以下、図面を参照しながら、本発明に係る試料保持部材の挿抜機構及び画像取得装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る試料保持部材の挿抜機構を備えて構成された画像取得装置の外観を示す斜視図である。また、図2は、画像取得装置の内部構成を示す概要図である。図1及び図2に示すように、画像取得装置1は、箱型の筐体2内に、試料Sのマクロ画像を取得するマクロ画像取得装置3と、試料Sのミクロ画像を取得するミクロ画像取得装置4と、マクロ画像取得装置3とミクロ画像取得装置4との間で移動可能なステージ5とを内蔵している。画像取得装置1は、マクロ画像取得装置3で取得したマクロ画像に対して例えばライン状の複数の分割領域を設定し、各分割領域をミクロ画像取得装置4で高倍率に取得して合成することにより、バーチャルスライド画像を生成する装置である。
画像取得装置1で観察する試料Sは、例えば組織細胞などの生体サンプルである。試料Sは、例えばスライドガラスなどの試料保持部材6(図2参照)に密封された状態で、画像取得ごとに1枚ずつ画像取得装置1に挿入される。筐体2の正面側には、図1に示すように、画像取得装置1に試料保持部材6を挿抜するための挿抜部7が設けられている。挿抜部7には、開閉蓋8が取り付けられており、試料保持部材6の挿抜に合わせて手動又は自動で開閉するようになっている。画像取得装置1の内部には、挿抜部7に対応して後述する試料保持部材の挿抜機構30(図3参照)が設けられており、画像取得装置1への試料保持部材6の挿入及び画像取得装置1からの試料保持部材6の抜出がサポートされる。
マクロ画像取得装置3は、図2に示すように、ステージ5の底面側に配置された光源11と、ステージ5の上面側に配置された撮像装置12とを含んで構成されている。光源11としては、例えばレーザダイオード(LD)、発光ダイオード(LED)、スーパールミネッセントダイオード(SLD)、ハロゲンランプといったランプ方式光源などが用いられる。光源11から出射した光は、ステージ5の開口部42(後述)を通して試料保持部材6に保持された試料Sに照射される。撮像装置12は、例えば2次元画像を取得可能なエリアイメージセンサである。撮像装置12は、光源11によって形成された試料Sの光像の全体画像を取得する。
ミクロ画像取得装置4は、マクロ画像取得装置3と同様に、ステージ5の底面側に配置された光源21と、ステージ5の上面側に配置された撮像装置22とを含んで構成されている。光源21から出射した光は、ステージ5の開口部42を通して試料保持部材6に保持された試料Sに照射される。撮像装置22は、例えばCMOSイメージセンサといった二次元撮像素子によって構成される。撮像装置22は、光源21によって形成された試料Sの光像の一部領域を分割領域ごとに順次取得する。
また、ミクロ画像取得装置4は、光源21とステージ5との間に配置された照明光学系23と、ステージ5と撮像装置22との間に配置された撮像光学系24とを有している。撮像光学系24には、試料Sと対峙して配置される対物レンズ25が含まれている。対物レンズ25には、ステージ5に直交する方向に対物レンズ25を駆動するステッピングモータ(パルスモータ)或いはピエゾアクチュエータなどのモータやアクチュエータが設けられている。これらの駆動手段によって対物レンズ25の位置を変えることにより、試料Sの画像取得における撮像の焦点位置が調整可能になっている。
次に、試料保持部材の挿抜機構30について詳細に説明する。
図3は、試料保持部材の挿抜機構の構成を示す平面図である。同図に示すように、試料保持部材の挿抜機構30は、上記のステージ5と、ステージ5を駆動するステージ駆動部31と、挿抜部7に対応して配置される受台32と、受台32を駆動する受台駆動部33(図6参照)とを含んで構成されている。
ステージ5は、受台32側からマクロ画像取得装置3及びミクロ画像取得装置4側にかけて延在する第1のスライダ34と、第1のスライダ34に直交して延在する第2のスライダ35とを有している。ステージ5は、第2のスライダ35に摺動可能に取り付けられ、第2のスライダ35は、第1のスライダ34に摺動可能に取り付けられている。
ステージ駆動部31は、例えばステッピングモータ(パルスモータ)或いはピエゾアクチュエータといったモータやアクチュエータによって構成され、第1のスライダ34及び第2のスライダ35にそれぞれ設けられている。第1のスライダ34に設けられたステージ駆動部31により、ステージ5は、第1のスライダ34に沿って、試料保持部材6の挿抜位置(受台32に対応する位置)P1と、試料Sの画像取得位置(マクロ画像取得装置3に対応する位置又はミクロ画像取得装置4に対応する位置)P2との間で駆動する。また、第2のスライダ35に設けられたステージ駆動部31により、ステージ5は、第2のスライダ35に沿って駆動する。第2のスライダ35に沿うステージ5の移動は、例えばミクロ画像取得装置4での試料Sに対する対物レンズ25の視野位置の移動に用いられる。
図4は、ステージの構成を示す拡大平面図である。同図に示すように、ステージ5には、第1のスライダ34及び第2のスライダ35と重ならないように、試料保持部材6が載置される載置面41と、試料保持部材6における試料Sの保持領域に対応して載置面41に設けられた開口部42とが設けられている。開口部42は、試料保持部材6の幅よりも僅かに広い幅で略長方形状に開口している。
ステージ5において、開口部42の長手方向の一端側(挿抜部7から見て手前側)には、厚みが一段大きい肉厚部43が設けられている。肉厚部43は、試料保持部材6と略等幅で開口部42側が開放するように矩形に切り欠かれ、当該切り欠き部分ではステージ5の他の部分と厚みが同一になっている。このような肉厚部43の切り欠きにより、試料保持部材6の一端側を支持すると共に載置面41における試料保持部材6の位置を位置決めする載置面位置決め部44が形成されている。
載置面位置決め部44は、試料保持部材6の長手方向の一端側が突き当てられる壁部44aと、試料保持部材6における幅方向の両縁部にそれぞれ沿う壁部44b,44bとを有している。これらの壁部44a,44bの上部には、いずれも載置面41側から見て末広がりとなるテーパ部45が形成されている。また、載置面位置決め部44において、試料保持部材6の角部が来る位置には、断面円形の孔部46がステージ5の厚み方向に貫通して設けられている。この孔部46により、試料保持部材6の長手方向の一端側が突き当てられたときに、試料保持部材6の角部が壁部44a,44bに当たることを防止でき、試料保持部材6が保護される。一方、開口部42の長手方向の他端側(挿抜部7から見て奥側)では、試料保持部材6の角部に対応する位置よりも奥側で開口の幅が試料保持部材6の幅よりも狭くなっている。これにより、試料保持部材6の他端側は、角部のみで支持されるようになっている。
また、ステージ5には、載置面41に載置された試料保持部材6を保持するクランプ部51が設けられている。クランプ部51は、試料保持部材6の幅方向の一端(長辺)側を支持する長辺クランプ52と、試料保持部材6の長手方向の他端(短辺)側を支持する短辺クランプ53とを有している。
長辺クランプ52は、回転軸54によってステージ5上で回転可能に設けられていると共に、バネV1によって例えば反時計方向に付勢されている。長辺クランプ52は、回転軸54から載置面41側に延びる直線状の第1の部分55と、回転軸54を挟んで第1の部分55と反対側に延びる略L字状の第2の部分56とを有している。第2の部分56の基端側には、上方に突出するピン57が設けられている。短辺クランプ53は、回転軸58によってステージ5上で回転可能に設けられていると共に、バネV2によって例えば時計方向に付勢されている。短辺クランプ53は、回転軸58が取り付けられた略台形状の第1の部分59と、第1の部分59の先端から略直角に折れ曲がった直線状の第2の部分60とを有している。
ステージ5が試料保持部材6の挿抜位置P1に位置している場合、クランプ部51では、後述する受台32のレバー部材76の先端部分76a(図5参照)がピン57に当接する。これにより、長辺クランプ52がバネV1の付勢力に逆らって時計方向に回動し、長辺クランプ52の第1の部分55による試料保持部材6の長辺の支持が解除される。また、長辺クランプ52の時計方向の回動により、長辺クランプ52の第2の部分56の基端側が短辺クランプ53の第1の部分59の基端側に当接する。これにより、短辺クランプ53がバネV2の付勢力に逆らって反時計方向に回動し、短辺クランプ53の第2の部分60による試料保持部材6の短辺の支持が解除される。
ステージ5が試料保持部材6の挿抜位置P1から画像取得位置P2に向かって移動すると、クランプ部51では、レバー部材76とピン57との当接状態が解除される。これにより、長辺クランプ52がバネV1の付勢力によって反時計方向に回動し、長辺クランプ52の第1の部分55によって試料保持部材6の長辺が支持される。また、長辺クランプ52の反時計方向の回動により、長辺クランプ52の第2の部分56の基端側と短辺クランプ53の第1の部分59の基端側との当接状態が解除される。これにより、短辺クランプ53がバネV2の付勢力によって時計方向に回動し、短辺クランプ53の第2の部分60によって試料保持部材6の短辺が支持される。したがって、載置面41上の試料保持部材6は、クランプ部51により、載置面位置決め部44に突き当てられた状態で保持される。
なお、載置面41に試料保持部材6が載置されていない場合、長辺クランプ52の反時計方向の回動及び短辺クランプ53の時計方向の回動は、規制ピン61,62によって試料保持部材6の保持位置の近傍で規制される。また、ステージ5には、長辺クランプ52がバネV1の付勢力によって反時計方向に回動したときに、長辺クランプ52の第2の部分56の先端側に接触する接触センサ63が配置されている。接触センサ63により、試料保持部材6がクランプ部51によって保持されているか否かを画像取得装置1側で把握することができる。
図5は、受台の構成を示す斜視図である。また、図6は、その側面図である。図5及び図6に示すように、受台32は、ステージ5の開口部42の幅よりも僅かに狭い幅の略直方体形状をなし、挿抜位置P1に対応し、ステージ5よりも低い位置で第1のスライダ34の脇に配置されている。受台32は、装置底部に固定された一対の板状部材71,71間に配置され、受台32の奥側の側部は、回転軸72によって板状部材71,71に軸支されている。受台32の上面は、試料保持部材6の受面73となっている。受面73の奥側の端部には、受面73における試料保持部材6の位置を位置決めする受面位置決め部74が設けられている。
また、受台32の近傍には、図5に示すように、挿抜部7が固定される台座75が配置されている。台座75は、受台32が露出するように受台32の周囲を囲んで設けられており、台座75の上面には、挿抜部7を構成する筐体81(図10参照)が固定される。また、台座75における第1のスライダ34側の側部には、上述したクランプ部51を駆動するレバー部材76が設けられている。レバー部材76は、台座75の側部から奥側に向かって延び、レバー部材76の先端部分76aは、第1のスライダ34側に向かって外側に斜めに折れ曲がっている。この先端部分76aは、ステージ5が挿抜位置P1に移動したときに長辺クランプ52のピン57に当接し、長辺クランプ52を回動させる。
受台駆動部33は、受台32を回転軸72回りに回動させる部分である。受台駆動部33は、受台32側のピン77と、ステージ5側のレバー部材78とによって構成されている。ピン77は、受台32の側部において、第1のスライダ34側に突出するように受台32の回転軸72の下側の位置に固定されている。また、レバー部材78は、図4及び図6に示すように、ステージ5の底面側に設けられている。レバー部材78は、第1のスライダ34に沿ってステージ5の底面側に延在し、レバー部材78の奥側の端部78aは、受台32側に向かって略直角に折れ曲がった状態となっている。
ステージ5が挿抜位置P1に移動してくると、図7に示すように、レバー部材78の端部78aがピン77に係合し、ピン77が手前側に押し込まれる。ピン77が押し込まれることで、受台32が回転軸72周りに回動し、受面73が受面位置決め部74に向かって下り傾斜となるようにステージ5の開口部42から突出する進出位置Q1に移動する。受台32が進出位置Q1に位置するときのステージ5に対する受面73の傾斜角度は、例えば20°〜30°程度に設定される。ステージ5が挿抜位置P1から画像取得位置P2に向かって移動すると、レバー部材78の端部78aとピン77との係合が解除され、受面73がステージ5の開口部42から退避する退避位置Q2に受台32が移動する。受台32が退避位置Q2に位置すると、受面73は、ステージ5の下方で略水平状態となる。
なお、上記実施形態では、受台32側のピン77とステージ5側のレバー部材78とによって受台駆動部33を構成したが、受台駆動部はこのような態様に限られるものではない。例えば回転軸72を駆動させる駆動モータを受台32に設け、駆動モータによってステージ5の移動に連動して受台32を進出位置Q1と退避位置Q2との間で駆動させるようにしてもよい。
続いて、上述した試料保持部材の挿抜機構30の動作について説明する。
ステージ5が画像取得装置P2側に位置している場合、図8に示すように、受台32は、退避位置Q2に位置した状態となっている。また、クランプ部51は、載置面41上で試料保持部材6を保持する位置に位置した状態となっている。ステージ5が挿抜位置P1に移動してくると、図9に示すように、ステージ5の移動に連動して受台駆動部33が受台32を進出位置Q1に移動させ、ステージ5の開口部42から受面73が突出する。また、ステージ5の移動に連動してクランプ部51が試料保持部材6の保持を解除する位置に移動する。
このとき、図10に示すように、挿抜部7では、開閉蓋8を開けたときに挿抜口部82から受台32が傾斜した状態で露出する。したがって、試料保持部材6が挿抜口部82に挿入されると、試料保持部材6が受台32の受面73に載置され、自重又は手動によって受面位置決め部74に突き当てられる。また、試料保持部材6を抜出する場合には、受台32が進出位置Q1に移動することによって試料保持部材6がステージ5の載置面41から受面73に受け渡され、手動によって挿抜口部82から試料保持部材6を抜き出すことができる。
ここで、図11に示すように、挿抜口部82は、進出位置Q1に移動した状態の受台32の受面73及び側部を囲うように、挿抜部7を構成する筐体81に設けられている。挿抜口部82を構成する上壁部82a及び側壁部82b,82bは、筐体81の奥側から手前側に向かって挿抜口部82が裾広がりとなるようにテーパ部83となっている。また、挿抜口部82では、受台32が進出位置Q1に移動したときに、受面73と上壁部82aとの間に試料保持部材6の厚さよりも大きい隙間Wが存在するようになっている。このようなテーパ部83及び隙間Wにより、挿抜口部82への試料保持部材6の挿抜を容易に実施できる。
試料保持部材6が受面位置決め部74に突き当てられた状態でステージ5が挿抜位置P1から画像取得位置P2に向かって移動していくと、ステージ5の移動に連動して受台駆動部33が受台32を退避位置Q2に移動させ、ステージ5の開口部42から受面73が退避する(図8参照)。これにより、試料保持部材6が受面73からステージ5の載置面41に受け渡される。また、ステージ5の移動に連動してクランプ部51が試料保持部材6を保持する位置に移動し、試料保持部材6が載置面位置決め部44に突き当てられた状態で位置決めされる。
以上説明したように、試料保持部材の挿抜機構30では、試料保持部材6の挿抜位置P1において、受台駆動部33によって受台32が進出位置Q1に駆動し、受面73が受面位置決め部74に向かって下り傾斜となるようにステージ5の開口部42から突出する。これにより、試料保持部材の挿抜機構30では、手作業で試料保持部材6の位置決めを行わなくても、受面73に試料保持部材6を置くだけで受面73の下り傾斜を利用して受面位置決め部74で位置決めできる。受面位置決め部74での位置決めの後、受台駆動部33によって受台32が退避位置Q2に駆動すると、受台32からステージ5に試料保持部材6が受け渡され、ステージ5の載置面41に試料保持部材6を簡単かつ精度良く配置できる。
また、試料保持部材の挿抜機構30では、受台駆動部33が受台32側のピン77とステージ5側のレバー部材78とによって構成され、ステージ駆動部31による挿抜位置P1と画像取得位置P2との間のステージ5の移動に連動して受台32の進出位置Q1と退避位置Q2との間の移動が切り替えられる。したがって、挿抜機構30の利便性を向上できる。
また、試料保持部材の挿抜機構30では、ステージ5が載置面41における試料保持部材6の位置を位置決めする載置面位置決め部44を有し、載置面位置決め部44は、載置面41から見て末広がりとなるテーパ部45を有している。載置面位置決め部44の形成により、ステージ5の載置面41における位置決めを簡単に実施できる。また、載置面位置決め部44がテーパ部45を有していることにより、受台32からステージ5に試料保持部材6が受け渡されるときの受け渡し易さを確保できる。なお、載置面位置決め部44において、試料保持部材6に壁部が当たることを防止するために開口部42に連続する切り込みをステージ5に設けてもよいが、図4に示したように、載置面位置決め部44を肉厚部43及び切欠き部分によって構成することで、ステージ5を形成する際の平面度を容易に確保できるという利点がある。
また、ステージ5は、ステージ駆動部31による挿抜位置P1から画像取得位置P2へのステージ5の移動に連動して試料保持部材6を載置面位置決め部44に突き当てるクランプ部51を有している。これにより、ステージ5が画像取得位置P2に移動する際に試料保持部材6が位置ずれしてしまうことを抑止できる。また、クランプ部51は、ステージ駆動部31による画像取得位置P2から挿抜位置P1へのステージ5の移動に連動して試料保持部材6の保持を解除するようになっている。したがって、挿抜位置P1におけるステージ5と受台32との間の試料保持部材6の受け渡しが阻害されることもない。
また、試料保持部材の挿抜機構30では、受台32に対応して試料保持部材6の挿抜口部82が設けられ、挿抜口部82を構成する上壁部82a及び側壁部82b,82bは、挿抜口部82の奥側から手前側に向かって裾広がりとなるテーパ部83を有している。また、挿抜口部82では、受台32が進出位置Q1に移動したときに、受面73と挿抜口部82を構成する上壁部82aとの間に試料保持部材6の厚さよりも大きい隙間Wが存在するようになっている。これにより、挿抜口部82を通して受台32に試料保持部材6を配置する際、或いは受台32から試料保持部材6を取り出す際の作業性を向上できる。