JP2014241484A - 量子誤り訂正方法、量子誤り訂正装置、および、量子情報格納装置 - Google Patents

量子誤り訂正方法、量子誤り訂正装置、および、量子情報格納装置 Download PDF

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Abstract

【課題】量子誤り訂正方法の提供。【解決手段】格子構造の辺上のデータ量子ビットの誤りを訂正する方法であって、同構造の頂点の第1Zエラー用量子ビットにZエラーシンドロームを準備するステップと、Zエラーシンドロームを第2Zエラー用量子ビットにコピーするステップと、Zエラーシンドローム依存のハミルトニアン下で第2Zエラー用量子ビットおよび冷却用量子ビットを冷却するステップと、冷却用量子ビットの量子状態をデータ量子ビットにフィードバックするステップと、同構造の面心の第1Xエラー用量子ビットにXエラーシンドロームを準備するステップと、Xエラーシンドロームを第2Xエラー用量子ビットにコピーするステップと、Xエラーシンドローム依存のハミルトニアン下で第2Xエラー用量子ビットおよび冷却用量子ビットを冷却するステップと、冷却用量子ビットの量子状態をデータ量子ビットにフィードバックするステップと、を有する方法。【選択図】図4

Description

技術分野は、量子情報格納技術に関し、特に、量子ビットが担う量子情報の誤りを訂正するための技術に関する。
量子情報処理にとって、信頼性の高い情報ストレージは非常に重要であり、これを達成する標準的なアプローチは、量子誤り訂正と呼ばれる手法を用いることである(非特許文献1)。
量子誤り訂正の手順は一般的に、まず、それぞれの量子ビットを選択的に射影測定することから始まる。そして、その膨大な数の測定結果を古典コンピュータで処理する。最後に、処理結果に基づいてそれぞれの量子ビットへと選択的にフィードバック操作をする。このようにして、量子情報に誤りが起きる前の状態へと戻すことにより、量子ビット系で増大しようとするエントロピーを減少させることができる。この一連の流れを連続して繰り返すことで、大規模な量子情報を外部ノイズから長時間守ることができる。
量子誤り訂正技術にもとづいて、さまざまな誤り耐性量子計算アーキテクチャが提案されている。理論的な研究においては、多くの場合、古典情報処理、処理デバイスへの入出力は一瞬で完璧になされることが仮定されている。しかしながら、実際は、古典処理にはシステムサイズの多項式時間かかってしまい、結局これが量子情報処理のサイズや速度を制限するボトルネックとなってしまう。
また、エンタングルメントした数多くの量子ビットの中から選択的に一つの量子ビットを素早く的確に操作・測定しなければならないということは、実験的に非常にチャレンジングである。いまだにどのような物理系が大規模量子情報処理デバイスとして実現可能な拡張性を有しているかは明確にはなっていない。
たとえば、量子ドットや超伝導量子ビットといった人工原子を用いて実現するモノリシック型アーキテクチャでは、エンタングルメントが十分可能になるぐらい量子ビット間を近づけながら、選択的操作・測定のための莫大な数のチャンネルを持たせて集積化する必要がある。しかしながら、操作・測定のためのチャンネルを近づけすぎると、モデル化の難しい新たなノイズ源を導入してしまう。また、大量生産される人工原子量子ビットの個性の歩留まりの低さも集積化を難しくしている。
他方、分散型アーキテクチャでは、量子ビットが互いにアイソレートされており、選択的操作・測定が容易であるが、そのような離れた量子ビット間にエンタングルメントを持たせるのに長時間かかってしまう。これらの従来のフレームワークでの問題は制御方法や物質開発のブレークスルーによって解決されると信じられているが、別の新しいアーキテクチャを考案する試みは非常に重要であろう。
P. W. Shor, Phys. Rev. A, 52, R2493, 1995.
従来提案されている量子誤り訂正技術は、システムサイズ、端的には量子誤り訂正を適用する量子ビットの数、の増大に応じて、必要な処理の量(例えば、要求される古典情報処理の計算負荷)および装置規模(量子ビットに対し選択的な操作を行うための操作チャンネルの数)が増大する、という不利点があった。これを鑑み、本発明の実施形態により、システムサイズに依存せずに実施可能な量子誤り訂正方法、同方法に従って量子誤りを訂正する量子誤り訂正装置、当該量子情報格納装置誤り訂正装置を備えた量子情報格納装置(量子情報ストレージ)が提供される。
本発明の一態様は、複数の量子ビットが格子構造を成して配列される量子情報格納器において、格子構造の各辺上に配された複数のデータ量子ビットに格納された量子情報によって構成される表面符号の誤りを訂正する量子誤り訂正装置における量子誤り訂正方法であって、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第1の操作を行うことにより、格子構造の各頂点に配された複数の第1Zエラー用量子ビットに表面符号のZエラーシンドロームに対応した量子状態を準備するZエラー抽出ステップと、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第2の操作を行うことにより、Zエラー抽出ステップによって準備された複数の第1Zエラー用量子ビットの量子状態を、複数の第1Zエラー用量子ビットそれぞれに近接して配された複数の第2Zエラー用量子ビットにコピーするZエラーコピーステップと、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第3の操作を行うことにより、Zエラーコピーステップによって準備された第2Zエラー用量子ビットの量子状態を用いて、Zエラーシンドロームに依存したハミルトニアンの下で複数の第2Zエラー用量子ビットおよび複数のデータ量子ビットに近接して配された複数の冷却用量子ビットを冷却する第1冷却ステップと、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第4の操作を行うことにより、Zエラー冷却ステップによって準備された複数の冷却用量子ビットそれぞれの量子状態を、複数のデータ量子ビットにフィードバックするZエラー訂正ステップと、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第5の操作を行うことにより、格子構造の各面心に配された複数の第1Xエラー用量子ビットに表面符号のXエラーシンドロームに対応した量子状態を準備するXエラー抽出ステップと、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第6の操作を行うことにより、Xエラー抽出ステップによって準備された複数の第1Xエラー用量子ビットの量子状態を、複数の第1Xエラー用量子ビットそれぞれに近接して配された複数の第2Xエラー用量子ビットにコピーするXエラーコピーステップと、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第7の操作を行うことにより、Xエラーコピーステップによって準備された第2Xエラー用量子ビットの量子状態を用いて、Xエラーシンドロームに依存したハミルトニアンの下で複数の第2Xエラー用量子ビットおよび複数の冷却用量子ビットを冷却する第2冷却ステップと、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第8の操作を行うことにより、Xエラー冷却ステップによって準備された複数の冷却用量子ビットそれぞれの量子状態を、複数のデータ量子ビットにフィードバックするXエラー訂正ステップと、
を有する量子誤り訂正方法である。
本発明の別の一態様は、本発明の一態様による量子誤り訂正方法に従って量子情報格納器の複数のデータ量子ビットに格納された量子情報によって構成される表面符号の誤りを訂正する量子誤り訂正装置である。
本発明のさらに別の一態様は、本発明の一態様による量子誤り訂正装置と、当該量子誤り訂正装置によって量子誤りが訂正される量子情報格納器と、を備えた量子情報格納装置である。
本発明の一態様によれば、量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第1の操作によって、表面符号の誤りを訂正することが可能となる。したがって、同態様により、システムサイズに依存しない量子誤り訂正方法が提供される。
(a):量子情報の射影測定およびフィードバック操作を行う回路と、量子ビットに対する操作により実現される等価回路の図、(b):大規模量子ビット系での射影測定および古典処理に基づくフィードバック操作を用いた量子誤り訂正のための回路の図、(c):古典情報処理をユニタリー操作に置き換えた場合の回路図、(d):冷却プロセスを並進対称的で局所的な操作を用いて実現する場合の回路図 (a):表面符号とそのスタビライザー演算子を説明する図、(b):Zエラーを訂正する手法を説明する図、(c):Zエラーを訂正する手法を説明する図、(d):Zエラーを訂正する手法を説明する図 (a):量子系および古典系の構成を示す図、(b):面心のシンドロームおよび頂点のシンドロームの抽出のための操作を説明する図、(c):エラーシンドロームのコピーの操作を説明する図、(d):冷却プロセスのための操作を説明する図 (a)〜(d):非観測型量子誤り訂正(MFQEC: Measurement-Free Quantum Error Correction)の流れを説明する図 非観測型量子誤り訂正(MFQEC)の操作フローの図 非観測型量子誤り訂正(MFQEC)の操作フローの図 (a):二層構造の量子情報格納器の模式図、(b):一層構造の量子情報格納器の模式図 量子情報格納装置のブロック図 一層構造の量子情報格納器用の分子の一例の設計図
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
1.概要
本発明の実施形態により、信頼性の高い量子情報格納装置を実現するための、新しい量子誤り訂正アーキテクチャ、および、量子誤り訂正装置が実現される。本発明の実施形態による量子誤り訂正装置では、システムサイズ(例えば、量子情報を保持する量子ビットの数)に依存して、量子誤り訂正装置の規模や必要な計算負荷の増大がほとんどない。
本発明の実施形態による量子情報格納装置においては、量子情報は2次元に並んだ量子ビット系に表面符号で符号化され保持される。本発明の実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャにおいては、この量子ビット系で増大していくエントロピーを減少させる手段として、選択的射影測定およびその結果に対する古典情報処理のかわりに、量子ビットに付随させる補助古典系における加工冷却プロセス(engineered cooling process)を用いる。この加工冷却プロセスは、興味ある量子状態の準備(M. Mueller et al., New J. Phys. 13, 085007, 2011)やダイナミクスのシミュレーション(B. Kraus et al., Phys. Rev. A 78, 042307, 2008、および、F. Verstraete, M. M. Wolf, and J. I. Cirac, Nat. Phys. 5, 633, 2009)、量子中継(K. G. H. Vollbrecht, C. A. Muschik, and J. I. Cirac, Phys. Rev. Lett. 107, 120502, 2011)に用いられている。
この冷却プロセスを含む、本発明の実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャにおいて誤り訂正に必要なすべての手続きは、並進対称的(translationally invariant)でかつ局所的な(local)外部操作によって行われる。すなわち、本発明の実施形態による量子誤り訂正装置は、それぞれの量子ビットに対する選択的な操作は行わず、複数の量子ビットに対し包括的な(非選択的な)操作を行うことにより、量子誤り訂正を実現する。そのため、本発明の実施形態による量子誤り訂正装置は、システムサイズを増やしてもきわめて少数の操作チャンネルを用いて誤り訂正を実現できるため拡張性が非常に高い。本実施形態による量子誤り訂正では、従来のモノリシック型アーキテクチャおよび分散型アーキテクチャとは異なり、個々の量子ビットを選択的に測定するための測定チャンネルは不要であり、また、操作チャンネルの数も非常に少なくてすむ。したがって、量子ビット間を近づけて強く結合させることも容易になる。
本発明の実施形態による量子誤り訂正装置を備えた量子情報格納装置では、集積化・大規模化が従来に比べ容易である。後述するように、量子情報格納器において二層2次元平面に例えば6種類の量子ビットを規則的に並べる場合、量子誤り訂正に必要な、当該6種類の量子ビットに対する包括的操作のチャンネルの数はたった6つでよい。以下では、この系で量子誤り訂正を実現するための包括制御のシステマティックな設計法も示す。
なお、本実施形態が適用される系においては、加工冷却プロセスに必要な時間はシステムサイズに依存しないことが証明されている。また、量子ビット数が100のオーダーの系で、20〜40回の量子誤り訂正を繰り返すシミュレーションも行ったが、量子情報の信頼度が低下していく時定数がシステムサイズに従い指数関数的に長くなるという結果が得られている。
2.包括制御とトポロジカル表面符号
包括制御(global control schemes)の歴史は古く、一次元スピン系において並進対称的で局所的な操作のみでユニバーサルな量子情報処理が可能であることが示されている。最近、境界面のみ選択的に操作・観測を許す包括制御のアーキテクチャにおいて誤り耐性閾値が存在することが示された。その値は10−5で、Bacon-Shor符号の連結化に基づくスキームによって達成されたものである。
たとえば、図1(a)に示すように、量子誤り訂正に必要な射影測定とその結果に基づいたフィードバック操作101(図1(a)上方の回路)は、補助ビットとのユニタリー操作102aとその後の補助ビットの冷却による初期化102bで置き換えることができる(図1(a)下方の回路)。
図1(b)〜(d)に示すように、大規模な量子ビット系での射影測定とそのフィードバック操作の実装には、莫大な測定結果を古典情報処理してフィードバック操作する必要がある(図1(b))。
だが、ここで、ユニバーサルな量子情報処理が可能な系では、ユニバーサルな古典情報処理が可能である。これを利用することにより、図1(c)に示すように、古典情報処理103を、補助ビット系でのユニタリー操作104に置きかえることができる。
本実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャにおいては、Bacon-Shor符号のような有限長符号の連結化に代えて、局所的で並進対称的なスタビライザー符号である表面符号を用いる。これにより、境界面の選択性を必要としないアーキテクチャが実現される。このアーキテクチャでは、古典情報処理についても、冷却プロセスを用いることができ、本実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャは、当該冷却プロセス105を、並進対称的で局所的な操作を用いて実現する(図1(d))。
次に、本実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャにおいて用いる表面符号およびそのシンドローム検出について、図2(a)〜(c)を参照して説明する。
図2(a)に示すように、表面符号201は、量子ビット202が正方格子の各辺に置かれた系上で定義される。ここで、正方格子のある面心(face)に隣接する4つの量子ビットからなるスタビライザー演算子Af=Zを考える。また、正方格子のある頂点(vertex)に隣接する4つの量子ビットからなるスタビライザー演算子Bv=Xを考える。表面符号201においては、符号化された状態|Ψ>は、格子上のすべての面心および頂点において定義されるスタビライザー演算子において、固有値(そのスタビライザー演算子で系を測定した場合の測定値)が+1となる同時固有状態として定義される。
これから、図2(b)および(c)を参照し、Zエラーを訂正する方法について説明する。なお、Xエラーについても同様の方法で訂正できるため、ここではその説明は省略する。
Zエラーのシンドロームは、スタビライザー演算子Bvの固有値bvで定義される。同様に、Xエラーのシンドロームは、スタビライザー演算子Afの固有値afで定義される。図2(b)に示されるような複数のZエラー205が起きたと仮定する。誤りが起きた場所がチェーンCのように連なった場合、その端∂Cの頂点のスタビライザー演算子Bv207の固有値bvが−1になる。これはエラー演算子が、その端のスタビライザー演算子Bvと反交換の関係になるためである。エラー状態を正しい状態に回復させるため、まず、シンドロームがチェーンCと同じになるエラー演算子CMLを推定する。これは、端が同じであるチェーンを推定することに相当する(つまり、∂CML=∂Cを満たすCMLを推定する)。エラー演算子CML=チェーンCの場合のみならず、エラー演算子CMLとチェーンCをつなげた場合に小さなループが形成される場合、誤り訂正は成功である。逆に、当該小さなループが形成されないならば、誤り訂正は、失敗である。
誤りの確率をpとする。そのとき、あるエラーチェーンの端が∂Cと同じになる確率は、式(1)で表される。
ここで、Eは、量子ビット数であり、u は、iがCに含まれるときに+1となり、含まれないときに−1となるものとする。端が∂Cとなる一番もっともらしいエラー演算子CMLは、その事後確率を最大化することで得られる。これは、一対の二つの端のペアを最小マンハッタン距離で結ぶエラーチェーンが一番もっともらしいことを示している。このような問題はEdmond's minimum weight perfect matching (MWPM)アルゴリズムを用いて古典コンピュータで効率的に、すなわち、システムサイズの多項式関数的な時間で解くことができる。シンドローム測定が完璧である場合にMWPMアルゴリズムを用いて得られる閾値10.3%は、理想的な閾値10.9%に十分近い。また、不完全なシンドローム測定の場合でもMWPMアルゴリズムを用いて得られる閾値2.9%も、理想的な閾値3.3%に十分近い。しかしながら、MWPMアルゴリズムでは、それぞれのエラーチェーンの確率だけでなく、実際のエラーチェーンCとつながれたときに同じホモロジーになるクラスのエラーチェーンの組み合わせ数も考慮する必要がある。この点で、MWPMアルゴリズムは、本発明の実施形態への適用に適さない。
量子計算機は、全ての古典情報処理をエミュレートすることができる。しかしながら、MWPMアルゴリズムは、高級言語で記述された非常に複雑な処理を要求する。そのため、表面符号のメリットが減殺される。そこで、本発明の実施形態においては、量子誤り訂正の過程において、後述する冷却プロセスを用いる(図2(c)および図2(d))。
3.非観測型量子誤り訂正
本発明の実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャにおいては、表面符号を形成しているデータ量子ビット(図2(c)における「量子ビット系」)に付随する補助古典多体系(図2(c)における「補助ビット系」)を導入する。ここでいう「古典」とは、状態間の量子コヒーレンスを積極的に使用しない、という意味である。補助古典多体系は、例えば、正方格子の辺上のデータ量子ビットの直上に位置しているイジング(Ising)スピン{|0>,|1>}からなる。これらを「冷却スピン」とも称することとする。冷却スピン系のハミルトニアンH({bv})は、式(2)で表されるような、並進対称的で局所的なものを考える。
ここで、H({bv})は、次式、式(3)に示されるように、頂点に接する4つの冷却スピンにおける四体相互作用(強さJ)を表す。
は、次式、式(4)に示されるように、各冷却スピンと磁場の相互作用(結合定数J、強さh)を表す。
ここでの結合係数は、Jv=bv・Jで与えられる。なお、負号は、各冷却スピン直下の量子ビットのスタビライザー演算子の固有値に従う。このようなシンドロームに依存した四体相互作用の実現については後で詳しく述べる。
本発明の実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャにおける冷却プロセスは、2つの競合するダイナミクスを含む。1つは、Hによってチェーンの境界を制限するものである。もう1つは磁場によって重みを最小化するものである。もし、エラーが1つもなければ、すべてのvにおいてJv=Jとなり、このとき基底状態は|00…0>になる。エラーが1つでもあれば、状態は基底状態でない。Jv=−1での相互作用では、4つのスピンでの|1>の数が奇数になるように相互作用が働く。これは、頂点vにおいて終端するチェーンがより低いエネルギーを有することを意味する。
磁場との相互作用Hは、|0>と|1>の対称性を破り、|1>の数を減らそうと働く。これらの2つの制限(束縛)により、MWPMのminimum−weight条件およびperfect matching条件の効果と同様の効果が得られる。それゆえ、このハミルトニアン(式(2))の下での基底状態もしくは低温でのスピン配置は、MWPMで得られる結果の良い近似となる。
冷却プロセスの後、補助ビット系(の冷却用量子ビット(冷却スピン))において得られたスピン配置を量子ビット系(のデータ量子ビット)にフィードバックするには、冷却用量子ビット(冷却スピン)と対応するデータ量子ビットとの間でCZゲートを包括的に行えばよい。これらの一連の手続きによって、Zエラーを訂正することができる。
Xエラーの場合も、頂点上のスタビライザー演算子Afの固有値afに従うハミルトニアンH({af})(式(2))の下での冷却と、その後の包括的フィードバック操作(制御ビットとしての冷却用量子ビット(冷却スピン)と、目標ビットとしてのデータ量子ビットとの間のCNOTゲート)によって同様に誤り訂正ができる。これらの冷却プロセスとフィードバック操作においては、選択的測定・操作は一切必要でない。これらの冷却プロセスとフィードバック操作は、包括的(非選択的)制御のみで実現できる。この意味で、本発明の実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャを「非観測型量子誤り訂正」("Measurement-Free Quantum Error Correction " (MFQEC ))とも称する。
なお、結合の強さJの大きさについて、特に制限はない。しかしながら、適当な時間で良好なスピン配置が得られる点において、JをJ=2h程度とすることが好都合であることが数値シミュレーションによって確認されている。
また、本発明の実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャでは、十分に低温な条件の下でスピンの配置を得るために必要な時間は、システムのサイズに依らない有限時間である。この点でも、本発明の実施形態による量子誤り訂正アーキテクチャは、システムサイズに関して十分な拡張性を有するものである。
4.デジタル冷却プロセス(Digitalized Cooling Process)の実装
以下では、シンドロームに依存する四体相互作用を含むハミルトニアンH({bv})(式(2))の下での冷却プロセスを、具体的にどのように実現するかについて述べる。
図3(a)は、それぞれ3種類の粒子を含んだ正方格子が2層ある構造を示す図である。以下では、この2層構造の系を用いて、MFQECの冷却プロセス等について説明する。ここでは、図中の下の層を、量子系301と称し、上の層を、古典系303と称する。量子系301は、3種類の粒子301A、301B、301Cを含み、古典系303は、3種類の粒子303A、303B、303Cを含むとする。この場合、各粒子が、単一の量子ビットを備えた量子情報保持体である。
第1の量子情報保持体である粒子301Aは、量子系301を形成する正方格子の辺上に位置する。第2の量子情報保持体である粒子301Bは、量子系301を形成する正方格子の頂点に位置する。第3の量子情報保持体である粒子301Cは、量子系301を形成する正方格子の面心に位置する。
第4の量子情報保持体である粒子303Aは、古典系303を形成する正方格子の辺上に位置する。第5の量子情報保持体である粒子303Bは、古典系303を形成する正方格子の頂点に位置する。第6の量子情報保持体である粒子303Cは、古典系303を形成する正方格子の面心に位置する。
粒子301Aの量子ビットが、データ量子ビットである。つまり、粒子301Aが保持する量子情報が表面符号を構成する。粒子301A直上の、粒子301Aに対応する粒子303Aの量子ビットが、冷却用量子ビット(冷却スピン)である。
また、粒子301Bの量子ビットは、第1Zエラー用量子ビット(Zエラー用シンドロームスピン)であり、粒子301B直上の粒子301Bに対応する粒子303Bの量子ビットが、第2Zエラー用量子ビット(Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン)である。
同様、粒子301Cの量子ビットは、第1Xエラー用量子ビット(Xエラー用シンドロームスピン)であり、粒子301C直上の粒子301Cに対応する粒子303Cの量子ビットが、第2Xエラー用量子ビット(Xエラー用シンドロームスピンの補助スピン)である。
量子系301および古典系303においては、それらに含まれる粒子(量子情報保持体)は粒子の種類ごとに、他の種類の粒子から独立に、1量子ビットゲート、および、2量子ビットゲートを作用させることができるように、粒子の種類が選択され量子系301および古典系303が構成されている。例えば、量子系301の粒子301A(データ量子ビット)の全てに、他種の粒子から独立して、アダマール(Hadamard)ゲートを施すことができる。また例えば、量子系301の粒子301B(Zエラー用シンドロームスピン)と、粒子301C(Xエラー用シンドロームスピン)との間に、他種の粒子から独立して、CNOT(制御NOT)ゲートを施すことができる。また例えば、古典系303の粒子303A(冷却スピン)、粒子303B(Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン)、粒子303C(Xエラー用シンドロームスピンの補助スピン)は、それぞれ独立に後述する散逸(dissipation)操作を施すことができる。
なお、本発明の実施形態によるMFQECは、上述したような2層構造を有する系以外にも適用可能である。例えば、3種類の粒子(3種類の量子情報保持体)を含んで正方格子を形成する1層のみからなる系に対してであっても、本発明の実施形態によるMFQECを適用することができる。その場合、3種の粒子それぞれの複数種類の(2種類の)内部自由度(核スピンや電子スピン)を用いて、粒子301A、B、Cおよび粒子303A、B、Cに相当する6種の量子ビットを実現すればよい。
以下、図3、図4、ならびに、図5Aおよび図5Bを参照して、本発明の実施形態による量子誤り訂正(MFQEC)の方法について、以下に示す。図4は、本発明の実施形態による量子誤り訂正の特に前半部分、すなわち、Zエラー訂正の流れを示す模式図である。なお、Xエラー訂正の流れについては、図示したZエラー訂正の流れから容易に理解できるため、図示を省略している。図5Aおよび図5Bは、本発明による量子誤り訂正のフローチャートである。
ステップ(i):初期化
粒子301Bの量子ビット(Zエラー用シンドロームスピン)および粒子301Cの量子ビット(Xエラー用シンドロームスピン)(図3(a)等)の状態を、|0>に初期化する(図4(a)、図5AのステップS1)。
ステップ(ii):面心のシンドロームの抽出
粒子301Aの量子ビット(データ量子ビット)と粒子301Bの量子ビット(Zエラー用シンドロームスピン)との間で、データ量子ビット301Aを制御ビットとしZエラー用シンドロームスピン301Bを標的ビットとして、CNOTゲート操作を行う(図3(b)向かって右側の図、図4(b)の量子系301面内方向矢印、図5AのステップS2)。
ステップ(iii):抽出されたシンドロームの古典系303へのコピー
粒子303Bの量子ビット(Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン)(図3(a)等)の状態を、|0>に初期化し、粒子301Bの量子ビット(Zエラー用シンドロームスピン)と粒子303Bの量子ビット(Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン)との間で、Zエラー用シンドロームスピン301Bを制御ビットとしZエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bを標的ビットとして、CNOTゲート操作を行う(図3(c)向かって右側の図、図4(b)の量子系301から古典系303へ向かう矢印、図5AのステップS3)。
ステップ(iv):H({bv})の下での冷却
図3(d)においてUとして表されるCNOT操作、つまり、粒子303Aの量子ビット(冷却用量子ビット(冷却スピン))と粒子303Bの量子ビット(Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン)との間で、4つの冷却スピン303Aを制御ビットとし4つの冷却スピン303Aに囲まれたZエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bを標的ビットとして、CNOTゲート操作Uを行う。そして、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bに対し散逸操作(D(βJ)による減衰(後述))を行い、さらに、上記したCNOT操作Uを行う。(図3(d)、図4(c)、図5AのステップS4)。
ステップ(v):Hの下での冷却
次に、図3(d)の最後部分に示されるように、Zエラー用シンドロームスピン301BとZエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bとの間で、Zエラー用シンドロームスピン301Bを制御ビットとしZエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bを標的ビットとしてCNOTゲート操作を行い、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bを制御ビットとして周りの4つの冷却スピン303Aのパリティ(ゼロケットの個数の偶奇)を変える操作、例えば、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bと冷却スピン303Aとの間でランダムなCNOT操作(後述)を行う。そして、冷却スピン303Aについて、散逸操作(D(βh)による減衰(後述))を行う(図4(c)、図5AのステップS5)。
ステップ(vi)
上述したステップ(iii)からステップ(v)までの操作を、HおよびHそれぞれの下での冷却効果が十分に得られるように、予め定めた所定の回数だけ繰り返す(図5AのステップS6)。
ステップ(vii):フィードバックによるZエラー訂正
冷却スピン303Aとデータ量子ビット301Aとの間で、冷却スピン303Aを制御ビットとしデータ量子ビット301Aを標的ビットとして、CZゲート操作を行う(図4(d)、図5AのステップS7)。
以上、ステップ(i)からステップ(vii)までの操作により、データ量子ビット301Aに含まれる誤り(Zエラー)の訂正が行われる。以下、ステップ(viii)からステップ(xiii)は、Xエラーの訂正に関する。
ステップ(viii):頂点のシンドロームの抽出
データ量子ビット粒子301Aと粒子301Cの量子ビット(Xエラー用シンドロームスピン)との間で、Xエラー用シンドロームスピン301Cを制御ビットとしデータ量子ビット301Aを標的ビットとして、HCNOTゲート操作を行う(図3(b)向かって左側の図、図5BのステップS8)。ここでのHCNOTゲート操作とは、制御ビット(Xエラー用シンドロームスピン301C)に対し先ずアダマール(Hadamard)ゲートを施し、次に、CNOTゲート操作を行い、その後で、さらに、制御ビット(Xエラー用シンドロームスピン301C)に対しアダマール(Hadamard)ゲートを施す操作を指す(図3(b)の下方の図)。
ステップ(ix):抽出されたシンドロームの古典系303へのコピー
ステップ(iii)と同様に、粒子303Cの量子ビット(Xエラー用シンドロームスピンの補助スピン)(図3(a)等)の状態を、|0>に初期化し、Xエラー用シンドロームスピン301CとXエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Cとの間で、Xエラー用シンドロームスピン301Cを制御ビットとしXエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Cを標的ビットとして、CNOTゲート操作を行う(図3(c)向かって左側の図、図5BのステップS9)。
ステップ(x):H({af})の下での冷却
ステップ(iv)と同様に、粒子303Aの量子ビット(冷却用量子ビット(冷却スピン))とXエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Cとの間で、4つの冷却スピン303Aを制御ビットとし4つの冷却スピン303Aに囲まれたXエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Cを標的ビットとして、CNOTゲート操作を行う。そして、Xエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Cに対し散逸操作(D(βJ)による減衰(後述))を行い、さらに、上記したCNOT操作Uを行う(図5BのステップS10)。
ステップ(xi):Hの下での冷却
ステップ(v)と同様に、Xエラー用シンドロームスピン301CとXエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Cとの間でCNOTゲート操作を行い、Xエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Cを制御ビットとして周りの4つの冷却スピン303Aのパリティを変える操作、例えば、Xエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Cと冷却スピン303Aとの間でランダムなCNOT操作(後述)を行う。そして、冷却スピン303Aについて、散逸操作(D(βh)による減衰(後述))を行う(図5BのステップS11)。
ステップ(xii)
上述したステップ(ix)からステップ(xi)までの操作を、HおよびHそれぞれの下での冷却効果が十分に得られるように、予め定めた所定の回数だけ繰り返す(図5BのステップS12)。
ステップ(xiii):フィードバックによるXエラー訂正
冷却スピン303Aとデータ量子ビット301Aとの間で、冷却スピン303Aを制御ビットとしデータ量子ビット301Aを標的ビットとして、CNOTゲート操作を行う(図5BのステップS13)。
以上、ステップ(ix)からステップ(xiii)までの操作により、データ量子ビット301Aに含まれる誤り(Xエラー)の訂正が行われる。
ステップ(i)からステップ(xiii)までの一連の操作が、本発明の実施形態による量子誤り訂正の1サイクルに相当する。
以下では、ステップ(iv)(Hの下での冷却)およびステップ(v)(Hの下での冷却)について、さらに詳しく説明する。
ステップ(iv)およびステップ(v)は、ハミルトニアンH({bv})(式(2))の下での冷却を実現することを目的としている。ステップ(x)およびステップ(xi)も同様、ハミルトニアンH({af})の下での冷却を実現することを目的とする。
先ず、H({bv})を、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bのスピン演算子Zvを用いて、固有値bvに依存しない次式(式(5))のような形に書き換える。
次に、冷却のダイナミクスを考えるために、古典系303と環境系との間の相互作用Hintを考慮する。してみれば、全系の時間発展V(t)は、
V(t)=e^[−i(H+Hint)t]、
となる。
古典系303と環境系との相互作用が十分に小さく、環境系の相関時間が十分に短いならば、全系は、熱平衡状態へ向かってマルコフ過程で減衰するとよく近似できる。
鈴木トロッター展開を用い、V(t)の時間発展を細かく離散化すれば、
V(t)=e^[−i(H+Hint)t]
〜[e^[−i(H+Hint/2)τ]
×e^[−i(H+Hint/2)τ]]^m、
となる。ここで、t=τmである。
なお、ここでは、近似
を用いている。
そうして環境系を部分トレースすることにより、冷却スピン系においてマルコフ過程の散逸ダイナミクスをデジタルにシミュレートすることができる。
ここで、ρA、および、ρBは、それぞれ、古典系303と環境系の密度行列である。
およびLは、それぞれ、ハミルトニアンHおよびHの下でのマルコフ的な散逸に相当する、リンドブラッド(Lindblad)超演算子
である。また、ここでの演算子
は、
に対してエネルギーを下げる働きをする。
減衰と励起の比(γ/γ)は環境の温度の逆数βおよびエネルギーギャップhを用いて、
で与えられる。
また、1つの量子ビットを散逸させる操作
ができると仮定すれば、冷却ダイナミクスe^(τL)は、冷却スピン303Aへの散逸ダイナミクス
で実現される。
を、包括制御(粒子群に対する非選択的操作)で実現するため、先ず、次の演算子
を考える。もし、ZvΠZのパリティが奇であれば、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303B(エラーシンドロームのコピー)がフリップされる。
冷却スピン303Aのエネルギーを減らすためには、エラーシンドロームのコピーがフリップされた場合に、ランダムに冷却スピン303Aをフリップできればよい。
そこで、エラーシンドロームのコピーがフリップされたかどうかを知るために、Zエラー用シンドロームスピン301BとZエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bとの間で、Zエラー用シンドロームスピン301Bを制御ビットとしZエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bを標的ビットとして、CNOTゲート操作を行う。もしエラーシンドロームのコピーがフリップされたならば、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bは、|1>になっている。エラーシンドロームのコピーがフリップされなければ、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bは、|0>になっている。そして、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bを制御ビットとして周りの4つの冷却スピン303Aのパリティを変える操作、例えば、Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bと冷却スピン303Aとの間でランダムなCNOT操作を行う。この、Zエラー用シンドロームスピン301BとZエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bとの間のCNOTゲート操作およびZエラー用シンドロームスピンの補助スピン303Bと冷却スピン303Aとの間のランダムなCNOT操作とをまとめて、R~CNOTと表記する。R~CNOT後では、c^の操作は実効的にa^の操作と等価である。
リンドブラッド(Lindblad)超演算子がL~と表されるc^による散逸操作を実現する方法について説明する。
演算子c^は、操作U(図3(d))により、
のように変換される。これは、正方格子頂点の量子ビットについての単一量子の昇降演算である。したがって、この結果とR~CNOTとを組み合わせることにより、散逸操作Lは、以下のようにして実現される。
ここで、
である。以上より、ハミルトニアンH({bv})の下でのデジタル化された(離散化された)冷却は、包括的な操作(包括的制御)によって実現可能である。
次に、物理パラメータが満たすべき要件について議論する。ここでの物理パラメータとは、量子系301の粒子301A、301B、および、301Cについての、散逸のレート(減衰率)Γ=1/T、Γ=1/Tである。この場合、Γ>>Γを仮定する。
古典系303の粒子303B、303Cの散逸レートは、γ〜||Hint||で表し、量子ビット間の結合強度をgとすれば、ゲート操作に要求される時間は、1/gで制限される。
上述の冷却ダイナミクス導出過程においては、マルコフ近似を用いている。そのため、J,h>>γであるとする。また、鈴木トロッター展開で用いた近似(式(6))から、Jγτ<<1,hγτ<<1である。J,h〜10γ,Jγτ〜0.1を仮定すれば、デジタル的に(時間離散的に)冷却過程をシミュレートする際の時間幅τは、τ〜0.1/γとなる。
その一方、発明者が行った数値シミュレーション(モンテカルロシミュレーション)によれば、冷却プロセスは10モンテカルロステップを要する、という結果を得ている。それぞれのモンテカルロステップでは、メトロポリスアルゴリズムにより並列的にスピンをフリップさせており、当該ステップは、物理的には緩和時間1/γで与えられる。したがって、冷却プロセスに要求される時間は、tcool=10/γと見積もられる。また、冷却プロセスは、τ〜0.1/γの時間幅で分割されるので、分割数は、m=tcool/τ〜10となる。それぞれのデジタル化された冷却プロセスでは、10個のゲート操作が実装されるため、冷却時間に加えて、ゲート操作時間t=10m/gが必要である。
以上のことから、冷却プロセスには、
cycle=tcool+t〜10/γ+10/g、
の時間を要する。
また、MFQECがうまく働くためには、量子ビットの誤り確率pをp〜10−2以下に抑えることが求められる。Γ<<Γであるから、T緩和に起因するZエラー確率のみを考えると、
p=1−e^(−Γcycle)〜Γcycle〜10−2
⇔ Γ×(10/γ+10/g)〜10−2
⇔ Γ<10−5γ、かつ、Γ<10−7g、
となる。前者は、補助ビット(古典系303)の散逸時間が、量子ビット(量子系301)の緩和時間Tよりも10倍だけ速いということを示している。後者は、ゲート時間gが、量子系301のコヒーレンス時間よりも10倍速いことを意味している。
このように、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法は、包括制御により実現される冷却プロセスを用い、量子誤り訂正を行う。本方法では、すべての操作、および、各系のハミルトニアンは、2次元系で局所的かつ並進対称的であり、個別の量子情報保持体の量子ビットへの観測をまったく必要としない。そのため、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法では、システムサイズの増大に応じて、量子情報保持体の量子ビットに対し操作を行うための操作チャンネルの数が増大する、ということがない。したがって、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法は、システムサイズに無関係に、極めて少ない操作チャンネル数で、量子誤り訂正を実現することが可能である。
言い換えれば、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法は、
複数の量子ビットが格子構造を成して配列される量子情報格納器において、格子構造の各辺上に配された複数のデータ量子ビット301Aに格納された量子情報によって構成される表面符号の誤りを訂正する量子誤り訂正装置における量子誤り訂正方法であって、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第1の操作を行うことにより、格子構造の各頂点に配された複数の第1Zエラー用量子ビット301Bに表面符号のZエラーシンドロームに対応した量子状態を準備するZエラー抽出ステップ(ステップ(ii))と、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第2の操作を行うことにより、Zエラー抽出ステップによって準備された複数の第1Zエラー用量子ビット301Bの量子状態を、複数の第1Zエラー用量子ビット301Bそれぞれに近接して配された複数の第2Zエラー用量子ビット303BにコピーするZエラーコピーステップ(ステップ(iii))と、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第3の操作を行うことにより、Zエラーコピーステップによって準備された第2Zエラー用量子ビット303Bの量子状態を用いて、Zエラーシンドロームに依存したハミルトニアンの下で複数の第2Zエラー用量子ビット303Bおよび複数のデータ量子ビット301Aに近接して配された複数の冷却用量子ビット303Aを冷却する第1冷却ステップ(ステップ(iv)、ステップ(v))と、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第4の操作を行うことにより、Zエラー冷却ステップによって準備された複数の冷却用量子ビット303Aそれぞれの量子状態を、複数のデータ量子ビット301AにフィードバックするZエラー訂正ステップ(ステップ(vii))と、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第5の操作を行うことにより、格子構造の各面心に配された複数の第1Xエラー用量子ビット301Cに表面符号のXエラーシンドロームに対応した量子状態を準備するXエラー抽出ステップ(ステップ(viii))と、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第6の操作を行うことにより、Xエラー抽出ステップによって準備された複数の第1Xエラー用量子ビット301Cの量子状態を、複数の第1Xエラー用量子ビット301Cそれぞれに近接して配された複数の第2Xエラー用量子ビット303CにコピーするXエラーコピーステップ(ステップ(ix))と、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第7の操作を行うことにより、Xエラーコピーステップによって準備された第2Xエラー用量子ビット303Cの量子状態を用いて、Xエラーシンドロームに依存したハミルトニアンの下で複数の第2Xエラー用量子ビット303Cおよび複数の冷却用量子ビット303Aを冷却する第2冷却ステップ(ステップ(x)、ステップ(xi))と、
量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第8の操作を行うことにより、Xエラー冷却ステップによって準備された複数の冷却用量子ビット303Aそれぞれの量子状態を、複数のデータ量子ビット301AにフィードバックするXエラー訂正ステップ(ステップ(xiii))と、を有する量子誤り訂正方法である。
また、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法においては、
(図4(c)の過程に相当する)第3の操作は、頂点に隣接する複数の冷却用量子ビットの間の相互作用の時間発展を模擬する操作(図3(d)の操作U)と、複数の冷却用量子ビットのエネルギー散逸の時間発展を模擬する操作(図3(d)の操作D)と、第2Zエラー用量子ビットのエネルギー散逸の時間発展を模擬する操作(図3(d)の操作D)と、を含み、
第7の操作は、第3の操作に含まれる各操作に類似した、面心に隣接する複数の冷却用量子ビットの間の相互作用の時間発展を模擬する操作と、複数の冷却用量子ビットのエネルギー散逸の時間発展を模擬する操作と、第2Xエラー用量子ビットのエネルギー散逸の時間発展を模擬する操作と、を含んでよい。
5.物理的実装(量子誤り訂正装置を備えた量子情報格納装置の構成)
最後に、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法(非観測型量子誤り訂正)を行うことができる量子情報格納装置(量子情報ストレージ)の構成について説明する。先の説明では、古典系303と量子系301の2層構成を用いて、各層の役割を明確に切り分け、さらに、1個の量子情報保持体が1個の量子ビットを構成するモデルを用いることにより、説明を行った。そのため、先の説明では、6種類の量子情報保持体(粒子(301A〜C、303A〜C))を用いている。しかしながら、量子情報格納装置は、物理的には正方格子上に配置された3種類の量子情報保持体(粒子)の一層構造により実現することができる。この場合、各量子情報保持体には、それぞれ複数(2つ)の量子ビットを備える粒子(原子)が用いられる。
なお、本明細書において用語「量子情報保持体」とは、1つまたは2つ以上の量子ビットを備え、各量子ビットに量子状態を保持することができるものを総称する語である。例えば、量子情報保持体には、電子が含まれる。このとき量子情報保持体としての電子は、例えば、量子ビットとしての内部自由度(スピン)を備える。また例えば、量子情報保持体には、原子が含まれる。このとき量子情報保持体としての原子は、例えば、第1の量子ビットとしての第1の内部自由度(核スピン)と、第2の量子ビットとしての第2の内部自由度(電子スピン)を備える。つまり、原子は、2つの内部自由度を2種類の量子ビットとして利用することができる量子情報保持体である。この場合、量子情報保持体としての(例えば、原子のような)粒子では、その振動状態、回転状態、軌道状態も、それぞれ、量子ビットとして用いることができる。さらには、不対電子を持ちながら比較的安定している分子やナノ粒子といった物質も量子情報保持体の一例である。
また、1つまたは2つ以上の量子ビットを備える、超伝導回路を用いた量子ビットは、量子情報保持体として用いることができる。また、量子ドット型量子ビットもまた、量子情報保持体として用いることができる。すなわち、超伝導量子ビットや量子ドット型量子ビットといった人工原子は、量子情報保持体の一例である。
加えて、巨視的スケールを有する物体(例えば、巨視的スケールで構成されたカンチレバー装置)の振動状態も、量子化されることにより量子ビットとなり得る。したがって、そのような巨視的スケールを有する物体もまた、量子情報保持体の一例である。その他、例えば、キャビティー中にあって物質と強結合している光子は、物質の状態に付随した量子状態を有する。したがって、そのような光子もまた、量子ビットとして用いることができる。したがって、光子もまた、量子情報保持体の一例である。
図6(b)は、一層構造による量子情報格納装置(量子情報ストレージ)601の構成を示す模式図である。図6(a)に比較のために、先の説明で用いた二層構造の量子情報格納装置を示す。
図6(b)に示される量子情報格納装置601は、例えば、電子スピンと核スピンといった2種類の量子ビットを内包する原子のような3種類の粒子601A、601B、601C(量子情報保持体)で構成される。以下では各粒子の2つの内部自由度による2つの量子ビットを、核スピンと電子スピンと呼ぶことにするが、量子ビットは原子のほかの内部自由度を用いて実現されてもよいし、超電導量子ビットや半導体量子ビットといった人工原子でこれを模倣してもよい。
電子スピン601AE、601BE、601CEは、それぞれの粒子601A、601B、601Cにおいて異なるエネルギーを持つ。それぞれの電子スピン601AE、601BE、601CEは、冷却スピン(例えば、601AE)、Zエラー用シンドローム補助スピン(例えば、601BE)、Xエラー用シンドローム補助スピン(例えば、601CE)として働く。
冷却スピン601AEに付随する核スピン601ANは、データ量子ビットとして働き、Zエラー用シンドローム補助スピン601BEに付随する核スピン601BNは、Zエラー用シンドロームスピンとして働き、Xエラー用シンドローム補助スピン601CEに付随する核スピン601CNは、Xエラー用シンドロームスピンとして働く。
核スピン601AN、601BN、601CNは、3種類の粒子601A、601B、601Cにおいてすべて同じ種類のエネルギーをもつスピンでもよい。
隣り合う電子スピン間、また、同一粒子内の電子スピン−核スピン間は相互作用があり、核スピン間や同一粒子内でない電子スピン−核スピン間には相互作用がなくてよい。
ここで、隣り合う電子スピン間、また、同一粒子内の電子スピン−核スピン間の相互作用のオン/オフは、外部からの作用によりオン状態にスイッチできるものでよい。あるいは、それらの相互作用は、常時働くものであってもよい。その場合、外部からの作用により選択的にオフ状態(デカップリング)にスイッチできればよい。
このような量子情報格納装置601において上述の料理誤り訂正方法を用いる場合、以下のように、ステップ(i)、ステップ(ii)、および、ステップ(viii)を変更(SWAP操作を追加)すればよい。
先ず、ステップ(i)については、Zエラー用シンドローム補助スピン601BEを|0>に初期化し、その後で、Zエラー用シンドロームスピン601BNとZエラー用シンドローム補助スピン601BEをSWAPする。Xエラー用シンドローム補助スピン601CEとXエラー用シンドロームスピン601CNとについても同様である。
ステップ(ii)については、先ずデータ量子ビット601ANを冷却スピン601AEへSWAPする。そして、冷却スピン601AEとZエラー用シンドローム補助スピン601BEとの間で、冷却スピン601AEを制御ビットとしZエラー用シンドローム補助スピン601BEを標的ビットとしてCNOTゲートを施す。その後、Zエラー用シンドローム補助スピン601BEを、Zエラー用シンドロームスピン601BNへSWAPする。
ステップ(viii)については、先ずデータ量子ビット601ANを冷却スピン601AEへSWAPする。そして、Xエラー用シンドローム補助スピン601CEと冷却スピン601AEとの間で、Xエラー用シンドローム補助スピン601CEを制御ビットとし冷却スピン601AEを標的ビットとして上述のHCNOTゲートを施す。その後、Xエラー用シンドローム補助スピン601CEを、Xエラー用シンドロームスピン601CNへSWAPする。
また、核スピンに対する1量子ビットゲート操作については、付随する電子スピンとの相互作用を利用する。そうすることで、核スピンへの電磁波照射をせずに、電子スピンへの電磁波照射のみで核スピンの1量子ビットゲート操作をリモートコントロールできる。
したがって、量子誤り訂正装置は、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法が定めるゲート操作手順に従って3種類の周波数を持った電磁波を選択的に量子情報格納装置601全体に対し包括的に照射することができる装置により実現される。
言い換えれば、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法では、
格子構造の各辺上に配された複数のデータ量子ビットおよび複数の冷却用量子ビットは、各辺上に配された複数の第1の量子情報保持体(第1の粒子601A)の2種類の内部自由度(核スピン601ANおよび電子スピン601AE)でよく、
格子構造の各頂点に配された複数の第1Zエラー用量子ビットおよび複数の第2Zエラー用量子ビットは、各頂点に配された複数の第2の量子情報保持体(第2の粒子601B)の2種類の内部自由度(核スピン601BNおよび電子スピン601BE)でよく、
前記格子構造の各面心に配された複数の第1Xエラー用量子ビットおよび複数の第2Xエラー用量子ビットは、各面心に配された複数の第3の量子情報保持体(第3の粒子601C)の2種類の内部自由度(核スピン601CNおよび電子スピン601CE)でよい。
図7は、上述のように本発明の実施形態による量子誤り訂正方法が定めるゲート操作手順に従って3種類の周波数を持った電磁波を選択的に量子情報格納装置601全体に対し包括的に照射することができる量子誤り訂正装置703を備えた量子情報格納装置701のブロック図である。
本発明の実施形態による量子誤り訂正装置を備えた量子情報格納装置701は、量子情報ストレージとして、上述した一層構造の量子情報格納器705を備える。そして、量子誤り訂正装置703は、周波数f=f1を有する電磁波EMW1を量子情報格納器601に包括的に照射することにより第1の粒子601A(第1の量子情報保持体)、第2の粒子601B(第2の量子情報保持体)、および、第3の粒子(第3の量子情報保持体)のうちで複数の第1の粒子601Aのみに対し包括的な操作を施すことができる第1操作器711と、周波数f=f2を有する電磁波EMW2を量子情報格納器601に包括的に照射することにより第1の粒子601A、第2の粒子601B、および、第3の粒子のうちで複数の第2の粒子601Bのみに対し包括的な操作を施すことができる第2操作器712と、周波数f=f3を有する電磁波EMW3を量子情報格納器601に包括的に照射することにより第1の粒子601A、第2の粒子601B、および、第3の粒子のうちで複数の第3の粒子601Cのみに対し包括的な操作を施すことができる第3操作器713と、第1操作器711、第2操作器712、第3操作器713それぞれの電磁波照射のオン/オフを、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法に基づいて(該方法が定めるゲート操作手順に従って)制御するコントローラ(操作器制御部)715と、を備える。電磁波EMW1の周波数f1は、例えば、第1の粒子601A(第1の量子情報保持体)の電子スピン601AEへ照射することにより、隣接する第1の粒子601Aの電子スピン601AE間の結合(カップリング)の程度(結合の強度)を変化させることができる周波数である。電磁波EMW2の周波数f2は、例えば、第2の粒子601B(第2の量子情報保持体)の電子スピン601BEへ照射することにより、隣接する第2の粒子601Bの電子スピン601BE間の結合(カップリング)の程度(結合の強度)を変化させることができる周波数である。電磁波EMW3の周波数f3は、例えば、第3の粒子601C(第3の量子情報保持体)の電子スピン601CEへ照射することにより、隣接する第3の粒子601Cの電子スピン601CE間の結合(カップリング)の程度(結合の強度)を変化させることができる周波数である。ここでのコントローラ715は、古典情報処理で用いられるプロセッサ(マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU)等)でよい。本発明の実施形態による量子誤り訂正方法が定めるゲート操作手順は、コントローラ715が備える記憶装置(メモリ)に記憶される。なお、記憶装置は、コントローラ715の外部にあってもよい。
最後に、量子情報格納器(量子情報ストレージ)601を実現する電子スピンと核スピンの物理系について説明する。
シリコン(Si)単結晶中の核スピンの緩和時間Tは、30秒以上あることが実験で確かめられている。ここでは、ひとまず核スピンのTが10秒以下であると仮定する。すると、2量子ビットゲートを実現するための結合は1MHz以上の強度が求められる。
電子スピンへの電磁波照射により実現可能なラビ(Rabi)周波数は、1GHzぐらいであるから、これにより結合を自由にデカップリングできるようにすることを考えると、電子スピン間の結合強度は、100MHz以下であることが好ましい。例えば、局在した電子スピン間の距離が1nmのときに、両者間に約44MHzの双極子相互作用が働き、この強さは、電子スピン間の距離に逆比例する。これらより、電子スピン間に望まれる距離を見積もることができる。
なお、上の説明では、第1操作器711、第2操作器712、および、第3操作器713はそれぞれ、適切に選択された周波数の電磁波を量子情報格納器601に照射することにより、複数の第1の粒子601Aのみ、複数の第2の粒子601Bのみ、または、複数の第3の粒子601Cのみに対し包括的な操作を施すことができるとした。しかしながら、本発明の実施形態において、操作を施すための手法は、電磁波の照射に限定されるものではない。例えば、量子情報保持体を取り囲む場の状態を変化させたり、量子情報保持体の電気的環境(例えば、印加されるバイアス電圧)を変化させたりすることで、複数の量子情報保持体に対して包括的な操作を施すことができる。
また、これまでは2次元正方格子を形成する系での実装を説明してきた。しかしながら、データ量子ビット(A’)が辺上にあり、Zエラーシンドロームスピン(B’)が頂点にあり、Xエラーシンドロームスピン(C’)が面心にありさえすれば、2次元三角格子や2次元蜂の巣格子といったさまざまな格子形状でもさらには3次元立方格子形状でも、表面符号の実装が可能である。例えば、一辺が3nmの蜂の巣格子の辺上(A’)、頂点(B’)、面心(C’)に3種類の電子スピンを配置することができるなら、A’−B’間、および、A’−C’間の双極子相互作用はそれぞれ、13MHz、および、2.5MHzになり、これらの格子形状を有する量子情報格納器(量子情報ストレージ)も、好適である。
例えば、フリーラジカル分子の中には、トリチルラジカルや窒素内包フラーレン、リチウム(Li)フタロシアニンといった、電子スピンのデコヒーレンス時間が非常に長いものがある。これらを本発明の実施形態にかかる量子情報格納器705の量子ビットに用いることができる。その場合、分子中の原子を同位体制御することにより適切な核スピン量子ビットを付随させる。そして、これらの分子を修飾して、2次元高分子化、もしくは2次元超分子化することで電子スピンを格子状に並べることができる。図8はそのようにしてなされた量子情報格納器用分子801の一例の設計図を示す図である。トリチルラジカル803(第1の量子情報保持体)と窒素内包フラーレン805の誘導体(第2の量子情報保持体)による超分子構造が骨格となり、その隙間にまた別の分子(ここではリチウム(Li)フタロシアニン807(第3の量子情報保持体))が捕獲されている。つまり、本例では、量子情報格納器705の2次元格子構造は、トリチルラジカル803および窒素内包フラーレン805の誘導体を含んで構成される超分子構造により形成される。そして、その2次元格子構造の面心位置にリチウムフタロシアニン807が配されて、量子情報格納器705が構成される。したがって、この場合、第1の粒子601Aは、窒素であり、第2の粒子601Bは、ラジカル状態の炭素であり、第3の粒子601Cは、リチウムである。このような構造では、格子一辺の長さが約3nmとなり、上記条件にあてはまり、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法(非観測型量子誤り訂正(MFQEC))を正しく動作させることができる。
なお、量子情報格納器705は、図8の例に限定されない。第1の量子情報保持体、第2の量子情報保持体、および、第3の量子情報保持体は、それぞれ、不対電子を有しかつ比較的安定した分子、あるいは、不対電子を含んだナノ粒子であればよい。言い換えれば、第1〜3の量子情報保持体は、それぞれ、常磁性電子を有する分子もしくはナノ粒子であればよい。ナノ粒子には、例えば、ダイヤモンドやシリコンカーバイドが含まれる。
この場合、量子情報格納器705の格子構造は、第1の量子情報保持体、第2の量子情報保持体、および、第3の量子情報保持体の少なくともいずれか1つを含んで形成される超分子構造または高分子構造により形成されればよい。
信頼性の高い大規模量子情報ストレージ実現のカギは、包括制御による非観測型量子誤り訂正のアーキテクチャと拡張性の非常に高い物理系での実装である。この点で、本発明の実施形態による量子誤り訂正方法、および、それを用いた量子情報格納装置は、極めて有利である。
101:フィードバック操作
102a:補助ビットの冷却による初期化
102b:補助ビットのユニタリー操作
103:古典情報処理
104:補助ビット系のユニタリー操作
105:冷却プロセス
201:表面符号
202:量子ビット
205:Zエラー
207:チェーンCの端∂Cの頂点のスタビライザー演算子
301:量子系
303:古典系
301A:量子系第1粒子(データ量子ビット)
301B:量子系第2粒子(Zエラー用シンドロームスピン)
301C:量子系第3粒子(Xエラー用シンドロームスピン)
303A:古典系第1粒子(冷却スピン)
303B:古典系第2粒子(Zエラー用シンドロームスピンの補助スピン)
303C:古典系第3粒子(Xエラー用シンドロームスピンの補助スピン)
601:量子情報格納装置(量子情報ストレージ)
601A:第1粒子
601AE:第1電子スピン(冷却スピン)
601AN:第1核スピン(データ量子ビット)
601B:第2粒子
601BE:第2電子スピン(Zエラー用シンドローム補助スピン)
601BN:第2核スピン(Zエラー用シンドロームスピン)
601C:第3粒子
601CE:第3電子スピン(Xエラー用シンドローム補助スピン)
601CN:第3核スピン(Xエラー用シンドロームスピン)
701:量子誤り訂正装置を備えた量子情報格納装置
703:量子誤り訂正装置
705:量子情報格納器
711:第1操作器
712:第2操作器
713:第3操作器
715:コントローラ(操作器制御部)
801:量子情報格納器用分子
803:トリチルラジカル
805:窒素内包フラーレン
807:リチウム(Li)フタロシアニン

Claims (7)

  1. 複数の量子ビットが格子構造を成して配列される量子情報格納器において、前記格子構造の各辺上に配された複数のデータ量子ビットに格納された量子情報によって構成される表面符号の誤りを訂正する量子誤り訂正装置における量子誤り訂正方法であって、
    前記量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第1の操作を行うことにより、前記格子構造の各頂点に配された複数の第1Zエラー用量子ビットに前記表面符号のZエラーシンドロームに対応した量子状態を準備するZエラー抽出ステップと、
    前記量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第2の操作を行うことにより、前記Zエラー抽出ステップによって準備された前記複数の第1Zエラー用量子ビットの量子状態を、前記複数の第1Zエラー用量子ビットそれぞれに近接して配された複数の第2Zエラー用量子ビットにコピーするZエラーコピーステップと、
    前記量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第3の操作を行うことにより、前記Zエラーコピーステップによって準備された前記第2Zエラー用量子ビットの量子状態を用いて、前記Zエラーシンドロームに依存したハミルトニアンの下で前記複数の第2Zエラー用量子ビットおよび前記複数のデータ量子ビットに近接して配された複数の冷却用量子ビットを冷却する第1冷却ステップと、
    前記量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第4の操作を行うことにより、前記Zエラー冷却ステップによって準備された前記複数の冷却用量子ビットそれぞれの量子状態を、前記複数のデータ量子ビットにフィードバックするZエラー訂正ステップと、
    前記量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第5の操作を行うことにより、前記格子構造の各面心に配された複数の第1Xエラー用量子ビットに前記表面符号のXエラーシンドロームに対応した量子状態を準備するXエラー抽出ステップと、
    前記量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第6の操作を行うことにより、前記Xエラー抽出ステップによって準備された前記複数の第1Xエラー用量子ビットの量子状態を、前記複数の第1Xエラー用量子ビットそれぞれに近接して配された複数の第2Xエラー用量子ビットにコピーするXエラーコピーステップと、
    前記量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第7の操作を行うことにより、前記Xエラーコピーステップによって準備された前記第2Xエラー用量子ビットの量子状態を用いて、前記Xエラーシンドロームに依存したハミルトニアンの下で前記複数の第2Xエラー用量子ビットおよび前記複数の冷却用量子ビットを冷却する第2冷却ステップと、
    前記量子情報格納器に対し包括的に並進対称的かつ局所的な第8の操作を行うことにより、前記Xエラー冷却ステップによって準備された前記複数の冷却用量子ビットそれぞれの量子状態を、前記複数のデータ量子ビットにフィードバックするXエラー訂正ステップと、を有する量子誤り訂正方法。
  2. 前記第3の操作は、前記頂点に隣接する前記複数の冷却用量子ビットの間の相互作用の時間発展を模擬する操作と、前記複数の冷却用量子ビットのエネルギー散逸の時間発展を模擬する操作と、前記第2Zエラー用量子ビットのエネルギー散逸の時間発展を模擬する操作と、を含み、
    前記第7の操作は、前記面心に隣接する前記複数の冷却用量子ビットの間の相互作用の時間発展を模擬する操作と、前記複数の冷却用量子ビットのエネルギー散逸の時間発展を模擬する操作と、前記第2Xエラー用量子ビットのエネルギー散逸の時間発展を模擬する操作と、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の量子誤り訂正方法。
  3. 前記格子構造の各辺上に配された前記複数のデータ量子ビットおよび前記複数の冷却用量子ビットは、前記各辺上に配された複数の第1の量子情報保持体の2種類の内部自由度であり、
    前記格子構造の各頂点に配された前記複数の第1Zエラー用量子ビットおよび前記複数の第2Zエラー用量子ビットは、前記各頂点に配された複数の第2の量子情報保持体の2種類の内部自由度であり、
    前記格子構造の各面心に配された前記複数の第1Xエラー用量子ビットおよび前記複数の第2Xエラー用量子ビットは、前記各面心に配された複数の第3の量子情報保持体の2種類の内部自由度である、ことを特徴とする請求項1に記載の量子誤り訂正方法。
  4. 量子情報格納器の複数のデータ量子ビットに格納された量子情報によって構成される表面符号の誤りを請求項3に記載の量子誤り訂正方法に従って訂正する量子誤り訂正装置であって、
    前記複数の第1の量子情報保持体、前記複数の第2の量子情報保持体、および、前記複数の第3の量子情報保持体のうち、前記複数の第1の量子情報保持体のみに対し包括的な操作を施すことができる第1の操作器と、
    前記複数の第1の量子情報保持体、前記複数の第2の量子情報保持体、および、前記複数の第3の量子情報保持体のうち、前記複数の第2の量子情報保持体のみに対し包括的な操作を施すことができる第2の操作器と、
    前記複数の第1の量子情報保持体、前記複数の第2の量子情報保持体、および、前記複数の第3の量子情報保持体のうち、前記複数の第3の量子情報保持体のみに対し包括的な操作を施すことができる第3の操作器と、
    前記第1の操作器、前記第2の操作器、および、前記第3の操作器を前記請求項3に記載の量子誤り訂正方法に従って制御する操作器制御部と、を有する量子誤り訂正装置。
  5. 前記第1の量子情報保持体、前記2種類の内部自由度として核スピンおよび電子スピンを有し、
    前記第1の操作器は、前記操作において、前記量子情報格納器に対して第1周波数の電磁波を照射し、隣接する前記第1の量子情報保持体の電子スピン間の結合の強度を変化させ、
    前記第2の操作器は、前記操作において、前記量子情報格納器に対して第2周波数の電磁波を照射し、隣接する前記第2の量子情報保持体の電子スピン間の結合の強度を変化させ、
    前記第3の操作器は、前記操作において、前記量子情報格納器に対して第3周波数の電磁波を照射し、隣接する前記第3の量子情報保持体の電子スピン間の結合の強度を変化させる、請求項4に記載の量子誤り訂正装置。
  6. 請求項4に記載の量子誤り訂正装置と、
    前記格子構造の前記各辺上に配された複数の前記第1の量子情報保持体、前記格子構造の前記各頂点に配された複数の前記第2の量子情報保持体、および、前記格子構造の前記各面心に配された複数の前記第3の量子情報保持体、を備えた前記量子情報格納器と、
    を有する量子情報格納装置。
  7. 前記量子情報格納器の前記格子構造は、前記第1の量子情報保持体、前記第2の量子情報保持体、および、前記第3の量子情報保持体の少なくともいずれか1つを含んで形成される超分子構造または高分子構造により形成され、
    前記第1の量子情報保持体、前記第2の量子情報保持体、および、前記第3の量子情報保持体は、それぞれ、不対電子を有する分子または不対電子を有するナノ粒子である、請求項6に記載の量子情報格納装置。
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