JP2014512177A - Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路に関する遺伝子発現シグネチャーおよびその使用 - Google Patents

Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路に関する遺伝子発現シグネチャーおよびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、新規16種類のバイオマーカーのセット、その検出を提供するマイクロアレイ、および16種類の遺伝子またはその一部を含む発現シグネチャー、ならびに細胞試料または対象のWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の調節状態の決定におけるその使用に関する。細胞試料または対象におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の調節状態は、これら遺伝子のうちの1つまたは複数の発現レベルに基づいてアッセイすることができる。試料中のこれらバイオマーカーの発現を利用して、試料のWnt/β−カテニン経路の調節解除状態を評価する;Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されているかまたは調節されているかで細胞試料を分類する;ある薬剤が試料中のWntβ−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを決定する;Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する対象の反応を予測する;治療を対象に割り当てる;およびWntβ−カテニン経路シグナル伝達を調節するように設計された治療の薬力学的効果を評価する、ことができる。本発明では、提供したバイオマーカーの発現を、好ましくは、SYBRグリーン法を使ったRT−PCRと解析されたデータから決定し、サポートベクターマシン法を使って対照試料と比較する。
【選択図】図1

Description

関連出願の開示
本出願は、「Gene Expression Signature For Wnt/B−Catenin Signaling Pathway And Use Thereof(WNT/B−カテニンシグナル伝達経路に関する遺伝子発現シグネチャーおよびその使用)」の名称で、2011年4月1日に出願の、米国仮特許出願第61/470,919号(代理人明細書番号74708.010000)の優先権を主張し、添付の書類を含むその全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
2012年3月30日に作成された、名称「74708o010002.txt」、大きさが14,274バイトの配列表ファイルも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、新規マーカーセット、16種類の遺伝子またはその一部を含むマイクロアレイ、および16種類の遺伝子またはその一部を含む発現シグネチャー、ならびに、細胞試料または対象中のWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の調節状態の決定におけるその使用に関する。細胞試料または対象中のWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の調節状態は、これら遺伝子のうちの1つまたは複数の発現レベルに基づいてアッセイすることができる。より具体的には、本発明は、試料中のWnt/β−カテニン経路の調節解除状態を評価する;Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路の調節が解除されているかまたは調節されているかで、細胞試料を分類する;ある薬剤が試料中のWntβ−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを決定する;Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する対象の反応を予測する;治療を対象に割り当てる;およびWnt/β−カテニン経路のシグナル伝達を調節するように設計された治療の薬力学的な効果を評価する、ためのバイオマーカーとしておよび遺伝子シグネチャーとして使用することが可能な遺伝子のセットを提供する。本発明では、提供したバイオマーカーの発現を、好ましくは、SYBRグリーンを使ったRT−PCRと解析されたデータから決定し、サポートベクターマシン法を使って対照試料と比較する。
Wnt受容体が活性化されると、以下の3つの別のシグナル伝達カスケードが活性化する(Huelsken and Birchmeier, 2001, Curr. Opin. Genet. Dev. 11 :547−553): 1)Wnt/Ca2+経路。これは、プロテインキナーゼCおよびCa2+カルモジュリン依存性プロテインキナーゼΠの活性化を誘導する;2)細胞骨格経路。これは細胞骨格の組織と構成、および平らな細胞の極性を調節する、ならびに3)標準的なWnt経路。これは原腫瘍性タンパク質であるβ−カテニンの細胞内レベルを制御する。「Wnt/β−カテニン」経路または「β−カテニン」経路としても知られている標準的な経路は、この3つのWnt経路のうち、最も研究され、最も理解が進んでいる経路である(Clevers, 2006, Cell 127:469−480)。
Wnt/β−カテニン経路において鍵となるタンパク質が、原腫瘍性タンパク質のβ−カテニンであり、これは、2つの異なる細胞内プールを切り替えることができる。Wntシグナルがない場合、β−カテニンは、膜に固定されているE−カドヘリンの細胞質ドメインに結合し、そこでアルファ−カドヘリンと共に、細胞骨格タンパク質であるアクチンへの架橋を形成する。サイトゾル中でのβ−カテニンレベルは、いわゆる分解複合体によって低く保たれている。分解複合体は、活性型のセリン−スレオニンキナーゼであるグリコーゲンシンターゼキナーゼ−3β(GSK3b)、他のいくつかのサイトゾルタンパク質、例えば癌抑制タンパク質のAPC(Adenomatous Polyposis coli、腺腫様多発結腸ポリープ)およびAxin/Conductinから形成されている。GSK3bによるβ−カテニンのリン酸化は、b−TrCP(β−トランスデューシンリピート含有タンパク質)を介したそれ自体のユビキチン化およびプロテアソーム分解機構によるその分解を誘導する。Wnt/β−カテニン経路の活性化によって、Wntの受容体であるFrizzled(Fz)とその共受容体であるLRP5/6(低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質)とのヘテロ二量体化が開始される。次いで、活性型カゼインキナーゼ2(CK2)によるDishevelled(Dsh)の過剰なリン酸化が起こり、GSK3bの阻害が引き起こされる(Willert et al., 1997, EMBO J. 16:3089−3096)。その結果、破壊複合体が分解され、β−カテニンがリン酸化状態でなくなり、そして、サイトゾルおよび核でのβ−カテニンレベルが上昇する。核のβ−カテニンはT−細胞因子/リンパエンハンサー因子(TCF/Lef)と相互作用し、コリプレッサーに置き換わる(Staal et al., 2002, EMBO Rep. 3:63−68)。β−カテニン/TCF複合体は多種の標的遺伝子の転写を活性化する。
Wnt標的遺伝子の産物によって、細胞周期キナーゼの調節、細胞接着、ホルモンのシグナル伝達、および転写調節などの多様な生化学的機能が説明される。生化学的機能が複数あることとその多様性は、細胞周期の進行や増殖の活性化、アポトーシスの阻害、胚発生の調節、細胞分化、細胞成長、および細胞移動などの、多種多様なWnt/b−カテニン経路の生物学的な効果を反映している(Vlad et al., 2008, Cellular Signaling 20:795−802にまとめられている)。β−カテニン/TCF複合体の標的遺伝子の多くが同定されており、Wntホームページ(http ://www. stanford.edu/〜rnus se/wntwindow.html)で見ることができる。
Wnt/β−カテニンシグナル伝達は、成体組織の自己再生に関係している。Wnt/β−カテニンカスケードは、腸上皮での前駆細胞区画の確立に必要とされる場合がある(Korinek et al., 1998, Nat. Genet. 19:1−5)。また、Wntタンパク質は腸陰窩底部でのパネート細胞の最終分化を促進する(Van Es et al., 2005, Nature 435:959−963)。Wnt/β−カテニンシグナル伝達は、毛包の確立に必要である(van Genderen et al., 1994, Genes Dev. 8:2691−2703)。毛包でのWnt/β−カテニンシグナルは毛包幹細胞(バルジ)を活性化し、毛髪の細胞系への進入をうながし、そしてそれらの細胞を一過性増殖マトリックスのコンパートメントに補充する(Lowry et al., 2005, 19:1596−1611; Huelsken et al., 2001, 105:533−545)。Wnt/β−カテニン経路はまた、造血幹細胞および造血前駆細胞、ならびに骨の恒常性に重要な調節因子である(Clevers, 2006, Cell 469−480にまとめられている)。
さらに、Wnt/β−カテニンシグナル伝達は癌にも関連がある。生殖系列APCの変異は、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)の遺伝的要因である(Kinzler et al., 1991; Nishisho et al., 1991)。散発性直腸結腸癌の大部分では、APCアレルの両方が失われており、APCが消失した結果、β−カテニンが不適切に安定化される(Rubinfeld et al., 1996)。これらの突然変異がβ−カテニンシグナル伝達を活性化し、細胞分化を阻害し、細胞増殖を亢進して、最終的に前癌状態の腸ポリープを形成する(Gregorieff and Clevers, 2005, Genes Dev. 19:877−890; Logan and Nusse, 2004, Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 20:781−810)。APCが変異していない、珍しい結腸直腸癌の例では、Axin2が変異しているか(Liu et al., 2000)、またはβ−カテニンに、そのN末端のSer/Thr破壊モチーフが除かれるような活性化点変異がある(Morin et al., 1997)。活性化Wnt/β−カテニン経路の突然変異には、腸癌があるがこれには限定されない。機能喪失型のAxin変異は肝細胞癌でも見つかっており、β−カテニンの発癌性のある突然変異は、様々な固形癌で生じている(Reya and Clevers, 2005にまとめられている)。Wnt/β−カテニンカスケードの変異性活性化は、毛包の腫瘍にも関連している可能性がある(Clevers, 2006, Cell 469−480にまとめられている)。また、Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路の不活化突然変異も、LEFlの突然変異を有するヒトの脂腺癌において確認されている(Takeda et al, 2006)。Wnt/β−カテニンシグナル伝達は、癌幹細胞の調節にも伴われる。(Malanchi et al., 2008, 452:650−653;総説、Fodde and Brabletz, 2007, Curr. Opin. Cell Biol. 19:150−158)。
現在の分子医学において中心となっている目標は、治療に最も反応しやすい患者小集団を同定することである。認可されている実験的な治療が多数あること(Rothenberg et al., 2003, Nat. Rev. Cancer 3:303−309)、現行の治療の多くに対する反応率の低さ、および初回の治療周期で至適治療を使用することが臨床上重要であること(Dracopoli, 2005, Curr. Mol. Med. 5: 103−110)から、この概念は、特に癌に関して重要なものである。加えて、現在市場に出回っている細胞毒物に関連する、治療指数の低さや重篤な毒性プロファイルから、反応を正確に予測することが早急に必要とされている。最近の研究から、細胞毒物を使った化学療法に対する反応と関連する遺伝子発現シグネチャーが同定されているが(Folgueria et al., 2005, Clin. Cancer Res. 11 :7434−7443; Ayers et al, 2004, 22:2284−2293; Chang et al., 2003, Lancet 362:362−369; Rouzier et al., 2005, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 8315−8320)、これらの実験例(および文献からの他の例)はまだ確認されておらず、臨床業務に未だ大きな影響を及ぼしていない。標準的な技術プラットフォームがないことや臨床試料の収集にまつわる難しさなどの技術的な問題に加えて、無数の細胞内プロセスが細胞毒性をもつ化学療法により影響を受けることから、これらの薬剤に対する反応の、実用的かつ強固な遺伝子発現予測因子の同定が妨げられている可能性がある。1つの例外としては、微小管関連タンパク質のTauのmRNA発現の低さが、パクリタキセルに対する改善された反応の予測因子であるという、マイクロアレイを使った最近の発見が挙げられ得る(Rouzier et al.,上記)。
細胞毒性をもつ化学療法の制限をゆるめるために、腫瘍学における最近の創薬方法は、腫瘍の増殖や生存に重要な、特定の細胞のシグナル伝達経路をモジュレートすることに焦点を当てている(Hahn and Wemberg, 2002, Nat. Rev. Cancer 2:331−341; Hanahan and Weinberg, 2000, Cell 100:57−70; Trosko et al., 2004, Ann. N.Y. Acad. Sci. 1028:192−201)。癌細胞では、これらの経路の調節が解除され、その結果、異常なシグナル伝達、アポトーシスの阻害、転移の増加、および細胞増殖の増加が生じる(Adjei and Hildalgo, 2005, J. Clin. Oncol. 23:5386−5403にまとめられている)。成長や増殖を制御するために、正常な細胞では複数のシグナル伝達経路が正しく調和しているが、腫瘍は、1つまたは2つの経路の活性化(「腫瘍遺伝子活性化」)に、大きく依存しているようである。異常なWnt/β−カテニン経路シグナル伝達によって癌が引き起こされる可能性があり、また、この経路中の遺伝的欠損のいくつかが、腫瘍の促進および進行に寄与している可能性がある(Polakis, 2000, Genes Dev. 14: 837−1851にまとめられている)。Wnt/β−カテニン経路の過剰な活性化が、いくつかのヒト癌、例えば、結腸直腸癌(Morin et al., 1997, Science 275: 1787−1790)、黒色腫(Rubinfeld et al., 1997, Science 275:1790−1792)、肝芽腫(Koch et al., 1999, Cancer Res. 59:269−273)、髄芽腫(Zurawel et al, 1998, Cancer Res. 58:896−899)、前立腺癌(Voeller et al, 1998, Cancer Res. 58:2520−2523)、ならびに子宮および卵巣の類内膜腺癌(Schlosshauer et al., 2000, Mod. Pathol. 13: 1066−1071; Mirabelli−Primdahl et al, 1999, Cancer Res. 59:3346−3351; Saegusa and Okayasu, 2001, J. Pathol. 194:59−67; Wu et al., 2001, Cancer Res. 61 :8247−8255)で、最も頻繁に見られるシグナル伝達異常のうちの1つである。また、乳房の異形成癌でも、Wnt/β−カテニン経路の活性化がよく見られる(Hayes et al., 2008, Clin. Cancer Res. 14:4038−4044)。これらの異常なシグナル伝達経路の構成要素が、新規抗癌治療にとって、魅力的で選択的な標的を表している。加えて、論理的には、特定の経路が「主導」している腫瘍に罹患している患者は、その特定の経路の構成要素を標的とした治療に反応するだろうと考えられるので、標的治療に関する応答者を同定する方が、細胞毒物に対する応答者を同定するよりも達成しやすいだろう。そのため、どの腫瘍でどの経路が活性化されているかを同定し、この情報を治療の決定の指針とする、ということが重要である。これを可能とする方法の1つは、経路の活性化状態の指標となる遺伝子発現プロファイルを同定することである。
経路の構成要素の多くが、Wnt/β−カテニンシグナル伝達を、複数のポイントで活性化、変更、または阻害する可能性があり、あるいは、他の経路とのクロストークに関係している可能性がある。特徴がよく分かっている、ごく少数の経路の構成要素について試験することで経路の活性を測定すると、他の重要な経路媒介因子を逃す恐れがある。経路の活性化が多数の生体機能や疾患に関与していると仮定すると、経路上の複数の構成要素が活性化されることによって、同じ遺伝子発現シグネチャーが引き出される可能性があるため、経路の活性化を、遺伝子発現シグネチャーを利用して読み取る方が、経路活性の単一の指標に基づいて読み取るよりもより適切であろう。加えて、複数の遺伝子からの発現データを統合することにより、経路活性を定量的に評価することが可能になると考えられる。細胞試料、腫瘍を含むがこれには限定されない、を分類するのに遺伝子発現シグネチャーを利用することに加えて、経路の活性化状態を評価することで、経路の活性化に関する遺伝子発現シグネチャーは、バイオマーカーとして使用することもできるだろう。バイオマーカーとしては、薬力学的なバイオマーカー、つまり治療後の患者の腫瘍または抹消組織での経路の阻害をモニタリングする;反応予測バイオマーカー、つまり特定の経路の活性が高レベルである腫瘍を患っている患者を、その経路を標的とした阻害剤で患者を治療する前に予め同定する;および初期効果のバイオマーカー、つまり効力を初期に読み取る、が考えられる。経路活性の遺伝子発現シグネチャーは、経路のシグナル伝達をモジュレートする薬剤のスクリーニングに使用してもよい。
2010年7月1日に公開された、Arthurらによる出願であって、メルクに譲渡された、最近の米国特許出願第20100169025号、「Methods And Gene Expression Signature For Wnt/B−Catenin Signaling Pathway(WNT/B−カテニンシグナル伝達経路に関する方法および遺伝子発現シグネチャー)」は、その発現がWnt/β−カテニンシグナルの伝達および制御に関連すると思われる遺伝子のセットを開示することを主旨としている。しかしながら、この特許出願は、本発明の遺伝子とは全く重複していない、別個の38種類の遺伝子に関するものである。Wnt/β−カテニンの推定シグネチャーを同定するのに発明者らは異なる種類の試料および方法を使用したため、出願人らは、彼らの理論によって拘束されることを望まない。特に彼らは、β−カテニンのsiRNAを導入した、Wnt/β−カテニンシグナル伝達が恒常的に活性な細胞株(DLD1、SW480およびSW620)を使用した。以下に詳細に開示するように、本発明者らは、代わりに、特異的リガンド(Wnt3a)刺激を使用して、およびLiCl処理またはβ−カテニンsiRNA処理でWnt/β−カテニンシグナル伝達の状態を変化させた細胞株を利用した。
加えて、彼らはWnt/β−カテニンシグネチャー遺伝子の抽出および確認に別の数学的手法を使った。彼らは、モンテ・カルロ法を使ってバイオマーカー遺伝子のセットの意義を算出した。この方法では、1個だけ取り出す方法(leaving one out法)および生存モデルによって、マーカーセットは確認され得る。分類(パターン認識)法の例としては、プロファイルの類似性;人工神経回路網;サポートベクターマシン(SVM);ロジスティック回帰、線形または二次の判別分析、決定木、クラスタリング、主要成分分析、および最近傍法が挙げられる。メルク社とは対照的に、本発明者らは、サポートベクターマシン(SVM)法によって、本明細書で開示した特異なWnt/β−カテニン遺伝子シグネチャーを抽出した。
さらに、メルク社の特許出願の実施例では、彼らも同様に早い時点(24h)でsiRNAを使用し、結腸癌試料と正常試料の遺伝子発現を比較した。一方本発明では、Wnt3aおよびLiClで刺激した細胞株、またはwnt/β−カテニンsiRNAで阻害した細胞株を使って、遺伝子シグネチャーを同定した。
図1には、実験の全体像を図示する模式図を示す。この実験により、経路のシグナル伝達をモジュレートする薬剤のスクリーニングおよび/または細胞試料中のWnt/β−カテニン経路活性の調節状態のアッセイに用いることが可能な固有の遺伝子シグネチャープロファイルが同定された。 図2A〜Cでは、293H細胞に、β−カテニン(CTNNB1)を標的とするsiRNAを48時間導入し、最後12時間の培養時に時間Wnt3aを添加した実験の結果を図示する。パネルA:Wnt/β−カテニン経路の活性化を、活性型β−カテニンタンパク質レベルの上昇によって確認したパネルB:Wnt/β−カテニン経路の活性化を、標的遺伝子のアップレギュレーションによって確認した。パネルC:全ゲノムマイクロアレイ解析により、示した64種類のWnt/β−カテニン応答遺伝子を同定した。 図3Aは、Wnt/β−カテニン経路シグネチャーの同定に使用した、20個の試料の訓練データのセットにおける、CTNNB1(β−カテニンをコードしている遺伝子)の発現の変化を示している。実験では、12個の試料をWnt3aまたはLiClのいずれかで刺激し、8個の試料にβ−カテニン(CTNNB1)を標的とするsiRNAを導入した。パネルA:標的とするsiRNAを導入した7個の試料を示す。 図3Bは、Wnt/β−カテニン経路シグネチャーの同定に使用した、20個の試料の訓練データのセットにおける、CTNNB1(β−カテニンをコードしている遺伝子)の発現の変化を示している。実験では、12個の試料をWnt3aまたはLiClのいずれかで刺激し、8個の試料にβ−カテニン(CTNNB1)を標的とするsiRNAを導入した。パネルB:Wnt3aまたはLiClのいずれかで刺激した11個の試料を示す。 図4A〜Bは、16種類のWnt/β−カテニン遺伝子シグネチャーのクロス確認の結果を含む。パネルA:これらの実験では、20個の試料での16種類のWnt/β−カテニン遺伝子シグネチャーを、サポートベクターマシン分類法を使ったクロス確認によって確認した。この図から分かるように、16種類の遺伝子シグネチャーは、20個の試料の調節状態を、クロス確認において正しく予測した。。パネルB:20個の試料全体の、16種類のシグネチャー遺伝子のPCRによる発現データを示すヒートマップも示す。 図5Aは、64種類のWnt/β−カテニン応答遺伝子の、リアルタイムPCRを用いた確認に使用した全プライマーの配列情報を含んでいる。 図5Bは、64種類のWnt/β−カテニン応答遺伝子の、リアルタイムPCRを用いた確認に使用した全プライマーの配列情報を含んでいる。 図6は、Wnt/β−カテニン応答遺伝子の遺伝子発現プロファイリングおよび同定の結果を示している。Wnt3およびsiRNAの処理により、それらの発現が一貫して影響を受けたことから、64種類の遺伝子を、Wnt/β−カテニン応答遺伝子として同定した。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。 同上。
本発明を詳細に開示する前に以下の定義を提供する。別段の定義が無い限り、本明細書では、全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
本明細書で使用する場合、本明細書に記載の遺伝子のうちの1つまたは複数に相補的なオリゴヌクレオチド配列とは、ストリンジェント条件下で、前記遺伝子のヌクレオチド配列の少なくとも一部分にハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチドを指す。そのようなハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドは通常、前記遺伝子と、ヌクレオチドレベルで少なくとも約75%の配列同一性、好ましくは約80%または85%配列の同一性、より好ましくは約90%または95%またはそれ以上の配列同一性を前記遺伝子に対して示す。
「実質的に結合する」とは、プローブ核酸と標的核酸との相補的なハイブリダイゼーションを指し、かつ、標的ポリヌクレオチド配列の望ましい検出を達成するためにハイブリダイゼーション媒体のストリンジェンシーを下げることで調整することができる小数のミスマッチを包含する。
「と特異的にハイブリダイズしている」という句は、特定のヌクレオチド配列が、複雑な(例えば細胞全体の)DNAまたはRNA混合物中に存在する場合に、分子がストリンジェント条件下で、実質的にその特定のヌクレオチド配列に、またはその特定のヌクレオチド配列だけに結合する、二本鎖になる、またはハイブリダイズすることを指す。
「バイオマーカー」は、特定の条件の間で発現またはレベルが変化する任意の遺伝子、タンパク質、またはその遺伝子由来のESTを意味する。遺伝子の発現と特定の条件との間に関係性がある場合、その遺伝子はその条件に対するバイオマーカーである。
「バイオマーカー由来ポリヌクレオチド」は、バイオマーカー遺伝子から転写されたRNA、バイオマーカー遺伝子から製造した任意のcDNAまたはcRNA、およびバイオマーカー遺伝子に由来する任意の核酸、例えば、バイオマーカー遺伝子に対応する遺伝子に由来する配列を有する合成核酸、を意味する。
ある遺伝子マーカーの発現が、ある条件、表現型、遺伝子型または臨床的特徴と、偶然に予想されるよりも十分に大きな、相関または反相関がある場合、この遺伝子マーカーはこの条件、表現型、遺伝子型または臨床的特徴に関する「情報を提供する」。
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子」は、当該分野において理解されるのと同じ意味を有する。しかしながら、用語「遺伝子」が、遺伝子調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)および/またはイントロン配列を含む場合があることは、当業者には明かである。また、当然のことながら、遺伝子の定義が、タンパク質をコードせず、機能をもったRNA分子、例えばtRNAをコードしている核酸を参照することも含む。分かりやすくするために、用語「遺伝子」は通常、タンパク質をコードしている核酸の一部分を指す。この用語は場合によって、制御配列を包含してもよい。この定義は、「遺伝子」という用語のタンパク質をコードしていない発現単位への適用を排除することを意図するものではないが、分かりやすくするために、多くの場合、この用語は、本明細書では、タンパク質をコードしている核酸を指す。いくつかの例では、遺伝子は、転写に伴われる制御配列、またはメッセージの産物もしくは組成物を含む。他の態様において遺伝子は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする、転写された配列を含む。本明細書に記載の用語を踏まえて、「単離された遺伝子」は、転写された核酸、調節配列、コードしている配列などの、他のそのような配列、例えば他の天然に存在する遺伝子、調節配列、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている配列などから、実質的に単離された配列を含んでいてもよい。この点において、用語「遺伝子」は、単純化するために、転写されるヌクレオチド配列を含む核酸、およびその相補鎖を指すのに用いられる。具体的な態様では、転写されたヌクレオチド配列は、少なくとも1つの機能性タンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドをコードしている単位を含む。当業者には当然であるが、この実用本位の用語「遺伝子」には、ゲノム配列、RNAもしくはcDNA配列の両方、またはより小さい改変した核酸セグメント、例えば、遺伝子の転写されない部分の核酸セグメント(遺伝子の転写されない、プロモーターまたはエンハンサー領域などを含むがこれらには限定されない)が含まれる。より小さい改変した遺伝子核酸セグメントは、核酸操作技術の使用、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、突然変異体および/またはそのようなものを表すか、あるいはそれらを表すのに適用され得る。コード領域の5’に位置する配列で、かつ、mRNAに存在する配列を、5’非翻訳配列(「5’UTR」)と呼ぶ。コード領域の3’またはその下流に位置し、mRNAに存在する配列を、3’非翻訳配列、または「3’UTR」と呼ぶ。
「シグネチャー」は、発現パターンの差を指す。これは、cRNA産物をマイクロアレイ解析に使用した場合に、発現が検出される、固有のプローブの数として表すことができる。また、発現がリアルタイムRT−PCRで検出される個々の遺伝子の数としても表すことができる。シグネチャーは、特定のセットのバイオマーカーで例示することもできる。
「類似性の値」は、比較される2つのものの類似性の程度を示す数である。例えば、類似性の値は、特定の表現型に関連のあるバイオマーカーを使用して得られた細胞試料の発現プロファイルと、そのテンプレートに特異的な対照との間の、全体的な類似性を示す数となり得る(例えば、調節解除されたWnt/β−カテニンシグナル伝達経路状態という表現型をもつ、「調節解除されたWnt/β−カテニンシグナル伝達経路」テンプレートに対する類似性になる)。類似性の値は、類似性の測定基準、例えば相関係数で、または類別確率として表してもよく、あるいは単に、細胞試料の発現プロファイルと基準となるテンプレートの間の発現レベルの差、または発現レベルの差の集計として表してもよい。
本明細書で使用する場合、「発現レベルの測定」、「発現レベルの取得」、および「発現レベルの決定」などの用語は、遺伝子の発現レベル、例えば遺伝子の転写量、またはある遺伝子によってコードされているタンパク質を定量する方法、ならびに目的の遺伝子が少しでも発現しているか否かを決定する方法を含む。従って、発現量の定量を必ずしも提供する必要のない、「ある」または「ない」の結果を示すアッセイは、「発現を測定する」アッセイであり、この用語が本明細書では使用される。あるいは、測定されたまたは得られた発現レベルは、任意の定量的な値、例えば、対照の遺伝子または別の試料での同じ遺伝子と比較した、発現倍率の変化、上昇したかまたは低下したか、あるいは発現のログ比、またはそれらの任意の可視的な表現、例えば、検出された遺伝子の発現量を色の彩度で示す「ヒートマップ」などで表してもよい。Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路の調節が解除されている腫瘍細胞での発現に差があると同定した遺伝子を様々な核酸またはタンパク質の検出アッセイに用いて、指定された試料中のある遺伝子または複数の遺伝子の発現レベルを検出または定量することができる。ある遺伝子の発現レベルを検出する方法の例としては、ノザンブロット法、ドットブロット法もしくはスロットブロット法、レポーター遺伝子マトリックス(例えば、米国特許第5,569,588号を参照のこと)、ヌクレアーゼプロテクション法、RT−PCR、マイクロアレイを使ったプロファイリング、ディファレンシャルディスプレイ、2次元ゲル電気泳動、SELDI−TOF、ICAT、酵素アッセイ、抗体アッセイ、MNAザイムを使った検出方法(米国仮特許出願第61/470,919号、米国特許出願第2011/0143338号;同第2007/0231810号;国際公開第2008/122084号パンフレット;同第2007/041774号;およびMokany et al., J Am Chem Soc. 2010 January 27; 132(3): 1051−1059を参照のこと。これらはそれぞれその全体が、参照することにより組み込まれる)などが挙げられるがこれらには限定されない。必要に応じて、発現レベルを検出する遺伝子を増幅してもよい。増幅方法は、例えば、以下の方法の1つまたは複数の方法を含んでいてもよい:ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、LAMP法(loop−mediated isothermal amplification)、RCA法(rolling circle amplification)、TMA法(transcription−mediated amplification)、自家持続配列複製法(self−sustained sequence replication、3SR)、NASBA法(nucleic acid sequence based amplification)、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)。好ましい態様では、遺伝子発現は、好ましくはSYBRグリーンを使用したRT−PCRで検出される。
「患者」は、ヒトまたは、好ましくは哺乳動物である非ヒト動物のいずれかを意味する場合がある。
本明細書で使用する場合、「対象」は、生物、またはそれに由来する細胞試料、組織試料もしくは臓器試料、例えば、培養した細胞株、生検、血液試料、もしくは細胞を含む液体試料などの試料を指す。多くの場合、対象またはそれに由来する試料は、複数の細胞型を含んでいる。一態様において試料は、例えば、腫瘍細胞と正常細胞の混合物を含む。一態様において試料は、少なくとも10%、15%、20%、以降順に、90%、または95%の腫瘍細胞を含む。生物は動物であってよく、動物には例えば、ウシ、ブタ、マウス、ラット、ニワトリ、ネコ、イヌなどが含まれるがこれらには限定されず、一般的には、ヒトなどの哺乳動物である。
本明細書で使用する場合、「経路」という用語は、産物の生産または活性を生じる連続的に起こる2つ以上の分子の相互作用に伴われる、一連のシステムの構成要素を意味することを意図している。経路は、様々な産物または活性を生じることができ、これらの産物または活性には、例えば、分子間相互作用、核酸もしくはポリペプチドの発現の変化、2つ以上の分子による複合体の形成もしくは分解、代謝産物の蓄積もしくは破壊、酵素の活性化もしくは不活性化、または結合活性が含まれ得る。従って、用語「経路」には、様々な種類の経路、例えば、生化学的経路、遺伝子発現経路、および調節経路などが含まれる。同様に、経路は、これらの例示した種類の経路の組み合わせであってもよい。
「Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路」または「b−カテニンシグナル伝達経路」としても知られている「Wntシグナル伝達経路」は、Wnt受容体が活性化したことによって活性化される細胞内シグナル伝達経路のうちの1つであり、原腫瘍性タンパク質であるb−カテニンの細胞内レベルを制御する、標準的なWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を指す。Wntリガンド(Wnt1、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt8A、Wnt8B、Wnt9A、Wnt9B、Wnt10A、Wnt10B、Wnt11、およびWnt16を含むがこれらには限定されない)との結合によって、Wntシグナル伝達経路が活性化されると、Wnt受容体であるFrizzledがその共受容体LRP5/6(低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質)とヘテロ二量体化する。次いで、活性化されたカゼインキナーゼ2がDishevelledを過剰にリン酸化し、サイトゾル中のb−カテニンレベルを調節する破壊複合体(APCとAxin/Conductinを含む)の構成要素であるGSK3bの阻害を引き起こす。GSK3bによるβ−カテニンのリン酸化によって、b−TrCPを介したそのユビキチン化とプロテアソーム分解機構によるその分解が生じる。GSK3bの阻害することによって破壊複合体が分解して、b−カテニンがリン酸化された状態でなくなり、サイトゾルおよび核でのb−カテニンレベルが上昇する。核のb−カテニンはT−細胞因子/リンパエンハンサー因子(TCF/Lef)と相互作用し、コリプレッサーと置き換わる。b−カテニン/TCF複合体は、多種多様な標的遺伝子の転写を活性化する(Wnt/β−カテニンシグナル伝達カスケードの総説であるClevers, 2006, Cell 127:469−480も参照のこと)。Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路には、本出願の表に列挙した遺伝子、およびそれらによってコードされているタンパク質が含まれるがこれらには限定されない。
「Wnt/β−カテニン剤」、「Wnt剤」、または「b−カテニン剤」は、標準的なWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬物または薬剤を指す。Wnt/b−カテニン経路阻害剤は、標準的なWnt/b−カテニン経路のシグナル伝達を阻害する。そのような薬剤の分子標的には、b−カテニン、TCF4、APC、axin、GSK3b、および本明細書で列挙した遺伝子のうちのいずれもが含まれ得る。そのような薬剤は当該分野において既知であり、それらには、チアゾリジンジオン(Wang et al., 2008, J. Surg. Res.2008年6月27日、印刷に先行してインターネット上で出版);PKF115−584(Doghman et al., 2008, J. Clin. Endocrinol. Metab. doi: 10.1210/jc.2008−0247;ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド(Yamakawa et al., 2008, Biol Pharm. Bull. 31 :916−920);FH535(Handeli and Simon, 2008, Mol. Cnacer Ther. 7:521−529);サルディナク(suldinac)(Han et al., 2008, Eur. J. Pharmacol. 583:26−31);シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤のセレコキシブ(Tuynman et al., 2008, Cnacer Res. 68:1213−1220);逆向きターン模倣化合物(米国特許第7,232,822号);b−カテニン阻害化合物1(国際公開第2005021025号パンフレット);フシコクシン類似体(国際公開第2007062243号パンフレット);およびFZD10モジュレーター(国際公開第2008061020号パンフレット)が含まれるがこれらには限定されない。
本明細書において使用される場合、「調節解除されたWnt/β−カテニン経路」という用語は、過剰に活性化されたまたは活性化が不足しているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を意味する。ある試料(例えば腫瘍試料)中のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が、正常な(調節されている)試料のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%、200%、500%、1000%高く、活性化/シグナル伝達されている場合、そのWnt/b−カテニンシグナル伝達経路は過剰に活性化している。ある試料(例えば腫瘍試料)中のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が、正常な(調節されている)試料のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、75%、100%低く活性化/シグナル伝達されている場合、そのWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の活性化の度合は不足している。Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている正常な試料は、隣接した正常な組織に由来するものであっても、Wnt/b−カテニンのシグナル伝達調節が解除されていない他の腫瘍試料に由来するものであっても、または試料プールであってもよい。あるいは、試料間のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路状態の比較は、薬物または薬剤で、あるいは媒体で処理した同一の試料間で行ってもよい。活性化状態の変化の原因は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路に含まれる1つまたは複数の遺伝子における変異(例えば、点変異、欠失、または増幅)、転写調節の変化(例えば、メチル化、リン酸化、またはアセチル化の変化)、またはタンパク質調節(例えば、翻訳または翻訳後の制御機構)の変化である可能性がある。
本明細書で使用する場合、「発癌性経路」という用語は、過剰に活性化している場合、または活性が不足している場合に、癌の発症または進行に寄与する経路を意味する。一態様において発癌性経路とは、腫瘍遺伝子または腫瘍抑制性遺伝子を含む経路である。
本発明に関わる用語「治療」とその様々な文法形式での「治療」は、疾患状態の有害な効果、疾患の進行、疾患の原因物質(例えば細菌またはウイルス)、または他の異常な状態を予防する(つまり化学的予防)、治癒する、反転させる、緩和する、軽減する、最小限に抑える、抑制する、または停止させることを指す。例えば治療は、疾患のある症状(つまり、症状の全てである必要はない)を緩和させること、または疾患の進行を弱めることを含み得る。
本明細書で使用する場合「癌の治療」とは、癌の進行(癌の転移を含む)を部分的にまたは全体的に阻害する、遅らせるまたは予防すること;癌の再発(癌の転移を含む)を阻害する、遅らせるまたは予防すること;または哺乳動物、例えばヒトの癌の発症または発達を予防すること(化学的予防)を指す。加えて、本発明の方法を実施して癌を患っているヒト患者を治療してもよい。しかしながら、この方法は、他の哺乳動物の癌の治療にも有効であるだろう。
本明細書で使用する場合、「治療上有効量」という用語は、癌に必要な治療計画における治療量が適切である認めることを意図している。これには、複数の治療薬を使用する、例えば、それらの量の合計が望まれる生体反応を達成する第一の治療と第二の治療の量の合計などの、併用療法が含まれる。望まれる生体反応とは、癌の進行(癌の転移を含む)の部分的なまたは全体的な阻害、遅延、または予防;癌の再発(癌の転移を含む)の阻害、遅延、または予防;哺乳動物、例えばヒトの癌発生の発症の予防(化学的予防)である。
「分類結果、予測結果、または効力結果を表示するまたは出力する」とは、任意のメディア、例えば口頭、書面、視覚ディスプレイなどのコンピューターが読み込み可能なメディアまたはコンピューターシステムを使用している利用者に、試料の分類または予測に基づく遺伝子発現の結果が、送られることを意味する。結果の出力とは、利用者または接続されている外部の要素、例えばコンピューターシステムもしくはコンピューターメモリに出力することだけには限定されず、内部の要素、例えばコンピューターが読み込み可能なメディアに出力することも含み得ることは当業者には明かである。コンピューターが読み込み可能なメディアには、ハードドライブ、フロッピーディスク、CD−ROM、DVD、DATが含まれ得るがこれらには限定されない。コンピューターが読み込み可能なメディアには、データ伝送のための搬送波または他の波形は含まれない。本明細書に開示したおよび特許請求の範囲に含まれる様々な分類方法は、必須ではないが、コンピューターに実装することが可能であること、および、例えば表示工程または出力工程は、例えばヒトに口頭でまたは書面(例えば手書き)で伝えることができることも、当業者には明かである。
上述したように、本発明では、細胞試料または対象のWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の調節状態を評価するのに細胞試料中でのその発現レベルを使用することができる新しい遺伝子のセット、すなわち、遺伝子シグネチャーを同定する。これは、細胞毒物を使用した化学療法には限界があり、現在の腫瘍学における創薬が腫瘍の成長および進行に重要な特定の細胞内シグナル伝達経路を標的とするように設計されていることから有用である。そのような標的薬剤の開発には、経路の活性状態を監視するための特異的なバイオマーカーが必要である。経路成分中の1つまたは少数の表示成分の発現を検出することに依存したより従来型の方法と比較して、複数の遺伝子の発現に基づいた方法では、複数の遺伝子の発現の変化に及ぼす経路調節の下流効果の機能として、経路の変化を測定する。これら下流遺伝子の発現の変化によって、経路の構成要素の上流のいずれかの変化に関連した全ての変化を捕捉できる可能性がある。
Wnt/β−カテニン経路は、結腸直腸癌、黒色腫、乳癌および肝細胞癌を含むいくつかのヒトの癌において、最も頻繁に変化が見られる経路のうちの1つであり、そのため、癌研究者が最も関心をもっている経路である。Wnt/β−カテニン経路が活性化すると、下流で様々な生物学的な効果が生じ、また、この機能面での多様性は遺伝子発現の変化を反映するものである。293H細胞をWnt3aで刺激し、β−カテニンをsiRNAを介してノックダウンし、その後、遺伝子発現をプロファイリングすることで、発明者らは、Wnt3aに応答して発現がアップレギュレートし、その亢進した発現レベルが、β−カテニンsiRNAでの処理により低下する、64種類の遺伝子を同定した。これら64種類のWnt/β−カテニン応答遺伝子を、Wnt3aおよびLiCIで刺激したおよび/またはβ−カテニンsiRNAで阻害した16種類の細胞株のパネルに由来する20個の試料を使ったリアルタイムPCRでさらに評価した。NSC法(nearest shrunken centroid classifier method)を使い、Wnt/β−カテニン経路調節に関する特異的パネルとして16種類の遺伝子を同定した。サポートベクターマシン法を用いたクロス確認過程において、この16遺伝子のシグネチャーは、これら20個の試料でのWnt/β−カテニン経路の状態を100%の精度で予測した。そのため発明者らは、それらの発現を、細胞内のWnt/β−カテニン経路活性の調節状態を監視するのにアッセイすることができる(好ましくはRT−PCRによって)特異的な16種類の遺伝子のセットを含む、新規遺伝子発現シグネチャー、およびこの重要なシグナル伝達経路のモジュレーションを伴う関連用途を同定したことを検証した。
具体的には、発明者らは、CALM1、CCND1、CCND2、CHSY1、CXADR、FAM44B、HSPA12A、LEF1、MTP18、MYC、NAV2、SKP2、PRMT6の13種類の遺伝子が、Wnt/β−カテニン経路が活性化した後にアップレギュレートされるということを発見した。
加えて、発明者らは、別の3種類の遺伝子、つまりCYP4V2、MT1AおよびMTSS1が、Wnt/β−カテニン経路が活性化した後にダウンレギュレートされることを発見した。
実験項で詳細に開示するように、この遺伝子発現シグネチャーは、特定の経路を操作したことに対して応答している細胞株から、マイクロアレイ解析によって引き出された。これまでのいくつかの研究では、別種の細胞株とリアルタイムPCRのプラットフォームを使用して、彼らのシグネチャー遺伝子を検証している。そのため、Wnt/β−カテニン経路の活性化との相関がある固有の遺伝子発現シグネチャーを抽出し、実証したことによって、発明者らは、この経路が影響を受けている細胞および試料を同定・確認するための経路遺伝子の発現シグネチャーに関する、リアルタイムPCRのプラットフォームを使用した、新規かつ改良されたワークフローを提供する。
このように決定されたため、本発明の遺伝子発現シグネチャーは、Wnt/β−カテニン経路活性の調節状態を正確に反映しており、Wntシグナル伝達をモジュレートする化合物のスクリーニングや、悪性腫瘍でのように、Wnt/β−カテニンシグナル伝達が異常となっている細胞の同定などの様々なアッセイにおいて有用なはずである。
上で議論したように、また、実験項で詳細に説明するように、本発明者らは、マイクロアレイ解析により、このシグネチャー遺伝子のセットを、Wnt3aおよびβ−カテニンを標的としているsiRNAで処理した293H細胞から、最初に同定した64種類のWnt/β−カテニン応答遺伝子のリストから同定した。20個の試料を使った訓練実験のセットから、リアルタイムPCRでWnt/β−カテニン応答遺伝子を確認し、サポートベクターマシン法で16種類のWnt/β−カテニンシグネチャー遺伝子を同定した。
その後、リアルタイムPCRを使ったクロス確認によって、これら20個の試料中のこの16遺伝子のシグネチャーの精度と予測値を確認した。この場合、12個の試料をWnt3aまたはLiClで刺激し、残りの細胞にはβ−カテニンsiRNAを導入した。以下および実験項で参照する図に示すように、これら20個の試料において、Wnt/β−カテニン経路活性の調節状態を予測した場合、この16遺伝子のシグネチャーの精度は100%であった。そのため、16遺伝子シグネチャーおよびこのシグネチャーを構成する遺伝子は、Wnt/β−カテニン経路活性の調節状態をモニタリングするためのバイオマーカーとして使用することができる。
好ましい態様では、これらの16遺伝子の発現は、試料から、マイクロアレイおよび/またはRT−PCRによって決定され得る。特に好ましい態様では、これらの16遺伝子の発現を、SYBRグリーンを使ったリアルタイムPCRによって決定し、ΔΔCt法によって遺伝子発現データを解析し、そして、サポートベクターマシン法によって経路活性を決定してもよい。
これらの方法では、これら16遺伝子のうちの1つまたは複数の発現プロファイルを対照試料(正常なWnt/β−カテニン経路活性を有する細胞)と比較することによって、細胞試料の調節状態を決定してもよい。本発明に従って調節状態を評価することができる、アッセイされた細胞試料は、Wnt/β−カテニン経路の活性が望ましくアッセイされる、任意の細胞または細胞試料を含み得る。これらには、例えば、悪性腫瘍の可能性がある細胞、Wnt/β−カテニン経路の活性に影響を及ぼす可能性のある化学療法を受けた患者から得た細胞、Wnt/β−カテニン経路の調節解除状態が望ましく評価される試料中の細胞;Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されているかまたは調節されているかで分類される細胞試料;ある薬剤がWnt/β−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを決定する試料中の細胞試料などが含まれる。加えて、本シグネチャーおよびそれらに含まれるバイオマーカーを使用して、Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する対象の反応を予測すること、対象へ治療を割り当てること、および、Wnt/β−カテニン経路シグナル伝達を調節するように設計された治療の薬力学的効果を評価することができる。
本発明が、細胞試料中の種々の遺伝子によって発現のレベルを比較することに依存しているため、本発明の実施には概して、標的となる細胞試料と対照の相対的な調節状態を決定するための対照試料と処理試料が必要とされる。標的となる細胞試料は例えば、Wnt/β−カテニン経路の調節状態に影響を及ぼす可能性のある様々な方法、例えばsiRNAとの接触、薬剤処理などによって操作された細胞であってよく、対照は、その操作に適した対照となる。対照細胞は例えば、標的細胞試料と同じように扱われる(培養条件、時間、賦形剤、媒体)が、特定の被検操作薬、例えば化学療法薬への曝露のない細胞である。
本発明では、標的ポリヌクレオチド分子は主に、癌を患っている患者に由来する試料または腫瘍細胞株、および対応する正常/対照組織または細胞株のそれぞれから抽出される。試料は、初代細胞株または、動物もしくは患者から採取した細胞のエクスビボ培養であってもよい。試料は、臨床上許容可能ないかなる方法によって回収してもよいが、バイオマーカーに由来するポリヌクレオチド(つまりRNA)が保存されるように回収しなければならない。mRNAまたはそれらに由来する核酸(すなわちcDNAまたは増幅したDNA)は好ましくは、標準または対照のポリヌクレオチド分子とは区別できるように標識され、また、両方が同時にまたはそれぞれ独立して、上述したいくつかもしくは全てのバイオマーカー、またはバイオマーカーのセットもしくはバイオマーカーの一部分を含むマイクロアレイにハイブリダイズする。あるいは、mRNAまたはそれに由来する核酸を、標準または対照のポリヌクレオチド分子と同じ標識で標識して、特定のプローブに対するそれぞれのハイブリダイゼーション強度を比較してもよい。試料は、例えば、腫瘍生検、細針吸引生検、もしくは毛包、または血液、血漿、血清、リンパ液、腹水、胆液、尿などの体液試料など、臨床と関連のあるいかなる組織試料を含んでいてもよい。試料はヒトから採取しても、あるいは、獣医学との関連では、例えば、反芻動物、ウマ、ブタもしくはヒツジ、またはネコやイヌなどのペットを含む、非ヒト動物から採取してもよい。加えて、試料を凍結させ、またはホルマリンで固定し、パラフィンに包埋した(FFPE)組織試料としてもよい。
トータルRNAおよびポリ(A)+ RNAの調製方法は良く知られており、基本的には、Sambrookらの「Molecular Cloning;A Laboratory Manual(第2版)」Vols. 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.(1989))およびAusubelらの「Current Protocols In Molecular Biology, vol. 2」Current PROTOCOLS Publishing, New York (1994))に記載されている。
RNAを、細胞の溶解させる工程と溶解物に含まれるタンパク質を変性させる工程を含む手法によって、真核細胞から単離してもよい。目的の細胞には、野生型細胞(つまり非腫瘍性)、薬剤に曝露した野生型細胞、腫瘍細胞もしくは腫瘍に由来する細胞、改変した細胞、正常な細胞株または腫瘍細胞株の細胞、および薬剤に曝露した改変細胞が含まれる。
DNAを除去するためにさらに別の工程を行ってもよい。細胞の溶解は、非イオン性の界面活性剤を使用し、その後微量遠心分離によって核を、従って細胞内DNAの大部分を除去することで達成することができる。一態様では、グアニジンチオシアネートで細胞を溶解し、その後、CsCl沈殿することでRNAをDNAから分離することで、多種多様な目的の細胞からRNAを抽出する(Chirgwin et al, Biochemistry 18:5294−5299 (1979))。ポリ(A)+RNAは、oligo−dTセルロースを使って選択する(Sambrook et al, MOLECULAR CLONING−A LABORATORY MANUAL(第二版),Vols. 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.(1989)を参照のこと)。あるいは、有機溶媒、例えば、温めたフェノールまたはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールを使った抽出によって、RNAをDNAから分離することができる。必要に応じて、RNase阻害剤を溶解緩衝液に加えてもよい。同様に、特定の細胞型については、このプロトコールにタンパク質の変性消化工程を加えることが望ましい場合がある。
用途の多くには、他の細胞内RNA、例えばトランスファーRNA(tRNA)およびリボソームRNA(rRNA)よりもmRNAを優先的に濃縮することが望ましい。大部分のmRNAはその3’末端にポリ(A)尾部を有する。このことによって、mRNAをアフィニティクロマトグラフィー、例えば、セルロースまたはセファデックスなどの固相担体に結合したオリゴ(dT)またはポリ(U)を使ったアフィニティークロマトグラフィーによって濃縮することが可能である(Ausubel et al, Current Protocols In Molecular Biology, Vol. 2, Current Protocols Publishing, New York (1994) を参照のこと)。結合したら、EDTA(2mM)/SDS(0.1%)を使って、アフィニティーカラムからポリ(A)+mRNAを溶出する。
RNA試料は、それぞれのmRNA分子が異なるヌクレオチド配列を有する、複数種のmRNA分子を含む場合がある。具体的な態様では、RNA試料中に含まれるmRNA分子は、少なくとも100種類のヌクレオチド配列を含む。より好ましくは、RNA試料中に含まれるmRNA分子は、バイオマーカー遺伝子のそれぞれに対応するmRNA分子を含む。別の具体的な態様では、RNA試料は哺乳類のRNA試料である。
具体的な態様では、細胞由来のトータルRNAまたはmRNAが本発明の方法に使用される。RNAの供給源は、植物または動物、ヒト、哺乳動物、霊長類、非ヒト動物、イヌ、ネコ、マウス、ラット、トリ、酵母、真核生物、原核生物などの細胞であってよい。具体的な態様では、本発明の方法は、1×10個以下の細胞由来のトータルmRNAまたはトータルRNAを含む試料を使用する。別の態様では、タンパク質レベルでの発現解析に使用するために、当該分野で知られている方法によって、前述した提供源からタンパク質を単離することができる。
非ヒト核酸をアッセイする場合には、好ましくは、本明細書で開示したバイオマーカー配列のホモログに対するプローブを使用することができる。
本発明の好ましい態様では、Wnt/β−カテニン経路シグネチャーに含まれる全16遺伝子の対照試料に対する発現レベルに基づいて、Wnt/β−カテニン経路の調節状態を決定する。しかしながら、これら16の遺伝子またはバイオマーカーの一部、つまり、これらの遺伝子のうちの少なくとも2つ、これらの遺伝子のうちの少なくとも3つ、これらの遺伝子のうちの少なくとも4つ、これらの遺伝子のうちの少なくとも6つ、これらの遺伝子のうちの少なくとも7つ、以降同様に、またはこれらの16遺伝子の全ての任意の組み合わせの発現をアッセイすることによって、Wnt/β−カテニン経路の調節状態を決定してもよいということもまた、想定される。さらに、別の遺伝子がWnt/β−カテニン経路の調節状態に影響を及ぼすまたは相関のある場合に、その発現をさらにアッセイすることは、本発明の範囲に含まれる。
そのため、本発明の一側面は、それらの発現がWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節解除と相関している、16種類1セットのバイオマーカーを提供する。これらのバイオマーカーが、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節状態に応じて対象を分類する、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする化合物に対する対象の反応を予測する、治療薬がWnt/b−カテニンシグナル伝達経路に及ぼす薬力学的な効果を測定するのに有用であることを同定した。
本発明の別の側面は、診断の場で腫瘍型を区別するために、または治療薬への反応を予測するために、これらのバイオマーカーまたはこれらを含むマイクロアレイの使用方法を提供する。
さらに本発明の他の側面は、薬力学的バイオマーカーとして、すなわち、薬力学的なバイオマーカー、つまり治療後の患者の腫瘍または抹消組織での経路の阻害をモニタリングする;反応予測バイオマーカー、つまり特定の経路の活性が高レベルである腫瘍を患っている患者を、その経路を標的とした阻害剤で患者を治療する前に予め同定する;および初期効果のバイオマーカー、つまり効力を初期に読み取るバイオマーカーとして、これらバイオマーカーまたはこれらを含むマイクロアレイを使用する方法を提供する。本発明の一態様では、16種類1セットのバイオマーカーを、2つの相反する「アーム」、Wnt/b−カテニン経路を介したシグナル伝達の上昇に伴って、アップレギュレートされる13種類の遺伝子である「上方」アーム、およびシグナル伝達の上昇に伴ってダウンレギュレートされる3種類の遺伝子である「下方」アームに分けてもよい。
本発明の一層さらに別の側面は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路調節状態によって対象を区別する、つまり、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている患者と調節が解除されている患者を区別することができる、16種類1セットのバイオマーカーまたはこれを含むマイクロアレイを提供する。これらのバイオマーカーを本明細書で列挙する。本発明はさらに、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節が解除されている対象と調節されている対象を区別することができる、16種類1セットの遺伝子の一部、あるいは、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節が解除されている対象と調節されている対象を区別することができるバイオマーカーの一部を提供する。また本発明は、上述のバイオマーカーを使用して、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節が解除されている対象と調節されている対象を区別する方法も提供する。
別の態様では、本発明は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路剤に対する対象の反応を予測するために使用することができる、16種類1セットの16バイオマーカーまたはそれらを含むマイクロアレイを提供する。より具体的な態様では、本発明は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する対象の反応を予測するために使用することができる、開示した、16種類1セットのバイオマーカーの一部を提供する。別の態様では、本発明は、癌を患っている対象を治療するためのWnt/b−カテニン経路剤の選択に使用することができる、16種類1セットのバイオマーカーを提供する。より具体的な態様では、本発明は、癌を患っている対象を治療するためのWnt/b−カテニン経路剤の選択に使用することができる、16種類1セットのバイオマーカーの一部を提供する。あるいは、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路剤に対する対象の反応を予測するために、または癌を患っている対象を治療するためのWnt/b−カテニン経路剤を選択するために、これらバイオマーカーの一部を使用することができる。
別の態様では、本発明は、ある薬剤が、対象のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路に薬力学的な効果を及ぼすか否かを決定するのに使用することができる、16種類1セットの遺伝的バイオマーカーまたはそれらを含むマイクロアレイを提供する。提供するバイオマーカーを使用して、前記薬剤で治療した後の患者の、様々な時点でのWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の阻害をモニタリングしてもよい。より具体的な態様では、本発明は、ある薬剤がWnt/b−カテニンシグナル伝達経路に及ぼす薬力学的な活性をモニタリングするのに使用することができる、開示した16種類1セットのバイオマーカーの一部を提供する。
対象のバイオマーカーは単独で使用しても、あるいはセットには含まれないバイオマーカーと組み合わせて使用してもよい。例えば、Wnt/b−カテニン経路の調節状態を区別するバイオマーカーを、成長因子のシグナル伝達経路の調節状態を区別するバイオマーカーと組み合わせて使用してもよい。本明細書で提供するバイオマーカーのセットはいずれも、癌に関する、または任意の他の臨床条件もしくは生理学的な条件に関する他のバイオマーカーと組み合わせて使用してもよい。
好ましい態様において記載したように、16種類全ての遺伝子の発現値をリアルタイムPCRでアッセイし、Wnt経路の調節状態を決定する。精度を保証するために、これらの16種類の遺伝子と合わせて、対照の遺伝子(つまり、1つもしくは複数のハウスキーピング遺伝子、例えば、5つのハウスキーピング遺伝子)の発現値を、細胞試料と処理試料の双方について測定し、ΔΔCtを計算する。これら16種類の遺伝子のこのΔΔCt値をその後、20個の試料(経路活性の観点からみると、8個は負に調節されており、12個は正に調節されている)を含む、訓練実験のデータのプールに含まれている16種類の遺伝子のΔΔCt値と比較する。例示となる態様では、サポートベクターマシン法を使って、特定の標的となる細胞試料の調節状態を決定する。
本発明はさらに、対象の遺伝子発現アッセイ法を実施するキットおよびキットの構成要素を提供する。好ましい例示的な態様では、このキットは、これら16種類の遺伝子のうちの1つもしくは複数、好ましくはこれら16種類の遺伝子全てもしくはその大部分に相当する配列を含む、Wntシグナル伝達PCRアレイ製品を含むものである。これらに関しては、出願企業のキアゲン(Qiagen)は、本明細書で報告した16遺伝子のシグネチャーに含まれている4種類の遺伝子を含むWnt PCRアレイを既に有している。好ましい態様では、この既存のWnt PCRアレイを、残りの12種類のシグネチャー遺伝子を組み入れることで修正する。そのため、この製品は、物理的な構成要素に関して見れば、既存のWnt PCRアレイと同じようなものになるが、ただし、12種類の新しい遺伝子を含む。本発明はさらに、好ましくは、遺伝子の発現データを解析するための、ウェブを利用したシステムを含む場合がある。
好ましいPCRアレイを使った実験を行った後、使用者は標的試料と対照試料の調節状態を決定する。好ましい態様では、使用者は、市販のキアゲンのウェブを利用した解析ツールもしくは均等物を使用して、比較および解析を行う。このウェブを利用した解析ツールおよびデータ解析は、現在、キアゲンの既存のWnt PCRアレイを使って実施されている。本発明の関連では、このツールはさらに、適切な対照試料と比較した、特定の処理試料の相対的な調節状態の評価に使用される数値(指数、確率または類似の指標)を使用者に提供する。その結果、このキットの構成要素およびプロトコールは、解析が増える(16種類の遺伝子の発現レベルに基づく、経路の調節状態)以外は、現在市販されているWntPCRアレイと同じようなものになる。
本発明の利用方法
診断的/試料の分類方法
本発明は、患者または対象由来の試料を解析し、対象の試料を分子レベルで、つまり、試料のWnt/b−カテニン経路が調節解除されているかまたは調節されているかを決定または分類するための、バイオマーカーのセットの使用方法を提供する。試料は、腫瘍に由来するものであっても腫瘍に由来するものでなくてもよい。患者は、実際に癌に罹患している必要はない。本質的には、患者もしくは患者から採取した試料中の特定のバイオマーカー遺伝子の発現を、標準または対照と比較する。例えば、2つの癌に関連する条件、XとYを仮定する。条件Xに関する患者のWnt/b−カテニン経路バイオマーカーの発現レベルを、対照におけるバイオマーカー由来ポリヌクレオチドのレベル、つまり、条件Xを有する試料によって提示される発現レベルと比較する。この場合、患者の試料におけるマーカーの発現が、対照の発現との間に実質的に(すなわち統計的に)差があれば、患者は条件Xを有していない。今回の例では、選択肢は二項(つまり試料はXまたはY)なので、加えて、試料が条件Yを有していると言える。無論、条件Yを表している対照との比較を行ってもよい。好ましくは、それぞれの対照が陽性対照と陰性対照の両方として機能するように、2つを同時に実施する。従って特徴的な結果は、対照によって表される、発現レベル由来の表示可能な差(つまりマーカー由来のRNAもしくはそれに由来するポリヌクレオチドの量)あるいは、有意差なしとなり得る。従って、一態様では、腫瘍に関連する患者の特定の状態を決定する方法は、以下の工程を含むものとなる。(1)患者由来の標的ポリヌクレオチドを標識し、上述したバイオマーカーのセットまたはバイオマーカーの一部を含むマイクロアレイにハイブリダイズさせる工程、(2)標的分子とは異なる標識で標識した標準または対照のポリヌクレオチド分子をマイクロアレイにハイブリダイズさせる工程、および(3)標的と標準もしくは対照の間の、患者の癌に関連する状態を決定する転写レベルの差、または転写の欠損を決定する工程。より具体的な態様では、標準または対照の分子は、健常人から採取した試料のプールまたは癌患者から採取した試料のプールからの、バイオマーカー由来ポリヌクレオチドを含む。好ましい態様では、標準または対照は、正常組織または、特定の臨床指標(つまり腫瘍性または非腫瘍性;Wnt/b−カテニン経路が調節されているまたは調節解除されている)を有する癌組織から採取した臨床試料によって示されるバイオマーカーの発現レベルを模倣するように設計された、人工的に合成したバイオマーカー由来ポリヌクレオチドのプールである。別の具体的な態様では、対照分子は、正常な細胞株または腫瘍細胞株に由来するプールを含む。
本発明は、Wnt/b−カテニン経路の調節が解除されている腫瘍型を、Wnt/b−カテニン経路が調節されているものから区別するのに有用なバイオマーカーのセットまたはそれらを含むマイクロアレイを提供する。従って、上述した方法の一態様では、患者から採取した試料の、本明細書で提供した16種類のバイオマーカーによって表されるポリヌクレオチド(つまり、mRNAまたはそれらに由来するポリヌクレオチド)のレベルを、対照の同じバイオマーカーの発現レベルと比較する。ある化合物がWntシグナル伝達に影響を及ぼすか否かを同定することが目的の場合、対照には、同じ方法によって処理されたが、化合物による処理を行っていない試料が含まれ得る。
あるいは、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節が解除されている腫瘍試料およびWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている腫瘍試料の両方に対する比較であってよく、また、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節が解除されているいくつかの腫瘍試料およびWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されているいくつかの腫瘍試料それぞれからのポリヌクレオチドプールに対する比較であってもよい。患者のバイオマーカーの発現が、調節解除されている対照に最も似ているか、または相関しており、かつ、調節されている対照とは似ていないまたは相関がない場合、この患者が、調節が解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を有していると分類する。プールが、純粋な調節が解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の腫瘍試料、または純粋な調節されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の腫瘍試料ではない場合、例えば、散発性のプールを使用する場合、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態が分かっている患者を使った実験の組をプールに対してハイブリダイズさせ、調節解除された群と調節されている群に関する発現テンプレートを定義することができる。Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態が分かっていないそれぞれの患者を同じプールにハイブリダイズさせ、発現プロファイルをテンプレートと比較して、患者のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態を決定する。好ましい方法で記載したように、バイオマーカーの発現は、RT−PCRを使って実施される。
別の具体的な態様では、この方法は、以下の工程を含む。(i)第一の発現プロファイルとWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートとの間の類似性の値を計算する工程、すなわち、前記第一の発現プロファイルと前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路テンプレートとの間の第一の類似性の値、および前記第一の発現プロファイルと調節されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートとの間の第二の類似性の値を計算する工程であって、前記第一の発現プロファイルは細胞試料中の第一の複数の遺伝子の発現レベルを含み、前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路テンプレートは前記第一の複数の遺伝子の発現レベル(前記Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路に含まれ、活性が異常になっている構成要素のうちの少なくとも1つまたは複数を有する複数の細胞試料中の対応する遺伝子の発現レベルの平均である)を含み、前記調節されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路テンプレートは前記第一の複数の遺伝子の発現レベル(前記Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路に含まれ、活性が異常になっている構成要素のうちの少なくとも1つまたは複数を有していない、複数の細胞試料中の対応する遺伝子の発現レベルの平均である)を含み、および前記第一の複数の遺伝子は、本明細書で挙げたバイオマーカーに対応する遺伝子のうちの少なくとも5種類から構成されている、工程;
(ii)前記第一の発現プロファイルが、前記調節されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対してよりも、前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対して高い類似性を示す、あるいは前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対してより高い類似性を示す場合に、前記細胞試料を、前記調節解除されたWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を有していると分類する工程、すなわち、前記第一の発現プロファイルが、前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対してよりも、前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対して低い類似性を示す場合、または前記調節されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対してより高い類似性を示す場合に、前記細胞試料を、前記調節されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を有すると分類する工程であって、前記第一の発現プロファイルが、前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対する類似性が予め設定しておいた閾値より高い場合に、前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対して高い類似性を示すか、あるいは、前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対する類似性が前記予め設定しておいた閾値よりも低い場合に、前記調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のテンプレートに対して低い類似性を示す、工程、および
(iii)使用者の情報伝達装置、コンピューターで読み取り可能な保存メディア、またはローカルコンピューターシステムもしくは遠隔計算機システムに、前記分類する工程(ii)で生成した分類を表示または出力する工程。
別の具体的な態様では、対象から採取した試料を、バイオマーカーのセットを使ってWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節状態によって分類してもよい。試料は、腫瘍に由来するものであっても腫瘍に由来するものでなくてもよい。従って、上述した方法の一態様では、患者から採取した試料の、本明細書で提供したバイオマーカーによって表されるポリヌクレオチド(つまり、mRNAまたはそれらに由来するポリヌクレオチド)のレベルを、対照の同じバイオマーカーの発現レベルと比較し、ここで対照には、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されている試料からの、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている試料からの、またはその両方からの、バイオマーカー由来ポリヌクレオチドが含まれる。比較は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されている試料と調節されている試料の両方に対するものであってよく、また、比較をWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節が解除されているいくつかの腫瘍試料およびWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されているいくつかの腫瘍試料それぞれからのポリヌクレオチドプールに対するものであってもよい。比較は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されている試料と調節されている試料の混合プール、または未知の試料に対して行うこともできる。
上述した態様では、バイオマーカーの全て(つまり、全16種類のバイオマーカー)を使用することができる。他の態様では、16種類のバイオマーカーの一部を使用してもよく、またはバイオマーカーの「上方」および「下方」アームの一部を使ってもよい。
別の態様では、発現プロファイルとは、対象由来の試料の前記複数の遺伝子の測定値の、対照試料の前記複数の遺伝子の測定値に対する差を含む、発現プロファイルの差である。測定値の差は、xdev、対数(比)、誤差重み付き対数(比)、または平均値減算対数(強度)であってよい(例えば、2000年7月6日に公開された、国際公開第00/39339号パンフレット、2004年8月5日に公開された、国際公開第2004/065545号パンフレットを参照のこと。これらそれぞれの全文は参照することにより本明細書に組み入れられる)。当該分野で知られているいずれかの方法を使用する複数の方法によって、試料または患者のバイオマーカーの発現プロファイルと対照の発現プロファイルとの類似性を評価することができる。例えば、Daiらは、乳癌の患者を分類するのに有用な、遺伝子発現のテンプレートと対応するバイオマーカージェネットを算出する、いくつかの異なる方法を説明している(米国特許第7,171,311号;国際公開第2002/103320号パンフレット;同第2005/086891号;同第2006015312号;同第2006/084272号)。同様に、Linsleyら(米国特許第2003/0104426号)およびRadishら(米国特許第20070154931号)は、慢性骨髄性白血病患者の分類に有用な、遺伝子バイオマーカーのセットおよび遺伝子発現テンプレートの算出方法を開示している。最も単純な例では、発現の差のデータをプリントアウトしたものを使い、プロファイルは目視で比較することができる。あるいは、類似性を数学的に算出することもできる。
一態様において類似性は、患者すなわち試料のプロファイルとテンプレートの間の相関係数によって表される。一態様では、相関閾値を超える相関係数は高い類似性を示し、閾値を下回る相関係数は低い類似性を示す。いくつかの態様では、相関閾値を、0.3、0.4、0.5、または0.6に設定する。別の態様では、患者すなわち試料のプロファイルとテンプレートとの間の類似性は、試料のプロファイルとテンプレートとの距離で表される。一態様では、所与の値よりも短い距離は高い類似性を、所与の値よりも長い距離は低い類似性を示す。
従って、より具体的な態様では、特定の腫瘍に関連した患者の状態を決定する上記方法は、(1)患者由来の標識した標的ポリヌクレオチドを、上記マーカーセットのうちの1つを含むマイクロアレイにハイブリダイズさせる工程、(2)標的分子とは別の標識を付けた標準または対照のポリヌクレオチド分子をマイクロアレイにハイブリダイズさせる工程、(3)2チャンネル(患者と対照)の転写レベルの比(または差)を決定する、または患者の転写レベルを単純化する工程、および(4)(3)で得られた結果を予め設定しておいたテンプレートと比較する工程を含み、ここで前記決定は、当該分野において既知の方法のいずれによっても達成され、生じた差、または差がないことによって、患者の腫瘍に関連した状態が決定される。この方法では、16種類のバイオマーカーの全てを使用してもよい。しかしながら、16種類のバイオマーカーの一部、または「上方」(アップレギュレートされる13種類の遺伝子)または「下方」(ダウンレギュレートされる3種類の遺伝子)も使用することができる。
一層さらに別の態様では、試料のシグネチャースコアは、16種類全てのバイオマーカーまたはこれらバイオマーカーの一部(「アーム」にかかわらず)の発現レベルの平均として定義される(例えば平均対数(比))。試料のシグネチャースコアが予め設定しておいた閾値よりも大きい場合、試料のWnt/β−カテニンシグナル伝達経路は調節解除されていると見なされる。予め設定しておいた閾値は0であってよく、または試料の集合すなわち、標準または対照として使用した蓄えておいた試料のシグネチャースコアの平均、中央値、もしくはパーセンタイルであってもよい。
バイオマーカーの使用方法は、特定の腫瘍型、例えば結腸癌を、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されているか調節されているかで区別するまたは分類することには限定されない。バイオマーカーを、異常なWnt/b−カテニンシグナル伝達を伴っている可能性のある、任意の癌種に由来する細胞試料を分類するのに使用してもよい。黒色腫、肝細胞癌、骨肉腫などの様々な癌、および多くの腫瘍(子宮、卵巣、肺、胃、および腎臓)で、Wnt/b−カテニン経路のシグナル伝達の異常が見出されている(Luu et al., 2004, Curr. Cancer Drug Targets 4:653−671; Reya and Clevers, 2005, Nature 434:843−850; Moon et al., 2004, Nat. Rev. Genet. 5:691−701)。
バイオマーカーの使用方法は、癌に関連した状態について、細胞試料をWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されているまたは調節されているかを区別するまたは分類することに限らず、異常なWnt/b−カテニンシグナル伝達が機能している、またはWnt/b−カテニンシグナル伝達活性のレベルが要求される、様々な表現型または条件にも応用することができる。例えば、バイオマーカーは、骨および間接障害、例えば、これらには限定されないが、骨粗鬆症、関節リウマチ、硬結性骨化症、ヴァンブッヘム症候群、骨粗鬆症、偽性グリオーマ症候群の細胞試料を分類するのに有用な可能性がある。これまでに、骨や間接の形成および再生にWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が関係していることが分かっている(Boyden et al, 2002, N. Engl. J. Med. 346:1513−1521; Gong et al., 2001, Cell 107:513−523; Little et al., 2002, Am. J. Hum. Genet. 70:11−19; Diana et al., 2007, Nat. Med. 13:156−163; Baron and Rawadi,2007, Endocrin. 148:2635−2643; Kim et al, 2007, J. Bone Mineral Res− 22:1913−1923)。Wnt/b−カテニンシグナル伝達が、糖尿病の発症(Jin, 2008, Diabetologia.印刷に先行してインターネット上で出版、 2008年8月12日);網膜の発達と疾患(Lad et al., 2008, Stem Cells Dev.印刷に先行してインターネット上で出版、2008年8月8日);神経変性疾患(Caraci et al, 2008, Neurochem. Res.,印刷に先行してインターネット上で出版、2008年4月22日)にも関与してきた。
治療に対する反応を予測する方法と治療を割り当てる方法
本発明は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使った治療に応答することが予測される患者から採取した試料と、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使った治療に応答すると予測されない患者から採取した試料を区別するのに有用な、バイオマーカーのセットを提供する。従って、本発明はさらに、癌を患っている患者が、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使った治療への応答者として予測されるか否かを決定するための、これらバイオマーカーの使用方法を提供する。一態様において本発明は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する癌患者の反応を予測するための方法を提供し、この方法は、(1)患者から採取した試料における16種類のバイオマーカーの発現レベルを、標準または対照における同じバイオマーカーの発現レベル、これはWnt/b−カテニンシグナル伝達の調節が解除されている試料で見られるレベルを表す、と比較する工程、および(2)患者由来の試料におけるバイオマーカー関連ポリヌクレオチドのレベルが、対照のレベルと有意に異なるか否かを決定する工程を含み、ここで実質的な差が見られなければ、この患者はWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使った治療に応答すると予測され、実質的な差が見られる場合には、この患者はWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使った治療には応答しないと予測される。標準または対照のレベルが、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている試料からのものであってもよいことは、当業者には明らかである。より具体的な態様では、両方の対照を実験に用いる。プールが純粋な「Wnt/b−カテニンが調節されている」または純粋な「Wnt/b−カテニンが調節解除されている」ものでない場合、応答の状態が分かっている患者の実験組をプールに対してハイブリダイズさせ、応答すると予測される患者の群と応答すると予測されない患者の群に関する発現テンプレートを定義してもよい。アウトカムが分かっていないそれぞれの患者を同じプールにハイブリダイズさせ、得られる発現プロファイルをテンプレートと比較して、そのアウトカムを予測する。
腫瘍のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節解除状態は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使った薬剤に対する応答者である対象を示し得る。そのため、本発明は、癌患者の治療計画を決定するまたは割り当てる方法を提供し、この方法は、16種類のバイオマーカーまたはその一部の発現レベルが、調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態または調節されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態を示している試料中のこれらバイオマーカーのレベルと相関があるか否かを決定する工程、および治療計画を決定するまたは割り当てる工程を含み、発現が調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態のパターンと相関していれば、この腫瘍は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使って治療される。
診断的バイオマーカーとしては、この方法は好ましくは、16種類のバイオマーカーの全てを使用することができる。しかしながら、16種類のバイオマーカーの一部を使用してもよい。
試料は、上述した診断的バイオマーカーの場合と実質的に同じように、「応答すると予測される患者」または「応答すると予測されない患者」のいずれかに分類される。この場合、テンプレートを生成し、これに対して、試料中のバイオマーカーの発現レベルを比較する。
別の態様では、Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路に及ぼす薬剤の効果を測定するための上述の方法は、好ましくは、SYBRグリーンを用いたリアルタイムPCRによって16種類のバイオマーカー遺伝子の発現レベルを測定した後に決定され、かつ、データ解析には、ΔΔCt法が用いられる。各試料中のハウスキーピング遺伝子のCt値の平均を、その試料に関するハウスキーピング遺伝子のCt値として計算する。同じ試料の個々のアッセイのCt値からハウスキーピングCt値を引くことで、ΔCtを計算する。さらに、各アッセイの対照試料のΔCt値を、対応する処理試料のΔCt値から引くことで、ΔΔCt値を導き出す。その後、この16遺伝子のΔΔCt値を、20個の試料(経路活性の観点からみると、8個は負に調節されており、12個は正に調節されている)を含む訓練実験のプールに含まれている16遺伝子のΔΔCt値と比較する。試料のΔΔCt値の解析には、好ましくはサポートベクターマシン法を使用し、その発現を用いて、試料のWnt/β−カテニン経路活性の調節状態を評価する。
バイオマーカーの使用方法は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する反応を、癌に関連する条件について予測するだけでなく、遺伝子の発現が機能している様々な表現型または条件、臨床または実験に応用することができる。2つ異常の表現型に対応するバイオマーカーのセットが同定された場合、このバイオマーカーのセットを使用して、これらの表現型を区別することができる。例えば、表現型は、病態の診断および/または予後であっても、または癌や他の病状、または他の生理学的条件に関連する表現型であっても、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路以外の経路をモジュレートする薬剤に対する反応の予測であってもよく、ここで発現レベルのデータは、その特定の生理学的条件または病状と相関のある遺伝子のセットから導かれる。
バイオマーカーの使用方法は、特定の癌種、例えば結腸癌に関して、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する反応を予測することには限定されない。バイオマーカーを使用して、異常なWnt/b−カテニンシグナル伝達が関与しているいかなる癌腫においても、薬剤に対する反応を予測することができる。黒色腫、肝細胞癌、骨肉腫などの様々な癌、および多くの腫瘍(子宮、卵巣、肺、胃、および腎臓)で、Wnt/b−カテニン経路のシグナル伝達の異常が見出されている(Luu et al., 2004, Curr. Cancer Drug Targets 4:653−671; Reya and Clevers, 2005, Nature 434:843−850; Moon et al., 2004, Nat. Rev. Genet. 5:691−701)。
バイオマーカーの使用方法は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する反応を、癌に関連する条件について予測することに限らず、異常なWnt/b−カテニンシグナル伝達が機能している、または一定のレベルのWnt/b−カテニンシグナル伝達活性が要求される、様々な表現型または条件にも応用することができる。例えば、バイオマーカーは、骨および間接障害、例えば、これらには限定されないが、骨粗鬆症、関節リウマチ、硬結性骨化症、ヴァンブッヘム症候群、骨粗鬆症、偽性グリオーマ症候群に罹患している対象のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤への反応を予測するのに有用な可能性がある。Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路はこれまでも、骨や間接の形成および再生に関与してきた(Boyden et al, 2002, N. Engl. J. Med. 346:1513−1521; Gong et al., 2001, Cell 107:513−523; Little et al., 2002, Am. J. Hum. Genet. 70:11−19; Diarra et al., 2007, Nat. Med. 13: 156−163; Baron and Rawadi, 2007, Endocrin. 148:2635−2643; Kim et al., 2007, J. Bone Mineral Res. 22: 1913−1923)。Wnt/b−カテニンシグナル伝達は、糖尿病の発症(Jin, 2008, Diabetologia.印刷に先行してインターネット上で出版、 2008年8月12日);網膜の発達と疾患(Lad et al., 2008, Stem Cells Dev.印刷に先行してインターネット上で出版、2008年8月8日);神経変性疾患(Caraci et al, 2008, Neurochem. Res.,印刷に先行してインターネット上で出版、2008年4月22日)にも関与してきた。
薬剤がWnt/b−カテニン方法シグナル伝達経路をモジュレートするか否かを決定する方法
本発明は、対象のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を変更するまたはモジュレートすると予測される薬剤を同定または評価するのに有用なバイオマーカーのセット、およびこのバイオマーカーを使用して、対象のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を変更するまたはモジュレートすると予測される薬剤を同定または評価する方法を提供する。「Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路」は、Wntリガンド(Wnt1、Wnt2、Wnt2B/13、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt8A、Wnt8B、Wnt9A、Wnt9B、Wnt10A、Wnt10B、Wnt11、およびWnt16を含むがこれらには限定されない)が、共受容体のFrizzled/LRP5/6複合体に結合することによって開始する。Frizzledは、b−カテニンとGSK3bの上流で機能する細胞質タンパク質であるDishevelledと相互作用し、破壊複合体の不活性化を引き起こす。破壊複合体が不活性化されると、安定化したb−カテニンが、TCF/LEFファミリー転写因子を調節する場である核に輸送され、b−カテニンは、増殖に関与する遺伝子(c−MycおよびサイクリンDl)や経路のフィードバック調節に関与する遺伝子(Axin−2およびLEF1)を含む、多くの遺伝子を発現させる。この利用法では、特段の記載のない限り、「Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路」は、当然のことながら、原腫瘍性タンパク質であるb−カテニンの細胞内レベルを制御する、標準的なWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を介したシグナル伝達を指す。
Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路に影響を与える薬剤としては、低分子化合物;タンパク質またはペプチド(抗体を含む);siRNA、shRNA、またはマイクロRNA分子;または、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の中で機能する、またはWnt/b−カテニンシグナル伝達経路と相互作用する他のシグナル伝達経路、例えばNotch経路の中で機能する、1つまたは複数の遺伝子またはタンパク質をモジュレートする、他の薬剤のいずれもが挙げられる。
「Wnt/b−カテニン経路剤」とは、標準的なWnt/b−カテニン経路のシグナル伝達をモジュレートする薬剤を指す。Wnt/b−カテニン経路阻害剤は、標準的なWnt/b−カテニン経路のシグナル伝達を阻害する。そのような薬剤の分子標的としては、β−カテニン、TCF4、APC、axin、およびGSK3bが挙げられ得る。そのような薬剤は、当該分野において既知であり、これらの薬剤には、:チアゾリジンジオン(Wang et al., 2008, J. Surg. Res.,2008年6月27日、印刷に先行してインターネット上で出版);PF115−584(Doghraan et al, 2008, J. Clin. Endocrinol. Metab. 10.1210/jc.2008−0247);ビス[2−(アシルアミノ)フェニル]ジスルフィド(Yamakawa et al., 2008, Biol Pharm. Bull. 31:916−920);FH535(Handeli and Simon, 2008, Mol. Cancer Ther. 7:521−529);サルディナク(suldinac)(Han et al, 2008, Fur. J. Pharmacol. 583:26−31);シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤のセレコキシブ(Tuynman et al., 2008, Cancer Res. 68:1213−1220);逆向きターン模倣化合物(米国特許第7,232,822号);b−カテニン阻害化合物1(国際公開第2005021025号パンフレット);フシコクシン類似体(国際公開第2007062243号パンフレット));およびFZD10モジュレーター(公開第2008061020号)が含まれるが、これらには限定されない。
一態様では、効果を測定する、すなわちその薬剤がWnt/β−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを決定する方法は、(1)薬剤で処理した試料での16種類のバイオマーカーの発現レベルを、標準または対照での同じバイオマーカーの発現レベル、これは媒体で処理した試料で見られるレベルを表す、と比較する工程、および(2)処理試料でのバイオマーカー関連ポリヌクレオチドのレベルが、媒体で処理した対照のレベルと有意に異なるか否かを決定する工程を含み、ここで実質的な差が見られなければ、この薬剤はWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートしないと予測され、実質的な差が見られる場合には、この薬剤はWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートすると予測される。
別の態様では、薬剤がWnt/β−カテニンシグナル伝達経路に及ぼす効果を測定するための上述の方法は、好ましくは、リアルタイムPCR(例えばSYBRグリーンを用いて)によって16種類のバイオマーカー遺伝子の発現レベルを測定した後に決定され、かつ、データ解析には、ΔΔCt法が用いられる。各試料のハウスキーピング遺伝子のCt値の平均を、その試料に関するハウスキーピング遺伝子のCt値として計算する。同じ試料のハウスキーピングCt値を、個々のアッセイのCt値から引くことで、ΔCtを計算する。さらに、各アッセイの対照試料のΔCt値を、対応する処理試料のΔCt値から引くことで、ΔΔCt値を導き出す。その後、この16遺伝子のΔΔCt値を、20個の試料(経路活性の観点からみると、8個は負に調節されており、12個は正に調節されている)を含む訓練実験のプールに含まれている16遺伝子のΔΔCt値と比較する。試料のΔΔCt値の解析には、好ましくはサポートベクターマシン法を使用し、その発現を用いて、試料のWnt/β−カテニン経路活性の調節状態を評価する。
バイオマーカーの使用方法は、ある薬剤がWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを、癌に関連する条件について決定することに限らず、遺伝子の発現が機能している、様々な表現型または条件、臨床または実験に応用することができる。2つ以上の表現型に対応するバイオマーカーのセットが同定された場合、このバイオマーカーのセットを使用して、これらの表現型を区別することができる。例えば、表現型は、病態の診断および/または予後であっても、または癌や他の病状、または他の生理学的条件に関連する表現型であっても、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路以外の経路をモジュレートする薬剤に対する反応の予測であってもよく、ここで発現レベルのデータは、特定の生理学的条件または病状と相関のある遺伝子のセットから導かれる。
バイオマーカーの使用方法は、ある薬剤がWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを、特定の癌種、例えば結腸癌に関して決定することには限定されない。バイオマーカーを使用して、異常なWnt/b−カテニンシグナル伝達が関与している、いかなる癌腫についても、ある薬剤がWnt/b−カテニンをモジュレートするか否かを決定することができる。異常なWnt/b−カテニン経路シグナル伝達は、黒色腫、肝細胞癌、骨肉腫などの様々な癌、および多くの腫瘍(子宮、卵巣、肺、胃、および腎臓)で見つかっている(Luu et al., 2004, Curr. Cancer Drug Targets 4:653−671; Reya and Clevers, 2005, Nature 434:843−850; Moon et al., 2004, Nat. Rev. Genet. 5:691−701)。
バイオマーカーの使用方法は、ある薬剤がWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを、癌に関連する条件について決定することには限定されず、異常なWnt/b−カテニンシグナル伝達が機能している、または一定のレベルのWnt/b−カテニンシグナル伝達活性が要求される、様々な表現型または条件に関する薬剤にも応用することができる。例えば、バイオマーカーは、骨および間接障害、例えば、これらには限定されないが、骨粗鬆症、関節リウマチ、硬結性骨化症、ヴァンブッヘム症候群、骨粗鬆症、偽性グリオーマ症候群の治療に関して、薬剤がWnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを決定するのに有用である。Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路はこれまでも、骨や間接の形成および再生に関与してきた(Boyden et al, 2002, N. Engl. J. Med. 346:1513−1521; Gong et al., 2001, Cell 107:513−523; Little et al., 2002, Am. J. Hum. Genet. 70:11−19; Diaixa et al, 2007, Nat. Med. 13:156−163; Baron and Rawadi, 2007, Endocrin. 148:2635−2643; Kim et al, 2007, J. Bone Mineral Res. 22:1913−1923)。Wnt/b−カテニンシグナル伝達は、糖尿病の発症(Jin, 2008, Diabetologia.印刷に先行してインターネット上で出版、 2008年8月12日);網膜の発達と疾患(Lad et al., 2008, Stem Cells Dev.印刷に先行してインターネット上で出版、2008年8月8日);神経変性疾患(Caraci et al, 2008, Neurochem. Res.,印刷に先行してインターネット上で出版、2008年4月22日)にも関与している。
薬剤の薬力学的効果を測定する方法
本発明は、薬剤がWnt/b−カテニンシグナル伝達経路に及ぼす薬力学的効果を測定するのに有用なバイオマーカーのセットを提供する。提供するバイオマーカーを使用して、前記薬剤で治療した後の患者または試料の、様々な時点でのWnt/b−カテニンシグナル伝達経路のモジュレーションをモニタリングしてもよい。従って、本発明はさらに、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤の効果の早期評価としての、これらバイオマーカーの使用方法を提供する。一態様において本発明は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤の、患者または試料における薬力学的効果を測定する方法を提供し、この方法は、(1)薬剤で処理した試料での16種類のバイオマーカーの発現レベルを、標準または対照での同じバイオマーカーの発現レベル、これは媒体で処理した試料で見られるレベルを表す、と比較する工程、および(2)処理試料でのバイオマーカー関連ポリヌクレオチドのレベルが、媒体で処理した対照のレベルと有意に異なるか否かを決定する工程を含み、ここで実質的な差が見られなければ、この薬剤はWnt/b−カテニンシグナル伝達経路に対する薬力学的効果をもたないと予測され、実質的な差が見られる場合には、この薬剤はWnt/b−カテニンシグナル伝達経路に対する薬力学的効果をもつと予測される。別の具体的な態様において本発明は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路に及ぼす薬剤の薬力学活性をモニタリングするのに使用することができる、16種類のセットから抽出した少なくとも5種類または10種類のバイオマーカーを含む、セットの一部を提供する。
別の態様では、薬剤がWnt/β−カテニンシグナル伝達経路に及ぼす効果を測定するための上述の方法は、好ましくは、リアルタイムPCR(例えばSYBRグリーン検出を用いて)によって16種類のバイオマーカー遺伝子の発現レベルを測定した後に決定され、かつ、データ解析には、ΔΔCt法が用いられる。各試料のハウスキーピング遺伝子のCt値の平均を、その試料に関するハウスキーピング遺伝子のCt値として計算する。同じ試料のハウスキーピングCt値を、個々のアッセイのCt値から引くことで、ΔCtを計算する。さらに、各アッセイの対照試料のΔCt値を、対応する処理試料のΔCt値から引くことで、ΔΔCt値を導き出す。その後、この16遺伝子のΔΔCt値を、20個の試料(経路活性の観点からみると、8個は負に調節されており、12個は正に調節されている)を含む訓練実験のプールに含まれている16遺伝子のΔΔCt値と比較する。試料のΔΔCt値の解析には、好ましくはサポートベクターマシン法を使用し、その発現を用いて、試料のWnt/β−カテニン経路活性の調節状態を評価する。
発現レベルの差に対する感度の向上
本明細書で開示のバイオマーカーを使用する場合、また、実際には、第一の表現型をもつ患者または対象を第二の表現型を有する患者または対象から区別するために任意のセットのバイオマーカーを使用する場合、試料中の各バイオマーカーの絶対的な発現を対照と比較することができる。例えば対照は、患者または対象のプールでの各バイオマーカーそれぞれの発現レベルの平均である場合がある。しかしながら、比較の感度を向上させるためには、好ましくは、発現レベルの値をいくつかの方法で変換する。
例えば、発現レベルが決定される全てのマーカーの発現レベルの平均を使って、または対照遺伝子のセットの発現レベルの平均を使って、各バイオマーカーの発現レベルを正規化することができる。従って一態様では、バイオマーカーは、マイクロアレイ上のプローブによって表され、各バイオマーカーの発現レベルは、マイクロアレイに表されている、いかなる非バイオマーカー遺伝子をも含む、全ての遺伝子の発現レベルの平均または中央値によって正規化される。具体的な態様では、正規化は、マイクロアレイ上に搭載されている全ての遺伝子の発現レベルの中央値または平均で割ることによって行われる。別の態様では、バイオマーカーの発現レベルは、対照バイオマーカーのセットの発現レベルの平均または中央値を使って正規化される。具体的な態様では、対照のバイオマーカーは、ハウスキーピング遺伝子のセットを含む。別の具体的な態様では、正規化は、対照遺伝子の発現レベルの中央値または平均で割ることによって行われる。
個々のバイオマーカーの発現レベルを試料プール中の同じバイオマーカーの発現と比較する場合、バイオマーカーを利用したアッセイの感度もまた向上するだろう。好ましくは、試料プール中の各バイオマーカー遺伝子の発現レベルの平均または中央値に対して比較する。そのような比較は例えば、試料中の各バイオマーカーの発現レベルを各バイオマーカーのプールの発現レベルの平均または中央値で割ることによって行ってもよい。これは、プール全体における試料およびマーカー中のバイオマーカー間の、相対的な発現の差を目立たせる効果をもち、その結果、比較の感度が向上し、絶対的な発現レベルだけを使用する場合よりも、意味のある結果が生成される傾向にある。発現レベルのデータは、利用し易い方法のいずれによっても変換することができる。好ましくは、全ての発現レベルのデータを対数変換し、その後、平均または中央値を導き出す。
プールに対する比較の実施には、2種類の方法を用いることができる。第一に、試料中のマーカーの発現レベルを、プール中のそれらマーカーの発現レベルに対して比較することができる。この場合には、試料由来の核酸とプール由来の核酸を、単一の実験中にハイブリダイズさせる。そのような方法では、比較ごとに新しい核酸のプールを生成することが必要であるか、または比較の回数が限られており、その結果、利用可能な核酸の量による制限を受ける。あるいは、および好ましくは、プール中の発現レベルは、正規化および/または変換されていてもいなくても、コンピューターもしくはコンピューターで読み取り可能なメディアに保存され、試料に由来する個々の発現レベルのデータ(つまり、単一チャネルデータ)に対する比較に使用される。
従って、本発明は、少なくとも2種類の異なる表現型のうちの1種類を有する第一の細胞または生物を区別する、以下の方法を提供し、ここで異なる表現型は、第一の表現型と第二の表現型を含む。第一の細胞または生物由来の第一の試料中の、複数の遺伝子それぞれの発現レベルを、前記少なくとも2種類の表現型をそれぞれ示している異なる細胞または生物を含んでいる複数の細胞または生物由来のプール試料中に含まれている、前記各遺伝子の発現レベルとそれぞれ比較し、第一の比較値を得る。次に、第一の比較値を第二の比較値と比較する。ここで前記第二の比較値は、前記第一の表現型を特徴とする細胞または生物由来の試料に含まれる各前記遺伝子の発現レベルと、プール試料に含まれる各前記遺伝子の発現レベルをそれぞれ比較する工程を含む方法によって導き出されるものである。次いで、第一の比較値を第三の比較値と比較する。ここで前記第三の比較値は、第二の表現型を特徴とする細胞または生物由来の試料に含まれる各遺伝子の発現レベルと、プール試料に含まれる各遺伝子の発現レベルをそれぞれ比較する工程を含む方法によって導き出されるものである。必要に応じて、第一の比較値をさらに別の比較値それぞれと比較することもでき、この場合、さらに別の比較値はそれぞれ、前記第一の表現型や第二の表現型とは異なるが、少なくとも2種類の異なる表現型に含まれる表現型を特徴とする細胞または生物由来に含まれている各前記遺伝子の発現レベルと、前記プール試料に含まれている各前記遺伝子の発現レベルをそれぞれ比較する工程を含む方法によって導き出されるものである。最後に、前記第二、第三、および、もしあれば、1つ以上のさらに別の比較値のどれに前記第一の比較値が最も近いかを決定し、ここで第一の細胞または生物は、前記第一の比較値と最も近似した前記比較値を導き出すのに使用した細胞または生物の表現型を有していると判断される。
この方法の具体的な態様では、比較値は、前記遺伝子それぞれの、発現レベルの各割合である。別の具体的な態様では、プール試料に含まれている各遺伝子の発現レベルそれぞれを正規化し、その後、任意の比較工程に使用する。より具体的な態様では、発現レベルの正規化は、各遺伝子の発現レベルの中央値または平均で割ることによって、または前記細胞または生物由来のプール試料に含まれている1種類以上のハウスキーピング遺伝子の発現レベルの平均または中央値で割ることによって行われる。別の具体的な態様では、正規化した発現レベルを対数変換し、対数変換したものを試料に含まれる各遺伝子の発現レベルの対数から引く工程を含む比較工程に、正規化した発現レベルを使用する。別の具体的な態様では、2つ以上の異なる表現型は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の異なる調節状態である。さらに別の具体的な態様では、2種類以上の異なる表現型は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使った治療への異なる反応の予測である。一層さらに別の具体的な態様では、プール試料に含まれている各遺伝子のそれぞれの発現レベル、または第一の表現型、第二の表現型、もしくは前記第一および第二の表現型とは別の前記表現型を特徴とする細胞または生物由来の試料に含まれている各前記遺伝子の前記発現レベルはそれぞれ、コンピューターまたはコンピューターで読み取り可能なメディアに保存される。
別の具体的な態様では、2種類の表現型は、調節解除されているか、またはWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態である。別の具体的な態様では、2種類の表現型は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路剤への予測される応答者の状態であり、さらに別の具体的な態様では、2種類の表現型は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路に対する薬剤の薬力学的効果の有無である。
別の具体的な態様では、試料に含まれている各遺伝子の発現と、2種類以上の表現型のうちの1種類だけを表しているプールに含まれている同じ遺伝子の発現とを比較する。Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態と相関のある遺伝子については、例えば、試料に含まれる、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節状態関連遺伝子の発現レベルと、「調節が解除されている」試料のプール(調節されている状態と調節解除されている状態のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路を有する、患者由来の試料を含む試料のプールとは対照的な)に含まれている同じ遺伝子の発現レベルの平均とを比較することができる。従ってこの方法では、予後相関遺伝子の発現レベルが、平均的な「調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路」の発現プロファイル(すなわち、「Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されている状態」の患者由来の試料のプールに含まれる、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態と相関のある遺伝子の発現レベル)に対して選択した相関係数を超える場合、試料のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路は調節解除されている状態だと分類される。発現レベルと「調節解除されているWnt/b−カテニンシグナル伝達経路」発現プロファイルとの相関がより小さい(すなわち、その相関係数が選択した係数を越えなかい)患者または対象は、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている状態であると分類される。
無論、数学的な試料プールに対する特定の比較を行うことなく、単一チャネルのデータを使用してもよい。例えば、試料に含まれる少なくとも5種類のマーカーの発現の、第一の表現型のテンプレートと第二の表現型のテンプレートに含まれている同じマーカーの発現に対する類似性を算出することで、第一の表現型かまたは第二の表現型を有するとして試料を分類することができる。この場合、第一の表現型と第二の表現型は関係しており、マーカーには第一の表現型または第二の表現型との相関があり、類似性は、(a)試料に由来する核酸を蛍光色素分子で標識し、蛍光標識した核酸のプールを得る工程、(b)前記蛍光標識した核酸を、ハイブリダイゼーションが起こる条件下でマイクロアレイに接触させ、マイクロアレイ上の複数の離れている位置で、前記条件下で前記マイクロアレイに結合した前記蛍光標識した核酸から放出される蛍光シグナルを検出する工程、および(c)患者の試料に含まれるマーカー遺伝子の発現の第一のテンプレートおよび第二のテンプレートに対する類似性を決定する工程から算出され、前記発現が第一のテンプレートにより近似している場合、この試料は第一の表現型を有すると分類され、前記発現が第二のテンプレートにより近似している場合には、この試料は第二の表現型を有すると分類される。
発現プロファイルを分類する方法
好ましい態様では、本発明の方法は、試料のWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節状態を予測するため、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤への反応を予測するため、対象を治療に割り当てるため、および/または薬剤の薬力学的効果を測定するために、分類器を使用する。分類器は、バイオマーカーのプロファイルを含む入力を受信し、および患者がどの患者小集団に属しているかを示すデータを含む出力を提供する、適切なパターン認識法のいずれに基づくものであってもよい。訓練対象の集団から得られた訓練データを使って分類器を準備してもよい。通常、訓練データには、訓練集団に含まれているそれぞれの対象についての、患者から採取した適切な試料に含まれる複数の遺伝子のそれぞれの遺伝子産物の測定値およびアウトカム情報、つまり、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の状態が調節解除されているかまたは調節されているかの情報などの、訓練マーカーのプロファイルが含まれている。
好ましい態様では、分類器は、以下に示す分類(パターン認識)法、例えば、プロファイルの類似性;人工神経回路網;サポートベクターマシン(SVM);ロジスティック回帰、線形または二次の判別分析、決定木、クラスタリング、主要成分分析、最近傍法、NSC(nearest shrunken centroid)法に基づくものであってよい。このような分類器は、訓練集団を用い、以下の関連する項で説明した方法を使って、準備することができる。
バイオマーカーのプロファイルは、対象由来の細胞試料に含まれている複数の遺伝子産物を、当該分野で知られている方法を使って、例えば以下に記載する方法で、測定することによって得ることができる。
本発明との関連では、様々な既知の統計的なパターン認識法を使用することができる。そのような方法のいずれかに基づく分類器は、訓練患者のバイオマーカープロファイルやWnt/b−カテニン経路のシグナル伝達状態に関するデータを利用して構築することができる。次に、そのような分類器を使用し、患者のバイオマーカープロファイルに基づいて、患者のWnt/b−カテニン経路のシグナル伝達状態を評価することができる。この方法を、訓練患者のバイオマーカープロファイルおよびWnt/b−カテニンシグナル伝達経路の調節に関するデータを使用して、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路の異なる調節状態を区別するバイオマーカーの同定に使用することもできる。
プロファイルマッチング
対象由来の適切な試料で得られたバイオマーカープロファイルと、特定の表現型の状態を表すバイオマーカープロファイルとを比較することによって、対象を分類することができる。そのようなマーカープロファイルは、「テンプレートプロファイル」または「テンプレート」とも呼ばれる。それらのテンプレートプロファイルに対する類似性の度合によって、対象の表現型が評価される。対象のマーカープロファイルとテンプレートプロファイルの類似性の度合が、予め設定しておいた閾値を超える場合、対象はそのテンプレートによって表されている分類に割り当てられる。例えば、対象のアウトカムに関する予測を、対象のバイオマーカープロファイルと、所与の表現型またはアウトカムに対応する予め設定しておいたテンプレートプロファイル、例えば、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されている状態の腫瘍に罹患している、複数の対象に含まれているバイオマーカーのレベルを表す複数のバイオマーカーの測定値を含む、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路テンプレートのプロファイルと比較することで評価することができる。
一態様において類似性は、対象のプロファイルとテンプレートとの間の相関係数によって表される。一態様では、相関閾値を超える相関係数は高い類似性を示し、閾値を下回る相関係数は低い類似性を示す。
人工神経回路網
いくつかの態様では、神経回路網が使用される。本発明の選択したセットの分子マーカーについて、神経回路網を構築することができる。神経回路網は、二段階回帰、すなわち分類モデルである。神経回路網は、重み層によって出力層に接続されている入力層(および偏り)を含む層構造になっている。回帰用には、出力層は通常、1つだけである。しかしながら、神経回路網は断続のない様式で、複数の量的な反応を扱うことができる。多層構造の神経回路網には、入力装置(入力層)、隠れ装置(隠れ層)、および出力装置(出力層)が含まれる。さらに、入力装置以外のそれぞれの装置に接続された、単一の偏り装置がある。神経回路網については、Duda et al., 2001, Pattern Classification, Second Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York;およびHastie et al., 2001, The Elements of Statistical Learning, Springer− Verlag, New Yorkに記載されている。
サポートベクターマシン
本発明のいくつかの態様では,本発明に記載のマーカー遺伝子の発現プロファイルを使用して対象を分類するのに、サポートベクターマシン(SVM)が使われる。SVMの基本的な説明は、例えば、 Cristianini and Shawe−Taylor, 2000, An Introduction to Support Vector Machines, Cambridge University Press, Cambridge, Baser et al., 1992, “A training algorithm for optimal margin classifiers, in Proceedings of the 5th Annual ACM Workshop on Computational Learning Theory, ACM Press, Pittsburgh, Pa., pp. 142−152; Vapnik, 1998, Statistical Learning Theory, Wiley, New York; Duda, Pattern Classification, Second Edition, 2001, John Wiley & Sons, Inc.; Hastie, 2001, The Elements of Statistical Learning, Springer, N.Y.; and Furey et al, 2000, Bioinformatics 16, 906−914で見られる。生物学的な用途におけるSVMの応用については、Jaakkola et al., Proceedings of the 7th International Conference on Intelligent Systems for Molecular Biology, AAAI Press, Menlo Park, Calif. (1999); Brown et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 97(l):262−67 (2000); Zien et al, Bioinformatics, 16(9):799−807 (2000); Furey et al. Bioinformatics, 16(10):906−914 (2000)に記載されている。
いくつかの態様では、分類器は、回帰モデル、好ましくはロジスティック回帰モデルに基づくものである。そのような回帰モデルには、本発明の選択したセットの分子バイオマーカーに含まれる、それぞれの分子マーカーに関する係数が含まれている。そのような態様では、回帰モデルについての係数は、例えば、最尤法を使用して算出される。特定の態様では、2種類の分類または表現型の群、例えば、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されているまたは調節されている、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤を使った治療への反応があるまたは反応がない分類または表現型の群から得られた分子バイオマーカーのデータが使用され、また、従属的な変数は、分子マーカーの特徴に関するデータを得た患者の表現型の状態である。本発明のいくつかの態様では、多項(多分割)の反応を扱うロジスティック回帰モデルの一般論を提供する。そのような態様を用いれば、生物を1つまたは3つまたはそれ以上の分類に、例えば、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路剤を使った治療への反応が、良い、普通、および悪いと判断することができる。そのような回帰モデルは、分類の全対応を同時に参照する多項論理モデルを使用し、1つの分類における反応のオッズを、別の分類における反応のオッズの代わりに説明するものである。モデルによって、分類の特定の対応(J−l)に関するロジットが指定されれば、残りは予測可能である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Agresti, An Introduction to Categorical Data Analysis, John Wiley & Sons, Inc., 1996, New York,第8章を参照のこと。
判別分析
線形判別分析(LDA)は、特定の目的特性に基づいて、対象を2つの分類のうちの1つに分類しようとするものである。言い換えれば、LDAは、実験で測定される目的の属性が、目的の類別を予測できるか否かを試験するものである。LDAは通常、連続した独立変数と、二項の制限のない従属変数を必要とする。本発明では、訓練集団の一部から構成されている小集団にわたる、本発明の選択したセットの分子マーカーの発現値が、必須の連続した独立変数として機能する。訓練集団のそれぞれのメンバーの臨床群分類が、二項の制限のない従属変数として機能する。
LDAは、グループ分けの情報を使用して、群間の分散と群内の分散の非を最大にする、変数の一次結合を求めるものである。必然的に、LDAによって使用される線形加重は、訓練セット全体にわたる分子バイオマーカーが、どうやって2群(例えば、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されている群とWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている状態の群)に分離するかおよび、この遺伝子の発現が、他の遺伝子の発現とどのように相関しているかに依存する。いくつかの態様では、本発明で記載の遺伝子と組み合わせて、K遺伝子によって、訓練試料に含まれるNメンバーのデータマトリクスにLDAを適用する。次いで、訓練集団の各メンバーの線形判別をプロットする。理想的には、第一の小集団を構成している訓練集団に含まれているこれらメンバー(例えばWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されている状態のこれらの対象)は、線形判別値(例えば、負)の第一の範囲に集合し、第二の小集団を構成している訓練集団に含まれているこれらメンバー(例えばWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている状態のこれらの対象)は、判別値の第二の範囲(例えば、正)に集合する。LDAは、集合の判別値の距離がより大きい場合に、より有効であると考えられている。線形判別分析に関するより多くの情報については、Duda, Pattern Classification, Second Edition, 2001, John Wiley & Sons, Lie; and Hastie, 2001, The Elements of Statistical Learning, Springer, N.Y.; Venables & Ripley, 1997, Modern Applied Statistics with s−plus, Springer, N.Y.を参照のこと。二次判別分析(QDA)でも、LDAと同じ入力指標が必要とされ、同じ結果が得られる。QDAは、一次方程式の代わりに二次方程式を使って結果を生成する。LDAおよびQDAは交換可能であり、どちらかを使うかは好みおよび/または解析を支持するソフトウェアの入手可能性の問題である。ロジスティック回帰でも、LDAやQDAの同じ入力指標が必要とされ、同じ結果が得られる。
決定木
本発明のいくつかの態様では、本発明の選択したセットの分子バイオマーカーの発現を利用して対象を分類するのに決定木を使用する。決定木のアルゴリズムは、教師あり学習のアルゴリズムの類に属するものである。決定木の目的は、実際の観察データから、分類器(木)を作ることである。この木を使用して、決定木を作るのに使ったものではない、未知の例を分類することができる。
決定木は、訓練データから導き出される。ある例は、別の属性に関する値とその例がどのクラスに属しているかに関する値を含んでいる。一態様において訓練データは、本発明で記載した遺伝子の組み合わせの、訓練集団全体にわたる発現データである。
クラスタリング
いくつかの態様では、本発明の選択したセットの分子マーカーの発現値を使用して、訓練セットをクラスタリングする。例えば、本発明の遺伝子のうちの1つで説明される10種類の遺伝子バイオマーカーが使用される場合を考えてみる。訓練集団の各メンバーmは、10種類のバイオマーカーそれぞれに関する発現値を有することになる。訓練集団中のあるメンバーmのそのような値が、ベクトルを定義する:訓練集団に含まれていて、訓練群全体にわたって同じような発現パターンを示すメンバーは、あるクラスターに集まる傾向にある。ベクトルによって訓練集団中に見られた特徴群があるクラスターに集められる場合、本発明の遺伝子の特定の組み合わせが、本発明のこの側面では優れた分類器であると見なされる。例えば、訓練集団が予後の良好な患者または予後不良の患者を含む場合、クラスタリング分類器はこの集団を、Wnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されている状態であるかまたはWnt/b−カテニンシグナル伝達経路が調節されている状態であるかのどちらかを表している2つの群に集める。
クラスタリングについては、Duda and Hart, Pattern Classification and Scene Analysis, 1973, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkの211−256 ページに記載されている。Dudaの6.7項に記載されているように、クラスタリングの問題は、データセット中の自然分類を発見することの1つであると言われている。自然分類を同定するには、2つの課題を扱う。まず、2個の試料間の類似性(または非類似性)を測定するための方法を決定する。この計量(類似性の尺度)を使って、片方のクラスターに入った試料同士が、他のクラスターに入った試料に対してよりも、互いにより近いということを確認する。次に、類似性の尺度を使用して、データをクラスターに分類する機構を決定する。
類似性の尺度はDudaの6.7項で議論されている。そこでは、クラスタリング解析を開始するための一方法は、距離関数を定義し、データセット中の試料の全対応間の距離の行列を算出することであると明示されている。距離が類似性の尺度として優れている場合、同じクラスターに入っている試料間の距離は、異なるクラスターに入っている試料同士の距離よりも有意に小さくなる。しかしながら、Dudaの215ページに記載されているように、クラスタリングでは、距離計量を使用する必要はない。例えば、非計量的な類似度関数s(x,x’)を使用して、2つのベクター、xとxを比較することができる。通常、s(x,x’)は対称式であり、xとx’が少しでも「類似」している場合には、その値は大きい。非計量的な類似度関数s(x,x’)の一例が、Dudaの216ページに記載されている。
データセットに含まれている点間の「類似性」または「非類似性」を測定するための方法が選択されたら、クラスタリングには、データの任意の分割のクラスタリングの質を測定する、基準関数が必要となる。データをクラスターに集めるには、基準関数を極値にするデータセットの分割が使用される。Dudaの217ページを参照のこと。基準関数ついては、Dudaの6.8項で議論されている。最近になって、Duda et al., Pattern Classification,第二版, John Wiley & Sons, Inc. New Yorkが出版され、クラスタリングについては、537〜563ページでより詳細に説明されている。クラスタリング技法についての情報はさらに、Kaufman and Rousseeuw, 1990, Finding Groups in Data:An Introduction to Cluster Analysis, Wiley, New York, N.Y.; Everitt, 1993, Cluster analysis(第三版), Wiley, New York, N.Y.; and Backer, 1995, Computer−Assisted Reasoning in Cluster Analysis, Prentice Hall, Upper Saddle River, N.J.でも見ることができる。本発明で使用可能なクラスタリング技法の具体例としては、階層的クラスタリング(最近傍アルゴリズムを使用する集塊性クラスタリング、最遠隣アルゴリズム、平均連結アルゴリズム、重心アルゴリズム又は2乗和アルゴリズム)、k平均クラスタリング、ファジーk平均クラスタリングアルゴリズム及びJarvis−Patrickクラスタリングが挙げられるがこれらには限定されない。
主成分分析
主成分分析(PCA)は、遺伝子発現のデータを解析するために提供された。主成分分析は、データを、その特徴を要約する新しい変数のセット(主成分)に変換することで、データセットの次元の数を減少させるための、従来からある技法である。例えば、 Jolliffe, 1986, Principal Component Analysis, Springer, N.Y.を参照のこと。主成分(PC)には相関がなく、かつ、k番目のPCがPC間でk番目に大きい分散を有するように並べられる。k番目のPCとは、データポイントの射影の変動を最大にし、最初のk−1番目のPCに直交する方向として解釈することができる。最初のいくつかのPCは、データセットの変動の多くを捕捉する。対照的に、最後いくつかのPCは、データに残留する「ノイズ」だけを捕捉すると想定されることが多い。
また、PCAは、本発明の分類器を作製するために使用することもできる。このようなアプローチでは、本発明の選択バイオマーカーについてのベクトルを、クラスタリングについて上で記述したのと同じ方法で構築することができる。実際に、ベクトルのセットは、それぞれのベクトルが訓練集団の特定のメンバーからの選択遺伝子についての発現値を表す場合に、行列とみなすことができる。いくつかの態様では、この行列は、単量体の定性的な二進法記述のFree−Wilson法で表され(Kubinyi, 1990, 3D QSAR in drug design theory methods and applications、Pergamon Press, Oxford, pp 589−638)、PCAを使用して最大圧縮空間に分散させ、その結果第一の主成分(PC)が、可能性がある分散情報の最大量を収集し、第二の主成分(PC)が、全ての分散情報の2番目に大きな量を収集し、行列の全ての分散情報を占めてしまうまで収集する。
次いで、各々のベクトル(それぞれのベクトルが、訓練集団のメンバーを表す場合)をプロットする。多くの異なる型のプロットが可能である。いくつかの態様では、一次元プロットが作製される。この一次元プロットでは、訓練集団のメンバーのそれぞれからの第一の主成分についての値をプロットする。この形態のプロットでは、第一群のメンバーは第一の主成分値の第一の範囲にクラスターとして集まり、第二群のメンバーは、第一の主成分値域の第二の範囲にクラスターとして集まることが期待される。
一例では、訓練集団は2つの分類群を含む。第一の主成分は、分類結果が分かっている訓練集団のデータセット全体にわたる、本発明の選択遺伝子についての分子バイオマーカーの発現値を使って算出される。次いで、訓練セットのそれぞれのメンバーを、第一の主成分に関する値の関数としてプロットする。この例では、第一の主成分が陽性の訓練集団に含まれるメンバーが一方に分類され、第一の主成分が陰性の訓練集団に含まれるメンバーが他方に分類される。いくつかの態様では、訓練集団のメンバーを、複数の主成分に対してプロットする。例えば、いくつかの態様では、訓練集団のメンバーは、第一次元が第一の主成分であり、第二次元が第二の主成分である二次元プロットでプロットされる。このような二次元プロットでは、訓練集団を構成する小集団それぞれのメンバーは、別々の群にクラスタリングするであろうことが予想される。例えば、二次元プロット中の第一クラスターのメンバーは、第一の分類群に含まれる対象を表し、二次元プロット中の第二のクラスターのメンバーは、第二の分類群に入る対象などを示す。
いくつかの態様では、訓練集団のメンバーを複数の主成分に対してプロットし、訓練集団のメンバーが、それぞれが訓練集団中で見られる小集団を個別に表す群にクラスタリングされるかどうかを決定する。いくつかの態様では、R mvaパッケージ(Anderson, 1973, Cluster Analysis for applications, Academic Press, New York 1973; Gordon, Classification, Second Edition, Chapman and Hall, CRC, 1999)を使用して、主成分分析を実施する。主成分分析については、Duda, Pattern Classification, Second Edition, 2001, John Wiley & Sons, Inc.でさらに説明されている。
最近傍分類器解析
最近傍分類器はメモリーベースの手法であり、それを当てはめるモデルを必要としない。クエリ点をx0と仮定すると、x0への距離が最も短いk訓練位置x(r),r,...kを同定し、次いで位置x0を、kの最近傍を使用して分類する。結合は、ランダムに破壊することができる。いくつかの態様では、特徴空間におけるユークリッド距離を使用して、距離を以下の式から決定する。
最近傍アルゴリズムを使用する場合は通常、線形識別式を算出するために使用する発現データを、平均が0、分散が1になるように標準化する。本発明では、訓練集団のメンバーを、訓練セットと試験セットに無作為に分ける。例えば、一態様では、訓練集団のメンバーの2/3を訓練セットに配置し、訓練集団のメンバーの1/3を試験セットに配置する。本発明の分子バイオマーカーの選択したセットのプロファイルは、試験セットのメンバーがプロットされている特徴空間を表す。次に、試訓練セットが試験セットのメンバーを正しく特徴づける能力を算出する。いくつかの態様では、本発明のバイオマーカーの所与の組み合わせに対し、最近傍計算を複数回行う。計算のそれぞれの繰り返しにおいて、訓練集団のメンバーを訓練セット及び試験セットに無作為に割り当てる。次いで、遺伝子の組み合わせの質を、このような最近傍計算のそれぞれの繰り返しの平均として得る。最近傍法は、等しくない事前分類(unequal class priors)、差動的誤分類コスト及び特徴選択の問題を扱うように改良することができる。これらの改良の多くは、近傍に対するある種の加重投票を伴う。最近傍分析の詳細については、Duda, Pattern Classification, Second Edition, 2001, John Wiley & Sons, Inc; and Hastie, 2001, The Elements of Statistical Learning, Springer, N.Y.を参照のこと。
進化論的手法
生物の進化過程がきっかけとなり、分類器設計の進化論的手法では、最適な分類器の確率論的な探索が用いられている。概観を示すと、そのような手法ではまず、本発明の遺伝子産物の測定値から、複数の分類器つまり集団を生成する。分類器はそれぞれ少しずつ違う。次に、訓練集団全体にわたる発現データによって、分類器に得点を付ける。生物の進化との類似性を踏まえて、得られた(スカラー量の)点数は、適応度と呼ばれることがある。点数によって分類器を順位付けし、最も良い分類器(分類器全体のうちの一部)を保持する。これは、ここでも生物学的な用語に則って、自然選択とよばれる。分類器は次世代、つまり子または子孫で、確率論的に変化する。いくつかの子孫分類器は、前世代の親よりも高い点数をもち、いくつかはより低い点数をもつ。そして、過程全体が、その後の世代について繰り返される:分類器に点数が付けられ、最も良いものが保持され、無作為に変化してさらに別の世代を生じるなど。一つには順位付けのせいで、各世代は、平均して前の世代の点数よりも僅かに高い点数を有する。ある世代の中の最もよい単一の分類器が、所望される基準値を超える点数を有する場合、その過程は修了する。進化論的手法についてのより詳細な情報は、例えば、 Duda, Pattern Classification, Second Edition, 2001, John Wiley & Sons, Inc.で見ることができる。
バギング法、ブースティング法及び無作為部分空間法
バギング法、ブースティング法および無作為部分空間法は、弱い分類器を改良するために使用することができる複合技術である。これらの技術は、決定木に関して設計され、通常適用される。また、Skurichina and Duinは、このような技術が線形判別分析にも有用である可能性を示唆する証拠を提供している。
バギング法では、無作為で独立したブートストラップの繰り返しを生成している訓練セットを作成し、これらそれぞれについて分類器を構築し、そして最終決定では、これらを単純多数決によって集合させる。例えば、 Breiman, 1996, Machine Learning 24, 123−140;およびEfron & Tibshirani, An Introduction to Bootstrap, Chapman & Hall, New York, 1993を参照のこと。
ブースティング法では、それまでの分類結果に基づく重みを付けたバージョンの訓練セットについて、分類器を構築する。最初、全ての目的は等しい重みを有し、このデータセットについて、第一の分類器を構築する。次に、分類器の性能に応じて重みを変える。誤って分類された目的(データセット中の分子バイオマーカー)はより大きい重みを付けられ、再度重み付けを行った訓練セットについて、次の分類器が押し上げられる。このようにして、訓練セット及び分類器の数列を得て、これを最終決定では単純多数決又は加重多数投票によって組み合わせる。例えば、 Freund & Schapire,「Experiments with a new boosting algorithm」Proceedings 13th International Conference on Machine Learning, 1996, 148−156を参照のこと。
いくつかの態様では、修正したFreund and Schapireの方法(1997,Journal of Computer and System Sciences 55, pp. 119−139)を使用する。例えば、いくつかの態様では、 Park et al., 2002, Pac. Symp. Biocomput. 6, 52−63のノンパラメトリックスコアリング(nonparametric scoring)法などの技術を利用して、特徴の事前選択を実施する。特徴の事前選択は、次元の数の低下という形態であり、この場合、分類器同士を最もよく区別する遺伝子が、分類器で使用するのに選択される。そのため、Freund and Schapireのブースティング法よりも、Friedman et al., 2000, Ann Stat 28, 337−407によって導入されたLogitBoost法が使用される。いくつかの態様では、 Ben−Dor et al., 2000, Journal of Computational Biology 7, 559−583のブースティング法や他の分類法が本発明では使用される。いくつかの態様では、 Freund and Schapire, 1997, Journal of Computer and System Sciences 55, 119−139のブースティング法や他の分類法が使用される。
無作為部分空間法では、データ特徴空間の無作為な部分に分類器を構築する。これらの分類器は一般的に、最終決定では単純多数決によって組み合わせられる。例えば、Hoの「The Random subspace method for constructing decision forests」IEEE Trans Pattern Analysis and Machine Intelligence, 1998; 20(8): 832−844を参照のこと。
他のアルゴリズム
上述したパターン分類および統計学的な手法は単に、分類に関するモデルの構築に使用可能なモデルの型の例にすぎない。さらに、上述した手法を組み合わせて使用することも可能である。いくつかの組み合わせ、例えば決定木とブースティング法を組み合わせて使用することについて説明した。しかしながら、他の多くの組み合わせも可能である。加えて、当該分野における他の技術、例えば射影追跡や加重投票を使用して分類器を構築することもできる。
実験項で議論するように、対象バイオマーカー遺伝子の発現は、好ましくはSYBRグリーンを使ったリアルタイムPCRの後で決定し、データ解析にはΔΔCt法を使用する。各試料中のハウスキーピング遺伝子のCt値の平均を、その試料に関するハウスキーピング遺伝子のCt値として計算する。同じ試料の個々のアッセイのCt値からハウスキーピングCt値を引くことで、ΔCtを計算する。さらに、各アッセイの対照試料のΔCt値を、対応する処理試料のΔCt値から引くことで、ΔΔCt値を導き出す。試料のΔΔCt値の解析には、好ましくはサポートベクターマシン法を使用し、その発現を用いて、試料のWnt/β−カテニン経路活性の調節状態を評価する。
本発明のWNT/β−カテニンシグナル伝達(16)遺伝子シグネチャーの同定に用いた実験方法
遺伝子発現のプロファイリングを使ったWnt/β−カテニン応答遺伝子の同定
図1に、対象の遺伝子シグネチャーの同定に用いたプロトコールを模式的に図示する。ここで示すように、ヒト胎児腎臓293H細胞を、1ウェル当たりの細胞密度が10個になるように、2mlの成長培地と共に6−ウェルプレートにプレーティングした。プレーティングした細胞を、細胞培養用インキュベーター中37℃で、5%のCO2を供給しながらインキュベートした。プレーティングして24時間後、細胞をsiRNAで、具体的にはβ−カテニンを標的とするsiRNAか、または標的をもたないsiRNA(対照)で形質転換した。各ウェル用に、6μlのSureFECT形質転換試薬(SABiosciences、a QIAGEN company)を200μlのOptiMEM培地(Invitrogen)で希釈した。希釈した形質転換試薬を20nMのβ−カテニンを標的とするsiRNA二本鎖D(GTTCCGAATGTCTGAGGACAA(配列番号65))(SABiosciences、a QIAGEN Company)または標的をもたない対照siRNA(ACACTAAGTACGTCGTATTAC(配列番号66))(SABiosciences、a QIAGEN owned company)のいずれかと混合した。室温で20分間インキュベートした後、形質転換混合物を、2mlの成長培地と共に6−ウェルプレートに入っている293H細胞に加えた。形質転換の24時間後、形質転換混合物の入った培地を、各ウェル当たり1mlの血清を含まない培地と交換し、細胞を血清を含まない培地中で12時間インキュベートした。血清飢餓の12時間後、これらの細胞を、400ng/mlのマウス組換えWnt3a(R&D Systems)または対照であるPBSのいずれかを含む、1mlの血清を含まない培地で置き換えた。
12時間のWnt3a処理の終了時に、実験プロトコールの項に記載する細胞溶解とウェスタンブロットのプロトコールに従って、活性型β−カテニンのタンパク質レベルをウェスタンブロットで確認するために、細胞を50μlの改変RIPA緩衝液(150mMのNaCl、50mMのTris−HCl、1%のIGEPAL、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、1mMのEDTA、1%のTritonX−100および0.1%のSDS、プロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤)中で溶解した。マウス抗活性型β−カテニン(1:1000)(Millipore)を使って活性型β−カテニンのレベルを検出した。全β−カテニンおよび対照のGAPDHレベルの検出には、マウス抗β−カテニン(1:2000)(BD Transduction lab)およびウサギ抗GAPDH(1:2000)(Sigma)を使用した。Wnt3a処理の効果は、Wnt3aを処理した試料での活性型β−カテニンのタンパク質レベルが、未処理試料よりも上昇することによって示された(図2Aに含まれる結果を参照のこと)。
RNA抽出用には、細胞を、各ウェル当たり200μlのG6緩衝液(SABiosciences、a QIAGEN company)中で溶解した。溶解物をさらに、RT2q PCR−Grade RNA Isolation Kit(SABiosciences)を使用し、実験プロトコールの項で説明したプロトコールに従って処理し、RNAを単離した。単離工程の最後で、スピンカラムに30μlのRNaseを含まない水を加え、RNAをカラムから溶出した。RNAの濃度をNanodrop分光光度計(Thermo SCIENTIFIC)で測定し、このRNAをその後、リアルタイムRT−PCRまたはマイクロアレイでの遺伝子発現プロファイリング解析用に処理した。
リアルタイムRT−PCRを使用し、Wnt/β−カテニン標的遺伝子およびβ−カテニンそれ自体、それぞれのmRNAの発現レベルを測定することで、Wnt3a処理とβ−カテニンsiRNAノックダウンの効果を確認した。1μgのトータルRNAを、RT2 EZ First Strand cDNA synthesis kit(SABiosciences、a QIAGEN company)を使用して、実験プロトコールの項で説明したプロトコールに従って、逆転写した。20μlのcDNA反応液を、リアルタイムPCR解析ように、100μlの水で希釈した。各リアルタイムPCR反応混合液に、1μlのcDNAと、1μlのプライマー混合物(10μΜ、フォワードプライマーとリバースプライマーを混合したもの)、12.5μのリアルタイムPCRマスターミックス(SABiosciences、a QIAGEN company)および10.5μlの水を混合し、全量を25μlとした。CTNNB1、MYC、CCND1、FRA−1、AXIN2およびSOX9について使用したプライマー配列は以下の表の通りである。
反応混合液は、1ウェル当たり10μlずつ、384−ウェルのリアルタイムPCR用プレートの2つのウェルに加えた。PCRプレートを、光学用接着フィルム(Applied Biosystems)で密閉し、および2分間、2000rpmで遠心した。リアルタイムPCRは、ABI 7900リアルタイムPCR装置(Applied Biosystems)を使い、95℃で10分間、次いで95℃15秒、60℃1分を40サイクルのPCRプログラムによって行い、その後融解曲線分析を行った。Wnt3a処理の効果を、Wnt3a処理試料における、Wnt/β−カテニン標的遺伝子、例えばβ−カテニン(CTNNB1)、MYC、CCND1およびAXIN2の、未処理試料と比較した場合のアップレギュレーションによって確認した(図2Bを参照のこと)。β−カテニンのsiRNAによるノックダウンは、β−カテニンのmRNAの発現レベルの低下によって確認した(図2Bを参照のこと)。
Wnt3a処理とβ−カテニンsiRNAノックダウンを確認した後、RNA試料を全ゲノムマイクロアレイ遺伝子プロファイリング解析用に処理した。12個の試料を三重複で、4つの処理群にわけた。処理群はそれぞれ、siなし(標的指向化されていないsiRNAを導入)−wntなし(wntによる処理を行わない)、siなし−wnt(wntによる処理を行う)、siCTNNB1(CTNNB1を標的とするsiRNAを導入)−wntなし、およびsiCTNNB1−wntとした。300ngのトータルRNAを増幅し、Target Amp Nano−gBiotin−aRNA Labeling Kit(Epicentre Biotechnologies)を使用し、製造業者によるプロトコールに従って標識した。
増幅試薬、標識試薬および反応指標を以下に示す。
ファーストストランドcDNA合成
65℃で5分間インキュベートし、氷上で1分間冷やし、短時間遠心する。
各反応液に2μlずつ加え、おだやかに混合し、50oCで30分間インキュベートする。
セカンドストランドcDNA合成
各反応液に5μlずつ加え、おだやかに混合し、65oCで10分間インキュベートし、短時間遠心する。80oCで3分間インキュベートし、短時間遠心した後、氷上で冷却する。
ビオチン−aRNAのインビトロ転写
T7RNAポリメラーゼを室温まで温め、他の試薬を室温で融解する。
各反応液に20μlずつ加え、おだやかに混合し、42oCで4時間インキュベートする(4時間を越えないようにする)。各反応液に2μlのRnaseを含まないDnaseIを加え、おだやかに混合し、37oCで15分間インキュベートする。
ビオチン−aRNAの精製(SABio cRNA cleanup kit)
スピンカラムにaRNAを結合させる
a.反応液を全量(32μl)、1.5mlチューブに移す。
b.112μlの融解&結合緩衝液(G6)を各反応液に加え、ピペット操作で2〜3回混合する。
c.112μの室温の100%ETOHを加え、ピペット操作で5〜6回混合する。
d.すぐにスピンカラムに負荷する。
e.8000gで30秒遠心。
f.フロースルーを捨て、回収のためにカラムを戻す。
スピンカラムの洗浄
a.400〜500μの洗浄緩衝液(G17+ETOH)の各スピンカラムに加える。
b.8000gで30秒間遠心する。
c.フロースルーを捨て、カラムをコレクションチューブに戻す。
d.200μlの洗浄緩衝液(G17+ETOH)を各スピンカラムに加える。
e.11000gで1分間遠心する。
f.フロースルーを捨て、カラムをコレクションチューブに戻す。
g.11000gで2分間遠心する(前回の遠心時の位置から180度回転させる)。
スピンカラムからのaRNAの溶出
a.スピンカラムを新しい溶出チューブに移す。
b.40μl(40μg以下の場合、40μgを越える場合は80μl)のH2Oをカラムに加える。
c.室温に2分間置く。
d.8000gで1分間遠心する。
e.aRNAを−80oCで保存する。
標識したアンチセンスRNAの濃度を、Nanodrop分光光度計(Thermo SCIENTIFIC)で測定した。合計で750ngの標識したアンチセンスRNAを、実験プロトコールの項で説明したように製造業者によるプロトコールに従って、IlluminaヒトHT−12BeadChip(Illumina)の12枚のサンプルチップにハイブリダイズさせた(Illumina全ゲノム遺伝子発現ダイレクトハイブリダイゼーションアッセイ)。
ハイブリダイズさせたBeadChipを洗浄し、iScan(Illumina)を使い、製造業者の標準的なプロトコールに従ってスキャンした。イメージファイルをGenomeStudioソフトウェア(Illumina)で処理して、バックグランドの補正と正規化を行った。試料プローブの発現ファイルを、GeneSpringソフトウェア(Agilent)でさらに解析するために、GeneSpringの形式でエクスポートした。発現データをGeneSpringで、その指針となる手順に従って解析し、指針となる手順に従った解析中の群間の倍率変化および統計分析を算出した。
これらのプロトコールを実施した後、同定したWnt/β−カテニン応答遺伝子から、β−カテニンsiRNAの非存在下で、Wnt3aで処理した試料とwnt3aで処理した試料とを比較した場合に、その発現レベルがWnt3aによる刺激によって有意に(調節したP値<=0.05)変化した遺伝子を選択した。また、これらのWnt3aで刺激された遺伝子に及ぼすβ−カテニンsiRNAの効果に基づき、つまり、Wnt3aで刺激された発現が、siRNAを導入後、少なくとも1/1.3に低下した遺伝子をさらに選択した。Wnt3a処理とsiRNA処理との間でその発現の変化の方向性が一貫していない遺伝子を除去した後、64種類の遺伝子をWnt/β−カテニン応答遺伝子として選択した。
このデータは、図6に示すエクセルのワークシート中に含まれている。
Wnt/β−カテニン遺伝子発現シグネチャーの同定
これら64種類のWnt/β−カテニン応答遺伝子をリアルタイムPCRで確認するために、SYBRグリーンを利用したリアルタイムPCRアッセイを個々の遺伝子それぞれについて設計した。図5A〜Bに、全プライマーの配列情報を含めた。
これら64種類の遺伝子の発現を試験するために、20個の試料を使用した。β−カテニンsiRNAで処理したヒト結腸癌HCT116、および構成的に活性型のβ−カテニンを保持しているSW480細胞、ならびにWnt3a処理存在下でβ−カテニンsiRNAを導入した293H細胞(マイクロアレイ実験で使用した試料と同じ試料)を含む8個の試料では、Wnt/β−カテニン経路の活性は負に調節されていた。一方、Wnt3aで刺激した10個の試料と、Wnt/β−カテニン経路活性を活性化させることが知られている化合物のLiCl(Sigma)で処理した2個の試料を含む12個の試料では、それらのWnt/β−カテニン経路の活性は正に調節されていた。
β−カテニンsiRNAを、HCT116、SW480、293H、U373MG、MCF7、HT29、LncapおよびHepG2細胞にリバーストランスフェクションした。6ウェルプレートのそれぞれのウェルにつき、6μlのSureFECT形質転換試薬(SABiosciences、a QIAGEN Company)を200μlのOptiMEM培地(Invitrogen)で希釈した。希釈した形質転換試薬を40nMのβ−カテニン標的siRNA二本鎖A(GCAGTTCGCCTTCACTATGGA(配列番号79))または標的指向化されていない対照のsiRNA(ACACTAAGTACGTCGTATTAC(配列番号80))(SABiosciences、a QIAGEN Company)のいずれかと混合した。β−カテニンsiRNAまたは非標的siRNAの形質転換マスターミックスをそれぞれ4ウェル分準備した。室温で20分間インキュベートした後、200μlの形質転換混合液を、8枚の6ウェルプレートに加えた。6ウェルプレートはそれぞれ、HCT116、SW480、293H、U373MG、MCF7、HT29、LncapおよびHepG2などの細胞株用である。それぞれのプレートの内、2つのウェルにはβ−カテニンsiRNA混合液を、もう2つのウェルには非標的siRNA混合液を加えた。これら2種類2つずつのウェルはそれぞれ、タンパク質抽出およびRNA単離用に準備した。20分間のインキュベート時間の間に、別の細胞株をトリプシンで処理し、プレートから洗浄し、その後8mlの培地(10%のFBSを添加したMeCoyの5A培地)中に再懸濁して、細胞数を血球計算板を使って計測した。
細胞を培地で希釈し、1ml当たり6×10個の濃度とした。各ウェルにつき、2mlの細胞(1.2×10個)を、6−ウェルプレートの200μlの形質転換混合液の上にプレーティングし、プレートをよく混合した。細胞培養プレートをインキュベーターに戻し、72時間37℃で5%CO2を供給しながらインキュベートした。72時間インキュベートした後、細胞を、タンパク質溶解抽出用に50μlの改変RTPA緩衝液で溶解するか、あるいはRNAの単離用に200μlの溶解G6緩衝液で溶解した。タンパク質の抽出とウェスタンブロットは、実験プロトコールの項のウェスタンブロットのプロトコールに従って、マウス抗活性型β−カテニン(1:1000)とマウス抗β−カテニン(1:2000)抗体を使って行った。活性型β−カテニンおよび全β−カテニン両方のβ−カテニンタンパク質レベルの減少によって、β−カテニンsiRNAの効果を確認した(図3Aを参照のこと)。RNAは、SABiosciencesのRT2 qPCR−Grade RNA Isolation Kitを使い、実験プロトコールの項で説明したように製造業者によるプロトコールに従って単離した。
Wnt3a処理によって正に調節される10個の試料を得るために、10種類の異なる細胞株を、2×10細胞/ウェル/2mlの密度で6−ウェルプレートにプレーティングした。プレーティングの24時間後、通常の培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄し、各ウェル当たり1mlの血清を含まない培地で置き換えることで、細胞を血清を含まない培地に入れ替えた。血清を含まない培地に入れて12時間後、細胞を400ng/mlのWnt3aを入れたまたは入れていない、血清を含まない培地で置き換え、さらに12時間インキュベートした。この時、同じように調製したウェルを2つ用意した。12時間のインキュベーションの終了時に、細胞をタンパク質溶解抽出用に50μlの改変RTPA緩衝液で、またはRNAの単離用に200μlのG6溶解緩衝液で溶解した。タンパク質の抽出とウェスタンブロットは、マウス抗活性型β−カテニン(1:1000)を使ったウェスタンブロットのプロトコールに従って行った。活性型β−カテニンタンパク質レベルの上昇によって、Wnt3aの効果を確認した(図3Bを参照のこと)。RNAは、SABiosciencesのRT2 qPCR−Grade RNA Isolation Kitを使い、実験プロトコールの項で説明したように製造業者によるプロトコールに従って単離した。
LiCl処理を用いた正の調節には、293HおよびCCD1079SK細胞を2×10細胞/ウェル/2mlの密度で6−ウェルプレートにプレーティングし、プレーティングの24時間後に血清を含まない培地に入れ替えた。血清を含まない培地中で12時間インキュベートした後、20μΜのLiClを入れたまたは入れていない、血清を含まない培地中で細胞を処理した。処理の終了時点で、細胞を200μlのG6溶解緩衝液で溶解し、SABiosciencesのRT2 qPCR−Grade RNA Isolation Kitを使用して、実験プロトコールの項で説明した、製造業者によるプロトコールに従って、RNAを単離した。タンパク質の抽出とウェスタンブロットは、マウス抗活性型β−カテニン抗体(1:1000)を使ったウェスタンブロットのプロトコールに従って行った。LiClの効果を、活性型β−カテニンタンパク質レベルの上昇によって確認した(図3Bを参照のこと)。SABiosciencesのRT2 qPCR−Grade RNA Isolation Kitを使用して、実験プロトコールの項で説明した製造業者によるプロトコールに従って、RNAを単離した。
上述した3つの陰性試料および8つの陽性試料について、64Wnt/β−カテニン応答遺伝子をSYBRグリーンを利用したリアルタイムPCRで確認するために、1μgのトータルRNAを、RT2 First Strand cDNA synthesis kit(SABiosciences、a QIAGEN company)を使い、実験プロトコール項の製造業者によるプロトコールに従って、逆転写した。20μlの逆転写反応液を200μlの水で希釈した。各リアルタイムPCR反応液に、1μlの希釈したcDNAと、5μlのSYBRグリーンPCRマスターミックス、および各反応液が指定された最終量である10μlになるように、4μlの水とを混合した。リアルタイムPCR90反応分のマスターミックスを各試料ごとに調製し、384−ウェルプレートの各ウェルに10μlずつ加えた。各試料につき、72種類の異なるPCRアッセイ(64種類のWnt/β−カテニン応答遺伝子と8種類のハウスキーピング遺伝子)に対応する72反応を72のウェルに入れ、384−ウェルプレートにはそれぞれ、4個の試料の反応を負荷した(72×4ウェル)。384−ウェルプレートを、ABI 7900リアルタイムPCR装置(Applied Biosystems)を使ったSYBRグリーンを利用したリアルタイムPCRプログラムにかけた。プログラムは、95℃で10分、次いで95℃で15秒と60℃で1分を40サイクルとし、その後融解曲線解析を行った。
リアルタイムPCRの後、ΔΔCt統計分析法を使用して、データを解析した。各試料中の8種類のハウスキーピング遺伝子のCt値の平均を、その試料に関するハウスキーピング遺伝子のCt値として計算した。同じ試料の個々のアッセイのCt値からハウスキーピングCt値を引くことで、ΔCtを計算した。さらに、各アッセイの対照試料のΔCt値を、対応する処理試料のΔCt値から引くことで、ΔΔCt値を導き出した。NSC分類器方法(Proc Natl Acad Sci USA. 2002 May 14;99(10):6567−72)を使用して、8種類の陰性試料と12種類の陽性試料のΔΔCt値を解析した。陽性試料と陰性試料を区別する遺伝子発現シグネチャーとして、16種類の遺伝子を同定した(図4B)。これら16種類の遺伝子とその受入番号を以下の表に挙げる。
サポートベクターマシン分類法を使ったクロス確認により、これら20個の試料について、得られた16遺伝子シグネチャーの有用性を確認した。記載した方法を使った場合、20試料のうちの20個が、この16遺伝子シグネチャーで正しく分類された(図4Aを参照のこと)。
実験プロトコール
細胞培養および化学薬品
培地は全て、Invitrogenから購入し、それぞれの細胞株はATCCから購入した。293H、HepG2、U373MG、U105MG、MDA−MB415およびMDA−MB−231細胞は、DMEM培地に10%のFBS、1mMのナトリウムピルビン酸塩および非必須アミノ酸(Invitrogen)を加えたものの中で培養した。CCD1079SK、BJ、IMR90、MCF7細胞は、10%FBSを添加したMEM培地で培養した。Lncap細胞は、10%FBSを添加したRPMI1640培地で培養した。HT29、HCT116、SW480およびSK−BR−3は、10%FBSを添加したMcCoyの5A改変培地で培養した。細胞は全て、細胞培養インキュベーター中37℃で、5%CO2を供給しながら培養した。実験で使用した化学薬品は全て、他の供給源からのものであることが示されない限り、Sigmaからのものを使用した。
細胞の溶解およびウェスタンブロットのプロトコール
実験処理の終了時点で、細胞を改変RIPA緩衝液(150mMのNaCl、50mMのTrisHCl、1%のIGEPAL、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、1mMのEDTA、1%のTritonX−100および0.1%のSDS、並びにプロテアーゼおよびホスファターゼ阻害剤)(化学薬品は全てSigmaから)中で溶解した。6−ウェルプレートの各ウェルの細胞培地を吸引し、1mlのPBSで洗浄した。50μlの改変RIPA緩衝液をそれぞれのウェルに加え、細胞をウェルから掻き取って改変RTPA緩衝液に溶解した。細胞溶解物を1.5mlの微量遠心管に移し、氷上で30分間インキュベートした。15000rpm、4℃で15分間遠心した後、上清を新しい1.5mlチューブに移し、タンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイを使って、製造業者の標準的なプロトコール(Pierce)に従って測定した。細胞溶解物を30μlのH20で希釈してタンパク質濃度を2μg/μlとし、30μlの2×SDS試料緩衝液(BioRAD)と混合して最終濃度を1μg/μlとした。希釈した溶解物を70℃で10分間加熱してタンパク質を変性させた。加熱後、溶解物を15000rpmで1分間遠心し、成形済みの4〜12% NuPAGE Novex Bis−Tris Miniゲル(Invitrogen)に、1ウェル当たり15μlの溶解物を負荷した。ゲルを、150Vの定電圧で1.5時間泳動し、その後、製造業者によるプロトコールに従って(Invitrogen)、30Vの定電圧で、2時間、ニトロセルロース膜に移した。ニトロセルロース膜をウェスタンブロット洗浄緩衝液(0.1%のTween−20を添加した1×PBS)に溶解した5%ミルク中で1時間、室温でブロッキングした。それぞれの膜に、マウス抗活性型β−カテニン一次抗体(1:1000)(Millipore)、マウス抗β−カテニン一次抗体(1:2000)(BD Transduction lab)およびウサギ抗GAPDH一次抗体(1:2000)(ABcam)を加え、さらに4℃で一晩インキュベートした。翌日、膜を4℃から取り出し、室温でさらに30分間インキュベートし、その後ウェスタンブロット洗浄緩衝液で3回、それぞれ5分間ずつ洗浄した。膜にヤギ抗マウス二次抗体(1:4000)およびヤギ抗ウサギ二次抗体(1:4000)(Sigma)を加えて1時間室温でインキュベートした。膜をウェスタンブロット洗浄緩衝液で3回、5分間ずつ洗浄した。膜状のタンパク質のバンドを検出するために、混合しておいたウェスタンブロット基質(0.75mlの過酸化水素溶液と0.75mlのluminolエンハンサー溶液を混合したもの)(Thermo SCIENTIFIC)をそれぞれの膜に加え、膜全体を覆うように、室温で1分インキュベートした。膜を、Fuji画像化装置LAS−3000(Fuji Film)で2分間、化学発光用フィルターを使って露光した。Wnt3aの効果は、未処理試料と比較した場合に、Wnt3aで処理した試料では、活性型β−カテニンのタンパク質レベルが上昇することによって示された。β−カテニンsiRNAの効果は、標的指向化されてないsiRNAを導入した試料と比較して、β−カテニンsiRNAを導入した試料では、活性型β−カテニンと全β−カテニンのタンパク質レベルが低下することによって示された。
SABiosciencesのRT qPCR−Grade RNA Isolation Kitを使ったトータルRNA単離のプロトコール
6−ウェルプレート中で生育させた細胞をRNA単離用に回収するために、細胞培地を除去し、200μlの溶解緩衝液G6をそれぞれのウェルに加えた。細胞をプレートから掻き取り、溶解物を1.5mlの微量遠心管に移し、その後すぐにRNAを単離するか、−80℃で保存して、後からRNAを単離した。RNAを単離するため、1容量(200μl)の70%エタノールを溶解物に加え、ピペット操作で6回混合した。混合した試料を2mlのコレクションチューブ中に入れたスピンカラムに加えて11,000×gで1分間遠心した。カラムに350μlの脱塩緩衝液G15を加え、11,000×gで1分間遠心することで洗浄した。100μlのDNAse処理溶液(10μlのRNaseを含まないDNaseを90μlのDNase反応緩衝液と混合したもの)をそれぞれのスピンカラムに加え、室温で15分間インキュベートした。予洗浄緩衝液(G16、200μl)をスピンカラムに加え、11,000×gで1分間遠心した。洗浄緩衝液G17(600μl)をスピンカラムに加え、11,000×gで1分間遠心して、スピンカラムの膜を洗浄した。新たに250μlの緩衝液G17をこのスピンカラムに加え、11,000×gで3分間遠心してスピンカラムの膜を洗浄した。スピンカラムを新しい1.5mlのコレクションチューブに入れ、30μlのRNaseを含まない水をスピンカラムの膜に直接加えた。スピンカラムを室温に2分間置き、11,000×gで1分間遠心してRNAを溶出した。
QIAGEN RNeasy Plus Mini Kitを使用したトータルRNAの単離
6−ウェルプレート中で生育させた細胞をRNA単離用に回収するために、細胞培地を除去し、200μlのRNeasy Plus緩衝液をそれぞれのウェルに加えた。細胞をプレートから掻き取り、溶解物を1.5mlの微量遠心管に移し、その後すぐにRNAを単離するか、−80℃で保存して、後からRNAを単離した。RNAを単離するため、均一化した溶解物を、2mlのコレクションチューブに入れたgDNA Eliminatorスピンカラムに移した。≧8000×g(≧10,000rpm)で30秒間遠心する。カラムを捨て、フロースルーを取っておく。1容量(200μl)の70%エタノールをフロースルーに加え、ピペット操作で6回混合した。混合した試料を、2mlのコレクションチューブに入れたRNeasyスピンカラムに加え、≧8000×g(≧10,000rpm)で1分遠心した。カラムに700μlの緩衝液RWlを入れて≧8000×g(≧10,000rpm)で1分遠心することによって洗浄した。緩衝液RPE(500μl)をRNeasyスピンカラムに加え、≧8000×g(≧10,000rpm)で1分遠心することによって、スピンカラムの膜を洗浄した。さらに500μlの緩衝液RPEをRNeasyスピンカラムに加え、≧8000×g(≧10,000rpm)で2分遠心することによって、スピンカラムの膜を洗浄した。RNeasyスピンカラムを新しい2mlのコレクションチューブに入れ、最大速度で1分間遠心した。RNeasyスピンカラムを新しい1.5mlのコレクションチューブに移し、30μlのRNaseを含まない水をスピンカラムの膜に直接加えた。スピンカラムを室温に2分間置き、≧8000×g(≧10,000rpm)で1分間遠心して、RNAを溶出した。
RT EZ First Strand Kit(SABiosciences、 a QIAGEN company)を使用した、逆転写のプロトコール
300〜1000ngのトータルRNAを、RNaseを含まないH2Oで8μlに希釈し、6μlのGE2(ゲノムDNA除去)緩衝液と混合した。反応液を37℃で5分間インキュベートし、すぐに氷上に1分間置いた。6μlのBC5(RTマスターミックス)を、それぞれ14μ1のゲノムDNA除去混合液に加え、最終容量を20μlとした。反応液を42℃で正確に15分間インキュベートし、すぐに95℃で5分間加熱することによって反応を停止させた。37℃、42℃および95℃でのインキュベーションは、サーマルサークラーであるGenAmp PCR System 2700(Applied Systems)を使用して行った。反応を終了したものは、リアルタイムPCRにすぐに使用する場合には氷中に置き、長期間保存する場合には−20℃に置いた。
RT First Strand Kit(SABiosciences、 a QIAGEN company)を使用した逆転写のプロトコール
300〜1000ngのトータルRNAを、RNaseを含まないH2Oで8μlに希釈し、2μlのGE(ゲノムDNA除去)緩衝液と混合した。反応液を42℃で5分間インキュベートし、すぐに氷上に1分間置いた。10μlのRTカクテル(4μlのBC3、1μlのP2、2μlのRE3および3μlのH2O)を、それぞれ10μ1のゲノムDNA除去混合液に加え、最終容量を20μlとした。反応液を42℃で正確に15分間インキュベートし、すぐに95℃で5分間加熱することによって反応を停止させた。42℃および95℃でのインキュベーションは、サーマルサークラーであるGenAmp PCR System 2700(Applied Systems)を使用して行った。反応を終了したものは、リアルタイムPCRにすぐに使用する場合には氷中に置き、長期間保存する場合には−20℃に置いた。
IlluminaヒトHT−12 BeadChipのプロトコール
以下に示すように、再懸濁したcRNA試料をBeadChip上に分配し、Illuminaハイブリダイゼーションオーブン中で16〜24時間インキュベートし、試料をBeadChipにハイブリダイズさせた。ハイブリダイゼーションは、HYB(10μl)、HCB(400μl)、およびcRNA(750ng/5μl;この容量にするためにRNaseを含まない水を加えるか、あるいは試料を乾燥させた)を使用して行った。オーブン(回転振とう台を備えている)は予め58℃に加熱しておいた。試料を室温(およそ22°C)に10分間置いて、cRNAを再懸濁させた。HYBのチューブとHCBのチューブを58℃のオーブン中に10分間置いて、保存中に沈殿する可能性のある塩を全て溶解させた。塩が溶け残っていた場合には、さらに10分間、58℃でインキュベートした。室温まで冷却した後、HYBのチューブとHCBのチューブは、使用する前にしっかりと混合した。10μlのHYBを各cRNA試料に加えた。IlluminaのHybチャンバーのガスケットをBeadChip Hybチャンバーに設置した。200μlのHCBを、調製済みのBeadChipの隣にある、湿潤緩衝液貯蔵容器に分配した。Hybチャンバーを蓋で密閉し、BeadChipをHybチャンバーに負荷するまで、実験台の上に室温で保存した。全てのBeadChipを包装から取り出した。BeadChipをカバーシールのつまみをピンセットでつまむか、あるいは粉末のない手袋でつかむかして持ち、BeadChipのバーコードがHybチャンバーのインサート上のバーコード記号と整列するように、Hybチャンバーのインサートに滑り込ませた。アッセイ試料を予め65℃で5分間加熱しておき、短時間ボルテックスし、その後短時間遠心して、液体をチューブの底に集めた。使用する前に室温まで冷却した。室温まで冷めたらすぐに試料をピペッティングした。BeadChipの入ったHybチャンバーのインサートを、Hybチャンバーに乗せた。アッセイ試料(15μl)を各アレイのラージサンプルポートに分配した。Hybチャンバーのインサートが外れないように注意して、蓋でHybチャンバーを密閉し、回転振とう台の速度を5にし、58℃で16〜20時間インキュベートした。一晩ハイブリダイゼーションした後、BeadChipを取り出して、高温洗浄用緩衝液(500ml)、洗浄用E1BC(2L)、ブロッキング用El緩衝液(6ml/チップ)、ストレプトアビジン−Cy3ストック(1mg/mlの濃度でRNaseを含まない水に溶解したもの。チップ1枚当たり2μl)、および100%エタノール(250ml)で洗浄し、染色した。1×の高温洗浄用緩衝液は、50mlの10×ストックを450mlのRNaseを含まない水に加えることで調製した。水浴のインサートをヒートブロックに入れ、調製した500mlの1×高温洗浄用緩衝液を加えた。ヒートブロックの温度を55℃に設定し、高温洗浄用緩衝液をその温度まで予熱した。ヒートブロックの蓋を閉めて一晩放置した。翌日、6mlのE1BC緩衝液を2LのRNaseを含まない水に加えて、洗浄用のE1BC溶液を調製した。ブロッキング用El緩衝液(4ml/チップ)を室温に予熱した。ブロッキング用E1緩衝液(2ml/チップ)をストレプトアビジン−Cy3(チップ1枚当たり、1mg/mlストックを2μl)と共に調製した。チップ全ての分を1本の円錐チューブの中で調製し、検出工程まで暗所で保存した。1Lの希釈した洗浄用E1BC緩衝液をパイレックスの3140型ビーカーに入れた。Hybチャンバーをオーブンから取り出し、ばらばらにした(全部を一度に)。以下の工程で説明するように、全てのBeadChipを第一チャンバー内で処理した。その後第二チャンバーをオーブンから取り出し、そのBeadChipを処理した。同様に全てのチャンバーを処理した。粉末が付いていない手袋をした手でBeadChipを全てHybチャンバーから出し、表面が上になるようにして、ビーカーの底に沈め、BeadChip全体が緩衝液中に沈んでいるように注意しながら、カバーシールを第一のBeadChipから取った。ピンセットを使うかまたは粉末の付いていない手袋をした手で、カバーシールを取ったそれぞれのBeadChipを、250mlの洗浄用E1BC溶液の入った染色皿に沈められているスライドラックに移した。250mlの洗浄用E1BC溶液は、後の1回目の室温洗浄で再利用するので取っておく。スライドラックの取っ手をつかんで、ラックを、高温洗浄用の高温洗浄用緩衝液が入ったHybex Waterbathインサートに移した。Hybexの蓋を閉め、試料を静止状態で10分間インキュベートした。高温洗浄緩衝液の10分間のインキュベーションが完了したらすぐに、シールをはがす工程で使用した洗浄用E1BCを入れた染色皿にスライドラックを戻し、ラックごと短時間撹拌し、その後、回転振とう器を使用して、溶液が皿から飛び散らない最も早い速度で、5分間振とうした。次いでラックを、250mlの100%エタノール(エタノールのビンから出した新しいエタノールを使用した)の入ったきれいな染色皿に移し、ラックの取っ手をつかんで短時間撹拌し、その後、回転振とう器で10分間振とうした。ラックを、新しい250mlの洗浄用E1BC溶液の入ったきれいな染色皿に移し、ラックの取っ手をつかんで短時間撹拌し、回転振とう器で2分間振とうした。4mlのブロッキング用E1緩衝液を洗浄トレイにピペットで入れ、表面が上になるようにBeadChipを、振とう台の上に乗せたBeadChip洗浄トレイに移し、中速で10分間振とうした。2mlのブロッキング用E1緩衝液にストレプトアビジン−Cy3を加えたものを、新しい洗浄トレイにピペットで加え、表面が上になるようにBeadChipを振とう台の上に乗せたBeadChip洗浄トレイに移し、蓋をトレイの上に乗せ、中速で10分間振とうした。250mlの洗浄用E1BC溶液をきれいな染色皿に入れ、BeadChipを染色皿に沈めたスライドラックに移し、ラックごと短時間撹拌し、その後、回転振とう器上で5分間、室温で振とうした。遠心機にプレートホルダーとペーパータオル、およびバランス用のラックを準備し、速度を275rfc(相対遠心力)に設定した。BeadChipのラックを、室温で4分間遠心した。スライドラックを1つだけ処理した場合には、遠心機の釣り合いを取るために、BeadChipを2つのラックに入れるか、あるいは使用したBeadChipと同じ数のBeadChipを入れた別のラックを使用した。乾燥させたチップをスライドボックスに入れ、スキャンするまで保存した。
実験データ
上述した実験のデータは、図2A〜C、3A〜Bおよび4A〜Bに含まれている。
本発明を詳細に説明してきたが、本発明は、特許請求の範囲に基づいてさらに説明される。

Claims (28)

  1. CALM1、CCND1、CCND2、CHSY1、CXADR、CYP4V2、FAM44B、HSPA12A、LEF1、MTP18、MYC、NAV2、SKP2、PRMT6、MTSS1およびMT1Aまたはそれらのオルソログもしくは変異体からなる群より選択される、少なくとも5種類の遺伝子を増幅し、前記検出を提供する配列を含む、細胞試料または対象におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の調節状態を検出するための試料の増幅解析を実施するためのマイクロアレイ組成物。
  2. 前記増幅された遺伝子が、NM_006888.4、NM_053056.2、NM_001759.3、NM_0i4918.3、NM_001338.4、NM_207352.3、NM_138369.2、NM_025015.2、NM_016269.4、NM_016498.4、NM_002467.4、NM_145117.4、NM_005983.3、NM_018137.2、NM_014751.4、およびNM_005946.2からなる群より選択される受託番号を有する遺伝子と少なくとも90%同一の、またはこれらの遺伝子と特異的にハイブリダイズする、前記マイクロアレイ組成物。
  3. CALM1、CCND1、CCND2、CHSY1、CXADR、CYP4V2、FAM44B、HSPA12A、LEF1、MTP18、MYC、NAV2、SKP2、PRMT6、MTSS1およびMT1Aからなる群より選択される、少なくとも10種類の遺伝子を増幅し、前記検出を提供する配列を含む、細胞試料または対象におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の前記調節状態を検出するための試料の増幅解析を実施するための、請求項1のマイクロアレイ組成物。
  4. 1〜10種類のハウスキーピング遺伝子に対応する配列をさらに含む、請求項1のマイクロアレイ組成物。
  5. CALM1、CCND1、CCND2、CHSY1、CXADR、CYP4V2、FAM44B、HSPA12A、LEF1、MTP18、MYC、NAV2、SKP2、PRMT6、MTSS1およびMT1Aからなる群より選択される少なくとも10〜15種類の遺伝子を増幅し、前記検出を提供する配列を含む、細胞試料または対象におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の前記調節状態を検出するための試料の増幅解析を実施するための、請求項1のマイクロアレイ組成物。
  6. CALM1、CCND1、CCND2、CHSY1、CXADR、CYP4V2、FAM44B、HSPA12A、LEF1、MTP18、MYC、NAV2、SKP2、PRMT6、MTSS1およびMT1Aからなる群より選択される、16種類全ての遺伝子を増幅し、前記検出を提供する配列を含む、細胞試料または対象におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の前記調節状態を検出するための試料の増幅解析を実施するための、請求項1のマイクロアレイ組成物。
  7. リアルタイムPCR増幅を実施するための、請求項1のマイクロアレイ組成物。
  8. SYBRグリーン法による検出を伴うリアルタイムPCR増幅を実施するための、請求項1のマイクロアレイ組成物。
  9. ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、鎖置換増幅(SDA)、LAMP法(loop−mediated isothermal amplification)、RCA法(rolling circle amplification)、TMA法(transcription−mediated amplification)、自家持続配列複製法(self−sustained sequence replication、3SR)、NASBA法(nucleic acid sequence based amplification)、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を含む方法によって増幅を実施するための、請求項1のマイクロアレイ組成物。
  10. SYBRグリーン法またはMNAザイム法によって検出を実施するための、請求項1のマイクロアレイ組成物。
  11. 細胞試料または対象におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の前記調節状態を決定するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載のアレイの使用方法。
  12. 前記増幅アレイを行った後、ウェブを利用した解析ツールでデータを解析する、請求項11の方法。
  13. このツールが、対照試料と比較して、前記標的におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の前記調節状態を決定するのに使用される数を提供する、請求項12の方法。
  14. CALM1、CCND1、CCND2、CHSY1、CXADR、CYP4V2、FAM44B、HSPA12A、LEF1、MTP18、MYC、NAV2、SKP2、PRMT6、MTSS1およびMT1Aからなる群より選択される1つまたは複数の遺伝子の発現を、対照細胞試料からの同じ遺伝子の発現に対して検出・比較する工程、およびこの比較に基づいて細胞試料または対象における前記Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路の前記調節状態を決定する工程を含む、細胞試料または対象におけるWnt/β−カテニンシグナル伝達経路の前記調節状態を決定する方法。
  15. 遺伝子発現をリアルタイム増幅によってアッセイする、請求項14の方法。
  16. 前記検出方法がSYBRグリーンを利用したリアルタイムPCRを含む、請求項15の方法。
  17. 前記遺伝子発現データをサポートベクターマシン法によって解析する、請求項14の方法。
  18. 対照試料および処理試料について、全16種類の遺伝子とハウスキーピング遺伝子の前記発現値を測定し、次いでΔΔCtを計算し、およびこれら前記16種類の遺伝子のΔΔCt値を、経路活性の観点から見て負に調節されている試料および正に調節されている試料を含むデータプール中のこれら16種類の遺伝子のΔΔCt値と比較する、請求項17の方法。
  19. 細胞試料が、Wnt/β−カテニンシグナル伝達をモジュレートする化合物による治療を受ける可能性のある患者から得られるものであり、かつ、前記方法が治療プロトコールを評価するのに使用される、請求項14の方法。
  20. 細胞試料が、Wnt/β−カテニンシグナル伝達をモジュレートする化合物による治療を受けた患者から得られるものであり、かつ、前記方法が前記治療プロトコールの効力を評価するのに使用される、請求項14の方法。
  21. 試料におけるWnt/β−カテニン経路の調節解除状態を評価するために使用される、請求項14の方法。
  22. Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路が調節解除されているか、またはWnt/β−カテニンシグナル伝達経路が調節されているかで細胞試料を分類するために使用される、請求項14の方法。
  23. 薬剤が試料における前記Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートするか否かを決定するために使用される、請求項14の方法。
  24. 前記Wnt/β−カテニンシグナル伝達経路をモジュレートする薬剤に対する対象の前記反応を予測するために使用される、請求項14の方法。
  25. 対象に治療を割り当てるために使用される、請求項24の方法。
  26. Wnt/β−カテニン経路シグナル伝達を調節するために設計された治療の前記薬力学的効果を評価するために使用される、請求項14の方法。
  27. Wnt/β−カテニン経路の調節解除によって特徴付けられる癌を同定するために使用される、請求項14の方法。
  28. 前記癌が、結腸直腸癌、黒色腫、乳癌および肝細胞腫から選択される、請求項14の方法。
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