関連する定義
本発明を記載するに際し、次に挙げる用語を用いることになるが、これらの用語は、以下に示すとおりに定義されるものとする。
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」には、内容からそうでないことが明確に示されていない限り、複数の指示物が含まれることに注意しなければならない。したがって、例えば、「an NASP」と言えば、所望により、2つ以上のNASPの混合物が含まれることがある。
「NASP」は、本明細書において使用する場合、本明細書に記載する多様な凝血アッセイのいずれかにおいて非抗凝固及び抗凝固活性を呈する硫酸化多糖(SP)を指す。NASPは、天然の硫酸化多糖(例えば、生物源から抽出されたもの)であっても合成の硫酸化多糖であってもよく、後者の場合、硫酸化多糖は、合成法(例えば化学合成)により部分的又は完全に作製されたものである。活性の1つの尺度は、NASPにより実証される凝血時間を、ヘパリンにより示される抗凝固活性と比較することである。例えば、対象とするNASPは、希釈プロトロンビン時間(dPT)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の凝血アッセイにおいて、未分画ヘパリン(分子量の範囲は8,000〜30,000ダルトン、平均18,000ダルトン)の1モル当たりの抗凝固活性の3分の1を超えない、例えば10分の1未満の抗凝固活性を呈する。したがって、対象とするNASPは、本明細書において提供される方法及び組成物を用いることにより、ヘパリンとの比較で2倍以上低い抗凝固活性、例えばヘパリンとの比較で5倍以上低い抗凝固活性、例えばヘパリンとの比較で10倍以上低い抗凝固活性、例えばヘパリンとの比較で25倍以上低い抗凝固活性、例えばヘパリンとの比較で50倍以上低い抗凝固活性、さらに例えばヘパリンとの比較で100倍以上低い抗凝固活性を、実証する。
対象とするNASPは、分子量が、10ダルトン〜1,000,000ダルトン、例として、例えば100ダルトン〜900,000ダルトン、例えば500ダルトン〜500,000ダルトン、例えば1000ダルトン〜250,000ダルトン、さらに例えば5000ダルトン〜150,000ダルトンの範囲であってもよい。NASPは、平均分子量が、約10ダルトン〜約500,000ダルトン、例えば約100ダルトン〜約300,000ダルトン、例えば1000ダルトン〜250,000ダルトン、さらに例えば1000ダルトン〜150,000ダルトンの範囲であってもよい。
いくつかの場合において、対象とするNASPとしては、限定されるものではないが、N−アセチルヘパリン(NAH)、N−アセチル−デ−O−硫酸化ヘパリン(NA−de−o−SH)、デ−N−硫酸化ヘパリン(De−NSH)、デ−N−硫酸化アセチル化ヘパリン(De−NSAH)、過ヨウ素酸塩酸化ヘパリン(POH)、化学的硫酸化ラミナリン(CSL)、化学的硫酸化アルギン酸(CSAA)、化学的硫酸化ペクチン(CSP)、硫酸デキストラン(DXS)、ヘパリン由来オリゴ糖(HDO)、ポリ硫酸ペントサン(PPS)、硫酸化マルトペントース、硫酸化β−シクロデキストリン、硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、及びそれらの誘導体を挙げることができる。特定の場合において、NASPは、フコイダンである。例えば、フコイダンは、フコイダン5307002、Fucus vesiculosus、最大分子量ピーク126.7kD;フコイダンVG49、Fucus vesiculosus、5307002を加水分解した試料で、分子量が低下しており最大分子量ピークは22.5kD;フコイダンVG57、Undaria pinnatifida、高チャージ(高硫酸化、脱アセチル化されたもの);フコイダンGFS(5508005)、Undaria pinnatifida、脱パイロジェン化されたもの;フコイダンGFS(L/FVF−01091)、Fucus vesiculosus、脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク125kD;フコイダンGFS(L/FVF−01092)、Fucus vesiculosus、脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク260kD;フコイダンGFS(L/FVF−01093)、Fucus vesiculosus、加水分解され脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク36kD;Maritech(登録商標)Ecklonia radiata抽出物;Maritech(登録商標)Ecklonia maxima抽出物;Maritech(登録商標)Macrocystis pyrifera抽出物;Maritech(登録商標)Immune trial Fucoidan Blend;及びそれらの組合せであってもよい。
胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わされたNASPは、出血性障害(例えば、凝固因子の欠乏に伴う出血性障害)の治療において止血を改善するために、又は、抗凝固薬の効果を逆転させるために、とりわけ、胃腸系による吸収の促進が必要である若しくは望ましいときに、本発明の方法において使用され得る。NASPが凝血を促進し出血を抑制する能力は、多様なin vitro凝血アッセイ(例えば、TFPI−dPT、トロンビン生成アッセイ及びトロンボエラストグラフィー(TEG)アッセイ)、並びにin vivo出血モデル(例えば、血友病のマウス又はイヌを用いた断尾、横切断、全血凝血時間、又は表皮出血時間の決定)を用いて決定され得る。例えば、PDR Staff.Physicians’ Desk Reference、2004、Andersonら、(1976)、Thromb.Res.、9、575〜580ページ;Nordfangら、(1991)、Thromb Haemost.、66、464〜467ページ;Welschら、(1991)、Thrombosis Research、64、213〜222ページ;Brozeら、(2001)、Thromb Haemost、85、747〜748ページ;Scallanら、(2003)、Blood、102、2031〜2037ページ;Pijnappelsら、(1986)、Thromb.Haemost.、55、70〜73ページ;及びGilesら、(1982)、Blood、60、727〜730ページ、及び本明細書の実施例を参照のこと。
「凝固促進剤」は、本明細書においては、その従来の意味で使用され、血塊形成を開始又は加速させることが可能な任意の因子又は試薬を指す。本発明の凝固促進剤としては、限定されるものではないが、内因性凝固経路又は外因性凝固経路の任意の活性化因子、例えば、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、及びVIIIa、プレカレクレイン、高分子量キニノゲン、組織因子、第VIIa因子、及び第Va因子から成る群から選択される凝血因子が挙げられ、並びに、凝血を促進する他の試薬としては、カリクレイン、APTT開始剤(すなわち、リン脂質及び接触活性化剤を含有する試薬)、ラッセルクサリヘビ(Russel’s viper)毒(RVV時間)、及びトロンボプラスチン(dPT用)が挙げられる。いくつかの実施形態において、接触活性化剤を凝固促進試薬として用いてもよい。例えば、接触活性化剤としては、微粉化されたシリカ粒子、エラグ酸、スルファチド、カオリンなどを挙げることができる。凝固促進剤は、未精製の天然の抽出物、血液、若しくは血漿試料に由来し、単離され実質的に精製されているものでも、合成、又は組換えによるものでもよい。凝固促進剤としては、天然に存在する凝血因子、又は、生物活性を保持する(すなわち、凝血を促進する)その断片、変異体、若しくは共有結合的に修飾された誘導体を挙げることができる。
用語「多糖」は、本明細書において使用する場合、2つ以上の共有結合的に連結された糖残基を含有するポリマーを指す。糖残基は、例えば、グリコシド、エステル、アミド、又はオキシムの連結部分により連結されていてもよい。多糖の平均分子量は、例えば100〜1,000,000ダルトン以上、例えば100〜500,000ダルトン以上、例えば1000〜250,000ダルトン以上、例えば1000〜100,000ダルトン以上、例えば10,000〜50,000ダルトン以上の範囲であるなど、大きく異なっていてもよい。多糖は、直鎖状(すなわち直線状)でも分枝状でもよく、又は、直線状部分及び分枝状部分の不連続領域を含有してもよい。さらに、多糖は、より大きい多糖の分解(例えば加水分解)により生成された多糖の断片であってもよい。分解は、多糖を酸、塩基、熱、酸化体、又は酵素で処理することで断片化された多糖を得るなどの任意の便利なプロトコールにより達成できる。多糖は、化学変化させられていても修飾されていてもよく、そのような変化や修飾としては、限定されるものではないが、硫酸化、ポリ硫酸化、エステル化、及びメチル化が挙げられる。
分子量は、本明細書において論考する場合、数平均分子量又は重量平均分子量のどちらでも表現できる。特に指示しない限り、本明細書において分子量と言えばすべて、重量平均分子量を指す。数平均及び重量平均どちらの分子量の決定値も、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法又は他の液体クロマトグラフィー法を用いて測定できる。
用語「〜に由来する」は、本明明細書においては、ある分子の起源を同定するために使用するが、その分子を作る方法(例えば、化学合成法による可能性もあれば、組換え法による可能性もある)を限定することを意味するものではない。
用語「変異体」、「類似体」、及び「突然変異タンパク質」は、出血性障害の治療において所望の活性(例えば凝血活性)を保持する、参照分子の生物活性誘導体を指す。用語「変異体」及び「類似体」は、ポリペプチド(例えば凝血因子)に関する場合、天然のポリペプチドの配列及び構造を有しつつ、天然の分子と比較して1つ若しくは複数のアミノ酸が付加、置換(性質は一般に保存されている)、及び/又は欠失されている化合物(但し、そのような修飾が生物活性を破壊しない場合に限る)であって、以下に定義するように参照分子と「実質的に相同的」である化合物を指す。そのような類似体のアミノ酸配列は、参照配列と高度の配列相同性、例としては、2つの配列をアラインした際に、50%以上、例えば60%以上、例えば70%以上、例えば80%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、さらに例えば99%以上のアミノ酸配列相同性を有する。いくつかの場合において、類似体同士は、同数のアミノ酸を含んでいても置換がなされていることがある。用語「突然変異タンパク質」には、1つ又は複数のアミノ酸様分子を有するポリペプチドがさらに含まれ、そのようなポリペプチドとしては、限定されるものではないが、アミノ及び/又はイミノ分子のみを含有する化合物、1つ又は複数のアミノ酸類似体(例えば、天然に存在しない合成アミノ酸などが挙げられる)を含有するポリペプチド、連結基が置換されているポリペプチド、並びに当技術分野で公知の他の修飾体で、天然に存在するものでも天然に存在しない(例えば合成の)ものでもどちらでもよく、環化された分子、分枝状の分子などが挙げられる。この用語には、1つ又は複数のN−置換グリシン残基を含む分子(「ペプトイド」)及び他の合成アミノ酸又はペプチドも含まれる(例えば、ペプトイドの説明については、米国特許第5,831,005号;同第5,877,278号;及び同第5,977,301号;Nguyenら、Chem Biol.、(2000)、7、463〜473ページ;並びにSimonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、(1992)、89、9367〜9371ページを参照のこと)。本発明(the invetion)の実施形態において、類似体及び突然変異タンパク質は、天然の分子と少なくとも同じ凝血活性を有する。
先に論考したように、類似体は、保存的な置換、すなわち、その側鎖に、近縁のアミノ酸ファミリー内で行われる保存的な置換を含んでいてもよい。具体的には、アミノ酸は、一般に4つのファミリー、すなわち、(1)酸性アミノ酸:アスパラギン酸及びグルタミン酸、(2)塩基性アミノ酸:リシン、アルギニン、ヒスチジン、(3)非極性アミノ酸:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、並びに(4)非荷電極性アミノ酸:グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、及びチロシンは、いくつかの場合においては、芳香族アミノ酸に分類される。例えば、ロイシンをイソロイシン若しくはバリンで、アスパラギン酸をグルタミン酸で、トレオニンをセリンで、個々に置き換えても、又は、あるアミノ酸を、構造的に近縁のアミノ酸で、同じように保存的に置き換えても、生物活性に大きな影響はないであろう。例えば、対象とするポリペプチドは、最大約5〜10箇所の保存的若しくは非保存的なアミノ酸置換を含んでいてもよく、さらには最大約15〜25箇所、又は5〜25の間の任意の整数箇所の保存的又は非保存的なアミノ酸置換を含んでいてもよいが、但し、分子の所望の機能が損なわれていない場合に限る。
「誘導体」とは、対象とする参照分子又はその類似体に任意の適当な修飾、例えば、硫酸化、アセチル化、グリコシル化、リン酸化、ポリマーコンジュゲーション(例えば、ポリエチレングリコールとの)、又は他の形での外来部分の付加がなされていることを意味するが、但し、参照分子の所望の生物活性(例えば、凝血活性、TFPI活性阻害性)が保持されているものに限る。例えば、多糖は、1つ又は複数の有機又は無機の基で誘導体化されていてもよい。例としては、限定されるものではないが、少なくとも1つのヒドロキシル基中で、別の部分(例えば、硫酸基、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、ニトリル基、ハロ基、シリル基、アミド基、アシル基、脂肪族基、芳香族基、若しくは糖基)での置換がなされている多糖、又は、環酸素がイオウ、窒素、メチレン基などにより置き換えられている多糖が挙げられる。多糖は、例えば、凝固促進機能を改善するために、化学変化させられていてもよい。そのような修飾としては、限定されるものではないが、硫酸化、ポリ硫酸化、エステル化、及びメチル化を挙げることができる。
「断片」とは、インタクトな完全長配列及び構造の一部を含有する分子を意味する。いくつかの場合において、多糖の断片は、より大きい多糖の分解(例えば加水分解)により生成されてもよい。本発明の多糖の活性断片は、完全長多糖のうちの約2〜20糖単位、例えば完全長分子のうちの約5〜10糖単位、さらに例えば2〜完全長分子の糖単位数の間の任意の整数個の糖単位を含んでいてもよいが、但し、その断片が、生物活性、例えば、凝血活性又はTFPI活性阻害能力などを保持している場合に限る。ポリペプチドの断片としては、C末端欠失、N末端欠失、又は内部欠失している天然のポリペプチドを挙げることができる。特定のタンパク質の活性断片は、いくつかの実施形態において、完全長分子のうちの約5〜10個又はそれ以上の近接アミノ酸残基、例えば完全長分子のうちの約15〜25個又はそれ以上の近接アミノ酸残基、例えば完全長分子のうちの約20〜50個又はそれ以上の近接アミノ酸残基、さらに例えば5〜完全長配列のアミノ酸数の間の任意の整数個のアミノ酸を含んでいてもよいが、但し、当該断片が、例えば凝血活性などの生物活性を保持している場合に限る。
「実質的に精製されている」とは、ある物質(例えば、非抗凝固性硫酸化多糖)が、その物質が存在している試料の大部分を当該物質が含むように単離されていることを意味する。例えば、実質的に精製されている試料は、対象とする物質を50%以上、例えば対象とする物質を60%以上、例えば対象とする物質を75%以上、例えば対象とする物質を90%以上、例えば対象とする物質を95%以上、さらに例えば対象とする物質を99%以上、含有する。対象とする多糖、ポリヌクレオチド、及びポリペプチドの精製には任意の便利なプロトコールを用いてもよく、そのようなプロトコールとしては、限定されるものではないが、限外ろ過、選択的沈殿、結晶化、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、及び密度による沈降が挙げられる。
「単離されている」とは、多糖又はポリペプチドに言及する場合、言及対象の分子が、自然において当該分子が見出される生物そのものから分かれており別個であること、又は、同じタイプの他の生物学的巨大分子の実質的な不在下で存在することを意味する。
「相同性」とは、2つのポリペプチド部分間の同一率(%)を意味する。本明細書中で言及する場合、2つのポリペプチド配列は、約50%以上の配列同一性、例えば60%以上の配列同一性、例えば75%以上の配列同一性、例えば85%以上の配列同一性、例えば90%以上の配列同一性、例えば95%以上の配列同一性、さらに例えば99%以上の配列同一性を呈するとき、互いに「実質的に相同的」である。いくつかの実施形態において、実質的に相同的なポリペプチドは、特定の配列と完全な同一性を有する配列を含んでいる。
「同一性」とは、2つのポリマー配列のサブユニット同士が正確に一致することを意味する。例えば、同一のポリペプチドは、別のポリペプチドとの間でアミノ酸同士が正確に一致するポリペプチドであり、又は、同一のポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドとの間でヌクレオチド同士が正確に一致するポリヌクレオチドである。同一率(%)は、複数の配列をアラインし、アラインされた2つの配列間の正確なマッチ数を計数し、これを参照配列の長さで割り、その結果に100を掛けることにより、2つの分子(参照配列と、参照配列との同一率(%)が未知である配列)間の配列情報の直接比較により決定できる。2つのポリマー配列間の同一率(%)を決定するには、任意の便利なプロトコール、例えば、ALIGN、Dayhoff,M.O.、収録先:Atlas of Protein Sequence and Structure、M.O.Dayhoff編、5、付録3、353〜358ページ、National biomedical Research Foundation、Washington,DCなどを用いてもよく、これは、ペプチド解析用のSmith及びWatermanの局地的相同性アルゴリズム、Advances in Appl.Math.、2、482〜489ページ、1981と適合する。
「対象」とは、脊索動物亜門(subphylum chordata)の任意の構成動物を意味し、例としては、限定するものではないが、ヒト及び他の霊長動物(非ヒト霊長動物、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種を含む);産業動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマ;家庭で飼われる哺乳動物、例えばイヌ及びネコ;実験動物、例として齧歯動物、例えばマウス、ラット、及びモルモット;鳥、例として家庭で飼われる鳥、野鳥、及び猟鳥、例えばニワトリ、七面鳥、及び他の家禽、アヒル、ガチョウなどが挙げられる。この用語は、特定の年齢を表すものではない。したがって、成熟した個体と生まれたばかりの個体は、どちらも対象とされる。
用語「患者」は、その従来の意味で使用され、本発明のNASPの投与により予防又は治療できる病態に罹患している又は罹りやすい生体を指し、ヒト及び非ヒト動物の両方が含まれる。
「生体試料」とは、対象から分離された組織又は体液の試料を意味し、限定されるものではないが例えば、血液、血漿、血清、糞便、尿、骨髄、胆汁、脊髄液、リンパ液、皮膚試料、皮膚、気道、腸管、及び泌尿生殖路の外分泌物、涙、唾液、乳、血球、器官、生検試料、さらに、in vitro細胞培養物の構成要素(限定されるものではないが例えば、培養培地中で細胞及び組織が成長した結果得られる馴化培地)の試料、例えば、組換え細胞、及び細胞成分などが挙げられる。
「治療上有効な用量又は量」とは、本明細書に記載するとおりに投与した際に、所望の治療応答、例えば出血の減少又は凝血時間の短縮などをもたらす量を意味する。
「出血性障害」とは、過剰な出血を伴う任意の障害、例えば、先天性凝固障害、後天性凝固障害、抗凝固薬の投与又は外傷により誘導される出血病態を意味する。以下で論考するように、出血性障害としては、限定されるものではないが、血友病A、血友病B、ヴォン・ヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1つ又は複数の接触因子、例えば第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、及び高分子量キニノゲン(HMWK)の欠乏、臨床的に意義のある出血に関連する1つ又は複数の因子、例えば第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、及びヴォン・ヴィレブランド因子の欠乏、ビタミンK欠乏、フィブリノゲン障害、例えば無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、及び異常フィブリノゲン血症、α2−抗プラスミン欠乏、並びに過剰な出血、例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能不全、血腫、内出血、関節血症、外科手術、外傷、低体温、月経、及び妊娠を原因とする過剰な出血を挙げることができる。
詳細な説明
本発明の態様は、対象における血液凝固を促進するための方法を含む。特定の実施形態による方法の実行においては、ある量の非抗凝固性硫酸化多糖(NASP)を、胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで、対象における血液凝固を促進するのに十分な様式で、該対象に経口投与する。本発明の方法を実行するための組成物及びキットも記載する。
本発明をより詳細に記載する前に、本発明は、本明細書に記載する特定の実施形態に限定されず、したがって、実施形態は変化し得ることを理解されたい。本明細書において使用する術語は、特定の実施形態を記載することのみを目的としたものであり、そのような術語は、限定的であることを意図したものではないことも理解されたい。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。特に定義されない限り、本明細書において使用するすべての専門用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常理解される意味と同じ意味を有する。値の範囲を示す場合、当該範囲の上限値と下限値との間にある各介在値(文脈によりそうでないことが明確に述べられていない限り、下限値の単位の10分の1まで)、及び、その記載された範囲における任意の他の記載値又は介在値は、本発明内に包含されることは理解される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値が、そのより小さい範囲に独立に含まれることがあり、このような値も本発明内に包含され、記載された範囲において具体的に除外される上下限値があれば、それに支配される。記載された範囲に上下限値の一方又は両方が含まれる場合、その含まれる上下限値のどちらか又は両方を除外する範囲も、本発明に含まれる。本明細書においては、用語「約」が前に付いている数値を用いて提示される範囲もある。用語「約」は、本明明細書においては、この用語が前に付いている数そのもの、並びに、この用語が前に付いている数の近似数又は概数について文字による裏付けを与えるために使用される。ある数が、具体的に記載された数の近似数又は概数であるかどうかを決定する際、記載されていない近似数又は概数が、具体的に記載された数と、その数が提示される文脈においては実質的な等価値を示す数である場合がある。本明細書において引用するすべての刊行物、特許、及び特許出願は、参照により組み込まれることが個々の刊行物、特許、又は特許出願それぞれについて具体的且つ個々に指示されている場合と同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、引用する刊行物、特許、又は特許出願はそれぞれ、当該刊行物がその関連で引用される主題を開示及び記載するために参照により本明細書に組み込まれる。いかなる刊行物の引用も、本願の出願日に先立つ刊行物を開示するために行うものであり、本明細書に記載する本発明が、先行発明を理由にそのような刊行物に先行する権利がないと認めたものと解釈されるべきではない。さらに、記載された刊行日は実際の刊行日とは異なる場合もあるであろうから、実際の刊行日は独立に確認する必要があり得る。
特許請求の範囲は、一切の任意選択的な要素を除外するように書かれる場合があることは注意されたい。したがって、本記載は、特許請求の範囲の要素の記載、又は「否定的な」制限の使用との関連で、「単独で」、「のみ」などの排他的な術語の使用についての先行する基礎として機能することを意図したものである。本開示を読めば当業者には明白であろうが、本明細書において記載及び例証されている個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のうちいずれかの特徴と容易に分ける又は組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。記載された方法はすべて、記載された事象の順序で実施してもよく、論理的に可能な任意の他の順序で実施してもよい。本発明の実行又は試験に際しては、本明細書に記載された方法及び材料と類似又は等価な任意の方法及び材料を使用することもできるが、代表的な例証的な方法及び材料をこれから記載する。
本発明をさらに記載するに際し、NASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで経口投与することにより対象における血液凝固を促進するための方法を、まず、より詳細に記載する。次に、本発明の方法を実行するための組成物及びキットも記載する。
対象における血液凝固を促進するための方法
先に要約したように、本発明の態様は、ある量のNASPを胃腸管上皮浸透促進剤との組合せで有する組成物を対象に経口投与することにより血液凝固を促進するための方法を含む。用語「血液凝固を促進すること」は、その従来の意味で使用され、血液凝固の開始を加速させること(すなわち、凝固が始まる時間の長さを短縮すること)、並びに、対象の血液凝固の全体的な速度を加速させること(すなわち、血液凝固が完了するのに要する時間の長さを短縮すること)を指す。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、血液凝固の開始を加速させる。例えば、本発明の方法は、血液が凝固し始めるのに要する時間の長さを、適当な対照との比較で、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、短縮させ得る。他の実施形態において、本発明の方法は、血液凝固の速度を増加させる。例えば、本発明の方法は、血液凝固の速度を、適当な対照との比較で、2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば100%以上、例えば200%以上、さらに例えば500%以上、増加させ得る。
本開示の実施形態において、凝固促進量のNASPは、胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで経口投与される。対象の生理機能によるが、語句「胃腸管上皮の」は、本明細書において使用する場合、胃及び腸管などの消化管(例えば、十二指腸、空腸、回腸)の上皮組織を指し、食道の下部、直腸、及び肛門など、体の胃腸管機能に関わる他の構造をさらに含むことがある。胃腸管浸透促進剤とは、経口投与されると、胃腸系により吸収されるNASPの量を増加させる化合物を意味する。さらに、胃腸管浸透促進剤は、胃腸管上皮を通したNASPの吸収の開始を加速させる(すなわち、吸収が始まるのに要する時間の長さを短縮する)と共に、対象の胃腸管上皮を越えたNASPの輸送の全体的な速度を加速させる(すなわち、胃腸系によるNASPの吸収が完了するのに要する時間の長さを短縮する)こともできる。
いくつかの実施形態において、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、胃腸系により吸収されるNASPの量を増加させる。例えば、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、胃腸系により吸収されるNASPの量を、適当な対照との比較で、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、増加させ得る。他の実施形態において、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、胃腸管上皮を通したNASPの吸収の開始を加速させる。例えば、本発明の胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、NASPの吸収が開始するのに要する時間の長さを、適当な対照との比較で、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、短縮させ得る。また他の実施形態において、本発明の胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、胃腸系によるNASPの吸収の速度を増加させる。例えば、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、NASPの吸収の速度を、適当な対照との比較で、2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば100%以上、例えば200%以上、さらに例えば500%以上、増加させ得る。いくつかの場合において、本発明の胃腸管上皮浸透促進剤は、以下にさらに詳細に記載するように、Caco−2細胞モデルにより決定した値としてのNASPの吸収量を増加させ得る。例えば、本発明の胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、Caco−2細胞モデルにより決定した値としての吸収量を、適当な対照との比較で、2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば100%以上、例えば200%以上、さらに例えば500%以上、増加させ得る。
本発明の実施形態において、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、特定の血液凝固障害、対象の生理機能、及び、胃腸系による吸収の所望の促進程度によって変動し得る。いくつかの実施形態において、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、タイトジャンクションモジュレーターである。用語「タイトジャンクション」は、その従来の意味で用いられ、隣接する細胞同士の膜が結合し合っている、細胞が密接に結び付いた区域を指す。したがって、特定の実施形態において、本発明の方法は、凝固促進量のNASPを、胃腸管上皮のタイトジャンクションを通したNASPの浸透を調整する化合物との組合せで有する組成物を経口投与することを含む。「調整する」とは、胃腸管上皮のタイトジャンクションを通したNASPの浸透を改変する又は増加させることを意味する。したがって、タイトジャンクションモジュレーターは、胃腸系によるNASPの吸収を改変する又は増加させる。本発明の実施形態において、タイトジャンクションモジュレーターとしては、限定されるものではないが、酵素、胆汁酸、多糖、脂肪酸及びその塩、並びにそれらの任意の組合せを挙げることができる。
いくつかの場合において、タイトジャンクションモジュレーターは、多糖である。例えば、多糖であるタイトジャンクションモジュレーターは、キトサンであってもよい。キトサンは、本明細書において使用する場合、キチンのN−デアシレーションにより生成される、2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノースと2−アミノ−β−D−グルコピラノースとの直線状のコポリマーを指す。多糖であるタイトジャンクションモジュレーターとしては、キトサンの誘導体、中でも、例えば、N−アルキルキトサン、アシル化キトサン、チオール化キトサン、リン酸化キトサン、キトサンシクロデキストリン、N−(アミノアルキル)キトサン、スクシニルキトサン、及びオクタノイルキトサンを挙げることもできる。
他の場合において、タイトジャンクションモジュレーターは、胆汁酸である。用語「胆汁酸」は、その従来の意味で使用され、哺乳動物の胆汁中で通常見出されるステロイド酸及びその塩を指す。適当な胆汁酸としては、限定されるものではないが、中でも、コール酸(コラート)、デオキシコール酸(デオキシコラート)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコラート)、ウルソデオキシコール酸(ウルソデオキシコラート)、グリココール酸(グリココラート)、タウロコール酸(タウロコラート)、及びリトコール酸(リトコラート)を挙げることができる。
他の場合において、タイトジャンクションモジュレーターは、酵素である。例えば、酵素であるタイトジャンクションモジュレーターは、プロテアーゼ、例えば、ブロメライン又はブロメラインの酵素断片であってもよい。ブロメラインは、本明細書において使用する場合、Ananas comosusの果実、茎、及び葉に通常由来する酵素群を指し、システインプロテアーゼ、アミラーゼ、酸性ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、及びセルラーゼなどの要素が含まれることもある。
また他の場合において、タイトジャンクションモジュレーターは、脂肪酸及びその脂肪酸塩である。脂肪酸である本発明のタイトジャンクションモジュレーターは、さまざまなものがあり得、例としては、中鎖脂肪酸、例えばC8脂肪酸及びその脂肪酸塩(カプリル酸及びその塩)、C10脂肪酸及びその脂肪酸塩(カプリン酸及びその塩)、並びにC12脂肪酸及びその脂肪酸塩(ラウリン酸及びその塩)などのうち任意の1つ又はそれらの組合せを挙げることができる。特定の場合において、例えば、脂肪酸であるタイトジャンクションモジュレーターは、カプリン酸ナトリウムである。
NASPとの組合せで投与される胃腸管上皮バリア浸透促進剤の濃度は、所望により、効果に応じて変動させることができる。胃腸管上皮バリア浸透促進剤によっては、濃度は、本組成物の総質量の0.01%以上、本組成物の総質量の例えば0.1%以上、例えば1%以上、例えば2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば25%以上、さらに例えば50%以上であってもよい。他の実施形態において、NASPとの組合せで投与される胃腸管上皮バリア浸透促進剤の濃度は、0.01mg/mL以上、例えば0.05mg/mL以上、例えば0.1mg/mL以上、例えば1mg/mL以上、さらに例えば5mg/mL以上である。また他の実施形態において、NASPとの組合せで投与される胃腸管上皮バリア浸透促進剤の濃度は、0.1mM以上、例えば0.5mM以上、例えば1mM以上、例えば5mM以上、例えば10mM以上、例えば25mM以上、さらに例えば50mM以上である。特定の実施形態においては、2つ以上の胃腸管上皮バリア浸透促進剤が併用される。例えば、2つ以上のタイトジャンクションモジュレーター、例えば3つ以上のタイトジャンクションモジュレーター、さらに例えば4つ以上のタイトジャンクションモジュレーターをNASPとの組合せで用いてもよい。タイトジャンクションモジュレーターの任意の組合せ、例えば、他の組合せの中でも、多糖とプロテアーゼ、脂肪酸と多糖、多糖と胆汁酸、多糖と脂肪酸と胆汁酸、2つの異なる多糖、又は2つの異なる胆汁酸などの組合せを用いてもよい。2つ以上の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を用いる場合、各胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量百分率は、本組成物の総質量の1%以上、本組成物の総質量の例えば2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、さらに例えば50%以上の範囲で変動し得る。例えば、2つの胃腸管上皮バリア浸透促進剤を用いる場合、第1の胃腸管上皮バリア浸透促進剤と第2の胃腸管上皮バリア浸透促進剤との質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲で、変動し得る。例えば、第1の胃腸管上皮バリア浸透促進剤対第2の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。いくつかの実施形態において、第2の胃腸管上皮バリア浸透促進剤対第1の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲である。例えば、第2の胃腸管上皮バリア浸透促進剤対第1の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。特定の場合において、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、キトサン及びブロメラインを含む。キトサン及びブロメラインを用いる場合、キトサンとブロメラインとの質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲で、変動し得る。例えば、キトサン対ブロメラインの質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。いくつかの実施形態において、ブロメライン対キトサンの質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲である。例えば、ブロメライン対キトサンの質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。
キトサンとブロメラインとの組合せを用いる場合、特定の実施形態において、キトサンの濃度は、約0.1%〜約5%、例えば約0.15%〜約4.5%、例えば0.2%〜約4%、例えば約0.25%〜約3.5%、例えば0.3%〜約3%、例えば0.5%〜約2.5%、さらに例えば約0.5%〜1.5%の範囲で変動し得る。同様に、キトサンとブロメラインとの組合せを用いる場合、特定の実施形態において、ブロメラインの濃度は、約0.01mg/mL〜約1.0mg/mL、例えば約0.2mg/mL〜約0.9mg/mL、例えば0.25mg/mL〜約0.75mg/mL、例えば約0.3mg/mL〜約0.6mg/mL、さらに例えば約0.4mg/mL〜約0.5mg/mLの範囲で変動し得る。したがって、これらの実施形態において、方法は、NASPをキトサンとブロメラインの両方との組合せで投与することを含む。例として、NASPは、天然又は合成のNASP、例えば、N−アセチルヘパリン(NAH)、N−アセチル−デ−O−硫酸化ヘパリン(NA−de−o−SH)、デ−N−硫酸化ヘパリン(De−NSH)、デ−N−硫酸化アセチル化ヘパリン(De−NSAH)、過ヨウ素酸塩酸化ヘパリン(POH)、化学的硫酸化ラミナリン(CSL)、化学的硫酸化アルギン酸(CSAA)、化学的硫酸化ペクチン(CSP)、硫酸デキストラン(DXS)、ヘパリン由来オリゴ糖(HDO)、ポリ硫酸ペントサン(PPS)、硫酸化マルトペントース、硫酸化β−シクロデキストリン、硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、及びそれらの誘導体を含め、先に記載したものなどであってもよい。例として、NASPは、フコイダン、例えばフコイダン5307002、Fucus vesiculosus、最大分子量ピーク126.7kD;フコイダンVG49、Fucus vesiculosus、5307002を加水分解した試料で、分子量が低下しており最大分子量ピークは22.5kD;フコイダンVG57、Undaria pinnatifida、高チャージ(高硫酸化、脱アセチル化されたもの);フコイダンGFS(5508005)、Undaria pinnatifida、脱パイロジェン化されたもの;フコイダンGFS(L/FVF−01091)、Fucus vesiculosus、脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク125kD;フコイダンGFS(L/FVF−01092)、Fucus vesiculosus、脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク260kD;フコイダンGFS(L/FVF−01093)、Fucus vesiculosus、加水分解され脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク36kD;Maritech(登録商標)Ecklonia radiata抽出物;Maritech(登録商標)Ecklonia maxima抽出物;Maritech(登録商標)Macrocystis pyrifera抽出物;Maritech(登録商標)Immune trial Fucoidan Blend;及びそれらの組合せであってもよい。先述のように、特定の場合において、キトサンの濃度は、約0.1%〜約5%の範囲、例えば約3%であり、ブロメラインの濃度は、0.1mg/mL〜約1mg/mLの範囲、例えば約0.5mg/mLである。
2つ以上の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を用いる場合、いくつかの実施形態において、その組合せは、胃腸管上皮バリア浸透促進剤の相乗的に有効な組合せである。用語「相乗的に有効な」は、複数の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を組み合わせると、個々の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を足し合わせたものにより得られると思われるより大きい効果(すなわち、胃腸管上皮バリア浸透を促進する効果)が得られることを意味する。例えば、2つ以上の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の組合せは、個々の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を足し合わせたものにより得られると思われる効果の2倍以上、個々の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を足し合わせたもので達成されると思われる効果の例えば3倍以上、例えば4倍以上、例えば5倍以上、例えば10倍以上、さらに例えば25倍以上の効果をもたらす。したがって、2つの胃腸管上皮バリア浸透促進剤が組み合わされる場合、本発明の相乗的に有効な組合せは、2つの個々の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を足し合わせたものにより得られると思われる効果の2倍以上、例えば5倍以上、例えば10倍以上、さらに例えば25倍以上の効果をもたらす。同様に、3つの胃腸管上皮バリア浸透促進剤が組み合わされる場合、本発明の相乗的に有効な組合せは、3つの個々の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を足し合わせたものにより得られると思われる効果の2倍以上、例えば5倍以上、例えば10倍以上、さらに例えば25倍以上の効果をもたらす。特定の実施形態において、本発明の相乗的に有効な組合せとしては、キトサンとブロメラインとの組合せが挙げられる。このような実施形態において、キトサンとブロメラインとの組合せは、胃腸管上皮バリアを通した浸透の促進に対して、キトサンとブロメラインとを足し合わせたものにより個々に得られるより大きい効果を及ぼす。例えば、いくつかの場合において、キトサンとブロメラインとの組合せは、胃腸管上皮バリアを通した浸透を、キトサンとブロメラインとを足し合わせたものにより個々に得られるより、2倍以上、例えば5倍以上、例えば10倍以上、さらに例えば25倍以上、促進する。特定の場合において、相乗的に有効な組合せとしては、濃度が0.1mg/mL〜約0.5mg/mLの範囲、例えば0.15mg/mL〜約0.4mg/mL、さらに例えば0.25mg/mLであるブロメラインと、濃度が約1%〜約5%w/vの範囲、例えば1.5%〜約4.5%w/v、例えば2%〜約4%w/v、さらに例えば約3%w/vであるキトサンとの組合せが挙げられる。特定の実施形態において、ブロメラインとキトサンとの相乗的に有効な組合せとしては、0.5mg/mLのブロメラインと3%w/vのキトサンとの組合せが挙げられる。他の実施形態において、ブロメラインとキトサンとの相乗的に有効な組合せとしては、0.25mg/mLのブロメラインと1.5%w/vのキトサンが挙げられる。また他の実施形態において、ブロメラインとキトサンとの相乗的に有効な組合せとしては、0.12mg/mLのブロメラインと0.75%w/vのキトサンが挙げられる。
本発明の実施形態において、NASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで対象に経口投与することにより血液凝固を促進するための方法が提供される。「対象」とは、血液凝固の促進を受ける人間又は生物を意味する。したがって、本発明の対象としては、限定されるものではないが、ヒト及び他の霊長動物、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種;産業動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、及びウマ;家庭で飼われる哺乳動物、例えばイヌ及びネコ;実験動物、例として齧歯動物、例えばマウス、ラット、及びモルモット;鳥、例として家庭で飼われる鳥、野鳥、及び猟鳥、例えばニワトリ、七面鳥、及び他の家禽、アヒル、ガチョウなどを挙げることができる。
いくつかの実施形態において、本方法は、出血性障害、例えば、慢性又は急性の出血性障害、血液因子欠乏を原因とする先天性凝固障害、後天性凝固障害、及び抗凝固薬の投与に対処するために用いてもよい。例えば、出血性障害としては、限定されるものではないが、血友病A、血友病B、ヴォン・ヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1つ又は複数の接触因子、例えば第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、及び高分子量キニノゲン(HMWK)の欠乏、臨床的に意義のある出血に関連する1つ又は複数の因子、例えば第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、及びヴォン・ヴィレブランド因子の欠乏、ビタミンK欠乏、フィブリノゲン障害、例えば無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、及び異常フィブリノゲン血症、α2−抗プラスミン欠乏、並びに過剰な出血、例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能不全、血腫、内出血、関節血症、外科手術、外傷、低体温、月経、及び妊娠を原因とする過剰な出血を挙げることができる。
他の実施形態において、本方法は、対象において血液凝固を促進して抗凝固薬の効果を逆転させるようにするために用いてもよい。例として、対象は、限定されるものではないが以下に挙げるような抗凝固薬、すなわち、ヘパリン、クマリン誘導体、例えばワルファリン又はジクマロール、TFPI、AT III、ループス抗凝固因子、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位遮断第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子阻害薬、第Xa因子阻害薬、例えばフォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a、及びラザキサバン(DPC906)、第Va因子及び第VIIIa因子の阻害薬、例えば活性化プロテインC(APC)及び可溶性トロンボモジュリン、トロンビン阻害薬、例えばヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、及びキシメラガトランで治療されていてもよい。特定の実施形態において、対象が使用している抗凝固薬は、凝血因子と結合する抗体、限定されるものではないが例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、ヴォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン、又は高分子量キニノゲン(HMWK)と結合する抗体であってもよい。
本発明の態様は、凝固促進量のNASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで有する組成物を対象に経口投与して血液凝固を促進することを含む。先述のように、本発明のNASPは、天然NASPであっても合成NASPであってもよい。いくつかの実施形態において、NASPは、天然NASPである。「天然の」とは、当該NASPが、天然に存在する入手源、例えば動物若しくは植物源から見出され又はそれらに由来することを意味し、広い範囲のサブクラス、例えば、ヘパリン、グリコサミノグリカン、フコイダン、カラギーナン、ポリ硫酸ペントサン、デルマタン硫酸及び硫酸デキストランを包含する。いくつかの実施形態において、天然NASPは、生物源から抽出することができる。「生物源」とは、天然に存在する生物、又は生物の一部を意味する。例えば、対象とするNASPは、植物、動物、真菌、又は細菌から抽出することができる。とりわけ、対象とするNASPは、食用海藻、褐藻、棘皮動物(例えば、ウニ、ナマコ)などから抽出することができる。生物源からNASPを抽出するには、任意の便利なプロトコールを用いることができる。例えば、NASPは、他の手順の中でも、酸塩基抽出、酵素的分解、選択的沈殿、ろ過により、生物源から抽出できる。食用海藻及び褐藻などの生物源からNASPを抽出及び単離するための方法は、2010年2月25日に出願された同時係属の米国特許出願第12/449,712号に詳細に記載されており、同文献の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態において、本発明の天然NASPとしては、限定されるものではないが、N−アセチルヘパリン(NAH)、N−アセチル−デ−O−硫酸化ヘパリン(NA−de−o−SH)、デ−N−硫酸化ヘパリン(De−NSH)、デ−N−硫酸化アセチル化ヘパリン(De−NSAH)、過ヨウ素酸塩酸化ヘパリン(POH)、化学的硫酸化ラミナリン(CSL)、化学的硫酸化アルギン酸(CSAA)、化学的硫酸化ペクチン(CSP)、硫酸デキストラン(DXS)、ヘパリン由来オリゴ糖(HDO)、ポリ硫酸ペントサン(PPS)、及びそれらの組合せが挙げられる。いくつかの場合において、NASPは、天然に存在するNASPの低分子量の断片であってもよい。他の場合において、天然NASPとしては、天然に存在するNASPの生化学的又は化学的な誘導体を挙げることもできる。特定の場合において、天然NASPは、フコイダンである。以下にさらに詳細に記載するように、フコイダンは、天然に存在する複雑な硫酸化多糖化合物であり、特定の食用海藻、褐藻、及び棘皮動物(例えば、ウニ、ナマコ)から抽出することができる。本明細書において使用する場合、用語「フコイダン」は、単一の化学体ではなく、低分子量の硫酸ポリマーである、生物源から抽出された多種多様な部分群を指す。特定の場合において、本発明のフコイダンとしては、限定されるものではないが、フコイダンGFS5508005、Undaria pinnatifida、脱パイロジェン化されたもの;フコイダンGFS5508004、Undaria pinnatifida;フコイダンGFS5508003、Undaria pinnatifida;フコイダン5307002、Fucus vesiculosus、最大分子量ピーク126.7kD;フコイダンVG49、Fucus vesiculosus、5307002を加水分解した試料で、分子量が低下しており最大分子量ピークは22.5kD;フコイダン5308004、Fucus vesiculosus;フコイダン5308005、Fucus vesiculosus;フコイダンL/FVF1091、Fucus vesiculosus;フコイダンVG201096A、Fucus vesiculosus;フコイダンVG201096B、Fucus vesiculosus;フコイダンVG57、Undaria pinnatifida、高チャージ(高硫酸化、脱アセチル化されたもの);フコイダンVG50、Ascophyllum nodosum、最大分子量ピーク149.7kD;及びそれらの組合せが挙げられる。
適当なNASPの例は、2005年5月27日に出願された米国特許出願第11/140,504号、現米国特許第7,767,654号、及び2011年1月13日に出願された米国特許出願第13/006,396号にさらに詳細に記載されており、これらの文献の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
他の実施形態において、NASPは、合成NASPである。「合成の」とは、当該硫酸化多糖が、人工の方法(例えば化学合成)により部分的又は完全に作製されていることを意味する。例えば、合成NASPは、硫酸化オリゴマー、例えば、硫酸化オリゴ糖又は硫酸化脂肪族化合物であってもよい。特定の場合において、合成NASPは、硫酸化ペントース、硫酸化ヘキソース、又は硫酸化シクロデキストリンである。例えば、合成NASPとしては、限定されるものではないが、硫酸化マルトペントース、硫酸化β−シクロデキストリン、硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、及びそれらの誘導体を挙げることができる。
他の適当な合成NASPの例は、2012年1月30日に出願された米国特許仮出願第61/592,554号、及び2012年1月30日に出願された米国特許仮出願第61/592,549号にさらに詳細に記載されており、これらの文献の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
NASPの所望の効果及び効力によっては、1つ又は複数のNASPを一緒に用いてもよい。例えば、2つ以上のNASP、例えば3つ以上のNASP、さらに例えば4つ以上のNASPを一緒に用いてもよい。2つ以上のNASPを用いる場合、すべてのNASPが天然NASPであってもよく、すべてのNASPが合成NASPであっても、又はその任意の組合せであってもよい。2つ以上のNASPを用いる場合、本組成物中の各NASPの質量百分率は、本組成物の総質量の1%以上、本組成物の総質量の、例えば2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、さらに例えば50%以上の範囲で変動し得る。
本発明の実施形態において、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤との質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲で、変動し得る。例えば、NASP対胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。いくつかの実施形態において、胃腸管上皮バリア浸透促進剤対NASPの質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲である。例えば、胃腸管上皮バリア浸透促進剤対NASPの質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。
NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とは、任意の順序で対象に投与してもよい。いくつかの場合において、NASPは、胃腸管上皮バリア浸透促進剤の経口投与に先立って経口投与される。他の場合において、NASPは、胃腸管上皮バリア浸透促進剤の経口投与の後で経口投与される。また他の場合において、NASPは、胃腸管上皮バリア浸透促進剤の経口投与と併せて経口投与される。NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤の両方が同時に提供される場合、それぞれは、同じ組成物中で提供することも異なる組成物中で提供することもできる。NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とが同時に投与される場合、NASPは、組成物を対象に投与する前に、胃腸管上皮バリア浸透促進剤及び血液凝固因子と混合してもよい。任意の便利な混合プロトコール、例えば乾燥振盪、溶液又は懸濁液の混合、工業的な混合プロトコールなどによるものを用いてもよい。したがって、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とは、併用療法によって個体に与えることができる。「併用療法」とは、療法を受けている対象においてNASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せの治療効果がもたらされるように、対象に投与することを意図したものである。同様に、1つ又は複数のNASPと1つ又は複数の胃腸管上皮バリア浸透促進剤とは、少なくとも1つの治療用量で経口投与することができる。
NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤との任意の適当な組合せを投与してもよい。特定の実施形態において、方法は、天然NASP(先述のとおり)を胃腸管上皮バリア浸透促進剤のうち1つ又は複数と共に投与することを含む。これらの実施形態において、方法は、天然NASPを、カプリン酸ナトリウム、デオキシコラート、ブロメライン、及びキトサンのうち1つ又は複数との組合せで投与することを含んでもよい。特定の実施形態において、方法は、天然NASPをカプリン酸ナトリウムと共に投与することを含む。例えば、Undaria pinnatifida U.p.5508005及びFucus vesiculosus F.v.L/FVF1091のうち1つ又は複数を、カプリン酸ナトリウムと共に投与してもよい。他の実施形態において、方法は、天然NASPをデオキシコラートと共に投与することを含む。例えば、Undaria pinnatifida U.p.5508005、Fucus vesiculosus F.v.L/FVF1091、Fucus vesiculosus F.v.DS1001108、Fucus vesiculosus F.v.SK110144Bのうち1つ又は複数を、デオキシコラートと共に投与してもよい。また他の実施形態において、方法は、天然NASPをブロメラインと共に投与することを含む。例えば、Undaria pinnatifida U.p.5508005、Fucus vesiculosus F.v.L/FVF1091、Fucus vesiculosus F.v.DS1001108、Fucus vesiculosus F.v.SK110144Bのうち1つ又は複数を、ブロメラインと共に投与してもよい。また他の実施形態において、方法は、天然NASPをキトサンと共に投与することを含む。例えば、Undaria pinnatifida U.p.5508005、Fucus vesiculosus F.v.L/FVF1091、Fucus vesiculosus F.v.DS1001108、Fucus vesiculosus F.v.SK110144Bのうち1つ又は複数を、キトサンとの組合せで投与してもよい。また他の実施形態において、方法は、天然NASPをブロメラインとキトサンとの組合せ(先述のとおり)と共に投与することを含む。例えば、Undaria pinnatifida U.p.5508005、Fucus vesiculosus F.v.L/FVF1091、Fucus vesiculosus F.v.DS1001108、Fucus vesiculosus F.v.SK110144Bのうち1つ又は複数を、ブロメラインとキトサンとの組合せと共に投与してもよい。
特定の実施形態において、方法は、合成NASP(先述のとおり)を、胃腸管上皮バリア浸透促進剤のうち1つ又は複数と共に投与することを含む。これらの実施形態において、方法は、合成NASPと、カプリン酸ナトリウム、デオキシコラート、ブロメライン、及びキトサンのうち1つ又は複数との組合せを投与することを含んでもよい。特定の実施形態において、方法は、合成NASPをカプリン酸ナトリウムと共に投与することを含む。例えば、硫酸化β−シクロデキストリン及び硫酸化マルトペントースのうち1つ又は複数を、カプリン酸ナトリウムと共に投与してもよい。他の実施形態において、方法は、合成NASPをデオキシコラートと共に投与することを含む。例えば、24kDの硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、14kDの6−カルボキシイコデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、及び硫酸化マルトペントースのうち1つ又は複数を、デオキシコラートと共に投与してもよい。また他の実施形態において、方法は、合成NASPをブロメラインと共に投与することを含む。例えば、24kDの硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、14kDの6−カルボキシイコデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、及び硫酸化マルトペントースのうち1つ又は複数を、ブロメラインと共に投与してもよい。また他の実施形態において、方法は、合成NASPをキトサンと共に投与することを含む。例えば、24kDの硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、14kDの6−カルボキシイコデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、及び硫酸化マルトペントースのうち1つ又は複数を、キトサンとの組合せで投与してもよい。また他の実施形態において、方法は、合成NASPをブロメラインとキトサンとの組合せ(先述のとおり)と共に投与することを含む。例えば、24kDの硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、14kDの6−カルボキシイコデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、及び硫酸化マルトペントースのうち1つ又は複数を、ブロメラインとキトサンとの組合せと共に投与してもよい。
特定の実施形態において、本発明の態様は、凝固促進量のNASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤を血液凝固因子との組合せで含有する組成物を対象に経口投与することにより対象における血液凝固を促進することを含む。例えば、対象には、NASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤を1つ又は複数の血液凝固因子との組合せで含有する凝固促進量の組成物を経口投与してもよく、そのような血液凝固因子としては、限定されるものではないが、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びヴォン・ヴィレブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、及びVIIIa、プレカレクレイン、及び高分子量キニノゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、及び第Xa因子が挙げられる。
NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物が血液凝固因子と共に対象に経口投与される場合、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物対血液凝固因子の質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲で、変動し得る。例えば、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物対血液凝固因子の質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。いくつかの実施形態において、血液凝固因子対NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物の質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲である。例えば、血液凝固因子対NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物の質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。
血液凝固因子、及び、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物は、任意の順序で対象に投与してもよい。いくつかの場合において、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物は、血液凝固因子の投与に先立ち経口投与される。他の場合において、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物は、血液凝固因子の投与と併せて経口投与される。また他の場合において、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物は、血液凝固因子の投与の後で経口投与される。NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物が、血液凝固因子と併せて経口投与される場合、NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する組成物は、該組成物を対象に経口投与する前に血液凝固因子と混合してもよい。任意の便利な混合プロトコール、例えば、乾燥振盪、溶液又は懸濁液の混合、工業的な混合プロトコールなどによるものを用いてもよい。
本発明の態様は、凝固促進量のNASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで経口投与することにより出血性障害を治療するための方法及び組成物を含む。本明細書において開示する、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わされたNASPは、単独で(すなわち、単剤として)、又は他の止血剤との組合せで投与できる。所望により、凝固促進量のNASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで、出血性障害、例えば、先天性凝固障害、後天性凝固障害、抗凝固薬の投与及び外傷により誘導される出血病態を有すると診断されている対象の治療において用いてもよい。
いくつかの場合において、対象は、凝血障害を有すると診断されていてもよく、このような凝血障害としては、限定されるものではないが、血友病A、血友病B、ヴォン・ヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1つ又は複数の接触因子、例えば第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、及び高分子量キニノゲン(HMWK)の欠乏、臨床的に意義のある出血に関連する1つ又は複数の因子、例えば第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、及びヴォン・ヴィレブランド因子の欠乏、ビタミンK欠乏、フィブリノゲン障害、例えば無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、及び異常フィブリノゲン血症、α2−抗プラスミン欠乏、並びに過剰な出血、例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能不全、血腫、内出血、関節血症、外科手術、外傷、低体温、月経、及び妊娠を原因とする過剰な出血が挙げられる。
他の場合において、対象は、凝血障害を有すると診断されていてもよく、このような凝血障害としては、血液因子欠乏を原因とする先天性凝固障害又は後天性凝固障害が挙げられる。例えば、血液因子欠乏は、1つ又は複数の因子、限定されるものではないが例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、及びヴォン・ヴィレブランド因子の欠乏を原因とするものであってもよい。
また他の場合において、対象は、該対象への抗凝固薬の投与の結果生じた凝血障害を有すると診断されていてもよい。例として、抗凝固薬としては、限定されるものではないが、ヘパリン、クマリン誘導体、例えばワルファリン又はジクマロール、組織因子経路阻害薬(TFPI)、アンチトロンビンIII、ループス抗凝固因子、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位遮断第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子阻害薬、第Xa因子阻害薬、例えばフォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a、及びラザキサバン(DPC906)、第Va因子及び第VIIIa因子の阻害薬、例えば活性化プロテインC(APC)及び可溶性トロンボモジュリン、トロンビン阻害薬、例えばヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、及びキシメラガトランを挙げることができる。特定の実施形態において、抗凝固薬は、凝血因子と結合する抗体、限定されるものではないが例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、ヴォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン、又は高分子量キニノゲン(HMWK)と結合する抗体であってもよい。
また他の場合において、本発明の方法は、対象におけるTFPI活性を阻害する方法を含む。例えば、方法は、ある量のNASPを、胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで、対象におけるTFPI活性を阻害するのに十分な様式で該対象に経口投与することをさらに含むことができる。特定の場合においては、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わされた凝固促進量のNASPを、TFPIを含んでいる生体試料(例えば血漿)と合わせてから、該生体試料のTFPI活性を測定する。他の場合において、方法は、凝固促進量のNASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤を生体試料と合わせることと、TFPIを組成物に加えることと、及び該生体試料のTFPI活性を測定することとを含む。特定の場合において、生体試料は、血漿試料、例えば、正常血漿又は第VIII因子が阻害された血漿などである。
本発明の方法を実行するに際し、対象における血液凝固を促進するためのプロトコールは、例えば、対象の年齢、体重、凝血障害の重症度、全身の健康状態、並びに、投与しようとするNASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤の特定の組成及び濃度などにより、変動し得る。本発明の実施形態において、経口投与及び胃腸系による吸収後に対象において達成されるNASPの濃度は、いくつかの場合においては、0.01nM〜500nMの範囲で変動し得る。対象とするNASPは、その最適な濃度で凝固促進性となる。「最適な濃度」とは、NASPが最も高い値の凝固促進活性を呈する濃度を意味する。NASPの多くが、最適な濃度よりはるかに高い濃度でも抗凝固活性を実証したことから、本発明のNASPは、その最適な濃度の範囲において非抗凝固性の挙動を示す。したがって、NASPの効力、並びに所望の効果によっては、本発明の方法によりもたらされるNASPの最適な濃度は、0.01nM〜500nM、例えば0.1nM〜250nM、例えば0.1nM〜100nM、例えば0.1nM〜75nM、例えば0.1nM〜50nM、例えば0.1nM〜25nM、例えば0.1nM〜10nM、さらに例えば0.1nM〜1nMの範囲であってもよい。較正自動トロンボグラフィー(CAT)アッセイにより決定した値としての、対象とするNASPの最適な濃度及び活性レベルは、2005年5月27日に出願された米国特許出願第11/140,504号、現米国特許第7,767,654号、及び2011年1月13日に出願された米国特許出願第13/006,396号にさらに詳細に記載されており、これらの文献の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。同様に、経口投与及び胃腸系による吸収後に対象において達成される胃腸管上皮バリア浸透促進剤の濃度は、いくつかの場合において、0.01nM〜500nMの範囲で変動し得る。例えば、NASPの固有の吸収率、並びに所望の効果によっては、本発明の方法によりもたらされる胃腸管上皮バリア浸透促進剤の濃度は、0.01nM〜500nM、例えば0.1nM〜250nM、例えば0.1nM〜100nM、例えば0.1nM〜75nM、例えば0.1nM〜50nM、例えば0.1nM〜25nM、例えば0.1nM〜10nM、さらに例えば0.1nM〜1nMの範囲であってもよい。
したがって、対象とする、胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せでNASPを含有する組成物の経口投与量は、1日当たり約0.01mg/kg〜500mg/kg、例えば1日当たり0.01mg/kg〜400mg/kg、例えば1日当たり0.01mg/kg〜200mg/kg、例えば1日当たり0.1mg/kg〜100mg/kg、例えば1日当たり0.01mg/kg〜10mg/kg、例えば1日当たり0.01mg/kg〜2mg/kg、さらに例えば1日当たり0.02mg/kg〜2mg/kgの範囲で変動し得る。他の実施形態において、経口投与量は、0.01〜100mg/kgを1日4回(QID)、例えば0.01〜50mg/kg QID、例えば0.01mg/kg〜10mg/kg QID、例えば0.01mg/kg〜2mg/kg QID、例えば0.01〜0.2mg/kg QIDの範囲であってもよい。他の実施形態において、経口投与量は、0.01mg/kg〜50mg/kgを1日3回(TID)、例えば0.01mg/kg〜10mg/kg TID、例えば0.01mg/kg〜2mg/kg TID、さらに例えば0.01mg/kg〜0.2mg/kg TIDの範囲であってもよい。また他の実施形態において、経口投与量は、0.01mg/kg〜100mg/kgを1日2回(BID)、例えば0.01mg/kg〜10mg/kg BID、例えば0.01mg/kg〜2mg/kg BID、さらに例えば0.01mg/kg〜0.2mg/kg BIDの範囲であってもよい。投与される化合物の量は、特定のNASPの効力及び濃度、所望の規模又は凝固促進効果、NASPの固有の吸収率、並びに、胃腸管吸収の所望の促進程度によって決まってこよう。
先に論考したように、本発明の方法により提供される、胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せでNASPを含有する組成物は、他のNASP、胃腸管上皮バリア浸透促進剤、又は他の治療剤、例えば止血剤、血液因子、又は、他の医薬品と組み合わせて、臨床医の判断及び対象の必要性によって決まる投与スケジュールに従って経口投与されてもよい。したがって、投与スケジュールとしては、限定されるものではないが、1日5回、1日4回、1日3回、1日2回、1日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回の投与、及びその任意の組合せを挙げることができる。
いくつかの実施形態において、出血性障害は、長期間にわたる複数回投与での本方法及び組成物を必要とする慢性の病態(例えば、先天性又は後天性の凝固因子欠乏)であってもよい。あるいは、本発明の方法及び組成物は、急性の病態(例えば、外科手術若しくは外傷、又は、凝固補充療法を受けている対象における因子阻害薬/自己免疫エピソードを原因とする出血)を治療するために、単回又は複数回用量で、比較的短い期間、例えば1〜2週間にわたって、投与してもよい。
本発明の実施形態を実行するに際し、1回又は複数回の治療上有効な治療サイクルが、対象に施されることになる。「治療上有効な治療サイクル」とは、施されると、治療に関する所望の治療応答をもたらす治療サイクルを意味する。例として、1回又は複数回の治療上有効な治療サイクルは、凝血アッセイ(例えば、CAT、aPTT、以下に詳細に記載する)により決定した値としての凝血の速度を、1%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上、例えば20%以上、例えば30%以上、例えば40%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上増加させ得るが、さらに例えば血塊形成の速度を99%以上増加させる。他の場合において、1回又は複数回の治療上有効な治療サイクルは、血塊形成の速度を1.5倍以上、例えば2倍以上、例えば5倍以上、例えば10倍以上、例えば50倍以上増加させ得るが、さらに例えば血塊形成の速度を100倍以上増加させる。いくつかの実施形態において、本発明の方法により治療される対象は、肯定的な治療応答を呈する。「肯定的な治療応答」とは、対象が、出血性障害の1つ又は複数の症状の改善を呈することを意味する。例えば、本発明により提供される方法に対して肯定的な治療応答を呈する対象としては、限定されるものではないが、凝血時間の短縮、出血の減少、因子補充療法の必要性の低下、又はそれらの組合せなどの応答を挙げることができる。特定の実施形態において、2回以上の治療上有効な治療サイクルが施される。
先に概説したように、特定の実施形態による方法の実行において、凝固促進量のNASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで有する組成物は、対象における血液凝固を促進するために、該対象に投与される。本組成物が胃腸管上皮を通して吸収される限り、任意の便利な投与様式を用いてもよい。したがって、投与様式は、経鼻胃管(例えば、採食チューブ又はNGチューブ)による経口投与を含んでいてもよい。以下でより詳細に論考するように、本発明の医薬組成物は、溶液剤若しくは懸濁剤、シロップ剤、錠剤、カプセル剤、散剤、ゲル剤、又はその任意の組合せの形態であってもよい。凝固促進量のNASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを有する組成物が、血液凝固因子との組合せで経口投与される場合、先に詳細に論考したように、NASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤成分の投与様式は、血液凝固因子の投与様式と同じであっても異なっていてもよい。例えば、いくつかの場合において、凝固促進量のNASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを有する組成物は経口投与してもよく、一方、血液凝固因子は局所的に適用(例えば、クリーム剤として)してもよい。他の場合において、凝固促進量のNASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを有する本組成物及び血液凝固因子は、両方とも経口投与される。
特定の実施形態において、本発明の方法は、凝固促進量のNASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを有する組成物を予防的に、例えば、計画された外科手術の前などに経口投与することを提供する。本組成物は、所望により、例えば計画された手術に1時間以上先行して、例えば計画された手術に10時間先行して、例えば計画された手術に24時間先行して、さらに例えば計画された手術に1週間先行して、予防的に投与してもよい。いくつかの場合において、計画された手術に先行して又は該手術中に投与される組成物は、以下にさらに詳細に記載するように、持続放出製剤(例えば、持続放出性のカプレット剤又は錠剤)であってもよい。
特定の実施形態において、本発明の組成物は、関係のある又は関係のない病態を治療するための他の薬剤に先行して、又はそれと併用して、又はそれに続けて、経口投与することができる。他の薬剤と同時に提供される場合、本発明の組成物は、同じ組成物中又は異なる組成物中で提供できる。したがって、対象とする、NASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤及び他の薬剤は、経口用剤形の形態で、併用療法を用いて個体に与えることができる。例えば、併用療法は、本発明の組成物と、少なくとも1つの他の薬剤、例えば止血剤又は凝固因子(例:FVIII又はFIX)を有する医薬組成物とを投与することにより達成してもよく、特定の経口投与法によれば、これらの組成物は、組合せの形で、治療上有効な用量を含む。同様に、1つ又は複数のNASPは、1つ又は複数の胃腸管上皮バリア浸透促進剤及び治療剤との組合せで、少なくとも1つの治療用量で投与できる。別々の医薬組成物の投与は、これらの物質の組合せの治療効果が、療法を受けている対象においてもたらされる限り、同時に又は異なる時点で(すなわち、逐次的に、又は順序を問わず、又は同じ日に、又は異なる日に)実施できる。
組成物
本発明の態様は、さらに、対象における血液凝固を促進するための経口投与用組成物を含む。本発明の実施形態において、組成物は、凝固促進量のNASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで含む。組成物は、凝固促進量のNASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せ及び血液凝固因子をさらに含む。先に詳細に記載したように、胃腸管上皮バリア浸透促進剤としては、経口投与されると、胃腸系により吸収されるNASPの量を増加させる、化合物が挙げられる。さらに、胃腸管浸透促進剤は、胃腸管上皮を通したNASPの吸収の開始を加速させる(すなわち、吸収が始まる時間の長さを短縮する)と共に、対象の胃腸管上皮を越えたNASPの輸送の全体的な速度を加速させる(すなわち、胃腸系によるNASPの吸収が完了するのに要する時間の長さを短縮する)こともできる。
先述のように、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、胃腸系により吸収されるNASPの量を増加させ得る。例えば、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、胃腸系により吸収されるNASPの量を、適当な対照との比較で、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、増加させ得る。他の実施形態において、本発明の経口組成物中の胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、胃腸管上皮を通したNASPの吸収の開始を加速させる。例えば、本発明の胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、NASPの吸収を開始するのに要する時間の長さを、適当な対照との比較で、5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、例えば95%以上、短縮させ得る。また他の実施形態において、本発明の経口組成物中の胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、NASPの吸収の速度を増加させる。例えば、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、NASPの吸収の速度を、適当な対照との比較で、2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば100%以上、例えば200%以上、さらに例えば500%以上、増加させ得る。
特定の場合において、本発明の経口組成物中の胃腸管上皮浸透促進剤は、Caco−2細胞モデルにより決定した値としてのNASPの吸収量を増加させ得る。例えば、本発明の胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、Caco−2細胞モデルにより決定した値としての吸収量を、適当な対照との比較で、2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば100%以上、例えば200%以上、さらに例えば500%以上、増加させ得る。
先に詳細に論考したように、本発明の経口投与用組成物は、1つ又は複数のNASPを1つ又は複数の胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで含む。対象とする組成物中の胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、さまざまなものがあり得る。いくつかの実施形態において、胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、タイトジャンクションモジュレーターである。例えば、本発明の経口投与用組成物中のタイトジャンクションモジュレーターとしては、限定されるものではないが、酵素、胆汁酸、多糖、脂肪酸及びその塩、並びにそれらの任意の組合せを挙げることができる。
いくつかの場合において、タイトジャンクションモジュレーターは、多糖である。例えば、多糖であるタイトジャンクションモジュレーターは、特定の場合において、キトサンであってもよい。キトサンは、先に論考したように、キチンのN−デアクチレーションにより作られる2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノースと2−アミノ−β−D−グルコピラノースとの直線状のコポリマーを指す。多糖であるタイトジャンクションモジュレーターとしては、キトサンの誘導体、中でも、例えばN−アルキルキトサン、アシル化キトサン、チオール化キトサン、リン酸化キトサン、キトサンシクロデキストリン、N−(アミノアルキル)キトサン、スクシニルキトサン、及びオクタノイルキトサンを挙げることもできる。
他の場合において、タイトジャンクションモジュレーターは、胆汁酸である。胆汁酸である適当なタイトジャンクションモジュレーターとしては、限定されるものではないが、中でも、コール酸(コラート)、デオキシコール酸(デオキシコラート)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコラート)、ウルソデオキシコール酸(ウルソデオキシコラート)、グリココール酸(グリココラート)、タウロコール酸(タウロコラート)、及びリトコール酸(リトコラート)を挙げることができる。
他の場合において、タイトジャンクションモジュレーターは、酵素である。例えば、本発明の特定の組成物において、酵素であるタイトジャンクションモジュレーターは、プロテアーゼ、例えばブロメラインである。
また他の場合において、タイトジャンクションモジュレーターは、脂肪酸及びその脂肪酸塩である。本発明の組成物中の脂肪酸であるタイトジャンクションモジュレーターは、さまざまなものがあり得、例としては、中鎖脂肪酸、例えばC8脂肪酸及びその脂肪酸塩(カプリル酸及びその塩)、C10脂肪酸及びその脂肪酸塩(カプリン酸及びその塩)、並びにC12脂肪酸及びその脂肪酸塩(ラウリン酸及びその塩)などのうち任意の1つ又はそれらの組合せを挙げることができる。特定の場合において、例えば、脂肪酸であるタイトジャンクションモジュレーターは、カプリン酸ナトリウムである。
特定の実施形態において、本発明の経口投与用組成物は、2つ以上の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を含む。例えば、組成物は、2つ以上のタイトジャンクションモジュレーター、例えば3つ以上のタイトジャンクションモジュレーター、さらに例えば4つ以上のタイトジャンクションモジュレーターを含んでいてもよい。組成物は、タイトジャンクションモジュレーターの任意の組合せ、例えば、他の組合せの中でも、多糖とプロテアーゼ、脂肪酸と多糖、多糖と胆汁酸、多糖と脂肪酸と胆汁酸、2つの異なる多糖、又は2つの異なる胆汁酸などの組合せを含んでいてもよい。組成物が、2つ以上の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を含む場合、各胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量百分率は、組成物の総質量の1%以上、組成物の総質量の、例えば2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、さらに例えば50%以上の範囲で変動し得る。
特定の場合において、本発明の組成物は、キトサン及びブロメラインを含む。本組成物がキトサンとブロメラインとの組合せを含む場合、キトサンとブロメラインとの質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲で変動し得る。例えば、キトサン対ブロメラインの質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。いくつかの実施形態において、ブロメライン対キトサンの質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲である。例えば、ブロメライン対キトサンの質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。
本発明の組成物がキトサンとブロメラインとの組合せを含む場合、キトサンの濃度は、さらに、約0.1%〜約5%、例えば約0.15%〜約4.5%、例えば0.2%〜約4%、例えば約0.25%〜約3.5%、例えば0.3%〜約3%、例えば0.5%〜約2.5%、さらに例えば約0.5%〜1.5%の範囲で変動し得る。同様に、キトサンとブロメラインとの組合せを用いる場合、特定の実施形態において、ブロメラインの濃度は、さらに、約0.01mg/mL〜約1.0mg/mL、例えば約0.2mg/mL〜約0.9mg/mL、例えば0.25mg/mL〜約0.75mg/mL、例えば約0.3mg/mL〜約0.6mg/mL、さらに例えば約0.4mg/mL〜約0.5mg/mLの範囲で変動し得る。特定の場合において、キトサンの濃度は約3%であり、ブロメラインの濃度は約0.5mg/mLである。
先述のように、本発明の経口投与用組成物中のNASPは、凝固促進活性を実証する硫酸化多糖である。NASPの非抗凝固特性は、凝血アッセイを用いて決定してもよく、そのようなアッセイとしては、第VIII因子及び/若しくは第IX因子欠乏血漿を用いた較正自動トロンボグラフィー(CAT)、希釈プロトロンビン時間(dPT)又は活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)凝血アッセイが挙げられる。非凝固活性の1つの尺度は、当該NASPを公知の抗凝固薬ヘパリンと比較することである。例えば、NASPは、未分画ヘパリン(分子量の範囲は8,000〜30,000ダルトン、平均18,000ダルトン)の抗凝固活性(統計的に有意な凝血時間の増加により測定される)の3分の1以下、例えば10分の1以下を呈してもよい。したがって、NASPは、本明細書中で詳述する多様な凝血アッセイのうちいずれかを用いて、ヘパリンとの比較で少なくとも2倍低い抗凝固活性、例えばヘパリンとの比較で2倍〜5倍以上低い抗凝固活性、さらに例えばヘパリンとの比較で2倍〜10倍以上低い抗凝固活性を実証することができる。
いくつかの実施形態において、本発明の経口投与用組成物は、天然NASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで含む。先に論考したように、天然NASPは、天然に存在する入手源、例えば動物若しくは植物源から見出され又はそれらに由来するNASPであってもよく、広い範囲のサブクラス、例えば、ヘパリン、グリコサミノグリカン、フコイダン、カラギーナン、ポリ硫酸ペントサン、デルマタン硫酸、及び硫酸デキストランの誘導体を包含し得る。いくつかの実施形態において、本発明の天然NASPは、生物源から抽出される。「生物源」とは、天然に存在する生物、又は生物の一部を意味する。例えば、対象とするNASPは、植物、動物、真菌、又は細菌から抽出することができる。とりわけ、対象とするNASPは、食用海藻、褐藻、棘皮動物(例えば、ウニ、ナマコ)などから抽出することができる。例えば、NASPは、他の手順の中でも、酸塩基抽出、酵素的分解、選択的沈殿、ろ過により、生物源から抽出できる。生物源、限定されるものではないが例えば食用海藻及び褐藻から抽出されるNASPなどの天然NASPは、2010年2月25日に出願された同時係属の米国特許出願第12/449,712号に詳細に記載されており、同文献の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態において、本発明の天然NASPとしては、限定されるものではないが、N−アセチルヘパリン(NAH)、N−アセチル−デ−O−硫酸化ヘパリン(NA−de−o−SH)、デ−N−硫酸化ヘパリン(De−NSH)、デ−N−硫酸化アセチル化ヘパリン(De−NSAH)、過ヨウ素酸塩酸化ヘパリン(POH)、化学的硫酸化ラミナリン(CSL)、化学的硫酸化アルギン酸(CSAA)、化学的硫酸化ペクチン(CSP)、硫酸デキストラン(DXS)、ヘパリン由来オリゴ糖(HDO)、ポリ硫酸ペントサン(PPS)、及びそれらの組合せが挙げられる。いくつかの場合において、NASPは、天然に存在するNASPの低分子量の断片であってもよい。他の場合において、天然NASPとしては、天然に存在するNASPの生化学的又は化学的な誘導体を挙げることもできる。特定の場合において、天然NASPは、フコイダンである。先述のように、フコイダンは、天然に存在する複雑な硫酸化多糖化合物であり、特定の食用海藻、褐藻、及び棘皮動物(例えば、ウニ、ナマコ)から抽出することができる。適当なNASPの例は、2005年5月27日に出願された米国特許出願第11/140,504号、現米国特許第7,767,654号、及び2011年1月13日に出願された米国特許出願第13/006,396号にもさらに詳細に記載されており、これらの文献の開示内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
対象とするNASPの平均分子量は、約10ダルトン〜約500,000ダルトン、例えば約100ダルトン〜約300,000ダルトン、例えば1000ダルトン〜250,000ダルトン、さらに例えば1000ダルトン〜150,000ダルトンの範囲であってもよい。NASPの分子量は、任意の便利なプロトコール、中でも、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー又は高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)、キャピラリー電気泳動法、PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)、アガロースゲル電気泳動などにより決定できる。
いくつかの実施形態において、対象とするNASPは、さまざまな分子量の硫酸化多糖の不均質な混合物であってもよい。例えば、いくつかの場合において、NASP組成物の5%以上は、分子量が10〜30,000ダルトンの範囲、NASP組成物の例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、さらに例えば95%以上は、分子量が10〜30,000ダルトンの範囲である。他の実施形態において、NASP組成物の5%以上は、分子量が30,000ダルトン〜75,000ダルトンの範囲、NASP組成物の例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、さらに例えば95%以上は、分子量が30,000〜75,000ダルトンの範囲である。また他の実施形態において、NASP組成物の5%以上は、分子量が75,000ダルトン超、NASP組成物の例えば10%以上、例えば25%以上、例えば50%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、さらに例えば95%以上は、分子量が75,000ダルトン超である。
特定の実施形態において、本発明の方法及び組成物により提供されるように、血液凝固を促進するために、低分子量NASPを用いてもよい。「低分子量NASP」とは、重量平均分子量が約10〜30,000ダルトン、例えば100〜30,000ダルトン、例えば500〜25,000ダルトン、例えば1000〜15,000ダルトン、さらに例えば5000〜10,000ダルトンの範囲であるNASPを意味する。低分子量NASPの例としては、限定されるものではないが、分子量が10〜30,000ダルトン、例えば5000〜10,000ダルトンの範囲である天然に存在するNASP又は合成NASP、より分子量の大きいNASPの酸性加水分解又は酵素的加水分解により生成される、該より分子量の大きいNASPの断片を挙げることができ、又は、低分子量NASPは、分画されたNASP試料に由来する、分子量が10〜30,000ダルトン、例えば5000〜10,000ダルトンの範囲である単離画分であってもよい。
特定の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤(例えば、カプリン酸ナトリウム、デオキシコラート、ブロメライン、又はキトサン)、及び低分子量の天然NASPを含む。例えば、対象とする組成物は、分子量が20,000ダルトン以下であるFucus vesiculosusフコイダンを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで含んでいてもよい。例えば、対象とする組成物は、Fucus vesiculosus F.v.DS1001108、Fucus vesiculosus F.v.SK110144Bのうち1つ又は複数を、デオキシコラート、ブロメライン、及びキトサンのうち1つ又は複数との組合せで含んでいてもよい。別の例では、対象とする組成物は、Fucus vesiculosus F.v.DS1001108、Fucus vesiculosus F.v.SK110144Bのうち1つ又は複数を、キトサンとブロメラインとの混合物との組合せで含んでいてもよい。特定の他の実施形態において、本発明の組成物は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤(例えば、カプリン酸ナトリウム、デオキシコラート、ブロメライン、又はキトサン)及び低分子量の合成NASPを含む。例えば、特定の組成物は、分子量が25,000ダルトン以下である、硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、及び硫酸化マルトペントースのうち1つ又は複数を、胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで含んでいてもよい。例えば、対象とする組成物は、24,000ダルトンの硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、14,000ダルトンの硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、及び硫酸化マルトペントースのうち1つ又は複数を、デオキシコラート、ブロメライン、及びキトサンのうち1つ又は複数との組合せで含んでいてもよい。別の例では、対象とする組成物は、24,000ダルトンの硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、14,000ダルトンの硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、硫酸化β−シクロデキストリン、及び硫酸化マルトペントースのうち1つ又は複数を、キトサンとブロメラインとの混合物との組合せで含んでいてもよい。
いくつかの実施形態において、NASPは、生物源から抽出され、低分子量NASP(すなわち、分子量が10〜30,000ダルトンの範囲であるNASPを含有する画分)を単離するために分画されてもよい。対象とするNASPを分画するには、任意の便利なプロトコール、中でも、限定されるものではないが、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動法を用いてもよい。
特定の場合において、NASP試料を分画することにより得られる低分子量NASPは、本発明の方法及び組成物により提供されるように、血液凝固を促進するために用いてもよい。例えば、生物源から抽出されるNASPは、分子量が10〜30,000ダルトン、例えば10〜5000ダルトン、例えば5000〜10,000ダルトン、例えば10,000〜15,000ダルトン、さらに例えば15,000〜30,000ダルトンの範囲であるNASPを単離するために分画されてもよい。特定の実施形態において、これらの画分のうち1つ又は複数は、対象における血液凝固を促進するために、例えば先に記載した方法により、胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで経口投与されてもよい。
特定の実施形態において、異なる分子量の画分は、高分子量NASPの酸性加水分解又はラジカル解重合により調製してもよい。その結果得られる生成物の分子量の範囲は、用いられる加水分解又は解重合の条件の厳密性に基づいて調節してもよい。次いで、画分を、イオン交換クロマトグラフィーを用いてさらに精製してもよい。例えば、中程度の分子量及び低分子量の画分のNASPを得るには、HClなどの酸(又は任意の他の適当な酸)を、0.02〜1.5Mの範囲の濃度、及び25℃〜80℃の範囲の温度で使用して、高分子量NASPを加水分解してもよい。加水分解反応時間は、典型的には15分〜数時間の範囲である。次いで、その結果得られた、加水分解された反応混合物を、塩基(例えば、水酸化ナトリウム)の添加により中和させる。引き続き、塩を、例えば電気透析により除去し、炭水化物分析のための従来の分析法を用いて加水分解生成物を分析して、重量平均分子量、糖含有量、及びイオウ含有量を決定する。代替的に、酵素的な方法を用いてNASPを分解してもよく、例えばグリコシダーゼを使用してもよい。本発明において使用するためのNASPは、用いられる分離の程度によっては、不均質でも均質でもよい。
特定の実施形態において、本発明の経口投与用組成物は、血液凝固因子を胃腸管上皮バリア浸透促進剤及びフコイダン、例えば、フコイダン5307002、Fucus vesiculosus、最大分子量ピーク126.7kD;フコイダンVG49、Fucus vesiculosus、5307002を加水分解した試料で、分子量が低下しており最大分子量ピークは22.5kD;フコイダンVG57、Undaria pinnatifida、高チャージ(高硫酸化、脱アセチル化されたもの);フコイダンGFS(5508005)、Undaria pinnatifida、脱パイロジェン化されたもの;フコイダンGFS(L/FVF−01091)、Fucus vesiculosus、脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク125kD;フコイダンGFS(L/FVF−01092)、Fucus vesiculosus、脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク260kD;フコイダンGFS(L/FVF−01093)、Fucus vesiculosus、加水分解され脱パイロジェン化されたもの、最大分子量ピーク36kD;Maritech(登録商標)Ecklonia radiata抽出物;Maritech(登録商標)Ecklonia maxima抽出物;Maritech(登録商標)Macrocystis pyrifera抽出物;Maritech(登録商標)Immune trial Fucoidan Blend;及びそれらの任意の組合せなどとの組合せで含む。
他の実施形態において、本発明の経口投与用組成物は、合成NASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで含んでいてもよい。合成NASPは、人工の方法(例えば化学合成)により部分的又は完全に作製されている硫酸化多糖である。例として、合成NASPは、硫酸化オリゴマー、例えば硫酸化オリゴ糖又は硫酸化脂肪族化合物であってもよい。特定の場合において、合成NASPは、硫酸化ペントース、硫酸化ヘキソース、又は硫酸化シクロデキストリンである。例えば、合成NASPとしては、限定されるものではないが、硫酸化マルトペントース、硫酸化β−シクロデキストリン、硫酸化6−カルボキシイコデキストリン、及びそれらの誘導体を挙げることができる。
本発明の経口投与用組成物は、所望により、1つ又は複数のNASPを含んでいてもよい。例えば、2つ以上のNASP、例えば3つ以上のNASP、さらに4つ以上のNASPを組み合わせてもよい。2つ以上のNASPを一緒に組み合わせる場合、すべてのNASPが天然NASPであってもよく、すべてのNASPが合成NASPであっても、又はその任意の組合せであってもよい。経口組成物が2つ以上のNASPを含む場合、該組成物中の各NASPの質量百分率は、該組成物の総質量の1%以上、該組成物の総質量の、例えば2%以上、例えば5%以上、例えば10%以上、例えば25%以上、さらに例えば50%以上の範囲で変動し得る。
本発明の実施形態において、経口投与用組成物中の1つ又は複数のNASP及び1つ又は複数の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲で変動し得る。例えば、NASP対胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。いくつかの実施形態において、胃腸管上皮バリア浸透促進剤対NASPの質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲である。例えば、胃腸管上皮バリア浸透促進剤対NASPの質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。
加えて、本発明の経口投与用組成物は、1つ又は複数の血液凝固因子をさらに含むことができる。例えば、組成物は、ある量の1つ又は複数のNASP及び1つ又は複数の胃腸管上皮バリア浸透促進剤を、1つ又は複数の血液凝固因子との組合せで含んでいてもよい。対象とする血液凝固因子としては、限定されるものではないが、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びヴォン・ヴィレブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、及びVIIIa、プレカレクレイン、及び高分子量キニノゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、及び第Xa因子が挙げられる。
対象とする経口投与用組成物中のNASP、胃腸管上皮バリア浸透促進剤、及び血液凝固因子のそれぞれの量(すなわち、質量)は、0.001mg〜1000mg、例えば0.01mg〜500mg、例えば0.1mg〜250mg、例えば0.5mg〜100mg、例えば1mg〜50mg、さらに例えば1mg〜10mgの範囲で変動し得る。したがって、本組成物において、NASP+胃腸管上皮バリア浸透促進剤対血液凝固因子の質量比は、変動し得、いくつかの場合においては、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲であってもよい。例えば、NASP+胃腸管上皮バリア浸透促進剤対血液凝固因子の質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。いくつかの実施形態において、血液凝固因子対NASP+胃腸管上皮バリア浸透促進剤の質量比は、1:1〜1:2.5、1:2.5〜1:5、1:5〜1:10、1:10〜1:25、1:25〜1:50、1:50〜1:100、1:100〜1:150、1:150〜1:200、1:200〜1:250、1:250〜1:500、1:500〜1:1000の間、又はこの範囲である。例えば、血液凝固因子対NASPと胃腸管上皮バリア浸透促進剤とを含有する本組成物の質量比は、1:1〜1:10、1:5〜1:25、1:10〜1:50、1:25〜1:100、1:50〜1:500、又は1:100〜1:1000の間であってもよい。
経口投与用組成物は、単一のタイプのNASP及び単一のタイプの胃腸管上皮浸透バリア促進剤のみを含有する均質なものであってもよい。他の実施形態において、対象とする組成物は、2つ以上のNASP又は2つ以上の胃腸管上皮浸透バリア促進剤の不均質な混合物である。例えば、不均質な混合物は、2つ以上のNASP及び2つ以上の胃腸管上皮浸透バリア促進剤を含有してもよい。他の場合において、不均質な混合物は、1つのNASP及び2つ以上の胃腸管上皮浸透バリア促進剤を含有してもよい。また他の場合において、不均質な混合物は、2つ以上のNASP及び1つの胃腸管上皮浸透バリア促進剤を含有してもよい。
特定の実施形態において、本発明の経口投与用組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤又は経口投与用送達ビヒクルを医薬組成物の一部としてさらに含むことができる。添加剤としては、限定されるものではないが、炭水化物、無機塩、抗微生物剤、酸化防止剤、界面活性剤、水、アルコール、ポリオール、グリセリン、植物油、リン脂質、緩衝剤、酸、塩基、及びそれらの任意の組合せを挙げることができる。炭水化物、例えば、糖、誘導体化された糖、例えばアルジトール、アルドン酸、エステル化された糖、及び/又は糖ポリマーを用いることもできる。対象とする、炭水化物であるいくつかの添加剤としては、例として、単糖、例えばフルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなど;二糖、例えば乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオースなど;多糖、例えばラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなど;及びアルジトール、例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどが挙げられる。無機塩としては、限定されるものではないが、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、及びそれらの任意の組合せを挙げることができる。
特定の実施形態において、本発明の経口投与用組成物は、微生物の成長を予防又は阻止するための抗微生物剤、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメルソール、及びそれらの任意の組合せなどをさらに含むことができる。
1つ又は複数の酸化防止剤をさらに用いることができる。酸化防止剤は、組成物の酸化、ひいては劣化を抑制又は防止することができるものであり、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、亜硫酸水素ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
1つ又は複数の界面活性剤が、本発明の組成物中にさらに含まれていてもよい。例えば、適当な界面活性剤としては、限定されるものではないが、ポリソルベート、例えば「Tween20」及び「Tween80」、並びにpluronic、例えばF68及びF88(BASF、Mount Olive、New Jersey);ソルビタンエステル;脂質、例えばリン脂質、例えば、レシチン及び他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン(但し、リポソーム形態でないことが好ましい)、脂肪酸及び脂肪酸エステル;ステロイド、例えばコレステロール;キレート化剤、例えばEDTA;並びに、亜鉛及び他の陽イオンが挙げられる。
本発明の経口投与用組成物中には、酸又は塩基がさらに存在していてもよい。例えば、酸としては、限定されるものではないが、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、及びそれらの任意の組合せを挙げ得る。塩基の例としては、限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
本経口投与用組成物中のすべての個々の添加剤の量は、添加剤の性質及び機能、経口投与用送達ビヒクル、並びに該組成物の特定の必要性により変動する。典型的に、すべての個々の添加剤の最適な量は、慣例的な実験法を通して、すなわち、さまざまな量の添加剤(低量〜高量にわたり)を含有する組成物を調製し、安定性及び他のパラメーターを調査し、次いで、重大な有害作用を伴わずに最適な成績が得られる範囲を決定することにより、決定する。しかし、一般に、添加剤(複数可)は、本経口投与用組成物中に、添加剤の約1重量%〜約99重量%、例えば約5重量%〜約98重量%、例えば約15〜約95重量%、さらに例えば30重量%未満の量で存在することになる。対象とする組成物中で用いてもよい医薬用添加剤に加え、他の添加剤については、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、第19版、Williams&Williams、(1995);「Physician’s Desk Reference」、第52版、Medical Economics、Montvale、NJ、(1998);及びKibbe,A.H.、Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、American Pharmaceutical Association、Washington,D.C.、2000に記載されており、これらの文献の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
先述のように、本発明の組成物は、該組成物が胃腸管上皮を通して(例えば、経口的に又は経鼻胃管により)吸収される限り、任意の便利な投与様式により投与してもよい。したがって、製剤は、さまざまなものがあり得る。例えば、本発明の組成物は、使用に先立ち溶媒で再構成することができる粉末又は凍結乾燥物、使用に先立ちビヒクルと組み合わせることを必要とする乾燥した不溶性の組成物、並びに、投与に先立ち希釈を要するエマルション及び原液であってもよい。固体の組成物を再構成するための希釈剤としては、限定されるものではないが、静菌性注射用水、デキストロース5%水溶液、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明の医薬組成物は、経鼻胃管により摂取又は適用するための、溶液剤若しくは懸濁剤、シロップ剤、錠剤、カプセル剤、散剤、ゲル剤、又はその任意の組合せの形態であってもよい。例えば、本発明の経口投与用組成物は、使用目的によっては、錠剤、カプセル、カプレット装置などの中に予め入れられていてもよい。特定の実施形態において、本組成物は、単位剤形の形態であり、ある量の組成物が、単回経口投与の単位で、予め計量された又は予め包装された形態で、即時使用可能になっている。
有用性
本方法及び組成物は、対象における血液凝固を促進したいという要望、胃腸系を通してNASPの吸収を促進したいという要望が存在し、該対象が、NASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤を用いた治療に応答性である任意の状況において用途がある。特定の実施形態において、本方法及び組成物は、出血性障害、例えば、慢性又は急性の出血性障害、血液因子欠乏を原因とする先天性凝固障害、後天性凝固障害、及び抗凝固薬の投与を処置するために用いてもよい。例えば、出血性障害としては、限定されるものではないが、血友病A、血友病B、ヴォン・ヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1つ又は複数の接触因子、例えば第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、及び高分子量キニノゲン(HMWK)の欠乏、臨床的に意義のある出血に関連する1つ又は複数の因子、例えば第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、及びヴォン・ヴィレブランド因子の欠乏、ビタミンK欠乏、フィブリノゲン障害、例えば無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、及び異常フィブリノゲン血症、α2−抗プラスミン欠乏、並びに過剰な出血、例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能不全、血腫、内出血、関節血症、外科手術、外傷、低体温、月経、及び妊娠を原因とする過剰な出血を挙げることができる。
本方法及び組成物は、さらに、血液因子欠乏を原因とする先天性凝固障害又は後天性凝固障害を治療するために血液凝固を促進することにおいて用途がある。血液因子欠乏は、1つ又は複数の因子、限定されるものではないが、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、及びヴォン・ヴィレブランド因子の欠乏を原因とするものであってもよい。
本方法及び組成物は、さらに、出血性障害、例えば、凝固因子の欠乏に伴う出血性障害の治療において血液凝固を促進して止血が改善されるようにする上で、又は対象において抗凝固薬の効果を逆転させるために、用途がある。例えば、本発明の方法及び組成物により血液凝固を促進することは、出血性障害、例えば、先天性凝固障害、後天性凝固障害、及び、外傷により誘導される出血性病態を治療するために用いてもよい。NASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤で治療し得る出血性障害の例としては、限定されるものではないが、血友病A、血友病B、ヴォン・ヴィレブランド病、突発性血小板減少症、1つ又は複数の接触因子、例えば第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、及び高分子量キニノゲン(HMWK)の欠乏、臨床的に意義のある出血に関連する1つ又は複数の因子、例えば第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子(低プロトロンビン血症)、及びヴォン・ヴィレブランド因子の欠乏、ビタミンK欠乏、フィブリノゲン障害、例えば無フィブリノゲン血症、低フィブリノゲン血症、及び異常フィブリノゲン血症、α2−抗プラスミン欠乏、並びに過剰な出血、例えば、肝疾患、腎疾患、血小板減少症、血小板機能不全、血腫、内出血、関節血症、外科手術、外傷、低体温、月経、及び妊娠を原因とする過剰な出血が挙げられる。特定の実施形態において、本発明の方法及び組成物は、先天性凝固障害、例えば、血友病A、血友病B、及びヴォン・ヴィレブランド病を治療するために使用される。他の実施形態において、NASPは、後天性凝固障害、例えば、第VIII因子、ヴォン・ヴィレブランド因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XII因子、及び第XIII因子の欠乏、とりわけ、血液凝固因子に対する阻害薬若しくは自己免疫を原因とする障害、又は凝固因子の合成の低下をもたらす疾患若しくは病態を原因とする止血障害を治療するために使用される。
いくつかの実施形態において、出血性障害は、本方法及び組成物を長期間にわたり複数回投与で必要とする慢性の病態(例えば、先天性又は後天性の凝固因子欠乏)であってもよい。あるいは、本発明の方法及び組成物は、急性の病態(例えば、外科手術若しくは外傷を原因とする出血、又は、凝固補充療法を受けている対象における因子阻害薬/自己免疫エピソード)を治療するために、単回又は複数回用量で比較的短い期間、例えば1〜2週間にわたり、経口投与されてもよい。
本方法及び組成物は、さらに、外科的又は侵襲的な手術を受けている対象における血液凝固を促進することにおいて用途がある。
本方法及び組成物は、さらに、対象において抗凝固薬の効果を逆転させるために血液凝固を促進することにおいて用途があり、本方法は、凝固促進量のNASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで含む治療上有効な量の組成物を該対象に投与することを含む。特定の実施形態において、対象は、限定されるものではないが以下に挙げるような抗凝固薬、すなわち、ヘパリン、クマリン誘導体、例えばワルファリン又はジクマロール、TFPI、AT III、ループス抗凝固因子、線虫抗凝固ペプチド(NAPc2)、活性部位遮断第VIIa因子(第VIIai因子)、第IXa因子阻害薬、第Xa因子阻害薬、例えばフォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、DX−9065a、及びラザキサバン(DPC906)、第Va因子及び第VIIIa因子の阻害薬、例えば活性化プロテインC(APC)及び可溶性トロンボモジュリン、トロンビン阻害薬、例えばヒルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、及びキシメラガトランで治療されていてもよい。特定の実施形態において、対象が使用している抗凝固薬は、凝血因子と結合する抗体、限定されるものではないが例えば、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第XI因子、第XII因子、ヴォン・ヴィレブランド因子、プレカリクレイン、又は高分子量キニノゲン(HMWK)と結合する抗体であってもよい。
別の態様では、本発明は、凝血の改善が望ましいと思われる外科的又は侵襲的な手術を受けている対象を治療するための方法であって、本明細書において詳述した、凝固促進量のNASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤との組合せで含む治療上有効な量の組成物を該対象に経口投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態において、NASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤は、1つ若しくは複数の異なるNASP及び1つ若しくは複数の異なる胃腸管上皮バリア浸透促進剤と共に、並びに/又は、1つ若しくは複数の他の治療剤と組み合わせて、外科的又は侵襲的な手術を受けている対象に併用投与することができる。例えば、対象には、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、及びヴォン・ヴィレブランド因子から成る群から選択される治療上有効な量の1つ又は複数の因子を投与してもよい。治療は、凝固促進剤、例えば、内因性凝固経路の活性化因子、例として、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、及びVIIIa、プレカレクレイン、及び高分子量キニノゲン;又は、外因性凝固経路の活性化因子、例として、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、及び第Xa因子を投与することをさらに含むことができる。外科的又は侵襲的な手術を受けている対象を治療するために使用される治療剤は、同じ又は異なる組成物中で、また、NASP及び胃腸管上皮バリア浸透促進剤の投与と併用して、又はその前に、又はその後に、投与できる。
先に開示したとおり、止血剤、血液因子、及び医薬品を用いることもできる。例えば、対象には、1つ又は複数の血液凝固因子、例えば、第XI因子、第XII因子、プレカリクレイン、高分子量キニノゲン(HMWK)、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XIII因子、第II因子、第VIIa因子、ヴォン・ヴィレブランド因子、第Xa因子、第IXa因子、第XIa因子、第XIIa因子、及びVIIIa、プレカレクレイン、及び高分子量キニノゲン、組織因子、第VIIa因子、第Va因子、及び第Xa因子を投与してもよい。
キット
本方法の実行において使用するためのキットも提供され、このキットは、先述の組成物のうち1つ又は複数、例えば、先に記載した、NASP組成物、胃腸管上皮バリア浸透促進剤組成物、及び/又は血液凝固因子を備えていてもよい。本キットは、他の構成要素、例えば、投与器具、流体源など、本方法の実行において用途があり得る構成要素をさらに備えていてもよい。多様な構成要素は、所望により、例えば、一緒に又は別々に包装されていてもよい。
先述の構成要素に加え、本キットは、キットの構成要素を使用して本方法を実行するための取扱説明書をさらに備えていてもよい。本方法を実行するための取扱説明書は、一般に、適当な記録媒体に記録されている。例えば、取扱説明書は、例えば紙又はプラスチックなどに印刷されていてもよい。したがって、取扱説明書は、キット中に添付文書として、例えば、キット又はその構成要素の容器のラベリングの形態で(すなわち、パッケージ又はサブパッケージに付随して)、存在してもよい。他の実施形態において、取扱説明書は、コンピューター可読記憶媒体、例えばCD−ROM、ディスケットなどに、電子記憶装置のデータファイルとして存在する。また他の実施形態において、実際の取扱説明書はキット中には存在せず、離れた入手源から、例えばインターネットを介して取扱説明書を得るための手段が提供される。この実施形態の例は、取扱説明書を見ることができる及び/又は取扱説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを備えたキットである。取扱説明書と同様に、取扱説明書を得るためのこの手段は、適当な基材に記録される。
次に記載する実施例は、例証的な目的のみのために示すものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものでは決してない。
使用する数字(例えば、量、温度など)に関しては正確性を確保するよう努力したが、若干の実験誤差及び偏差は、当然ながら許容されるべきである。
NASPを胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせた場合のバイオアベイラビリティー及び吸収試験
対象とする、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わされたNASPのバイオアベイラビリティーを、CaCo−2細胞モデルスクリーニングを用いて試験した。この方法は、さまざまな輸送タンパク質を細胞膜上で発現するヒト結腸癌細胞株を利用する。細胞層は、2つのコンパートメントを分ける膜表面上で成長する(24ウェルプレート)。この実験のための実験装置の例を図1に示す。選択したNASP+胃腸管上皮バリア浸透促進剤試料を、1mg/mLの濃度でRPMI細胞培地に溶解し、頂端側コンパートメント中の細胞上に塗布した。細胞を、5%CO2下、37℃でインキュベートした。培地試料は、異なる時点で側底側コンパートメント及び頂端側コンパートメントから除去した。細胞層の状態を経上皮電気抵抗(TEER)の測定によりモニタリングした。試料をトロンビン生成アッセイ(CAT)により分析した。NASP濃度を、CATアッセイで得られた活性に基づいて計算した。トロンビン生成アッセイ及び他の血液凝固アッセイの実験についての詳細は、2005年5月27日に出願された米国特許出願第11/140,504号、現米国特許第7,767,654号、及び2011年1月13日に出願された米国特許出願第13/006,396号に記載されており、これらの文献の開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
すべてのNASP+胃腸管上皮バリア浸透促進剤試料を、試料濃度が凝固促進活性を増加させる範囲の濃度であるように希釈した。最初の担持濃度の値を基準に、頂端側及び側底側の濃度を、2時間が経過するごとに(例えば、2時間、4時間、6時間、8時間。24時間を含む)決定した。決定された側底側濃度を基準に、吸収率(%)を化合物の組合せ(すなわち、NASP+胃腸管上皮バリア浸透促進剤)それぞれについて決定した。
本明細書に記載する吸収試験の例を表1〜3に示すが、これらの表は、NASPであるフコイダンF.v.1091を、胃腸管上皮バリア浸透促進剤であるブロメライン(0.5mg/mL)と組み合わせた場合の、Caco−2細胞モデルにおける頂端側濃度及び側底側濃度をまとめたものである。表1は、F.v.L/FVF1091をブロメラインと組み合わせた場合の最初の頂端側濃度が約840μg/mLであることを示すものである。約8時間後、F.v.L/FVF1091の頂端側濃度は、平均約627μg/mLまで、約25%低下している。
表2は、F.v.L/FVF1091をブロメラインと組み合わせた場合の多様な時点での側底側濃度を示すものである。図2は、Caco−2系における、ブロメライン(0.5mg/mL)の存在下でのF.v.L/FVF1091の側底側濃度を示すものである。図3は、各試行の対応する経上皮電気抵抗曲線により測定した値として細胞層の状態を示すものである。
表3は、ブロメラインの存在下での多様な時点におけるF.v.L/FVF1091の吸収率(%)を示すものである。
表2及び表3に基づき、平均吸収量は、F.v.L/FVF1091をブロメラインと組み合わせた場合は8時間時点で19mg/mLであり、F.v.L/FVF1091の側底側濃度は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤であるブロメラインの存在下では時間と共に増加することを実証している。
表4は、多様な濃度の数種類の胃腸管上皮浸透促進剤の存在下での、Caco−2細胞モデルにおける天然NASPの吸収率(%)をまとめたものである。表4に示すように、天然NASPはすべて、対象とする胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で吸収率の増加を示した。
表5は、多様な濃度の数種類の胃腸管上皮浸透促進剤の存在下での、Caco−2細胞モデルにおける合成NASPの吸収率(%)をまとめたものである。表5に示すように、合成NASPはすべて、対象とする胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で吸収率の増加を示した。
図4〜8は、異なる胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わされた、対象とするいくつかの天然NASPのCaco−2細胞モデルにおける吸収量を、TGA及び液体クロマトグラフィー/質量分析により決定した値として示すものである。図9及び10は、異なる胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わされた、対象とするいくつかの合成NASPのCaco−2細胞モデルにおける吸収量を、TGA及び液体クロマトグラフィー/質量分析により決定した値として示すものである。
図4a〜bは、一切の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の不在下、並びに、ブロメライン、キトサンの存在下、及びブロメラインとキトサンとの組合せの存在下での、NASPであるBAX513のCaco−2細胞モデルにおける吸収量を示すものである。図4a〜bに示すように、BAX513の側底側濃度は胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で増加しており、このことから、BAX513の吸収量は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせて投与されると増加することが示される。
図5a〜cは、一切の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の不在下、並びに、いくつかの異なる胃腸管上皮バリア浸透促進剤、すなわち、カプリン酸ナトリウム、デオキシコラート、ブロメライン、キトサンの存在下、及びブロメラインとキトサンとの組合せの存在下での、NASPであるフコイダンF.v.L/FVF1091のCaco−2細胞モデルにおける吸収量を示すものである。図5a〜cは、フコイダンF.v.L/FVF1091の側底側濃度が胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で増加することを実証するものであり、このことから、フコイダンF.v.L/FVF1091の吸収量は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせて投与されると増加することが示される。とりわけ、フコイダンF.v.L/FVF1091の吸収量は、キトサンとブロメラインとの組合せの存在下で投与されると、実質的に増加する。
図6a〜bは、一切の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の不在下、並びに、胃腸管上皮バリア浸透促進剤、すなわち、カプリン酸ナトリウム、デオキシコラート、ブロメライン、キトサンの存在下、及びブロメラインとキトサンとの組合せの存在下での、NASPであるフコイダンU.p.5508005のCaco−2細胞モデルを示すものである。図6a〜bは、フコイダンU.p.5508005の側底側濃度が胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で増加することを実証するものであり、このことから、フコイダンU.p.5508005の吸収量は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせて投与されると増加することが示される。とりわけ、フコイダンU.p.5508005の吸収量は、カプリン酸ナトリウム、ブロメラインの存在下、及び、キトサンとブロメラインとの組合せの存在下で、実質的に増加した。
図7a〜bは、一切の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の不在下、並びに、胃腸管上皮バリア浸透促進剤、すなわち、デオキシコラート(2通りの異なる濃度)、ブロメライン、キトサンの存在下、及びブロメラインとキトサンとの組合せの存在下での、NASPであるフコイダンFvF DS1001108BのCaco−2細胞モデルにおける吸収量を示すものである。図7a〜bは、フコイダンF.v.F DS1001108Bの側底側濃度が胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で増加することを実証するものであり、このことから、フコイダンF.v.F DS1001108Bの吸収量は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせて投与されると増加することが示される。とりわけ、フコイダンF.v.F DS1001108Bの吸収量は、キトサンとブロメラインとの組合せの存在下で投与されると、実質的に増加する。
図8a〜bは、一切の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の不在下、並びに、胃腸管上皮バリア浸透促進剤、すなわち、デオキシコラート(2通りの異なる濃度)、ブロメライン、キトサンの存在下、及びブロメラインとキトサンとの組合せの存在下での、NASPであるフコイダンFvF SK110144BのCaco−2細胞モデルを示すものである。図8a〜bは、フコイダンFvF SK110144Bの側底側濃度が胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で増加することを実証するものであり、このことから、フコイダンFvF SK110144Bの吸収量は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせて投与されると増加することが示される。とりわけ、フコイダンFvF SK110144Bの吸収量は、0.08%デオキシコラート、ブロメラインの存在下、及び、キトサンとブロメラインとの組合せの存在下で、実質的に増加した。
図9及び14は、一切の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の不在下、並びに、胃腸管上皮バリア浸透促進剤、すなわち、デオキシコラート、ブロメライン、及びカプリン酸ナトリウムの存在下での、合成NASPである硫酸化β−シクロデキストリンのCaco−2細胞モデルにおける吸収量を示すものである。図9は、硫酸化β−シクロデキストリンの側底側濃度が胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で増加したことを実証するものであり、このことから、硫酸化β−シクロデキストリンの吸収量は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせて投与されると増加することが示される。とりわけ、硫酸化β−シクロデキストリンの吸収量は、デオキシコラート、ブロメライン、及びカプリン酸ナトリウムの3つすべての存在下において、8時間時点で実質的に増加した。
図10及び15は、一切の胃腸管上皮バリア浸透促進剤の不在下、並びに、胃腸管上皮バリア浸透促進剤、すなわち、デオキシコラート、ブロメライン、キトサン、及びカプリン酸ナトリウムの存在下での、合成NASPである硫酸化マルトペンタオースのCaco−2細胞モデルを示すものである。図10は、硫酸化マルトペンタオースの側底側濃度が胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で増加したことを実証するものであり、このことから、硫酸化マルトペンタオースの吸収量は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせて投与されると増加することが示される。とりわけ、硫酸化マルトペンタオースの吸収量は、デオキシコラート、及びブロメラインの存在下において、8時間時点で実質的に増加した。硫酸化マルトペンタオースも、キトサン及びカプリン酸ナトリウムの存在下で、吸収量の強力な増加を示した。
図4〜10において実証されるように、天然NASP及び合成NASPいずれの側底側濃度も、それぞれの胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で増加しており、このことから、NASPの吸収量は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤と組み合わせて投与されると、胃腸管上皮バリア浸透促進剤の不在下での吸収量と比較して増加することが示される。
図11a〜bは、キトサンとブロメラインとの組合せを、NASPであるフコイダンF.v.L/FVF1091と組み合わせて用いた場合(図11a)、及び、フコイダンFvF DS1001108Bと組み合わせて用いた場合(図11b)の、異なる濃度のキトサン及びブロメラインの効果を示すものである。とりわけ、キトサンとブロメラインとの組合せには、0.3%のキトサンと0.5mg/mLのブロメライン;1.5%のキトサンと0.25mg/mLのブロメライン;3%のキトサンと0.05mg/mLのブロメライン(bromalein);及び3%のキトサンと0.5mg/mLのブロメラインが含まれている。図10a〜bに示すように、3%のキトサンと0.5mg/mLのブロメラインとの組合せは、NASPの最も強力な吸収を示した。
表6は、Caco−2細胞モデルにおける天然NASP及び合成NASPの吸収率(%)をまとめたものである。表4に示すように、NASPはすべて、対象とする胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下で吸収率の増加を示した。
図12a〜b及び図13a〜cは、胃腸管上皮バリア浸透促進剤の存在下及び不在下における経上皮電気抵抗により測定した値としての細胞層の状態を、図12は硫酸化β−シクロデキストリン、図13は硫酸化マルトペントースを用いて試験した場合について示すものである。図12a〜bに示すように、硫酸化β−シクロデキストリンの存在下では、胃腸管上皮バリア浸透促進剤であるブロメラインは、経上皮電気抵抗値を実質的に低下させる(300オーム/cm2未満)。経上皮電気抵抗値は、新鮮培地の添加後は低いままであった。しかし、胃腸管上皮バリア浸透促進剤単独で処置すると、経上皮電気抵抗は回復した。同様に、図13a〜cに示すように、硫酸化マルトペントースの存在下では、胃腸管上皮バリア浸透促進剤であるブロメライン、デオキシコラート、及びキトサンは、経上皮電気抵抗値を実質的に低下させる。しかし、図12a〜bに示す硫酸化β−シクロデキストリンについての試験とは対照的に、経上皮電気抵抗は、胃腸管上皮バリア浸透促進剤及びマルトペンタオースを除去した後に増加した。
前述の発明を、理解が明瞭になることを目的として、例証及び実施例を用いていくらか詳細に記載してきたが、本発明の教示に照らせば、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲を逸脱することなく、これにある種の変化及び改変を加え得ることは、当業者には容易に明白となることである。
したがって、これまでの記載は、本発明の原理を単に例証するものである。当業者であれば、本明細書には明示的に記載も提示もされていなくても、本発明の原理を具体化する多様な構成を工夫することは可能であろうし、そのような構成が本発明の精神及び範囲内に含まれることは理解されよう。さらに、本明細書に記載するすべての例及び条件付きの文言は、当技術分野が拡大するように本発明者らにより提供される、本発明の原理、及び概念を理解する上で読者の助けとなることを主として意図したものであり、そのような具体的に記載される例及び条件に限定されるものではないと解釈されたい。さらに、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにその具体例を記載する本明細書中のすべての文章は、その構造的等価物と機能的な等価物の両方を包含することを意図したものである。加えて、そのような等価物には、現時点で公知の等価物及び将来的に開発される等価物の両方、すなわち、構造に関わらず同じ機能を発揮する、開発下にある一切の要素が含まれることを意図している。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、記載されている実施形態に限定されることを意図したものではない。そうではなく、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲により具現化される。