JP2014501540A - 抗微生物コーティング摺動表面を持つ人工関節部品 - Google Patents

Abstract

本発明は人工関節の人工関節部品に関する。人工関節部品（１１，２３）は、摺動表面（１９，２４）を持ち、これは他の人工関節部品（１１，２３）の相手側摺動表面（２６）と共に摺動関節を形成するように設計されている。本発明によれば、前記摺動表面（１９，２４）は摺動表面コーティング（２０）により形成され、これは前記人工関節部品（１０，２２）の本体上に適用され、前記摺動表面コーティング（２０）は抗菌性を示す。本発明による前記摺動表面コーティング（２０）は、前記摺動関節の領域で抗微生物性を示す。

Description

本発明は人工関節部品に関する。前記人工関節部品は、相手側摺動表面を持つ摺動関節を形成するように適合される摺動表面を含む。相手側の摺動表面は、他の人工関節部品の表面又は前記関節及び／又は軟組織の骨の対向支持物であり得る。

人工関節の人体への移植は通常、身体が合併症を起こさずに人工関節を受け入れなければならないという問題点を有する。合併症はしばしば、表面に細菌が繁殖した後いわゆるバイオフィルムにより起こり、移植状態でも同様である。リスクは、移植状態で身体組織と直接触れる人工関節の表面だけでなく、むしろ他の人工関節部品と協働させることが意図される表面の領域から生じることが見られる。これらの表面領域には、特に人工関節摺動部品の表面であって、これは他の人工関節部品と協働して自然関節の機能を再現するものである。この領域での表面バイオフィルムは、身体の防御機構の制御を大きく超える。かかる摺動表面から周辺部に微生物を放出し続けるというリスクがある。微生物が摺動表面から周辺部に拡散する傾向は、さらに、前記摺動表面が常に移動の対象であるという事実により強められる。

人工関節の摺動表面は、前記表面の他の領域よりも全体に異なるレベルの負荷の対象となる。相対的な動きが関節内に生じると、機能する際に人体のほぼ全重量と加速力が人工関節の摺動表面にかかる。この状態で微生物の拡散を防止することは難しい。

欧州特許第２０３６５１７号明細書

本発明は、体内に受容し、合併症を生じることを抑制する人工関節部品を提供することを目的とする。

この目的は請求項の構成により達成される。本発明によれば、人工関節部品は、抗菌活性を持つ摺動表面コーティングされている。有利な実施態様は従属請求項に記載される。

第１に用語の説明を行う。抗菌活性でのコーティングは、微生物の生存又は再生能力を低減させることができることを意味する。これは一般的には、抗菌活性が前記コーティングから放出される材料で達成される。

人工関節の摺動関節は、第１の人工関節部品の摺動表面、及び第２の人工関節部品の関連する相手側の摺動表面により形成される。動きの際に、前記摺動表面と相手側の摺動表面との接触は、前記摺動表面の表面領域の変更を含み得る。用語、摺動表面とは、人工関節の関節の動きに際して前記相手側の摺動表面と接触することとなる全ての表面領域を含む。

本体にコーティングを提供する場合、追加の材料が前記本体に添加される。完全に新たに添加される材料からなる層は、前記本体の表面上となる。本発明による前記コーティングはまた、前記摺動表面以外の人工関節部品の表面領域へ適用されることも除外されない。しかし、しばしば、他の表面領域は、なんらのコーティングもされず、前記摺動表面のみがコーティングされることとなる。

本発明のコーティングにより、抗菌性が前記摺動表面の領域に導入され、従って、身体防御系が近づけない領域内にも導入されることとなる。前記摺動表面の領域での抗菌性がないと、微生物はこれらの領域に接着し、何度も再生を繰り返すということとなる。本発明による抗菌性コーティングは微生物に対して作用し、合併症のリスクを防止する。

人工関節の表面上への抗菌性コーティングは知られている（欧州特許第２０３６５１７号参照）。しかしこれらは、ほとんど機械的負荷の対象とならない人工関節の表面領域についてのコーティングを意図したものである。

抗菌剤、特に身体での使用に好適な抗菌剤は銀である。銀粒子はコーティングから放出され、前記コーティング表面に接着した微生物へ非常に有効である。銀粒子が微生物に合わずに前記コーティングから拡散する場合、これは体内電解質中で塩化銀（ＡｇＣｌ）を形成し、この形で体外へ排泄される。銀は、従って、他の体細胞に悪影響を与えない。前記摺動表面コーティングは従って、好ましくは銀を含む。銀は好ましくは、摺動表面コーティングから別々の銀イオンの形で放出される。

人工関節の摺動表面は高いレベルの機械的負荷の対象とされる。摺動表面の高い負荷耐性容量は、摺動表面コーティングが硬質材料コーティングにより達成される。好ましくは、摺動表面コーティングは耐火系窒化物、酸窒化物又は酸化物を含む。有利には、摺動表面コーティングはまた、前記コーティングから放出される銀を含む。耐火金属は、４、５及び６族であり、高融点を持つ。これらには、４族のチタン、ジルコニウム及びハフニウム、５族のバナジウム、ニオブ及びタンタル、及び６族のクロム、モリブデン及びタングステンを含む。チタン、ジルコニウム、ニオブ及びタンタルは耐火金属である、特に内部人工関節部品（ｅｎｄｏｐｒｏｓｔｈｅｓｉｓ ｃｏｍｐｏｎｅｎｔｓ）をコーティングするために好適である。前記耐火金属からのイオンが反応性ガスとして酸素及び／又は窒素と組み合わされる際に形成されるこれらの化合物は、耐火金属系窒化物、酸窒化物又は酸化物と参照される。これらの化合物は非常大きな硬度を持つものとして識別される。前記摺動表面コーティングがさらに銀を含む場合、前記耐火金属及び反応性ガスのみならず、さらに前記窒化物、酸窒化物又は酸化物の形成に含まれる銀イオンを含む。銀イオンは得られるコーティング内に導入される。

硬質材料コーティング含有銀により、抗菌性は銀含有量が増加すると増加する。前記コーティングが高い抗菌性に主に焦点をあわせるように設計される場合は、約２５重量％含有率が前記硬質材料コーティング内の銀につき選択される。しかし、機械的負荷耐性容量は銀を含まない硬質材料に比べると明らかに低減される。本発明の目的のために、銀の重量比率を低下させることは、従って、硬質材料コーティングで選択されるべきことである。重量分率は、好ましくは２％から１５％、より好ましくは３％と１０％の間である。かかる低い銀含有量でも、機械的負荷耐性容量と抗菌性の優れた両立が達成される。

摺動表面コーティングは、銀が主に、大きな粒子の形でなく、個別の銀イオンの形で放出される。個別の銀イオンは、摺動表面間で、摺動表面にひっかき効果を与えることなく作用し得る。

人工関節部品の本体は金属又は合金からなる。チタン又はチタン合金が特に好適な材料である。

本発明による摺動表面は、例えば、ＰＶＤプロセス（物理的蒸着）の手段により人工関節部品の本体に適用され得る。このために、ターゲットは、後にコーティングを形成することとなる材料を溶解するために準備される。前記耐火金属及び銀の両方を含む単一のターゲットが準備され得る。しかし、同様にいくつかのターゲットを準備することも可能であり、この場合第１のターゲットが耐火金属を含み、第２のターゲットが銀を含む。

前記イオンを溶解するために、例えば電極と前記ターゲット間に電気アークを生成させ、これにより前記ターゲットの局所限定方法でイオンが溶解する十分な電力を供給する。ターゲットに十分な電力を極所的に与える他の方法は、ターゲットに直接レーザービームを照射することである。これに代えて、非常に高価となるが、電力供給のために電子ビームを使用することも可能である。

遊離イオンは、人工関節部品の本体上に導かれる。このために、電圧が、前記ターゲットと本体の間に適用され、イオンが本体へ加速されることとなる。ターゲットと本体を含む反応容器は、例えば酸素又は窒素又は酸素と窒素の混合ガスなどの反応性ガスを含む。耐火金属のイオンは、銀及び／又は銅イオン同様に反応性ガスと反応する。本発明による摺動表面コーティングは、前記本体の表面で起こる反応の結果として形成される。前記反応は真空下、好ましくは高真空下で生じる。

前記コーティングが、摺動表面以外の人工関節部品の領域で蓄積されることを防止するために、これらの表面領域はコーティング処理の間マスクされ得る。これらの表面領域は、例えば温度安定性材料でカバーされ得る。プラズマコーティング処理の際の条件に耐える任意の材料が温度安定性材料として用いられ得る。温度安定性材料はまた、特に金属である。

摺動表面と相手側の摺動表面との間の動きの際にひっかき合うことを最小限にするために、摺動表面はできるだけ滑らかであるべきである。摺動表面の平均粗度Ｒａは、ＤＩＮ ＥＮ ＩＳＯ４２８８及び３２７４で測定され、好ましくは０.０５μｍ未満である。

本発明はさらに、本発明により設計される第１の人工関節部品と第２の人工関節部品前を持つ人工関節に関する。前記第２の人工関節部品は、前記第１の人工関節部品の摺動表面と共に摺動関節を形成する相手側の摺動表面を含む。

本発明は以下、有利な実施態様により、添付図面を参照してさらに説明される。

図１は、本発明による人工股関節を示す。 図２は、図１の拡大詳細図である。 図３は、本発明による人工膝関節を示す。

図１に示される人工股関節は、大腿骨部品１０と寛骨臼部品１１を含む。大腿骨部品１０は軸１２を含み、これは大腿骨１３の髄腔空間内に挿入される。軸１２は人工関節首部１４が続き、これは関節頭部１５内への継続部分を形成する。寛骨臼部品１１は股関節骨１６内に挿入され、そこでこれは天然の寛骨臼に置換される。寛骨臼部品１１は金属シェル１７及び高密度ポリエチレンからなるインサート１８を含む。

移植される際には、前記関節頭部１５は前記ポリエチレンインサート１８内にあり、前記関節頭部１５は前記ポリエチレンインサート１８と共に摺動関節を形成する。前記関節頭部１５の表面は従って、摺動表面１９として、ポリエチレンインサート１８の相手側摺動表面２６と協働する。前記摺動表面の平均粗度は０．０３μｍ未満である。

大腿骨部品１０はチタン合金からなる。図２に拡大して示されるように、摺動表面コーティング２０は前記摺動表面１９の領域内で前記関節頭部１５に適用される。前記摺動表面コーティング２０は、ＰＶＤプロセス手段で製造され、厚さは約３μｍである。前記摺動表面コーティング２０は、銀原子２１を含むチタン窒化物からなり、ここで銀原子は寸法通りには描かれていない。前記摺動表面コーティング２０では、銀原子は約５重量％までの含有率である。

銀は、摺動表面コーティング２０に、大きな粒子としてよりは個別の原子として含まれる。人工関節の使用の際に、個別の銀イオンは摺動表面コーティング２０から溶解する。銀イオンは前記摺動関節の領域で抗菌性を発揮する。個別の銀イオンは、非常に小さいのでポリエチレンインサート１８にはひっかき効果を持たない。

図３は、本発明による摺動表面を持つ人工膝関節を示す。膝関節は大腿骨部品１１及び脛骨部品２３を持つ。大腿骨部品２２の摺動表面２４が、脛骨部品２３のポリエチレンインサート２５と協働し、天然膝関節の機能を再現する膝関節を形成する。

大腿骨部品２２及び脛骨部品２３は、従来のクロムコバルト合金からなる。図２に示される抗菌性摺動表面コーティング２０は、大腿骨部品２２の摺動表面に適用される。

図３の人工膝関節では、前記ポリエチレンインサート２５上にあるのは、常に摺動表面２４の小さい表面領域のみである。それぞれの表面領域は、膝関節の動きの状態に依存して変化する。前記摺動表面コーティング２０は、摺動表面２４全体、即ち前記ポリエチレンインサート２５に接触し得る全ての表面領域全体に広がる。前記摺動表面コーティング２０から拡散する銀イオンは、それに付着する微生物に対して抗菌作用を持つ。

Claims (9)

1. 人工関節部品であり、前記部品が、他の人工関節部品の相手側の摺動表面又は前記関節及び／又は軟組織の前記骨対向支持部と共に摺動関節を形成するように適合される摺動表面を含み、前記摺動表面が、前記人工関節を部品の本体に供された摺動表面コーティングにより形成され、及び前記摺動表面が抗菌性を持つ、ことを特徴とする、人工関節部品。
2. 請求項１に記載の人工関節部品であり、前記摺動表面コーティングが銀を含むことを特徴とする、人工関節部品。
3. 請求項１又は２のいずれか一項に記載の人工関節部品であり、前記摺動表面コーティングが耐火金属系窒化物、酸地窒化物又は酸化物を含むことを特徴とする、人工関節部品。
4. 請求項３に記載の人工関節部品であり、前記耐火金属がチタンであることを特徴とする、人工関節部品。
5. 請求項３又は４のいずれか一項に記載の人工関節部品であり、前記銀が、２重量％から１５重量％、好ましくは３重量％から１０重量％の含有量で前記摺動表面コーティングに含まれることを特徴とする、人工関節部品。
6. 請求項３乃至５のいずれか一項に記載の人工関節部品であり、前記摺動表面コーティングが、０．５μｍから５μｍの間の厚さを持つことを特徴とする、人工関節部品。
7. 請求項３乃至６のいずれか一項に記載の人工関節部品であり、前記摺動表面コーティングがＰＶＤプロセスの手段で得られ得ることを特徴とする、人工関節部品。
8. 請求項１乃至６のいずれか一項に記載の人工関節部品であり、前記摺動表面の平均粗度が０．０５μｍ未満であることを特徴とする、人工関節部品。
9. 請求項１乃至８のいずれか一項に記載の第１の人工関節部品と、相手側摺動表面を持つ第２の人工関節部品とを持つ人工関節であり、前記第１の人工関節部品の摺動表面が、前記第２の人工関節部品の相手側摺動表面と共に摺動関節を形成する、人工関節。
   

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