JP2014518213A - 芳香族カチオン性ペプチド及びその使用 - Google Patents
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Abstract
芳香族カチオン性ペプチドの経口送達に適した最終医薬品であって、本医薬品は、治療有効量のペプチドと、少なくとも1種の薬学的に許容可能なpH低下剤と、有効成分のバイオアベイラビリティの増進に効果的な少なくとも1種の吸収性向上剤とを含む。本医薬品は、経口的に送達される治療用芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティを向上させる方法での使用に適している。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
関連出願の相互参照
本願は、2011年6月14日に出願の米国仮特許出願第61/496994号及び2011年7月7日に出願の米国仮特許出願第61/505479号の優先権を主張するものであり、これらの文献は共に参照により全て本明細書に組み込まれる。
本願は、2011年6月14日に出願の米国仮特許出願第61/496994号及び2011年7月7日に出願の米国仮特許出願第61/505479号の優先権を主張するものであり、これらの文献は共に参照により全て本明細書に組み込まれる。
技術分野
本テクノロジーは、活性化合物が複数のアミノ酸と少なくとも1つのペプチド結合とをその分子構造中に含む芳香族カチオン性ペプチド薬及び被験者への投与時にこのようなペプチド活性化合物を良好なバイオアベイラビリティでもって迅速に送達する方法に関する。
本テクノロジーは、活性化合物が複数のアミノ酸と少なくとも1つのペプチド結合とをその分子構造中に含む芳香族カチオン性ペプチド薬及び被験者への投与時にこのようなペプチド活性化合物を良好なバイオアベイラビリティでもって迅速に送達する方法に関する。
従来のペプチド薬は、注射で又は経鼻的に投与されることが多かった。しかしながら、注射による投与及び経鼻投与は例えば経口投与と比較すると簡便さに大きく欠け、患者の不快感もより大きい。
この不便さ又は不快感ゆえに、患者が実質的に治療計画に従わないことも多い。しかしながら経口投与では問題が起きやすい。ペプチド活性化合物は、胃及び腸において極めて分解されやすいからである。このため、当該分野では、本明細書でより詳細に論じるインスリン、サケカルシトニン他等のペプチド薬をより効果的且つ再現可能に経口投与することが必要とされている。
血流に吸収されるより先に、胃及び腸の両方のタンパク質分解酵素がペプチドを分解してこれらを不活性にしてしまい得る。胃(典型的には、酸性pHを最適として有する)のプロテアーゼによるタンパク質分解をもちこたえたペプチドは次に小腸のプロテアーゼ及び膵臓が分泌する酵素に曝される(典型的には、中性〜塩基性のpHを最適として有する)。
ペプチドの経口投与で起きる具体的な問題点に、分子のサイズ及び分子が帯びる電荷の分布がある。これらの物理的性質により、ペプチドが腸壁に沿った粘液を通り抜けて又は腸の刷子縁膜を越えて血中へと進入することがより困難となり、結果的にバイオアベイラビリティが制限される場合がある。
上記の難点の多くを少なくとも部分的に克服した経口剤形が、1999年6月15日及び2000年の7月11日に発行されたSternらの米国特許第5912014号及び6086918号の明細書でそれぞれ開示及び請求されている(これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる)。この2件の特許には、ペプチドを腸に標的送達し、またペプチドを、ペプチドの他に少なくとも1種の薬学的に許容可能なpH低下剤及び少なくとも1種の、ペプチドのバイオアベイラビリティの増進に効果的な吸収性向上剤を含む経口投与製剤として投与することによりバイオアベイラビリティを向上させるペプチド投与製剤が記載されている。さらに、この投与製剤は、ペプチド、吸収性向上剤及びpH低下剤を被験者の胃内で導き、その一方で胃プロテアーゼによる分解からペプチドを保護することが可能な腸溶コーティングで被覆されている。この後、コーティングは溶け、ペプチド、吸収性向上剤及びpH低下剤が一緒に被験者の腸内に放出される。
しかしながら、場合によっては、経口ペプチドで処置する状態にとっては、より迅速にその状態が改善されるほうが、腸溶コーティングが比較的ゆっくり溶けて有効成分が腸内で放出されてから改善されるより有益である。このような迅速な改善が有益となる状態の1つの具体例に鎮痛分野があり、ここでは痛みから解放される速さが、当然のことながら患者にとって緊要ではないにしても重要な要素である。さらに、芳香族カチオン性ペプチドは常に胃を通って腸に至る全行程を輸送する必要はない。すなわち、特定の芳香族カチオン性ペプチドでは(様々な鎮痛剤を含むがこれらに限定されない)、治療用ペプチドの吸収が、製剤が腸内に進入する前、例えば物質が食道を下る際又は患者の胃内にある際に起きるのが最も効果的な場合がある。このような状況下では、経口でのバイオアベイラビリティは依然として考慮すべき要素ではあるものの、製剤に含まれる治療用ペプチドの吸収速度、ひいてはその作用速度が対応して上昇してバイオアベイラビリティの低下が相殺されるのならば、患者及び/又は臨床医は、バイオアベイラビリティにおける限定的な低下を受け入れることに前向きになるかもしれない。
したがって、より速やかに治療作用が得られ、すなわち上述の米国特許第5912014号及び第6086918号の特許に記載の製剤とは対照的な、その一方で依然として望ましい度合いのバイオアベイラビリティを提供する経口ペプチド製剤が長年にわたって必要とされている。
通常、真核細胞の細胞膜は、大きなペプチド又はタンパク質に対しては不透過性である。しかしながら、フェリーペプチド(ferry peptide)又は膜トランスロケーティング配列(membrane translocating sequence)と様々な名で呼ばれる特定の疎水性アミノ酸配列は、機能性タンパク質のN末端又はC末端と融合すると、膜トランスロケータ(membrane translocator)として働き、またこれらのタンパク質の生細胞内への輸送を仲介することができる。細胞内へのこのタンパク質送達法は潜在的には極めて有用であるものの、主な欠点が2つある。第一に、このタンパク質は特定の細胞タイプを標的とすることができない。このため、一旦注射されて血流に入ると、おそらくは非特異的に、受容体を介することなく全てのタイプの細胞に進入する。これは極めて大きな希釈効果を招くことから、標的とするタイプの細胞中で有効濃度を達成するためには極めて高濃度のタンパク質を注射する必要がある。また、このタンパク質は、標的ではない組織の細胞に進入すると極めて有毒になる可能性がある。3つめの欠点は、フェリーペプチドが残留することでタンパク質の抗原性が極めて高くなり、その生物学的活性が阻害される可能性もあることである。これら上記の欠点は、融合体を注射、経鼻又は経口のどの経路で送達してもつきまとい得る。
経鼻送達も、治療用ペプチドのバイオアベイラビリティの低さに悩まされることが多い。経鼻送達が可能であったとしても、臨床効果を得るには、ペプチドが鼻粘膜を越えることの難しさによってもたらされる低バイオアベイラビリティを鑑みて高濃度の治療用ペプチドが必要となることから、製造コストが高くなって望ましくない場合がある。
治療用ペプチドは組織でうまく吸収されないことが多く、また体液によってすぐに分解されてしまう。このため、経鼻的にペプチド薬を投与するための製剤が開発された。この経鼻投与製剤は、長期間にわたって安定性があり且つ細菌汚染に耐性がある複数回投与用容器に保存するように設計された。この製剤の防腐剤である塩化ベンザルコニウムは、ペプチド薬の吸収を増加させると判明した。しかしながら、塩化ベンザルコニウムは、この防腐剤を含有している鬱血除去用スプレー式点鼻薬を与えられた健康な志願者において薬物性鼻炎を悪化させると報告された(P.Graf et al.,Clin.Exp.Allergy 25:395−400;1995)。また、鼻粘膜に悪影響を及ぼし(H.Hallen et al.,Clin.Exp.Allergy 25:401−405;1995)、Bergらは(Laryngoscope 104:1153−1158;1994)は、インビトロで曝露された呼吸器粘膜組織が深刻な形態学的変化を起こしたことを開示している。塩化ベンザルコニウムは、エクスビボのカエル口蓋試験において粘液線毛輸送速度の大幅な減速も引き起こした(P.C.Braga et al.,J.Pharm.Pharmacol.44:938−940;1992)。
本テクノロジーは、芳香族カチオン性ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩を送達するための医薬製剤に関する。一態様において、本テクノロジーは芳香族カチオン性ペプチドの経口送達に適した最終医薬品に関し、本医薬品は、(a)治療有効量の活性ペプチドと、(b)少なくとも1種の薬学的に許容可能なpH低下剤と、(c)有効成分のバイオアベイラビリティの増進に効果的な少なくとも1種の吸収性向上剤とを含み、pH低下剤は最終医薬品において、本医薬品を10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム水溶液に添加した場合に、溶液のpHを5.5以下まで低下させるのに十分な量で存在し、本医薬品のある外面は実質的に耐酸性保護ビヒクルを有さない。
幾つかの実施形態において、pH低下剤は、本医薬品を10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム溶液に添加した場合、溶液のpHを3.5以下まで低下させるのに十分な量で存在する。幾つかの実施形態において、吸収性向上剤は吸収性又は生分解性の界面活性剤である。幾つかの実施形態において、この界面活性剤は、アシルカルニチン、リン脂質、胆汁酸及びスクロースエステルから成る群から選択される。幾つかの実施形態において、吸収性向上剤は、(a)コレステロール誘導体であるアニオン剤、(b)負電荷中和剤とアニオン性界面活性剤との混合物、(c)非イオン性界面活性剤及び(d)カチオン性界面活性剤から成る群から選択される界面活性剤である。
幾つかの実施形態において、最終医薬品は更に、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティを向上させるのに効果的な、生理学的に活性なペプチドではないある量の第2ペプチドを含む。幾つかの実施形態において、最終医薬品は、水への溶解度が室温の水100ミリリットルあたり少なくとも30グラムである少なくとも1種のpH低下剤を含む。幾つかの実施形態において、最終医薬品は、医薬用結合剤と、この結合剤中に均一に分散したpH低下剤、吸収性向上剤及び芳香族カチオン性ペプチドとを含有する顆粒を含む。
幾つかの実施形態において、最終医薬品は、少なくとも1種の薬学的に許容可能なpH低下剤を含む第1層と、治療有効量の活性ペプチドを含む第2層とを有する積層体を含み、本医薬品は更に、有効成分のバイオアベイラビリティを増進させるのに有効な少なくとも1種の吸収性向上剤を含み、第1層及び第2層は一体化されているが、少なくとも1種のpH低下剤及びペプチドを、pH低下剤と接触するペプチドが約0.1%未満となるように積層体内で実質的に分離させることによって、第1層材料と第2層材料との間での実質的な混合を防止してpH低下剤とペプチドとの間での積層体における相互作用を回避する。
幾つかの実施形態において、最終医薬品は、クエン酸、酒石酸及びアミノ酸の酸性塩から成る群から選択されるpH低下剤を含む。幾つかの実施形態において、pH低下剤は、ジカルボン酸及びトリカルボン酸から成る群から選択される。幾つかの実施形態において、pH低下剤は、300ミリグラム以上の量で存在する。
幾つかの実施形態において、最終医薬品は、芳香族カチオン性ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩を含む。幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、アミノ酸配列Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩を含む。幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、アミノ酸配列D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩を含む。幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、
から成る群から選択される。
から成る群から選択される。
一態様において、本テクノロジーは、より高いバイオアベイラビリティを必要とする被験者において、経口で送達される治療用芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティを向上させる方法を提供し、本方法は、芳香族カチオン性ペプチドを、少なくとも1種のpH低下剤及び少なくとも1種の吸収性向上剤と共に、芳香族カチオン性ペプチド送達に適した最終医薬品から被験者の消化管に選択的に放出することを含み、本医薬品のある外面は耐酸性保護ビヒクルを実質的に有さず、本医薬品は消化管に、10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム水溶液に添加した場合に溶液のpHを5.5以下まで低下させるのに十分な量で放出される。
幾つかの実施形態において、治療用芳香族カチオン性ペプチド、少なくとも1種のpH低下剤及び少なくとも1種の吸収性向上剤は、耐酸性保護ビヒクルを備えた対応する医薬組成物より迅速に本最終医薬品から放出される。幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドの最高血漿濃度は被験者において60分以内に達成される。幾つかの実施形態において、pH低下剤は、全ての成分を10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム水溶液に添加した場合に溶液のpHを3.5以下まで低下させるのに十分な量で存在する。幾つかの実施形態において、吸収性向上剤は、カチオン性界面活性剤及びコレステロール誘導体であるアニオン性界面活性剤から成る群から選択される。幾つかの実施形態において、pH低下剤は、4.2以下のpKa及び室温の水100ミリリットルあたり少なくとも30グラムである水への溶解度を有する。幾つかの実施形態において、pH低下剤は、300ミリグラム以上の量で存在する。
幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、アミノ酸配列Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩を含む。幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、アミノ酸配列D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩を含む。幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、
から成る群から選択される。
から成る群から選択される。
本開示では、医薬用ペプチド(例えば、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド等の生理学的に活性なペプチド)及び本明細書で論じるインスリン、サケカルシトニン、バソプレシン他等のポリペプチドを信頼性高く送達するための治療に効果的な経口医薬組成物を提供する。本開示では更に、このようなペプチドのバイオアベイラビリティを向上させるための治療方法を提供する。
本開示では更に、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばD−Arg−Dmt−Lys−Phe−NH2を単独で又は1種以上の他のペプチド治療薬と共に投与することで医学的状態及び疾患を処置する方法を提供する。
一態様において、本開示では、(A)血液又はリンパ系プロテアーゼにより少なくとも部分的に切断可能な膜トランスロケータに連結された治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドと、(B)少なくとも1種の薬学的に許容可能なpH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤と、(C)芳香族カチオン性ペプチドと胃プロテアーゼとの接触を防止しつつ患者の胃を通して医薬組成物を輸送するのに効果的な耐酸性保護ビヒクルとを含む、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを経口送達するための医薬組成物を提供する。
治療用ペプチドには、以下に限定するものではないが、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、またインスリン、バソプレシンサケカルシトニン、グルカゴン様ペプチド1、副甲状腺ホルモン、黄体化ホルモン放出ホルモン、エリスロポエチン及びこれらの類似体等のポリペプチドが含まれる。
別の態様において、本開示では、経口的に送達される芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティを向上させる方法を提供し、本方法は、(A)芳香族カチオン性ペプチドを、血漿プロテアーゼで少なくとも部分的に切断可能な膜トランスロケータに連結させ、(B)胃プロテアーゼとペプチドとの接触を実質的に防止する耐酸性保護ビヒクルの保護下でのペプチド、pH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤の患者の口及び胃の通過に続いて、膜トランスロケータに連結させたペプチドを、少なくとも1種のpH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤と共に患者の腸に選択的に放出することを含む。
本方法は、(1)典型的には酸性pHで最も活性が高い胃プロテアーゼと(2)(典型的には塩基性〜中性pHで最も活性が高い)腸又は膵臓のプロテアーゼによるタンパク質分解性の攻撃からペプチドを同時に保護することで、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのタンパク質分解の可能性を低下させる。本方法は、タンパク質分解からペプチドを保護し続けつつ、膜トランスロケータの存在により治療用ペプチドが腸の刷子縁膜を越えて血中へと進入する工程を促進する。
耐酸性保護ビヒクルは、芳香族カチオン性ペプチドを、胃の酸作用プロテアーゼから保護する。次に、(ペプチド有効成分と混合する)相当量の酸が、腸において、中性〜塩基性作用プロテアーゼ(例えば、管腔又は消化プロテアーゼ、刷子縁膜のプロテアーゼ)の活性を、これらの腸プロテアーゼの最適な活性範囲よりpHを下げることで低下させる。
芳香族カチオン性ペプチドと連結させると、膜トランスロケータは、腸粘膜層、刷子縁膜を通っての血中へのペプチドの輸送を増進する。続いて、膜トランスロケータは血液又はリンパ系プロテアーゼにより切断され、この結果、芳香族カチオン性ペプチドが患者の体内に放出される。
本開示では、経鼻的に投与した場合に本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドが良好なバイオアベイラビリティでもって送達されることからペプチドの血中濃度が著しく上昇するペプチド医薬組成物を提供する。本開示では更に、鼻粘膜に投与した場合に忍容性が良好な芳香族カチオン性ペプチド医薬組成物を提供する。
一実施形態において、本開示では、(1)芳香族カチオン性ペプチドと、(2)脂肪酸、脂肪酸の糖エステル及びこれらの混合物から成る群から選択されるバイオアベイラビリティ向上剤とを含む、芳香族カチオン性ペプチドを経鼻送達するための医薬組成物を提供する。
別の実施形態において、本開示では、(1)芳香族カチオン性ペプチドと、(2)脂肪酸の糖エステルと、(3)アシルカルニチンとを含む、芳香族カチオン性ペプチドを経鼻送達するための医薬組成物を提供する。
別の実施形態において、本開示では、(1)本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドと、(2)オレイン酸と、(3)スクロースラウレートと、(4)クエン酸、クエン酸塩並びにクエン酸及びクエン酸塩の混合物から成る群から選択されるシトレート系バイオアベイラビリティ向上剤とを含む、芳香族カチオン性ペプチドを経鼻送達するための医薬組成物を提供し、本医薬組成物は、選択されたpH範囲に緩衝された水溶液である。一実施形態において、本開示では上述したような経鼻送達用の医薬組成物を提供し、pH範囲は3.0以上、6.5以下である。一実施形態において、本開示では上述したような経鼻送達用の医薬組成物を提供し、pH範囲は2.0以上、7.5以下である。別の実施形態において、本開示では上述したような経鼻送達用の医薬組成物を提供し、pH範囲は1.5以上、10.0以下である。
別の実施形態において、本開示では、(1)芳香族カチオン性ペプチドと、(2)L−ラウロイルカルニチンと、(3)スクロースラウレートと、(4)クエン酸、クエン酸塩並びにクエン酸及びクエン酸塩の混合物から成る群から選択されるシトレート系バイオアベイラビリティ向上剤とを含む、芳香族カチオン性ペプチドを経鼻送達するための医薬組成物を提供し、本医薬組成物は、選択されたpH範囲に緩衝剤された水溶液である。一実施形態において、本開示では上述したような経鼻送達用の医薬組成物を提供し、pH範囲は3.0以上、6.5以下である。一実施形態において、本開示では上述したような経鼻送達用の医薬組成物を提供し、pH範囲は2.0以上、7.5以下である。別の実施形態において、本開示では上述したような経鼻送達用の医薬組成物を提供し、pH範囲は1.5以上、10.0以下である。
幾つかの実施形態において、本開示では、芳香族カチオン性ペプチド又はその酸付加塩と、濃度約10〜約50mMのクエン酸及び/又はその塩とを含む液体医薬組成物を提供し、本組成物は経鼻投与に適した形態である。
本開示では、芳香族カチオン性ペプチドと、約10mMのクエン酸と、約0.2%のフェニルエチルアルコールと、約0.5%のベンジルアルコールと、約0.1%のTween 80とを含む液体医薬組成物も提供する。
本開示では更に、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばD−Arg−Dmt−Lys−Phe−NH2と、約20mMのクエン酸と、約0.2%のフェニルエチルアルコールと、約0.5%のベンジルアルコールと、約0.1%のTween 80とを含む液体医薬組成物を提供する。
本開示では、芳香族カチオン性ペプチドでの処置を必要としている被験者に芳香族カチオン性ペプチドを投与する方法も提供し、本方法は、芳香族カチオン性ペプチド又はその酸付加塩と濃度約10〜約50mMのクエン酸又はその塩とを含む液体医薬組成物を被験者に経鼻的に投与することを含む。
本開示では更に、芳香族カチオン性ペプチドの液体医薬組成物の安定性を改善する方法を提供し、本方法は、組成物にクエン酸又はその塩を約10〜約50mMの濃度で添加することを含む。
本開示では、芳香族カチオン性ペプチドの液体医薬組成物の経鼻投与に続いて被験者においてバイオアベイラビリティ又は血漿芳香族カチオン性ペプチド濃度を改善する方法も提供し、本方法は、投与に先立って組成物にクエン酸又はその塩を約10〜約50mMの濃度で添加することを含む。
幾つかの実施形態において、本開示は、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを、食欲抑制及び体重管理用のペプチドと共に投与することに関する。幾つかの実施形態において、食欲抑制及び体重管理用のこのペプチドはカルシトニン類似体である。幾つかの実施形態において、このペプチドはアミノ酸配列Cys−Ser−Asn−Leu−Ser−Thr−Cys−Val−Leu−Gly−Lys−Leu−Ser−Gln−Glu−Leu−His−Lys−Leu−Gln−Thr−Tyr−Pro−Arg−Thr−Xaa−Xaa−Gly−Xaa−Xaa−Thr−Xaaを有し、アミノ酸26、27、28、29及び31はいずれの天然のアミノ酸にもなり得て、アミノ酸31は任意でアミド化される。
(詳細な説明)
I.芳香族カチオン性ペプチド
本テクノロジーによる、経口送達が有益となり得る芳香族カチオン性ペプチドには、生理学的に活性であり且つその分子構造中に複数のアミノ酸及び少なくとも1つのペプチド結合を有する芳香族カチオン性ペプチドが含まれる。本製剤は、幾つかのメカニズムにより、そのままでは有効成分のペプチド結合の1つ以上を切断する傾向があるプロテアーゼによる有効成分(例えば、芳香族カチオン性ペプチド)の分解を抑制する。分子構造は更に、他の構成要素又は修飾を含み得る。合成及び天然の両方のペプチドを、本テクノロジーに従って経口送達することができる。
I.芳香族カチオン性ペプチド
本テクノロジーによる、経口送達が有益となり得る芳香族カチオン性ペプチドには、生理学的に活性であり且つその分子構造中に複数のアミノ酸及び少なくとも1つのペプチド結合を有する芳香族カチオン性ペプチドが含まれる。本製剤は、幾つかのメカニズムにより、そのままでは有効成分のペプチド結合の1つ以上を切断する傾向があるプロテアーゼによる有効成分(例えば、芳香族カチオン性ペプチド)の分解を抑制する。分子構造は更に、他の構成要素又は修飾を含み得る。合成及び天然の両方のペプチドを、本テクノロジーに従って経口送達することができる。
幾つかの態様において、本テクノロジーでは、芳香族カチオン性ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩を提供する。幾つかの実施形態において、ペプチドは、
少なくとも1の正味の正電荷と、
最少で3個のアミノ酸と、
最多で約20個のアミノ酸と、
正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間で3pmがr+1以下の最大数である関係と、
芳香族基の最少数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との間で2aがpt+1以下の最大数であり、ただしaが1の場合、ptも1になり得る関係
とを含む。
少なくとも1の正味の正電荷と、
最少で3個のアミノ酸と、
最多で約20個のアミノ酸と、
正味の正電荷の最小数(pm)とアミノ酸残基の総数(r)との間で3pmがr+1以下の最大数である関係と、
芳香族基の最少数(a)と正味の正電荷の総数(pt)との間で2aがpt+1以下の最大数であり、ただしaが1の場合、ptも1になり得る関係
とを含む。
幾つかの実施形態において、このペプチドは、アミノ酸配列Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2又はD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を含む。幾つかの実施形態において、ペプチドは、
の1種以上を含む。
の1種以上を含む。
一実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、式I:
によって定義され、式中、R1及びR2はそれぞれ独立して
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)
(iv)
(v)
から選択され、
R3及びR4はそれぞれ独立して
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む)
から選択され、
R5、R6、R7、R8及びR9はそれぞれ独立して
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む)
から選択され、
nは1〜5の整数である。
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)
(v)
から選択され、
R3及びR4はそれぞれ独立して
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む)
から選択され、
R5、R6、R7、R8及びR9はそれぞれ独立して
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む)
から選択され、
nは1〜5の整数である。
特定の実施形態において、R1及びR2は水素であり、R3及びR4はメチルであり、R5、R6、R7、R8及びR9は全て水素であり、nは4である。
一実施形態において、ペプチドは式II:
によって定義され、式中、R1及びR2はそれぞれ独立して
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)
(iv)
(v)
から選択され、
R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む)
から選択され、
nは1〜5の整数である。
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)
(v)
から選択され、
R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して
(i)水素、
(ii)直鎖又は分岐C1−C6アルキル、
(iii)C1−C6アルコキシ、
(iv)アミノ、
(v)C1−C4アルキルアミノ、
(vi)C1−C4ジアルキルアミノ、
(vii)ニトロ、
(viii)ヒドロキシル、
(ix)ハロゲン(「ハロゲン」はクロロ、フルオロ、ブロモ及びヨードを含む)
から選択され、
nは1〜5の整数である。
特定の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は全て水素であり、nは4である。別の実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR11は全て水素であり、R8及びR12はメチルであり、R10はヒドロキシルであり、nは4である。
一実施形態において、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドは、芳香族アミノ酸とカチオン性アミノ酸とが交互になったコア構造モチーフを有する。例えば、このペプチドは、下記:
芳香族−カチオン性−芳香族−カチオン性(式III)
カチオン性−芳香族−カチオン性−芳香族(式IV)
芳香族−芳香族−カチオン性−カチオン性(式V)
カチオン性−カチオン性−芳香族−芳香族(式VI)
の式III〜VIのいずれかによって定義されるテトラペプチドになり得て、芳香族アミノ酸は、Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W)及びシクロヘキシルアラニン(Cha)から成る群から選択される残基であり、カチオン性アミノ酸は、Arg(R)、Lys(K)、ノルロイシン(Nle)及び2−アミノ−ヘプタン酸(Ahe)から成る群から選択される残基である。
芳香族−カチオン性−芳香族−カチオン性(式III)
カチオン性−芳香族−カチオン性−芳香族(式IV)
芳香族−芳香族−カチオン性−カチオン性(式V)
カチオン性−カチオン性−芳香族−芳香族(式VI)
の式III〜VIのいずれかによって定義されるテトラペプチドになり得て、芳香族アミノ酸は、Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W)及びシクロヘキシルアラニン(Cha)から成る群から選択される残基であり、カチオン性アミノ酸は、Arg(R)、Lys(K)、ノルロイシン(Nle)及び2−アミノ−ヘプタン酸(Ahe)から成る群から選択される残基である。
本明細書で開示のペプチドを、薬学的に許容可能な塩として配合し得る。用語「薬学的に許容可能な塩」は、哺乳動物等の患者への投与が許容可能な塩基又は酸から調製される塩を意味する(例えば、ある投薬レジメンについて許容可能な哺乳動物安全性を有する塩)。しかしながら、塩が薬学的に許容可能な塩である必要はないことがわかる(例えば、患者の投与を意図していない中間化合物の塩)。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な無機又は有機塩基及び薬学的に許容可能な無機又は有機酸から誘導することができる。加えて、ペプチドが塩基性部分(例えば、アミン、ピリジン、イミダゾール)及び酸性部分(例えば、カルボン酸、テトラゾール)の両方を含有する場合、双生イオンが発生する場合があり、また本明細書で使用の用語「塩」に含まれる。薬学的に許容可能な無機塩基から誘導される塩には、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、第二鉄塩、第一鉄塩、リチウム塩、マグネシウム塩、第二マンガン塩、第一マンガン塩、カリウム塩、ナトリウム塩及び亜鉛塩等が含まれる。薬学的に許容可能な有機塩基から誘導される塩には、置換アミン、環状アミン、天然アミン等を含めた一級、二級及び三級アミン(例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン(piperazine)、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が含まれる。薬学的に許容可能な無機酸から誘導される塩には、ホウ酸、カルボン酸、ハロゲン化水素酸(臭化水素酸、塩酸、フッ化水素酸、ヨウ化水素酸)、硝酸、リン酸、スルファミン酸及び硫酸の塩が含まれる。薬学的に許容可能な有機酸から誘導される塩には、脂肪族ヒドロキシル酸(例えば、クエン酸、グルコン酸、グリコール酸、乳酸、ラクトビオン酸、リンゴ酸、酒石酸)、脂肪族モノカルボン酸(例えば、酢酸、酪酸、ギ酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸)、アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、芳香族カルボン酸(例えば、安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、ゲンチジン酸、馬尿酸、トリフェニル酢酸)、芳香族ヒドロキシル酸(例えば、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸)、アスコルビン酸、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸)、グルコロン酸(glucoronic)、マンデル酸、粘液酸、ニコチン酸、オロチン酸、パモ酸、パントテン酸、スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、エジシル(edisylic)酸、エタンスルホン酸、イセチオン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸)、キシナホン(xinafoic)酸等の塩が含まれる。幾つかの実施形態において、塩はアセテート塩である。加えて又は代替案として、他の実施形態において、塩はトリフルオロアセテート塩である。
本明細書で開示の本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドは、当該分野で周知のいずれの方法でも合成し得る。このタンパク質の化学的な合成に適した方法には、例えば、液相及び固相合成、Solid Phase Peptide Synthesis,Second Edition,Pierce Chemical Company(1984)及びMethods Enzymol.289,Academic Press,Inc,New York(1997)にStuart及びYoungが記載した方法が含まれる。組み換えペプチドは、Current Protocols in Molecular Biology,Vols.I−III,Ausubel,Ed.(1997)、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)、DNA Cloning:A Practical Approach,Vols.I and II,Glover,Ed.(1985)、Oligonucleotide Synthesis,Gait,Ed.(1984)、Nucleic Acid Hybridization,Hames&Higgins,Eds.(1985)、Transcription and Translation,Hames&Higgins,Eds.(1984)、Animal Cell Culture,Freshney,Ed.(1986)、Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press,1986)、Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning;the series,Meth.Enzymol.,(Academic Press,Inc.,1984)、Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells,Miller&Calos,Eds.(Cold Spring Harbor Laboratory,NY,1987)並びにMeth.Enzymol.,Vols.154,155,Wu&Grossman及びWu,Eds.のそれぞれに記載されているもの等の、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学及び微生物学における慣用の技法を用いて作り出し得る。
本テクノロジーの追加のペプチド活性化合物には、以下に限定するものではないが、インスリン、バソプレシン、カルシトニン等のポリペプチドが含まれる。他の例には、以下に限定するものではないが、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、副甲状腺ホルモン(完全長又は切断型、アミド化された又は遊離酸の形態、更に修飾されている又は修飾されていない)、黄体化ホルモン放出因子、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベータ、ヒト成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、各種インターロイキン、エンケファリン、dmt−DALDA等のDALDA誘導体等が含まれる。その他多くが当該分野で公知である。胃腸管で切断される可能性のあるペプチド結合を有する医薬化合物であるならば、本製剤ではそのような切断が減少することから、本テクノロジーによる経口送達の恩恵を受け得ると予測される。
幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、配列Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及び/又はD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を含む。いくつかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチドは、医薬組成物全体の総質量の0.02〜0.2質量%を占める。本テクノロジーの他の芳香族カチオン性ペプチドは、このペプチドの望ましい標的血中濃度及び本テクノロジーの経口送達系におけるそのバイオアベイラビリティに応じてこれより高い又は低い濃度で存在し得る。
芳香族カチオン性ペプチド前駆体は、当該分野で公知の化学的(例えば、液相及び固相ペプチド化学合成を用いる)又は組み換え合成により作り出し得る。本テクノロジーの他のアミド化芳香族カチオン性ペプチドの前駆体は同様のやり方で作り出し得る。組み換えによる製造のほうが費用効率が極めて高いと考えられている。同じく当該分野で公知のアミド化反応により、前駆体を活性ペプチドに変換する。例えば、酵素アミド化は、米国特許第4708934号明細書及び欧州特許出願公開第0308067号及び第0382403号明細書に記載されている。組み換えによる製造は、前駆体及び望ましい活性形態の芳香族カチオン性ペプチドへの前駆体の変換を触媒する酵素の両方に用いることができる。このような組み換えによる製造は、Biotechnology,Vol.11(1993)pp.64−70で論じられていて、この文献にはアミド化生成物への前駆体の変換も記載されている。アミド化中、アルファ−ケト酸等のケト酸又はその塩若しくはエステル(アルファ−ケト酸は分子構造RC(O)C(O)OHを有し、Rはアリール、C1−C4炭化水素部分、ハロゲン化又はヒドロキシル化C1−C4炭化水素部分及びC1−C4カルボン酸から成る群から選択される)をカタラーゼ補助因子の代わりに使用し得る。これらのケト酸の例には、以下に限定するものではないが、ピルビン酸エチル、ピルビン酸及びその塩、ピルビン酸メチル、ギ酸ベンゾイル及びその塩、2−ケト酪酸及びその塩、3−メチル−2−オキソブタン酸及びその塩並びに2−ケトグルタル酸及びその塩が含まれる。
組み換え芳香族カチオン性ペプチドの製造は、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼを使用して可溶性の融合タンパク質として大腸菌でグリシン延長(glycine−extended)前駆体を製造することで進め得る。α−アミド化酵素は前駆体の活性芳香族カチオン性ペプチドへの変換を触媒する。この酵素は、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において、上で引用したBiotechnologyに寄稿された論文に記載される通りに組み換えにより製造される。他のアミド化ペプチドの前駆体は、同様のやり方で製造され得る。アミド化又は他の追加の官能性を必要としないペプチドもまた、同様のやり方で製造し得る。他のペプチド有効成分は、市販されている又は当該分野で公知の技法で製造し得る。
II.ペプチド医薬組成物の経口送達
驚くべきことに、本テクノロジーの医薬製剤を腸溶コーティングなしで投与すると、バイオアベイラビリティを実用レベル未満に低下させることなく(対応する腸溶コーティング薬に相対して)ペプチド吸収速度が上昇することが判明している。確かにバイオアベイラビリティの若干の低下は起きるものの、この低下が、効果的な医学的処置の妨げになったり、より高速であることのメリットを極度に損なう(特に、このような速度が特に有利な用途、すなわち鎮痛を目的とする場合)とは考えられない。本製剤により、本テクノロジーの活性芳香族カチオン性ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩の吸収はより迅速なものとなる。これはビヒクル(例えば、カプセル、錠剤)の溶解と有効成分の放出に必要な時間が短縮されるからである。また、本製剤により、成分が腸に達するのを待つ代わりに、消化管のもっと上流(例えば、食道及び/又は胃)でのこのような放出が可能になる。例えば米国特許出願公開第2005/0282756号及び米国特許出願公開第2007/0134279号の明細書を参照のこと。これらの文献は参照により全て本明細書に組み込まれる。
驚くべきことに、本テクノロジーの医薬製剤を腸溶コーティングなしで投与すると、バイオアベイラビリティを実用レベル未満に低下させることなく(対応する腸溶コーティング薬に相対して)ペプチド吸収速度が上昇することが判明している。確かにバイオアベイラビリティの若干の低下は起きるものの、この低下が、効果的な医学的処置の妨げになったり、より高速であることのメリットを極度に損なう(特に、このような速度が特に有利な用途、すなわち鎮痛を目的とする場合)とは考えられない。本製剤により、本テクノロジーの活性芳香族カチオン性ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩の吸収はより迅速なものとなる。これはビヒクル(例えば、カプセル、錠剤)の溶解と有効成分の放出に必要な時間が短縮されるからである。また、本製剤により、成分が腸に達するのを待つ代わりに、消化管のもっと上流(例えば、食道及び/又は胃)でのこのような放出が可能になる。例えば米国特許出願公開第2005/0282756号及び米国特許出願公開第2007/0134279号の明細書を参照のこと。これらの文献は参照により全て本明細書に組み込まれる。
本テクノロジーでは、芳香族カチオン性ペプチド有効成分での処置を必要としている被験者に、1種以上のこのようなペプチド有効成分を(適当な用量で)含む経口医薬組成物から構成される、任意で医薬品業界で通常のサイズの錠剤の形態にある最終医薬品を与える。この最終医薬品は更に、希望に応じて、(例えば)カプセル形態で調製し得る。この医薬品の投与量及び投与頻度については以下でより詳細に論じる。この医薬品が有益となり得る被験者は、ペプチド含有化合物のレベル上昇にプラスに応答する疾患を患っている被験者である。
本明細書に記載の経口ペプチド製剤は、ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)及び/又は細胞の酸化的損傷を原因とする又はこれらに関係した障害の処置において有用である。例えば、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドであるPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2又はこれらの薬学的に許容可能な塩の経口ペプチド製剤を、血管閉塞、腎虚血、組織虚血/再灌流障害、急性心筋梗塞、目の疾患若しくは障害又はアルツハイマー病、パーキンソン病等の神経障害を患っている被験者の処置に使用し得る。薬学的に許容可能な塩には、以下に限定するものではないが、例えばアセテート塩及びトリフルオロアセテート塩が含まれる。
理論で縛ることを望むものではないが、本明細書に記載の医薬製剤は、バイオアベイラビリティにとっての一連の様々な、互いに関連のない天然のバリアを克服すると考えられる。本医薬組成物の様々な成分がそれぞれに適したメカニズムでもって様々なバリアを克服するように働き、結果的にペプチド有効成分のバイオアベイラビリティに対する相乗効果がもたらされる。後述するように、ペプチドが本来有する物理的及び化学的性質が、そのバイオアベイラビリティを引き上げるにあたって特定の吸収性向上剤を他のものより効果的にする。
本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド活性化合物を、経口投与に適した製剤に含有させる。本テクノロジーにおいて、胃プロテアーゼ(その殆どは酸性pH範囲で活性である)によるペプチドのタンパク質分解は胃が空の被験者へのこの製剤の投与により減少し(ただし、十分な結果を達成するために必要なことではない)、一方、腸又は膵臓プロテアーゼ(その殆どは中性〜塩基性pH範囲で活性である)による分解は、腸環境のpHを最適ではないレベルに調節するpH低下剤の作用により減少する。溶解性向上剤は、芳香族カチオン性ペプチドによる腸の上皮バリアの通過を支援する。
pH低下剤は、(有効成分が放出された場所の)局所的pHを、多くの腸プロテアーゼにとっての最適な範囲より低いレベルにまで低下させると考えられる。pHにおけるこの低下によって腸プロテアーゼのタンパク質分解活性が低下し、その結果、ペプチドが腸内にある場合に起こり得る分解からペプチドが保護される。これらのプロテアーゼの活性は、本明細書で論じるように、一時的な酸性環境により低下する。例えば、腸の局所的pHが一時的に5.5以下、4.7以下又は3.5以下まで低下するように十分な酸を供給すべきである。(「pH低下剤」という見出しがついたセクションにおいて)後述する炭酸水素ナトリウム試験が、必要な酸の量を示してくれる。低下したpHの状態は、芳香族カチオン性ペプチドの少なくとも一部が血流に入り込む機会が得られるまで芳香族カチオン性ペプチドをタンパク質分解から保護するのに十分な時間にわたって持続すべきである。限定を目的とするものではないが例えば、32アミノ酸ペプチドであるサケカルシトニンの場合、有効成分を直接十二指腸、腸骨又は結腸に注入すると、サケカルシトニンの血中レベルはT最大5〜15分であると実験により実証されている。本製剤の吸収性向上剤はペプチドの血中への吸収を相乗的に促進し、その間、タンパク質分解活性が低下した状態は続く。最終医薬品の有効成分を一緒に可能な限り同時に放出することが、本製剤が目標とするバイオアベイラビリティの向上を達成すると考えられるメカニズムの助けとなる。
(以下でより詳細に説明するように)溶解性向上剤及び/又は輸送促進剤になり得る吸収性向上剤は消化管から血中への芳香族カチオン性ペプチドの輸送を支援し、また腸のpHが低下し、腸でのタンパク質分解活性が低下している間にこの輸送が起きるようにこの過程を促進し得る。多くの界面活性剤が、溶解性向上剤及び輸送(取り込み)向上剤の両方として作用し得る。ここでもまた理論で縛ることを意図するものではないが、溶解性を向上させると、(1)本製剤の有効成分が消化管の水分を含んだ部位により高い同時性でもって放出され、(2)腸壁に沿って見られるもの等の粘液層におけるペプチドの溶解性及び粘液層を通っての輸送が良好なものとなると考えられる。ペプチド有効成分が一旦例えば腸壁に達すると、取り込み向上剤により腸の刷子縁膜から血中への、経細胞輸送又は傍細胞輸送による輸送がより良好なものとなる。以下でより詳細に論じるように、多くの化合物が両方の機能を果たし得る。そのような例において、これらの機能の両方を利用した実施形態は、たった1種の追加化合物を医薬組成物に添加することでそれを行い得る。他の実施形態においては、別の吸収性向上剤がこれら2つの機能を別々に果たし得る。
本テクノロジーの最終医薬品の各成分については別々に後述する。複数のpH低下剤又は複数の向上剤の組み合わせを用いることも、たった一種のpH低下剤及び/又は向上剤を用いることもできる。幾つかの組み合わせについても後述する。
理論で縛ることを意図するものではないが、本テクノロジーの医薬製剤は、バイオアベイラビリティにとっての一連の様々な、互いに関連のない天然のバリアを克服すると考えられる。医薬組成物の様々な成分がそれぞれに適したメカニズムでもって様々なバリアを克服するように働き、結果的にペプチド有効成分のバイオアベイラビリティに対する相乗効果がもたらされる。後述するように、ペプチドが本来有する物理的及び化学的性質が、そのバイオアベイラビリティを引き上げるにあたって特定の吸収性向上剤を他のものより効果的にする。
芳香族カチオン性ペプチド活性化合物(又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩)を、経口投与に適した製剤に含有させる。本テクノロジーにおいて、胃プロテアーゼ(その殆どは酸性pH範囲で活性である)によるペプチドのタンパク質分解は胃が空の被験者へのこの製剤の投与により減少し(ただし、十分な結果を達成するために必要なことではない)、一方、腸又は膵臓プロテアーゼ(その殆どは中性〜塩基性pH範囲で活性である)による分解は、腸環境のpHを最適ではないレベルに調節するpH低下剤の作用により減少する。溶解性向上剤は、芳香族カチオン性ペプチドによる腸の上皮バリアの通過を支援する。
A.pH低下剤
芳香族カチオン性ペプチドの投与毎に投与するpH低下化合物の総量は、例えば腸内に放出された際に、局所的な腸のpHを、実質的にその場所で見られるプロテアーゼにとって最適なpHより低くなるように低下させるのに十分な量であるべきである。必要な量は必然的に、使用するpH低下剤のタイプ(後述する)及びあるpH低下剤で得られるプロトンの当量を含めた幾つかの要素に応じて変化する。実際には、良好なバイオアベイラビリティを得るのに必要な量は、本テクノロジーの医薬品を10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム溶液に添加した場合に、その炭酸水素ナトリウム溶液のpHが5.5以下、4.7以下又は3.5以下にまで低下する量である。上記の試験においては、pHを約2.8にまで低下させるのに十分な酸を幾つかの実施形態において使用している。少なくとも300ミリグラム又は少なくとも400ミリグラムのpH低下剤を、本テクノロジーの医薬組成物において使用する。上記の値は、2種以上のこのような剤を組み合わせて使用する場合の全てのpH低下剤の合計総質量である。経口製剤は、pH低下化合物と共に放出された場合に上記の炭酸水素ナトリウム試験のpHが5.5以下に低下するのを妨げる量の塩基を含むべきではない。
芳香族カチオン性ペプチドの投与毎に投与するpH低下化合物の総量は、例えば腸内に放出された際に、局所的な腸のpHを、実質的にその場所で見られるプロテアーゼにとって最適なpHより低くなるように低下させるのに十分な量であるべきである。必要な量は必然的に、使用するpH低下剤のタイプ(後述する)及びあるpH低下剤で得られるプロトンの当量を含めた幾つかの要素に応じて変化する。実際には、良好なバイオアベイラビリティを得るのに必要な量は、本テクノロジーの医薬品を10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム溶液に添加した場合に、その炭酸水素ナトリウム溶液のpHが5.5以下、4.7以下又は3.5以下にまで低下する量である。上記の試験においては、pHを約2.8にまで低下させるのに十分な酸を幾つかの実施形態において使用している。少なくとも300ミリグラム又は少なくとも400ミリグラムのpH低下剤を、本テクノロジーの医薬組成物において使用する。上記の値は、2種以上のこのような剤を組み合わせて使用する場合の全てのpH低下剤の合計総質量である。経口製剤は、pH低下化合物と共に放出された場合に上記の炭酸水素ナトリウム試験のpHが5.5以下に低下するのを妨げる量の塩基を含むべきではない。
本製剤のpH低下剤は、胃腸管において有毒ではなく且つ水素イオンを送達可能な(伝統的な酸)又は局所環境から高い水素イオン量を引き出すことが可能ないずれの薬学的に許容可能な化合物になり得る。pH低下剤は、このような化合物のいずれの組み合わせにもなり得る。幾つかの実施形態において、本製剤で使用の少なくとも1種のpH低下剤は、4.2以下又は3.0以下のpKaを有する。幾つかの実施形態において、pH低下剤は、室温の水100ミリリットルあたり少なくとも30グラムである水への溶解度を有する。
高い水素イオン量をもたらす化合物の例には、塩化アルミニウム及び塩化亜鉛が含まれる。薬学的に許容可能な伝統的な酸には、以下に限定するものではないが、アミノ酸の酸性塩(例えば、アミノ酸塩酸塩)又はその誘導体が含まれる。これらの例は、アセチルグルタミン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ベタイン、カルニチン、カルノシン、シトルリン、クレアチン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、ヒポタウリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチルヒスチジン、ノルロイシン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンの酸性塩である。
有用なpH低下化合物の他の例には、ジカルボン酸の及びトリカルボン酸のカルボン酸が含まれる。アセチルサリチル酸、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、グルクロン酸、グルタル酸、グリセリン酸、グリコール酸、グリオキシル酸、イソクエン酸、イソ吉草酸、乳酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、プロピオン酸、ピルビン酸、コハク酸、酒石酸、吉草酸等の酸が有用であると判明している。
当該分野において通常は「酸」と称されないであろうものの本テクノロジーにおいて有用となり得る他の有用なpH低下剤は、ホスフェートエステル(例えば、フルクトース、1,6ジホスフェート、グルコース、1,6ジホスフェート、ホスホグリセリン酸、ジホスホグリセリン酸)である。CARBOPOL(BF Goodrich社の商標)及びポリカルボフィル等のポリマーもpHを低下させるのに使用し得る。
上述の炭酸水素ナトリウム試験において必要とされる5.5以下のpHレベルを達成するいずれの組み合わせのpH低下剤も使用し得る。一実施形態においては、最終医薬品のpH低下剤の少なくとも1つとして、クエン酸、酒石酸及びアミノ酸の酸性塩から成る群から選択される酸を利用する。
本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩が有効成分である場合、特定のpH低下剤対ペプチド比が特に効果的となる場合がある。例えば、幾つかの実施形態において、pH低下剤の芳香族カチオン性ペプチドに対する質量比は200:1、800:1又は2000:1を超える。幾つかの実施形態において、pH低下剤の芳香族カチオン性ペプチドに対する質量比は、40:1、400:1又は4000:1を超える。
B.吸収性向上剤
吸収性向上剤は、医薬組成物の総質量に対して0.1〜20.0質量%を構成する量で存在する。最適な吸収性向上剤は、溶解性向上剤兼取り込み向上剤として働く界面活性剤である。概して、「溶解性向上剤」は、本製剤の成分の、これらの成分を最初に放出する水性環境又は例えば腸壁の内側を覆う粘液層の脂溶性環境又はこれらの両方での可溶化能を改善する。「輸送(取り込み)向上剤」(溶解性向上剤として使用する界面活性剤と同じものであることが多い)は、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドによる腸壁の越え易さを促進するものである。
吸収性向上剤は、医薬組成物の総質量に対して0.1〜20.0質量%を構成する量で存在する。最適な吸収性向上剤は、溶解性向上剤兼取り込み向上剤として働く界面活性剤である。概して、「溶解性向上剤」は、本製剤の成分の、これらの成分を最初に放出する水性環境又は例えば腸壁の内側を覆う粘液層の脂溶性環境又はこれらの両方での可溶化能を改善する。「輸送(取り込み)向上剤」(溶解性向上剤として使用する界面活性剤と同じものであることが多い)は、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドによる腸壁の越え易さを促進するものである。
本テクノロジーの範囲内で、1種以上の吸収性向上剤は一方の機能(例えば、溶解性)だけを果たし得て、あるいは1種以上の吸収性向上剤はもう一方の機能(例えば、取り込み)だけを果たし得る。幾つかの化合物の混合物とすることも可能であり、化合物の幾つかがより高い溶解性をもたらし、幾つかがより良好な取り込みをもたらし及び/又は幾つかがその両方をもたらす。理論で縛ることを意図するものではないが、取り込み向上剤は、(1)細胞の外にある膜の疎水性領域の乱れを大きくして経細胞輸送を増加させる又は(2)膜タンパク質を浸出させることで経細胞輸送を増加させる又は(3)傍細胞輸送を増加させるために細胞間のポア半径を拡張することで作用すると考えられる。
界面活性剤は、溶解性向上剤及び取り込み向上剤の両方として有用であると考えられる。例えば、洗浄剤は、(1)全有効成分を、これらの成分が最初に放出される水性環境中に迅速に溶解させる、(2)本製剤の成分、特には芳香族カチオン性ペプチドの脂溶性を向上させることで、これらの成分の腸粘液への進入及び通過を支援する、(3)通常は極性がある芳香族カチオン性ペプチドが刷子縁膜の上皮バリアを越える能力を向上させる及び(4)上述したような経細胞又は傍細胞輸送を増加させるにあたって有用である。
幾つかの実施形態において、界面活性剤を吸収性向上剤として使用する場合、界面活性剤は、製造工程中の混合及びカプセルへの充填を円滑に行うために流動性がある粉末である。本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド及び他のペプチド固有の特性(例えば、等電点、分子量、アミノ酸組成等)により、特定の界面活性剤は特定のペプチドと最もよく相互作用する。実際、望ましくないことに、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの帯電した部位と相互作用してその吸収を阻み、その結果、不本意にもバイオアベイラビリティの低下を招くものもある。幾つかの実施形態において、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド又は他のペプチドのバイオアベイラビリティを上昇させようとする場合、吸収性向上剤として使用する界面活性剤は、(i)コレステロール誘導体であるアニオン性界面活性剤(例えば、胆汁酸)、(ii)カチオン性界面活性剤(例えば、アシルカルニチン、リン脂質等)、(iii)非イオン性界面活性剤及び(iv)アニオン性界面活性剤(特には、直鎖炭化水素領域を有するもの)と負電荷中和剤との混合物から成る群から選択される。負電荷中和剤には、以下に限定するものではないが、アシルカルニチン、セチルピリジニウムクロリド等が含まれる。幾つかの実施形態において、吸収性向上剤は、酸性pH、特には3.0〜5.0の範囲で可溶性である。
幾つかの実施形態において、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド(又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩)で有用な1つの組み合わせでは、カチオン性界面活性剤を、コレステロール誘導体であるアニオン性界面活性剤と混合し、これらは酸性pHで可溶性である。
幾つかの実施形態において、組み合わせは、酸可溶性の胆汁酸及びカチオン性界面活性剤である。幾つかの実施形態においては、アシルカルニチン及びスクロースエステルが良い組み合わせである。幾つかの実施形態において、特定の吸収性向上剤を単独で使用する場合、この吸収性向上剤はカチオン性界面活性剤を含む。アシルカルニチン(例えば、ラウロイルカルニチン)、リン脂質及び胆汁酸、特にアシルカルニチンが特に良い吸収性向上剤である。幾つかの実施形態においては、コレステロール誘導体であるアニオン性界面活性剤も使用される。芳香族カチオン性ペプチドの血中への吸収を妨げる芳香族カチオン性ペプチドとの相互作用を回避することが目的である。
副作用の可能性を低下させるために、本製剤の吸収性向上剤として使用する場合、洗浄剤は生分解性又は再吸収性である(例えば、生物学的に再利用可能な化合物、例えば胆汁酸、リン脂質及び/又はアシルカルニチン)。アシルカルニチンは、傍細胞輸送の増加に特に有用であると考えられる。胆汁酸(又は直鎖炭化水素を欠いた別のアニオン洗浄剤)をカチオン洗浄剤と組み合わせて使用する場合、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの腸壁への及び腸壁を通っての輸送は共により良好なものとなる。
吸収性向上剤には、(a)サリチレート、例えばサリチル酸ナトリウム、3−メトキシサリチレート、5−メトキシサリチレート及びホモバニレート、(b)胆汁酸、例えばタウロコール酸、タウロデオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、グリコール酸、リトコレート、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ウルソコール酸、デヒドロコール酸、フシジン酸等、(c)非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンエーテル(例えば、Brij 36T、Brij 52、Brij 56、Brij 76、Brij 96、Texaphor A6、Texaphor A14、Texaphor A60等)、p−t−オクチルフェノールポリオキシエチレン(Triton X−45、Triton X−100、Triton X−114、Triton X−305等)ノニルフェノキシポリオキシエチレン(例えば、Igepal COシリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween−20、Tween−80等)、(d)アニオン性界面活性剤、例えばジオクチルナトリウムスルホスクシネート、(e)リゾリン脂質、例えばリゾレシチン及びリゾホスファチジルエタノールアミン、(f)アシルカルニチン、アシルコリン及びアシルアミノ酸、例えばラウロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ラウロイルコリン、ミリストイルコリン、パルミトイルコリン、ヘキサデシルリジン、N−アシルフェニルアラニン、N−アシルグリシン等、(g)水溶性リン脂質、例えばジヘプタノイルフォスファチジルコリン、ジオクチルフォスファチジルコリン等、(h)中鎖脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸)を含有するモノ−、ジ−及びトリ−グリセリドの混合物である中鎖グリセリド、(i)エチレンジアミンテトラ酢酸、(j)カチオン性界面活性剤、例えばセチルピリジニウムクロリド、(k)ポリエチレングリコールの脂肪酸誘導体、例えばLabrasol、Labrafac等並びに(l)アルキルサッカライド、例えばラウリルマルトシド、ラウロイルスクロース、ミリストイルスクロース、パルミトイルスクロース等が含まれる。
幾つかの実施形態においては、理論で縛ることを意図するものではないが、カチオンイオン交換剤(例えば、洗浄剤)を含めることで、別の考えられ得るメカニズムにより溶解性を向上させる。特に、カチオンイオン交換剤は、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド又は他の治療薬の粘液への結合を妨げ得る。カチオンイオン交換剤には、プロタミンクロリド又は他のポリカチオンが含まれる。
C.他の任意の成分
幾つかの実施形態においては、水溶性のバリアが、pH低下剤と耐酸性腸溶コーティングとの間を隔てる。慣用の医薬用カプセルは、例えば、このバリアを設けることを目的として使用され得る。多くの水溶性のバリアが当該分野で公知であり、以下に限定するものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び慣用の医薬用ゼラチンが含まれる。
幾つかの実施形態においては、水溶性のバリアが、pH低下剤と耐酸性腸溶コーティングとの間を隔てる。慣用の医薬用カプセルは、例えば、このバリアを設けることを目的として使用され得る。多くの水溶性のバリアが当該分野で公知であり、以下に限定するものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び慣用の医薬用ゼラチンが含まれる。
幾つかの実施形態においては、別のペプチド(例えば、アルブミン、カゼイン、大豆タンパク質、他の動物性又は植物性タンパク質等)を含めることで非特異的な吸着を低下(例えば、腸粘液バリアへのペプチドの結合)させ、これによって芳香族カチオン性ペプチドの必要濃度を低下させる。添加する場合、このペプチドは、医薬組成物全体の質量に対して1.0〜10.0質量%となる。この第2ペプチドは生理学的に活性であるべきではなく、また大豆ペプチド等の食品ペプチドであるべきである。理論で縛ることを意図するものではないが、この第2ペプチドはまた、プロテアーゼの相互作用に関して望ましくも芳香族カチオン性ペプチドと競合するプロテアーゼスカベンジャーとして作用することでバイオアベイラビリティを上昇させ得る。この第2ペプチドはまた、活性化合物による肝臓の通過を支援し得る。
本テクノロジーの全ての医薬組成物は任意で、一般的な医薬用希釈剤、グリカント(glycant)、滑沢剤、ゼラチンカプセル、防腐剤、着色料等も、その通常の公知のサイズ及び量で含み得る。
D.腸溶コーティング又は保護ビヒクル
幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチド製剤は、製剤を胃プロテアーゼから保護する担体又はビヒクルを含む。芳香族カチオン性ペプチドを胃プロテアーゼから保護し、その後に組成物のその他の成分が腸で放出されるように溶解するいずれの担体又はビヒクルも適切である。
幾つかの実施形態において、芳香族カチオン性ペプチド製剤は、製剤を胃プロテアーゼから保護する担体又はビヒクルを含む。芳香族カチオン性ペプチドを胃プロテアーゼから保護し、その後に組成物のその他の成分が腸で放出されるように溶解するいずれの担体又はビヒクルも適切である。
多くのこのような腸溶コーティングが当該分野で公知であり、また本テクノロジーにおいて有用である。例には、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルエチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシルメチルエチルセルロース及びメタクリル酸/メチルメタクリレートコポリマーが含まれる。幾つかの実施形態においては、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、吸収性向上剤、例えば溶解性及び/又は取り込み向上剤並びにpH低下化合物を十分な粘性の保護シロップに含めることで、保護しながら組成物の成分に胃を通過させる。
芳香族カチオン性ペプチドを胃プロテアーゼから保護するのに適した腸溶コーティングは、例えば、残りの成分をカプセルに充填した後にカプセルに塗布し得る。他の実施形態においては、腸溶コーティングを錠剤の外側に施す又は有効成分の粒子の外面に施してから粒子を錠剤の形態に圧縮する若しくはそれ自体に腸溶コーティングが施されているカプセルに充填する。
本テクノロジーの全成分が可能な限り同時に担体又はビヒクルから放出され、腸環境で可溶化されることが大変望ましい。幾つかの実施形態において、ビヒクル又は担体は、有効成分を、経細胞又は傍細胞輸送を増加させる取り込み向上剤が望ましくない副作用を、同じ取り込み向上剤を後に結腸で放出させる場合より引き起こしにくい小腸で放出する。しかしながら、本テクノロジーは小腸だけでなく結腸でも効果的であると考えられることを強調したい。上述したものに加えて、数多くのビヒクル又は担体が当該分野で公知である。腸溶コーティングの量を少なく維持することが望ましい。幾つかの実施形態において、腸溶コーティングは、医薬組成物の残りの質量に対して30%以下である(「残り」とは、腸溶コーティングを除外した医薬組成物それ自体のことである)。幾つかの実施形態において、腸溶コーティングは、コーティングを施していない組成物の質量の20%未満、特には12〜20%である。腸溶コーティングは、組成物が100回転/分で回転する溶解浴において、0.1NのHCl中での本テクノロジーの医薬組成物の崩壊を少なくとも2時間にわたって防止するのに十分であり、次に医薬組成物の全含有物を、pHが6.3に上昇してから30分以内に完全に放出可能であるべきである。
E.他の実施形態
幾つかの実施形態において、pH低下剤対吸収性向上剤の質量比は、3:1〜20:1、4:1〜12:1又は5:1〜10:1である。ある医薬組成物における全pH低下剤の総質量及び全吸収性向上剤の総質量は、上記の比に含まれる。例えば、医薬組成物が2種のpH低下剤及び3種の吸収性向上剤を含むならば、上記の比を、両方のpH低下剤の合計総質量と3種全ての吸収性向上剤の合計総質量に基づいて算出する。
幾つかの実施形態において、pH低下剤対吸収性向上剤の質量比は、3:1〜20:1、4:1〜12:1又は5:1〜10:1である。ある医薬組成物における全pH低下剤の総質量及び全吸収性向上剤の総質量は、上記の比に含まれる。例えば、医薬組成物が2種のpH低下剤及び3種の吸収性向上剤を含むならば、上記の比を、両方のpH低下剤の合計総質量と3種全ての吸収性向上剤の合計総質量に基づいて算出する。
典型的には、pH低下剤、芳香族カチオン性ペプチド及び吸収性向上剤(各剤が1種の化合物であるか複数種類の化合物であるかは問わない)を、最終医薬品中に均一に分散させるべきである。一実施形態においては、最終医薬品を2つ以上の層を有する積層体の形態で製造し得て、芳香族カチオン性ペプチドを第1層に含有させ、pH低下剤及び吸収性向上剤を、第1層に積層した第2層に含有させる。別の実施形態において、医薬品の組成物は、芳香族カチオン性ペプチド、pH低下剤及び吸収性向上剤を均一に分散させた医薬用結合剤を含む顆粒を含む。顆粒はまた、有機酸の均一な層に取り囲まれた酸性のコア、向上剤の層及び有機酸の外層に取り囲まれたペプチドの層から成り得る。顆粒は、医薬用結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、pH低下剤、吸収性向上剤及び本製剤で使用する本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドから成る水性混合物から調製し得る。
F.製造工程
幾つかの実施形態において、本製剤を以下のようにして製造する。
幾つかの実施形態において、本製剤を以下のようにして製造する。
本製剤の剤形は、幾つかの実施形態において、少なくとも2層の積層体を含む錠剤を含む。本明細書で使用の用語「積層」は、しっかりと合わさった材料の層から構成され、層間の相互作用があったとしてもごくわずかなものとしてのその慣用の意味を有する。第1層の一次成分は、典型的には上述のpH低下剤である。第2層の一次成分は、典型的には芳香族カチオン性ペプチド(又はその薬学的に許容可能な塩、例えばアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩)及び吸収性向上剤である。後述のやり方で合わせると、これらの構成要素は、少なくとも2層を有する錠剤を形成する。層は隣り合って位置し得て、例えば最終医薬品の一番上に第1層、底部に第2層がくる。あるいは、第1層は第2層内に、すなわち第2層に取り囲まれて位置し得る。2層の錠剤は製造しやすいものの、第2層が実質的にペプチドから構成され、第3層が界面活性剤から構成される3層以上を有することも可能である。
第1層は、少なくとも1種のpH低下剤を造粒して第1層材料を調製することで形成される。pH低下剤としてクエン酸を使用し得るものの、クエン酸単独では、典型的には、必要とされる圧縮特性を示さない。したがって、造粒中及び造粒後、他の材料をpH低下剤に添加することによってその機械的性質を改善し得る。具体的には、流動層での造粒中、フィラー材料(例えば、微結晶性セルロース)及びポビドン結合剤を、当該分野で周知の量で添加し得る。次に、得られた顆粒を乾燥させ、任意で当業者には周知のやり方で微粉砕機によりサイズを整える。加えて、顆粒をグライダント及び滑沢剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム)と上述したように合わせることで更に顆粒の圧縮性及び流動性を改善して第1層材料を調製し得る。
第2層材料は、ペプチドと少なくとも1種の吸収性向上剤(すなわち、界面活性剤)とを組み合わせることで調製する。第2層も流動層で形成し得る。ペプチドは少量でも比較的高い生物活性を示すことから、芳香族カチオン性ペプチド及び結合剤(例えば、ポビドン)を界面活性剤又は少なくとも1種の賦形剤と界面活性剤との混合物上に噴霧することで第2層を形成する。上述したように、界面活性剤は典型的にはアシル−カルニチンであり、本製剤においてはラウロイル1−カルニチンである。任意の賦形剤は、典型的には、当業者なら理解できるように、層間を適切に接着するのに十分な量のフィラー、例えば微結晶性セルロースを含む。得られた顆粒を次に乾燥させ、任意で当業者には周知のやり方で微粉砕機によりサイズを整える。最後に、顆粒を任意でブレンダに移し、顆粒を任意で崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)又は1種以上の他の適切な崩壊剤と、顆粒の質量の最高約10.0%、最適には約2.0質量%の量でブレンドする。任意ではあるが、崩壊剤は、pH低下剤の放出とほぼ同時の芳香族カチオン性ペプチドのより完全な放出を促進することでペプチドのバイオアベイラビリティを向上させると考えられる。
また、他の滑沢剤及び添加剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸)及び他の賦形剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素、ポビドン)を当該分野で公知のやり方で添加して第2層材料の性質を改善し得る。
次に、第1層材料の一部を標準的な2層打錠機に送り、ダイ又は型に充填する。次に、第1層材料を部分的に圧縮して第1層を形成する。この部分圧縮は、典型的には、第2層材料をダイに入れた際に第1層材料と第2層材料とが実質的に混ざるのを防止するために必要である。第1層材料の部分圧縮に続いて、次に第2層材料を、第1層の入ったダイに加える。次に、第1及び第2層材料を一緒に圧縮することで2層を有する錠剤を形成する。
典型的には、第1層材料は、最終的な錠剤の総質量の約50〜90%を構成する。最適には、第1層材料は、錠剤の総質量の約70%を構成する。第2層材料は、典型的には最終的な錠剤の総質量の約50〜10%を構成する。最適には、第2層材料は、最終的な錠剤の総質量の約30%を構成する。
第1層材料は事前に部分的に層状に圧縮されているため、第1層材料との第2層材料の実質的な混合は回避される。本製剤の2層構造は、実質的にpH低下剤とペプチド及び界面活性剤との接触を防止する。具体的には、2つの層の界面において、典型的には、0.1%未満の本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドがpH低下剤と接触する。
代替の実施形態において、本テクノロジーの最終医薬品は、0.001mg〜約1mgの芳香族カチオン性ペプチド、約0.1mg〜約0.5mg又は約0.25mgの芳香族カチオン性ペプチド、400mgの顆粒状クエン酸(例えば、Archer Daniels Midland社から入手可能)、50mgのタウロデオキシコール酸(例えば、SIGMA社から入手可能)及び50mgのラウロイルカルニチン(SIGMA社)を充填したサイズ00のカプセルを含み得る。全成分はゼラチンカプセルへの最終的な挿入に適しており、任意で、いずれの順番でもブレンダに投入し得る粉末である。その後、幾つかの実施形態においては、ブレンダを、粉末が完全に混ざるまで約5分間にわたって作動させる。次に、混ぜ合わせた粉末をゼラチンカプセルのボディに充填する。次にカプセルのキャップをかぶせ、カプセルをパチンと嵌める。
本製剤で得られるバイオアベイラビリティは高いことから、本テクノロジーの医薬品調製においては、芳香族カチオン性ペプチド(例えば、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2、D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2、カルシトニン、PTH、バソプレシン、DALDA、DMT−DALDA、インスリン等)の濃度を比較的低く維持し得る。具体的な例示的製剤を、後出の実施例に記載する。
幾つかの実施形態において、本製剤は以下のようにして製造される。
幾つかの実施形態において、本テクノロジーの医薬組成物は、0.25mgの芳香族カチオン性ペプチド、400mgの顆粒状クエン酸(例えば、Archer Daniels Midland社から入手可能)及び50mgのラウロイルカルニチン(SIGMA社)を充填したサイズ00のゼラチン又はHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)のカプセルを含む。
全成分がゼラチン又はHPMCカプセルへの最終的な挿入向けであり、またいずれの順番でもブレンダに投入し得る粉末である。その後、ブレンダを、粉末が完全に混ざるまで約5分間にわたって作動させる。次に、混ぜ合わせた粉末をゼラチンカプセルのボディに充填する。次にカプセルのキャップをかぶせ、カプセルをパチンと嵌める。500個以上のこのようなカプセルをコーティング装置(例えば、Vector LDCS 20/30 Laboratory Development Coating System(アイオワ州マリオンのVector社から入手可能))に投入し得る。
腸溶コーティング溶液は以下のようにして調製する。500グラムのEUDRAGIT L30 D−55(メタクリル酸メチルエステルとのメタクリル酸コポリマー。マサチューセッツ州メイデンのROHM Pharma Polymers社から入手可能な腸溶コーティング)を秤量する。411グラムの蒸留水、15グラムのクエン酸トリエチル及び38グラムのタルクを添加する。この量のコーティングは、約500個のサイズ00のカプセルのコーティングに十分である。
カプセルを秤量し、コーティング機のドラムに入れる。コーティング機を作動させ、(この段階でカプセルが入っている)ドラムを24〜28rpmで回転させる。入り口側の噴霧器の温度は約45℃になり得る。排出側温度は約30℃になり得る。無コーティングカプセルの温度は約25℃になり得る。空気流は、1分間あたり約38立方フィートになり得る。
次に、コーティング機の管を、上述した通りに調製したコーティング溶液に挿入する。次に、溶液をコーティング装置に送るためにポンプを作動させ、コーティングが自動的に進行する。コーティング量が十分か否かを判断するために、このコーティング機はいつでも停止させてカプセルを秤量することができる。通常、コーティングは60分間にわたって行われる。次にポンプを約5分間にわたって停止させ、その間、コーティングが施されたカプセルの乾燥を支援するためにコーティング機は依然として作動している。次に、コーティング機を停止させることができ、カプセルのコーティングが完了する。ただし、カプセルを約2日間にわたって空気乾燥させることが推奨される。
本テクノロジーで得られるバイオアベイラビリティは高いことから、本開示の医薬品調製においては、芳香族カチオン性ペプチド成分の濃度を比較的低く維持し得る。本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを組み入れた具体的な例示的製剤について後述する。
III.酵素切断トランスロケータを用いたペプチドの経口送達
開示の方法では、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドでの処置を必要とする患者に、その経口医薬組成物を与える。幾つかの実施形態において、この組成物は、製薬業界における通常のサイズの錠剤又はカプセル形態である。医薬品の投与量及び投与頻度については以下でより詳細に論じる。この医薬品が有益となり得る患者は、ペプチド含有化合物のレベル上昇にプラスに応答する障害を患っている人達である。
開示の方法では、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドでの処置を必要とする患者に、その経口医薬組成物を与える。幾つかの実施形態において、この組成物は、製薬業界における通常のサイズの錠剤又はカプセル形態である。医薬品の投与量及び投与頻度については以下でより詳細に論じる。この医薬品が有益となり得る患者は、ペプチド含有化合物のレベル上昇にプラスに応答する障害を患っている人達である。
本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドは、本方法に従って経口的に投与すると、コントロールより高いバイオアベイラビリティを示す。経口製剤において、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは、本明細書で開示の方法に従って膜トランスロケータ(MT)に連結させると、大幅に上昇する。
理論で縛ることを意図するものではないが、本開示の医薬組成物は、バイオアベイラビリティにとっての一連の様々な、互いに関連のない天然の障壁を克服すると考えられる。本医薬組成物の様々な成分がそれぞれに適したメカニズムでもって様々な障壁を克服するように働き、結果的にペプチド有効成分のバイオアベイラビリティに対する相乗効果がもたらされる。
芳香族カチオン性ペプチドは、経口的に投与し得る。本方法において、腸の管腔を越える融合ペプチドの膜透過性を向上させ且つ向上したバイオアベイラビリティをもたらす少なくとも1種のMT又は少なくとも2種のMTの存在。活性ペプチドへのMTの連結は血中又はリンパ系中の酵素で切断できることから、活性ペプチドは遊離し、その標的に到達する。
また、本方法では、ペプチド及び膜トランスロケータの胃酵素(その殆どは酸性pH範囲で活性である)及び腸又は膵臓プロテアーゼ(その殆どは中性〜塩基性pH範囲において活性である)によるタンパク質分解が減少する。
ここでもまた、理論で縛ることを意図するものではないが、本方法においては、ペプチドが、芳香族カチオン性ペプチド又は他のペプチドとそれを分解可能な胃プロテアーゼとの接触を実質的に防止するための適切な耐酸性保護ビヒクルの保護下で胃内を輸送されるように見える。医薬組成物が一旦胃を通過して塩基性〜中性pHが優勢であり且つプロテアーゼの最適なpHが塩基性〜中性となる傾向がある腸領域に進入すると、腸溶コーティング又は他のビヒクルがペプチド及び酸又はプロテアーゼ阻害剤を(互いに近接させて)放出する。
酸は、芳香族カチオン性ペプチドを放出させた場所である腸の局所的pHを、多くの腸プロテアーゼ及び他の腸酵素にとって最適な範囲より低いレベルにまで低下させると考えられる。pHにおけるこの低下によって腸プロテアーゼのタンパク質分解活性が低下し、その結果、起こり得る分解からペプチド及び膜トランスロケータが保護される。これらのプロテアーゼの活性は、組成物によってもたらされる一時的な酸性環境により低下する。本方法では、腸の局所的pHが一時的に5.5以下、4.7以下又は3.5以下まで低下するような十分な酸を供給する。後述する(「pH低下剤」という見出しがついたセクションの)炭酸水素ナトリウム試験が、必要な酸の量を示してくれる。低下した腸のpHの状態は、芳香族カチオン性ペプチドの少なくとも一部が腸壁を越えて血流に入り込む機会が得られるまで芳香族カチオン性ペプチド及び膜トランスロケータをタンパク質分解から保護するのに十分な時間にわたって持続する。サケカルシトニンの場合、有効成分を直接ラットの十二指腸、腸骨又は結腸に注入すると、サケカルシトニンの血中レベルはT最大5〜15分であると実験により実証されている。
あるいは、プロテアーゼ阻害剤は、腸プロテアーゼのタンパク質分解活性を低下させることでペプチド及び膜トランスロケータを起こり得る早すぎる分解から保護すると考えられる。
本開示の組成物は任意で吸収性向上剤を含有することができる。本開示の吸収性向上剤は、ペプチドの血中への吸収を相乗的に促進し、その間、タンパク質分解活性が低下した状態は続く。
医薬組成物の有効成分を一緒に可能な限り同時に放出することが、目標とするバイオアベイラビリティの向上を達成すると考えられるメカニズムの助けとなる。本方法において、腸溶コーティングは、胃プロテアーゼから保護が得られる可能な限り少ない体積に維持される。したがって、腸溶コーティングは、ペプチドの放出又はペプチドと時間的に近接した他の成分の放出を阻害しにくい。腸溶コーティングは通常、医薬組成物の残り(すなわち、腸溶コーティングを除外した組成物の残りの成分)の質量に対して30%未満であるべきである。幾つかの実施形態において、腸溶コーティングは20%未満である。幾つかの実施形態において、腸溶コーティングは、コーティングを施していない成分の質量の10〜20%である。
(以下でより詳細に説明するような)溶解性向上剤及び/又は輸送促進剤になり得る吸収性向上剤は、腸から血中への芳香族カチオン性ペプチドの輸送を支援し、またこの過程が腸のpHが低下し、腸でのタンパク質分解活性が低下している間に起きるようにこの過程を促進し得る。多くの界面活性剤が、溶解性向上剤兼輸送(取り込み)向上剤として作用し得る。ここでもまた理論で縛ることを意図するものではないが、溶解性を向上させると、(1)本方法の有効成分が腸の水分を含んだ部位により高い同時性でもって放出され、(2)腸壁に沿った粘液層におけるペプチドの溶解性及び粘液層を通っての輸送がより良好なものとなると考えられる。ペプチド有効成分が一旦腸壁に達すると、取り込み向上剤により腸の刷子縁膜から血中への、経細胞輸送又は傍細胞輸送による輸送が良好なものとなる。以下でより詳細に論じるように、両方の機能を果たし得る化合物もある。そのような例において、これらの機能の両方を利用した実施形態は、たった1種の追加化合物を医薬組成物に添加することでそれを行い得る。他の実施形態においては、別の吸収性向上剤がこれら2つの機能を別々に果たし得る。
本開示の医薬組成物の各成分については別々に後述する。複数のpH低下剤又は複数の向上剤の組み合わせを用いることも、たった一種のpH低下剤及び/又は向上剤を用いることもできる。
A.ペプチド有効成分
本方法による、経口送達が有益となり得るペプチド有効成分には、生理学的に活性であり且つその分子構造中に複数のアミノ酸及び少なくとも1つのペプチド結合を有する治療薬が含まれる。これらのペプチド有効成分は、腸からのその吸収を促進するためにMT配列に連結される。吸収される前に胃及び腸においてプロテアーゼによって切断されてしまわないように、MTを保護しなくてはならない。しかしながら、一旦吸収されたならば、活性ペプチドを解放するために、MTは、プロテアーゼにより少なくとも部分的に除去可能であるべきである。
本方法による、経口送達が有益となり得るペプチド有効成分には、生理学的に活性であり且つその分子構造中に複数のアミノ酸及び少なくとも1つのペプチド結合を有する治療薬が含まれる。これらのペプチド有効成分は、腸からのその吸収を促進するためにMT配列に連結される。吸収される前に胃及び腸においてプロテアーゼによって切断されてしまわないように、MTを保護しなくてはならない。しかしながら、一旦吸収されたならば、活性ペプチドを解放するために、MTは、プロテアーゼにより少なくとも部分的に除去可能であるべきである。
MTは、アミノ酸配列、例えばシグナルペプチド又はシグナル配列を含むことができる。本明細書で使用の「シグナルペプチド」とは、概して長さが約10〜約50以上のアミノ酸残基であるが必ずしもそうではないアミノ酸配列であり、その残基の多く(典型的には、55〜60%)は疎水性であり、疎水性で脂溶性の部位を有する。この疎水性部位はシグナルペプチドの共通主要モチーフであり、細胞から分泌されるタンパク質のシグナルペプチドの中心部であることが多い。シグナルペプチドは細胞膜を通り抜けて細胞タンパク質を移出させることができるペプチドである。本明細書からわかるように、本方法のシグナルペプチドは「移入コンピテント(importation competent)」でもあり、すなわち細胞の外から細胞の内側へと細胞膜と通り抜けることが可能である。修飾がこのペプチドの移動仲介機能に影響しない限り、アミノ酸残基を変異及び/又は修飾することができる(すなわち、ミメティックを形成する)。このため、用語「ペプチド」はミメティックを含み、また用語「アミノ酸」は、本明細書で使用されるように、修飾アミノ酸、異常アミノ酸及びD型アミノ酸を含む。本方法がその範囲に含む全ての移入コンピテントシグナルペプチドが、細胞外から細胞内部への細胞膜を越えての移動を仲介する機能を有する。また、細胞から外部環境へのタンパク質の移出を可能にする能力も持ち続け得る。推定シグナルペプチドを、選択した細胞タイプに対する特異性について試験することも含め、本明細書に記載の教示に従ってその移入活性について容易に試験することができる。表1にアミノ酸配列を例示する。各配列はMTとして使用することができる。
(0122) MTはまた、脂肪酸及び/又は胆汁酸を含むことができる。このような分子は、使用時に、血漿中のプロテアーゼによる切断に曝されるアミノ酸ブリッジによって活性ペプチドに連結される。あるいは、MTを非ペプチジル結合により活性ペプチドに連結することができ、この場合、この結合を切断する生体内酵素は、プロテアーゼ以外の酵素になり得る。アミノ酸ブリッジは、少なくとも1種の血漿プロテアーゼで切断するための標的でなくてはならない。血漿プロテアーゼ及びその標的配列は当該分野で周知である。表2にこれらの酵素及びその特異的標的の一部を挙げる。
(0123) 本方法は、幾つかのメカニズムにより、そのままでは有効成分のペプチド結合の1つ以上を切断する傾向があるプロテアーゼによる、MTに連結された有効成分の分解を抑制する。有効成分の分子構造は更に、他の置換又は修飾を含み得る。例えば、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドをC末端でアミド化することができる。合成及び天然の両方のペプチドを、本方法に従って経口送達することができる。
(0124) 本開示のペプチド活性化合物には、以下に限定するものではないが、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、またインスリン、バソプレシン、カルシトニン等のポリペプチドが含まれる。他の例には、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、副甲状腺ホルモン、黄体化ホルモン放出因子、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベータ、ヒト成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、各種インターロイキン、エンケファリン、グルカゴン様ペプチド1及びこれらの全ての類似体が含まれる。その他多くが当該分野で公知である。胃腸管で切断される可能性のあるペプチド結合を有する医薬化合物ならば、腸からのそのような化合物の吸収の増加及び本方法によってもたらされるそのような切断の減少により、本方法による経口送達の恩恵を受け得ると予測される。
(0125) 本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを使用する場合、芳香族カチオン性ペプチドは、医薬組成物全体(腸溶コーティングは除外する)の総質量の0.02〜0.2質量%を占め得る。他のペプチドは、活性化合物の望ましい標的血中濃度及び本方法の経口送達系におけるそのバイオアベイラビリティに応じてこれより高い又は低い濃度で存在し得る。
(0126) 本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドは、当該分野で公知の化学的又は組み換え合成により作り出し得る。他のアミド化ペプチドの前駆体は同様のやり方で作り出し得る。組み換えによる製造のほうが費用効率が極めて高いと考えられている。例えば、酵素アミド化は、米国特許第4708934号明細書及び欧州特許出願公開第0308067号及び第0382403号明細書に記載されている。組み換えによる製造は、前駆体及び前駆体の最終生成物への変換を触媒する酵素の両方に用い得る。このような組み換えによる製造は、Biotechnology,Vol.11(1993)pp.64−70で論じられていて、この文献には前駆体のアミド化生成物への変換も記載されている。
(0127) MTの活性ペプチド成分への連結も、当該分野で公知の化学的又は組み換え合成により行い得る。本明細書で使用の用語「連結(linking)」とは、生物学的に活性なペプチドをMTと、MTが細胞膜を越える際に活性ペプチドも細胞膜を越えて移入されるように結びつけることを意味する。連結のこのような意味の例には以下が含まれる:(A)MTを活性ペプチドにペプチド結合により連結する、すなわち2つのペプチド(MTのペプチド部分及び活性ペプチド)を隣接させて合成することができる、(B)MTを非ペプチド共有結合により活性ペプチドに連結する(例えば、シグナルペプチドをタンパク質に架橋試薬を用いて共役させる)、(C)化学ライゲーション法を用いてシグナルペプチド等のMTのカルボキシ末端アミノ酸と活性ペプチドとの間に共有結合を作り出すことができる。
(0128) 方法(A)の例を以下に示す。この方法ではペプチドを、当該分野で公知の標準的な手段で合成し(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154,1963及びLin et al.,Biochemistry 27:5640−5645,1988)、ペプチドはアミノ末端側から直線順序でシグナルペプチド配列(MT)、血漿プロテアーゼで切断できるアミノ酸配列及び生物学的に活性なアミノ酸配列を含有する。このようなペプチドは組み換えDNA技法で作り出すこともでき、ペプチドを作り出すために上記のアミノ酸をコードしている組み換えコンストラクトから発現させる(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)。
(0129) 方法(B)の場合、上と同様に、ペプチド結合を利用することも、あるいは非ペプチド共有結合を用いてMTを生物学的に活性なペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に連結することができる。この非ペプチド共有結合は当該分野で標準的な方法で形成することができ、例えばMTをペプチド、ポリペプチド又はタンパク質と架橋試薬、例えばグルタルアルデヒドで共役させる。このような方法は当該分野で標準的である(Walter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:5197;1980)。
(0130) 方法(C)の場合、シグナルペプチドのカルボキシ末端アミノ酸と相互作用する化学的架橋剤を使用する等の標準的な化学ライゲーション法を利用することができる。このような方法は当該分野で標準的であり(Goodfriend et al.,Science 143:1344;1964。水溶性カルボジイミドをライゲーション試薬として使用する)、またシグナルペプチドのカルボキシ末端を選択された生物学的に活性な分子に容易に連結することができる。
(0131) B.pH低下剤及びプロテアーゼ阻害剤
芳香族カチオン性ペプチドの投与毎に投与するpH低下化合物の総量は、腸内に放出された際に、局所的な腸のpHを、実質的にその場所で見られるプロテアーゼにとって最適なpHより低くなるように低下させるのに十分な量になり得る。必要な量は必然的に、使用するpH低下剤のタイプ(後述する)及びあるpH低下剤で得られるプロトンの当量を含めた幾つかの要素に応じて変化する。実際には、良好なバイオアベイラビリティを得るのに必要な量は、10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム溶液に添加した場合に、その炭酸水素ナトリウム溶液のpHを5.5以下、4.7以下又は3.5以下にまで低下させる量である。上記の試験においては、pHを約2.8にまで低下させるのに十分な酸を幾つかの実施形態において使用していたかもしれない。幾つかの実施形態においては、少なくとも300ミリグラム又は少なくとも400ミリグラムのpH低下剤を、本方法の医薬組成物において使用する。上記の値は、2種以上のこのような剤を組み合わせて使用する場合の全てのpH低下剤の合計総質量である。経口製剤は、pH低下化合物と共に放出された場合に上記の炭酸水素ナトリウム試験のpHが5.5以下に低下するのを妨げる量の塩基を含むべきではない。
芳香族カチオン性ペプチドの投与毎に投与するpH低下化合物の総量は、腸内に放出された際に、局所的な腸のpHを、実質的にその場所で見られるプロテアーゼにとって最適なpHより低くなるように低下させるのに十分な量になり得る。必要な量は必然的に、使用するpH低下剤のタイプ(後述する)及びあるpH低下剤で得られるプロトンの当量を含めた幾つかの要素に応じて変化する。実際には、良好なバイオアベイラビリティを得るのに必要な量は、10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム溶液に添加した場合に、その炭酸水素ナトリウム溶液のpHを5.5以下、4.7以下又は3.5以下にまで低下させる量である。上記の試験においては、pHを約2.8にまで低下させるのに十分な酸を幾つかの実施形態において使用していたかもしれない。幾つかの実施形態においては、少なくとも300ミリグラム又は少なくとも400ミリグラムのpH低下剤を、本方法の医薬組成物において使用する。上記の値は、2種以上のこのような剤を組み合わせて使用する場合の全てのpH低下剤の合計総質量である。経口製剤は、pH低下化合物と共に放出された場合に上記の炭酸水素ナトリウム試験のpHが5.5以下に低下するのを妨げる量の塩基を含むべきではない。
(0132) 本方法のpH低下剤は、胃腸管において有毒ではなく且つ水素イオンを送達可能な(伝統的な酸)又は局所環境から高い水素イオン量を引き出すことが可能ないずれの薬学的に許容可能な化合物にもなり得る。pH低下剤は、このような化合物のいずれの組み合わせにもなり得る。幾つかの実施形態において、本方法で使用の少なくとも1種のpH低下剤は、4.2以下又は3.0以下のpKaを有する。幾つかの実施形態において、pH低下剤は、室温の水100ミリリットルあたり少なくとも30グラムである水への溶解度を有する。
(0133) 高い水素イオン量をもたらす化合物の例には、塩化アルミニウム及び塩化亜鉛が含まれる。薬学的に許容可能な伝統的な酸には、以下に限定するものではないが、アミノ酸の酸性塩(例えば、アミノ酸塩酸塩)又はその誘導体が含まれる。これらの例は、アセチルグルタミン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、ベタイン、カルニチン、カルノシン、シトルリン、クレアチン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、ヒドロキシプロリン、ヒポタウリン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチルヒスチジン、ノルロイシン、オルニチン、フェニルアラニン、プロリン、サルコシン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン及びバリンの酸性塩である。幾つかの実施形態において、医薬製剤はアセテート塩又はトリフルオロアセテート塩を含む。
(0134) 有用なpH低下化合物の他の例には、カルボン酸、例えばアセチルサリチル酸、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、フマル酸、グルクロン酸、グルタル酸、グリセリン酸、グリコール酸、グリオキシル酸、イソクエン酸、イソ吉草酸、乳酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、オキサロコハク酸、プロピオン酸、ピルビン酸、コハク酸、酒石酸、吉草酸等が含まれる。
(0135) 当該分野において通常は「酸」と称されないであろうものの本方法において有用となり得る他の有用なpH低下剤は、ホスフェートエステル(例えば、フルクトース1,6ジホスフェート、グルコース1,6ジホスフェート、ホスホグリセリン酸、ジホスホグリセリン酸)である。CARBOPOL(BF Goodrich社の商標)及びポリカルボフィル等のポリマーもpHを低下させるのに使用し得る。
(0136) 上述の炭酸水素ナトリウム試験において必要とされる5.5以下のpHレベルを達成するいずれの組み合わせのpH低下剤も使用し得る。一実施形態においては、医薬組成物のpH低下剤の少なくとも1つとして、クエン酸、酒石酸及びアミノ酸の酸性塩から成る群から選択される酸を利用する。
(0137) 本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを使用する場合、特定のpH低下剤対ペプチド比が特に効果的であると証明されている。幾つかの実施形態において、pH低下剤の本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドに対する質量比は、200:1、800:1又は2000:1を超える。
(0138) pH低下剤の使用に代わる又はpH低下剤の使用を補佐するものは、プロテアーゼ阻害剤、特には腸プロテアーゼの阻害剤の使用である。表3に、公知の腸プロテアーゼの一部を挙げる。
(0139) C.任意の吸収性向上剤
使用時、吸収性向上剤は、医薬組成物の総質量(腸溶コーティングを除外する)に対して0.1〜20.0質量%を構成する量で存在し得る。例示的な吸収性向上剤は、溶解性向上剤兼取り込み向上剤として働く界面活性剤である。概して、「溶解性向上剤」は、本方法の成分の、これらの成分を最初に放出する水性環境又は腸壁の内側を覆う粘液層の脂溶性環境又はこれらの両方での可溶化能を改善する。「輸送(取り込み)向上剤」(溶解性向上剤として使用する界面活性剤と同じものであることが多い)は、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドによる腸壁の越え易さを促進するものである。
使用時、吸収性向上剤は、医薬組成物の総質量(腸溶コーティングを除外する)に対して0.1〜20.0質量%を構成する量で存在し得る。例示的な吸収性向上剤は、溶解性向上剤兼取り込み向上剤として働く界面活性剤である。概して、「溶解性向上剤」は、本方法の成分の、これらの成分を最初に放出する水性環境又は腸壁の内側を覆う粘液層の脂溶性環境又はこれらの両方での可溶化能を改善する。「輸送(取り込み)向上剤」(溶解性向上剤として使用する界面活性剤と同じものであることが多い)は、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドによる腸壁の越え易さを促進するものである。
(0140) 本方法の範囲内で、1種以上の吸収性向上剤は一方の機能(例えば、溶解性)だけを果たし得て、あるいは1種以上の吸収性向上剤はもう一方の機能(例えば、取り込み)だけを果たし得る。幾つかの化合物の混合物とすることも可能であり、化合物の幾つかがより高い溶解性を付与し、幾つかがより良好な取り込みをもたらし及び/又は幾つかがその両方をもたらす。理論で縛ることを意図するものではないが、取り込み向上剤は、(1)腸細胞の外にある膜の疎水性領域の乱れを大きくして経細胞輸送を増加させる又は(2)膜タンパク質を浸出させることで経細胞輸送を増加させる又は(3)傍細胞輸送を増加させるために細胞間のポア半径を拡張することで作用すると考えられる。
(0141) 界面活性剤は、溶解性向上剤及び取り込み向上剤の両方として有用であると考えられる。例えば、洗浄剤は、(1)全有効成分を、これらの成分が最初に放出される水性環境中に迅速に溶解させる、(2)本方法の成分、特には芳香族カチオン性ペプチドの脂溶性を向上させることで、これらの成分の腸粘液への進入及び通過を支援する、(3)通常は極性がある芳香族カチオン性ペプチドが刷子縁膜の上皮バリアを越える能力を向上させる及び(4)上述したような経細胞又は傍細胞輸送を増加させるにあたって有用である。
(0142) 界面活性剤を吸収性向上剤として使用する場合、界面活性剤は、製造工程中の混合及びカプセルへの充填を円滑に行うために流動性がある粉末である。本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド及び他のペプチド固有の特性(例えば、等電点、分子量、アミノ酸組成等)により、特定の界面活性剤は特定のペプチドと最もよく相互作用する。実際、望ましくないことに、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの帯電した部位と相互作用してその吸収を阻み、その結果、不本意にもバイオアベイラビリティの低下を招くものもある。本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド又は他のペプチドのバイオアベイラビリティを上昇させようとする場合、吸収性向上剤は、(i)コレステロール誘導体であるアニオン性界面活性剤(例えば、胆汁酸)、(ii)カチオン性界面活性剤(例えば、アシルカルニチン、リン脂質等)、(iii)非イオン性界面活性剤及び(iv)アニオン性界面活性剤(特には、直鎖炭化水素領域を有するもの)と負電荷中和剤との混合物から成る群から選択され得る。負電荷中和剤には、以下に限定するものではないが、アシルカルニチン、セチルピリジニウムクロリド等が含まれる。吸収性向上剤は、酸性pH、特には3.0〜5.0の範囲で可溶性になり得る。
(0143) 一実施形態では、カチオン性界面活性剤とコレステロール誘導体であるアニオン性界面活性剤との混合物を使用し、両者は酸性pHで可溶性である。
(0144) 一実施形態では、酸可溶性の胆汁酸をカチオン性界面活性剤と共に使用する。アシルカルニチン及びスクロースエステルが良い組み合わせである。特定の吸収性向上剤を単独で使用する場合、この吸収性向上剤はカチオン性界面活性剤になり得る。アシルカルニチン(例えば、ラウロイルカルニチン)、リン脂質及び胆汁酸、特にアシルカルニチンが特に良い吸収性向上剤である。幾つかの実施形態においては、コレステロール誘導体であるアニオン性界面活性剤も使用される。本方法により、血中へのその吸収を妨げる芳香族カチオン性ペプチドが回避される。
(0145) 副作用の可能性を低下させるために、吸収性向上剤として使用する洗浄剤は生分解性又は再吸収性である(例えば、生物学的に再利用可能な化合物、例えば胆汁酸、リン脂質及び/又はアシルカルニチン)。アシルカルニチンは、傍細胞輸送の増加に特に有用であると考えられる。胆汁酸(又は直鎖炭化水素を欠いた別のアニオン洗浄剤)をカチオン洗浄剤と組み合わせて使用する場合、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの腸壁への及び腸壁を通っての輸送は共により良好なものとなる。
(0146) 例示的な吸収性向上剤には、以下に限定するものではないが、(a)サリチレート、例えばサリチル酸ナトリウム、3−メトキシサリチレート、5−メトキシサリチレート及びホモバニレート、(b)胆汁酸、例えばタウロコール酸、タウロデオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、グリコール酸、リトコレート、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、ウルソコール酸、デヒドロコール酸、フシジン酸等、(c)非イオン性界面活性剤、例えばポリオキシエチレンエーテル(例えば、Brij 36T、Brij 52、Brij 56、Brij 76、Brij 96、Texaphor A6、Texaphor A14、Texaphor A60等)、p−t−オクチルフェノールポリオキシエチレン(Triton X−45、Triton X−100、Triton X−114、Triton X−305等)ノニルフェノキシポリオキシエチレン(例えば、Igepal COシリーズ)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween−20、Tween−80等)、(d)アニオン性界面活性剤、例えばジオクチルナトリウムスルホスクシネート、(e)リゾリン脂質、例えばリゾレシチン及びリゾホスファチジルエタノールアミン、(f)アシルカルニチン、アシルコリン及びアシルアミノ酸、例えばラウロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、ラウロイルコリン、ミリストイルコリン、パルミトイルコリン、ヘキサデシルリジン、N−アシルフェニルアラニン、N−アシルグリシン等、(g)水溶性リン脂質、(h)中鎖脂肪酸(カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸)を含むモノ−、ジ−及びトリ−グリセリドの混合物である中鎖グリセリド、(i)エチレンジアミンテトラ酢酸、(j)カチオン性界面活性剤、例えばセチルピリジニウムクロリド、(k)ポリエチレングリコールの脂肪酸誘導体、例えばLabrasol、Labrafac等並びに(l)アルキルサッカライド、例えばラウリルマルトシド、ラウロイルスクロース、ミリストイルスクロース、パルミトイルスクロース等が含まれる。
(0147) 幾つかの実施形態においては、カチオンイオン交換剤(例えば、洗浄剤)を含めることで、別の考えられ得るメカニズムにより溶解性を向上させる。特に、カチオンイオン交換剤は、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド又は他のペプチドの粘液への結合を妨げ得る。例示的なカチオンイオン交換剤には、以下に限定するものではないが、プロタミンクロリド又は他のポリカチオンが含まれる。
(0148) D.他の任意の成分
幾つかの実施形態においては、水溶性のバリアが、プロテアーゼ阻害剤及び/又はpH低下剤と耐酸性保護ビヒクルとの間を隔てる。慣用の医薬用カプセルは、このバリアを設けることを目的として使用することができる。多くの水溶性のバリアが当該分野で公知であり、以下に限定するものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び慣用の医薬用ゼラチンが含まれる。
幾つかの実施形態においては、水溶性のバリアが、プロテアーゼ阻害剤及び/又はpH低下剤と耐酸性保護ビヒクルとの間を隔てる。慣用の医薬用カプセルは、このバリアを設けることを目的として使用することができる。多くの水溶性のバリアが当該分野で公知であり、以下に限定するものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び慣用の医薬用ゼラチンが含まれる。
(0149) 幾つかの実施形態においては、別のペプチド(例えば、アルブミン、カゼイン、大豆タンパク質、他の動物性又は植物性タンパク質等)を含めることで非特異的な吸着を低下(例えば、腸粘液バリアへのペプチドの結合)させ、これによって芳香族カチオン性ペプチドの必要濃度を低下させる。添加する場合、このペプチドは、医薬組成物全体の質量(保護ビヒクルを除外する)に対して1.0〜10.0質量%となり得る。この第2ペプチドは生理学的に活性ではなく、また大豆ペプチド等の食品ペプチドを含み得る。理論で縛ることを意図するものではないが、この第2ペプチドはまた、プロテアーゼの相互作用に関して望ましくも芳香族カチオン性ペプチドと競合するプロテアーゼスカベンジャーとして作用することでバイオアベイラビリティを上昇させ得る。この第2ペプチドはまた、活性化合物による肝臓の通過を支援し得る。
(0150) 本開示の全ての医薬組成物は任意で、一般的な医薬用希釈剤、グライデント(glident)、滑沢剤、ゼラチンカプセル、防腐剤、着色料等も、その通常の公知のサイズ及び量で含み得る。
(0151)E.保護ビヒクル
芳香族カチオン性ペプチドを胃プロテアーゼから保護し、その後に本方法のその他の成分が腸で放出されるように溶解するいずれの担体又はビヒクルも適切である。多くのこのような腸溶コーティングが当該分野で公知であり、また本方法において有用である。例には、以下に限定するものではないが、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルエチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシルメチルエチルセルロース及びメタクリル酸/メチルメタクリレートコポリマーが含まれる。幾つかの実施形態においては、活性ペプチド、吸収性向上剤、例えば溶解性及び/又は取り込み向上剤並びにpH低下化合物を十分な粘性の保護シロップに含めることで、保護しながら本方法の成分に胃を通過させる。
芳香族カチオン性ペプチドを胃プロテアーゼから保護し、その後に本方法のその他の成分が腸で放出されるように溶解するいずれの担体又はビヒクルも適切である。多くのこのような腸溶コーティングが当該分野で公知であり、また本方法において有用である。例には、以下に限定するものではないが、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルエチルセルローススクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシルメチルエチルセルロース及びメタクリル酸/メチルメタクリレートコポリマーが含まれる。幾つかの実施形態においては、活性ペプチド、吸収性向上剤、例えば溶解性及び/又は取り込み向上剤並びにpH低下化合物を十分な粘性の保護シロップに含めることで、保護しながら本方法の成分に胃を通過させる。
(0152) 芳香族カチオン性ペプチドを胃プロテアーゼから保護するのに適した腸溶コーティングは、例えば、組成物の残りの成分をカプセルに充填した後にカプセルに塗布し得る。他の実施形態においては、腸溶コーティングを錠剤の外側に施す又は有効成分の粒子の外面に施してから、粒子を錠剤の形態に圧縮する若しくはそれ自体に腸溶コーティングが施されているカプセルに充填する。
(0153) 組成物の全成分が可能な限り同時に担体又はビヒクルから放出され、腸環境で可溶化されることが大変望ましい。幾つかの実施形態において、ビヒクル又は担体は、有効成分を、経細胞又は傍細胞輸送を増加させる取り込み向上剤が望ましくない副作用を、同じ取り込み向上剤を後に結腸で放出させる場合より引き起こしにくい小腸で放出する。しかしながら、本方法は小腸だけでなく結腸でも効果的であると考えられることを強調したい。上述したものに加えて、数多くのビヒクル又は担体が当該分野で公知である。腸溶コーティングの量を少なく維持することが(特に、本方法の成分をどのようにして同時に放出するかを最適化するにあたって)望ましい。幾つかの実施形態において、腸溶コーティングは、医薬組成物の残りの質量に対して30%以下である(「残り」とは、腸溶コーティングを除外した医薬組成物それ自体のことである)。幾つかの実施形態において、腸溶コーティングは、コーティングを施していない組成物の質量の20%未満、特には12〜20%である。腸溶コーティングは、組成物が100回転/分で回転する溶解浴において、0.1NのHCl中での本方法の医薬組成物の崩壊を少なくとも2時間にわたって防止するのに十分であり、次に医薬組成物の全含有物を、pHが6.3に上昇してから30分以内に完全に放出可能であるべきである。
(0154) F.他の実施形態
幾つかの実施形態において、pH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤対吸収性向上剤の質量比は、存在する場合、3:1〜20:1、4:1〜12:1又は5:1〜10:1である。ある医薬組成物における全pH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤の総質量並びに全吸収性向上剤の総質量は、上記の比に含まれる。例えば、医薬組成物が2種のpH低下剤及び3種の吸収性向上剤を含むならば、上記の比を、両方のpH低下剤の合計総質量と3種全ての吸収性向上剤の合計総質量に基づいて算出する。
幾つかの実施形態において、pH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤対吸収性向上剤の質量比は、存在する場合、3:1〜20:1、4:1〜12:1又は5:1〜10:1である。ある医薬組成物における全pH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤の総質量並びに全吸収性向上剤の総質量は、上記の比に含まれる。例えば、医薬組成物が2種のpH低下剤及び3種の吸収性向上剤を含むならば、上記の比を、両方のpH低下剤の合計総質量と3種全ての吸収性向上剤の合計総質量に基づいて算出する。
(0155) 幾つかの実施形態においては、pH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤、芳香族カチオン性ペプチド並びに吸収性向上剤(各剤が1種の化合物であるか複数種類の化合物であるかは問わない)は、存在する場合、医薬組成物中に均一に分散される。一実施形態において、医薬組成物は、芳香族カチオン性ペプチド、pH低下剤及び吸収性向上剤を均一に分散させた医薬用結合剤を含む顆粒を含む。幾つかの実施形態において、顆粒はまた、有機酸の均一な層に取り囲まれた酸性のコア、向上剤の層及び有機酸の外層に取り囲まれたペプチドの層から成り得る。顆粒は、医薬用結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、pH低下剤、吸収性向上剤及び芳香族カチオン性ペプチドから成る水性混合物から調製し得る。
(0156) G.製造工程
幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、MTに連結させた0.25mgの本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、400mgの顆粒状クエン酸(例えば、Archer Daniels Midland社から入手可能)、50mgのタウロデオキシコール酸(例えば、SIGMA社から入手可能)及び50mgのラウロイルカルニチン(SIGMA社)を充填したサイズ00のゼラチンカプセルを含む。
幾つかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、MTに連結させた0.25mgの本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、400mgの顆粒状クエン酸(例えば、Archer Daniels Midland社から入手可能)、50mgのタウロデオキシコール酸(例えば、SIGMA社から入手可能)及び50mgのラウロイルカルニチン(SIGMA社)を充填したサイズ00のゼラチンカプセルを含む。
(0157) 全成分がゼラチンカプセルへの最終的な挿入向けであり、またいずれの順番でもブレンダに投入し得る粉末になり得る。その後、ブレンダを、粉末が完全に混ざるまで約3分間にわたって作動させる。次に、混ぜ合わせた粉末をゼラチンカプセルのボディに充填する。次にカプセルのキャップをかぶせ、カプセルをパチンと嵌める。500個以上のこのようなカプセルをコーティング装置(例えば、Vector LDCS 20/30 Laboratory Development Coating System(アイオワ州マリオンのVector社から入手可能))に投入し得る。
(0158) 腸溶コーティング溶液は以下のようにして調製する。500グラムのEUDRAGIT L30 D−55(メタクリル酸メチルエステルとのメタクリル酸コポリマー。マサチューセッツ州メイデンのRoHM Tech社から入手可能な腸溶コーティング)を秤量する。411グラムの蒸留水、15グラムのクエン酸トリエチル及び38グラムのタルクを添加する。この量のコーティングは、約500個のサイズ00のカプセルのコーティングに十分である。
(0159) カプセルを秤量し、コーティング機のドラムに入れる。コーティング機を作動させ、(この段階でカプセルが入っている)ドラムを24〜28rpmで回転させる。入り口側の噴霧器の温度は約45℃になり得る。排出側温度は約30℃になり得る。無コーティングカプセルの温度は約25℃になり得る。空気流は、1分間あたり約38立方フィートになり得る。
(0160) 次に、コーティング機の管を、上述した通りに調製したコーティング溶液に挿入する。次に、溶液をコーティング装置に送るためにポンプを作動させ、コーティングが自動的に進行する。コーティング量が十分か否かを判断するために、このコーティング機はいつでも停止させてカプセルを秤量することができる。通常、コーティングは60分間にわたって行われる。次にポンプを約5分間にわたって停止させ、その間、コーティングが施されたカプセルの乾燥を支援するためにコーティング機は依然として作動している。次に、コーティング機を停止させることができ、カプセルのコーティングが完了する。ただし、カプセルを約2日間にわたって空気乾燥させることが推奨される。
(0161) 本方法で得られるバイオアベイラビリティは高いことから、医薬品調製において、高価な芳香族カチオン性ペプチドの濃度を比較的低く維持し得る。
(0162) H.患者の処置
本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを、本明細書で挙げた医学的状態及び疾患の処置のための有効成分として選択し得る。経鼻投与する芳香族カチオン性ペプチドは、本明細書に記載のもの等の医学的状態又は疾患に対して効果的である。血清レベルは、HPLC又は質量分析により、当該分野で公知の方法に従って測定し得る。主治医は、特には処置の最初の段階の間、患者の反応、芳香族カチオン性ペプチドの血中レベル又は疾患の代替マーカーを観察し得る。次に、担当医は、各患者の代謝及び反応を考慮して若干投与量を変更し得る。
本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを、本明細書で挙げた医学的状態及び疾患の処置のための有効成分として選択し得る。経鼻投与する芳香族カチオン性ペプチドは、本明細書に記載のもの等の医学的状態又は疾患に対して効果的である。血清レベルは、HPLC又は質量分析により、当該分野で公知の方法に従って測定し得る。主治医は、特には処置の最初の段階の間、患者の反応、芳香族カチオン性ペプチドの血中レベル又は疾患の代替マーカーを観察し得る。次に、担当医は、各患者の代謝及び反応を考慮して若干投与量を変更し得る。
(0163) 本方法で達成可能なバイオアベイラビリティにより、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを10〜1000マイクログラム、10〜400マイクログラム又は10〜200マイクログラムしか使用せずに、芳香族カチオン性ペプチドを血中に上記の濃度レベルで経口送達することができる。
(0164) 幾つかの実施形態において、1回の投与に1個のカプセルを使用し得る。1個のカプセルは、ポリペプチド、pH低下剤及び吸収性向上剤を同時に放出することができるからである。酸をペプチドの放出と時間的に近接して放出させると酸がペプチドへの望ましくないタンパク質分解攻撃を最もよく減弱させることから、1個のカプセルによる同時放出が極めて望ましい。ほぼ同時の放出は、本方法の全成分を1個の丸薬又はカプセルとして投与することで最良に達成される。しかしながら、本方法には、例えば、使用時に、酸及び向上剤の必要量を2個以上のカプセルに分割することも含まれ、これらのカプセルを、必要量の全成分が一緒に放出されるように一緒に投与し得る。
(0165) IV.ペプチド医薬組成物の経鼻送達
本方法に従った経鼻送達が有益になり得るペプチド有効成分は、生理学的に活性であり且つその分子構造の一部として複数のアミノ酸及び少なくとも1つのペプチド結合を有するいずれの治療薬も含む。天然のアミノ酸に加えて、アミノ酸は、D−アミノ酸又は非天然のアミノ酸になり得て、その例の幾つかについては後述する。分子構造は更に、他の置換又は修飾を含み得る。例えば、芳香族カチオン性ペプチドをそのC末端でアミド化する。幾つかのペプチドを自然にはアミド化されない位置でアミド化し得て、あるいは別のやり方で修飾し得る。
本方法に従った経鼻送達が有益になり得るペプチド有効成分は、生理学的に活性であり且つその分子構造の一部として複数のアミノ酸及び少なくとも1つのペプチド結合を有するいずれの治療薬も含む。天然のアミノ酸に加えて、アミノ酸は、D−アミノ酸又は非天然のアミノ酸になり得て、その例の幾つかについては後述する。分子構造は更に、他の置換又は修飾を含み得る。例えば、芳香族カチオン性ペプチドをそのC末端でアミド化する。幾つかのペプチドを自然にはアミド化されない位置でアミド化し得て、あるいは別のやり方で修飾し得る。
(0166) 本方法のペプチド活性化合物には、以下に限定するものではないが、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、またポリペプチド、例えばインスリン、バソプレシン、カルシトニン(サケカルシトニンだけではなく、他のカルシトニンも含まれる)が含まれる。他の例には、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、副甲状腺ホルモン(そのアミド化又は非アミド化切断型、例えばPTH1−31−アミド又はPTH1−34−アミドを含む)、デスモプレシン、黄体化ホルモン放出因子、エリスロポエチン、組織プラスミノーゲンアクチベータ、ヒト成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、各種インターロイキン、エンケファリン等が含まれる。その他多くが当該分野で公知である。
(0167) 合成及び天然の両方のペプチドを、本方法に従って経鼻的に送達することができる。したがって、幾つかの実施形態において、ペプチド活性化合物は、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)又はその類似体、デスモプレシン(DDAVP)、リュープロリド、2,6−ジメチルチロシン−D−アルギニン−フェニルアラニン−リジンアミド(DMT−DALDA)、ペプチドミメティック等になり得る。
(0168) 本方法で使用するためのペプチドは、遊離形態又は薬学的に許容可能な塩又は錯体形態、例えば薬学的に許容可能な酸付加塩の形態になり得る。このような塩及び錯体は公知であり、また遊離形態と同程度の活性及び忍容性を有する傾向がある。本方法での使用に適した酸付加塩形態には、例えばヒドロクロリド及びアセテートが含まれる。
(0169) A.バイオアベイラビリティの向上
バイオアベイラビリティの向上は、脂肪酸、脂肪酸の糖エステル、アシルカルニチン及びシトレートから選択される1種以上の向上剤を使用して達成される。幾つかの実施形態ではこれらの組み合わせを用いる。ただし、アシルカルニチン及び脂肪酸は、これらの間で望ましくない相互作用が起きることから一緒には使用しない。各種類の向上剤の分子構造については以下で論じる。
バイオアベイラビリティの向上は、脂肪酸、脂肪酸の糖エステル、アシルカルニチン及びシトレートから選択される1種以上の向上剤を使用して達成される。幾つかの実施形態ではこれらの組み合わせを用いる。ただし、アシルカルニチン及び脂肪酸は、これらの間で望ましくない相互作用が起きることから一緒には使用しない。各種類の向上剤の分子構造については以下で論じる。
(0170) B.脂肪酸
理論で縛ることを意図するものではないが、脂肪酸はペプチドと相互作用して細胞膜を通り抜けるその能力を望ましくも向上させ、結果的に経細胞輸送を増加させると考えられる。脂肪酸の疎水性領域はこの機能にとって重要であると考えられ、また望ましくは可能な限り多くの連続した炭素原子を、水溶性に応じて、少なくとも8個の連続炭素原子又は10〜14個の炭素原子を含むべきである。例示的な脂肪酸には、以下に限定するものではないが、ラウリン酸及びオレイン酸が含まれる。使用時、脂肪酸の濃度は0.1〜4.0mg/mL又は0.5〜2.0mg/mLになり得る。
理論で縛ることを意図するものではないが、脂肪酸はペプチドと相互作用して細胞膜を通り抜けるその能力を望ましくも向上させ、結果的に経細胞輸送を増加させると考えられる。脂肪酸の疎水性領域はこの機能にとって重要であると考えられ、また望ましくは可能な限り多くの連続した炭素原子を、水溶性に応じて、少なくとも8個の連続炭素原子又は10〜14個の炭素原子を含むべきである。例示的な脂肪酸には、以下に限定するものではないが、ラウリン酸及びオレイン酸が含まれる。使用時、脂肪酸の濃度は0.1〜4.0mg/mL又は0.5〜2.0mg/mLになり得る。
(0171) C.脂肪酸の糖エステル
理論で縛ることを意図するものではないが、脂肪酸の糖エステルは細胞と、その形状を変化させ、ポアサイズを拡大させる形で相互作用することで望ましくも傍細胞輸送を増加させると考えられる。糖エステルは経細胞輸送にもメリットをもたらし得る。脂肪酸及び脂肪酸の糖エステルを組み合わせて使用する場合、バイオアベイラビリティは特に、増加した経細胞輸送と増加した傍細胞輸送との組み合わせにより向上し得る。脂肪酸と同様に、疎水性領域は、少なくとも8個の連続した炭素原子、特には10〜14個の炭素原子も含み得る。糖部分は水溶性に貢献し得る。脂肪酸の例示的な糖エステルには、以下に限定するものではないが、スクロースラウレート、グルコースラウレート及びフルクトースラウレートが含まれる。使用時、脂肪酸の糖エステルの濃度は0.1〜10.0mg/mL又は0.5〜5.0mg/mLになり得る。
理論で縛ることを意図するものではないが、脂肪酸の糖エステルは細胞と、その形状を変化させ、ポアサイズを拡大させる形で相互作用することで望ましくも傍細胞輸送を増加させると考えられる。糖エステルは経細胞輸送にもメリットをもたらし得る。脂肪酸及び脂肪酸の糖エステルを組み合わせて使用する場合、バイオアベイラビリティは特に、増加した経細胞輸送と増加した傍細胞輸送との組み合わせにより向上し得る。脂肪酸と同様に、疎水性領域は、少なくとも8個の連続した炭素原子、特には10〜14個の炭素原子も含み得る。糖部分は水溶性に貢献し得る。脂肪酸の例示的な糖エステルには、以下に限定するものではないが、スクロースラウレート、グルコースラウレート及びフルクトースラウレートが含まれる。使用時、脂肪酸の糖エステルの濃度は0.1〜10.0mg/mL又は0.5〜5.0mg/mLになり得る。
(0172) D.アシルカルニチン
アシルカルニチンはバイオアベイラビリティを向上させると考えられ、幾つかの実施形態においては脂肪酸の糖エステルと組み合わされる。例示的なアシルカルニチンには、以下に限定するものではないが、L−ラウロイルカルニチン及びミリストイルカルニチンが含まれる。使用時、アシルカルニチンの濃度は、0.1〜10.0mg/mL又は0.5〜5.0mg/mLになり得る。
アシルカルニチンはバイオアベイラビリティを向上させると考えられ、幾つかの実施形態においては脂肪酸の糖エステルと組み合わされる。例示的なアシルカルニチンには、以下に限定するものではないが、L−ラウロイルカルニチン及びミリストイルカルニチンが含まれる。使用時、アシルカルニチンの濃度は、0.1〜10.0mg/mL又は0.5〜5.0mg/mLになり得る。
(0173) E.シトレート
幾つかの実施形態において、クエン酸、クエン酸塩及びこれらの混合物から成る群から選択されるシトレートタイプのバイオアベイラビリティ向上剤は、本明細書に記載のその他の向上剤の1種以上と組み合わせて使用される。理論で縛ることを意図するものではないが、シトレートタイプの向上剤は傍細胞輸送を増加させ得ると考えられる。幾つかの実施形態において、全てのこのようなシトレートタイプの向上剤の濃度は、5mM以上50mM以下又は10〜25mMの範囲である。理論で縛ることを意図するものではないが、シトレート濃度がこれより高いと、ペプチドのアミノ末端又はリジル側鎖でのシトレートと活性ペプチドとの相互作用により保存安定性が望ましくないことに低下し得ると考えられる。
幾つかの実施形態において、クエン酸、クエン酸塩及びこれらの混合物から成る群から選択されるシトレートタイプのバイオアベイラビリティ向上剤は、本明細書に記載のその他の向上剤の1種以上と組み合わせて使用される。理論で縛ることを意図するものではないが、シトレートタイプの向上剤は傍細胞輸送を増加させ得ると考えられる。幾つかの実施形態において、全てのこのようなシトレートタイプの向上剤の濃度は、5mM以上50mM以下又は10〜25mMの範囲である。理論で縛ることを意図するものではないが、シトレート濃度がこれより高いと、ペプチドのアミノ末端又はリジル側鎖でのシトレートと活性ペプチドとの相互作用により保存安定性が望ましくないことに低下し得ると考えられる。
(0174) F.他の実施形態
上で定義した組成物を本方法に従って鼻粘膜に、例えば点鼻又はスプレーの形態で適用し得る。本開示の組成物は当然のことながら、追加の成分、特には慣用の薬学的に適用可能な界面活性剤の分類に属する成分も含み得る。
上で定義した組成物を本方法に従って鼻粘膜に、例えば点鼻又はスプレーの形態で適用し得る。本開示の組成物は当然のことながら、追加の成分、特には慣用の薬学的に適用可能な界面活性剤の分類に属する成分も含み得る。
(0175) 幾つかの実施形態において、本方法の液体医薬組成物は、鼻粘膜への適用に適した薬学的に許容可能な希釈剤又は担体を含有する。例えば生理食塩水を使用し得る。
(0176) 本開示の組成物は、経鼻投与が可能になるように処方される。これを目的として、本開示の組成物は、例えば最低量の望ましい追加の成分若しくは賦形剤、例えば追加の防腐剤又はカフェイン等の例えば毛様体刺激物質も含有し得る。
(0177) 経鼻投与の場合、概して、中程度に酸性のpHを用いる。幾つかの実施形態において、本開示の組成物は約3.0〜6.5のpHを有する。
(0178) 本開示の組成物はまた、適当な等張性及び粘度を有するべきである。幾つかの実施形態において、本開示の組成物は、約260〜約380mOsm/リットルの浸透圧を有する。幾つかの実施形態において、スプレー式点鼻薬の場合の粘度は0.98cP未満である。
(0179) 本開示の組成物は慣用の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤も含み得る。界面活性剤を用いる場合、組成物中に存在する量は、選択した特定の界面活性剤、特定の投与方式(例えば、点鼻、スプレー)及び所望する効果に応じて変化する。しかしながら、概して、存在する量は約0.1mg/ml〜約10mg/ml、約0.5mg/ml〜5mg/ml又は約1mg/mlになる。
(0180) 幾つかの実施形態においては、薬学的に許容可能な防腐剤を含める。多くが当該分野で公知であり、また過去に水性鼻用薬に使用されている。例えば、ベンジルアルコール又はフェニルエチルアルコール又はこれらの混合物を使用し得る。一実施形態においては、0.2%のフェニルエチルアルコール及び0.5%のベンジルアルコールを組み合わせて使用する。
(0181) 投与するペプチドの量、よって組成物中の有効成分の量は当然のことながら、選択した特定のペプチド、処置対象である状態、望ましい投与頻度及び所望する効果に左右される。
(0182) 鼻への1回の適用で投与される組成物全体の量は、適切には約0.05〜0.15ml、典型的には約0.1mlである。
(0183) 鼻への投与を目的として、組成物を、格納された組成物の鼻粘膜への適用を可能にする手段を備えた容器に保存し、例えば鼻用アプリケータデバイスに格納する。適切なアプリケータは当該分野で公知であり、また液体組成物の鼻粘膜への点鼻又はスプレー形態での投与に適したものが含まれる。投薬は可能な限り正確に制御しながら行うべきであることから、投与量を精確に調節しやすいスプレー式のアプリケータを使用し得る。適切な投与装置には、例えば噴霧装置、ポンプ式噴霧器及びエーロゲルディスペンサが含まれる。後者の場合、アプリケータは、本方法の組成物を、鼻用アプリケータでの使用に適した推進媒体と共に格納する。噴霧装置は、格納された組成物を鼻粘膜に送達できる適当なスプレーアダプタを備える。このような装置は当該分野で周知である。
(0184) 容器、例えば鼻用アプリケータは、1回の経鼻投与又は、例えば複数日若しくは複数週にわたって何回か順次投与するのに十分な組成物を格納し得る。供給する1回の投与量は上で定義した通りになり得る。
(0185) ここで、本方法において、驚くべきことに、クエン酸又はその塩を約10〜約50mMの濃度で緩衝剤として使用することで、鼻への適用に必要とされる高い基準の安定性及びバイオアベイラビリティを満たす、有効成分として芳香族カチオン性ペプチドを含み、また例えば複数回分が入った鼻用スプレー式アプリケータ(すなわち、複数回分の組成物を例えば複数日又は複数週にわたって送達可能なアプリケータ)での使用に極めて適している医薬組成物が得られることが判明した。
(0186) 驚くべきことに、クエン酸又はその塩をより高い濃度で使用すると、芳香族カチオン性ペプチド含有組成物の経鼻的吸収特性に関して有益な利点が得られ、したがって経鼻的に適用した場合の芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティレベルが上昇することも判明している。加えて、クエン酸又はその塩の約10〜約50mMの濃度での使用により芳香族カチオン性ペプチド組成物の安定性は上昇するが、同時にそれより高い濃度のクエン酸又はその塩は同じ安定化効果を有さないことも判明している。
(0187) 本方法で使用の芳香族カチオン性ペプチドは、遊離形態又は薬学的に許容可能な塩若しくは錯体の形態、例えば薬学的に許容可能な酸付加塩の形態になり得る。このような塩及び錯体は公知であり、また遊離形態と同程度の活性及び忍容性を有する。本方法での使用に適した酸付加塩形態には、例えばヒドロクロリド及びアセテートが含まれる。
(0188) 上で定義した組成物を本方法に従って鼻粘膜に、例えば点鼻又はスプレーの形態で適用し得る。しかしながら、後述するように、上で定義した組成物をスプレーの形態、すなわち細かく分割された液滴の形態で適用し得る。
(0189) 本開示の組成物は当然のことながら、追加の成分、特には慣用の薬学的に適用可能な界面活性剤の分類に属する成分も含み得る。これに関し、本方法の更なる態様において、概して、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを鼻に適用するにあたって界面活性剤を使用すると鼻粘膜からの吸収が増加し、ひいては得られるバイオアベイラビリティ率が改善され得ることが判明している。
(0190) 幾つかの実施形態において、本方法の液体医薬組成物は、鼻粘膜への適用に適した薬学的に許容可能な液体希釈剤又は担体、例えば生理食塩水を含有する。
(0191) 本開示の組成物は、経鼻投与が可能になるように処方される。これを目的として、本開示の組成物は、例えば最低量の望ましい追加の成分又は賦形剤、例えば追加の防腐剤又は例えばカフェイン等の例えば毛様体刺激物質も含有し得る。
(0192) 経鼻投与の場合、概して、中程度に酸性のpHを用いる。幾つかの実施形態において、組成物は約3〜5、約3.5〜約3.9又は約3.7のpHを有する。pHの調節は、適当な酸、例えば塩酸の添加により行われる。
(0193) 本開示の組成物はまた、適当な等張性及び粘度を有するべきである。幾つかの実施形態において、本開示の組成物は、約260〜約380mOsm/リットルの浸透圧を有する。幾つかの実施形態において、スプレー式点鼻薬の望ましい粘度は0.98cP未満である。一実施形態において、浸透圧は250〜350mOsm/リットルである。
(0194) 本開示の組成物は、慣用の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤も含み得る。
(0195) 界面活性剤を用いる場合、組成物中に存在する量は、選択した特定の界面活性剤、特定の投与方式(例えば、点鼻、スプレー)及び所望する効果に応じて変化する。しかしながら、概して、存在する量は約0.1mg/ml〜約10mg/ml、約0.5mg/ml〜5mg/ml又は約1mg/mlになる。
(0196) 本方法に従って投与する本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの量、ひいては組成物中の有効成分の量は当然のことながら、選択した特定の芳香族カチオン性ペプチド、処置対象である状態、望ましい投与頻度及び所望する効果に左右される。
(0197) 後出の実施例で示されるように、本方法の教示に従った経鼻投与後に血中/血漿濃度として求められる本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは、驚くべきほど高いことが判明している。
(0198) したがって、本方法による経鼻投与に関して、処置は適切には約1日1回〜約週3回の頻度での投薬を含む。1回の適用で用量分を投与し得て、すなわち処置は本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド鼻用薬を単回投与することを含む。あるいは、そのような用量を、1日の間で間隔をあけて服薬する2〜4回分に分割し得る。鼻への1回の適用で投与される総組成物量は、処置対象である状態、投与する特定のペプチド及び被験者の特徴に応じて変化する。
(0199) 鼻への投与を目的として、組成物を、格納した組成物の鼻粘膜への適用を可能にする手段を備えた容器に入れ得て、例えば鼻用アプリケータデバイスに入れる。適切なアプリケータは当該分野で公知であり、また液体組成物の鼻粘膜への点鼻又はスプレー形態での投与に適したものが含まれる。本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの投薬は可能な限り正確に制御しながら行うべきであることから、投与量が正確な関係になりやすいスプレー式のアプリケータを使用し得る。適切な投与装置には、例えば噴霧装置、例えばポンプ式噴霧器及びエーロゲルディスペンサが含まれる。後者の場合、アプリケータは、本方法の組成物を、鼻用アプリケータでの使用に適した推進媒体と共に格納する。噴霧装置は、格納された組成物を鼻粘膜に送達できる適当なスプレーアダプタを備える。このような装置は当該分野で周知である。
(0200) 容器、例えば鼻用アプリケータは、1回の経鼻投与又は、例えば複数日若しくは複数週にわたって何回か順次投与するのに十分な組成物を格納し得る。供給する1回の投与量は上で定義した通りになり得る。組成物の安定性は、慣用のやり方で求め得る。後述するように、組成物の芳香族カチオン性ペプチド含有量は、標準的な分析試験で示されるように、15日後には50℃で50%未満低下する。
(0201) V.処置方法
幾つかの実施形態において、処置は以下のようにして行われる。
幾つかの実施形態において、処置は以下のようにして行われる。
(0202) 本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド及び本明細書に記載のその製剤は、MPTに関係した疾患又は状態の処置において有用である。このような疾患及び状態には、以下に限定するものではないが、組織又は臓器の虚血及び/又は再灌流、低酸素症、目の疾患及び状態、心筋梗塞並びに多数の神経変性疾患が含まれる。MPTの処置又は予防を必要とする哺乳動物は、これらの疾患又は状態を患っている哺乳動物である。
(0203) 哺乳動物の組織又は臓器における虚血は、酸素の欠乏(低酸素症)及び/又はグルコース(例えば、基質)の欠乏によって引き起こされる多面的な病態である。組織又は臓器の細胞における酸素及び/又はグルコースの欠乏は、エネルギー産生能力の低下又は完全な喪失とその結果としての細胞膜を越える活性イオン輸送機能の喪失につながる。酸素及び/又はグルコースの欠乏は、ミトコンドリア膜における透過性遷移を含めた他の細胞膜における病的変化にもつながる。加えて、通常はミトコンドリア内にあるアポトーシスタンパク質等の他の分子が細胞質中に浸出し、アポトーシス性の細胞死を引き起こし得る。重い虚血は細胞壊死につながる場合がある。
(0204) 特定の組織又は臓器における虚血又は低酸素症は、その組織又は臓器への血液供給の喪失又は著しい減少によって引き起こされ得る。血液供給の喪失又は著しい減少は、例えば血栓塞栓性卒中、冠状動脈アテローム性硬化症又は末梢血管疾患に起因し得る。虚血又は低酸素症を起こす組織は、典型的には筋肉、例えば心筋、骨格筋又は平滑筋である。
(0205) 虚血又は低酸素症を起こす臓器は、虚血又は低酸素症に陥るいずれの臓器にもなり得る。虚血又は低酸素症を起こす臓器の例には、脳、心臓、腎臓及び前立腺が含まれる。例えば、心筋虚血又は低酸素症は一般にアテローム硬化性又は血栓性の血流遮断により引き起こされ、これは心臓動脈及び毛細血管血液供給による心臓組織への酸素送達量の減少又は酸素送達の喪失につながる。このような心虚血又は低酸素症は患部である心筋の疼痛及び壊死を引き起こし得て、最終的には心不全につながり得る。
(0206) 骨格筋又は平滑筋における虚血又は低酸素症は、同様の原因から起こり得る。例えば、腸の平滑筋又は肢の骨格筋における虚血又は低酸素症もまた、アテローム硬化性又は血栓性の血流遮断によって引き起こされ得る。
(0207) 再灌流とは、血流が減少している又は遮断されている臓器又は組織への血流の回復のことである。例えば、虚血又は低酸素症を起こした臓器又は組織への血流を再開させることができる。血流の再開(再灌流)は、当業者に公知の方法で行うことができる。例えば、虚血状態の心臓組織の再灌流は、血管形成、冠動脈バイパス手術又は血栓溶解剤の使用により起き得る。
(0208) 本開示の方法は、MPTに関係した神経変性疾患の処置又は予防で用いることもできる。MPTに関係した神経変性疾患には、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病及び筋萎縮性側索硬化症(ALS、ルーゲーリッグ病としても知られる)が含まれる。本開示の方法を、MPTに関係した各種変性疾患の発症を遅らせる又はその進行を減速させるのに用いることができる。本開示の方法は特に、MPTに関係した神経変性疾患の初期段階にあるヒト及びこれらの疾患にかかりやすいヒトの処置において有用である。
(0209) 本方法において有用なペプチドは、移植前の哺乳動物の臓器の保存にも使用し得る。例えば、取り出した臓器は、血流を欠くことからMPTに曝されやすい。したがって、ペプチドを、取り出した臓器におけるMPTの防止に使用することができる。
(0210) また、ペプチドを、ある状態又は疾患を処置するための薬剤を摂取している哺乳動物に投与し得る。この薬剤の副作用にMPTが含まれるならば、このような薬剤を摂取している哺乳動物は、本明細書で開示の本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの経口製剤から大きな恩恵を受け得る。
(0211) 本テクノロジーで達成可能なバイオアベイラビリティにより、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを血中に、1カプセルあたりペプチドを300〜3000マイクログラム、300〜1200マイクログラム又は300〜600マイクログラムしか使用せずに、上記の濃度レベルで経口送達することが可能になる。
(0212) 1回の投与に1個の錠剤又はカプセルを使用するのが最適である。1回の投薬で本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、pH低下剤及び吸収性向上剤が最良に同時放出されるからである。酸をポリペプチドの放出と時間的に近接して放出させると酸がポリペプチドへの望ましくないタンパク質分解攻撃を最もよく減弱させることから、これが極めて望ましい。したがって、ほぼ同時の放出は、本製剤の全成分を1個の錠剤又はカプセルとして投与することで最良に達成される。しかしながら、本テクノロジーには、例えば酸及び向上剤の必要量を2個以上の錠剤又はカプセルに分割することも含まれ、これらの錠剤又はカプセルを、必要量の全成分が一緒に放出されるように一緒に投与し得る。本明細書で使用の用語「医薬組成物」には、実質的に同時の投与のためである限りどのように更に細かく分割するかに関わらず、ヒト患者への特定の投与に適した全用量が含まれる。
(0213) 以下の一連の表は、特定のパラメータを変更することで引き起こされる、バイオアベイラビリティへの予測される影響を示す。ただし、本明細書で報告するヒトの場合の予言的考察に関し、成分量は、ヒトと動物モデルで用いられる動物との差を考慮して、本明細書に記載のものとは異なり得る。
(0214) 幾つかの実施形態において、処置は以下のようにして行われる。
(0215) 幾つかの実施形態において、1回の投与に1個のカプセルを使用する。幾つかの実施形態において、1個のカプセルは、芳香族カチオン性ペプチド、pH低下剤及び吸収性向上剤を最良に同時放出する。酸をポリペプチドの放出と時間的に近接して放出させると酸がポリペプチドへの望ましくないタンパク質分解攻撃を減弱させることから、これが望ましい。したがって、幾つかの実施形態において、ほぼ同時の放出は、組成物の全成分を1個の丸薬又はカプセルとして投与することで達成される。しかしながら、本テクノロジーには、例えば酸及び向上剤の必要量を2個以上のカプセルに分割することも含まれ、これらのカプセルを、必要量の全成分が一緒に放出されるように一緒に投与し得る。本明細書で使用の用語「医薬組成物」には、実質的に同時の投与のためである限りどのように更に細かく分割するかに関わらず、ヒト患者への特定の投与に適した全用量が含まれる。
(0216) 特定の適応症では、成分が比較的迅速に胃で放出されて鎮痛効果が速やか、すなわち約10〜20分以内に得られるように、酸安定性の保護ビヒクルを有さないカプセル又は錠剤状の第1経口医薬組成物を投与し得る。続いて、本方法に従って処方した、保護ビヒクルを有する追加のカプセル又は錠剤を次に投与し得て、その結果、胃からの排出に必要なより長い時間(すなわち、典型的には約2時間)が経過してから腸において有効成分がバイオアベイラブルになる。
(0217) 幾つかの実施形態においては、十分な量の芳香族カチオン性ペプチドを組成物の経口製剤に含めることによって、200μg/ml〜20ng/ml又は200μg/ml〜2ng/mlの芳香族カチオン性ペプチド血清レベル(すなわち、C最高)を達成する。上記の血清レベルを達成するための芳香族カチオン性ペプチドの投与量レベルは、100μg〜10mg又は100μg〜1mgになり得る。しかしながら、本明細書で推奨する全ての投与量に関し、主治医は被験者の反応を監視し、投与量を適宜調節すべきである。さらに、特に記載がない限り、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの投与量は、治療目的、予防目的の双方について同じである。本明細書で論じる各芳香族カチオン性ペプチドの投与量は、処置(又は予防)対象である疾患には関係なく同じである。さらに、特に記載がない限り、用語「化合物」及び「組成物」、また関連する分子構造は、ラセミ混合物の形態又は光学的に活性な形態のその考えられ得る全ての立体異性体を含み得る。
(0218) 特に記載がない限り又は文脈から明白な場合を除いて、本明細書に記載の投与量は、医薬用賦形剤、希釈剤、担体又は他の成分に影響されない(ただしこのような追加成分を含めるのが望ましい)芳香族カチオン性ペプチドの質量のことである。
(0219) VI.芳香族カチオン性ペプチド及び他の治療薬を使用した組み合わせ療法
幾つかの実施形態においては、芳香族カチオン性ペプチドを、ある疾患又は状態の予防又は処置用の1種以上の追加の剤と組み合わせ得る。例えば、幾つかの実施形態においては、追加の治療薬を被験者に芳香族カチオン性ペプチドと組み合わせて投与する。幾つかの実施形態においては、相乗的な治療効果が得られる。「相乗的な治療効果(synergistic therapeutic effect)」とは、2種の治療薬(例えば、芳香族カチオン性ペプチドと別の剤)の組み合わせによって生み出され、またどちらかの治療薬だけを個別に投与した場合に得られる効果を超える、相加的な治療効果より大きい治療効果のことである。したがって、ある疾患又は状態の処置又は予防において、治療薬の一方又は両方を低投与量で使用し得て、その結果、治療効率が上昇し、副作用が低下する。
幾つかの実施形態においては、芳香族カチオン性ペプチドを、ある疾患又は状態の予防又は処置用の1種以上の追加の剤と組み合わせ得る。例えば、幾つかの実施形態においては、追加の治療薬を被験者に芳香族カチオン性ペプチドと組み合わせて投与する。幾つかの実施形態においては、相乗的な治療効果が得られる。「相乗的な治療効果(synergistic therapeutic effect)」とは、2種の治療薬(例えば、芳香族カチオン性ペプチドと別の剤)の組み合わせによって生み出され、またどちらかの治療薬だけを個別に投与した場合に得られる効果を超える、相加的な治療効果より大きい治療効果のことである。したがって、ある疾患又は状態の処置又は予防において、治療薬の一方又は両方を低投与量で使用し得て、その結果、治療効率が上昇し、副作用が低下する。
(0220) どの場合であっても、複数の治療薬(例えば、芳香族カチオン性ペプチド及び別の剤)はいずれの順序でも投与し得て、あるいは同時に投与することさえできる。同時に投与する場合は、複数の治療薬を1個の一体化した形態又は複数の形態で提供し得る(例えば、1個の丸薬又は2個の別々の丸薬として)。治療薬の一方を複数回に分けて投与し得て、あるいは両方の治療薬を複数回に分けて投与し得る。同時投与ではない場合、複数回にわたる投与の間隔は、ゼロ週より長く4週間より短くなり得る。加えて、この組み合わせ法、組成物及び製剤は、2種類だけの剤の使用に限定されない。
(0221) 幾つかの実施形態において、もう一方の剤は芳香族カチオン性ペプチドを含む。幾つかの実施形態においては、芳香族カチオン性ペプチドを、食欲抑制及び体重管理用のペプチドと共に投与する。幾つかの実施形態において、食欲抑制及び体重管理用のこのペプチドはカルシトニン類似体である。幾つかの実施形態において、このペプチドはアミノ酸配列Cys−Ser−Asn−Leu−Ser−Thr−Cys−Val−Leu−Gly−Lys−Leu−Ser−Gln−Glu−Leu−His−Lys−Leu−Gln−Thr−Tyr−Pro−Arg−Thr−Xaa−Xaa−Gly−Xaa−Xaa−Thr−Xaaを有し、アミノ酸26、27、28、29及び31はいずれの天然のアミノ酸にもなり得て、アミノ酸31は任意でアミド化される。
(0222) 本明細書に記載の製剤について、以下の実施例により更に説明する。これらの実施例は説明を目的としたものにすぎず、いかなる形でも限定的であるとは解釈されるべきではない。実施例は本明細書に記載の製剤に関係した傾向を示すことを目的とし、製剤の組成又は機能の範囲を限定することを意図してはいない。
(0223) 実施例1:pHが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響
この実施例では、pHが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を含む製剤のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
この実施例では、pHが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を含む製剤のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
(0224) 雌のウィスターラット(250〜275g)(各製剤につきn=3)にケタミン及びキシラジンで麻酔をかけてから、頸動脈にカニューレを挿入する。このカニューレには三方バルブが取り付けられ、この三方バルブを通して血液サンプルを採取し、また血液を生理食塩水と置き換える。腹腔を正中切開し、0.5mlの製剤を直接、露出した十二指腸に注入する。製剤のpHを、等モル濃度のクエン酸とクエン酸ナトリウムとを混合することで調節する。血液(0.5ml)を、製剤投与前と、投与から5、15、30、60及び120分後に採取する。血液サンプルを10分間にわたって2600xgで遠心分離し、得られた血漿上清を−20℃で保存する。血漿中の芳香族カチオン性ペプチドの濃度を逆相HPLCクロマトグラフィ及び/又は質量分析(MS)により求める。当業者ならば、本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドを、逆相HPLCを含めた多数のHPLC法、例えばAguilar,HPLC of Peptides and Proteins:Methods and Protocols,Humana Press,New Jersey(2004)に記載のもので分析し得ることがわかる。同様に、当業者ならば、本明細書に記載の芳香族カチオン性ペプチドを多数のMS法、例えばSparkman,Mass Spectroscopy Desk Reference,Pittsburgh:Global View Pub(2000)に記載のもので分析し得ることがわかる。
(0225) 芳香族カチオン性ペプチドの絶対バイオアベイラビリティ(すなわち、芳香族カチオン性ペプチドの静注投与量に相対)を、芳香族カチオン性ペプチドの血漿濃度のプロットから得られる曲線下の面積から時間の関数として計算する。
(0226) 緩衝剤pHが芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響における予想される傾向を表4に示す。緩衝剤のpHを5.0(例示的製剤I)から4.0(例示的製剤II)に低下させると、芳香族カチオン性ペプチドの絶対バイオアベイラビリティが5倍にも上昇することが予想される。緩衝剤pHが3.0(例示的製剤III)に低下するとペプチドの絶対バイオアベイラビリティが、pH5.0の緩衝剤で得られるものの32倍にも上昇することが予測される。緩衝剤pHが2.0(例示的製剤IV)に低下すると、ペプチドの絶対バイオアベイラビリティがそれ以上はごくわずかしか上昇しないことが予測される。芳香族カチオン性ペプチドの絶対バイオアベイラビリティにおける実質的な上昇は、緩衝剤pHが5.0から3.0に低下した時に起きると予想される。
(0227) 実施例2:クエン酸が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響
この実施例では、クエン酸が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
この実施例では、クエン酸が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
(0228) 一定量のタウロデオキシコール酸及び2つの異なる量のクエン酸から成る製剤を、総体積0.5mlで調製する。傍細胞輸送を測定するためのマーカーとして、製剤にマンニトールを含める。製剤を雌のウィスターラットに実施例1で記載した通りに投与する。血液サンプルを採取し、バイオアベイラビリティを実施例1で記載した通りに測定する。
(0229) クエン酸が芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響における予想される傾向を表5に示す。比較的高いクエン酸濃度により、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは低クエン酸濃度の場合より高くなると予想される。例えば、例示的製剤IIでは、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティが例示的製剤Iで達成されるバイオアベイラビリティの10倍にも上昇すると予想される。一定量のタウロデオキシコール酸の存在下、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは、製剤中のクエン酸の量を5倍だけ上昇させた場合に上昇すると予想される。
(0230) 実施例3:吸収性向上剤が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響
この実施例では、吸収性向上剤が、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
この実施例では、吸収性向上剤が、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
(0231) クエン酸、芳香族カチオン性ペプチド及び様々な種類の向上剤から成る製剤を、総体積0.5mlで調製する。傍細胞輸送を測定するためのマーカーとして、製剤にマンニトールを含める。製剤を雌のウィスターラットに実施例1で記載した通りに投与する。血液サンプルを採取し、バイオアベイラビリティを実施例1で記載した通りに測定する。向上剤が芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響における予想される傾向を表6に示す。向上剤を含む製剤の芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは、向上剤を欠いた製剤より高くなると予想される。水溶性のリン脂質を含めると(例示的製剤VII)、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティが4倍にも上昇すると予測される。もっとも効果的な向上剤は糖エステル類(例示的製剤V)であると予想され、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは8倍にまで上昇し得る。胆汁酸とカチオン洗浄剤(例示的製剤III)、非イオン洗浄剤(例示的製剤IV)又はアシルカルニチン(例示的製剤VI)との混合物の使用は、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティを例示的製剤Iで達成されるものの8倍にまで上昇させると予測される。様々な種類の向上剤と共に投与される芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティにおける変動は、ペプチドにクエン酸だけを配合して向上剤を含めない場合に観察される変動と比較すると小さいと予測される。
(0232) 実施例4:ラウロイルカルニチンが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響
この実施例では、ラウロイルカルニチンが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
この実施例では、ラウロイルカルニチンが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2のバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
(0233) ラウロイルカルニチン、本テクノロジーの芳香族カチオン酸ペプチド及び様々な他の化合物から成る製剤を、総体積0.5mlで調製する。製剤を、雌のウィスターラットに実施例1で記載した通りに投与する。血液サンプルを採取し、バイオアベイラビリティを実施例1で記載した通りに測定する。
(0234) ラウロイルカルニチンが芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響における予想される傾向を表7に示す。クエン酸又は向上剤の不在下で芳香族カチオン性ペプチドを投与すると(例示的製剤I)、クエン酸又は向上剤を含む製剤より、ペプチドの絶対バイオアベイラビリティが低下すると予想される。5mgのラウロイルカルニチンクロリドを含めると(例示的製剤II)、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティが例示的製剤Iの約2倍上昇すると予想される。ラウロイルカルニチンをクエン酸と共に含めると(例示的製剤III)、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティが50倍にも上昇すると予想される。ラウロイルカルニチンの量を5分の1に低下させ、ただしクエン酸量を低下させないと(例示的製剤IV)、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは、例示的製剤IIIで達成されるものと比較して著しく低下しないと予想される。5mgのジヘプタノイルホスファチジルコリンをクエン酸及びラウロイルカルニチンと共に含めると(例示的製剤V)、ペプチドのバイオアベイラビリティが、例示的製剤Iで達成されるものの67倍にも上昇することが予測される。クエン酸を25mgのウシ血清アルブミンに置き換えると(例示的製剤VI)、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティが、例示的製剤I(他成分無配合ペプチド)で達成されるものより上昇すると予想される。ただし例示的製剤I−Vの場合よりその程度は小さい。これらの結果は、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに対するpH低下剤(例えば、クエン酸)及び向上剤(例えば、ラウロイルカルニチン)の相乗効果を示すと予測される。
(0235) 実施例5:例示的製剤が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの吸収に及ぼす影響
この実施例では、例示的製剤が、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収に及ぼす影響を実証する。
この実施例では、例示的製剤が、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収に及ぼす影響を実証する。
(0236) 改良型の血管アクセスポートを、雄のビーグル犬の十二指腸、回腸及び結腸に外科的に埋め込む。ポートの隔壁/貯蔵部を皮膚下に埋め込み、芳香族カチオン性ペプチド製剤の投与部位として用いる。芳香族カチオン性ペプチド製剤の意識のあるイヌへの投与前及び投与後に、ポートに、芳香族カチオン性ペプチドを欠いた偽物の製剤を2ml流す。芳香族カチオン性ペプチドの投与30、15及び0分前、また投与から5、10、20、30、40、50、60分とその後2時間にわたって15分毎に、脚の静脈の血管カテーテル管を通して血液(2ml)を採取する。血液サンプルを10分間にわたって2600gで遠心分離にかけ、得られた血漿上清を−20℃で保存する。血漿中の芳香族カチオン性ペプチドの濃度を逆相HPLCで求める。絶対バイオアベイラビリティ(すなわち、芳香族カチオン性ペプチドの静注投与量に相対)を、血漿濃度のプロットから得られる曲線下の面積から時間の関数として計算する。
(0237) 例示的製剤が芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響における予想される傾向を表8に示す。単独で投与される芳香族カチオン性ペプチド(例示的製剤I)の絶対バイオアベイラビリティは、タウロデオキシコール酸及び/又はクエン酸を含む製剤より低くなると予想される。クエン酸を製剤に含めると(例示的製剤II)、ペプチドのバイオアベイラビリティが25倍にも上昇すると予想される。更にタウロデオキシコール酸を製剤に含めると(例示的製剤III)、ペプチドのバイオアベイラビリティが50倍にも上昇すると予想される。
(0238) 実施例6:クエン酸及びラウロイルカルニチンがバソプレシン、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド及びインスリンのバイオアベイラビリティに及ぼす影響
この実施例では、クエン酸ラウロイルカルニチンが、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2、バソプレシン並びにインスリンのバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
この実施例では、クエン酸ラウロイルカルニチンが、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2、バソプレシン並びにインスリンのバイオアベイラビリティに及ぼす影響を実証する。
(0239) 指定の添加剤と共に[Arg8]−バソプレシン、芳香族カチオン性ペプチド又はヒトインスリンから成る製剤を、総体積0.5mlで調製する。製剤を、雌のウィスターラットに実施例1で記載した通りに投与する。血液サンプルを採取し、バイオアベイラビリティを実施例1で記載した通りに測定する。
(0240) ラウロイルカルニチン及びクエン酸がバソプレシン、芳香族カチオン性ペプチド及びインスリンのバイオアベイラビリティに及ぼす影響における予想される傾向を表9に示す。クエン酸を配合した[Arg8]−バソプレシン(例示的製剤V−II)のバイオアベイラビリティは、無配合の[Arg8]−バソプレシン(例示的製剤V−I)のバイオアベイラビリティより20倍も高いと予測される。クエン酸及びラウロイルカルニチンを配合した芳香族カチオン性ペプチド(例示的製剤ACP−II)のバイオアベイラビリティは、無配合のペプチド(例示的製剤ACP−I)のバイオアベイラビリティより50倍も高いと予測される。クエン酸及びラウロイルカルニチンを配合したインスリン(例示的製剤HI−II)のバイオアベイラビリティは、無配合のインスリン(例示的製剤HI−I)のバイオアベイラビリティより11倍も高いと予測される。これらの結果は、他成分無配合の治療用ペプチドのバイオアベイラビリティが、有機酸(例えば、クエン酸)及び向上剤(例えば、ラウロイルカルニチン)を配合したペプチドより実質的に低いことを実証すると予想される。
(0241) 実施例7:腸溶コーティングが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを含む製剤の吸収に及ぼす影響
この実施例では、腸溶コーティングが、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の例示的製剤の吸収に及ぼす影響を実証する。
この実施例では、腸溶コーティングが、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の例示的製剤の吸収に及ぼす影響を実証する。
(0242) サイズ00のUPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の各カプセルに、クエン酸、ラウロイルカルニチン及び芳香族カチオン性ペプチドから成る粉末ブレンドを充填する。カプセルの半分に、EUDRAGIT L30D−55(メタクリル酸メチルエステルとのメタクリル酸コポリマー、マサチューセッツ州メイデンのROUM Tech社)の腸溶コーティング溶液をコーティングし、残りのカプセルにはコーティングを施さない。このコーティング工程は、米国特許第6086918号明細書の第11欄、50行目から第12欄の11行目で教示のものに対応する。腸溶コーティングを施したカプセル及び腸溶コーティングを施していないカプセルについての平均カプセル成分量を表10に示す。
(0243) 8頭の絶食させたイヌに、1個の無コーティングカプセルを1週目に経口投与する。3週目に、各被験体に1個の腸溶コーティングを施したカプセルを経口投与する。各回の投与後に、血液サンプルを、留置カテーテルから4時間にわたって15分間隔で採取する。この血液サンプルを遠心分離にかけ、得られた血漿上清を−20℃で冷凍して保存する。血漿サンプルを、逆相HPLCクロマトグラフィ及び/又は質量分析(MS)で本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドについて分析する。本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの最高血漿濃度を投与量1mgに正規化する。
(0244) 腸溶コーティングが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響における予想される傾向を表10に示す。本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドが、腸溶コーティングを施したカプセル及び無コーティングカプセルを経口投与されたイヌの血漿で検出されると予想される。腸溶コーティングを施したカプセルの投与後、最高血漿濃度は、無コーティングカプセルより約3倍高くなることが予想される。最高血漿濃度には、無コーティングカプセルの投与後30分以内、また腸溶コーティングを施したカプセルの投与後90分以内に到達すると予想される。
(0245) これらの結果は、治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドの吸収が、無コーティングカプセルでは腸溶コーティングを施したカプセルより速い速度で行われ、またコーティングを施したカプセルでは無コーティングカプセルより高い血漿濃度が達成されることを実証すると予想される。より速い吸収速度は、特には全バイオアベイラビリティより速度のほうが重要であるペプチドの場合に有利になり得る(例えば、MPTの阻害)。腸溶コーティングのステップが不要な場合、製造効率における利点ともなり得る。
(0246) 実施例8:例示的製剤が腸溶コーティングを施していないカプセルからの芳香族カチオン性ペプチドの吸収に及ぼす影響
この実施例では、例示的製剤が、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収に及ぼす影響を実証する。
この実施例では、例示的製剤が、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収に及ぼす影響を実証する。
(0247) サイズ00のUPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の各カプセルに、指定量のクエン酸、ラウロイルカルニチン、スクロース及び芳香族カチオン性ペプチドから成る粉末ブレンドを充填する。カプセルの平均カプセル成分量を表11に示す。毎週、8頭の絶食させたイヌのそれぞれに1個の無コーティングカプセルを経口投与する。各回の投与後に、血液サンプルを、留置カテーテルから4時間にわたって15分間隔で採取する。この血液サンプルを遠心分離にかけ、得られた血漿上清を−20℃で冷凍して保存する。血漿サンプルを続いて、逆相HPLCクロマトグラフィ及び/又は質量分析(MS)で芳香族カチオン性ペプチドについて分析する。
(0248) 腸溶コーティングを施していないカプセルからの芳香族カチオン性ペプチドの吸収に例示的製剤が及ぼす影響における予想される傾向を表11に示す。芳香族カチオン性ペプチドを単独で投与すると(例示的製剤I)、クエン酸及び/又はラウロイルカルニチンを含む製剤より血漿濃度が比較的低くなると予想される。ペプチドをラウロイルカルニチン(例示的製剤II)、クエン酸(例示的製剤III)又はその両方(例示的製剤IV)と共に投与すると、血漿濃度が他成分無配合のペプチドで得られるもののそれぞれ50倍、230倍及び270倍まで高くなると予測される。これらの結果は、芳香族カチオン性ペプチド製剤中に酸と吸収性向上剤の両方を含めることの重要性を実証すると予想される。
(0249) 実施例9:例示的製剤が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収に及ぼす影響
サイズ00のUPMCの各カプセルに、少なくとも500mgのクエン酸、50mgのラウロイルカルニチン及び1.0mgの芳香族カチオン性ペプチドPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2若しくはD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2又はその薬学的に許容可能な塩(例えば、アセテート塩、トリフルオロアセテート塩)から成る粉末ブレンドを充填する。毎週、8頭の絶食させたイヌのそれぞれに1個の無コーティングカプセルを経口投与する。各回の投与後に、血液サンプルを、留置カテーテルから4時間にわたって15分間隔で採取する。この血液サンプルを遠心分離にかけ、得られた血漿上清を−20℃で冷凍して保存する。血漿サンプルを続いて、実施例7に記載される通りにPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2又はD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2について分析する。
サイズ00のUPMCの各カプセルに、少なくとも500mgのクエン酸、50mgのラウロイルカルニチン及び1.0mgの芳香族カチオン性ペプチドPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2若しくはD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2又はその薬学的に許容可能な塩(例えば、アセテート塩、トリフルオロアセテート塩)から成る粉末ブレンドを充填する。毎週、8頭の絶食させたイヌのそれぞれに1個の無コーティングカプセルを経口投与する。各回の投与後に、血液サンプルを、留置カテーテルから4時間にわたって15分間隔で採取する。この血液サンプルを遠心分離にかけ、得られた血漿上清を−20℃で冷凍して保存する。血漿サンプルを続いて、実施例7に記載される通りにPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2又はD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2について分析する。
(0250) 腸溶コーティングを施していないカプセルからの本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2又はD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収に例示的製剤が及ぼす影響における予想される傾向を表12に示す。ペプチドを単独で投与すると(例示的製剤I)、クエン酸及び/又はラウロイルカルニチンを含む製剤より血漿濃度が比較的低くなると予想される。ペプチドをラウロイルカルニチン(例示的製剤II)、クエン酸(例示的製剤III)又はその両方(例示的製剤IV)と共に投与すると、血漿濃度が他成分無配合のペプチドで得られるもののそれぞれ50倍、230倍及び270倍にまで高くなると予測される。これらの結果は、Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2ペプチド製剤中に酸と吸収性向上剤の両方を含めることの重要性を実証すると予想される。
(0251) 本方法をその特定の実施形態との関連で説明してきたが、その他多くの変型及び改良型並びに他の用途が当業者には明白となる。したがって、本方法は本明細書の特定のテクノロジーではなく請求項によってのみ限定される。
(0252) 実施例10:腸溶コーティングが本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティに及ぼす影響
この実施例では、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収性に例示的製剤が及ぼす影響を実証する。
この実施例では、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収性に例示的製剤が及ぼす影響を実証する。
(0253) 本明細書に記載の経口製剤中の芳香族カチオン性ペプチドの投与は、主題であるペプチドのバイオアベイラビリティにおける予期せぬ改善をもたらす。
(0254) 第1の一連の試験、すなわちラットでの試験に関し、この改善された効果は、他の成分を配合した芳香族カチオン性ペプチドについての曲線と他の成分を配合していない芳香族カチオン性ペプチドについての曲線とを比較することで実証される。6匹の麻酔をかけたラットの十二指腸に、0.7mLの芳香族カチオン性ペプチド(1.6mg/mL)を、27ゲージの針を取り付けたシリンジで注入する。ラットの大きさの小動物が嚥下できるカプセルの調製に伴う技術的な困難さから、この注入手順を採用する。したがって、この十二指腸への注入は、食道及び胃を通過してその内容物を十二指腸で放出する、腸溶コーティングを施したカプセル製剤の成分放出を模したものである。3匹のラットには、(芳香族カチオン性ペプチド以外の)追加成分を含まない他成分無配合芳香族カチオン性ペプチドを与え、残り3匹のラットには、芳香族カチオン性ペプチドに加えて0.5Mのクエン酸及びラウロイルカルニチン(10mg/ml)を含む他成分配合芳香族カチオン性ペプチドを与える。各製剤(すなわち、他成分配合製剤及び他成分無配合製剤)の投与前と投与から5、15、30、60及び120分後に、血液サンプルを留置カテーテルで頸動脈から採取する。
(0255) 血液サンプルを遠心分離にかけ、得られた血漿上清を−20℃で冷凍して保存する。この血漿サンプルを続いて、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(50x4.6mmポリスルホエチル−アスパルトアミド(aspartamid−e)カラム、15.4mMのリン酸カリウム(pH3)、210mMの塩化ナトリウム及び25%のアクリロニトリルの流量1.5mL/分の移動相)により芳香族カチオン性ペプチドについて分析する。ペプチドを、波長210nmに設定した紫外線(UV)検出装置で検出する。結果は、他成分無配合芳香族カチオン性ペプチドを与えられたラットでは芳香族カチオン性ペプチドが事実上検出できないことを示すと予測され、一方、クエン酸及びラウロイルカルニチンを配合した芳香族カチオン性ペプチドを与えられたラットでは8μg/mLもの芳香族カチオン性ペプチドが検出できると予測される。これらの結果は、本方法に従って芳香族カチオン性ペプチドを経口製剤に処方すると、他成分無配合のペプチドよりC最高及びAUCが上昇することを実証すると予測される。
(0256) 上述したように、ビーグル犬を用いて第2の一連の試験を行う。(1)腸溶コーティングを施していないサケカルシトニン(sCT)及び(2)腸溶コーティングを施していない芳香族カチオン性ペプチドについての曲線を(3)腸溶コーティングを施したsCT及び(4)腸溶コーティングを施した芳香族カチオン性ペプチドについての曲線と比較することで、この第2の一連の試験において、経口投与の芳香族カチオン性ペプチドの改善されたバイオアベイラビリティを実証する。この実験において、サイズ00のHPLCカプセルに、クエン酸(643mg)、ラウロイルカルニチン(66mg)、タルク(33mg)、サケカルシトニン(sCT)(13mg)及び芳香族カチオン性ペプチド(2.4mg)から成る758mgの粉末ブレンドを充填する。カプセルの半分に、L30D−55の腸溶コーティング溶液をコーティングし、残り50%のカプセルにはコーティングを施さない。4頭の絶食させたイヌのそれぞれに1個の無コーティングカプセルを与え、2週間後、それぞれのイヌに腸溶コーティングを施したカプセルを与える。各カプセルの投与後、血液サンプルを、留置カテーテルから4時間にわたって15分間隔で採取する。この血液サンプルを遠心分離にかけ、得られた血漿上清を−20℃で冷凍して保存する。この血漿サンプルを続いてsCTについて直接ELISAにより、また芳香族カチオン性ペプチドについて、Wan,H.and Desiderio,D.,Quantitation of dmt−DALDA in ovine plasma by on−line liquid chromatography/quadrapole time−of−flight mass spectrometry,Rapid Communications in Mass Spectrometry,2003;17,538−546(内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載の通りに行われるHPLC−質量分析により分析する。
(0257) 結果を、平均T最大(すなわち、最大量のペプチドが検出される時間)に対する時間の関数としての投与量1mgに正規化した血漿ペプチド濃度としてまとめる。これらの結果は、両方のペプチド、すなわちsCT及び芳香族カチオン性ペプチドが、コーティングを施していない又は腸溶コーティングを施したカプセルを与えられたイヌにおいて検出されることを示すと予測される。sCTのほぼ3倍もの芳香族カチオン性ペプチドが、無コーティングカプセルを与えられたイヌで検出され、腸溶コーティングを施したカプセルを与えられたイヌでは両方のペプチドがほぼ等量で検出されると予測される。腸溶コーティングを施したカプセルを与えられたイヌの血漿では、無コーティングカプセルを与えられたイヌのほぼ4倍もの芳香族カチオン性ペプチドが検出されると予測される。腸溶コーティングを施したカプセルを与えられたイヌの血漿では、無コーティングカプセルの場合のほぼ8倍ものsCTが検出されると予測される。無コーティングカプセルを与えられたイヌにおける芳香族カチオン性ペプチド及びsCTの最高濃度は投与から30分後に見られると予測され、腸溶コーティングを施されたカプセルを与えた場合のこれらの物質の最高濃度はその投与から105分後に見られると予測され、これは経口製剤が胃を通過するのにより多くの時間を必要とするからであり、通過する間、製剤は胃内のタンパク質分解酵素から保護されたままである。これらの結果は、小腸に到達するまでカプセルがその内容物を放出しないようにカプセルを腸溶ポリマーでコーティングすることでペプチド吸収が著しく増加することを実証すると予測される。
(0258) ペプチドを腸溶コーティングを施したカプセルで投与すると、腸溶コーティングを施していないカプセルと比較して、sCT及び芳香族カチオン性ペプチドの両方についてのC最高及びAUC値が著しく上昇すると予測される。腸溶コーティングを施した芳香族カチオン性ペプチドのC最高は、腸溶コーティングを施していない芳香族カチオン性ペプチドのC最高より4倍高いと予測される。腸溶コーティングを施した芳香族カチオン性ペプチド及び腸溶コーティングを施していない芳香族カチオン性ペプチドの両方のバイオアベイラビリティは、sCTのバイオアベイラビリティより良好であると予測される。正に帯電し且つ親水性の芳香族カチオン性ペプチド等の分子のバイオアベイラビリティは極めて悪くなると予測される。このデータは、このペプチドを本組成物の成分と組み合わせて腸溶コーティングと共に又は腸溶コーティングを伴うことなく投与した場合に、バイオアベイラビリティが、本方法に従って処方するとバイオアベイラビリティが高くなることが既に判明している分子であるsCTのバイオアベイラビリティに勝るレベルにまで上昇することを示すと予測される。
(0259) 実施例11:OmPA−MT3がラットの十二指腸からの本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの吸収に及ぼす影響
以下の実施例では、OmPA−MT3がラットの十二指腸からの本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収に及ぼす影響を実証する。雌のスプラーグ・ドーリーラット(250〜275g)(各ペプチドにつきn=4)にケタミン及びキシラジンで麻酔をかけてから、頸動脈にカニューレを挿入する。このカニューレには三方バルブが取り付けられ、この三方バルブを通して血液サンプルを採取し、また血液をヘパリン含有生理食塩水と置き換える。腹腔を正中切開し、0.5Mのクエン酸中の0.45mLの芳香族カチオン性ペプチド(10mg/mL)又はOmpA−MT3−芳香族カチオン性ペプチド(10mg/mL)を直接、十二指腸に注入する。血液(0.5ml)を、ペプチドの投与前と、投与から5、15、30、45及び60分後に採取する。血液を遠心分離にかけ、血漿上清中の芳香族カチオン性ペプチド又はOmpA−MT3−芳香族カチオン性ペプチドの濃度(.+−.SEM[平均値の標準誤差])を競合酵素免疫測定法(EIA)により求める。ピーク血漿濃度(C最高)は検査により求める。各ペプチドの絶対バイオアベイラビリティ(芳香族カチオン性ペプチドの静注投与量に相対)を、時間の関数として各ペプチドの血漿濃度のプロットから計算する。
以下の実施例では、OmPA−MT3がラットの十二指腸からの本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の吸収に及ぼす影響を実証する。雌のスプラーグ・ドーリーラット(250〜275g)(各ペプチドにつきn=4)にケタミン及びキシラジンで麻酔をかけてから、頸動脈にカニューレを挿入する。このカニューレには三方バルブが取り付けられ、この三方バルブを通して血液サンプルを採取し、また血液をヘパリン含有生理食塩水と置き換える。腹腔を正中切開し、0.5Mのクエン酸中の0.45mLの芳香族カチオン性ペプチド(10mg/mL)又はOmpA−MT3−芳香族カチオン性ペプチド(10mg/mL)を直接、十二指腸に注入する。血液(0.5ml)を、ペプチドの投与前と、投与から5、15、30、45及び60分後に採取する。血液を遠心分離にかけ、血漿上清中の芳香族カチオン性ペプチド又はOmpA−MT3−芳香族カチオン性ペプチドの濃度(.+−.SEM[平均値の標準誤差])を競合酵素免疫測定法(EIA)により求める。ピーク血漿濃度(C最高)は検査により求める。各ペプチドの絶対バイオアベイラビリティ(芳香族カチオン性ペプチドの静注投与量に相対)を、時間の関数として各ペプチドの血漿濃度のプロットから計算する。
(0260) 血中の芳香族カチオン性ペプチドの最高濃度には投与から30〜60分で達すると予測される。OmpA−MT3−芳香族カチオン性ペプチドのC最高は、芳香族カチオン性ペプチドのC最高の25倍を超える高さになると予測される。OmpA−MT3−芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは、芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティの20倍を超える高さになると予測される。これらの結果は、OmpA−MT3を芳香族カチオン性ペプチドに結合させると腸壁を通ってのペプチド吸収が著しく増加することを示す。
(0261) 実施例12:MTとしてのHIV TATタンパク質形質導入ドメインがイヌの十二指腸からの本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの吸収に及ぼす影響
2種の製剤を用いて、MT3−芳香族カチオン性ペプチド融合体の効力を試験する。第1の製剤(F1)を、13gのクエン酸、1.3gのラウロイルカルニチン、0.65gのタルク及び0.03gの芳香族カチオン性ペプチドを乳鉢及び乳棒を使用してブレンドすることで調製する。もう一方の製剤(F2)を、同じ混合物をブレンドすることで調製する。ただし、芳香族カチオン性ペプチドを等量のMT3−芳香族カチオン性ペプチドに置き換える。両方のブレンド物をサイズ00のゼラチンカプセルに充填し、カプセルをEudragit L30D−55でコーティングする。得られた腸溶コーティングを施したカプセルは、1カプセルあたり約1〜2mgの芳香族カチオン性ペプチド(F1)又はMT3−芳香族カチオン性ペプチド(F2)を含有する。絶食させたイヌ(n=8)にF1を口から投与し、血液サンプルをヘパリン処理した試験管にt=−10分、0分及びその後15分毎に240分間にわたって採取する。血液サンプルを遠心分離にかけ、得られた血漿を後の分析用に−20℃で保存する。1週間の休薬期間後、同じイヌにF2を口から与え、同じ手順を繰り返す。
2種の製剤を用いて、MT3−芳香族カチオン性ペプチド融合体の効力を試験する。第1の製剤(F1)を、13gのクエン酸、1.3gのラウロイルカルニチン、0.65gのタルク及び0.03gの芳香族カチオン性ペプチドを乳鉢及び乳棒を使用してブレンドすることで調製する。もう一方の製剤(F2)を、同じ混合物をブレンドすることで調製する。ただし、芳香族カチオン性ペプチドを等量のMT3−芳香族カチオン性ペプチドに置き換える。両方のブレンド物をサイズ00のゼラチンカプセルに充填し、カプセルをEudragit L30D−55でコーティングする。得られた腸溶コーティングを施したカプセルは、1カプセルあたり約1〜2mgの芳香族カチオン性ペプチド(F1)又はMT3−芳香族カチオン性ペプチド(F2)を含有する。絶食させたイヌ(n=8)にF1を口から投与し、血液サンプルをヘパリン処理した試験管にt=−10分、0分及びその後15分毎に240分間にわたって採取する。血液サンプルを遠心分離にかけ、得られた血漿を後の分析用に−20℃で保存する。1週間の休薬期間後、同じイヌにF2を口から与え、同じ手順を繰り返す。
(0262) 2種の製剤のどちらかを与えられたイヌの血漿サンプルにおける芳香族カチオン性ペプチド量は、当分野で公知の方法を用いてHPLCである。どちらの製剤でも測定可能な量の芳香族カチオン性ペプチドが血中で検出されると予測され、F1を与えられたイヌの血中芳香族カチオン性ペプチド最高濃度は0.5〜6.0ng/mlの範囲であると予測され、F2を与えられたイヌにおける芳香族カチオン性ペプチド最高濃度は少なくとも1〜12ng/mlであると予測される。
(0263) F1を与えられたイヌにおける芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは約1%であると予測され、F2を与えられたイヌにおける芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティは少なくとも1.2%であると予測される。F2を与えられたイヌにおける芳香族カチオン性ペプチドからのMTのインビボ切断は、F1及びF2を与えられたイヌから採取した血漿サンプルをHPLCカラムに入れ、プラスチック試験管に溶出物を回収することで証明される。試験管内の溶媒を真空下で除去し、HPLCにより芳香族カチオン性ペプチドの存在について分析する。MT3−芳香族カチオン性ペプチドのインビボ切断は、F2を与えられたイヌから採取した血漿における芳香族カチオン性ペプチドの保持時間がF1を与えられたイヌの血漿における芳香族カチオン性ペプチドの保持時間と同じであることを示すことで立証される。
(0264) 実施例13:向上剤が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの鼻腔内吸収に及ぼす影響
以下の実施例では、向上剤が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の鼻腔内吸収に及ぼす影響を実証する。これらの研究では、体重225〜250gの雌のスプラーグ・ドーリーラットを用いる。ラットを一晩絶食させてから試験物質を投与するが、水は自由に飲めるようにする。ラットにケタミンとキシラジンとの組み合わせで麻酔をかけてから、血液サンプル採取用に頸動脈にカニューレを挿入する。採取する各血液サンプルの体積は0.5mLである。
以下の実施例では、向上剤が本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の鼻腔内吸収に及ぼす影響を実証する。これらの研究では、体重225〜250gの雌のスプラーグ・ドーリーラットを用いる。ラットを一晩絶食させてから試験物質を投与するが、水は自由に飲めるようにする。ラットにケタミンとキシラジンとの組み合わせで麻酔をかけてから、血液サンプル採取用に頸動脈にカニューレを挿入する。採取する各血液サンプルの体積は0.5mLである。
(0265) 左の鼻孔にエッペンドルフマイクロピペットの使い捨てチップで触れ、ピペットのプランジャに静かに圧力をかけることで20μLの剤を投与する。投与前と0.85%の塩化ナトリウム中の芳香族カチオン性ペプチド(1〜2mg/mL)の投与から10、20、40、60及び120分後に血液サンプルを採取する。
(0266) 血漿中の芳香族カチオン性ペプチドの濃度を、ELISAにより求める。簡単に説明すると、このアッセイは、ラットから採取したサンプルを、芳香族カチオン性ペプチドに対するウサギ抗体をコーティングした96ウェルELISAプレートでインキュベートすることから成る。インキュベーション及びプレートの洗浄後、芳香族カチオン性ペプチドに対するヤギ抗体をプレートに加える。未結合のヤギ抗体を洗い流した後、結合した抗体を、ウサギ抗ヤギIgG−ホースラディッシュコンジュゲート及び3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンペルオキシド基質で検出する。
(0267) ラットに、0.85%の塩化ナトリウム及び指定の最終濃度の向上剤を含有する16mMのリン酸ナトリウム/8mmのクエン酸(pH4.8)中の鼻腔内投与用芳香族カチオン性ペプチド(1〜2mg/mL)を与える。
(0268) 0.1%のTween 80を0.2%のLLCに置き換えると、芳香族カチオン性ペプチドの平均C最高が少なくとも3倍に上昇し、またLLCの量を0.5%に上昇させても芳香族カチオン性ペプチドの平均C最高はそれ以上上昇しないことが予測される。0.1%のTween 80を0.2%のSLと置き換えると、芳香族カチオン性ペプチドのC最高が2倍に上昇することが予測される。最高0.5%のSLを添加しても平均C最高がそれ以上は上昇しないことが予測される。しかしながら、1%のSLを製剤に含めると、平均C最高がほぼ4倍に上昇することが予測される。
(0269) ラットに、0.85%の塩化ナトリウム及び指定の最終濃度の向上剤を含有する20mmのクエン酸/クエン酸ナトリウム(pH3.8)中の鼻腔内投与用芳香族カチオン性ペプチド(1mg/mL)を与える。シトレート緩衝剤を添加する前にオレイン酸ナトリウムを製剤に添加する。
(0270) 製剤にスクロースラウレートを添加すると、芳香族カチオン性ペプチドのC最高がほぼ2倍に上昇し、オレイン酸ナトリウムを含めると芳香族カチオン性ペプチドのC最高が2.6倍に上昇すると予測される。pH3.8でオレイン酸ナトリウムはオレイン酸として存在し、水には不溶性である。この問題を解決するために、オレイン酸を製剤にオレイン酸ナトリウムとして添加してからシトレート緩衝剤を添加する。
(0271) 実施例14:本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの投与及び血漿濃度の測定方法
以下の実施例では、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を投与する方法並びに血漿濃度の測定方法について説明する。体重225〜250gの雌のウィスターラットにケタミンとキシラジンとの組み合わせで麻酔をかけてから、頸動脈にカニューレを挿入する。このカニューレには三方バルブが取り付けられ、この三方バルブを通して血液サンプルを採取し、また血液をヘパリン含有生理食塩水と置き換える。他成分配合芳香族カチオン性ペプチド(25μlあたり5μg)を、ラットの鼻孔に8mm挿入したマイクロピペットチップから鼻腔内投与する。単回投与の研究では、5μgの芳香族カチオン性ペプチドを投与する。複数回投与の研究では、芳香族カチオン性ペプチドを各回体積25μlで4回、0、30、60及び90分後に総投与量20μgで投与する。
以下の実施例では、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を投与する方法並びに血漿濃度の測定方法について説明する。体重225〜250gの雌のウィスターラットにケタミンとキシラジンとの組み合わせで麻酔をかけてから、頸動脈にカニューレを挿入する。このカニューレには三方バルブが取り付けられ、この三方バルブを通して血液サンプルを採取し、また血液をヘパリン含有生理食塩水と置き換える。他成分配合芳香族カチオン性ペプチド(25μlあたり5μg)を、ラットの鼻孔に8mm挿入したマイクロピペットチップから鼻腔内投与する。単回投与の研究では、5μgの芳香族カチオン性ペプチドを投与する。複数回投与の研究では、芳香族カチオン性ペプチドを各回体積25μlで4回、0、30、60及び90分後に総投与量20μgで投与する。
(0272) 単回投与の研究においては、投与前及び投与から5、15、30、60及び120分後に血液サンプルを採取する。複数回投与の研究においては、投与前及び1回目の投与から30、60、90、120及び150分後に血液サンプルを採取する。追加投与を行う直前は必ず血液サンプルを採取する。
(0273) 各血液サンプル(0.5ml)をヘパリン処理済みの1mlシリンジに採取し、次に10μlのヘパリン(1mlあたり500U)が入った冷却した1.5mlポリプロピレン試験管に移す。試験管を約3000rpmで20分間にわたって2〜8℃で遠心分離にかけ、血漿上清を−20℃で保存された微量遠心機試験管に移す。血漿中の芳香族カチオン性ペプチドの濃度を、当該分野で公知の方法を用いてHPLCにより求める。
(0274) C最高の値を検査により求め、バイオアベイラビリティの値(静注投与量に相対)を、時間の関数として血漿芳香族カチオン性ペプチド濃度のプロットから得られる曲線下の面積から計算する。
(0275) 以下の実施例では、クエン酸濃度が、経鼻投与される本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2のバイオアベイラビリティ及び血漿濃度に及ぼす影響を実証する。ラットに、pH=3.7に調節した0.85%の塩化ナトリウム、0.1%のTween 80、0.2%のフェニルエチルアルコール、0.5%のベンジルアルコール及び様々な量のクエン酸中の20μlの芳香族カチオン性ペプチド(200μg/ml)を上述した通りにt=0、20、60及び90分で鼻腔内投与する。血液サンプルを、これらの時点での芳香族カチオン性ペプチドの投与前並びにt=120及び150分で採取する。得られた血漿サンプルを、芳香族カチオン性ペプチドについてHPLCで分析する。最高芳香族カチオン性ペプチドレベルはt=120分で検出されると予測される。芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティ及びピーク濃度は、製剤中のクエン酸濃度の関数になると予測される。製剤中のクエン酸濃度が比較的高くなると、クエン酸を欠いたコントロール製剤と比較してバイオアベイラビリティ及びピーク血清濃度のレベルが高くなると予測される。
(0276) 以下の研究では、様々な防腐剤が経鼻投与される本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチド、例えばPhe−D−Arg−Phe−Lys−NH2及びD−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2の血漿濃度に及ぼす影響を実証する。ラットに、0.85%の塩化ナトリウム、0.1%のTween 80及び0.2%のフェニルエチルアルコールと0.5%のベンジルアルコールとの防腐剤組み合わせ又は0.27%のメチルパラベンと0.04%のプロピルパラベンとの防腐剤組み合わせ中の20μlの芳香族カチオン性ペプチド(200μg/ml)を上述した通りにt=0、30、60及び90分で鼻腔内投与する。芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティ及びピーク濃度は、様々な防腐剤の添加の影響を大きくは受けないことが予測される。
(0277) 以下の研究では、クエン酸濃度が、異なる期間にわたって温度50℃で保存される芳香族カチオン性ペプチドの安定性に及ぼす影響を実証する。芳香族カチオン性ペプチド(200μg/ml)、0.25%のフェニルエチルアルコール、0.5%のベンジルアルコール及び0.1%のTween 80を含有する経鼻投与用製剤のpHを3.7にHCl又は指定量の緩衝クエン酸で調節する。製剤を50℃で封止ガラス容器内で指定期間にわたって保存し、高速液体クロマトグラフィで芳香族カチオン性ペプチドについて分析する。クエン酸の不在下、製剤中の芳香族カチオン性ペプチド量は0〜9日の間に着実に減少するが、クエン酸の存在下では(10〜50mM)、芳香族カチオン性ペプチドの消失速度が著しく低下することが予測される。クエン酸濃度を更に上昇させるにつれて、50℃で保存されたバイアルからの芳香族カチオン性ペプチドの消失速度は製剤中の緩衝クエン酸量に比例して上昇すると更に予測される。
(0278) 本方法をその特定の実施形態との関連で説明してきたが、その他多くの変型及び改良型並びに他の用途が当業者には明白となる。したがって、本方法は本明細書の特定の開示ではなく請求項によってのみ限定される。
Claims (39)
- 芳香族カチオン性ペプチドの経口送達に適した最終医薬品であって、
(a)治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドと、
(b)少なくとも1種の薬学的に許容可能なpH低下剤と、
(c)有効成分のバイオアベイラビリティの増進に効果的な少なくとも1種の吸収性向上剤とを含み、
前記pH低下剤が、前記医薬品を10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム水溶液に添加した場合に、前記溶液のpHを5.5以下まで低下させるのに十分な量で前記最終医薬品中に存在し、
前記医薬品の外面は耐酸性保護ビヒクルを実質的に有さないことを特徴とする、最終医薬品。 - 前記pH低下剤が、前記医薬品を10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム溶液に添加した場合に、前記溶液のpHを3.5以下まで低下させるのに十分な量で存在する、請求項1に記載の最終医薬品。
- 前記吸収性向上剤が、吸収性又は生分解性の界面活性剤である、請求項1に記載の最終医薬品。
- 前記界面活性剤が、アシルカルニチン、リン脂質、胆汁酸及びスクロースエステルから成る群から選択される、請求項3に記載の最終医薬品。
- 前記吸収性向上剤が、
(a)コレステロール誘導体であるアニオン剤、
(b)負電荷中和剤とアニオン性界面活性剤との混合物、
(c)非イオン性界面活性剤、及び、
(d)カチオン性界面活性剤
から成る群から選択される界面活性剤である、請求項1に記載の最終医薬品。 - 前記芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティを向上させるのに効果的な、生理学的に活性なペプチドではないある量の第2ペプチドを更に含む、請求項1に記載の最終医薬品。
- 前記少なくとも1種のpH低下剤が、室温の水100ミリリットルあたり少なくとも30グラムである水への溶解度を有する、請求項1に記載の最終医薬品。
- 医薬用結合剤と、
前記結合剤中に均一に分散した前記pH低下剤、前記吸収性向上剤及び前記芳香族カチオン性ペプチドとを含有する顆粒を含む、請求項1に記載の最終医薬品。 - 前記少なくとも1種の薬学的に許容可能なpH低下剤を含む第1層と、前記治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドを含む第2層とを有する積層体を含み、
前記有効成分のバイオアベイラビリティの増進に効果的な少なくとも1種の吸収性向上剤を更に含み、
前記第1層及び前記第2層は一体化されているが、前記少なくとも1種のpH低下剤及び前記芳香族カチオン性ペプチドを前記積層体内で実質的に分離させて、約0.1%未満の前記芳香族カチオン性ペプチドが前記pH低下剤と接触し、第1層材料と第2層材料との間での実質的な混合を防止して、前記pH低下剤と前記芳香族カチオン性ペプチドとの間での前記積層体における相互作用を回避する、請求項1に記載の最終医薬品。 - 前記pH低下剤が、クエン酸、酒石酸及びアミノ酸の酸性塩から成る群から選択される、請求項1に記載の最終医薬品。
- 前記pH低下剤が、ジカルボン酸及びトリカルボン酸から成る群から選択される、請求項1に記載の最終医薬品。
- 前記pH低下剤が、300ミリグラム以上の量で存在する、請求項1に記載の最終医薬品。
- 前記芳香族カチオン性ペプチドが、アミノ酸配列Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2を含む、請求項1に記載の最終医薬品。
- 前記芳香族カチオン性ペプチドが、アミノ酸配列D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を含む、請求項1に記載の最終医薬品。
- 前記芳香族カチオン性ペプチドが、次のペプチド群から選択される、請求項1に記載の最終医薬品。
- 経口で送達される治療用芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティの向上を必要とする被験者において、それを向上させる方法であって、
前記芳香族カチオン性ペプチドを、少なくとも1種のpH低下剤及び少なくとも1種の吸収性向上剤と共に、前記芳香族カチオン性ペプチドの送達に適した最終医薬品から被験者の消化管に選択的に放出することを含み、
前記医薬品の外面は耐酸性保護ビヒクルを実質的に有さず、前記医薬品は、10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム水溶液に添加した場合に、前記溶液のpHを5.5以下まで低下させるのに十分な量で消化管に放出されることを特徴とする、方法。 - 前記治療用芳香族カチオン性ペプチド、前記少なくとも1種のpH低下剤及び前記少なくとも1種の吸収性向上剤は、耐酸性保護ビヒクルを備えた対応する医薬組成物より迅速に前記最終医薬品から放出される、請求項16に記載の方法。
- 前記芳香族カチオン性ペプチドの最高血漿濃度が、被験者において60分以内に達成される、請求項16に記載の方法。
- 前記pH低下剤が、全成分を10ミリリットルの0.1Mの炭酸水素ナトリウム水溶液に添加した場合に、前記溶液のpHを3.5以下まで低下させるのに十分な量で存在する、請求項16に記載の方法。
- 前記吸収性向上剤が、カチオン性界面活性剤、及び、コレステロール誘導体であるアニオン性界面活性剤から成る群から選択される、請求項16に記載の方法。
- 前記pH低下剤が、4.2以下のpKa及び室温の水100ミリリットルあたり少なくとも30グラムである水への溶解度を有する、請求項16に記載の方法。
- 前記pH低下剤が、300ミリグラム以上の量で存在する、請求項17に記載の方法。
- 前記芳香族カチオン性ペプチドが、アミノ酸配列Phe−D−Arg−Phe−Lys−NH2を含む、請求項16に記載の方法。
- 前記芳香族カチオン性ペプチドが、アミノ酸配列D−Arg−2’6’−Dmt−Lys−Phe−NH2を含む、請求項16に記載の方法。
- 前記芳香族カチオン性ペプチドが、次のペプチド群から選択される、請求項16に記載の方法。
- 芳香族カチオン性ペプチドを経口送達するための医薬組成物であって、
(A)酵素によりインビボで活性ペプチドから少なくとも部分的に切断可能な膜トランスロケータに連結された治療有効量の芳香族カチオン性ペプチドと、
(B)少なくとも1種の薬学的に許容可能なpH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤と、
(C)前記芳香族カチオン性ペプチドと胃プロテアーゼとの接触を防止しつつ患者の胃を通して医薬組成物を輸送するのに効果的な耐酸性保護ビヒクルと
を含むことを特徴とする、医薬組成物。 - 経口的に送達される生理学的芳香族カチオン性ペプチドのバイオアベイラビリティを向上させる方法であって、
(A)芳香族カチオン性ペプチドを、酵素によりインビボで少なくとも部分的に切断可能な膜トランスロケータに連結させること、及び、
(B)胃プロテアーゼと前記芳香族カチオン性ペプチドとの接触を実質的に防止する耐酸性保護ビヒクルの保護下での前記芳香族カチオン性ペプチド、pH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤の患者の口及び胃の通過に続いて、前記膜トランスロケータに連結させた前記芳香族カチオン性ペプチドを、前記少なくとも1種のpH低下剤及び/又はプロテアーゼ阻害剤と共に、患者の腸に選択的に放出すること
を含むことを特徴とする、方法。 - 芳香族カチオン性ペプチドを経鼻送達するための医薬組成物であって、
(1)芳香族カチオン性ペプチドと、
(2)脂肪酸、脂肪酸の糖エステル及びこれらの混合物から成る群から選択されるバイオアベイラビリティ向上剤と
を含むことを特徴とする、医薬組成物。 - 芳香族カチオン性ペプチドを経鼻送達するための医薬組成物であって、
(1)芳香族カチオン性ペプチドと、
(2)脂肪酸の糖エステルと、
(3)アシルカルニチンと
を含むことを特徴とする、医薬組成物。 - 芳香族カチオン性ペプチドを経鼻送達するための医薬組成物であって、
(1)芳香族カチオン性ペプチドと、
(2)オレイン酸と、
(3)スクロースラウレートと、
(4)クエン酸、クエン酸塩並びにクエン酸及びクエン酸塩の混合物から成る群から選択されるシトレート系バイオアベイラビリティ向上剤と
を含み、3.0以上、6.5以下のpHに緩衝された水溶液であることを特徴とする、医薬組成物。 - 芳香族カチオン性ペプチドを経鼻送達するための医薬組成物であって、
(1)芳香族カチオン性ペプチドと、
(2)L−ラウロイルカルニチンと、
(3)スクロースラウレートと、
(4)クエン酸、クエン酸塩並びにクエン酸及びクエン酸塩の混合物から成る群から選択されるシトレート系バイオアベイラビリティ向上剤と
を含み、3.0以上、6.5以下のpHに緩衝された水溶液であることを特徴とする、医薬組成物。 - 液体医薬組成物であって、芳香族カチオン性ペプチド又はその酸付加塩と、濃度10〜約50mMのクエン酸及び/又はその塩とを含み、経鼻投与に適した形態であることを特徴とする、液体医薬組成物。
- 経鼻投与用の液体医薬組成物であって、
芳香族カチオン性ペプチド又はその酸付加塩と、
クエン酸、クエン酸塩及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるバイオアベイラビリティ向上剤とを含み、
全バイオアベイラビリティ向上剤の合計濃度が10〜25mMであり、前記組成物のpHが約3.5〜約3.9であることを特徴する、液体医薬組成物。 - 液体医薬組成物であって、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドと、約10mMのクエン酸と、約0.2%のフェニルエチルアルコールと、約0.5%のベンジルアルコールと、約0.1%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートとを含むことを特徴とする、液体医薬組成物。
- 経鼻投与用の液体医薬組成物であって、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドと、約20mMのクエン酸と、約0.2%のフェニルエチルアルコールと、約0.5%のベンジルアルコールと、約0.1%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエートとを含むことを特徴とする、液体医薬組成物。
- 本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドをそれを必要としている被験者に投与する方法であって、
被験者に、本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを含む組成物を経鼻的に投与することを含むことを特徴とする、方法。 - 本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの液体医薬組成物の安定性を改善する方法であって、
組成物にクエン酸又はその塩を10〜約50mMの濃度で添加することを含むことを特徴とする、方法。 - 本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの液体医薬組成物の経鼻投与に続いて被験者においてバイオアベイラビリティ又は血漿の本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドの濃度を改善する方法であって、
投与に先立って組成物にクエン酸又はその塩を10〜約50mMの濃度で添加することを含むことを特徴とする、方法。 - 体重過多の状態又は肥満を処置又は予防する方法であって、
必要としている被験者に、有効量の本テクノロジーの芳香族カチオン性ペプチドを、アミノ酸配列Cys−Ser−Asn−Leu−Ser−Thr Cys−Val−Leu−Gly−Lys−Leu−Ser−Gln−Glu−Leu−His−Lys−Leu−Gln−Thr−Tyr−Pro−Arg−Thr−Xaa−Xaa−Gly−Xaa−Xaa−Thr−Xaaを有するペプチドと共に投与することを含み、
アミノ酸26、27、28、29及び31はいずれの天然のアミノ酸にもなり得て、アミノ酸31は任意でアミド化されることを特徴とする、方法。
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