはそれを含有する医薬を、臨床徴候が現れる前または後に、疾患進行を制御するために投与することを示すのに使用される。疾患進行の制御は、所望のまたは臨床上有益な結果と理解され、症候の軽減、罹患期間の減少、病的症状の安定化(具体的には、さらなる悪化の回避)、疾患進行の遅延、病的症状の改善、および寛解(部分的および完全の両方)が挙げられるが、これらに限定されない。疾患進行の制御はまた、治療が施されなかった場合の予想生存期間と比較した、生存期間の延長を含む。
本明細書において使用される「急性腎障害」(AKI)という用語は、腎臓の解剖学的構造についてのすべての種類の損傷、またはその灌流による変化であって、急性腎不全(AKF)につながる、すなわち、腎機能(これは、腎臓が、電解質を失うことなく老廃物を排泄して尿を濃縮する能力と理解されている)の突然喪失を引き起こすものと理解される。一つの実施形態では、AKFは、Mehta RL,et al.Crit Care.2007;11:R31によって定義されている障害であると理解され、そこでは、48時間以内に、
a)血清クレアチニンレベルの増加(絶対値、0.3mg/dL;パーセンテージ、50%;または定常レベルに対して1.5倍の増加)、または
b)乏尿(6時間よりも長い間、<0.5mL/kg/時)
につながる少なくとも1つの腎機能変化が観察される場合に、AKFが発症すると考えられている。
AKFを定義するのに使用される別のシステムはRIFLE基準であり、血清クレアチニンレベルの増加および尿排泄の減少に基づいて腎機能不全の重症度を説明するものである(Bellomo R,et al.Crit Care.2004;8:R204−R212;Bellomo R,et al.Intensive Care Med.2004;30:33−37;Kellum JA,et al.Curr Opin Crit Care.2002;8:509−514)。
急性腎障害の一次的原因によれば、これは、腎前性、腎性および腎後性の急性腎障害に分類され得る。
一つの実施形態では、急性腎障害は、腎前性原因による急性腎障害および腎性原因による急性腎障害の群から選択される;好ましくは、それは、腎性原因による急性腎障害である。
「腎前性原因による急性腎障害」は、腎臓における正常な灌流の減少に続発する腎障害と理解され、腎性または腎外性の喪失、体液分離(sequestration of fluid)による、または心不全、肝硬変もしくは敗血症に続発する不適切な灌流圧による容積減少によってもたらされ得る。それはまた、腹部手術または腎臓移植における大動脈または腎動脈のクランピングに続発する腎虚血の結果であり得る(虚血/再灌流による損傷)。原因に対して早期に対処すれば、前記損傷は可逆性である。腎前性原因による急性腎障害の最適な実験モデルは、齧歯類の腎動脈を短時間クランピングして、虚血/再灌流による損傷を引き起こすことである。表1は、腎前性原因による急性腎障害の原因候補の非限定的なリストを示す。
「腎性原因による急性腎障害」は、腎臓系の解剖学的構造における固有の腎障害と理解され、解剖学的には、尿細管性、間質性、糸球体性および血管性に分類できる。
− 尿細管損傷:急性尿細管壊死(ATN)は、虚血または毒性機序による腎尿細管の病変である。すなわち、それは、腎前性媒体(虚血)への長時間曝露、または毒素(腎毒素)による直接損傷の結果である。最も多い原因は虚血であり腎前性AKIの原因が長時間にわたって維持される場合に起こる。原因が腎毒素である場合、抗生物質(アミノグリコシド、セファロスポリン)、放射線造影剤、NSAID、麻酔薬、内因性毒素(横紋筋融解によるミオグロビン尿症、溶血によるヘモグロビン尿症、高尿酸血症、高カルシウム血症)が関与していることが最も多い。ATNの典型的な「自己限定性」進行は、血清クレアチニンレベルが急増し(損傷段階)、続いて安定化し(プラトー段階)、そして最終的には7〜21日間でこれらの測定値が減少する(回復段階)。このパターンは、尿細管細胞の損傷および死亡、それらの再生、および腎尿細管機能の回復と相関している。しかしながら、血清クレアチニンレベルの変動は多くの変動要因に依存するので、すべてのATN症例には存在しない。最も広範に使用されているATNの実験モデルは、アミノグリコシドまたはシスプラチンなどの腎毒性薬物をラットに投与するか、または硝酸ウラニルなどの化合物を投与することである(Lopez−Novoa JM,et al.Kidney Int.2011;79:33−45)。
− 間質損傷:急性間質性腎炎(AIN)は、発熱、発疹、白血球増加症および好酸球増加症に関する腎機能の低下によって引き起こされる。急性間質性腎炎は、典型的には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、抗生物質、利尿薬などの薬物によって誘発されるが、いくつかの感染症(レジオネラ、レプトスピラ、サイトメガロウイルス、カンジダ)および新生物障害もこの症状に関連している。最も広範に使用されている実験モデルは、NSAID(インドメタシン)をラットに投与することである(Varghese J,et al.Eur J Pharmacol.2009;614:114−121)。
− 糸球体損傷:赤血球、タンパク尿またはその両方の存在は、糸球体疾患の存在を示唆している。血尿、赤血球の存在、高血圧および中程度のタンパク尿は、腎炎のプロセスを示唆している(すなわち、急性糸球体腎炎)。糸球体損傷のその他の原因は、悪性高血圧症、血管炎、溶血性尿毒症症候群、血栓性血小板減少性紫斑病、妊娠中毒症および強皮症である。最も広範に研究されている急性糸球体腎炎の実験モデルは、抗Thy抗体(メサンギウム増殖性腎炎)またはアドリアマイシンをラットに投与することである。
− 血管損傷:血管障害に続発する急性腎障害は、診断が困難であり得る。この種類の損傷の原因は、動脈硬化性プラーク、血栓症または塞栓症による腎動脈閉塞;および、血栓症または圧迫による腎静脈閉塞である。この種類の損傷の周知の実験モデルはない。
「腎後性原因による急性腎障害」は、尿路閉塞の結果である腎障害と理解され、尿路内もしくは腎臓内(石、結晶沈着、凝血塊、腫瘍)または泌尿器系外もしくは腎臓外(腫瘍、後腹膜線維化症、結石)で起こり、生成された尿の排泄を妨げて、逆に伝わる圧力を増加させ、糸球体ろ過を障害する。腎後性原因による急性腎障害の最も広範に研究されているモデルは、尿道口を片側結紮したラットである(Grande MT and Lopez−Novoa JM.Nat Rev Nephrol.2009;5:319−328)。別の実施形態では、急性腎障害は、腎後性原因によるものである。
好ましい実施形態では、急性腎障害は腎前性原因によるものであり、好ましくは、被験体を虚血に曝露することによって引き起こされる急性腎障害、および虚血後再灌流によって引き起こされる急性腎障害から選択される。
「被験体を虚血に曝露することによって引き起こされる急性腎障害」は、腎組織の虚血の結果として被験体で引き起こされる腎障害と理解される。「虚血」という用語は、血流量が一時的に減少し、その結果、酸素、栄養素の供給、さらに腎臓の代謝産物の排泄が減少した結果として腎臓で引き起こされる組織損傷および炎症反応に用いられる。
「虚血後再灌流によって引き起こされる急性腎障害」は、血流量が一時的に減少し(虚血)、続いて虚血期間後に器官中の前記血流量が回復した(再灌流)結果として被験体で引き起こされる腎障害と理解される。
本発明の別の好ましい実施形態では、急性腎障害は、虚血または虚血/再灌流によって引き起こされるもの以外の任意の急性腎障害である。
本発明の好ましい実施形態では、急性腎障害は、好ましくは、腎毒性薬剤によって引き起こされる腎性原因によるものである。
本発明のさらにより好ましい実施形態では、急性腎障害は、腎毒性薬剤によって引き起こされる。
本発明に関し「腎毒性薬剤」とは、腎臓系において毒性をもたらすことができる任意の物質、すなわち、腎臓系に置かれると、器官病変につながるその形態学的および生理学的な面の障害および平衡失調をもたらすことができる任意の物質と理解される。腎毒性薬剤としては、薬理学的薬剤、診断剤および毒性剤、例えば環境化学物質、動物性毒素および植物性毒素、乱用薬物などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明によって意図される腎毒性薬理学的薬剤としては、鎮痛薬(パラセタモール、フェナセチン、ジピロン)および非ステロイド性抗炎症薬(アスピリン、インドメタシン);抗生物質、例えばセファロスポリン(セファロリジン)、テトラサイクリン、バンコマイシン、カルバペネム(イミペネム)、ポリミキシンB、リファンピシンおよびアミノグリコシド、バイオマイシンおよびカプレオマイシン、スルホンアミド、ペンタミジン;抗真菌剤(アンフォテリシンB);化学療法剤および抗新生物剤、例えばシスプラチン、シクロホスファミド、メトトレキサート、5−フルオロウラシル;免疫抑制剤、例えばシクロスポリンA、ならびに薬理学的薬剤の相互作用が挙げられるが、これらに限定されない。腎毒性診断剤としては、X線造影剤もしくは放射線造影剤(馬尿酸ヨウ素、イオン性造影剤)または画像診断剤が挙げられるが、これらに限定されない。腎臓系に影響を与える毒性剤としては、除草剤として使用されるハロゲン化炭化水素、金属および特に重金属(水銀、カドミウム、鉛、クロム)、マイコトキシン、有機溶媒(ガソリン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、エチレングリコール)、殺虫剤(パラコート、フェノキシ酢酸誘導体、ヒ素、ストリキニーネ、塩素酸カリウムおよびホウ酸ナトリウム)、酸化ケイ素を含む環境化学物質;ヘビ(タイガースネーク、ラッセルクサリヘビまたはガラガラヘビ)クモ類(ロクソスセレス・ルフェッセンス(Loxosceles Ruferens)またはイトグモもしくはコーナークモ)に由来する動物性毒素;毒性の野菜または植物(ダフネ・メゼレウム(Daphne mezereum)、アクタエア・スピカタ(Actanea spicata)、ジュニペルス・コムムニス(Juniperus communis)、ラムヌス・フラングラ(Rhamnus franqula)、ラムヌス・カタルチカ(Rhamnus catharticus)、リキヌス・コムムニス(Ricinus commnunis))、真菌(アマニタ ファロイデス(Amanita Phalloides));乱用薬物(ヘロイン、コカイン);ウイルスおよび原生動物(ハンタウイルス、プラスモジウム・マラリアエ(Plasmodium malariae)、プラスモジウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum))が挙げられるが、これらに限定されない。
さらにより好ましい実施形態では、腎毒性薬剤は、造影剤、抗生物質、免疫抑制剤および抗新生物剤の群から選択されるものである。
造影剤の使用を必要とする多数のプロセスおよび診断研究を考慮すると、人口の多くの割合が、今日では造影剤誘発性腎症を患うリスクがある。
本発明に関し「造影剤誘発性腎症」という表現は、造影剤の投与によってもたらされる腎障害に関する。これは、病院内における腎障害の第3の原因であり、血清クレアチニンレベルが、造影剤の投与72時間以内に25%以上(0.5mg/dl)増加することによって定義されている(Solomon R.et al.N Engl J Med.1994;331:1416−1420;Briguori C.et al.Circulation.2007;115:1211−1217)。関連リスク因子は、高齢、糖尿病、慢性腎疾患、多発性骨髄腫および容積減少である。造影剤誘発性腎症の最も広範に研究されている実験モデルは、X線造影剤を感作ラットに投与することである。感作は、細胞外容積を減少させるか、または低用量の腎毒素を投与することによって予め行ってもよい。したがって、別の態様では、本発明の方法は、AKIを患うように感作された被験体において行われる。好ましい実施形態では、AKIを患うように前感作された被験体は、準毒性用量の腎毒性薬剤で治療されている。好ましい実施形態では、被験体を治療するのに用いられた腎毒性薬剤は、抗生物質である。好ましい実施形態では、抗生物質は、アミノグリコシドおよびセファロスポリンの群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、アミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルミシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、シソマイシン、ネオマイシンおよびそれらの組み合わせの群から選択される。
本発明の一つの実施形態では、腎毒性薬剤は、造影剤である。
本発明の文脈における「造影剤」という用語は、個体に投与された後に検出され得る生体適合性化合物であって、in vivo画像診断法に使用され得る生体適合性化合物に関する。前記造影剤の使用は、体内の構造または液体の可視性を向上させて、画像の相違部分の区別を容易にし、それらの相違領域間の「コントラスト」を増加させる。したがって、「造影剤」という用語は、前記薬剤の非存在下でも、生成され得る画像の質を高めるのに使用される薬剤(例えば、磁気共鳴の場合のように)、および画像生成に必須の薬剤(例えば、シンチグラフィの場合のように)を包含する。適切な造影剤としては、シンチグラフィ用、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)用、陽電子放出断層撮影(PET)用、ラマン分光法用、磁気共鳴画像診断(MR)用、および光学画像診断用の造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。前記造影剤を使用して調べる場合には、構造により最良に分配される経路によって、消化管の場合は経口または浣腸、血管、器官および組織を観察するためには、気道による吸入または注射によって投与される。
造影剤としては、11C、13N、15O、18F、82Rb、62Cuおよび68Gaなどの陽電子放射体で通常は標識されている放射性薬物が挙げられる。SPECTは、123I、99mTcおよび111Inなどのγ放射体を主に使用する。シンチグラフィの部類(陽電子放出断層撮影(PET)、単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT))は、放射性核種で標識された放射性トレーサの位置および濃度をマッピングする断面画像診断技術である。PETおよびSPECTを使用して、放射性核種を位置決定および特性決定し、代謝活性を測定できる。PETおよびSPECTは、細胞生存などの細胞レベルの情報に関する情報を提供する。PETでは、患者は、陽電子を放出する微放射性物質(この物質は体を通過するので追跡できる)を摂取するか、または前記微放射性物質を注射される。一般的な用途では、例えば、陽電子放射体が結合したグルコースを患者に投与し、患者が様々な課題を行う際に患者の脳を管理する。脳は働く際にグルコースを使用するので、PET画像は、どの領域において脳の活動が活発であるかを示す。本発明のある種の実施形態では、細胞は、PETまたはSPECTのin vivo画像診断の場合にはex vivoで標識される。単光子放出コンピュータ断層撮影またはSPECTは、PETと非常に類似している。2つの間の主な違いは、SPECTは、陽電子放出物質の代わりに、低エネルギーの光子を放出する放射性トレーサを使用することである。
CT画像用の造影剤としては、例えば、ヨウ化または臭素化造影剤が挙げられる。これらの薬剤の例としては、イオタラメート、イオヘキソール、ジアトリゾエート、イオパミドール、エチオド−ルまたはイオパノエートが挙げられる。ガドリニウム剤がCT造影剤として使用されることも記載されている(例えば、Henson JW,et al.AJNR Am J Neuroradiol.2004;25:969−72を参照のこと)。例えば、ガドペンテート(Gadpentate)剤がCT造影剤として使用されている(Strunk HM and Schild H.Eur Radiol.2004;14:1055−62で考察されている)。コンピュータ断層撮影(CT)は、画像診断の一つの形式であると考えられる。いくつかの角度から時には1000回を超えて一連のX線写真を撮影し、次いでコンピュータを用いてそれらを合わせることにより、CTは、体の任意の一部の3次元画像を構築することを可能にする。コンピュータは、2次元断面を任意の角度からおよび任意の深さで示すようにプログラムされる。CTでは、最初のCTスキャナーが診断用ではない場合、本明細書において記載されるものなどの放射線不透過性造影剤の静脈内注射が、軟組織塊を同定および描写するのに役立ち得る。
光学画像用の造影剤としては、例えば、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、インドシアニングリーン、オレゴングリーン、オレゴングリーン誘導体、ローダミングリーン、ローダミングリーン誘導体、エオシン、エリスロシン、テキサスレッド、テキサスレッド誘導体、マラカイトグリーン、Nanogold(登録商標)モノ(スルホスクシニイミジルエステル)、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン、ピリジルオキサゾール誘導体、カスケードイエロー色素、ダポキシル色素および本明細書において開示されるいくつかのその他の蛍光性化合物が挙げられる。
磁気共鳴用の造影剤としては、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)からなる群より選択される金属複合体が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明は、それらの腎毒性造影剤そしてそれ故に急性腎障害の潜在的な原因因子を特に対象とする。
好ましい実施形態では、造影剤は、ヨウ素含有造影剤、臭素含有造影剤、バリウム含有造影剤、ガドリニウム含有造影剤およびそれらの組み合わせの群から選択される。
好ましい実施形態では、造影剤は、ヨウ素を含有する。ヨウ素含有造影剤またはヨウ化造影剤は、一般に、放射線検査、例えば排泄性腎盂造影、卵管造影、静脈造影、CT血管造影、血管CTおよび関節CT、とりわけ静脈X線造影に使用される。本発明によって意図されるヨウ化造影剤としては、イオン性モノマー(ジアトリゾ酸またはアミドトリゾ酸およびそれらの塩、メトリゾ酸およびその塩、イオタラム酸およびその塩、ヨーダミド、イオキシタラム酸およびその塩、イオパノ酸およびその塩、イオグリシン酸およびその塩、アセトリゾ酸およびその塩、イオカルミン酸およびその塩、メチオダール)、イオン性ダイマー(イオキサグル酸およびその塩、イオトロクス酸およびその塩)、非イオン性モノマー(イオヘキソール、イオパミドール、イオベルソール、イオビトリドール、イオプロミド、メトリザミド、イオペントール)、非イオン性ダイマー(イオジキサノール、イオトロラン、イオキシラン、イオメプロール)および非水溶性(プロピリオドン)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、前記化合物および/またはそれらの薬学的に許容し得る塩の組み合わせを含む。前記ヨウ化造影剤に適切な塩は、任意の種類の薬学的に許容し得る塩、しかし好ましくはナトリウム塩またはメグルミン塩であるが、これらに限定されない。本発明によって意図されるヨウ化造影剤の非限定的な塩の例は、ジアトリゾ酸ナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリゾ酸ナトリウム、メトリゾ酸メグルミン、イオタラム酸ナトリウム、イオタラム酸メグルミン、イオキサグル酸ナトリウム、イオキサグル酸メグルミンなどである。
本発明の好ましい実施形態では、ヨウ素含有造影剤は、ジアトリゾ酸(またはアミドトリゾ酸)およびその塩、メトリゾ酸およびその塩、イオキサグル酸およびその塩、イオタラム酸およびその塩、イオパミドール、イオヘキソール、イオキシラン、イオプロミド、イオベルソール、イオジキサノール、メトリザミドならびにそれらの組み合わせの群から選択される;好ましくは、それは、1つ以上のジアトリゾ酸塩(アミドトリゾエートとしても公知である)である。アミドトリゾエートは、胆嚢、胆管および脾臓の尿路造影および検査などの多種多様の方法に使用されている。アミドトリゾ酸ナトリウムおよびアミドトリゾ酸メグルミンなどのジアトリゾ酸塩混合物は、通常、有害効果を最小化し、検査の質を向上させるのに好ましい。さらにより好ましい実施形態では、ヨウ素含有造影剤は、ジアトリゾ酸ナトリウムおよびジアトリゾ酸メグルミンの組み合わせである。
別の実施形態では、造影剤は、臭素を含有する。本発明に含まれる臭素含有造影剤または臭素化造影剤は、国際公開第WO93/08122号、欧州特許出願公開第EP1186305A1号、仏国特許出願公開第FR2736051A1号、欧州特許出願公開第EP073715A1号、欧州特許出願公開第EP074307A1号、欧州特許出願公開第EP074309A1号、欧州特許出願公開第EP0118348A1号、仏国特許出願公開第FR2541272A1号の特許出願に開示されているものなどの造影剤;パーフルオロオクチルブロミド(C8BrF17)、パーフルオロヘキシルブロミドなどの臭素化フッ化炭素であるが、これらに限定されない。本発明はまた、前記臭素含有造影剤および/またはその薬学的に許容し得る塩の混合物を意図する。
別の実施形態では、造影剤は、バリウム、好ましくは硫酸バリウムを含有する。硫酸バリウムは、胃腸管を示すのに使用される金属塩である。単一もしくは二重造影試験またはコンピュータ支援断層撮影において、それを使用できる。
別の実施形態では、造影剤は、ガドリニウムを含有する。ガドリニウム含有造影剤は、限定されないが、ガドペンテト酸、ガドジアミン、ガドテル酸、ガドテリドール、ガドペンテート(Gadpentate)、ガドジアミド、ガドベン酸、ガドホスベセット、ガドベルセタミド、ガドキセト酸、ガドブトロール、ガドコレチン酸およびガドデンテラートである。本発明はまた、適切な任意の種類の薬学的に許容し得る塩、好ましくはナトリウム塩およびメグルミン塩である前記ガドリニウム含有造影剤の塩を意図する。
別の実施形態では、腎毒性薬剤は、抗生物質である。「抗生物質」は、生物によって産生される化学物質またはその合成誘導体であって、ある種のクラスの感受性微生物、一般には細菌を低濃度で殺傷または抑制するものと理解されるが、いくつかの抗生物質は、真菌または原生動物による感染症の治療にも使用される。抗生物質は、微生物によって引き起こされる感染症を治療するために、ヒト、動物または園芸の薬剤に使用される。本発明に含まれる抗生物質は、アミノグリコシド抗生物質、アンサマイシン、カルバセフェム(carbacefem)、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、マクロライド、モノバクタム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリンおよびその他のもの、例えばアルスフェナミン、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、リンコマイシン、エタンブトール、ホスホマイシン、フシジン酸、フラゾリドン、イソニアジド、リネゾリド、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、プラテンシマイシン、ピラジナミド、キヌプリスチン/ダルホプリスチン、リファンピンまたはリファンピシン、チニダゾール、バイオマイシンおよびカプレオマイシン;好ましくは、セファロスポリン、テトラサイクリン、糖ペプチド、カルバペネム、ポリペプチド、リファンピシン、アミノグリコシド、スルフォンアミド、バイオマイシンおよびカプレオマイシンであるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、抗生物質は、アミノグリコシドおよびセファロスポリンの群から選択される。
「アミノグリコシド抗生物質」は、細菌リボソーム30Sサブユニットのレベルで、そしてそれ故にタンパク質合成のレベルで作用して、細菌細胞壁外膜に孔を作り出す殺菌性抗生物質と理解される。本発明に含まれるアミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシン、アミカシン、スペクチノマイシン、トロスペクトマイシン、ストレプトマイシン、ネオマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルミシン、シソマイシン、パロモマイシンおよびカナマイシンであるが、これらに限定されない。本発明はまた、前記抗生物質の薬学的に許容し得る塩を含む。好ましい実施形態では、アミノグリコシド抗生物質は、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルミシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、シソマイシン、ネオマイシンおよびそれらの組み合わせの群から選択される;それは、好ましくはゲンタマイシンである。
「セファロスポリン」は、7−セファロスポラン酸に由来するβ−ラクタム抗生物質と理解され、細菌細胞壁のペプチドグリカン合成を妨害して架橋に必要な最後のペプチド転移を阻害する作用があり、これが殺菌効果を生み出す。本発明に関し、セファロスポリンという用語は、例えば、第一世代のセファロスポリン(セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン)、第二世代のセファロスポリン(セファクロール、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム)、第三世代のセファロスポリン(セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン(ceftriazone))、第四世代のセファロスポリン(セフェピム)および第五世代のセファロスポリン(セフトビプロール)を含むが、これらに限定されな。本発明はまた、前記セファロスポリンの薬学的に許容し得る塩を含む。
別の実施形態では、腎毒性薬剤は、免疫抑制剤である。「免疫抑制剤」は、免疫系の免疫抑制をもたらす物質と理解される。この免疫抑制剤は、移植器官の拒絶を防ぐため、および自己免疫性疾患または自己免疫に起因し得る疾患、例えば血管炎、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、乾癬または全身性エリテマトーデスを治療するために有用である。本発明に含まれる免疫抑制剤は、アザチオプリン、シクロホスファミド、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチルなどの細胞増殖抑制剤;プレドニゾンなどのグルココルチコイド;シクロスポリンA、タクロリムス(FK506);ラパマイシンまたはシロリムス;エベロリムスなどのカルシニューリン酵素阻害剤;サイモグロブリンなどのポリクローナル抗体;リツキシマブ、ダクリズマブ、エタネルセプトなどのモノクローナル抗体であるが、これらに限定されない。本発明はまた、前記免疫抑制剤の薬学的に許容し得る塩を含む。好ましい実施形態では、免疫抑制剤は、シクロスポリンA、タクロリムス(FK506)およびエベロリムスから選択され、好ましくはシクロスポリンAである。
別の実施形態では、腎毒性薬剤は、抗新生物剤である。「抗新生物剤」は、悪性腫瘍細胞の発達、成長または増殖を抑制する物質であって、天然、合成または半合成起源のものであり得る物質と理解される。本発明において意図される抗新生物剤としては、DNAアルキル化剤;白金系化合物;代謝拮抗物質;抗腫瘍抗生物質;トポイソメラーゼIまたはII阻害剤;L−アスパラギナーゼなどの酵素;ビンカアルカロイド;タキサン;抗エストロゲン薬、アロマターゼ阻害剤、LH−RH類似体、抗アンドロゲン薬およびグルココルチコイドなどのホルモン剤;インターロイキン、インターフェロン、モノクローナル抗体およびBCGワクチンなどのその他の薬剤が挙げられるが、これらに限定されない。
好ましい実施形態では、抗新生物剤は、白金系化合物、代謝拮抗物質、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤およびそれらの組み合わせの群から選択される。
本明細書において使用される「白金系化合物」は、白金原子を含有する任意の化合物であって、DNAに結合してインターカレートし、DNAの修復活性化を誘導し、最終的にはアポトーシスを引き起こすことができる化合物と理解される。白金系化合物としては、カルボプラチン、シスプラチン[シス−ジアミノジクロロプラチナ、(CDDP)]、オキサリプラチン、イプロプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、テトラプラチン、サトラプラチン(JM216)、JM118、JM149、JM335、トランスプラチン、ZD0473、シス、トランス、シス−Pt(NH3)(C6H11NH2)(OOCC3H7)2Cl、マロン酸−1,2−ジアミノシクロヘキサン−プラチナ(II)、5−スルホサリチル酸−トランス−(1,2−ジアミノシクロヘキサン)プラチナ(II)(SSP)、ポリ−[(トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン)プラチナ]−カルボキシアミロース(POLY−PLAT)、4−ヒドロキシ−スルホニルフェニルアセテート(トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン)プラチナ(II)(SAP)などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、白金系化合物は、シスプラチン、カルボプラチンおよびそれらの組み合わせの群から選択される;好ましくは、それは、シスプラチンである。
本明細書において使用される「代謝拮抗物質」という用語は、その最も広い意味では、生物に重要な代謝産物(ビタミン、補酵素、アミノ酸および糖類など)との構造的または機能的な類似性により、正常な代謝を妨げる物質、および電子伝達系を阻害して、エネルギー豊富な中間体の生成を抑制する物質を指す。本発明において使用するのに適切な代謝拮抗物質としては、葉酸代謝拮抗物質(アミノプテリン、デノプテリン、メトトレキサート、エダトレキサート、トリメトレキサート、ノラトレキシド、ロメテレキソール、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、ピリトレキシム、プテロプテリン、ロイコボリン、10−プロパルギル−5,8−ジデアザ葉酸塩(PDDF、CB3717))、リボヌクレオチド阻害剤(ヒドロキシウレア)、プリン類似体(クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、ペントスタチン、チオグアニン)およびピリミジン類似体(カペシタビン、5−アザシチジン、シタラビンまたはアラ−C、デシタビン、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、ドキシフルリジン、フロクスウリジンおよびゲムシタビン)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、前記代謝拮抗物質の薬学的に許容し得る塩を意図する。好ましい実施形態では、代謝拮抗物質は、メトトレキサート、ペントスタチン、5−アザシチジン、ヒドロキシウレアおよびそれらの組み合わせの群から選択される。
「DNAアルキル化剤」は、癌の治療に使用されるアルキル化剤であって、急速に分裂する細胞のDNAにアルキル基を付加して、複製の停止および細胞死をもたらすことができるアルキル化剤と理解される。
DNAアルキル化剤は、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキルおよびトリアゼンであり、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン、ピポブロマン、メルファラン(L−サルコリシン)、クロラムブシル、メクロレタミンまたはムスチン、ウラムスチンまたはウラシルマスタード、ノボエンビキン、フェネステリン、トロホスファミド、イホスファミド、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、クロロゾトシン、ホテムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、セムスチン(メチル−CCNU)、ストレプトゾトシン、チオテパ、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン、マイトマイシンC、プロカルバジン、アルトレタミン、ダカルバジン、ミトゾロミドおよびテモゾロマイドが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、前記化合物の薬学的に許容し得る塩を意図する。好ましい実施形態では、DNAアルキル化剤は、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、イホスファミド、マイトマイシンCおよびそれらの組み合わせの群から選択される。
「トポイソメラーゼIまたはII阻害剤」は、トポイソメラーゼIおよびII酵素の作用を妨げるように設計された薬剤と理解される。トポイソメラーゼI阻害剤としては、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、アセチルカンプトテシン、9−アミノカンプトテシン、ラメラリンDおよびベツリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。トポイソメラーゼII阻害剤としては、アムサクリン、エトポシド、テニポシドおよびドキソルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明はまた、前記化合物の薬学的に許容し得る塩を意図する。好ましい実施形態では、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤は、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシンおよびそれらの組み合わせの群から選択される。
本発明はまた、これらの抗新生物剤すべての組み合わせ、例えば、シスプラチン−パクリタキセル、シスプラチン−ゲムシタビン、シスプラチン−ドセタキセル、カルボプラチン−パクリタキセル、シスプラチン−エトポシド、カルボプラチン−エトポシド、カルボプラチン−ゲムシタビン、カルボプラチン−ドセタキセル、シスプラチン−テニポシド、オキサリプラチン−ゲムシタビン、オキサリプラチン−パクリタキセル、シスプラチン−パクリタキセル−ゲムシタビン、シスプラチン−ドキソルビシン−5−フルオロウラシル(AFP)、シクロホスファミド−ドキソルビシン−シスプラチン(CISCA)およびシスプラチン−フルオロウラシル(CF)などを意図するが、これらに限定されな。
本明細書において使用される「薬学的に許容し得る塩」は、動物、より具体的にはヒトにおける使用が承認されている塩に関し、無機物(例えば天然のものに限定されないが、とりわけリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛またはアルミニウムなど)もしくは有機物(例えば天然のものに限定されないが、とりわけエチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、アルギニン、リシン、ヒスチジンまたはピペラジンなど)にかかわらず、塩基付加塩を形成するのに使用される塩、または有機物(例えば天然のものに限定されないが、とりわけ酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、コハク酸塩、オレイン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩またはグルコン酸塩など)もしくは無機物(例えば天然のものに限定されないが、とりわけ塩化物、硫酸塩、ホウ酸塩または炭酸塩など)のいずれかの酸付加塩を形成するのに使用される塩が挙げられる。
カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与は、腎毒性薬剤の投与前、前記薬剤の投与中および/またはその投与後に実施され得る。典型的には、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与は、腎毒性薬剤の投与前(例えば、1日前)に開始され、腎毒性薬剤の投与終了数日後まで、例えば投与終了4日、5日、6日、7日後まで継続する。
本発明の好ましい実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、腎毒性薬剤と一緒に同時投与される。同時投与は、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物および腎毒性薬剤の両方が、個別の医薬組成物、同じ医薬組成物のいずれかで同時に投与されるか、またはそれらが環境腎毒性薬剤である場合には、前記腎毒性薬剤と治療被験体との接触が、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与に合わせて同時に起こることを意味する。
カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与は、虚血もしくは虚血−再灌流が起こる前、その間、または虚血もしくは虚血−再灌流が終わった後に実施され得る。典型的には、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与は、虚血が始まった少し後に実施され、虚血期間全体にわたって維持され、再灌流が開始する前に終了する。
カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が投与される被験体は任意の哺乳動物でもよく、ペットおよび家畜、霊長類およびヒト、例えばヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯類が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、被験体は、任意の人種または年齢で女性または男性のヒトである。
当業者であれば、医薬中の有効成分は治療有効量でなければならないこと、および前記活性化合物の製剤化は投与の種類に応じて行われるものであることを認識するであろう。本明細書において使用される「治療有効量」は、急性腎障害に関連する症候を完全にまたは部分的に緩和することを可能にするか、または症候の進行もしくは悪化を防止するか、または急性腎障害を患うリスクがある被験体における急性腎障害の発症を予防する化合物量と理解される。本発明の好ましい実施形態では、カルジオトロフィン−1は、100μg/kg/日の用量で投与される。
本発明の一つの実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、静脈内経路によって投与される。
本発明者らは、図4、図21および図28B(これらは、クレアチニンクリアランスの減少の軽減を示す);図2、図3、図14、図19、図20および図28A(これらは、クレアチニン、尿素およびその誘導体などの代謝産物の血中蓄積の軽減を示す);図5および図22(これらは、タンパク尿の出現の減少を示す)で実証されているように、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、腎障害患者の腎排泄機能の低下を軽減できることを実証した。したがって、本発明の好ましい実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物は、腎排泄機能の低下を軽減する。
「腎排泄機能の低下」は、腎臓が、電解質を失うことなく老廃物を排泄して尿を濃縮する能力であって、血清クレアチニンレベルの増加、尿排泄の減少、クレアチニンクリアランスの減少、血清中の尿素および誘導体の増加、またはタンパク尿の出現により測定される能力が、完全喪失または部分喪失することと理解される。これらのパラメータを測定するのに適切な方法は、既に説明した。
本発明者らは、カルジオトロフィン−1の単回投与が、急性腎障害を予防および/または治療するのに十分であることを実証した。本発明の好ましい実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与は、IL−6ファミリーメンバーの可溶性受容体またはその断片の非存在下で実施される。好ましい実施形態では、可溶性受容体は、CT−1受容体またはその断片である。
「IL−6ファミリーメンバーの可溶性受容体」は、インターロイキン6ファミリーに属するサイトカインに結合して複合体を形成できる可溶型受容体であって、gp130と直接相互作用できる可溶型受容体と理解される。前記ファミリーメンバーとしては、白血病抑制因子(LIF)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、インターロイキン−11(IL−11)、オンコスタチンM(OSM)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)およびインターロイキン6(IL−6)が挙げられるが、これらに限定されない。「IL−6ファミリーメンバーの可溶性受容体の断片」は、IL−6ファミリーメンバーの可溶性受容体の任意の断片であって、カルジオトロフィン−1への結合能およびさらにはgp130との相互作用能を保持する断片と理解される。
「可溶性CT−1受容体」は、カルジオトロフィン−1に結合して複合体を形成できる可溶型受容体であって、gp130と直接相互作用できる可溶型受容体と理解される。「可溶性CT−1受容体の断片」は、可溶性CT−1受容体の任意の断片であって、カルジオトロフィン−1への結合能およびさらにはgp130との相互作用能を保持する断片と理解される。
「IL−6ファミリーメンバーの可溶性受容体またはその断片の非存在下で実施される」という表現は、IL−6ファミリーメンバーの可溶性受容体またはその断片が、カルジオトロフィン−1と一緒に外因性投与されないことを意味する。
本発明の別の好ましい実施形態では、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与は、後腎間充織成長因子の非存在下で実施される。
本発明に関し「後腎間充織成長因子」とは、後腎間充織の増殖を刺激できる任意の成長因子と理解され、TGFα、FGF−2、FGF−9、TIMP−1およびTIMP−2が挙げられるが、これらに限定されない。
「後腎間充織成長因子の非存在下で実施される」という表現は、後腎間充織成長因子が、カルジオトロフィン−1と一緒に外因性投与されないことを意味する。
本発明の組成物
本発明者らは、腎毒性薬剤によってもたらされる腎障害を、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与によって和らげ得ることを実証した。
したがって、本発明の別の態様は、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と腎毒性薬剤とを一緒にまたは個別に含む組成物である。
「カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物」という表現は、本発明の使用に関連して既に説明しており、本発明の第一の態様のように、下記の群から選択される化合物を含み、様々な化合物を既に詳細に説明した。
(i)カルジオトロフィン−1(CT−1)、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体、
(ii)CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチド、
(iii)(ii)のポリヌクレオチドを含むベクター、および
(iv)カルジオトロフィン−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体を培地に分泌することができる細胞
「腎毒性薬剤」という用語は、本発明の使用に関連して既に定義しており、造影剤、抗生物質、免疫抑制剤および抗新生物剤の群から選択されるが、これらも既に説明した。
本明細書において使用される「組成物」という用語は、少なくとも2つの成分:カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物および腎毒性薬剤(これは治療剤でもよいし、造影剤でもよい)によって形成される組成物に関する。前記成分は、物理的に一緒になって単一製剤(例えば、一定量の各成分を含む錠剤またはカプセル)を構成してもよいし、または対照的に、個別に製剤化してその後に、同時投与、連続投与または個別投与のためにそれらを合わせてもよい。本発明の組成物はまた、「パーツのキット」としての製剤を意図し、この場合の成分は個別に製剤化されるが同じ容器内にパッケージされ、それらの投与前にそれらを合わせることができる。当業者であれば、本発明の組成物の第一および第二の成分の製剤化は類似してもよく(すなわち、(錠剤中に)同様に製剤化してもよく)、同じ経路によってそれらを投与できることを認識するであろう。本発明の組成物の異なる成分が個別に製剤化される場合、2つの成分はブリスター中に存在できる。各ブリスターは、1日に摂取しなければならない薬物を含有する。薬物を1日数回投与しなければならない場合、各投与に対応する薬物を異なるブリスター部分内に配置でき、好ましくは、それらを投与しなければならない時刻を各ブリスター部分に記録する。あるいは、異なる成分が別々に投与されるように、本発明の組成物の成分を別々に製剤化してもよい。したがって、例えば、第一の成分をその経口投与のために錠剤またはカプセルとして製剤化し、第二の成分をその静脈内投与のために製剤化することが可能である。
本発明の組成物は、静脈内経路、経口経路、経鼻経路、非経口経路、局所経路、経皮経路、直腸経路および類似経路を含む当業者に公知の方法によって投与されるが、これらに限定されない。
本発明の組成物の一部を形成する成分間の関係は、特に各事例で使用されるCT−1活性を誘導する化合物および腎毒性薬剤、ならびに所望の適応に依存するであろう。
前記薬剤が治療活性薬物である場合、本発明の方法を実施するのに有用な組成物は、治療有効量のカルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と治療有効量の腎毒性薬剤とを含む。さらに、前記腎毒性薬剤が造影剤である場合、本発明の方法を実施するのに有用な組成物は、治療有効量のカルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と診断過程に有用な造影画像を得るのに適切な量の腎毒性薬剤とを含む。本発明の組成物はまた、薬学的に許容し得る担体を含む。
特定の実施形態では、組成物は、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物、腎毒性薬剤および少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を一緒にまたは個別に含む医薬組成物である。
「カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の治療有効量」は、CT−1に起因する上記効果の1つ以上をもたらすことができる量と理解され、本明細書において詳述されている方法に基づいて、標準的な技術によって決定できる。
「腎毒性薬剤の治療有効量」は、治療効果をもたらすのに必要な腎毒性薬剤の量と理解され、求める治療効果に応じて変化する(すなわち、それは、腎毒性薬剤が抗生物質、抗新生物剤または免疫抑制剤であるかに応じて変化する)。
「薬学的に許容し得る」という用語は、動物、より具体的にはヒトにおける使用について、連邦政府もしくは州政府の監督官庁によって承認されていること、または米国薬局方もしくは別の一般に認められている薬局方に含まれていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、コアジュバント、賦形剤またはビヒクルに関し、それによって治療化合物を投与する。前記医薬担体は、水および油などの滅菌液(石油、動物、植物または合成起源のものを含む)、例えばラッカセイ油、大豆油、鉱油、ごま油などでもよい。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、胡粉、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。所望により、組成物は、微量の湿潤剤もしくは乳化剤またはpH緩衝剤を含有してもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルション、錠剤、丸薬、カプセル、粉末、持続放出製剤などの形態をとってもよい。組成物は、結合剤および従来の担体、例えばトリグリセリドを用いて坐剤として製剤化してもよい。経口製剤は、標準的な担体、例えば医薬型マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムスクロース、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含んでもよい。適切な医薬担体の例は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”.17th edition revised(December 1985).Editorial Mack Pub.Coに記載されている。
組成物は、通常の方法にしたがって、ヒトに静脈内投与、皮下投与または筋肉内投与するのに適した医薬組成物として製剤化できる。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤および注射部位の痛みを緩和するための局部麻酔薬、例えばリドカインを含んでもよい。組成物を浸潤によって投与しようとする場合、医薬品質の水または生理食塩溶液を含有する浸潤バイアルで調剤できる。組成物を注射によって投与する場合、投与前に成分を混合できるように、注射液または滅菌生理食塩溶液用の水バイアルを用意できる。
CT−1活性を誘導する化合物の量であって、腎障害の治療に有効な量は、本明細書に基づいて、標準的な臨床技術によって決定してもよい。さらに、in vitroアッセイは、場合により、最適な投与間隔を特定するのに使用してもよい。製剤化に使用するべき正確な用量は、投与経路および症状の重症度にも依存し、医師の見解および各被験体の状況にしたがって決定しなければならない。
全身投与について、治療有効用量は、最初に、in vitroアッセイから推定できる。例えば、細胞培養で決定したCI50を含む血中濃度範囲を達成するために、動物モデルで用量を策定できる。前記情報を使用して、ヒトで有用な用量をより正確に決定できる。また、初期用量は、最先端の技術水準で周知の技術を使用して、in vivoデータ、例えば動物モデルから推定できる。当業者であれば、動物データに基づいて、ヒトに対する投与を容易に最適化できる。
したがって、急性腎障害を予防および/または治療する本発明の方法は、CT−1活性を誘導する能力を有する化合物を、1個または数個の腎毒性化合物と一緒に同時投与、連続投与または個別投与することを意図する。したがって、好ましい実施形態では、組成物は、同時投与、個別投与または連続投与される。
本発明の使用についての特定の実施形態はすべて、本発明の組成物にも適用可能である。
カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物を含有する本発明の組成物は、治療または診断の目的で投与される場合、前記組成物の腎毒性成分によってもたらされる急性腎障害を予防するのに使用され得る。
したがって、別の態様では、本発明は、診断剤として使用するための組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と造影剤とを含む組成物に関する。別の態様では、本発明は、診断剤を調製するための組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と造影剤とを含む組成物に関する。別の態様では、本発明は、診断剤を調製するための、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と造影剤とを含む組成物の使用に関する。別の態様では、本発明は、患者の造影診断法であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と造影剤とを含む組成物を前記患者に投与することと、造影剤を観察することによって診断することとを含む造影診断法に関する。
「造影剤」という用語は、本発明の使用に関連して既に定義した。本発明の文脈における「診断剤」という用語は、造影剤およびカルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物を含む薬剤であって、個体に投与された際に、造影によって検出できる薬剤に関する。診断剤は、本発明の化合物に加えて、それらの使用または投与に必要なその他の成分または賦形剤を含む。
別の態様では、本発明は、抗生物質による腎毒性の予防および/または治療に使用するための組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗生物質とを含む組成物に関する。別の態様では、本発明は、抗生物質による腎毒性の予防および/または治療用の医薬を調製するための、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗生物質とを含む組成物の使用に関する。別の態様では、本発明は、抗生物質による腎毒性の予防および/または治療用の医薬を調製するのに使用するための組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗生物質とを含む組成物に関する。別の態様では、本発明は、個体における抗生物質による腎毒性を治療または予防する方法であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗生物質とを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法に関する。
「抗生物質」という用語は、本発明の使用に関連して既に定義した。前記抗生物質は、典型的には、宿主の正常な機能および生存に有害な病原微生物(細菌、真菌または原生動物)が宿主個体に定着することによってもたらされる疾患である感染症の治療に使用される。組成物に使用される抗生物質は、本発明の組成物がその治療に適切な感染症を決定するであろう。本発明の組成物の投与が有用であり得る感染症は、エシェリキア・コリ(E.coli)、クレブシエラ(Klebsiella)属、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、プロテウス(Proteus)属、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、エンテロバクター(Enterobacter)属、ナイセリア(Neisseria)属、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)属、マイコプラズマ(Mycoplasma)属、エルシニア(Yersinia)属、プレシオモナス(Plesiomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、クラミジア(Chlamydia)属、リケッチア(Rickettsia)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、フゾバクテリウム(Fusobacterium)属、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)属によって引き起こされる細菌感染症であるが、これらに限定されない。
抗生物質がアミノグリコシド抗生物質である場合、本発明の組成物で治療される感染症は、一般に、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)およびクレブシエラ(Klebsiella)属などのグラム陰性菌によって引き起こされる重度の感染症、ならびにシュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)および非通性嫌気性細菌による感染症である。それらは、外科的予防にも有用である。
抗生物質がセファロスポリンである場合、本発明の組成物で治療される感染症は、一般に、グラム陽性球菌、プロテウス(Proteus)属、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、クレブシエラ(Klebsiella)属、グラム陰性桿菌、ヘモフィルス・インフルエンザエ(Haemophilus influenzae)、エンテロバクター(Enterobacter)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ナイセリア(Neisseria)属、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)による感染症である。それらは、その他のβ−ラクタムに耐性の微生物による感染症、例えばある種の髄膜炎病状の治療および術前予防にも有用である。
別の態様では、本発明は、免疫抑制剤による腎毒性の予防および/または治療に使用するための組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と免疫抑制剤とを含む組成物に関する。
別の態様では、本発明は、免疫抑制剤による腎毒性の予防および/または治療用の医薬を調製するため、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と免疫抑制剤とを含む組成物の使用に関する。別の態様では、本発明は、免疫抑制剤による腎毒性の予防および/または治療用の医薬を調製するのに使用するための組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と免疫抑制剤とを含む組成物に関する。別の態様では、本発明は、個体における免疫抑制剤による腎毒性を治療または予防する方法であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と免疫抑制剤とを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法に関する。
「免疫抑制剤」という用語は、本発明の使用に関連して既に定義した。本発明の組成物は、移植拒絶反応または自己免疫性疾患を患っているか、またはこれらを患いやすい患者であって、腎毒性免疫抑制剤で治療しなければならない患者において役立つ。「移植拒絶反応」は、移植レシピエントの免疫系によってもたらされる拒絶反応であって、移植された器官または組織を攻撃して、移植片対宿主病として公知のものを引き起こし、非自己組織を破壊する拒絶反応と理解される。「自己免疫性疾患」は、免疫系が生物の細胞を攻撃する疾患と理解される。本発明の組成物で治療され得る自己免疫性疾患の例示的かつ非限定的な例としては、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、溶血性貧血、悪性貧血、アフタ性潰瘍、アフタ性口内炎、関節炎、アテローム性動脈硬化症、変形性関節症、関節リウマチ、自己免疫性喘息、自己免疫性溶血、ベーチェット病、ベック病、腸炎症性疾患、クローン病、脈絡膜炎、潰瘍性大腸炎、セリアック病、クリオグロブリン血症、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、インスリン依存性糖尿病、若年性糖尿病、自己免疫性脱髄性疾患、脳脊髄炎、アレルギー性脳脊髄炎、眼内炎、アレルギー性腸炎、自己免疫性腸疾患症候群、らい性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス症候群、ハンマン−リッチ病、橋本病、突発性難聴、慢性肝炎、ホジキン病、発作性血色素尿、性腺機能低下症、限局性回腸炎、虹彩炎、白血球減少症、播種性紅斑性狼瘡、全身性紅斑性狼瘡、皮膚エリテマトーデス、リンパ肉芽腫、伝染性単核球症、重症性筋無力症、横断性脊髄炎、特発性原発性粘液水腫、ネフローゼ、交感性眼炎、肉芽腫性睾丸炎、膵炎、尋常性天疱瘡、結節性多発性動脈炎、慢性多発性関節炎、多発性筋炎、急性多発性神経根炎、乾癬、紫斑病、壊疽性膿皮症、ライター症候群、サルコイドーシス、失調性硬化症、進行性全身性硬化症、強膜炎、強皮症、多発性硬化症、散在性硬化症、抗精子抗体による不妊症、血小板減少症、胸腺腫、急性前部ブドウ膜炎、白斑、組織または器官の移植による移植拒絶反応、および移植片対宿主病が挙げられる。
別の態様では、本発明は、抗新生物剤による腎毒性の予防および/または治療に使用するための組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗新生物剤とを含む組成物に関する。別の態様では、本発明は、抗新生物剤による腎毒性の予防および/または治療用の医薬を調製するため、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗新生物剤とを含む組成物の使用に関する。別の態様では、本発明は、抗新生物剤による腎毒性の予防および/または治療用の医薬を調製するのに使用するための組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗新生物剤とを含む組成物に関する。別の態様では、本発明は、個体における抗新生物剤による腎毒性を治療または予防する方法であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗新生物剤とを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法に関する。
「抗新生物剤」という用語は、本発明の使用に関連して既に定義した。本発明の組成物は、癌を患っているか、または癌を患いやすい患者であって、腎毒性抗新生物剤で治療しなければならない患者において役立つ。「癌」または「腫瘍」という用語は、無秩序な細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理学的状態と定義される。本発明の組成物は、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣および肝臓の腫瘍などの任意の癌または腫瘍の治療に有用であるが、これらに限定されない。特に、前記組成物で治療され得る腫瘍としては、腺腫、血管肉腫、星状細胞腫、上皮癌、胚細胞腫、神経膠芽腫、神経膠腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫および奇形腫が挙げられる。特に、腫瘍/癌は、末端黒子型黒色腫、光線性角化症腺癌、腺様嚢胞癌腫、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌腫、星細胞腫、バルトリン腺癌腫、基底細胞癌腫、気管支腺癌腫、毛細血管カルチノイド、癌腫、癌肉腫、胆管癌、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜増殖症、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、上衣肉腫、ユーイング肉腫、限局性結節性過形成、生殖細胞腫瘍、神経膠芽細胞腫、グルカゴノーマ、血管芽細胞腫、血管内皮腫、血管腫、肝細胞腺腫、肝腺種症、肝細胞癌、インスリノーマ、上皮内新生物、上皮内扁平上皮細胞癌、浸潤性扁平上皮癌、大細胞癌、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、髄芽細胞腫、髄様上皮腫、粘表皮癌、神経芽細胞腫、神経上皮腺癌、結節型黒色腫、骨肉腫、乳頭状漿液性腺癌、下垂体部腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、肺芽腫、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌、小細胞癌、軟部組織癌、ソマトスタチン(somostatin)産生腫瘍、扁平上皮癌、扁平上皮癌、未分化癌、ぶどう膜黒色腫、疣状癌腫、ビポーマ、ウィルムス腫瘍の群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
以下の実施例によって本発明を以下に説明するが、これらは単に例示的なものであり、本発明の範囲をいかなる場合も限定するものではないと考えなければならない。
A.抗CT−1抗体によるCT−1遮断効果
材料および方法
試薬および化学物質
マウス抗カルジオトロフィン−1抗体および免疫前ヤギIgGコントロールは、Digna−Biotech(Pamplona,Spain)によって提供されているものおよびR&D Systems(Minneapolis,MN)によって作製されたものであった。両薬物を0.9%生理食塩溶液に溶解させて、最終濃度5μg/mlとした。麻酔については、ケタミン(Ketolar,Pfizer)、ベンゾジアゼピン(Valium,Roche)およびアトロピン(Atropina,Braun)を2:2:1の割合で混合したものを使用した。術後期のために、0.3mg/mlブプレノルフィン(Buprex,Schering−Plough)を購入した。
動物
雄性野生型C57BL/6マウス(Charles River Laboratories S.L.,UK)は、術前術後において、標準的な動物飼養条件下で飼育し、標準的なマウス飼料を与え、水を自由に与えた。I/R障害の誘発は、以前に記載されているプロトコル(Docherty,N.G.et al.2006.Nephrol.Dial.Transplant.(8):2106−19)を使用して行った。選択した虚血時間および転帰は、これらの動物の死亡率を最小限に抑えながら腎機能障害の再現性を最大にする知見に基づくものであった(Chatterjee P.K.et al.2003.Kidney Int.63:853−865)。
腎虚血/再灌流
60mg/kg体重の用量で麻酔混合物(ケタミン−ベンゾジアゼピン−アトロピン)の腹腔内注射を使用して、動物を麻酔した;恒温ブランケットを使用して、中核体温を37℃に維持した。その後、正中線開腹術を実施した。I/R群のマウスを30分間腎虚血させた。この目的のために、左腎の腎動脈および腎静脈を特定し、微小血管用クランプを使用してクランピングした。虚血期間の終了5分前に、右腎を取り出した(右片側腎摘出)。腎臓のクランプを取り除いた後に、左腎をさらに5分間観察して再潅流を確認し、次いで37℃の生理食塩溶液1mlを腹部に注射した。最後に、vicryl3−0を使用して連続縫合により、切り口を二重に縫合した。虚血期間の15分前に、抗CT−1抗体またはヤギ免疫前IgGを前治療動物群に陰茎静脈により静脈内投与した。微小血管用クランプを適用しなかった以外はI/Rマウスと同じ外科手術を受けた偽手術マウスを、コントロールとして使用した(Rodriguez−Pena,A.et al.2004.Am.J.Transplant,4(10):1605−1613;Garcia−Criado,F.J.et al.1998.Transplantion,66(8):982−990)。
術後期
術後にマウスをケージに戻し、そこで麻酔から覚醒させ、24時間観察した。0.01mg/kg体重の用量でブプレノルフィンを皮下注射することによって、術後鎮痛を達成した(Aller,M.A.et al.2009.Liver Int.29(8):1132−40)。動物は、水およびマウス飼料を自由に利用できた。研究の間、体重および身体活動をモニタリングした。
試料の採取
腎機能を試験するために、以前に記載されているように(Morales,A.I.et al.2006.Toxicol.Appl.Pharmacol.210:128−135)、血液試料を採取した。外科手術の開始および虚血の24時間後の両方の時点で、ヘパリン毛細管(約200μl)を使用して、尾端からそれらを採取した。血液の遠心分離後、血漿と細胞の境界付近で毛細管に傷をつけて血漿の抽出を進め、さらなる分析のためにこれをエッペンドルフチューブ中に−20℃で保存した。
動物の殺処分
公開されている予備データ(Jerkic,M.et al.2004.Nephrol.Dial.Transplant,19:83−94;Morales,A.I.et al.2002.Antiox.Redox Signal,4:893−898)に基づいて、本発明者らは、この外科手術が可逆性の急性腎損傷を誘発し、正常な機能が7日後に回復することを観察した。本発明者らは、24時間から48時間までの間に損傷が最大になることを一貫して見出したので、I−R48時間後に腎臓試料を得ることを選択した。
再灌流後の指定時点(4時間(群1〜4)および48時間(群5〜8))において、マウスを殺処分した。再灌流期間後、マウスをペントバルビタールナトリウム(40mg/kg体重)で腹腔内麻酔し、心穿刺により血液試料を採取し、腸骨分岐部の位置にある腹大動脈に冷等張生理食塩溶液を通してマウスをin situで灌流した。血液試料を遠心分離(6000gで3分間)して血漿を分離し、さらなる生化学的研究のためにこれを−80℃で凍結保存した。実験期間終了時に、左腎をマウスから取り出した。腎茎を縛って計量した。組織片を切り取り、4%緩衝ホルムアルデヒド中で24時間固定し、組織病理学的および免疫組織化学的評価のためにパラフィン包埋した。液体窒素中に浸漬することによって腎臓の別の部分を急速凍結し、さらなる生化学的分析のために−80℃で保存した(Sanchez−Gonzalez,P.D.et al.2010.Nephrol.Dial.Transplant,(11):3484−95)。
血漿尿素の測定
腎機能不全の指標として、市販の診断キット(Roche Farma,Spain)による自動法(Reflotron Plus(登録商標);Roche Diagnostics,Barcelona,Spain)を使用して、血漿試料中の尿素濃度についての生化学的測定を実施した(Grande,M.T.et al.2010.Kidney Int.,77(6):509−518)。
過酸化脂質(マロンジアルデヒド)の測定
以前に記載されているように(Rodriguez−Pena,A.et al.2002.Hypertension,40(5):713−20)、脂質過酸化の指標として、TBARs分析を使用して腎臓試料中のマロンジアルデヒド(MDA)レベルを測定した。リン酸塩/塩化ナトリウム溶液中で、組織をホモジナイズした。20%トリクロロ酢酸および0.67%チオバルビツール酸を含有していた反応混合物に、一定分量のホモジネートを追加した。次いで、この混合物を100℃で15分間煮沸し、9,000gで5分間遠心分離した。532nmの分光光度測定によって、上清中の吸光度を測定した。
ミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)の測定
多形核細胞(PMN)の蓄積を指標として、製造業者の説明書およびガイドライン(Hycult Biotech,The Netherlands)にしたがって前述のマウス酵素に特異的な酵素結合免疫吸着測定(ELISA)キットを使用して、腎臓試料中のミエロペルオキシダーゼ(MPO)活性を測定した。腎臓ホモジネート試料中のMPO濃度をng/mgタンパク質として表した。
腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)レベルの測定
製造業者の説明書およびガイドライン(R&D Systems,Minneapolis,MN)にしたがって前述のマウスサイトカインに特異的な酵素結合免疫吸着測定(ELISA)キットを使用して、血清TNF−αレベルを定量した。血漿中TNF−α濃度をpg/mlとして表した。
CT−1のウエスタンブロット
腎組織からの抽出物を調製し、標準的なプロトコルにしたがってウエスタンブロットによって分析した(Suzuki,Y.et al.2012.Biotech.Histochem.,87(4):241−8)。簡潔に言えば、100μgのタンパク質を含有していた抽出試料を10%SDS−PAGEゲル電気泳動によって分離し、PVDF膜に転写した。5%BSAでブロッキングした後、抗CT−1抗体(1:500希釈;R&D Systems)と一緒に、膜を4℃で一晩インキュベーションした。次いで、TBSTで3回洗浄してから、二次HRP標識抗マウスIgG(1:10,000希釈;Bio−Rad Laboratories)と一緒に、膜を1時間インキュベーションした。洗浄後、イメージリーダ(ImageQuant RT ECL,GE Healthcare,Spain)を使用して化学発光(chemiluminiscent)(ECL)HRP基質により、免疫複合体を検出し、バンドを測定した。また、マウスモノクローナル抗GADPH抗体(1:20,000;Ambion Applied Biosystems)で膜を再プローブして、各レーンにおけるタンパク質のローディングが等しいことを確認した。
組織病理学的実験
ホルムアルデヒド固定した組織試料を、段階的に漸増するエタノール(60、80、96、100%)中で脱水し、トルエンで洗浄し、キシレンでクリアにした。次いで、各試料を60℃の融解パラフィンに入れて、ブロック(この断片が、適切に配向された組織である)を形成した。ミクロトームを用いて4μmの切片を切断し、スライドガラス上に付着させた(Morales,A.I.et al.2006.Food Chem.Toxicol.,44(12):2092−100)。
ヘマトキシリン・エオシン染色
パラフィン固定した腎臓切片をスライドガラス上に載せ、光学顕微鏡を用いて検査するためにH&E染色した。切片1個あたり5個の画像を無作為に選択し、デジタルキャプチャし(倍率×400)、光学密度を分析した(Grande,M.T.et al.2010.Kidney Int.,77(6):509−518)。
CT−1およびED−1の免疫組織化学的染色
ED−1染色(CD−68)の場合にはトリプシンを用いて、またはカルジオトロフィン−1染色の場合にはマイクロ波を用いて、切片を処理した。次いで、モノクローナル抗ED−1抗体(1:200)(M0814;DakoCytomation,Denmark)およびポリクローナル抗CT−1抗体(1:200)(AF438;R&D Systems,Minneapolis,MN)と一緒に、腎組織をインキュベーションした。加湿チャンバー中で、一次抗体とのインキュベーションを4℃で一晩行い、続いて抗体(1:100、Cy3−標識ウサギ抗ラット、Jackson Laboratories,Germany)との二次反応を行った。核DNAをDAPIで対比染色し、倍率×400で走査型スペクトル共焦点レーザー顕微鏡(TCS SP2,Leica)を使用して、免疫蛍光染色を可視化した(Grande,M.T.et al.2010.Kidney Int.,77(6):509−518)。
データの統計分析
NCSSソフトウェアを使用して、統計分析を実施した。値は、n回の独立した実験の平均として表した。正規分布に従うデータからの値は、平均±平均の標準誤差(SEM)として表した。シェフェ補正検定を多重比較に使用した。正規分布に従わないデータについては、値を中央値として表し、クラスカル・ワリス検定を多重比較に使用した。一般に、過去の全試験で統計的に有意であると想定および判定された最大αエラーは、p<0.05またはZ>1.96であった。
1.抗CT−1抗体によるCT−1遮断が、片側腎虚血によって誘発した急性腎不全の重症度に及ぼす効果
本研究では、抗CT−1抗体によるCT−1遮断が、片側腎虚血のマウスモデルにおいて誘発した急性腎障害の重症度に及ぼす効果を調べた。
マウスを4〜5匹/ケージで飼育し、動物舎施設を室温20±2℃、湿度50%および明暗周期12:12時間に維持した。標準的な粒餌をそれらに与え、水道水を自由に与えた。7日間の馴化期間の後、合計60匹のマウスを以下の8群に無作為に振り分けた:
・群1。コントロール4時間群(コントロール−4時間、n=4);生理食塩溶液を単回ボーラス投与してから15分後に腎虚血(30分間)を行い、続いて片側腎摘出を行い、4時間再灌流したマウス。
・群2。コントロールIgG4時間群(コントロールIgG−4時間、n=8);ヤギ免疫前IgGを単回ボーラス投与してから15分後に腎虚血(30分間)を行い、続いて片側腎摘出を行い、4時間再灌流したマウス。
・群3。抗CT−14時間群(抗CT−1−4時間、n=8);抗CT−1抗体(50μg/kg、静脈注射(i.v.))を単回ボーラス投与してから15分後に腎虚血(30分間)を行い、続いて片側腎摘出を行い、4時間再灌流したマウス。
・群4。シャム4時間群(シャム−4時間、n=4);腎臓I/Rを適用しなかった以外は、生理食塩溶液を単回ボーラス投与してから15分後に上記外科手術を行ったマウス。
・群5。コントロール群(コントロール、n=10);生理食塩溶液を単回ボーラス投与してから15分後に腎虚血(30分間)を行い、続いて片側腎摘出を行い、48時間再灌流したマウス。
・群6。コントロールIgG群(コントロールIgG、n=10);ヤギ免疫前IgGを単回ボーラス投与してから15分後に腎虚血(30分間)を行い、続いて片側腎摘出を行い、48時間再灌流したマウス。
・群7。抗CT−1群(抗CT−1、n=10);抗CT−1抗体(50μg/kg、静脈注射(i.v.))を単回ボーラス投与してから15分後に腎虚血(30分間)を行い、続いて片側腎摘出を行い、48時間再灌流したマウス。
・群8。シャム群(シャム、n=6);生理食塩溶液を単回ボーラス投与してから15分後に上記外科手術を行い、続いて片側腎摘出を行い、48時間再灌流したマウス。
抗CT−1抗体が臨床様相および体重に及ぼす効果
図34は、研究期間中のI/R48時間後における4つの実験群の動物の体重を表す。すべての時点において、シャム群のマウスはすべて、良好な様相、正常な運動性および体重の安定的維持を示した。しかしながら、I/R群は、再灌流期間の後に、有意な体重減少に伴う様相不良およびより低い運動性を示した。外科手術によって引き起こされた健康悪化は、抗CT−1治療マウスでは、コントロール群(生理食塩水またはヤギIgG治療マウス)のものと比較してわずかに大きかった。
抗CT−1抗体が生存率に及ぼす効果
図35は、実験期間中のI/R48時間後における4つの実験群のマウスの生存率を表す。外科手術をしなかったマウス(シャム群)はすべて正常な生存を示し、この群では死亡が観察されなかった。しかしながら、I/Rの動物はわずかな死亡を示し、虚血後24時間以内の生存は約90%(動物10匹のうちの9匹)であった。生存率は、虚血48時間後において、抗CT−1群では70%(動物10匹のうちの7匹)に減少し、コントロール群(生理食塩水または抗ヤギIgG治療マウス)では80%(動物10匹のうちの8匹)に減少した。
抗CT−1抗体が腎機能に及ぼす効果
図36は、研究中のI/R48時間後における4つの実験群の血漿尿素レベルの変化を表す。結果は、シャム群では、血漿尿素濃度が依然として変化しなかったことを示している。腎臓をI/Rに付したマウスについては、虚血24時間後において血漿尿素レベルが増加して最大ピークに達した。腎機能不全のこの増加は、抗CT−1治療マウスではコントロール群(生理食塩水またはヤギIgG治療マウス)よりも大きかったが、これらの群の間で有意差はなかった。最終時点または虚血48時間後において、血漿尿素濃度は、すべてのI/R群においてほぼ正常なレベルに戻った。
抗CT−1抗体が腎炎に及ぼす効果
図37は、I/R48時間後における4つの実験群の腎臓のマロンジアルデヒド(MDA)レベルを表す。シャム群と比較すると、I/Rに付したマウスの腎臓はMDAレベルの増加を示しており、これは、脂質過酸化が腎組織で増加していることを示唆している。抗CT−1治療マウスで観察された組織のMDAレベルは、生理食塩水コントロールで観察されたものよりも有意に高かった。
図38は、I/R48時間後における4つの実験群の腎臓のミエロペルオキシダーゼ(MPO)レベルを表す。偽手術マウスと比較すると、I/Rに付したマウスの腎臓はMPOレベルの有意な増加を示しており、これは、腎組織へのPMN浸潤が増加していることを示唆している。I/R抗CT−1治療マウスの腎臓は、コントロール群およびコントロールIgG群の腎臓よりも有意に高いMPO活性レベルを有していた。コントロールマウスおよびコントロールIgGマウスの腎組織の間では、腎臓のMPOレベルについて有意差は見られなかった。
図39は、I/R4時間後における4つの実験群の血漿TNF−αレベルを表す。I/Rは、シャム群のものと比較して、血清中TNF−αレベルの有意な上昇を引き起こした。抗CT−1治療は、I/Rコントロール群およびコントロールIgG群と比較して、血清TNF−αレベルの非有意な変化を引き起こした。
抗CT−1抗体が腎臓のCT−1発現に及ぼす効果
図40は、I/R48時間後における4つの実験群の腎臓のCT−1発現をウエスタンブロットによって評価したものを表す。すべてのI/R群のマウスでは、CT−1発現がシャム群と比較して増加した。抗CT−1抗体による治療は、その他の群と比較して、このタンパク質発現の有意な増加をもたらした。
抗CT−1抗体が腎臓の組織構造に及ぼす効果
左腎の切片をヘマトキシリン−エオシン染色し、I/R48時間後に光学顕微鏡法によって分析した。組織学的検査により、偽手術マウスの腎臓構造は正常であるが、I/Rを受けたものは有意な程度の腎障害を示したことが実証された。具体的には、腎臓は、尿細管構造の変性、尿細管の拡張、腫れ、尿細管細胞の壊死、および血管の鬱血を示した。血管周辺領域において、炎症性浸潤が見られた。抗CT−1群では、腎臓の薄片は、I/Rのみに付した腎臓と比較して、腎障害のこれらの組織学的特徴の重症度について著しい増加を示した。コントロールマウスおよびコントロールIgGマウスの間では、測定した上記組織学的パラメータのいずれについても違いはなかった(データは示さず)。
抗CT−1抗体が腎臓のマクロファージ浸潤に及ぼす効果
I/R48時間後に得た左腎の切片をマクロファージ特異的マーカー(抗CD68抗体)で染色した。I/R2日後(虚血48時間後)、CD−68陽性細胞(ED−1陽性)は、萎縮尿細管周辺の間質に主に現れた。I/R後のCD68陽性細胞数は、抗CT−1投与マウスでは、コントロール群よりも有意に多かった。コントロールマウスおよびコントロールIgGマウスの間では、マクロファージ浸潤について有意差は見られなかった。マクロファージ染色は、シャム群の腎臓において最小であった(データは示さず)。
B.CT−1の治療効果
材料および方法
試料の調製および分析
尿の入手
ラットを個々の代謝ケージに入れ、そこでは飼料および飲料を自由に利用できた。2日間馴化した後、24時間尿をメスシリンダー中に採取した。採取した尿を2,500rpmで8分間遠心分離してその残留物からそれを取り除き、クリーンな尿を採取し、後の分析のためにそれを−80℃で保存した。
血液および血漿の入手
尾の末端に小さな切り傷をつけることによって、ヘパリン毛細管中に血液試料を得た。ラット1匹あたり5本の毛細管を取り出し(200μL)、微量遠心機中で毛細管を11,000rpmで3分間遠心分離した。遠心分離したら、ヤスリを用いて細胞と血漿の境界付近で毛細管に傷をつけた。血漿を抽出し、後の分析のためにエッペンドルフチューブ中に−80℃で保存した。
組織学およびウエスタンブロット用の腎臓の摘出および加工
各実験の終了時に、動物を殺処分し、死後研究のために腎臓を摘出した。摘出前に、腎臓をヘパリン生理食塩溶液で灌流して、その血管樹から血液を取り除いた。このために、10mg/kg体重の用量のペントバルビタールナトリウムを用いて、ラットを腹腔内麻酔した。腹腔を評価するために、腹部を切開し(開腹)、腸管腫瘤を分離して、腸骨分岐部の大動脈にカニューレを挿入した。カニューレを通して、20mLのヘパリン生理食塩溶液を37℃で灌流した。この後、腎臓をデカプセル化し、摘出し、矢状に二分割した。液体窒素中に浸漬することによって一方の腎臓および他方の半分を瞬間冷凍し、ウエスタンブロット研究を後で実施するために−80℃で保存した。組織学的研究のために、他方の半分は、pH7に緩衝し、メタノールで安定化した4%ホルムアルデヒド中に入れた。ホルムアルデヒド中で固定したら、この溶液中に24時間浸した後、エタノールをはじめとする漸増勾配の一連のアルコールに通すことによって、腎臓を脱水した。その後、オーブン中で、各試料を60℃の融解パラフィンに1時間入れて、ブロック(この中で、その断片が適切に配向される)を形成した。ミクロトーム(MICRON HM−310)を用いて厚さ3μmの切片を切断し、次いで切片をスライドガラス上に置いた。切片をキシレンで脱パラフィン処理し、試料を再水和して、100%希釈水に達するまで一連の漸減濃度のエチルアルコールに通した。
ウエスタンブロット用の組織ホモジネートの調製
解凍および変質を防ぐために常にドライアイス中に維持しながら、2つの金属プレート間で振盪することによって、−80℃で冷凍保存した腎臓試料を粉砕した。次いで、各試料の組織粉末100mgを計量し、それによって組織抽出物を作製した。このために、各40mgの組織粉末について約400mLの溶解緩衝液(140mM NaCl、50mM EDTA、10%グリセロール、1%NP−40、20mMトリスpH=7.5、1mg/mlロイペプチン、1mg/mlアプロチニン、5mmol/lフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、5mM NaFおよび1mmol/l pH=7.5 NaVO)と一緒に、それらをホモジナイズし、滴定装置(Politron)を用いて、試料をホモジナイズした。次いで、組織溶解物を14,000g、4℃で20分間遠心分離した。最後に、上清を回収し、その使用時まで−80℃で凍結した。ローリー比色法(Lowry et al.J Biol Chem.1951;193:265)に基づく市販のキットを使用して試料の総タンパク質を測定するために、1アリコートを使用した。
腎機能の分析
クレアチニンおよびクレアチニンクリアランスの測定
腎機能を測定するために、血漿クレアチニン濃度およびクレアチニンクリアランス(これは、糸球体ろ過率の測定である)を測定した。クレアチニンクリアランス(CrCl)は、式CrCl=UF×CrU/CrP(式中、UFは尿流(ml/分)であり、CrUは尿中クレアチニン濃度(mg/ml)であり、CrPは血漿中クレアチニン濃度(mg/ml)である)から計算した。半自動分析器(Reflotron,Roche)によって、尿中および血漿中クレアチニン濃度を測定した。
血漿尿素の測定
半自動分析器(Reflotron,Roche)を使用して、市販のキットの特異的反応ストリップによって血漿中尿素濃度を測定した。
タンパク尿の測定
ブラッドフォード比色法(Anal Biochem.1976;72:248−54)によって、尿中タンパク質濃度(タンパク尿)を測定した。24時間の尿中タンパク質排泄(UEprot)は、式:UEprot=CprotxFU24h(式中、Cprotは尿中タンパク質濃度(mg/mL)であり、FU24hは24時間の尿流(mL/日)である)によって計算した。
尿流の測定
尿の入手で述べたように、代謝ケージ内の24時間尿を含有する容器の目盛を測定して、尿流(mL/日)を評価した。
N−アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)の測定
その測定では、製造業者の仕様書にしたがって市販のキット(Roche製)を使用し、KC−Juniorソフトウェアを用いて結果を分析した。
ウエスタンブロットによるKIM−1およびNGALの測定。
ウエスタンブロット技術では、全腎組織ホモジネートのタンパク質100μg、または排泄画分に対応する一定容量の各動物の尿をポリアクリルアミドゲルにロードした。電気泳動によって分離した後、これらのタンパク質をPVDF膜(Inmobilon−P #IPVH00010,Madrid,Spain)に転写し、KIM−1(R&D Systems)およびNGAL(MBL)に対する抗体とハイブリダイズさせた。
脂質過酸化物(マロニルジアルデヒド)の測定
2分子のチオバルビツール酸(TBA)を1分子のMDA(脂質過酸化の最終生成物)と45℃で反応させて、最大吸光度が532nmの安定な発色団を生成させることによる分光光度技術によって、マロニルジアルデヒドを測定した(Recknagel RO,Ghoshal AL,1966,Exp Mol Pathol 5:413−426)。
ポリトロンを用いて、1:5割合(w:v;mg/μL)のホモジネート溶液(20mMリン酸塩/50mM NaCl、pH=7.4)中、70%過塩素酸1:0.05(w:v;mg/μL)と一緒に、組織試料をホモジナイズした。それを4,200rpmで15分間遠心分離した。ローリー法を使用してタンパク質を測定するために、分析用の上清を採取した。200μLの上清を96ウェルプレートにロードした。反応を実施し、分光光度計で532nmの吸光度を測定した。結果を1リットルあたりのマイクロモル(μmol/L)で表した。
組織学的研究
ヘマトキシリン−エオシン染色
この技術は、核、細胞質の酸性領域およびマトリックスを青色に染色し、細胞質およびその全塩基成分をピンク色に染色するので、組織細胞の形態構造を明らかにする。前述のように調製した腎臓の組織学的切片をヘマトキシリン溶液中に4分間維持し、次いでそれらを流水で洗浄して、それらをエオシン溶液中に3分間維持した。染色されたら、漸増濃度のアルコール(70°、90°、100°)で試料を再度脱水して、一滴のカナダバルサムでそれらを永久固定し、その上に、スライドカバーを封入剤(Tissue−Tec)と一緒に置いた。10Xレンズを備える光学顕微鏡に接続した高解像度ビデオカメラを用いて、画像をキャプチャした。コントラストを高めるために、緑色の光学フィルタを使用した。
免疫組織化学的研究
過酸化水素および3%メタノールを用いて、切片の内因性シグナルを排除することによって、免疫組織化学的技術を開始した。次いで、切片をブロッキングし、その後に一次抗体および二次抗体と一緒にインキュベーションした。次いで、HRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)を試料に追加した。直後に、色素原の3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)を追加した。コントラストのために、この調製物をヘマトキシリン中に少し浸漬した。最後に、漸増濃度の一連のアルコールによって切片を脱水し、それらを光学顕微鏡で観察できるように、その上にスライドカバーを封入剤(Tissue−Tec)と一緒に置いた。
スーパーオキシドアニオンO (SOA)生成の測定
腎臓中のSOA生成レベルを測定するために、O ラジカルによるシトクロムCの還元を基準として、ミトコンドリアについてBoverisによって説明されているものの変法である技術にしたがった[Boveris A.Methods Enzymol.1984;105:429−435]。簡潔に言えば:
− 100μlのシトクロムC(75μM)、20μlのスーパーオキシドジスムターゼ(SOD;約264U)、25μlの試料および緩衝液(0.1Mリン酸カリウム+0.1mM EDTA;pH7.8)(1,000μlの容量に達するまで)を追加して、分光分析用のキュベット(1mlキュベット)を調製した;
− 試料は追加せずに、100μlのシトクロムC(75μM)、20μlのSODおよび緩衝液(1,000μlの容量に達するまで)を追加して、参照キュベットを調製した;
− シトクロムCの非特異的還元を研究するために、SODを含有しない別の類似キュベットを調製した;
− シトクロムCを還元し、続いて二段階(1.非特異的なシトクロムC還元(SODを含まない)、および2.スーパーオキシド依存性のシトクロムC還元(SODを含む))で分光光度を読み込んだ[λ550nm;pH7.8および温度25℃、6秒毎の間隔で1分間、キュベット1ml中、光路1cm];
− 参照キュベット中のシトクロムCが完全に酸化される場合、および観察される吸光度の増加が還元生成物の吸光度のみを表す場合を考慮して(Δ吸光度:還元−酸化)、モル吸光係数:ΔE550/21.0x10−1cm−1を用いて、反応混合物中の吸光度単位の増加をSOAのnmoleに変換した;
− この方法では、スーパーオキシドアニオンSOAの生成をnmol/mgタンパク質/分で表した。
ミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)の測定
腎臓における好中球浸潤を評価するための指標として使用される好中球の特異的酵素であるミエロペルオキシダーゼの存在を、以下の方法によって腎臓試料で分析した(Mullane KM et al,J Pharmacol Methods 1985,14(3):157−167):試料が得られたら氷中で計量し、液体窒素中で凍結した後、それらの測定まで−80℃で保存した。その後、0.5%臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよび0.146%EDTAを含む50mMリン酸カリウム緩衝液から構成される溶液(pH6.0)中、ホモジナイズ溶液10mlあたり組織1グラムの割合で、試料をホモジナイズした。次いで、それらをホモジナイズし、氷中で超音波処理工程に付し(10回、各5秒間)、このようにして細胞(とりわけ、好中球)を破壊し、溶液中のミエロペルオキシダーゼを遊離させた。遠心分離機内部の温度を3〜4℃に維持しながら、ホモジネートを15,000gで30分間遠心分離した。上清をデカントし、50℃で2時間インキュベーションして、その他の種類のペルオキシダーゼ、およびミエロペルオキシダーゼの測定を妨げるその他の化合物を排除した。0.167mg/mlのO−ジアニシジン二塩酸塩および0.005%過酸化水素を含む50mMリン酸カリウム緩衝液から構成されるアッセイ用緩衝液(pH6.0)を調製した。アッセイ緩衝液を含むブランクに対して、波長460nm(λ)および25℃で既知量のMPOを用いて、標準曲線を実施した。ミエロペルオキシダーゼ活性の単位(U)は、25℃で1分間あたりに1μmolのHを分解する酵素の量と定義した。
TNFα、IL−1β、IFN−γ、IL−6およびIL−10サイトカインの測定
製造業者の説明書にしたがってDuoSet ELISA Development Systemラットキットを使用してELISAによって、これらのサイトカインの血漿中レベルを測定した。すべての場合において、レベルは、pg/mlで表した。アッセイの原理:それは、「サンドイッチ」原理により複数の抗体を使用するELISAキットである。第一段階では、96ウェルプレートを、それらのそれぞれの上に接着した抗サイトカインモノクローナル抗体と一緒に使用して、対応するブランクと一緒に各ウェルにデュプリケートで追加した試料および標準中に存在するサイトカインを捕捉した。ディッシュを洗浄して非接着物質を排除した後、ペルオキシダーゼ標識抗サイトカインポリクローナルを追加した。次いで、プレートを再度洗浄して非接着物質を排除し、基質溶液を追加してペルオキシダーゼ触媒反応を開始した。酸性化によって、色変化を停止した。
450nmλで吸光度を測定したところ、得られた結果は、標準曲線で補間することによって計算した試料のサイトカイン量に比例していた。
1.カルジオトロフィン−1が造影剤誘発性腎症に及ぼす効果の研究
急性腎不全を患う素因を有するラットに、ヨウ化造影剤ガストログラフイン(Bayer C.N.909622 EXO)を静脈内投与することからなるヨウ化造影剤腎症の実験モデルを使用した。この素因は、準毒性用量のゲンタマイシンで前治療することによって達成した(Quiros et al.,Kidney Int.2010;78:1006−1015)。
体重約220グラムの雄性ウィスターラット32匹において、実験を実施した。動物の環境条件を一定に維持した:温度約20℃、湿度約60%および1日の明期(照光時間)12時間。
設計研究では、6つの実験群を検討した:
− コントロール群(C):生理食塩溶液を投与したラット(n=5)。
− ゲンタマイシン群(G):造影剤の投与6日前から、ゲンタマイシンを6日間腹腔内(i.p.)投与(50mg/kg/日)したラット。本発明者らの過去の研究では、この治療は、既存の最も優れたマーカーを使用しても、腎機能の検出可能な変化および尿細管病変を引き起こさないことが実証されている(Quiros et al,2010)(n=5)。
− カルジオトロフィン群(CT−1):造影剤の投与前に4日間連続で、カルジオトロフィンを静脈内(i.v.)投与(100μg/Kg/日)したラット(n=5)。
− ガストログラフイン群(Gg):単回用量のヨウ化造影剤を静脈内(i.v.)投与(10mL/Kg;3.7mg/Kg)したラット(n=5)。
− ガストログラフイン+ゲンタマイシン群(Gg+G):ゲンタマイシンによる治療が終了した翌日に、ヨウ化造影剤を投与したラット(n=6)。
− ガストログラフイン+ゲンタマイシン+カルジオトロフィン群(Gg+G+CT−1):ヨウ化造影剤、ゲンタマイシンおよびカルジオトロフィンを投与したラット(n=6)。
排泄物を含まない尿を採取するために、動物を代謝ケージ内で飼育した。同様に、ヘパリン毛細管で尾から、血液試料を毎日採取した(0.150ml)。
実験終了時に(ヨウ化造影剤の投与4日後)、ラットを麻酔し、その後にヘパリン生理食塩溶液で灌流した。これらの動物から腎臓を採取し、組織学的研究を実施するために試料の一部をホルモールに入れ、組織研究のために別の一部を超凍結した。
実施した研究は、以下のものであった:
・血漿クレアチニン、血漿尿素、タンパク尿、微量アルブミン尿
・代謝ケージ内のクレアチニンクリアランス
・糸球体ろ過率(GFR;イヌリンクリアランス)、腎血漿流量(RPF;パラアミノ馬尿酸クリアランス)、腎血管抵抗(RVR)。
・腎毒性尿マーカー:NAG(N−アセチルグルコサミニダーゼ)、LDH(乳酸脱水素酵素)、GGT(γグルタミルトランスフェラーゼ)、KIM−1(腎障害分子1)、PAI−1(プラスミノーゲン活性化抑制因子1)、ビメンチン。
生存
C群、G−群、Gg群およびCT−1群では、すべての動物が実験終了まで生存した。Gg+G−群およびGg+G+CT−1群では、各群の動物が1匹死亡した。
一般状態および体重の変化
C群、G−群およびCT−1群の動物は、実験全体を通して健康な様子および正常な運動性を示した。しかしながら、ガストログラフインで治療した動物は、より悪化した様子および膨張した肢(これらは、その投与後15〜20分で回復した)を示した。それにもかかわらず、実験群間では、体重増加について大きな違いはなかった(図1)。
腎機能
Gg+G群では、クレアチニンクリアランス(糸球体ろ過状態の指標)が減少し、排泄の低下、そしてそれ故にクレアチニン、尿素およびその誘導体などの代謝産物の血中蓄積につながった(血漿尿素濃度全体で測定)(図2〜図4)。同様に、Gg+Gの同時投与は、高タンパク尿を伴った(図5)。
CT−1の投与(Gg+G+CT−1群)は、クレアチニンクリアランスの減少、クレアチニン、尿素の血漿濃度およびタンパク尿の増加を部分的に元に戻した(図2〜図5)。ゲンタマイシン、ガストログラフインおよびCT−1の単独投与は、これらのパラメータのいずれも変化させなかった(図2〜図5)。
腎毒性の尿マーカー
NAGは、腎症の診断およびモニタリングに使用されるリソソーム酵素である。腎障害の結果として尿中のその存在が増加するので、尿細管損傷のマーカーであると考えられている。本発明者らの結果は、Gg+Gで治療した動物において、NAGが増加したことを示している。CT−1は、タンパク尿と同様にこの増加を軽減したが、これは、尿細管損傷に関する知見を裏付けている(図6)。
KIM−1は、NAGよりも高感度な初期マーカーとして確立されているI型膜タンパク質である。KIM−1の細胞外ドメインは尿細管損傷中に切断され、尿中での増加が、ごく初期の損傷マーカーとして検出される。図7では、Gg+Gの同時治療が、尿中の抗KIM−1抗体に対する反応性バンドの明らかな増加をどの程度誘導するかを観察できる。ゲンタマイシン、ガストログラフインおよびCT−1は、コントロールと比較して効果をもたらさなかった。CT−1に関する限りは、CT−1は、Gg+Gの同時治療によってもたらされたKIM−1発現の増加を大きく減少させた。
プラスミノーゲン活性化抑制因子1(PAI−1)は、フィブリン溶解過程の抑制因子であり、炎症反応および組織修復に関与する。その発現は、炎症メディエーターの作用の結果として、多くの細胞種で増加している。それは、慢性腎障害および急性腎障害の結果としても増加している。本発明者らの結果は、造影剤を投与して前感作した動物(Gg+G群)の尿中では、PAI−1発現が明らかに増加していることを示している。これらの結果により、この実験群では、損傷に対する修復反応として、炎症過程が関与すると思われる病変がもたらされたことが示唆された。ゲンタマイシン、ガストログラフインまたはCT−1で治療したラットにおけるこのマーカーのレベルは、コントロール群の動物と違わない。このマーカーはいずれのGg+G+CT−1群でも見られず、これは、CT−1の保護効果を表している(図7)。
急性腎クリアランス(Acute kidney clearance)
イヌリンクリアランスについて得られた結果では、ゲンタマイシンおよびヨウ化造影剤で治療した群(Gg+G)において、糸球体ろ過率(GFR)が減少し、CT−1により回復している(図8)。腎血漿流量(RPF)は、同様のパターンに従う:ゲンタマイシンおよび造影剤で治療した群では減少し、CT−1による同時治療では回復する(図9)。さらに、ゲンタマイシンおよびガストログラフインの投与は、腎血管抵抗(RVR)を増加させたが(図10)、これは、腎臓を通る血液の流れを妨げる血管収縮因子の放出が障害されていること(または、血管拡張因子の効果が阻害されていること)を示唆している(この種の薬剤について既に説明されている情報)。CT−1をゲンタマイシンおよびガストログラフインと同時投与することにより、RVRの増加が和らげられた。
2.カルジオトロフィン−1が、シスプラチンによってもたらされる急性腎障害に及ぼす効果の研究
体重約220グラムの雄性ウィスターラット24匹において、実験を実施した。動物の環境条件を一定に維持した:温度約20℃、湿度約60%および1日の明期(照光時間)12時間。
動物およびそれらの飼育に関するすべての工程は、University of Salamancaの施設内ガイドラインに準拠し、スペイン国法(法令121/000123/2007/スペイン;RD 1201/2005/CyL)および国際法(指令2003/65/EC)を遵守していた。
1群あたりラット6匹を含む4つの実験群に動物を分けた。シスプラチンによる単独治療の1日前に、カルジオトロフィン−1による7日間の毎日治療を開始した。実験の設計は、下記のように行った:
・群I(コントロール、C、n=動物6匹)ビヒクルで7日間静脈内(i.v.)治療した動物。
・群II(カルジオトロフィン−1、CT−1、n=動物6匹)1日用量のカルジオトロフィン−1(100μg/kg体重)を7日間静脈内(i.v.)投与した動物。
・群III(シスプラチン、P、n=動物6匹)単回用量のシスプラチン(6mg/kg体重)を腹腔内(i.p.)投与した動物。
・群IV(カルジオトロフィン−1−シスプラチン、CT1−P、n=動物6匹)それぞれ群IIおよび群IIIと同じ用量および投与経路のカルジオトロフィン−1およびシスプラチンで治療した動物。
生存
動物の生存は、毒物学的研究の変化についての有意なデータを表す。図11は、実験時間中の4つの研究群における動物の生存を表す。
コントロール群については、カルジオトロフィン−1、6mg/kgの用量のシスプラチンおよびシスプラチン−カルジオトロフィンによる治療は、実験期間全体にわたって動物の生存を変化させなかった(図11)。
一般状態および体重
動物の一般状態および体重は、薬物効果を視覚的に評価する際の重要な一面である。図12は、実験期間中の4つの研究群における動物の体重を表す。
6mg/kgの用量のシスプラチンによる抗新生物剤治療は、動物の体重の有意な減少を誘導するが、この減少は、カルジオトロフィン−1で同時治療した動物群では有意に少なかった。この事実は、カルジオトロフィン−1の同時投与中の抗腫瘍治療および劇的な改善の結果として実質的な悪化が観察されたという動物の身体状態についての外部評価によって裏付けられた。カルジオトロフィン−1に関する限りは、カルジオトロフィン−1群は、研究期間全体にわたって体重の増加を示しており、コントロール群に対して明確な違いはない(図12)。
尿流
尿流の変化は、薬理学的治療によってもたらされる腎障害についての特に意義深い追加情報を表している。図13は、4つの実験治療群における研究動物の尿流についての変化を表す。6mg/kgの用量のシスプラチンによる細胞増殖抑制治療は、軽度の二相性多尿症を誘導する。しかしながら、カルジオトロフィン−1およびシスプラチンの同時投与は、実験期間中の尿流について一定の変化を示しており、コントロール群およびカルジオトロフィン−1群に対して有意差はない。この事実は、シスプラチン腎症におけるカルジオトロフィン−1による明確な腎保護を表している(図13)。
基本的な腎機能
腎機能の安全かつ有効なパラメータとして血漿クレアチニンの測定は、薬物腎毒性の特徴的なマーカーに相当する。図14は、研究期間中の4つの実験群の動物の血漿クレアチニンについての変化を表す。6mg/kgの用量のシスプラチンによる抗新生物剤治療は、主に胞増殖抑制治療の2日目から、血漿クレアチニンの著しい増加を誘導するが、この増加は、カルジオトロフィン−1で同時治療した動物群では有意に少なかった。100μg/kgのカルジオトロフィン−1で7日間連続で静脈内治療することにより抗腫瘍薬物によって誘発される腎毒性を保護および回復できるというこの事実により、シスプラチンによる急性腎障害は可逆性であることが分かる。カルジオトロフィン−1に関する限りは、カルジオトロフィン−1群は、評価した前記腎臓パラメータについて、コントロール群に対して変化を示していない(図14)。
器官の重量
様々な器官の重量についての変化は、薬物の毒性活性についての研究の補足情報を構成するものである。図15は、実験期間終了時における4つの研究群の様々な器官の重量(動物の体重に対する)を示す。
6mg/kgの用量のシスプラチンによる抗腫瘍治療は、腎臓の最終重量の有意な増加をもたらすが、この増加は、カルジオトロフィン−1で同時治療した動物群では実質的に少なかった(図15、左上のパネル)。この事実は、シスプラチンによる急性毒性障害では、カルジオトロフィン−1による治療によって腎臓の保護がなされることを再度裏付けている。しかしながら、評価したその他の器官(心臓、肺および肝臓)の最終重量は、コントロール群に対して有意な変化を示さず、これは、シスプラチンに特徴的な腎毒性およびカルジオトロフィン−1の保護効果についての理論を裏付けている。カルジオトロフィン−1に関する限りは、カルジオトロフィン−1群は、体重の変化について、コントロール群に対して変化を示していない(図15)。
3.カルジオトロフィン−1が、ゲンタマイシンによってもたらされる急性腎障害に及ぼす効果の研究
実験群:
a)コントロール(C):ビヒクルを1日1回静脈内投与(i.v.)(n=6)。
b)CT−1:CT−1(100μg/kg/日、静脈内投与(i.v.))を7日間、(n=6)。
c)G:ゲンタマイシン(150mg/kg/日、腹腔内投与(i.p.))を6日間。(n=6)。
d)G+CT−1:CT−1(100μg/kg/日、静脈内投与(i.v.))を7日間、および2日目からゲンタマイシンを6日間同時投与(150mg/kg/日、腹腔内(i.p.))。(n=6)。
生存
コントロール群(C)およびCT−1群では、すべての動物が実験終了まで生存した。G群およびG+CT−1群では、各群の動物が1匹死亡した。
一般状態および体重の変化
コントロール群(C)およびCT−1群の動物は、実験全体を通して健康な様子および正常な運動性を示した。しかしながら、ゲンタマイシンで治療した動物は、より悪化した様子、運動性の低下および毛のわずかな着色を示した。これらの症候は、G+CT−1群の動物では有意に軽減された。図16で観察されているように、Gを投与したラットの体重は、コントロール群およびCT−1群のものに対してわずかな減少を示した。CT−1は、Gによってもたらされた体重減少を部分的に緩和した。
血圧および心拍数
コントロール群(C)およびG群では、実験の結果として、収縮期血圧(SBP)がわずかに増加した。このわずかな増加は、CT−1を投与した群では観察されなかった(図17、上のパネル)。心拍数は、実験全体を通してすべての群で等しくごくわずかに増加した(図17、下のパネル)。
臓器の重量
殺処分時において、右腎および心臓の重量(体重に対する)は、治療の結果として変化しなかった。肝臓の場合、CT−1は一定の肝腫大を誘発したが、これは、G(G+CT−1)で同時治療した群では消失した。Gそれ自体は、肝臓の重量を相対的に減少させる傾向も示し、CT−1の肥大作用を和らげた。しかしながら、CT−1は著しい脾腫を誘発し、これは、Gによる同時治療によって改善されなかった(図18)。
腎機能
Gは明らかな急性腎不全をもたらしたが、これは、尿素およびその誘導体(血漿尿素濃度として同時に測定)およびクレアチニンなどの代謝産物の血中蓄積(図19および図20)、ならびにクレアチニンクリアランスの劇的な減少(糸球体ろ過率の測定結果として)(図21)によって明らかになった。同様に、Gは高タンパク尿(図22)をもたらしたが、これは、この抗生物質の腎毒性についての専門書によれば尿細管に由来し、このコンパートメントの損傷および機能的変化に起因する。CT−1をGと一緒に投与することにより、クレアチニンクリアランスの減少、血漿クレアチニンおよび尿素濃度の増加、ならびにタンパク尿の増加が部分的に元に戻った(図19〜図22)。単独で投与したCT−1は、これらのパラメータのいずれも変化させなかった(図19〜図22)。
個別に投与したGおよびCT−1はいずれも、コントロール群(C)の動物よりも尿流を改善しなかった。しかしながら、これら2つの化合物の同時投与は相乗効果をもたらし、その他の群よりも3〜4倍高い値に達するまで尿流を徐々に増加させた(図23)。
腎組織の完全性
GおよびCT−1が作用した後の腎組織の状態は、腎臓切片の組織学的研究によって、および組織の損傷および修復過程に関連する組織および尿マーカーを測定することによって決定した。腎皮質を表す写真を有する図24に示されているように、ゲンタマイシンは、腎臓の皮質領域で大規模な尿細管壊死を引き起こし、そこでは、完全壊死した多くの尿細管および部分壊死したその他の尿細管が観察されるが、これはこの薬物の腎臓に対する効果についての知識と一致する。CT−1による同時治療は、尿細管損傷の拡大を中程度かつ部分的に防止し、完全壊死および部分壊死した尿細管はより少ないことが観察される。しかしながら、CT−1で同時治療した場合でさえも、ゲンタマイシンは、著しい尿細管損傷をもたらす。一般的には、これらの結果は、腎臓の損傷および修復マーカーについての生化学的分析と一致する。したがって、図25で観察されているように、Gで治療した動物では、N−アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)(これは、とりわけ尿細管損傷の指標となるリソソーム酵素である)の尿中排泄が非常に増加しており、これは、それがそのコンパートメントにおいてもたらす激しい損傷と一致する。CT−1はこのNAG排泄の増加、特に損傷の1日目にもたらされる準最大値を軽減する。CT−1がNAG排泄に及ぼす効果のプロファイルは、タンパク尿のものとほぼ同一であり、尿細管損傷に関する結果を補強している。
図26は、Gによる治療が、KIM−1、および尿中の抗KIM−1抗体に対する反応性バンドの腎臓レベルの明らかな増加をどの程度誘導するかを示す。CT−1は、コントロールと比較していかなる効果ももたらさない。しかしながら、CT−1は、Gがもたらす腎臓のKIM−1発現の増加をあまり減少させないことが観察できる。これは、とりわけ、再生過程が、Gで治療した動物と同じように活発に継続することを示し得る。しかしながら、尿中のKIM−1についての上のバンド(約90kDa)は部分的に減少していることが観察され、これは、損傷の部分的な軽減と合致する。
NGAL(「好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン」)は、炎症過程に関するリポカリンである。それは、種々の形態の腎障害で増加していることが検出されており、組織中および尿中の両方において、それは、最初期かつ最も感度の高い腎障害マーカーの1つとして提案されている。図26では、GおよびCT−1の両方が、腎臓および尿中のNGALの増加をどの程度誘導するかを観察できる。
4.カルジオトロフィン−1が、腎虚血/再灌流によってもたらされる急性腎障害に及ぼす効果の研究
腎虚血/再灌流(I/R)は急性腎不全の典型的な原因であり、腎臓移植では、急性尿細管壊死または移植片機能の初期遅延または腎機能の遅延(DRF)を引き起こし得る。I/Rは急性拒絶反応の発生と相関しており(Matas AJ.et al.Transplantation.2000;69(1):54−58)、臨床的および実験的な証拠により、I/Rによる損傷が同種移植による慢性腎不全のリスク因子であることも同定されている。
11の動物群をアッセイした。それらの各1群は、60分間の左腎虚血に付した5匹のラットによって形成される。
1.IR4h C。生理食塩水血清。4時間の再灌流。
2.IR4h CT−1。400μg/kg。4時間の再灌流。
3.IR24h C。生理食塩水血清。24時間の再灌流。
4.IR24h CT−1。400μg/kg。24時間の再灌流。
5.IR3d C。生理食塩水血清。3日間の再灌流。
6.IR3dCT−1。400μg/kg。3日間の再灌流。
7.IR7d C。生理食塩水血清。7日間の再灌流。
8.IR7d CT−1。400μg/kg。7日間の再灌流。
9.IR14d C。生理食塩水血清。14日間の再灌流。
10.IR14d CT−1。400μg/kg。14日間の再灌流。
11.偽ラット群(Sim)。
虚血を行った30分後に、500μlの生理食塩水血清(IR C群)または400μg/kgのCT−1(500μlの生理食塩水血清中)(IR CT−1群)を陰茎静脈によりラットに投与した。右腎摘出に付した動物を偽群として含めた。
生存
I/Rによる腎障害に対するCT−1の保護効果を調べる目的で、生存研究を実施した。I/R14日後、未治療虚血群(IR14d C)は40%の死亡率を示したが、IR14d CT−1群では、動物の20%が死亡した(図27)。
腎機能
I/R48時間後において、IRの動物では、血漿クレアチニンは偽群(Sim)の動物よりも著しく高かったが、IR CT−1群では、血漿クレアチニンはIR Cよりも著しく低く、偽群のラットに対して有意差はなかった。(図28A)。
I/R48時間後において、IR C群では、クレアチニンクリアランスは偽群の動物よりも著しく低かったが、IR CT−1のラットでは、それはIR Cの動物よりも有意に高かった(図28B)。
スーパーオキシドアニオンO (SOA)生成の測定
血流が回復した4時間後において、虚血コントロール群(IR C)では、腎臓のスーパーオキシドアニオン(SOA)レベルは、偽群およびIR CT−1群よりも有意に高かった。CT−1群から得られたデータは、虚血コントロール群(IR C)のものよりも有意に低かったが、偽群のものよりも有意に高かった(図29)。好中球およびマクロファージの浸潤は、I/R誘発性組織炎症の重要な段階であるので、ミエロペルオキシダーゼ活性(MPO)を腎組織で測定した。虚血コントロール群(IR C)では、腎臓のミエロペルオキシダーゼ活性(MA)レベルは偽群よりも5倍以上高く、また虚血コントロール群ではCT−1群よりも有意に高かった。IR CT−1群の動物は、偽群で得られたものと類似の値を有していた(図30)。
炎症誘発性サイトカイン生成の測定
虚血再灌流は、再灌流4時間後において、血漿の炎症誘発性サイトカインレベルの大幅な増加を誘導した。IR C群では、TNF−α(図31A)、IL−1β(図31B)およびIFN−γ(図31C)のレベルは、偽群よりもそれぞれ11倍、6倍および4倍高かった。CT−1による治療は、IRによって誘導されるこれら3つのサイトカインの上昇を遮断した。さらに、血漿のIL−6(図31D)およびIL−10(図31E)レベルは、虚血および再灌流後に減少した。CT−1を投与した動物では、この減少は観察されなかった(図31Dおよび図31E)。
腎組織の完全性
再灌流24時間後において、コントロールの虚血腎臓では、壊死した尿細管細胞および空胞化した多くの尿細管細胞によって形成されたヒアリン残留物(hyaline residue)によって、多くの細胞が閉塞していることが、組織学的研究によって明らかになった。CT−1で治療した腎臓では、閉塞した尿細管および空胞化した細胞は、コントロールの腎臓よりも少なかった(図32)。再灌流48時間後において、コントロールの虚血腎臓は、剥離した多くの尿細管および多くの炎症浸潤領域を示した。CT−1で治療した腎臓では、剥離した尿細管および浸潤は、コントロールの腎臓よりも少なかった(図33)。
結論
抗CT−1抗体の投与は、CT−1遮断の結果として炎症過程を誘発することによって、虚血/再灌流(I/R)に付したマウスにおける腎損傷の重症度の有意な増加を誘導する。セクションAで得られた結果は、I/R誘発性腎損傷からの腎臓保護におけるCT−1の役割を強調している。
得られた結果から、本発明者らの造影剤腎症実験モデル(ゲンタマイシンで感作した動物)では、静脈内投与(100μg/kg/日)した組換えヒトCT−1は、腎排泄機能の低下および尿細管損傷の程度を軽減すると言うことができる。さらに、CT−1は、造影剤誘発性腎毒性に関与する血管作用および糸球体作用から保護し得る。
薬物、具体的には抗新生物薬(シスプラチンなど)による急性腎毒性の研究については、本結果から、以下のように結論付けることができる:
1. 6mg/kgの単回用量のシスプラチンで雄性ウィスターラットを腹腔内治療することは、薬物による急性腎毒性の研究に適切なin vivo実験モデルである。
2. 100μg/kg/日の用量のカルジオトロフィン−1をラットに7日間静脈内投与することは、6mg/kgの用量のシスプラチンで誘発される腎障害に対して保護効果を発揮する。
ゲンタマイシンによって誘発される急性腎毒性の研究については、本結果は、静脈内投与(100μg/kg/日、7日間−Gによる治療を開始する1日前からその全期間にわたる−)した組換えヒトCT−1が、ウィスターラットにおいてゲンタマイシンによってもたらされる急性腎障害に対して保護効果を有することを実証している。CT−1は、腎排泄機能の低下およびゲンタマイシン誘発性腎尿細管損傷の程度を軽減する。
虚血/再灌流によって誘発される急性腎障害のモデルについては、CT−1の投与は、急性腎障害、腎機能の低下、酸化ストレスおよび虚血/再灌流誘発性炎症を防止する。

Claims (60)

  1. 急性腎障害の予防および/または治療に用いられるカルジオトロフィン−1活性(CT−1)を誘導する化合物であって、前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、(i)カルジオトロフィン−1(CT−1)、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体、
    (ii)CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチド、
    (iii)(ii)のポリヌクレオチドを含むベクター、および
    (iv)カルジオトロフィン−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体を培地に分泌することができる細胞
    からなる群から選択されるものである、化合物。
  2. 前記急性腎障害が、腎前性原因による急性腎障害および腎性原因による急性腎障害の群から選択されるものである、請求項1に記載の用途の化合物。
  3. 前記急性腎障害が腎前性原因によるものである、請求項2に記載の用途の化合物。
  4. 前記腎前性原因による急性腎障害が、被験体を虚血に曝露することによって引き起こされる急性腎障害、および虚血後再灌流によって引き起こされる急性腎障害から選択されるものである、請求項3に記載の用途の化合物。
  5. 前記急性腎障害が腎性原因によるものである、請求項2に記載の用途の化合物。
  6. 前記腎性原因による急性腎障害が、腎毒性薬剤によって引き起こされるものである、請求項5に記載の用途の化合物。
  7. 前記腎毒性薬剤が、造影剤、抗生物質、免疫抑制剤および抗新生物剤の群から選択されるものである、請求項6に記載の用途の化合物。
  8. 前記造影剤が、ヨウ素含有造影剤、臭素含有造影剤、バリウム含有造影剤、ガドリニウム含有造影剤およびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項7に記載の用途の化合物。
  9. 前記造影剤がヨウ素を含有するものである、請求項8に記載の用途の化合物。
  10. 前記ヨウ素含有造影剤が、ジアトリゾ酸およびその塩、メトリゾ酸およびその塩、イオキサグル酸およびその塩、イオタラム酸およびその塩、イオパミドール、イオヘキソール、イオキシラン、イオプロミド、イオベルソール、イオジキサノール、メトリザミドならびにそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項9に記載の用途の化合物。
  11. 前記ヨウ素含有造影剤が1つ又はそれ以上のジアトリゾ酸塩である、請求項10に記載の用途の化合物。
  12. 前記ヨウ素含有造影剤が、ジアトリゾ酸ナトリウムおよびジアトリゾ酸メグルミンの組み合わせである、請求項11に記載の用途の化合物。
  13. 前記抗生物質が、アミノグリコシドおよびセファロスポリンの群から選択されるものである、請求項7に記載の用途の化合物。
  14. 前記アミノグリコシド抗生物質が、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルミシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、シソマイシン、ネオマイシンおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項13に記載の用途の化合物。
  15. 前記アミノグリコシド抗生物質がゲンタマイシンである、請求項14に記載の用途の化合物。
  16. 前記免疫抑制剤が、シクロスポリンA、タクロリムス(FK506)およびエベロリムスから選択されるものである、請求項7に記載の用途の化合物。
  17. 前記抗新生物剤が、白金系化合物、代謝拮抗物質、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤およびそれらの組み合わせの群から選択される、請求項7に記載の用途の化合物。
  18. 前記白金系化合物が、シスプラチン、カルボプラチンおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項17に記載の用途の化合物。
  19. 前記化合物がシスプラチンである、請求項18に記載の用途の化合物。
  20. 前記代謝拮抗物質が、メトトレキサート、ペントスタチン、5−アザシチジン、ヒドロキシウレアおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項17に記載の用途の化合物。
  21. 前記DNAアルキル化剤が、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、イホスファミド、マイトマイシンCおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項17に記載の用途の化合物。
  22. 前記トポイソメラーゼIまたはII阻害剤が、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシンおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項17に記載の用途の化合物。
  23. 前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、腎毒性薬剤と一緒に同時投与されるものである、請求項6〜22のいずれか一項に記載の用途の化合物。
  24. 前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、静脈内経路によって投与されるものである、請求項1〜23のいずれか一項に記載の用途の化合物。
  25. 前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、配列番号1のヒト由来CT−1である、先行する請求項のいずれか一項に記載の用途の化合物。
  26. 前記カルジオトロフィン−1が、100μg/kg/日の用量で投与されることを特徴とする、請求項25に記載の用途の化合物。
  27. 前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、腎排泄機能の低下を軽減するものである、先行する請求項のいずれか一項に記載の用途の化合物。
  28. カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与が、IL−6ファミリーメンバーの可溶性受容体またはその断片の非存在下で実施されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の用途の化合物。
  29. 前記可溶性受容体が、CT−1受容体またはその断片である、請求項28に記載の用途の化合物。
  30. カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物の投与が、後腎間充織成長因子の非存在下で実施されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の用途の化合物。
  31. カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と、腎毒性薬剤とを、共にまたは個別に含んでなる組成物。
  32. 前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、
    (i)カルジオトロフィン−1(CT−1)、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体、
    (ii)CT−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、機能的に同等なCT−1変異体をコードするポリヌクレオチド、
    (iii)(ii)のポリヌクレオチドを含むベクター、および
    (iv)カルジオトロフィン−1、またはCT−1と少なくとも60%の同一性を有する、その機能的に同等な変異体を培地に分泌することができる細胞
    からなる群から選択されるものである、請求項31に記載の組成物。
  33. 前記腎毒性薬剤が、造影剤、抗生物質、免疫抑制剤および抗新生物剤の群から選択されるものである、請求項31または32のいずれか一項に記載の組成物。
  34. 前記造影剤が、ヨウ素含有造影剤、臭素含有造影剤、バリウム含有造影剤、ガドリニウム含有造影剤およびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項33に記載の組成物。
  35. 前記造影剤がヨウ素を含有するものである、請求項34に記載の組成物。
  36. 前記ヨウ素含有造影剤が、ジアトリゾ酸およびその塩、メトリゾ酸およびその塩、イオキサグル酸およびその塩、イオタラム酸およびその塩、イオパミドール、イオヘキソール、イオキシラン、イオプロミド、イオベルソール、イオジキサノール、メトリザミドならびにそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項35に記載の組成物。
  37. 前記ヨウ素含有造影剤が1つ又はそれ以上のジアトリゾ酸塩である、請求項36に記載の組成物。
  38. 前記ヨウ素含有造影剤が、ジアトリゾ酸ナトリウムおよびジアトリゾ酸メグルミンの組み合わせである、請求項37に記載の組成物。
  39. 前記抗生物質が、アミノグリコシドおよびセファロスポリンの群から選択されるものである、請求項33に記載の組成物。
  40. 前記アミノグリコシド抗生物質が、ゲンタマイシン、トブラマイシン、アミカシン、ネチルミシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、シソマイシン、ネオマイシンおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項39に記載の組成物。
  41. 前記アミノグリコシド抗生物質がゲンタマイシンである、請求項40に記載の組成物。
  42. 前記免疫抑制剤が、シクロスポリンA、タクロリムス(FK506)およびエベロリムスから選択されるものである、請求項33に記載の組成物。
  43. 前記抗新生物剤が、白金系化合物、代謝拮抗物質、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤およびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項33に記載の組成物。
  44. 前記白金系化合物が、シスプラチン、カルボプラチンおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項43に記載の組成物。
  45. 前記化合物がシスプラチンである、請求項44に記載の組成物。
  46. 前記代謝拮抗物質が、メトトレキサート、ペントスタチン、5−アザシチジン、ヒドロキシウレアおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項43に記載の組成物。
  47. 前記DNAアルキル化剤が、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、イホスファミド、マイトマイシンCおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項43に記載の組成物。
  48. 前記トポイソメラーゼIまたはII阻害剤が、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシンおよびそれらの組み合わせの群から選択されるものである、請求項43に記載の組成物。
  49. 同時投与、個別投与または連続投与されるものである、請求項31〜48のいずれか一項に記載の組成物。
  50. 前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、静脈内経路によって投与されるものである、請求項31〜49のいずれか一項に記載の組成物。
  51. 前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、配列番号1のヒト由来CT−1である、請求項31〜50のいずれか一項に記載の組成物。
  52. 前記カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物が、腎排泄機能の低下を軽減するものである、請求項31〜51のいずれか一項に記載の組成物。
  53. IL−6ファミリーメンバーの可溶性受容体またはその断片を含まない、請求項31〜52のいずれか一項に記載の組成物。
  54. 前記可溶性受容体が、CT−1受容体またはその断片である、請求項53に記載の組成物。
  55. 後腎間充織成長因子を含まない、請求項31〜54のいずれか一項に記載の組成物。
  56. 診断剤として用いられる組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と造影剤とを含んでなる、組成物。
  57. 抗生物質による腎毒性の予防および/または治療に用いられる組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗生物質とを含んでなる、組成物。
  58. 免疫抑制剤による腎毒性の予防および/または治療に用いられる組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と免疫抑制剤とを含んでなる、組成物。
  59. 抗新生物剤による腎毒性の予防および/または治療に用いられる組成物であって、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と抗新生物剤とを含んでなる、組成物。
  60. 診断剤を調製するための、カルジオトロフィン−1活性を誘導する化合物と造影剤とを含んでなる組成物の使用。
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