JP2014514365A - 虚血性脳損傷及び疼痛治療用の効率的な神経保護剤としてのpsd−95の高親和性二量体阻害剤 - Google Patents

虚血性脳損傷及び疼痛治療用の効率的な神経保護剤としてのpsd−95の高親和性二量体阻害剤 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、nNOS、PSD-95、及びNMDA受容体の3元タンパク質複合体に対する新規の強力な阻害剤と、被験体における興奮毒性関連疾患及び慢性疼痛状態の予防及び/又は治療用の阻害剤を含む医薬組成物とを提供する。
【解決手段】阻害剤は、リンカーにより第2のペプチド又はペプチド類似体に結合された第1のペプチド又はペプチド類似体を含む二量体PSD-95阻害剤であり、第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体は、配列YTXV又はYSXVを有する少なくとも4個のアミド結合残基を含み、a.Yは、E、Q、及びAから選択されるか、或いはその類似体であり、b.Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-Nから選択されるか、或いはその類似体であり、細胞透過性ペプチド(CPP)は、リンカー、又は第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体のアミノ酸側鎖に結合される。リンカーは、PEG又はNPEGリンカーにすることができる。
【選択図】図1

Description

足場タンパク質PDS-95は、虚血性発作及び外傷性脳損傷と、神経因性疼痛及び炎症性疼痛等の慢性疼痛状態との治療の潜在的標的となる。本発明は、PSD-95に関連するタンパク質間相互作用の阻害剤として機能する二量体ペプチド類似体の提供を対象とする。
タンパク質間相互作用(PPI)は、重要な細胞プロセスであり、多数の病態生理学的状態に関与し、治療的介入の潜在的標的の役割を果たす。PPIは、これまで一般に治療用分子の標的にするのが困難であると認識されており、これは、PPIが大きく平坦で疎水性の界面を特徴とする場合が多いためである。
PPIのクラスには、PDZドメインを含むものがある[PDZは、postsynaptic density protein-95(PSD-95)、Drosophila homologuediscs large tumor suppressor(DlgA)、及びzonula occludens-1 protein(ZO-1)の略語]。PDZドメインは、細胞内で大きなタンパク質複合体を組み立てる事に関与する足場タンパク質内のモジュールとして機能することが多く、真核生物には非常に多く存在する。PDZドメインは、約90個のアミノ酸を含み、一般に、相互作用タンパク質のC末端と相互作用する。PSD-95は、3つのPDZドメイン、PDZ1乃至3を含み、これらはコンセンサス配列Glu/Gln-Ser/Thr-X-Val-COOHを有するペプチドリガンドと結合する。
PDZドメインのC末端ペプチドとの相互作用の構造的基礎は、天然ペプチドリガンドCRIPT(配列:YKQTSV)と複合体化したPSD-95のPDZ3のX線結晶構造により最初に解明された。PDZ3は、6本の逆平行β鎖(βA乃至βF)及び2本のαヘリックス(αA及びαB)を含み、C末端ペプチドリガンドは、付加的な逆平行β鎖として、βB鎖とαBヘリックスとの間の溝内に結合する。ペプチドリガンド内の2個の残基である第1(P0)及び第3(P-2)のアミノ酸(C末端からの順番)は、親和性及び特異性にとって特に重要と考えられる。P0位置のアミノ酸の側鎖は、疎水性ポケット内へ突き出しており、脂肪族側鎖(Val、Ile、及びLeu)を有するアミノ酸が必要となる。PDZ3-CRIPT構造において、Thr(P-2)のヒドロキシル酸素は、His372のイミダゾール側鎖の窒素との水素結合を形成する。PDZドメインの保存Gly-Leu-Gly-Phe(PDZ3内の位置322乃至325)モチーフ及び正荷電残基(PDZ3内のArg318)は、C末端のカルボキシレート基との結合を仲介する。
PSD-95のPDZ1及びPDZ2ドメインは、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型のイオンチャネル型グルタミン酸受容体と、一酸化窒素生成酵素である神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)との同時結合を含め、幾つかのタンパク質と相互作用する(図1)。NMDA受容体は、神経変性疾患及び急性脳損傷に関与する興奮毒性の主要な仲介因子であり、NMDA受容体のアンタゴニストは、グルタミン酸が媒介するイオン流を妨げることで、興奮毒性を効率的に低下させるが、生理学的に重要なプロセスも妨げる。したがって、NMDA受容体アンタゴニストは、低耐性及び効能の欠如のため、脳卒中の臨床試験では不合格となってきた。代わりに、興奮毒性の特異的阻害は、細胞内のnNOS/PSD-95/NMDA受容体複合体をPSD-95阻害剤により撹乱することにより得ることができる(図1)。PSD-95は、NMDA受容体、主にGluN2A及びGluN2Bサブユニットと、nNOSとに、PDZ1及びPDZ2を介して同時に結合する。NMDA受容体の活性化は、カルシウムイオンの流入を発生させ、これによりnNOSを活性化することで、一酸化窒素(NO)の生成をもたらす。したがって、PSD-95は、NMDA受容体活性と、長期に亘って継続された場合、細胞に有害となり得るNO生成との特異的な関連を仲介し、グルタメート媒介神経毒性の主要なファシリテータとなる(図1)。PSD-95を標的とすることによるnNOS/PSD-95/NMDA受容体相互作用の3元複合体の阻害は、カルシウムイオンの流入とNO生成との間の機能的な結び付きを減じることにより、マウスの虚血性脳損傷を防止することが知られており、一方で、イオン流及び生存促進シグナリング経路といったNMDA受容体の生理機能を完全に維持する。
nNOS/PSD-95/NMDA受容体複合体の阻害は、これまで、膜及び血液脳関門透過性を促進する能力を有することで知られる、HIV-1 Tatペプチドと融合したGluN2BのC末端に対応するノナペプチドにより達成されてきた。この20merのペプチド(Tat-NR2B9c、配列:YGRKKRRQRRRKLSSIESDV)は、虚血性脳損傷のラットモデルにおいて有望な神経保護特性を示し(Aarts et al., Science 298, 2002, p.846-850, 2002; Sun et al., Stroke 39, 2008, p.2544-2553)、脳卒中において見られるような脳血管虚血の治療用となり得る薬物として現在臨床試験中である。しかしながら、この化合物は、PSD-95のPDZ1-2に対する親和性が低く(Ki=4.6μM、後述)、潜在的に非効率な非選択性の化合物となっている。
WO2010/004003
Aarts et al., Science 298, 2002, p.846-850, 2002; Sun et al., Stroke 39, 2008, p.2544-2553
WO2010/004003には、PSD-95のPDZ1及びPDZ2ドメインに同時結合する、ポリエチレングリコールリンカー(PEG)により結合された二量体ペプチドリガンドと、脳血管虚血の治療におけるその使用とが記載されている。PDZ1及びPDZ2ドメインに対するより高い親和性を有し、虚血性発作及び外傷性脳損傷の治療について改善された治療的効果をin vivoで有するPSD-95阻害剤に対する必要性は依然として存在する。
神経因性疼痛は、外傷性損傷、手術、或いは、糖尿病又は自己免疫障害等の疾病による末梢又は中枢神経系に対する損傷により発生する。こうした損傷は、「侵害受容性疼痛」及び炎症を特徴とする急性期反応をもたらす。大部分の患者では、負傷の治癒にもかかわらず痛みが持続し、慢性神経因性疼痛の状態が生じる。神経損傷後の炎症の関与に加え、慢性疼痛は、疼痛経路の鋭敏化を引き起こす免疫細胞により放出された仲介因子が誘発する炎症により開始され得る。脊髄知覚神経の鋭敏化(「ワインドアップ」)は、神経因性疼痛と慢性炎症性疼痛とに共通した特徴であり、侵害受容体の長期的活性化により誘発される。症状は、自発的灼熱痛、痛刺激に対する過剰な反応(痛覚過敏)、及び通常は非疼痛性である刺激に対する痛み(異痛症)として現れる。慢性疼痛、特に神経損傷の結果であるものは、オピオイド及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)等の現行の薬物では、十分に管理されない。NMDA受容体アンタゴニストは、疼痛反応の鋭敏化を遮断し、動物モデル及び臨床状態において良好な鎮痛特性を示すが、許容できない副作用を伴うため、臨床的に使用できない。したがって、現行薬物の許容できない副作用を回避しつつ、疼痛治療、特に、NMDA受容体に関連する疼痛症状を改善可能である代替薬物に対する必要性が存在する。
本発明の第1の実施形態は、リンカーにより第2のペプチド又はペプチド類似体に結合された第1のペプチド又はペプチド類似体を含む化合物を提供し、第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体は、配列YTXV又はYSXVを有する少なくとも4個のアミド結合残基を含み、
a. Yは、E、Q、及びAから選択されるか、或いはその類似体であり、
b. Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-Nから選択されるか、或いはその類似体であり、
細胞透過性ペプチド(CPP)の機能を有する第3のペプチドは、リンカーに結合され、第3のペプチドは、アルギニン及び/又はリジンから選択された少なくとも4個のアミノ酸残基を含む。好ましくは、リンカーは、PEGを含み、PEGの少なくとも1個の酸素原子は、窒素原子に置換され、NPEGとなり、好ましくは、第3のペプチドは、NPEGリンカーの窒素原子と、好ましくはアミド結合により結合される。
本発明の第2の実施形態は、リンカーにより第2のペプチド又はペプチド類似体に結合された第1のペプチド又はペプチド類似体を含む化合物を提供し、リンカーは、PEGを含み、第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体は、配列YTXV又はYSXVを有する少なくとも4個のアミド結合残基を含み、
a. Yは、E、Q、及びAから選択されるか、或いはその類似体であり、
b. Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-Nから選択されるか、或いはその類似体であり、第3のペプチドが第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体の残基の1つの側鎖に結合されることを特徴とし、第3のペプチドは、アルギニン及び/又はリジンから選択された少なくとも4個のアミノ酸残基を含み、細胞透過性ペプチド(CPP)の機能を有する。
本発明の前記化合物の他の実施形態において、リンカーは、1乃至28個のエチレングリコール部分(N=1乃至28)、好ましくは4乃至12個のエチレングリコール部分(N=4乃至12)、更に好ましくは4乃至6個のエチレングリコール部分(N=4乃至6)を含む、PEGリンカーである。本発明の化合物の他の実施形態において、リンカーは、PEG-二酸又はNPEG-二酸であり、リンカーの各カルボキシル基は、第1又は第2のペプチド又はペプチド類似体の末端残基の末端アミノ基にアミド結合により結合される。
本発明の前記化合物の他の実施形態において、第3のペプチド(CPP)は、レトロインバーソペプチドを含む。本発明の前記化合物の他の実施形態において、第3のペプチド(CPP)は、Tatペプチド(YGRKKRRQRRR)又はレトロインバーソ-D-Tatペプチド(rrrqrrkkr)である。
本発明の前記化合物の他の実施形態において、ペプチド又はペプチド類似体は、5乃至10個のアミド結合残基の長さである。本発明の前記化合物の他の実施形態において、ペプチドは、少なくとも4個のL-アミノ酸残基を含む。本発明の前記化合物の他の実施形態において、Xは、A、Q、及びDから選択される。本発明の前記化合物の他の実施形態において、ペプチド又はペプチド類似体は、N-アルキル化される。
本発明は、更に、PEG-二酸を含むリンカー化合物を提供し、PEGの1個の酸素原子は、窒素原子に置換され、NPEG-二酸となる。本発明のリンカー化合物の他の実施形態において、窒素原子は、保護基に結合される。
本発明は、更に、薬剤として使用するための、本発明の前記実施形態の何れかによる化合物を含む医薬組成物を提供する。他の実施形態において、本発明の前記実施形態の何れかによる化合物を含む医薬組成物は、被験体における興奮毒性関連疾患の予防及び/又は治療において使用するためのものである。
本発明は、更に、被験体における疼痛の予防及び/又は治療に使用するための、本発明の前記実施形態の何れかによる化合物を含む医薬組成物を提供する。
本発明は、更に、被験体における興奮毒性関連疾患又は疼痛の予防及び/又は治療を提供する方法を含み、方法は、前記医薬組成物を被験体に投与することを含み、前記疾患は、CNSの虚血性又は外傷性損傷であり得る。
他の実施形態において、本発明は、被験体における疼痛の予防及び/又は治療用の医薬組成物を提供し、前記組成物は、活性化合物を含み、前記活性化合物は、リンカーにより第2のペプチド又はペプチド類似体に結合された第1のペプチド又はペプチド類似体を含み、第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体は、配列YTXV又はYSXVを有する少なくとも4個のアミド結合残基を含み、(a)Yは、E、Q、及びAから選択されるか、或いはその類似体であり、(b)Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-Nから選択されるか、或いはその類似体である。他の実施形態において、前記活性化合物のリンカーは、PEGリンカー又はNPEGリンカーであり、4乃至28個のエチレングリコール部分を含む(N=4乃至28)。他の実施形態において、前記活性化合物内のリンカーのカルボキシル基は、第1又は第2のペプチド又はペプチド類似体の末端残基に結合される。他の実施形態において、前記活性化合物は、PEG4(IETAV)2、NPEG4(IETAV)2、PEG6(IESDV)2、及びPEG4(IESDV)2から選択される。
前記活性化合物は、更に、アルギニン及び/又はリジンから選択された少なくとも4個のアミノ酸残基を含み且つCPPの機能を有する第3のペプチドを有し、第3のペプチドは、リンカーに結合されるか、或いは、第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体のアミノ酸の側鎖に結合される。
PSD-95は、そのPDZ1及びPDZ2ドメインを介してNMDA受容体及びnNOSに同時に結合する。これにより、PSD-95は、NMDA受容体からのカルシウム(Ca2+)の流入がnNOSを活性化する際に、NMDA受容体活性化とNO生成との間の機能的な結び付きを促進する。PSD-95のPDZ1-2を標的とする図示した二量体リガンド等のPSD-95阻害剤は、3元のnNOS/PSD-95/NMDA受容体複合体の形成を阻害し、NMDA受容体活性とNO生成との間の結び付きを切り離すことにより、興奮毒性に対する神経保護を達成する。 PEG4-二酸及びNPEG4-二酸リンカーと、二量体化合物AB125及びAB141との化学構造を示す図である。 二量体リガンドAB144及びAB147の化学構造を示す図であり、その全体構造と、ペンタペプチド部分、Tat配列、及びレトロインバース-D-Tat配列を1文字のアミノ酸コードにより記載した代替表現とを示す図である。 蛍光偏光アッセイにおけるプローブとして使用され、及び/又はCNS透過性の研究に使用される、蛍光性二量体リガンドAB143及びAB145の化学構造を示す図である。 蛍光偏光により測定したPSD-95のPDZ1-2に対する親和性(左)及び、37℃のヒト血漿中におけるin vitroでの安定性(右)を示す図である。親和性定数Ki及び安定性半減期(T1/2)を表に記載している。表内のデータ及び蛍光偏光グラフ(左)は、3回以上の個別の測定を表しており、血漿のグラフ(右のグラフ)には1回の実験の代表データを示している。 遊離AB140(輪郭:I1、E2、T3、A4、及びV5)及びPSD-95からのPDZ1-2との複合体内のAB140(残りのa/b輪郭)の1H-15N相関スペクトル(NMR)を示す図である。帰属はスペクトル内に示している。ジペプチドの結合形態について、どのPDZドメインに「a」ピーク及び「b」ピークがそれぞれ結合するかの判定は試みていない。 プログラムSSPを用いて計算したAB140の結合形態の2次構造傾向を示す図である。1の値は、完全に形成されたαヘリックスを示し、-1の値は、完全に伸びた構造を示す一方、0に近い値は、ランダムコイルを示す。黒い棒は、図6において「a」と記載された残基、灰色の棒は、「b」と記載された残基に対応する。 非操作マウスにおける蛍光性類似体の血液脳関門透過性を示す図である。(A)静脈(i.v.)注射の2時間後における5-FAM(F)標識化合物の平均蛍光強度を、生理食塩水処置マウスと比較した棒グラフである。(B)F-Tat-NPEG4(IETDV)2(AB145)(n=2)、F-レトロインバーソ-D-Tat-NPEG4(IETDV)2(AB148)(n=2)、及びF-Tat-NR2B9c(MS23)(n=2)は検出されたが、F-NPEG4(IETAV)2(AB143)(n=2)は検出されなかったことを、生理食塩水マウス(n=2)と比較して示す。F=5-FAM、Re=レトロインバーソ。データは平均値±SEMとして提示。*/**/***:p<0.05/0.01/0.001(ノンパラメトリックマンホイットニ)。スケールバー:100μm。 pMCAO実験のタイムラインを示す図である。全ての化合物は、手術の30分後にi.v.投与し(3nmol/g)、その後の生存期間を5.5又は47.5時間とした。 6時間の手術後生存期間後の化合物の神経保護作用を示す図である。棒グラフは、pMCAOの6時間後の平均梗塞体積を示す。AB144処置は、生理食塩水処置した対照マウスと比較して、虚血性脳損傷を有意に減少させ、単量体Tat-NR2B9c処置では効果が得られなかった(n=16乃至19)。データは平均値±SEMとして示す。*/**/***:p<0.05/0.01/0.001。ノンパラメトリックマンホイットニ検定。 48時間の手術後生存期間後の化合物の神経保護作用を示す図である。トルイジンブルー染色は、pMCAOの48時間後の虚血性脳損傷を示す。スケールバー:1mm。 48時間の手術後生存期間後の化合物の神経保護作用を示す図である。棒グラフは、生理食塩水処置した対照マウスと比較して、より長く継続するAB144の梗塞減少効果と共に、単量体Tat-NR2B9cにより処置したマウスと比較して有意に小さな梗塞を示している(n=16乃至19)。更に、AB147は、AB144に類似した長く継続する梗塞の減少をもたらした。データは平均値±SEMとして示す。*/**/***:p<0.05/0.01/0.001、ノンパラメトリックマンホイットニ検定。 (左)温度及び(右)体重等の生理的パラメータをpMCAO(48時間の実験)前後に記録した。時点(x軸)は、手術(0h)と相対的な時間を示す。(左)グラフは、pMCAOの30分後に、麻酔による体温の低下を示しているが、しかしながら、これはi.v.注射の前に記録された。手術の1及び3時間後の群では、薬物による差は記録されなかった。(右)グラフは、pMCAO(0h)の3日前と24時間及び48時間後とにおいて、群間で体重の差がないことを示している。データは平均値±SEMとして示す。2元ANOVA。 手術後48時間生存したマウスの運動機能評価を示す図である。(A)棒グラフは、pMCAOの前(ベースライン)と後の両前足の平均握力を示す。生理食塩水及びTat-NR2B9c処置マウスは、pMCAOの48時間後にベースラインと比較して握力の大幅な減少を示した。AB144及びAB147により処置したマウスでは、ベースラインとの差は観察されなかった。(B)棒グラフは、虚血により生じた前足の非対称性を示しており、生理食塩水及び単量体Tat-NR2B9c処置マウスでは共に観察されたが、しかしながら、AB144及びAB147処置マウスでは観察されなかった。(C)4回の試行(T1乃至T4)によるロータロッド試験であり、pMCAO後48時間のマウスの短期運動学習スキルを示している。データは、全てのマウス群において試行に対応する学習部分を示しているが、しかしながら、AB144及びAB147による処置では、生理食塩水と比較して、より顕著に向上しており(T2参照)、Tat-NR2B9cと比較して、持続性が増加している(本文参照).(A乃至C)全てのデータは平均値±SEMとして示す。*/**/***:p<0.05/0.01/0.001、(A及びB)対応のあるスチューデントt検定、(C) ウイルコクソンの符号付順位和検定。 AB144類似体:AB144_B、AB144_C、AB144_D、AB144_E、AB144_H、AB144_Iの化学構造を示す図であり、図3の下部に示したものと同じ様式の構造表現とした。 スキーム1。NPEGに基づく二量体化合物を作成する二量化プロセスにおいて用いられる、N保護(Ns)形態のNPEGリンカーA乃至C(Ns-NPEG4-二酸リンカー)の合成を示す図である。Ns-NPEG4-二酸リンカーAは、AB141、AB144、AB147、AB144_D、AB144_E、AB143、AB145、及びAB148に用いられる。Ns-NPEG4-二酸リンカーBは、AB144_Bに用いられる。Ns-NPEG4-二酸リンカーCはAB144_Cに用いられる。 炎症性疼痛の完全フロイントアジュバントモデルにおけるAB125の効果を示す図である。動物は、検定の24時間前に足底内でCFA、腹腔内でAB125により処置した(0、3、10、又は30mg/kg)。機械的痛覚過敏/異痛症をフォンフライ法により測定した。データは平均値±SEMにより表現し、ベースライン値に対する足引っ込め閾値を示す(即ち、<1.0が痛覚過敏/異痛症に対応)。生理食塩水処置マウスは、CFAに対する顕著な反応を示し、機械的閾値がベースラインの36%まで減少した(###、p<0.001)。この減少は、3、10、又は30mg/kgのAB125により処置したマウスには見られなかった。3、10、又は30mg/kgのAB125により処置したマウスの閾値は、生理食塩水処置マウスとは有意に異なっている(***:p<0.001)。 CFAと同時に与えた時のAB125(a)及びMK-801(b)のCFA誘発痛覚過敏に対する効果を示す図である。AB125について、ANCOVAは、ベースラインの有意な主効果(F1,47=4.61、p=0.037)、処置の有意な主効果(F3,47=5.00、p=0.004)、時間の有意な主効果(F1,48=42.02、p<0.001)、有意でない処置と時間との交互作用(F3,48=0.71、p=0.552)を示した。事前比較は、AB125が3mg/kg(p=0.012)及び10mg/kg(p=0.03)においてCFA誘発痛覚過敏を1時間後に有意に逆転させたことを示した。有意な逆転は、24時間後にも3mg/kg(p=0.008)及び10mg/kg(p=0.003)処置群において観察された。MK-801について、ANCOVAは、ベースラインの有意でない主効果(F1,27=0.03、p=0.86)、処置の有意な主効果(F3,27=9.60、p<0.001)、時間の有意な主効果(F1,28=31.14、p<0.001)、及び有意でない処置と時間との交互作用(F3,28=0.90、p=0.452)を示した。事前比較は、MK-801が0.1mg/kg(p=0.004)においてCFA誘発痛覚過敏を1時間後に有意に逆転させたことを示した。有意な逆転は、24時間後にも0.1mg/kg(p<0.001)処置群において観察された。 CFA注入の24時間後に与えた時のAB125の効果を示す図である。ANCOVAは、ベースラインの有意な主効果(F1,34=15,67、p<0.001)、処置の有意な主効果(F4,34=7.98、p<0.001)、時間の有意な主効果(F2,70=24.41、p<0.001)、有意でない処置と時間との交互作用(F1,70=1.31、p=0.253)を示した。事前比較は、3mg/kg(p=0.002)及び10mg/kg (p=0.001)によるCFA誘発痛覚過敏の1時間後の逆転を示した。有意な逆転は、24時間後にも3mg/kg(p=0.015)及び10mg/kg(p<0.001)処置群において観察された。72時間では、痛覚過敏は全ての投与量(1、3、及び10mg/kg)で有意に逆転した(p<0.001)。 長期的参照記憶に関する食物嗜好性社会的伝達試験におけるAB125及びMK-801の食物摂取(a及びb)と識別指数(c及びd)とに対する効果を示す図である。AB125について、識別指数に対する1元ANCOVAは、処置の有意な主効果を示さなかった(F2,22=0.108、p=0.898)。事前比較は、試験したAB125投与量の有意な効果を示さなかった(30及び60mg/kgを図示)。MK-801について、1元ANOVAは、処置の有意な主効果を示した(F2,21=5.28、p=0.014)。予測平均に関する事前比較は、0.1mg/kgのMK-801が識別指数を有意に減少させることを示した(p=0.005)。 AB125及びMK-801の変形Y迷路内の慣化及び新規アームにおいて費やす時間に対する効果(a及びb)と、識別指数DI=(新規-慣化)/(新規+慣化)に対する効果(c及びd)とを示す図である。AB125について、1元ANOVAは、識別指数に対するAB125の有意な主効果を示さなかった(F3,29=0.85、p=0.478)。事前比較は、試験したAB125投与量の有意な効果を示さなかった(30及び60mg/kgを図示)。MK-801について、1元ANOVAは、処置の有意な主効果が明らかとなった(F3,23=15.43、p<0.001)。事前比較は、識別指数が0.05(p=0.019)及び0.1mg/kgのMK-801により共に減少したことを示した(p<0.001)。 ロータロッド試験における運動能力に対するAB125及びMK-801の効果を示す図である。AB125について(30及び60mg/kgを図示)、2元RM ANOVAは、処置の有意な主効果を示さず(F2,48=1.18、p=0.333)、時間の有意な主効果を示さず(F3,48=0.84、p=479)、及び有意な処置と時間との交互作用時間を示さなかった(F6,48=1.26、p=0.293)。MK-801について、2元ANOVAは、処置の有意な主効果(F2,66=55.72、p<0.001)、時間の有意な主効果(F3,66=3.69、p=0.016)、及び有意な処置と時間との交互作用を示した(F6,66=2.25、p=0.049)。事前比較は、0.1mg/kgのMK-801がロータロッド上の時間を15分(p<0.001)、30分(p<0.001)、45分(p<0.001)、及び60分(p=0.006)において有意に減少させたことを示した。 炎症性疼痛の完全フロイントアジュバントモデルにおけるAB144の効果を示す図である。動物は、足底内でCFA、腹腔内でAB144により同時に処置し(0、3、10、又は30 mg/kg)、フォンフライ法により機械的痛覚過敏/異痛症を1及び24時間後に測定した。データは平均値±SEMにより表現し、ベースライン値と相対的な足引っ込め閾値を示す(即ち、<1.0が痛覚過敏/異痛症に対応)。生理食塩水処置マウスは、CFAに対する顕著な反応を示し、機械的閾値がベースラインの25%まで減少した(###、p<0.001)。この減少は、30mg/kgのAB144により処置したマウスにおいてAB144/CFA投与の1時間後、10及び30mg/kgのAB144により処置したマウスにおいてAB144/CFA投与の24時間後には観察されなかった(*:p<0.05)。
1.略語及び用語の定義
本明細書で使用される単数の名詞は、使用される文脈に応じて単数又は複数を意味する場合がある。
アミド結合は、カルボン酸及びアミン間の反応(及び付随する水の除去)により形成される。反応が2つのアミノ酸残基間である場合、反応の結果として形成される結合は、ペプチド結合(peptide linkage(peptide bond))として知られる。
アミノ酸で、タンパク質を構成するものは、本明細書において、IUPACの勧告による1文字又は3文字のコードを用いて名称を示してしており、例えば、http://www. chem.qmw.ac.uk/iupacを参照されたい。特に明記されていない場合、アミノ酸は、D又はL型となり得る。明細書(配列表を除く)において、大文字で始まる3文字コードは、L型のアミノ酸を示し、小文字の3文字コードは、D型のアミノ酸を示す。
「含む(comprising)」は、包含的な形で理解するべきである。したがって、一例として、化合物Xを含む組成物は、化合物Xと、任意の付加的な化合物とを含み得る。
CFA、完全フロイントアジュバント
CNS、中枢神経系
CPP、細胞透過性ペプチド。哺乳類細胞の原形質膜を通過する能力を特徴とし、これにより、結合したペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド等の積み荷分子の細胞内送達を発生させ得る。
DCM、ジクロロメタン
二量体PSD-95阻害剤は、PSD-95のPDZ1及びPDZ2と同時に結合又は相互作用することが可能な、リンカーにより共有結合した2個のペプチド又はペプチド類似体を含むPSD-95阻害剤であり、したがって次の通りとなる。
P0、ペプチド/ペプチド類似体のC末端アミノ酸に対応する第1のアミノ酸残基又は類似体として定義される。
P-1、ペプチド/ペプチド類似体のC末端アミノ酸から数えて第2のアミノ酸残基又は類似体として定義される。
P-2、ペプチド/ペプチド類似体のC末端アミノ酸から数えて第3のアミノ酸残基又は類似体として定義される。
P-3、ペプチド/ペプチド類似体のC末端アミノ酸から数えて第4のアミノ酸残基又は類似体として定義される。
P-4、ペプチド/ペプチド類似体のC末端アミノ酸から数えて第5のアミノ酸残基又は類似体として定義される。
P-5、ペプチド/ペプチド類似体のC末端アミノ酸から数えて第6のアミノ酸残基又は類似体として定義される。
DIPEA、ジイソプロピルエチルアミン
DMF、N,N-ジメチルホルムアミド
エチレングリコール部分とは、本明細書において、PEG又はNPEGリンカーを構成する構造単位を示す。「エチレングリコール部分」の更に専門的な名称は、「オキシエチレン」であり、単位の化学式は次の通りである。
FP、蛍光偏光
HATU、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-yl)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HBTU、O-(ベンゾトリアゾール-1-yl)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
哺乳類細胞は、哺乳類起源の任意の細胞を示すものである。細胞は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、米国バージニア州)から多くを入手可能な樹立細胞株、或いは、トランスジェニック動物に由来する組織を含め、哺乳類組織に由来する寿命が限定された初代細胞、或いは、トランスジェニック組織を含む哺乳類組織に由来する、新たに確立された不死細胞株、或いは、ハイブリドーマ細胞株等、哺乳類起源の異なる細胞タイプの融合に由来するハイブリッド細胞又は細胞株であってよい。細胞は、受容体等、1つ又は複数の非天然の遺伝子産物を任意に発現し得る。
MCAO、中大脳動脈閉塞
nNOS、神経型一酸化窒素合成酵素
NO、一酸化窒素
NMDA、N-メチル-D-アスパルテート
NMR、核磁気共鳴
NPEGは、本明細書で説明する新規のリンカータイプであり、古典的なPEGリンカーに由来するが、1個又は複数の骨格酸素原子が窒素原子に置換されている。
Ns、ortho-ニトロベンゼンスルホニル(oNBSと略す場合もある)
PDZ、postsynaptic density protein-95(PSD-95)、Drosophila homologuediscs large tumor suppressor(DlgA)、Zonula occludens-1 protein(zo-1)
PEG、ポリエチレングリコール。PEGは、化学式C2n+2H4n+6On+2及び次の反復構造を有するエチレングリコールの重合体である。
例えば、12PEG部分又はPEG12は、12個のエチレングリコール部分の重合体(n=12)に対応する。
PPI、タンパク質間相互作用
PSD-95、postsynaptic density protein-95
PSD-95阻害剤は、PSD-95のPDZ1、PDZ2、又はPDZ1及びPDZ2の両方に結合する化合物であり、こうした細胞内のPDZドメインにより促進されるPPIを阻害する。PSD-95阻害剤により阻害される相互作用の例は、nNOS、PSD-95、及びNMDA受容体の三元複合体である。
レトロインバーソ、レトロインバーソペプチドは、親となるL-アミノ酸配列と逆の順序で組み立てられたD-アミノ酸から成る。
レトロインバーソ-D-Tat配列、Tat配列を逆転し、D-アミノ酸を用いることにより作成された9merのCPP配列であり(rrrqrrkkr)、血液脳関門を含む生体膜に対する透過性を促進し、その構造から、プロテアーゼ酵素に対して安定している。
SEM、平均の標準誤差
Tat配列、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)Tatタンパク質に由来する11merのCPP配列(YGRKKRRQRRR)であり、血液脳関門を含む生体膜に対する透過性を促進する。
TFA、トリフルオロ酢酸
THF、テトラヒドロフラン
TIPS、トリイソプロピルシラン
I. CPP含有二量体PSD-95阻害剤の化学構造
本発明は、リンカーにより第2のペプチド又はペプチド類似体に結合された第1のペプチド又はペプチド類似体を含む二量体PSD-95阻害剤を提供し、第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体は、配列YTXV又はYSXVを有する少なくとも4個のアミド結合残基を含み、
Yは、E、Q、及びAから選択されるか、或いは選択された残基の類似体であり、
Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-Nから選択されるか、或いは選択された残基の類似体である。二量体PSD-95阻害剤は、更に、細胞透過性を有するCPPである第3のペプチドが阻害剤に結合されることを特徴とする。
I.i 二量体PSD-95阻害剤のリンカー
二量体PSD-95阻害剤の第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体は、リンカーにより互いに結合している。適切なリンカーには、NPEG、ポリエチレングリコール(PEG)を含むリンカー、ポリアミン(Herve F et al、AAPS J、2008、p.455)、ペプチド核酸(PNA)(Egholm et al.、2005 Nature 365、p.566)、ロックド核酸(LNA)(Singh et al.、1998、Chem. Commun.、p.455)、トリアゾール類、ピペラジン類、オキシム類、チアゾリジン類、芳香環系、アルカン類、アルケン類、アルキン類、環状アルカン類、環状アルケン類、アミド類、チオアミド類、エーテル類、及びヒドラゾン類が含まれる。リンカーが、PEG(又はNPEG)リンカーである場合、PEGリンカーを各ペプチド(又はペプチド類似体)阻害剤に付着させるために使用可能な求電子性又は求核性官能基(WO/2007/140282)等の活性官能基を含んでもよい。付着に適した官能基には、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、p-ニトロフェニルエステル、スクシンイミジルカーボネート、p-ニトロフェニルカーボネート、スクシンイミジルウレタン、イソシアネート、イソチオシアネート、アシルアジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、炭酸塩、イミドエステル、又は無水物から選択されるアミノ反応性求電子基と、マレイミド、ハロアセチル、ハロゲン化アルキル誘導体、アジリジン、アクリロイル誘導体アリール化剤、又はチオ-ジスルフィド交換試薬から選択されるチオ反応性基とが含まれる。適切な求核性官能基には、ペプチド又はペプチド類似体阻害剤上でアルデヒド又はカルボキシル基との反応が可能な、アミン、ヒドラジド、カルバゼート、アシルヒドラジド、セミカルバマート、又はヒドラジンが含まれる。
PSD-95阻害剤におけるリンカーの最適な長さは、選択されたリンカーに依存する。リンカーがPEGである場合、PEGのエチレングリコール部分の数(n)は、n=1乃至28又はn=4乃至28の間としてよく、或いは、リンカーは、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の長さを有し得る。PEG-二酸を用いてリガンド(ペプチド又はペプチド類似体)を結合することが可能であり、この場合、例えば、PEG4リンカーは、リンカーの各端部に2個のカルボン酸基が存在するように修飾される。したがって、二量化プロセス以前のPEG4-二酸リンカーは、4,7,10,13,16-ペンタオキサノナデカン-1,19-二酸と呼ばれる。阻害剤の第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体のリンカーによる二量化中、2個のカルボン酸基は、ペプチド(又はペプチド類似体)のN末端アミノ基と反応し、アミド結合を形成する。PEG0、1、2、4、6、8、及び12は、本明細書に合致する。
二量体PSD-95阻害剤の第1の実施形態によれば、リンカーは、NPEGと呼ばれるPEG-二酸リンカーの誘導体を含み、PEG-二酸リンカーの骨格内の1個の酸素原子は、窒素原子に置換される。窒素原子は、PEGリンカーの骨格の酸素原子の何れか1個と置換し得る。NPEG-二酸リンカーのカルボニル基は、第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体にそれぞれ結合され、好ましくは、結合はペプチド又はペプチド類似体の末端残基とのアミド結合である。
図2は、本発明のNPEGリンカー、即ち、NPEG4-二酸リンカーを例示しており、中心酸素原子を窒素原子と置換することにより、対称なNPEGリンカーが生成され、二量体阻害剤(例えばAB141)において使用される。図15は、本発明の二量体阻害剤におけるNPEGリンカーを例示しており、PEGリンカーの骨格にある酸素原子で、窒素に置換されたものは、1個又は2個の「エチレングリコール部分」だけリンカーの中心から離れており、非対称なNPEGリンカーとなっている(例えば、AB144_B及びAB144_Cにおけるもの)。
リンカーは、2つの機能を果たす。リンカーは、PSD-95のPDZ1-2に結合するリガンドの役割を果たす機能を有する阻害剤の第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体を結合する働きをする。PSD-95のPDZ1-2に対する阻害剤のペプチド/ペプチド類似体の親和性は、二量化により大幅に増加する。加えて、NPEGリンカー内の窒素原子は、更なる誘導体化において化学的な「ハンドル」の役割を果たす(図2及び3)。
二量体PSD-95阻害剤の第2の実施形態によれば、リンカーは、PEG-二酸を含み、その長さは、1乃至28個のエチレングリコール部分(n=1乃至28)、好ましくは1乃至12個のエチレングリコール部分(n=1乃至12)、更に好ましくは4乃至6個のエチレングリコール部分(n=4乃至6)である。図2は、PEGリンカー、即ち、PEG4-二酸リンカーを示している。
I.ii 二量体PSD-95阻害剤のペプチド又はペプチド類似体
二量体PSD-95阻害剤の第1又は第2の実施形態によれば、ペプチド又はペプチド類似体は10、9、8、7、又は6個のアミド結合残基の長さであり、好ましくは5又は4個のアミド結合残基の長さである。ペプチド又はペプチド類似体は、少なくとも4個のL-アミノ酸残基を含み得る。好ましくは、阻害剤内の残基XはA、Q、及びDから選択される。残基Y又はXの適切な類似体、又は4個のアミド結合残基(YTXV又はYSXV)の何れかの類似体、又はそれらに接続するアミド結合の類似体は、D-アミノ酸、ペプトイドアミノ酸、β-アミノ酸、オレフィン二重結合(E-ビニル)、レトロアミド、α-アザペプチド、チオエステル、エステル(デプシペプチド)、カルボニル(メチルアミン)のカルバ置換、メチルチオ基、アルカン、ケトメチレン、ヒドロキシエチレン、ヒドロキシエチルアミン、ヒドロキシエチル尿素、フッ化ビニル(Chemistry & Biochemistry of amino acids、peptides、and proteins”、vol 7、1983、Boris Weinstein、Ch.5 by Arno F. Spatola)、チオアミド(Bach et al.、J. Med. Chem.、2011、p. 1333)、aza-@-unit(5-ジヒドロ-2(3H)-ピラゾン部分)を含み(特に残基X又はYに対応する位置P-1又はP-3(Hammond et al、Chem. Biol.、2006、p.1247))、類似体の選択は、本明細書に記載するようなペプチド模倣手法のためのツール及びアッセイの使用により支援し得る。加えて、二量体PSD-95阻害剤の第1及び/又は第2のペプチド又はペプチド類似体の残基は、N-アルキル化することが可能であり、N-アルキル化残基は、残基Yに対応する位置P-3に存在する(WO2010/004003)。N-アルキル基は、N-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-ブチル、及びN-ベンジルから選択される。特に適切なN-アルキル基は、N-シクロヘキシルメチル、N-シクロヘキシルエチル、N-フェニルエチル、N-フェニルプロピル、N-(3,4-ジクロロフェニル)プロピル、N-(3,4-ジフルオロフェニル)プロピル、N-(ナフタレン-2-yl)エチルから選択される。
図2は、本発明の第1又は第2の実施形態によるリンカーを有する二量体PSD-95阻害剤を例示しており、二量化ペンタペプチドIETAVと、PEG4(IETAV)2(AB125)のようにPEGリンカー、又はNPEG4(IETAV)2(AB141)のようにNPEGリンカーとを含んでいる。
I.iii 二量体PSD-95阻害剤のCPPペプチド
第1又は第2の実施形態による二量体PSD-95阻害剤は、更に、CPPの特性を有する第3のペプチドを含む。この第3のCPPペプチドは、4個のD-又はL-アミノ酸残基を含むが、5、6、7、8、9、又は10個以上のD-又はL-アミノ酸残基の長さになり得る。好適なCPPは、ポリカチオン構造を有し、少なくとも4個のリジン残基、又は少なくとも4個のアルギニン残基、又はリジン及びアルギニン残基の両方を含む少なくとも4個の残基(例えば、Tatペプチド、8個のアルギニン等のポリアルギニンペプチド、SynB1:RGGRLSYSRRRFSTSTGRA)、又はアルギニン又はリジンに対する類似体である陽イオン性又は塩基性側鎖を有する少なくとも4個のアミノ酸、例えば、5-ヒドロキシリジン、オルニチン、2-アミノ-3(又は-4)-グアニジノプロピオン酸、及びホモアルギニン等を含む。別のCPPは、両親媒性構造を有し、極性/荷電アミノ酸と非極性の疎水性アミノ酸の交互パターンを含む(例えば、ペネトラチン:RQIKIWFQNRRMKWFF、レトロインバーソ-ペネトラチン:kkwkmrrnqfwvrvqr、両親媒性モデルペプチド:KLALKLALKLAKAALKA)。
図3は、本発明の第2の実施形態によるリンカーを有する二量体阻害剤を例示しており、二量化ペンタペプチドIETAVと、NPEGリンカーと、CPPペプチドとを含んでいる。CPPは、Tat-NPEG4(IETDV)2(AB144)のようにTat(配列: YGRKKRRQRRR、1文字アミノ酸コード)、又はレトロインバーソ-D-Tat-NPEG4(IETDV)2(AB147)のようにレトロインバーソ-D-Tat(配列:rrrqrrkkr、1文字D-アミノ酸コード)である。
I.iv CPPペプチドの二量体PSD-95阻害剤との結合
第1の実施形態による二量体PSD-95阻害剤は、NPEGリンカーの骨格内の窒素原子との直接的又は間接的な化学結合を介して阻害剤に結合されたCPPを含み、窒素原子は、リンカー内で対称又は非対称に位置決めすることができる。NPEGリンカーの窒素に対するCPPの結合は、アミド結合、マレイミド結合、ジスルフィド結合、或いは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、p-ニトロフェニルエステル、スクシンイミジルカーボネート、p-ニトロフェニルカーボネート、スクシンイミジルウレタン、イソシアネート、イソチオシアネート、アシルアジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、炭酸塩、イミドエステル、又は無水物から選択されるアミノ反応性求電子基、及びハロアセチル、ハロゲン化アルキル誘導体、アジリジン、アクリロイル誘導体アリール化剤から選択されるチオ反応性基により仲介し得る。
或いは、リンカーの窒素に対するCPPの結合は、スペーサ基により仲介してよく、適切なスペーサ基は、例えば、システイン、グリシン、アラニン等の任意のアミノ酸、短いアルカン鎖、又は短いPEG/NPEG鎖にすることができる。
図3及び15は、二量化ペンタペプチドIETDV、NPEGリンカー、及びCPPを含む二量体阻害剤を例示している。CPPは、AB144及びAB147のように、アミド結合により対称NPEGリンカーに結合させることが可能であり、或いは、AB144_B及びAB144_Cのように、アミド結合により非対称NPEGリンカーに結合させることができる。或いは、C末端Cysを含むCPPは、AB144_Dのように、マレイミド結合を介して、NPEG窒素原子から延びるマレイミド基に結合させることができる。或いは、C末端Cysを含むCPPは、AB144_Eのように、ジスルフィド(S-S)結合を介して、NPEG窒素原子から延びるスルフヒドリル基に結合させることができる。
第2の実施形態による二量体PSD-95阻害剤は、PEGリンカーと、第1又は第2のペプチド又はペプチド類似体の側鎖に結合させたCPPとを含む。CPPは、第1又は第2のペプチド又はペプチド類似体のP-1位置において、残基(例えば、アミノ酸)の側鎖に結合させ得る。好ましくは、CPPは、>P-4の側鎖、或いは更に好ましくは、第1又は第2のペプチド又はペプチド類似体のP-5又はP-6残基(例えば、アミノ酸)に付着させる。残基の側鎖に対するCPPの結合は、アミド結合、マレイミド結合、ジスルフィド結合、或いは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、p-ニトロフェニルエステル、スクシンイミジルカーボネート、p-ニトロフェニルカーボネート、スクシンイミジルウレタン、イソシアネート、イソチオシアネート、アシルアジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、炭酸塩、イミドエステル、又は無水物から選択されるアミノ反応性求電子基、及びハロアセチル、ハロゲン化アルキル誘導体、アジリジン、アクリロイル誘導体アリール化剤から選択されるチオ反応性基により仲介し得る。
図15は、二量化ペンタペプチドKETDVと、PEGリンカーと、AB144_Hのように、第1のペプチド(ペンタペプチド)のP-4アミノ酸(リジン)に結合されたCPPとを含む二量体阻害剤を例示している。AB144_Iでは、CPPは、第1のペプチド(KIETDV、ヘキサペプチド)のP-5アミノ酸の側鎖に付着している。
II. CPP含有二量体PSD-95阻害剤のリガンド親和性
本発明の全ての二量体PSD-95阻害剤は、ナノモル領域のPSD-95のPDZ1-2に対する親和性を有しており(実施例5)、非常に強力な阻害剤となる(図5及び表2)。本発明の二量体PSD-95阻害剤に結合させたCPPは、血液脳関門を越える阻害剤の輸送を向上させるために導入される。驚くべきことに、二量体PSD-95阻害剤に対するCPPの結合は、PSD-95のPDZ1-2に対する親和性も高める。これは、AB144及びAB147(それぞれKi=4.6±0.3及び5.1±0.4nM)により例示されており、AB141(Ki=9.3±1nM)と比較して2倍の親和性増加を示し、単量体Tat-NR2B9cペプチド(Ki=4600±300nM)に対して、1000倍の親和性増加を示した。PSD-95のPDZ1-2に対する二量体PSD-95阻害剤の親和性は、治療効果を達成するために必要な薬物の閾値濃度を低下させる上で極めて重要な要素であり、薬物が血液脳関門(BBB)を通過して標的に達する必要がある場合には、BBBが標的における薬物濃度の蓄積を制限する傾向を有することから、特に重要となる。驚くべきことに、二量体PSD-95阻害剤の比較により、二量体PSD-95阻害剤に対するCPPの結合の位置及び種類がPSD-95のPDZ1-2に対する最も高い度合いの親和性を得る上で主要な決定要因であることが明らかとなる。したがって、PEGリンカーのNPEG置換基の窒素原子に対するアミド結合を介したCPPの結合は、ジスルフィド結合リンケージ又はマレイミド結合等、PEGリンカーのNPEG置換基に対する他の結合形態と比較して、PSD-95のPDZ1-2に対する親和性を2倍に向上させる。更に、PEGリンカーのNPEG置換基の窒素原子に対するCPPのアミド結合リンケージは、第1又は第2のペプチドに対するCPPのアミド結合リンケージと比較して、PSD-95のPDZ1-2に対する親和性を2倍より大きく向上させる。
本発明の二量体PSD-95阻害剤は、PDZ1及びPDZ2に同時に結合し、これが、こうした領域に対する高い親和性の理由となり得る。NMRによる試験(実施例7)では、1:1の結合化学量論比が確認され、二量体PSD-95阻害剤の第1及び第2のペプチドの両方が、真に2価の結合様式において、PDZ1-2内のPDZ1又はPDZ2の何れかに結合することが明確に実証された。
二量体PSD-95阻害剤の第1又は第2のペプチド又はペプチド類似体の位置P-3におけるN-アルキル化を用いて、1つ又は複数の標的PDZ領域に対するペプチド又はペプチド類似体の親和性を更に高め、これにより、標的との間に生じるPPI相互作用を防止する能力を向上させることができる。
III. CPP含有二量体PSD-95阻害剤の血漿安定性
本発明のCPP含有二量体PSD-95阻害剤は、ヒト血漿中での分解に対する感受性が大幅に低下している。この安定性の顕著な改善は、天然Tat CPP、及び事実上非分解性であるレトロインバーソ-D-Tat CPPを含む阻害剤において観察されており、プロテアーゼ安定性のCPPを二量体PSD-95阻害剤に導入する効果を示すものである(実施例6)。
IV. CPP含有二量体PSD-95阻害剤の血液脳関門透過性
本発明のCPP含有二量体PSD-95阻害剤は、こうしたペプチド阻害剤の比較的大きな分子サイズにもかかわらず、哺乳類の脳における神経保護物質としての治療的機能にとって重要な、血液脳関門を越える能力を有している。この特性は、Tat又はレトロインバーソ-D-Tat CPPを含むCPP含有二量体PSD-95阻害剤AB144及びAB147において例証されている(実施例8)。
V. CPP含有二量体PSD-95阻害剤のIn vivoの神経保護特性
V.i CPP含有二量体PSD-95阻害剤は、局所脳虚血を有する被験体の梗塞体積を減少させる
本発明のCPP含有二量体PSD-95阻害剤は、局所脳虚血の被験体に投与した場合、虚血性組織損傷を有意に低減することができる。こうした二量体PSD-95阻害剤の治療的効果は、成体マウスにおける局所脳虚血のpMCAOモデルにおいて実証されており、このモデルでは、損傷後に阻害剤を腹腔内注入し、6時間又は48時間の手術後生存期間の後、梗塞の体積を測定した(実施例9)。実証されたCPP含有二量体PSD-95阻害剤のin vivo神経保護物質としての効能は、その標的に対する高い親和性(PSD-95のPDZ1-2ドメインに対するナノモル親和性)と、その血液脳関門透過性と、その高いin vivo安定性との相乗効果によるものである。
対照試験では、局所脳虚血を有するマウスへのCPP含有二量体PSD-95阻害剤の投与に関して観察された治療的効果は、マウスの操作及びその処置による2次効果によるものではないことが確認された(実施例9)。
V.ii CPP含有二量体PSD-95阻害剤は、局所脳虚血を有する被験体の運動機能を向上させる
マウスにおいてpMCAOが誘発する局所脳虚血は、足を含む対側前肢及び後肢を制御する大脳皮質領域に影響を与える。pMCAOを受けたマウスに対して本発明のCPP含有二量体PSD-95阻害剤を投与することにより、マウスの運動機能が維持される。処置マウスは、合計握力(両足)を維持すると思われ、その握力の解析では、左右の前足間に非対称性は示されず、神経保護効果と一致していた。更に、ロータロッド能力試験は、処置マウスの短期学習スキルの向上を示し、ロッド上での合計時間は、有意に長くなった(実施例10)。本発明のCPP含有二量体PSD-95阻害剤による処置により生じた、こうした運動機能及び学習能力の改善は、これらの薬物の治療的価値を更に証明するものである。
VI. 本発明のCPP含有二量体PSD-95阻害剤の阻害剤特性をモニタリング及び評価するためのツール
VI.i. 蛍光偏光(FP)アッセイ:後述するように、実施例1では、本発明のPSD-95阻害剤の阻害剤特性をモニタリング及び評価する簡便且つ信頼できる方法を提供する。FPアッセイにより、広範なペプチド類似体を試験し、PDZ領域との相互作用と、PSD-95のタンデムPDZ1-2との特異性とに関して比較することが可能となる。PDZ1-2は、当業者に公知の標準的な組み換えDNA技術を用いて発現させる。発現させたPDZ1-2ドメインの精製は、PDZドメインを含む発現タンパク質(例えば、融合タンパク質)にアフィニティタグ(例えば、ポリ-ヒスチジンタグ、グルタチオン-Sトランスフェラーゼタグ、又はFLAGタグ等の抗体タグ)を含めること、及びタグを付けたPDZドメインタンパク質を選択的に精製するためにアフィニティ樹脂を使用することにより、促進し得る。
更に具体的には、アッセイは、異種競合結合アッセイに基づいており、PDZドメインに対する一定の(非蛍光)ペプチド類似体のIC50として測定される親和性は、固定濃度の蛍光標識二量体リガンド(AB143、図4)が存在する状態で測定される。決定されたIC50値は、Ki値に変換される(Nikolovska-Coleska et al、Anal. Biochem. 2004、332、p. 261-273)。5-FAM蛍光体は、HATU又はHBTUとの結合により二量体リガンドに付着させ得る。AB143は、高親和性プローブ(Kd=7.8nM)であり、これにより、同じ範囲の親和性(低ナノモル親和性)を有する非標識リガンドの正確なKi測定を可能にする。
VI.ii. 血液脳関門透過性。蛍光標識されたものを血液脳関門に浸透させることにより、脳に到達させる。化合物の注入後、マウスにパラホルムアルデヒドを灌流させ、脳を慎重に取り除き、パラホルムアルデヒド中で後固定し、冠状切片に加工し、蛍光について定量を行う(実施例8)。
VI.iii. pMCAO。実験的脳梗塞、即ち、永久MCA閉塞(pMCAO)は、ヒトに見られるものと類似する病的状態を誘発するものであり、基本的な細胞プロセスを調べ、発作を処置するための新たな治療を開発することを主目的としている。研究の結果、マウスのMCAの末端部の直接的な閉塞は、非常に再現性の高い手法であり、低死亡率であることが明らかとなった。MCAは、小さな開頭により電気凝固を施し、前頭及び頭頂皮質のlamina I-VI内に片側性皮質梗塞を発生させる。pMCAO後に得られた梗塞体積は再現性が高いため、このモデルは、新たな治療戦略の治療効果の調査に非常に適している。
VI.iv. 行動試験。行動試験は、動物の能力障害を検出する上で十分に感度が高く、再現可能かつ状態について既知の事項から説明できる結果が得られる必要がある。pMCAOが誘発する脳梗塞の損傷は、足を含む対側前肢及び後肢を制御する大脳皮質領域に影響を与えるため、行動試験(例えば、ロータロッド及び握力試験)を用いて、マウスの運動機能を判定することができる。
VII. 本発明のCPP含有二量体PSD-95阻害剤を合成及び特性評価する方法
VII.i ペプチド合成:Fmocに基づく固相ペプチド合成(SPPS)は、本発明の二量体PSD-95阻害剤の調製に利用し得る、PDZ結合ペプチド部分及びCPPの合成と、単量体の対照化合物の作成とに適した手順を提供する。Val等の天然C末端アミノ酸残基を有するペプチドは、事前にロードしたワング樹脂により合成を開始し得る。C末端システインを有するペプチドの場合は、2-クロロトリチルクロリド樹脂を使用してよく、残基は、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(樹脂/アミノ酸/DIPEAを1:3:10)を用いてDCM中で樹脂に2時間ロードし、その後、メタノールによりキャップした後、Fmoc脱保護及び連続したアミノ酸残基の結合を行う。適切なFmocに基づくSPPSプロトコルの詳細な説明は、実施例1において後述する。ペプチドのN-アルキル化の方法は、WO2010/004003に記載されている。
VII.ii NPEGリンカーの合成:Ns-NPEG4-二酸リンカーは、実施例1に記載の固相化学反応により合成する。本発明は、PEG-二酸を含むリンカーを提供し、PEG-二酸リンカーの骨格内の1個の酸素原子が窒素原子に置換され、NPEG-二酸となる。他の実施形態において、NPEG-二酸の窒素原子は、保護基に結合される。適切な保護基には、o-ニトロベンゼンスルホニル(略記:oNBS又はNs)、p-ニトロベンゼンスルホニル(pNBS)、2,4-ジニトロベンゼンスルホニル(dNBS)が含まれる。更に、他のN-保護基として使用可能なものには、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル(Ddz)、2-ニトロフェニルスルフェニル(Nps)、2-(4-ビフェニル)イソプロポキシカルボニル(Bpoc)、トリフェニルメチル(trityl、Trt)、ベンジルオキシカルボニル(Z)、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘックス-1-イリデン)-3-エチル(Dde)、1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘックス-1-イリデン)-3-メチルブチル(ivDde)、2,2,2-トリクロロエチルオキシカルボニル(Troc)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、p-ニトロベンジルオキシカルボニル(pNZ)、o-ニトロベンジルニトロベンジルオキシカルボニル(oNZ)及び6-ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)、アジドメトキシカルボニル(Azoc)、tert-ブチルオキシカルボニル(Boc)、2-トリメチルシリルエチルカルバメート(Teoc)、及び2-クロロベンジルオキシカルボニル(Cl-Z)が含まれる。
PEG及びNPEG-二酸内のエチレングリコール部分の数(n)は、n1乃至28としてよく、或いは、リンカーは、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12個のエチレングリコール部分の長さを有し得る。
VII.iii 二量体リガンドの合成:二量体リガンドは、Ns-NPEG4-二酸リンカー又はPEG4-二酸リンカーをHBTU及びHATU等の結合試薬によりin situで活性化した後、樹脂結合ペプチドリガンドのN末端アミノ基と共にインキュベーションすることにより生産可能である。この手順を用いることで、二量化手順は、一段階の反応に限定される。
VII.iv 化学分析:化合物は、ESI-LC/MS、分析用HPLC、及び高分解能質量分析により、当業者に公知である実施例1に例示した手法を利用して解析する。
VIII. 虚血性発作又は外傷性損傷等の興奮毒性関連障害の治療的処置のための本発明の第1又は第2の実施形態によるCPP含有二量体PSD-95阻害剤
ニューロンのシナプスにおいて、NMDA受容体サブユニットのC末端は、PSD-95のPDZドメインと相互作用し、NO生成及び興奮毒性をもたらす下流の神経毒素シグナル分子(例えばnNOS)と結びつく。本発明は、NMDA受容体イオン電流及びNMDA受容体のカルシウムシグナル機能を損なうこと無く、NMDA受容体及びnNOSが細胞内で相互作用するのを遮断可能な阻害剤を提供する。したがって、本発明のCPP含有二量体PSD-95阻害剤は、1つ又は複数の細胞又は組織の神経保護物質として機能し、脊髄損傷、脳卒中、外傷性脳損傷、中枢神経系(CNS)の虚血性損傷、癲癇、CNSの神経変性疾患を含む神経毒性障害を治療するための特定の戦略を提供する。
上記障害及び疾患のリスクがある被験体又は現在これらを有する被験体の治療的処置は、障害又は疾患発生のリスクを低減する予防的処置、或いは障害又は疾患発生後の治療的処置となり得る。被験体は、哺乳類動物又はヒトの患者となり得る。
IX. 疼痛治療の治療的処置のための二量体PSD-95阻害剤
驚くべきことに、本発明の二量体PSD-95は、被験体(哺乳類又はヒトの患者)の疼痛の低減に有効であり、更にこうした阻害剤は、被験体の認知及び運動機能に対する有害な副作用を全く併発させないことから、治療的処置に使用可能であることが示される。処置の対象となる疼痛は、慢性疼痛としてよく、神経因性疼痛又は慢性炎症性疼痛となり得る。神経因性疼痛は、外傷性損傷、手術、或いは、糖尿病又は自己免疫障害等の疾病による末梢又は中枢神経系に対する損傷により誘発され得る。疼痛が持続する場合には、慢性神経因性疼痛となる。慢性炎症性疼痛は、神経損傷後の炎症により誘発される場合があり、更に、異質物により誘発された炎症により始まり、この場合、免疫細胞により放出された介在物質が、疼痛経路の鋭敏化、即ち、脊髄に存在する感覚ニューロンの「ワインドアップ」を引き起こす。したがって、効果的な鎮痛薬は、疼痛緩和効果を有するためには、脊髄組織に到達して、標的、この場合はPSD-95を発見可能である必要がある。したがって、化合物は、脊髄組織に到達できるように、血液脳関門及び/又は血液脊髄関門を通過可能である必要がある。慢性疼痛の処置に適した適切な二量体PSD-95阻害剤は、リンカーにより第2のペプチド又はペプチド類似体に結合された第1のペプチド又はペプチド類似体を含み、第1及び第2のペプチド又はペプチド類似体は、配列YTXV又はYSXVを有する少なくとも4個のアミド結合残基を含み、Yは、E、Q、及びAから選択されるか、或いは選択された残基の類似体であり、Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-Nから選択されるか、或いは選択された残基の類似体である。適切な二量体PSD-95阻害剤の例には、AB125、構造体PEG6(IESDV)2を有するAB122[WO2010/004003の化合物77に対応する]、及び構造体PEG4(IESDV)2を有するAB123[WO2010/004003の化合物78に対応する]、及びAB141[NPEGリンカーを有する]が含まれる。これらの化合物は、親水性の大きな化学構造であり、CPPに付着しておらず、こうした特性は、通常、化合物が血液脳関門及び/又は血液脊髄関門を通過するのを妨げ、したがって、化合物がCNSに入ることを妨げるにもかかわらず、驚くべきことに、脊髄内において標的であるPSD-95に到達可能である(実施例12)。加えて、阻害剤は、更に、第3のペプチドを含み、第3のペプチドは、細胞透過特性を有するCPPであり、阻害剤に結合され、本発明の阻害剤をもたらす。
X. 慢性疼痛の治療的処置のための二量体PSD-95阻害剤のIn vivoの鎮痛効果
NMDA受容体アンタゴニストは、慢性疼痛のヒト及び動物モデルにおいて抗侵害受容性作用を示すが、認知及び運動機能の重度の撹乱を伴う。
選択的NMDA受容体アンタゴニストであるMK-801と比較して、AB125及びAB144には機械的痛覚過敏に関して有害な副作用が存在しないことは、慢性炎症性疼痛の完全フロイントアジュバント(CFA)モデルにおいて実証される。二量体PSD-95阻害剤の副作用の低減は、長期記憶に関する食物嗜好性社会的伝達(STFP)試験及び注意力に関する変形Y迷路と、運動能力に関するロータロッド試験とにおける、AB125及びMK-801の効果を比較することで実証される。
CFAと同時に投与した場合、MK-801、AB125、及びAB144は、共に、CFAが誘発する機械的痛覚過敏の発生を、処置後1時間及び24時間防止した(図17、18、及び23、実施例11)。更に、AB125は、CFA処置の24時間後に投与した場合、CFAが誘発する痛覚過敏を逆転し、効果が少なくとも3日続くことが分かった(図19、実施例11)。痛覚過敏を低減する投与量において、MK-801は、変形Y迷路及びSTFP試験における認知障害と、ロータロッド試験における運動障害とを引き起こした。驚くべきことに、高投与量のAB125であっても、こうした試験において副作用は生じなかった(図20乃至22、実施例11)。データは、CPPを含まない場合(AB125)でも含む場合(AB144)でも、二量体PSD-95阻害剤が慢性炎症性疼痛の発生を防止及び阻害すると共に、認知及び運動機能に関するNMDA受容体アンタゴニスト関連の副作用を回避することを示している。
XI. PSD-95阻害剤を含む医薬組成物の製造
本発明の二量体PSD-95阻害剤又はCPP含有二量体PSD-95阻害剤の医薬組成物への処方は、当該技術分野において周知であり、Gennaro (ed.)、2000、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、20th ed.、Lippincott、Williams & Wilkins (2000)及びAnsel et al.、1999、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems、7th ed.、Lippincott Williams & Wilkins Publishersにおいて更に説明されている。
こうした組成物は、一般に、0.1乃至90重量%(約1乃至20%又は約1乃至10%など)の本発明のPSD-95阻害剤を医薬的に許容される担体中に含有する。
様々な液体及び粉末製剤を、治療対象の哺乳類の肺への吸入用に、従来の方法により調製することができる。
経口投与に適した組成物は、本発明の二量体PSD-95阻害剤又はCPP含有二量体PSD-95阻害剤を、適切な担体と組み合わせることにより、治療対象の被験体による経口摂取用の錠剤、丸薬、糖衣錠,カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリ、懸濁液として処方することができる。固体の経口/直腸製剤として、適切な添加剤には、糖類(例えば、ラクトース、スクロース、マニトール、及びソルビトール)等の充填剤、セルロース調製物(例えば、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、タラカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリジン)、造粒剤、及び結合材が含まれる。任意で、架橋ポリビニルピロリジン、寒天、或いはアルギン酸又はアルギン酸ナトリウムの塩等の崩壊剤を含み得る。固体製剤は、更に腸溶性コーティングを含み得る。
液体の経口製剤として、適切な添加剤又は希釈剤には、水、グリコール、油、及びアルコールが含まれる。
組成物の注入可能製剤は、野菜油、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、乳酸エチル、炭酸エチル、イソプロピルミリステート、エタノール、ポリオール類(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)といった様々な担体を含有することができる。静脈内注入では、化合物を水溶性にしたものを滴下法により投与することが可能であり、これにより、活性薬剤(CPP含有二量体PSD-95阻害剤)と、生理学的に許容可能な添加剤とを含有する医薬製剤が注入される。生理学的に許容可能な添加剤には、例えば、5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンガ溶液、又は他の適切な添加剤を含むことができる。筋肉用調製物、例えば、化合物の適切な可溶性塩形態の無菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水、又は5%グルコース溶液等の医薬品添加剤に溶解して投与することができる。化合物の適切な不溶性形態は、水溶性基剤又は長鎖脂肪酸のエステル(例えばオレイン酸エチル)等の医薬的に許容される油性基剤中の懸濁物として調製及び投与することができる。
本発明の二量体PSD-95阻害剤又はCPP含有二量体PSD-95阻害剤は、長時間作用型のデポ製剤としても処方し得る。例えば、阻害剤は、適切なポリマー又は疎水性材料(例えば、許容可能な油の乳液)又はイオン交換樹脂と共に処方してよく、或いは、難溶性塩等の難溶性誘導体として処方してもよい。
更に、リポソーム及び乳液を用いて、二量体PSD-95阻害剤又はCPP含有二量体PSD-95阻害剤を送達し得る。加えて、阻害剤は、阻害剤を含む固体高分子の半透性基質等の徐放システムを介して送達し得る。
各医薬製剤における治療剤の最適なパーセンテージは、製剤自体と、特定の病状及び関連する治療計画において望まれる治療効果とに応じて変化する。
XII. PSD-95阻害剤を含む医薬組成物の投与方式
医学分野の当業者に公知の従来の方法は、被験体又は患者に組成物を投与するために使用可能であり、キットの形態での使用のために提供し得る。こうした方法には、限定はされないが、送達のための標準的な方法/手段を用いることにより、皮下、肺内、経粘膜、静脈内、腹腔内、子宮内、舌下、髄腔内、又は筋肉内の経路が含まれる[注射、カテーテルによるものが含まれ、この場合、キットは、注入デバイス、注入可能なデポを送達するデバイス、又はカテーテルを含み得る]。加えて、医薬製剤は、1、3、又は6ヶ月間のデポ用の注入可能又は生分解性材料及び方法を用いること等により、注入可能なデポ投与経路を介して患者に投与することができる。
投与経路に関係なく、本発明の二量体PSD-95阻害剤又はCPP含有二量体PSD-95阻害剤は、一般に、患者の体重に対して約0.01mg乃至約120mg/kg(例えば1mg/kg乃至20mg/kg)の1日用量で投与される。医薬製剤は、望ましい場合には、1日に複数回の投与を行い、合計で所望の1日用量にすることができる。
医学分野の当業者に公知の従来の方法を用いて、本発明の医薬製剤(群)を患者に投与することができる。本発明の医薬組成物は、単独で、或いは他の治療剤又は治療的介入と組み合わせて、投与することができる。具体的には、本発明の組成物は、本発明の複数の薬剤を更に含み得る。
実施例1. PSD-95の二量体阻害剤の合成
1.1 Ns-NPEG4-二酸リンカーA乃至Cの合成(スキーム1、図16)
Ns-NPEG4-二酸リンカーA(3、スキーム1)の合成では、2-塩化クロロトリチル樹脂(3mmol、1.90g)をDMF中で洗浄し、膨張させた(20分)。Fmoc-NH-PEG2-CH2CH2COOH(1、スキーム1、Biomatrik社、中国、嘉興)は、DMF(8mL)中の1(2mmol、800mg)を、水切りした樹脂に添加し、その後、DIPEA(10mmol、1.75mL)添加することにより、樹脂上にロードした。60分間の振盪後、メタノール(1mL、25mmol)を加え、更に5分間振盪を継続した。ロード済み樹脂を水切りし、DMFにより完全に洗浄し(10乃至15回の流し洗浄、各10mL)、Fmoc基の脱保護を、DMF中の20%ピペリジンにより5分及び15分、DMF洗浄を間に挟んで行い、その後、DMF及びTHF洗浄を行った。樹脂をDIPEA中(12mmol、2.1mL)及びTHF(8mL)において15分間膨張させ、樹脂を静かに撹拌しつつ、DCM(5mL)中のortho-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(NsCl、8mmol、1.78g)をゆっくりと添加した。4時間後、樹脂を水切りし、THF、MeOH、DCM、及びTHFにより連続して洗浄した。樹脂の付着した遊離アミノ基の、アルコールHO-PEG2-CH2CH2COOtBu(2、スキーム1、Biomatrik社、中国、嘉興)によるアルキル化を、反応槽の排気及び窒素風船の追加により開始した。樹脂(1eq、2mmol)を、THF(5mL)中のトリフェニルホスフィン(PPh3、10mmol、2625mg)及びTHF(5mL)中の2(10mmol、2.34g)により処理した。アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)(10mmol、2.02g、1.97mL)を滴下添加し、風船を除去した後、1時間振盪した。樹脂をTHF及びDCMにより完全に洗浄し、真空中で乾燥させ、TFA/トリイソプロピルシラン/H2O(90/5/5、20mL)により2.5時間処理した。TFA混合物を収集し、樹脂をTFA及びDCMにより洗浄した後、結合したTFA/DCM画分の蒸発及びエーテルとの共蒸発を行った(2×30mL)。結果的に生じた材料を水/MeCN(75/25、100mL)に溶解し、凍結乾燥させてNs-NPEG4-二酸リンカーA(3、スキーム1)をオレンジ色の油として取得し、二量体NPEG4リガンドの合成に直接使用した。収量:80%。m/z(ESI)540.1(22%)、523.1(M++H、100)、505.1(11)、433.0(7.3)、365.2(7.4)。
Ns-NPEG4-二酸リンカーAの合成に用いた手順は、Ns-NPEG4-二酸リンカーB及びNs-NPEG4-二酸リンカーC(それぞれ6及び9、スキーム1)の合成にも用いた。Ns-NPEG4-二酸リンカーB(6)の作成では、ビルディングブロックとしてFmoc-NH-PEG3-CH2CH2COOH(4、Biomatrik社、中国、嘉興)及びHO-PEG1-CH2CH2COOtBu(5、Biomatrik社、中国、嘉興)を使用した(スキーム1)。収量:54%。m/z(ESI)596.2(22%)、523.2(M++H、100)、505.1(15)、433.1(8)。
Ns-NPEG4-二酸リンカーC(9)の作成では、ビルディングブロックとしてFmoc-β-アラニン(7、Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)及びHO-PEG4-CH2CH2COOtBu(8、IRIS Biotech、ドイツ、マルクトレドヴィッツ)を使用した(スキーム1)。収量:45%。m/z(ESI)596.2(51%)、523.1(M++H、100)、506.1(14)、433.1(55)。
1.2 PSD-95の二量体阻害剤のペプチド部分の合成
ペプチド(例えば、IETDV又はIETAV)は、事前にロードしたFmoc-Val-ワング樹脂(0.6-0-7mmol/g、100乃至200mesh)、結合用のHBTU/DIPEA、及び溶媒としての無水DMFを用いたFmocに基づく固相ペプチド科学反応により合成した。各結合は、樹脂/Fmoc-アミノ酸/HBTU/DIPEAの化学量論比を1/4/3.9/8として40分間実施し、ニンヒドリン試験により定性的に評価した。Fmoc脱保護は、DMF中の20%ピペリジンにおいて5分間行った後、DMF洗浄し、2回目のピペリジン/DMF処理を15分間行った。
1.3 NPEG4に基づく二量体リガンドAB141、AB144、及びAB147(図2及び3)の合成
Ns-NPEG4-二酸リンカーA(3、スキーム1、0.1eq、0.025mmol)をHBTU(0.2eq、0.05mmol)及びDIPEA(0.4eq、0.1mmol)により事前に活性化し、合計体積4mLのDMF中でFmoc脱保護したワング樹脂結合IETDV(1eq、0.25mmo)に添加した。反応物を45分間振盪し、5回繰り返した。DMF(2mL)中のDBU(0.5mmol)、その後DMF(2mL)中のメルカプトエタノール(0.5mmol)を添加することによりNs基を取り除いた。反応物を30分間振盪し、DMF中で洗浄した。メルカプトエタノール/DBUによる処理を1回繰り返し、樹脂をDMF、DCM、MeOH、及びDCMにより連続して洗浄し、樹脂結合AB141を得た。AB144及びAB147については、CPPの第1のアミノ酸(それぞれL又はD-Arg)を、Fmoc-Arg(Pbf)-OHの6連続結合により、窒素に結合させた。各結合では、Fmoc-Arg(Pbf)-OH(0.5mmol)をDMF(2mL、0.244M)中のHATU及びコリジン(132μL)により活性化した後、水切りした樹脂に添加した。40分間の振盪及びDMF洗浄後、結合及びDMF洗浄を5回繰り返し、続いて完全なDMF洗浄を行った。DMF中の20%ピペリジンによりFmocを取り除き、残りのTat-又はレトロインバーソ-D-Tat配列をペプチド合成について説明したように合成し、最終的なFmocを除去した。
1.4 NPEG4に基づく二量体リガンドAB144-B及びAB144-C(図15)の合成
AB144_B及びAB144_Cは、それぞれNs-NPEG4-二酸リンカーB及びNs-NPEG4-二酸リンカーCをNs-NPEG4-二酸リンカーAの代わりに使用したことを除き、AB144について説明したように合成した。
1.5 NPEG4に基づく二量体リガンドAB144-D及びAB144-E(図15)の合成
AB144_D及びAB144_Eの合成は、樹脂結合AB141を得るまでは、AB144について説明した通りである。Fmoc-Gly-OHを、ペプチド合成の第1.2節において説明したようなHBTU/DIPEAによる6連続結合により、NPEG4リンカー上の窒素原子に結合させた。ピペリジン/DMFによるFmoc除去後、N-マレオイル-β-アラニン(Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)を樹脂の半分と結合(HBTU/DIPEA)させ、その後、真空中で乾燥させ、切断用混合物TFA/チオアニソール/H2O/アニソール90/5/3/2(v/v/v/v)により処理し、粗製マレイミド二量体中間物を得た。並行して、12merのペプチドTat-Cys(配列:YGRKKRRQRRRC)を、標準的なFmocに基づくペプチド合成により、Fmoc-Cys(Trt)-OHをロードした2-クロロトリチルクロリド樹脂から開始して調製した後、樹脂から切断した。次に、0.05mmolの粗製マレイミド二量体中間物を0.06mmolの粗製Tat-Cysに、10mLアセトニトリル及び50mLのTBS緩衝液(50mM Tris-HCl、150mM NaCl、pH7.4、脱気)中において室温で混合することにより、AB144_Dを合成し、pHをNaOH(0.2M)により7に調整し、反応混合物を90分間インキュベートした。次に、この混合物を凍結乾燥し、純粋なAB144_DをHPLC精製により得た。
AB144_Eについては、Boc-Cys(Npys)-OHをHBTU/DIPEAにより、AB144_DでのN-マレオイル-β-アラニン(上記参照)の代わりに、樹脂結合二量体リガンドのグリシン残基に結合させた。樹脂を真空中で乾燥させ、切断用混合物TFA/チオアニソール/H2O/アニソール90/5/3/2(v/v/v/v)により処理し、粗製Cys(Npys)二量体中間物を得た。この中間物(0.026mmol)をTat-Cys(0.030mmol)と、50mL Tris-HCl/EDTA緩衝液(0.5M Tris-HCl、5mM EDTA、pH7.5、脱気)中において室温で60分間反応させた。混合物を凍結乾燥し、純粋なAB144_EをHPLC精製により得た。
1.6 PEG4に基づく二量体リガンドAB144-H及びAB144-Iの合成
化合物AB144_H及びAB144_Iは、事前にロードしたVal-ワング樹脂から合成され、最初に、「ペプチド合成(全般)」の節において説明したように、樹脂結合ペプチド配列K(Dde)ETDV及びK(Dde)IETDVをそれぞれ作成する[E、T、Dの側鎖は、化合物が樹脂結合している状態ではtert-ブチル基により保護される。Kは、Dde:1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘックス-1-イリデン)エチルにより保護される]。樹脂上での二量化プロセスは、以前に記載されているように(WO2010/004003)、PEG4-二酸リンカー(IRIS Biotech、ドイツ、マルクトレドヴィッツ)により実施した。次に、新たに調製したヒドラジン一水和物(DMF中で2%)により樹脂を5分間処理することにより、Ddeを除去した後、DMF洗浄を行い、更にヒドラジン処理を10分間行った。樹脂を、DMF、DMF中の10%DIPEA(5×2分)、DCM、及びDMFにより連続して完全に洗浄した。Tat配列は、HATU/コリジンと、ピペリジン/DMFによるFmocの標準的な除去とを用いて、リジン側鎖において遊離したアミノ基から合成した。
実施例2. PSD-95の二量体阻害剤の標識類似体の合成
2.1 蛍光標識類似体(AB143、AB145、AB148、MS23)の合成
蛍光リガンドは、5-FAM(5-カルボキシフルオレセイン、Anaspec、米国カリフォルニア州サンノゼ)を、最終的なFmoc脱保護したAB144、AB147、又はTat-NR2B9cのN末端アミノ基に対して、樹脂に結合した状態で結合することにより調製し、AB145、AB148、及びMS23をそれぞれ生成した。同様に、5-FAMをNs脱保護した樹脂結合AB141に結合させることにより、AB143を生成した。5-FAMは、N部位樹脂/5-FAM/HATU/コリジンを1/2/2/3の比として、合計2mLのDMF中で、0.07mmolスケール(NPEGリンカーのモル)で結合させた。AB145、AB148、又はMS23については、結合時間を6時間とした。AB143については、5-FAMを、6及び16時間の2連続結合によりそれぞれ結合させた。
2.2 PSD-95の15N,13C標識二量体リガンドの合成
[15N,13C]-PEG4(IETAV)2(AB140)は、完全に15N,13C標識したアミノ酸原子(Cambridge Isotope Laboratories社、米国マサチューセッツ州アンドーバ)を含むFmoc保護アミノ酸を用いて合成した。Thr及びGluのアミノ酸ビルディングブロックは、tert-ブチル基により保護された側鎖とした。標識Fmoc-Val-OH(0.125mmol、43mg)をDMF(1.5mL)に溶解させ、DMF(2mL)中で20分間膨張させて水切りした2-クロロトリチルクロリド樹脂(0.1875mmol、119mg)にロードした。DIPEA(0.625mmol、109μL)を添加し、振盪を60分間継続した。MeOH(100μL)を添加し、振盪を15分間継続し、樹脂をDMFにより洗浄した。Fmocをピペリデイン/DMFにより除去し、結合条件及び化学量論比1/2/2/3の樹脂/Fmocアミノ酸/HATU/コリジンを用いて、標識IETAVをDMF(1mL)中で40分間合成した。最終的なFmoc除去後、樹脂をDMF及びDCMにより洗浄し、真空中で乾燥させ、これを更に用いて、以前に記載(WO2010/004003)された(非標識)PEG4-二酸リンカー(IRIS Biotech、ドイツ、マルクトレドヴィッツ)との樹脂上二量化プロセスによりAB140を調製した。
実施例3. 二量体PSD-95阻害剤及びその標識誘導体の生成及び特性評価
二量体PSD-95阻害剤及びその誘導体を含む合成化合物は、樹脂結合産物をトリフルオロ酢酸(TFA)/トリイソプロピルシラン/H2O(90/5/5)により(他の指定が無い限り)2時間処理し、真空中で蒸発させ、低温のエーテルにより沈殿させ、凍結乾燥し、調製用の逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)により精製することにより、TFA塩として取得した。化合物は、分析用HPLC及び質量分析により特性評価した(表1)。
in vivoでの実験用に、化合物のTFA塩を氷温の水性HCl(50mM、TFAに対して3倍モル過剰のHCl)と共に20分間インキュベートした後、凍結乾燥することにより、化合物をHCl塩として調製した。
3.1 調製用RP-HPLC:
化合物の精製は、Agilent 1200システム上で、C18逆相カラム(Zorbax 300 SB-C18、21.2×250mm)により、H2O/MeCN/TFAの直線勾配(A:95/5/0.1及びB:5/95/0.1)と20mL/minの流量を用いて行った。
3.2 ESI-LC/MS:
マススペクトルの取得は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を用いるAgilent 6410 Triple Quadrupole Mass Spectrometer装置に、C18逆相カラム(Zorbax Eclipse XBD-C18、4.6×50mm)を備えたAgilent 1200 HPLCシステム(ESI-HPLC-MS)、蒸発光散乱検出器(ELSD、Sedere Sedex 85)及びダイオードアレイ検出器(UV)を接続し、H2O/MeCN/ギ酸の直線勾配(A: 95/5/0.1及びB:5/95/0.086)を用いて、1mL/minの流量で行った。
3.3 分析用RP-HPLC:化合物の純度は、C18逆相カラム(Zorbax 300 SB-C18カラム、4.6×150mm)を備えたAgilent 1100システムにより、H2O/MeCN/TFAの直線勾配(A:95/5/0.1及びB:5/95/0.1)及び1mL/minの流量を用いて判定した。
3.4 高分解能質量分析(HRMS):HRMSは、AB144及びAB147について、エレクトロスプレーイオン化(ESI)及びMicromass Q-Tof 2装置を用いて取得した。
実施例4. PSD-95のPDZ1-2の発現及び精製
PSD-95のPDZ1-2タンデム(エクソン4bの無いヒト全長PSD95αにおける残基61乃至249に対応)をコードするcDNAを、逆PCRにより増幅し、改変HisタグpRSETベクター(Invitrogen、米国カリフォルニア州カールズバッド)においてクローン化した。コードされたPDZ1-2ペプチドは、精製用のタグ(Hisタグ)として使用された配列MHHHHHPRGSを更に含んでおり、DNAコード配列及びコードされたタンパク質は次の通りである:HIS-PDZ1-2タンパク質[SEQ ID NO:2]をコードするHIS-PDZ1-2DNA[SEQ ID NO:1]。コンピテントな大腸菌(BL21-DE3、pLysS)をPDZ1-2発現コンストラクトにより形質転換し、アンピシリン(100μg/mL)及びクロラムフェニコール(35μg/mL)を含む寒天平板において37℃で一晩成長させた。コロニを取り出し、細菌培養の植え付けに用いた(アンピシリン50μg/mLを含むLB培地)。37℃でインキュベートしつつ振盪し、培地のA600が0.45に達した際に、1mMイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシドを添加した。誘導した培養物を一晩30℃でインキュベートした(PDZ1-2)。10,000gの回転を10分間4℃で行うことにより細胞を収穫し、溶解緩衝液(50mM Tris/HCL、pH7.5、1mM PMSF、25μg/ml DNAse、40mM Mg2SO4)に再懸濁させた。細胞を細胞粉砕装置により26KPsiで破壊した。細胞溶解物を35,000gで1時間遠心沈殿させ、上清を0.45μm及び0.22μmフィルタにより濾過した。発現させたPDZ1-2ペプチドの精製は、最初にTris緩衝液(Tris/HCl緩衝液50mM、pH7.5)により平衡化したニッケル(II)チャージカラム(HisTrapTM HP、GE Healthcare、英国)により行った後、ゲル濾過を行った。ゲル濾過では、PDZ1-2試料を、Tris緩衝液(20mM Tris/HCL、pH7.5)により平衡化したSuperdexTM 75HR10/30カラム(GE Healthcare、英国)に0.5mL/minの一定流量でロードした。関連する画分を、標準的な銀染色プロトコルにより染色したSDS-PAGEゲル上で分析した。最終的な精製物は、エレクトロスプレーイオン化液体クロマトグラフィ質量分析(ESI-LC/MS)により分析し、正確な分子量を取得することにより、PDZ1-2ドメインの同一性を検証した。モル吸光係数をアミノ酸解析(Alphalyse、デンマーク、オーデンセ)により見出し、その後、タンパク質濃度の測定に用いた。NMR試験用には、細菌培養物をM-9培地において成長させることにより、均一に標識した[15N]PDZ1-2を発現させた後、上述したように精製した。
実施例5. PSD-95のPDZドメインに対する親和性の向上した二量体PSD-95阻害剤
5.1 PSD-95のPDZドメインに対するリガンド(二量体PSD-95阻害剤)の親和性を判定する蛍光偏光(FP)アッセイ
合成リガンド(例えば、二量体阻害剤)及びPSD-95のPDZ1-2間の親和定数(Ki値)を得るために、in vitro親和性測定アッセイを蛍光偏光の原理に基づいて開発した。まず、5-FAM標識NPEG4(IETAV)2プローブ(AB143と名付けた(図4))及びPDZ1-2間の親和性を、PDZ1-2の濃度を増加させて、一定濃度のプローブ(0.5nM)に添加する飽和結合実験により確立した。アッセイは、黒色の平底384ウェルプレート(Corning Life Sciences、米国ニューヨーク州)において、TBS緩衝液(150mM NaCl、10mM Tris、pH 7.4)中で行った。室温での10分間のインキュベート後、試料の蛍光偏光をSafire2プレートリーダ(Tecan、スイス、メンネドルフ)において、励起/発光値を470/525nmとして測定した。蛍光偏光値を、式Y=Bmax×X/(Kd+X)に入れ、ここで、Bmaxは最大蛍光偏光値、XはPDZ1-2濃度、Yは蛍光偏光値である。Kdを、半飽和でのPDZ1-2濃度に等しいものとして飽和曲線から直接導くと、7.8±0.11nMとなり、対応する非蛍光(「コールド」)リガンドAB141について得られたKi値(Ki=9.3±1nM)との良好な一致が得られる。非蛍光化合物とPDZ1-2との親和性は、上述したものと同じTBS緩衝液及び条件において、化合物の濃度を増加させて、一定濃度のプローブ(0.5nM)及びPDZ1-2(7.8nM)に添加する異種競合により判定した。FP値を一般式:Y=Bottom+(Top-Bottom)/[1+(10(X-LogIC50*HillSlope))]に入れ、ここで、Xはペプチド濃度の対数値であり、結果的に生じたIC50値は、競合阻害定数であるKi値に変換した。報告した全ての値は、少なくとも3回の個別の実験の平均である。リガンドストックを水中で調製し、濃度をアミノ酸分析により検証した。
5.2 本発明の二量体PSD-95阻害剤はPDZ1-2ドメインに対して向上した親和性を有する
FPアッセイ(5.1参照)を利用して、PSD-95のPDZ1-2ドメインに対する様々な二量体PSD-95阻害剤の親和性を判定した。二量体阻害剤AB141は、PEG4リンカーがNPEG4リンカーにより置換されている点で、AB125と異なる。この差は、PDZ1-2に対する二量体阻害剤の親和性に有意の影響を与えておらず、Ki値は共に約9.5nMである(図5)。二量体阻害剤AB141へのCPPの追加は、CPPがNPEG4リンカーに付着するものであり、PDZ1-2に対する親和性の驚くべき増加をもたらす。AB144(CPPはTat)及びAB147(CPPはレトロインバーソ-D-Tat)は、AB141と比較して、それぞれ2倍のKi値=4.6±0.3及び5.1±0.4nMを示し(図5)、単量体Tat-NR2B9cペプチドと比較して、1000倍の親和性増加を示した(PSD-95のPDZ1-2に対してKi=4600±300nM、図5)。
5.3 CPP含有二量体PSD-95阻害剤は、PDZ1-2ドメインに対して向上した親和性を有する
AB144類似体(実施例1及び図15参照)AB144_B及びAB144_Cは、NPEGリンカーの窒素原子に対するTat付着点が非対称であり(1個又は2個の「エチルグリコール部分」だけリンカーの中心から離れている)、PSD-95のPDZ1-2に対して示す親和性は、AB144と同じ領域、即ち、低ナノモル領域である(表2)。AB144_Cは、AB144と比較して、2倍大きな親和性を示すが、両化合物は、PDZ1-2ドメインに対する非常に強力なリガンドである。
AB144類似体(実施例1及び図15参照)AB144_D及びAB144_Eでは、Tatは、NPEGリンカー対して対称に付着しているが、AB144_Dにおいて、Tatはマレイミド結合により付着しており、AB144_Eにおいて、Tatはジスルフィド(S-S)結合により付着している。AB144_D及びAB144_Eは、AB144と比較して2乃至3分の1まで低下した親和性を示したが(表2)、Ki値は依然として低ナノモル領域であるため、これらの化合物は、PSD-95のPDZ1-2に対する非常に強力な結合材である。
化合物AB144_H及びAB144_I(実施例1及び図15参照)では、Tat配列は、NPEGリンカーを用いる代わりに、PEG結合二量体ペプチドの1つのアミノ酸側鎖に付着している。AB144_Hにおいて、Tatは、この場合リジンであるP-4アミノ酸から延びている。通常は、この位置ではイソロイシン(I)が見られるが(AB144)、この場合はリジンが用いられており、Tatの合成が開始可能な官能基(アミノ基)を提供すると共に、イソロイシンの構造類似体としても機能する(アルカンに基づき、第1のTatアミノ酸とのアミド結合形成後に荷電されず、大きさが類似する)。AB144_Hは、PDZ1-2に対するナノモル親和性を維持しているが、最適性は僅かに減じられ、AB144の親和性と比べて5分の1まで低下している(表2)。AB144_Iにおいて、Tatは、ヘキサペプチドのP-5アミノ酸の側鎖に付着しており、AB144_Hと比較して、PDZ1-2ドメインに対する高い親和性を示すが、AB144と比較すると2分の1となる(表2)。
実施例6. 修飾二量体PSD-95阻害剤は、ヒト血漿において向上した安定性を有する
6.1 ヒト血漿安定性アッセイ
PSD-95のPDZ領域に対するリガンド(二量体PSD-95阻害剤)を、ヒト血漿(270μL、3H Biomedical、スウェーデン、CAT No.1300-1-P50)に溶解し、濃度0.25mMとし(2.5mMを30μL)、37℃でインキュベートした。一定分量(30μL)を様々な時間間隔(例えば0、5、10、20、40、80、160、320、960、1280、2550、4560、及び7240分)で取り出し、60μLのトリクロロ酢酸(水性、5%)によりクエンチした。一定分量をボルテックスし、15分間4℃でインキュベートした後、18,000gで2分間遠心分離した。上清を分析用RP-HPLC(UV218)により分析し、時間ゼロと比較して化合物を定量化すると共に、試料中の化合物(m/z)を特定するためにESI-LC/MSによる定性評価を行った。プロカイン(陽性対照)及びプロカインアミド(陰性対照)を50μMで調査し、手順を検証した。沈殿手順後のリガンドの回収率は85乃至95%となった。
6.2 Tatペプチドを有する二量体阻害剤の血漿安定性の向上
二量体阻害剤AB144(CPPはTat)及びAB147(CPPはレトロインバーソ-D-Tat)をヒト血漿中でインキュベートし、in vitroでの分解をモニタした。それぞれ37±6及び1100±300分の半減期(T1/2)を示す単量体ペンタペプチドIETDV及びTat-NR2B9cの分解に対する感受性と比較して、AB144はT1/2=4900±100を示し、これは単量体ペンタペプチドIETDVと比較して100倍を越える安定性の向上に対応している(図5)。AB147の検出可能な分解は、測定期間(130時間)内では観察されておらず(図5)、プロテアーゼ安定性のCPPを二量体阻害剤に導入する効果を示している。
実施例7. 二量体PSD-95阻害剤はPSD-95のPDZ1及びPDZ2領域の両方に結合する
7.1 PSD-95のPDZ1及びPDZ2ドメインの両方に結合するリガンドのNMR分析
3.5mMの遊離[15N,13C]-PEG4(IETAV)2(AB140)及び2.2mMの同じ化合物を、非標識PDZ1-2により50mMのKPi、pH7.5において飽和させたものを90%H2O/10%D2O中に含むNMR試料を結合の研究用に調製した。全ての実験は、プロトンのラーモア周波数600MHzに対応する静磁場において25℃で記録した。HNCA、HN(CA)CO、及びHSQCの実験は、遊離化合物のペプチド部分の骨格を帰属させるために記録した。結合化合物について、HNCACB、HN(CA)CO、及びHSQCの実験は、帰属の目的で記録した。
15N R1及びR緩和率と、15N-[1H]NOEを、非標識AB125により飽和させた2.83mM[15N]-PDZ1-2について、以前に記載されたパルスシーケンスを用いて測定した。試料条件は上述の通りである。R1の実験には、以下の緩和遅延を用いた:0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0秒。ピーク強度の不確実性は、5つの重複データ点から推定した。Rの実験は、1661Hzのスピンロックフィールドと、119ppmに位置する無線周波数キャリアと、0.004, 0.008、0.012、0.016、0.0,02、0.024、0.03、0.036、0.04、0.05、0.055、0.06秒の緩和遅延とにより記録した。5つの重複データ点を、ピーク体積の不確実性の推定のために記録した。15N-[1H]NOEは、プロトンを飽和させた状態とさせない状態とで記録した実験の比を得ることにより記録した。両方の実験の合計リサイクル遅延は、12秒であり、飽和パルス無しの実験は、不確実性の推定のために重複させた。
全てのNMRデータは、NMRpipeにより処理し、Sparky(Goddard及びKneller、カリフォルニア大学サンフランシスコ校)を用いて視覚化した。PDZ1-2の結合形式の帰属は、PDZ1-2/cypinから帰属をトランスファーすることにより得た(Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 131, 787, 2009)。この研究では異なる化合物が使用されており、試料条件も異なるため、半分より僅かに多い帰属のみが自信を持ってトランスファー可能となった。スペクトル内の残りのピークは分析しなかった。ピークは統合し、内製プログラムPINTを用いて、体積を緩和率に変換した。同じプログラムを使用して、R緩和率をR2緩和率に変換した。
7.2 二量体PSD-95阻害剤はPDZ1及びPDZ2の両方に結合する
15N,13C標識二量体リガンド(AB140)のPDZ1及びPDZ2に対する結合を、7.1に記載した非標識PDZ1-2の存在/不在下でNMR構造を決定することにより分析した。対称リガンド[15N,13C]-PEG4(IETAV)2(AB140)のHSQCスペクトルにおいて5個のピークを検出した。しかしながら、リガンドがPDZ1-2と結合している場合、10個のアミノ酸のそれぞれに対応する10個の異なるピークが観察された(図6)。これは、両方のリガンド部分がPDZ1-2と相互作用しており、異なるタンパク質環境、即ち、PDZ1及びPDZ2のそれぞれに対応していることを明らかに示している。結合及び非結合二量体リガンドについての化学シフトに基づく2次構造の計算から、非結合リガンドがランダムコイル特性を示し、結合リガンドがβ鎖構造となることが推測できる(図7)。最後に、R1及びR2緩和率の測定により、二量体リガンドとの複合体内のPDZ1-2は、1単位として転回することが確認されたため、2:2の結合化学量論比等の他の潜在的モデルが除外される。したがって、NMR試験により、1:1の結合化学量論比が確認され、二量体リガンドの各リガンド部分が、真の二価結合様式において、PDZ1-2のPDZ1又はPDZ2の何れかと結合していることが疑いなく実証される。
実施例8. CPP含有二量体PSD-95阻害剤は血液脳関門を通過する
8.1 血液脳関門(BBB)透過性の分析
こうした蛍光標識リガンドは、血液脳関門を通過してマウスの脳に入るCPP含有二量体PSD-95阻害剤の能力に関する代替測定に使用した。蛍光リガンドを静脈注射し(3nmol/g)、リガンドの位置を、マウスの冠状脳スライス(n=8)の蛍光顕微鏡検査により検出し、注射2時間後に評価した。前交連前の2つの脳切片及び前交連後の2つ(n=5)をBBB透過性分析用に選択した。前交連(ブレグマ:-0.3)は、解剖学的に同一の脳切片を分析するために、脳内の固定点として使用した。5-FAM蛍光体の強度は、10倍対物レンズ(Olympus 10x/0,15 UPlanApo)を備えた蛍光顕微鏡検査システム(Olympus System Microscope model BX-51、デンマーク)に高解像度顕微鏡デジタルカメラ(Olympus model DP70)を接続し、画像を画像取り込みソフトウェア(Image Pro Plusソフトウェア)に転送して、半定量的に測定した。全ての画像は、同じ顕微鏡設定を用いて、一定のカメラ露出時間により取得した。強度は、ImageJソフトウェアを用いて定量化した。
8.2 CPP-二量体PSD-95阻害剤の血液脳関門(BBB)透過性
二量体PSD-95阻害剤AB143、AB145、AB148は、それぞれAB141、AB144、AB147の5-FAM標識誘導体である(図4:AB143及びAB145を例として示す)。Tat-NR2B9cの5-FAM標識誘導体は、MS23と命名される。化合物の注入後、マウスをパラホルムアルデヒドにより灌流し、脳を慎重に取り除き、パラホルムアルデヒド中で後固定し、冠状切片に処理し、蛍光について定量を行う。冠状脳スライスの蛍光顕微鏡検査により、AB145、AB148、及びTat-NR2B9cは脳に到達しているが、AB143は到達していないことが明らかとなった(図8)。こうした結果に基づいて、Tat又はレトロインバーソ-D-Tatを含む化合物(AB144、AB147、Tat-NR2B9c)は、脳に到達可能だが、CPPを含まないAB125/AB141は到達できないと結論される。
実施例9. CPP-二量体PSD-95阻害剤の神経保護特性は、局所脳虚血を有するマウスの梗塞体積を低減する
CPP含有二量体PSD-95阻害剤のin vivoの神経保護特性を、マウスの虚血性発作の永久中大脳動脈閉塞(pMCAO)モデルにおいて試験した。
9.1 in vivo研究用のマウス
pMCAO試験は、164匹の年齢を合わせた若い成体(7乃至8週)である雄のC57BL/6マウス(Taconic、デンマーク)を用いて行った。マウスは、日周性の照明下で別々のケージに入れ、飼料(1314 Altromin、Brogarden、Denmark)及び水を自由に利用させた。マウスは、デンマーク動物倫理委員会が認めた指針(J. no. 2005/561-1068)に従って手術前に7日間順化させた。虚血性脳梗塞の程度は、2つのランダム化二重盲検プラセボ対照試験により測定した。
9.2 永久中大脳動脈閉塞
手術手順:マウスは、中大脳動脈の永久的閉塞(pMCAO)により局所脳虚血とした。マウスは、HypnormTM(クエン酸フェンタニル0.315mg/mL及びフルアニソン10mg/mL、VectaPharma社)、ミダゾラム(5mg/mL、ハーメルン)、及び蒸留H2Oの1:1:2混合物を、体重10グラム当たり0.18mL皮下注射することにより麻酔した。マウスを37±0.5℃のヒーティングパッド上に置き、目を軟膏(Viscotears、Novartis、スイス、バーゼル)で覆った。皮膚切開は、眼窩外側部と外耳道との間で行った。耳下腺の上極と側頭筋の上部とを部分切除後に押し避け、MCAの末端枝の真上で0.8mmバールを用いて小さな開頭を行った。硬膜を取り除き、電気外科ユニット(ERBEのICC50、ドイツ)に接続した二極鉗子(Gimmi、ドイツ)を用いてMCAを電気凝固させた。閉塞後、筋肉及び軟組織を整え、4-0ナイロン縫合糸を用いて皮膚を縫合した。手術後の疼痛治療として、Temgesic(0.001mg/20gブプレノルフィン、Reckitt&Coleman、英国)を、手術直後から3回、8時間間隔で与えた。加えて、マウスには、28℃に制御された回復室への移送前に、等張食塩水1mlを皮下注射した。
9.3 化合物の投与
化合物は、等張(0.9%)食塩水(NaCl)に溶解して濃度を300μMとし、体重1グラム当たり10μlを手術の30分後に静脈内(i.v.)にボーラスとして尾へ投与した(投与量:3nmol/g)。対照マウスには、0.9%NaClを静脈内注射した。
9.4 マウスの屠殺及び脳組織処理
6時間の手術後生存時間を有するC57BL/6マウスを頸椎脱臼により安楽死させた。48時間の手術後生存時間を有するC57BL/6マウスを、血液及び組織試料を収集するため、ペントバルビタール(コペンハーゲン大学生命科学部薬局、デンマーク)の過剰投与により麻酔した。全ての脳を慎重に取り除き、気体CO2中で凍結させ、6系列の30μm冠状クリオスタット切片に切り分け、更に使用するまで-80℃で保存した。AB143、AB145、AB148、及びMS23の血液脳関門(BBB)透過性の調査に用いたC57BL/6Jマウスは、深く麻酔し、10mlの冷却セーレンセンリン酸塩緩衝液(SB)(25nM KH2PO4、125mM Na2HPO4、pH7.4)、続いて20mLのSB含有4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて、左心室を介して灌流した。脳を慎重に取り除き、4%PFA中で1時間、後固定した後、SB含有20%スクロースに一晩浸漬した。脳を気体CO2中で凍結させ、16μm冠状クリオスタット切片へと加工した。
9.5 梗塞体積の判定
各マウスからの一連の新しい凍結脳切片を70%エタノール中において4℃で一晩固定した。切片を、80mmol/LのNa2HPO4×2H2O及び70mmol/Lのクエン酸で希釈したトルイジンブルー溶液(0.01%、Merck、ドイツ)中で再水和及び浸漬した後、H2O中で3回リンスし、段階的な一連のアルコール(96乃至99%エタノール)中で脱水した。切片をキシレンにより透明化し、Depex(BDH Gurr、英国)を用いてカバーガラスをかけた。切片は、体積を推定するためにコンピュータ支援立体解析試験(CAST)GRIDマイクロ顕微鏡システム(Olympus、デンマーク)及びカヴァリエリの原理を用いた梗塞容量分析に使用した。梗塞の合計体積(Vtotal)は、式:Vtotal=ΣP*t*apointを用いて計算し、ここで、ΣPは、梗塞にヒットした点の合計数、tは、切片間の平均距離、apointは、点当たりの面積を表す。
9.6 統計分析
統計分析は、Windows(登録商標)用のGraphpad Instat 5.0プログラム(GraphPad software、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて行った。2群のマウス間における梗塞サイズの平均値の比較は、ノンパラメトリックマンホイットニ検定を用いて行った。両側の対応のあるスチューデントt検定を用いて、同じマウスから手術前後に得た握力値を比較した。ウイルコクソンの符号付順位和検定を、同じマウスからの反復測定に使用した(ロータロッド能力試験)。2元分散分析を用いて、独立変数を調べた(時間及び重量又は温度)。全てのデータは、平均値±SEMとして提示している。統計的有意性は、P<0.05において認めた。
9.7 CPP含有二量体PSD-95阻害剤の神経保護作用-短期
AB144及びTat-NR2B9cの保護作用を、成体マウスにおける局所脳虚血のpMCAOモデルにおいて、生理食塩水と比較した(n=60)。阻害剤は、損傷の30分後に静脈内投与し(3nmol/g)、その後、5.5時間の手術後生存時間をおいた(図9)。AB144は、生理食塩水処置マウスと比較して、虚血性組織損傷の有意な40%の減少を示し、一方、Tat-NR2B9cは、梗塞体積の統計的に有意な減少をもたらさなかった(図10)。したがって、二量体構造による顕著な高親和性と、Tatペプチドにより促進された血液脳関門透過性との組み合わせが、Tat-NR2B9cと比較して優れた活性を有するin vivo神経保護化合物AB144につながった。
9.8 CPP含有二量体PSD-95阻害剤の神経保護作用-長期
AB144、AB147、及びTat-NR2B9cの長期持続性の神経保護作用を生理食塩水と比較して、pMCAOの48時間後に評価した(n=80)(図9)。AB144及びAB147は、食塩水処置マウスと比較して、それぞれ37%及び34%の梗塞サイズの減少をもたらしたが、Tat-NR2B9cによる処置では、統計的に有意な梗塞の減少は検出されなかった(図11及び12)。
9.9 pMCAOマウスの生理学的状態
マウスの生理学的状態は、観察された二量体PSD-95阻害剤による処置の効果のうち、実験手順により生じた二次的状態(例えば疾患関連)によるものを除外するために、pMCAO手術前及び手術中に注意深く監視した。
9.10 体重の監視:各マウスの体重は、事前訓練中、手術前、手術の24及び48時間後に記録し、処置群の間で差は見られなかった(図13)。
9.11 温度の監視:マウスの直腸温は、Model Bat12ユニット(Physitemp)に接続した熱電対プローブを用いて継続的に測定した。温度は、pMCAOの前及び30分後に加え、静脈内注射の30分及び2.5時間後、即ち、pMCAOの1及び3時間後にも測定した。生理食塩水処置マウスと比較して、薬物注入後の体重(図13)又は生存率(>96%)に差は見られなかった。
9.12 血液ガスの分析:静脈血の1試料を、PO2/PCO2電解質、グルコース、乳酸塩、及びヘマトクリット値の血液ガス分析用に、化合物投与の30分後(pMCAOの1時間後)に採取した。ヘパリン処理済み毛細管を、目頭に沿って挿入し、回転させて結膜を貫通させた。血液試料(150μl)を採取して氷上で保存した後、GEM Premier 300血液ガス装置(Instrumentation Laboratory)を用いたガス分析を行った。品質管理(QC ContrlIL9)は、IL Sensor Systemsから購入した。ここでも、血液ガスパラメータ(PO2/PCO2、pH、電解質、glu/lac)において差は検出されず、群の間では同様であり、操作していない対照マウスと比較して正常範囲内となった(表4)。
実施例10. CPP-二量体PSD-95阻害剤の神経保護特性は、局所脳虚血を有するマウスの運動機能を保護する
梗塞サイズには必ずしも現れない可能性のある運動障害を検出し、動物の状態について、より一般的な印象を提供するために、虚血発作の(pMCAO)モデル(実施例9)において48時間の手術後生存期間を有するマウスを以下の3種類の行動試験を用いて調査した。
10.1 握力
握力メータ(BIO-GT-3、BIOSEB)により、マウスの握りを離させるために必要な最大の力を判定することで、マウスの神経筋機能の研究が可能となる。個別の足の握力は、pMCAOが誘発した非対称性の重症度を測定するために使用した。マウスに金属グリッドを握らせ、水平面で後方へ引く。グリッドに加わった力をピーク張力として記録する。個別の前足の力と合計握力(両足同時)とを、pMCAOの前(ベースライン)と後とに測定した。各マウスは、5回連続の試行により試験し、最も高い握力を最高スコアとして記録した。
10.2 ロータロッド能力試験
ロータロッド(LE 8200、Panlab)は、齧歯動物の運動活動性、中枢神経系損傷に対する実験の複合作用、又は運動協調性に対する疾患の影響を判断するのに適しており、動物が回転ドラム内を歩き続ける時間により評価される。ロータロッドの回転は、モータ駆動であり、0から40回転毎分(rpm)まで5分間で加速され、この時点で全てのマウスがロッドから落下している。全てのマウスを、20分の間隔(休憩時間)をおいて4回繰り返し試行することにより試験した。手術前、4rpmで30秒間ロッド上に留まるようにマウスに事前訓練を施した。
10.3 CPP含有二量体PSD-95阻害剤の神経保護作用は、握力及び運動協調性を保護する
AB144及びAB147により処置したpMCAOマウスは、合計握力(両足)において有意の変化を示さなかったが、生理食塩水又はTat-NR2B9cにより処置したマウスは、有意な量の握力を失った(図14A)。同様に、握力の分析では、AB144及びAB147処置マウスについて、生理食塩水又はTat-NR2B9cにより処置したマウスと比較して、左右の前足間の非対称性は示されず(図14B)、AB144及びAB147の神経保護作用が明らかに実証された。ロータロッド性能試験では、AB144及びAB147処置マウスは共に、生理食塩水処置マウスよりも顕著な短期学習スキルの向上を示し(図14C)、マウスがロッド上で費やした合計時間(AB144:83.5±4.1秒、AB147:92.6±4.5秒)は、Tat-NR2B9cにより処置したマウス(65.7±3.6秒)に比べ有意に長くなった(P<0.001)。
実施例11. 二量体PSD-95阻害剤は、炎症性疼痛状態を緩和する
11.1 動物
雌のNMRIマウス(22乃至26グラム)をTaconic M&B(Ry、デンマーク)より入手し、全ての実験に使用しており、実験時8乃至9週齢であった。到着後、マウスは、Macrolon IIIケージ(20×40×18cm)に1ケージ当たり7匹を入れて最短で7日間順化させた。飼料及び水は、午前6時に明かりを付ける12/12時間の明暗周期中に自由に与えた。実験は9:00AM及び16:00PMに温度及び湿度を調節した部屋で行った(22乃至24℃、相対湿度:60乃至70%)。全ての試験手順は、「Principles of Laboratory Animal Care」(NIH publication No. 85-23, revised 1985)及びデンマークの動物実験に関する法律に従って実施し、動物の苦痛を最小限にするためにあらゆる努力を行った。
11.2 完全フロイントアジュバントによる炎症性疼痛の導入及び化合物の投与
持続的な炎症性疼痛は、20μlの完全フロイントアジュバント懸濁液(CFA、結核菌1mg/ml、Sigma-Aldrich、米国、セントルイス)を、301/2ゲージ針付きのGASTIGHT(登録商標)50μlマイクロシリンジ(Hamilton Company)を用いて、左後足の足底面へ皮下(s.c.)注射することにより誘発した。機械的刺激に対する引っ込め閾値のベースライン測定は、1日1回、CFA注射前に3回行った。媒体(0.9%生理食塩水)又はAB125(3、10、又は30mg/kg)を腹腔内に、注入量10ml/kg(AB125を0.9%生理食塩水に溶解)で与えた。CFA及び媒体/AB125は、少なくとも機械的刺激の試験の24時間前に投与した。
11.3 疼痛試験-CFAにより誘発した機械的異痛症/痛覚過敏に対するフォンフライ試験
CFA処置により誘発した痛覚過敏/異痛症の度合いを評価するために、機械的刺激に対する50%足引っ込め閾値(PWT)を上げ下げ法(Chaplan et al., J Neuroscience Methods, 1994, 53, 55-63)により測定した。簡単に言えば、金網の床面上に置いた透明な暗赤色のプラスチックの箱にマウスを個別に入れ、少なくとも30分、環境に慣らした。曲げ力が0.008、0.02、0.04、0.07、0.16、0.40、0.60、1.00、及び1.4グラムに等しい一連のフォンフライフィラメント(Stoelting、イリノイ州ウッドデール)を用いて刺激を伝えた。フィラメント0.6から開始し、後足の足底に対して垂直に、4乃至5秒間、フォンフライフィラメントを付与した。刺激に対して陽性反応が生じた時は、次に小さなフォンフライフィラメントを付与した。陰性反応が生じた時は、次に高いフィラメントを用いた。陽性及び陰性反応のパターンを50%閾値に変換し(Chaplan et al., J Neuroscience Methods, 1994, 53, 55-63)、次の式に従ってグラム(g)の値として表現した:50%PWT=10^(G+0.2237*K)。ここでGは、最後のフォンフライフィラメントの曲げ力、Kは、上げ下げ法に基づく標準化表から得た値である。正常な運動行動による足の持ち上げは無視し、熟睡、グルーミング、探索中の試験は避けた。処置は、試験者に分からないようにした。
11.4 食物嗜好性社会的伝達試験
STFPは、2段階で実施した。第1の段階:4匹の絶食マウスの各ケージから、「デモンストレータ」マウスを別のケージに移送し、1%シナモン又は2%ココアパウダの何れかを混合した粉剤飼料を30分間食べさせた。「デモンストレータ」マウスをそれぞれのホームケージへ30分間戻した。この「プレゼンテーション段階」中、3匹の「オブザーバ」マウスとデモンストレータマウスとの間の交流をスコア化した。最少2回及び最大5回の舐め合い/嗅ぎ合いを、適切な臭いの手掛かりの取得の基準として設定した。この第一の段階後、「デモンストレータ」マウスを取り除き、3匹の「オブザーバ」マウスを清潔なケージに移し、4時間に亘り飼料及び水を自由に利用可能とした後、第2の段階に備えて絶食させた。第2の段階:24時間の保持間隔に続いて、オブザーバマウスを、それぞれシナモン又はココアの香りがする2つの粉砕飼料のトレイを入れたケージに個別に配置した。新規の飼料に対して、手掛かりを与えた飼料から食べた量を、以前に手掛かりを与えた飼料の記憶の指標とした。予備研究では、シナモン及びココア風味の飼料から選択させた際に、マウスは先天的な嗜好性を示さなかった。しかしながら、実験は、各処置群内で等しい数のマウスがシナモン及びココアの手掛かりをそれぞれ得る状態を確保して、バランスの取れた設計とした。
11.5 変形Y迷路
ランウェイに接続された2本の垂直なアームから成る透明なプレキシガラス性の迷路において試験を実施した。2本のアーム(探索可能)及びランウェイは、長さ50cm、幅8cmであり、高さ30cmの透明なプレキシガラス製の壁により囲まれる。各アームは、黒色の取り外し可能な仕切りの付いた中央プラットホームの位置で合わさり、必要に応じてアームの開閉を可能とした。迷路全体を三角形の黒色プレキシガラス製の箱(1×1×1m)に入れた。この各探索アームを囲む外側の箱の壁は、個別の光学的キュー、例えば、水平又は垂直の線で覆われている。ランウェイを囲む範囲は光学的キューを含まず、黒色とした。迷路の各アームは、不透明な仕切りにより別のアームから区切り、マウスがアームに入った時、その特定のアームの個別の光学的キューのみが見えるようにした。試験は2つの段階から成る:段階1(馴化)では、マウス(n=8乃至10)をランウェイの端に配置し、強制選択により、探索アームの一方にアクセスさせた(即ち、他方のアームは閉鎖)。マウスがアームに入った後、ランウェイへのアクセスを遮断し、マウスにアーム(慣化と呼ぶ)を5分間探索させた。慣化アームは体系的に交代させ、アッセイを混乱させる場所選択性を排除した。その直後、段階2(試験)において、マウスに、ランウェイを除き、慣化及び非慣化探索アームの両方を2分間探索させた。試験セッション中に、各アームで費やした累積時間を自動ビデオ追跡システム(Ethovision、Noldus)により記録した。識別指数(DI)は、新規及び慣化アームで費やした時間の差を、段階2の試験中に新規及び慣化アームで費やした合計時間で割ったものとして定め、即ち、DI=(新規-慣化)/(新規+慣化)とし、各マウスについて計算した。
11.6 ロータロッド試験
運動機能を加速ロータロッド(MedAssociates社、米国バーモント州)を用いて評価した。ロータロッド(直径3.2cm)の速度は、300秒の間に4から40rpmまで増加させ、ロッド上で費やすことが可能な最短時間を0秒とし、最長の終了時間を310秒に設定した。各マウスを薬物処置(t=0)の直後に試験し、薬物処置の15、30、45、及び60分後に再度試験した。動物が回転ドラムから落ちた際には、光ビームが自動的に途切れ、回転ロッド上で費やした時間量が記録される。
11.7 データ分析
疼痛データ:ベースライン機械的閾値は、CFA処置前に3日連続で得たフォンフライ測定値の平均として定め、最終のベースライン測定は、CFA処置と同日に行った。統計的分析は、2元反復測定共分散分析(RM-ANCOVA)を用いて行い、処置を独立因子、時間を反復因子、ベースライン機械的閾値を共変量とした。RM-ANCOVAに続いて、予測平均に関する事前比較を行い、限界感度に対する経時的な処置の効果を評価した。分析は、未加工データに対して実行したが、結果は相対値として記載している(例えば、1として定めたベースライン).
認知データ:食物嗜好性社会的伝達試験において、手掛かりを与えた飼料に対する嗜好性は、識別指数DI=(手掛かり-新規)/(手掛かり+新規)として表現した。変形Y迷路において、新規アームに対する嗜好性は、識別指数DI=(新規での時間-慣化での時間)/(新規での時間+慣化での時間)として表現した。STFP及びY迷路データは、1元ANOVAにより分析後、事前比較を行って識別指数に対する処置の効果を評価した。
運動能力:ロータロッド試験では、運動協調性に対する処置の効果を、2元RM ANOVAにより分析し、処置を独立因子、時間を反復測定とした。事前比較手順を用いて、経時的な処置の効果を評価した。
11.8 AB125は、CFAにより誘発した機械的異痛症/痛覚過敏を低減する
AB125は、腹腔内に3、10、及び30mg/kg注入した際に、何れもCFA誘発疼痛反応を低減する(図17)。これは、CFA及びAB125を同時にマウスに注入し、24時間後に機械的異痛症/痛覚過敏を測定することで明らかとなる。この結果は、PSD-95阻害剤が、CPPの付着していない状態で、炎症性(CFA誘発性)の機械的疼痛に対する有効な鎮痛剤となり、したがって、慢性疼痛状態の治療において有望な薬剤となることを示している。
11.9 CFA疼痛モデルにおけるMK-801と比較したAB125の鎮痛作用
CFAと同時投与した場合、従来のNMDA受容体アンタゴニストであるMK-801とAB125とは、共に処置の1時間及び24時間後においてCFAが誘発する機械的痛覚過敏を防止した(図18)。
11.10 CFA注入の24時間後に与えた際のAB125の持続性鎮痛作用
AB125をCFA注入の24時間後に与えた場合、ANCOVA試験は、3及び10mg/kgにおいて1時間後にCFA誘発痛覚過敏の有意な逆転を示した。更に、この逆転は、3mg/kg及び10mg/kg処置群の両方で24時間後にも観察され、72時間の時点において、痛覚過敏は全ての投与量(1、3、及び10mg/kg)で有意に逆転した(図19)。追加の測定をAB125処置の8日後に行ったが、この時点では、生理食塩水処置の動物が自発的にベースラインレベルまで回復しており、AB125の潜在的な鎮痛作用を検出することは不可能だった。
11.11 認知及び運動機能行動試験におけるAB125及びMK-801の試験
副作用プロファイルを調べるため、長期記憶に関する食物嗜好性社会的伝達(STFP)試験、注意力に関する変形Y迷路試験、及び運動能力に関するロータロッド試験におけるAB125及びMK-801の効果を比較した。痛覚過敏を低減する投与量において、MK-801は、STFP(図20)及び変形Y迷路(図21)試験において認知障害、更にはロータロッド試験(図22)において運動障害を引き起こした。一方、AB125は、鎮痛投与量、或いは更に高い投与量(60mg/kgまで)において、これらの試験で認知又は運動機能障害を誘発しなかった(図20乃至22)。したがって、AB125の形態のPSD-95阻害剤は、炎症性(CFA誘発性)の機械的疼痛に対する有効な鎮痛作用をもたらし、更に、NMDA受容体アンタゴニストMK-801において見られるような認知又は運動機能の副作用を伴わない。したがって二量体PSD-95阻害剤は、慢性疼痛の治療において有望な薬剤である。
11.12 AB144は、CFAが誘発した機械的異痛症/痛覚過敏を低減する
AB144も、腹腔内にCFA注入と同時にAB144を注入し、1及び24時間後に機械的異痛症/痛覚過敏を測定することで明らかになるように、CFA誘発疼痛反応を低減する。統計的ANCOVA試験は、30mg/kg投与の1時間後、10及び30mg/kg投与の24時間後にCFA誘発痛覚過敏の有意な逆転を示した(図23)。この結果は、PSD-95阻害剤が、CPPの付着した状態で、炎症性(CFA誘発性)の機械的疼痛に対する有効な鎮痛剤となり、したがって、慢性疼痛状態の治療において有望な薬剤となることを示している。
実施例12. 二量体PSD-95阻害剤は、脊髄組織に浸入する
12.1. PSD-95阻害剤の脊髄検出方法
二量体PSD-95阻害剤AB143及びAB145は、それぞれAB141及びAB144の5-FAM標識誘導体である(図4)。したがって、AB143は、AB125/141の薬物動態特性を調べるための代理化合物の役割を果たし、一方、AB145は、AB144に対する代理化合物の役割を果たす。AB143及びAB145が脊髄組織に浸入可能かを調べるために、これらを腹腔内注射によりマウスに投与した(30mg/kg)。薬物処置したマウスを注射の30分後に断頭し、脊髄を慎重に切り取り、これに5%トリクロロ酢酸(TCA)(組織0.1g当たり300μL)を添加し、超音波ホモジナイザにより組織を均質化した(氷上)。均質化した組織をボルテックスし、10分間遠心分離した(20000g、4℃)。上清を試験管に移して蒸発させ、残留物を水中で戻し、その蛍光強度を蛍光プレートリーダ(励起/発光:470/525nm)を用いて判定した。化合物の定量化のために、均質化の前に既知の量のAB143及びAB145を対照マウスからの脊髄組織にスパイクし、薬物処置マウスと同様に検査及び分析することにより標準曲線を作成した。
12.2. PSD-95阻害剤は脊髄に含まれる
生理食塩水処置マウスと比較して、AB143及びAB145により処置したマウスからの脊髄組織において、明白且つ明瞭な蛍光の増加が測定された。標準曲線に基づいて、AB143及びAB145の濃度は、それぞれ0.061nmol/g及び0.074nmol/gと判定された。これらの濃度は、PSD-95に対する化合物のKd値(5乃至10nM)を上回っているため、AB143(したがってAB125)及びAB145(したがってAB144)の両方が、PSD-95を阻害して疼痛を緩和するために、関連する濃度でCNS脊髄組織に浸入可能であることを裏付けている。

Claims (18)

  1. リンカーにより第2のペプチドに結合された第1のペプチドを含む化合物であって、前記第1及び前記第2のペプチドは、配列YTXV又はYSXVを有する少なくとも4個のアミド結合残基を含み、
    a. Yは、E、Q、及びAから選択され、
    b. Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-Nから選択され、
    前記リンカーは、PEGを含み、前記PEGの少なくとも1個の酸素原子は、窒素原子に置換され、NPEGとなり、
    細胞透過性ペプチド(CPP)は、アミド結合により前記リンカーの前記窒素原子に結合され、
    前記CPPは、アルギニン及び/又はリジンから選択された少なくとも4個のアミノ酸残基を含む、化合物。
  2. 前記リンカーは、4乃至28個のエチレングリコール部分(N=4乃至28)を含む、請求項1記載の化合物。
  3. 前記リンカーは、NPEG-二酸リンカーであり、前記リンカーの各カルボキシル基は、前記第1及び前記第2のペプチド又はペプチド類似体の末端残基に結合される、請求項1又は2記載の化合物。
  4. 前記CPPは、レトロインバーソペプチドを含む、請求項1乃至3の何れかに記載の化合物。
  5. 前記CPPは、アミノ酸配列YGRKKRRQRRRを有するTatペプチド又はアミノ酸配列rrrqrrkkrを有するレトロインバーソ-D-Tatペプチドである、請求項1乃至4の何れかに記載の化合物。
  6. 前記第1のペプチド及び/又は前記第2のペプチドは、5乃至10個のアミド結合残基の長さを有する、請求項1乃至5の何れかに記載の化合物。
  7. 前記第1及び/又は第2のペプチドは、少なくとも4個のL-アミノ酸残基を含む、請求項1乃至6の何れかに記載の化合物。
  8. Xは、A、Q、及びDから選択される、請求項1乃至7の何れかに記載の化合物。
  9. 前記第1のペプチド及び/又は前記第2のペプチドは、N-アルキル化される、請求項1乃至8の何れかに記載の化合物。
  10. 薬剤として使用するための、請求項1乃至9の何れかに記載の化合物を含む医薬組成物。
  11. 被験体における興奮毒性関連疾患の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1乃至9の何れかに記載の化合物を含む医薬組成物。
  12. 前記疾患は、CNSの虚血性又は外傷性損傷である、請求項11記載の医薬組成物。
  13. 被験体における疼痛の予防及び/又は治療に使用するための、請求項1乃至9の何れかに記載の化合物を含む医薬組成物。
  14. 請求項11乃至13の何れかに記載の医薬組成物を備えるキットであって、被験体に前記組成物を送達する手段を更に備えるキット。
  15. 化合物を含む、被験体における疼痛の予防及び/又は治療用の医薬組成物であって、前記化合物は、リンカーにより第2のペプチドに結合された第1のペプチドを含み、前記第1及び前記第2のペプチドは、配列YTXV又はYSXVを有する少なくとも4個のアミド結合残基を含み、
    a. Yは、E、Q、及びAから選択され、
    b. Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-Nから選択される、医薬組成物。
  16. 前記リンカーは、PEGリンカーであり、4乃至28個のエチレングリコール部分(N=4乃至28)を含む、請求項15に記載の医薬組成物。
  17. 前記リンカーは、PEG-二酸リンカーであり、前記リンカーの各カルボキシル基は、前記第1及び前記第2のペプチドの末端残基に結合される、請求項16に記載の医薬組成物。
  18. 前記化合物は、PEG4(IETAV)2、NPEG4(IETAV)2、PEG6(IESDV)2、及びPEG4(IESDV)2から選択される、請求項16に記載の医薬組成物。
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