JP2014240132A - 積層チューブ - Google Patents

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Abstract

【課題】層間接着性、薬液透過防止性、低温耐衝撃性、耐劣化燃料性、環境応力負荷耐性、及びモノマー、オリゴマーの耐溶出性に優れた積層チューブを提供する。【解決手段】脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層、特定の側鎖1,2−ジオール単位を含有するビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層、及びアミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入されたフッ素系重合体(C)からなる(c)層を含む、少なくとも3層以上からなる積層チューブ。【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪族ポリアミド(ポリアミド11、12等)からなる層、特定の構造単位を有する変性ビニルアルコール系重合体からなる層、及び特定の官能基を有するフッ素系重合体からなる層よりなる積層チューブであって、層間接着性、薬液透過防止性、低温耐衝撃性、耐劣化燃料性、環境応力負荷耐性、及びモノマー、オリゴマーの耐溶出性に優れる積層チューブに関する。
自動車配管用チューブにおいては、古くは道路の凍結防止剤による発錆の問題や、地球温暖化防止、省エネルギー化の要請を受けて、その主要素材は、金属から、防錆性に優れ軽量な樹脂への代替が進みつつある。通常、配管用チューブとして使用される樹脂は、ポリアミド系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等が挙げられるが、これらを使用した単層チューブの場合、耐熱性、耐薬品性等が不十分なことから、適用可能な範囲が限定されていた。
また、自動車配管用チューブは、ガソリンの消費節約、高性能化の観点から、メタノール、エタノール等の沸点の低いアルコール類、あるいはメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)等のエーテル類をブレンドした含酸素ガソリン等が移送される。さらに、環境汚染防止の観点から、配管用チューブ隔壁を通じての揮発性炭化水素等の拡散による大気中への漏洩防止を含めた厳しい排ガス規制が実施されている。かかる厳しい規制に対して、従来から使用されている、ポリアミド系樹脂、特に、強度、靭性、耐薬品性、柔軟性等に優れるポリアミド11又はポリアミド12を単独で使用した単層チューブは、上記の薬液に対する透過防止性は十分でなく、特に含アルコールガソリン透過防止性に対する改良が求められている。
この問題を解決する方法として、薬液透過防止性の良好な樹脂、例えば、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(TFE/HFP,FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(TFE/HFP/VDF,THV)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(TFE/HFP/VDF/PAVE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(TFE/PAVE,PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(TFE/HFP/PAVE)、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体(CTFE/PAVE/TFE,CPT)が配置された積層チューブが提案されてきた(例えば、特許文献1等参照)。
特に、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)は、薬液透過防止性、特にガソリンに対する透過防止性に非常に優れている。例えば、ポリアミド12よりなる最外層、変性ポリオレフィンよりなる接着層、ポリアミド6よりなる外層、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)よりなる中間層、ポリアミド6よりなる最内層から構成された燃料配管が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、該配管において、最内層としてポリアミド6を用いた場合、ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性(耐劣化燃料性)や塩化カルシウム性に対する耐性(耐薬品性)が劣る。また、ポリアミド12よりなる最外層、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド12/6共重合体、ポリアミド612、ポリアミド610、ポリアミド12とポリアミド6と相溶化剤の混合物からなる群より選ばれる少なくとも1種よりなる接着層、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)よりなる中間層、ポリアミド6又はポリアミド12よりなる最内層から構成された積層複合体が提案されている(特許文献3、4参照)。同様に、ポリアミド12よりなる最外層、ポリアミド6とポリアミド12とポリアミン/ポリアミド共重合体の混合物よりなる接着層、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)よりなる中間層、ポリアミド6又はポリアミド12よりなる最内層から構成された積層複合体が提案されている(特許文献5参照)。該技術は、ポリアミド12とエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物との両者を介在する接着層として、特定組成比のポリアミド共重合体や、ポリアミド6とポリアミド12と相溶化剤からなる混合物が良好な層間接着強度を有するものとして提案されている。しかしながら、最内層としてポリアミド6を用いた場合、耐劣化燃料性や塩化亜鉛性、耐塩化カルシウム性に劣るという課題に対する解決はなされていない。さらに、ポリアミド12を燃料配管の最内層に使用した場合、含アルコールガソリン等の燃料との接触によりモノマーやオリゴマー等低分子量成分や添加剤、可塑剤が含アルコールガソリン中へ溶出され、常温においては析出する。よって、自動車配管用チューブ、及びフィルター、ノズル等燃料配管内での閉塞が懸念される。
一方、自動車配管用チューブにおいて、とりわけ燃料に直接接する内層用材料としては、燃料中に存在するエタノールやメタノール等の腐食性薬液に対する耐性、及びこれらに対する透過防止性に優れる樹脂を使用することが求められている。この点、内層材料としては、耐熱性、耐薬品性、及び薬液透過防止性に優れるフッ素系樹脂が最も好ましいものの一つと考えられる。
特に、フッ素系樹脂は、その長所を最大限に生かし、短所を最小とするため、フッ素系樹脂と他の異種材料との接着、積層化等の検討が種々行なわれている。しかしながら、フッ素系樹脂は本来接着性に乏しく、他の異種材料と直接接着させることは困難であり、充分な接着強度は得られない。また、ある程度の接着強度が得られる場合でも、異種材料の種類により接着強度がばらつきやすく、接着強度が実用的に不充分であることが多かった。接着強度を高める手段としては、予めフッ素系樹脂チューブを成形しておき、表面処理を行った後に異種材料を被覆する方法や接着性樹脂を用いる共押出成形法等が挙げられる。特に接着性樹脂を用いる共押出成形法は、表面処理工程が不要なため、低コストな方法と言える。さらに、接着性樹脂を使用せず、フッ素系樹脂と異種材料とを直接接着する方法はさらにコスト面や管理面において有利な方法である。
将来においては、環境汚染防止の観点から、益々厳しい法規制が課せられ、配管用チューブ隔壁から透過して蒸散する燃料を極限まで抑制することが望まれるが、上記フッ素系樹脂を使用した配管用チューブにおいても、該隔壁から透過して蒸散する燃料を極限まで抑制することは困難である。これを克服する手段として、内層にフッ素系樹脂が配置され、これに対して外側にエチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物が配置された層とを有する燃料移送用チューブが提案されている(特許文献6、7参照)。本技術による燃料移送用チューブは、薬液透過防止性に非常に優れている。しかしながら、該燃料移送用チューブにおいて、フッ素系樹脂からなる層と、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層間に介在させる接着性樹脂として、変性ポリオレフィン樹脂やポリアミドとポリアミド/ポリアミングラフト共重合体、及び変性フッ素系樹脂又は変性ポリオレフィン樹脂の混合物が配置されることが提案されているが、その層間接着性は十分でなく、さらなる改良が望まれるところである。さらに、これら燃料移送用チューブはレイアウト上の制約や衝突時の変位吸収等のため、一般に曲げ応力を加えた状態で配管される場合が多く、該燃料移送用チューブの使用時に、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物からなる層内にクレーズと呼ばれる微小なクラックが発生し、薬液透過防止性が大きく損なわれるという問題を有しており、このような環境応力負荷への耐性を有する積層チューブの開発が求められるところである。
米国特許第5554425号 特開平3−177683号 特表2003−535717号 特開2003−021276号 特開2002−210904号 特開平5−247478号 特表2008−515658号
本発明の目的は、前記問題点を解決し、層間接着性、薬液透過防止性、低温耐衝撃性、耐劣化燃料性、環境応力負荷耐性、及びモノマー、オリゴマーの耐溶出性に優れた積層チューブを提供することにある。
本発明者らは、前記問題点を解決するために、鋭意検討した結果、脂肪族ポリアミド(ポリアミド11、12等)からなる層、特定の構造単位を有する変性ビニルアルコール系重合体からなる層、及び特定の官能基を有するフッ素系重合体からなる層よりなる積層チューブが、層間接着性と薬液透過防止性を両立し、さらに低温耐衝撃性、耐劣化燃料性、環境応力負荷耐性、モノマー、オリゴマーの耐溶出性等の諸特性に優れることを見出した。
即ち、本発明は、脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層、下記(1)式で表わされる側鎖1,2−ジオール単位を含有するビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層、及びアミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入されたフッ素系重合体(C)からなる(c)層を含む、少なくとも3層以上からなることを特徴とする積層チューブを提供するものである。
Figure 2014240132
[一般式(1)において、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示し、Xは単結合又は結合鎖を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示す。]
本発明の積層チューブの好ましい態様を以下に示す。好ましい態様は複数組み合わせることができる。
[1]脂肪族ポリアミド(A)が、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンデカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、及びポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体、又はこれらを形成する原料単量体を数種用いた共重合体であることを特徴とする積層チューブ。
[2]ビニルアルコール系重合体(B)における側鎖1,2−ジオール単位の含有量が0.1モル%以上30モル%以下であることを特徴とする積層チューブ。
[3]ビニルアルコール系重合体(B)は、ポリビニルアルコール系重合体又はエチレン/ビニルエステル系共重合体ケン化物であることを特徴とする積層チューブ。
[4]ビニルアルコール系重合体(B)は、エチレン単位を20モル%以上60モル%以下含有するエチレン/酢酸ビニル系共重合体ケン化物であることを特徴とする積層チューブ。
[5]フッ素系重合体(C)の融点が150℃以上230℃以下であることを特徴とする積層チューブ。
[6]脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層が、最外層に配置されることを特徴とする積層チューブ。
[7]ビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層が、脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層とフッ素系重合体(C)からなる(c)層の間に配置され、(b)層と(c)層が直接接着していることを特徴とする積層チューブ。
[8]積層チューブにおける最内層に、導電性フィラーを含有させたフッ素系重合体組成物からなる導電層が配置されることを特徴とする積層チューブ。
[9]積層チューブが、共押出成形により製造されることを特徴とする積層チューブ。
[10]燃料チューブとして使用されることを特徴とする積層チューブ。
[11]積層チューブが、少なくとも波形領域を有するものであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の積層チューブ。
本発明の積層チューブは、層間接着性と薬液透過防止性を両立し、低温耐衝撃性、耐劣化燃料性、環境応力負荷耐性、モノマー、オリゴマーの耐溶出性等の諸特性に優れる。特に、チューブ隔壁から透過して蒸散するアルコール混合炭化水素を極限まで抑制することができ、厳しい環境規制への適合が可能となる。さらに、積層チューブの実使用時に問題となる、ガソリンが酸化されて生成するサワーガソリンに対する耐性(耐劣化燃料性)や曲げ応力等の環境応力負荷耐性に優れる。よって、本発明の積層チューブは、あらゆる環境下においても使用可能であり、かつ信頼性が高く、その利用価値は極めて大きい。
本発明において使用される、脂肪族ポリアミド(A)は、主鎖中にアミド結合(−CONH−)を有し、ラクタム、アミノカルボン酸、又は脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸を原料として、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより得られる。
ラクタムとしては、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、α−ピペリドン等、アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
脂肪族ジアミンとしては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、1,19−ノナデカンジアミン、1,20−エイコサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
脂肪族ポリアミド(A)としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンスクシナミド(ポリアミド44)、ポリテトラメチレングルタミド(ポリアミド45)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリテトラメチレンスベラミド(ポリアミド48)、ポリテトラメチレンアゼラミド(ポリアミド49)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンスクシナミド(ポリアミド54)、ポリペンタメチレングルタミド(ポリアミド55)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリペンタメチレンスベラミド(ポリアミド58)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンスクシナミド(ポリアミド64)、ポリヘキサメチレングルタミド(ポリアミド65)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンスベラミド(ポリアミド68)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテトラデカミド(ポリアミド614)、ポリヘキサメチレンヘキサデカミド(ポリアミド616)、ポリヘキサメチレンオクタデカミド(ポリアミド618)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンスベラミド(ポリアミド98)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンスベラミド(ポリアミド108)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンスベラミド(ポリアミド128)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)等の単独重合体やこれらを形成する原料単量体を数種用いた共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)やこれらを形成する原料単量体を数種用いた共重合体等が好ましく、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンデカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、及びポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体、又はこれらを形成する原料単量体を数種用いた共重合体がより好ましい。
脂肪族ポリアミド(A)の製造装置としては、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置、一軸型混練押出機、二軸型混練押出機等の混練反応押出機等、公知のポリアミド製造装置が挙げられる。重合方法としては溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法を用い、常圧、減圧、加圧操作を繰り返して重合することができる。これらの重合方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。
また、JIS K−6920に準拠して、96%硫酸、ポリマー濃度1%、25℃の条件下にて測定した脂肪族ポリアミド(A)の相対粘度は、得られる積層チューブの機械的性質を確保することと、溶融時の粘度を適正範囲にして積層チューブの望ましい成形性を確保する観点から、1.5以上5.0以下であることが好ましく、2.0以上4.5以下であることがより好ましい。
脂肪族ポリアミド(A)は、該ポリアミド1gあたりの末端アミノ基濃度を[A](μeq/g)、末端カルボキシル基濃度を[B](μeq/g)とした時、[A]>[B]+5を満たす(以下、末端変性脂肪族ポリアミドと称する場合がある。)ことが後記側鎖1,2−ジオール単位を含有するビニルアルコール系重合体(B)やアミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入されたフッ素系重合体(C)との層間接着性を考慮すると好ましく、[A]>[B]+10であることがより好ましく、[A]>[B]+15であることがさらに好ましい。さらに、ポリアミドの溶融安定性やゲル状物発生抑制の観点から、[A]>20であることが好ましく、30<[A]<120であることがより好ましい。
なお、末端アミノ基濃度[A](μeq/g)は、該ポリアミドをフェノール/メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定することができる。末端カルボキシル基濃度[B](μeq/g)は、該ポリアミドをベンジルアルコールに溶解し、0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定して測定することができる。
末端変性脂肪族ポリアミドは、前記ポリアミド原料を、アミン類の存在下に、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合することにより製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、積層チューブの層間接着性を考慮した場合、重合時の段階で添加することが好ましい。
上記アミン類としてはモノアミン、ジアミン、トリアミン、ポリアミンが挙げられる。また、アミン類の他に、上記の末端基濃度条件の範囲を外れない限り、必要に応じて、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等のカルボン酸類を添加しても良い。これら、アミン類、カルボン酸類は、同時に添加しても、別々に添加しても良い。また、下記例示のアミン類、カルボン酸類は、1種又は2種以上を用いることができる。
添加するモノアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オクタデシレンアミン、エイコシルアミン、ドコシルアミン等の脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン、ベンジルアミン、β−フエニルメチルアミン等の芳香族モノアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、N,N−ジヘキシルアミン、N,N−ジオクチルアミン等の対称第二アミン、N−メチル−N−エチルアミン、N−メチル−N−ブチルアミン、N−メチル−N−ドデシルアミン、N−メチル−N−オクタデシルアミン、N−エチル−N−ヘキサデシルアミン、N−エチル−N−オクタデシルアミン、N−プロピル−N−ヘキサデシルアミン、N−プロピル−N−ベンジルアミン等の混成第二アミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
添加するジアミンの具体例としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,15−ペンタデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、1,17−ヘプタデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、2,5−ビス(アミノメチル)ノルボルナン、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
添加するトリアミンの具体例としては、1,2,3−トリアミノプロパン、1,2,3−トリアミノ−2−メチルプロパン、1,2,4−トリアミノブタン、1,2,3,4−テトラミノブタン、1,3,5−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4−トリアミノシクロヘキサン、1,2,3−トリアミノシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラミノシクロヘキサン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、1,2,3−トリアミノベンゼン、1,2,4,5−テトラミノベンゼン、1,2,4−トリアミノナフタレン、2,5,7−トリアミノナフタレン、2,4,6−トリアミノピリジン、1,2,7,8−テトラミノナフタレン、1,4,5,8−テトラミノナフタレン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
添加するポリアミンは、一級アミノ基(−NH)及び/又は二級アミノ基(−NH−)を複数有する化合物であればよく、例えば、ポリアルキレンイミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等が挙げられる。活性水素を備えたアミノ基は、ポリアミンの反応点である。
ポリアルキレンイミンは、エチレンイミンやプロピレンイミン等のアルキレンイミンをイオン重合させる方法、或いは、アルキルオキサゾリンを重合させた後、該重合体を部分加水分解又は完全加水分解させる方法等で製造される。ポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、或いは、エチレンジアミンと多官能化合物との反応物等が挙げられる。ポリビニルアミンは、例えば、N−ビニルホルムアミドを重合させてポリ(N−ビニルホルムアミド)とした後、該重合体を塩酸等の酸で部分加水分解又は完全加水分解することにより得られる。ポリアリルアミンは、一般に、アリルアミンモノマーの塩酸塩を重合させた後、塩酸を除去することにより得られる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、ポリアルキレンイミンが好ましい。
ポリアルキレンイミンとしては、エチレンイミン、プロピレンイミン、1,2−ブチレンイミン、2,3−ブチレンイミン、1,1−ジメチルエチレンイミン等の炭素原子数2以上8以下のアルキレンイミンの1種又は2種以上を常法により重合して得られる単独重合体や共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレンイミンがより好ましい。ポリアルキレンイミンは、アルキレンイミンを原料として、これを開環重合させて得られる1級アミン、2級アミン、及び3級アミンを含む分岐型ポリアルキレンイミン、あるいはアルキルオキサゾリンを原料とし、これを重合させて得られる1級アミンと2級アミンのみを含む直鎖型ポリアルキレンイミン、三次元状に架橋された構造のいずれであってもよい。さらに、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミン、ビスアミノプロピルエチレンジアミン等を含むものであってもよい。ポリアルキレンイミンは、通常、含まれる窒素原子上の活性水素原子の反応性に由来して、第3級アミノ基の他、活性水素原子をもつ第1級アミノ基や第2級アミノ基(イミノ基)を有する。
ポリアルキレンイミン中の窒素原子数は、特に制限はないが、4以上3,000以下であることが好ましく、8以上1,500以下であることがより好ましく、11以上500以下であることがさらに好ましい。また、ポリアルキレンイミンの数平均分子量は、100以上20,000以下であることが好ましく、200以上10,000以下であることがより好ましく、500以上8,000以下であることがさらに好ましい。
一方、添加するカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、ベヘン酸、エルカ酸等の脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイン酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘキサデセン二酸、オクタデカン二酸、オクタデセン二酸、エイコサン二酸、エイコセン二酸、ドコサン二酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、2,4,4−トリメチルアジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、m−キシリレンジカルボン酸、p−キシリレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、トリメシン酸等のトリカルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
添加されるアミン類の使用量は、製造しようとする末端変性脂肪族ポリアミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度、及び相対粘度を考慮して、公知の方法により適宜決められる。通常、ポリアミド原料1モルに対して(繰り返し単位を構成する単量体又は単量体ユニット1モル)、アミン類の添加量は、十分な反応性を得ることと、所望の粘度を有するポリアミドの製造を容易とする観点から、0.5meq/モル以上20meq/モル以下であることが好ましく、1.0meq/モル以上10meq/モル以下であることがより好ましい(アミノ基の当量(eq)は、カルボキシル基と1:1で反応してアミド基を形成するアミノ基の量を1当量とする。)。
末端変性脂肪族ポリアミドにおいては、上記例示のアミン類のうち、末端基濃度の条件を満たすために、ジアミンを重合時に添加することが好ましく、該ジアミンが、ゲル発生抑制という観点から、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、及びポリアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
また、末端変性脂肪族ポリアミドは、上記末端基濃度を満たす限りにおいては、末端基濃度の異なる2種類以上のポリアミドの混合物でも構わない。この場合、ポリアミド混合物の末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度は、混合物を構成するポリアミドの末端アミノ基濃度、末端カルボキシル基濃度、及びその配合割合により決まる。
脂肪族ポリアミド(A)は、前記の単独重合体の混合物、前記の共重合体の混合物、単独重合体と共重合体の混合物であってもよいし、あるいは他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。混合物中の脂肪族ポリアミド(A)の含有量は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
他のポリアミド系樹脂としては、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドMXDT(H))、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンスベラミド(ポリアミドPXD8)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリパラキシリレンドデカミド(ポリアミドPXD12)、ポリパラキシリレンテレフタラミド(ポリアミドPXDT)、ポリパラキシリレンイソフタラミド(ポリアミドPXDI)、ポリパラキシリレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドPXDT(H))、ポリパラキシリレンナフタラミド(ポリアミドPXDN)、ポリパラフェニレンテレフタラミド(PPTA)、ポリパラフェニレンイソフタラミド(PPIA)、ポリメタフェニレンテレフタラミド(PMTA)、ポリメタフェニレンイソフタラミド(PMIA)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンアジパミド)(ポリアミド2,6−BAN6)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンスベラミド)(ポリアミド2,6−BAN8)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンアゼラミド)(ポリアミド2,6−BAN9)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンセバカミド)(ポリアミド2,6−BAN10)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンドデカミド)(ポリアミド2,6−BAN12)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンテレフタラミド)(ポリアミド2,6−BANT)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンイソフタラミド)(ポリアミド2,6−BANI)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミド2,6−BANT(H))、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンナフタラミド)(ポリアミド2,6−BANN)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンアジパミド)(ポリアミド1,3−BAC6)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンスベラミド(ポリアミド1,3−BAC8)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンアゼラミド)(ポリアミド1,3−BAC9)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンセバカミド)(ポリアミド1,3−BAC10)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンドデカミド)(ポリアミド1,3−BAC12)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンテレフタラミド)(ポリアミド1,3−BACT)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンイソフタラミド)(ポリアミド1,3−BACI)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミド1,3−BACT(H))、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンナフタラミド)(ポリアミド1,3−BACN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンアジパミド)(ポリアミド1,4−BAC6)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンスベラミド)(ポリアミド1,4−BAC8)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンアゼラミド)(ポリアミド1,4−BAC9)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンセバカミド)(ポリアミド1,4−BAC10)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンドデカミド)(ポリアミド1,4−BAC12)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタラミド)(ポリアミド1,4−BACT)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンイソフタラミド)(ポリアミド1,4−BACI)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミド1,4−BACT(H))、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンナフタラミド)(ポリアミド1,4−BACN)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンアジパミド)(ポリアミドPACM6)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンスベラミド)(ポリアミドPACM8)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンアゼラミド)(ポリアミドPACM9)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンセバカミド)(ポリアミドPACM10)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンドデカミド)(ポリアミドPACM12)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンテトラデカミド)(ポリアミドPACM14)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンヘキサデカミド)(ポリアミドPACM16)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンオクタデカミド)(ポリアミドPACM18)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンテレフタラミド)(ポリアミドPACMT)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンイソフタラミド)(ポリアミドPACMI)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドPACMT(H))、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンナフタラミド)(ポリアミドPACMN)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)アジパミド)(ポリアミドMACM6)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)スベラミド)(ポリアミドMACM8)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)アゼラミド)(ポリアミドMACM9)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)セバカミド)(ポリアミドMACM10)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)ドデカミド)(ポリアミドMACM12)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)テトラデカミド)(ポリアミドMACM14)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)ヘキサデカミド)(ポリアミドMACM16)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)オクタデカミド)(ポリアミドMACM18)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)テレフタラミド)(ポリアミドMACMT)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)イソフタラミド)(ポリアミドMACMI)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)ヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドMACMT(H))、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)ナフタラミド)(ポリアミドMACMN)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンアジパミド)(ポリアミドPACP6)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンスベラミド)(ポリアミドPACP8)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンアゼラミド)(ポリアミドPACP9)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンセバカミド)(ポリアミドPACP10)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンドデカミド)(ポリアミドPACP12)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンテトラデカミド)(ポリアミドPACP14)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンヘキサデカミド)(ポリアミドPACP16)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンオクタデカミド)(ポリアミドPACP18)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンテレフタラミド)(ポリアミドPACPT)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンイソフタラミド)(ポリアミドPACPI)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドPACPT(H))、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンナフタラミド)(ポリアミドPACPN)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンスベラミド(ポリアミドIPD8)、ポリイソホロンアゼラミド(ポリアミドIPD9)、ポリイソホロンセバカミド(ポリアミドIPD10)、ポリイソホロンドデカミド(ポリアミドIPD12)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)、ポリイソホロンイソフタラミド(ポリアミドIPDI)、ポリイソホロンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドIPDT(H))、ポリイソホロンナフタラミド(ポリアミドIPDN)、ポリテトラメチレンテレフタラミド(ポリアミド4T)、ポリテトラメチレンイソフタラミド(ポリアミド4I)、ポリテトラメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド4T(H))、ポリテトラメチレンナフタラミド(ポリアミド4N)、ポリペンタメチレンテレフタラミド(ポリアミド5T)、ポリペンタメチレンイソフタラミド(ポリアミド5I)、ポリペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド5T(H))、ポリペンタメチレンナフタラミド(ポリアミド5N)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミド6N)、ポリ(2−メチルペンタメチレンテレフタラミド)(ポリアミドM5T)、ポリ(2−メチルペンタメチレンイソフタラミド)(ポリアミドM5I)、ポリ(2−メチルペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドM5T(H))、ポリ(2−メチルペンタメチレンナフタラミド)(ポリアミドM5N)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリ(2−メチルオクタメチレンテレフタラミド)(ポリアミドM8T)、ポリ(2−メチルオクタメチレンイソフタラミド)(ポリアミドM8I)、ポリ(2−メチルオクタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドM8T(H))、ポリ(2−メチルオクタメチレンナフタラミド)(ポリアミドM8N)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリトリメチルヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミドTMHI)、ポリトリメチルヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドTMHT(H))、ポリトリメチルヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミドTMHN)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)やこれらポリアミドの原料単量体を数種用いた共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、混合するその他の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリメチルペンテン(TPX)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)、スチレン/ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン/イソプレン共重合体(SIR)、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体(SIBR)、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン共重合体(SIS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体(SEPS)等のポリスチレン系樹脂、カルボキシル基、及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合体(PET/PEI)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニルサルホン(PPSU)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体(NBR)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/アクリル酸メチル共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体(CPT)等のフッ素系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルアミドイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、脂肪族ポリアミド(A)には、可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤としては、ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、トルエンスルホン酸アルキルアミド類、ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類等が挙げられる。
ベンゼンスルホン酸アルキルアミド類としては、ベンゼンスルホン酸プロピルアミド、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。トルエンスルホン酸アルキルアミド類としては、N−エチル−o−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−o−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等が挙げられる。ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類としては、o−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、o−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、o−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル、o−ヒドロキシ安息香酸オクチルオクチル、p−ヒドロキシ安息香酸オクチルオクチル、o−ヒドロキシ安息香酸デシルドデシル、p−ヒドロキシ安息香酸デシルドデシル、o−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、o−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、o−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、o−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、o−ヒドロキシ安息香酸デシル、p−ヒドロキシ安息香酸デシル、o−ヒドロキシ安息香酸ドデシル、p−ヒドロキシ安息香酸ドデシル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、ベンゼンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等のベンゼンスルホン酸アルキルアミド類、N−エチル−p−トルエンスルホン酸ブチルアミド、N−エチル−p−トルエンスルホン酸2−エチルヘキシルアミド等のトルエンスルホン酸アルキルアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシル、p−ヒドロキシ安息香酸エチルデシル等のヒドロキシ安息香酸アルキルエステル類が好ましく、ベンゼンスルホン酸ブチルアミド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ヘキシルデシルがより好ましい。
可塑剤の含有量は、積層チューブの柔軟性や低温耐衝撃性を十分に確保する観点から、脂肪族ポリアミド(A)100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、2質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
また、脂肪族ポリアミド(A)には、耐衝撃改良材を添加することが好ましい。耐衝撃改良材としては、ゴム状重合体が挙げられ、ISO 178に準拠して測定した曲げ弾性率が500MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率がこの値を超えると、衝撃改良効果が不十分となる場合がある。
耐衝撃改良材としては、(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマー重合体、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。
前記(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素原子数3以上のα−オレフィンを共重合した重合体であり、炭素原子数3以上のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、4,8−ジメチル−1,4,8−デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,5−ノルボルナジエン等の非共役ジエンのポリエンを共重合してもよい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
前記(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体であり、α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、α,β−不飽和カルボン酸エステル単量体としては、これら不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
前記アイオノマー重合体は、オレフィンとα,β−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化されたものである。オレフィンとしてはエチレンが好ましく用いられ、α,β−不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸が好ましく用いられるが、ここに例示したものに限定されるものではなく、不飽和カルボン酸エステル単量体が共重合されていても構わない。また、金属イオンはLi、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の他、Al、Sn、Sb、Ti、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Cd等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、前記芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン化合物系重合体ブロックからなるブロック共重合体であり、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを少なくとも1個と、共役ジエン化合物系重合体ブロックを少なくとも1個有するブロック共重合体が用いられる。また、上記のブロック共重合体では、共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合が水素添加されていてもよい。
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する単位から主としてなる重合体ブロックである。その場合の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,5−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、場合により少量の他の不飽和単量体からなる単位を有していてもよい。
共役ジエン化合物系重合体ブロックは、1,3−ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン系化合物の1種又は2種以上から形成された重合体ブロックであり、水素添加した芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体では、その共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合部分の一部又は全部が水素添加により飽和結合になっている。
芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及びその水素添加物の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。これらの中でも、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及び/又はその水素添加物として、1個の芳香族ビニル化合物重合体ブロックと1個の共役ジエン化合物系重合体ブロックが直鎖状に結合したジブロック共重合体、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック−共役ジエン化合物系重合体ブロック−芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの順に3つの重合体ブロックが直鎖状に結合しているトリブロック共重合体、及びそれらの水素添加物の1種又は2種以上が好ましく用いられ、未水添又は水添スチレン/ブタジエンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(エチレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(イソプレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
また、耐衝撃改良材として用いられる(エチレン及び/又はプロピレン)/α−オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β−不飽和カルボン酸及び/又は不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、アイオノマー重合体、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、カルボン酸及び/又はその誘導体で変性された重合体が好ましく使用される。このような成分により変性することにより、脂肪族ポリアミド(A)に対して親和性を有する官能基をその分子中に含むこととなる。
脂肪族ポリアミド(A)に対して親和性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基、エポキシ基等が挙げられる。これらの官能基を含む化合物の例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸、及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
耐衝撃改良材の含有量は、積層チューブの機械的強度や低温耐衝撃性を十分に確保する観点から、脂肪族ポリアミド(A)100質量部に対して、1質量部以上35質量部以下であることが好ましく、3質量部以上25質量部以下であることがより好ましい。
さらに、脂肪族ポリアミド(A)には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑剤、無機充填材、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、着色剤等を添加してもよい。
本発明において使用されるビニルアルコール系重合体(B)は、下記(1)式で示される側鎖1,2−ジオール単位を含有するビニルアルコール系重合体である(以下、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)と称する場合がある。)。
Figure 2014240132
(1)式において、RからRはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を表す。前記有機基としては特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基等の飽和炭化水素基、フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基が挙げられ、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、炭素原子数1以上30以下の飽和炭化水素基又は水素原子が好ましく、炭素原子数1以上15以下の飽和炭化水素基又は水素原子がより好ましく、炭素原子数1以上4以下の飽和炭化水素基又は水素原子がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。RからRのすべてが水素原子であることが最も好ましい。
(1)式において、Xは単結合又は結合鎖であり、薬液透過防止性を好適に維持する観点等から、単結合であることが好ましい。上記結合鎖としては、特に限定しないが、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、フェニレン、ナフチレン等の炭化水素鎖(これらの炭化水素はフッ素、塩素、臭素等のハロゲン等で置換されていても良い。)の他、−O−、−(CHO)−、−(OCH−、−(CHO)CH−等のエーテル結合部位を含む単位、−CO−、−COCO−、−CO(CHmCO−、−CO(C)CO−等のカルボニル基を含む単位、−S−、−CS−、−SO−、−SO−等の硫黄原子を含む単位、−NR−、−CONR−、−NRCO−、−CSNR−、−NRCS−、−NRNR−等の窒素原子を含む単位、−HPO−等のリン原子を含む単位等のヘテロ原子を含む単位、−Si(OR)−、−OSi(OR)−、−OSi(OR)O−等の珪素原子を含む単位、−Ti(OR)−、−OTi(OR)−、−OTi(OR)O−等のチタン原子を含む単位、−Al(OR)−、−OAl(OR)−、−OAl(OR)O−等のアルミニウム原子等の金属原子を含む単位等が挙げられる(これらの単位中、Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましい。また、mは自然数であり、通常1以上30以下であり、1以上15以下であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましい。)。これらの中でも、製造時あるいは使用時の安定性の観点から、炭素原子数1以上10以下の炭化水素鎖がより好ましく、炭素原子数1以上6以下の炭化水素鎖がさらに好ましく、炭素原子数1の炭化水素鎖が特に好ましい。
上記(1)式で表される側鎖1,2−ジオール単位における最も好ましい構造は、RからRのすべてが水素原子であり、Xが単結合である構造単位である。すなわち、下記式(1a)で示される構造単位が最も好ましい。
Figure 2014240132
以上のような側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)は、側鎖1,2−ジオール単位を有しないビニルアルコール系重合体と比較して融点が低く、溶融成形性に優れる。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)中の側鎖1,2−ジオール単位の含有量は、良好な低温耐衝撃性、環境応力負荷耐性や溶融成形性を確保し、薬液透過防止性を好適に維持する観点から、全単量体単位に対し、0.1モル%以上30モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以上25モル%以下であることがより好ましく、1モル%以上20モル%以下であることがさらに好ましい。ここで、側鎖1、2−ジオール単位の含有量は、H−NMRの測定結果より算出することができる。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)を構成するビニルアルコール系重合体は、ビニルエステル系重合体のケン化物としてのポリビニルアルコール系重合体(PVA系重合体)やエチレン/ビニルエステル系共重合体ケン化物(EVOH系重合体)を含む概念である。すなわち、本発明で用いられる側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)としては、上記(1)式で表わされる側鎖1,2−ジオール単位を含有する側鎖1,2−ジオール含有PVA系重合体のほか、側鎖1,2−ジオール単位を含有するEVOH系重合体が挙げられる。
上記側鎖1,2−ジオール含有PVA系重合体は、ビニルエステル系単量体、側鎖1,2−ジオール単位となる単量体、及びPVA系重合体としての特性を損なわない範囲で含まれ得るビニルエステルと共重合可能な単量体との重合体のケン化物であり、ビニルアルコール単位、側鎖1,2−ジオール単位、共重合可能な単量体に由来する単位、及び残存したビニルエステル単位を有する。側鎖1,2−ジオール含有PVA系重合体中のビニルアルコール単位及び側鎖1,2−ジオール単位の合計含有量は、全単量体単位に対し、80モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
上記側鎖1,2−ジオール含有EVOH系重合体は、エチレン、ビニルエステル系単量体、側鎖1,2−ジオール単位となる単量体、及びEVOH系重合体としての特性を損なわない範囲で含まれ得るビニルエステル及び/又はエチレンと共重合可能な単量体との共重合体のケン化物であり、エチレン単位、ビニルアルコール単位、側鎖1,2−ジオール単位、共重合可能な単量体に由来する単位、及び残存したビニルエステル単位を有する。上記エチレン単位の含有量は、薬液透過防止性を好適に維持する観点から、全単量体単位に対し、20モル%以上60モル%以下であることが好ましく、20モル%以上50モル%以下であることがより好ましく、25モル%以上48モル%以下であることがさらに好ましい。また、側鎖1,2−ジオール含有EVOH系重合体中のビニルアルコール単位及び側鎖1,2−ジオール単位の合計含有量は、全単量体単位に対し、40モル%以上80モル%以下であることが好ましい。
上記ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、酢酸1−ブテニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。これらの中でも、経済面から酢酸ビニルが好ましい。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)には、本発明の目的が阻害されない範囲であれば、他の単量体を共重合することも可能である。他の単量体としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセン等のα−オレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩の不飽和酸類あるいはその塩、又は炭素原子数1以上18以下のモノ又はジアルキルエステル類、アクリルアミド、炭素原子数1以上18以下のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその酸塩又はその4級塩等のアクリルアミド類、メタクリルアミド、炭素原子数1以上18以下のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその酸塩又はその4級塩等のメタクリルアミド類、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、アクリルニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類、炭素原子数1以上18以下のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトシキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシランγ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン類、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)は、最も好ましい構造である構造単位(1a)を含有するビニルアルコール系重合体を例とすると、[1]側鎖1,2−ジオール単位を供給できる単量体として3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−オール−1−ブテン、4−アシロキシ−3−オール−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン等を用い、これらとビニルエステル系単量体(EVOH系重合体の場合にはさらにエチレン)と共重合して共重合体を得、次いでこれをケン化する方法、[2]側鎖1,2−ジオール単位を供給できる単量体としてビニルエチレンカーボネート等を用い、これらとビニルエステル系単量体(EVOH系重合体の場合にはさらにエチレン)と共重合して共重合体を得、次いでこれをケン化、脱炭酸する方法、[3]側鎖1,2−ジオール単位を供給できる単量体として2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等を用い、これらとビニルエステル系単量体(EVOH系重合体の場合にはさらにエチレン)と共重合して共重合体を得、次いでケン化、脱アセタール化する方法等により製造することができる。
上記製造方法のうち、[1]の方法を採用することが好ましく、共重合反応性を考慮すると、3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとビニルエステル系単量体(及びエチレン)を共重合して得られた共重合体をケン化する方法が好ましい。3,4−ジアシロキシ−1−ブテンとして、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いることがより好ましい。かかる製造方法によれば、重合が良好に進行し、側鎖1,2−ジオール単位をビニルアルコール系重合体の主鎖中に均一に導入しやすく、結果として未反応モノマーが少なくなり、不純物を減らすことができるという利点がある。
具体的に説明すると、酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを共重合させた際の各単量体の反応性比は、r(酢酸ビニル)=0.710、r(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.701である。これは[2]のビニルエチレンカーボネートを用いた場合の各単量体の反応性比、r(酢酸ビニル)=0.85、r(ビニルエチレンカーボネート)=5.4と比較すると、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの方が酢酸ビニルとの共重合反応性に優れている。
また、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数は、Cx(3,4−ジアセトキシ−1−ブテン)=0.003(65℃)である。[2]の方法で用いるビニルエチレンカーボネートのCx(ビニルエチレンカーボネート)=0.005(65℃)や、[3]の方法で用いる2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソランのCx(2,2−ジメチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン)=0.023(65℃)と比較すると、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの連鎖移動定数が小さく、重合度が上がりやすく、重合速度低下の原因となりにくい。
さらに、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いた場合、得られる共重合体をケン化したときに生成される副生物は、酢酸ビニル単位に由来する副生物と同一である。したがって、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用いる[1]の方法では、後処理に特別な装置や工程を設ける必要がないという工業的利点もある。
一方、[2]の製法により製造された側鎖1,2−ジオール単位を有するビニルアルコール系重合体は、ケン化度が低い場合や、脱炭酸が不充分な場合には側鎖にカーボネート環が残存し、溶融成形時に脱炭酸され、樹脂が発泡する原因となる傾向がある。また、[3]により製造された側鎖1,2−ジオール単位を有するビニルアルコール系重合体も、製造方法[2]によるものと同様に、側鎖に残存した単量体由来の官能基(アセタール環)が溶融成形時に脱離して、臭気が発生する傾向があるため、これに留意して使用する必要がある。
なお、[1]の方法の原料として用いる3,4−ジオール−1−ブテンは、イーストマンケミカル社から、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンは工業生産用ではイーストマンケミカル社、試薬レベルではアクロス社の製品を市場から入手することができる。1,4−ブタンジオール製造工程中の副生成物として得られる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを利用することも出来る。原料として用いられる3,4−ジアセトキシ−1−ブテンには、少量の不純物として3,4−ジアセトキシ−1−ブタンや1,4−ジアセトキシ−1−ブテン、1,4−ジアセトキシ−1−ブタン等を含んでいても良い。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)のケン化度(ビニルアルコール系重合体中のビニルエステル単位のうち、ケン化によりビニルアルコール単位となっているものの含有量)は特に限定されないが、薬液透過防止性を好適に維持する観点から、90モル%以上100モル%以下であることが好ましく、95モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、99モル%以上100モル%以下であることがさらに好ましい。
以上のような構成を有する側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の融点は、100℃以上220℃以下であることが好ましく、130℃以上200℃以下であることがより好ましく、150℃以上190℃以下であることがさらに好ましい。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の210℃、荷重2160gにおけるメルトフローレート(MFR)は、溶融時の粘度を適正範囲にして望ましい成形性を確保し、溶融張力を過度に低下させず、成形時にドローダウン等の問題の発生を防止する観点から、0.1g/10分以上200g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましく、2g/10分以上50g/10分以下であることがさらに好ましい。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)は、1種類だけでなく、ケン化度が異なる側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)、分子量が異なる側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)、PVA系重合体又はEVOH系重合体を構成する他の共重合単量体の種類が異なっている側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)等、2種類以上の側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)を組み合わせて用いてもよい。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)として、側鎖1,2−ジオール含有EVOH系重合体を用いる場合、エチレン単位の含有量が異なるものを併せて用いてもよい。エチレン単位の含有量が異なるものを併せて用いる場合、その他の単位は同じであっても異なっていてもよいが、そのエチレン含有量差は1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、2モル%以上20モル%以下であることがさらに好ましい。
さらに、側鎖1,2−ジオール単位を含有していないPVA系重合体や側鎖1,2−ジオール単位を含有していないEVOH系重合体が混合されていてもよい。側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体と他のビニルアルコール系重合体との混合物の場合、混合物中の側鎖1,2−ジオール単位の含有量は、混合質量比から算出される値として、混合物の全重合単位に対して、0.1モル%以上30モル%以下であることが好ましく、0.5モル%以上25モル%以下であることがより好ましく、0.75モル%以上20モル%以下であることがさらに好ましい。
異なる2種以上の側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)をブレンドして用いる場合、そのブレンド物の製造方法は特に限定しない。例えば、ケン化前のビニルエステル系共重合体の各ペーストを混合後ケン化する方法、ケン化後のビニルアルコール系重合体をアルコール又は水とアルコールの混合溶媒に溶解させた溶液を混合する方法、各ビニルアルコール系重合体のペレット又は粉体を混合した後、溶融混練する方法等が挙げられる。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)単独で構成されてもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ビニルアルコール系重合体以外の他の熱可塑性樹脂、各種添加剤、さらに不可避的に含有されるビニルアルコール系重合体製造のためのモノマー残渣やモノマーのケン化物、いわゆる不純物が含まれていてもよい。
不可避的不純物としては、具体的には、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3,4−ジオール−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、3−アセトキシ−4−オール−1−ブテン、4−アセトキシ−3−オール−1−ブテン等が挙げられる。
添加剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、リン酸エステル等の可塑剤、ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、エチレングリコール、グリセリン、ヘキサンジオール等の脂肪族多価アルコール類等の帯電防止剤、ステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド等のビス脂肪酸アミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等の脂肪酸金属塩、ワックス、流動パラフィン、分子量500以上10,000以下程度の低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等低分子量ポリオレフィン等の滑剤、酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸等の有機酸、ホウ酸化合物、リン酸化合物等の無機酸系化合物、ハイドロタルサイト類の金属塩等の安定剤、還元鉄粉類、亜硫酸カリウム、アスコルビン酸、ハイドロキノン、没食子酸等の酸素吸収剤、カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等の着色剤、グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、マイカ、セリサイト、タルク、シリカ、カオリン、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト等の充填材、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、n−オクタデシル−β−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ベンゼンエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)、ジ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−ペンタエリストール−ジホスファイト等の酸化防止剤、エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤等が挙げられる。
上記添加剤以外に、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させるために、本発明の目的を阻外しない範囲内で、ハイドロタルサイト類化合物、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤の1種又は2種以上を、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)100質量部に対して、0.01質量部以上1質量部以下添加することが好ましい。
さらに、上記添加剤以外に、溶融成形時の熱安定性等の各種物性を向上させるために、酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の有機酸類又はこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)等の塩、また、硫酸、亜硫酸、炭酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸類、又はこれらのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム、マグネシウム等)等の塩等の添加剤を添加してもよい。これらの中でも、酢酸やホウ酸及びその塩を含むホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加することが好ましい。
酢酸の含有量は、その含有効果を十分に確保し、均一な肉厚を有するチューブを得る観点から、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)100質量部に対して、0.001質量部以上1質量部以下であることが好ましく、0.005質量部以上0.2質量部以下であることがより好ましく、0.01質量部以上0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
また、ホウ素化合物の含有量は、その含有効果を十分に確保し、均一な肉厚を有するチューブを得る観点から、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)100質量部に対して、ホウ素元素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で0.001質量部以上1質量部以下であることが好ましく、0.002質量部以上0.2質量部以下であることがより好ましく、0.005質量部以上0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
また、酢酸塩、リン酸塩(リン酸水素塩を含む)の含有量は、その含有効果を十分に確保し、均一な肉厚を有するチューブを得る観点から、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)100質量部に対して、金属元素換算(灰化後、ICP発光分析法にて分析)で、0.0005質量部以上0.1質量部以下であることが好ましく、0.001質量部以上0.05質量部以下であることがより好ましく、0.002質量部以上0.03質量部以下であることがさらに好ましい。尚、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)に2種以上の塩を添加する場合は、その総計が上記の含有量の範囲であることが好ましい。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)にホウ素化合物、酢酸塩、リン酸塩を添加する方法については、特に限定されず、i)含水率20質量%以上80質量%以下の側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の多孔性析出物を、添加物の水溶液と接触させて、添加物を含有させてから乾燥する方法、ii)側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の均一溶液(水/アルコール溶液等)に添加物を含有させた後、凝固液中にストランド状に押し出し、次いで得られたストランドを切断してペレットとして、さらに乾燥処理をする方法、iii)側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)と添加物を一括して混合してから押出機等で溶融混練する方法;、iv)側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の製造時において、ケン化工程で使用したアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を酢酸等の有機酸類で中和して、残存する酢酸等の有機酸類や副生成する塩の量を水洗処理により調整したりする方法等が挙げられる。本発明の効果をより顕著に得るためには、添加物の分散性に優れるi)、ii)の方法、有機酸及びその塩を含有させる場合はiv)の方法が好ましい。
以上のように、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)、さらに必要に応じて添加される他のポリマー、添加剤等を添加し、溶融混練することにより調製できるが、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の特性を十分に確保する観点から、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)含有組成物における側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の含有量は、全組成物に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。従って上記添加剤の含有量は、総量で30質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。
本発明において使用されるフッ素系重合体(C)は、アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入されたフッ素系重合体である(以下、フッ素系重合体(C)と称する場合がある。)。
フッ素系重合体(C)は、少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位を有する重合体(単独重合体又は共重合体)である。熱溶融加工可能なフッ素系重合体であれば特に限定されるものではない。
ここで含フッ素単量体としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)、CF=CF−OCH−Rf2(ここで、Rf2は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキレン基を表す。)、CF=CF(CFOCF=CF(ここで、pは1又は2である。)、CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2以上10以下の整数である。)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記一般式CF=CFORf1の具体例としては、CF=CFOCF(パーフルオロ(メチルビニルエーテル):PMVE)、CF=CFOCFCF(パーフルオロ(エチルビニルエーテル):PEVE)、CF=CFOCFCFCF(パーフルオロ(プロピルビニルエーテル):PPVE)、CF=CFOCFCFCFCF(パーフルオロ(ブチルビニルエーテル):PBVE)やCF=CFO(CFF(パーフルオロ(オクチルビニルエーテル):POVE)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEと称する場合がある。)が挙げられる。これらの中でも、CF=CFOCF、CF=CFOCFCFCFが好ましい。
また、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2以上10以下の整数である。)で表される化合物中のnは、フッ素系重合体の改質(例えば、共重合体の成形時や成形品のクラック発生の抑制)効果に確保し、十分な重合反応性を得る観点から、2以上10以下の整数である。具体的には、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
これらの中でも、CH=CH(CFF又はCH=CF(CFHで表される化合物が好ましく、式中のnは2以上4以下であることが、フッ素系重合体(C)の薬液透過防止性と耐環境応力亀裂性のバランスの観点からより好ましい。
フッ素系重合体(C)は、上記含フッ素単量体に加えて、さらに非フッ素含有単量体に基づく重合単位を含有してもよい。非フッ素含有単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素原子数2以上4以下のオレフィン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、クロトン酸メチル等のビニルエステル、メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)、シクロへキシルビニルエーテル(CHVE)、グリシジルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルが好ましく、エチレンがより好ましい。
フッ素系重合体(C)の中でも、耐熱性、耐薬品性、及び薬液透過防止性の観点から、少なくとも、フッ化ビニリデン単位(VDF単位)からなる共重合体(C1)、少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びエチレン単位(E単位)からなる共重合体(C2)、少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)及び/又は上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる共重合体(C3)、少なくとも、クロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)からなる共重合体(C4)、少なくとも、クロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)及びテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)からなる共重合体(C5)であることが好ましい。
少なくとも、フッ化ビニリデン単位(VDF単位)からなる共重合体(C1)(以下、VDF共重合体(C1)と称する場合がある。)としては、例えば、
フッ化ビニリデン単独重合体(ポリフッ化ビニリデン(PVDF))(C1−1)、
VDF単位とTFE単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量が30モル%以上99モル%以下、及びTFE単位の含有量が1モル%以上70モル%以下である共重合体(C1−2)、
VDF単位とTFE単位、及びトリクロロフルオロエチレン単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量が10モル%以上90モル%以下、TFE単位の含有量が0モル%以上90モル%以下、及びトリクロロフルオロエチレン単位の含有量が0モル%以上30モル%以下である共重合体(C1−3)、
VDF単位とTFE単位、及びHFP単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量が10モル%以上90モル%以下、TFE単位の含有量が0モル%以上90モル%以下、及びHFP単位の含有量が0モル%以上30モル%以下である共重合体(C1−4)等が挙げられる。
上記共重合体(C1−4)において、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量は15モル%以上84モル%以下、TFE単位の含有量は15モル%以上84モル%以下、及びHFP単位の含有量は0モル%以上30モル%以下であることが好ましい。
少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びエチレン単位(E単位)からなる共重合体(C2)としては(以下、TFE共重合体(C2)と称する場合がある。)、例えば、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が20モル%以上である重合体が挙げられ、さらには、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が20モル%以上80モル%以下、E単位の含有量が20モル%以上80モル%以下、及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位の含有量が0モル%以上60モル%以下である共重合体等が挙げられる。
上記共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2以上10以下の整数である。)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
TFE共重合体(C2)としては、例えば、
TFE単位とE単位、及び上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2以上10以下の整数である。)で表されるフルオロオレフィンに由来するフルオロオレフィン単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が30モル%以上70モル%以下、E単位の含有量が20モル%以上55モル%以下、及び上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2以上10以下の整数である。)で表されるフルオロオレフィンに由来するフルオロオレフィン単位の含有量が0モル%以上10モル%以下である共重合体(C2−1)、
TFE単位とE単位とHFP単位、及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が30モル%以上70モル%以下、E単位の含有量が20モル%以上55モル%以下、HFP単位の含有量が1モル%以上30モル%以下、及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位の含有量が0モル%以上10モル%以下である共重合体(C2−2)、
TFE単位とE単位、及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が30モル%以上70モル%以下、E単位の含有量が20モル%以上55モル%以下、及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位の含有量が0モル%以上10モル%以下である共重合体(C2−3)等が挙げられる。
少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)とヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)及び/又は上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる共重合体(C3)(以下、TFE共重合体(C3)と称する場合がある。)としては、例えば、
TFE単位及びHFP単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下であり、好ましくは85モル%以上93モル%以下であり、HFP単位の含有量が5モル%以上30モル%以下であり、好ましくは7モル%以上15モル%以下である共重合体(C3−1)、
TFE単位及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下、及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位の含有量が5モル%以上30モル%以下である共重合体(C3−2)、
TFE単位とHFP単位、及び上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位からなる共重合体であって、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下、HFP単位と上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位の合計含有量が5モル%以上30モル%以下である共重合体(C3−3)等が挙げられる。
少なくとも、クロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)からなる共重合体とは、CTFE単位[−CFCl−CF−]を有し、エチレン単位(E単位)及び/又は含フッ素単量体単位から構成されるクロロトリフルオロエチレン共重合体(C4)である(以下、CTFE共重合体(C4)と称する場合がある。)。
上記CTFE共重合体(C4)における含フッ素単量体としては、CTFE以外のものであれば特に限定されないが、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2以上10以下の整数である。)で表されるフルオロオレフィン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
CTFE共重合体(C4)としては特に限定されず、例えば、CTFE/PAVE共重合体、CTFE/VDF共重合体、CTFE/HFP共重合体、CTFE/E共重合体、CTFE/PAVE/E共重合体、CTFE/VDF/E共重合体、CTFE/HFP/E共重合体等が挙げられる。
CTFE共重合体(C4)におけるCTFE単位の含有量は、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、15モル%以上70モル%以下であることが好ましく、18モル%以上65モル%以下であることがより好ましい。一方、E単位及び/又は含フッ素単量体単位の含有量は、30モル%以上85モル%以下であることが好ましく、35モル%以上82モル%以下であることがより好ましい。
少なくとも、クロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)及びテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)からなる共重合体(C5)は、CTFE単位[−CFCl−CF−]及びTFE単位[−CF−CF−]、並びにCTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位から構成されるクロロトリフルオロエチレン共重合体である(以下、CTFE/TFE共重合体(C5)と称する場合がある。)。
上記CTFE/TFE共重合体(C5)における共重合可能な単量体としては、CTFE及びTFE以外のものであれば特に限定されないが、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、上記一般式CH=CX(CF(ここで、X及びXは互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは2以上10以下の整数である。)で表されるフルオロオレフィン等の含フッ素単量体やエチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素原子数2以上4以下のオレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等のビニルエステル、メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)等のビニルエーテル等の非フッ素含有単量体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、上記一般式CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEであることが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロビルビニルエーテル)(PPVE)がより好ましく、耐熱性の観点からPPVEがさらに好ましい。
CTFE/TFE共重合体(C5)としては特に限定されず、例えば、CTFE/TFE共重合体、CTFE/TFE/HFP共重合体、CTFE/TFE/VDF共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/E共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体、CTFE/TFE/VDF/PAVE共重合体等が挙げられ、これらの中でも、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体が好ましい。
CTFE/TFE共重合体(C5)中におけるCTFE単位及びTFE単位の合計含有量は、良好な成形性、耐環境応力亀裂性、薬液透過防止性、耐熱性、及び機械特性を確保する観点から、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、90モル%以上99.9モル%以下であることが好ましく、上記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位の含有量は、0.1モル%以上10モル%以下であることが好ましい。
CTFE/TFE共重合体(C5)中のおけるCTFE単位の含有量は、良好な成形性、耐環境応力亀裂性、及び薬液透過防止性を確保する観点から、上記CTFE単位とTFE単位の合計量100モル%に対して、15モル%以上80モル%以下であることが好ましく、17モル%以上70モル%以下であることがより好ましく、19モル%以上65モル%以下であることがさらに好ましい。
CTFE/TFE共重合体(C5)において、上記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体がPAVEである場合、PAVE単位の含有量は、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、0.5モル%以上7.0モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以上5.0モル%以下であることがより好ましい。
CTFE/TFE共重合体(C5)において、上記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体がHFPとPAVEである場合、HFP単位とPAVE単位の合計含有量は、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、0.5モル%以上7.0モル%以下であることが好ましく、1.0モル%以上5.0モル%以下であることがより好ましい。
TFE共重合体(C3)、CTFE共重合体(C4)、CTFE/TFE共重合体(C5)は、薬液透過防止性、特に含アルコールガソリンに対するバリア性に卓越して優れる。含アルコールガソリン透過係数は、イソオクタン、トルエン、及びエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒を投入した透過係数測定用カップに測定対象樹脂から得たシートを入れ、60℃において測定した質量変化から算出される値である。TFE共重合体(C3)、CTFE共重合体(C4)やCTFE/TFE共重合体(C5)の上記含アルコールガソリン透過係数は、1.5 g・mm/(m・day)以下であることが好ましく、0.01g・mm/(m・day)以上1.0 g・mm/(m・day)以下であることがより好ましく、0.02g・mm/(m・day)以上0.8 g・mm/(m・day)以下であることがさらに好ましい。
本発明において使用されるフッ素系重合体(C)は、重合体を構成する単量体を従来からの重合方法で(共)重合することによって得ることができる。その中でも主としてラジカル重合による方法が用いられる。すなわち重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、例えば、有機、無機ラジカル重合開始剤、熱、光あるいは電離放射線等によって開始される。
フッ素系重合体(C)の製造方法は特に制限はなく、一般に用いられているラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合等、公知の方法を採用できる。
また、重合は、一槽ないし多槽式の攪拌型重合装置、管型重合装置を使用して、回分式又は連続式操作として実施することができる。
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である分解温度が0℃以上100℃以下であることが好ましく、20℃以上90℃以下であることがより好ましい。具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’−アゾビス(4−シアノペンテン酸)等のアゾ化合物、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の非フッ素系ジアシルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1以上10以下の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルパーオキサイド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、フッ素系重合体(C)の製造に際しては、分子量調整のために、通常の連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のクロロハイドロカーボンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
重合条件については特に限定されず、重合温度は、0℃以上100℃以下であることが好ましく、20℃以上90℃以下であることがより好ましい。重合体中のエチレン−エチレン連鎖生成による耐熱性の低下を避けるためには、一般に低温が好ましい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量、蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、0.1MPa以上10MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以上3MPa以下であることがより好ましい。重合時間は1時間以上30時間以下であることが好ましい。
また、フッ素系重合体(C)の分子量は特に限定されないが、室温で固体の重合体であり、それ自体、熱可塑性樹脂、エラストマー等として使用できるものが好ましい。また、分子量は、重合に用いる単量体の濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度によって制御される。
フッ素系重合体(C)を、前記脂肪族ポリアミド(A)、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)等と共押出する場合、これらの著しい劣化を伴わない混練温度及び成形温度範囲で、充分な溶融流動性を確保するためには、フッ素系重合体(C)の融点より50℃高い温度、及び5kg荷重におけるメルトフローレートは、0.5g/10分以上200g/10分以下であることが好ましく、1g/10分以上100g/10分以下であることがより好ましい。
また、フッ素系重合体(C)は、含フッ素単量体及びその他の単量体の種類、組成比等を選ぶ事によって、重合体の融点、ガラス転移点を調節することができる。
フッ素系重合体(C)の融点は、目的、用途、使用方法により適宜選択されるが、前記脂肪族ポリアミド(A)、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)等と共押出する場合、当該樹脂の成形温度に近いことが好ましい。そのため、前記含フッ素単量体、その他の単量体と後記の官能基含有単量体の割合を適宜調節し、フッ素系重合体(C)の融点を最適化することが好ましい。特に、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)との共押出時の熱溶融安定性、連続成形性、フッ素系重合体(C)の耐熱性、耐薬品性、及び薬液透過防止性を十分に確保する観点から、該フッ素系重合体の融点は、150℃以上230℃以下であることが好ましい。
ここで、融点とは、示差走査熱量測定装置を用いて、試料を予想される融点以上の温度に加熱し、次に、この試料を1分間あたり10℃の速度で降温し、30℃まで冷却、そのまま約1分間放置したのち1分間あたり10℃の速度で昇温することにより測定される融解曲線のピーク値の温度を融点と定義するものとする。
本発明において使用されるフッ素系重合体(C)は、アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基を分子構造内に有しており、官能基は、フッ素系重合体(C)の分子末端又は側鎖又は主鎖のいずれに含有されていても構わない。また、官能基は、フッ素系重合体(C)中に単独、又は2種類以上のものが併用されていてもよい。その官能基の種類、含有量は、フッ素系重合体(C)に積層される相手材の種類、形状、用途、要求される層間接着性、接着方法、官能基導入方法等により適宜決定される。
アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基、カーボネート基、及びハロホルミル基から群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、エポキシ基、カーボネート基、及びハロホルミル基からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
フッ素系重合体(C)に反応性を有する官能基を導入する方法としては、(i)フッ素系重合体(C)の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により、重合時にフッ素系重合体(C)の分子末端に官能基を導入する方法、(iii)反応性を有する官能基をグラフト化が可能な官能基とを有する化合物(グラフト化合物)をフッ素系重合体にグラフトさせる方法等が挙げられる。これらの導入方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。積層チューブにおける層間接着性を考慮した場合、上記(i)、(ii)から製造されるフッ素系重合体(C)が好ましい。(iii)については、特開平7−18035号公報、特開平7−25952号公報、特開平7−25954号公報、特開平7−173230号公報、特開平7−173446号公報、特開平7−173447号公報、特表平10−503236号公報による製造法を参照されたい。以下、(i)フッ素系重合体の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤等によりフッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法について説明する。
(i)フッ素系重合体(C)の製造時、官能基を有する共重合可能な単量体(以下、官能基含有単量体と略記する場合がある。)を共重合する方法において、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、ヒドロキシル基、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、及びシアノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の官能基含有単量体を重合単量体して用いる。官能基含有単量体としては、官能基含有非フッ素単量体、官能基含有含フッ素単量体等が挙げられる。
官能基含有非フッ素単量体としては、アクリル酸、ハロゲン化アクリル酸(但し、フッ素は除く)、メタクリル酸、ハロゲン化メタクリル酸(但し、フッ素は除く)、マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸(但し、フッ素は除く)、フマル酸、ハロゲン化フマル酸(但し、フッ素は除く)、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸やそのエステル等誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等のカルボキシル基含有単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。官能基含有非フッ素単量体は使用する含フッ素単量体との共重合反応性を考慮して決定される。適当な官能基含有非フッ素単量体を選択することにより、重合が良好に進行し、官能基含有非フッ素単量体の主鎖中に均一に導入しやすく、結果として未反応モノマーが少なくなり、不純物を減らすことができるという利点がある。
官能基含有含フッ素単量体としては、一般式CX=CX−(R−Y(ここで、Yは、−COOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、カルボキシル基由来基、−SOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、スルホン酸由来基、エポキシ基、及び−CNからなる群より選択される官能基を表し、X及びXは、同一又は異なって、水素原子若しくはフッ素原子を表し(但し、X及びXが同一に水素原子の場合、n=1であり、Rにフッ素原子を含む。)、Rは、炭素原子数1以上40以下のアルキレン基、炭素原子数1以上40以下の含フッ素オキシアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数1以上40以下の含フッ素アルキレン基、又は、エーテル結合を有する炭素原子数1以上40以下の含フッ素オキシアルキレン基を表し、nは0又は1である。)で表される不飽和化合物等が挙げられる。
上記一般式におけるYであるカルボキシル基由来基としては、例えば、一般式−C(=O)Q(式中、Qは、−OR、−NH、F、Cl、Br又はIを表し、Rは、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数6以上22以下のアリール基を表す。)で表される基等が挙げられる。
上記一般式におけるYであるスルホン酸由来基としては、例えば、一般式−SO(式中Qは、−OR、−NH、F、Cl、Br又はIを表し、Rは、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数6以上22以下のアリール基を表す。)で表される基等が挙げられる。
前記Yは、−COOH、−SOH、−SONa、−SOF又は−CNが好ましい。
官能基含有含フッ素単量体としては、例えば、カルボニル基を有する官能基である場合、パーフルオロアクリル酸フルオライド、1−フルオロアクリル酸フルオライド、アクリル酸フルオライド、1−トリフルオロメタクリル酸フルオライド、パーフルオロブテン酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
フッ素系重合体(C)中の官能基含有単量体の含有量は、十分な層間接着性を確保し、使用環境条件により、層間接着性の低下を招かず、耐熱性を十分に確保し、高温での加工時、接着不良や着色や発泡、高温での使用時、分解による剥離や着色・発泡、溶出等の発生を防止する観点から、全重合単位に対して、0.05モル%以上20モル%以下であることが好ましく、0.05モル%以上10モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以上5モル%以下であることがさらに好ましい。官能基含有単量体の含有量が前記範囲にあると、製造時の重合速度が低下せず、かつフッ素系重合体(C)は積層される相手材との接着性に優れたものとなる。官能基含有単量体の添加法は特に限定されず、重合開始時に一括添加してもよいし、重合中に連続添加しても良い。添加方法は、重合開始剤の分解反応性と重合温度により適宜選択されるが、重合中に、官能基含有単量体が重合で消費されるに従って、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、当該官能基含有単量体の濃度をこの範囲に維持することが好ましい。
また、上記含有量を満たす限りにおいて、官能基が導入されたフッ素系重合体と、官能基が導入されていないフッ素系重合体の混合物であって構わない。
(ii)重合開始剤等によりフッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法において、官能基は、フッ素系重合体の分子鎖の片末端又は両末端に導入される。末端に導入される官能基としては、カーボネート基、ハロホルミル基が好ましい。
フッ素系重合体(C)の末端基として導入されるカーボネート基は、一般に−OC(=O)O−の結合を有する基であり、具体的には、−OC(=O)O−R10基[R10は水素原子、有機基(例えば、炭素原子数1以上20以下アルキル基、エーテル結合を有する炭素原子数2以上20以下アルキル基等)、又はI、II、VII族元素である。]の構造のもので、−OC(=O)OCH、−OC(=O)OC、−OC(=O)OC17、−OC(=O)OCHCHOCHCH等が挙げられる。ハロホルミル基は、具体的には−COZ[Zはハロゲン元素である。]の構造のもので、−COF、−COCl等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
また、重合体の分子末端にカーボネート基を導入するためには、重合開始剤や連鎖移動剤を使用した種々の方法を採用できるが、パーオキサイド、特にパーオキシカーボネートやパーオキシエステルを重合開始剤として用いる方法が、経済性や耐熱性、耐薬品性等の性能の観点から好ましく採用できる。この方法によれば、パーオキサイドに由来するカルボニル基、例えば、パーオキシカーボネートに由来するカーボネート基、パーオキシエステルに由来するエステル基、又は、これらの官能基を変換してなるハロホルミル基等重合体末端に導入することができる。これらの重合開始剤のうち、パーオキシカーボネートを用いることが、重合温度を低くすることができ、開始反応に副反応を伴わないことからより好ましい。
重合体の分子末端にハロホルミル基を導入するためには、種々の方法を採用できるが、例えば、前述のカーボネート基を末端に有するフッ素系重合体のカーボネート基を加熱させ熱分解(脱炭酸)させることにより得ることができる。
パーオキシカーボネートとしては、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
パーオキシカーボネートの使用量は、目的とする重合体の種類(組成等)、分子量、重合条件、使用する開始剤の種類によって異なるが、重合速度を適正に制御し、十分な重合速度を確保する観点から、重合によって得られる全重合体100質量部に対して、0.05質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。重合体の分子末端のカーボネート基含有量は、重合条件を調整することによって制御できる。重合開始剤の添加法は特に限定されず、重合開始時に一括添加してもよいし、重合中に連続添加しても良い。添加方法は、重合開始剤の分解反応性と重合温度により適宜選択される。
フッ素系重合体(C)中の主鎖炭素原子数10個に対する末端官能基数は、十分な層間接着性を確保し、使用環境条件により、層間接着性の低下を招かず、耐熱性を十分に確保し、高温での加工時、接着不良や着色や発泡、高温での使用時、分解による剥離や着色・発泡、溶出等の発生を防止する観点から、150個以上3,000個以下であることが好ましく、200個以上2,000個以下であることがより好ましく、300個以上1,000個以下であることがさらに好ましい。また、上記官能基数を満たす限りにおいて、官能基が導入されたフッ素系重合体と、官能基が導入されていないフッ素系重合体の混合物であって構わない。
以上のように、本発明において使用されるフッ素系重合体(C)は、アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が導入されたフッ素系重合体である。上述の通り、官能基が導入されたフッ素系重合体(C)は、それ自体、フッ素系重合体特有の耐熱性、耐水性、低摩擦性、耐薬品性、耐候性、防汚性、薬液透過防止性等の優れた特性を維持することが可能であり、生産性やコストの面で有利である。
さらに、アミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に含有されることにより、積層チューブにおいて、層間接着性が不充分又は不可能であった種々の材料に対し、表面処理等特別な処理や接着性樹脂の被覆等を行なわず、直接、他の基材との優れた層間接着性を付与することができる。
本発明において使用されるフッ素系重合体(C)は、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素繊維、金属酸化物、あるいはカーボン等の種々の充填剤を添加できる。また、充填剤以外に、顔料、紫外線吸収剤、その他任意の添加剤を混合できる。添加剤以外にまた他のフッ素系樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂、合成ゴム等を添加することもでき、機械特性の改善、耐候性の改善、意匠性の付与、静電防止、成形性改善等が可能となる。
本発明に係わる積層チューブは、脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層、及びアミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入されたフッ素系重合体(C)からなる(c)層を含む、少なくとも3層以上から構成される。側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層を含むことにより、積層チューブの薬液透過防止性、特に炭化水素透過防止性が良好となるとともに、低温耐衝撃性と環境応力負荷耐性を両立した積層チューブを得ることが可能となる。また、フッ素系重合体(C)からなる(c)層を含むことにより、積層チューブのアルコール透過防止性が良好となる。
好ましい実施態様としては、脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層は、積層チューブの最外層に配置される。脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層が最外層に配置されることにより、耐薬品性や柔軟性に優れた積層チューブを得ることが可能である。
より好ましい実施態様としては、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層は、脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層、及びフッ素系重合体(C)からなる(c)層の間に配置され、さらに好ましい実施態様としては、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層とフッ素系重合体(C)からなる(c)層は、直接接触した配置をとる。本発明に規定されたフッ素系重合体(C)を使用することにより、接着層を設ける必要がなく、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層との優れた層間接着性を得ることが可能となる。
また、本発明の積層チューブにおいて、導電性フィラーを含有させたフッ素系重合体組成物からなる導電層が、積層チューブの最内層に配置されると、薬液透過防止性、耐劣化燃料性、及びモノマー、オリゴマーの耐溶出性に優れるとともに、燃料配管チューブとして使用された場合、配管内を循環する燃料の内部摩擦あるいは管壁との摩擦によって発生したスパークが燃料に引火することを防止することが可能となる。その際、導電性を有しないフッ素系重合体からなる層が、前記導電層に対して外側に配置されることにより、低温耐衝撃性と導電性を両立することが可能であり、また経済的にも有利である。さらに、ここでいう、フッ素系重合体は、本発明において規定した、分子鎖中に官能基を有するフッ素系重合体(C)も包含し、後記の官能基を有さないフッ素系重合体も指す。
導電性とは、例えば、ガソリンのような引火性の流体が樹脂のような絶縁体に連続的に接触した場合、静電気が蓄積して引火する可能性があるが、この静電気が蓄積しない程度の電気特性を有することを言う。これにより、燃料等の流体の搬送時に発生する静電気による爆発防止が可能となる。
導電性フィラーは、樹脂に導電性能を付与するために添加されるすべての充填材が包含され、粒状、フレーク状、及び繊維状フィラー等が挙げられる。
粒状フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。フレーク状フィラーとしては、アルミフレーク、ニッケルフレーク、ニッケルコートマイカ等が挙げられる。また、繊維状フィラーとしては、炭素繊維、炭素被覆セラミック繊維、カーボンウィスカー、カーボンナノチューブ、アルミ繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等の金属繊維等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、カーボンナノチューブ、カーボンブラックが好ましい。
カーボンナノチューブは、中空炭素フィブリルと称されるものであり、該フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが該フィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2nm以上20nm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの外径は、樹脂中への十分な分散性や、得られる樹脂成形体の良好な導電性を付与する観点から、3.5nm以上70nm以下であることが好ましく、4nm以上60nm以下であることがより好ましい。カーボンナノチューブのアスペクト比(長さ/外径の比をいう)は、5以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、500以上であることがさらに好ましい。該アスペクト比を満たすことにより、導電性ネットワークを形成しやすく、少量添加で優れた導電性を発現することができる。
カーボンブラックは、導電性付与に一般的に使用されているカーボンブラックがすべて包含され、好ましいカーボンブラックとしては、アセチレンガスを不完全燃焼して得られるアセチレンブラックや、原油を原料にファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等のファーネスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でも、アセチレンブラック、ファーネスブラックがより好ましい。
また、カーボンブラックは、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分等の特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。該カーボンブラックの特性に制限は無いが、良好な鎖状構造を有し、凝集密度の大きいものが好ましい。カーボンブラックの多量配合は耐衝撃性の観点から好ましくなく、より少量で優れた電気伝導度を得る観点から、平均粒径は500nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましく、10nm以上70nm以下であることがさらに好ましく、また、表面積(BET法)は10m/g以上であることが好ましく、30m/g以上であることがより好ましく、50m/g以上であることがさらに好ましく、さらに、DBP(ジブチルフタレート)吸油量は50ml/100g以上であることが好ましく、100ml/100gであることがより好ましく、150ml/100g以上であることがさらに好ましい。また、灰分は0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。ここでいうDBP吸油量は、ASTM D−2414に定められた方法で測定した値である。また、カーボンブラックの揮発分含量は1.0質量%未満であることが好ましい。
これら、導電性フィラーはチタネート系、アルミ系、シラン系等の表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また、溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
導電性フィラーの含有量は、用いる導電性フィラーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性、流動性、機械的強度等のバランスの観点から、フッ素系重合体100質量部に対して、一般に3質量部以上30質量部以下が好ましく選択される。
また、かかる導電性フィラーは、十分な帯電防止性能を得る意味で、溶融押出物の表面固有抵抗値が10Ω/square以下、10Ω/square以下であることが好ましい。但し、上記導電性フィラーの添加は強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため、目標とする導電レベルが得られれば、上記導電性フィラーの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
本発明の積層チューブでは、各層の厚みは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層チューブにおける全体の層数、用途等に応じて調節し得るが、それぞれの層の厚みは、積層チューブの薬液透過防止性、低温耐衝撃性、柔軟性等の特性を考慮して決定される。一般には、(a)層、(b)層、(c)層の厚みは、積層チューブ全体の厚みに対して、それぞれ3%以上90%以下であることが好ましい。低温耐衝撃性と薬液透過防止性のバランスを考慮して、(b)、(c)層の厚みは、積層チューブ全体の厚みに対して、それぞれ5%以上80%以下であることがより好ましく、7%以上50%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の積層チューブにおける全体の層数は、脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層、及びフッ素系重合体(C)からなる(c)層を含む、少なくとも3層以上である限り、特に限定されない。さらに本発明の積層チューブは、(a)層、(b)層、(c)層の3層以外に、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利な積層チューブを得るために、他の熱可塑性樹脂からなる層を1層又は2層以上を有していてもよい。本発明の積層チューブの層数は3層以上であるが、チューブ製造装置の機構から判断して8層以下であることが好ましく、3層以上7層以下であることがより好ましい。
他の熱可塑性樹脂としては、本発明において規定された脂肪族ポリアミド(A)以外の、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリメタキシリレンスベラミド(ポリアミドMXD8)、ポリメタキシリレンアゼラミド(ポリアミドMXD9)、ポリメタキシリレンセバカミド(ポリアミドMXD10)、ポリメタキシリレンドデカミド(ポリアミドMXD12)、ポリメタキシリレンテレフタラミド(ポリアミドMXDT)、ポリメタキシリレンイソフタラミド(ポリアミドMXDI)、ポリメタキシリレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドMXDT(H))、ポリメタキシリレンナフタラミド(ポリアミドMXDN)、ポリパラキシリレンアジパミド(ポリアミドPXD6)、ポリパラキシリレンスベラミド(ポリアミドPXD8)、ポリパラキシリレンアゼラミド(ポリアミドPXD9)、ポリパラキシリレンセバカミド(ポリアミドPXD10)、ポリパラキシリレンドデカミド(ポリアミドPXD12)、ポリパラキシリレンテレフタラミド(ポリアミドPXDT)、ポリパラキシリレンイソフタラミド(ポリアミドPXDI)、ポリパラキシリレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドPXDT(H))、ポリパラキシリレンナフタラミド(ポリアミドPXDN)、ポリパラフェニレンテレフタラミド(PPTA)、ポリパラフェニレンイソフタラミド(PPIA)、ポリメタフェニレンテレフタラミド(PMTA)、ポリメタフェニレンイソフタラミド(PMIA)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンアジパミド)(ポリアミド2,6−BAN6)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンスベラミド)(ポリアミド2,6−BAN8)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンアゼラミド)(ポリアミド2,6−BAN9)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンセバカミド)(ポリアミド2,6−BAN10)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンドデカミド)(ポリアミド2,6−BAN12)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンテレフタラミド)(ポリアミド2,6−BANT)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンイソフタラミド)(ポリアミド2,6−BANI)、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミド2,6−BANT(H))、ポリ(2,6−ナフタレンジメチレンナフタラミド)(ポリアミド2,6−BANN)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンアジパミド)(ポリアミド1,3−BAC6)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンスベラミド(ポリアミド1,3−BAC8)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンアゼラミド)(ポリアミド1,3−BAC9)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンセバカミド)(ポリアミド1,3−BAC10)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンドデカミド)(ポリアミド1,3−BAC12)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンテレフタラミド)(ポリアミド1,3−BACT)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンイソフタラミド)(ポリアミド1,3−BACI)、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミド1,3−BACT(H))、ポリ(1,3−シクロヘキサンジメチレンナフタラミド)(ポリアミド1,3−BACN)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンアジパミド)(ポリアミド1,4−BAC6)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンスベラミド)(ポリアミド1,4−BAC8)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンアゼラミド)(ポリアミド1,4−BAC9)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンセバカミド)(ポリアミド1,4−BAC10)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンドデカミド)(ポリアミド1,4−BAC12)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタラミド)(ポリアミド1,4−BACT)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンイソフタラミド)(ポリアミド1,4−BACI)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミド1,4−BACT(H))、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンナフタラミド)(ポリアミド1,4−BACN)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンアジパミド)(ポリアミドPACM6)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンスベラミド)(ポリアミドPACM8)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンアゼラミド)(ポリアミドPACM9)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンセバカミド)(ポリアミドPACM10)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンドデカミド)(ポリアミドPACM12)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンテトラデカミド)(ポリアミドPACM14)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンヘキサデカミド)(ポリアミドPACM16)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンオクタデカミド)(ポリアミドPACM18)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンテレフタラミド)(ポリアミドPACMT)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンイソフタラミド)(ポリアミドPACMI)、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドPACMT(H))、ポリ(4,4’−メチレンビスシクロヘキシレンナフタラミド)(ポリアミドPACMN)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)アジパミド)(ポリアミドMACM6)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)スベラミド)(ポリアミドMACM8)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)アゼラミド)(ポリアミドMACM9)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)セバカミド)(ポリアミドMACM10)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)ドデカミド)(ポリアミドMACM12)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)テトラデカミド)(ポリアミドMACM14)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)ヘキサデカミド)(ポリアミドMACM16)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)オクタデカミド)(ポリアミドMACM18)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)テレフタラミド)(ポリアミドMACMT)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)イソフタラミド)(ポリアミドMACMI)、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)ヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドMACMT(H))、ポリ(4,4’−メチレンビス(2−メチル−シクロヘキシレン)ナフタラミド)(ポリアミドMACMN)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンアジパミド)(ポリアミドPACP6)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンスベラミド)(ポリアミドPACP8)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンアゼラミド)(ポリアミドPACP9)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンセバカミド)(ポリアミドPACP10)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンドデカミド)(ポリアミドPACP12)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンテトラデカミド)(ポリアミドPACP14)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンヘキサデカミド)(ポリアミドPACP16)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンオクタデカミド)(ポリアミドPACP18)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンテレフタラミド)(ポリアミドPACPT)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンイソフタラミド)(ポリアミドPACPI)、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドPACPT(H))、ポリ(4,4’−プロピレンビスシクロヘキシレンナフタラミド)(ポリアミドPACPN)、ポリイソホロンアジパミド(ポリアミドIPD6)、ポリイソホロンスベラミド(ポリアミドIPD8)、ポリイソホロンアゼラミド(ポリアミドIPD9)、ポリイソホロンセバカミド(ポリアミドIPD10)、ポリイソホロンドデカミド(ポリアミドIPD12)、ポリイソホロンテレフタラミド(ポリアミドIPDT)、ポリイソホロンイソフタラミド(ポリアミドIPDI)、ポリイソホロンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドIPDT(H))、ポリイソホロンナフタラミド(ポリアミドIPDN)、ポリテトラメチレンテレフタラミド(ポリアミド4T)、ポリテトラメチレンイソフタラミド(ポリアミド4I)、ポリテトラメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド4T(H))、ポリテトラメチレンナフタラミド(ポリアミド4N)、ポリペンタメチレンテレフタラミド(ポリアミド5T)、ポリペンタメチレンイソフタラミド(ポリアミド5I)、ポリペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド5T(H))、ポリペンタメチレンナフタラミド(ポリアミド5N)、ポリヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミド6I)、ポリヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド6T(H))、ポリヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミド6N)、ポリ(2−メチルペンタメチレンテレフタラミド)(ポリアミドM5T)、ポリ(2−メチルペンタメチレンイソフタラミド)(ポリアミドM5I)、ポリ(2−メチルペンタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドM5T(H))、ポリ(2−メチルペンタメチレンナフタラミド)(ポリアミドM5N)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンイソフタラミド(ポリアミド9I)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリ(2−メチルオクタメチレンテレフタラミド)(ポリアミドM8T)、ポリ(2−メチルオクタメチレンイソフタラミド)(ポリアミドM8I)、ポリ(2−メチルオクタメチレンヘキサヒドロテレフタラミド)(ポリアミドM8T(H))、ポリ(2−メチルオクタメチレンナフタラミド)(ポリアミドM8N)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリトリメチルヘキサメチレンイソフタラミド(ポリアミドTMHI)、ポリトリメチルヘキサメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミドTMHT(H))、ポリトリメチルヘキサメチレンナフタラミド(ポリアミドTMHN)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド10I)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド11I)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンイソフタラミド(ポリアミド12I)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)やこれらポリアミドの原料単量体及び/又は前記脂肪族ポリアミド(A)の原料単量体を数種用いた共重合体等が挙げられる。
また、本発明において規定された以外のフッ素系重合体(ここで、本発明において規定された以外とは、アミノ基やヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基を含有しないフッ素系重合体を指す。)として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EFEP)、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体(CPT)、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン/テトラフルオロエチレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。前記アミノ基やヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基を含有するフッ素系重合体(C)からなる(c)層に対して、官能基を含有しないフッ素系重合体からなる層が内側に配置されることにより、低温耐衝撃性、薬液透過防止性、及び耐環境応力亀裂性を両立することが可能であり、また、経済的にも有利である。
さらに、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリメチルペンテン(TPX)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)、スチレン/ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン/イソプレン共重合体(SIR)、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体(SIBR)、スチレン/ブタジエン/スチレン共重合体(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン共重合体(SIS)、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体(SEBS)、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体(SEPS)等のポリスチレン系樹脂、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基、及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合体(PET/PEI)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニルサルホン(PPSU)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体(NBR)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリビニルエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/アクリル酸メチル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルアミドイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。
尚、本発明の積層チューブにおいては、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の溶融安定性の観点から、上記例示の熱可塑性樹脂のうち、融点が240℃以下のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリチオエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、及びアミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基を含有しないフッ素系重合体を使用することが好ましい。
また、熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、無延伸、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物、及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
積層チューブ製造法としては、層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内あるいは外において同時に積層する方法(共押出法)、あるいは、一旦、単層チューブあるいは、上記の方法により製造された積層チューブを予め製造しておき、外側に順次、必要に応じては接着剤を使用し、樹脂を一体化せしめ積層する方法(コーティング法)が挙げられる。本発明の積層チューブにおいては、各種材料を溶融状態で共押出し、両者を熱融着(溶融接着)して一段階で積層構造のチューブを製造する共押出法により製造されることが好ましい。
また、得られる積層チューブが複雑な形状である場合や、成形後に加熱曲げ加工を施して成形品とする場合には、成形品の残留歪みを除去するために、上記の積層チューブを形成した後、前記チューブを構成する樹脂の融点のうち最も低い融点未満の温度で、0.01時間以上10時間以下熱処理して目的の成形品を得る事も可能である。
積層チューブにおいては、波形領域を有するものであってもよい。波形領域とは、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、又はコルゲート形状等に形成した領域である。波形領域は、積層チューブ全長にわたり有するものだけではなく、途中の適宜の領域に部分的に有するものであってもよい。波形領域は、まず直管状のチューブを成形した後に、引き続いてモールド成形し、所定の波形形状等とすることにより容易に形成することができる。かかる波形領域を有することにより、衝撃吸収性を有し、取り付け性が容易となる。さらに、例えば、コネクタ等の必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字、U字の形状等にする事が可能である。
このように成形した積層チューブの外周の全部又は一部には、石ハネ、他部品との摩耗、及び耐炎性を考慮して、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、カルボキシル化ブタジエンゴム(XBR)、カルボキシル化クロロプレンゴム(XCR)、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンゴム(XNBR)、NBRとポリ塩化ビニルの混合物、アクリロニトリルイソプレンゴム(NIR)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレン酢酸ビニルゴム(EVM)、NBRとEPDMの混合物ゴム、アクリルゴム(ACM)、エチレンアクリルゴム(AEM)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシル化スチレンブタジエンゴム(XSBR)、スチレンイソプレンゴム(SIR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、ウレタンゴム、シリコーンゴム(MQ,VMQ)、フッ素ゴム(FKM,FFKM)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)、塩化ビニル系、オレフィン系、エステル系、ウレタン系、アミド系等の熱可塑性エラストマー等から構成するソリッド又はスポンジ状の保護部材(プロテクタ)を配設することができる。保護部材は既知の手法によりスポンジ状の多孔体としてもよい。多孔体とすることにより、軽量で断熱性に優れた保護部を形成できる。また、材料コストも低減できる。あるいは、ガラス繊維等を添加してその強度を改善してもよい。保護部材の形状は特に限定されないが、通常は、筒状部材又は積層チューブを受け入れる凹部を有するブロック状部材である。筒状部材の場合は、予め作製した筒状部材に積層チューブを後で挿入したり、あるいは積層チューブの上に筒状部材を被覆押出しして両者を密着して作ることができる。両者を接着させるには、保護部材内面あるいは前記凹面に必要に応じ接着剤を塗布し、これに積層チューブを挿入又は嵌着し、両者を密着することにより、積層チューブと保護部材の一体化された構造体を形成する。また、金属等で補強する事も可能である。
積層チューブの外径は、薬液(例えば含アルコールガソリン等の燃料)等の流量を考慮し、肉厚は薬液の透過量が増大せず、また、通常のチューブの破壊圧力を維持できる厚みで、かつ、チューブの組み付け作業容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持することができる厚みに設計されるが、限定されるものではない。好ましくは、外径は4mm以上300mm以下、内径3mm以上250mm以下、肉厚は0.5mm以上25mm以下である。
本発明の積層チューブは、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類等の機械部品を始め、工業材料、産業資材、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品等各種用途に使用することが可能である。
また、本発明の積層チューブは、薬液透過防止性に優れるため、薬液搬送チューブとして好適である。薬液としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール、フェノール系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、二塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼン等のハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ガソリン、灯油、ディーゼルガソリン、含アルコールガソリン、メチル−t−ブチルエーテル、含酸素ガソリン、含アミンガソリン、サワーガソリン、ひまし油ベースブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワーステアリングオイル、含硫化水素オイル、ウインドウオッシャー液、エンジン冷却液、尿素溶液、医薬剤、インク、塗料等が挙げられる。本発明の積層チューブは、上記薬液を搬送するチューブとして好適であり、具体的には、フィードチューブ、リターンチューブ、エバポチューブ、フューエルフィラーチューブ、ORVRチューブ、リザーブチューブ、ベントチューブ等の燃料チューブ、オイルチューブ、石油掘削チューブ、ガソリンスタンド用地下埋設チューブ、ブレーキチューブ、ウインドウオッシャー液用チューブ、エンジン冷却液(LLC)チューブ、リザーバータンクチューブ、尿素溶液搬送チューブ、冷却水、冷媒等用クーラーチューブ、エアコン冷媒用チューブ、ヒーターチューブ、ロードヒーティングチューブ、床暖房チューブ、インフラ供給用チューブ、消火器及び消火設備用チューブ、医療用冷却機材用チューブ、インク、塗料散布チューブ、その他薬液チューブが挙げられる。特に、燃料チューブとして好適である。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
尚、実施例及び比較例における分析及び物性の測定方法、及び実施例及び比較例に用いた材料を示す。
脂肪族ポリアミド(A)の特性は、以下の方法で測定した。
[相対粘度]
JIS K−6920に準じて、96%の硫酸中、ポリアミド濃度1%、温度25℃の条件下で測定した。
[末端アミノ基濃度]
活栓付三角フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、あらかじめ調整しておいた溶媒フェノール/メタノール(体積比9/1)の40mLを加えた後、マグネットスターラで攪拌溶解し、指示薬にチモールブルーを用いて0.05Nの塩酸で滴定を行い、末端アミノ基濃度を求めた。
[末端カルボキシル基濃度]
三つ口ナシ型フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、ベンジルアルコール40mLを加えた後、窒素気流下、180℃に設定したオイルバスに浸漬する。上部に取り付けた攪拌モータにより攪拌溶解し、指示薬にフェノールフタレインを用いて0.05Nの水酸化ナトリウム溶液で滴定を行い、末端カルボキシル基濃度を求めた。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)の特性は、以下の方法で測定した。
[エチレン含有量及びケン化度]
重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒としたH−NMR(核磁気共鳴)測定(ブルカー・バイオスピン社製 AVANCE500)により得られたスペクトルから算出した。
[1,2−グリコール結合の導入量]
ケン化前の側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体を使用して、テトラメチルシランを内部標準物質、重水素化ジメチルスルホキシドを溶媒とし、H−NMR(核磁気共鳴)測定(ブルカー・バイオスピン社製 AVANCE500)により得られたスペクトルから1,2−グリコール結合の導入量を算出した。
また、フッ素系重合体(C)の特性は、以下の方法で測定した。
[フッ素系重合体の組成]
溶融NMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトルにより測定した。
[フッ素系重合体中の末端カーボネート基数]
フッ素系重合体中の末端カーボネート基数は、赤外吸収スペクトル分析により、カーボネート基(−OC(=O)O−)のカルボニル基が帰属するピークが1809cm−1の吸収波長に現われ、吸収ピークの吸光度を測定し、次式によってフッ素系重合体中の主鎖炭素原子数10個に対するカーボネート基の個数を算出した。
[フッ素系重合体中の主鎖炭素原子数10個に対するカーボネート基の個数]=500AW/εdf
A:カーボネート基(−OC(=O)O−)のピークの吸光度
ε:カーボネート基(−OC(=O)O−)のモル吸光度係数[cm−1・mol−1]。モデル化合物よりε=170とした。
W:モノマー組成から計算される組成平均分子量
d:フィルムの密度[g/cm
f:フィルムの厚み[mm]
また、積層チューブの各物性は、以下の方法で測定した。
[低温耐衝撃性]
SAE J−2260 7.5に記載の方法で、−40℃にて衝撃試験を実施した。
[耐劣化燃料性]
SAE J−2260 7.8に記載の方法で、耐劣化燃料テストを実施した。テスト後のチューブをSAE J−2260 7.5に記載の方法で、−40℃にて衝撃試験を実施し、試験本数10本に対して、破断本数が0本の場合、耐劣化燃料性に優れていると判断した。
[薬液(含アルコールガソリン)透過防止性]
200mmにカットしたチューブの片端を密栓し、内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを90/10体積比に混合した含アルコールガソリンを入れ、残りの端部も密栓した。その後、全体の質量を測定し、次いで試験チューブを60℃のオーブンに入れ、一日毎に質量変化を測定した。一日当たりの質量変化を、チューブ内層表面積で除して含アルコールガソリン透過量(g/m・day)を算出した。
[層間接着性]
200mmにカットしたチューブをさらに縦方向に半分にカットし、テストピースを作成した。万能材料試験機(オリエンテック社製、テンシロンUTM III−200)を用い、50mm/minの引張速度にて180°剥離試験を実施した。S−Sカーブの極大点から剥離強度を読み取り、層間接着性を評価した。
[環境応力負荷耐性]
500mmにカットしたチューブをR50の状態に曲げ加工し、同チューブを、120℃、相対湿度80%のオーブンに入れ、200時間処理した。取り出し後の該チューブ内の、断面を観察し、クラックの有無を確認した。
[モノマー、オリゴマーの耐溶出性]
1mにカットしたチューブの片端を密栓し、内部にFuelC(イソオクタン/トルエン=50/50体積比)とエタノールを90/10体積比に混合した含アルコールガソリンを入れ、残りの端部も密栓した。その後、試験チューブを60℃のオーブンに入れ、7日間処理した。処理終了後、取り出したチューブ内の含アルコールガソリンを通過粒子径8μmのフィルターにて濾過し、捕集物の質量を測定した。捕集物の質量を処理日数及びチューブの内層表面積で除してモノマー、オリゴマー溶出量(g/m・day)を算出した。尚、処理終了後、チューブ内から抜き出した含アルコールガソリンの色調についても目視にて観察した。
[実施例及び比較例で用いた材料]
脂肪族ポリアミド(A)
ポリアミド12樹脂組成物(A−1)の製造
ポリアミド12(a−1)(宇部興産(株)製、UBESTA3030U、相対粘度2.27)に、衝撃改良材として無水マレイン酸変性エチレン/プロピレン共重合体(JSR(株)製、JSR T7761P)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)日本製鋼所製、型式:TEX44)に供給する一方、該二軸溶融混練機のシリンダの途中から、可塑剤としてベンゼンスルホン酸ブチルアミドを定量ポンプにより注入し、シリンダ温度200℃から270℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド12 85質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12樹脂組成物を(A−1)という。)。
導電性ポリアミド12樹脂組成物(A−2)の製造
ポリアミド12樹脂組成物(A−1)の製造において、ポリアミド12(a−1)を(a−2)(宇部興産(株)製、UBESTA3020U、相対粘度1.86)に変更し、導電性フィラーとしてカーボンブラック(キャボット社製、バルカンXC−72)を用い、可塑剤を使用しない以外は、ポリアミド12樹脂組成物(A−1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12 60質量%、衝撃改良材20質量%、導電性フィラー20質量%よりなる導電性ポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、この導電性ポリアミド12樹脂組成物を(A−2)という。)。
ポリアミド12(a−3)の製造
70リットルのオートクレーブに、ドデカンラクタム20.0kg、水0.5kgと5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン49.3gを仕込み、重合槽内を窒素置換した後、180℃まで加熱し、この温度で反応系内が均一な状態になるように攪拌した。次いで重合槽内温度を260℃まで昇温させ、槽内圧力を3.5MPaに調圧しながら、2時間攪拌下に重合した。その後、約2時間かけて常圧に放圧し、次いで、53kPaまで減圧し、減圧下において4時間重合を行なった。次いで、窒素をオートクレーブ内に導入し、常圧に復圧後、反応容器の下部ノズルからストランドとして抜き出し、カッティングしてペレットを得た。このペレットを減圧乾燥し、相対粘度2.26、末端アミノ基濃度45μeq/g、末端カルボキシル基濃度20μeq/gのポリアミド12を得た(以下、このポリアミド12を(a−3)という。)。
ポリアミド12樹脂組成物(A−3)の製造
ポリアミド12樹脂組成物(A−1)の製造において、ポリアミド12(a−1)を(a−3)に変え、酸化防止剤としてトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASFジャパン社製、IRGANOX245)、及びリン系加工安定剤としてトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(BASFジャパン社製、IRGAFOS168)をあらかじめ追加した以外は、ポリアミド12樹脂組成物(A−1)の製造と同様の方法にて、ポリアミド12 85質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド12樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド12樹脂組成物を(A−3)という。)。
ポリアミド612樹脂組成物(A−4)の製造
ポリアミド12樹脂組成物(A−3)の製造において、ポリアミド12(a−3)をポリアミド612(Dopont(株)製、ZYTEL 158、相対粘度2.45)に変更した以外は、ポリアミド12樹脂組成物(A−3)の製造と同様の方法にて、ポリアミド612 80質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤10質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド612樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド612樹脂組成物を(A−4)という。)。
ポリアミド6樹脂組成物(A−5)の製造
ポリアミド12樹脂組成物(A−3)の製造において、ポリアミド12(a−3)をポリアミド6(宇部興産(株)製、UBE Nylon 1024B、相対粘度3.50)に変更した以外は、ポリアミド12樹脂組成物(A−3)の製造と同様の方法にて、ポリアミド6 85質量%、衝撃改良材10質量%、可塑剤5質量%の合計100質量部に対して、酸化防止剤0.8質量部、リン系加工安定剤0.2質量部よりなるポリアミド6樹脂組成物のペレットを得た(以下、このポリアミド6樹脂組成物を(A−5)という。)。
ポリアミド6/12樹脂組成物(A−6)
ポリアミド6/12(ポリ(カプロアミド/ドデカンアミド)共重合体)樹脂組成物(A−6):宇部興産(株)製、UBE Nylon 7034U
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B)
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体組成物(変性EVOH組成物)(B−1)の製造
冷却コイルを持つ1mの重合缶に酢酸ビニルを500.0kg、メタノール100.0kg、アセチルパーオキシド500ppm(対酢酸ビニル)、クエン酸20ppm、及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを14.0kg仕込み、系を窒素ガスで一旦置換した後、次いでエチレンで置換して、エチレン圧が3.5MPaとなるまで圧入して、攪拌した後、67℃まで昇温して、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを15.0g/分で全量4.5kgを添加しながら重合し、重合率が50%になるまで6時間重合した。その後、重合反応を停止してエチレン含有量29モル%のエチレン/酢酸ビニル共重合体を得た。
該エチレン/酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液を棚段塔(ケン化塔)の塔上部より10.0kg/時の速度で供給し、同時に該共重合体中の残存酢酸基に対して、0.012当量の水酸化ナトリウムを含むメタノール溶液を塔上部より供給した。一方、塔下部から15.0kg/時でメタノールを供給した。塔内温度は100℃から110℃、塔圧は0.3MPaGであった。仕込み開始後30分から、側鎖1,2−ジオール単位を含有するEVOHのメタノール溶液(変性EVOH30%、メタノール70%)が取出された。かかる変性EVOHの酢酸ビニル成分のケン化度は99.5モル%であった。
次いで、得られた変性EVOHのメタノール溶液をメタノール/水溶液調整塔の塔上部から10.0kg/時で供給し、120℃のメタノール蒸気を4.0kg/時、水蒸気を2.5kg/時の速度で塔下部から仕込み、塔頂部よりメタノールを8.0kg/時で留出させると同時に、ケン化で用いた水酸化ナトリウム量に対して6当量の酢酸メチルを塔内温95℃から110℃の塔中部から仕込んで塔底部から変性EVOHの水/アルコール溶液(樹脂濃度35%)を得た。
得られた変性EVOHの水/アルコール溶液を、孔径4mmのノズルより、メタノール5%、水95%よりなる5℃に維持された凝固液槽にストランド状に押し出して、凝固終了後、ストランド状物をカッターで切断し、直径3.8mm、長さ4mmの含水率45%の変性EVOHの多孔性ペレットを得た。
該多孔性ペレット100部に対して水100部で洗浄した後、0.032%のホウ酸及び0.007%のリン酸二水素カルシウムを含有する混合液中に投入し、30℃で5時間撹拌した。さらにかかる多孔性ペレットを回分式通気箱型乾燥器にて、温度70℃、水分含有率0.6%の窒素ガスを通過させて12時間乾燥を行って、含水率を30%とした後に、回分式塔型流動層乾燥器を用いて、温度120℃、水分含有率0.5%の窒素ガスで12時間乾燥を行って目的とする変性EVOH組成物のペレットを得た(以下、この変性EVOH組成物を(B−1)という。)。かかるペレットは、変性EVOH100質量部に対して、ホウ酸及びリン酸二水素カルシウムをそれぞれ0.015質量部(ホウ素元素換算)及び0.005質量部(リン酸根換算)含有していた。また、変性EVOH組成物(B−1)のMFRは4.0g/10分(210℃、2160g荷重下)であり、側鎖1,2−ジオール単位の含有量は2.5モル%であった。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体組成物(変性EVOH組成物)(B−2)の製造
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B−1)の製造において、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを3,4−ジアセトキシ−1−ブテンと3−アセトキシ−4−オール−1−ブテンと1,4−ジアセトキシ−1−ブテンの70:20:10の混合物に変更した以外は、側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(B−1)の製造と同様の方法にて、変性EVOH組成物のペレットを得た(以下、この変性EVOH組成物を(B−2)という。)。かかるペレットは、変性EVOH100質量部に対して、ホウ酸及びリン酸二水素カルシウムをそれぞれ0.015質量部(ホウ素元素換算)及び0.005質量部(リン酸根換算)含有していた。また、変性EVOH組成物(B−2)のMFRは3.7g/10分(210℃、2160g荷重下)であり、エチレン単位の含有量は29モル%、側鎖1,2−ジオール単位の含有量は2.5モル%、ケン化度は99.5モル%であった。
側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体(変性PVA)(B−3)の製造
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶(1m)に、酢酸ビニル250.0kg、メタノール250.0kg、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン23.8kgを仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.09モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。その後、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの20%メタノール溶液をHANNA法に従って10時間かけて33.1kg滴下し、酢酸ビニルの重合率が95%となった時点で、重合禁止剤としてm−ジニトロベンゼン10ppm(対仕込み酢酸ビニル)を加え、重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンの合計量1.0モルに対して10.5ミリモルとなる割合で加えて4時間ケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中70℃、12時間乾燥し、変性PVAを得た。
この造粒物を、二軸溶融混練機を用いて、200℃、滞留時間2分で溶融し、変性PVAのペレットを得た(以下、この変性PVAを(B−3)という。)。得られた変性PVA(B−3)のMFRは3.0g/10分(210℃、2160g荷重下)であり、側鎖1,2−ジオール単位の含有量は6.0モル%、ケン化度は98.9モル%であった。
EVOH組成物(B−4)
エチレン含有量32モル%、ケン化度99.5モル%、ホウ酸含有量0.015質量部(ホウ素元素換算)、リン酸二水素カルシウム含有量0.005質量部(リン酸根換算)、MFR 3.2g/10分(210℃、2160g荷重下)、側鎖1,2−ジオール単位の含有量0モル%。
フッ素系重合体(C)
フッ素系重合体(C−1)の製造
内容積が94リットルの攪拌機付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン48.53kg、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン12.13kg、CH=CH(CFFの0.24kgを仕込み、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)25.40kg、テトラフルオロエチレン(TFE)7.99kg、エチレン(E)0.25kgを圧入し、重合槽内を66℃に昇温し、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレートの5質量%1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の484mLを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるように組成TFE/E=54/46(モル比)のモノマー混合ガスを連続的に仕込み、TFE/Eのモノマー混合ガスに対して1.0モル%となるようにCH=CH(CFFを、0.25モル%となるように無水イタコン酸をそれぞれ連続的に仕込んだ。重合開始3.6時間後、モノマー混合ガス5.06kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。得られたスラリ状のフッ素系重合体をガラスフィルターで吸引ろ過し、分離した当該フッ素系重合体を120℃で15時間乾燥することにより、フッ素系重合体の造粒物5.6kgが得られた。
当該フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/HFPに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位/無水イタコン酸に基づく重合単位のモル比で48.1/42.7/8.2/0.8/0.2であった。また、融点は175℃であった。
この造粒物を、押出機を用いて、230℃、滞留時間2分で溶融し、フッ素系重合体のペレットを得た(以下、このフッ素系重合体を(C−1)という。)。
導電性フッ素系重合体(C−2)の製造
フッ素系重合体(C−1)100質量部、及びカーボンブラック(電気化学(株)製)13質量部をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機(東芝機械(株)製、型式:TEM−48S)に供給し、シリンダ温度220℃から250℃で溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、吐出したストランドを水冷し、ペレタイザーでストランドを切断し、水分除去のために120℃の乾燥機で10時間乾燥し、導電性フッ素系重合体のペレットを得た(以下、この導電性フッ素系重合体を(C−2)という。)。
フッ素系重合体(C−3)の製造
内容積が94リットルの攪拌機付きオートクレーブを脱気し、イオン交換水19.7kg、パーフルオロペンチルジフルオロメタン77.1kg、CH=CH(CFF0.427kg、テトラフルオロエチレン(TFE)3.36kg、エチレン(E)0.127kgを圧入し、オートクレーブ内を66℃に昇温した。このとき圧力は0.65MPaであった。重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシジカーボネートの72gを仕込み、重合を開始させた。重合中圧力が一定になるようにTFE/E=60/40のモル比のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して6.0モル%に相当する量のCH=CH(CFFを連続的に仕込んだ。重合開始の5.6時間後、モノマー混合ガスが11.5kg仕込まれた時点で、オートクレーブ内温を室温まで冷却するとともに重合層内の圧力を常圧までパージした。得られたスラリ状のフッ素系重合体を、水100.0kgを仕込んだ300Lの造粒槽に投入し、攪拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を135℃で3時間乾燥することにより、フッ素系重合体の造粒物12.1kgが得られた。
当該フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位のモル比で57.2/37.0/5.8であり、フッ素系重合体の重合開始剤に由来するカーボネート末端基の数は359個であった。また、融点は205℃であった。
この造粒物を、押出機を用いて、250℃、滞留時間2分で溶融し、フッ素系重合体のペレットを得た(以下、このフッ素系重合体を(C−3)という。)。
導電性フッ素系重合体(C−4)の製造
導電性フッ素系重合体(C−2)の製造において、フッ素系重合体(C−1)を(C−3)に変え、シリンダ温度を250℃から260℃に変更した以外は、導電性フッ素系重合体(C−2)の製造と同様の方法にて、導電性フッ素系重合体のペレットを得た(以下、この導電性フッ素系重合体を(C−4)という。)。
フッ素系重合体(C−5)の製造
フッ素系重合体(C−1)の製造において、無水イタコン酸を仕込まないこと以外は、フッ素系重合体(C−1)の製造例と同様の方法にて、5.7kgのフッ素系重合体の造粒物を得た。
当該フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/HFPに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位に基づく重合単位のモル比で48.2/42.8/8.2/0.8であった。また、融点は176℃であった。この造粒物を押出機を用いて、230℃、滞留時間2分で溶融し、フッ素系重合体のペレットを得た(以下、このフッ素系重合体を(C−5)という。)。
接着性樹脂(D)
無水マレイン酸変性ポリプロピレン(D−1):三井化学(株)製、Admer QF500
エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(D−2):日本ポリオレフィン(株)製、レクスパーRA3150
実施例1
上記に示すポリアミド12樹脂組成物(A−1)、ポリアミド6/12樹脂組成物(A−6)、変性EVOH組成物(B−1)、フッ素系重合体(C−1)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)4層チューブ成形機にて、(A−1)を押出温度250℃、(A−6)を押出温度230℃、(B−1)を押出温度220℃、(C−1)を押出温度230℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A−1)からなる(a)層(最外層)、(A−6)からなる(a’)層(外層)、(B−1)からなる(b)層(中間層)、(C−1)からなる(c)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(a’)/(b)/(c)=0.65/0.10/0.10/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例2
実施例1において、変性EVOH組成物(B−1)を(B−2)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例3
実施例1において、変性EVOH組成物(B−1)を変性PVA(B−3)に変え、(B−3)の押出温度を210℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例4
実施例1において、フッ素系重合体(C−1)を導電性フッ素系重合体(C−2)に変え、(C−2)の押出温度を250℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
実施例5
実施例1において、フッ素系重合体(C−1)を(C−3)に変え、(C−3)の押出温度を250℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例6
実施例1において、フッ素系重合体(C−1)を導電性フッ素系重合体(C−4)に変え、(C−4)の押出温度を260℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
実施例7
実施例1において、ポリアミド6/12樹脂組成物(A−6)を無水マレイン酸変性ポリプロピレン(D−1)に変え、(D−1)の押出温度を200℃に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例8
実施例1において、ポリアミド12樹脂組成物(A−1)を(A−3)、ポリアミド6/12樹脂組成物(A−6)をフッ素系重合体(C−1)に変え、(C−1)の押出温度を230℃変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例9
上記に示すポリアミド12樹脂組成物(A−1)、ポリアミド6/12樹脂組成物(A−6)、変性EVOH組成物(B−1)、フッ素系重合体(C−1)、(C−5)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A−1)を押出温度250℃、(A−6)を押出温度230℃、(B−1)を押出温度220℃、(C−1)、(C−5)を押出温度230℃にて別々に溶融させにて、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A−1)からなる(a)層(最外層)、(A−6)からなる層(a’)層(外層)、(B−1)からなる(b)層(中間層)、(C−1)からなる(c)層(内層)、(C−5)からなる(c’)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(a’)/(b)/(c)/(c’)=0.60/0.10/0.10/0.10/0.10mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例10
実施例9において、最内層に使用したフッ素系重合体(C−5)を導電性フッ素系重合体(C−2)に変え、(C−2)の押出温度を250℃に変更した以外は、実施例9と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
実施例11
上記に示すポリアミド612樹脂組成物(A−4)、変性EVOH組成物(B−1)、フッ素系重合体(C−1)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)3層チューブ成形機にて、(A−4)を押出温度260℃、(B−1)を押出温度220℃、(C−1)を押出温度230℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A−4)からなる(a)層(最外層)、(B−1)からなる(b)層(中間層)、(C−1)からなる(c)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(b)/(c)=0.75/0.10/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、変性EVOH組成物(B−1)、フッ素系重合体(C−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例2
実施例1において、フッ素系重合体(C−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例3
実施例1において、変性EVOH組成物(B−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例4
実施例1において、変性EVOH組成物(B−1)をEVOH組成物(B−4)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のチューブを得た。当該チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例5
実施例1において、フッ素系重合体(C−1)を(C−5)に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例6
上記に示すポリアミド12樹脂組成物(A−1)、EVOH組成物(B−4)、フッ素系重合体(C−5)、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(D−1)、エチレン/グリシジルメタクリレート共重合体(D−2)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A−1)を押出温度250℃、(B−4)を押出温度220℃、(C−5)を押出温度230℃、(D−1)、(D−2)を押出温度200℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A−1)からなる(a)層(最外層)、(D−1)からなる(d)層(外層)、(B−4)からなる(b)層(中間層)、(D−2)からなる(d’)層(内層)、(C−5)からなる(c)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(d)/(b)/(d’)/(c)=0.55/0.10/0.10/0.10/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例7
上記に示すポリアミド12樹脂組成物(A−1)、ポリアミド6樹脂組成物(A−5)、ポリアミド6/12樹脂組成物(A−6)、EVOH組成物(B−4)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)4層チューブ成形機にて、(A−1)、(A−5)を押出温度250℃、(A−6)を押出温度230℃、(B−4)を押出温度220℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A−1)からなる(a)層(最外層)、(A−6)からなる(a’)層(外層)、(B−4)からなる(b)層(中間層)、(A−5)からなる(a’’)層(最内層)としたとき、層構成が(a)/(a’)/(b)/(a’’)=0.45/0.10/0.10/0.35mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例8
比較例7において、EVOH組成物(B−4)を変性EVOH組成物(B−1)に変更した以外は、比較例7と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例9
上記に示すポリアミド12樹脂組成物(A−1)、ポリアミド6/12樹脂組成物(A−6)、変性EVOH組成物(B−1)を使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)5層チューブ成形機にて、(A−1)を押出温度250℃、(A−6)を押出温度230℃、(B−1)を押出温度220℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプタによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A−1)からなる(a)層(最外層、最内層)、(A−6)からなる(a’)層(外層、内層)、(B−1)からなる(b)層(中間層)としたとき、層構成が(a)/(a’)/(b)/(a’)/(a)=0.45/0.10/0.10/0.10/0.25mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。また、当該積層チューブの導電性をSAE J−2260に準拠して測定したところ、10Ω/square以下であり、静電気除去性能に優れていることを確認した。
比較例10
比較例9において、最内層に使用したポリアミド12樹脂組成物(A−1)を導電性ポリアミド12樹脂組成物(A−2)変え、(A−2)の押出温度を270℃に変更した以外は、比較例9と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
Figure 2014240132
表1から明らかなように、本発明に規定の側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体からなる層及びフッ素系重合体からなる層を有していない比較例1の積層チューブは薬液透過防止性に劣り、本発明に規定のフッ素系重合体からなる層を有していない比較例2の積層チューブは、低温耐衝撃性、耐劣化燃料性や環境応力負荷耐性に劣っていた。本発明に規定の側鎖1,2−ジオール単位含有ビニルアルコール系重合体からなる層を有していない比較例3の積層チューブは、薬液透過防止性に劣っていた。本発明に規定以外のビニルアルコール系重合体からなる層を有する比較例4の積層チューブは、環境応力負荷耐性に劣っていた。本発明に規定以外のフッ素系重合体からなる層を有する比較例5や6の積層チューブは、層間接着性に劣っていた。本発明に規定のフッ素系重合体からなる層を有しておらず、最内層としてポリアミド6からなる層を有する比較例7や8の積層チューブは、耐劣化燃料性に劣っており、最内層としてポリアミド12からなる層を有する比較例9や10の積層チューブはモノマー、オリゴマーの耐溶出性に劣っていた。
一方、本発明に規定されている実施例1から11の積層チューブは、低温耐衝撃性、耐劣化燃料性、薬液透過防止性、層間接着性、環境応力負荷耐性、及びモノマー、オリゴマーの耐溶出性等の諸特性が良好であることは明らかである。

Claims (12)

  1. 脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層、下記(1)式で表わされる側鎖1,2−ジオール単位を含有するビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層、及びアミノ基又はヒドロキシル基に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入されたフッ素系重合体(C)からなる(c)層を含む、少なくとも3層以上からなることを特徴とする積層チューブ。
    Figure 2014240132
    [一般式(1)において、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示し、Xは単結合又は結合鎖を示し、R、R、及びRはそれぞれ独立して水素原子又は有機基を示す。]
  2. 前記脂肪族ポリアミド(A)が、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンデカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、及びポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)からなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体、又はこれらを形成する原料単量体を数種用いた共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の積層チューブ。
  3. 前記ビニルアルコール系重合体(B)における側鎖1,2−ジオール単位の含有量が0.1モル%以上30モル%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層チューブ。
  4. 前記ビニルアルコール系重合体(B)は、ポリビニルアルコール系重合体又はエチレン/ビニルエステル系共重合体ケン化物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層チューブ。
    の製造方法。
  5. 前記ビニルアルコール系重合体(B)は、エチレン単位を20モル%以上60モル%以下含有するエチレン/酢酸ビニル系共重合体ケン化物であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の積層チューブ。
  6. 前記フッ素系重合体(C)の融点が150℃以上230℃以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の積層チューブ。
  7. 前記脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層が、最外層に配置されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の積層チューブ。
  8. 前記ビニルアルコール系重合体(B)からなる(b)層が、前記脂肪族ポリアミド(A)からなる(a)層と前記フッ素系重合体(C)からなる(c)層の間に配置され、(b)層と(c)層が直接接着していることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の積層チューブ。
  9. 前記積層チューブにおける最内層に、導電性フィラーを含有させたフッ素系重合体組成物からなる導電層が配置されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の積層チューブ。
  10. 前記積層チューブが、共押出成形により製造されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の積層チューブ。
  11. 燃料チューブとして使用されることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の積層チューブ。
  12. 積層チューブが、少なくとも波形領域を有するものであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の積層チューブ。
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