JP2014521349A - Jcウイルスdna検出のためのアッセイ - Google Patents
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Abstract
一つの態様において、本開示により、脳脊髄液(CSF)試料から核酸を単離する方法が提示される。一つの態様において、本開示により、試料中のJCウイルスDNAの量を測定する方法が提示される。
【選択図】 無
Description
本出願は、米国特許法第119条(e)のもと、2011年7月29日に出願された米国仮特許出願第61/513,483号の優先権を主張し、その内容は、参照により本明細書に全体で援用される。
本発明は、生物学的試料中にある核酸の検出に関する。
JCウイルス(JCV)は、進行性多巣性白質脳症(PML)と呼ばれる中枢神経系(CNS)の稀な疾患を引き起こすことで知られる、ヒトポリオーマウイルスである。脳脊髄液(CSF)中のJCVの検出はPMLの確認試験であるが、技術的に非常に難しい。それゆえ、CSF中のJCVの検出および定量のための分析法の改善が求められている。
本発明の様々な態様が提示されるが、とりわけ、脳脊髄液試料から、たとえばJCウイルス(JCV)のDNA等の核酸を単離するための方法およびキットが提示される。本発明の態様によると、ウイルスがいないと考えられている生物学的試料(たとえば、標準的な技法を用いてJCVがいないと同定されたCSF試料)が、実際には、本明細書に記述される技術を用いれば検出できるウイルス(たとえば、JCV)を含有している。JCVは少量でしか存在していないため、一部の例においては、脳脊髄液試料中のJCVの存在を検出することは非常に困難なことであり、偽陰性所見となってしまうことがある。本明細書の一部の態様において、一つには、脳脊髄液試料から単離され得る核酸収率を増加させることにより、偽陰性の結果を減少させる新規の核酸検出法およびキットが記述される。一部の例においては、現在の技法(たとえば、多量の脳脊髄液)で用いられているよりも多い、開始材料をもたらすことにより、および/または、より少ない担体(たとえば、低濃度のRNA)をもたらすことにより達成することができるが、本発明はこの点に限定されない。
ゆえに、一部の態様において、本発明は、脳脊髄液試料から核酸を単離する方法を提示し、その方法には、担体核酸および/またはプロテアーゼをCSF試料に添加し、担体核酸および/またはプロテアーゼを含有する試料をインキュベートし、インキュベートされた試料を核酸結合カラムにアプライし、試料がアプライされたカラムを洗浄し、および、溶離液をカラムにアプライして核酸の単離を得ることが含まれる。一部の実施態様においては、CSF試料の量は、少なくとも1mlである。一部の実施態様においては、担体核酸は、担体RNAである。一部の実施態様においては、脳脊髄液試料中の担体RNAの濃度は、約2.8μg/ml以下(または、2.8μg/mlであるか、または、未満)である。本発明により、一つ以上の任意の前記工程(たとえば、任意の単一工程、または任意の二つ、三つ、四つまたは五つの前記工程の組み合わせ)を含む(または、からなる、または、実質的に、からなる)方法が予期されることを理解されたい。一部の実施態様において、方法にはまた、追加の工程が含まれてもよい。また、本発明により、工程(複数含む)を1回以上実行すること(たとえば、洗浄工程は2回以上実行するほうが有益でありうる)が予期される。また他の例としては、溶出工程を1回より多く実行することが有益でありうる。そのような例として、溶出された核酸は、任意の標準技法(たとえば、エタノール沈殿)によりさらに濃縮されてもよい。また本発明により、1つ以上の前記工程を省略または置換することが予期される。たとえば、一部の例において、他の固相抽出物質(たとえば、シリカ等)を結合カラムの代わりに用いて核酸を捕捉および/または精製してもよい。
1つの態様において、本開示により、試料中のJCウイルス(JCV)の量を測定するための方法、キットおよび核酸が提示される。JCVは、進行性多巣性白質脳症(PML)と呼ばれる中枢神経系(CNS)の稀な疾患を引き起こすことで知られる、ヒトポリオーマウイルスである。JCVはBKウイルス(ヒトに普遍的に感染しているが、PMLは引き起こさないポリオーマウイルス科の他のウイルス)と約75%のヌクレオチド相同性を有している。
当初、HIV感染の主要な合併症として同定されたが、近年になり、免疫抑制治療抗体が、PMLの発生率の増加と関連づけられている。一部の実施態様において、中枢神経系におけるJCVの検出は、患者のPMLの存在を確定する重要な工程である。CSF中のJCVの早期検出は、PMLに対する早期治療を(たとえば、疾患の重篤な症状が進行する前に)開始するための基準として用いることができる。従って、JCVの早期検出は、患者の良好な予後にとって重要でありうる。一部の実施態様において、本発明の態様は、生物学的試料(たとえば、CSF試料)中のJCV検出感度を増加させることができる分析技法および試薬に関する。一部の実施態様において、本明細書に記述されるリアルタイムPCR分析法は、10コピー/mLの感度で、ヒトCSF中のJCVを特異的に検出する。
本発明の態様は、PMLの兆候または症状(たとえば、早期兆候または早期症状)を有する患者のPMLを確定診断するための方法および組成物に関する。一部の実施態様において、患者のCSF中のJCVの存在は、PMLの診断となる(たとえば、患者がPMLの他の兆候または症状を一つ以上有している場合)。一部の実施態様において、患者のCSF中のJCVの存在は、患者がPMLのリスクがあるという決定に有益であり得る。特に、本発明は、患者の免疫システムが不全または抑制されている場合に、その患者がPMLを発症するリスクがあるかどうかを決定するための方法および組成物を提示する。たとえば、本発明の態様は、JCV感染の存在によりPMLを発症する患者のリスク閾値を測定することにより、免疫抑制剤(たとえば、ナタリズマブまたは他の免疫抑制剤)を伴う治療を開始または継続するのに患者が適しているかどうかを決定することに関する。患者CSF中のJCVの存在をPMLの診断に用いた場合(たとえば、PMLの早期診断)、次いで、患者はPMLに対して治療されてもよく、および/または、患者が受療している免疫抑制療法を、適切な場合には、中断してもよいということを理解されたい。
従って、一部の実施態様において、本発明の態様は、担体核酸およびプロテアーゼをCSF試料に添加し、担体核酸およびプロテアーゼを含有する試料をインキュベートし、インキュベートされた試料を核酸結合カラムにアプライし、試料がアプライされたカラムを洗浄し、および、カラムに溶離液をアプライして核酸の単離を得ることによる、脳脊髄液(CSF)試料から核酸を単離する方法に関する。
一部の実施態様において、CSF試料の量は、少なくとも1mlである。一部の実施態様において、担体核酸は担体RNAである。一部の実施態様において、結果として生じるCSF試料中の担体RNAの濃度は、2.8マイクログラム/ml以下である。一部の実施態様において、試料のインキュベートには、室温(RT)で試料をインキュベートする第一の工程、およびRT超の温度で試料をインキュベートする第二の工程が含まれる。一部の実施態様において、インキュベートの工程は、15分の長さである。一部の実施態様において、RT超の温度は56℃である。一部の実施態様において、カラムの洗浄には、カラムに洗浄バッファーを添加すること、および4000gの遠心力でカラムを回転させることが含まれる。一部の実施態様において、溶離液のアプライには、少なくとも2回、カラムに溶離液をアプライすることが含まれる。一部の実施態様において、溶離液は、5分間、カラム上でインキュベートされる。一部の実施態様において、30マイクロリットルの溶離液がアプライされる。一部の実施態様において、CSF試料中の核酸はDNA(たとえば、ウイルスDNA(たとえば、JCV DNAまたは他のウイルスDNA))である。
一部の実施態様において、核酸(たとえば、DNA(たとえば、ウイルスDNA))は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)を実行しJCウイルスDNA量を測定することにより分析される。しかし、他の検出法(たとえば、他のPCR法、他の増幅法、他のハイブリダイゼーションを基にした方法、一つ以上のシークエンス法等)が用いられても良い。一部の実施態様において、リアルタイムPCRプライマーおよびプローブは、JCウイルスT抗原をコードする配列を目的とするものである。一部の実施態様において、リアルタイムPCRプライマーおよびプローブの配列はそれぞれ、配列番号1〜2、および配列番号3である。
一部の実施態様において、本発明の態様は、試料でリアルタイムPCRを実施することによる、試料中のJCウイルスDNA量を測定する方法に関し、リアルタイムPCRプライマーおよびプローブは、JCウイルスT抗原をコードする配列を目的とするものである。一部の実施態様において、リアルタイムPCRプライマーおよびプローブの配列はそれぞれ、配列番号1〜2、および配列番号3である。
一部の実施態様において、本発明の態様は、脳脊髄液(CSF)試料から核酸を単離するキットに関するものである。一部の実施態様において、キットには、プロテアーゼ、担体核酸、核酸結合カラムおよび/または使用説明書が含まれる。一部の実施態様において、キットにはさらに、JCウイルスT抗原コード配列を目的とするリアルタイムPCRプライマーおよびプローブが含まれる。一部の実施態様において、リアルタイムPCRプライマーおよびプローブの配列はそれぞれ、配列番号1〜2、および配列番号3である。
一部の実施態様において、本発明の態様はウイルスの保存配列(たとえばJCVの保存配列(たとえば、T抗原コード配列))に、(たとえばストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で)特異的にハイブリダイズする核酸プライマーに関する。一部の実施態様において、核酸は、配列番号1、配列番号2、もしくは配列番号3である、または、核酸は、配列番号1、配列番号2、もしくは配列番号3を含む。
本発明のこれらの態様および他の態様は、本明細書においてより詳細に記述される。
一部の実施態様において、本発明の態様は、患者のPMLのリスクを評価するために、患者試料中のJCVを検出することに関する。JCVの初期感染は多くの場合、幼少期に無症候性に発生する(Padgett & Walker, 1973)が、JCVは通常は、おそらくはウイルス血症により体中に広がる(Ikegaya et al., 2004)。JCVの感染はほとんどの患者で無症候性である一方、一部の患者においては、感染により(PMLのような)重篤な状態が引き起こされ、さらには死に至ることもある。PMLに最も感受性が高い患者は、免疫不全の患者(たとえば、AIDS患者)、またはたとえば、臓器移植後、または多発性硬化症等の炎症関連疾患の治療のために免疫抑制剤(たとえば、ナタリズマブまたは他の免疫抑制性薬剤等)の治療を受けている患者である。
JCVはほとんどの場合、腎臓でPMLを発症せずに持続感染し、脳内のJCVの存在がPMLに関連すると考えられている。従って、一部の実施態様において、本発明の態様はCSF中のJCVを検出することに関する。しかしながら、本発明の方法および組成物はまた、尿、血液、腎組織または他の患者試料中のJCV検出にも有益でありうる。
一つの態様において、本開示により、脳脊髄液(CSF)試料から核酸を単離する方法が提示される。一部の実施態様において、方法には、担体核酸およびプロテアーゼをCSF試料に添加し、担体核酸およびプロテアーゼを含有する試料をインキュベートし、インキュベートされた試料を核酸結合カラムにアプライし、試料がアプライされたカラムを洗浄し、および、カラムに溶離液をアプライして核酸の単離を得ることが含まれる。
脳脊髄液は、脳および脊髄を包み、保護する体液である。通常、この体液はタンパク質および白血球を含有する透明な液体である。一般的に、CSFは腰椎穿刺(脊椎穿刺)により患者から得られる。腰椎穿刺は患者にとって不愉快な処置であり、腰椎穿刺の回数は最小限とするべきである。脳および/または中枢神経系を侵す様々な疾患(髄膜炎、脳腫瘍および脳内出血を含む)が、CSFを分析することにより診断することができる。脳へのウイルス感染(たとえば、JCウイルスによる感染)は、CSF中のウイルスDNAの量を定量することにより、および/または、CSF中のウイルスDNAの存在を検出することにより診断することができる。CSF中のウイルスDNA(またはウイルスRNA)の量は少ない可能性があるため、ウイルスが少量であっても正確に検出することができる診断技術を有することが重要である。
核酸の単離
一つの態様において、本開示はCSF試料からの核酸の単離方法を提示する。一部の実施態様において、核酸はDNAである。一部の実施態様において、DNAウイルス(たとえば、JCV)由来のDNAを、CSFから単離する。本明細書に記述される方法は、他の核酸(たとえば、他のウイルスもしくは他の微生物源もしくは患者源からのDNAまたはRNA)を単離するために用いることができることを理解されたい。一部の実施態様において、核酸はヒトの核酸(すなわち、ヒトゲノム中に見いだされるもの)である。一部の実施態様において、核酸はウイルス核酸である。一部の実施態様において、核酸はウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸はJCウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸は、本明細書に提示される単離法を適用する前に、(たとえば、基準としての使用のために)CSF試料に添加される(すなわち、「混合される」)。
一つの態様において、本開示はCSF試料からの核酸の単離方法を提示する。一部の実施態様において、核酸はDNAである。一部の実施態様において、DNAウイルス(たとえば、JCV)由来のDNAを、CSFから単離する。本明細書に記述される方法は、他の核酸(たとえば、他のウイルスもしくは他の微生物源もしくは患者源からのDNAまたはRNA)を単離するために用いることができることを理解されたい。一部の実施態様において、核酸はヒトの核酸(すなわち、ヒトゲノム中に見いだされるもの)である。一部の実施態様において、核酸はウイルス核酸である。一部の実施態様において、核酸はウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸はJCウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸は、本明細書に提示される単離法を適用する前に、(たとえば、基準としての使用のために)CSF試料に添加される(すなわち、「混合される」)。
一つの態様において、本開示により、市販の核酸単離キット(たとえば、QIAamp MinElute Virus Spin Kit (Cat #57704, Qiagen)および、Qiagen、PromegaおよびEpicentreから市販される他の物)の構成要素の一つ以上を用いる、CSF試料からの核酸の単離法が提示される。本明細書に開示される方法はまた、他の市販の核酸キットの構成要素で実施しうることを理解されたい。
一部の実施態様において、核酸が単離されるCSF試料の量は、0.5ml以上、1ml以上、1.5ml以上、2ml以上、2.5ml以上、3ml以上、5ml以上または少なくとも10ml以上である。一部の実施態様において、核酸が単離されるCSF試料の量は、1mlである。1mlの試料サイズは、生物学的試料、特にCSFから核酸を単離するために一般に用いられる試料サイズ(たとえば、200マイクロリットル以下)よりも多いことを理解されたい。本発明の一部の態様によると、十分な感度(たとえば、JCV核酸の少なくとも10コピーを検出する)を得るために、1ml以上の量のCSFを用いることが重要である。少量(1ml未満)では、患者がPML診断陽性かどうか確信をもって決定するための十分な感度および/または再現性を得るには不十分であると認識されている。
一部の実施態様において、担体核酸は、核酸が単離されるCSF試料に添加される。担体核酸の添加により、単離される核酸に体積(bulk)を与え、単離される核酸が本明細書に提示される方法の工程のうちの一つの間に喪失してしまう機会を最小化する。一部の実施態様において、担体核酸はRNAである。一般に、担体核酸の性質は、単離される(および分析される)核酸の性質に依存する。ゆえに、単離される核酸がDNAである場合、担体核酸はRNAであってもよい(逆もまた然り)。単離プロトコールの完了時点で、担体核酸RNAはもはや必要ではなく、たとえばRNAseの添加により容易に除去することができる。しかし、分析される核酸および担体核酸は、同じ性質のものであってもよい(たとえば、両方ともDNA)。そのような例では、必要に応じて2つの核酸が容易に分離されるように、担体核酸は通常、単離される(および分析される)核酸とは異なるサイズを有する。
一部の実施態様において、CSF試料中に結果としてもたらされる担体核酸(たとえば、RNA)の濃度は、5マイクログラム/ml以下、4マイクログラム/ml以下、3マイクログラム/ml以下、2マイクログラム/ml以下、1マイクログラム/ml以下、または0.5マイクログラム/ml以下である。一部の実施態様において、CSF試料中に結果としてもたらされる担体核酸(たとえば、RNA)の濃度は、2.8マイクログラム/ml以下である。本明細書において、結果としてもたらされる濃度とは、CSF試料中の担体核酸の濃度を指す。ゆえに、担体核酸は、より高濃度で調整され、CSF試料中に希釈されてもよい。本明細書において、本開示方法で用いられる担体核酸の濃度(一般に用いられる濃度よりも低い)により、CSF試料から単離される核酸の収率の上昇がもたらされるという研究成果が得られたことは、非常な驚きであった。
一部の実施態様において、方法にはさらに、CSF試料にプロテアーゼを添加することが含まれる。CSF試料は他の生物学的試料(たとえば血液)よりもタンパク質の含有が低いが、プロテアーゼの作用によりタンパク質およびポリペプチドを除去することにより、CSF試料から単離される核酸の収率を上昇させうる。生物学的試料からタンパク質およびポリペプチドを除去するためのプロテアーゼは、通常、たとえばプロテナーゼKおよびサブチリシン等の非特異的なプロテアーゼである。プロテアーゼの酵素活性をもたらすために、追加の成分を添加する必要がありえること、または試料の組成を改変する必要がありうることを理解されたい。ゆえに、特定の量の塩(たとえば、NaCLまたはMg塩)を含有する緩衝液、またはpH緩衝液が添加されてもよい。さらに、試料は、酵素の状態を最適化するために、特定の温度でインキュベートされる必要がありうる。プロテアーゼ反応が起こった後、そのプロテアーゼは除去または不活化されてもよい。不活化は、たとえばプロテアーゼ阻害剤を添加することにより、および/またはプロテアーゼ補酵素阻害剤を添加することにより、および/または試料温度を上げることにより、および/または緩衝液条件を変える(たとえば、エタノールの添加により)ことにより、達成されうる。
一部の実施態様において、担体核酸およびプロテアーゼがCSF試料に添加される。一部の実施態様において、担体核酸は、プロテアーゼの添加の前に、添加される。一部の実施態様において、プロテアーゼは、担体核酸の添加の前に、添加される。一部の実施態様において、プロテアーゼは、担体核酸と共に添加される。プロテアーゼおよび/または担体核酸の添加とともに、添加の前に、または添加の後に、プロテアーゼ緩衝液を添加することができる。一部の実施態様において、たとえば溶解緩衝液等の追加の成分を、CSF試料に添加することができる。これらの追加の成分としては、リゾチームおよびカオトロピック剤(たとえば、グアニジウムHClおよび尿素)が挙げられる。一部の実施態様において、追加の成分は、市販の核酸単離キット中の「溶解緩衝液」である。一般に、これらのキット中の「溶解緩衝液」は、第一に使用される緩衝液である。一部の実施態様において、QIAamp MinElute Virus Spin Kitからの「AL」緩衝液が、CSF試料に添加される。
本明細書において、担体核酸およびプロテアーゼを含有するCSF試料を室温でインキュベートし、その後、室温超の温度(たとえば、56℃)で第二のインキュベーション工程を行うことにより、CSF試料から単離される核酸の収率が上がった研究成果が得られたことは非常な驚きであった。ゆえに、一部の実施態様において、本明細書に開示される方法は、担体核酸およびプロテアーゼを含有するCSF試料を室温でインキュベートする工程の後、室温を超える温度で第二のインキュベーション工程を行うことを含む。一部の実施態様においては、用いられる酵素調製物に依存し、室温超の温度は、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃まで、である。一部の実施態様において、室温を超える温度は、50℃から60℃である。一部の実施態様において、たとえば実施例に記述されるように、室温を超える温度は、56℃である。一部の実施態様において、室温を超える温度は、プロテアーゼが最も高い活性を有する温度に一致する。
一部の実施態様において、用いられる酵素調製物に依存し、インキュベーション工程は、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも5分、少なくとも10分、少なくとも15分、少なくとも20分、少なくとも25分、少なくとも30分、少なくとも40分、少なくとも50分、少なくとも60分、または120分までの長さである。室温でのインキュベーション工程、および室温を超える温度でのインキュベーション工程は、同じ時間の長さであってもよく、異なる時間の長さであってもよい。一部の実施態様において、たとえば実施例に記述されるように、室温でのインキュベーション工程、および室温を超える温度でのインキュベーション工程は、両方とも15分の長さである。
担体核酸およびプロテアーゼを含有するCSF試料のインキュベーションの後、試料は、固相抽出法(たとえば、カラムベースの核酸精製)により精製される。これらの方法は、典型的には、用いられる緩衝液(Tris−EDTA(TE)緩衝液、またはリン酸緩衝液でありうる)のpHおよび塩含有量に依存し、核酸は固相(シリカ等)に結合し得るという事実に依存している。概して、本発明の様々な態様に用いることができる核酸精製法として、以下が挙げられる。
試料(たとえば、本明細書に使用されるように、脳脊髄液試料)を結合カラム(または、「スピン」カラム)に添加する。そして、核酸は(カラム上のシラノール基と比較して)低pH、および結合溶液(たとえば、緩衝液、変性剤(たとえば、塩酸グアニジン等)、Triton X−100(登録商標)、イソプロパノールおよびpH指示薬を含んでも良い)の塩濃度により結合する。
当該カラムを、たとえば、5mMのKPO4(pH8.0)または類似物、80%エタノール(EtOH)で洗浄し、緩衝液または水で核酸を溶出する。
本発明の態様に従う方法としては、担体核酸およびプロテアーゼを含有するCSF試料を、核酸結合カラムにアプライすることを含むことができる。核酸結合カラムは当分野に公知であり、限定されないが、シリカベースのカラム(たとえば、米国特許5,234,809号を参照のこと)および陰イオン交換カラムが挙げられる。一部の実施態様において、CSF試料をカラムにアプライする前に、核酸結合カラム(たとえばシリカベースのカラム)へのCSF試料中の核酸の結合に最適な状態を生み出すために、カオトロピック試薬および/または塩が、CSF試料に添加されてもよい。本明細書に使用される核酸結合カラムは、具体的な構成に限定されないが、ビーズベースのカラム、核酸結合成分が共有結合でカラムに付着するカラム、重力により機能するカラム、および吸引操作により機能するカラムが挙げられる。一部の実施態様において、核酸結合カラムは、卓上遠心機にフィットできるエッペンドルフチューブサイズの「ミニカラム」(たとえば、QIAamp MinElute Virus Spin Kitならびに、たとえばEpicentreおよびPromegaにより供給される他の物品)である。
CSF試料の核酸結合カラムへのアプライの後、カラムは、一つ以上の洗浄緩衝液(たとえば、約pH7または約pH8のTrisベースの緩衝液)および/またはエタノール分注物で洗浄されてもよい。洗浄緩衝液の条件は、核酸および核酸結合カラムの間の結合/相互作用が壊れないように、そして核酸が核酸結合カラムに結合したままとなるようにしなければならない。一部の実施態様において、カラムは少なくとも70%エタノールを含有する緩衝液(たとえば、市販の核酸単離キットからの「洗浄緩衝液」、たとえば、QIAamp MinElute Virus Spin KitのAW2緩衝液)で洗浄される。一部の実施態様において、カラムは「洗浄緩衝液」で洗浄された後、第二のエタノールを含有する洗浄液で洗浄される。
一部の実施態様において、核酸結合カラムは、「ミニカラム」である。一部の実施態様において、洗浄液は、カラムを遠心すること(たとえば、卓上遠心機で)により除去される。本明細書において、比較的低い遠心力でカラムを遠心することにより、CSF試料から単離される核酸の収率の上昇が得られたことは、非常な驚きであった。一部の実施態様において、ミニカラムは、洗浄液を除去するために7000g未満で、6000g未満で、5000g未満で、4000g未満で、3000g未満で、2000g未満で、または1000g未満で遠心される。一部の実施態様において、カラムは4000gで遠心される。一部の実施態様において、比較的低い遠心力での洗浄液の除去後、次いで、カラムを乾燥させるために、カラムは高い遠心力で遠心される。
CSF試料をカラムにアプライし、カラムを洗浄した後、溶離液をカラムにアプライし、カラムから核酸を採取する。溶離液は、核酸結合カラムに結合した核酸を取り上げる緩衝液である。溶離液としては、水またはリン酸緩衝液が挙げられる。一部の実施態様において、溶離液には、DNAseおよび/またはRNAseが無い。一部の実施態様において、溶離液はまた、DNAseおよび/またはRNAse阻害剤、および/またはDNAseおよび/またはRNAse補酵素阻害剤を含有する。一部の実施態様において、溶離液は、溶離液中の微生物増殖を予防するために、たとえばアジ化ナトリウム等の微生物毒素を含む。一部の実施態様において、溶離液は、市販の核酸単離キット(たとえば、QIAamp MinElute Virus Spin KitのAVE緩衝液)からの「溶出緩衝液」である。
核酸結合カラムにアプライされる溶離液の量は、通常、カラムからの核酸取り込みをより高い割合で促進するが、単離された核酸が低い濃度となる、より多い量から、単離された核酸が高い濃度となるが、カラムに結合した核酸のすべてを取り込むことは犠牲にする、より低い量の間の妥協である。一部の実施態様において、1マイクロリットル以上、5マイクロリットル以上、10マイクロリットル以上、20マイクロリットル以上、30マイクロリットル以上、40マイクロリットル以上、50マイクロリットル以上、60マイクロリットル以上、70マイクロリットル以上、80マイクロリットル以上、90マイクロリットル以上、100マイクロリットル以上、200マイクロリットル以上、または500マイクロリットル以上の溶離液の量が、カラムにアプライされる。一部の実施態様において、30マイクロリットルの溶離液がカラムにアプライされる。
一部の実施態様において、溶離液は、1分以上、2分以上、5分以上、10分以上、20分以上、30分以上、または60分以上、カラム上でインキュベートされる。一部の実施態様において、溶離液は、カラム上で5分間、インキュベートされる。
一部の実施態様において、同じ溶離液が複数回、カラムにアプライされる。ゆえに、一部の実施態様において、溶離液はカラムにアプライされ、インキュベートされ、溶離液(この時点で核酸を含んでいる)はカラムから除去され(たとえば、遠心により)、そして、次いでカラムに再アプライされ、2回目のインキュベートをされ、2回目の除去をされる。一部の実施態様において、同じ溶離液が2回、3回、4回、5回まで、もしくはそれ以上、カラムにアプライされる。一部の実施態様において、同じ溶離液が、2回、カラムにアプライされる。
一部の実施態様において、30マイクロリットルの溶離液がカラムにアプライされ、5分間インキュベートされ、カラムから除去され(たとえば、遠心により)、カラムに再アプライされ、さらに5分間インキュベートされ、そしてカラムから除去される。
溶離液(この時点でCSF試料から単離された核酸を含んでいる)はカラムから除去されると、適切な温度(たとえば、4℃、−20℃)に保存され、および/または溶離液中の核酸を分析する(たとえば、配列および/または測定量)ことができる。
核酸増幅
一つの態様において、本開示により試料中の核酸量を測定する方法が提示される。一部の実施態様において、核酸はDNAである。一部の実施態様において、核酸はウイルス核酸である。一部の実施態様において、核酸はウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸はJCウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸はCSF試料から単離される。一部の実施態様において、核酸は本明細書に開示される任意の方法によりCSF試料から単離される。一部の実施態様において、核酸はCSF試料から単離されたJCウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸は、CSF試料に担体核酸およびプロテアーゼを添加し、担体核酸およびプロテアーゼを含有する当該試料をインキュベートし、インキュベートされた試料を核酸結合カラムにアプライし、試料がアプライされたカラムを洗浄し、そしてカラムに溶離液をアプライする方法により、CSF試料から単離されたJCウイルスDNAである。
一つの態様において、本開示により試料中の核酸量を測定する方法が提示される。一部の実施態様において、核酸はDNAである。一部の実施態様において、核酸はウイルス核酸である。一部の実施態様において、核酸はウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸はJCウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸はCSF試料から単離される。一部の実施態様において、核酸は本明細書に開示される任意の方法によりCSF試料から単離される。一部の実施態様において、核酸はCSF試料から単離されたJCウイルスDNAである。一部の実施態様において、核酸は、CSF試料に担体核酸およびプロテアーゼを添加し、担体核酸およびプロテアーゼを含有する当該試料をインキュベートし、インキュベートされた試料を核酸結合カラムにアプライし、試料がアプライされたカラムを洗浄し、そしてカラムに溶離液をアプライする方法により、CSF試料から単離されたJCウイルスDNAである。
しかし、本発明の態様(たとえば、精製および/または増幅技術)は、核酸を結合および/もしくは(たとえば、CSFから)単離するための任意の適切な技術ならびに/またはマトリックスとの組み合わせで用いられても良いことを理解されたい。
一つの態様において、本開示により、試料に対しリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Real Time−PCR、リアルタイム定量PCRとも呼ばれる)を実行することを含む、試料中の核酸量を測定する方法が提示される。試料中のウイルス核酸量を測定するリアルタイムPCR法は、良く確立されている(たとえば、McKay et al., Real−time PCR in virology, Nucl. Acids Res. 2002, 20:1292を参照のこと)。簡潔に述べると、リアルタイムPCRでは、対象の配列(たとえば、ウイルスDNA配列)にハイブリダイズすることができる2つのプライマーおよび核酸プローブを試料に添加する。もし対象の配列が存在すれば、その配列はPCRプライマーの結合およびPCR反応により増幅される。PCR核酸生成物は、プローブの結合により検出/定量化される。一般に、核酸プローブとしては、たとえば蛍光ラベル(たとえば、6−カルボキシフルオレセイン、頭字語はFAM)およびクエンチャー(たとえば、テトラメチルローダミン、頭字語はTAMRA)等のレポーター成分が挙げられる。PCR反応生成物への結合の前に、蛍光ラベルは消去され、蛍光は観察されなくなる。もし対象の配列が存在すれば、プローブはPCRにより生成された配列のコピーに結合する(標的が存在すれば、プローブもまた標的配列に結合し得ることに注意)。プローブの結合により、蛍光ラベルからクエンチャーが物理的に分離され、蛍光シグナルが得られる。一部の実施態様において、蛍光タグがポリメラーゼ(たとえば、Taqポリメラーゼ等)の5´ヌクレアーゼ活性により放出される。シグナルの強さは、存在する対象配列の量に比例し、存在する対象配列の量(たとえば、コピー数)の測定を可能とする。通常、既知の配列量の試料基準に対して、量は評価される。多くのメーカーから、リアルタイムPCR実験実施のためのたとえばポリメラーゼ、キットおよびハードウェア等の「ウェットラボ」構成部品を含む物質が提供されている。サプライヤーとしては、Qiagen、Invitrogen、Applied BiosystemsおよびBio−Radが挙げられる。
一つの態様において、本開示により、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を実行することを含む、試料中のJCウイルスDNA量を測定する方法が提示される。一部の実施態様において、リアルタイムPCRプライマーおよびプローブはJVウイルスのT抗原を目的とする。一部の実施態様において、プライマーは、核酸配列:5´ CCC TAT TCA GCA CTT TGT CC3´(配列番号1)および、5´TCA GAA GTA GTA AGG GCG TGG AG3´(配列番号2)に相当し、プローブの配列は、5´AAA CAA GGG AAT TTC CCT GGC CCT CC3´(配列番号3)に相当する。一部の実施態様において、プローブの蛍光ラベルはFAMであり、クエンチャーはTAMRAである。一部の実施態様において、蛍光ラベルはプローブの5´末端上にあり、クエンチャーは3´末端上にある。一部の実施態様において、プローブは5´FAM−AAA CAA GGG AAT TTC CCT GGC CCT CC−TAMRA3(配列番号3)である。しかしながら、代替的な蛍光ラベル、クエンチャー、ならびに/または、プローブ配列上の蛍光ラベルおよび/もしくはクエンチャーの代替的な位置調整もまた、本開示に包含されることを理解されたい。
従前に、JVウイルスT抗原配列がリアルタイムPCRの標的配列として用いられていた(Ryschkewitsch et al., J of Virological methods 2004, 121: 217を参照のこと)が、本明細書において、配列番号1および2のプライマー、配列番号3のプローブの組み合わせにより優れた結果が得られることが判明した。しかしながら、一部の実施態様において、一つ以上の他のプローブまたはプライマー(たとえば、JCVのT抗原配列を標的とするもの)が用いられても良い。
また、他の増幅を基にした技術(たとえば、PCR等)、ハイブリダイゼーションを基にした技術、配列解析を基にした技術、および/または他の検出技術が用いられても良い(たとえば、本明細書に記述されるプライマーおよびプローブの一つ以上を用いる)ことを理解されたい。
核酸
一つの態様において、本開示により、単離核酸が提示される。一部の実施態様において、JCVの検出に有用な核酸は、(たとえば、生物学的試料中に存在しうるBKウイルスまたは他のウイルス核酸と比較して)JCVに特異的である。一部の実施態様において、核酸はJCV配列に相補的であるが、他のウイルス由来の配列とは相補的ではない。一部の実施態様において、JCV検出に有用な核酸は、JCVゲノム中に他の可変配列が存在するかどうかに関係なくJCVの存在を検出するために、JCVの保存領域を検出するように設計される(たとえば、核酸は相補的であり、たとえばJCVゲノムの保存領域に100%相補的である)。一部の実施態様において、核酸はJCウイルスT抗原をコードする配列鎖のいずれかを目的とする(たとえば、相補的であり、たとえば100%相補的である)プライマーおよびプローブである。一部の実施態様において、核酸は、リアルタイムPCRによる試料中のJCウイルス量の測定を可能にする。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号1を含む。一部の実施態様において、単離された核酸は配列番号2を含む。一部の実施態様において、単離された核酸は配列番号3を含む。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号1からなる。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号2からなる。一部の実施態様において、単離された核酸は配列番号3からなる。
一つの態様において、本開示により、単離核酸が提示される。一部の実施態様において、JCVの検出に有用な核酸は、(たとえば、生物学的試料中に存在しうるBKウイルスまたは他のウイルス核酸と比較して)JCVに特異的である。一部の実施態様において、核酸はJCV配列に相補的であるが、他のウイルス由来の配列とは相補的ではない。一部の実施態様において、JCV検出に有用な核酸は、JCVゲノム中に他の可変配列が存在するかどうかに関係なくJCVの存在を検出するために、JCVの保存領域を検出するように設計される(たとえば、核酸は相補的であり、たとえばJCVゲノムの保存領域に100%相補的である)。一部の実施態様において、核酸はJCウイルスT抗原をコードする配列鎖のいずれかを目的とする(たとえば、相補的であり、たとえば100%相補的である)プライマーおよびプローブである。一部の実施態様において、核酸は、リアルタイムPCRによる試料中のJCウイルス量の測定を可能にする。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号1を含む。一部の実施態様において、単離された核酸は配列番号2を含む。一部の実施態様において、単離された核酸は配列番号3を含む。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号1からなる。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号2からなる。一部の実施態様において、単離された核酸は配列番号3からなる。
一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号1を含む核酸プライマーである。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号2を含む核酸プライマーである。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号3を含む核酸プローブである。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号1からなる核酸プライマーである。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号2からなる核酸プライマーである。一部の実施態様において、単離された核酸は、配列番号3からなる核酸プローブである。本明細書に開示される単離された核酸はさらに、一つ以上の機能性(たとえば、蛍光ラベル)を有しても良い。一部の実施態様において、配列番号3に相当する核酸は、蛍光ラベルおよびクエンチャーを含む核酸プローブである。一部の実施態様において、配列番号3に相当する核酸プローブは、5´FAM−AAA CAA GGG AAT TTC CCT GGC CCT CC−TAMRA3(配列番号3)のプローブである。
キット
一つの態様において、本開示により脳脊髄液(CSF)試料から核酸を単離するためのキットが提示される。一部の実施態様において、当該キットはプロテアーゼ、担体核酸、核酸結合カラムおよび使用説明書を含む。
一つの態様において、本開示により脳脊髄液(CSF)試料から核酸を単離するためのキットが提示される。一部の実施態様において、当該キットはプロテアーゼ、担体核酸、核酸結合カラムおよび使用説明書を含む。
一部の実施態様において、キットはさらに、JCウイルスT抗原を目的とするリアルタイムPCRプライマーおよびプローブを含む。一部の実施態様において、リアルタイムPCRプライマーおよびプローブの配列は、それぞれ配列番号1〜2、および配列番号3である。
一部の実施態様において、本発明は、患者由来の試料(たとえば、ヒトCSF試料)中におけるJCVの存在を単離および、または検出するキットに関する。従って、本発明の態様は、核酸を単離および調整するための一つ以上の構成部品を含み、ならびに/または、特定の配列を有する核酸の存在および/もしくは量を分析するための一つ以上の構成部品を含むキットに関する。一部の実施態様において、キットは一つ以上の緩衝液および/または生物学的試料(たとえば、CSF試料)由来のJCV粒子および/またはJCV核酸を単離するための他の溶液、ならびに任意選択的に一つ以上の単離工程の実施に対する説明書を含む。一部の実施態様において、キットは、試料中のJCV核酸を検出するための一つ以上の試薬を含む。たとえば、キットは、特定の配列を有する核酸を含んでもよい。一部の実施態様において、核酸(たとえば、核酸プライマー)は、乾燥粉末(たとえば、凍結乾燥調製物)として提供されてもよい。一部の実施態様において、核酸は溶液で提供されてもよい。溶液は、希釈剤、緩衝液、塩溶液、水溶液、または他の溶液(たとえば、水を含む)であってもよい。溶液は、既知の(たとえば、事前に測定された)濃度の核酸を含んでもよい。キットは、事後認証または品質管理の目的のために記されることになっている、一つ以上の特定の成分に対して定義された、一つ以上の適切な濃度に核酸溶液を希釈するための説明書を含んでも良い。一部の実施態様において、キットは、生物学的試料(たとえば、CSF試料)中の特定の配列を有する核酸の存在を検出するために用いることができる、一つ以上のオリゴヌクレオチド(たとえばPCRプライマー)を含んでも良い。キットはまた、核酸の単離、検出および/または本発明の定量分析の実施のための一つ以上の酵素および/または他の試薬を含んでも良い。一部の実施態様において、キットは、特定の対象配列を有する参照配列および/または参照核酸を含んでも良い。基準レベル(たとえば、基準レベルについての情報)および/または基準レベルで核酸を含有する基準サンプルもまた、キット中に提供されても良い。そのような情報および/または核酸は、対照として用いることができる。一部の実施態様において、キットは患者試料(たとえば、CSF試料)からの核酸(たとえば、JCV核酸)の単離のための説明書を含んでも良い。
一部の実施態様において、キットは、本明細書に記述される一つ以上の試薬(たとえば、洗浄緩衝液、溶解緩衝液、プロテアーゼ、溶出緩衝液等)および/または核酸(たとえば、PCRプライマー、検出プローブ等)が中に配置された容器手段を少なくとも一つ含む。ある実施態様において、キットは、一つ以上の他の試薬またはプローブを含有する他の容器をさらに含む。キットはまた、検出試薬を含んでも良い。一部の実施態様において、キット中のプローブの一つ以上が標識化されていてもよい。一部の実施態様において、キットは、プローブ標識化(たとえば、JCV核酸との接触の前後)のための試薬を含んでも良い。検出試薬の例としては、限定されないが、放射性標識、蛍光標識、酵素標識(たとえば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、およびアフィニティ標識(たとえば、ビオチン、アビジンまたはストレプトアビジン)が挙げられる。
詳細には、区画化されたキットは、試薬が別々の容器に入った任意のキットを含む。そのような容器には、小さなガラス製の容器、プラスチック製の容器、またはプラスチック片もしくは紙片が挙げられる。そのような容器により、試料と試薬が相互に混入しないように、一つの区画から他の区画へ試薬が効率よく運ばれることを可能にし、そして、各容器の試薬または溶液が、一つの区画から他の区画へ定量的な様式で添加されることを可能にする。一部の実施態様において、キットは、テスト試料を受け入れる容器、分析に用いられるプローブまたはプライマーを含む容器、洗浄試薬(たとえば、リン酸緩衝生理食塩水、Tris緩衝液等)を含む容器、およびハイブリダイズされたプローブ、増幅された生成物等を検出するために用いられる試薬を含む容器を含んでも良い。
本発明は以下の実施例によりさらに詳細に解説されるが、それらはさらなる限定とは決してみなされるべきではない。本出願全体で引用される参照文献(文献参照、登録特許、公開特許出願明細書、および同時継続特許出願を含む)のすべての全内容が、特に、上述で参照された教示に対して、参照により本明細書に明示的に援用される。
実施例1:脳脊髄液(CSF)からのDNA抽出
材料および方法
−QIAamp MinElute Virus Spin Kit(Cat♯57704、QIAGEN)のプロトコールを、ヒトCSF試料を処理するために改変した。以下の緩衝液をDNAの抽出に用いた。
−AW2緩衝液を、30mLのエタノール(96〜100%)を、13mLのAW2緩衝液濃縮物を含有する瓶へ添加し、完全に混合することにより調製した。緩衝液は周囲温度で保存した。
−1.4mLのAVE緩衝液を、凍結乾燥QIAGENプロテアーゼの瓶へ添加し、ゆっくりと混合することにより、QIAGENプロテアーゼを調整した。プロテアーゼ酵素は2〜8℃で保存した。
−担体RNA溶液(1μg/μL)は、310μLのAVE緩衝液を凍結乾燥担体RNAのチューブへ添加して1μg/μL溶液を作製し、パルスボルテックスで混合することにより調製した。担体RNAは−20℃±10℃で保存し、凍結融解は3回までとした。AL緩衝液中の担体RNAの最終濃度は、5.6μg/mLであった。たとえば、n個の試料に対しては、[(1.1)×(5.6)×(n)]μLの担体RNA溶液を、[(1.1)×(n)]mLのAL緩衝液へ添加した。試薬はゆっくり転倒混和させることにより混合し、調整した日に使用された。
材料および方法
−QIAamp MinElute Virus Spin Kit(Cat♯57704、QIAGEN)のプロトコールを、ヒトCSF試料を処理するために改変した。以下の緩衝液をDNAの抽出に用いた。
−AW2緩衝液を、30mLのエタノール(96〜100%)を、13mLのAW2緩衝液濃縮物を含有する瓶へ添加し、完全に混合することにより調製した。緩衝液は周囲温度で保存した。
−1.4mLのAVE緩衝液を、凍結乾燥QIAGENプロテアーゼの瓶へ添加し、ゆっくりと混合することにより、QIAGENプロテアーゼを調整した。プロテアーゼ酵素は2〜8℃で保存した。
−担体RNA溶液(1μg/μL)は、310μLのAVE緩衝液を凍結乾燥担体RNAのチューブへ添加して1μg/μL溶液を作製し、パルスボルテックスで混合することにより調製した。担体RNAは−20℃±10℃で保存し、凍結融解は3回までとした。AL緩衝液中の担体RNAの最終濃度は、5.6μg/mLであった。たとえば、n個の試料に対しては、[(1.1)×(5.6)×(n)]μLの担体RNA溶液を、[(1.1)×(n)]mLのAL緩衝液へ添加した。試薬はゆっくり転倒混和させることにより混合し、調整した日に使用された。
DNA抽出
凍結CSFを室温で溶かし、5000gで5分間、遠心した。遠心の後、1000μLのCSFを、15mLの遠心管にピペットで取った。QIAGENプロテアーゼ(125μL)およびAL緩衝液−担体RNA溶液(それぞれ5.6μg/mL、1000μL)をCSFに添加した。
凍結CSFを室温で溶かし、5000gで5分間、遠心した。遠心の後、1000μLのCSFを、15mLの遠心管にピペットで取った。QIAGENプロテアーゼ(125μL)およびAL緩衝液−担体RNA溶液(それぞれ5.6μg/mL、1000μL)をCSFに添加した。
試料を15秒間、ボルテックスし、室温で15分間インキュベートした後、水槽内で15分間、56℃でインキュベーションした。
インキュベーション後、1250μLのエタノール(96〜100%)を試料に添加し、15秒間、パルスボルテックスを行うことにより完全に混和した。次いで、溶解物を室温(15〜25℃)で7分間、インキュベートした。
全溶解物をQIAamp Mineluteカラムにアプライすることにより、QIAvac 24 Plus vacuum manifold (Cat♯19413、QIAGEN)を用いて溶解物を処理した。必要に応じて、複数回のアプライを、全溶解物をアプライするために用いた。結合後、カラムを500μLのAW2緩衝液を用いて洗浄し、1分間、4000gで遠心し、次いで、500μLのエタノール(96〜100%)で洗浄し、1分間、4000gで遠心した。
QIAamp Mineluteカラムを、3分間、13000gで遠心することにより乾燥させ、次いで、カラムのキャップを未開封で2.5分間、13000gで遠心した。
カラムが乾いたら、DNaseを含まない清浄なマイクロ遠心管に静置し、30μLのAVE緩衝液を膜の中央にアプライし、5分間インキュベートした。インキュベート後、チューブを1分間、フルスピードで遠心した。溶出されるDNAの量を増やすために、溶出物をチューブから除去し、再び膜の中央にアプライし、5分間インキュベートした後、1分間、フルスピードで遠心した。
抽出後、1μLのDNAを用いてDNA定量を行い、20μLをPCR分析のために保存した。
実施例2:JCV DNA定量のためのリアルタイムPCR分析
材料と方法
プライマーおよびプローブを、JCウイルスゲノムのT抗原遺伝子の保存領域に対して設計し、BLASTサーチを実施して交差反応性を確認した。プライマーおよびプローブの配列は下記である。
材料と方法
プライマーおよびプローブを、JCウイルスゲノムのT抗原遺伝子の保存領域に対して設計し、BLASTサーチを実施して交差反応性を確認した。プライマーおよびプローブの配列は下記である。
ABI 7900HT Sequence Detection System (Applied Biosystems)を用いてTaqmanリアルタイム定量PCRを実施した。リアルタイムPCRは、Taqman Universal PCR Master Mix (Applied Biosystems)を用いて実行され、各反応は、以下の表に従い調製された。
表1
表1
各反応に対して、40μLの上記マスターミックスを、MicroAmp(登録商標)Optical 96−Well reaction plate (Cat♯N8010560、Applied Biosystems)上で10μLのDNA溶出液に添加し、以下の工程によるPCR分析に供した。
1.50℃、2分間−1サイクル
2.95℃、10分間−1サイクル
3.95℃、15秒;60℃、1分;−50サイクル
1.50℃、2分間−1サイクル
2.95℃、10分間−1サイクル
3.95℃、15秒;60℃、1分;−50サイクル
ヒトCSFへ混合されたJCウイルス(Cat♯VR−1583、ATCC)(最適化DNA抽出手順を用いて抽出された)を用いて10〜107コピー/mLまでの範囲で標準曲線を作製し、2度検証した。各実行には、未混合CSFからなる陰性対照(同じ抽出プロセスを経ている)も含めた。試料中の絶対コピー数は、ABI SDSソフトウェアを用いた標準曲線から外挿することにより定量した。すべての試料および標準は、二度検証され、両ウェルからの結果の平均をコピー数/mLとして報告する。
予備的な分析開発に基づき、検出限界(LOD)は10コピー/mLであると決定され、ダイナミックレンジは10〜107コピー/mLである。分析の特異度は、最も近縁のBKポリオーマウイルスに対して評価され、交差反応は観察されなかった。
実施例1の方法の再現性を、以下の表に示す。
表2 実施例1の方法の再現性
Ct:リアルタイムPCRアッセイにおいて、陽性反応は蛍光シグナルの蓄積により検出される。Ct(サイクル閾値)は、蛍光シグナルが閾値を超える(すなわち、バックグラウンドレベルを超える)ために必要とされるサイクル数として定義される。Ctレベルは試料中の標的核酸の量に反比例する(すなわち、Ctレベルが低くなれば、試料中の標的核酸量は多くなる)。
表2 実施例1の方法の再現性
実施例1の方法の特異度を、以下の表に示す。
表3 実施例1の方法のJCウイルス検出の特異度
プライマー/プローブの特異度は、異なるウイルスプラスミドDNAの5000コピー/mL±5000コピー/mL JCV DNAに対して分析された。
表3 実施例1の方法のJCウイルス検出の特異度
実施例3:比較
実施例1に記述された方法の結果を、「標準」プロトコール(QIAamp MinElute Virus Spin Kit(Cat ♯57704、Qiagen)により提示)に記述された方法と比較した。たとえば、DNA Mini Kitハンドブックの59〜60ページ、およびQIAamp MinElute Virus Spin Kitハンドブックの19〜21ページを参照のこと。JCウイルスDNAコピーの様々な量を、CSF試料に添加し、DNAを、「標準」プロトコールおよび実施例1に記載のプロトコールの両方を用いて単離した。単離されたDNAを含有する試料中のJCウイルスDNAのコピー数は、実施例2に記述されたRT−PCRプロトコールを用いて測定された。
実施例1に記述された方法の結果を、「標準」プロトコール(QIAamp MinElute Virus Spin Kit(Cat ♯57704、Qiagen)により提示)に記述された方法と比較した。たとえば、DNA Mini Kitハンドブックの59〜60ページ、およびQIAamp MinElute Virus Spin Kitハンドブックの19〜21ページを参照のこと。JCウイルスDNAコピーの様々な量を、CSF試料に添加し、DNAを、「標準」プロトコールおよび実施例1に記載のプロトコールの両方を用いて単離した。単離されたDNAを含有する試料中のJCウイルスDNAのコピー数は、実施例2に記述されたRT−PCRプロトコールを用いて測定された。
均等
上述の明細書は、当業者が本発明を実施することができるよう、十分に記述されているとみなされる。実施例は本発明の一つの態様の一つの解説を意図しており、本発明は、提示された実施例によりその範囲を限定されず、他の機能的に均等な実施態様が、本発明の範囲内に含まれる。本明細書に示され、記述されたものに加え、本発明の様々な改変が、前の記述により当業者に明らかであり、添付のクレームの範囲内にある。本発明の利点および目的は、本発明の各実施態様により必ずしも包含される必要はない。
上述の明細書は、当業者が本発明を実施することができるよう、十分に記述されているとみなされる。実施例は本発明の一つの態様の一つの解説を意図しており、本発明は、提示された実施例によりその範囲を限定されず、他の機能的に均等な実施態様が、本発明の範囲内に含まれる。本明細書に示され、記述されたものに加え、本発明の様々な改変が、前の記述により当業者に明らかであり、添付のクレームの範囲内にある。本発明の利点および目的は、本発明の各実施態様により必ずしも包含される必要はない。
本出願全体を通じて引用されるすべての参照文献、特許、公開特許出願の内容は、その全体で、特に本明細書において参照される主題または使用に対し、参照により本明細書に援用される。
Claims (25)
- 担体核酸およびプロテアーゼをCSF試料に添加することと、
前記担体核酸および前記プロテアーゼを含有する前記試料をインキュベートすることと、
前記インキュベートされた試料を核酸結合カラムにアプライすることと、
前記試料がアプライされた前記カラムを洗浄することと、
前記カラムに溶離液をアプライし、前記核酸の単離を得ることとを含む、
脳脊髄液(CSF)試料から核酸を単離する方法。 - 前記CSF試料の量が、少なくとも1mlである、請求項1に記載の方法。
- 前記担体核酸が、担体RNAである、請求項1または2に記載の方法。
- 前記CSF試料中の前記担体RNAの得られた濃度が、2.8マイクログラム/ml以下である、請求項3に記載の方法。
- 前記試料をインキュベートすることが、室温(RT)で前記試料をインキュベートする第一工程と、RT超の温度で前記試料をインキュベートする第二工程とを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- 前記インキュベート工程が、15分の長さである、請求項5に記載の方法。
- 前記RT超の温度が、56℃である、請求項5または6に記載の方法。
- 前記カラムの洗浄が、前記カラムに洗浄緩衝液を添加することと、前記カラムを4000gの遠心力で回転させることとを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 溶離液のアプライが、前記溶離液を前記カラムに少なくとも2回、アプライすることを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 前記溶離液が、5分間、前記カラム上でインキュベートされる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 30マイクロリットルの溶離液がアプライされる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 前記CSF試料中の前記核酸が、DNAである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
- 前記DNAがウイルスDNAである、請求項12に記載の方法。
- 前記ウイルスDNAがJCウイルスDNAである、請求項13に記載の方法。
- 前記JCウイルスDNAの量を測定するために、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(リアルタイムPCR)を実施することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
- 前記リアルタイムPCRのプライマーおよびプローブが、JCウイルスT抗原を目的とするものである、請求項15に記載の方法。
- 前記リアルタイムPCRのプライマーおよびプローブの配列が、それぞれ配列番号1〜2および配列番号3である、請求項16に記載の方法。
- 試料中のJCウイルスDNAの量を測定する方法であって、前記試料にリアルタイムPCRを実施することを含み、前記リアルタイムPCRのプライマーおよびプローブはJCウイルスT抗原を目的とするものである、方法。
- 前記リアルタイムPCRのプライマーおよびプローブの配列が、それぞれ配列番号1〜2および配列番号3である、請求項18に記載の方法。
- 脳脊髄液(CSF)試料から核酸を単離するためのキットであって、前記キットがプロテアーゼ、担体核酸、核酸結合カラムおよび使用説明書を含有する、キット。
- JCウイルスT抗原を目的とするリアルタイムPCRプライマーおよびプローブをさらに含む、請求項20に記載のキット。
- 前記リアルタイムPCRのプライマーおよびプローブの配列が、それぞれ配列番号1〜2および配列番号3である、請求項21に記載のキット。
- 配列番号1を含有する、核酸プライマー。
- 配列番号2を含有する、核酸プライマー。
- 配列番号3を含有する、核酸プローブ。
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