JP2014505886A - 検体を検出する装置の製造方法と、その装置及びその装置の使用方法 - Google Patents

検体を検出する装置の製造方法と、その装置及びその装置の使用方法 Download PDF

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Abstract

a)絶縁性の基板上に電極の機能を有する第一の導体路を配置する工程と、b)この導体路の上に第一の不活性化層を配置する工程と、c)この不活性化層を局所的に画定された形で開口して、導体路を局所的に画定された形で露出させる工程と、d)この開口部内において、導体路上に犠牲層を配置する工程と、e)この犠牲層の上に、一つの電極を配置する工程と、f)第二の導体路を第一の導体路に対して直交して配置し、第二の導体路を電極と接触させる工程と、g)電極及び第二の導体路の上に第二の不活性化層を配置する工程と、h)第二の不活性化層と電極を開口して、犠牲層を露出させる工程と、i)犠牲層を除去する工程とを有する、検体を検出する装置の製造方法を開示している。それに対応して構成された装置とその使用方法も同様に開示している。

Description

本発明は、検体を検出する装置を製造する方法、その装置及びその装置の使用方法に関する。
多くの物質は、電気化学的に検出することができる。その場合、基準電極を用いて、計測すべき物質の中の一つ以上を含む溶液に所定の電位を印加する。更に、最も簡単な場合、別の電極を追加して、その電極で検出を行なうことができる。その電極が検体を酸化又は還元させるのに適した電位を印加された場合、その電極で反応が起こる。その場合、検体が電極の表面で酸化又は還元されて、その電極で測定可能な電流が発生する。その電流は、転移した分子の数に比例して、試料内の分子の濃度を正確に推定することが可能である。
それに関して周知の例は、臨床血糖計測に用いられるグルコース・オキシターゼ試験である。その試験では、バイオリアクター内で、酵素を用いてグルコースをグルコース・オキシターゼと触媒反応させて、グルコノラクトンと過酸化水素に転移させている。この過酸化水素の濃度は、電気化学的に測定することができる。その濃度は、グルコースの濃度に比例するので、グルコースの成分を正確に計測することができる。
しかし、その方法は、多くの試験で使用されて成功しているにも関わらず、より広い応用分野での使用を妨げる幾つかの方法上の欠点を有する。一方において、電極の電流が、そのためセンサーの感度が、電極への検体の大量の移動によって常に制限されている。測定している間に、電極表面の既に反応済みの検体分子が、拡散して試料の本来の分子と置き換わる。そのようなプロセスは、通常電極での反応として非常にゆっくりと進行するので、電極での電流を制限し、そのためセンサーの感度をも制限している。他方において、センサーは、所定の程度にまでしか小型化することができない。電極表面が小さくなる程、そこで反応する分子が少なくなる。従って、その方法は、ラブオンチップに限ってしか使用できない。更に、専用の導体路によって各センサーとの接触を行わなければならないので、これらのセンサーのチップ上での集積密度は制限されている。
これらの問題は、(以下において、酸化還元サイクル手法とも略称する)検体を交互に還元及び酸化させる方法によって、部分的に解決することができる。そのアプローチでは、第一の電極の直ぐ近くに置かれた第二の電極が前述した測定構造に追加されている。測定している間に、一方の電極が酸化電位を印加され、他方の電極が還元電極を印加される。そのようにして、個々の分子が電極で繰り返し反応して、検体の濃度に比例して推移する一定の電流を電極の間に発生させる。その電流は、最早電極への本来の検体の大量の移動によって制限されず、電極の間の検体の拡散速度によってのみ制限される。そのようにして、電極の間隔がナノメートル範囲で小さい場合、感度を数桁向上できる。その方法及びセンサーは、非特許文献1に記載されている。更に、電気化学的に検出可能な全ての分子が繰り返される酸化還元反応に関与できる訳ではないので、酸化還元サイクル式センサーは、高い選択性を示す。しかし、例えば、ドーパミン、アドレナリン、セロトニンなどの多くの神経刺激伝達物質は、この検出方法に適している。
非特許文献2により、酸化還元サイクルによって検体を検出する装置の製造方法が周知である。SiOの基板上に、チタン、プラチナ及びクロムを重ねて析出させた第一の電極を配置した後、厚いクロムの犠牲層を積み重ねて、その上にクロム、プラチナ及びチタンを重ねて析出させた第二の電極を配置している。その第二の電極は、エッチング液が厚いクロムの犠牲層に到達できるように開口される。前記のチタンとクロムの層は、基板又は不活性化部に電極を固着させる役割を果たす。
犠牲層を除去した後、一つの空洞内に二つの電極が重ねて配置された、酸化還元サイクルに必要な構成が得られる。これらの電極は、それぞれ導体路と接触面を備えており、互いに平行な方向を向いている。そのようにして、29個までの空洞がバイオチップに配置されて、基準電極に対する切り換えが行なわれる。この検出方法は、マイクロ流体アクセスによりPDMSから底部電極及び上部電極に検体を誘導して、試験電極に対して電圧を印加した後電圧を変化させることによって検出するものと規定している。この方法は、複数のセンサーを備えたセンサー領域を製造するために使用することができる。
このようにして製造されたセンサー機器は、実現可能な最大空間分解能に関して限界が有ることが欠点である。多くの測定機器を必要とするので、高い空間分解能での検体の電気化学的な検出は不可能である。データを並行して収集する場合、各センサーを二つの電極から構成して、別個の測定機器で読み出さなければならない。それは、画素数が多くなる程コストを上昇させ、測定機器の構造を著しく難しくする。それに対して、データを順番に収集する場合、確かに少ない測定機器しか必要でないが、各センサーを別個に好適なスイッチと接続しなければならず、そのため、同様に負担のかかる読出機器が必要となる。
別の欠点は、センサーの空間分解能を決める、チップ上でのセンサーの集積密度である。前述した酸化還元サイクル式装置では、導体路の数のために、空間分解能を向上させることは不可能である。センサー毎に二つの導体路が必要なので、センサーマトリックスが大きくなると、低い空間分解能しか実現できない。従って、高い分解能は、大幅に低減した画素数でしか実現できない。
リン氏などにより、それぞれ二つの電極から成る電極構造を格子模様に配置することが知られている。しかし、そこに記載された方法により非特許文献1と2による装置を構成する試みは、成功していない。
B. Wolfrum, M. Zevenbergen, und S. Lemay, "Nanofluidic Redox Cycling Amplification for the Selective Detection of Catechol", Analytical Chemistry, Bd. 80, Nr. 4, S. 972−977, Feb. 2008 E. Kautelhoen, B. Hofmann, S. G. Lemay, M. A. G. Zevenbergen, A. Offenhaeusser, und B. Wolfrum, (2010). Nanocavity Redox Cycling Sensors for the Detection of Dopamine Fluctuations in Microfluidic Gradients. Analytical Chemistry, 82, 8502−8509
以上のことから、本発明の課題は、高い空間分解能及び感度による検体の検出に成功した装置の製造方法を提供することである。
更に、本発明の課題は、その方法に対応して構成された、高い空間分解能及び感度による検体の検出が可能な装置を提供することである。本発明の別の課題は、その装置の有利な使用方法を提示することである。
本課題は、請求項1に記載の方法と二つの副請求項に記載の装置及び装置の使用方法によって解決される。それらに関する有利な実施形態は、それぞれ従属請求項から明らかとなる。
本発明による検体を検出する装置の製造方法は、次の工程を有する。
a)絶縁性の基板上に、電極の機能を有する第一の導体路を配置する。この導体路は、正しくは直線形状で基板上に配置される。この導体路は、有利には、金、プラチナ及びそれらと同等の物などの材料から構成される。当然のことながら、多くの第一の導体路を同時に配置することができる。本発明の有利な実施形態では、この第一の導体路と、場合によっては、その下及びその上に配置された、第一の導体路を基板及び不活性化部に固定するための固着層とは、後で配置する犠牲層を除去した場合に取り除かれない材料から構成される。この犠牲層をエッチングによって除去する場合、第一の導体路は、犠牲層と比べてエッチングできない材料から構成される。
b)この導体路の上に、薄い第一の不活性化層を配置する、即ち、この導体路を不活性化する。その結果、この導体路は、最早自由にアクセスできる表面を持たず、不活性化部によって完全に覆われる。有利には、それと同時に、基板も一緒に不活性化する。センサーを構成した場合、不活性化部の位置において、有利には、垂直又は水平方向の電荷輸送が起こらない。有利には、不活性化部によって、導体路を筐体で包むことができる。導体路は、導電性の材料から構成され、更に、その場所に析出される電極と共にセンサーを構成するので、この工程によって、基板上に多くのセンサーを形成した場合に、一つの導体路とそれに隣接する導体路に沿った個々のセンサーが互いに接触しないことが保証される。各導体路には、多くのセンサーが形成されるので、有利には、単一の導体路に沿って、そこに形成されたセンサー又は空洞が決して互いに接触しないとの作用も得られる。第一の不活性化部は、特に有利には、後で配置される犠牲層を除去した場合に取り除かれない材料から構成される。この犠牲層をエッチングによって除去する場合、この不活性化部は、犠牲層と比べてエッチングできない材料から構成される。
c)次に、不活性化層は、例えば、エッチングによって、相応に構成されたマスクを用いて局所的に画定された形で、例えば、点状に開口され、その結果、導体路が、局所的に画定された形で、例えば、点状に露出される。そのために、リソグラフィ方法を使用することができる。
d)次に、その開口部内において、導体路上に犠牲層を配置する。この犠牲層は、後で電極の間にナノレベルの空洞を構成するために必要である。この犠牲層は、有利には、エッチングすることが可能であり、例えば、クロム又はそれ以外のエッチング可能な材料から構成される。
e)開口部を閉鎖するために、この犠牲層の上に、例えば、同じく金から成る電極を配置する。この電極の役割は、犠牲層の上の第一の導体路の対向する部分と共にセンサーを構成することである。第一の導体路が、金、プラチナなどから成る材料を選択されているために、常に電極の機能を有するので、電極と第一の導体路の間でセンサーを構成できることが保証される。工程c)〜e)は、特に有利には、単一のリソグラフィ工程で実行され、そのため、第一の導体路上での犠牲層と電極の位置が完璧に揃った形態がセンサーの位置に実現される。それに代わって、本方法の工程e)とf)も、同じマスクを用いて、単一のリソグラフィ工程で実行することができる。
f)次に、電極上において、第二の導体路を第一の導体路に対して直交して配置し、有利には、この第二の導体路は、電極の周縁部とのみ接触する。この導体路は、有利には、リソグラフィ手法で析出されて、電極の位置に開口部を有する。電極と導体路は、工程e)とf)を分離した形で互いに別個に析出される。それによって、有利には、電極と犠牲層を同じマスクを用いて、単一のリソグラフィ工程で析出できるとの作用が得られる。本発明の有利な実施形態では、第二の導体路と、場合によっては、その下及び上に配置された、第二の導体路を第一の不活性化層及びその後に配置される第二の不活性化部と固定するための固着層とは、犠牲層を除去した場合に取り除かれない材料から構成される。犠牲層をエッチングによって除去する場合、第二の導体路は、犠牲層と比べてエッチングできない材料から構成される。
g)次に、第二の不活性化層が、電極と第二の導体路の上に配置され、有利には、第一の不活性化層の上にも配置される。第二の不活性化の意義と目的は、第一の不活性化と同じである。この不活性化は、特に、基板と層構造全体の上に全面に渡って行なわれる。
h)第二の不活性化層と電極は、少なくとも一つの位置を開口され、そのため、電極の下に配置された犠牲層が露出する。それによって、センサーのための少なくとも一つの孔が出来上がり、そこを通して、検体がセンサー電極に到達することができる。
i)次に、犠牲層を除去する。それによって、ナノレベルの空洞が出来上がる。
当然のことながら、工程a)〜i)は、複数回順番又は同時に実行できる。例えば、多数の第一の導体路をそれぞれ基板上に互いに並行して同時に配置するとともに、多数の電極を同時に配置することができる。同じことが、例えば、第二の導体路の配置などの本方法のそれ以外の工程にも言える。そのようにして、第一と第二の導体路の各交差点に、二つの電極がナノレベルの空洞を形成するセンサーから成る格子模様のセンサー領域が構成される。
特に有利には、第一の導体路上の第一の不活性化層は、犠牲層を除去している間に取り除かれない。それによって、専ら第一の導体路と第二の導体路の間の交差点の領域に空洞が形成される。
本発明によるセンサーの製作に関して、新しい形式の製造プロセスが採用されている。非特許文献1と2は、クロムから成る固着層を用いて、固着させる層に導体路を固定する製造プロセスを記載している。それは、クロムの犠牲層と共に固着層を除去するとともに、固着層で覆われていない、所望の材料から成る電極を維持するために必要である。
本発明の範囲内において、そのような犠牲層のエッチング工程は不正確にしか制御できないことが分かった。非特許文献1と2の場合、製造中に、ナノレベルの空洞からそれと隣接する空洞に繋がるナノレベルの通路が導体路の上又は下に生じることが欠点である。チェス盤構造では、個々の隣り合うセンサーの間に、そのような直接的な接続部が生じると、その結果、高い空間分解能の測定が不可能となる。そのため、本発明では、工程b)を請求項1に追加した。この不活性化によって、ナノレベルの空洞を互いに分離することが可能である。
その作用は、有利には、非特許文献1と2による従来技術などのクロム製の固着層をも不要とし、そのため、例えば、チタン製の固着層を用いて、全ての導体路を基板と不活性化部に固定できることである。後で犠牲層を除去する場合に、導体路が、不活性化部と同様に浸食されない状態で残る。
即ち、交差点に析出させた(上部)電極とその交差点における第一の導体路の部分の間には、検体の酸化還元反応のために使用される電極の対(センサー)が構成されることとなる。この隙間Sを有するナノレベルの空洞は、孔を通してしか外からアクセスできないので、検体は、そこに上方から入り込んで(図面を参照)、電極に拡散することによって、二つの電極の何れに正又は負の電圧を印加するのかに応じて、順番に還元及び酸化させることができる。
本方法は、有利には、エッチング可能な犠牲層を選択することを特徴とする。湿式化学方式でも乾式化学方式でもエッチングすることができる。
特に有利には、工程c)〜e)は、一つのマスクだけを用いて、単一のリソグラフィ工程で実行される。それは、第一の導体路の上の犠牲層と電極の位置を正確に合わせることを保証する。それによって、電極とそれに対向する第一の導体路の部分の上下方向の位置を正確に整合させて、それにより検体を検出するためのセンサーを構成することを保証している。
それに代わって、同じマスクを用いて単一のリソグラフィ工程で工程e)とf)を実行することもできる。
特に有利には、第二の不活性化層と電極の開口作業が、六角形に配置した孔によって行なわれる。そのために、当業者は、一方における(孔を形成する場合に上部電極の材料が取り除かれるので)センサー面の維持と、他方における検体用のナノレベルの空洞へのアクセス可能性とを慎重に検討する。直径がナノメートルレベル(例えば、250nmまで)の複数の小さい孔は、検出すべき検体が孔を通って電極の間の隙間Sに良好に拡散できることと、それらと比べて非常に大きい(例えば、直径が100μmまでの)電極面を維持すると同時に、検体を順番に酸化還元反応させることによる検出が確実に実施されることとが保証される。特に有利には、複数の孔は、センサーの応答時間を短縮する。
更に、有利には、複数の孔は、例えば、神経刺激伝達物質を拡散させた場合に、それによって局所的に分布したニューロンにより如何なることが期待できるかなどの、測定用交差点の近くの検体濃度の速い変化に関するセンサーの応答動作を改善する。この場合には、検体によるセンサーの極端に短い暴露しか起こらず、電極の間のナノレベルの空洞内に実際に存在する検体分子しか検出できないので、この場合のセンサー応答レベルは、特に、ナノレベルの空洞に対する開口部の隙間の長さによって決まる。即ち、多くの小さい開口部により隙間の開口部を著しく局所的に長くすることは、基本的に短い正の濃度変化を検出するのに有利である。
検体を検出する装置は、互いに直交して延びる少なくとも二つの導体路の間の交差点に、導体路の間に検体を収容するための閉じたナノレベルの空洞を配置しており、このナノレベルの空洞を形成する隙間Sの上と下における第一と第二の導体路の二つの対向する領域が、一つのセンサー用の電極を構成し、このセンサーが、これらの電極で検体を順番に酸化及び還元させることによって、検体の検出を可能とすることを特徴とする。これらの電極は、第二の導体路と同じ材料から構成されるとともに、その導体路と同じ面内に配置される。このナノレベルの空洞は、工程h)で形成された開口部の方から見て、別の出入口を持たないので、閉じている。これらのナノレベルの空洞は、特に、別のナノレベルの空洞との横方向の接続部を持たない。ナノレベルの空洞の間の接続は、センサーの入口(孔)を介してのみ行なうことができる。これらの導体路は、有利には、交差点を除いて不活性化される。
本発明の実施形態では、本装置には、多数の互いに直交して配置された導体路の多数の交差点が配置されている。各交差点には、二つの直交する導体路の間で一つのナノレベルの空洞が形成される。隣り合うナノレベルの空洞の間には、センサーの入口(孔)自体以外を介した接続部、特に、検体を拡散させるための接続部は存在しない。そのことは、有利には、各ナノレベルの空洞とそれを取り囲む導体路の部分が閉じた検出用センサーシステムを構成するので、センサー領域の高い空間分解能が得られる。また、個々の各センサーの感度は、酸化還元サイクルによって保証される。
このようにして、特に有利には、100μmの基板面に約6個のセンサーを配置することができる。リン氏などによる従来技術と比較すると、従来技術では、各センサーが約60,000μmの面を占めることを指摘したい。
導体路の交差点において、それぞれ測定が行なわれ、その際、酸化還元サイクルの作用を活用している。測定プロセスの間、個々の交差点での信号は、任意選択により順番に、或いは列単位で読み取ることができる。
順番にデータを収集する場合、それぞれ二つの互いに直交する導体路が酸化及び還元用電圧を印加される一方、それ以外の全ての電極は、理想的にはスイッチオンされないか、或いは電極の間に酸化還元サイクルを起こさない電圧が印加される。即ち、酸化還元サイクルは、正確に一つの交差点において起こり、それに対応する二つの動作電極の中の一方における酸化還元サイクルの電流を読み取ることができる。測定の間、酸化還元サイクルの電流の外に、ナノレベルの空洞では、動作電極に沿ってファラデー電流も発生する。しかし、酸化還元サイクルの効果によって電気化学的な信号が大きく増幅されるために、その電流は、酸化還元サイクルの信号と比べて無視できる。
列単位で並行してデータを収集する場合、複数の平行な電極Aが、それぞれ酸化又は還元用電圧を印加される一方、それに対して直交する電極Bは、それと逆の還元又は酸化用電圧を印加される。その際、それ以外の全ての電極は、スイッチオンされないか、或いは酸化還元サイクルを起こさない電圧が印加される。即ち、電極AとBの全ての交差点において、酸化還元サイクルが同時に起こる。そして、電極Aにおける酸化還元サイクルの電流を並行して測定することができ、それに対して、電極Bには、電極Aの酸化還元電流の合計が流れる。
本装置の有利な使用方法は、検体として神経刺激伝達物質を検出することである。
本装置は、前述した通り不活性化されるので、生体適合性をも有する。本装置の表面にタンパク質を塗布することによって、本装置の上で直接神経細胞を培養することができる。そこに分布する神経刺激伝達物質は、リアルタイムに検出される。
更に、実施例に基づき本発明を詳しく説明するが、それによって、本発明は制約されない。
本発明による製造方法
基板1上に金製の第一の導体路2を析出させた後、SiO製の薄い不活性化部3を成膜する(図1a)。その不活性化部は、リアクティブイオンエッチングによって、第一の導体路2と第二の導体路6のその後の交差点の所で開口される(図1b)。そして、同じ構造化工程において、その開口部にクロム製の犠牲層4と電極材料の金から成る薄い層5とを析出させる。次に、上方の導体路6と別の不活性化層7を成膜する。これらの別の第二の不活性化部と電極は、リアクティブイオンエッチングを用いて、下方の導体路との交差点の所を開口され(図1g)、そのため、クロム製の犠牲層4を湿式化学方式により除去することが可能となる(図1h)。これらの導体路は、(図示されていない)チタン製の固着層で固定されているので、そのようなエッチング工程によって、異なる交差点の間にナノレベルの空洞は生じない。
第一と第二の導体路の間に形成される交差点と同数のセンサーを有する格子模様のセンサー領域を作り出すためには、これらの工程を多数回順番に、或いは同時に実施すれば良いことが分かる。
詳細な説明:
単一の交差点を形成するための製造プロセスが、図1に例示されている。その図面では、平面図がそれぞれ左に、断面図がそれぞれ右に図示されている。点線は、断面の位置を示している。
光学式リソグラフィとリフトオフ手法を用いて、下方の導体路2(幅B:1〜100μm、ここでは5μm、厚さ:30nm〜1μm、ここでは、例えば、150nm)の析出が行なわれる。そのために、酸化物のウェーハ1上に、先ずは(図示されていない)チタンから成る固着層を5μmの幅と7nmの厚さで析出させる。その上に、金の層2を配置する(図1a)。
図1bは、PE−CVD法を用いて、薄い不活性化部3を析出させることを図示している。その厚さは、50nm〜2μmとすることができ、この実施例では、400nmで成膜した。
図1bは、その後の交差点の所における、この不活性化部3の開口部も図示している。この開口部の直径は、0.8〜80μmとして、リアクティブイオンエッチングによって実現することができる。ここでは、4μmの直径で加工した。
次に、クロム製の犠牲層4の析出が、この開口部内に直接行なわれる(図1c)。その厚さは、10nm〜1μmとすることができ、ここでは、50nmである。この層4は、開口部と同じ直径を有し、又もや光学式リソグラフィとリフトオフ手法を用いて実現される。
次に、光学式リソグラフィとリフトオフ手法を用いて、クロムから成る犠牲層4の上に直に薄い上部電極5を析出させる。この電極5の厚さは、10〜10nmであり、ここでは、30nmである。この電極は、犠牲層4と同じ直径を有する。
図1b(開口部の形成)、1c(犠牲層の配置)及び1d(上部電極5の配置)の工程を一回のリソグラフィ及びリフトオフ工程だけで実施するのが有効である。それによって、確かにリフトオフ手法が少し難しくなるが、導体路2上における犠牲層4と電極5の位置が全く正確に合致することが保証される。
次の工程では、光学式リソグラフィとリフトオフ手法を用いた、例えば、1〜100μm、ここでは、5μmの幅と30nm〜1μm、ここでは、150nmの厚さの上方の導体路6の析出が行なわれる。この上方の導体路は、上部の薄い電極5が配置された位置に孔を有する、即ち、その位置には析出させない。上部電極5の周縁部には、それとの接触を可能とするために、1〜5μmの重なり合う部分を設けなければならない(図1e)。上方の第二の導体路6の上には、そこに図示されている通り、既に有る下方の第一の導体路2と同様に、チタンの層を析出させる。この層によって、その後の不活性化部7に金の層6を固着させることが可能となる。
この場合、不活性化部7(図1f)は、PE−CVD法を用いて配備される。その厚さは、50nm〜2μmとすることができ、この実施例では、800nmのSiOを析出させた。
次に、例えば、ここでは、開口部の直径が10nm〜20μmの7個の開口部8を六角形の内部に詰め込んだ形で、リアクティブイオンエッチングによる光学式リソグラフィ手法に基づく不活性化部7と金製の電極5の開口作業が行なわれる。この実施例では、これらの孔を電子線リソグラフィ手法により構成した。これらの孔は、交差点におけるセンサー2,5の大きさに合致している。それによって形成された孔は、有利には、センサー間の内部通路を介して横方向にではなく、その孔の経路に沿って、検体をセンサーの電極に進入させることを可能にしている。
同様に、開口部8のこれ以外の構成も可能である。開口部8の構成は、センサーの応答時間と効率に影響を与える。上部電極5と比べて多数の密に設けられた小さい孔8は、単一の小さい孔8と異なり、速い分散によって、センサーの応答時間を改善する。それにより、より速い測定が可能となる。そのためには、上部電極5の材料を除去することにより、センサーの面が減少するので、酸化還元サイクルの効率が少し低下する。同様に、単一の大きな孔8も応答時間を改善するが、交差点での電極の実効的な面5,2が小さくなるので、酸化還元サイクルの増幅度を低下させる。
最後の工程において、クロム製の犠牲層4の湿式化学方式によるエッチングが行なわれる。
完成したセンサーが、図1hに図示されている。隙間Sは、開口された上部電極5とそれに対向する下方の導体路2の部分の間におけるナノレベルの空洞の幅を表している。これらの両方の部分が、一緒になって導体路2と6の交差点においてセンサーを構成している。金製の導体路をクロムにより固着した場合(非特許文献1と2を参照)、エッチングの間に、別の通路が層構造内に形成されるとともに、その位置にナノレベルの空洞が開口されていた。それは、検体の拡散による隣り合うナノレベルの空洞の漏れを引き起こしていた。そして、空間分解能が損なわれていた。
1μmの厚さのSiO製の不活性化層を備えた100mmのSiウェーハが基板1としての役割を果たしている。この厚さは、副次的な役割を果たす。十分な絶縁が得られるように、厚さを選定すべきある。導体路2,6は、電子線蒸着法を用いて成膜されるとともに、リフトオフ手法を用いて構造化される。
この場合、次の手順で行なわれる。ラッカーLOR3b(登録商標)の3,000回転/分での回転塗布と180°Cでの5分間の加熱板上における硬化とが行なわれる。次に、ラッカーnLof2020(登録商標)の3,000回転/分での回転塗布と115°Cでの90秒間の加熱板上における硬化とが行なわれる。マスクアライナー内のマスクを通した露光が行なわれる。MIF326(登録商標)内での45秒間のラッカーの成長が行なわれる。金属層のリフトオフがアセトンにより行なわれる。
この手順は、複数回実施されて、連続した層を析出させる。下方の第一の導体路は、固着層としての7nmのチタン上における150nmの金で構成される。上方の第二の導体路は、7nmのチタン、150nmの金及び又もや7nmのチタンで構成される。
SiO及び/又はSiから成る不活性化部は、PE−CVD法により析出されて、50〜800nmの厚さを有する。次に、この不活性化部は、ラッカーAZ5214(登録商標)と次の手順によるリアクティブイオンエッチングによって構造化される。ラッカーAZ5214(登録商標)の4,000回転/分での回転塗布と90°Cでの5分間の加熱板上における硬化とが行なわれる。それを露光する。次に、MIF326(登録商標)内での60秒間のラッカーの成長と、200W、20ml/sのCHF、20ml/sのCF及び1ml/sのOによるリアクティブイオンエッチングが行なわれる。
図1b〜dの工程では、不活性化部の開口作業及びアセトンによるクロム製の犠牲層4と上部電極5のリフトオフのために、このラッカーが使用される。これらは、それぞれ50nm(クロム)と20nm(金)の厚さを有する。
クロム製の犠牲層4は、クロムエッチング(登録商標)溶液を用いた湿式化学方式により除去される。それに対して、センサー領域は、そのエッチング溶液を用いて約30分間被覆され、それに続き水で洗浄される。

Claims (12)

  1. 検体を検出する装置の製造方法において、
    a)絶縁性の基板(1)上に、電極の機能を有する第一の導体路(2)を配置する工程と、
    b)この導体路の上に、第一の不活性化層(3)を配置する工程と、
    c)この不活性化層を局所的に画定された形で開口して、導体路(2)を局所的に画定された形で露出させる工程と、
    d)この開口部内において、導体路上に犠牲層(4)を配置する工程と、
    e)この犠牲層の上に、一つの電極(5)を配置する工程と、
    f)第二の導体路(6)を第一の導体路(2)に対して直交して配置し、第二の導体路(6)を電極(5)と接触させる工程と、
    g)電極及び第二の導体路の上に第二の不活性化層(7)を配置する工程と、
    h)第二の不活性化層(7)と電極(5)を開口して、犠牲層(4)を露出させる工程と、
    i)犠牲層(4)を除去する工程と、
    を有する方法。
  2. エッチング可能な犠牲層を選定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 工程c)、d)及びe)を同じマスクを用いて単一のリソグラフィ工程で実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 工程e)とf)を同じマスクを用いて単一のリソグラフィ工程で実施することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  5. 第二の不活性化層と電極の開口作業を六角形内に配列された孔(8)により行なうことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の方法。
  6. 工程i)において、犠牲層(4)だけを除去することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の方法。
  7. 工程b)において、基板をも不活性化させることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の方法。
  8. 工程g)において、第二の不活性化層(7)を第一の不活性化層(3)の上にも配置することを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の方法。
  9. 検体を検出する装置において、
    少なくとも二つの互いに直交して延びる導体路(2,6)の間の交差点には、これらの導体路の間に検体を収容するナノレベルの空洞が配置され、このナノレベルの空洞を構成する隙間Sの上方と下方における第一の導体路と第二の導体路の二つの対向する領域が、一つのセンサーを構成する電極を形成し、このセンサーは、これらの電極で検体を順番に酸化及び還元させることによって検体を検出することが可能である装置。
  10. 多数の交差点が、多数の互いに直交して配置された導体路によって形成され、各交差点では、電極と導体路の間にナノレベルの空洞が形成されるとともに、隣り合うナノレベルの空洞の間を接続する部分が存在しないことを特徴とする請求項9に記載の装置。
  11. 100μmの面の上に、6個までのセンサーが配置されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の装置。
  12. 請求項9から11までのいずれか一つに記載の装置の使用方法において、
    検体として神経刺激伝達物質を検出するために使用することを特徴とする使用方法。
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